藻類から細胞内生成物および細胞塊および砕片を得るためのシステム、装置および方法、ならびにその誘導物および使用法
少なくとも1つの細胞内生成物(例えば、脂質、炭水化物、タンパク質など)を水性懸濁液中の藻類細胞から採取し、藻類細胞を含む水溶液から破裂した藻類細胞の塊および砕片を採取するシステムおよび方法は、電気回路を含む装置を利用する。この電気回路は、外側のアノード構造より小さい寸法を有する内側の構造(例えば、導電体)を密閉する外側のアノード構造(例えば、管)を含む。内側の構造はカソードとしての役割を果たす。螺旋状表面(銃のバレル内の「旋条」によく似ている、例えば、少なくとも1つのランド部によって分離された複数の溝)が、あるいは、両方の構造(例えば、外側の管と内側の導電体)に平行な電気絶縁アイソレータースペーサが、液封を提供し、アノード回路とカソード回路の間に間隔を形成する。これは、電気分布を均等にして、藻類細胞を含む水溶液の流路の短絡を防ぐために必要である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギーおよび微生物学の分野に関する。特に、本発明は、藻類細胞から細胞の塊および砕片ならびに細胞内生成物を採取するためのシステム、装置および方法に関する。これらは、多種類の製品を製造する際に化石油誘導体の代替品として使用することができる。
【背景技術】
【0002】
微生物の細胞内生成物は、医薬品、化粧品、工業製品、バイオ燃料、合成油、飼料および肥料などの工業製品に使用される化石油誘導体または他の化学物質の部分的または完全な代替品として将来性がある。しかし、これらの代替品が実現可能になるには、化石油誘導体関連の精製コストと競合し得るように、このような細胞内生成物を獲得し処理する方法が効率的であり、かつコスト効率が良くなければならない。化石油代替品として使用するための細胞内生成物を採取するために使用されている現行の抽出法は面倒なものであり正味のエネルギー利得が低く、これらの方法は今日の代替エネルギー需要に有効ではない。このような方法は、著しいカーボンフットプリントを生成して地球温暖化および他の環境問題を悪化させる恐れがある。これらの方法をさらにスケールアップすると、有用な細胞内成分の分解によってさらにより大きな効率損失が生じ、微生物の収穫から現在経済的に実現可能なものより大きなエネルギーまたは化学物質の投入を必要とする。例えば、微生物バイオ燃料の1ガロン当たりのコストは、化石燃料のコストと比べて現在ほぼ9倍である。
【0003】
微生物からの細胞内微粒子物質または生成物の回収は、細胞膜の破壊または溶解を必要とする。原核生物および真核生物のすべての生細胞は、その内部の内容物を囲み、外部環境に対する半多孔性隔膜としての役割を果たす原形質膜を有する。この膜は、境界としての役割を果たして細胞成分を一緒に保持し、異物の侵入を防ぐ。流動モザイクモデルとして知られている、一般に認められている現行理論(S.J.SingerおよびG.Nicolson、1972年)によれば、原形質膜は脂質の二重層(二層)から構成されており、油状または蝋状の物質がすべての細胞から見出されている。二重層中の大部分の脂質は、より正確にはリン脂質、すなわち、それぞれの分子の一端にリン酸基を持っていることを特徴としている脂質と記述することができる。
【0004】
原形質膜のリン脂質二重層内には、多くの多様な有用タンパク質が埋め込まれているが、他の種類のミネラルタンパク質は二重層の表面に単に付着している。これらのタンパク質のうちのいくつか、主として膜の外側に少なくとも部分的に露出しているタンパク質には炭水化物が結合しているので糖タンパク質と呼ばれる。内部の原形質膜に沿ったタンパク質の位置決めは、それらを所定位置にしっかり固定するのに役立つ細胞骨格を構成する繊維の組織とある程度関係している。このタンパク質の配置は、細胞の疎水性および親水性領域にも関係している。
【0005】
細胞内生成物の抽出法は、関連する生物体の種類、それらの所望の内部成分、およびそれらの純度レベルに応じて大きく変わる可能性がある。しかし、細胞が破壊されると、これらの有用成分は放出され、典型的には生体微生物バイオマスを収容するために使用される液状媒体内に懸濁し、これらの有用物の採取を困難にするかエネルギー集約的にする。
【0006】
藻類から細胞内生成物を採取するほとんどの現行法では、液状媒体または廃バイオマス(細胞の塊および砕片)から有用成分を分離および採取するために、脱水プロセスを実行しなければならない。現行プロセスは、液体蒸発に必要な時間フレーム、または液状媒体を乾燥させるのに必要なエネルギー入力、または物質分離に必要な化学物質の投入のために非効率的である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、工業製品の製造に必要な化石油および化石油誘導体の競争的価格の代替品として使用することができる細胞内生成物を微生物から採取するための単純で効率的な方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に記載されるものは、水性懸濁液中の藻類細胞から少なくとも1つの細胞内生成物を採取し、かつ、藻類細胞を含む水溶液から細胞の塊および砕片を採取するシステム、方法および装置である。これらのシステムおよび方法は、電気回路を含む装置を利用する。この電気回路は、外側のアノード構造より小さい寸法を有する内側の構造(例えば、導電体)を密閉する外側のアノード構造(例えば、管)を含む。内側の構造はカソードとしての役割を果たす。螺旋状表面(銃のバレル内の「旋条」によく似ている、例えば、少なくとも1つのランド部によって分離された複数の溝)が、あるいは、両方の構造(例えば、外側の管と内側の導電体)に平行な電気絶縁アイソレータースペーサが、液封を提供し、アノード回路とカソード回路の間に間隔を形成する。これは、電気分布を均等にして、藻類細胞を含む水溶液の流路の短絡を防ぐために必要である。
【0009】
外側のアノード構造(例えば、管)は、典型的には1対の密閉封止用エンドキャップを含む。1つのエンドキャップは、流入する微生物バイオマス(本明細書では生体スラリーまたは微生物細胞を含む水性懸濁液と呼ばれる)を受け取るために使用される入口設備を有し、対向するエンドキャップからはバイオマスの通過する流れが出てゆく。内側のカソード構造(例えば、任意に外側の管と同じまたは異なる形状の管とすることもできる導電体)も、典型的にはこの構造(例えば、内管)の中心を通って流れる液体流れを不可能にし、この流れをアノード回路とカソード回路の壁面間に進路を変える封止エンドキャップを含む。
【0010】
螺旋状アイソレータースペーサは、導電体の2つの壁面間の液封としての役割を果たしており、スペーサの厚みが、好ましくは、2つのそれぞれの壁面の間に等しい距離の間隔を提供する。間隔は、それぞれの回路アセンブリのまわりの電流の360度の完全な移動を可能にするために、かつ、アノード表面とカソード表面の接触による短絡を防止するために不可欠であると見なされるべきである。さらに、螺旋状アイソレータにより、ここで2つの壁面の間に隙間が形成され、流れるバイオマスのための通路が可能になる。螺旋状アイソレータまたは旋条によって提供される螺旋状の方向性流れにより、流れるバイオマスに対してより大きな電気的露出のためのより長い通過時間がさらにもたらされ、これによって物質抽出効率が高くなり、かつ、大容積の流れのために回路寸法を拡大した場合、時間当たりワットの消費速度を低下させることができる。
【0011】
パルス周波数移動は、回路のマイナス側で行われるべきであり、したがってアノードを通ってマイナス移動でカソードに伝達される。この方法により、アノード表面とカソード表面の間の電気エネルギー移動のより高い効率が可能になる。
【0012】
細胞の磁気極性により、対象とする細胞が回路の中を通過すれば、磁気応答が発生する。電気オンパルス相中に発生する同時発生の電磁場にさらされたとき、磁気による細胞の整列は細胞それぞれの正および負極性による。細胞が整列した後、電磁場は細胞上で引張力を生み出し続け、一方、細胞は電圧を貯蔵する電気コンデンサーと同様の方法で電流を吸収する。これにより、細胞の細胞内成分は膨張し、細胞壁構造は、もはやその細胞内成分を閉じ込めることができない点まで弱くなる。最大膨張圧の点で、外側の細胞壁構造の全壊が起こり、すべての内部細胞成分が放出される。
【0013】
電気入力周波数の速度はバイオマス密度によって決定されるべきであり、より密なバイオマスが存在するときは、パルス周波数を高くする。バイオマス密度は、流れる液状媒体1リットル当たりに存在するバイオマスのグラムの割合に基づく式を使用することにより求める。
【0014】
この式を使用することは、一連のセンサーと共に機能するプログラム可能なマイクロプロセッサーが運転の責任を引き受けることを可能にする。バイオマス密度の式に基づいて、自動マトリックスは、流れのための規定されたパラメータ、電気入力の量、および効率的な物質抽出に必要な周波数の速度をシステムに指令する。この手法はさらに、より大規模な適用におけるより高いエネルギー効率を可能にする。
【0015】
したがって、本明細書に記載されるものは、水性懸濁液中の藻類細胞から少なくとも1つの細胞内成分を採取するための装置である。この装置は、カソードとして作用する少なくとも1つの第1の導電体およびアノードとして作用する第2の導電性ハウジングであって、第1の導電体の外面とハウジングの内面の間に空間が画定されて、水性懸濁液用の流路を提供するように、少なくとも1つの第1の導電体がハウジング内に配置されており、第1の導電体とハウジングの片面または両面の少なくとも一部が除去されて、第1の導電体とハウジングの上またはそのまわりへの蓄積を低減または防止する少なくとも1つのランド部によって分離された少なくとも2つの螺旋状溝を作っている、第1の導電体およびハウジングと、パルス電流を与えるために第1の導電体とハウジングに動作可能に接続された電力源であって、パルス電流が、第1の導電体とハウジングと水性懸濁液の間に適用されて、藻類細胞を破裂させ、破裂した藻類細胞の塊(細胞の塊および砕片)ならびに水性懸濁液中への藻類細胞からの細胞内成分の放出をもたらす電力源と、第1の導電体とハウジングに動作可能に接続された二次タンクであって、水性懸濁液が、流路から二次タンク中へ流れて、少なくとも1つの細胞内成分を水性懸濁液中の藻類細胞から分離することができるようになっている、二次タンクとを備える。この装置では、第1の導電体を金属管とすることができる。第1の導電体および第2のハウジングは、それぞれ金属管、例えば、円形の金属管、異なる形状の金属管などとすることができる。一実施形態では、金属ハウジングの内径と第1の導電体の外径はサイズが約0.050インチ異なる。この装置では、ハウジングを金属管とすることができ、少なくとも1つの導電体は、間を置いて配置された複数の導電体を含むことができ、これらの導電体は絶縁要素によって互いに分離されており、ハウジングと間を置いて配置された複数の導電体のそれぞれとの間に多数の流路が作られている。この実施形態では、複数の導電体のそれぞれを金属管とすることができる。
【0016】
さらに本明細書に記載されるものは、水性懸濁液中の藻類細胞から少なくとも1つの細胞内成分を採取する方法である。この方法は、以下の装置を準備するステップを含む。この装置は、カソードとして作用する少なくとも1つの第1の導電体およびアノードとして作用する第2の導電性ハウジングであって、第1の導電体の外面とハウジングの内面の間に空間が画定されるように、少なくとも1つの第1の導電体がハウジング内に配置されて、水性懸濁液用の流路を提供し、第1の導電体とハウジングの片面または両面の少なくとも一部が除去されて、第1の導電体とハウジングの上またはそのまわりへの藻類細胞の蓄積を低減させるまたは防止する少なくとも1つのランド部によって分離された少なくとも2つの螺旋状溝を作っている、第1の導電体およびハウジングと、パルス電流を与えるために第1の導電体とハウジングに動作可能に接続された電力源であって、パルス電流が、第1の導電体とハウジングと水性懸濁液の間に適用されて、藻類細胞を破裂させて、破裂した藻類細胞(細胞の塊および砕片)ならびに水性懸濁液中への藻類細胞からの細胞内成分の放出をもたらす電力源と、第1の導電体とハウジングに動作可能に接続された二次タンクであって、水性懸濁液が、流路から二次タンク中へ流れて、少なくとも1つの細胞内成分を水性懸濁液中の藻類細胞から分離することができるようになっている二次タンクと、導電性鉱物および藻類細胞を含む水性懸濁液であって、装置の流路に配置されている水性懸濁液とを備えている。この方法は、少なくとも1つの第1の導電体とハウジングと水性懸濁液に十分な量のパルス電流を適用して、細胞内容物の膨張と収縮を交互に引き起こすことにより、藻類細胞を破裂させて、破裂した藻類細胞の塊(細胞の塊および砕片)ならびに水性懸濁液中への藻類細胞からの細胞内成分の放出をもたらすステップと、破裂した藻類細胞の塊(細胞塊および砕片)ならびに放出された細胞内成分を含む水性懸濁液を二次タンクに流して、バイオマスおよび破片および水性懸濁液から細胞内成分を分離するステップと、少なくとも1つの細胞内成分を藻類細胞の塊および砕片および水性懸濁液から分離するステップとをさらに含む。
【0017】
さらに本明細書に記載されるものは、藻類細胞を含む水性懸濁液から細胞の塊および砕片を採取する方法である。この方法は、以下の装置を準備するステップを含む。この装置は、カソードとして作用する少なくとも1つの第1の導電体およびアノードとして作用する第2の導電性ハウジングであって、第1の導電体の外面とハウジングの内面の間に空間が画定されて、水性懸濁液用の流路を提供するように、少なくとも1つの第1の導電体がハウジング内に配置されており、第1の導電体とハウジングの片面または両面の少なくとも一部が除去されて、第1の導電体とハウジングの上またはそのまわりへの藻類細胞の蓄積を低減させるまたは防止する少なくとも1つのランド部によって分離された少なくとも2つの螺旋状溝を作っている、第1の導電体およびハウジングと、パルス電流を与えるために第1の導電体とハウジングに動作可能に接続された電力源であって、パルス電流が、第1の導電体とハウジングと水性懸濁液の間に適用されて、藻類細胞を破裂させて、破裂した藻類細胞の塊(細胞の塊および砕片)ならびに水性懸濁液中への藻類細胞からの細胞内成分の放出をもたらす、電力源と、第1の導電体とハウジングに動作可能に接続された二次タンクであって、水性懸濁液が、流路から二次タンク中へ流れて、少なくとも1つの細胞内成分を水性懸濁液中の藻類細胞から分離することができるようになっている、二次タンクと、マイクロバブルを生成するために二次タンク内に配置された要素と、装置の流路に配置されている、導電性鉱物および藻類細胞を含む水性懸濁液と、二次タンクに配置され水性懸濁液を循環させるポンプとを備えている。この方法は、少なくとも1つの第1の導電体とハウジングと水性懸濁液に十分な量のパルス電流を適用して、藻類細胞を破裂させ、水性懸濁液中への破裂した藻類細胞からの細胞内成分の放出ならびに破裂した藻類細胞の塊(細胞の塊および砕片)をもたらすステップと、放出された細胞内成分ならびに細胞の塊および砕片を含む水性懸濁液を二次タンクに流して、放出された細胞内成分および水性懸濁液から細胞の塊および砕片を分離するステップと、ポンプおよび要素を作動させてマイクロバブルを生成し、放出された細胞内成分に付着して水性懸濁液中を浮上する複数のマイクロバブルならびに細胞の塊および砕片の水性懸濁液中の沈降をもたらすステップと、細胞の塊および砕片を、放出された細胞内成分および水性懸濁液から分離するステップと、をさらに含む。マイクロバブルを生成するために二次タンクに配置された要素は、任意の好適なデバイスまたは装置、例えば、ミキサーとすることができる。
【0018】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての専門用語は、本発明が属する当業者によって一般に理解されているものと同じ意味を有する。
【0019】
本明細書で使用される場合、「細胞内生成物」および「藻類細胞からの細胞内生成物」という語句は、藻類細胞内で見出された任意の分子、化合物または物質を指す。藻類細胞からの細胞内生成物の例としては、脂質、タンパク質、炭水化物(例えば、グルコース)、カロテノイド、核酸、水素ガスなどが挙げられる。
【0020】
「バイオマス」という用語は、トリグリセリド、タンパク質または炭水化物などの細胞内成分を採取する目的で液状媒体中で成長させた単細胞生物および単一細胞生物を意味する。
【0021】
本明細書で使用する場合、「細胞の塊および砕片」という語句は、細胞の破裂から生じる生成物を意味する。
【0022】
本明細書で使用する場合、「生体スラリー」という用語は、塩水、廃水または淡水などのマトリックス内で成長状態にある、先に定義したバイオマスに関する。「バイオマス」および「生体スラリー」は本明細書において交換可能に使用される。
【0023】
本明細書に記載されるものと同様または同等の方法、システムおよび装置を、本発明の実施または試験に使用することができるが、好適な方法、システムおよび装置を以下に述べる。本明細書に記述された出版物、特許出願、および特許はすべて参照によりその全体が組み込まれる。矛盾があった場合は、定義を含む本明細書が規制する。以下に説明する特定の実施形態は例示のみであり、限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本明細書に記載される、水性懸濁液中の藻類細胞から少なくとも1つの細胞内生成物を採取する(「1段階抽出」と呼ばれる)方法(図1A)、ならびに、本明細書に記載される、藻類細胞を含む水溶液から細胞の塊および砕片を採取する(本明細書で「1段階抽出および量子破壊」と呼ばれる)方法(図1B)を示す1対のフローダイヤグラムを概略的に示す図である。
【図2】本明細書に記載される装置の一実施形態の、アノード壁面およびカソード壁面の間を流れるバイオマスならびに電気移動回路の断面斜視図を示す。
【図3】本明細書に記載される装置の一実施形態の、アノード管およびカソード管上にある内側および外側エンドキャップの斜視図を示す。
【図4】本明細書に記載される装置の一実施形態の、アノード管とカソード管の間にある螺旋状スペーサの斜視断面図を示す。
【図5】本明細書に記載される装置の一実施形態の、上部および下部マニホールドによって平行に接続された一連のアノード回路およびカソード回路の斜視図である。
【図6】微生物バイオマスを含有した流れる液状媒体が電気移動によって引き起こされた電磁場にさらされている、本明細書に記載されるEMP装置を示す。
【図7】加えられた熱が液状媒体に吸収されてこれに移動する状態で、バイオマスが方向性をもって流れている、本明細書に記載されるEMP装置を示す。
【図8】電磁場と電荷への暴露中に膨張した細胞の第2の例示と関連して、通常サイズの微生物細胞の概要を示す。
【図9】バイオマスを含む二次タンクおよびマイクロミキサーによって生成された発泡体層が発達する順序に関連して、マイクロミキサーの側面図を示す。
【図10】液状媒体と、液状媒体の表面から発泡体採取タンクへすくい取ることができる得られた発泡体層とを含む二次タンクを示す図である。
【図11】藻類バイオマスから有用物を採取するための、1段階抽出を伴う本明細書に記載される方法および装置(システム)の一実施形態を示す図である。
【図12】藻類バイオマスから有用物を採取するための、1段階抽出を伴う本明細書に記載される方法および装置(システム)の別の実施形態を示す図である。
【図13】改造型スタティックミキサーの一例を示す図である。
【図14−1】抽出された脂質を定量し、最適抽出パラメータを明らかにするための実験からのデータの表である。
【図14−2】抽出された脂質を定量し、最適抽出パラメータを明らかにするための実験からのデータの表である。
【図14−3】抽出された脂質を定量し、最適抽出パラメータを明らかにするための実験からのデータの表である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書に記載されるものは、水性懸濁液中の藻類細胞から少なくとも1つの細胞内生成物を採取し、かつ、藻類細胞を含む水溶液から細胞の塊および砕片を採取するシステム、方法および装置である。これらのシステム、方法および装置は、藻類細胞の存続に必要な栄養物質の取り込みにより磁気応答性および導電性を示す藻類細胞の能力に基づいて、藻類細胞にパルス電流(EMP)をかけるステップを含む。これらの栄養物質の大部分は導電性鉱物を含んでおり、消化されると細胞の膜内に保持される。ほとんどの水生微生物細胞は、核、葉緑体、タンパク質、および脂質などの内膜成分を収容する膜からなり、ほとんどの内部領域は内部液体塊に取り囲まれている。細胞組成物のために、電流に暴露されると、細胞内成分は電気的吸着により寸法が膨張する。しかし、電気的にオフになった相では、細胞内成分の寸法は直ちに収縮して元に戻る。電流が高速周波数でパルス化されると、細胞内成分およびこれを取り囲む液体は急速な膨張および収縮を受ける。膨張圧のために、高速オンオフ周波数は、膜に対して内部から何度も強く打つ圧力を生成し、最後には破壊をもたらす。破壊されると、進行中の電気的周波数は、取り囲む液体によるオンオフ圧力の増大を継続する。このことは、内部細胞成分の膜境界外への押出しまたは放出を支援する。下記の好ましい実施形態は、これらのシステム、装置および方法の様々な形を示す。それにもかかわらず、これらの実施形態の説明から、本発明の他の態様を、以下に提供される説明に基づいて組み立てることおよび/または実施することができる。
【0026】
藻類細胞から少なくとも1つの細胞内生成物を採取する典型的な方法(本明細書では「1段階抽出」と呼ばれる、図1Aを参照されたい)は、水性懸濁液中の藻類細胞を本明細書に記載される装置でEMPにさらし、藻類細胞を破裂させ、得られた細胞の塊および砕片から細胞内脂質(または他の細胞内生成物)を分離させるステップを含む。典型的なベンチスケールEMPの適用では、1〜24ボルトまたは25w〜500ワット当たり1〜60ピークアンペアの電流をかける。例えば、500mg/Lの密度を有する培養物を用いた毎分1ガロン(GPM)の処理能力では、抽出を成功させるにはおよそ70ワットのエネルギー(20ピークアンペアで3.5v)が使用されるであろう。5GPMでは、同じ培養物は、およそ350ワット(100ピークアンペアで3.5v)を必要とするであろう。この方法では、水性懸濁液中の藻類細胞を、任意に熱にさらすことができる。熱は、細胞破裂を増大させて採取効率を約20〜50%向上させることができる。熱は、EMPの前(上流)に加えることもできるし、あるいは、装置内の細胞に加えることもできる(例えば、EMPに付随して)。藻類細胞を含む水溶液から細胞の塊および砕片を採取する方法(本明細書では「1段階抽出プラス量子破壊」と呼ばれる、図1Bを参照されたい)は、本明細書に記載される装置において藻類細胞をEMPおよびキャビテーション(すなわち、マイクロバブル)にさらして、1つまたは複数の細胞内生成物(例えば、脂質)と細胞の塊および砕片の両方を含む混合物を得るステップを含む。細胞は、EMPを加える前に(EMPの上流で)キャビテーションにさらすこともできるし、あるいは、EMPに付随してキャビテーションにさらすこともできる(EMP導電体であるかのように電気が通されたキャビテーション装置を示す図13を参照されたい)。一実施形態では、キャビテーション装置は、アノード、カソードおよびベンチュリミキサーを含む(一つですべてを兼ねる)。この実施形態では、キャビテーションユニットは、縮小(例えば、半分に)され、非導電性ガスケットが加えられ、電気が通される。標準圧力条件下、例えば100psiでは、EMPの上流でキャビテーションをかけたとき、何らの効果も認められなかった。しかし、100psiを超える(例えば、110、115、120、130、140、150、200、300、400psiなど)の圧力では、キャビテーションは効果がある可能性がある。藻類細胞を含む水溶液から細胞の塊および砕片を採取する方法では、水性懸濁液中の藻類細胞に任意に熱を加えて、装置内において細胞の塊および砕片の沈降と細胞内生成物(例えば、脂質)の上昇とを達成することによって、細胞の塊および砕片からの細胞内生成物の分離を容易にする。熱は、EMPの前(上流)で(細胞を含む)培養物に加えることもできるし、あるいは、装置内の培養物に加えることもできる(例えば、図13示すようにEMPに付随して)。典型的な方法、例えば5GPM、密度500mg/Lでは、およそ60ワット(4ボルトで15ピークアンペア)の電流をかける。一般に、およそ0.1〜およそ5GPMのGPMおよび約20〜約1000ワット(例えば、2〜50ピークアンペアで2〜18ボルト)の範囲のワットが使用される。例えば、500mg/Lの密度を有する培養物を用いて1GPMの処理能力では、抽出を成功させるにはおよそ70ワットのエネルギー(20ピークアンペアで3.5v)が使用されるであろう。5GPMでは、同じ培養物は、およそ350ワット(100ピークアンペアで3.5v)を必要とするであろう。
【0027】
水性懸濁液中の藻類細胞から少なくとも1つの細胞内生成物を採取するための、または藻類細胞を含む水溶液から細胞の塊および砕片を採取するための、本明細書に記載される装置は、わずかな距離だけ離れた大きな表面積の2つの金属平板間に形成された流路などの2つの金属面間の流路を含む。典型的な実施形態では、流路は、管の内側の金属面とこの管に配置されたより小さな金属導電体の外面との間に形成された環状部に形成される。内側または外側の管は、正方形、長方形、またはその他の形状とすることができるので、これらの管は円形周辺部を有する必要はない。また、管の形状は必ずしも同じである必要がなく、したがって内側と外側の管の管形状が異なることが可能である。最も好ましい実施形態では、内側の導電体および外側の管は同心の管であり、少なくとも1つの管、好ましくは外側の管は、ランド部によって分離された複数の螺旋状溝を備えており、この管に施条を付与している。この施条は、管表面上の残留物の形成を低下させることが分かった。商業生産では、複数の内管を外管で取り囲んで金属導線と培養物などの藻類含有媒体との面接触を増加させ、この培養物(塩水藻類にはブラインが適用されるであろうが、この装置は淡水藻類も同様に成功裡に処理することができる)を通してそこに含まれている藻類細胞に高い電気移動を与えることができる。さらに、プラスチックチューブ、バッフル、および他の装置などの電気絶縁体を使用して、大きなEMP装置を複数の区域に分離して本発明を商業的利用に効率的にスケールアップすることができる。水性懸濁液中の藻類細胞から少なくとも1つの細胞内生成物を採取するための、ならびに、藻類細胞を含む水溶液から細胞の塊および砕片を採取するための、システム、方法および装置は、任意の藻類細胞に適用することができる。下記に述べられた実験では、ナンノクロロプシス オキュラータ細胞が使用された。しかし、細胞内生成物は、任意の藻類細胞から得ることができる。その他の藻類細胞の例としては、セネデスムス、クラミドモナス、クロレラ、アオミドロ、ミドリムシ、プリムネシウム、チノリモ、シネココッカス種、シアノバクテリア、およびある種の紅藻類単細胞株が挙げられる。細胞は、成長させて、任意の好適な濃度、例えば、約100mg/L〜約5g/l(例えば、約500mg/L〜約1g/L)で、本明細書に記載される装置に適用することができる。約500mg/Lおよび約1mg/Lの細胞濃度が成功裡に使用された。いくつかの実施形態では、成長容器からの未濃縮藻類は250mg/L〜1.5g/Lであり、5g/L〜20g/Lまで他の従来の手段で事前濃縮することができる。
【0028】
図2を参照すると、水性懸濁液中の藻類細胞から少なくとも1つの細胞内生成物を採取するための、または、藻類細胞を含む水溶液から細胞の塊および砕片を採取するための、本明細書に記載される装置22を示す。生体微生物バイオマスを含む液体1を、アノード管2の内壁表面と内部カソード管3の外壁表面の間に流す。電線用導管を通って、負の接続4がアノード管2になされ、これにより管全体の電気接地移動が提供される。やはり導管接続によって送られた正の電気入力5は、カソード管3全体にわたって正の電気移動を提供する。
【0029】
正電流5をカソード3にかけると、電流は次いで電気移動6のために接地回路を探す。すなわち、この場合は、電気回路の完成を可能にするアノード2への移動である。この点に関して、正の表面領域と負の表面領域の間で電子の移動が起こるが、これは、導電性液体がこれらの間に存在する場合だけである。生体微生物バイオマス1を含む液状媒体が表面領域の間に流れると、カソード管3から液体1を通ってアノード管2までの電気移動が行われる。微生物バイオマスを含む液体がアノードおよびカソード回路を横切ると、細胞は、細胞の整列を引き起こす磁場と細胞の電流吸収を引き起こす電場の両方にさらされる。
【0030】
図3を参照すると、外側のアノード管2は、1対の密閉封止用エンドキャップ7および8を必要とする。封止用エンドキャップ7は、流入する微生物バイオマスを受けるために使用される入口点9を備える。バイオマスが通過した後、対向するエンドキャップ8は、外部へ流れるバイオマスへの出口点10を備える。
【0031】
さらに図3に示すように、内側のカソード管3もまた、管の中心を通る液体流れを不可能にし、この流れをアノードとカソードの壁面間に進路を変える封止エンドキャップ11および12を必要とする。
【0032】
図4を参照すると、電気絶縁螺旋状アイソレータースペーサ13は、2つの壁面14と15の間の液封としての役割を果たしており、スペーサの厚みが、好ましくは、アノード2とカソード3の間に等しい距離の間隔を提供する。間隔は、アノード2およびカソード3のまわりの電流の360度の完全な移動を可能にするために重要である。何故ならば、アノード2とカソード3の間の接触は短絡を形成し、液状媒体を通る電気移動を低下させることになるからである。さらに、螺旋状アイソレータ13により、ここで2つの壁面14と15の間に隙間16が形成され、流れるバイオマス1のための通路が可能になる。さらに、この螺旋状の方向性流れにより、通過持続時間がより長くなるので、流れるバイオマス1に対してより大きな電気的露出がもたらされ、細胞内物質の抽出中にキロワット時当たりの消費速度を下げても物質抽出効率が高くなる。任意の好適な材料をスペーサとして使用することができる。典型的には、セラミック、高分子、ビニール、PVCプラスチック、バイオプラスチック、ビニール、モノフィラメント、ビニルゴム、合成ゴム、または他の非導電性材料が使用される。
【0033】
図5を参照すると、一連のアノードおよびカソード回路17が並列して示されている。これらは、入口20を通して流れ込むバイオマス1を受け取る共通の上部マニホールドチャンバ18を有する。バイオマス1は、上部マニホールドチャンバ18に入ると、入口9を通して、個々のアノードおよびカソード回路17の中へ下向きの接続をする。入口9は、封止用エンドキャップ8への流れの接続を可能にする。流れるバイオマス1がアノードおよびカソード回路17に入るのはこの点である。個々の回路17を通って螺旋状に通過すると、流れるバイオマス1は、下部マニホールドチャンバ19の中へ出る。ここで、バイオマス1は、次いで出口点21を通って装置22(システム)から流れ出るように導かれる。
【0034】
水性懸濁液中の藻類細胞から少なくとも1つの細胞内生成物を採取する方法では、細胞は成長チャンバ中で成長させる。成長チャンバ(本明細書では「反応器」とも呼ばれる)は、藻類細胞の生命を維持するための必要条件をすべて提供する、任意の水体またはコンテナまたは容器とすることができる。成長チャンバの例としては、開放された池または囲まれた成長タンクが挙げられる。成長チャンバは、本明細書に記載される装置22に動作可能に接続されており、これにより、成長チャンバ内の藻類細胞を装置22に、例えば、重力または液体ポンプにより、移動させることができる。生体バイオマスは、アノードおよびカソード回路の入口部の中へ導管を通って流れる。成長チャンバ内の藻類細胞は、任意の好適なデバイスまたは装置、例えば、管、水路、または他の従来の水移動装置によって装置22に移動することができる。藻類細胞から少なくとも1つの細胞内生成物を採取するために、藻類細胞は、成長チャンバから上記の図2〜12に示されたような装置22に移動され、装置22内に収容される。装置22に加えられたとき、藻類細胞は一般に生体スラリー(本明細書では「バイオマス」とも呼ばれる)の形態をしている。この生体スラリーは、藻類細胞と、水と、淡水で海洋性藻類の成長速度を向上させるために窒素、ビタミンおよび必須微量鉱物を供給するGuillardの1975F/2藻類食物処方に基づいた藻の培養処方などの栄養物質と、を含む水性懸濁液である。藻類細胞が水性懸濁液で成長するように、任意の好適な濃度の藻類細胞および塩化ナトリウム、淡水、汽水または廃水を使用することができる。
【0035】
藻類細胞が装置22内で破裂した後、次いで、これに重力清澄化を含む1種または複数種の下流処理を施す(図1Aを参照されたい)。重力清澄化は一般に清澄化タンクで行われる。ここで、目的とする1つまたは複数の細胞内生成物(例えば、脂質)がタンクの最上部へ上昇し、細胞の塊および砕片はタンクの底部に沈降する。このような実施形態では、回路を通過すると、破壊された細胞の塊および砕片は重力清澄化タンクへ流れる。このタンクは、本明細書に記載されるように、藻類細胞から細胞の塊および砕片ならびに細胞内生成物を採取するための装置22に動作可能に接続されている。重力清澄化タンクでは、より軽くより密度の低い物質は液柱の最上部へ浮き、一方より重くより密度の高い物質は底部に沈んだまま残り、追加の物質採取に供される。
【0036】
次いで、目的とする1つまたは複数の細胞内生成物は、例えばスキミングにより、またはせきの上を通過させることにより、タンクの最上部から容易に採取され、細胞の塊および砕片は、廃棄、回収および/またはさらに処理することができる。次いで、スキミング装置を使用して液柱の表面に浮かぶより軽い物質を採取することができ、一方、より重い細胞の塊および砕片の残留物は清澄化タンクの底部から採取することができる。残存する液体(例えば、水)は、濾過して成長チャンバに戻すこともでき(再利用する)、あるいは、システムから除去することもできる(廃棄する)。細胞内生成物が油(すなわち、脂質)である一実施形態では、この油は、植物油、精製燃料(例えば、ガソリン、ディーゼル、ジェット燃料、加熱油)、特殊化学品、栄養補助食品、および医薬品、またはアルコールの添加によるバイオディーゼルを含む広い範囲の製品に加工され得る。目的とする細胞内生成物は、例えば、毎日(バッチ採収)を含む、任意の適切な時間に採取することができる。別の例では、細胞内生成物は、連続的に(例えば、ゆっくりした一定の採取で)採取される。細胞の塊および砕片はまた、バイオガス(例えば、メタン、合成ガス)、液体燃料(ジェット燃料、ディーゼル)、アルコール(例えば、エタノール、メタノール)、食物、飼料、および肥料を含む広い範囲の製品に加工することもできる。
【0037】
重力清澄化に加えて、任意の好適な下流処理を使用することができる。可能性のある下流処理は多数あり、細胞内内容物および/またはバイオ細胞の塊および砕片塊の所望の生産量/使用目的に応じて使用することができる。例えば、脂質は、メカニカルフィルタ、遠心分離機、または他の分離装置によって濾過した後、例えば、より多くの水を排出させるために加熱することができる。次いで、脂質を、さらにヘキサン蒸留にかけることができる。別の例では、細胞の塊および砕片を、食物、肥料用などにさらに乾燥させるために、嫌気性消化装置、蒸気乾燥器、またはベルトプレスにかけることができる。図1Aに示すように、下流処理には、例えば、研磨および重力濃縮なども含まれる。
【0038】
上記のように、藻類細胞を含む水溶液から細胞の塊および砕片を採取する方法(1段階抽出プラス量子破壊)は、本明細書に記載される装置において藻類細胞をEMPおよびキャビテーション(すなわち、マイクロバブル)にさらして、1つまたは複数の細胞内生成物(例えば、脂質)と細胞の塊および砕片の両方を含む混合物を得るステップを含む。水性懸濁液中の藻類細胞から少なくとも1つの細胞内生成物を採取する方法と同様、藻類細胞を含む水溶液から細胞の塊および砕片を採取する方法はEMPを伴う。EMPは、生体微生物バイオマスを含む液状媒体(スラリー、あるいは生体スラリーまたは水性懸濁液)を通るエネルギー移動に利用される電気移動によって生成される。この移動は、液状媒体に懸濁した導電性鉱物を含む栄養物質により達成することができる。典型的な鉱物配合の一例は、Guilliardの1957処方(鉄.82%、マンガン0.034%、コバルト0.002%、亜鉛0.0037%、銅0.0017%、モリブデン酸塩0.0009%、窒素9.33%、リン酸塩2.0%、ビタミンB1 0.07%、ビタミンB12 0.0002%、およびビオチン0.0002%)である。これらの栄養物質は、液状媒体中のバイオマス細胞の成長および再生などを持続させるためにも微生物バイオマスに必要であり、これによって消費される。消費された鉱物により、微生物バイオマスの導電性と磁気応答性が可能になる。
【0039】
この方法では、スタティックミキサーなどのマイクロ混合装置、あるいは高スループットスターラー、ブレード型ミキサーまたは他の混合装置などの他の好適な装置を使用して、先に溶解された微生物バイオマスを含む液状媒体内にマイクロバブルからなる発泡体層を生成する。しかし、マイクロバブルを生成するのに適切な任意の装置も使用することができる。微粉化に続いて、均質化された混合物は上昇し上方へ浮かび始める。この混合物が液柱を通って上方へ通り過ぎるにつれて、より低密度の有用な細胞内物質は、上昇するバブルに自由に付着するか、あるいは、バブル衝突により、より重い沈降する細胞の塊および砕片廃棄物(加熱水の特性により沈降が可能になった)に付着する。上昇するバブルはまた、ゆるく閉じ込められた有用な物質(例えば、脂質)を振り落とすが、これらはまた上昇するバブルカラムに自由に付着する。これらの有用物を含む発泡体層が液柱の最上部へ上昇したならば、これを容易に液状媒体の表面からすくい取り、後の生成物精製用の採取タンクへ堆積させることができる。発泡体層が二次タンクの最上部へ上昇すれば、発泡体層内に閉じ込められた水分は、一般に、もとの液体の質量の10%未満(例えば、5、6、7、8、9、10、10.5、11%)となる。発泡体内に閉じ込められたのはより低密度の有用物であり、この発泡体を浮かせることまたは液状媒体の表面からすくい取ることは容易である。このプロセスが必要とするのは、従来採取するために必要とされた全液体容積の蒸発ではなく、発泡体の脱水だけである。これは、脱水プロセス、エネルギーまたは任意の化学品投入量を激減させる一方、採取収率および効率ならびに純度を高める。この方法では、水は、成長チャンバに再利用することもでき、あるいは、システムから除去することもできる。細胞の塊および砕片は、例えば、毎日(バッチ採取)を含む、任意の適切な時間に採取することができる。別の例では、細胞の塊および砕片は、連続的に(例えば、ゆっくりした一定の採取で)採取される。
【0040】
本明細書に記載される、藻類細胞を含む水溶液から細胞の塊および砕片を採取する方法および装置(1段階抽出プラス量子破壊)では、液状媒体の比重を変えるために加熱プロセスをEMPプロセス中に適用することができる(水の比重は華氏40度で最適である)。液状媒体(典型的には主として水からなる)が加熱されるとともに、その水素密度の変化が起こる;この密度の変化は、通常は低密度の材料の沈降を可能にする。すなわち、この場合は、通常は浮かぶであろうより重い破壊された細胞の塊および砕片の材料が液柱の底部まで急速に沈降する。この変化はまた、他の生成物用途にも有用なこれらの材料のより容易な採取を可能にする。EMPおよび加熱プロセスが達成されたならば、次に破壊されたバイオマスを含む液状媒体を二次貯蔵タンクへ移動する。ここでは、液体ポンプが連続的ループ流れを可能にする。本明細書で使用される場合、「比重」とは、所定温度の水の密度に対する特定の材料の密度の比として定義される無次元の単位である。
【0041】
本明細書に記載される、藻類細胞を含む水溶液から細胞の塊および砕片を採取する方法および装置(1段階抽出プラス量子破壊)の一例では、生体微生物バイオマスを含む導電性液体媒体を2つの導電性金属片の間に流すとき、電気パルスを頻繁に繰り返してこれらの金属片の間に電磁場および電気エネルギー移動を作る。このパルス電気移動が起こると、電磁場が作られてバイオマス細胞の極性のために細胞が引き延ばされる。さらに、懸濁したバイオマスは電気入力を吸収し、これにより内部細胞成分およびその液体部分の寸法が膨張する。膨張により内圧が膜に対して加えられるが、この内部膨張は単に瞬間的であると見なされる。何故ならば、パルス電気入力のオフ周波数相中はこの膨張は取り除かれるからである。オンとオフの電気的周波数の高速繰り返しは、延びた細胞を弱め、最終的にその膜の破壊を援助する。さらに、連続的な周波数入力は、伸張した内部成分の膨張によって引き起こされた内圧を生じる。この膨張により、最終的には内部のリン脂質基質が漏洩して、細胞壁の浸透圧の差異によってその外側の破壊された境界から液状媒体中へ流出する。
【0042】
さらに、効率を上げるために、電気または周波数入力の量は、1リットルの液状媒体に含まれるバイオマスのグラムからなるマトリックス処方に基づいて調節することができる。
【0043】
液状媒体がEMP装置中を通過したならば、これを二次タンクの上へ(あるいはタンクの底部近くにある装置へ直接)流れ込ませる。この脱水方法では、二次タンクは、所望の細胞内成分の分離および脱水のために、マイクロバブル装置を含んでいるか、またはマイクロバブル装置を接続したタンクである。膜溶解の後、スタティックミキサーまたは他の好適な装置(例えば、マイクロバブルを生成する同様の効果を果たす任意のスタティックミキサーまたは装置)を使用して、これを二次タンク内の最下点に設置する。作動させると、スタティックミキサーは一連のマイクロバブルを生成し、液状媒体内に発泡体層が生じる。液状媒体をマイクロミキサーを通して連続的に送ると、バブルを含む発泡体層は液体の中を外に向かって拡散し、上昇して上方へ浮かび始める。液状媒体内に懸濁したより密度の低い所望の細胞内成分は、上方に向かって浮かんでいるマイクロバブルに付着しその表面に凝集する。あるいは、水柱内の上昇バブルの衝突により、より重い沈降するバイオマス廃棄物(特定の比重変化により沈むことができる)から離れる。
【0044】
図6を参照すると、単純化された概略図を使用して、藻類細胞を含む水溶液からバイオマスを採取する方法(1段階抽出プラス量子破壊)における、2つの導電性金属片間のEMP移動を示している。これらの金属片間には、生体微生物バイオマスを含む液状媒体が流れている。カソード3は、正の電気接続点5を必要とする。これは正の電流入力に使用される。正の移動は、カソード3の長さと幅全体を極性化し、接地源すなわちアノード2を探す。電気回路を完成するために、アノード2は接地接続点4を必要とする。この接地接続点4が、生体バイオマス1を含む液状媒体を通る電気移動6の発生を可能にする。バイオマス1は、主として導電性鉱物分からなる栄養源を含有し、生体バイオマス1の生命を持続しこれを再生するために使用される液状媒体を含む。さらに、栄養源を含有している液状媒体は、液状媒体/バイオマス1を通るカソード3からアノード2への正の電気入力の移動を可能にする。これは、液状媒体が存在するか流れている場合にのみ起こる。電気入力相をパルシングさせると、オンサイクル電気相中に発生する電磁場により細胞の伸び23が引き起こされる。前述のワットを使用して、任意の好適な数、持続時間、例えば1〜2kHzにおいてデューティサイクル60〜80%、のパルスを使用することができる。細胞の伸びは導電性鉱物による正および負の極性応答によるものであり、これらに導電性鉱物は、成長と再生のために細胞が必要とする栄養分吸収の一部として消費される。磁気パルス応答は、溶解の完了前に外側の細胞壁構造をさらに弱化させるプロセスを促進するのに有用である。パルス電磁場が活性化すると、微生物細胞23は、アノード2を向いた最も応答性に優れた正極側とカソード3を向いた負極応答側とに磁気的に整列する。オフサイクル電気相中には、細胞は緩むことができる。高周波速度の電気入力では、1片の薄い金属が前後に曲げられて2個に割れて壊れるのと同様に、細胞は繰り返し伸ばされ緩められる。この類似は、バイオマス細胞23がオンオフパルス相中に遭遇した経験と同様であり、このオンオフパルス相は、最終的には細胞壁構造の溶解または破壊プロセスを促進する。
【0045】
図7によれば、単純化された概略図を用いて、藻類細胞を含む水溶液から細胞の塊および砕片を採取する方法(1段階抽出)において、EMPプロセス中のカソード3および/またはアノード2の外壁間ならびに液状媒体/バイオマス中への熱移動の例を示す。適用される加熱装置24は、カソード3およびアノード2の外壁表面に付いている。この装置により、微生物バイオマス1を含む液状媒体中へ浸透する熱移動が可能になる。主として水からなる液状媒体の比重が加熱により変化すると、主として水素元素の変化によるその化合物構造の変化が可能になり、これが変化すると水の密度を低下させる。こうして密度が変化すると、水柱内に含まれている通常はより低い密度の材料、すなわち、本例では、多くの溶解した細胞の破片(細胞の塊および砕片)の沈降が可能になる。
【0046】
図8によれば、単純化された図を用いて、通常サイズのバイオマス細胞25と電荷にさらされた細胞23との違いを比較して示す。電気オン相においては、パルス化電気移動6は瞬間的に細胞内成分に浸透する。細胞内成分はエネルギー移動を吸着し、瞬間的な内部膨張が起こる。この膨張は、割り当てられた空間許容量を超えて内部成分が膨張したことにより、細胞壁構造26に対して圧力を発生させる。オフ回路相においては内部膨張は減少するが、オンオフ周波数の繰り返しにより、閉じ込められた内部の塊が膨張し、細胞壁構造に対して押しつけられるので、内部ポンプ作用が引き起こされる。細胞のパルス伸びの一因となる、電磁場と相まって繰り返される圧力は、最終的には外壁に外部構造の損傷を引き起こし、全体的な損傷は溶解または破壊の形をもたらす。破壊が起これば、細胞構造からの有用な内部物質の液状媒体中への漏洩が起こる。
【0047】
この実施形態では、図9は、液状媒体内に懸濁した、先に破壊されたバイオマス29を含む二次タンク28に関連する場合の、マイクロミキサー27のより低い取付位置を示す。次いで、より低い二次タンク出口30を通ってこの液状媒体を流す。二次タンク出口30で液体媒体は、液体ポンプ32と方向性流れの関係にある導管31を通って流れるように導かれる。ポンプ作用により、液体を、マイクロミキサー入口の開口33からマイクロミキサーを通って片道移動または再循環させる。液体がマイクロミキサー27を通って流れ続けると、マイクロバブル34が生成され、これは液柱35内で外側へ向けて拡散し発泡体層36を形成する。プロセスが継続するにつれて、この構成された層は液柱35の表面に向かって上昇し始める。発泡体層36が液柱35の表面へ向かう上向きの移動を開始したら、ポンプ32を停止して微粉化プロセスを完了する。これにより、マイクロミキサー27のより低い出口点で生成されたすべてのマイクロバブル34は表面に浮上することができ、マイクロバブルが浮上する際に、これはEMPプロセス中に液状媒体に放出された有用な細胞内物質を回収し始める。マイクロバブル34のこの上向きの運動は、より重い下方へ沈降する細胞の塊および砕片をこすりまたはそれらにぶつかり、より重い沈降する細胞の塊および砕片の残りと結合して閉じ込められたより軽い有用な物質の放出を可能にする。分離されると、これらの物質はマイクロバブル34に付着して表面へ向かって浮上する。
【0048】
図10によれば、単純な図を用いて、もとの液状媒体塊/バイオマス1のおよそ10パーセントを含む発泡体層36を採取する方法を示す。有用な細胞内内部物質を含む発泡体層36が液状媒体35の表面へ上昇すると、スキミング装置37を使用して液状媒体35の表面38から発泡体層36を取り出すことができる。二次タンク28の表面領域にあるスキミング装置37を用いて、二次タンク28の側壁を超えて採取容器39内へ発泡体層36を押し出すことができる。採取容器39で、発泡体層36はその後の物質採取処置のために蓄積される。
【0049】
図11は、藻類バイオマスから有用物を採取するための本明細書に記載される方法および装置(システム)の一実施形態を示す。微生物藻類は、密閉システム40で成長させられ、適切な成長周期の終わりに物質回収プロセスへ移動させられる。藻類バイオマスは、任意にマイクロバブルキャビテーションステップ41に流す。このステップは、他のバイオ物質回収プロセス前に外側の細胞壁構造を柔らかくするために使用される。
【0050】
キャビテーションステップ41の後、任意に加熱プロセス42を適用してバイオマスを含む液体原料水の比重を変えることができる。加熱オプション42は、採取プロセス中に放出された特定物質のより速い移動を可能にする。バイオマスが適切な温度領域に達した後、これを電磁パルス場、EMPステーション43に流す。ここを通過するバイオマス細胞は、電磁気移動にさらされて、外側の細胞壁構造が破壊される。
【0051】
EMPプロセス43を通って流れたのち、破壊されたバイオマスは重力清澄化タンク44へ移動する。ここで、より軽い物質(細胞内生成物)46が、より容易な採取を可能にする表面へ上昇するにつれて、より重い物質(破裂した細胞砕片/塊)45が水柱の中を沈降する。より重い沈降する塊45は清澄化タンク44の底部に集まる。ここで、この塊は、他の有用物のために容易に採取することができる。物質が分離および回収された後、水柱47の残りは、水回収プロセスに送られ、処理された後、成長密閉システム40へ戻される。
【0052】
図12は、藻類バイオマスから有用物を採取するための本明細書に記載される別の方法および装置(システム)の一実施形態を示す。微生物藻類は、密閉システム48で成長させられ、次いで適切な成長周期の終わりに物質回収プロセスへ移動させられる。物質回収は、藻類バイオマスを任意に加熱プロセス49へ移動させることからなる。ここで、バイオマス水柱は、EMPステーション50の前に加熱される。EMPプロセスの後、破壊されたバイオマスをキャビテーションステーション51へ移動させる。ここで、マイクロバブルは水柱密閉タンク52の低点に導入される。マイクロバブルが水柱の中を上昇するとき、有用な放出されたバイオ物質(細胞内生成物)53は、この上昇するバブルに付いている。これらのバブルは、水柱の表面へ浮かび、物質回収のためのより容易でより速いスキミングプロセスを可能にする。物質回収の後、水柱の残りは、水回収プロセス54に送られ、処理された後、成長システム48へ戻される。
【実施例】
【0053】
本発明は、以下の特定の実施例によってさらに例証される。これらの実施例は、例示のためだけに提供されるものであり、本発明の範囲を何ら限定するものと解釈されるべきでない。
【0054】
[実施例1]
細胞溶解方法および装置
燃料および他の材料の原料としての藻類に対する関心にかんがみて、大規模に藻類細胞を処理する方法および装置を開発することは、こうした目的で藻類細胞を処理するときに極めて有益である。こうした方法および装置を以下に述べる。
【0055】
懸濁液中の藻類細胞を処理する方法の一実施形態は、水性懸濁液中の藻類細胞をスタティックミキサーに通すステップを含む。スタティックミキサーはキャビテーション効果を引き起こし、懸濁液を電気分解し、懸濁液中の水から溶解した細胞を分離させる。
【0056】
特定の実施形態では、この方法はまた、懸濁液にpHまたはORP調整剤(例えば、二酸化炭素)を流入させるステップも含む。こうした実施形態では、典型的には二酸化炭素をスタティックミキサーに流入させる。その後の精製において、アルカリ性の材料が役に立つ(プロセスをより効率的にする)可能性があるので、こうした薬剤を使用することができる。
【0057】
ある実施形態では、この方法はまた、例えばミキサーで電気分解することによって生成した水素ガスを回収するステップも含む。
【0058】
ある有利な実施形態では、懸濁液は、藻類成長容器から一部を抜き取ったもの、例えば1日当たり1、2または3回の抜き取り、または1、2、3、4、5または7日に一回の抜き取りである。一般に、この部分的な抜き取りは、藻類成長容器からの培養物容積のおよそ10、20、30、40、50、60、70、80、または90パーセントからなるか、あるいは培養物容積の10〜30、30〜50、50〜70、または70〜90パーセントの範囲である。溶解したおよび/または凝集した藻類細胞が懸濁液中の水から分離されて回収水が得られる。この回収水は、殺菌されて藻類成長容器に戻される。
【0059】
別の実施形態では、懸濁液中の藻類細胞を処理するためのシステムは、藻類細胞が懸濁液中で成長する成長容器と、その中に少なくとも懸濁液の一部を通すことにより少なくとも前記細胞の一部を溶解させる、容器と流体で接続したスタティックミキサーと、懸濁液と接触している複数の電気分解電極であって、EMPが、これらの電極の中を通過し、かつ、これらの電極の間の懸濁液中を通過する電極と、を含む。
【0060】
ある実施形態では、スタティックミキサーは、流体を懸濁液に流入させることができる注入口を含む。スタティックミキサーはまた、例えば本明細書に記載される電力源に電気的に接続されたアノードおよびカソード電極も含む。
【0061】
ある実施形態では、このシステムはまた、バイオマスセパレータ、脂質抽出装置、および/または水素コレクタを含む。
【0062】
いくつかの実施形態は、改造型スタティックミキサーを含む。こうした改造型スタティックミキサーは、その中に液体を通す混合スロートを有する本体と、それによって流動性材料を前記液体に流入させることができる注入口と、互いに電気的に分離されたアノードおよびカソード電極であって、電圧が前記電極の両端に加えられたとき、電流が前記液体の中を通過するようになっている電極と、を含む。
【0063】
こうしたミキサーは多くの方法で構成することができるが、ある実施形態では、これらの電極の1つは本体内にあり、これらの電極の他方は本体の出口に設置されている。これらの電極の一方は実質的にはミキサーの本体からなり、これらの電極の他方は実質的には本体から絶縁された出口リングからなる。
【0064】
藻類の油または藻類のバイオマスの大量生産方法に藻類を利用することは、多くのハードルに直面している。効率的な成長を達成することに加えて、これらのハードルとしては、培養液から効率的に藻類バイオマスを分離すること、ならびに、細胞を溶解して細胞の塊および砕片から油または他の生成物の分離を可能にすることが挙げられる。これらの問題は、実験室規模のプロセスとは対照的に大規模運転で劇的に増大する。実際は、多くの実験室規模のプロセスは、物理的な制約および/またはコストの制約により大規模運転には適用することができない。
【0065】
例えば、これらのことを研究する際に、分類群:アーケプラスチダおよび特にその亜群のミクロ藻類の生物体の細胞溶解にEMPを工業規模で適用するためのいかなる示唆も見出されていない。実際は、従来の方法は、主としてスラッジ(すなわち、都市および産業廃棄物)の電気分解に焦点を当てている。スラッジは、pHがより低く、したがってより高いまたは正の酸化還元電位(ORP)またはMv読み取り値を有する。
【0066】
電気化学的には、pHが低下すると、水素イオン濃度が劇的に上昇し、負の水酸基すなわちOHイオンが減少する(J.M.Chesworth、T.Stuchbury、J.R.Scaife、Introduction to Agricultural Biochemistry、頁12.2.2)。逆に、pHが高くなればなるほど、ORPが低くなる。高いpHと負のMv読み取り値の間のこの相関関係は、細胞壁上に存在する電荷を、細胞の溶解を促進すると共に、エネルギー、医薬品および食物製品の製造に有益な細胞内の所望の要素を抽出するためのエネルギーとして変換することができるという結論を導いた。単細胞生物、この場合シアノバクテリアまたは藍藻類のX線結晶学や生物学の最近の進歩から、植物細胞膜は電池の2つの端部に似ており、膜の内側は正であり外側は負であり、太陽エネルギーが細胞内の水素からの電子を励起すると膜は帯電すると結論付けられた。これらの電子はタンパク質を介して細胞膜へ移動する。タンパク質はまるで電線のように電子を伝え、植物が生きるために必要とするエネルギーを放出する。クロレラブルガリス細胞内のテトラフェニルホスホニウムの蓄積に関するデータから、これらの細胞の膜電位は−120〜−150mVであると推定することができる。
【0067】
この負電位は、活動的な細胞コロニーのマトリックスのpHレベルの観察に反映されている。ここでは、この測定および対応するORP(Mv読み取り値)を、細胞コロニーの健康状態を判断するために行った。例えば、藻類成長容器中のpH読み取り値7は(+/−)ORP読み取り値+200Mvに対応している。細胞の優れた健康状態または対数成長が得られるとき、マトリックスのpHはpH9.0であることが認められ、対応するORP読み取り値は(+/−)−200Mvであった。したがって、藻類細胞コロニーの健康の尺度は負のMv読み取り値によって判断することができると推測することができる。このとき、pHの1の上昇はおよそ200Mvの減少に対応する。
【0068】
ほとんどの天然水は5.0〜8.5のpH値を有する。水界生態系において植物が光合成用にCO2を取り込むにつれて、pH値(およびアルカリ度)は上昇する。水生動物は逆の効果を生み、動物がO2を取り込んでCO2を放出するにつれて、pH(および酸性度)は低下する。定常状態では、藻類マトリックスの読み取り値はpH7.0であった。そして、高張性条件が酸化によって引き起こされるにつれて、pHは7.0未満からほぼ5.0に低下するが、これはORP読み取り値+200〜+400Mvに対応する。細胞壁が崩壊せず、(膨張することなく)単に弛緩した場合、その内容物は依然としてドナンの平衡の法則で表わされる細胞壁に包まれている。この細胞壁は、その逆方向に帯電した2つの細胞壁内のエネルギー電位を調整して、等浸透圧状態を取り戻すまで耐える。これはまた、ギブス−ドナン現象とも呼ばれる。これは半透膜が電解質を含む2つの溶液を分離するときに半透膜で起こる平衡状態であり、これらの一部のイオンは膜に浸透することができるが、他のものは浸透することができない。2つの溶液内のイオンの分布は複雑になり、この結果、膜の両側の間に電位が発現し、2つの溶液は異なる浸透圧を有する。この電荷は著しく平衡を保っており、これが、非常に悪い条件を細胞が耐え、適切な低張性条件が存在すると再活性化することができる理由である。
【0069】
生体藻類細胞は、電気化学的燃料電池と見なすことができる。ここで、膜の極性を、生体培養物の高いpHと低いORP(150Mv)から低いpHと高いORP(+200Mv)へ変化させると、正味の増加350Mvが得られ、マトリックス中への水素放出が付随して起こる。ただし、細胞の電位はなくなり、細胞壁は単にしぼんでいるのではない。こうした水素の製造は、本発明から得られる有益な生成物の1つである。
【0070】
多くの方法を組み合わせることによって、速くて工業的に拡張性のある藻類細胞の溶解および/または凝集方法を提供することができることが発見された。こうした方法は、藻類から有用な生成物を得る方法、例えば、脂質を抽出する方法、水素ガスを得る方法、および/または、とりわけ藻類細胞の塊および砕片を得る方法に適用することができる。
【0071】
こうしたプロセスを行う構成部品として、本方法ではスタティックミキサーを使用することができる。有利なスタティックミキサーとしては、Uematsuらの米国特許第6279611号、Mazzeiの米国特許第6730214号に記載されているものが挙げられるが、それだけに限らない。過渡的なキャビテーションの発生および/または液体へのガスの物質移動を支援するようなミキサーを使用することができる。
【0072】
マトリックスのpHを操作すなわち低下させてORPの急速な上昇を引き起こすことによって、その電気的な差異が電気分解プロセスでの細胞の溶解を支援する効果を有することが推測される。このとき、細胞壁内容物が放出されるときの副生物として過剰の水素が発生するという付随した利益がある。
【0073】
実験研究は、この組み合わせで迅速かつ経済的に細胞溶解が達成されたことを実証している。何故キャビテーション、超音波およびpH調節の組み合わせが細胞を溶解させるのかという理論は経験的なものであり、本発明者らは、これらの結果の任意の特定の説明に束縛されるつもりはない。
【0074】
本プロセスは、通常pH低下によって好都合にORPを調節するステップを含むことができる。様々な酸および塩基を使用して、このようなpH低下(または他のORP調節)を達成することができるが、CO2を使用して達成することもできる。酸化/還元反応は、2つの原子間の電子の交換を含む。このプロセス中に電子を失う原子は「酸化される」と言う。電子を獲得する原子は「還元される」と言う。この余分な電子をピックアップすると、原子は、より多くの電子を求めて原子を「ハングリー」にしている電気エネルギーを失う。塩素、臭素、およびオゾンのような化学物質はすべて酸化剤である。
【0075】
ORPは、通常は、金属が酸化剤および還元剤の存在下で水中に置かれるときに生じる電位または電圧の測定により測定される。これらの電圧は、水を汚染物質の無い状態に保持する、水中の酸化剤の能力を示すものである。したがって、ORPプローブは、実際はミリボルトメーターであり、銀線(実際には、回路のカソード)から構成された基準電極と、白金帯(アノード)から構成された測定電極とによって形成された回路の両端の電圧を測定する。流体がこれらの間にある状態で測定される。通常銀からなる基準電極は、別のごく小さな電圧を作る塩(電解質)溶液に取り囲まれている。しかし、基準電極によって作られる電圧は一定で安定している。したがって、これが基準を形成し、この基準に対して、白金測定電極および水中の酸化剤によって生じた電圧を比較することができる。2つの電極間の電圧の差が測定される。
【0076】
水溶液のpHを変えると、水中の帯電したイオンの濃度に対するpHの影響のために、ORP読み取り値が劇的に変る可能性がある。したがって、本明細書に記載した装置および方法では、pHしたがってORPは、1種または複数種のORPまたはpH調節剤と水を接触させることにより調節することができる。有利には、炭酸ガスを使用してpHを低下させることができる。pHを下げるとミリボルト読み取り値が上がることになる。
【0077】
CO2はマイクロまたはナノバブルの形で液状媒体に混入させることができる。例えば、上記のスタティックミキサーを使用して、マイクロまたはナノバブルとして混入させることができる。このような方法でCO2ガスを混入させると、pHが低下しORPが調節される。これにより、回収することができるさらなる水素ガスを生成することができる。
【0078】
さらに、マイクロまたはナノバブルとしてCO2(または他のガス)の混入が以下に示す細胞溶解の一因となりうる。キャビテーション効果および/または超音波を有利に用いて、細胞溶解および/または細胞の塊および砕片の凝集を高めることができる。超音波プローブを使用してこのような効果を生じさせることができるが、このような効果は、スタティックミキサーのキャビテーション効果と付随するマイクロバブルの混入を使用して発生させることもできる。したがって、ガスの混入を伴ってスタティックミキサー中に藻類含有媒体を通すことが細胞破裂の一因となり、細胞の塊および砕片の凝集を支援することができる。
【0079】
本システムに適用されると、EMPは細胞を溶解する効果がある。しかし、付加的なメリットは水素ガスの発生である。この水素ガスを回収して、例えば燃料として使用することができる。水素の量は、ORP調節によって高めることができる。
【0080】
いくつかの用途については、磁場を適用することが有益なこともある。例えば、このような場は、スタティックミキサー内に、またはこれに隣接して適用することができる。これを達成する1つの方法は、スタティックミキサーのまわりに強磁石を設置することである。ある場合には、交流磁場を使用することが有益なことがある。
【0081】
本プロセスは、多くの異なる生成物のうちの1つまたは複数の出力を高めるように構成することができる。例えば、生成物は、藻類の細胞の塊および砕片、脂質、選択されたタンパク質、カロテノイド、および/または水素ガスとすることができる。
【0082】
いくつかの用途では、本明細書に記載される方法および装置を使用して細胞の塊および砕片を生成することが望ましいであろう。このような細胞の塊および砕片は、1つまたは複数の他の生成物の生成を増加させまたは最適化しつつ、あるいは、他の生成物を得ることなくまたは他の生成物を得るために最適化することなく生成することができる。
【0083】
有利には、このプロセスは、相当な量の水素ガスを生成するように構成することができる。
【0084】
典型的な実施形態では、例えば、バイオ燃料に使用するために、および/または、油(主としてイコサペンタエン酸(20:5、n−3;EPA)およびドコサヘキサエン酸(22:6、n−3;DHA))を含む藻類のオメガ3脂肪酸を提供するために、藻類から脂質を得ることが望ましい。このような脂質を抽出するには、例えば上記のように細胞を溶解することが有利である。このような方法で脂質を放出すると、脂質含有材料とバルク水の間の異なる密度に基づいて第1の分離を行うことが可能になる。所望により、脂質は、さらに他の脂質抽出法を使用して抽出することができる。
【0085】
いくつかの実施形態では、本発明は、細胞の塊および砕片の分離、細胞の溶解、水素の生成、および/または脂質の分離を改善するものとして言及された複数のプロセスを利用する。例えば、電気分解をORP調節と組み合わせることができる。
【0086】
非常に有利には、全体的な藻類処理方法の一部として、選択されたサブプロセスを行うようにシステムを構築する。このようなシステムに有用な1つの構成部品には、装置にアノードとカソードを組み込んだ改造型スタティックミキサーを利用する。使用する際、この改造型スタティックミキサーではスラリーをEMPにさらす。それと同時に、藻類液体が装置内を流れているときに、これにベンチュリを通してCO2ガスまたは他のORP調節剤を注入する。この装置は、どちらかの端部に、電気分解プロセスによって生成されたガス(例えば、水素)を回収するためのガス回収装置を含むことができる。
【0087】
このような改造型スタティックミキサーは、図13に概略的に示されている。バイオマススラリー1は、取入れ管を介してミキサーチャンバに入る。チャンバの内部に入ると、スラリー1は、直流電源54によって電力が供給されるアノード2とカソード3の回路を通って流れる。これらのアノード電極2およびカソード電極3では、これらの間に導電性液体媒体を流すときのみ電気移動が可能になる。このスタティックミキサーの場合は、バイオマススラリー1を用いてアノード電極2とカソード電極3の間の電気移動を行う。電気移動中、バイオマススラリー1はさらにこの移動にさらされ、この移動の一部が微生物細胞によって吸収される。電気的な暴露が起こると、その細胞壁の構造は弱くなり始める。アノードとカソードの回路チャンバを通って流れた後、非導電性ガスケット55を使用して、ベンチュリチャンバ56へ電気移動しないように2つのチャンバを別々に分離する。今や構造的に弱くなった細胞は、ベンチュリによって引き起こされた細胞/マイクロバブルの衝突によってここで破壊することができる。物質分離プロセスの効率をさらに高めるために、ガス注入口57を使用して、物質破壊および回収のための化学的増強剤を導入することができる。細胞壁の破壊中、価値がある酸素や水素などの放出された細胞間のガスは、物質回収システムの一部として捕捉することができる。これらのガスは、スタティックミキサー出口ポート59に位置する出口58の端部で捕捉のために排出されるように導かれる。その他の排出は、破壊されたバイオマス29の残りであり、これも出口点58で回収されるように導かれる。
【0088】
したがって、上に示したように、このシステムは、成長容器または反応器、例えば、フォトバイオリアクターからの部分的な抜き取りを用いて有利に構成しこれを使用することができる。さらに有利には、このシステムは、記載される改造型スタティックミキサーを含み、これを使用して、マトリックスから(細胞の塊および砕片を)抽出しこれを凝集させること、生成した水素または過剰の酸素を捕捉すること、水から細胞の塊および砕片を分離すること、ならびに、この水を、好ましくは殺菌または濾過の後、反応器へ戻すことができる。
【0089】
本明細書において「カスケード生産」と称する方法では、毎日、一日おきまたは毎週などの予定された方式で成長タンクから所定割合の(培養)液の抜き取りを利用する。次いで、抜き取られた(培養)液を、電気分解混合装置、および/または処理タンク中のアノードおよびカソードプレートなどの従来の電気分解法を併用したミキサー内に流入させる。このような処理には、ORP操作を含めることができる。
【0090】
全体的な感覚で見ると、本明細書に記載される方法および装置は、藻類細胞に含まれている有用な副生物を抽出するという特定の目的を有する処理フローに沿った一連の流体操作を含む。先に簡単に記載したように、藻類は、屋外の成長池、開放タンク、覆われたタンク、またはフォトバイオリアクター(PBR)などの多様な構成のタンク、例えば、塩水タンクで成長させられるので、溶液または液の一部が予定された方式で抜き取られる。この抜き取りスケジュールは、それだけに限らないが、密度、pH、および/またはORPを毎日以下のように観察することによって判断する。例えば、屋外の池のpHは、CO2吸収および夜に発生する呼吸と呼ばれるプロセスにより、夜になると午前中よりも高くなることが認められている。この差は、pH3ポイントまたは600Mvにもなる。したがって、成長池のかなりの部分が夕方抜き取られることになる。何故ならば、このとき、pHは8.5〜10となるからである(これに比べて早朝の読み取り値は(6〜7)である)。反応器またはPBRでも同じ原理が当てはまるが、この場合は、成長の対数段階が認められ、pHが8.5〜9に達したとき、成長流体(マトリックス)の75%までが抜き取られる。これらすべての指標には、プラントプロセスのコンピュータコントローラに組み込まれた従来の測定器が使用されており、採取するべき時間が来た時にSSEプロセスとシグナルを制御する。採取するべき時間を判断するために、PH、ORP、Mv、塩分、細胞の寸法などの、成長容器のいくつかの指標を評価することができる。
【0091】
抜き取られなかった流体の残存部分は、回収された水のためのインキュベータとして保存され、これを使用して藻類成長の新しい対数成長期をスタートさせる。抜き取られた液は本明細書では「培養物」とも呼ばれる。
【0092】
微生物藻類は、密閉システムで成長させられ、適切な成長周期の終わりに物質回収プロセスへ移動される。藻類バイオマスは、任意にマイクロバブルキャビテーションステップに流す。このステップは、他のバイオ物質回収プロセス前に外側の細胞壁構造を柔らかくするために使用される。
【0093】
キャビテーションステップの後、任意に加熱プロセスを適用してバイオマスを含む液体原料水の比重を変えることができる。加熱オプションは、採取プロセス中に放出された特定物質のより速い移動を可能にする。バイオマスが適切な温度領域に達した後、これを電磁パルス場、EMPステーションに流す。ここを通過するバイオマス細胞は電磁気移動にさらされて、外側の細胞壁構造が破壊される。
【0094】
EMPプロセスを通って流れたのち、破壊されたバイオマスは重力清澄化タンクへ移動する。ここで、より軽い物質が、より容易な採取を可能にする表面へ上昇するにつれて、より重い物質(細胞の塊および破片)が水柱の中を沈降する。より重い沈降する物質(細胞の塊および破片)は清澄化タンクの底部に集まる。ここで、この塊は、他の有用物のために容易に採取することができる。物質が分離および回収された後、水柱の残りは、水回収プロセスに送られ、処理された後、成長システムへ戻される。
【0095】
この「分解」の期間に、スタティックミキサーには、1種または複数種のORP調節剤を注入することができる。これは、CO2などのpH調節剤であってもよく、これを含んでもよい。CO2が好ましいが、pH値およびMvで表わされるその対応するORPを変えるという基本機能を遂行する、代替のまたは追加のpHまたはORP調節剤を使用することもできる。任意の好適なスタティックミキサーも使用することができる。本明細書に記載される方法、システムおよび装置は、任意の特定タイプのミキサーまたは関連する電気分解方法に限定されない。このようなミキサーには、電圧調整器に接続されたカソードおよびアノードを組み込むことができる。この電圧調整器は、プローブ上のスケーリングを減らすために好ましくは極性を反転させる。アノードおよびカソードには、電池、発電機、変圧器またはこれらの組み合わせなどのDCエネルギー源によって電力が供給される。DC電圧は、クラッキングタンク中の藻類の塊に合わせて可変出力に設定することができる。
【0096】
流体がベンチュリミキサーを通って流入すると、これはCO2と混合され、上記のEMP場にさらされる。そして、連続混合により複数のマイクロバブルが生成され、空洞化したまたはスラリー状の、CO2と藻類塊の両方からなるマイクロバブルを作る。例えば、藻類細胞から生成物を思い通り分離すること、および/またはこの塊を水の表面へ凝集させることをベースとして、CO2混入、電気分解、および混合の組み合わせを、経験的に選択することができる。
【0097】
例えば、最近の試験では、CO2を適用してpH8.5から6.5までの低下およびこれに対応する−200Mvから+250Mvまでの上昇が得られ、流体はDC6ボルトの電源を使用して電気分解され、20分以内に(顕微鏡で検査して)完全な凝集および細胞溶解が得られた。しかし、この組み合わせおよびこれらのパラメータは単に例示的であり、これらを検討して最適値を決定することができる。例えば、pH値、ORP読み取り値、細胞密度および藻類の種類をベースとしてプロトコルを定めるために、所望の結果をさらに処理変数と関連づけることができる。SSE前に上流のPHを調節することは、SSEプロセスを支援する可能性がある。
【0098】
分解(溶解)のプロセスと並行して電気分解を利用すると、カソードで水素ガス(H+)が放出される。この水素は、電気分解ユニットのカソード端部またはスタティックミキサーの端部に置かれた水素回収バルブを通して安全に回収しタンクに貯留することができる。塩基化合物、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、または水酸化マグネシウムの使用によりpH値を変えると、過剰の遊離酸素がアノードプローブに生成する。この場合、pH値8.5で一定部分の藻類の塊を上のように抜き取り、この値をほぼpH11に、すなわちおよそ−250Mvから−700Mvに上昇させ、負の水酸基すなわち−OHの多いマトリックスを作る。次いで、細胞の分解でマトリックスが7.0に戻されると共に、遊離酸素の解離が起きる。この場合、この酸素のための安全な回収システムを組み込む。
【0099】
このシステムでは、条件に応じて細胞の塊および砕片が分解すると、これは水の表面に凝集するかまたは沈降する可能性がある。細胞の塊および砕片は、一般に、壊れた細胞壁、脂質、炭水化物および葉緑素(A)の複合体である。多くの場合、数時間以内に、表面のフロックはタンクの底部まで沈降する。脂質の一部は表面に残ることがあるが、脂質のかなりの部分(大部分の脂質である可能性がある)は、なお葉緑素および/または他の細胞成分と結合しており、細胞の塊および砕片の残りと共に沈降する。
【0100】
残りの水は、高いCO2濃度により、このときpHは約7.0である(pHを調節したときのみ、そうしないとpHは入ってくるスラリーのpHになるであろう)。この水(スラリーが処理されている)およびその分解したバイオマス(細胞の塊および砕片)を、濾過ユニット中を通した後に水殺菌タンクに流入させる、または流す。ここで、水から有機塊を分離するために多くのシステムを使用することができる。これらのシステムは、例えば、平らなセパレータ、フィルタ、ボルテックスセパレータ、または分離された塊を送達する機能を果たす他の任意の方法とすることができる。分離された細胞の塊および砕片は、細胞の塊および砕片の収集容器に抜き取られ、水はタンクを殺菌するために送られる。殺菌の後、回収された水は、タンクに補給するために使用することができる。
【0101】
一実施形態では、システムは、例えば、図13に示した改造型ベンチュリミキサーノズルを含む。先に示したたように、スラリー投入管は、アノードとカソードの極性を分離するために、大きなゴムガスケットまたは他の電気絶縁材料を用いて中央部または管の長さに沿った任意の部分が絶縁される。管の2つの端部には、ソースDC入力から電力を供給することができるか、あるいは、電気を伝える目的を有する管の内部にプローブを含むことができる。改造型ベンチュリでは、pHおよびORPを変える目的で、ベルヌーイの原理に従った管形状に設計された低圧力帯域の中へ入口管を通してCO2ガスまたは他の添加剤を導入する。ベンチュリ管の出口では、EMPプロセス中に生成された水素を取り込むための装置を設置することができる。ベンチュリ管の内部に障害物を加え、流体の流れに影響を与えて乱流を拡大し複数のマイクロバブルを作ることができる。
【0102】
[実施例2]
脂質抽出の定量化および最適EMP抽出パラメータの確認
下記に述べる実験では、本明細書に記載されるEMP装置を使用して脂質抽出の定量化および最適抽出パラメータの確認を記載する。以下に記載する結果は、図14のデータに対応する。
【0103】
試験1
本明細書に記載されるEMPユニットから抽出された脂質を定量するために、以下の実験を行った。1バッチのナンノクロロプシス オキュラータを6インチのEMPユニットで処理して脂質を抽出した。このバッチは、約1L/分の流量でEMPユニットに重力で供給した。合計20.8Lの藻類培養物を処理した。処理した流れを、脂質分析のために収集後に最上層からすくった。
対照バッチの詳細:
乾燥質量濃度:433mg/L
脂質含有量:乾燥質量の5.5%(23.86mg/L)
pH:7.1
導電率:8.82mS/cm
抽出プロセスの詳細:
抽出試料の容積:20.8L
流量:1L/分
電圧:4.3V
電流:22アンペア
【0104】
結果:抽出試料はフォルチ法によって解析した。抽出された脂質は、重さ0.4481gであった。処理前の藻類バッチ20.8Lに元々存在した脂質の量は0.4965gであった。これは、EMPユニットによる抽出効率90.2%に相当する。
【0105】
試験2:
本明細書に記載されるEMPユニットから抽出された脂質を定量するために、以下の実験を行った。1バッチのナンノクロロプシス オキュラータを6インチのEMPユニットで処理して脂質を抽出した。このバッチは、約1L/分の流量でEMPユニットに重力で供給した。合計9.2Lの藻類培養物を処理した。処理した流れは、表面に浮かぶ脂質層を収集する先細りの長首を有するように設計された脂質収集装置に収集された。
対照バッチの詳細:
乾燥質量濃度:207mg/L
脂質含有量:乾燥質量の13%(26.91mg/L)
pH:6.8
導電率:9.31mS/cm
抽出プロセスの詳細:
抽出試料の容積:9.2L
流量:1L/分
電圧:3.4V
電流:20アンペア
【0106】
結果:抽出試料はフォルチ法によって解析した。抽出された脂質は、重さ0.2184gであった。処理前の藻類バッチ9.2Lに元々存在した脂質の量は0.2477gであった。これは、EMPユニットによる抽出効率88.2%に相当する。
【0107】
試験3
本明細書に記載されるEMPユニットから抽出された脂質を定量するために、以下の実験を行った。1バッチのナンノクロロプシス オキュラータを6インチのEMPユニットで処理して脂質を抽出した。このバッチは、約1L/分の流量でEMPユニットに重力で供給した。合計11Lの藻類培養物を処理した。処理した流れを、脂質分析のために収集後に最上層からすくった。
対照バッチの詳細:
乾燥質量濃度:207mg/L
脂質含有量:乾燥質量の13%(26.91mg/L)
pH:6.8
導電率:9.31mS/cm
抽出プロセスの詳細:
抽出試料の容積:11L
流量:1L/分
電圧:3.4V
電流:20アンペア
【0108】
結果:試験した藻類バッチについて、6インチのEMPユニットによる抽出効率は95.25%であった。
【0109】
試験4
本明細書に記載されるEMPユニットから抽出された脂質を定量するために、以下の実験を行った。1バッチのナンノクロロプシス オキュラータを6インチのEMPユニットで処理して脂質を抽出した。バッチ流量は流量計とポンプを使用して調節した。2リットルの藻類培養物を処理した。処理した流れを2リットルの容量フラスコに収集し、最上部の脂質層を分析用に回収した。
対照バッチの詳細:
乾燥質量濃度:410mg/L
脂質含有量:乾燥質量の8.2%(33.62mg/L)
pH:7.1
導電率:8.99mS/cm
抽出プロセスの詳細:
抽出試料の容積:2.01L
流量:1.5L/分
電圧:12.4V
電流:18アンペア
【0110】
結果:試験した藻類バッチについて、6インチのEMPユニットによる抽出効率は90.7%であった。
【0111】
試験5
本明細書に記載されるEMPユニットから抽出された脂質を定量するために、以下の実験を行った。1バッチのナンノクロロプシス オキュラータを12インチのEMPユニットで処理して脂質を抽出した。バッチ流量は流量計とポンプを使用して調節した。1.87リットルの藻類培養物を処理した。処理した流れを2リットルの容量フラスコに収集し、最上部の脂質層を分析用に回収した。
対照バッチの詳細:
乾燥質量濃度:800mg/L
脂質含有量:乾燥質量の19.9%(159.2mg/L)
pH:7.6
導電率:8.15mS/cm
抽出プロセスの詳細:
抽出試料の容積:1.87L
流量:0.2ガロン/分(0.756L/分)
電圧:4.8V
電流:20.2アンペア
【0112】
結果:試験した藻類バッチについて、12インチのEMPユニットによる抽出効率は12.2%であった。
【0113】
試験6:
本明細書に記載されるEMPユニットから抽出された脂質を定量するために、以下の実験を行った。1バッチのナンノクロロプシス オキュラータを12インチのEMPユニットで処理して脂質を抽出した。バッチ流量は流量計とポンプを使用して調節した。1.87リットルの藻類培養物を処理した。処理した流れを2リットルの容量フラスコに収集し、最上部の脂質層を分析用に回収した。
対照バッチの詳細:
乾燥質量濃度:500mg/L
脂質含有量:乾燥質量の16.15%(80.75mg/L)
pH:7.5
導電率:8.18mS/cm
抽出プロセスの詳細:
抽出試料の容積:1.87L
流量:1.13L/分
電圧:4.7V
電流:20アンペア
【0114】
結果:試験した藻類バッチについて、12インチのEMPユニットによる抽出効率は51.5%であった。
【0115】
試験7:
所与の藻類バッチについての最適EMP抽出パラメータを確認するために、広範囲のパラメータのマトリックスでEMPを試験した。1バッチのナンノクロロプシス オキュラータを6インチのEMPユニットで処理して脂質を抽出した。バッチ流量は流量計とポンプを使用して調節した。試験のマトリックスを構成している個々の試料を小さな116mlの瓶に収集した。底部の細胞の塊および砕片と水を注射器で抜き取り、抽出試料瓶には最上部の脂質層だけを残した。
対照バッチの詳細:
乾燥質量濃度:210mg/L
脂質含有量:乾燥質量の24%(50mg/L)
pH:7.8
導電率:7.89mS/cm
抽出結果:
抽出試料の容積:116ml
処理前の藻類試料116mlに元々存在した脂質の量:5.8mg
抽出試料はフォルチ法によって解析した。試験条件のマトリックスを構成する関連パラメータおよび抽出効率を表1に示した。
【0116】
【表1】
【0117】
推論:この藻類のバッチの脂質を抽出するための最適条件は0.25ガロン/分および15アンペアと思われる。効率は、試験したマトリックスにおけるこの一組の条件のまわりで徐々に低下する。0.25ガロン/分におけるより高い電流では、恐らくエネルギー入力が藻類の損傷には高すぎ、その破壊を引き起こす。0.25ガロン/分におけるより低い電流、および低い流量では、エネルギー入力が低すぎるので藻類から脂質を完全に抽出することができない。
【0118】
試験8
本明細書に記載されるEMPユニットから抽出された脂質を定量するために、以下の実験を行った。1バッチのナンノクロロプシス オキュラータを6インチのEMPユニットで処理して脂質を抽出した。バッチ流量は流量計とポンプを使用して調節した。試料は116mlの瓶または400mlの瓶のいずれかに収集した。底部の細胞の塊および砕片と水を注射器で抜き取り、抽出試料瓶には最上部の脂質層だけを残した。
対照バッチの詳細:
乾燥質量濃度:320mg/L
脂質含有量:乾燥質量の18%(57.6mg/L)
pH:7.3
導電率:7.93mS/cm
抽出プロセスの詳細:
流量:0.95L/分
電圧:5.3V
電流:20アンペア
結果:
抽出試料1:
容積:412ml
抽出効率:83.31%
抽出試料2:
容積:116ml
抽出効率:80.69%
抽出試料3:
容積:116ml
抽出効率:95.64%
【0119】
試験9:
所与の藻類バッチについての最適EMP抽出パラメータを確認するために、本明細書に記載されるEMP装置を異なる4組の条件で試験した。成長室からの20リットルのナンノクロロプシス オキュラータのバッチを6インチのEMPユニットで処理した。バッチ流量は流量計とポンプを使用して調節した。
対照試料の詳細(試料#1130−0):
乾燥質量濃度:320mg/L
脂質含有量:乾燥質量の11%(35mg/L)
pH:7.5
導電率:8.15mS/cm
【0120】
藻類バッチを、以下にリストする様々な流量およびエネルギー入力条件下で処理した:
試料1130−3:流量=0.25ガロン/分、電圧=3.7V、電流=15アンペア
試料1130−4:流量=0.25ガロン/分、電圧=4.0V、電流=20アンペア
試料1130−8、9:流量=0.38ガロン/分、電圧=4.0V、電流=20アンペア
試料1130−12:流量=0.38ガロン/分、電圧=3.7V、電流=15アンペア
【0121】
試料は400mlの瓶に収集した。底部の細胞の塊および砕片と水を注射器で抜き取り、抽出試料瓶には最上部の脂質層だけを残した。試料は、フォルチ法を使用してCSULB−IIRMESによって解析した。
【0122】
結果:この藻類のバッチの脂質を抽出するための最適条件は0.38ガロン/分、3.7V、15アンペアと思われる。
【0123】
【表2】
【0124】
試験10:
新しいパイプEMP装置をMXキャビテーションおよび加熱と共に試験して以前の試験と比較した。1バッチのナンノクロロプシス オキュラータをパイプSSEシステムで処理した。パイプSSEシステムの構成部品は、パイプEMPユニット、パイプEMPユニットのまわりの加熱ストリップシステム、およびMXキャビテーションユニットである。MXキャビテーションユニットはパイプEMPユニットより前に設けられている。任意にMXキャビテーションユニットおよびEMPユニットのまわりの加熱システムを使用することができる。キャビテーションは1分間行った。バッチ流量は流量計とポンプを使用して調節した。試料は120mlの瓶に収集した。底部の細胞の塊および砕片と水を注射器で抜き取り、抽出試料瓶には最上部の脂質層だけを残した。
対照バッチの詳細:
乾燥質量濃度:280mg/L
脂質含有量:乾燥質量の21%
pH:7.7
導電率:7.42mS/cm
抽出結果および観察:
抽出試料の容積:120ml
【0125】
【表3】
【0126】
以下の表(表4)は、MXキャビテーションのみを含む、加熱のみを含む、あるいはどちらも含まないパイプEMP試験の抽出結果および観察を示す。これは上記の表の同様の試験条件と比べて用いることができる。
【0127】
【表4】
【0128】
加熱により電気分解が促進された結果、細胞の塊および砕片の凝集が改良されたように思われる。加熱が強いと(0.25ガロン/分のときのように)、すべての凝集した細胞の塊および砕片が沈降して、最上部に透明な薄い脂質層が残った。この沈降は、恐らく加熱された水の密度が細胞の塊および砕片より著しく低いからであった。加熱が弱いと(0.50ガロン/分のときのように)、すべての凝集した細胞の塊および砕片が脂質に付着して最上部に残った。これは、恐らく水と細胞の塊および砕片の密度の差が、細胞の塊および砕片を直ちに沈降させるには十分に大きくないが、適用された熱は細胞の塊および砕片を凝集させるには十分であったからである。いずれにせよ、加熱すると、細胞の塊および砕片は最上部または底部で凝集するが、加熱しないと、加熱なしの6インチおよび12インチのEMPユニットで通常見られるように懸濁したままである、ということが分かった。
【0129】
別の大きな可能性は、加熱によって細胞の塊および砕片が凝集し底部に沈降するとき、細胞の塊および砕片に付着した抽出された脂質の一部を、細胞の塊および砕片と共に底部へ運ぶことができるということである。その結果、最上部透明層の脂質から分析される抽出効率は、より低くなる可能性がある。逆に、細胞の塊および砕片が最上部で凝集し浮いているときは、藻類細胞内部の脂質のすべてが抽出されなかったかもしれないとしても、抽出されていない脂質は、なお抽出された脂質と共に最上部に残ることがある。
【0130】
別の観察は、熱が加えられたとき、細胞の塊および砕片の沈降への電流の影響であった。第1の表では、0.25ガロン/分に対応する欄では、細胞の塊および砕片が沈降する速度は供給された電流の量に正比例した。加熱が弱いために細胞の塊および砕片がすべて浮いた0.50ガロン/分の流量でさえ、電流が20アンペアの試料に対応する細胞の塊および砕片は1日後に沈降した。しかし、電流がさらに弱い試料に対応する細胞の塊および砕片は1日後でも浮かび続けた。
【0131】
試験11:
所与のバッチの藻類について可能な最も高い効率で脂質を抽出するために、本明細書に記載されるEMP装置を複数の異なる組の条件で試験した。1バッチのナンノクロロプシス オキュラータを6インチのEMPユニットで処理して脂質を抽出した。バッチ流量は流量計とポンプを使用して調節した。試料は1リットルの瓶に収集した。底部の細胞の塊および砕片と水を注射器で抜き取り、抽出試料瓶には最上部の脂質層だけを残した。
対照バッチの詳細(試料#20100104−10):
乾燥質量濃度:285mg/L
脂質含有量:乾燥質量の6.67%(19mg/L)
pH:8.4
導電率:7.99mS/cm
抽出結果:
抽出試料の容積:1L
処理前の藻類試料1Lに元々存在した脂質の量:19mg
【0132】
試料は、フォルチ法を使用してCSULB−IIRMESによって解析した。種々の試験条件の関連パラメータおよび抽出効率を以下の表に示した。
【0133】
【表5】
【0134】
最も高い抽出効率98%および96%が、試験した藻類バッチについて、0.25ガロン/分;19アンペア;3.9V、および0.50ガロン/分;18アンペア;3.8Vで得られた。
【0135】
試験12および13:
暗所および寒冷中に一晩貯蔵した場合の脂質抽出効率への影響を検討した。同じ藻類バッチからの試料を試験12で試験し、翌日に試験13で試験した。試験12で試験した同じ藻類バッチを、翌日も試験した(同じ元の藻類培養物について同じ試験を行った;生体試料を成長タンクから抜き取った日に、すなわちリアルタイムに、1つの試験を行った。そして、2日目に、一晩放置した後試料の残りを試験した)。1バッチのナンノクロロプシス オキュラータをパイプSSEシステムで処理した。パイプSSEシステムの構成部品は、パイプEMPユニット、パイプEMPユニットのまわりの加熱ストリップシステム、およびMXキャビテーションユニットである。MXキャビテーションユニットはパイプEMPユニットより前に設けられている。任意にMXキャビテーションユニットおよびEMPユニットのまわりの加熱システムを使用することができる。キャビテーションは1分間行った。バッチ流量は流量計とポンプを使用して調節した。試料は120mlの瓶に収集した。底部の細胞の塊および砕片と水を注射器で抜き取り、抽出試料瓶には最上部の脂質層だけを残した。
【0136】
【表6】
【0137】
抽出結果;
抽出試料の容積:120ml
【0138】
【表7】
【0139】
抽出効率は、一般に、より早く行ったパイプSSE実験より低い。これは、恐らく上部の脂質層を回収する前に抽出試料を長く静置しすぎたからである。通常、最上部の脂質層にはいくらかの細胞の塊および砕片がみつかるが、あまりに長い間試料を静置しすぎた結果、そのすべてが沈降しており、それと共に脂質の一部も沈降した可能性がある。1日目および2日目に認められた抽出効率を比較すると、暗所および寒冷中に一晩貯蔵したことによる抽出の改良はないように思われる。
【0140】
[実施例3]
炭水化物およびタンパク質を採取するためのキャビテーションおよびEMPの使用
図14は、藻類から炭水化物およびタンパク質を採取するための試験手順の結果を示す。この試験手順は以下のように行われた。藻類スラリーは、最初は室温においてEMPユニット中で処理した。EMPで処理されたスラリーを、貯蔵タンクに収集した。次いで、これをMXユニットに通して気胞を作った。次いで、気胞が作られたスラリーを数分間静置した。多くの密な藻類細胞の塊および砕片が最上部に上昇して浮いた状態で残った。浮いている細胞の塊および砕片は分析のために最上部から収集された。
【0141】
逆SSEプロセスで収集された藻類試料は、Anresco Laboratories、San Franciscoによって解析された。試料は、藻類の脂質、タンパク質および炭水化物含有量を解析した。Anresco Laboratoriesによる分析により、所与の試料中のタンパク質、脂質または炭水化物の全質量(「x」mgとする)が得られた。
【0142】
処理された藻類バッチの乾燥質量濃度(「d1」mg/Lとする)を、逆SSEプロセスの前に測定した。貯蔵タンクで収集された藻類バッチの容積(「V」Lとする)も既知であった。貯蔵タンクからは、最後に浮いている細胞の塊および砕片が最上部から収集された。最上部から浮いている細胞の塊および砕片を収集した後に残った溶液の乾燥質量濃度(「d2」mg/Lとする)も測定した。これらから、貯蔵タンクの最上部から収集した藻類細胞の塊および砕片の質量(「M」mgとする)を以下のように計算した:
M=(d1−d2)×V
【0143】
次いで、例えばタンパク質の個々の組成を以下のように計算した:
タンパク質組成=x/Mmgのタンパク質/藻類乾燥質量mg。
【0144】
この実験のために、3つの小さな試料を試料ジャーから採取した(プロセスの最上部から回収した藻類は粘質で凝集し水に浮かぶことが認められた)。乾燥質量測定および処理された藻類スラリーの容積に基づいて、逆SSEプロセス中に最上部から収集されたバイオマスの量は600mgであった。Anresco Laboratoriesによって解析されたタンパク質の量だけで1400mgという量になる。タンパク質の量はバイオマスの量より高くないはずであるから、測定された量は、サンプリング方法のためにタンパク質量が増加した可能性がある。例えば、抜き取った3つの試料中には、藻類が均一に混合されていた場合よりも多い藻類があったかもしれない。それにもかかわらず、これらの結果は、本明細書に記載される装置および方法を使用して、藻類細胞からタンパク質ならびに脂肪を採取することができることを実証している(下記の表8を参照されたい)。
【0145】
【表8】
【0146】
他の実施形態
当業者なら、本発明が、上記の目的および利点、ならび本発明に特有のものを得るのに十分に適していることを容易に理解するであろう。好ましい実施形態を現在代表するものとして本明細書に記載した方法、システム、および装置は、例示的であり、本発明の範囲を限定するものとして意図するものではない。当業者ならその変更および他の使用を思いつくであろうが、これらは、本発明の趣旨に包含されるものであり、特許請求の範囲によって定義される。
【0147】
本発明の範囲および趣旨から逸脱せずに、本明細書に開示された本発明に多種多様な置換および修正を行うことができることは、当業者には容易に理解できるであろう。例えば、タンクの構成、利用する材料、ORP調節剤、および成長させる藻の種類を変更することができる。したがって、このような追加の実施形態は、本発明の範囲および以下の特許請求の範囲内である。
【0148】
本明細書に適切に例示的に記載される本発明は、本明細書に具体的に開示されていない任意の単一の要素または複数の要素、単一の限定または複数の限定がない状態で実施することができる。したがって、例えば、本明細書におけるそれぞれの場合に、「含む」、「から本質的になる」、および「からなる」という用語のどれも、他の2つの用語の一方と置換することができる。使用された用語および表現は、説明の用語として使用されており、限定の用語として使用しているものではない。そして、このような用語および表現を使用する際に、表示され記載される特徴の任意の均等物またはその一部分を除外するという意図はなく、本発明の特許請求の範囲内で様々な修正が可能性であることが認められる。したがって、本発明は例示的な実施形態および任意の特徴によって具体的に開示されているが、当業者は、本明細書に開示された概念の修正および変更を行うことができること、ならびに、このような修正および変更は、添付の特許請求の範囲によって定義された本発明の範囲内であると見なされることを理解するべきである。
【0149】
さらに、本発明の特徴または態様がマーカッシュ群または選択肢の他のグループ化によって記載されている場合、当業者は、これにより本発明がマーカッシュ群または他のグループの任意の個々のメンバーまたはメンバーのサブグループによっても記載されていることを認めるであろう。
【0150】
さらに、特に記載のない限り、様々な数値または数値範囲の終点が実施形態に提供されている場合は、追加の実施形態は、範囲の終点として任意の異なる2つの値をとることによって記載される。あるいは、追加の範囲の終点として、指定された範囲から2つの異なる範囲の終点をとることによって記載される。このような範囲もまた、記載される本発明の範囲内である。さらに、1より大きい値を含む数値範囲の指定には、その範囲内のそれぞれの整数値の具体的記載が含まれる。
【0151】
したがって、追加の実施形態は、本発明の範囲内であり、かつ、以下の特許請求の範囲内である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギーおよび微生物学の分野に関する。特に、本発明は、藻類細胞から細胞の塊および砕片ならびに細胞内生成物を採取するためのシステム、装置および方法に関する。これらは、多種類の製品を製造する際に化石油誘導体の代替品として使用することができる。
【背景技術】
【0002】
微生物の細胞内生成物は、医薬品、化粧品、工業製品、バイオ燃料、合成油、飼料および肥料などの工業製品に使用される化石油誘導体または他の化学物質の部分的または完全な代替品として将来性がある。しかし、これらの代替品が実現可能になるには、化石油誘導体関連の精製コストと競合し得るように、このような細胞内生成物を獲得し処理する方法が効率的であり、かつコスト効率が良くなければならない。化石油代替品として使用するための細胞内生成物を採取するために使用されている現行の抽出法は面倒なものであり正味のエネルギー利得が低く、これらの方法は今日の代替エネルギー需要に有効ではない。このような方法は、著しいカーボンフットプリントを生成して地球温暖化および他の環境問題を悪化させる恐れがある。これらの方法をさらにスケールアップすると、有用な細胞内成分の分解によってさらにより大きな効率損失が生じ、微生物の収穫から現在経済的に実現可能なものより大きなエネルギーまたは化学物質の投入を必要とする。例えば、微生物バイオ燃料の1ガロン当たりのコストは、化石燃料のコストと比べて現在ほぼ9倍である。
【0003】
微生物からの細胞内微粒子物質または生成物の回収は、細胞膜の破壊または溶解を必要とする。原核生物および真核生物のすべての生細胞は、その内部の内容物を囲み、外部環境に対する半多孔性隔膜としての役割を果たす原形質膜を有する。この膜は、境界としての役割を果たして細胞成分を一緒に保持し、異物の侵入を防ぐ。流動モザイクモデルとして知られている、一般に認められている現行理論(S.J.SingerおよびG.Nicolson、1972年)によれば、原形質膜は脂質の二重層(二層)から構成されており、油状または蝋状の物質がすべての細胞から見出されている。二重層中の大部分の脂質は、より正確にはリン脂質、すなわち、それぞれの分子の一端にリン酸基を持っていることを特徴としている脂質と記述することができる。
【0004】
原形質膜のリン脂質二重層内には、多くの多様な有用タンパク質が埋め込まれているが、他の種類のミネラルタンパク質は二重層の表面に単に付着している。これらのタンパク質のうちのいくつか、主として膜の外側に少なくとも部分的に露出しているタンパク質には炭水化物が結合しているので糖タンパク質と呼ばれる。内部の原形質膜に沿ったタンパク質の位置決めは、それらを所定位置にしっかり固定するのに役立つ細胞骨格を構成する繊維の組織とある程度関係している。このタンパク質の配置は、細胞の疎水性および親水性領域にも関係している。
【0005】
細胞内生成物の抽出法は、関連する生物体の種類、それらの所望の内部成分、およびそれらの純度レベルに応じて大きく変わる可能性がある。しかし、細胞が破壊されると、これらの有用成分は放出され、典型的には生体微生物バイオマスを収容するために使用される液状媒体内に懸濁し、これらの有用物の採取を困難にするかエネルギー集約的にする。
【0006】
藻類から細胞内生成物を採取するほとんどの現行法では、液状媒体または廃バイオマス(細胞の塊および砕片)から有用成分を分離および採取するために、脱水プロセスを実行しなければならない。現行プロセスは、液体蒸発に必要な時間フレーム、または液状媒体を乾燥させるのに必要なエネルギー入力、または物質分離に必要な化学物質の投入のために非効率的である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、工業製品の製造に必要な化石油および化石油誘導体の競争的価格の代替品として使用することができる細胞内生成物を微生物から採取するための単純で効率的な方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に記載されるものは、水性懸濁液中の藻類細胞から少なくとも1つの細胞内生成物を採取し、かつ、藻類細胞を含む水溶液から細胞の塊および砕片を採取するシステム、方法および装置である。これらのシステムおよび方法は、電気回路を含む装置を利用する。この電気回路は、外側のアノード構造より小さい寸法を有する内側の構造(例えば、導電体)を密閉する外側のアノード構造(例えば、管)を含む。内側の構造はカソードとしての役割を果たす。螺旋状表面(銃のバレル内の「旋条」によく似ている、例えば、少なくとも1つのランド部によって分離された複数の溝)が、あるいは、両方の構造(例えば、外側の管と内側の導電体)に平行な電気絶縁アイソレータースペーサが、液封を提供し、アノード回路とカソード回路の間に間隔を形成する。これは、電気分布を均等にして、藻類細胞を含む水溶液の流路の短絡を防ぐために必要である。
【0009】
外側のアノード構造(例えば、管)は、典型的には1対の密閉封止用エンドキャップを含む。1つのエンドキャップは、流入する微生物バイオマス(本明細書では生体スラリーまたは微生物細胞を含む水性懸濁液と呼ばれる)を受け取るために使用される入口設備を有し、対向するエンドキャップからはバイオマスの通過する流れが出てゆく。内側のカソード構造(例えば、任意に外側の管と同じまたは異なる形状の管とすることもできる導電体)も、典型的にはこの構造(例えば、内管)の中心を通って流れる液体流れを不可能にし、この流れをアノード回路とカソード回路の壁面間に進路を変える封止エンドキャップを含む。
【0010】
螺旋状アイソレータースペーサは、導電体の2つの壁面間の液封としての役割を果たしており、スペーサの厚みが、好ましくは、2つのそれぞれの壁面の間に等しい距離の間隔を提供する。間隔は、それぞれの回路アセンブリのまわりの電流の360度の完全な移動を可能にするために、かつ、アノード表面とカソード表面の接触による短絡を防止するために不可欠であると見なされるべきである。さらに、螺旋状アイソレータにより、ここで2つの壁面の間に隙間が形成され、流れるバイオマスのための通路が可能になる。螺旋状アイソレータまたは旋条によって提供される螺旋状の方向性流れにより、流れるバイオマスに対してより大きな電気的露出のためのより長い通過時間がさらにもたらされ、これによって物質抽出効率が高くなり、かつ、大容積の流れのために回路寸法を拡大した場合、時間当たりワットの消費速度を低下させることができる。
【0011】
パルス周波数移動は、回路のマイナス側で行われるべきであり、したがってアノードを通ってマイナス移動でカソードに伝達される。この方法により、アノード表面とカソード表面の間の電気エネルギー移動のより高い効率が可能になる。
【0012】
細胞の磁気極性により、対象とする細胞が回路の中を通過すれば、磁気応答が発生する。電気オンパルス相中に発生する同時発生の電磁場にさらされたとき、磁気による細胞の整列は細胞それぞれの正および負極性による。細胞が整列した後、電磁場は細胞上で引張力を生み出し続け、一方、細胞は電圧を貯蔵する電気コンデンサーと同様の方法で電流を吸収する。これにより、細胞の細胞内成分は膨張し、細胞壁構造は、もはやその細胞内成分を閉じ込めることができない点まで弱くなる。最大膨張圧の点で、外側の細胞壁構造の全壊が起こり、すべての内部細胞成分が放出される。
【0013】
電気入力周波数の速度はバイオマス密度によって決定されるべきであり、より密なバイオマスが存在するときは、パルス周波数を高くする。バイオマス密度は、流れる液状媒体1リットル当たりに存在するバイオマスのグラムの割合に基づく式を使用することにより求める。
【0014】
この式を使用することは、一連のセンサーと共に機能するプログラム可能なマイクロプロセッサーが運転の責任を引き受けることを可能にする。バイオマス密度の式に基づいて、自動マトリックスは、流れのための規定されたパラメータ、電気入力の量、および効率的な物質抽出に必要な周波数の速度をシステムに指令する。この手法はさらに、より大規模な適用におけるより高いエネルギー効率を可能にする。
【0015】
したがって、本明細書に記載されるものは、水性懸濁液中の藻類細胞から少なくとも1つの細胞内成分を採取するための装置である。この装置は、カソードとして作用する少なくとも1つの第1の導電体およびアノードとして作用する第2の導電性ハウジングであって、第1の導電体の外面とハウジングの内面の間に空間が画定されて、水性懸濁液用の流路を提供するように、少なくとも1つの第1の導電体がハウジング内に配置されており、第1の導電体とハウジングの片面または両面の少なくとも一部が除去されて、第1の導電体とハウジングの上またはそのまわりへの蓄積を低減または防止する少なくとも1つのランド部によって分離された少なくとも2つの螺旋状溝を作っている、第1の導電体およびハウジングと、パルス電流を与えるために第1の導電体とハウジングに動作可能に接続された電力源であって、パルス電流が、第1の導電体とハウジングと水性懸濁液の間に適用されて、藻類細胞を破裂させ、破裂した藻類細胞の塊(細胞の塊および砕片)ならびに水性懸濁液中への藻類細胞からの細胞内成分の放出をもたらす電力源と、第1の導電体とハウジングに動作可能に接続された二次タンクであって、水性懸濁液が、流路から二次タンク中へ流れて、少なくとも1つの細胞内成分を水性懸濁液中の藻類細胞から分離することができるようになっている、二次タンクとを備える。この装置では、第1の導電体を金属管とすることができる。第1の導電体および第2のハウジングは、それぞれ金属管、例えば、円形の金属管、異なる形状の金属管などとすることができる。一実施形態では、金属ハウジングの内径と第1の導電体の外径はサイズが約0.050インチ異なる。この装置では、ハウジングを金属管とすることができ、少なくとも1つの導電体は、間を置いて配置された複数の導電体を含むことができ、これらの導電体は絶縁要素によって互いに分離されており、ハウジングと間を置いて配置された複数の導電体のそれぞれとの間に多数の流路が作られている。この実施形態では、複数の導電体のそれぞれを金属管とすることができる。
【0016】
さらに本明細書に記載されるものは、水性懸濁液中の藻類細胞から少なくとも1つの細胞内成分を採取する方法である。この方法は、以下の装置を準備するステップを含む。この装置は、カソードとして作用する少なくとも1つの第1の導電体およびアノードとして作用する第2の導電性ハウジングであって、第1の導電体の外面とハウジングの内面の間に空間が画定されるように、少なくとも1つの第1の導電体がハウジング内に配置されて、水性懸濁液用の流路を提供し、第1の導電体とハウジングの片面または両面の少なくとも一部が除去されて、第1の導電体とハウジングの上またはそのまわりへの藻類細胞の蓄積を低減させるまたは防止する少なくとも1つのランド部によって分離された少なくとも2つの螺旋状溝を作っている、第1の導電体およびハウジングと、パルス電流を与えるために第1の導電体とハウジングに動作可能に接続された電力源であって、パルス電流が、第1の導電体とハウジングと水性懸濁液の間に適用されて、藻類細胞を破裂させて、破裂した藻類細胞(細胞の塊および砕片)ならびに水性懸濁液中への藻類細胞からの細胞内成分の放出をもたらす電力源と、第1の導電体とハウジングに動作可能に接続された二次タンクであって、水性懸濁液が、流路から二次タンク中へ流れて、少なくとも1つの細胞内成分を水性懸濁液中の藻類細胞から分離することができるようになっている二次タンクと、導電性鉱物および藻類細胞を含む水性懸濁液であって、装置の流路に配置されている水性懸濁液とを備えている。この方法は、少なくとも1つの第1の導電体とハウジングと水性懸濁液に十分な量のパルス電流を適用して、細胞内容物の膨張と収縮を交互に引き起こすことにより、藻類細胞を破裂させて、破裂した藻類細胞の塊(細胞の塊および砕片)ならびに水性懸濁液中への藻類細胞からの細胞内成分の放出をもたらすステップと、破裂した藻類細胞の塊(細胞塊および砕片)ならびに放出された細胞内成分を含む水性懸濁液を二次タンクに流して、バイオマスおよび破片および水性懸濁液から細胞内成分を分離するステップと、少なくとも1つの細胞内成分を藻類細胞の塊および砕片および水性懸濁液から分離するステップとをさらに含む。
【0017】
さらに本明細書に記載されるものは、藻類細胞を含む水性懸濁液から細胞の塊および砕片を採取する方法である。この方法は、以下の装置を準備するステップを含む。この装置は、カソードとして作用する少なくとも1つの第1の導電体およびアノードとして作用する第2の導電性ハウジングであって、第1の導電体の外面とハウジングの内面の間に空間が画定されて、水性懸濁液用の流路を提供するように、少なくとも1つの第1の導電体がハウジング内に配置されており、第1の導電体とハウジングの片面または両面の少なくとも一部が除去されて、第1の導電体とハウジングの上またはそのまわりへの藻類細胞の蓄積を低減させるまたは防止する少なくとも1つのランド部によって分離された少なくとも2つの螺旋状溝を作っている、第1の導電体およびハウジングと、パルス電流を与えるために第1の導電体とハウジングに動作可能に接続された電力源であって、パルス電流が、第1の導電体とハウジングと水性懸濁液の間に適用されて、藻類細胞を破裂させて、破裂した藻類細胞の塊(細胞の塊および砕片)ならびに水性懸濁液中への藻類細胞からの細胞内成分の放出をもたらす、電力源と、第1の導電体とハウジングに動作可能に接続された二次タンクであって、水性懸濁液が、流路から二次タンク中へ流れて、少なくとも1つの細胞内成分を水性懸濁液中の藻類細胞から分離することができるようになっている、二次タンクと、マイクロバブルを生成するために二次タンク内に配置された要素と、装置の流路に配置されている、導電性鉱物および藻類細胞を含む水性懸濁液と、二次タンクに配置され水性懸濁液を循環させるポンプとを備えている。この方法は、少なくとも1つの第1の導電体とハウジングと水性懸濁液に十分な量のパルス電流を適用して、藻類細胞を破裂させ、水性懸濁液中への破裂した藻類細胞からの細胞内成分の放出ならびに破裂した藻類細胞の塊(細胞の塊および砕片)をもたらすステップと、放出された細胞内成分ならびに細胞の塊および砕片を含む水性懸濁液を二次タンクに流して、放出された細胞内成分および水性懸濁液から細胞の塊および砕片を分離するステップと、ポンプおよび要素を作動させてマイクロバブルを生成し、放出された細胞内成分に付着して水性懸濁液中を浮上する複数のマイクロバブルならびに細胞の塊および砕片の水性懸濁液中の沈降をもたらすステップと、細胞の塊および砕片を、放出された細胞内成分および水性懸濁液から分離するステップと、をさらに含む。マイクロバブルを生成するために二次タンクに配置された要素は、任意の好適なデバイスまたは装置、例えば、ミキサーとすることができる。
【0018】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての専門用語は、本発明が属する当業者によって一般に理解されているものと同じ意味を有する。
【0019】
本明細書で使用される場合、「細胞内生成物」および「藻類細胞からの細胞内生成物」という語句は、藻類細胞内で見出された任意の分子、化合物または物質を指す。藻類細胞からの細胞内生成物の例としては、脂質、タンパク質、炭水化物(例えば、グルコース)、カロテノイド、核酸、水素ガスなどが挙げられる。
【0020】
「バイオマス」という用語は、トリグリセリド、タンパク質または炭水化物などの細胞内成分を採取する目的で液状媒体中で成長させた単細胞生物および単一細胞生物を意味する。
【0021】
本明細書で使用する場合、「細胞の塊および砕片」という語句は、細胞の破裂から生じる生成物を意味する。
【0022】
本明細書で使用する場合、「生体スラリー」という用語は、塩水、廃水または淡水などのマトリックス内で成長状態にある、先に定義したバイオマスに関する。「バイオマス」および「生体スラリー」は本明細書において交換可能に使用される。
【0023】
本明細書に記載されるものと同様または同等の方法、システムおよび装置を、本発明の実施または試験に使用することができるが、好適な方法、システムおよび装置を以下に述べる。本明細書に記述された出版物、特許出願、および特許はすべて参照によりその全体が組み込まれる。矛盾があった場合は、定義を含む本明細書が規制する。以下に説明する特定の実施形態は例示のみであり、限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本明細書に記載される、水性懸濁液中の藻類細胞から少なくとも1つの細胞内生成物を採取する(「1段階抽出」と呼ばれる)方法(図1A)、ならびに、本明細書に記載される、藻類細胞を含む水溶液から細胞の塊および砕片を採取する(本明細書で「1段階抽出および量子破壊」と呼ばれる)方法(図1B)を示す1対のフローダイヤグラムを概略的に示す図である。
【図2】本明細書に記載される装置の一実施形態の、アノード壁面およびカソード壁面の間を流れるバイオマスならびに電気移動回路の断面斜視図を示す。
【図3】本明細書に記載される装置の一実施形態の、アノード管およびカソード管上にある内側および外側エンドキャップの斜視図を示す。
【図4】本明細書に記載される装置の一実施形態の、アノード管とカソード管の間にある螺旋状スペーサの斜視断面図を示す。
【図5】本明細書に記載される装置の一実施形態の、上部および下部マニホールドによって平行に接続された一連のアノード回路およびカソード回路の斜視図である。
【図6】微生物バイオマスを含有した流れる液状媒体が電気移動によって引き起こされた電磁場にさらされている、本明細書に記載されるEMP装置を示す。
【図7】加えられた熱が液状媒体に吸収されてこれに移動する状態で、バイオマスが方向性をもって流れている、本明細書に記載されるEMP装置を示す。
【図8】電磁場と電荷への暴露中に膨張した細胞の第2の例示と関連して、通常サイズの微生物細胞の概要を示す。
【図9】バイオマスを含む二次タンクおよびマイクロミキサーによって生成された発泡体層が発達する順序に関連して、マイクロミキサーの側面図を示す。
【図10】液状媒体と、液状媒体の表面から発泡体採取タンクへすくい取ることができる得られた発泡体層とを含む二次タンクを示す図である。
【図11】藻類バイオマスから有用物を採取するための、1段階抽出を伴う本明細書に記載される方法および装置(システム)の一実施形態を示す図である。
【図12】藻類バイオマスから有用物を採取するための、1段階抽出を伴う本明細書に記載される方法および装置(システム)の別の実施形態を示す図である。
【図13】改造型スタティックミキサーの一例を示す図である。
【図14−1】抽出された脂質を定量し、最適抽出パラメータを明らかにするための実験からのデータの表である。
【図14−2】抽出された脂質を定量し、最適抽出パラメータを明らかにするための実験からのデータの表である。
【図14−3】抽出された脂質を定量し、最適抽出パラメータを明らかにするための実験からのデータの表である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書に記載されるものは、水性懸濁液中の藻類細胞から少なくとも1つの細胞内生成物を採取し、かつ、藻類細胞を含む水溶液から細胞の塊および砕片を採取するシステム、方法および装置である。これらのシステム、方法および装置は、藻類細胞の存続に必要な栄養物質の取り込みにより磁気応答性および導電性を示す藻類細胞の能力に基づいて、藻類細胞にパルス電流(EMP)をかけるステップを含む。これらの栄養物質の大部分は導電性鉱物を含んでおり、消化されると細胞の膜内に保持される。ほとんどの水生微生物細胞は、核、葉緑体、タンパク質、および脂質などの内膜成分を収容する膜からなり、ほとんどの内部領域は内部液体塊に取り囲まれている。細胞組成物のために、電流に暴露されると、細胞内成分は電気的吸着により寸法が膨張する。しかし、電気的にオフになった相では、細胞内成分の寸法は直ちに収縮して元に戻る。電流が高速周波数でパルス化されると、細胞内成分およびこれを取り囲む液体は急速な膨張および収縮を受ける。膨張圧のために、高速オンオフ周波数は、膜に対して内部から何度も強く打つ圧力を生成し、最後には破壊をもたらす。破壊されると、進行中の電気的周波数は、取り囲む液体によるオンオフ圧力の増大を継続する。このことは、内部細胞成分の膜境界外への押出しまたは放出を支援する。下記の好ましい実施形態は、これらのシステム、装置および方法の様々な形を示す。それにもかかわらず、これらの実施形態の説明から、本発明の他の態様を、以下に提供される説明に基づいて組み立てることおよび/または実施することができる。
【0026】
藻類細胞から少なくとも1つの細胞内生成物を採取する典型的な方法(本明細書では「1段階抽出」と呼ばれる、図1Aを参照されたい)は、水性懸濁液中の藻類細胞を本明細書に記載される装置でEMPにさらし、藻類細胞を破裂させ、得られた細胞の塊および砕片から細胞内脂質(または他の細胞内生成物)を分離させるステップを含む。典型的なベンチスケールEMPの適用では、1〜24ボルトまたは25w〜500ワット当たり1〜60ピークアンペアの電流をかける。例えば、500mg/Lの密度を有する培養物を用いた毎分1ガロン(GPM)の処理能力では、抽出を成功させるにはおよそ70ワットのエネルギー(20ピークアンペアで3.5v)が使用されるであろう。5GPMでは、同じ培養物は、およそ350ワット(100ピークアンペアで3.5v)を必要とするであろう。この方法では、水性懸濁液中の藻類細胞を、任意に熱にさらすことができる。熱は、細胞破裂を増大させて採取効率を約20〜50%向上させることができる。熱は、EMPの前(上流)に加えることもできるし、あるいは、装置内の細胞に加えることもできる(例えば、EMPに付随して)。藻類細胞を含む水溶液から細胞の塊および砕片を採取する方法(本明細書では「1段階抽出プラス量子破壊」と呼ばれる、図1Bを参照されたい)は、本明細書に記載される装置において藻類細胞をEMPおよびキャビテーション(すなわち、マイクロバブル)にさらして、1つまたは複数の細胞内生成物(例えば、脂質)と細胞の塊および砕片の両方を含む混合物を得るステップを含む。細胞は、EMPを加える前に(EMPの上流で)キャビテーションにさらすこともできるし、あるいは、EMPに付随してキャビテーションにさらすこともできる(EMP導電体であるかのように電気が通されたキャビテーション装置を示す図13を参照されたい)。一実施形態では、キャビテーション装置は、アノード、カソードおよびベンチュリミキサーを含む(一つですべてを兼ねる)。この実施形態では、キャビテーションユニットは、縮小(例えば、半分に)され、非導電性ガスケットが加えられ、電気が通される。標準圧力条件下、例えば100psiでは、EMPの上流でキャビテーションをかけたとき、何らの効果も認められなかった。しかし、100psiを超える(例えば、110、115、120、130、140、150、200、300、400psiなど)の圧力では、キャビテーションは効果がある可能性がある。藻類細胞を含む水溶液から細胞の塊および砕片を採取する方法では、水性懸濁液中の藻類細胞に任意に熱を加えて、装置内において細胞の塊および砕片の沈降と細胞内生成物(例えば、脂質)の上昇とを達成することによって、細胞の塊および砕片からの細胞内生成物の分離を容易にする。熱は、EMPの前(上流)で(細胞を含む)培養物に加えることもできるし、あるいは、装置内の培養物に加えることもできる(例えば、図13示すようにEMPに付随して)。典型的な方法、例えば5GPM、密度500mg/Lでは、およそ60ワット(4ボルトで15ピークアンペア)の電流をかける。一般に、およそ0.1〜およそ5GPMのGPMおよび約20〜約1000ワット(例えば、2〜50ピークアンペアで2〜18ボルト)の範囲のワットが使用される。例えば、500mg/Lの密度を有する培養物を用いて1GPMの処理能力では、抽出を成功させるにはおよそ70ワットのエネルギー(20ピークアンペアで3.5v)が使用されるであろう。5GPMでは、同じ培養物は、およそ350ワット(100ピークアンペアで3.5v)を必要とするであろう。
【0027】
水性懸濁液中の藻類細胞から少なくとも1つの細胞内生成物を採取するための、または藻類細胞を含む水溶液から細胞の塊および砕片を採取するための、本明細書に記載される装置は、わずかな距離だけ離れた大きな表面積の2つの金属平板間に形成された流路などの2つの金属面間の流路を含む。典型的な実施形態では、流路は、管の内側の金属面とこの管に配置されたより小さな金属導電体の外面との間に形成された環状部に形成される。内側または外側の管は、正方形、長方形、またはその他の形状とすることができるので、これらの管は円形周辺部を有する必要はない。また、管の形状は必ずしも同じである必要がなく、したがって内側と外側の管の管形状が異なることが可能である。最も好ましい実施形態では、内側の導電体および外側の管は同心の管であり、少なくとも1つの管、好ましくは外側の管は、ランド部によって分離された複数の螺旋状溝を備えており、この管に施条を付与している。この施条は、管表面上の残留物の形成を低下させることが分かった。商業生産では、複数の内管を外管で取り囲んで金属導線と培養物などの藻類含有媒体との面接触を増加させ、この培養物(塩水藻類にはブラインが適用されるであろうが、この装置は淡水藻類も同様に成功裡に処理することができる)を通してそこに含まれている藻類細胞に高い電気移動を与えることができる。さらに、プラスチックチューブ、バッフル、および他の装置などの電気絶縁体を使用して、大きなEMP装置を複数の区域に分離して本発明を商業的利用に効率的にスケールアップすることができる。水性懸濁液中の藻類細胞から少なくとも1つの細胞内生成物を採取するための、ならびに、藻類細胞を含む水溶液から細胞の塊および砕片を採取するための、システム、方法および装置は、任意の藻類細胞に適用することができる。下記に述べられた実験では、ナンノクロロプシス オキュラータ細胞が使用された。しかし、細胞内生成物は、任意の藻類細胞から得ることができる。その他の藻類細胞の例としては、セネデスムス、クラミドモナス、クロレラ、アオミドロ、ミドリムシ、プリムネシウム、チノリモ、シネココッカス種、シアノバクテリア、およびある種の紅藻類単細胞株が挙げられる。細胞は、成長させて、任意の好適な濃度、例えば、約100mg/L〜約5g/l(例えば、約500mg/L〜約1g/L)で、本明細書に記載される装置に適用することができる。約500mg/Lおよび約1mg/Lの細胞濃度が成功裡に使用された。いくつかの実施形態では、成長容器からの未濃縮藻類は250mg/L〜1.5g/Lであり、5g/L〜20g/Lまで他の従来の手段で事前濃縮することができる。
【0028】
図2を参照すると、水性懸濁液中の藻類細胞から少なくとも1つの細胞内生成物を採取するための、または、藻類細胞を含む水溶液から細胞の塊および砕片を採取するための、本明細書に記載される装置22を示す。生体微生物バイオマスを含む液体1を、アノード管2の内壁表面と内部カソード管3の外壁表面の間に流す。電線用導管を通って、負の接続4がアノード管2になされ、これにより管全体の電気接地移動が提供される。やはり導管接続によって送られた正の電気入力5は、カソード管3全体にわたって正の電気移動を提供する。
【0029】
正電流5をカソード3にかけると、電流は次いで電気移動6のために接地回路を探す。すなわち、この場合は、電気回路の完成を可能にするアノード2への移動である。この点に関して、正の表面領域と負の表面領域の間で電子の移動が起こるが、これは、導電性液体がこれらの間に存在する場合だけである。生体微生物バイオマス1を含む液状媒体が表面領域の間に流れると、カソード管3から液体1を通ってアノード管2までの電気移動が行われる。微生物バイオマスを含む液体がアノードおよびカソード回路を横切ると、細胞は、細胞の整列を引き起こす磁場と細胞の電流吸収を引き起こす電場の両方にさらされる。
【0030】
図3を参照すると、外側のアノード管2は、1対の密閉封止用エンドキャップ7および8を必要とする。封止用エンドキャップ7は、流入する微生物バイオマスを受けるために使用される入口点9を備える。バイオマスが通過した後、対向するエンドキャップ8は、外部へ流れるバイオマスへの出口点10を備える。
【0031】
さらに図3に示すように、内側のカソード管3もまた、管の中心を通る液体流れを不可能にし、この流れをアノードとカソードの壁面間に進路を変える封止エンドキャップ11および12を必要とする。
【0032】
図4を参照すると、電気絶縁螺旋状アイソレータースペーサ13は、2つの壁面14と15の間の液封としての役割を果たしており、スペーサの厚みが、好ましくは、アノード2とカソード3の間に等しい距離の間隔を提供する。間隔は、アノード2およびカソード3のまわりの電流の360度の完全な移動を可能にするために重要である。何故ならば、アノード2とカソード3の間の接触は短絡を形成し、液状媒体を通る電気移動を低下させることになるからである。さらに、螺旋状アイソレータ13により、ここで2つの壁面14と15の間に隙間16が形成され、流れるバイオマス1のための通路が可能になる。さらに、この螺旋状の方向性流れにより、通過持続時間がより長くなるので、流れるバイオマス1に対してより大きな電気的露出がもたらされ、細胞内物質の抽出中にキロワット時当たりの消費速度を下げても物質抽出効率が高くなる。任意の好適な材料をスペーサとして使用することができる。典型的には、セラミック、高分子、ビニール、PVCプラスチック、バイオプラスチック、ビニール、モノフィラメント、ビニルゴム、合成ゴム、または他の非導電性材料が使用される。
【0033】
図5を参照すると、一連のアノードおよびカソード回路17が並列して示されている。これらは、入口20を通して流れ込むバイオマス1を受け取る共通の上部マニホールドチャンバ18を有する。バイオマス1は、上部マニホールドチャンバ18に入ると、入口9を通して、個々のアノードおよびカソード回路17の中へ下向きの接続をする。入口9は、封止用エンドキャップ8への流れの接続を可能にする。流れるバイオマス1がアノードおよびカソード回路17に入るのはこの点である。個々の回路17を通って螺旋状に通過すると、流れるバイオマス1は、下部マニホールドチャンバ19の中へ出る。ここで、バイオマス1は、次いで出口点21を通って装置22(システム)から流れ出るように導かれる。
【0034】
水性懸濁液中の藻類細胞から少なくとも1つの細胞内生成物を採取する方法では、細胞は成長チャンバ中で成長させる。成長チャンバ(本明細書では「反応器」とも呼ばれる)は、藻類細胞の生命を維持するための必要条件をすべて提供する、任意の水体またはコンテナまたは容器とすることができる。成長チャンバの例としては、開放された池または囲まれた成長タンクが挙げられる。成長チャンバは、本明細書に記載される装置22に動作可能に接続されており、これにより、成長チャンバ内の藻類細胞を装置22に、例えば、重力または液体ポンプにより、移動させることができる。生体バイオマスは、アノードおよびカソード回路の入口部の中へ導管を通って流れる。成長チャンバ内の藻類細胞は、任意の好適なデバイスまたは装置、例えば、管、水路、または他の従来の水移動装置によって装置22に移動することができる。藻類細胞から少なくとも1つの細胞内生成物を採取するために、藻類細胞は、成長チャンバから上記の図2〜12に示されたような装置22に移動され、装置22内に収容される。装置22に加えられたとき、藻類細胞は一般に生体スラリー(本明細書では「バイオマス」とも呼ばれる)の形態をしている。この生体スラリーは、藻類細胞と、水と、淡水で海洋性藻類の成長速度を向上させるために窒素、ビタミンおよび必須微量鉱物を供給するGuillardの1975F/2藻類食物処方に基づいた藻の培養処方などの栄養物質と、を含む水性懸濁液である。藻類細胞が水性懸濁液で成長するように、任意の好適な濃度の藻類細胞および塩化ナトリウム、淡水、汽水または廃水を使用することができる。
【0035】
藻類細胞が装置22内で破裂した後、次いで、これに重力清澄化を含む1種または複数種の下流処理を施す(図1Aを参照されたい)。重力清澄化は一般に清澄化タンクで行われる。ここで、目的とする1つまたは複数の細胞内生成物(例えば、脂質)がタンクの最上部へ上昇し、細胞の塊および砕片はタンクの底部に沈降する。このような実施形態では、回路を通過すると、破壊された細胞の塊および砕片は重力清澄化タンクへ流れる。このタンクは、本明細書に記載されるように、藻類細胞から細胞の塊および砕片ならびに細胞内生成物を採取するための装置22に動作可能に接続されている。重力清澄化タンクでは、より軽くより密度の低い物質は液柱の最上部へ浮き、一方より重くより密度の高い物質は底部に沈んだまま残り、追加の物質採取に供される。
【0036】
次いで、目的とする1つまたは複数の細胞内生成物は、例えばスキミングにより、またはせきの上を通過させることにより、タンクの最上部から容易に採取され、細胞の塊および砕片は、廃棄、回収および/またはさらに処理することができる。次いで、スキミング装置を使用して液柱の表面に浮かぶより軽い物質を採取することができ、一方、より重い細胞の塊および砕片の残留物は清澄化タンクの底部から採取することができる。残存する液体(例えば、水)は、濾過して成長チャンバに戻すこともでき(再利用する)、あるいは、システムから除去することもできる(廃棄する)。細胞内生成物が油(すなわち、脂質)である一実施形態では、この油は、植物油、精製燃料(例えば、ガソリン、ディーゼル、ジェット燃料、加熱油)、特殊化学品、栄養補助食品、および医薬品、またはアルコールの添加によるバイオディーゼルを含む広い範囲の製品に加工され得る。目的とする細胞内生成物は、例えば、毎日(バッチ採収)を含む、任意の適切な時間に採取することができる。別の例では、細胞内生成物は、連続的に(例えば、ゆっくりした一定の採取で)採取される。細胞の塊および砕片はまた、バイオガス(例えば、メタン、合成ガス)、液体燃料(ジェット燃料、ディーゼル)、アルコール(例えば、エタノール、メタノール)、食物、飼料、および肥料を含む広い範囲の製品に加工することもできる。
【0037】
重力清澄化に加えて、任意の好適な下流処理を使用することができる。可能性のある下流処理は多数あり、細胞内内容物および/またはバイオ細胞の塊および砕片塊の所望の生産量/使用目的に応じて使用することができる。例えば、脂質は、メカニカルフィルタ、遠心分離機、または他の分離装置によって濾過した後、例えば、より多くの水を排出させるために加熱することができる。次いで、脂質を、さらにヘキサン蒸留にかけることができる。別の例では、細胞の塊および砕片を、食物、肥料用などにさらに乾燥させるために、嫌気性消化装置、蒸気乾燥器、またはベルトプレスにかけることができる。図1Aに示すように、下流処理には、例えば、研磨および重力濃縮なども含まれる。
【0038】
上記のように、藻類細胞を含む水溶液から細胞の塊および砕片を採取する方法(1段階抽出プラス量子破壊)は、本明細書に記載される装置において藻類細胞をEMPおよびキャビテーション(すなわち、マイクロバブル)にさらして、1つまたは複数の細胞内生成物(例えば、脂質)と細胞の塊および砕片の両方を含む混合物を得るステップを含む。水性懸濁液中の藻類細胞から少なくとも1つの細胞内生成物を採取する方法と同様、藻類細胞を含む水溶液から細胞の塊および砕片を採取する方法はEMPを伴う。EMPは、生体微生物バイオマスを含む液状媒体(スラリー、あるいは生体スラリーまたは水性懸濁液)を通るエネルギー移動に利用される電気移動によって生成される。この移動は、液状媒体に懸濁した導電性鉱物を含む栄養物質により達成することができる。典型的な鉱物配合の一例は、Guilliardの1957処方(鉄.82%、マンガン0.034%、コバルト0.002%、亜鉛0.0037%、銅0.0017%、モリブデン酸塩0.0009%、窒素9.33%、リン酸塩2.0%、ビタミンB1 0.07%、ビタミンB12 0.0002%、およびビオチン0.0002%)である。これらの栄養物質は、液状媒体中のバイオマス細胞の成長および再生などを持続させるためにも微生物バイオマスに必要であり、これによって消費される。消費された鉱物により、微生物バイオマスの導電性と磁気応答性が可能になる。
【0039】
この方法では、スタティックミキサーなどのマイクロ混合装置、あるいは高スループットスターラー、ブレード型ミキサーまたは他の混合装置などの他の好適な装置を使用して、先に溶解された微生物バイオマスを含む液状媒体内にマイクロバブルからなる発泡体層を生成する。しかし、マイクロバブルを生成するのに適切な任意の装置も使用することができる。微粉化に続いて、均質化された混合物は上昇し上方へ浮かび始める。この混合物が液柱を通って上方へ通り過ぎるにつれて、より低密度の有用な細胞内物質は、上昇するバブルに自由に付着するか、あるいは、バブル衝突により、より重い沈降する細胞の塊および砕片廃棄物(加熱水の特性により沈降が可能になった)に付着する。上昇するバブルはまた、ゆるく閉じ込められた有用な物質(例えば、脂質)を振り落とすが、これらはまた上昇するバブルカラムに自由に付着する。これらの有用物を含む発泡体層が液柱の最上部へ上昇したならば、これを容易に液状媒体の表面からすくい取り、後の生成物精製用の採取タンクへ堆積させることができる。発泡体層が二次タンクの最上部へ上昇すれば、発泡体層内に閉じ込められた水分は、一般に、もとの液体の質量の10%未満(例えば、5、6、7、8、9、10、10.5、11%)となる。発泡体内に閉じ込められたのはより低密度の有用物であり、この発泡体を浮かせることまたは液状媒体の表面からすくい取ることは容易である。このプロセスが必要とするのは、従来採取するために必要とされた全液体容積の蒸発ではなく、発泡体の脱水だけである。これは、脱水プロセス、エネルギーまたは任意の化学品投入量を激減させる一方、採取収率および効率ならびに純度を高める。この方法では、水は、成長チャンバに再利用することもでき、あるいは、システムから除去することもできる。細胞の塊および砕片は、例えば、毎日(バッチ採取)を含む、任意の適切な時間に採取することができる。別の例では、細胞の塊および砕片は、連続的に(例えば、ゆっくりした一定の採取で)採取される。
【0040】
本明細書に記載される、藻類細胞を含む水溶液から細胞の塊および砕片を採取する方法および装置(1段階抽出プラス量子破壊)では、液状媒体の比重を変えるために加熱プロセスをEMPプロセス中に適用することができる(水の比重は華氏40度で最適である)。液状媒体(典型的には主として水からなる)が加熱されるとともに、その水素密度の変化が起こる;この密度の変化は、通常は低密度の材料の沈降を可能にする。すなわち、この場合は、通常は浮かぶであろうより重い破壊された細胞の塊および砕片の材料が液柱の底部まで急速に沈降する。この変化はまた、他の生成物用途にも有用なこれらの材料のより容易な採取を可能にする。EMPおよび加熱プロセスが達成されたならば、次に破壊されたバイオマスを含む液状媒体を二次貯蔵タンクへ移動する。ここでは、液体ポンプが連続的ループ流れを可能にする。本明細書で使用される場合、「比重」とは、所定温度の水の密度に対する特定の材料の密度の比として定義される無次元の単位である。
【0041】
本明細書に記載される、藻類細胞を含む水溶液から細胞の塊および砕片を採取する方法および装置(1段階抽出プラス量子破壊)の一例では、生体微生物バイオマスを含む導電性液体媒体を2つの導電性金属片の間に流すとき、電気パルスを頻繁に繰り返してこれらの金属片の間に電磁場および電気エネルギー移動を作る。このパルス電気移動が起こると、電磁場が作られてバイオマス細胞の極性のために細胞が引き延ばされる。さらに、懸濁したバイオマスは電気入力を吸収し、これにより内部細胞成分およびその液体部分の寸法が膨張する。膨張により内圧が膜に対して加えられるが、この内部膨張は単に瞬間的であると見なされる。何故ならば、パルス電気入力のオフ周波数相中はこの膨張は取り除かれるからである。オンとオフの電気的周波数の高速繰り返しは、延びた細胞を弱め、最終的にその膜の破壊を援助する。さらに、連続的な周波数入力は、伸張した内部成分の膨張によって引き起こされた内圧を生じる。この膨張により、最終的には内部のリン脂質基質が漏洩して、細胞壁の浸透圧の差異によってその外側の破壊された境界から液状媒体中へ流出する。
【0042】
さらに、効率を上げるために、電気または周波数入力の量は、1リットルの液状媒体に含まれるバイオマスのグラムからなるマトリックス処方に基づいて調節することができる。
【0043】
液状媒体がEMP装置中を通過したならば、これを二次タンクの上へ(あるいはタンクの底部近くにある装置へ直接)流れ込ませる。この脱水方法では、二次タンクは、所望の細胞内成分の分離および脱水のために、マイクロバブル装置を含んでいるか、またはマイクロバブル装置を接続したタンクである。膜溶解の後、スタティックミキサーまたは他の好適な装置(例えば、マイクロバブルを生成する同様の効果を果たす任意のスタティックミキサーまたは装置)を使用して、これを二次タンク内の最下点に設置する。作動させると、スタティックミキサーは一連のマイクロバブルを生成し、液状媒体内に発泡体層が生じる。液状媒体をマイクロミキサーを通して連続的に送ると、バブルを含む発泡体層は液体の中を外に向かって拡散し、上昇して上方へ浮かび始める。液状媒体内に懸濁したより密度の低い所望の細胞内成分は、上方に向かって浮かんでいるマイクロバブルに付着しその表面に凝集する。あるいは、水柱内の上昇バブルの衝突により、より重い沈降するバイオマス廃棄物(特定の比重変化により沈むことができる)から離れる。
【0044】
図6を参照すると、単純化された概略図を使用して、藻類細胞を含む水溶液からバイオマスを採取する方法(1段階抽出プラス量子破壊)における、2つの導電性金属片間のEMP移動を示している。これらの金属片間には、生体微生物バイオマスを含む液状媒体が流れている。カソード3は、正の電気接続点5を必要とする。これは正の電流入力に使用される。正の移動は、カソード3の長さと幅全体を極性化し、接地源すなわちアノード2を探す。電気回路を完成するために、アノード2は接地接続点4を必要とする。この接地接続点4が、生体バイオマス1を含む液状媒体を通る電気移動6の発生を可能にする。バイオマス1は、主として導電性鉱物分からなる栄養源を含有し、生体バイオマス1の生命を持続しこれを再生するために使用される液状媒体を含む。さらに、栄養源を含有している液状媒体は、液状媒体/バイオマス1を通るカソード3からアノード2への正の電気入力の移動を可能にする。これは、液状媒体が存在するか流れている場合にのみ起こる。電気入力相をパルシングさせると、オンサイクル電気相中に発生する電磁場により細胞の伸び23が引き起こされる。前述のワットを使用して、任意の好適な数、持続時間、例えば1〜2kHzにおいてデューティサイクル60〜80%、のパルスを使用することができる。細胞の伸びは導電性鉱物による正および負の極性応答によるものであり、これらに導電性鉱物は、成長と再生のために細胞が必要とする栄養分吸収の一部として消費される。磁気パルス応答は、溶解の完了前に外側の細胞壁構造をさらに弱化させるプロセスを促進するのに有用である。パルス電磁場が活性化すると、微生物細胞23は、アノード2を向いた最も応答性に優れた正極側とカソード3を向いた負極応答側とに磁気的に整列する。オフサイクル電気相中には、細胞は緩むことができる。高周波速度の電気入力では、1片の薄い金属が前後に曲げられて2個に割れて壊れるのと同様に、細胞は繰り返し伸ばされ緩められる。この類似は、バイオマス細胞23がオンオフパルス相中に遭遇した経験と同様であり、このオンオフパルス相は、最終的には細胞壁構造の溶解または破壊プロセスを促進する。
【0045】
図7によれば、単純化された概略図を用いて、藻類細胞を含む水溶液から細胞の塊および砕片を採取する方法(1段階抽出)において、EMPプロセス中のカソード3および/またはアノード2の外壁間ならびに液状媒体/バイオマス中への熱移動の例を示す。適用される加熱装置24は、カソード3およびアノード2の外壁表面に付いている。この装置により、微生物バイオマス1を含む液状媒体中へ浸透する熱移動が可能になる。主として水からなる液状媒体の比重が加熱により変化すると、主として水素元素の変化によるその化合物構造の変化が可能になり、これが変化すると水の密度を低下させる。こうして密度が変化すると、水柱内に含まれている通常はより低い密度の材料、すなわち、本例では、多くの溶解した細胞の破片(細胞の塊および砕片)の沈降が可能になる。
【0046】
図8によれば、単純化された図を用いて、通常サイズのバイオマス細胞25と電荷にさらされた細胞23との違いを比較して示す。電気オン相においては、パルス化電気移動6は瞬間的に細胞内成分に浸透する。細胞内成分はエネルギー移動を吸着し、瞬間的な内部膨張が起こる。この膨張は、割り当てられた空間許容量を超えて内部成分が膨張したことにより、細胞壁構造26に対して圧力を発生させる。オフ回路相においては内部膨張は減少するが、オンオフ周波数の繰り返しにより、閉じ込められた内部の塊が膨張し、細胞壁構造に対して押しつけられるので、内部ポンプ作用が引き起こされる。細胞のパルス伸びの一因となる、電磁場と相まって繰り返される圧力は、最終的には外壁に外部構造の損傷を引き起こし、全体的な損傷は溶解または破壊の形をもたらす。破壊が起これば、細胞構造からの有用な内部物質の液状媒体中への漏洩が起こる。
【0047】
この実施形態では、図9は、液状媒体内に懸濁した、先に破壊されたバイオマス29を含む二次タンク28に関連する場合の、マイクロミキサー27のより低い取付位置を示す。次いで、より低い二次タンク出口30を通ってこの液状媒体を流す。二次タンク出口30で液体媒体は、液体ポンプ32と方向性流れの関係にある導管31を通って流れるように導かれる。ポンプ作用により、液体を、マイクロミキサー入口の開口33からマイクロミキサーを通って片道移動または再循環させる。液体がマイクロミキサー27を通って流れ続けると、マイクロバブル34が生成され、これは液柱35内で外側へ向けて拡散し発泡体層36を形成する。プロセスが継続するにつれて、この構成された層は液柱35の表面に向かって上昇し始める。発泡体層36が液柱35の表面へ向かう上向きの移動を開始したら、ポンプ32を停止して微粉化プロセスを完了する。これにより、マイクロミキサー27のより低い出口点で生成されたすべてのマイクロバブル34は表面に浮上することができ、マイクロバブルが浮上する際に、これはEMPプロセス中に液状媒体に放出された有用な細胞内物質を回収し始める。マイクロバブル34のこの上向きの運動は、より重い下方へ沈降する細胞の塊および砕片をこすりまたはそれらにぶつかり、より重い沈降する細胞の塊および砕片の残りと結合して閉じ込められたより軽い有用な物質の放出を可能にする。分離されると、これらの物質はマイクロバブル34に付着して表面へ向かって浮上する。
【0048】
図10によれば、単純な図を用いて、もとの液状媒体塊/バイオマス1のおよそ10パーセントを含む発泡体層36を採取する方法を示す。有用な細胞内内部物質を含む発泡体層36が液状媒体35の表面へ上昇すると、スキミング装置37を使用して液状媒体35の表面38から発泡体層36を取り出すことができる。二次タンク28の表面領域にあるスキミング装置37を用いて、二次タンク28の側壁を超えて採取容器39内へ発泡体層36を押し出すことができる。採取容器39で、発泡体層36はその後の物質採取処置のために蓄積される。
【0049】
図11は、藻類バイオマスから有用物を採取するための本明細書に記載される方法および装置(システム)の一実施形態を示す。微生物藻類は、密閉システム40で成長させられ、適切な成長周期の終わりに物質回収プロセスへ移動させられる。藻類バイオマスは、任意にマイクロバブルキャビテーションステップ41に流す。このステップは、他のバイオ物質回収プロセス前に外側の細胞壁構造を柔らかくするために使用される。
【0050】
キャビテーションステップ41の後、任意に加熱プロセス42を適用してバイオマスを含む液体原料水の比重を変えることができる。加熱オプション42は、採取プロセス中に放出された特定物質のより速い移動を可能にする。バイオマスが適切な温度領域に達した後、これを電磁パルス場、EMPステーション43に流す。ここを通過するバイオマス細胞は、電磁気移動にさらされて、外側の細胞壁構造が破壊される。
【0051】
EMPプロセス43を通って流れたのち、破壊されたバイオマスは重力清澄化タンク44へ移動する。ここで、より軽い物質(細胞内生成物)46が、より容易な採取を可能にする表面へ上昇するにつれて、より重い物質(破裂した細胞砕片/塊)45が水柱の中を沈降する。より重い沈降する塊45は清澄化タンク44の底部に集まる。ここで、この塊は、他の有用物のために容易に採取することができる。物質が分離および回収された後、水柱47の残りは、水回収プロセスに送られ、処理された後、成長密閉システム40へ戻される。
【0052】
図12は、藻類バイオマスから有用物を採取するための本明細書に記載される別の方法および装置(システム)の一実施形態を示す。微生物藻類は、密閉システム48で成長させられ、次いで適切な成長周期の終わりに物質回収プロセスへ移動させられる。物質回収は、藻類バイオマスを任意に加熱プロセス49へ移動させることからなる。ここで、バイオマス水柱は、EMPステーション50の前に加熱される。EMPプロセスの後、破壊されたバイオマスをキャビテーションステーション51へ移動させる。ここで、マイクロバブルは水柱密閉タンク52の低点に導入される。マイクロバブルが水柱の中を上昇するとき、有用な放出されたバイオ物質(細胞内生成物)53は、この上昇するバブルに付いている。これらのバブルは、水柱の表面へ浮かび、物質回収のためのより容易でより速いスキミングプロセスを可能にする。物質回収の後、水柱の残りは、水回収プロセス54に送られ、処理された後、成長システム48へ戻される。
【実施例】
【0053】
本発明は、以下の特定の実施例によってさらに例証される。これらの実施例は、例示のためだけに提供されるものであり、本発明の範囲を何ら限定するものと解釈されるべきでない。
【0054】
[実施例1]
細胞溶解方法および装置
燃料および他の材料の原料としての藻類に対する関心にかんがみて、大規模に藻類細胞を処理する方法および装置を開発することは、こうした目的で藻類細胞を処理するときに極めて有益である。こうした方法および装置を以下に述べる。
【0055】
懸濁液中の藻類細胞を処理する方法の一実施形態は、水性懸濁液中の藻類細胞をスタティックミキサーに通すステップを含む。スタティックミキサーはキャビテーション効果を引き起こし、懸濁液を電気分解し、懸濁液中の水から溶解した細胞を分離させる。
【0056】
特定の実施形態では、この方法はまた、懸濁液にpHまたはORP調整剤(例えば、二酸化炭素)を流入させるステップも含む。こうした実施形態では、典型的には二酸化炭素をスタティックミキサーに流入させる。その後の精製において、アルカリ性の材料が役に立つ(プロセスをより効率的にする)可能性があるので、こうした薬剤を使用することができる。
【0057】
ある実施形態では、この方法はまた、例えばミキサーで電気分解することによって生成した水素ガスを回収するステップも含む。
【0058】
ある有利な実施形態では、懸濁液は、藻類成長容器から一部を抜き取ったもの、例えば1日当たり1、2または3回の抜き取り、または1、2、3、4、5または7日に一回の抜き取りである。一般に、この部分的な抜き取りは、藻類成長容器からの培養物容積のおよそ10、20、30、40、50、60、70、80、または90パーセントからなるか、あるいは培養物容積の10〜30、30〜50、50〜70、または70〜90パーセントの範囲である。溶解したおよび/または凝集した藻類細胞が懸濁液中の水から分離されて回収水が得られる。この回収水は、殺菌されて藻類成長容器に戻される。
【0059】
別の実施形態では、懸濁液中の藻類細胞を処理するためのシステムは、藻類細胞が懸濁液中で成長する成長容器と、その中に少なくとも懸濁液の一部を通すことにより少なくとも前記細胞の一部を溶解させる、容器と流体で接続したスタティックミキサーと、懸濁液と接触している複数の電気分解電極であって、EMPが、これらの電極の中を通過し、かつ、これらの電極の間の懸濁液中を通過する電極と、を含む。
【0060】
ある実施形態では、スタティックミキサーは、流体を懸濁液に流入させることができる注入口を含む。スタティックミキサーはまた、例えば本明細書に記載される電力源に電気的に接続されたアノードおよびカソード電極も含む。
【0061】
ある実施形態では、このシステムはまた、バイオマスセパレータ、脂質抽出装置、および/または水素コレクタを含む。
【0062】
いくつかの実施形態は、改造型スタティックミキサーを含む。こうした改造型スタティックミキサーは、その中に液体を通す混合スロートを有する本体と、それによって流動性材料を前記液体に流入させることができる注入口と、互いに電気的に分離されたアノードおよびカソード電極であって、電圧が前記電極の両端に加えられたとき、電流が前記液体の中を通過するようになっている電極と、を含む。
【0063】
こうしたミキサーは多くの方法で構成することができるが、ある実施形態では、これらの電極の1つは本体内にあり、これらの電極の他方は本体の出口に設置されている。これらの電極の一方は実質的にはミキサーの本体からなり、これらの電極の他方は実質的には本体から絶縁された出口リングからなる。
【0064】
藻類の油または藻類のバイオマスの大量生産方法に藻類を利用することは、多くのハードルに直面している。効率的な成長を達成することに加えて、これらのハードルとしては、培養液から効率的に藻類バイオマスを分離すること、ならびに、細胞を溶解して細胞の塊および砕片から油または他の生成物の分離を可能にすることが挙げられる。これらの問題は、実験室規模のプロセスとは対照的に大規模運転で劇的に増大する。実際は、多くの実験室規模のプロセスは、物理的な制約および/またはコストの制約により大規模運転には適用することができない。
【0065】
例えば、これらのことを研究する際に、分類群:アーケプラスチダおよび特にその亜群のミクロ藻類の生物体の細胞溶解にEMPを工業規模で適用するためのいかなる示唆も見出されていない。実際は、従来の方法は、主としてスラッジ(すなわち、都市および産業廃棄物)の電気分解に焦点を当てている。スラッジは、pHがより低く、したがってより高いまたは正の酸化還元電位(ORP)またはMv読み取り値を有する。
【0066】
電気化学的には、pHが低下すると、水素イオン濃度が劇的に上昇し、負の水酸基すなわちOHイオンが減少する(J.M.Chesworth、T.Stuchbury、J.R.Scaife、Introduction to Agricultural Biochemistry、頁12.2.2)。逆に、pHが高くなればなるほど、ORPが低くなる。高いpHと負のMv読み取り値の間のこの相関関係は、細胞壁上に存在する電荷を、細胞の溶解を促進すると共に、エネルギー、医薬品および食物製品の製造に有益な細胞内の所望の要素を抽出するためのエネルギーとして変換することができるという結論を導いた。単細胞生物、この場合シアノバクテリアまたは藍藻類のX線結晶学や生物学の最近の進歩から、植物細胞膜は電池の2つの端部に似ており、膜の内側は正であり外側は負であり、太陽エネルギーが細胞内の水素からの電子を励起すると膜は帯電すると結論付けられた。これらの電子はタンパク質を介して細胞膜へ移動する。タンパク質はまるで電線のように電子を伝え、植物が生きるために必要とするエネルギーを放出する。クロレラブルガリス細胞内のテトラフェニルホスホニウムの蓄積に関するデータから、これらの細胞の膜電位は−120〜−150mVであると推定することができる。
【0067】
この負電位は、活動的な細胞コロニーのマトリックスのpHレベルの観察に反映されている。ここでは、この測定および対応するORP(Mv読み取り値)を、細胞コロニーの健康状態を判断するために行った。例えば、藻類成長容器中のpH読み取り値7は(+/−)ORP読み取り値+200Mvに対応している。細胞の優れた健康状態または対数成長が得られるとき、マトリックスのpHはpH9.0であることが認められ、対応するORP読み取り値は(+/−)−200Mvであった。したがって、藻類細胞コロニーの健康の尺度は負のMv読み取り値によって判断することができると推測することができる。このとき、pHの1の上昇はおよそ200Mvの減少に対応する。
【0068】
ほとんどの天然水は5.0〜8.5のpH値を有する。水界生態系において植物が光合成用にCO2を取り込むにつれて、pH値(およびアルカリ度)は上昇する。水生動物は逆の効果を生み、動物がO2を取り込んでCO2を放出するにつれて、pH(および酸性度)は低下する。定常状態では、藻類マトリックスの読み取り値はpH7.0であった。そして、高張性条件が酸化によって引き起こされるにつれて、pHは7.0未満からほぼ5.0に低下するが、これはORP読み取り値+200〜+400Mvに対応する。細胞壁が崩壊せず、(膨張することなく)単に弛緩した場合、その内容物は依然としてドナンの平衡の法則で表わされる細胞壁に包まれている。この細胞壁は、その逆方向に帯電した2つの細胞壁内のエネルギー電位を調整して、等浸透圧状態を取り戻すまで耐える。これはまた、ギブス−ドナン現象とも呼ばれる。これは半透膜が電解質を含む2つの溶液を分離するときに半透膜で起こる平衡状態であり、これらの一部のイオンは膜に浸透することができるが、他のものは浸透することができない。2つの溶液内のイオンの分布は複雑になり、この結果、膜の両側の間に電位が発現し、2つの溶液は異なる浸透圧を有する。この電荷は著しく平衡を保っており、これが、非常に悪い条件を細胞が耐え、適切な低張性条件が存在すると再活性化することができる理由である。
【0069】
生体藻類細胞は、電気化学的燃料電池と見なすことができる。ここで、膜の極性を、生体培養物の高いpHと低いORP(150Mv)から低いpHと高いORP(+200Mv)へ変化させると、正味の増加350Mvが得られ、マトリックス中への水素放出が付随して起こる。ただし、細胞の電位はなくなり、細胞壁は単にしぼんでいるのではない。こうした水素の製造は、本発明から得られる有益な生成物の1つである。
【0070】
多くの方法を組み合わせることによって、速くて工業的に拡張性のある藻類細胞の溶解および/または凝集方法を提供することができることが発見された。こうした方法は、藻類から有用な生成物を得る方法、例えば、脂質を抽出する方法、水素ガスを得る方法、および/または、とりわけ藻類細胞の塊および砕片を得る方法に適用することができる。
【0071】
こうしたプロセスを行う構成部品として、本方法ではスタティックミキサーを使用することができる。有利なスタティックミキサーとしては、Uematsuらの米国特許第6279611号、Mazzeiの米国特許第6730214号に記載されているものが挙げられるが、それだけに限らない。過渡的なキャビテーションの発生および/または液体へのガスの物質移動を支援するようなミキサーを使用することができる。
【0072】
マトリックスのpHを操作すなわち低下させてORPの急速な上昇を引き起こすことによって、その電気的な差異が電気分解プロセスでの細胞の溶解を支援する効果を有することが推測される。このとき、細胞壁内容物が放出されるときの副生物として過剰の水素が発生するという付随した利益がある。
【0073】
実験研究は、この組み合わせで迅速かつ経済的に細胞溶解が達成されたことを実証している。何故キャビテーション、超音波およびpH調節の組み合わせが細胞を溶解させるのかという理論は経験的なものであり、本発明者らは、これらの結果の任意の特定の説明に束縛されるつもりはない。
【0074】
本プロセスは、通常pH低下によって好都合にORPを調節するステップを含むことができる。様々な酸および塩基を使用して、このようなpH低下(または他のORP調節)を達成することができるが、CO2を使用して達成することもできる。酸化/還元反応は、2つの原子間の電子の交換を含む。このプロセス中に電子を失う原子は「酸化される」と言う。電子を獲得する原子は「還元される」と言う。この余分な電子をピックアップすると、原子は、より多くの電子を求めて原子を「ハングリー」にしている電気エネルギーを失う。塩素、臭素、およびオゾンのような化学物質はすべて酸化剤である。
【0075】
ORPは、通常は、金属が酸化剤および還元剤の存在下で水中に置かれるときに生じる電位または電圧の測定により測定される。これらの電圧は、水を汚染物質の無い状態に保持する、水中の酸化剤の能力を示すものである。したがって、ORPプローブは、実際はミリボルトメーターであり、銀線(実際には、回路のカソード)から構成された基準電極と、白金帯(アノード)から構成された測定電極とによって形成された回路の両端の電圧を測定する。流体がこれらの間にある状態で測定される。通常銀からなる基準電極は、別のごく小さな電圧を作る塩(電解質)溶液に取り囲まれている。しかし、基準電極によって作られる電圧は一定で安定している。したがって、これが基準を形成し、この基準に対して、白金測定電極および水中の酸化剤によって生じた電圧を比較することができる。2つの電極間の電圧の差が測定される。
【0076】
水溶液のpHを変えると、水中の帯電したイオンの濃度に対するpHの影響のために、ORP読み取り値が劇的に変る可能性がある。したがって、本明細書に記載した装置および方法では、pHしたがってORPは、1種または複数種のORPまたはpH調節剤と水を接触させることにより調節することができる。有利には、炭酸ガスを使用してpHを低下させることができる。pHを下げるとミリボルト読み取り値が上がることになる。
【0077】
CO2はマイクロまたはナノバブルの形で液状媒体に混入させることができる。例えば、上記のスタティックミキサーを使用して、マイクロまたはナノバブルとして混入させることができる。このような方法でCO2ガスを混入させると、pHが低下しORPが調節される。これにより、回収することができるさらなる水素ガスを生成することができる。
【0078】
さらに、マイクロまたはナノバブルとしてCO2(または他のガス)の混入が以下に示す細胞溶解の一因となりうる。キャビテーション効果および/または超音波を有利に用いて、細胞溶解および/または細胞の塊および砕片の凝集を高めることができる。超音波プローブを使用してこのような効果を生じさせることができるが、このような効果は、スタティックミキサーのキャビテーション効果と付随するマイクロバブルの混入を使用して発生させることもできる。したがって、ガスの混入を伴ってスタティックミキサー中に藻類含有媒体を通すことが細胞破裂の一因となり、細胞の塊および砕片の凝集を支援することができる。
【0079】
本システムに適用されると、EMPは細胞を溶解する効果がある。しかし、付加的なメリットは水素ガスの発生である。この水素ガスを回収して、例えば燃料として使用することができる。水素の量は、ORP調節によって高めることができる。
【0080】
いくつかの用途については、磁場を適用することが有益なこともある。例えば、このような場は、スタティックミキサー内に、またはこれに隣接して適用することができる。これを達成する1つの方法は、スタティックミキサーのまわりに強磁石を設置することである。ある場合には、交流磁場を使用することが有益なことがある。
【0081】
本プロセスは、多くの異なる生成物のうちの1つまたは複数の出力を高めるように構成することができる。例えば、生成物は、藻類の細胞の塊および砕片、脂質、選択されたタンパク質、カロテノイド、および/または水素ガスとすることができる。
【0082】
いくつかの用途では、本明細書に記載される方法および装置を使用して細胞の塊および砕片を生成することが望ましいであろう。このような細胞の塊および砕片は、1つまたは複数の他の生成物の生成を増加させまたは最適化しつつ、あるいは、他の生成物を得ることなくまたは他の生成物を得るために最適化することなく生成することができる。
【0083】
有利には、このプロセスは、相当な量の水素ガスを生成するように構成することができる。
【0084】
典型的な実施形態では、例えば、バイオ燃料に使用するために、および/または、油(主としてイコサペンタエン酸(20:5、n−3;EPA)およびドコサヘキサエン酸(22:6、n−3;DHA))を含む藻類のオメガ3脂肪酸を提供するために、藻類から脂質を得ることが望ましい。このような脂質を抽出するには、例えば上記のように細胞を溶解することが有利である。このような方法で脂質を放出すると、脂質含有材料とバルク水の間の異なる密度に基づいて第1の分離を行うことが可能になる。所望により、脂質は、さらに他の脂質抽出法を使用して抽出することができる。
【0085】
いくつかの実施形態では、本発明は、細胞の塊および砕片の分離、細胞の溶解、水素の生成、および/または脂質の分離を改善するものとして言及された複数のプロセスを利用する。例えば、電気分解をORP調節と組み合わせることができる。
【0086】
非常に有利には、全体的な藻類処理方法の一部として、選択されたサブプロセスを行うようにシステムを構築する。このようなシステムに有用な1つの構成部品には、装置にアノードとカソードを組み込んだ改造型スタティックミキサーを利用する。使用する際、この改造型スタティックミキサーではスラリーをEMPにさらす。それと同時に、藻類液体が装置内を流れているときに、これにベンチュリを通してCO2ガスまたは他のORP調節剤を注入する。この装置は、どちらかの端部に、電気分解プロセスによって生成されたガス(例えば、水素)を回収するためのガス回収装置を含むことができる。
【0087】
このような改造型スタティックミキサーは、図13に概略的に示されている。バイオマススラリー1は、取入れ管を介してミキサーチャンバに入る。チャンバの内部に入ると、スラリー1は、直流電源54によって電力が供給されるアノード2とカソード3の回路を通って流れる。これらのアノード電極2およびカソード電極3では、これらの間に導電性液体媒体を流すときのみ電気移動が可能になる。このスタティックミキサーの場合は、バイオマススラリー1を用いてアノード電極2とカソード電極3の間の電気移動を行う。電気移動中、バイオマススラリー1はさらにこの移動にさらされ、この移動の一部が微生物細胞によって吸収される。電気的な暴露が起こると、その細胞壁の構造は弱くなり始める。アノードとカソードの回路チャンバを通って流れた後、非導電性ガスケット55を使用して、ベンチュリチャンバ56へ電気移動しないように2つのチャンバを別々に分離する。今や構造的に弱くなった細胞は、ベンチュリによって引き起こされた細胞/マイクロバブルの衝突によってここで破壊することができる。物質分離プロセスの効率をさらに高めるために、ガス注入口57を使用して、物質破壊および回収のための化学的増強剤を導入することができる。細胞壁の破壊中、価値がある酸素や水素などの放出された細胞間のガスは、物質回収システムの一部として捕捉することができる。これらのガスは、スタティックミキサー出口ポート59に位置する出口58の端部で捕捉のために排出されるように導かれる。その他の排出は、破壊されたバイオマス29の残りであり、これも出口点58で回収されるように導かれる。
【0088】
したがって、上に示したように、このシステムは、成長容器または反応器、例えば、フォトバイオリアクターからの部分的な抜き取りを用いて有利に構成しこれを使用することができる。さらに有利には、このシステムは、記載される改造型スタティックミキサーを含み、これを使用して、マトリックスから(細胞の塊および砕片を)抽出しこれを凝集させること、生成した水素または過剰の酸素を捕捉すること、水から細胞の塊および砕片を分離すること、ならびに、この水を、好ましくは殺菌または濾過の後、反応器へ戻すことができる。
【0089】
本明細書において「カスケード生産」と称する方法では、毎日、一日おきまたは毎週などの予定された方式で成長タンクから所定割合の(培養)液の抜き取りを利用する。次いで、抜き取られた(培養)液を、電気分解混合装置、および/または処理タンク中のアノードおよびカソードプレートなどの従来の電気分解法を併用したミキサー内に流入させる。このような処理には、ORP操作を含めることができる。
【0090】
全体的な感覚で見ると、本明細書に記載される方法および装置は、藻類細胞に含まれている有用な副生物を抽出するという特定の目的を有する処理フローに沿った一連の流体操作を含む。先に簡単に記載したように、藻類は、屋外の成長池、開放タンク、覆われたタンク、またはフォトバイオリアクター(PBR)などの多様な構成のタンク、例えば、塩水タンクで成長させられるので、溶液または液の一部が予定された方式で抜き取られる。この抜き取りスケジュールは、それだけに限らないが、密度、pH、および/またはORPを毎日以下のように観察することによって判断する。例えば、屋外の池のpHは、CO2吸収および夜に発生する呼吸と呼ばれるプロセスにより、夜になると午前中よりも高くなることが認められている。この差は、pH3ポイントまたは600Mvにもなる。したがって、成長池のかなりの部分が夕方抜き取られることになる。何故ならば、このとき、pHは8.5〜10となるからである(これに比べて早朝の読み取り値は(6〜7)である)。反応器またはPBRでも同じ原理が当てはまるが、この場合は、成長の対数段階が認められ、pHが8.5〜9に達したとき、成長流体(マトリックス)の75%までが抜き取られる。これらすべての指標には、プラントプロセスのコンピュータコントローラに組み込まれた従来の測定器が使用されており、採取するべき時間が来た時にSSEプロセスとシグナルを制御する。採取するべき時間を判断するために、PH、ORP、Mv、塩分、細胞の寸法などの、成長容器のいくつかの指標を評価することができる。
【0091】
抜き取られなかった流体の残存部分は、回収された水のためのインキュベータとして保存され、これを使用して藻類成長の新しい対数成長期をスタートさせる。抜き取られた液は本明細書では「培養物」とも呼ばれる。
【0092】
微生物藻類は、密閉システムで成長させられ、適切な成長周期の終わりに物質回収プロセスへ移動される。藻類バイオマスは、任意にマイクロバブルキャビテーションステップに流す。このステップは、他のバイオ物質回収プロセス前に外側の細胞壁構造を柔らかくするために使用される。
【0093】
キャビテーションステップの後、任意に加熱プロセスを適用してバイオマスを含む液体原料水の比重を変えることができる。加熱オプションは、採取プロセス中に放出された特定物質のより速い移動を可能にする。バイオマスが適切な温度領域に達した後、これを電磁パルス場、EMPステーションに流す。ここを通過するバイオマス細胞は電磁気移動にさらされて、外側の細胞壁構造が破壊される。
【0094】
EMPプロセスを通って流れたのち、破壊されたバイオマスは重力清澄化タンクへ移動する。ここで、より軽い物質が、より容易な採取を可能にする表面へ上昇するにつれて、より重い物質(細胞の塊および破片)が水柱の中を沈降する。より重い沈降する物質(細胞の塊および破片)は清澄化タンクの底部に集まる。ここで、この塊は、他の有用物のために容易に採取することができる。物質が分離および回収された後、水柱の残りは、水回収プロセスに送られ、処理された後、成長システムへ戻される。
【0095】
この「分解」の期間に、スタティックミキサーには、1種または複数種のORP調節剤を注入することができる。これは、CO2などのpH調節剤であってもよく、これを含んでもよい。CO2が好ましいが、pH値およびMvで表わされるその対応するORPを変えるという基本機能を遂行する、代替のまたは追加のpHまたはORP調節剤を使用することもできる。任意の好適なスタティックミキサーも使用することができる。本明細書に記載される方法、システムおよび装置は、任意の特定タイプのミキサーまたは関連する電気分解方法に限定されない。このようなミキサーには、電圧調整器に接続されたカソードおよびアノードを組み込むことができる。この電圧調整器は、プローブ上のスケーリングを減らすために好ましくは極性を反転させる。アノードおよびカソードには、電池、発電機、変圧器またはこれらの組み合わせなどのDCエネルギー源によって電力が供給される。DC電圧は、クラッキングタンク中の藻類の塊に合わせて可変出力に設定することができる。
【0096】
流体がベンチュリミキサーを通って流入すると、これはCO2と混合され、上記のEMP場にさらされる。そして、連続混合により複数のマイクロバブルが生成され、空洞化したまたはスラリー状の、CO2と藻類塊の両方からなるマイクロバブルを作る。例えば、藻類細胞から生成物を思い通り分離すること、および/またはこの塊を水の表面へ凝集させることをベースとして、CO2混入、電気分解、および混合の組み合わせを、経験的に選択することができる。
【0097】
例えば、最近の試験では、CO2を適用してpH8.5から6.5までの低下およびこれに対応する−200Mvから+250Mvまでの上昇が得られ、流体はDC6ボルトの電源を使用して電気分解され、20分以内に(顕微鏡で検査して)完全な凝集および細胞溶解が得られた。しかし、この組み合わせおよびこれらのパラメータは単に例示的であり、これらを検討して最適値を決定することができる。例えば、pH値、ORP読み取り値、細胞密度および藻類の種類をベースとしてプロトコルを定めるために、所望の結果をさらに処理変数と関連づけることができる。SSE前に上流のPHを調節することは、SSEプロセスを支援する可能性がある。
【0098】
分解(溶解)のプロセスと並行して電気分解を利用すると、カソードで水素ガス(H+)が放出される。この水素は、電気分解ユニットのカソード端部またはスタティックミキサーの端部に置かれた水素回収バルブを通して安全に回収しタンクに貯留することができる。塩基化合物、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、または水酸化マグネシウムの使用によりpH値を変えると、過剰の遊離酸素がアノードプローブに生成する。この場合、pH値8.5で一定部分の藻類の塊を上のように抜き取り、この値をほぼpH11に、すなわちおよそ−250Mvから−700Mvに上昇させ、負の水酸基すなわち−OHの多いマトリックスを作る。次いで、細胞の分解でマトリックスが7.0に戻されると共に、遊離酸素の解離が起きる。この場合、この酸素のための安全な回収システムを組み込む。
【0099】
このシステムでは、条件に応じて細胞の塊および砕片が分解すると、これは水の表面に凝集するかまたは沈降する可能性がある。細胞の塊および砕片は、一般に、壊れた細胞壁、脂質、炭水化物および葉緑素(A)の複合体である。多くの場合、数時間以内に、表面のフロックはタンクの底部まで沈降する。脂質の一部は表面に残ることがあるが、脂質のかなりの部分(大部分の脂質である可能性がある)は、なお葉緑素および/または他の細胞成分と結合しており、細胞の塊および砕片の残りと共に沈降する。
【0100】
残りの水は、高いCO2濃度により、このときpHは約7.0である(pHを調節したときのみ、そうしないとpHは入ってくるスラリーのpHになるであろう)。この水(スラリーが処理されている)およびその分解したバイオマス(細胞の塊および砕片)を、濾過ユニット中を通した後に水殺菌タンクに流入させる、または流す。ここで、水から有機塊を分離するために多くのシステムを使用することができる。これらのシステムは、例えば、平らなセパレータ、フィルタ、ボルテックスセパレータ、または分離された塊を送達する機能を果たす他の任意の方法とすることができる。分離された細胞の塊および砕片は、細胞の塊および砕片の収集容器に抜き取られ、水はタンクを殺菌するために送られる。殺菌の後、回収された水は、タンクに補給するために使用することができる。
【0101】
一実施形態では、システムは、例えば、図13に示した改造型ベンチュリミキサーノズルを含む。先に示したたように、スラリー投入管は、アノードとカソードの極性を分離するために、大きなゴムガスケットまたは他の電気絶縁材料を用いて中央部または管の長さに沿った任意の部分が絶縁される。管の2つの端部には、ソースDC入力から電力を供給することができるか、あるいは、電気を伝える目的を有する管の内部にプローブを含むことができる。改造型ベンチュリでは、pHおよびORPを変える目的で、ベルヌーイの原理に従った管形状に設計された低圧力帯域の中へ入口管を通してCO2ガスまたは他の添加剤を導入する。ベンチュリ管の出口では、EMPプロセス中に生成された水素を取り込むための装置を設置することができる。ベンチュリ管の内部に障害物を加え、流体の流れに影響を与えて乱流を拡大し複数のマイクロバブルを作ることができる。
【0102】
[実施例2]
脂質抽出の定量化および最適EMP抽出パラメータの確認
下記に述べる実験では、本明細書に記載されるEMP装置を使用して脂質抽出の定量化および最適抽出パラメータの確認を記載する。以下に記載する結果は、図14のデータに対応する。
【0103】
試験1
本明細書に記載されるEMPユニットから抽出された脂質を定量するために、以下の実験を行った。1バッチのナンノクロロプシス オキュラータを6インチのEMPユニットで処理して脂質を抽出した。このバッチは、約1L/分の流量でEMPユニットに重力で供給した。合計20.8Lの藻類培養物を処理した。処理した流れを、脂質分析のために収集後に最上層からすくった。
対照バッチの詳細:
乾燥質量濃度:433mg/L
脂質含有量:乾燥質量の5.5%(23.86mg/L)
pH:7.1
導電率:8.82mS/cm
抽出プロセスの詳細:
抽出試料の容積:20.8L
流量:1L/分
電圧:4.3V
電流:22アンペア
【0104】
結果:抽出試料はフォルチ法によって解析した。抽出された脂質は、重さ0.4481gであった。処理前の藻類バッチ20.8Lに元々存在した脂質の量は0.4965gであった。これは、EMPユニットによる抽出効率90.2%に相当する。
【0105】
試験2:
本明細書に記載されるEMPユニットから抽出された脂質を定量するために、以下の実験を行った。1バッチのナンノクロロプシス オキュラータを6インチのEMPユニットで処理して脂質を抽出した。このバッチは、約1L/分の流量でEMPユニットに重力で供給した。合計9.2Lの藻類培養物を処理した。処理した流れは、表面に浮かぶ脂質層を収集する先細りの長首を有するように設計された脂質収集装置に収集された。
対照バッチの詳細:
乾燥質量濃度:207mg/L
脂質含有量:乾燥質量の13%(26.91mg/L)
pH:6.8
導電率:9.31mS/cm
抽出プロセスの詳細:
抽出試料の容積:9.2L
流量:1L/分
電圧:3.4V
電流:20アンペア
【0106】
結果:抽出試料はフォルチ法によって解析した。抽出された脂質は、重さ0.2184gであった。処理前の藻類バッチ9.2Lに元々存在した脂質の量は0.2477gであった。これは、EMPユニットによる抽出効率88.2%に相当する。
【0107】
試験3
本明細書に記載されるEMPユニットから抽出された脂質を定量するために、以下の実験を行った。1バッチのナンノクロロプシス オキュラータを6インチのEMPユニットで処理して脂質を抽出した。このバッチは、約1L/分の流量でEMPユニットに重力で供給した。合計11Lの藻類培養物を処理した。処理した流れを、脂質分析のために収集後に最上層からすくった。
対照バッチの詳細:
乾燥質量濃度:207mg/L
脂質含有量:乾燥質量の13%(26.91mg/L)
pH:6.8
導電率:9.31mS/cm
抽出プロセスの詳細:
抽出試料の容積:11L
流量:1L/分
電圧:3.4V
電流:20アンペア
【0108】
結果:試験した藻類バッチについて、6インチのEMPユニットによる抽出効率は95.25%であった。
【0109】
試験4
本明細書に記載されるEMPユニットから抽出された脂質を定量するために、以下の実験を行った。1バッチのナンノクロロプシス オキュラータを6インチのEMPユニットで処理して脂質を抽出した。バッチ流量は流量計とポンプを使用して調節した。2リットルの藻類培養物を処理した。処理した流れを2リットルの容量フラスコに収集し、最上部の脂質層を分析用に回収した。
対照バッチの詳細:
乾燥質量濃度:410mg/L
脂質含有量:乾燥質量の8.2%(33.62mg/L)
pH:7.1
導電率:8.99mS/cm
抽出プロセスの詳細:
抽出試料の容積:2.01L
流量:1.5L/分
電圧:12.4V
電流:18アンペア
【0110】
結果:試験した藻類バッチについて、6インチのEMPユニットによる抽出効率は90.7%であった。
【0111】
試験5
本明細書に記載されるEMPユニットから抽出された脂質を定量するために、以下の実験を行った。1バッチのナンノクロロプシス オキュラータを12インチのEMPユニットで処理して脂質を抽出した。バッチ流量は流量計とポンプを使用して調節した。1.87リットルの藻類培養物を処理した。処理した流れを2リットルの容量フラスコに収集し、最上部の脂質層を分析用に回収した。
対照バッチの詳細:
乾燥質量濃度:800mg/L
脂質含有量:乾燥質量の19.9%(159.2mg/L)
pH:7.6
導電率:8.15mS/cm
抽出プロセスの詳細:
抽出試料の容積:1.87L
流量:0.2ガロン/分(0.756L/分)
電圧:4.8V
電流:20.2アンペア
【0112】
結果:試験した藻類バッチについて、12インチのEMPユニットによる抽出効率は12.2%であった。
【0113】
試験6:
本明細書に記載されるEMPユニットから抽出された脂質を定量するために、以下の実験を行った。1バッチのナンノクロロプシス オキュラータを12インチのEMPユニットで処理して脂質を抽出した。バッチ流量は流量計とポンプを使用して調節した。1.87リットルの藻類培養物を処理した。処理した流れを2リットルの容量フラスコに収集し、最上部の脂質層を分析用に回収した。
対照バッチの詳細:
乾燥質量濃度:500mg/L
脂質含有量:乾燥質量の16.15%(80.75mg/L)
pH:7.5
導電率:8.18mS/cm
抽出プロセスの詳細:
抽出試料の容積:1.87L
流量:1.13L/分
電圧:4.7V
電流:20アンペア
【0114】
結果:試験した藻類バッチについて、12インチのEMPユニットによる抽出効率は51.5%であった。
【0115】
試験7:
所与の藻類バッチについての最適EMP抽出パラメータを確認するために、広範囲のパラメータのマトリックスでEMPを試験した。1バッチのナンノクロロプシス オキュラータを6インチのEMPユニットで処理して脂質を抽出した。バッチ流量は流量計とポンプを使用して調節した。試験のマトリックスを構成している個々の試料を小さな116mlの瓶に収集した。底部の細胞の塊および砕片と水を注射器で抜き取り、抽出試料瓶には最上部の脂質層だけを残した。
対照バッチの詳細:
乾燥質量濃度:210mg/L
脂質含有量:乾燥質量の24%(50mg/L)
pH:7.8
導電率:7.89mS/cm
抽出結果:
抽出試料の容積:116ml
処理前の藻類試料116mlに元々存在した脂質の量:5.8mg
抽出試料はフォルチ法によって解析した。試験条件のマトリックスを構成する関連パラメータおよび抽出効率を表1に示した。
【0116】
【表1】
【0117】
推論:この藻類のバッチの脂質を抽出するための最適条件は0.25ガロン/分および15アンペアと思われる。効率は、試験したマトリックスにおけるこの一組の条件のまわりで徐々に低下する。0.25ガロン/分におけるより高い電流では、恐らくエネルギー入力が藻類の損傷には高すぎ、その破壊を引き起こす。0.25ガロン/分におけるより低い電流、および低い流量では、エネルギー入力が低すぎるので藻類から脂質を完全に抽出することができない。
【0118】
試験8
本明細書に記載されるEMPユニットから抽出された脂質を定量するために、以下の実験を行った。1バッチのナンノクロロプシス オキュラータを6インチのEMPユニットで処理して脂質を抽出した。バッチ流量は流量計とポンプを使用して調節した。試料は116mlの瓶または400mlの瓶のいずれかに収集した。底部の細胞の塊および砕片と水を注射器で抜き取り、抽出試料瓶には最上部の脂質層だけを残した。
対照バッチの詳細:
乾燥質量濃度:320mg/L
脂質含有量:乾燥質量の18%(57.6mg/L)
pH:7.3
導電率:7.93mS/cm
抽出プロセスの詳細:
流量:0.95L/分
電圧:5.3V
電流:20アンペア
結果:
抽出試料1:
容積:412ml
抽出効率:83.31%
抽出試料2:
容積:116ml
抽出効率:80.69%
抽出試料3:
容積:116ml
抽出効率:95.64%
【0119】
試験9:
所与の藻類バッチについての最適EMP抽出パラメータを確認するために、本明細書に記載されるEMP装置を異なる4組の条件で試験した。成長室からの20リットルのナンノクロロプシス オキュラータのバッチを6インチのEMPユニットで処理した。バッチ流量は流量計とポンプを使用して調節した。
対照試料の詳細(試料#1130−0):
乾燥質量濃度:320mg/L
脂質含有量:乾燥質量の11%(35mg/L)
pH:7.5
導電率:8.15mS/cm
【0120】
藻類バッチを、以下にリストする様々な流量およびエネルギー入力条件下で処理した:
試料1130−3:流量=0.25ガロン/分、電圧=3.7V、電流=15アンペア
試料1130−4:流量=0.25ガロン/分、電圧=4.0V、電流=20アンペア
試料1130−8、9:流量=0.38ガロン/分、電圧=4.0V、電流=20アンペア
試料1130−12:流量=0.38ガロン/分、電圧=3.7V、電流=15アンペア
【0121】
試料は400mlの瓶に収集した。底部の細胞の塊および砕片と水を注射器で抜き取り、抽出試料瓶には最上部の脂質層だけを残した。試料は、フォルチ法を使用してCSULB−IIRMESによって解析した。
【0122】
結果:この藻類のバッチの脂質を抽出するための最適条件は0.38ガロン/分、3.7V、15アンペアと思われる。
【0123】
【表2】
【0124】
試験10:
新しいパイプEMP装置をMXキャビテーションおよび加熱と共に試験して以前の試験と比較した。1バッチのナンノクロロプシス オキュラータをパイプSSEシステムで処理した。パイプSSEシステムの構成部品は、パイプEMPユニット、パイプEMPユニットのまわりの加熱ストリップシステム、およびMXキャビテーションユニットである。MXキャビテーションユニットはパイプEMPユニットより前に設けられている。任意にMXキャビテーションユニットおよびEMPユニットのまわりの加熱システムを使用することができる。キャビテーションは1分間行った。バッチ流量は流量計とポンプを使用して調節した。試料は120mlの瓶に収集した。底部の細胞の塊および砕片と水を注射器で抜き取り、抽出試料瓶には最上部の脂質層だけを残した。
対照バッチの詳細:
乾燥質量濃度:280mg/L
脂質含有量:乾燥質量の21%
pH:7.7
導電率:7.42mS/cm
抽出結果および観察:
抽出試料の容積:120ml
【0125】
【表3】
【0126】
以下の表(表4)は、MXキャビテーションのみを含む、加熱のみを含む、あるいはどちらも含まないパイプEMP試験の抽出結果および観察を示す。これは上記の表の同様の試験条件と比べて用いることができる。
【0127】
【表4】
【0128】
加熱により電気分解が促進された結果、細胞の塊および砕片の凝集が改良されたように思われる。加熱が強いと(0.25ガロン/分のときのように)、すべての凝集した細胞の塊および砕片が沈降して、最上部に透明な薄い脂質層が残った。この沈降は、恐らく加熱された水の密度が細胞の塊および砕片より著しく低いからであった。加熱が弱いと(0.50ガロン/分のときのように)、すべての凝集した細胞の塊および砕片が脂質に付着して最上部に残った。これは、恐らく水と細胞の塊および砕片の密度の差が、細胞の塊および砕片を直ちに沈降させるには十分に大きくないが、適用された熱は細胞の塊および砕片を凝集させるには十分であったからである。いずれにせよ、加熱すると、細胞の塊および砕片は最上部または底部で凝集するが、加熱しないと、加熱なしの6インチおよび12インチのEMPユニットで通常見られるように懸濁したままである、ということが分かった。
【0129】
別の大きな可能性は、加熱によって細胞の塊および砕片が凝集し底部に沈降するとき、細胞の塊および砕片に付着した抽出された脂質の一部を、細胞の塊および砕片と共に底部へ運ぶことができるということである。その結果、最上部透明層の脂質から分析される抽出効率は、より低くなる可能性がある。逆に、細胞の塊および砕片が最上部で凝集し浮いているときは、藻類細胞内部の脂質のすべてが抽出されなかったかもしれないとしても、抽出されていない脂質は、なお抽出された脂質と共に最上部に残ることがある。
【0130】
別の観察は、熱が加えられたとき、細胞の塊および砕片の沈降への電流の影響であった。第1の表では、0.25ガロン/分に対応する欄では、細胞の塊および砕片が沈降する速度は供給された電流の量に正比例した。加熱が弱いために細胞の塊および砕片がすべて浮いた0.50ガロン/分の流量でさえ、電流が20アンペアの試料に対応する細胞の塊および砕片は1日後に沈降した。しかし、電流がさらに弱い試料に対応する細胞の塊および砕片は1日後でも浮かび続けた。
【0131】
試験11:
所与のバッチの藻類について可能な最も高い効率で脂質を抽出するために、本明細書に記載されるEMP装置を複数の異なる組の条件で試験した。1バッチのナンノクロロプシス オキュラータを6インチのEMPユニットで処理して脂質を抽出した。バッチ流量は流量計とポンプを使用して調節した。試料は1リットルの瓶に収集した。底部の細胞の塊および砕片と水を注射器で抜き取り、抽出試料瓶には最上部の脂質層だけを残した。
対照バッチの詳細(試料#20100104−10):
乾燥質量濃度:285mg/L
脂質含有量:乾燥質量の6.67%(19mg/L)
pH:8.4
導電率:7.99mS/cm
抽出結果:
抽出試料の容積:1L
処理前の藻類試料1Lに元々存在した脂質の量:19mg
【0132】
試料は、フォルチ法を使用してCSULB−IIRMESによって解析した。種々の試験条件の関連パラメータおよび抽出効率を以下の表に示した。
【0133】
【表5】
【0134】
最も高い抽出効率98%および96%が、試験した藻類バッチについて、0.25ガロン/分;19アンペア;3.9V、および0.50ガロン/分;18アンペア;3.8Vで得られた。
【0135】
試験12および13:
暗所および寒冷中に一晩貯蔵した場合の脂質抽出効率への影響を検討した。同じ藻類バッチからの試料を試験12で試験し、翌日に試験13で試験した。試験12で試験した同じ藻類バッチを、翌日も試験した(同じ元の藻類培養物について同じ試験を行った;生体試料を成長タンクから抜き取った日に、すなわちリアルタイムに、1つの試験を行った。そして、2日目に、一晩放置した後試料の残りを試験した)。1バッチのナンノクロロプシス オキュラータをパイプSSEシステムで処理した。パイプSSEシステムの構成部品は、パイプEMPユニット、パイプEMPユニットのまわりの加熱ストリップシステム、およびMXキャビテーションユニットである。MXキャビテーションユニットはパイプEMPユニットより前に設けられている。任意にMXキャビテーションユニットおよびEMPユニットのまわりの加熱システムを使用することができる。キャビテーションは1分間行った。バッチ流量は流量計とポンプを使用して調節した。試料は120mlの瓶に収集した。底部の細胞の塊および砕片と水を注射器で抜き取り、抽出試料瓶には最上部の脂質層だけを残した。
【0136】
【表6】
【0137】
抽出結果;
抽出試料の容積:120ml
【0138】
【表7】
【0139】
抽出効率は、一般に、より早く行ったパイプSSE実験より低い。これは、恐らく上部の脂質層を回収する前に抽出試料を長く静置しすぎたからである。通常、最上部の脂質層にはいくらかの細胞の塊および砕片がみつかるが、あまりに長い間試料を静置しすぎた結果、そのすべてが沈降しており、それと共に脂質の一部も沈降した可能性がある。1日目および2日目に認められた抽出効率を比較すると、暗所および寒冷中に一晩貯蔵したことによる抽出の改良はないように思われる。
【0140】
[実施例3]
炭水化物およびタンパク質を採取するためのキャビテーションおよびEMPの使用
図14は、藻類から炭水化物およびタンパク質を採取するための試験手順の結果を示す。この試験手順は以下のように行われた。藻類スラリーは、最初は室温においてEMPユニット中で処理した。EMPで処理されたスラリーを、貯蔵タンクに収集した。次いで、これをMXユニットに通して気胞を作った。次いで、気胞が作られたスラリーを数分間静置した。多くの密な藻類細胞の塊および砕片が最上部に上昇して浮いた状態で残った。浮いている細胞の塊および砕片は分析のために最上部から収集された。
【0141】
逆SSEプロセスで収集された藻類試料は、Anresco Laboratories、San Franciscoによって解析された。試料は、藻類の脂質、タンパク質および炭水化物含有量を解析した。Anresco Laboratoriesによる分析により、所与の試料中のタンパク質、脂質または炭水化物の全質量(「x」mgとする)が得られた。
【0142】
処理された藻類バッチの乾燥質量濃度(「d1」mg/Lとする)を、逆SSEプロセスの前に測定した。貯蔵タンクで収集された藻類バッチの容積(「V」Lとする)も既知であった。貯蔵タンクからは、最後に浮いている細胞の塊および砕片が最上部から収集された。最上部から浮いている細胞の塊および砕片を収集した後に残った溶液の乾燥質量濃度(「d2」mg/Lとする)も測定した。これらから、貯蔵タンクの最上部から収集した藻類細胞の塊および砕片の質量(「M」mgとする)を以下のように計算した:
M=(d1−d2)×V
【0143】
次いで、例えばタンパク質の個々の組成を以下のように計算した:
タンパク質組成=x/Mmgのタンパク質/藻類乾燥質量mg。
【0144】
この実験のために、3つの小さな試料を試料ジャーから採取した(プロセスの最上部から回収した藻類は粘質で凝集し水に浮かぶことが認められた)。乾燥質量測定および処理された藻類スラリーの容積に基づいて、逆SSEプロセス中に最上部から収集されたバイオマスの量は600mgであった。Anresco Laboratoriesによって解析されたタンパク質の量だけで1400mgという量になる。タンパク質の量はバイオマスの量より高くないはずであるから、測定された量は、サンプリング方法のためにタンパク質量が増加した可能性がある。例えば、抜き取った3つの試料中には、藻類が均一に混合されていた場合よりも多い藻類があったかもしれない。それにもかかわらず、これらの結果は、本明細書に記載される装置および方法を使用して、藻類細胞からタンパク質ならびに脂肪を採取することができることを実証している(下記の表8を参照されたい)。
【0145】
【表8】
【0146】
他の実施形態
当業者なら、本発明が、上記の目的および利点、ならび本発明に特有のものを得るのに十分に適していることを容易に理解するであろう。好ましい実施形態を現在代表するものとして本明細書に記載した方法、システム、および装置は、例示的であり、本発明の範囲を限定するものとして意図するものではない。当業者ならその変更および他の使用を思いつくであろうが、これらは、本発明の趣旨に包含されるものであり、特許請求の範囲によって定義される。
【0147】
本発明の範囲および趣旨から逸脱せずに、本明細書に開示された本発明に多種多様な置換および修正を行うことができることは、当業者には容易に理解できるであろう。例えば、タンクの構成、利用する材料、ORP調節剤、および成長させる藻の種類を変更することができる。したがって、このような追加の実施形態は、本発明の範囲および以下の特許請求の範囲内である。
【0148】
本明細書に適切に例示的に記載される本発明は、本明細書に具体的に開示されていない任意の単一の要素または複数の要素、単一の限定または複数の限定がない状態で実施することができる。したがって、例えば、本明細書におけるそれぞれの場合に、「含む」、「から本質的になる」、および「からなる」という用語のどれも、他の2つの用語の一方と置換することができる。使用された用語および表現は、説明の用語として使用されており、限定の用語として使用しているものではない。そして、このような用語および表現を使用する際に、表示され記載される特徴の任意の均等物またはその一部分を除外するという意図はなく、本発明の特許請求の範囲内で様々な修正が可能性であることが認められる。したがって、本発明は例示的な実施形態および任意の特徴によって具体的に開示されているが、当業者は、本明細書に開示された概念の修正および変更を行うことができること、ならびに、このような修正および変更は、添付の特許請求の範囲によって定義された本発明の範囲内であると見なされることを理解するべきである。
【0149】
さらに、本発明の特徴または態様がマーカッシュ群または選択肢の他のグループ化によって記載されている場合、当業者は、これにより本発明がマーカッシュ群または他のグループの任意の個々のメンバーまたはメンバーのサブグループによっても記載されていることを認めるであろう。
【0150】
さらに、特に記載のない限り、様々な数値または数値範囲の終点が実施形態に提供されている場合は、追加の実施形態は、範囲の終点として任意の異なる2つの値をとることによって記載される。あるいは、追加の範囲の終点として、指定された範囲から2つの異なる範囲の終点をとることによって記載される。このような範囲もまた、記載される本発明の範囲内である。さらに、1より大きい値を含む数値範囲の指定には、その範囲内のそれぞれの整数値の具体的記載が含まれる。
【0151】
したがって、追加の実施形態は、本発明の範囲内であり、かつ、以下の特許請求の範囲内である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性懸濁液中の藻類細胞から少なくとも1つの細胞内成分を採取するための装置であって、
a)カソードとして作用する少なくとも1つの第1の導電体およびアノードとして作用する第2の導電性ハウジングであって、第1の導電体の外面とハウジングの内面の間に空間が画定されて、水性懸濁液用の流路を提供するように、少なくとも1つの第1の導電体がハウジング内に配置されており、第1の導電体とハウジングの片面または両面の少なくとも一部が除去されて、第1の導電体とハウジングの上またはそのまわりへの藻類細胞の蓄積を低下させるまたは防止する少なくとも1つのランド部によって分離された少なくとも2つの螺旋状溝を作っている、第1の導電体およびハウジングと、
b)パルス電流を与えるために第1の導電体とハウジングに動作可能に接続された電力源であって、パルス電流が、第1の導電体とハウジングと水性懸濁液の間に適用されて、藻類細胞を破裂させて、破裂した藻類細胞の塊および砕片ならびに水性懸濁液中への藻類細胞からの細胞内成分の放出をもたらす、電力源と、
c)第1の導電体とハウジングに動作可能に接続された二次タンクであって、水性懸濁液が、流路から二次タンク中へ流れて、少なくとも1つの細胞内成分を水性懸濁液中の破裂した藻類細胞から分離することができるようになっている二次タンクと、
を備えた装置。
【請求項2】
第1の導電体が金属管である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
第1の導電体および第2のハウジングがそれぞれ金属管である、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
第1の導電体および第2のハウジングが円形の金属管である、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
金属管が異なる形状である、請求項3に記載の装置。
【請求項6】
金属ハウジングの内径と第1の導電体の外径はサイズが約0.050インチ異なる、請求項4に記載の装置。
【請求項7】
ハウジングが金属管であり、少なくとも1つの導電体が、間を置いて配置された複数の導電体を含み、複数の導電体が絶縁要素によって互いに分離されており、ハウジングと間を置いて配置された複数の導電体のそれぞれとの間に多数の流路が作られている、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
複数の導電体のそれぞれが金属管である、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
水性懸濁液中の藻類細胞から少なくとも1つの細胞内成分を採取する方法であって、
a)請求項1に記載の装置を準備するステップであって、装置が、導電性鉱物および藻類細胞を含む水性懸濁液をさらに含み、水性懸濁液が、装置の流路に配置されているステップと、
b)少なくとも1つの第1の導電体とハウジングと水性懸濁液に十分な量のパルス電流を適用して、細胞内容物の膨張と収縮を交互に引き起こすことにより、藻類細胞を破裂させて、破裂した藻類細胞の塊および砕片ならびに水性懸濁液中への藻類細胞からの細胞内成分の放出をもたらすステップと、
c)破裂した藻類細胞の塊および砕片ならびに放出された細胞内成分を含む水性懸濁液を二次タンクに流して、バイオマスおよび水性懸濁液から細胞内成分を分離するステップと、
d)少なくとも1つの細胞内成分を破裂した藻類細胞の塊および砕片ならびに水性懸濁液から分離するステップと、
を含む方法。
【請求項10】
藻類細胞を含む水性懸濁液から、破裂した藻類細胞の塊および砕片を採取する方法であって、
a)請求項1に記載の装置を準備するステップであって、装置が、マイクロバブルを生成するために二次タンク内に配置された要素と、装置の流路に配置されている、導電性鉱物および藻類細胞を含む水性懸濁液と、二次タンクに配置され水性懸濁液を循環させるポンプとをさらに含むステップと、
b)少なくとも1つの第1の導電体とハウジングと水性懸濁液に十分な量のパルス電流を適用して、藻類細胞を破裂させて、水性懸濁液中への破裂した藻類細胞からの細胞内成分の放出ならびに破裂した藻類細胞の塊および砕片をもたらすステップと、
c)放出された細胞内成分ならびに破裂した藻類細胞の塊および砕片を含む水性懸濁液を二次タンクに流して、放出された細胞内成分および水性懸濁液からバイオマスを分離するステップと、
d)ポンプおよび要素を作動させてマイクロバブルを生成し、放出された細胞内成分に付着して水性懸濁液中を浮上する複数のマイクロバブルならびに破裂した藻類細胞の塊および砕片の水性懸濁液中の沈降をもたらすステップと、
e)破裂した藻類細胞の塊および砕片を、放出された細胞内成分および水性懸濁液から分離するステップと、
を含む方法。
【請求項11】
マイクロバブルを生成するために二次タンクに配置された要素がミキサーである、請求項10に記載の方法。
【請求項1】
水性懸濁液中の藻類細胞から少なくとも1つの細胞内成分を採取するための装置であって、
a)カソードとして作用する少なくとも1つの第1の導電体およびアノードとして作用する第2の導電性ハウジングであって、第1の導電体の外面とハウジングの内面の間に空間が画定されて、水性懸濁液用の流路を提供するように、少なくとも1つの第1の導電体がハウジング内に配置されており、第1の導電体とハウジングの片面または両面の少なくとも一部が除去されて、第1の導電体とハウジングの上またはそのまわりへの藻類細胞の蓄積を低下させるまたは防止する少なくとも1つのランド部によって分離された少なくとも2つの螺旋状溝を作っている、第1の導電体およびハウジングと、
b)パルス電流を与えるために第1の導電体とハウジングに動作可能に接続された電力源であって、パルス電流が、第1の導電体とハウジングと水性懸濁液の間に適用されて、藻類細胞を破裂させて、破裂した藻類細胞の塊および砕片ならびに水性懸濁液中への藻類細胞からの細胞内成分の放出をもたらす、電力源と、
c)第1の導電体とハウジングに動作可能に接続された二次タンクであって、水性懸濁液が、流路から二次タンク中へ流れて、少なくとも1つの細胞内成分を水性懸濁液中の破裂した藻類細胞から分離することができるようになっている二次タンクと、
を備えた装置。
【請求項2】
第1の導電体が金属管である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
第1の導電体および第2のハウジングがそれぞれ金属管である、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
第1の導電体および第2のハウジングが円形の金属管である、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
金属管が異なる形状である、請求項3に記載の装置。
【請求項6】
金属ハウジングの内径と第1の導電体の外径はサイズが約0.050インチ異なる、請求項4に記載の装置。
【請求項7】
ハウジングが金属管であり、少なくとも1つの導電体が、間を置いて配置された複数の導電体を含み、複数の導電体が絶縁要素によって互いに分離されており、ハウジングと間を置いて配置された複数の導電体のそれぞれとの間に多数の流路が作られている、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
複数の導電体のそれぞれが金属管である、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
水性懸濁液中の藻類細胞から少なくとも1つの細胞内成分を採取する方法であって、
a)請求項1に記載の装置を準備するステップであって、装置が、導電性鉱物および藻類細胞を含む水性懸濁液をさらに含み、水性懸濁液が、装置の流路に配置されているステップと、
b)少なくとも1つの第1の導電体とハウジングと水性懸濁液に十分な量のパルス電流を適用して、細胞内容物の膨張と収縮を交互に引き起こすことにより、藻類細胞を破裂させて、破裂した藻類細胞の塊および砕片ならびに水性懸濁液中への藻類細胞からの細胞内成分の放出をもたらすステップと、
c)破裂した藻類細胞の塊および砕片ならびに放出された細胞内成分を含む水性懸濁液を二次タンクに流して、バイオマスおよび水性懸濁液から細胞内成分を分離するステップと、
d)少なくとも1つの細胞内成分を破裂した藻類細胞の塊および砕片ならびに水性懸濁液から分離するステップと、
を含む方法。
【請求項10】
藻類細胞を含む水性懸濁液から、破裂した藻類細胞の塊および砕片を採取する方法であって、
a)請求項1に記載の装置を準備するステップであって、装置が、マイクロバブルを生成するために二次タンク内に配置された要素と、装置の流路に配置されている、導電性鉱物および藻類細胞を含む水性懸濁液と、二次タンクに配置され水性懸濁液を循環させるポンプとをさらに含むステップと、
b)少なくとも1つの第1の導電体とハウジングと水性懸濁液に十分な量のパルス電流を適用して、藻類細胞を破裂させて、水性懸濁液中への破裂した藻類細胞からの細胞内成分の放出ならびに破裂した藻類細胞の塊および砕片をもたらすステップと、
c)放出された細胞内成分ならびに破裂した藻類細胞の塊および砕片を含む水性懸濁液を二次タンクに流して、放出された細胞内成分および水性懸濁液からバイオマスを分離するステップと、
d)ポンプおよび要素を作動させてマイクロバブルを生成し、放出された細胞内成分に付着して水性懸濁液中を浮上する複数のマイクロバブルならびに破裂した藻類細胞の塊および砕片の水性懸濁液中の沈降をもたらすステップと、
e)破裂した藻類細胞の塊および砕片を、放出された細胞内成分および水性懸濁液から分離するステップと、
を含む方法。
【請求項11】
マイクロバブルを生成するために二次タンクに配置された要素がミキサーである、請求項10に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14−1】
【図14−2】
【図14−3】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14−1】
【図14−2】
【図14−3】
【公表番号】特表2012−523849(P2012−523849A)
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−507316(P2012−507316)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【国際出願番号】PCT/US2010/031756
【国際公開番号】WO2010/123903
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(511253302)オリジンオイル,インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【国際出願番号】PCT/US2010/031756
【国際公開番号】WO2010/123903
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(511253302)オリジンオイル,インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
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