虚像表示装置及び虚像表示装置の製造方法
【課題】虚像を形成する光学素子の劣化の発生を抑えて良好な状態でのシースルー観察を可能にする虚像表示装置及び虚像表示装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】ハーフミラー層28が、ハードコート層CC1によって覆われている。従って、ハーフミラー層28のうち外界光を歪めることなく透過させるために透明部材である光透過部材23を接合する場合に、接合部分にハードコート層CC1が介在することとなり、半透過反射膜であるハーフミラー層28が溶剤等を含む接着剤から影響を受けてその光学特性が劣化するという事態を回避できる。半透過反射膜であるハーフミラー層28が的確に保護されるので、ハーフミラー層28の光学的機能である画像光を反射するとともに外界光を透過させる状態が適切に維持され、良好な状態でのシースルー観察が可能となる。
【解決手段】ハーフミラー層28が、ハードコート層CC1によって覆われている。従って、ハーフミラー層28のうち外界光を歪めることなく透過させるために透明部材である光透過部材23を接合する場合に、接合部分にハードコート層CC1が介在することとなり、半透過反射膜であるハーフミラー層28が溶剤等を含む接着剤から影響を受けてその光学特性が劣化するという事態を回避できる。半透過反射膜であるハーフミラー層28が的確に保護されるので、ハーフミラー層28の光学的機能である画像光を反射するとともに外界光を透過させる状態が適切に維持され、良好な状態でのシースルー観察が可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭部に装着して使用するヘッドマウントディスプレイ等の虚像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ヘッドマウントディスプレイのように虚像の形成及び観察を可能にする虚像表示装置として、導光板によって表示素子からの画像光を観察者の瞳に導くタイプのものが種々提案されている。
【0003】
このような虚像表示装置において、画像光と外界光とを重畳させるために、シースルー光学系の提案がなされている(特許文献1)。特許文献1では、プリズムと透明基板とを組み合わせて形成した斜面にホログラム素子を有することで、画像光を反射させつつも外界光を歪めることなく透過させてシースルー観察を可能にしているが、この斜面を形成するために、2つの光学部品を接着剤によって接合している。この場合において、特許文献1では、安全性を確保する観点から、光学部品のうちホログラム素子を設ける面の側方の面を眼球から遠ざかる方向に広がるように傾斜させることで、接合箇所の接着が剥がれた場合にヘッドマウントディスプレイの装着者の眼球側に光学部品が落下するのを防止するようにしている。また、ヘッドマウントディスプレイを構成する部材の接着に際して、接着力の関係を調整して部材の表面にはみ出した余分な接着剤を除去しやすくするものが知られている(特許文献2参照)。
【0004】
しかし、特許文献1等に記載の装置において、シースルー観察を行う接合部分において、接合用の接着剤に含まれる溶剤が接着部分周辺を溶解すること等によってホログラム素子等の光学素子に対して影響を与えると、画像光や外界光によって観察される画像等が劣化したものとなる可能性がある。また、特許文献2を用いても、例えばシースルー観察のため光学素子が部材間に挟まれた状態とするような接着において、当該光学素子が接着剤による影響を受けることなく接着できるとは限らない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−240924号公報
【特許文献2】特開2008−268873号公報
【発明の概要】
【0006】
本発明は、上記背景技術の問題に鑑みてなされたものであり、虚像を形成する光学素子の劣化の発生を抑えて良好な状態でのシースルー観察を可能にする虚像表示装置及び虚像表示装置の製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る虚像表示装置は、(a)画像光を形成する画像表示装置と、(b)画像表示装置から射出された画像光による虚像を形成する投射光学系と、(c)投射光学系を通過した画像光を内部に取り込む光入射部と、光入射部から取り込まれた画像光を対向して延びる第1及び第2の面での全反射により導く導光部と、導光部を経た画像光を外部へ取出す光射出部と、を有する導光装置と、を備え、(d)導光装置が、光射出部において、画像光を折り曲げるとともに外界光を透過させる反射部と、反射部を覆うコート層と、を有する。
【0008】
上記虚像表示装置では、反射部がコート層によって覆われている。従って、例えば外界光を歪めることなく透過させてシースルー観察を可能とするために、反射部に対して外界光を透過させる側から透明部材を接合する場合に、接合部分にコート層が介在することで、反射部が溶剤等を含む接着剤から影響を受けてその光学特性が劣化するという事態を回避できる。反射部が的確に保護されるので、反射部の光学的機能である画像光を反射するとともに外界光を透過させる状態が適切に維持され、良好な状態でのシースルー観察が可能となる。なお、上記の反射部には、画像光を折り曲げるとともに外界光を透過させる種々のものが含まれる。つまり、反射部には、金属反射膜や誘電体多層膜を成膜することにより形成される半透過反射膜のみならず、半透過反射性を有する半透過部材や、半透過性のシート、特定波長の光に対してのみ作用し他の波長の光を透過させるホログラム素子等の種々の半透過性の反射部(半透過反射部)が含まれるものとする。
【0009】
本発明の具体的な側面では、導光装置が、反射部に対向する対向面を有し、コート層を介して対向面と反射部とを接合することによって外界光の観察を可能にする透視部を構成する光透過部材を有する。この場合、透視部により歪みのないシースルー観察が可能となる。
【0010】
本発明の別の側面では、光透過部材が、コート層と同一の材料で構成されて対向面を形成する対向面形成層を有する。この場合、コート層及び対向面形成層に共通して用いる材料の選択により、例えば光透過部材の接合性をよくすることができる。
【0011】
本発明のさらに別の側面では、導光装置のうち導光部を含む導光部材の本体部分と、光透過部材の本体部分とは、同一の材料で構成される。この場合、導光部材の本体部分と光透過部材の本体部分とでの屈折率差をなくすことができる。
【0012】
本発明のさらに別の側面では、導光部材の本体部分及び光透過部材の本体部分の材料は、シクロオレフィンポリマーである。この場合、高い光透過性を持たせ、かつ、吸湿性を特に抑制でき、より良好な状態でのシースルー観察が可能となる。
【0013】
本発明のさらに別の側面では、導光装置のうち導光部を含む導光部材の本体部分と、光透過部材の本体部分とは、同一の屈折率を有する異なる材料で構成される。この場合、種々の目的に応じて導光部材側と光透過部材側とで用いる材料の選択ができる。
【0014】
本発明のさらに別の側面では、コート層が、少なくとも上記第1及び第2の面を含む画像光の導光に寄与する面を保護するハードコート層である。この場合、ハードコート層により、表面の損傷を防止し映像の解像度低下を防止することができる。
【0015】
本発明のさらに別の側面では、コート層が、コート材をディップ処理によって塗布することで形成される。この場合、導光装置の形状が比較的複雑であっても、所望の厚さの膜を均一に成膜できる。
【0016】
本発明のさらに別の側面では、導光部が、互いに平行に配置され全反射による導光を可能にする上記第1の面と上記第2の面とを有し、光入射部が、第1の面に対して所定の角度をなす第3の面を有し、光射出部が、第1の面に対して所定の角度をなす第4の面を有する。この場合、反射回数の異なる画像光を同時に合成して1つの虚像を形成する画像光として取り出して、光射出部越しに観察される虚像の表示サイズを大きく確保することができる。
【0017】
本発明のさらに別の側面では、反射部が、第4の面上に形成される。この場合、上記第4の面において、シースルーを可能とする透視部を形成することができる。
【0018】
上記課題を解決するため、本発明に係る虚像表示装置の製造方法は、(a)画像光を形成する画像表示装置と、(b)画像表示装置から射出された画像光による虚像を形成する投射光学系と、(c1)投射光学系を通過した画像光を内部に取り込む光入射部と(c2)光入射部から取り込まれた画像光を対向して延びる第1及び第2の面での全反射により導く導光部と(c3)導光部を経た画像光を外部へ取出す光射出部と(c4)光射出部と組み合わせることによって外界光の観察を可能にする透視部を構成する光透過部材と(c5)光射出部と光透過部材との間に配置されて画像光を折り曲げるとともに外界光を透過させる反射部とを有する(c)導光装置と、を備える虚像表示装置の製造方法であって、(d)反射部を光射出部側に配置する反射部作製工程と、(e)反射部作製工程において作製された反射部を覆うコート層を成膜するコート層成膜工程と、(f)コート層成膜工程においてコート層に覆われた反射部を間に挟むようにして光射出部と光透過部材とを接合する接合工程と、を有する。
【0019】
上記虚像表示装置の製造方法では、反射部作製工程で作製された反射部を、コート層成膜工程において成膜されたコート層によって覆っている。従って、外界光を歪めることなく透過させてシースルー観察を可能とするために、反射部に対して外界光を透過させる側から透明部材を接合する接合工程において、接合部分にコート層が介在することで、反射部が溶剤等を含む接着剤から影響を受けてその光学特性が劣化するという事態を回避できる。これにより、製造された虚像表示装置では、反射部が的確に保護されるので、反射部の光学的機能である画像光を反射するとともに外界光を透過させる状態が適切に維持され、良好な状態でのシースルー観察が可能となる。
【0020】
本発明の具体的な側面では、コート層成膜工程において、コート層となるべきコート材をディップ処理によって塗布するディップ処理工程を含む。この場合、製造される導光装置の形状が比較的複雑であっても、所望の厚さの膜を均一に成膜できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施形態の虚像表示装置を示す斜視図である。
【図2】(A)は、虚像表示装置を構成する第1表示装置の本体部分の平面図であり、(B)は、本体部分の正面図である。
【図3】(A)は、縦の第1方向に関する光路を展開した概念図であり、(B)は、横の第2方向に関する光路を展開した概念図である。
【図4】虚像表示装置の光学系における光路を具体的に説明する平面図である。
【図5】(A)は、液晶表示デバイスの表示面を示し、(B)は、観察者に見える液晶表示デバイスの虚像を概念的に説明する図であり、(C)及び(D)は、虚像を構成する部分画像を説明する図である。
【図6】(A)は、コート層の成膜前の導光装置を示す図であり、(B)は、コート層の成膜後の導光部材及び光透過部材を示す図であり、(C)は、導光部材と光透過部材とを接合した状態を示す図であり、(D)は、反射防止コートを施した状態を示す図である。
【図7】(A)は、変形例の虚像表示装置の製造におけるコート層の成膜前の導光部材を示す図であり、(B)は、コート層の成膜後の導光部材及び光透過部材を示す図であり、(C)は、導光部材と光透過部材とを接合した状態を示す図であり、(D)は、反射防止コートを施した状態を示す図である。
【図8】(A)は導光部材の正面図であり、(B)は導光部材の下面図であり、(C)は導光部材の左側面図であり、(D)は導光部材の右側面図である。
【図9】(A)は光透過部材の裏面図であり、(B)は光透過部材のBB断面図であり、(C)は光透過部材の左側面図であり、(D)は光透過部材の右側面図である。
【図10】(A)は、虚像表示装置を構成する第1表示装置の変形例を示す図であり、(B)は、第1表示装置の別の変形例を示す図である。
【図11】虚像表示装置を構成する第1表示装置のさらに別の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る虚像表示装置について詳細に説明する。
【0023】
〔A.虚像表示装置の外観〕
図1に示す実施形態の虚像表示装置100は、眼鏡のような外観を有するヘッドマウントディスプレイであり、この虚像表示装置100を装着した観察者に対して虚像による画像光を認識させることができるとともに、観察者に外界像をシースルーで観察させることができる。虚像表示装置100は、観察者の眼前を覆う光学パネル110と、光学パネル110を支持するフレーム121と、フレーム121のヨロイからテンプルにかけての部分に付加された第1及び第2駆動部131,132とを備える。ここで、光学パネル110は、第1パネル部分111と第2パネル部分112とを有し、両パネル部分111,112は、中央で一体的に連結された板状の部品となっている。図面上で左側の第1パネル部分111と第1駆動部131とを組み合わせた第1表示装置100Aは、左眼用の虚像を形成する部分であり、単独でも虚像表示装置として機能する。また、図面上で右側の第2パネル部分112と第2駆動部132とを組み合わせた第2表示装置100Bは、右眼用の虚像を形成する部分であり、単独でも虚像表示装置として機能する。
【0024】
〔B.表示装置の構造〕
図2(A)等に示すように、第1表示装置100Aは、画像形成装置10と、導光装置20とを備える。ここで、画像形成装置10は、図1における第1駆動部131に相当し、導光装置20は、図1における第1パネル部分111に相当する。なお、図1に示す第2表示装置100Bは、第1表示装置100Aと同様の構造を有し左右を反転させただけであるので、第2表示装置100Bの詳細な説明は省略する。
【0025】
画像形成装置10は、画像表示装置11と、投射光学系12とを有する。このうち、画像表示装置11は、2次元的な照明光SLを射出する照明装置31と、透過型の空間光変調装置である液晶表示デバイス32と、照明装置31及び液晶表示デバイス32の動作を制御する駆動制御部34とを有する。
【0026】
照明装置31は、赤、緑、青の3色を含む光を発生する光源31aと、光源31aからの光を拡散させて矩形断面の光束にするバックライト導光部31bとを有する。液晶表示デバイス32は、照明装置31からの照明光SLを空間的に変調して動画像等の表示対象となるべき画像光を形成する。駆動制御部34は、光源駆動回路34aと、液晶駆動回路34bとを備える。光源駆動回路34aは、照明装置31の光源31aに電力を供給して安定した輝度の照明光SLを射出させる。液晶駆動回路34bは、液晶表示デバイス32に対して画像信号又は駆動信号を出力することにより、透過率パターンとして動画や静止画の元になるカラーの画像光を形成する。なお、液晶駆動回路34bに画像処理機能を持たせることができるが、外付けの制御回路に画像処理機能を持たせることもできる。投射光学系12は、液晶表示デバイス32上の各点から射出された画像光を平行状態の光束にするコリメートレンズである。
【0027】
液晶表示デバイス32において、第1方向D1は、投射光学系12を通る第1光軸AX1と、後述する導光部材21の第3反射面21cに平行な特定線とを含む縦断面の延びる方向に対応し、第2方向D2は、上記第1光軸AX1と、上記第3反射面21cの法線とを含む横断面の延びる方向に対応する。つまり、液晶表示デバイス32の位置において、第1方向D1は、縦のY方向に相当し、第2方向D2は、横のX方向に相当する。
【0028】
導光装置20は、導光部材21と光透過部材23とを接合したものであり、全体としてXY面に平行に延びる平板状の光学部材を構成している。
【0029】
導光装置20のうち、導光部材21は、平面視において台形のプリズム状部材であり、側面を構成する第1の面から第4の面として、第1反射面21aと、第2反射面21bと、第3反射面21cと、第4反射面21dとを有する。また、導光部材21は、第1、第2、第3、及び第4反射面21a,21b,21c,21dに隣接するとともに互いに対向する第1の側面(上面)21eと第2の側面(下面)21fとを有する。ここで、第1及び第2反射面21a,21bは、XY面に沿って延び、導光部材21の厚みtだけ離間する。また、第3反射面21cは、XY面に対して45°以下の鋭角αで傾斜しており、第4反射面21dは、XY面に対して例えば45°以下の鋭角βで傾斜している。第3反射面21cを通る第1光軸AX1と第4反射面21dを通る第2光軸AX2とは平行に配置され距離Dだけ離間している。なお、以下に詳述するが、第1反射面21aと第3反射面21cとの間には、稜を除去するように端面21hが設けられている。導光部材21は、この端面21hも含めると、7面の多面体状の外形を有するものとなっている。
【0030】
導光部材21は、対向して延びる第1及び第2の面である第1及び第2反射面21a,21bによる全反射を利用して導光を行うものであり、導光に際して反射によって折り返される方向と、導光に際して反射によって折り返されない方向とがある。導光部材21で導光される画像について考えた場合、導光に際して複数回の反射によって折り返される横方向すなわち閉じ込め方向DW2は、第1及び第2反射面21a,21bに垂直(Z軸に平行)で、後述するように光源側まで光路を展開した場合に、液晶表示デバイス32の第2方向D2に相当する。一方、導光に際して反射によって折り返されないで伝搬する縦方向すなわち非閉じ込め方向DW1は、第1及び第2反射面21a,21b及び第3反射面21cに平行(Y軸に平行)で、後述するように光源側まで光路を展開した場合に、液晶表示デバイス32の第1方向D1に相当する。なお、導光部材21において、伝搬される光束が全体として向かう主導光方向は、−X方向になっている。
【0031】
導光部材21は、可視域で高い光透過性を示す樹脂材料で形成されている。導光部材21は、射出成型によって一体的に成型されたブロック状部材を本体部分20aとし、本体部分20aは、例えば熱又は光重合型の樹脂材料を成型金型内に射出させ熱硬化又は光硬化させることで形成されている。このように導光部材21は、本体部分20aを一体形成品とするが、機能的に、光入射部B1と導光部B2と光射出部B3とに分けて考えることができる。
【0032】
光入射部B1は、三角プリズム状の部分であり、第1反射面21aの一部である光入射面ISと、光入射面ISに対向する第3反射面21cとを有する。光入射面ISは、画像形成装置10からの画像光GLを取り込むための裏側又は観察者側の平面であり、投射光学系12に対向してその第1光軸AX1に垂直に延びている。第3反射面21cは、矩形の輪郭を有し、その矩形領域全体に、光入射面ISを通過した画像光GLを反射して導光部B2内に導くための全反射ミラーであるミラー層25を有する。このミラー層は、導光部材21の本体部分20aの斜面RS上にアルミ等の蒸着によって成膜を施すことにより形成される。第3反射面21cは、投射光学系12の第1光軸AX1又はXY面に対して例えば鋭角α=25°〜27°で傾斜しており、光入射面ISから入射し全体として+Z方向に向かう画像光GLを、全体として−Z方向寄りの−X方向に向かわせるように折り曲げることで、画像光GLを導光部B2内に確実に結合させる。
【0033】
導光部B2は、互いに対向しXY面に平行に延びる2平面として、光入射部B1で折り曲げられた画像光をそれぞれ全反射させる第1反射面21aと第2反射面21bとを有している。第1及び第2反射面21a,21bの間隔すなわち導光部材21の厚みtは、例えば9mm程度とされている。ここでは、第1反射面21aが画像形成装置10に近い裏側又は観察者側にあるものとし、第2反射面21bが画像形成装置10から遠い表側又は外界側にあるものとする。この場合、第1反射面21aは、上記の光入射面ISや後述する光射出面OSと共通の面部分となっている。第1及び第2反射面21a,21bは、屈折率差を利用する全反射面であり、ミラー層等の反射コートが施されていないが、表面の損傷を防止し映像の解像度低下を防止するため、コート層であるハードコート層CC1で被覆されている。なお、必要であればさらに反射防止コートARで被覆してもよい。
【0034】
光入射部B1の第3反射面21cで反射された画像光GLは、まず、第1反射面21aに入射し、全反射される。次に、当該画像光GLは、第2反射面21bに入射し、全反射される。以下この動作が繰り返されることで、画像光は、全体として導光装置20の奥側の主導光方向すなわち光射出部B3を設けた+Z側に導かれる。なお、第1及び第2反射面21a,21bには反射コートが施されていないため、外界側から第2反射面21bに入射する外界光又は外光は、高い透過率で導光部B2を通過する。つまり、導光部B2は、外界像の透視が可能なシースルータイプになっている。
【0035】
光射出部B3は、三角プリズム状の部分であり、第1反射面21aの一部である光射出面OSと、光射出面OSに対向する第4反射面21dとを有する。光射出面OSは、画像光GLを観察者の眼EYに向けて射出するための裏側の平面であり、光入射面ISと同様に第1反射面21aの一部となっており、第2光軸AX2に垂直に延びている。光射出部B3を通る第2光軸AX2と光入射部B1を通る第1光軸AX1との距離Dは、観察者の頭部の幅等を考慮して例えば50mmに設定されている。第4反射面21dは、矩形の平坦面であり、第1及び第2反射面21a,21bを経て入射してきた画像光GLを反射して光射出部B3外に射出させるとともに外界光を透過させるための反射部(半透過反射部)であるハーフミラー層28を有する。つまり、このハーフミラー層28は、光透過性を有する半透過反射膜である。ハーフミラー層(半透過反射膜)28は、導光部材21のうち第4反射面21dを構成する斜面RR上に例えば銀等による金属反射膜や誘電体多層膜を成膜することにより形成される。ハーフミラー層28の画像光GLに対する反射率は、シースルーによる外界光GL'の観察を容易にする観点で、想定される画像光GLの入射角範囲において10%以上50%以下とする。具体的な実施例のハーフミラー層28の画像光GLに対する反射率は、例えば20%に設定され、画像光GLに対する透過率は、例えば80%に設定される。
【0036】
第4反射面21dは、第1反射面21aに垂直な第2光軸AX2又はXY面に対して例えば鋭角α=25°〜27°で傾斜しており、上記ハーフミラー層28により、導光部B2の第1及び第2反射面21a,21bを経て入射してきた画像光GLを部分的に反射して全体として−Z方向に向かわせるように折り曲げることで、光射出面OSを通過させる。また、第4反射面21dは、外界光GL'を部分的に透過させ光射出面OSを通過させる面でもあり、半透過半反射面である。なお、第4反射面21dを透過した画像光の成分は、光透過部材23に入射し、映像の形成には利用されない。
【0037】
本実施形態では、第4反射面21dのハーフミラー層28上においても、第1及び第2反射面21a,21bを被覆するコート層であるハードコート層CC1が施されている。従って、ハーフミラー層28は、ハードコート層CC1によって保護された状態となっている。
【0038】
光透過部材23は、導光部材21の本体と同一の材料で構成され同一の屈折率を有し、第1面23aと、第2面23bと、第3面23cとを有する。第1及び第2面23a,23bは、XY面に沿って延びる。また、第3面23cは、XY面に対して傾斜しており、導光部材21の第4反射面21dに対向して平行に配置されている。つまり、光透過部材23は、第2面23bと第3面23cとに挟まれた楔状の部材を有するものとなっている。光透過部材23は、導光部材21と同様に、可視域で高い光透過性を示す樹脂材料で形成されている。光透過部材23は、射出成型によって一体的に成型されたブロック状部材であり、例えば熱又は光重合型の樹脂材料を成型金型内に射出させ熱硬化又は光硬化させることで形成されている。なお、光透過部材23の表面には、ハードコート層CC1と同一材料で構成されるハードコート層CC2が施されている。
【0039】
光透過部材23において、第1面23aは、導光部材21に設けた第1反射面21aの延長平面上に配置され、観察者の眼EYに近い裏側にあり、第2面23bは、導光部材21に設けた第2反射面21bの延長平面上に配置され、観察者の眼EYから遠い表側にある。第3面23cは、接着剤によって導光部材21の第4反射面21dに接合される矩形の光透過面である。以上の第1面23aと第3面23cとなす角度は、導光部材21の第2反射面21bと第4反射面21dとのなす角度εと等しくなっており、第2面23bと第3面23cとなす角度は、導光部材21の第1反射面21aと第3反射面21cとのなす角度βと等しくなっている。
【0040】
光透過部材23と導光部材21とは、両者の接合部分及びその近傍において、透視部B4を構成している。すなわち、第1及び第2面23a,23bには、ミラー層等の反射コートが施されていないため、導光部材21の導光部B2と同様に外界光GL'を高い透過率で透過させる。第3面23cも、外界光GL'を高い透過率で透過可能であるが、導光部材21の第4反射面21dがハーフミラー層28を有していることから、第3面23cを通過する外界光GL'は、例えば20%減光される。つまり、観察者は、20%に減光された画像光GLと80%に減光された外界光GL'とを重畳させたものを観察することになる。
【0041】
透視部B4の構成すなわち光透過部材23と導光部材21との接合において、ハーフミラー層28は、接合部分において挟持された状態となる。このような接合において、例えば接着剤に含まれる溶剤が接着箇所を溶解すること等によってハーフミラー層28を侵食し、ひいては画像光や外界光によって観察される画像等が劣化したものとなる可能性がある。本実施形態では、光透過部材23と導光部材21との接合前にハーフミラー層28をハードコート層CC1によって保護した状態とすることで、ハーフミラー層28が接着剤から影響を受けないようにしている。
【0042】
〔C.画像光の光路の概要〕
図3(A)は、液晶表示デバイス32の縦断面CS1に対応する第1方向D1の光路を説明する図である。第1方向D1に沿った縦断面すなわちYZ面(展開後のY'Z'面)において、液晶表示デバイス32から射出された画像光のうち、図中一点鎖線で示す表示領域32bの上端側(+Y側)から射出される成分を画像光GLaとし、図中二点差線で示す表示領域32bの下端側(−Y側)から射出される成分を画像光GLbとする。
【0043】
上側の画像光GLaは、投射光学系12によって平行光束化され、展開された光軸AX'に沿って、導光部材21の光入射部B1、導光部B2、及び光射出部B3を通り、観察者の眼EYに対して平行光束状態で、角度φ1の上方向から傾いて入射する。一方、下側の画像光GLbは、投射光学系12によって平行光束化され、展開された光軸AX'に沿って、導光部材21の光入射部B1、導光部B2、及び光射出部B3を通り、観察者の眼EYに対して平行光束状態で、角度φ2(|φ2|=|φ1|)の下方向から傾いて入射する。以上の角度φ1,φ2は、上下の半画角に相当し、例えば6.5°に設定される。
【0044】
図3(B)は、液晶表示デバイス32の横断面CS2に対応する第2方向(閉じ込め方向DW2又は合成方向)D2の光路を説明する図である。第2方向D2(閉じ込め方向DW2又は合成方向)に沿った横断面CS2すなわちXZ面(展開後のX'Z'面)において、液晶表示デバイス32から射出された画像光のうち、図中一点鎖線で示す表示領域32bに向かって右端側(+X側)の第1表示点P1から射出される成分を画像光GLcとし、図中二点差線で示す表示領域32bに向かって左端側(−X側)の第2表示点P2から射出される成分を画像光GLdとする。図3(B)中には、参考のため、右寄り内側のから射出される画像光GLeと、左寄り内側のから射出される画像光GLfとを追加している。
【0045】
右側の第1表示点P1からの画像光GLcは、投射光学系12によって平行光束化され、展開された光軸AX'に沿って、導光部材21の光入射部B1、導光部B2、及び光射出部B3を通り、観察者の眼EYに対して平行光束状態で、角度θ1の右方向から傾いて入射する。一方、左側の第2表示点P2からの画像光GLdは、投射光学系12によって平行光束化され、展開された光軸AX'に沿って、導光部材21の光入射部B1、導光部B2、及び光射出部B3を通り、観察者の眼EYに対して平行光束状態で、角度θ2(|θ2|=|θ1|)の左方向から傾いて入射する。以上の角度θ1,θ2は、左右の半画角に相当し、例えば10°に設定される。
【0046】
なお、第2方向D2の横方向に関しては、導光部材21中で画像光GLc,GLdが反射によって折り返され、反射の回数も異なることから、各画像光GLc,GLdが導光部材21中で不連続に表現されている。また、観察者の眼EYについては、図2(A)の場合と比較して見ている方向が上下反対となっている。結果的に、横方向に関しては、全体として画面が左右反転するが、後に詳述するように導光部材21を高精度に加工することで、液晶表示デバイス32の右半分の画像と液晶表示デバイス32の左半分の画像とが切れ目なく連続してズレなくつなぎ合わされたものとなる。なお、両画像光GLc,GLdの導光部材21内での反射回数が互いに異なることを考慮して、右側の画像光GLcの射出角度θ1'と左側の画像光GLdの射出角度θ2'とは異なるものに設定されている。
【0047】
以上により、観察者の眼EYに入射する画像光GLa,GLb,GLc,GLdは、無限遠からの虚像となっており、縦の第1方向D1に関しては液晶表示デバイス32に形成された映像が正立し、横の第2方向D2に関しては液晶表示デバイス32に形成された映像が反転する。
【0048】
〔D.横方向に関する画像光の光路〕
図4は、第1表示装置100Aにおける具体的な光路を説明する断面図である。投射光学系12は、3つのレンズL1,L2,L3を有している。
【0049】
液晶表示デバイス32の右側の第1表示点P1からの画像光GL11,GL12は、投射光学系12のレンズL1,L2,L3を通過することで平行光束化され、導光部材21の光入射面ISに入射する。導光部材21内に導かれた画像光GL11,GL12は、第1及び第2反射面21a,21bにおいて等しい角度で全反射を繰り返して、最終的に光射出面OSから平行光束として射出される。具体的には、画像光GL11,GL12は、平行光束として導光部材21の第3反射面21cで反射された後、第1反射角γ1で導光部材21の第1反射面21aに入射し、全反射される(第1回目の全反射)。その後、画像光GL11,GL12は、第1反射角γ1を保った状態で、第2反射面21bに入射して全反射され(第2回目の全反射)、次いで再度第1反射面21aに入射して全反射される(第3回目の全反射)。結果的に、画像光GL11,GL12は、第1及び第2反射面21a,21bにおいて計3回全反射され、第4反射面21dに入射する。画像光GL11,GL12は、この第4反射面21dで第3反射面21cと同一の角度で反射され、光射出面OSからこの光射出面OSに垂直な第2光軸AX2方向に対して角度θ1の傾きで平行光束として射出される。
【0050】
液晶表示デバイス32の左側の第2表示点P2からの画像光GL21,GL22は、投射光学系12のレンズL1,L2,L3を通過することで平行光束化され、導光部材21の光入射面ISに入射する。導光部材21内に導かれた画像光GL21,GL22は、第1及び第2反射面21a,21bにおいて等しい角度で全反射を繰り返して、最終的に光射出面OSから平行光束として射出される。具体的には、画像光GL21,GL22は、平行光束として導光部材21の第3反射面21cで反射された後、第2反射角γ2(γ2<γ1)で導光部材21の第1反射面21aに入射し、全反射される(第1回目の全反射)。その後、画像光GL21,GL22は、第2反射角γ2を保った状態で、第2反射面21bに入射して全反射され(第2回目の全反射)、再度第1反射面21aに入射して全反射され(第3回目の全反射)、再度第2反射面21bに入射して全反射され(第4回目の全反射)、再々度第1反射面21aに入射して全反射される(第5回目の全反射)。結果的に、画像光GL21,GL22は、第1及び第2反射面21a,21bにおいて計5回全反射され、第4反射面21dに入射する。画像光GL21,GL22は、この第4反射面21dで第3反射面21cと同一の角度で反射され、光射出面OSからこの光射出面OSに垂直な第2光軸AX2方向に対して角度θ2の傾きで平行光束として射出される。
【0051】
図4において、導光部材21を展開した場合に第1反射面21aに対応する仮想的な第1面121aと、導光部材21を展開した場合に第2反射面21bに対応する仮想的な第2面121bとを描いている。このように展開することにより、第1表示点P1からの画像光GL11,GL12は、光入射面ISに対応する入射等価面IS'を通過した後、第1面121aを2回通過し第2面121bを1回通過して光射出面OSから射出されて観察者の眼EYに入射することが分かり、第2表示点P2からの画像光GL21,GL22は、光入射面ISに対応する入射等価面IS"を通過した後、第1面121aを3回通過し第2面121bを2回通過して光射出面OSから射出されて観察者の眼EYに入射することが分かる。見方を変えると、観察者は、2つの位置の異なる入射等価面IS',IS"の近傍に存在する投射光学系12のレンズL3を重ねて観察していることになる。
【0052】
図5(A)は、液晶表示デバイス32の表示面を概念的に説明する図であり、図5(B)は、観察者に見える液晶表示デバイス32の虚像を概念的に説明する図であり、図5(C)及び5(D)は、虚像を構成する部分画像を説明する図である。図5(A)に示す液晶表示デバイス32に設けた矩形の画像形成領域ADは、図5(B)に示す虚像表示領域AIとして観察される。虚像表示領域AIの左側には、液晶表示デバイス32の画像形成領域ADのうち中央から右側にかけての部分に相当する第1投射像IM1が形成され、この第1投射像IM1は、図5(C)に示すように右側が欠けた部分画像となっている。また、虚像表示領域AIの右側には、液晶表示デバイス32の画像形成領域ADのうち中央から左側にかけての部分に相当する投射像IM2が虚像として形成され、この第2投射像IM2は、図5(D)に示すように左半分が欠けた部分画像となっている。
【0053】
図5(A)に示す液晶表示デバイス32のうち第1投射像(虚像)IM1のみを形成する第1部分領域A10は、例えば液晶表示デバイス32の右端の第1表示点P1を含んでおり、導光部材21の導光部B2において合計3回全反射される画像光GL11,GL12を射出する。液晶表示デバイス32のうち第2投射像(虚像)IM2のみを形成する第2部分領域A20は、例えば液晶表示デバイス32の左端の第2表示点P2を含んでおり、導光部材21の導光部B2において合計5回全反射される画像光GL21,GL22を射出する。液晶表示デバイス32の画像形成領域ADの中央寄りにおいて第1及び第2部分領域A10,A20に挟まれて縦長に延びる帯域SAからの画像光は、図5(B)に示す重複画像SIを形成している。つまり、液晶表示デバイス32の帯域SAからの画像光は、導光部B2において計3回全反射される画像光GL11,GL12によって形成される第1投射像IM1と、導光部B2において計5回全反射される画像光GL11,GL12によって形成される第2投射像IM2となって、虚像表示領域AI上で重畳していることになる。導光部材21の加工が精密で、投射光学系12によって正確にコリメートされた光束が形成されているならば、重複画像SIについて、2つの投射像IM1,IM2の重畳によるズレや滲みを防止することができる。
【0054】
以上では、液晶表示デバイス32の右側の第1表示点P1を含む第1部分領域A10から射出された画像光GL11,GL12の第1及び第2反射面21a,21bによる全反射回数が計3回で、液晶表示デバイス32の左側の第2表示点P2を含む第2部分領域A20から射出された画像光GL21,GL22の第1及び第2反射面21a,21bによる全反射回数が計5回であるとしたが、全反射回数については適宜変更することができる。つまり、導光部材21の外形(すなわち厚みt、距離D、鋭角α,β)の調整によって、画像光GL11,GL12の全反射回数を計5回とし、画像光GL21,GL22の全反射回数を計7回とすることもできる。また、以上では、画像光GL11,GL12,GL21,GL22の全反射回数が奇数となっているが、光入射面ISと光射出面OSとを反対側に配置するならば、すなわち導光部材21を平面視で平行四辺形型にすれば、画像光GL11,GL12,GL21,GL22の全反射回数が偶数となる。
【0055】
〔E.虚像表示装置の作製工程〕
以下、図6(A)〜6(C)により、本実施形態に係る虚像表示装置の作製工程について説明する。ここでは、各製造工程のうち特徴的な部分である導光部材21と光透過部材23との接合による導光装置20の作製に関する工程について説明する。
【0056】
まず、図6(A)に示すように、導光部材21の本体部分20aが準備され、反射膜であるミラー層25とは透過反射膜であるハーフミラー層28とが形成される。本体部分20aは、可視域で高い光透過性を示す樹脂材料で形成されるが、ここでは、例えばメタクリルスチレンやシクロオレフィンポリマーを材料として射出成型によって成形されるものとする。本体部分20aは、導光部材21の第1〜第4反射面21a,21b,21c,21d(図2(A)等参照)を形成すべき部分である第1〜第4面SFa,SFb,SFc,SFdを有する。これらの面SFa,SFb,SFc,SFdのうち、斜面RSである第3面SFcの面上において、画像光の反射のために必要な領域にアルミ等を蒸着することによってミラー層25が成膜され、第3反射面21cが形成される(ミラー層成膜工程)。また、斜面RRである第4面SFdの面上において、画像光の反射及び外界光の透過のために必要な領域に銀等を蒸着することによってハーフミラー層28が成膜され、半透過面である第4反射面21dが形成される(反射部作製工程)。
【0057】
次に、図6(B)に示すように、ミラー層成膜工程及び反射部作製工程でミラー層25及びハーフミラー層28が成膜された状態の本体部分20aにおいて、その表面にハードコート層CC1が成膜される。ハードコート層CC1は、例えばディップ処理によってコート材を塗布することで、本体部分20aの表面全体にほぼ均一な膜厚で形成される(コート層成膜工程)。なお、ハードコート層CC1の膜厚は、5μm程度とすることが望ましい。これにより、ハードコート層CC1成膜後の形状が、成膜前の本体部分20aの形状を維持したものとなり、かつ、ハードコート層CC1が本体部分20aを損傷から防いだり汚れの除去を容易にしたりするといったハードコートとしての機能できる程度の厚さを有するものとなる。この場合、ハードコート層CC1は、第1及び第2面SFa,SFbのみならず第4反射面21dを覆って、光透過部材23に対向する側の表面S1を形成し半透過反射膜であるハーフミラー層28を保護する。つまり、ハードコート層CC1のうち、第4反射面21dを覆う部分には、半透過反射層保護層として機能しており、また、光透過部材23が接合された状態では装置の内部側に存在する中間層となる。ハードコート層CC1のうち、第1及び第2面SFa,SFbを覆う部分は、露出する表面を形成する表面コート層となる。なお、ハードコート層CC1は、第3反射面21cを覆うことでミラー層25を保護し、また、第1及び第2面SFa,SFbを覆うことで第1及び第2反射面21a,21bを形成している。以上のように、コート層成膜工程を経ることで、第1〜第4反射面21a,21b,21c,21dを有する導光部材21が作製される(導光部材準備工程)。
【0058】
また、図6(B)に示すように、導光部材準備工程において導光部材21が準備されるとともに、導光部材21に接合する光透過部材23が準備される(光透過部材準備工程)。光透過部材23は、本体部分24aと、ハードコート層CC2とを有する。つまり、光透過部材23は、本体部分24aの表面にハードコート層CC2を成膜したものとなっている。このハードコート層CC2は、導光部材21のハードコート層CC1と同一の材料で構成されており、光透過部材23の各面23a等を形成している。特に、導光部材21に対向する面である第3面23cとして、導光部材21の半透過面である第4反射面21d側に位置する表面S1に対向する対向面S2がハードコート層CC2によって形成される。言い換えると、ハードコート層CC2は、対向面S2を形成する対向面形成層である。なお、ハードコート層CC2についても、例えばディップ処理によってコート材を塗布することで、所望の膜厚で形成することができる。なお、本体部分24aは、本体部分20aと同一の材料で射出成型等によって成形される。
【0059】
次に、図6(C)に示すように、導光部材21と光透過部材23とが、導光部材21の表面S1と、光透過部材23の対向面S2とにおいて、接着剤等により貼り合わせることで、接合される(接合工程)。
【0060】
なお、必要であれば、図6(D)に示すように、接合工程において接合され一体化した導光部材21と光透過部材23とにさらに反射防止コートARを成膜してもよい(反射防止コート成膜工程)。以上により、導光装置20が作製される。
【0061】
また、以上のようにして作製される導光装置20の導光部材21について、例えば反射防止コートARを施さない場合には、図6(C)において各面について一部拡大して示すように、第1及び第2反射面21a,21bは、最表層に位置するハードコート層CC1と空気層との界面によって形成される。また、第3反射面21cは、ミラー層25と第3面SFcとの界面によって形成される。また、第4反射面21dは、ハーフミラー層28と第4面SFdとの界面によって形成される。なお、図6(D)に示すように、反射防止コートARを成膜する場合には、反射防止コートARと空気層との界面を、第1及び第2反射面21a,21bとすることができる。
【0062】
以上のように、本実施形態に係る虚像表示装置100では、導光装置20の作製において半透過反射膜であるハーフミラー層28が、ハードコート層CC1によって覆われている。従って、ハーフミラー層28のうち外界光を歪めることなく透過させるために透明部材である光透過部材23を接合する場合に、接合部分にハードコート層CC1が介在することとなり、半透過反射膜であるハーフミラー層28が溶剤等を含む接着剤から影響を受けてその光学特性が劣化するという事態を回避できる。半透過反射膜であるハーフミラー層28が的確に保護されるので、ハーフミラー層28の光学的機能である画像光を反射するとともに外界光を透過させる状態が適切に維持され、良好な状態でのシースルー観察が可能となる。
【0063】
また、本実施形態の場合、図6(C)に示す接合において、接着時の圧着といった物理的な力の作用に対しても、ハードコート層CC1が緩衝材としての役割を果たすことで、半透過反射膜であるハーフミラー層28が保護される。
【0064】
また、本実施形態の場合、接合部分である面S1,S2は、同一の材料で構成されるハードコート層CC1,CC2によって形成されているので、当該材料を接着するのに適した接着剤を用いることで、必要に足る接着力を確保することができる。従って、導光部材21の本体部分20a及び光透過部材23の本体部分24aの材料として、直接接合することが一般に困難とされているシクロオレフィンポリマーを用いることができる。シクロオレフィンポリマーを用いた場合、導光部材21や光透過部材23の高い光透過性を持たせ、かつ、吸湿性を特に抑制でき、より良好な状態でのシースルー観察が可能となる。
【0065】
なお、第1及び第2反射面21a,21bでの全反射は、ハードコート層CC1の屈折率の設定によっており、ハードコート層CC1の表面側で生じさせることもハードコート層CC1の内側である面SFa,SFbで生じさせることもできる。
【0066】
以下、図7(A)〜7(D)により、本実施形態に係る虚像表示装置の一変形例の作製工程について説明する。本変形例では、図7(B)〜7(D)に示すように、導光部材21の本体部分20aと光透過部材23の本体部分24aとが、同一の屈折率を有する異なる材料で構成されている。なお、虚像表示装置の作製における各工程については、図6(A)等に示す場合と同様である。
【0067】
本変形例においても、接合部分である面S1,S2は、同一の材料で構成されるハードコート層CC1,CC2によって形成されているので、当該材料を接着するのに適した接着剤を用いることで、本体部分20a,24aの材料が異なっていても、必要に足る接着力を確保することができる。
【0068】
また、本体部分20a,24aの材料を同一の屈折率を有するものとすることで、歪みのない良好な状態でのシースルー観察が可能となる。
【0069】
〔F.その他〕
以上実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0070】
上記実施形態では、半透過反射膜であるハーフミラー層28を被覆するコート層としてハードコート層CC1を利用しているが、半透過反射膜をハードコート層以外のコート層で覆うものとしてもよい。また、反射防止コートARを施す場合には、導光部材21と光透過部材23との接合後に成膜するものとしているが、ハードコート層CC1の成膜後であって導光部材21と光透過部材23との接合の前に反射防止コートARを成膜することで、ハードコート層CC1と反射防止コートARとによってハーフミラー層28を被覆する構成も考えられる。
【0071】
光透過部材23の形状は、導光部材21を横すなわちX方向に延長するものに限らず、導光部材21を上下から挟むように拡張した部分を含むものとできる。例えば、図8(A)〜8(D)及び図9(A)〜9(D)に示すような導光部材21及び光透過部材23の組み合わせが考えられる。なお、これらの比較的複雑な形状の導光部材21及び光透過部材23であっても、例えばディップ処理によってハードコート層CC1,CC2を成膜することで、全体に比較的薄い膜を均一に成膜できる。なお、ハードコート層CC1,CC2の成膜方法については、ディップ処理に限らず、通常のコート方式やスプレー方式、ロールコート方式、湿式のコート方式等も適用可能である。導光部材21等の形状が比較的単純な場合には、上記のような種々の方法で、所望の膜厚のハードコート層CC1,CC2を形成できる。
【0072】
上記実施形態では、半透過反射部であるハーフミラー層28を、例えば銀等による金属反射膜や誘電体多層膜を成膜することにより形成される半透過反射膜としているが、これに限らず、半透過反射性を有する半透過部材や、半透過性のシート等によって半透過反射部を構成するものとしてもよい。また、例えば図10(A)に示すように、ミラー層25やハーフミラー層28(図2(A)等参照)に代えて、ホログラム素子HE1,HE2によって第3反射面21cや第4反射面21dを形成するものとしてもよい。つまり、画像光を折り曲げるとともに外界光を透過させる半透過反射部をホログラム素子HE2で構成するものとしてもよい。この場合、画像表示装置11は、光源として、例えば3色の光束を発生するLED光源を有し、ホログラム素子HE1,HE2は、当該3色に応じた3層構造のホログラム層を有するものとする。これにより、ホログラム素子HE1,HE2は、第3反射面21cや第4反射面21dの近辺に形成された仮想的なミラーとして、画像表示装置11からの各色光を所望の方向に反射させる機能を有するものとなる。つまり、ホログラム素子825は、画像光の反射方向の調整を可能とする。また、ホログラム素子HE1,HE2を用いる場合、各色光を所望の方向に反射できる。従って、例えば図10(B)に示すように、第3及び第4反射面21c,21dを第1反射面21aに対して傾斜させることなく、第2反射面21bを延長した第1反射面21aに平行な面上にホログラム素子HE1,HE2を形成する構成とすることもできる。なお、ホログラム素子HE2は、特定波長帯の光に対してのみ作用し他の波長帯の光を透過させるため、外界光を通過させてシースルー観察が可能となっている。
【0073】
上記の説明では、光入射部B1と導光部B2と光射出部B3とを備える導光装置20を用いたが、光入射部B1や光射出部B3において、平面ミラーを用いる必要はなく、球面又は非球面の曲面ミラーによってレンズ的な機能を持たせることもできる。さらに、図11に示すように、光入射部B1として、導光部B2から分離したプリズム又はブロック状のリレー部材1125を用いることができ、このリレー部材1125の入射出射面や反射内面にレンズ的な機能を持たせることもできる。なお、導光部B2を構成する導光体26には、画像光GLを反射によって伝搬させる第1及び第2の面である第1及び第2反射面21a,21bが設けられているが、これらの反射面21a,21bは、互いに平行である必要はなく、曲面とすることもできる。
【0074】
上記実施形態では、照明装置31からの照明光SLに特に指向性を持たせていないが、照明光SLに液晶表示デバイス32の位置に応じた指向性を持たせることができる。これにより、液晶表示デバイス32を効率的に照明することができ、画像光GLの位置による輝度ムラを低減できる。
【0075】
上記実施形態では、液晶表示デバイス32の表示輝度を特に調整していないが、図5(B)等に示すような投射像IM1,IM2の範囲や重複に応じて表示輝度の調整を行うことができる。
【0076】
上記実施形態では、画像表示装置11として、透過型の液晶表示デバイス32等を用いているが、画像表示装置11としては、透過型の液晶表示デバイス32に限らず種々のものを利用可能である。例えば、反射型の液晶表示デバイスを用いた構成も可能であり、液晶表示デバイス32に代えてデジタル・マイクロミラー・デバイス等を用いることもできる。また、画像表示装置11として、LEDアレイやOLED(有機EL)などに代表される自発光型素子を用いることもできる。
【0077】
上記実施形態の虚像表示装置100では、右眼及び左眼の双方に対応して、一組ずつ画像形成装置10及び導光装置20設ける構成としているが、右眼又は左眼のいずれか一方に対してのみ画像形成装置10と導光装置20とを設け画像を片眼視する構成にしてもよい。
【0078】
上記実施形態では、光入射面ISを通る第1光軸AX1と光入射面ISを通る第2光軸AX2とが平行であるとしたが、これらの光軸AX1,AX2を非平行とすることもできる。
【0079】
上記の説明では、虚像表示装置100がヘッドマウントディスプレイであるとして具体的な説明を行ったが、虚像表示装置100は、ヘッドアップディスプレイに改変することもできる。
【0080】
上記の説明では、第1及び第2反射面21a,21bにおいて、表面上にミラーやハーフミラー等を施すことなく空気との界面により画像光を全反射させて導くものとしているが、本願発明における全反射については、第1及び第2反射面21a,21b上の全体又は一部にミラーコートや、ハーフミラー膜が形成されてなされる反射も含むものとする。例えば、画像光の入射角度が全反射条件を満たした上で、第1及び第2反射面21a,21bの全体又は一部にミラーコート等が施され、実質的に全ての画像光を反射する場合も含まれる。また、十分な明るさの画像光を得られるのであれば、多少透過性のあるミラーによって第1及び第2反射面21a,21bの全体又は一部がコートされていてもよい。
【0081】
上記の説明では、導光部材21が眼EYの並ぶ横方向に延びているが、導光部材21は、縦方向に延びるものとできる。この場合、光学パネル110は、直列的ではなく並列的に平行配置されることになる。
【符号の説明】
【0082】
10…画像形成装置、 11…画像表示装置、 12…投射光学系、 20…導光装置、 20a…本体部分、 21…導光部材、 21a,21b,21c,21d…反射面、 21e…第1の側面(上面)、 21f…第2の側面(下面)、 21h…端面、 23…光透過部材、 23a,23b,23c…面、 24a…本体部分、 25…ミラー層、 28…ハーフミラー層(半透過反射膜)、 31…照明装置、 32…液晶表示デバイス、 32b…表示領域、 34…駆動制御部、 100…虚像表示装置、 100A,100B…表示装置、 110…光学パネル、 121…フレーム、 131,132…駆動部、 AX1…第1光軸、 AX2…第2光軸、 B1…光入射部、 B2…導光部、 B3…光射出部、 B4…透視部、 CC…接着層、 EY…眼、 FS…平坦面、 GL…画像光、 GL'…外界光、 GL11,GL12,GL21,GL22…画像光、 IM1,IM2…投射像、 IS…光入射面、 L1,L2,L3…レンズ、 OS…光射出面、 P1…表示点、 P2…表示点、 SL…照明光、 CC1…ハードコート層(コート層)、 CC2…ハードコート層(対向面形成層)、 AR…反射防止コート
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭部に装着して使用するヘッドマウントディスプレイ等の虚像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ヘッドマウントディスプレイのように虚像の形成及び観察を可能にする虚像表示装置として、導光板によって表示素子からの画像光を観察者の瞳に導くタイプのものが種々提案されている。
【0003】
このような虚像表示装置において、画像光と外界光とを重畳させるために、シースルー光学系の提案がなされている(特許文献1)。特許文献1では、プリズムと透明基板とを組み合わせて形成した斜面にホログラム素子を有することで、画像光を反射させつつも外界光を歪めることなく透過させてシースルー観察を可能にしているが、この斜面を形成するために、2つの光学部品を接着剤によって接合している。この場合において、特許文献1では、安全性を確保する観点から、光学部品のうちホログラム素子を設ける面の側方の面を眼球から遠ざかる方向に広がるように傾斜させることで、接合箇所の接着が剥がれた場合にヘッドマウントディスプレイの装着者の眼球側に光学部品が落下するのを防止するようにしている。また、ヘッドマウントディスプレイを構成する部材の接着に際して、接着力の関係を調整して部材の表面にはみ出した余分な接着剤を除去しやすくするものが知られている(特許文献2参照)。
【0004】
しかし、特許文献1等に記載の装置において、シースルー観察を行う接合部分において、接合用の接着剤に含まれる溶剤が接着部分周辺を溶解すること等によってホログラム素子等の光学素子に対して影響を与えると、画像光や外界光によって観察される画像等が劣化したものとなる可能性がある。また、特許文献2を用いても、例えばシースルー観察のため光学素子が部材間に挟まれた状態とするような接着において、当該光学素子が接着剤による影響を受けることなく接着できるとは限らない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−240924号公報
【特許文献2】特開2008−268873号公報
【発明の概要】
【0006】
本発明は、上記背景技術の問題に鑑みてなされたものであり、虚像を形成する光学素子の劣化の発生を抑えて良好な状態でのシースルー観察を可能にする虚像表示装置及び虚像表示装置の製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る虚像表示装置は、(a)画像光を形成する画像表示装置と、(b)画像表示装置から射出された画像光による虚像を形成する投射光学系と、(c)投射光学系を通過した画像光を内部に取り込む光入射部と、光入射部から取り込まれた画像光を対向して延びる第1及び第2の面での全反射により導く導光部と、導光部を経た画像光を外部へ取出す光射出部と、を有する導光装置と、を備え、(d)導光装置が、光射出部において、画像光を折り曲げるとともに外界光を透過させる反射部と、反射部を覆うコート層と、を有する。
【0008】
上記虚像表示装置では、反射部がコート層によって覆われている。従って、例えば外界光を歪めることなく透過させてシースルー観察を可能とするために、反射部に対して外界光を透過させる側から透明部材を接合する場合に、接合部分にコート層が介在することで、反射部が溶剤等を含む接着剤から影響を受けてその光学特性が劣化するという事態を回避できる。反射部が的確に保護されるので、反射部の光学的機能である画像光を反射するとともに外界光を透過させる状態が適切に維持され、良好な状態でのシースルー観察が可能となる。なお、上記の反射部には、画像光を折り曲げるとともに外界光を透過させる種々のものが含まれる。つまり、反射部には、金属反射膜や誘電体多層膜を成膜することにより形成される半透過反射膜のみならず、半透過反射性を有する半透過部材や、半透過性のシート、特定波長の光に対してのみ作用し他の波長の光を透過させるホログラム素子等の種々の半透過性の反射部(半透過反射部)が含まれるものとする。
【0009】
本発明の具体的な側面では、導光装置が、反射部に対向する対向面を有し、コート層を介して対向面と反射部とを接合することによって外界光の観察を可能にする透視部を構成する光透過部材を有する。この場合、透視部により歪みのないシースルー観察が可能となる。
【0010】
本発明の別の側面では、光透過部材が、コート層と同一の材料で構成されて対向面を形成する対向面形成層を有する。この場合、コート層及び対向面形成層に共通して用いる材料の選択により、例えば光透過部材の接合性をよくすることができる。
【0011】
本発明のさらに別の側面では、導光装置のうち導光部を含む導光部材の本体部分と、光透過部材の本体部分とは、同一の材料で構成される。この場合、導光部材の本体部分と光透過部材の本体部分とでの屈折率差をなくすことができる。
【0012】
本発明のさらに別の側面では、導光部材の本体部分及び光透過部材の本体部分の材料は、シクロオレフィンポリマーである。この場合、高い光透過性を持たせ、かつ、吸湿性を特に抑制でき、より良好な状態でのシースルー観察が可能となる。
【0013】
本発明のさらに別の側面では、導光装置のうち導光部を含む導光部材の本体部分と、光透過部材の本体部分とは、同一の屈折率を有する異なる材料で構成される。この場合、種々の目的に応じて導光部材側と光透過部材側とで用いる材料の選択ができる。
【0014】
本発明のさらに別の側面では、コート層が、少なくとも上記第1及び第2の面を含む画像光の導光に寄与する面を保護するハードコート層である。この場合、ハードコート層により、表面の損傷を防止し映像の解像度低下を防止することができる。
【0015】
本発明のさらに別の側面では、コート層が、コート材をディップ処理によって塗布することで形成される。この場合、導光装置の形状が比較的複雑であっても、所望の厚さの膜を均一に成膜できる。
【0016】
本発明のさらに別の側面では、導光部が、互いに平行に配置され全反射による導光を可能にする上記第1の面と上記第2の面とを有し、光入射部が、第1の面に対して所定の角度をなす第3の面を有し、光射出部が、第1の面に対して所定の角度をなす第4の面を有する。この場合、反射回数の異なる画像光を同時に合成して1つの虚像を形成する画像光として取り出して、光射出部越しに観察される虚像の表示サイズを大きく確保することができる。
【0017】
本発明のさらに別の側面では、反射部が、第4の面上に形成される。この場合、上記第4の面において、シースルーを可能とする透視部を形成することができる。
【0018】
上記課題を解決するため、本発明に係る虚像表示装置の製造方法は、(a)画像光を形成する画像表示装置と、(b)画像表示装置から射出された画像光による虚像を形成する投射光学系と、(c1)投射光学系を通過した画像光を内部に取り込む光入射部と(c2)光入射部から取り込まれた画像光を対向して延びる第1及び第2の面での全反射により導く導光部と(c3)導光部を経た画像光を外部へ取出す光射出部と(c4)光射出部と組み合わせることによって外界光の観察を可能にする透視部を構成する光透過部材と(c5)光射出部と光透過部材との間に配置されて画像光を折り曲げるとともに外界光を透過させる反射部とを有する(c)導光装置と、を備える虚像表示装置の製造方法であって、(d)反射部を光射出部側に配置する反射部作製工程と、(e)反射部作製工程において作製された反射部を覆うコート層を成膜するコート層成膜工程と、(f)コート層成膜工程においてコート層に覆われた反射部を間に挟むようにして光射出部と光透過部材とを接合する接合工程と、を有する。
【0019】
上記虚像表示装置の製造方法では、反射部作製工程で作製された反射部を、コート層成膜工程において成膜されたコート層によって覆っている。従って、外界光を歪めることなく透過させてシースルー観察を可能とするために、反射部に対して外界光を透過させる側から透明部材を接合する接合工程において、接合部分にコート層が介在することで、反射部が溶剤等を含む接着剤から影響を受けてその光学特性が劣化するという事態を回避できる。これにより、製造された虚像表示装置では、反射部が的確に保護されるので、反射部の光学的機能である画像光を反射するとともに外界光を透過させる状態が適切に維持され、良好な状態でのシースルー観察が可能となる。
【0020】
本発明の具体的な側面では、コート層成膜工程において、コート層となるべきコート材をディップ処理によって塗布するディップ処理工程を含む。この場合、製造される導光装置の形状が比較的複雑であっても、所望の厚さの膜を均一に成膜できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施形態の虚像表示装置を示す斜視図である。
【図2】(A)は、虚像表示装置を構成する第1表示装置の本体部分の平面図であり、(B)は、本体部分の正面図である。
【図3】(A)は、縦の第1方向に関する光路を展開した概念図であり、(B)は、横の第2方向に関する光路を展開した概念図である。
【図4】虚像表示装置の光学系における光路を具体的に説明する平面図である。
【図5】(A)は、液晶表示デバイスの表示面を示し、(B)は、観察者に見える液晶表示デバイスの虚像を概念的に説明する図であり、(C)及び(D)は、虚像を構成する部分画像を説明する図である。
【図6】(A)は、コート層の成膜前の導光装置を示す図であり、(B)は、コート層の成膜後の導光部材及び光透過部材を示す図であり、(C)は、導光部材と光透過部材とを接合した状態を示す図であり、(D)は、反射防止コートを施した状態を示す図である。
【図7】(A)は、変形例の虚像表示装置の製造におけるコート層の成膜前の導光部材を示す図であり、(B)は、コート層の成膜後の導光部材及び光透過部材を示す図であり、(C)は、導光部材と光透過部材とを接合した状態を示す図であり、(D)は、反射防止コートを施した状態を示す図である。
【図8】(A)は導光部材の正面図であり、(B)は導光部材の下面図であり、(C)は導光部材の左側面図であり、(D)は導光部材の右側面図である。
【図9】(A)は光透過部材の裏面図であり、(B)は光透過部材のBB断面図であり、(C)は光透過部材の左側面図であり、(D)は光透過部材の右側面図である。
【図10】(A)は、虚像表示装置を構成する第1表示装置の変形例を示す図であり、(B)は、第1表示装置の別の変形例を示す図である。
【図11】虚像表示装置を構成する第1表示装置のさらに別の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る虚像表示装置について詳細に説明する。
【0023】
〔A.虚像表示装置の外観〕
図1に示す実施形態の虚像表示装置100は、眼鏡のような外観を有するヘッドマウントディスプレイであり、この虚像表示装置100を装着した観察者に対して虚像による画像光を認識させることができるとともに、観察者に外界像をシースルーで観察させることができる。虚像表示装置100は、観察者の眼前を覆う光学パネル110と、光学パネル110を支持するフレーム121と、フレーム121のヨロイからテンプルにかけての部分に付加された第1及び第2駆動部131,132とを備える。ここで、光学パネル110は、第1パネル部分111と第2パネル部分112とを有し、両パネル部分111,112は、中央で一体的に連結された板状の部品となっている。図面上で左側の第1パネル部分111と第1駆動部131とを組み合わせた第1表示装置100Aは、左眼用の虚像を形成する部分であり、単独でも虚像表示装置として機能する。また、図面上で右側の第2パネル部分112と第2駆動部132とを組み合わせた第2表示装置100Bは、右眼用の虚像を形成する部分であり、単独でも虚像表示装置として機能する。
【0024】
〔B.表示装置の構造〕
図2(A)等に示すように、第1表示装置100Aは、画像形成装置10と、導光装置20とを備える。ここで、画像形成装置10は、図1における第1駆動部131に相当し、導光装置20は、図1における第1パネル部分111に相当する。なお、図1に示す第2表示装置100Bは、第1表示装置100Aと同様の構造を有し左右を反転させただけであるので、第2表示装置100Bの詳細な説明は省略する。
【0025】
画像形成装置10は、画像表示装置11と、投射光学系12とを有する。このうち、画像表示装置11は、2次元的な照明光SLを射出する照明装置31と、透過型の空間光変調装置である液晶表示デバイス32と、照明装置31及び液晶表示デバイス32の動作を制御する駆動制御部34とを有する。
【0026】
照明装置31は、赤、緑、青の3色を含む光を発生する光源31aと、光源31aからの光を拡散させて矩形断面の光束にするバックライト導光部31bとを有する。液晶表示デバイス32は、照明装置31からの照明光SLを空間的に変調して動画像等の表示対象となるべき画像光を形成する。駆動制御部34は、光源駆動回路34aと、液晶駆動回路34bとを備える。光源駆動回路34aは、照明装置31の光源31aに電力を供給して安定した輝度の照明光SLを射出させる。液晶駆動回路34bは、液晶表示デバイス32に対して画像信号又は駆動信号を出力することにより、透過率パターンとして動画や静止画の元になるカラーの画像光を形成する。なお、液晶駆動回路34bに画像処理機能を持たせることができるが、外付けの制御回路に画像処理機能を持たせることもできる。投射光学系12は、液晶表示デバイス32上の各点から射出された画像光を平行状態の光束にするコリメートレンズである。
【0027】
液晶表示デバイス32において、第1方向D1は、投射光学系12を通る第1光軸AX1と、後述する導光部材21の第3反射面21cに平行な特定線とを含む縦断面の延びる方向に対応し、第2方向D2は、上記第1光軸AX1と、上記第3反射面21cの法線とを含む横断面の延びる方向に対応する。つまり、液晶表示デバイス32の位置において、第1方向D1は、縦のY方向に相当し、第2方向D2は、横のX方向に相当する。
【0028】
導光装置20は、導光部材21と光透過部材23とを接合したものであり、全体としてXY面に平行に延びる平板状の光学部材を構成している。
【0029】
導光装置20のうち、導光部材21は、平面視において台形のプリズム状部材であり、側面を構成する第1の面から第4の面として、第1反射面21aと、第2反射面21bと、第3反射面21cと、第4反射面21dとを有する。また、導光部材21は、第1、第2、第3、及び第4反射面21a,21b,21c,21dに隣接するとともに互いに対向する第1の側面(上面)21eと第2の側面(下面)21fとを有する。ここで、第1及び第2反射面21a,21bは、XY面に沿って延び、導光部材21の厚みtだけ離間する。また、第3反射面21cは、XY面に対して45°以下の鋭角αで傾斜しており、第4反射面21dは、XY面に対して例えば45°以下の鋭角βで傾斜している。第3反射面21cを通る第1光軸AX1と第4反射面21dを通る第2光軸AX2とは平行に配置され距離Dだけ離間している。なお、以下に詳述するが、第1反射面21aと第3反射面21cとの間には、稜を除去するように端面21hが設けられている。導光部材21は、この端面21hも含めると、7面の多面体状の外形を有するものとなっている。
【0030】
導光部材21は、対向して延びる第1及び第2の面である第1及び第2反射面21a,21bによる全反射を利用して導光を行うものであり、導光に際して反射によって折り返される方向と、導光に際して反射によって折り返されない方向とがある。導光部材21で導光される画像について考えた場合、導光に際して複数回の反射によって折り返される横方向すなわち閉じ込め方向DW2は、第1及び第2反射面21a,21bに垂直(Z軸に平行)で、後述するように光源側まで光路を展開した場合に、液晶表示デバイス32の第2方向D2に相当する。一方、導光に際して反射によって折り返されないで伝搬する縦方向すなわち非閉じ込め方向DW1は、第1及び第2反射面21a,21b及び第3反射面21cに平行(Y軸に平行)で、後述するように光源側まで光路を展開した場合に、液晶表示デバイス32の第1方向D1に相当する。なお、導光部材21において、伝搬される光束が全体として向かう主導光方向は、−X方向になっている。
【0031】
導光部材21は、可視域で高い光透過性を示す樹脂材料で形成されている。導光部材21は、射出成型によって一体的に成型されたブロック状部材を本体部分20aとし、本体部分20aは、例えば熱又は光重合型の樹脂材料を成型金型内に射出させ熱硬化又は光硬化させることで形成されている。このように導光部材21は、本体部分20aを一体形成品とするが、機能的に、光入射部B1と導光部B2と光射出部B3とに分けて考えることができる。
【0032】
光入射部B1は、三角プリズム状の部分であり、第1反射面21aの一部である光入射面ISと、光入射面ISに対向する第3反射面21cとを有する。光入射面ISは、画像形成装置10からの画像光GLを取り込むための裏側又は観察者側の平面であり、投射光学系12に対向してその第1光軸AX1に垂直に延びている。第3反射面21cは、矩形の輪郭を有し、その矩形領域全体に、光入射面ISを通過した画像光GLを反射して導光部B2内に導くための全反射ミラーであるミラー層25を有する。このミラー層は、導光部材21の本体部分20aの斜面RS上にアルミ等の蒸着によって成膜を施すことにより形成される。第3反射面21cは、投射光学系12の第1光軸AX1又はXY面に対して例えば鋭角α=25°〜27°で傾斜しており、光入射面ISから入射し全体として+Z方向に向かう画像光GLを、全体として−Z方向寄りの−X方向に向かわせるように折り曲げることで、画像光GLを導光部B2内に確実に結合させる。
【0033】
導光部B2は、互いに対向しXY面に平行に延びる2平面として、光入射部B1で折り曲げられた画像光をそれぞれ全反射させる第1反射面21aと第2反射面21bとを有している。第1及び第2反射面21a,21bの間隔すなわち導光部材21の厚みtは、例えば9mm程度とされている。ここでは、第1反射面21aが画像形成装置10に近い裏側又は観察者側にあるものとし、第2反射面21bが画像形成装置10から遠い表側又は外界側にあるものとする。この場合、第1反射面21aは、上記の光入射面ISや後述する光射出面OSと共通の面部分となっている。第1及び第2反射面21a,21bは、屈折率差を利用する全反射面であり、ミラー層等の反射コートが施されていないが、表面の損傷を防止し映像の解像度低下を防止するため、コート層であるハードコート層CC1で被覆されている。なお、必要であればさらに反射防止コートARで被覆してもよい。
【0034】
光入射部B1の第3反射面21cで反射された画像光GLは、まず、第1反射面21aに入射し、全反射される。次に、当該画像光GLは、第2反射面21bに入射し、全反射される。以下この動作が繰り返されることで、画像光は、全体として導光装置20の奥側の主導光方向すなわち光射出部B3を設けた+Z側に導かれる。なお、第1及び第2反射面21a,21bには反射コートが施されていないため、外界側から第2反射面21bに入射する外界光又は外光は、高い透過率で導光部B2を通過する。つまり、導光部B2は、外界像の透視が可能なシースルータイプになっている。
【0035】
光射出部B3は、三角プリズム状の部分であり、第1反射面21aの一部である光射出面OSと、光射出面OSに対向する第4反射面21dとを有する。光射出面OSは、画像光GLを観察者の眼EYに向けて射出するための裏側の平面であり、光入射面ISと同様に第1反射面21aの一部となっており、第2光軸AX2に垂直に延びている。光射出部B3を通る第2光軸AX2と光入射部B1を通る第1光軸AX1との距離Dは、観察者の頭部の幅等を考慮して例えば50mmに設定されている。第4反射面21dは、矩形の平坦面であり、第1及び第2反射面21a,21bを経て入射してきた画像光GLを反射して光射出部B3外に射出させるとともに外界光を透過させるための反射部(半透過反射部)であるハーフミラー層28を有する。つまり、このハーフミラー層28は、光透過性を有する半透過反射膜である。ハーフミラー層(半透過反射膜)28は、導光部材21のうち第4反射面21dを構成する斜面RR上に例えば銀等による金属反射膜や誘電体多層膜を成膜することにより形成される。ハーフミラー層28の画像光GLに対する反射率は、シースルーによる外界光GL'の観察を容易にする観点で、想定される画像光GLの入射角範囲において10%以上50%以下とする。具体的な実施例のハーフミラー層28の画像光GLに対する反射率は、例えば20%に設定され、画像光GLに対する透過率は、例えば80%に設定される。
【0036】
第4反射面21dは、第1反射面21aに垂直な第2光軸AX2又はXY面に対して例えば鋭角α=25°〜27°で傾斜しており、上記ハーフミラー層28により、導光部B2の第1及び第2反射面21a,21bを経て入射してきた画像光GLを部分的に反射して全体として−Z方向に向かわせるように折り曲げることで、光射出面OSを通過させる。また、第4反射面21dは、外界光GL'を部分的に透過させ光射出面OSを通過させる面でもあり、半透過半反射面である。なお、第4反射面21dを透過した画像光の成分は、光透過部材23に入射し、映像の形成には利用されない。
【0037】
本実施形態では、第4反射面21dのハーフミラー層28上においても、第1及び第2反射面21a,21bを被覆するコート層であるハードコート層CC1が施されている。従って、ハーフミラー層28は、ハードコート層CC1によって保護された状態となっている。
【0038】
光透過部材23は、導光部材21の本体と同一の材料で構成され同一の屈折率を有し、第1面23aと、第2面23bと、第3面23cとを有する。第1及び第2面23a,23bは、XY面に沿って延びる。また、第3面23cは、XY面に対して傾斜しており、導光部材21の第4反射面21dに対向して平行に配置されている。つまり、光透過部材23は、第2面23bと第3面23cとに挟まれた楔状の部材を有するものとなっている。光透過部材23は、導光部材21と同様に、可視域で高い光透過性を示す樹脂材料で形成されている。光透過部材23は、射出成型によって一体的に成型されたブロック状部材であり、例えば熱又は光重合型の樹脂材料を成型金型内に射出させ熱硬化又は光硬化させることで形成されている。なお、光透過部材23の表面には、ハードコート層CC1と同一材料で構成されるハードコート層CC2が施されている。
【0039】
光透過部材23において、第1面23aは、導光部材21に設けた第1反射面21aの延長平面上に配置され、観察者の眼EYに近い裏側にあり、第2面23bは、導光部材21に設けた第2反射面21bの延長平面上に配置され、観察者の眼EYから遠い表側にある。第3面23cは、接着剤によって導光部材21の第4反射面21dに接合される矩形の光透過面である。以上の第1面23aと第3面23cとなす角度は、導光部材21の第2反射面21bと第4反射面21dとのなす角度εと等しくなっており、第2面23bと第3面23cとなす角度は、導光部材21の第1反射面21aと第3反射面21cとのなす角度βと等しくなっている。
【0040】
光透過部材23と導光部材21とは、両者の接合部分及びその近傍において、透視部B4を構成している。すなわち、第1及び第2面23a,23bには、ミラー層等の反射コートが施されていないため、導光部材21の導光部B2と同様に外界光GL'を高い透過率で透過させる。第3面23cも、外界光GL'を高い透過率で透過可能であるが、導光部材21の第4反射面21dがハーフミラー層28を有していることから、第3面23cを通過する外界光GL'は、例えば20%減光される。つまり、観察者は、20%に減光された画像光GLと80%に減光された外界光GL'とを重畳させたものを観察することになる。
【0041】
透視部B4の構成すなわち光透過部材23と導光部材21との接合において、ハーフミラー層28は、接合部分において挟持された状態となる。このような接合において、例えば接着剤に含まれる溶剤が接着箇所を溶解すること等によってハーフミラー層28を侵食し、ひいては画像光や外界光によって観察される画像等が劣化したものとなる可能性がある。本実施形態では、光透過部材23と導光部材21との接合前にハーフミラー層28をハードコート層CC1によって保護した状態とすることで、ハーフミラー層28が接着剤から影響を受けないようにしている。
【0042】
〔C.画像光の光路の概要〕
図3(A)は、液晶表示デバイス32の縦断面CS1に対応する第1方向D1の光路を説明する図である。第1方向D1に沿った縦断面すなわちYZ面(展開後のY'Z'面)において、液晶表示デバイス32から射出された画像光のうち、図中一点鎖線で示す表示領域32bの上端側(+Y側)から射出される成分を画像光GLaとし、図中二点差線で示す表示領域32bの下端側(−Y側)から射出される成分を画像光GLbとする。
【0043】
上側の画像光GLaは、投射光学系12によって平行光束化され、展開された光軸AX'に沿って、導光部材21の光入射部B1、導光部B2、及び光射出部B3を通り、観察者の眼EYに対して平行光束状態で、角度φ1の上方向から傾いて入射する。一方、下側の画像光GLbは、投射光学系12によって平行光束化され、展開された光軸AX'に沿って、導光部材21の光入射部B1、導光部B2、及び光射出部B3を通り、観察者の眼EYに対して平行光束状態で、角度φ2(|φ2|=|φ1|)の下方向から傾いて入射する。以上の角度φ1,φ2は、上下の半画角に相当し、例えば6.5°に設定される。
【0044】
図3(B)は、液晶表示デバイス32の横断面CS2に対応する第2方向(閉じ込め方向DW2又は合成方向)D2の光路を説明する図である。第2方向D2(閉じ込め方向DW2又は合成方向)に沿った横断面CS2すなわちXZ面(展開後のX'Z'面)において、液晶表示デバイス32から射出された画像光のうち、図中一点鎖線で示す表示領域32bに向かって右端側(+X側)の第1表示点P1から射出される成分を画像光GLcとし、図中二点差線で示す表示領域32bに向かって左端側(−X側)の第2表示点P2から射出される成分を画像光GLdとする。図3(B)中には、参考のため、右寄り内側のから射出される画像光GLeと、左寄り内側のから射出される画像光GLfとを追加している。
【0045】
右側の第1表示点P1からの画像光GLcは、投射光学系12によって平行光束化され、展開された光軸AX'に沿って、導光部材21の光入射部B1、導光部B2、及び光射出部B3を通り、観察者の眼EYに対して平行光束状態で、角度θ1の右方向から傾いて入射する。一方、左側の第2表示点P2からの画像光GLdは、投射光学系12によって平行光束化され、展開された光軸AX'に沿って、導光部材21の光入射部B1、導光部B2、及び光射出部B3を通り、観察者の眼EYに対して平行光束状態で、角度θ2(|θ2|=|θ1|)の左方向から傾いて入射する。以上の角度θ1,θ2は、左右の半画角に相当し、例えば10°に設定される。
【0046】
なお、第2方向D2の横方向に関しては、導光部材21中で画像光GLc,GLdが反射によって折り返され、反射の回数も異なることから、各画像光GLc,GLdが導光部材21中で不連続に表現されている。また、観察者の眼EYについては、図2(A)の場合と比較して見ている方向が上下反対となっている。結果的に、横方向に関しては、全体として画面が左右反転するが、後に詳述するように導光部材21を高精度に加工することで、液晶表示デバイス32の右半分の画像と液晶表示デバイス32の左半分の画像とが切れ目なく連続してズレなくつなぎ合わされたものとなる。なお、両画像光GLc,GLdの導光部材21内での反射回数が互いに異なることを考慮して、右側の画像光GLcの射出角度θ1'と左側の画像光GLdの射出角度θ2'とは異なるものに設定されている。
【0047】
以上により、観察者の眼EYに入射する画像光GLa,GLb,GLc,GLdは、無限遠からの虚像となっており、縦の第1方向D1に関しては液晶表示デバイス32に形成された映像が正立し、横の第2方向D2に関しては液晶表示デバイス32に形成された映像が反転する。
【0048】
〔D.横方向に関する画像光の光路〕
図4は、第1表示装置100Aにおける具体的な光路を説明する断面図である。投射光学系12は、3つのレンズL1,L2,L3を有している。
【0049】
液晶表示デバイス32の右側の第1表示点P1からの画像光GL11,GL12は、投射光学系12のレンズL1,L2,L3を通過することで平行光束化され、導光部材21の光入射面ISに入射する。導光部材21内に導かれた画像光GL11,GL12は、第1及び第2反射面21a,21bにおいて等しい角度で全反射を繰り返して、最終的に光射出面OSから平行光束として射出される。具体的には、画像光GL11,GL12は、平行光束として導光部材21の第3反射面21cで反射された後、第1反射角γ1で導光部材21の第1反射面21aに入射し、全反射される(第1回目の全反射)。その後、画像光GL11,GL12は、第1反射角γ1を保った状態で、第2反射面21bに入射して全反射され(第2回目の全反射)、次いで再度第1反射面21aに入射して全反射される(第3回目の全反射)。結果的に、画像光GL11,GL12は、第1及び第2反射面21a,21bにおいて計3回全反射され、第4反射面21dに入射する。画像光GL11,GL12は、この第4反射面21dで第3反射面21cと同一の角度で反射され、光射出面OSからこの光射出面OSに垂直な第2光軸AX2方向に対して角度θ1の傾きで平行光束として射出される。
【0050】
液晶表示デバイス32の左側の第2表示点P2からの画像光GL21,GL22は、投射光学系12のレンズL1,L2,L3を通過することで平行光束化され、導光部材21の光入射面ISに入射する。導光部材21内に導かれた画像光GL21,GL22は、第1及び第2反射面21a,21bにおいて等しい角度で全反射を繰り返して、最終的に光射出面OSから平行光束として射出される。具体的には、画像光GL21,GL22は、平行光束として導光部材21の第3反射面21cで反射された後、第2反射角γ2(γ2<γ1)で導光部材21の第1反射面21aに入射し、全反射される(第1回目の全反射)。その後、画像光GL21,GL22は、第2反射角γ2を保った状態で、第2反射面21bに入射して全反射され(第2回目の全反射)、再度第1反射面21aに入射して全反射され(第3回目の全反射)、再度第2反射面21bに入射して全反射され(第4回目の全反射)、再々度第1反射面21aに入射して全反射される(第5回目の全反射)。結果的に、画像光GL21,GL22は、第1及び第2反射面21a,21bにおいて計5回全反射され、第4反射面21dに入射する。画像光GL21,GL22は、この第4反射面21dで第3反射面21cと同一の角度で反射され、光射出面OSからこの光射出面OSに垂直な第2光軸AX2方向に対して角度θ2の傾きで平行光束として射出される。
【0051】
図4において、導光部材21を展開した場合に第1反射面21aに対応する仮想的な第1面121aと、導光部材21を展開した場合に第2反射面21bに対応する仮想的な第2面121bとを描いている。このように展開することにより、第1表示点P1からの画像光GL11,GL12は、光入射面ISに対応する入射等価面IS'を通過した後、第1面121aを2回通過し第2面121bを1回通過して光射出面OSから射出されて観察者の眼EYに入射することが分かり、第2表示点P2からの画像光GL21,GL22は、光入射面ISに対応する入射等価面IS"を通過した後、第1面121aを3回通過し第2面121bを2回通過して光射出面OSから射出されて観察者の眼EYに入射することが分かる。見方を変えると、観察者は、2つの位置の異なる入射等価面IS',IS"の近傍に存在する投射光学系12のレンズL3を重ねて観察していることになる。
【0052】
図5(A)は、液晶表示デバイス32の表示面を概念的に説明する図であり、図5(B)は、観察者に見える液晶表示デバイス32の虚像を概念的に説明する図であり、図5(C)及び5(D)は、虚像を構成する部分画像を説明する図である。図5(A)に示す液晶表示デバイス32に設けた矩形の画像形成領域ADは、図5(B)に示す虚像表示領域AIとして観察される。虚像表示領域AIの左側には、液晶表示デバイス32の画像形成領域ADのうち中央から右側にかけての部分に相当する第1投射像IM1が形成され、この第1投射像IM1は、図5(C)に示すように右側が欠けた部分画像となっている。また、虚像表示領域AIの右側には、液晶表示デバイス32の画像形成領域ADのうち中央から左側にかけての部分に相当する投射像IM2が虚像として形成され、この第2投射像IM2は、図5(D)に示すように左半分が欠けた部分画像となっている。
【0053】
図5(A)に示す液晶表示デバイス32のうち第1投射像(虚像)IM1のみを形成する第1部分領域A10は、例えば液晶表示デバイス32の右端の第1表示点P1を含んでおり、導光部材21の導光部B2において合計3回全反射される画像光GL11,GL12を射出する。液晶表示デバイス32のうち第2投射像(虚像)IM2のみを形成する第2部分領域A20は、例えば液晶表示デバイス32の左端の第2表示点P2を含んでおり、導光部材21の導光部B2において合計5回全反射される画像光GL21,GL22を射出する。液晶表示デバイス32の画像形成領域ADの中央寄りにおいて第1及び第2部分領域A10,A20に挟まれて縦長に延びる帯域SAからの画像光は、図5(B)に示す重複画像SIを形成している。つまり、液晶表示デバイス32の帯域SAからの画像光は、導光部B2において計3回全反射される画像光GL11,GL12によって形成される第1投射像IM1と、導光部B2において計5回全反射される画像光GL11,GL12によって形成される第2投射像IM2となって、虚像表示領域AI上で重畳していることになる。導光部材21の加工が精密で、投射光学系12によって正確にコリメートされた光束が形成されているならば、重複画像SIについて、2つの投射像IM1,IM2の重畳によるズレや滲みを防止することができる。
【0054】
以上では、液晶表示デバイス32の右側の第1表示点P1を含む第1部分領域A10から射出された画像光GL11,GL12の第1及び第2反射面21a,21bによる全反射回数が計3回で、液晶表示デバイス32の左側の第2表示点P2を含む第2部分領域A20から射出された画像光GL21,GL22の第1及び第2反射面21a,21bによる全反射回数が計5回であるとしたが、全反射回数については適宜変更することができる。つまり、導光部材21の外形(すなわち厚みt、距離D、鋭角α,β)の調整によって、画像光GL11,GL12の全反射回数を計5回とし、画像光GL21,GL22の全反射回数を計7回とすることもできる。また、以上では、画像光GL11,GL12,GL21,GL22の全反射回数が奇数となっているが、光入射面ISと光射出面OSとを反対側に配置するならば、すなわち導光部材21を平面視で平行四辺形型にすれば、画像光GL11,GL12,GL21,GL22の全反射回数が偶数となる。
【0055】
〔E.虚像表示装置の作製工程〕
以下、図6(A)〜6(C)により、本実施形態に係る虚像表示装置の作製工程について説明する。ここでは、各製造工程のうち特徴的な部分である導光部材21と光透過部材23との接合による導光装置20の作製に関する工程について説明する。
【0056】
まず、図6(A)に示すように、導光部材21の本体部分20aが準備され、反射膜であるミラー層25とは透過反射膜であるハーフミラー層28とが形成される。本体部分20aは、可視域で高い光透過性を示す樹脂材料で形成されるが、ここでは、例えばメタクリルスチレンやシクロオレフィンポリマーを材料として射出成型によって成形されるものとする。本体部分20aは、導光部材21の第1〜第4反射面21a,21b,21c,21d(図2(A)等参照)を形成すべき部分である第1〜第4面SFa,SFb,SFc,SFdを有する。これらの面SFa,SFb,SFc,SFdのうち、斜面RSである第3面SFcの面上において、画像光の反射のために必要な領域にアルミ等を蒸着することによってミラー層25が成膜され、第3反射面21cが形成される(ミラー層成膜工程)。また、斜面RRである第4面SFdの面上において、画像光の反射及び外界光の透過のために必要な領域に銀等を蒸着することによってハーフミラー層28が成膜され、半透過面である第4反射面21dが形成される(反射部作製工程)。
【0057】
次に、図6(B)に示すように、ミラー層成膜工程及び反射部作製工程でミラー層25及びハーフミラー層28が成膜された状態の本体部分20aにおいて、その表面にハードコート層CC1が成膜される。ハードコート層CC1は、例えばディップ処理によってコート材を塗布することで、本体部分20aの表面全体にほぼ均一な膜厚で形成される(コート層成膜工程)。なお、ハードコート層CC1の膜厚は、5μm程度とすることが望ましい。これにより、ハードコート層CC1成膜後の形状が、成膜前の本体部分20aの形状を維持したものとなり、かつ、ハードコート層CC1が本体部分20aを損傷から防いだり汚れの除去を容易にしたりするといったハードコートとしての機能できる程度の厚さを有するものとなる。この場合、ハードコート層CC1は、第1及び第2面SFa,SFbのみならず第4反射面21dを覆って、光透過部材23に対向する側の表面S1を形成し半透過反射膜であるハーフミラー層28を保護する。つまり、ハードコート層CC1のうち、第4反射面21dを覆う部分には、半透過反射層保護層として機能しており、また、光透過部材23が接合された状態では装置の内部側に存在する中間層となる。ハードコート層CC1のうち、第1及び第2面SFa,SFbを覆う部分は、露出する表面を形成する表面コート層となる。なお、ハードコート層CC1は、第3反射面21cを覆うことでミラー層25を保護し、また、第1及び第2面SFa,SFbを覆うことで第1及び第2反射面21a,21bを形成している。以上のように、コート層成膜工程を経ることで、第1〜第4反射面21a,21b,21c,21dを有する導光部材21が作製される(導光部材準備工程)。
【0058】
また、図6(B)に示すように、導光部材準備工程において導光部材21が準備されるとともに、導光部材21に接合する光透過部材23が準備される(光透過部材準備工程)。光透過部材23は、本体部分24aと、ハードコート層CC2とを有する。つまり、光透過部材23は、本体部分24aの表面にハードコート層CC2を成膜したものとなっている。このハードコート層CC2は、導光部材21のハードコート層CC1と同一の材料で構成されており、光透過部材23の各面23a等を形成している。特に、導光部材21に対向する面である第3面23cとして、導光部材21の半透過面である第4反射面21d側に位置する表面S1に対向する対向面S2がハードコート層CC2によって形成される。言い換えると、ハードコート層CC2は、対向面S2を形成する対向面形成層である。なお、ハードコート層CC2についても、例えばディップ処理によってコート材を塗布することで、所望の膜厚で形成することができる。なお、本体部分24aは、本体部分20aと同一の材料で射出成型等によって成形される。
【0059】
次に、図6(C)に示すように、導光部材21と光透過部材23とが、導光部材21の表面S1と、光透過部材23の対向面S2とにおいて、接着剤等により貼り合わせることで、接合される(接合工程)。
【0060】
なお、必要であれば、図6(D)に示すように、接合工程において接合され一体化した導光部材21と光透過部材23とにさらに反射防止コートARを成膜してもよい(反射防止コート成膜工程)。以上により、導光装置20が作製される。
【0061】
また、以上のようにして作製される導光装置20の導光部材21について、例えば反射防止コートARを施さない場合には、図6(C)において各面について一部拡大して示すように、第1及び第2反射面21a,21bは、最表層に位置するハードコート層CC1と空気層との界面によって形成される。また、第3反射面21cは、ミラー層25と第3面SFcとの界面によって形成される。また、第4反射面21dは、ハーフミラー層28と第4面SFdとの界面によって形成される。なお、図6(D)に示すように、反射防止コートARを成膜する場合には、反射防止コートARと空気層との界面を、第1及び第2反射面21a,21bとすることができる。
【0062】
以上のように、本実施形態に係る虚像表示装置100では、導光装置20の作製において半透過反射膜であるハーフミラー層28が、ハードコート層CC1によって覆われている。従って、ハーフミラー層28のうち外界光を歪めることなく透過させるために透明部材である光透過部材23を接合する場合に、接合部分にハードコート層CC1が介在することとなり、半透過反射膜であるハーフミラー層28が溶剤等を含む接着剤から影響を受けてその光学特性が劣化するという事態を回避できる。半透過反射膜であるハーフミラー層28が的確に保護されるので、ハーフミラー層28の光学的機能である画像光を反射するとともに外界光を透過させる状態が適切に維持され、良好な状態でのシースルー観察が可能となる。
【0063】
また、本実施形態の場合、図6(C)に示す接合において、接着時の圧着といった物理的な力の作用に対しても、ハードコート層CC1が緩衝材としての役割を果たすことで、半透過反射膜であるハーフミラー層28が保護される。
【0064】
また、本実施形態の場合、接合部分である面S1,S2は、同一の材料で構成されるハードコート層CC1,CC2によって形成されているので、当該材料を接着するのに適した接着剤を用いることで、必要に足る接着力を確保することができる。従って、導光部材21の本体部分20a及び光透過部材23の本体部分24aの材料として、直接接合することが一般に困難とされているシクロオレフィンポリマーを用いることができる。シクロオレフィンポリマーを用いた場合、導光部材21や光透過部材23の高い光透過性を持たせ、かつ、吸湿性を特に抑制でき、より良好な状態でのシースルー観察が可能となる。
【0065】
なお、第1及び第2反射面21a,21bでの全反射は、ハードコート層CC1の屈折率の設定によっており、ハードコート層CC1の表面側で生じさせることもハードコート層CC1の内側である面SFa,SFbで生じさせることもできる。
【0066】
以下、図7(A)〜7(D)により、本実施形態に係る虚像表示装置の一変形例の作製工程について説明する。本変形例では、図7(B)〜7(D)に示すように、導光部材21の本体部分20aと光透過部材23の本体部分24aとが、同一の屈折率を有する異なる材料で構成されている。なお、虚像表示装置の作製における各工程については、図6(A)等に示す場合と同様である。
【0067】
本変形例においても、接合部分である面S1,S2は、同一の材料で構成されるハードコート層CC1,CC2によって形成されているので、当該材料を接着するのに適した接着剤を用いることで、本体部分20a,24aの材料が異なっていても、必要に足る接着力を確保することができる。
【0068】
また、本体部分20a,24aの材料を同一の屈折率を有するものとすることで、歪みのない良好な状態でのシースルー観察が可能となる。
【0069】
〔F.その他〕
以上実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0070】
上記実施形態では、半透過反射膜であるハーフミラー層28を被覆するコート層としてハードコート層CC1を利用しているが、半透過反射膜をハードコート層以外のコート層で覆うものとしてもよい。また、反射防止コートARを施す場合には、導光部材21と光透過部材23との接合後に成膜するものとしているが、ハードコート層CC1の成膜後であって導光部材21と光透過部材23との接合の前に反射防止コートARを成膜することで、ハードコート層CC1と反射防止コートARとによってハーフミラー層28を被覆する構成も考えられる。
【0071】
光透過部材23の形状は、導光部材21を横すなわちX方向に延長するものに限らず、導光部材21を上下から挟むように拡張した部分を含むものとできる。例えば、図8(A)〜8(D)及び図9(A)〜9(D)に示すような導光部材21及び光透過部材23の組み合わせが考えられる。なお、これらの比較的複雑な形状の導光部材21及び光透過部材23であっても、例えばディップ処理によってハードコート層CC1,CC2を成膜することで、全体に比較的薄い膜を均一に成膜できる。なお、ハードコート層CC1,CC2の成膜方法については、ディップ処理に限らず、通常のコート方式やスプレー方式、ロールコート方式、湿式のコート方式等も適用可能である。導光部材21等の形状が比較的単純な場合には、上記のような種々の方法で、所望の膜厚のハードコート層CC1,CC2を形成できる。
【0072】
上記実施形態では、半透過反射部であるハーフミラー層28を、例えば銀等による金属反射膜や誘電体多層膜を成膜することにより形成される半透過反射膜としているが、これに限らず、半透過反射性を有する半透過部材や、半透過性のシート等によって半透過反射部を構成するものとしてもよい。また、例えば図10(A)に示すように、ミラー層25やハーフミラー層28(図2(A)等参照)に代えて、ホログラム素子HE1,HE2によって第3反射面21cや第4反射面21dを形成するものとしてもよい。つまり、画像光を折り曲げるとともに外界光を透過させる半透過反射部をホログラム素子HE2で構成するものとしてもよい。この場合、画像表示装置11は、光源として、例えば3色の光束を発生するLED光源を有し、ホログラム素子HE1,HE2は、当該3色に応じた3層構造のホログラム層を有するものとする。これにより、ホログラム素子HE1,HE2は、第3反射面21cや第4反射面21dの近辺に形成された仮想的なミラーとして、画像表示装置11からの各色光を所望の方向に反射させる機能を有するものとなる。つまり、ホログラム素子825は、画像光の反射方向の調整を可能とする。また、ホログラム素子HE1,HE2を用いる場合、各色光を所望の方向に反射できる。従って、例えば図10(B)に示すように、第3及び第4反射面21c,21dを第1反射面21aに対して傾斜させることなく、第2反射面21bを延長した第1反射面21aに平行な面上にホログラム素子HE1,HE2を形成する構成とすることもできる。なお、ホログラム素子HE2は、特定波長帯の光に対してのみ作用し他の波長帯の光を透過させるため、外界光を通過させてシースルー観察が可能となっている。
【0073】
上記の説明では、光入射部B1と導光部B2と光射出部B3とを備える導光装置20を用いたが、光入射部B1や光射出部B3において、平面ミラーを用いる必要はなく、球面又は非球面の曲面ミラーによってレンズ的な機能を持たせることもできる。さらに、図11に示すように、光入射部B1として、導光部B2から分離したプリズム又はブロック状のリレー部材1125を用いることができ、このリレー部材1125の入射出射面や反射内面にレンズ的な機能を持たせることもできる。なお、導光部B2を構成する導光体26には、画像光GLを反射によって伝搬させる第1及び第2の面である第1及び第2反射面21a,21bが設けられているが、これらの反射面21a,21bは、互いに平行である必要はなく、曲面とすることもできる。
【0074】
上記実施形態では、照明装置31からの照明光SLに特に指向性を持たせていないが、照明光SLに液晶表示デバイス32の位置に応じた指向性を持たせることができる。これにより、液晶表示デバイス32を効率的に照明することができ、画像光GLの位置による輝度ムラを低減できる。
【0075】
上記実施形態では、液晶表示デバイス32の表示輝度を特に調整していないが、図5(B)等に示すような投射像IM1,IM2の範囲や重複に応じて表示輝度の調整を行うことができる。
【0076】
上記実施形態では、画像表示装置11として、透過型の液晶表示デバイス32等を用いているが、画像表示装置11としては、透過型の液晶表示デバイス32に限らず種々のものを利用可能である。例えば、反射型の液晶表示デバイスを用いた構成も可能であり、液晶表示デバイス32に代えてデジタル・マイクロミラー・デバイス等を用いることもできる。また、画像表示装置11として、LEDアレイやOLED(有機EL)などに代表される自発光型素子を用いることもできる。
【0077】
上記実施形態の虚像表示装置100では、右眼及び左眼の双方に対応して、一組ずつ画像形成装置10及び導光装置20設ける構成としているが、右眼又は左眼のいずれか一方に対してのみ画像形成装置10と導光装置20とを設け画像を片眼視する構成にしてもよい。
【0078】
上記実施形態では、光入射面ISを通る第1光軸AX1と光入射面ISを通る第2光軸AX2とが平行であるとしたが、これらの光軸AX1,AX2を非平行とすることもできる。
【0079】
上記の説明では、虚像表示装置100がヘッドマウントディスプレイであるとして具体的な説明を行ったが、虚像表示装置100は、ヘッドアップディスプレイに改変することもできる。
【0080】
上記の説明では、第1及び第2反射面21a,21bにおいて、表面上にミラーやハーフミラー等を施すことなく空気との界面により画像光を全反射させて導くものとしているが、本願発明における全反射については、第1及び第2反射面21a,21b上の全体又は一部にミラーコートや、ハーフミラー膜が形成されてなされる反射も含むものとする。例えば、画像光の入射角度が全反射条件を満たした上で、第1及び第2反射面21a,21bの全体又は一部にミラーコート等が施され、実質的に全ての画像光を反射する場合も含まれる。また、十分な明るさの画像光を得られるのであれば、多少透過性のあるミラーによって第1及び第2反射面21a,21bの全体又は一部がコートされていてもよい。
【0081】
上記の説明では、導光部材21が眼EYの並ぶ横方向に延びているが、導光部材21は、縦方向に延びるものとできる。この場合、光学パネル110は、直列的ではなく並列的に平行配置されることになる。
【符号の説明】
【0082】
10…画像形成装置、 11…画像表示装置、 12…投射光学系、 20…導光装置、 20a…本体部分、 21…導光部材、 21a,21b,21c,21d…反射面、 21e…第1の側面(上面)、 21f…第2の側面(下面)、 21h…端面、 23…光透過部材、 23a,23b,23c…面、 24a…本体部分、 25…ミラー層、 28…ハーフミラー層(半透過反射膜)、 31…照明装置、 32…液晶表示デバイス、 32b…表示領域、 34…駆動制御部、 100…虚像表示装置、 100A,100B…表示装置、 110…光学パネル、 121…フレーム、 131,132…駆動部、 AX1…第1光軸、 AX2…第2光軸、 B1…光入射部、 B2…導光部、 B3…光射出部、 B4…透視部、 CC…接着層、 EY…眼、 FS…平坦面、 GL…画像光、 GL'…外界光、 GL11,GL12,GL21,GL22…画像光、 IM1,IM2…投射像、 IS…光入射面、 L1,L2,L3…レンズ、 OS…光射出面、 P1…表示点、 P2…表示点、 SL…照明光、 CC1…ハードコート層(コート層)、 CC2…ハードコート層(対向面形成層)、 AR…反射防止コート
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像光を形成する画像表示装置と、
前記画像表示装置から射出された前記画像光による虚像を形成する投射光学系と、
前記投射光学系を通過した前記画像光を内部に取り込む光入射部と、前記光入射部から取り込まれた前記画像光を対向して延びる第1及び第2の面での全反射により導く導光部と、前記導光部を経た前記画像光を外部へ取出す光射出部と、を有する導光装置と、
を備え、
前記導光装置は、前記光射出部において、前記画像光を折り曲げるとともに前記外界光を透過させる反射部と、前記反射部を覆うコート層と、を有する、虚像表示装置。
【請求項2】
前記導光装置は、前記反射部に対向する対向面を有し、前記コート層を介して前記対向面と前記反射部とを接合することによって外界光の観察を可能にする透視部を構成する光透過部材を有する、請求項1に記載の虚像表示装置。
【請求項3】
前記光透過部材は、前記コート層と同一の材料で構成されて前記対向面を形成する対向面形成層を有する、請求項2に記載の虚像表示装置。
【請求項4】
前記導光装置のうち前記導光部を含む導光部材の本体部分と、前記光透過部材の本体部分とは、同一の材料で構成される、請求項2及び3のいずれか一項に記載の虚像表示装置。
【請求項5】
前記導光部材の本体部分及び前記光透過部材の本体部分の材料は、シクロオレフィンポリマーである、請求項4に記載の虚像表示装置。
【請求項6】
前記導光装置のうち前記導光部を含む導光部材の本体部分と、前記光透過部材の本体部分とは、同一の屈折率を有する異なる材料で構成される、請求項2及び3のいずれか一項に記載の虚像表示装置。
【請求項7】
前記コート層は、少なくとも前記第1及び第2の面を含む前記画像光の導光に寄与する面を保護するハードコート層である、請求項1から6までのいずれか一項に記載の虚像表示装置。
【請求項8】
前記コート層は、コート材をディップ処理によって塗布することで形成される、請求項1から7までのいずれか一項に記載の虚像表示装置。
【請求項9】
前記導光部は、互いに平行に配置され全反射による導光を可能にする前記第1の面と前記第2の面とを有し、
前記光入射部は、前記第1の面に対して所定の角度をなす第3の面を有し、
前記光射出部は、前記第1の面に対して所定の角度をなす第4の面を有する、請求項1から8までのいずれか一項に記載の虚像表示装置。
【請求項10】
前記反射部は、前記第4の面上に形成される、請求項9に記載の虚像表示装置。
【請求項11】
画像光を形成する画像表示装置と、前記画像表示装置から射出された前記画像光による虚像を形成する投射光学系と、前記投射光学系を通過した前記画像光を内部に取り込む光入射部と前記光入射部から取り込まれた前記画像光を対向して延びる第1及び第2の面での全反射により導く導光部と前記導光部を経た前記画像光を外部へ取出す光射出部と前記光射出部と組み合わせることによって外界光の観察を可能にする透視部を構成する光透過部材と前記光射出部と前記光透過部材との間に配置されて前記画像光を折り曲げるとともに前記外界光を透過させる反射部とを有する導光装置と、
を備える虚像表示装置の製造方法であって、
前記反射部を前記光射出部側に配置する反射部作製工程と、
前記反射作製工程において作製された前記反射部を覆うコート層を成膜するコート層成膜工程と、
前記コート層成膜工程において前記コート層に覆われた前記反射部を間に挟むようにして前記光射出部と前記光透過部材とを接合する接合工程と、
を有する虚像表示装置の製造方法。
【請求項12】
前記コート層成膜工程において、前記コート層となるべきコート材をディップ処理によって塗布するディップ処理工程を含む、請求項11に記載の虚像表示装置。
【請求項1】
画像光を形成する画像表示装置と、
前記画像表示装置から射出された前記画像光による虚像を形成する投射光学系と、
前記投射光学系を通過した前記画像光を内部に取り込む光入射部と、前記光入射部から取り込まれた前記画像光を対向して延びる第1及び第2の面での全反射により導く導光部と、前記導光部を経た前記画像光を外部へ取出す光射出部と、を有する導光装置と、
を備え、
前記導光装置は、前記光射出部において、前記画像光を折り曲げるとともに前記外界光を透過させる反射部と、前記反射部を覆うコート層と、を有する、虚像表示装置。
【請求項2】
前記導光装置は、前記反射部に対向する対向面を有し、前記コート層を介して前記対向面と前記反射部とを接合することによって外界光の観察を可能にする透視部を構成する光透過部材を有する、請求項1に記載の虚像表示装置。
【請求項3】
前記光透過部材は、前記コート層と同一の材料で構成されて前記対向面を形成する対向面形成層を有する、請求項2に記載の虚像表示装置。
【請求項4】
前記導光装置のうち前記導光部を含む導光部材の本体部分と、前記光透過部材の本体部分とは、同一の材料で構成される、請求項2及び3のいずれか一項に記載の虚像表示装置。
【請求項5】
前記導光部材の本体部分及び前記光透過部材の本体部分の材料は、シクロオレフィンポリマーである、請求項4に記載の虚像表示装置。
【請求項6】
前記導光装置のうち前記導光部を含む導光部材の本体部分と、前記光透過部材の本体部分とは、同一の屈折率を有する異なる材料で構成される、請求項2及び3のいずれか一項に記載の虚像表示装置。
【請求項7】
前記コート層は、少なくとも前記第1及び第2の面を含む前記画像光の導光に寄与する面を保護するハードコート層である、請求項1から6までのいずれか一項に記載の虚像表示装置。
【請求項8】
前記コート層は、コート材をディップ処理によって塗布することで形成される、請求項1から7までのいずれか一項に記載の虚像表示装置。
【請求項9】
前記導光部は、互いに平行に配置され全反射による導光を可能にする前記第1の面と前記第2の面とを有し、
前記光入射部は、前記第1の面に対して所定の角度をなす第3の面を有し、
前記光射出部は、前記第1の面に対して所定の角度をなす第4の面を有する、請求項1から8までのいずれか一項に記載の虚像表示装置。
【請求項10】
前記反射部は、前記第4の面上に形成される、請求項9に記載の虚像表示装置。
【請求項11】
画像光を形成する画像表示装置と、前記画像表示装置から射出された前記画像光による虚像を形成する投射光学系と、前記投射光学系を通過した前記画像光を内部に取り込む光入射部と前記光入射部から取り込まれた前記画像光を対向して延びる第1及び第2の面での全反射により導く導光部と前記導光部を経た前記画像光を外部へ取出す光射出部と前記光射出部と組み合わせることによって外界光の観察を可能にする透視部を構成する光透過部材と前記光射出部と前記光透過部材との間に配置されて前記画像光を折り曲げるとともに前記外界光を透過させる反射部とを有する導光装置と、
を備える虚像表示装置の製造方法であって、
前記反射部を前記光射出部側に配置する反射部作製工程と、
前記反射作製工程において作製された前記反射部を覆うコート層を成膜するコート層成膜工程と、
前記コート層成膜工程において前記コート層に覆われた前記反射部を間に挟むようにして前記光射出部と前記光透過部材とを接合する接合工程と、
を有する虚像表示装置の製造方法。
【請求項12】
前記コート層成膜工程において、前記コート層となるべきコート材をディップ処理によって塗布するディップ処理工程を含む、請求項11に記載の虚像表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−61594(P2013−61594A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201465(P2011−201465)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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