説明

虚血および神経変性の処置のための化合物

【課題】
【解決手段】TPPII(トリペプチジルペプチダーゼII)阻害剤は、神経変性疾患、例えばアルツハイマー病、パーキンソン病もしくはハンチントン舞踊病、または虚血性状態、例えば脳卒中および心筋梗塞の処置に役立つ。適当な化合物には、一般式RN1N2N−A−A−A−CO−RC1のトリペプチド化合物が含まれ、上式で、RN1、RN2、A、A、AおよびRC1は本明細書で定義される通りであり、上の例としては、例えばトリペプチド配列GLAおよびGPGが含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、虚血および神経変性の処置における化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病、パーキンソン病およびハンチントン舞踊病などの神経変性疾患は、数年かけて徐々に進行し、最後に、入院および24時間の世話が必要になり莫大な医療費を伴う。それらは分解されないタンパク質集合体の沈着によって起こる可能性があり、それは究極的に、脳のある領域における細胞死に至る。これらの疾患を効果的に治療する薬剤の必要性がある。
【0003】
虚血を治療する効果的な方法のさらなる必要性がある。詳細には、脳卒中および心筋梗塞の急性相の間、脳および心筋の患部に大量の細胞死がある。多くの研究者が、虚血組織の細胞を保護する方法を発明し、この目的のために有効な薬剤を発見しようと努力している。
【0004】
26Sプロテアソームは、それらのユビキチンとのコンジュゲーションに基づいて基質を認識し、サイトゾルタンパク質分解の大半を担う。この過程は、細胞分割、シグナル伝達、アポトーシスおよび多細胞生物に不可欠な他の多くの過程を制御する制御因子の分解で重要である。これらの制御因子をプロテアソーム分解の標的にすることは、それらのユビキチンコンジュガーゼとの相互作用で決定される。プロテアソームβサブユニットの薬理学的抑制は、以降のアポトーシスを伴う細胞周期の進行を阻止し、さらに、プロテアソームの新合成を増加させる。しかし、プロテアソーム活性のレベルは、通常、基質分解におけるおよび細胞経路の制御のための律速段階ではない。プロテアソーム生合成のいくつかの内因性モジュレーター、例えばPI31およびPA28は、プロテアソーム性切断の特異性に影響を及ぼすが、それらはプロテアソーム性タンパク質分解の速度を変化させないようである。プロテアソーム26S複合体はサイトゾル内で合成されて組まれ、19Sおよび20Sサブ複合体は、核局在化シグナル(NLS)誘発輸送によって核孔を通して核コンパートメントに移入される。プロテアソーム複合体は核およびサイトゾル全体に分散されるが、プロテアソームの核内蓄積はストレスにさらされた細胞で起こることができ、ストレスは基質のプロテアソーム性分解を変化させる可能性がある。プロテアソーム複合体の細胞内分布のそのような変化を引き起こすものが何かは、わかっていない。
【0005】
細胞のストレス応答経路の始動は、ホスホイノシチド−3−OH−キナーゼ関連キナーゼ(PIKK)による活性化を必要とし、これらの中には、DNA損傷へのストレス応答に必須のATM/ATRキナーゼがある。さらに、ATMキナーゼは、栄養飢餓に応じるARK5シグナル伝達を通しても活性化される。障害のあるプロテアソーム活性および細胞ストレスは、TPPII(トリペプチジルペプチダーゼII)およびイソペプチダーゼなどの相補性のサイトゾルペプチダーゼの誘導と関連する。
【0006】
いくつかの形態のストレスはユビキチン−プロテアソーム経路を妨害し、これには、γ線照射、ERストレス(ER=小胞体)および飢餓が含まれる。抑制のレベルは部分的であり、生理作用を引き起こすことができるが、これらの現象の多くの機構は未知である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
今では、虚血および神経変性は、下でさらに説明されるように、PIKKの下流側の経路へのそれらの依存という点で関連し、共通の機構を標的にすることによって治療することができると考えている。本発明者らは、有効な治療剤である、一群のペプチドおよびペプチド関連化合物を発見した。本発明は、TPPII(トリペプチジル−ペプチダーゼII)の役割に関する本発明者らの研究に由来する。TPPIIは、ショウジョウバエからヒトまでの多細胞生物で発現される、独特の138kDaサブユニットで構築される。ショウジョウバエからのデータは、TPPII複合体が、約6MDaの本来の構造物と2つのねじれた鎖を形成する、反復サブユニットからなることを示唆する。TPPIIは、唯一の既知のサイトゾルサブチリシン様セリンペプチダーゼである。細菌のサブチリシンは完全に研究された酵素であり、結晶構造および酵素機能に関する多数の報告がある(Gupta,R.、Beg,Q.K.およびLorenz,P.、2002、「Bacterial alkaline proteases:molecular approaches and industrial applications」、Appl Microbiol Biotechnol.59:15〜32)。
【0008】
ゆえに、第1の態様から、本発明は神経変性疾患または虚血性状態の処置での使用のための化合物を提供し、前記化合物はTPPII阻害剤である。
【0009】
本明細書で用いるように、用語処置は、確定された神経変性疾患または虚血性状態の治療、ならびに予防療法および前神経変性または前虚血性状態の治療を含む。
【0010】
さらなる態様から、本発明は、神経変性疾患または虚血性状態の処置における使用のための化合物を提供し、前記化合物は下記式(i)
(i)RN1N2N−A−A−A−CO−RC1
から選択されるか、その薬学的に許容される塩であり、上式で、A、AおよびAは、標準の1文字略語または名称に従う以下の定義を有するアミノ酸残基であり、即ち
は、G、A、V、L、I、P、2−アミノ酪酸、ノルバリンまたはtert−ブチルグリシンであり、
は、G、A、V、L、I、P、F、W、C、S、K、R、2−アミノ酪酸、ノルバリン、ノルロイシン、tert−ブチルアラニン、α−メチルロイシン、4,5−デヒドロ−ロイシン、アロ−イソロイシン、α−メチルバリン、tert−ブチルグリシン、2−アリルグリシン、オルニチンまたはα,γ−ジアミノ酪酸であり、
は、G、A、V、L、I、P、F、W、D、E、Y、2−アミノ酪酸、ノルバリンまたはtert−ブチルグリシンであり、
N1およびRN2は、それぞれペプチドのN末端に結合し、同じであるかまたは異なり、それぞれ独立して
N3
(リンカー1)−RN3
CO−(リンカー1)−RN3
CO−O−(リンカー1)−RN3
CO−N−((リンカー1)−RN3)RN4、または
SO−(リンカー1)−RN3
であり、
(リンカー1)は存在しなくてもよく、即ち単結合でもよく、またはCH、CHCH、CHCHCH、CHCHCHCHもしくはCH=CHであることができ、
N3およびRN4は、同じであるかまたは異なり、水素または以下の必要に応じて置換された基:
飽和または不飽和で分枝または非分枝C1〜6アルキル、
飽和または不飽和で分枝または非分枝C3〜12シクロアルキル、
ベンジル、
フェニル、
ナフチル、
単環式または二環式C1〜10ヘテロアリール、または
非芳香族C1〜10ヘテロシクリル
のいずれかであり、RN3および/またはRN4には、0、1または2個(同じかまたは異なる)の必要に応じた置換基があり得、該置換基は、
ヒドロキシ−、
チオ−、
アミノ−、
カルボン酸、
飽和または不飽和で分枝または非分枝C1〜6アルキルオキシ、
飽和または不飽和で分枝または非分枝C3〜12シクロアルキル、
N−、O−またはS−アセチル、
カルボン酸の飽和または不飽和で分枝または非分枝C1〜6アルキルエステル、
カルボン酸の飽和または不飽和で分枝または非分枝C3〜12シクロアルキルエステル
フェニル、
単環式または二環式C1〜10ヘテロアリール、
非芳香族C1〜10ヘテロシクリル、または
ハロゲン
でよく、RC1はトリペプチドのC末端に結合され、
O−RC2
O−(リンカー2)−RC2
N((リンカー2)RC2)RC3、または
N(リンカー2)RC2−NRC3C4
であり、(リンカー2)は存在しない、即ち単結合、またはC1〜6アルキルもしくはC2〜4アルケニル、好ましくは単結合、またはCH、CHCH、CHCHCH、CHCHCHCHもしくはCH=CHであってもよく、
C2、RC3およびRC4は、同じであるかまたは異なり、水素または以下の必要に応じて置換された基:
飽和または不飽和で分枝または非分枝C1〜6アルキル、
飽和または不飽和で分枝または非分枝C3〜12シクロアルキル、
ベンジル、
フェニル、
ナフチル、
単環式または二環式C1〜10ヘテロアリール、または
非芳香族C1〜10ヘテロシクリル
のいずれかであり、RC2および/またはRC3および/またはRC4には、0、1または2個(同じかまたは異なる)の必要に応じた置換基があり得、該置換基は、
ヒドロキシ−、
チオ−、
アミノ−、
カルボン酸、
飽和または不飽和で分枝または非分枝C1〜6アルキルオキシ、
飽和または不飽和で分枝または非分枝C3〜12シクロアルキル、
N−、O−またはS−アセチル、
カルボン酸の飽和または不飽和で分枝または非分枝C1〜6アルキルエステル、
カルボン酸の飽和または不飽和で分枝または非分枝C3〜12シクロアルキルエステル
フェニル、
ハロゲン、
単環式または二環式C1〜10ヘテロアリール、または
非芳香族C1〜10ヘテロシクリル
の1つまたは複数でよい。
【0011】
式(i)の一般式で示されるNおよびCOは、それぞれアミノ酸残基Aの窒素原子およびアミノ酸残基Aのカルボニル基である。
【0012】
さらなる態様から、本発明は、神経変性疾患または虚血性状態の処置方法であって、それを必要とする患者にTPPII阻害剤または式(i)から選択される化合物もしくはその薬学的に許容される塩の治療有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0013】
同様に、さらなる態様から、本発明は、神経変性疾患または虚血性状態の処置のための医薬品の製造における、TPPII阻害剤または式(i)から選択される化合物もしくはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0014】
理論によって束縛されることを望むものではないが、本発明は、神経変性疾患または虚血性状態の処置においてTPPII阻害剤が有用であることを認識するものと考えることができる。
【0015】
さらなる態様から、本発明は、式(i)の化合物またはその薬学的に許容される塩、および薬学的に許容される希釈剤または担体を含む医薬組成物を提供する。
【0016】
さらなる態様から、本発明は、医薬品として使用するための式(i)の化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0017】
さらなる態様から、本発明は、神経変性疾患または虚血性状態の処置に適当な化合物を同定する方法であって、TPPIIをスクリーニングする化合物と接触させ、その化合物がTPPIIの活性を阻害するか否かを同定することを含む方法を提供する。
【0018】
本出願は、発明者Rickard GlasおよびHong Xuによる「Use of peptides and peptidomimetic compounds」という名称の2006年1月13日に出願の米国特許仮出願60/759088の優先権を主張し、その内容は、その出願が虚血および神経変性の処置に関する限り、本明細書に完全に組み込まれる。
【0019】
本発明は、ストレスに応じたプロテアソーム基質分解の下方制御における、TPPIIの必須の役割を認識する。以下に詳述されるように、プロテアソーム複合体は、TPPII依存性の機構を通して核に移行したが、PIKKファミリーキナーゼの活性も必要とした。PIKKファミリーキナーゼの遮断は、サイトゾルへのプロテアソーム複合体の再分配をもたらした。in vitro細胞系で発現される、さもなければ分解耐性のポリグルタミン基質の分解を増加させるために、TPPII阻害剤を応用した。さらに、p53の飢餓依存性蓄積および細胞周期停止が、TPPIIの発現および活性に依存することを示した。
【0020】
本発明者らのデータは、神経変性および虚血性の疾患の処置での、TPPII阻害剤の使用を支持する。
【0021】
TPPIIは基質のタンパク質ターンオーバーに寄与し、15個のアミノ酸より長いサイトゾルポリペプチドを分解する主なペプチダーゼであることが最近わかった(Reits,E.ら.2004.A major role for TPPII in trimming proteasomal degradation products for MHC class I antigen presentation.Immunity 20:495〜506)。さらに、TPPIIはプロテアソーム活性が抑制されたリンパ腫細胞の生存を可能にすることができ、それは細胞タンパク質ターンオーバーへのかなりの寄与を示唆した。プロテアソーム基質分解がTPPIIによって抑制されたので、PIKKファミリーキナーゼ活性の伝達におけるTPPIIの関与は、サイトゾルタンパク質分解の特異性の変化ももたらすことを本発明者らの研究は示す。したがって、正常なプロテアソーム活性を有する細胞において、TPPIIは、見かけ上、ユビキチン−プロテアソーム経路による基質分解を制約する働きをする。プロテアソーム活性の細胞レベルがどのように制御されるかは現在明らかではなく、いくつかの報告は、19Sプロテアソームのサブユニットの修飾がこの役割を果たすことができるであろうことを示唆する。ユビキチン結合タンパク質をプロテアソームへ運ぶことが示唆されるRad23は、そのユビキチン様(Ubl)ドメインを通してS2(Rpn1)と相互作用する(Elsasser Sら.2002.Proteasome subunit Rpn1 binds ubiquitin−like protein domains.Nat Cell Biol.4:725〜30)(Zhang Xら.2004.The targeting of the proteasomal regulatory subunit S2 by adenovirus E1A causes inhibition of proteasomal activity and increased p53 expression.J Biol Chem.279:25122〜33)。さらに、最近のデータは、各触媒回路の間の19Sおよび20Sの複合体のATP誘発解離を示唆し、19S−20S再結合も調節されることを示す(Babbitt,S.E.ら.2005.ATP hydrolysis−dependent disassembly of the 26S proteasome is part of the catalytic cycle.Cell 121:553〜65)。
【0022】
低下したプロテアソーム基質分解速度は、プロテアソーム複合体の再局在化と相関したが、本発明者らのデータは他の機構を排除しない。他の可能性のある機構は、プロテアソームサブユニット、例えばRpn10/S5aまたはユビキチン結合基質と直接接触する調節複合体の他のサブユニットのPIKKファミリーメンバーによる直接調節である。核プロテアソームサブ複合体はそれらの活性に関与するので、ここで研究する機構は、DNA転写およびDNA修復でも役割を果たす可能性がある。TPPIIのサブセットは核に存在するので、PIKKファミリーキナーゼ−TPPII依存機構によって、プロテアソーム複合体がこのコンパートメントで保持される可能性がある。細胞のAMP/ATPレベルを感知するmTORまたはARK5、即ちAMPKファミリーの新規Akt活性化メンバーなどの下流エフェクターが、これらの事象を調節することも排除することができない。
【0023】
神経変性疾患の療法を考慮すると、プロテアソーム活性のレベルが重要であるが、p53もニューロンのアポトーシスを引き起こす際に重要である。それにより、PIKK活性化の他の結果もこの状況の間重要であり、これらは、例えば虚血の間など、p53が患部組織でのアポトーシスのために重要となる可能性のある場合にも重要である。したがって、TPPII阻害剤は、プロテアソーム分解の増加が有益な場合、例えば神経変性疾患において、疾患の療法を改善するために用いることができる。さらに、アポトーシスに導くストレスシグナルの伝達を一時的に妨げるためにp53の発現を抑制することは、虚血の処置を可能にする。
【0024】
TPPIIは、比較的広い範囲の基質を受け入れる。式(i)に該当するすべての化合物は、ペプチドまたはペプチド類似体である。式(i)の化合物は、当技術分野で公知の方法によって、容易に合成することができる(例えばGanellinら、J.Med.Chem.2000、43、664〜674を参照)か、市販品を容易に得ることができる(例えばBachem AGから)。好ましい態様では、化合物は式(i)から選択することができる。そのようなトリペプチドおよび誘導体は、特に有効な治療剤である。
【0025】
本発明に従い、神経変性疾患または虚血性状態の処置で使用するための化合物は、in vivoでTPPII阻害剤であることが知られている化合物でよい。
【0026】
例えば、化合物は、Winterら、Journal of Molecular Graphics and Modelling 2005、23、409〜418においてTPPII阻害剤として特定された化合物から選択することができる。それらの化合物は特にTPPIIファルマコフォアに適しているので、化合物は以下の式(ii):
【0027】
【化1】

【0028】
から選択することができ、上式で、R’はH、CH、CHCH、CHCHCHまたはCH(CHであり、
R”は、H、CHCH、CHCHCH、CH(CH、CHCHCHCH、CHCH(CH、CH(CH)CHCHまたはC(CHであり、
R”’は、H、CH、OCH、F、ClまたはBrである。
【0029】
式(ii)の化合物は、公知の方法によって合成可能である(例えば、Winterら、Journal of Molecular Graphics and Modelling 2005、23、409〜418およびBreslinら、Bioorg.Med.Chem.Lett.2003、13、4467〜4471を参照)。
【0030】
また、例として、化合物は、Schwartzらの米国特許第6335360号でTPPII阻害剤として特定された化合物から選択することができる。そのような化合物は、以下の式(iii)のものを含む。
【0031】
【化2】

【0032】
上式で、
各Rは同じであるか、異なることができ、ハロゲン、OH;ハロゲンおよびOHからなる群から選択される1つまたは複数の基で必要に応じて置換されたC〜Cアルキル;ハロゲンおよびOHからなる群から選択される1つまたは複数の基で必要に応じて置換された(C〜C)アルケニル;ハロゲンおよびOH、X(C〜C)アルキルからなる群から選択される1つまたは複数の基で必要に応じて置換された(C〜C)アルキニル(XがS、OまたはOCOであり、アルキルがハロゲンおよびOHからなる群から選択される1つまたは複数の基で必要に応じて置換される);少なくとも1つのハロゲンで必要に応じて置換されたSO(C〜C)アルキル、YSOH、YSO(C〜C)アルキルであって、YがOまたはNHであり、アルキルが少なくとも1つのハロゲン、ジラジカル−X1−(C〜C)アルキレン−X1−で必要に応じて置換されており、XがOまたはSであり;インドリン環と縮合したベンゼン環;
からなる群から選択され、nは、0〜4であり、
は、RがハロゲンおよびOHからなる群から選択される1つまたは複数の基によって置換されたC〜CアルキルであるCH;ZがOもしくはSであり、pが0〜5であり、qが0〜5であり、ただしp+qが0〜5である(CHZ(CHCH;(C〜C)不飽和アルキル;または(C〜C)シクロアルキルであり、
あるいは、Rは(C〜C)アルキルまたはO(C〜C)アルキルであり、それぞれは少なくとも1つのハロゲンで必要に応じて置換されており、
はH;少なくとも1つのハロゲンで必要に応じて置換された(C〜C)アルキル;(CHZR(式中、pが1〜3であり、ZがOまたはSであり、RがHまたは(C〜C)アルキルである);ベンジルである。
【0033】
式(iii)の化合物は、公知の方法によって容易に合成が可能である(例えば、Schwartzらの米国特許第6335360号を参照)。
【0034】
しかし、化合物は、式(i)および(ii)、より好ましくは式(i)から選択することが好ましい。
【0035】
化合物が、RN1、RN2およびRC1が上でまたは下の好ましい実施形態のいずれかで定義された通りであり、
は、G、A、V、L、I、P、S、T、C、N、Q、2−アミノ酪酸、ノルバリン、ノルロイシン、tert−ブチルアラニン、α−メチルロイシン、4,5−デヒドロ−ロイシン、アロ−イソロイシン、α−メチルバリン、tert−ブチルグリシンまたは2−アリルグリシンであり、
は、G、A、V、L、I、P、S、T、C、N、Q、F、Y、W、K、R、ヒスチジン、2−アミノ酪酸、ノルバリン、ノルロイシン、tert−ブチルアラニン、α−メチルロイシン、4,5−デヒドロ−ロイシン、アロ−イソロイシン、α−メチルバリン、tert−ブチルグリシン、2−アリルグリシン、オルニチン、α,γ−ジアミノ酪酸または4,5−デヒドロ−リジンであり、
は、G、A、V、L、I、P、S、T、C、N、Q、D、E、F、Y、W、2−アミノ酪酸、ノルバリン、ノルロイシン、tert−ブチルアラニン、α−メチルロイシン、4,5−デヒドロ−ロイシン、アロ−イソロイシン、α−メチルバリン、tert−ブチルグリシンまたは2−アリルグリシンである、
式(i)の化合物であることも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
式(i)の好ましい化合物
式(i)の化合物の様々なグループおよび特定の例が好ましい。
【0037】
一般に、特にA位置が天然(L)立体配置のアミノ酸が好ましい。
【0038】
一般に、RN1が水素であり、
N2が、
N3
(リンカー1)−RN3
CO−(リンカー1)−RN3、または
CO−O−(リンカー1)−RN3
であり、上式で、
(リンカー1)は存在しなくてもよく、即ち単結合でもよく、またはCH、CHCH、CHCHCH、CHCHCHCHもしくはCH=CHであることができ、
N3は、水素または以下の置換されていない基:
飽和もしくは不飽和で分枝もしくは非分枝C1〜4アルキル、
ベンジル、
フェニル、または
単環式ヘテロアリール
のいずれかであることが好ましい。
【0039】
一般に、RC1は、
O−RC2
O−(リンカー2)−RC2、または
NH−(リンカー2)RC2
であり、上式で、
(リンカー2)は存在しない、即ち単結合、C1〜6アルキルもしくはC2〜4アルケニル、好ましくは単結合、またはCH、CHCH、CHCHCH、CHCHCHCHもしくはCH=CHであってもよく、
C2は水素または以下の置換されていない基:
飽和または不飽和で分枝または非分枝C1〜5アルキル、
ベンジル、
フェニル、または
単環式C1〜10ヘテロアリール
のいずれかであることが好ましい。
【0040】
一般には、N末端の置換基に関して、
N1は水素であり、
N2は、水素、C(=O)−O−(リンカー1)−RN3またはC(=O)−(リンカー1)−RN3であり、
(リンカー1)は、CHまたはCH=CHであり、
N3は、フェニルまたは2−フリルであることがさらに好ましい。
【0041】
さらに、
N1は水素であり、
N2は、水素、C(=O)−OCHPhまたはC(=O)−CH=CH−(2−フリル)であることが好ましい。
【0042】
N末端置換基のための他の好ましいグループは、
N1が水素であり、
N2が、ベンジルオキシカルボニル、ベンジル、ベンゾイル、tert−ブチルオキシカルボニル、9−フルオレニルメトキシカルボニルまたはFAであり、より好ましくはベンジルオキシカルボニルまたはFAであるものである。
【0043】
一般には、C末端の置換基に関して、
C1は、OH、O−C1〜6アルキル、O−C1〜6アルキルフェニル、NH−C1〜6アルキルまたはNH−C1〜6アルキル−フェニル、より好ましくはOHであることが好ましい。
【0044】
いくつかの好ましいグループは、以下の通りである。
【0045】
グループ(i)(a):
は、G、A、V、L、I、P、2−アミノ酪酸、ノルバリンまたはtert−ブチルグリシンであり、
は、G、A、V、L、I、P、F、W、C、S、K、R、2−アミノ酪酸、ノルバリン、ノルロイシン、tert−ブチルアラニン、α−メチルロイシン、4,5−デヒドロ−ロイシン、アロ−イソロイシン、α−メチルバリン、tert−ブチルグリシン、2−アリルグリシン、オルニチンまたはα,γ−ジアミノ酪酸であり、
は、G、A、V、L、I、P、F、W、D、E、Y、2−アミノ酪酸、ノルバリンまたはtert−ブチルグリシンであり、
N1はHであり、
N2は、水素、C(=O)−O−飽和もしくは不飽和で分枝もしくは非分枝C1〜4アルキルであり、フェニルもしくは2−フリルで必要に応じて置換されており、またはC(=O)−飽和もしくは不飽和で分枝もしくは非分枝C1〜4アルキルであり、フェニルもしくは2−フリルで必要に応じて置換されており、
C1は、OH、O−C1〜6アルキル、O−C1〜6アルキルフェニル、NH−C1〜6アルキルまたはNH−C1〜6アルキルフェニルである。
【0046】
グループ(i)(b):
は、G、Aまたは2−アミノ酪酸であり、
は、L、I、ノルロイシン、V、ノルバリン、tert−ブチルアラニン、4,5−デヒドロ−ロイシン、アロ−イソロイシン、2−アリルグリシン、P、2−アミノ酪酸、α−メチルロイシン、α−メチルバリンまたはtert−ブチルグリシンであり、
は、G、A、V、P、2−アミノ酪酸またはノルバリンであり、
N1はHであり、
N2は、水素、C(=O)−O−飽和もしくは不飽和で分枝もしくは非分枝C1〜4アルキルであり、フェニルもしくは2−フリルで必要に応じて置換されており、またはC(=O)−飽和もしくは不飽和で分枝もしくは非分枝C1〜4アルキルであり、フェニルもしくは2−フリルで必要に応じて置換されており、
C1は、OH、O−C1〜6アルキル、O−C1〜6アルキル−フェニル、NH−C1〜6アルキルまたはNH−C1〜6アルキル−フェニルである。
【0047】
グループ(i)(c):
は、G、Aまたは2−アミノ酪酸であり、
は、L、I、ノルロイシン、V、ノルバリン、tert−ブチルアラニン、4,5−デヒドロ−ロイシン、アロ−イソロイシンまたは2−アリルグリシンであり、
は、G、A、V、P、2−アミノ酪酸またはノルバリンであり、
N1はHであり、
N2は、水素、C(=O)−O−飽和もしくは不飽和で分枝もしくは非分枝C1〜4アルキルであり、フェニルもしくは2−フリルで必要に応じて置換されており、またはC(=O)−飽和もしくは不飽和で分枝もしくは非分枝C1〜4アルキルであり、フェニルもしくは2−フリルで必要に応じて置換されており、
C1は、OH、O−C1〜6アルキル、O−C1〜6アルキルフェニル、NH−C1〜6アルキルまたはNH−C1〜6アルキル−フェニルである。
【0048】
グループ(i)(d):
は、GまたはAであり、
は、L、Iまたはノルロイシンであり、
は、GまたはAであり、
N1はHであり、
N2は、水素、C(=O)−O−飽和もしくは不飽和で分枝もしくは非分枝C1〜4アルキルであり、フェニルもしくは2−フリルで必要に応じて置換されており、またはC(=O)−飽和もしくは不飽和で分枝もしくは非分枝C1〜4アルキルであり、フェニルもしくは2−フリルで必要に応じて置換されており、
C1は、OH、O−C1〜6アルキル、O−C1〜6アルキル−フェニル、NH−C1〜6アルキルまたはNH−C1〜6アルキル−フェニルである。
【0049】
特定の好ましい化合物の第1セットは、
がGであり、
がLであり、
が、G、A、V、L、I、P、F、W、D、E、Y、2−アミノ酪酸、ノルバリンまたはtert−ブチルグリシン、より好ましくはG、A、V、P、2−アミノ酪酸またはノルバリン、より好ましくはGまたはAであり、
N1が水素であり、
N2がベンジルオキシカルボニルであり、
C1がOHである化合物である。
【0050】
特定の好ましい化合物の第2セットは、
がGであり、
がG、A、V、L、I、P、F、W、C、S、2−アミノ酪酸、ノルバリン、ノルロイシン、tert−ブチルアラニン、α−メチルロイシン、4,5−デヒドロ−ロイシン、アロ−イソロイシン、α−メチルバリン、tert−ブチルグリシンまたは2−アリルグリシン、より好ましくは、L、I、ノルロイシン、V、ノルバリン、tert−ブチルアラニン、4,5−デヒドロ−ロイシン、アロ−イソロイシン、2−アリルグリシン、P、2−アミノ酪酸、α−メチルロイシン、α−メチルバリンまたはtert−ブチルグリシン、より好ましくは、L、I、ノルロイシン、V、ノルバリン、tert−ブチルアラニン、4,5−デヒドロ−ロイシン、アロ−イソロイシンまたは2−アリルグリシン、より好ましくは、L、Iまたはノルロイシンであり、
がAであり、
N1が水素であり、
N2がベンジルオキシカルボニルであり、
C1がOHである化合物である。
【0051】
特定の好ましい化合物の第3セットは、
が、G、A、V、L、I、P、2−アミノ酪酸、ノルバリンまたはtert−ブチルグリシン、より好ましくはG、Aまたは2−アミノ酪酸、より好ましくはGまたはAであり、
がLであり、
がAであり、
N1が水素であり、
N2がベンジルオキシカルボニルであり、
C1がOHである化合物である。
【0052】
好ましくは、配列A−A−Aは、GLA、GLF、GVA、GIA、GPAまたはALA、最も好ましくはGLAであり、
N1は水素であり、
N2はベンジルオキシカルボニルであり、
C1はOHである。
【0053】
アルキル基が飽和または不飽和と記載される場合、これはアルキル、アルケニルおよびアルキニル炭化水素部分を包含する。
【0054】
1〜6アルキルは、好ましくはC1〜4アルキル、より好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルまたはブチル(分枝または非分枝)、最も好ましくはメチルである。
【0055】
3〜12シクロアルキルは、好ましくはC5〜10シクロアルキル、より好ましくはC5〜7シクロアルキルである。
【0056】
「アリール」は、芳香族基、好ましくはフェニルまたはナフチルである。
【0057】
語の一部としての「ヘテロ」は、1つまたは複数の、好ましくはN、OおよびSから選択されるヘテロ原子を含むことを意味する。
【0058】
「ヘテロアリール」は、好ましくはピリジル、ピロリル、キノリニル、フラニル、チエニル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピリミジニル、インドリル、ピラジニル、インダゾリル、ピリミジニル、チオフェネチル、ピラニル、カルバゾリル、アクリジニル、キノリニル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、プリニル、シノリニルまたはプテリジニルである。
【0059】
「非芳香族のヘテロシクリル」は、好ましくはピロリジニル、ピペリジル、ピペラジニル、モルホリニル、テトラヒドロフラニルまたは単糖である。
【0060】
「ハロゲン」は、好ましくはClまたはF、より好ましくはClである。
【0061】
さらなる好ましい式(i)の化合物
一般に、Aは、好ましくは、G、Aまたは2−アミノ酪酸、より好ましくはGまたはAから選択することができる。
【0062】
一般に、Aは、好ましくは、L、I、ノルロイシン、V、ノルバリン、tert−ブチルアラニン、4,5−デヒドロ−ロイシン、アロ−イソロイシン、2−アリルグリシン、P、K、2−アミノ酪酸、α−メチルロイシン、α−メチルバリンまたはtert−ブチルグリシン、より好ましくは、L、I、ノルロイシン、V、ノルバリン、tert−ブチルアラニン、4,5−デヒドロ−ロイシン、アロ−イソロイシン、2−アリルグリシン、PまたはK、より好ましくは、L、I、ノルロイシン、PまたはK、より好ましくはLまたはPから選択することができる。
【0063】
一般に、Aは、好ましくは、G、A、V、P、2−アミノ酪酸またはノルバリン、より好ましくはGまたはAから選択することができる。
【0064】
一般に、RN1は水素であることが好ましい。
【0065】
一般に、RN2は、好ましくは、
N3
(リンカー1)−RN3
CO−(リンカー1)−RN3、または
CO−O−(リンカー1)−RN3
であり、上式で、
(リンカー1)は存在しなくてもよく、即ち単結合でもよく、またはCH、CHCH、CHCHCH、CHCHCHCHもしくはCH=CHであることができ、
N3は、水素または以下の置換されていない基:
飽和または不飽和で分枝または非分枝C1〜4アルキル、
ベンジル、
フェニル、もしくは
単環式ヘテロアリール
のいずれかである。
【0066】
一般に、RN2は、より好ましくは、水素、ベンジルオキシカルボニル、ベンジル、ベンゾイル、tert−ブチルオキシカルボニル、9−フルオレニルメトキシカルボニルまたはFAであり、より好ましくは、水素、ベンジルオキシカルボニルまたはFAである。
【0067】
一般に、RC1
O−RC2
O−(リンカー2)−RC2、または
NH−(リンカー2)RC2
であり、上式で、
(リンカー2)は存在しない、即ち単結合、C1〜6アルキルもしくはC2〜4アルケニル、好ましくは単結合、またはCH、CHCH、CHCHCH、CHCHCHCHもしくはCH=CHであってもよく、
C2は水素または以下の置換されていない基:
飽和または不飽和で分枝または非分枝C1〜5アルキル、
ベンジル、
フェニル、もしくは
単環式C1〜10ヘテロアリール
のいずれかであることが好ましい。
【0068】
一般に、RC1は、より好ましくは、OH、O−C1〜6アルキル、O−C1〜6アルキル−フェニル、NH、NH−C1〜6アルキルまたはNH−C1〜6アルキル−フェニル、より好ましくは、OH、O−C1〜6アルキル、NHまたはNH−C1〜6アルキル、より好ましくは、OHまたはNHである。
【0069】
特に興味がある化合物には、AがPであるものが含まれる。
【0070】
特に興味がある化合物には、RC1がNHであるものが含まれる。
【0071】
一般に、以下のアミノ酸、F、W、D、EおよびYは、Aにより不適当である。同様に、一般に、Aは、Pおよび/またはEでないものが選択されることがあるが、それは、これらを含む化合物はより低い活性を示すからである。
【0072】
好ましい式(ii)の化合物
式(ii)の化合物は、好ましくは、
R’が、CHCHまたはCHCHCHであり、
R”が、CHCHCHまたはCH(CHであり、
R”’が、HまたはClである化合物である。
【0073】
好ましい式(iii)の化合物
式(iii)の化合物の様々な好ましいグループおよび特定の例は、別にとられたSchwartzらのUS6,335,360B1の請求項のいずれかに規定される通りである。
【0074】
式(i)の治療化合物の一例は、Z−GLA−OH、即ち、N末端がZ基で誘導体化され、C末端が誘導体化されないトリペプチドGLAである。Zは、ベンジルオキシカルボニルを表す。これは、RN1がH、RN2がZ、AがG、AがL、AがA、RC1がOHである、式(i)の化合物である。この化合物はBachem AGから市販され、真核生物TPPIIの細菌同族体、サブチリシンを抑制することが発見された。Z−GLA−OHは低コストであり、実験的にはよく働く。
【0075】
好ましい化合物には、GLAを含むもの、例えば、Z−GLA−OH、Bn−GLA−OH、FA−GLA−OHおよびH−GLA−OH、例えばZ−GLA−OHが含まれるが、本発明に従い、本明細書での任意の化合物または化合物群のいかなる開示も、配列AはGLAではないとのただし書き、または化合物はZ−GLA−OH、Bn−GLA−OH、FA−GLA−OHまたはH−GLA−OHからなる群から選択されないとのただし書き、または化合物はZ−GLA−OHではないとのただし書きに必要に応じて従うことができる。
【0076】
神経変性疾患または虚血性状態の処置では、Z−GLA−OHまたは本明細書で記載される他の化合物を投与することができる。
【0077】
他の好ましい化合物には、AがGPGであるもの、例えばGPG−NHまたはZ−GPG−NHが含まれる。
【0078】
当業者は、本明細書で記載される化合物は、任意の適当な方法で投与することができることがわかろう。例えば、投与は、非経口的、例えば静脈内もしくは皮下、経口、経皮、鼻腔内、吸入、または経直腸であることができる。好ましい一実施形態では、化合物は注射によって投与される。
【0079】
本発明の医薬組成物に用いる薬学的に許容される付加塩の例には、塩酸、臭化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸および硫酸などの無機酸、ならびに、酒石酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、安息香酸、グリコール酸、グルコン酸、コハク酸およびアリールスルホン酸などの有機酸に由来するものが含まれる。本明細書で記載される薬学的に許容される賦形剤、例えば、媒体、アジュバント、担体または希釈剤は、当技術分野の技術者に周知であり、容易に入手できる。薬学的に許容される担体は、活性化合物に対して化学的に不活性であり、使用条件下で有害な副作用および毒性を及ぼさないものでよい。医薬製剤は、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、19th ed.、Mack Printing Company、Easton、Pennsylvania(1995)で見られる。
【0080】
組成物は任意の投与経路、例えば経口、静脈内、経皮または皮下、経鼻、筋肉内または腹腔内投与のために調製することができる。担体または他の材料の正確な性質は、投与経路によって決まる。非経口投与のためには、非経口的に許容される水溶液を使用し、それは発熱物質を含まず、必要なpH、等張性および安定性を有する。当業者は適当な溶液を調製する能力が十分あり、多数の方法が文献で記載されている。薬剤送達方法の簡単な総説は、例えば、Langer、Science 249:1527〜1533(1990)でも見られる。
【0081】
本発明との関連で、哺乳動物、特にヒトに投与する用量は、相応な時間枠の間哺乳動物で治療反応を実現するのに十分であるべきである。当業者は、投薬量が、患者の年齢、状態および体重、ならびに、疾患の段階/重症度を含めて、様々な因子によって決まることを理解するであろう。用量は、投与の経路(投与形態)、タイミングおよび頻度によっても決まる。経口投与の場合、投薬量は、例えば約0.01mg〜約10g、好ましくは約0.01mg〜約1000mg、より好ましくは約10mg〜約1000mg/日の化合物、またはその薬学的に許容される塩の対応量でよい。
【0082】
治療薬は、単一用量で、または治療クールとして定期的に使用することができる。
【0083】
TPPII活性の抑制についてどのように化合物をスクリーニングするべきかは、当業者に明白である。TPPIIタンパク質は第1段階で精製することができ、TPPIIに好ましい蛍光原基質を第2の段階で用いることができる。これは、TPPII活性を測定する効果的な方法になる。
【0084】
特に高レベルの精製を達成する必要はなく、スクリーニング法で用いるのに十分な品質のTPPIIを得るために、従来の単純な技術を用いることができる。TPPIIの精製の一つの非限定的な例では、100×10個の細胞(例えばEL−4細胞)を沈殿させ、ガラスビーズおよびホモジナイゼーション緩衝液(50mMトリス塩基pH7.5、250mMショ糖、5mM MgCl、1mM DTT)中でボルテックスすることによって溶解した。細胞溶解物を分画遠心分離にかけた。最初に、細胞のホモジネートを14,000rpmで15分間遠心分離し、次に、上清を超遠心管へ移した。次に、試料を100,000×gで1時間超遠心分離し、上清(ほとんどの生化学文献ではサイトゾルと表される)を100,000×gで5時間遠心分離すると、高分子量サイトゾルタンパク質/タンパク質複合体が沈殿した。生じたペレットを50mMトリス塩基pH7.5、30%グリセロール、5mM MgClおよび1mM DTTに溶解し、1μgの高分子量タンパク質をペプチダーゼアッセイの酵素として用いた。
【0085】
TPPIIの活性は、例えば基質AAF−AMC(Sigma、St.Louis、MO)を用いて試験することが可能である。これは、例えば、50mMトリ塩基pH7.5、5mM MgClおよび1mM DTTで構成される100μlの試験緩衝液中で、100μmの濃度で用いることができる。900μlの1%SDS溶液による希釈を用いて、反応を停止することが可能である。切断活性は、例えば、LS50B Luminescence Spectrometer(Perkin Elmer、Boston、MA)における、460nmでの発光で測定することができる。
【0086】
本発明で有用な化合物は、in vivoで虚血または神経変性の部分的または好ましくは完全な治療をもたらすものと定義することができる。
【0087】
本発明で用いる化合物は、十分に血清安定性であり、即ちin vivoで、それらは所望の治療効果を発揮するのに十分長い期間、それらの同一性を保持する。
【0088】
いくつかの形態のストレスのシグナル伝達は、PI3K様キナーゼファミリーの酵素(PIKK)に依存する。これらには、核酵素ATM、ATRおよびDNA−PKcs、さらにはサイトゾル内のmTORが含まれる。本発明者らのデータは、PIKKがサイトゾル内の高分子量ペプチダーゼであるトリペプチジル−ペプチダーゼII(TPPII)の安定化に寄与することを裏付けた。さらに、TPPIIは、PIKKの下流側経路のいくつか、例えばp53安定化およびin vivoでのγ線照射耐性に必要のようである。いくつかの形態のストレスはユビキチン−プロテアソーム経路(UPP)の活性を抑制し、本発明者らの結果は、細胞のストレスの間、トリペプチジル−ペプチダーゼII(TPPII、大きなサイトゾルペプチダーゼ)がUPPの抑制を引き起こしたことを示す。UPP活性の低下は核内へのプロテアソーム複合体の移行と同時に起こり、プロテアソームの核移行は、PI3K様キナーゼ(PIKK)の活性に依存した。プロテアソーム分解からTPPIIを保護するためにPIKK活性が必要とされ、TPPIIの発現または活性の抑制は、プロテアソームのストレス誘発性核局在化を阻止した。TPPII阻害剤は、さもなければ分解耐性のポリグルタミン基質のプロテアソーム性分解を促進した。本発明者らのデータは、TPPIIがプロテアソーム基質分解の抑制を媒介したこと、および、プロテアソーム複合体の再局在化は、細胞のストレスに応じてのPIKK活性化の結果であることを示唆する。このことから、神経変性疾患の処置におけるTPPII阻害剤の使用が導かれる。
【0089】
さらに、本発明者らの結果は、TPPIIが、PIKKの活性に同じく依存する事象である飢餓に応じて、強く上方制御されることを示す。γ線照射への応答で見られるように、TPPIIは、飢餓に応じるp53の蓄積にとっても重要であった。p53はある虚血性疾患の病理の強い決定因子であり、それにより、虚血性疾患を処置するために、TPPIIの抑制を用いることができる。
【0090】
本発明は、これから要約する添付図面に関して、下記のそれには限定されない実施例でさらに詳細に記載される。
[実施例]
【0091】
用いた材料および方法は、以下の通りであった。
【0092】
細胞および培養条件。EL−4は、C57BI/6マウス系統に由来する、ベンツピレンによって誘導されたリンパ腫細胞系統である。EL−4.wtおよびEL−4.TPPIIは、pSUPERベクターでトランスフェクトされたEL−4細胞であり(Brummelkamp,TR、Bernards,R、Agami,R.A system for stable expression of short interfering RNAs in mammalian cells.Science 2002;296:550〜3)、空に対してTPPIIに対するsiRNAを含有する。HeLa細胞は、ヒト子宮頸癌細胞である。ストレスを誘導するために、細胞を50%〜75%リン酸緩衝食塩水(PBS)中で増殖させて飢えさせるか、250〜2000ラドでγ線照射し、37℃および5.3%COでインキュベートした。本発明者らのフローサイトメトリーデータは、ヨウ化プロピジウム(PI)によるフローサイトメトリーゲーティングで判定した、生細胞を表す。安定したトランスフェクタントの生成のために、5×10個の細胞をPBSで洗浄し、次に、Bio−Rad遺伝子パルサー内の500μlのPBSに再懸濁し、10μgのDNAと960μFで250Vでパルスし、G418に対する耐性によって選択した。UbGV76−GFPは、フローサイトメトリーを通して生細胞で26Sプロテアソーム活性を監視するための迅速に分解するGFP分子を形成する、ユビキチン融合構築物である(Dantuma,N.P、Lindsten,K.、Glas,R.、Jellne,M.およびMasucci,M.G.2000.Short−lived green fluorescent proteins for quantifying ubiquitin/proteasome−dependent proteolysis in living cells.Nat Biotechnol.18:538〜43)。Ub−R−GFPは、ユビキチン−プロテアソーム経路を通して分解される非常に不安定なGFP分子もコードする、類似したベクターである。Ub−R−GFP−Q112は同じ基質であるが、112個のグルタミンを有する拡張C末端を有する(Verhoef,L.G.、Lindsten,K.、Masucci,M.G.およびDantuma,N.P.2002.Aggregate formation inhibits proteasomal degradation of polyglutamine proteins.Hum Mol Genet.11:2689〜700)。
【0093】
酵素阻害剤。NLVSはキモトリプシンのペプチダーゼ活性を優先的に標的とするプロテアソーム阻害剤であって、生細胞でのプロテアソーム分解を効率的に抑制する。ブタビンダイドは文献で記載される(Rose,C、Vargas,F、Facchinetti,P、Bourgeat,P、Bambal,RB、Bishop,PBら.Characterization and inhibition of a cholecystokinin−inactivating serine peptidase.Nature 1996;380:403〜9)。Z−Gly−Leu−Ala−OH(Z−GLA−OH)は、TPPIIのそれと相同である活性部位を有する細菌酵素、サブチリシン(Bachem、Weil am Rhein、Germany)の阻害剤である。ワートマニン(Wortmannin)は、PIKK(PI3−キナーゼ関連)−ファミリーキナーゼ(Sigma、St.Louis、MO)の阻害剤である。すべての阻害剤はDMSOで溶解し、使用時まで−20℃で保存した。
【0094】
タンパク質精製、ペプチダーゼアッセイおよびDNA断片の分析。100×10個の細胞を沈殿させ、ガラスビーズおよびホモジナイゼーション緩衝液(50mMトリス塩基pH7.5、250mMショ糖、5mM MgCl、1mM DTT)中でボルテックスすることによって溶解した。細胞溶解物を分画遠心分離にかけ、そこでは、100,000×gで1時間の遠心分離からの上清(サイトゾル)を100,000×gの遠心分離に3〜5時間かけ、高分子量サイトゾルタンパク質/タンパク質複合体を沈殿させた。生じたペレットを50mMトリス塩基pH7.5、30%グリセロール、5mM MgClおよび1mM DTTに溶解し、1μgの高分子量タンパク質を、TPPII発現のためのペプチダーゼアッセイまたはウェスタンブロットの酵素として用いた。TPPIIの活性を試験するために、50mMトリ塩基pH7.5、5mM MgClおよび1mM DTTで構成される100μlの試験緩衝液中で、基質AAF−AMC(Sigma、St.Louis、MO)を100μMの濃度で用いた。切断活性は、LS50B Luminescence Spectrometer(Perkin Elmer、Boston、MA)における、460nmでの発光により測定した。DNA断片の分析のために、細胞を12穴プレートに10細胞数/mlで播種し、アポトーシス誘導剤として通常用いられるDNAトポイソメラーゼII阻害剤である、25μMのエトポシドに、飢餓(50%PBS)まで曝露させた。細胞を12穴プレートに10細胞/mlで播種し、示した時間、通常18〜24時間インキュベートした。EL−4対照および適応細胞からのDNAを標準のクロロホルム抽出によって精製し、アポトーシス細胞からDNAを検出するために、2.5μgのDNAを1.8%アガロースゲルにロードした。
【0095】
抗体および抗血清。以下の分子を、指定した抗体によって検出した。GFPをウサギ抗GFP血清(Molecular Probes Europe、Breda、The Netherlands)により;19Sプロテアソーム複合体を抗Rpt6(19S塩基ATPアーゼサブユニット)により、20Sプロテアソーム複合体を(Affinity、Exeter、UK)により;TPPIIの検出のために、ニワトリ抗TPPII血清(Immunsystem、Uppsala、Sweden)を用いた。TPPIIのウェスタンブロット法のために完全細胞溶解物を用いた実験では、即ち分画をTPPIIについて濃縮しなかった場合、ストレスに曝露させなかった細胞で、TPPIIは検出限界未満であった。ウェスタンブロット法は、標準の技術によって実施した。タンパク質濃度は、BCAタンパク質検定用試薬(Pierce Chemical Co.)で測定した。特記されていない場合は、SDS/PAGEによる分離のために、レーンにつき5μgのタンパク質をロードした。
【0096】
免疫組織化学。細胞を、サイトスピン(cytospin)を通してガラスカバースリップに付着させ、アセトン:メタノール(1:1)で1時間固定させ、次に、スライドをBSS緩衝液中で1時間再水和させた。第1の抗体を加え、BSSで短時間洗浄するまで1時間そのままにし、その後、二次コンジュゲート体(抗ウサギFITC)を加えて1時間インキュベートした。次に、スライドを洗浄し、Hoescht333258で30分間染色した。最後に、スライドにDABCOマウント緩衝液をマウントし、分析まで4℃に保った。
【0097】
フローサイトメトリー。蛍光は、FACScaliburによって定量化した。生細胞のフローサイトメトリー細胞選別は、細胞と2μg/mlのヨウ化プロピジウム(PI)との5分間のインキュベーション、ならびに、以降のFACSvantageによるPIおよびPI集団への選別によって実施した。PIは、飢餓またはγ線照射によって細胞のストレスを誘導した実験で、死細胞を排除するためにも用いた。
【0098】
略語リスト。ATM、突然変異毛細血管拡張性運動失調;BRCT、BRCAのC末端リピート;NLVS、4−ヒドロキシ−5−ヨード−3−ニトロフェニルアセチル−Leu−Leu−Leu−ビニルスルホン;PI、ヨウ化プロピジウム;PIKK、ホスホイノシチド−3−OH−キナーゼ関連キナーゼ;TPPII、トリペプチジル−ペプチダーゼII;FA、3−(2−フリル)アクリロイル。
【0099】
本明細書では、化学物質およびアミノ酸のために標準の略語を用いる。
【0100】
略語 代替略語
A アラニン Ala
R アルギニン Arg
N アスパラギン Asn
D アスパラギン酸 Asp
C システイン Cys
E グルタミン酸 Glu
Q グルタミン Gln
G グリシン Gly
H ヒスチジン His
I イソロイシン Ile
L ロイシン Leu
K リジン Lys
M メチオニン Met
F フェニルアラニン Phe
P プロリン Pro
S セリン Ser
T スレオニン Thr
W トリプトファン Trp
Y チロシン Tyr
V バリン Val
本発明は、いくつかの非天然αアミノ酸も利用する。
【0101】
略語 側鎖
Abu 2−アミノ酪酸 CHCH
Nva ノルバリン CHCHCH
Nle ノルロイシン CHCHCHCH
tert−ブチルアラニン CHC(CH
α−メチルロイシン (CH)(CHC(CH)CH
4,5−デヒドロ−ロイシン CHC(=CH)CH
アロ−イソロイシン CH(CH)CHCH
α−メチルバリン (CH)CH(CH)(CH
tert−ブチルグリシン C(CH
2−アリルグリシン CHCH=CH
Orn オルニチン CHCHCHNH
Dab α,γ−ジアミノ酪酸 CHCHNH
4,5−デヒドロ−リジン CHCH=CHCHNH
【実施例1】
【0102】
TPPIIは、プロテアソーム基質分解のストレス誘発性抑制を媒介する。
細胞のストレスの間のプロテアソーム分解速度を試験するために、緑色蛍光タンパク質(GFP)リポーター基質で安定してトランスフェクトされた、EL−4.Ub−R−GFPおよびHeLa.UbGV76−GFP細胞を用いた(Dantuma,N.P、Lindsten,K.、Glas,R.、Jellne,M.およびMasucci,M.G.2000.Short−lived green fluorescent proteins for quantifying ubiquitin/proteasome−dependent proteolysis in living cells.Nat Biotechnol.18:538〜43)。これらのGFPベースの基質は、N末端が迅速にユビキチン化されてプロテアソームによって分解されるように修飾される。生細胞のフローサイトメトリー分析により、プロテアソーム阻害剤NLVSで処理したEL−4.Ub−R−GFPおよびHeLa.UbGV76−GFPにおけるGFP蛍光の定常レベルの強い増加を観察した(図1)。さらに、本発明者はEL−4.Ub−R−GFPおよびHeLa.UbGV76−GFP細胞の飢餓ならびにγ線照射への曝露は、GFP蛍光の蓄積をもたらし、低濃度のNLVSで処理したときに観察されるレベルに到達することがわかった(図1)。本発明者らのデータは、したがって、細胞のストレスの間、ユビキチン−プロテアソーム経路の活性が低下することを示唆する。
【実施例2】
【0103】
大きなサイトゾルペプチダーゼ、トリペプチジル−ペプチダーゼII(TPPII)は、PI3K様キナーゼ(PIKK)のファミリーの活性化メンバーからのシグナルの伝達にとって重要であると考えられている。PIKKは飢餓およびγ線照射への応答にとって重要であるので、TPPIIがユビキチン−プロテアソーム経路の阻害にとって重要か否か試験した。したがって、TPPII発現のsiRNA媒介性抑制を得るために前に用いたベクターpSUPER−TPPIIで同時トランスフェクトした、EL−4.UbGV76−GFP細胞を作製した。EL−4.UbGV76−GFPおよびEL−4.UbGV76−GFP/TPPII細胞(TPPII siRNAをコードするプラスミドで同時トランスフェクトした)のγ線照射への曝露によって、GFP蛍光の誘導は、少なくとも一部、TPPIIの発現に依存することがわかった(図2a)。さらに、EL−4.TPPII細胞は、EL−4.wt細胞(空のpSUPERベクターを発現する、図2b)と比較して、より高い濃度のプロテアソーム阻害剤の存在下で増殖する能力がかなり高かった。これは、TPPII siRNAプラスミドで同時トランスフェクトしたEL−4.UbGV76−GFP細胞における、蛍光リポーター基質UbGV76−GFPを分解する能力の増加と相関し(図2c)、TPPIIがプロテアソーム基質の分解を抑制することをさらに示唆する。
【0104】
TPPIIがプロテアソーム基質分解を低減させるということをさらに実証するために、プロテアソームによる分解にしばしば抵抗する基質の分解を研究した。前に用いたものに類似するが、C末端のポリグルタミンリピートを含有するリポーター基質である、Ub−R−GFP−Q112を用いた(Verhoef,L.G.、Lindsten,K.、Masucci,M.G.およびDantuma,N.P.2002.Aggregate formation inhibits proteasomal degradation of polyglutamine proteins.Hum Mol Genet.11:2689〜700)。そのようなポリグルタミン配列は、プロテアソームタンパク質分解を抑制し、細胞内封入体に集積し、神経変性疾患を引き起こす(Zoghbi,H.Y.およびOrr,H.T.2000.Glutamine repeats and neurodegeneration.Annu Rev Neurosci.23:217〜47)(Bence,N.F.、Sampat,R.M.およびKopito,R.R.2001.Impairment of the ubiquitin−proteasome system by protein aggregation.Science 292:1552〜5)(Venkatraman,P.、Wetzel,R.、Tanaka,M.、Nukina,N.およびGoldberg,A.L.2004.Eukaryotic proteasomes cannot digest polyglutamine sequences and release them during degradation of polyglutamine−containing proteins.Mol Cell.14:95〜104)。本発明者らは安定して発現するEL−4細胞がUb−R−GFP−Q112を効率的に分解することに失敗したこと、および、NLVSによる処理は、EL−4細胞で分解されない基質の蓄積をさらに増加させることを見出した(図2d)。しかし、pSUPER−TPPII siRNAプラスミドによる同時トランスフェクションは集積したUb−R−GFP−Q112基質の完全な除去を可能にし、それは、20Sプロテアソームの触媒活性に依存した(図2d)。さらに、TPPIIの2つの異なる触媒性阻害剤ブタビンダイドおよびZ−Gly−Leu−Ala−OH(Z−GLA−OH)を用い、それらが、EL−4細胞でR−GFP−Q112基質の安定性に影響を及ぼすか否か調べた。Z−GLA−OHは、TPPIIと触媒機構を共有する酵素である、その細菌同族体サブチリシンを標的とするように設計された阻害剤である(Tomkinson,B.1999.Tripeptidyl peptidases:enzymes that count.Trends Biochem Sci.24:355〜9)(Bryan,P.N.2000.Protein engineering of subtilisin.Biochim Biophys Acta.1543:203〜222)。EL−4.Ub−R−GFP−Q112細胞を100μMブタビンダイドまたは25μMのZ−GLA−OHで処理したとき、EL−4.Ub−R−GFP−Q112基質の段階的減少が観察され、TPPIIの活性がそれらの分解を抑制することが示唆された(図2e)。ペプチダーゼ阻害剤によるこれらのin vitro実験において、本発明者らの阻害剤の血清誘発不安定化を回避するために、無血清AIM−V培地を用いた(Reits,E.ら.2004.A major role for TPPII in trimming proteasomal degradation products for MHC class I antigen presentation.Immunity 20:495〜506)。これらの観察から、本発明者らはTPPIIがUPPのストレス誘発性抑制を媒介したと結論する。
【実施例3】
【0105】
プロテアソーム複合体の飢餓誘発性核局在は、TPPIIの発現および活性を必要とする。TPPIIがプロテアソーム基質分解を制御した機構をさらに特徴付けるために、TPPIIが19S調節プロテアソーム複合体の細胞下局在化を調節するか否か試験した。19S塩基複合体の成分であるRpt6 ATPアーゼサブユニットに対する抗体を用いて、免疫組織化学染色を行った。未処理のEL−4.wtおよびEL−4.TPPII細胞で、サイトゾルおよび核で均質の19Sプロテアソーム染色が明白であった(図3a、b、上パネル)。さらに、飢餓EL−4.wt細胞は細胞量が減少し、特徴的に染色された核を有するHoechst33258対照との比較から明白なように、核においてRpt6の強い染色が検出可能であった(図3a、下方パネル)。対照的に、TPPII発現が抑制されたEL−4細胞、EL−4.TPPIIは、飢餓の間、19Sプロテアソームをそれらの核に局在化することに失敗したことを見出した(図3b、下方パネル)。細胞サイズの減少は、細胞のストレス感知と同時に起こり、類似したデータがγ線照射曝露の間に得られた。飢餓からの解放は、ほとんどのEL−4.wtおよびEL−4.TPPII細胞の増殖を可能にし、これらの細胞がアポトーシス性でないことを示した(図3c)。
【0106】
さらに、対照のおよびストレス下にあるEL−4.wtおよびEL−4.TPPII細胞のサイトゾルを精製し、サイトゾルの高分子量分画を生化学的に分析した。ウェスタンブロット法による検出で、EL−4.wtおよびEL−4.TPPII細胞のサイトゾルでプロテアソームα−3サブユニットの強い発現を本発明者らは見出した(図3d)。しかし、飢餓の後、EL−4.wtからのサイトゾルではプロテアソームを生化学的に検出することは実質的にまったくできなかったが、サイトゾルα−3サブユニットの類似した検出がEL−4.TPPII細胞で検出された。
【実施例4】
【0107】
プロテアソーム分布のTPPII依存性シフトは、HeLa細胞(ヒト子宮頸癌、図4a)の飢餓の後にも見られた。この過程におけるTPPIIの関与は、EL−4,HeLa細胞でプロテアソームの核局在を抑制したTPPII特異阻害剤ブタビンダイドの使用によって支持された(図4a、b)。
【実施例5】
【0108】
ストレス誘発性キナーゼは、プロテアソーム分布およびTPPII発現を制御する。DNA損傷に対する応答の間、TPPIIの発現は、PIKKファミリーのメンバーによって制御される。PIKKシグナル伝達が飢餓に応じるプロテアソームの核局在のためにも必要とされるか否か試験するために、本発明者らの飢餓EL−4細胞を、PIKKファミリーキナーゼの阻害剤ワートマニンの1μMで処理した。その処理はプロテアソーム複合体をサイトゾルに向け直したことから、EL−4細胞におけるプロテアソームのストレス誘発性移行は、1μMワートマニンによって抑制されることがわかった(図5a、b)。さらに、1μMワートマニンとのインキュベーションが6〜9時間後にすべての検出可能なTPPIIタンパク質の分解を誘発したのに対して、プロテアソームα−3サブユニットの発現は同期間の間一定に保たれたので、ストレス誘発性TPPII発現もPIKKキナーゼ活性を必要とすることを本発明者らはさらに見出した(図5c)。しかし、NLVSでプロテアソームをブロックすることは、ワートマニン処理の間の急速なTPPII下方制御を阻止したことから、ストレスシグナル伝達が抑制されるときのTPPIIのプロテアソーム性分解が示唆された(図5c)。これらのデータは、TPPIIが、細胞の飢餓の間プロテアソームの核局在のために必要とされるストレスシグナルのPIKK誘発性媒介物質であることを示唆する。
【0109】
本発明者らのデータは、細胞のストレスの間のPIKKによるシグナル伝達は、プロテアソーム基質分解を抑制することを示した。TPPIIの抑制は、in vitroで安定してトランスフェクトされた細胞での、ポリグルタミン基質の分解を可能にする。したがって、本発明者らは、病原性の、疾患誘発性タンパク質の負荷を除去するために、神経変性疾患患者の、おそらく定期的な、処置を提案する。さらに、本発明者らの実験は、特にトリペプチドTPPII阻害剤が、この状況で分配すべき化合物であることを明らかにする。
【実施例6】
【0110】
飢餓誘発性のp53蓄積および増殖停止におけるTPPIIの必要条件。TPPIIが飢餓に対する応答で重要であるか否か試験したが、その訳は、この種のストレスがPIKKによって制御され、虚血性疾患などの疾患発生病理に非常に重要であるからである。本発明者らはEL−4細胞の増殖培養物中のTPPIIの発現を試験し、4〜5日間の増殖の後に高密度に到達した細胞培養は、細胞密度のピークに到達する間に、徐々に高いTPPII発現を獲得したことを観察した(図6aおよびb)。これらの細胞培養物へ新しい培地を添加すると、TPPII発現の急速な下方制御が起きた(矢印で示す、図6a)。これらのデータは、TPPIIの発現が飢餓によって上方制御されることをさらに支持する。
【0111】
飢餓に対する応答における、TPPIIの機能的役割を調査した。最大細胞密度に接近するEL−4.wt対照細胞の培養物で、Hトリチウムの取り込みによって検出されたDNA合成の下方制御を観察したが、これは、EL−4.TPPII細胞では観察されなかった(図6c)。これらのデータと同調して、本発明者らは飢餓EL−4.TPPII細胞で、EL−4.wt細胞と比較して減少したp53の蓄積を認める(図6d)。飢餓に瀕するEL−4.wtおよびEL−4.TPPII細胞での増殖停止の存在をさらに試験するために、2〜5日間飢餓を生き延びた生細胞(即ちPIneg細胞)のフローサイトメトリー選別を実施し、新鮮培地でのそれらの増殖を測定した。2日後、これらの細胞の約50%はPInegであったが、飢餓の5日後には3〜5%だけがPInegであった。飢餓させたPIneg EL−4.wt細胞の培養は、増殖が再開するまでにかなりの遅れがあることがわかり、このことは、飢餓を5日間生き延びたEL−4.wt細胞のマイナー分画の間で特に明らかであった(図6e)。対照的に、5日間の飢餓を生き延びたEL−4.TPPII細胞は、ほとんど直後に急速な増殖を再開した。それにより、PIKKによって制御される数種類のストレスへの応答は、TPPIIを必要とする。飢餓細胞で観察されたTPPIIの強い発現は、明らかに細胞周期停止およびp53の蓄積に寄与した。
【0112】
脳卒中の動物マウスモデルは、p53−/−動物でニューロン死の大きな低下を示す(Yonekura I、Takai K、Asai A、Kawahara N、Kirino T.p53 potentiates hippocampal neuronal death caused by global ischemia.J Cereb Blood Flow Metab.2006、26:1332〜40)。本発明者らのデータは、TPPIIの抑制は、いくつかの形態のストレス、例えば飢餓に応じる、p53の蓄積を減少させることを示す。したがって、本発明者らは、虚血性疾患の処置のための標的として、TPPIIを提案する。例えば、トリペプチドTPPII阻害剤は、例えば急性の全身病の患者へ注射により投与し、虚血組織でのp53の蓄積を減少させ、それによって組織生存を延長させることができる。十分な時間が提供される場合、血流の副行路が形成され、p53蓄積の抑制は、したがって、例えば脳卒中の間の、梗塞のサイズを低減させることができる。
【実施例7】
【0113】
重要なことに、本発明者らは、p53の蓄積がTPPII活性に依存することを示した(図7a)。さらに、Z−GLA−OH処理がTPPII発現の大きな減少をもたらすことを発見し(図7b)、どのように活性部位のブロッキングが、ほとんどの場合、分子の発現を妨げるためにsiRNAを用いたときに観察されるものに類似した結果を与えるのかについての理論的根拠を提供する。
【実施例8】
【0114】
ジ−ペプチド、トリ−ペプチドおよび誘導体のin vitro試験。
【0115】
表1は、任意であるが相対的である蛍光定量的ユニットにおける、AAF−AMC(H−Ala−Ala−7−アミド−4−メチルクマリン)のいくつかの濃度の化合物による切断の抑制に関するin vitroデータを含む。試験した大部分の化合物で、多少の有益効果が見られる。
【0116】
TPPIIタンパク質を濃縮し、次に、TPPIIに好ましい蛍光原基質AAF−AMCを用いた。100×10個の細胞を沈殿させ、ガラスビーズおよびホモジナイゼーション緩衝液(50mMトリス塩基pH7.5、250mMショ糖、5mM MgCl、1mM DTT)中でボルテックスすることによって溶解した。細胞溶解物を、分画遠心分離にかけた。最初に、細胞のホモジネートを14,000rpmで15分間遠心分離し、次に、上清を超遠心管へ移した。次に、試料を100,000×gで1時間超遠心分離し、上清(ほとんどの生化学文献ではサイトゾルと表される)を100,000×gで5時間遠心分離すると、高分子量サイトゾルタンパク質/タンパク質複合体が沈殿した。生じたペレットを50mMトリス塩基pH7.5、30%グリセロール、5mM MgClおよび1mM DTTに溶解し、1μgの高分子量タンパク質をペプチダーゼアッセイの酵素として用いた。
【0117】
TPPIIの活性を試験するために、本発明者らは50mMトリ塩基pH7.5、5mM MgClおよび1mM DTTで構成される100μlの試験緩衝液中で、基質およびAAF−AMC(Sigma、St.Louis、MO)を100μMの濃度で用いた。反応を停止するために、900μlの1%SDS溶液で希釈した。切断活性は、LS50B Luminescence Spectrometer(Perkin Elmer、Boston、MA)における、460nmでの発光により測定した。
【0118】
FA=3−(2−フリル)アクリロイル;PBS=リン酸緩衝食塩水。各化合物名の最初のテキスト(Z、FA、H、その他)は、N末端の置換基である;Hは、N末端が遊離のNHであることを示す。各化合物名の終わりのテキスト(OH、NBu、その他)は、C末端の置換基である;OHは、C末端が遊離のCOHであることを示す。
【0119】
【表1−1】

【0120】
【表1−2】

【0121】
GPG−NHおよびZ−GPG−NHを含めて、他の化合物も上のin vitro試験で高い能力を発揮した。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】細胞のストレスの間のプロテアソーム基質分解の抑制。(a〜h)示すように、γ線照射、飢餓またはプロテアソーム阻害剤による処理に曝露させたEL−4.Ub−R−GFP細胞(a〜d)およびHeLa.UbGV76−GFP細胞(e〜h)の、フローサイトメトリーによって定量化されたGFP蛍光。γ線照射した細胞は1000ラドに曝露させ、3〜4日間in vitroでインキュベートした。飢餓細胞は、5〜7日間培地を補充することなく、高密度の標準in vitro培養で増殖させた。死細胞は、ヨウ化プロピジウム(PI)によるゲーティングで排除した。
【図2】ユビキチン−プロテアソーム経路のストレス誘発性抑制は、TPPIIに依存する。(a)γ線照射への曝露から1〜4日後のEL−4.UbGV76−GFP(左)およびEL−4.UbGV76−GFP/TPPII細胞の平均蛍光強度。(b)0、5または25μMのNLVSの存在下でのEL−4.wtおよびEL−4.TPPII細胞のin vitro細胞増殖。(c)0、2、4、6、8または10μMのNLVSで一晩処理したEL−4.UbGV76−GFP(空の円)およびEL−4.UbGV76−GFP/TPPII細胞(塗りつぶされた円)の、フローサイトメトリーによって定量化した平均蛍光強度(MFI)。(d)未処理のまたはNLVSの示した濃度で処理した、安定してトランスフェクトしたEL−4対EL−4.TPPII細胞におけるUb−R−GFP−Q112の発現。(e)最高72時間、ブタビンダイドまたはTPPII阻害剤Z−GLA−OHで処理した、安定してトランスフェクトしたEL−4細胞におけるUb−R−GFP−Q112の発現。
【図3】細胞のストレスの間のプロテアソームの核局在は、TPPIIに依存する。(a、b)抗Rpt6(19S塩基サブユニット)による染色で検出した、EL−4.wt(a)対EL−4.TPPII(b)における19Sプロテアソームの局在を示し、未処理(上パネル)対飢餓(下パネル)細胞を比較した。スケールバー=5μm。(c)示した時間飢餓にさらした、EL−4.wt(上)対EL−4.TPPII細胞(下)のin vitro増殖。(d)飢餓にさらしたか、未処理のEL−4.wtおよびEL−4.TPPII細胞からのサイトゾル分画の、抗TPPIIおよび抗プロテアソームα−3によるウェスタンブロット法。
【図4】TPPIIの抑制は、ストレスの間のプロテアソームの核局在を阻止する。(a)未処理(上)、飢餓にさらした(中央)または飢餓および100μMブタビンダイド(Butabindide)にさらした(下)HeLa細胞内の19Sプロテアソームの局在。スケールバー=5μm。(b)Rpt6染色で検出した、100μMブタビンダイドの存在下での、飢餓EL−4細胞内の19Sプロテアソームの局在。
【図5】PIKKファミリーキナーゼ活性は、TPPII発現およびプロテアソームの核局在を制御する。(a、b)1μMワートマニン(PIKKファミリーキナーゼの阻害剤)の存在下または非存在下で飢餓にさらし、抗Rpt6(19Sプロテアソーム、a)または抗α−3(20Sプロテアソーム、b)について染色したEL−4細胞の、免疫組織化学的分析。スケールバー=5μm。(c)1μMワートマニンで0、3、6、9および16時間処理した飢餓EL−4細胞における、抗TPPIIおよび抗プロテアソームα−3についてのウェスタンブロット法。
【図6】飢餓誘発性細胞周期停止は、TPPIIの発現を必要とする。(a)1日目に10細胞/mlで播種し、細胞培養培地を交換せずに8日間培養したEL−4.wt対照細胞に由来する細胞溶解物の、抗TPPIIによるウェスタンブロット法。矢印は、新しい細胞培養培地の添加を示す。(b、c)EL−4.wtおよびEL−4.TPPII細胞のin vitro培養の間の生細胞(b)およびDNA合成(c)。(d)60%PBS中で0、1または30時間飢餓にさらしたEL−4.wt対照対EL−4.TPPII細胞におけるp53の発現。(e)2日間または5日間の飢餓培地での培養後に正常な組織培養培地で生育中の、生きているEL−4.wt(空のバー)およびEL−4.TPPII細胞(塗りつぶしたバー)。
【図7】TPPII阻害剤は、TPPIIタンパク質の発現およびp53の安定化を阻止する。(a)実験開始の2時間前から100μMブタビンダイドで処理した、または未処理のγ線照射(500ラド)EL−4.wt細胞での、p53のウェスタンブロット分析。(b)25μMのZ−GLA−OHで処理した、または未処理のγ線照射(500ラド)EL−4.wt対照細胞での、TPPIIのウェスタンブロット分析。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経変性疾患または虚血性状態の処置における使用のための、TPPII阻害剤である化合物。
【請求項2】
前記化合物が、式(i)から選択されるか、その薬学的に許容される塩である、請求項1に記載の使用のための化合物
(i)RN1N2N−A−A−A−CO−RC1
[式中、A、AおよびAは、標準の1文字略語または名称に従う以下の定義を有するアミノ酸残基であり、即ち、
は、G、A、V、L、I、P、2−アミノ酪酸、ノルバリンまたはtert−ブチルグリシンであり、
は、G、A、V、L、I、P、F、W、C、S、K、R、2−アミノ酪酸、ノルバリン、ノルロイシン、tert−ブチルアラニン、α−メチルロイシン、4,5−デヒドロ−ロイシン、アロ−イソロイシン、α−メチルバリン、tert−ブチルグリシン、2−アリルグリシン、オルニチンまたはα,γ−ジアミノ酪酸であり、
は、G、A、V、L、I、P、F、W、D、E、Y、2−アミノ酪酸、ノルバリンまたはtert−ブチルグリシンであり、
N1およびRN2は、それぞれペプチドのN末端に結合し、同じであるかまたは異なり、それぞれ独立して
N3
(リンカー1)−RN3
CO−(リンカー1)−RN3
CO−O−(リンカー1)−RN3
CO−N−((リンカー1)−RN3)RN4、または
SO−(リンカー1)−RN3
であり、(リンカー1)は存在しなくてもよく、即ち単結合でもよく、またはCH、CHCH、CHCHCH、CHCHCHCHもしくはCH=CHであることができ、
N3およびRN4は、同じであるかまたは異なり、水素または以下の必要に応じて置換された基:
飽和または不飽和で分枝または非分枝C1〜6アルキル、
飽和または不飽和で分枝または非分枝C3〜12シクロアルキル、
ベンジル、
フェニル、
ナフチル、
単環式または二環式C1〜10ヘテロアリール、または
非芳香族C1〜10ヘテロシクリル
のいずれかであり、RN3および/またはRN4には、0、1または2個(同じかまたは異なる)の必要に応じた置換基があり得、該置換基は、
ヒドロキシ−、
チオ−、
アミノ−、
カルボン酸、
飽和または不飽和で分枝または非分枝C1〜6アルキルオキシ、
飽和または不飽和で分枝または非分枝C3〜12シクロアルキル、
N−、O−またはS−アセチル、
カルボン酸の飽和または不飽和で分枝または非分枝C1〜6アルキルエステル、
カルボン酸の飽和または不飽和で分枝または非分枝C3〜12シクロアルキルエステル
フェニル、
単環式または二環式C1〜10ヘテロアリール、
非芳香族C1〜10ヘテロシクリル、または
ハロゲン
でよく、RC1は、トリペプチドのC末端に結合し、
O−RC2
O−(リンカー2)−RC2
N((リンカー2)RC2)RC3、または
N(リンカー2)RC2−NRC3C4
であり、(リンカー2)は存在しない、即ち単結合、またはC1〜6アルキルもしくはC2〜4アルケニル、好ましくは単結合、またはCH、CHCH、CHCHCH、CHCHCHCHもしくはCH=CHであってもよく、
C2、RC3およびRC4は、同じであるかまたは異なり、水素または以下の必要に応じて置換された基:
飽和または不飽和で分枝または非分枝C1〜6アルキル、
飽和または不飽和で分枝または非分枝C3〜12シクロアルキル、
ベンジル、
フェニル、
ナフチル、
単環式または二環式C1〜10ヘテロアリール、または
非芳香族C1〜10ヘテロシクリル
のいずれかであり、RC2および/またはRC3および/またはRC4のそれぞれには、0、1または2個(同じかまたは異なる)の必要に応じた置換基があり得、該置換基は、
ヒドロキシ−、
チオ−、
アミノ−、
カルボン酸、
飽和または不飽和で分枝または非分枝C1〜6アルキルオキシ、
飽和または不飽和で分枝または非分枝C3〜12シクロアルキル、
N−、O−またはS−アセチル、
カルボン酸の飽和または不飽和で分枝または非分枝C1〜6アルキルエステル、
カルボン酸の飽和または不飽和で分枝または非分枝C3〜12シクロアルキルエステル
フェニル、
ハロゲン、
単環式または二環式C1〜10ヘテロアリール、または
非芳香族C1〜10ヘテロシクリル
の1つまたは複数でよい]。
【請求項3】
式(i)の前記化合物が、
N1は水素であり、
N2は、水素、C(=O)−O−飽和もしくは不飽和で分枝もしくは非分枝C1〜4アルキルであり、フェニルもしくは2−フリルで必要に応じて置換されており、またはC(=O)−飽和もしくは不飽和で分枝もしくは非分枝C1〜4アルキルであり、フェニルもしくは2−フリルで必要に応じて置換されており、
C1は、OH、O−C1〜6アルキル、O−C1〜6アルキル−フェニル、NH−C1〜6アルキルまたはNH−C1〜6アルキルフェニルである、請求項2に記載の使用のための化合物。
【請求項4】
式(i)の前記化合物が、
は、G、Aまたは2−アミノ酪酸であり、
は、L、I、ノルロイシン、V、ノルバリン、tert−ブチルアラニン、4,5−デヒドロ−ロイシン、アロ−イソロイシン、2−アリルグリシン、P、2−アミノ酪酸、α−メチルロイシン、α−メチルバリンまたはtert−ブチルグリシンであり、
は、G、A、V、P、2−アミノ酪酸またはノルバリンであり、
N1はHであり、
N2は、水素、C(=O)−O−飽和もしくは不飽和で分枝もしくは非分枝C1〜4アルキルであり、フェニルもしくは2−フリルで必要に応じて置換されており、またはC(=O)−飽和もしくは不飽和で分枝もしくは非分枝C1〜4アルキルであり、フェニルもしくは2−フリルで必要に応じて置換されており、
C1は、OH、O−C1〜6アルキル、O−C1〜6アルキルフェニル、NH−C1〜6アルキルまたはNH−C1〜6アルキルフェニルである、請求項3に記載の使用のための化合物。
【請求項5】
式(i)の前記化合物が、
は、G、Aまたは2−アミノ酪酸であり、
は、L、I、ノルロイシン、V、ノルバリン、tert−ブチルアラニン、4,5−デヒドロ−ロイシン、アロ−イソロイシンまたは2−アリルグリシンであり、
は、G、A、V、P、2−アミノ酪酸またはノルバリンであり、
N1はHであり、
N2は、水素、C(=O)−O−飽和もしくは不飽和で分枝もしくは非分枝C1〜4アルキルであり、フェニルもしくは2−フリルで必要に応じて置換されており、またはC(=O)−飽和もしくは不飽和で分枝もしくは非分枝C1〜4アルキルであり、フェニルもしくは2−フリルで必要に応じて置換されており、
C1は、OH、O−C1〜6アルキル、O−C1〜6アルキル−フェニル、NH−C1〜6アルキルまたはNH−C1〜6アルキル−フェニルである、請求項4に記載の使用のための化合物。
【請求項6】
式(i)の前記化合物が、
は、GまたはAであり、
は、L、Iまたはノルロイシンであり、
は、GまたはAであり、
N1は水素であり、
N2は、水素、C(=O)−O−飽和もしくは不飽和で分枝もしくは非分枝C1〜4アルキルであり、フェニルもしくは2−フリルで必要に応じて置換されており、またはC(=O)−飽和もしくは不飽和で分枝もしくは非分枝C1〜4アルキルであり、フェニルもしくは2−フリルで必要に応じて置換されており、
C1は、OH、O−C1〜6アルキル、O−C1〜6アルキル−フェニル、NH−C1〜6アルキルまたはNH−C1〜6アルキル−フェニルである、請求項5に記載の使用のための化合物。
【請求項7】
N1は水素であり、
N2は、水素、C(=O)−OCHPhまたはC(=O)−CH=CH−(2−フリル)であり、
C1は、OH、O−C1〜6アルキルまたはNH−C1〜6アルキルである、
請求項2から6のいずれかに記載の使用のための化合物。
【請求項8】
式(i)の前記化合物が、Z−GLA−OH、Bn−GLA−OH、FA−GLA−OHまたはH−GLA−OHである、請求項7に記載の使用のための化合物。
【請求項9】
式(i)の前記化合物がZ−GLA−OHである、請求項8に記載の使用のための化合物。
【請求項10】
が、G、Aまたは2−アミノ酪酸である、請求項2に記載の使用のための化合物。
【請求項11】
がGまたはAである、請求項10に記載の使用のための化合物。
【請求項12】
が、L、I、ノルロイシン、V、ノルバリン、tert−ブチルアラニン、4,5−デヒドロ−ロイシン、アロ−イソロイシン、2−アリルグリシン、P、K、2−アミノ酪酸、α−メチルロイシン、α−メチルバリンまたはtert−ブチルグリシンである、請求項2、10または11のいずれかに記載の使用のための化合物。
【請求項13】
が、L、I、ノルロイシン、V、ノルバリン、tert−ブチルアラニン、4,5−デヒドロ−ロイシン、アロ−イソロイシン、2−アリルグリシン、PまたはKである、請求項12に記載の使用のための化合物。
【請求項14】
がL、I、ノルロイシン、PまたはKである、請求項13に記載の使用のための化合物。
【請求項15】
がLまたはPである、請求項14に記載の使用のための化合物。
【請求項16】
がPである、請求項15に記載の使用のための化合物。
【請求項17】
が、G、A、V、P、2−アミノ酪酸またはノルバリンである、請求項2または10から16のいずれかに記載の使用のための化合物。
【請求項18】
がGまたはAである、請求項17に記載の使用のための化合物。
【請求項19】
N1が水素である、請求項2または10から18のいずれかに記載の使用のための化合物。
【請求項20】
N2が、
N3
(リンカー1)−RN3
CO−(リンカー1)−RN3、または
CO−O−(リンカー1)−RN3
であり、上式で、
(リンカー1)は存在しなくてもよく、即ち単結合でもよく、またはCH、CHCH、CHCHCH、CHCHCHCHもしくはCH=CHであることができ、
N3は、水素または以下の置換されていない基
飽和または不飽和で分枝または非分枝C1〜4アルキル、
ベンジル、
フェニル、または
単環式ヘテロアリール
のいずれかである、請求項2または10から19のいずれかに記載の使用のための化合物。
【請求項21】
N2が、水素、ベンジルオキシカルボニル、ベンジル、ベンゾイル、tert−ブチルオキシカルボニル、9−フルオレニルメトキシカルボニルまたはFAである、請求項20に記載の使用のための化合物。
【請求項22】
N2が、水素、ベンジルオキシカルボニルまたはFAである、請求項21に記載の使用のための化合物。
【請求項23】
C1が、
O−RC2
O−(リンカー2)−RC2、または
NH−(リンカー2)RC2
であり、上式で、
(リンカー2)は存在しない、即ち単結合、C1〜6アルキルもしくはC2〜4アルケニル、好ましくは単結合、またはCH、CHCH、CHCHCH、CHCHCHCHもしくはCH=CHであってもよく、
C2は、水素または以下の置換されていない基:
飽和または不飽和で分枝または非分枝C1〜5アルキル、
ベンジル、
フェニル、または
単環式C1〜10ヘテロアリール
のいずれかである、請求項2または10から22のいずれかに記載の使用のための化合物。
【請求項24】
C1が、OH、O−C1〜6アルキル、O−C1〜6アルキル−フェニル、NH、NH−C1〜6アルキルまたはNH−C1〜6アルキル−フェニルである、請求項23に記載の使用のための化合物。
【請求項25】
C1が、OH、O−C1〜6アルキル、NHまたはNH−C1〜6アルキルである、請求項24に記載の使用のための化合物。
【請求項26】
C1がOHまたはNHである、請求項25に記載の使用のための化合物。
【請求項27】
C1がNHである、請求項26に記載の使用のための化合物。
【請求項28】
前記化合物が、GPG−NH、Z−GPG−NH、Bn−GPG−NH、FA−GPG−NH、GPG−OH、Z−GPG−OH、Bn−GPG−OHまたはFA−GPG−OHである、請求項2に記載の使用のための化合物。
【請求項29】
前記化合物がGPG−NHである、請求項28に記載の使用のための化合物。
【請求項30】
前記化合物が、ALG−NH、Z−ALG−NH、Bn−ALG−NH、FA−ALG−NH、ALG−OH、Z−ALG−OH、Bn−ALG−OHまたはFA−ALG−OHである、請求項2に記載の使用のための化合物。
【請求項31】
前記化合物がALG−NHである、請求項30に記載の使用のための化合物。
【請求項32】
が、F、W、D、EまたはYではない、請求項2から31のいずれかに記載の使用のための化合物。
【請求項33】
がPではない、請求項2から32のいずれかに記載の使用のための化合物。
【請求項34】
がEではない、請求項2から33のいずれかに記載の使用のための化合物。
【請求項35】
神経変性疾患の処置で使用するための、前記請求項のいずれかに記載の化合物。
【請求項36】
アルツハイマー病、パーキンソン病またはハンチントン舞踊病から選択される神経変性疾患の処置で使用するための、請求項35に記載の化合物。
【請求項37】
虚血性状態の処置で使用するための、請求項1から34のいずれかに記載の化合物。
【請求項38】
脳卒中および心筋梗塞から選択される虚血性状態の処置で使用するための、請求項37に記載の化合物。
【請求項39】
神経変性疾患または虚血性状態の処置方法であって、それを必要とする患者に請求項1から34のいずれかに記載の化合物の治療有効量を投与することを含む方法。
【請求項40】
神経変性疾患の処置方法であって、それを必要とする患者に請求項1から34のいずれかに記載の化合物の治療有効量を投与することを含む方法。
【請求項41】
アルツハイマー病、パーキンソン病またはハンチントン舞踊病から選択される神経変性疾患の処置方法であって、それを必要とする患者に請求項1から34のいずれかに記載の化合物の治療有効量を投与することを含む方法。
【請求項42】
虚血性状態の処置方法であって、それを必要とする患者に請求項1から34のいずれかに記載の化合物の治療有効量を投与することを含む方法。
【請求項43】
脳卒中および心筋梗塞から選択される虚血性状態の処置方法であって、それを必要とする患者に請求項1から34のいずれかに記載の化合物の治療有効量を投与することを含む方法。
【請求項44】
神経変性疾患または虚血性状態の処置のための医薬品の製造における、請求項1から34のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項45】
神経変性疾患の処置のための医薬品の製造における、請求項1から34のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項46】
アルツハイマー病、パーキンソン病またはハンチントン舞踊病から選択される神経変性疾患の処置のための医薬品の製造における、請求項1から34のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項47】
虚血性状態の処置のための医薬品の製造における、請求項1から34のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項48】
脳卒中および心筋梗塞から選択される虚血性状態の処置のための医薬品の製造における、請求項1から34のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項49】
神経変性疾患または虚血性状態の処置に適当な化合物を同定する方法であって、TPPIIをスクリーニングする化合物と接触させ、その化合物がTPPIIの活性を阻害するか否かを同定することを含む、方法。
【請求項50】
神経変性疾患の処置に適当な化合物を同定する方法であって、TPPIIをスクリーニングする化合物と接触させ、その化合物がTPPIIの活性を阻害するか否かを同定することを含む方法。
【請求項51】
アルツハイマー病、パーキンソン病またはハンチントン舞踊病から選択される神経変性疾患の処置に適当な化合物を同定する方法であって、TPPIIをスクリーニングする化合物と接触させ、その化合物がTPPIIの活性を阻害するか否かを同定することを含む方法。
【請求項52】
虚血性状態の処置に適当な化合物を同定する方法であって、TPPIIをスクリーニングする化合物と接触させ、その化合物がTPPIIの活性を阻害するか否かを同定することを含む方法。
【請求項53】
脳卒中および心筋梗塞から選択される虚血性状態の処置に適当な化合物を同定する方法であって、TPPIIをスクリーニングする化合物と接触させ、その化合物がTPPIIの活性を阻害するか否かを同定することを含む方法。
【請求項54】
請求項2から34のいずれかに記載の式(i)の構造を有する化合物、および薬学的に許容される希釈剤または担体を含む医薬組成物。
【請求項55】
請求項2から34のいずれかに記載の構造を有する化合物、および薬学的に許容される希釈剤または担体を含む医薬組成物であって、前記化合物が、シンナモイル−IFP−エチルアミド、GPE−OH、GGF−OH、GVF−OH、AAA−OHまたはIPI−OHではない、医薬組成物。
【請求項56】
がプロリンではない、請求項54または55に記載の医薬組成物。
【請求項57】
化合物がGPE−OHではない、請求項54から56のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項58】
C1がNHではない、請求項54から57のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項59】
医薬として使用するための、請求項54から58のいずれかに記載の化合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−523157(P2009−523157A)
【公表日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−549887(P2008−549887)
【出願日】平成19年1月15日(2007.1.15)
【国際出願番号】PCT/EP2007/050364
【国際公開番号】WO2007/088099
【国際公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(508198007)オンコレー アーベー (2)
【Fターム(参考)】