説明

蛍光ナノスコピー方法

蛍光分子のイメージを低ノイズで記録し、デジタル化するビデオカメラに試料イメージを可視化・投影する光学系と、イメージを記録・処理するためのコンピュータと、対物レンズの前側に配置された試料ホルダーと、蛍光放射励起源と、試料蛍光光を分離するための、置換可能な抑制フィルタのセットを備えた顕微鏡を用いて実行される。別個に蛍光された可視の分子とナノ分子が、異なった対象部分内で周期的に形成され、レーザにより、オーバラップしないイメージを記録するため、既に記録された蛍光分子をデカラーリングするのに充分な、分子及びナノ分子の振動を生起し、記録された個別分子及びナノ分子イメージの10000枚のイメージが、個別の蛍光分子及びナノ分子の座標に相応する計算された多数のステイン中心座標に従って、ステインの中心の座標をサーチし、対象のイメージを形成するために、コンピュータにより処理される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、科学研究用の装置、及び、特に、レンズ式蛍光顕微鏡に関する。 そのような顕微鏡は、ガラス蛍光対象のイメージを得るために使われる。更に、特に、本発明は、数ナノメートル(nm)もの解像度で対象のイメージを再構成する、コンピュータ処理される蛍光顕微鏡の方法である。
【0002】
対象上の2つのスポットを、当該2つのスポット間の距離が所謂回折限界(diffraction limit)よりも小さい場合に限って、別個に示すことができる対物レンズで、対象の拡大イメージを形成することができる光学顕微鏡がある。この回折限界は、以下の式を使って計算することができる: r=0.61λ/A (1)、ここで、λは、アパーチャA=n*sin(φ)の対物レンズによって集光された光の波長であり、nは、対象スポットを囲む物質の屈折率であり、φは、対物レンズ軸と、対物レンズに入射して検出器で検出される限界光線(extreme rays)との間の角度である。昨今、種々異なるタイプの装置が、対物レンズを用いる蛍光顕微鏡用に用いられている。パワフルなアークランプ、白熱灯、レーザ又は太陽光が、顕微鏡用の光源でありうる。照明領域内にある全ての染色分子で、蛍光が開始する。この領域は、光を分割するダイクロイックミラーを用いて、対物レンズを通して照明される。そのようなダイクロイックミラーにより、励起光が対象に入射し、蛍光光が検出器の方に反射される。第2のタイプの照明は、サイドからレーザ光を送出することによって行われる。このレーザ光は、対象を、全面的に対象ガラスの下又は対象ガラスを通して、全反射角度で照明する。この場合、光は、ガラスと、ガラスよりも小さな屈折率の対象との間の縁から、光の波長の0.3倍しかない深さに達する。対象蛍光光は、対物レンズによって集光される。対物レンズは、対象のイメージを視覚による観測のため、及び、フォトマルチプライヤ、フォトグラフィックテープ(photographic tape)、又は、デジタルビデオカメラを用いて記録するために送る。既存のレンズ式顕微鏡全ての主要な欠点は、当該顕微鏡が、隣接する2つのスポットを区別するのに限界を有しているということにある。この回折限界は、上述の式(1)に従って計算することができる。
【0003】
最近の、銀フィルム製のスーパーレンズを用いる顕微鏡が開発された。フィルムの厚みは、50nmより小さく、つまり、相互にほぼ50nmの距離に位置する2つのスポットの解像度を得ることができる。(N. Fang 及び X. Zhang, 「Imaging properties of a metamaterial superlens」, 2003年, App phys Let v. 82, 2, 161-163; Nicholas Fang, Zhaowei Liu, Ta-Jen Yen, and Xiang Zhang 「Regenerating evanescent waves from a silver superlens」, 2003年, OPTICS EXPRESS, Vol. 11, No. 7, 682-687参照).しかし、生物の対象に、そのような顕微鏡を使うことは、明瞭でない。この顕微鏡は、本発明の装置の解像度よりも数倍低い解像度しか有していない。
【0004】
1nmよりも良好な最大解像度を有する装置、例えば、電子顕微鏡、トンネル顕微鏡、原子間力顕微鏡がある。それらは、実際の利点のみならず、深刻な欠点も有しており、例えば:それらの装置の設計及び対象を用いて作業する際の複雑さと高価さ;異なったタイプの分子を区別するための色イメージを受け取るための機会の不足;対象が、通常、当該対象の異なった各部分の相互のレイアウトを変える物質で乾燥及び処理される必要がある。原子間力顕微鏡及びトンネル顕微鏡により、対象内部の構造体を検出することはできず、一時に1つのスポットしか検出することはできず、スキャンニング速度は、毎分1スクエアミクロンを越えることはできず、ニードルの端は、汚れやすく、汚れた後、ニードルは、対象の表面に達することはできない。
【0005】
対象の蛍光が、ガラスファイバの突き合わせ部上の孔を通して、レーザにより励起される装置もある。このファイバは、当該ファイバの端を、光反射部、光拡散部の近傍に位置付けるように3方向での駆動により移動され、又は、蛍光分子表面でカバーされる。このタイプの顕微鏡は、レンズを用いず、普通の光学顕微鏡の解像度よりも10倍良好な解像度のイメージを得ることはできない。これらの結果は、ガラスファイバの突き合わせ部端上の孔の直径が、光の波長よりも遙かに短い場合に限って達成することができる。光は、光の波長よりも遙かに短い深さの対象上に照射される。実際には、孔の外側から対象によって補足された部分を除いて、全ての光がガラスファイバ内に戻る。孔の近傍の対象内で補足された蛍光、光拡散、及び、反射光強度は、フォトマルチプライヤを用いて測定される。対象表面のイメージは、測定された光の強度及びガラスファイバ座標の端上のデータについての情報を収集するコンピュータによって再構成される。このシステムの主要な欠点は;高価な高精度と、ガラスファイバの、対象に対する移動に責任がある高速動作機構ユニットを用いる必要がある点;非常に高価で、複雑且つ複製が困難な、直径が50nmより小さな端の孔を有するガラスファイバを製造する点;この孔は、汚れやすく、汚れた後、対象の表面に達することができない点;光のほんの僅かな部分しか、光の波長よりも小さな直径の孔を通してファイバから放射することができない点;光がガラスファイバ端よりも強い場合、ガラスファイバ端が加熱され、破壊される点;ガラスファイバによってアクセス可能でない対象の領域内の蛍光を検出することができない点;一時に1つのスポットしか検出することができず、表面スキャンニング速度は、毎分1スクエアミクロンを越えない点。
【0006】
1つ以上の新規な顕微鏡タイプについて説明する。このタイプの顕微鏡は、同時に幾つかの光ビームを用いて対象の表面をスキャンする。標準技術局National Institute of Standards and Technology (NIST)は、この顕微鏡を作り出す研究作業に5年間の間助成金を出した(http://www.betterhumans.com/News/news.aspx?articIelD=2005-02-11-4, "Optical Microscopes Enter the Nano Age. Hybrid system being developed to image and measure features smaller than the wavelength of visible light".)40nmナノ粒子を、この方法を使って区別することができることが論文中に示されている。相互に40nmより小さな距離で配置された2つの別個の分子を区別するのに成功した著者は示されていない。呈示されている図面及び説明から、この方法を用いて、どのようにして、2つの粒子間のr<0.61λ/Aより小さな距離の2つの粒子を区別することができるようになるのか明らかでない。我々の見解では、提案されている装置では、光の波長よりも遙かに短い距離に配置された対象の細部の解像度に達することはできない。
【0007】
普通の蛍光顕微鏡の方法(Erwen, A Sharonov, JH Ferns, RM Hochstrasser: Direct visualization of nanopatterns by single-molecule imaging. App Phys Let 2005, 86: 043102)は、本発明に類似した最も近い方法と見なせる。この方法の主要な技術思想は、直径1ミクロンの開口球体セルを持ったポリマーの光フィルムのサンプルは、蛍光ペプチドの非常に低い濃度で染色される。そのような濃度により、球体の中空内でブラウン運動で移動することができる、別個のペプチド分子を観測することができる。サンプルは、レーザビームを用いて対象ガラスを通して照射される。照射角度は、全反射角に等しい。レーザは、ガラスの近傍のサンプルの150−200ミクロンの層内に蛍光を励起する。同時に蛍光している分子によって染色された蛍光ペプチドの数十倍の分子の位置は、高感度ビデオカメラ(Roper Scientific, Cascade 512F :CCDで製造されたエレクトロンマルチプライヤを備えている)によって、500シーケンシャルフレームで検出された。各フレームは、コンピュータメモリに記録された。ほぼ直径0.5ミクロンの多数のスポットを含む各イメージは、システムズーム値で乗算される。これら全てのイメージは、各々加算された。その結果形成されるイメージは、普通の蛍光顕微鏡の解像度を超過しない解像度を有している。このシステムの主要な欠点は;検出されたスポットの中心の位置を計算する機会について、回折限界(式1参照)よりも高い解像度を持った、これらの各スポットに基づいてイメージを形成する機会について、論文に情報がなく、対象の構造体を選択的に染色するアプローチは、論文に記載されておらず、以下の問題を解決する記載もない。つまり、染色後、物質が、観測領域内に停滞している非蛍光ペプチド分子を検出する過程で色を失うという問題である。これにより、溶液が一層高い濃度となり、新たに蛍光する分子を置換することができない。これにより、500以上のフレームの大きな量を得ることができない。これらの大きな量は、回折限界(式1参照)によって許容されるよりももっと高い解像度のイメージを得るのに必要である。
【0008】
生物的対象、例えば、筋の研究は、レコーダ、眼、フォト又はビデオカメラの面内の対物レンズを用いて対象のズームイメージを形成する、普通の光学顕微鏡の解像度よりもずっと近くに位置している多数の異なったタイプの分子があるという事実によって特徴付けられる。顕微鏡の解像度(式1)の回折限界により、観測領域内のスポット全体を同時に観測する顕微鏡の解像度が制限され、1スポット光線(共焦及び別のタイプの走査顕微鏡)で焦点を合われることによって対象のスポット全体をシーケンシャルに観測する顕微鏡の解像度が制限される。このことが、何故、光学顕微鏡の利点及び可視領域内の分子の異なったタイプの選択的染色の、使用される方法が全て、解像度を改善するように統一すれば、相互に10−20nmより近くに位置している分子を別個に良好に観測することができるようになる理由である。本発明の課題は、研究、結果のコンピュータ解析のために、対象を染色し、対象を調製する方法を提供することにある。このコンピュータ解析により、20nmよりも高い解像度で対象のイメージを受け取ることができるようになる。これにより、蛍光顕微鏡を「ナノスコープ」にすることができる。この課題は、低く染色された対象のマルチプルピクチュアを形成することによって解決される(対象内の全ての蛍光分子は、個別に、直径2r=1.22λ/Aのスポットと見なされ、シーケンシャルフレームの数万倍の異なった位置を有している)。更に、これらの各フレームは全て、検出されたスポット全ての中心位置を計算するために使われる(これらの各位置は、蛍光分子の実際の座標に相応している)。それから、染色された分子全ての位置の3D再構成が実行される。解像度は、蛍光分子のサイズと比較可能である。異なった構造体の対象は、異なった色で染色することができる。蛍光ナノスコープは、蛍光顕微鏡で使われている標準モジュールに基づくことができる。本発明は、種々のモジュールを有している:つまり、可視観測用、及び、デジタルビデオカメラに対象のイメージを伝送するための光学系を有している。ビデオカメラは、個別の蛍光分子及び低い背景ノイズレベルのナノ分子のイメージを検出して、デジタル化することができる。システムの第2のモジュールは、イメージを記録し、且つ、解析するためのコンピュータである。第3のコンポーネントは、対物レンズの反対側に配設されたサンプルホルダである。第4のコンポーネントは、サンプル蛍光の光を検出するための可変抑制カラーフィルタセットである。ナノスコープは、サンプルホルダから離れて設置された2つの光源を備える必要がある。設置角度は、サンプルの切り込み深度全てを照射することができなければならない。この層内の蛍光分子は、全反射角度で照射された場合に縁を通る光波のエネルギを吸収することができる。観測対象は、予め、UV光パルスが、ブロッキング蛍光群を染料分子から分離した場合に限って蛍光し始める、かご型染料(caged dye)の飽和濃度の溶液内で染色する必要がある。余分な染料は、注意深く洗浄して取り除く必要がある。対象をホールドするガラス及びプリズムガラスを外したまま長時間の間、分子構造体を確実に安定化するのは、非常に困難である。このことは、新鮮な、注入溶液内で正確に観測される対象に該当する。このことが、何故、ナノスコープの最良の解像度は、プリズムガラスから150nmより大きくない距離に配置された対象の層の場合に限って受け取ることができるのかの理由である。これは、全反射角度で、縁面に入射した場合に光が到達する深さである。保存された死んだ対象を観測する場合には、数時間もの間、対象を観測することができるのが通常である。ベースガラスの近傍に配置された異なった構造体は、殆ど絶対に移動しない。多重に安定して相互に結合し、且つ、ベースガラスと結合されているので、これらの構造体は、当該構造体の位置を保持する。これらの構造体は、80%近い容積が、異なった塩の水溶液で満たされているという事実にも拘わらず、移動不可能である。ガラス端での隙間は、溶液が染色されるのを回避するために、(例えば、パラフィンで)密封封止してシーリングする必要がある。
【0009】
3dナノスコピーでは、対象が全体的に静止していること、及び、対象の部分が対物レンズに対して静止している必要がある。これは、何故、対象が、染色溶液で処理される必要があるのか、及び、かご型染料(caged dye)で染色し且つ注入した後、ポリマー非蛍光物質(例えば、エポキシ)に置換される必要があるのかの理由である。数ミクロン厚の対象のカットは、全部で3つの方向での10−20nmの解像度で、対象の3D再構成用に使用することができる。固体物質内に含まれている、そのような対象は、普通の蛍光顕微鏡で行われるように、照射することができる。改善に過ぎないが、付加的なフラッシュランプを、数百個の非蛍光分子を各フレーム内で蛍光するために使用するとよい。溶液内の対象及びポリマーフィルム内の対象の両方の場合、λ<360nmのフラッシュランプが周期的に、非蛍光染料で染色された対象を照射し、その度に数百回(数千回にも)、蛍光を阻止する特殊な化学群の光分解によって、非蛍光分子を蛍光分子に変える。レーザは、コンスタントに対象を照射し、且つ、蛍光分子の各々が数万倍の光量を数分の1秒で送出するような強度で、新たに形成された蛍光分子の蛍光を励起する。分子は、低い背景ノイズレベルでデジタル化されたフレームで、当該分子の蛍光のレジストレーション後、色を失う。蛍光分子生成の周期、当該分子の励起、レジストレーション及び色の喪失は、数万回繰り返すことができる。その度に、新たな蛍光分子が生成され、検出され、色を失う。変換されない非蛍光分子は、レーザ光を吸収しないので、色を喪失しない。数万個のフレームは、この方法を使って検出することができる。数百及び数千もの蛍光分子を、各フレームで検出することができる。それにより、可視領域内に配置された構造体全ての表面をカバーする全部で数千万個もの蛍光分子の位置を計算することができるようになる。異なった色の異なった性質の構造体を染色するために、異なった活性群の染料を使ってもよい。活性群は、タンパク質、核酸、脂肪等に結合してもよい(提案の方法は、カラーナノスコピーと呼ぶ)。
【0010】
ナノスコピー方法の第2の変形は、非常に明るい蛍光で、色を失いにくいナノ分子のブラウン運動は、塩溶液で満たされた浸透膜を持った生物サンプルの殆どの容積部分内で可能であるという事実に基づいている。ナノ分子は、フィコビリプロテイン(ficobiliprotein)分子又は直径10−40nmの蛍光マイクロ球体によって提供される。この運動は、幾つかのインターレース電極対によって給電された電流での電気泳動によって調整することができる。電流は、異なった方向での分子の運動を方向付ける。そのようにして、各分子は、アクセス可能な容積全てをスキャンする。同じ(又は、光が照射された領域から変化された)蛍光分子の数百個が、相互に1−2ミクロンより大きな距離で動いても、数nm精度で蛍光分子の位置を(相応のスポットの中心の座標として)計算することができる場合とは異なって、各フレームで検出される。全てのフレームからの座標は、分子が長い時間周期に亘って現れることができる個所全てを見つけるために使うことができる。それにより、溶液で満たされた容積全てが指示される。分子が現れることができない容積の部分は、異なったオリジン−ペプチド、染色体、非損傷膜の部分等の高密度構造体で占有されているものと見なせる。分子位置の起こり得る揺らぎは、スポットのサイズを少し拡張することがあるが、スポットの中心位置は、対象内の分子の平均座標と見なすことができる。正電荷、負電荷の分子、及び、中性分子は、対象の異なった領域に来ることがあるという点に注意する必要がある。これは、各分子が、バイオ構造の局所的な電荷と相互に作用するので生起し、このことが、何故、この方法が、対象構造の表面電荷の研究にとって有益であり得るのかの理由である(提案された、この方法の名称は、モノクロームナノスコピー)。
【0011】
提案された両方法は、ナノスコープの解像度を数nmに迄押し上げることができ、解像力(式1)に依存しないが、長い時間周期の間、対象の観測される部分内の構造体の固有の移動性には依存する。第2の要因は、ビデオデータ内のノイズと信号との比である。両ファクタは、本発明の方法の種々の変形によって調整することができる。例えば、何らかの明るく輝くキー蛍光分子を対象内に導入することができる。その際、変化した分子の座標は、対象と固く結合されたキー分子の可視領域の移動を考慮して計算することができる。そのようなアプローチにより、数nmの距離に配置された対象の各部分を2D識別することができるようになる。
【0012】
蛍光分子イメージの幾つかのパラメータ(各スポットの直径及び各スポットのセクションに沿った光度分布)は、顕微鏡の対物レンズの焦点面からの粒子の距離に応じて変えることができる。これは、何故、輝く粒子の第3の座標を計算するために、これらの各パラメータを計算することを提案するのかの理由である。2つのビデオカメラで、対象のイメージを投影することが提案されている。これにより、第3の座標の定義の精度が改善される。光線は、対物レンズの後ろ側で2つの光線に分割される。ビデオカメラは、対象の2つの隣接焦点面が、1つの対物レンズを通して当該ビデオカメラに投影されるように配置されている。各分子毎の光度分布は、異なったカメラによって検出された場合に異なるようにされる。それは、第3の座標に依存してスケーリングすることができ、対象の3Dイメージを形成するために使用される。図3には、3Dナノスコピーの基礎が図示されている。CCD上に投影される蛍光分子からのスポットの直径及び強度は、粒子と対物レンズとの間の距離に依存している。異なった焦点面上に焦点が合わせられた2つのカメラは、異なった直径及び当該直径に沿った異なった強度分布の1つの粒子を示す。図の上側右隅のダイアグラムは、カメラと蛍光粒子の位置とに依存する、直径と直径に沿った強度との間の差を示す。
【0013】
この他に、ナノスコープは、何らかの場合、2−3の異なった波長及び同じ励起状態での蛍光粒子によって形成される各スポットの中心を見つける際に有益となることがある。そのことは、ライトダイクロイックミラーを分離することによって行うことができる。そのようなミラーは、1つの波長の光を一方のカメラに透過し、他の波長の光を他方のカメラに反射する。このようにして、本発明によると、幾つかの異なったタイプの対象分子のナノ解像度の位置で、同時に再構成することができるようになる。これらの分子は、異なった放射波長の染料で染色される。これにより、蛍光粒子からの同時に観測されて別個に検出される各スポットの量を拡大することができるようになる。これは、異なった色の相応の各スポットが干渉して観測されたとしても、各蛍光粒子からのスポットを別個に異なった長さの波で観測することができるという事実に基づいて達成することができる。
【0014】
ナノスコープワークの前述の方法を、かご型の非蛍光分子の、蛍光分子への付加的な変化と結合させると、非常に有益となりうる。これは、化学反応又は蛍光を阻止する群を分離する異なった物理作用を用いることによって行うことができる。そのような反応の例は、ATP反応、エステラーゼ作用、過酸化、放射性の転換等である。そのような変更の結果として形成される蛍光分子は、レーザを用いて励起することができ、上述の方法による対象構造の表面の座標を計算するのに有益であるビデオカメラで検出することができる。これらの座標は、ビデオフレーム上の適切なスポットの中心として計算することができる。それから、これらのイメージは、以前に再構成された、対象のイメージ上に「オーバラップ」することができる。これらは、対象の反応活性群の位置を示す。そのようなイメージの解像度は、20nmより良好である。
【0015】
当業者には、添付した特許請求の範囲に記載された本発明は、本発明の基本的な技術思想を逸脱しない限りで、異なった方法を用いて変形することができることは明らかである。
【0016】
ナノスコープとしての装置の作動は、通常形態の蛍光顕微鏡を用いることによって変更することができる。この形態により、普通の解像度(式1)の対象を現場で直接可視観測する機会が得られる。また、非常に高感度のデジタルビデオカメラを用いてイメージを検出し、当該イメージをコンピュータメモリに伝送する機会が得られる。その際、これらのフレームは、幾何的なパラメータ及びフレームの異なった領域内の光度を測定するために解析される。これは、例えば、バイオルミネセンス及びケモルミネッセンスでの研究で有益である。
【0017】
各図面は、本発明のナノスコピー方法を実行するために蛍光顕微鏡を変更することができるやり方を示す図である。
【0018】
蛍光顕微鏡ナノスコープは、図1及び図2に示されているように、デジタル出力及びモノクロビデオカメラのセンサ(CCD)に対して反対側に配置された抑制カラーフィルタを有する、1つの(図1)及び2つの(図2)モノクロビデオカメラ(1)を備えている。これらのカラーフィルタは、蛍光のみをカメラの方に通過させる。顕微鏡には、取り外し可能な、分光用のプリズム(2)、100xズームとA=1.4のアパーチャの対物レンズ(3)が装着されている。対象(4)は、切頭プリズム端の形状に斜角をつけられたガラス製の対象ホルダ(5)に押し付けられている。装置には、プリズム面を通過する蛍光を励起するためのレンズ系を有するレーザ(6)、染色分子上に存在するブロッキング蛍光群の光分解用のレンズ系を備えたUVソースが装着されている。それ以外の重要なパートは、デジタル化されたイメージを記録及び処理するためのソフトウェアを備えたコンピュータ(8)である。このソフトウェアは、UVパルス及び電気泳動装置用のエネルギを供給する電力源の制御のために使われる。接眼レンズ(10)(図1)は、視覚による観測(9)用に使われる。ユニットは、振動防止テーブル上に配置された防音キャビネット内に配置される。塩溶液が充填された対象内を移動する蛍光性のナノ分子の運動を方向付ける電気泳動電極に電力を供給する装置について、別個に説明する。
【0019】
Photomertiesにより製造された高感度カメラCascade 1K、又は、Theta−systemにより製造されたカメラSISIJ285EMを用いるナノスコープで、イメージを受信する場合を例として説明する。カメラには、CCD結晶内に含まれているエレクトロンマルチプライヤが備えられた電子テキサス・インスツルメント製のCCD TC285SPDが装着されている。このカメラは、63%もの量子効率を有しており、ほぼ8x8mmの感光性のスクエア上の1002本の線内に8ミクロンの側面の1004個のアクティブな水平方向のスクエアピクセルを有している。対象のイメージが、100xの対物レンズ及びそのレンズ系を用いて、ビデオカメラのCCDに直接投影される場合、レーザで照明される対象上のスクエアは、80x80ミクロンより僅かに大きくなければならない。各CCDピクセルは、80x80nmの対象のスクエアに相応している。各照射粒子又は分子は、560nmに近い2r=1.22λ/Aの直径のスポットとして対象上に見える。
つまり、7個のピクセルに近い直径のCCDのスクエアに投影されることである。各フレーム内で無秩序に拡散している各粒子間の有利な距離は、2000nm以上である。この場合、実際上、各粒子の全てが別個に見える。この場合、少なくとも40x40=1600個のスポットを、同時に各フレーム内のCCDに、当該各スポットが別個に観測されるように投影することができる。そのような、同時に蛍光する粒子の濃度を達成するために、異なった方法を使うことができる。それらの第1の方法では、低濃度で明るく蛍光を発する粒子で対象を染色することができる。こうすることにより、観測領域内で粒子をブラウン運動させることができ、粒子は、付加的に電気泳動流で動くことができる。この電気泳動流は、各粒子を異なった方向に直接動かすように、幾つかの電極対によって提供される。第2の方法では、対象は、Molecular Probes, USAにより製造された、5−カルボキシルフルオレセイン−ビス−(5−カルボキシメトキシ−2−ニトロベンジル)エステル、βアラニン−カルボキシルアミド、スクシニミヂルエステル(CMNBケイジド・カルボキシフルオレセイン, SE)(5-carboxyfluorescein-bis-(5- carboxymetoxy-2-nitrobenzil) ester, beta-alanin-carboxylamid, suxynimidil ester (CMNB-caged carboxyfluorescein, SE))のような特殊な染料で染色することができる。波長310−360nmの波長のUVフラッシュで(予め調整された露光で)の照明後、観測領域内の、この非蛍光染色のほぼ1000−1600個の分子が、蛍光をブロックする特殊な群を遊離する。そのような分子は、青色光で照明された場合、緑光の数千個もの量子を生成することができる。この後、そのように分子は、色を失う。対物レンズのアパーチャが、A=1.1−1.3である場合、各蛍光粒子からの光の10%以上が、ビデオカメラに伝送され、CCDの40近いピクセルをカバーするスポットの形成に関わる。スポットの中心内での光の強さは、100個の量子にも及ぶ。これは、(上述のカメラを用いた場合に)、充分に満足のいく信号対ノイズ比で、ビデオ信号を受信するのに充分な大きさである。この信号対ノイズ比により、20nmより高い解像度でスポット中心の座標を計算することができる。この染色体は、レーザ光を吸収せず、蛍光をブロックする群が染色体に結合される迄、色を失う。それにより、以下のプロセスを数万回も繰り返すことができるようになる。つまり、始めに、CCDが、残留蛍光で、対象のイメージを検出する。それから、イメージがビデオカメラでデジタル化され、コンピュータに伝送される。それから、UVフラッシュが、可視領域内の1000−1600個の蛍光分子を生成し、レーザが、これらの分子内で蛍光を励起する。CCDは、蛍光分子及び粒子のイメージを検出し、このイメージは、残留蛍光上に重畳される。イメージは、ビデオカメラでデジタル化され、コンピュータに伝送され、コンピュータで、残留蛍光を有する以前のフレームが、このイメージから減算される。受信された、減算されたフレームに対して、スポット中心の座標を計算する目的で後続して解析するために、その平均化された直径、及び、強度が、コンピュータメモリ内に記憶される。それから、対象は、当該対象のイメージを検出せずに、所定時間の間、レーザで照明される。既に検出されたモジュールの退色が最大にされる。それから、全サイクルが繰り返される。全ての染色分子の座標が検出されるまで、各サイクルで、新たな蛍光分子が生成され、検出及び退色される。分子試料は、前述の染色体のみを生成しない。カンパニーは、要望により、そのような染料も生産する。カンパニーは、そのような染料"caging kit"(D−2516)の個別制作用試薬セットを生産する。
【0020】
例に示されているカメラによると、毎秒10フレームの周波数で、別個の蛍光分子のイメージを記録することができる。イメージは、満足のいく信号対ノイズ比で記録される。例えば、毎時間当たり40000フレームを検出することができる。各フレームは、分子の1600ものイメージを含む。その場合、検出される蛍光分子の座標の全量は、64000000にも達することができ、その際、観測される各個別分子間の平均距離は、僅か10nmにすぎない。これは、何らかの別のレンズ式顕微鏡の場合よりも10倍である。分子のイメージのフレームは、圧縮せずに、又は、質を失わずに圧縮して、セーブされる。これは、分子の座標を一層精確に計算するために実行される。1回の実験での全く圧縮されていないフレームでの情報の容量全体は、10ギガバイトに達することができる。これは、最新のハードディスクドライブの容量を考慮すると、何ら問題を生じない。各文献出典によると、スポットの中心を計算する種々のアルゴリズムについての情報が得られる。当社は、スポットの中心の計算された座標のテーブルに基づいて、全イメージの、そのような計算及び再構成を実行するためのコンピュータソフトウェアを制作した。
【0021】
本発明は、蛍光顕微鏡の解像力を改善するために変えられる、蛍光着色剤を用いて染色された対象の解析、従って、所謂ナノスコープに関している。本発明の方法は、個別蛍光分子及びナノ分子のイメージを低ノイズで記録し、且つ、デジタル化するビデオカメラに試料イメージを可視化及び投影するための光学系と、イメージを記録及び処理するためのコンピュータと、対物レンズの前側に配置された試料ホルダーと、蛍光放射励起源と、試料蛍光光を分離するための、置換可能な抑制フィルタのセットを備えた顕微鏡を用いて実行される。本発明は、別個に蛍光された可視の分子とナノ分子が、異なった対象部分内で周期的に形成され、レーザにより、前記分子及びナノ分子のオーバラップしないイメージを記録するため、及び、既に記録された蛍光分子をデカラーリングするために充分な、前記分子及びナノ分子の振動を生起し、その際、記録された個別分子及びナノ分子イメージの10000枚のイメージが(直径が、顕微鏡倍率によって増倍された蛍光波長のオーダーであるステインの形式での)、個別の蛍光分子及びナノ分子の座標に相応する計算された多数のステイン中心座標に従って、ステインの中心の座標をサーチし、対象のイメージを形成するために、コンピュータにより処理される。前述の発明により、20nmより良好な解像力で、2次元及び3次元イメージを形成し、染色されたタンパク質、分子、核酸及び脂質を異なった着色剤で染色することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のナノスコピー方法を実行するために蛍光顕微鏡を変更することができるやり方を示す図
【図2】本発明のナノスコピー方法を実行するために蛍光顕微鏡を変更することができるやり方を示す図
【図3】3Dナノスコピーの基礎を示す図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
染色された対象のナノスコピー方法であって、前記対象は、溶液中に入れられているか、又は、ポリマー内に入れられた保存試料のスライスのような対象であり、前記方法は、前記対象の蛍光を検出するために色抑制フィルタを有するデジタルビデオカメラを装着した蛍光顕微鏡を使用し、前記デジタルビデオカメラは、レーザにより励起された分離蛍光分子のイメージを(低いノイズレベルで)検出することができ、前記蛍光顕微鏡には、前記デジタルビデオカメラから受取ったイメージを記録するためのコンピュータが装着されている方法において、
周期的に、1000〜2000の非蛍光染色分子を、UVフラッシュを用いて、蛍光染色分子に変え、前記蛍光染色分子が対象構造体をカバーし、蛍光物質をブロックする化学基は、当該蛍光物質から分離されているので、前記分子を、蛍光染色分子に変え、形成された前記蛍光分子のイメージを、別個のスポットとして、ビデオカメラフレーム上で検出し、検出の処理中、分子は色を失い、残りの蛍光を有するフレームを、蛍光分子の混合を含むフレームから減算し、減算されたフレームを、染色分子の座標を示す前記スポットの中心を見つけるために、コンピュータメモリ内に記憶し、前記対象の照明領域内の全ての染色分子の座標を計算するため、及び、20−50nmより良好な解像度で前記対象の2D又は3Dイメージを再構成するために、前記処理を、数回繰り返すことを特徴とするナノスコピー方法。
【請求項2】
蛍光分子の代わりに、規則的に生成及び変色された対象を、観測された別個の蛍光ナノ分子で染色し、前記蛍光ナノ分子を、ブラウン力のために前記対象の各構造体間で動かすことができ、2D電気泳動によって駆動された場合に、レーザにより、常に前記蛍光ナノ分子の蛍光を励起し、ビデオカメラ及びコンピュータにより、各フレーム内で、観測された別個の1000〜2000個のスポットで10000個の前記フレームを検出し、前記スポットにより前記蛍光ナノ分子の位置を反射し、領域の溶液部分を、全ての前記フレーム上の計算された前記スポットの中心座標に基づいて検出し、前記蛍光ナノ分子を前記領域内で動かすことができるようにした請求項1記載のナノスコピー方法。
【請求項3】
第2のビデオカメラを用い、前記第2のビデオカメラを、第1のビデオカメラと同じにするが、前記第2のビデオカメラのセンサにより、前記第1のビデオカメラによって検出された平面から深さが異なる対象平面のイメージを検出するように配置されており、前記深さを50〜2000nmにすることができ、前記第1のビデオカメラ及び前記第2のビデオカメラによって受け取られた光の強度の分布内の差を、対象内での染色分子の位置の第3の座標を計算するために用い、溶液試料内の前記対象を、全内反射の角度に等しい角度で対象ガラスを通して照明し、数分の1マイクロメータ〜数マイクロメータの厚みのソリッドカット(solid cut)内の対象を、前記ソリッドカットの全深さで対物レンズを通して照明することができ、又は、全内部反射角度で対象ガラスを通して照明することができる請求項1記載のナノスコピー方法。
【請求項4】
対象の異なった構造体を、異なった染料、異なった波長の蛍光で同時に染色し、同時に検出される分子の量を倍増する2台又はそれ以上のビデオカメラに、異なった構造体のイメージを選択的に投影するために、2色ミラー及びカラーフィルタのセットを用いる請求項1記載のナノスコピー方法。
【請求項5】
請求項1から4迄の何れか1記載の方法により形成されたイメージに対して付加的に、異なったかご型の(caged)分子を、周期的に対象内に導入し、前記分子を、異なった化学反応の結果として、又は、異なった物理的露光のために、非蛍光から蛍光に変えることができ、前記異なった化学反応乃至異なった物理的露光のファクタにより、蛍光をブロックする化学基を分離し、前記化学基を、生成された全ての蛍光分子がビデオカメラフレーム上で別個のスポットとして検出されるような速度で分離し、記録中、分子は色を失い、残りの蛍光を有するフレームを、残りの蛍光のイメージと蛍光分子イメージの混合を含むフレームから減算し、減算フレームを、更に各スポットの各中心を見つけるために、コンピュータメモリ内に記憶し、前記サイクルを、対象内の全ての染色分子の座標を計算するために、及び、前記対象の、早期に受け取られた2D又は3Dイメージ上の「特別な」分子の位置をコンピュータにより再構成するために、照明された領域内で、生成された新規の蛍光分子を用いて数回繰り返す請求項1記載のナノスコピー方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−541128(P2008−541128A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−512241(P2008−512241)
【出願日】平成18年5月5日(2006.5.5)
【国際出願番号】PCT/RU2006/000231
【国際公開番号】WO2006/123967
【国際公開日】平成18年11月23日(2006.11.23)
【出願人】(507381101)
【氏名又は名称原語表記】Andrey Alexeevich Klimov
【Fターム(参考)】