説明

蛍光ランプ

【課題】水銀による劣化などの影響を少なくし、初期の発光特性の低下を防止することが可能な蛍光ランプを提供する。
【解決手段】ガラス管の内面に、蛍光体層11を形成し、その蛍光体層11の上に保護膜層12を形成する。蛍光体層11は、ZnSiO:Mnで表される緑色発光蛍光体で形成された層である。蛍光体層11は、ガラス管1の表面に、3mg/cm以上7mg/cm以下の量で形成する。無機酸化物層12は、例えば酸化イットリウム(Y)で形成された層である。無機酸化物層12は、蛍光体層11の表面に、1mg/cmの量で形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光ランプに関する。特に、緑色発光蛍光ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
装飾、看板等で使用されているカラー蛍光ランプについて、緑色に発光する蛍光ランプはZnSiO:Mn(Mnは付活剤)を使用することがある。
【0003】
特許文献1には、Y:Eu赤色発光蛍光体、ZnSiO:Mn緑色発光蛍光体、(SrCaBa)(POCl:Eu、BaMgAl1627:Eu、BaMgAl1627:Mn青色発光蛍光体の1種類を用いた3波長型蛍光ランプを具備した液晶表示装置が記載されている。
【0004】
特許文献2には、希ガスおよび水銀が封入されたガラスバルブの内面に、赤色、緑色、青色の光を発する各色の蛍光体粒子を含む蛍光体層が形成されており、少なくとも管中心に近い面にある最上層にあって、アルミナを含む蛍光体粒子の表面のみに金属酸化物が被覆された外部電極型蛍光ランプが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−311429号公報
【特許文献2】特開2006−286447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
緑色に発光する蛍光ランプは通常ZnSiO:Mn(Mnは付活剤)を使用しているが、蛍光体の特性上、水銀との反応性が高く、化合物を生成しやすい特徴がある。蛍光体と水銀との反応によりできた化合物は蛍光体変色の原因のひとつであり、光束値の低下及び点灯寿命が短くなる傾向にあった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、水銀による劣化などの影響を少なくし、初期の発光特性の低下を防止することが可能な蛍光ランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の観点にかかる蛍光ランプは、
ガラス管の内面に、ZnSiO:Mnからなる緑色発光蛍光体で形成された蛍光体層と、
前記蛍光体層の上に無機酸化物を含む薄膜で形成された保護膜層と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、水銀による劣化などの影響を少なくし、初期の発光特性の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る蛍光ランプのガラス管の、放電する経路に直交する断面を示す図である。
【図2】実施例に係る蛍光ランプの、光束維持率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付す。
【0012】
図1は、本発明に係る蛍光ランプのガラス管の、放電する経路に直交する断面を示す図である。ガラス管1は、そのガラス管1内側に、管中心部に向かって、蛍光体層11、無機酸化物層12の順で層が形成されている。
【0013】
蛍光体層11は、ZnSiO:Mnで表される緑色発光蛍光体で形成された層であり、ガラス管1の表面に、3mg/cm以上7mg/cm以下の量で形成される。Mnは付活剤で、発光の中心となる部分である。
【0014】
蛍光体層11は、3mg/cm以下では、層の形成がなされない部分が生じるなど、層の形成がうまくいかず、充分な光束を得ることができない。また、7mg/cm以上では、形成する蛍光体層11の種類によっては層の形成が困難であったり、層の厚みにばらつきが生じるため、均一な発光が得られないなど、外観上の不具合が生じる。
【0015】
無機酸化物層12は、酸化イットリウム(Y)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化ガドリニウム(Gd)、酸化ランタン(La)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化亜鉛(ZnO)もしくは二酸化ケイ素(SiO)またはこれらの組合せである無機酸化物で形成された層である。無機酸化物層12は、蛍光体層11の表面に、およそ1mg/cmの量で形成される。より詳しくは、0.5mg/cm以上2mg/cm以下の量で形成される。0.5mg/cm以下の厚みの場合、層が形成されない部分が生じるおそれがある。また、2mg/cm以上の厚みの場合、使用する無機酸化物では粒子の大きさが充分に小さいため層の形成が困難である。
【0016】
蛍光ランプのガラス管1内部が水銀蒸気で満たされた場合であっても、無機酸化物層12がもっとも内側に層形成されているため、ガラス管1および蛍光体層11は水銀と直接触れることはない。そのため、ガラス管1が劣化して光束維持率が低下するおそれがなくなる。また、蛍光体層11を形成する蛍光体(ZnSiO:Mnで表される緑色発光蛍光体)が水銀を吸着して発光強度が低下し、かつ、水銀量の低下により放電が発生せず蛍光ランプが点灯しなくなる、などの不具合のおそれがなくなる。さらに、水銀がガラス管1および蛍光体層11と反応しないことで、蛍光ランプを点灯し続けた場合においても、蛍光ランプのガラス管1に封入した水銀蒸気の量がほとんど減少することなく、蛍光ランプに封入する水銀の量を少なくすることができる。
【0017】
無機酸化物は、1種類を単体で用いてもよく、複数の種類を混合して用いてもよい。また、蛍光体層11を覆う無機酸化物層12は、必ずしも1層とは限らず、多層形成してもよい。例えば、無機酸化物に酸化ジルコニウム(ZrO)と酸化亜鉛(ZnO)を用いて無機酸化物層12を形成することで、蛍光体層11と水銀の反応を防ぎ、光束の低下や熱による劣化を防止することができる。
【0018】
図2は、実施例に係る蛍光ランプの、光束維持率を示す図である。光束維持率は、それぞれのランプについて、100時間点灯した時の光束値を100%とする。表中の無機酸化物とは、無機酸化物層12を形成する無機酸化物をいう。表中のなしとは、比較対象のためのサンプルで、無機酸化物層12を形成していないものを指す。酸化イットリウム(Y)の場合、1000時間点灯したときの光束維持率が最も高く良好な結果を示しており、酸化ランタン(La)を用いた場合においても、なしの場合と比べて良好な結果を示している。酸化アルミニウム(Al)の場合、光束維持率の0時間のデータより、初期の光束値が大幅に改善していることが分かる。
【0019】
実施例で用いた蛍光ランプは、ZnSiO:Mnで表される緑色発光蛍光体を蛍光体層11に用いているが、赤色発光蛍光体もしくは青色発光蛍光体との組合せ、またはこれら全ての組合せで形成されてもよい。青色発光蛍光体としては、ユーロピウム付活バリウムマグネシウムアルミネート蛍光体(BaMgAl1017:Eu)、ユーロピウム付活カルシウムマグネシウムシリケート蛍光体(CaMgSi:Eu)、ユーロピウム付活ストロンチウムハロホスフェイト蛍光体((SrCaBa)10(POCl:Eu)などが挙げられる。また、赤色発光蛍光体としては、ユーロピウム付活酸化イットリウム蛍光体(Y:Eu)、ユーロピウム付活イットリウムバナデイト蛍光体(Y(P,V)O:Eu)、ユーロピウム付活イットリウムオキシサルファイド蛍光体(YS:Eu)などが挙げられるが、これだけに限るものではない。上述した蛍光体の選択により単色蛍光ランプもしくは白色蛍光ランプのどちらかとして機能する。
【0020】
以上、説明したように、本発明によれば、水銀による劣化などの影響を少なくし、初期の発光特性の低下を防止することが可能な蛍光ランプを提供することができる。
【0021】
また、蛍光ランプの種類は、冷陰極蛍光ランプだけでなく、熱陰極蛍光ランプや外部電極型蛍光ランプであってもよい。ガラス管の内部に水銀を封入する蛍光ランプに適用可能である。蛍光ランプの形状についても、直管形や環形など、任意に設定できる。本発明を用いた蛍光ランプは、照明器具に使用するだけでなく、バックライト光源として用いた液晶モニタおよびディスプレイなどであってもよい。
【0022】
その他、本発明の好適な変形として、以下の構成が含まれる。
【0023】
本発明の観点にかかる蛍光ランプについて、
好ましくは、前記無機酸化物は、酸化イットリウム(Y)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化ガドリニウム(Gd)、酸化ランタン(La)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化亜鉛(ZnO)もしくは二酸化ケイ素(SiO)またはこれらの組合せであることを特徴とする。
【0024】
好ましくは、前記蛍光体層は、1cmあたり3mg以上7mg以下で形成されることを特徴とする。
【0025】
好ましくは、前記保護膜層は、1cmあたり1mg程度であることを特徴とする。
【0026】
好ましくは、前記蛍光体層は、前記ZnSiO:Mnからなる緑色発光蛍光体と、赤色発光蛍光体もしくは青色発光蛍光体との組合せ、またはこれら全ての組合せで形成されることを特徴とする。
【符号の説明】
【0027】
1 ガラス管
11 蛍光体層
12 無機酸化物層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス管の内面に、ZnSiO:Mnからなる緑色発光蛍光体で形成された蛍光体層と、
前記蛍光体層の上に無機酸化物を含む薄膜で形成された保護膜層と、
を備えることを特徴とする蛍光ランプ。
【請求項2】
前記無機酸化物は、酸化イットリウム(Y)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化ガドリニウム(Gd)、酸化ランタン(La)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化亜鉛(ZnO)もしくは二酸化ケイ素(SiO)またはこれらの組合せであることを特徴とする請求項1に記載の蛍光ランプ。
【請求項3】
前記蛍光体層は、1cmあたり3mg以上7mg以下で形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の蛍光ランプ。
【請求項4】
前記保護膜層は、1cmあたり1mg程度であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の蛍光ランプ。
【請求項5】
前記蛍光体層は、前記ZnSiO:Mnからなる緑色発光蛍光体と、赤色発光蛍光体もしくは青色発光蛍光体との組合せ、またはこれら全ての組合せで形成されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の蛍光ランプ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−70958(P2011−70958A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−221579(P2009−221579)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(300022353)NECライティング株式会社 (483)
【Fターム(参考)】