説明

蛍光体と、この蛍光体を用いた蛍光体含有組成物及び発光装置、並びに画像表示装置及び照明装置

【課題】演色性に優れた蛍光体と、この蛍光体を用いた蛍光体含有組成物及び発光装置と、この発光装置を用いた画像表示装置及び照明装置を提供する。
【解決手段】
下記式[1]で表される組成を有する蛍光体。
n(1−y)Alnx+zSi16−(nx+z)nx+z20+n−(nx+z):M ・・・[1]
(MはSr、Ba、Ca、Mg及びZnから選ばれる二価金属元素、MはCr、Mn、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、及びYbから選ばれる付活元素。0≦x≦1、0<y≦1、0≦z≦13、3.6≦n≦4.4)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体と、この蛍光体を用いた蛍光体含有組成物及び発光装置、並びに、その発光装置を用いた画像表示装置及び照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光体は、蛍光表示管(VFD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、陰極線管(CRT)、白色発光ダイオード(LED)などに用いられている。これらのいずれの用途においても、蛍光体を発光させるためには、蛍光体を励起するためのエネルギーを蛍光体に供給する必要があり、蛍光体は真空紫外線、紫外線、電子線、青色光などの高いエネルギーを有した励起源により励起されて、可視光線を発する。
【0003】
近年、発光装置においては、演色性等の更なる性能の向上等が求められており、新規の蛍光体の開発が望まれている。
また、従来のケイ酸塩蛍光体、リン酸塩蛍光体、アルミン酸塩蛍光体、硫化物蛍光体などの蛍光体に代わり、窒化物蛍光体や酸窒化物蛍光体についても探索されている。
【0004】
非特許文献1に、酸窒化物として、(Sr1−xCa(11+16y−25z)/2(Si1−yAl16(N1−z25(x=0.24、y=0.18、z=0.19)の結晶構造が開示されている。そして、Sr3.44Ca1.07Si13.12Al2.8820.144.87で表される物質を合成した例が記載されている。
また、特許文献1及び非特許文献2に、それぞれ、SrSi13Al21:Eu、SrSiAlON13:Euが開示されている。
また、さらに、非特許文献3に、SrAl5+xSi21−x35−x:Eu2+(x≒0)が開示されている。そして、SrAlSi2135で表される物質を合成した例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開2007/105631号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】J. A. Kechele et al. Eur. J. Inorg. Chem. 2009(2009)3326−3332
【非特許文献2】Y. Fukuda et al, Appl. Phys. Express. 2(2009)012401
【非特許文献3】Oliver Oeckler et al, Chem.Eur.J.2009,15,5311−5319
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、非特許文献1に記載の物質は、付活元素を含まず、蛍光体ではなく、蛍光体として利用できるという示唆もなされていない。
また、特許文献1、非特許文献2、及び非特許文献3に記載の蛍光体は、狭帯域発光であり、演色性の点でさらなる向上が求められる。
【0008】
本発明は上述の課題に鑑みてなされたもので、その目的は、演色性に優れた新規組成の蛍光体を提供するとともに、この蛍光体を用いた蛍光体含有組成物及び発光装置と、この発光装置を用いた画像表示装置及び照明装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は上記課題に鑑み、新規蛍光物質の探索を行ない、下記式[1]で表される組成を有する蛍光体が良好な演色性で発光することを見出し、本発明を完成させた。また、本発明者等はこの蛍光体が発光装置等の用途に好適に使用できることを見出して、本発明を完成させた。
【0010】
即ち、本発明は以下を要旨とする。
【0011】
(1) 下記式[1]で表される組成を有することを特徴とする、蛍光体。
n(1−y)Alnx+zSi16−(nx+z)nx+z20+n−(nx+z):M ・・・[1]
(但し、前記式[1]において、MはSr、Ba、Ca、Mg及びZnからなる群より選ばれる少なくとも1種類の二価金属元素を示し、MはCr、Mn、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、及びYbからなる群より選ばれる少なくとも1種類の付活元素を示す。
また、x、y、z、及びnは、それぞれ以下の範囲の数値を示す。
0≦x≦1
0<y≦1
0≦z≦13
3.6≦n≦4.4 )
【0012】
(2) 超構造を有することを特徴する(1)に記載の蛍光体。
【0013】
(3) 以下に定義される結晶相Aを含むことを特徴とする(1)又は(2)に記載の蛍光体。
【0014】
CuKαのX線源を用いたX線回折装置において、回折角(2θ)27°〜29°の範囲(R0)に回折ピークが観察される結晶相であって、当該回折ピーク(P0)を基準回折ピークとし、P0のブラック角(θ0)より導かれる5つの回折ピークを低角度から順にそれぞれP1、P2、P3、P4、及びP5とし、これらの回折ピークの回折角度範囲を、R1、R2、R3、R4、及びR5としたときに、R1、R2、R3、R4、及びR5がそれぞれ、
R1=R1s−R1e
R2=R2s−R2e
R3=R3s−R3e
R4=R4s−R4e
R5=R5s−R5e
の角度範囲を示すものであり、R1、R2、R3、R4、及びR5のすべての範囲に回折ピークが少なくとも1本存在し、
且つ、P1、P2、P3、P4、及びP5のうち、回折ピーク高さが最も高い回折ピークの高さに対して、P0の強度が回折ピーク高さ比で20%以上の強度を有するものであり、
P1、P2、P3、P4、及びP5のうち、回折ピーク高さが最も高い回折ピークの高さに対して、それ以外のP1、P2、P3、P4、及びP5のうち少なくとも1以上のピーク強度が回折ピーク高さ比で5%以上である結晶相。
【0015】
ここで、角度範囲R0、R1、R2、R3、R4、及びR5のそれぞれの角度範囲内に回折ピークが2本以上存在する場合は、これらのうち最もピーク強度の高いピークをそれぞれP0、P1、P2、P3、P4及びP5とする。
また、R1s、R2s、R3s、R4s、及びR5sは、それぞれR1、R2、R3、R4、及びR5の開始角度を示し、R1e、R2e、R3e、R4e、及びR5eは、それぞれR1、R2、R3、R4及びR5の終了角度を示すものであり、具体的には、以下の角度を示す。
R1s: 2×arcsin{sin(θ0)/(0.943×1.015)}
R1e: 2×arcsin{sin(θ0)/(0.943×0.985)}
R2s: 2×arcsin{sin(θ0)/(0.912×1.015)}
R2e: 2×arcsin{sin(θ0)/(0.912×0.985)}
R3s: 2×arcsin{sin(θ0)/(0.869×1.015)}
R3e: 2×arcsin{sin(θ0)/(0.869×0.985)}
R4s: 2×arcsin{sin(θ0)/(0.834×1.015)}
R4e: 2×arcsin{sin(θ0)/(0.834×0.985)}
R5s: 2×arcsin{sin(θ0)/(0.731×1.015)}
R5e: 2×arcsin{sin(θ0)/(0.731×0.985)}
【0016】
(4) (1)ないし(3)のいずれかに記載の蛍光体と、液体媒体とを含有することを特徴とする蛍光体含有組成物。
【0017】
(5) 第1の発光体と、該第1の発光体からの光の照射によって可視光を発する第2の発光体とを備え、該第2の発光体が、(1)ないし(3)のいずれかに記載の蛍光体の1種以上を、第1の蛍光体として含有することを特徴とする発光装置。
【0018】
(6) (5)に記載の発光装置を光源として備えることを特徴とする画像表示装置。
【0019】
(7) (5)に記載の発光装置を光源として備えることを特徴とする照明装置。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、青色ないし緑色ないし赤色に発光する新規組成の蛍光体を提供することができる。本発明の蛍光体は、発光ピークがブロードである広帯域発光を示し、演色性に優れている。
また、本発明の蛍光体を用いれば、高特性の発光装置、画像表示装置、及び照明装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の発光装置の一実施例を示す模式的斜視図である。
【図2】図2(a)は、本発明の砲弾型発光装置の一実施例を示す模式的断面図であり、図2(b)は、本発明の表面実装型発光装置の一実施例を示す模式的断面図である。
【図3】本発明の照明装置の一実施例を示す模式的断面図である。
【図4】実施例1で得られた蛍光体の粉末X線回折パターンを示すチャートである。
【図5】実施例1で得られた蛍光体の発光スペクトルを示すチャートである。
【図6】比較例1で得られた蛍光体の粉末X線回折パターンを示すチャートである。
【図7】比較例1で得られた蛍光体の発光スペクトルを示すチャートである。
【図8】実施例2で得られた蛍光体の粉末X線回折パターンを示すチャートである。
【図9】実施例2で得られた蛍光体の発光スペクトルを示すチャートである。
【図10】実施例2で得られた蛍光体の励起スペクトルを示すチャートである。
【図11】実施例3,6,10,15で得られた蛍光体の粉末X線回折パターンを示すチャートである。
【図12】実施例3,6,10,15で得られた蛍光体の発光スペクトルを示すチャートである。
【図13】実施例16〜21で得られた蛍光体の粉末X線回折パターンを示すチャートである。
【図14】実施例16〜21で得られた蛍光体の発光スペクトルを示すチャートである。
【図15】実施例22〜25で得られた蛍光体の粉末X線回折パターンを示すチャートである。
【図16】実施例22〜25で得られた蛍光体の発光スペクトルを示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、その要旨の範囲内において種々に変更して実施することができる。
なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書における色名と色度座標との関係は、すべてJIS規格に基づく(JIS Z8110)。
【0023】
また、本明細書中の蛍光体の組成式において、各組成式の区切りは読点(、)で区切って表わす。また、カンマ(,)で区切って複数の元素を列記する場合には、列記された元素のうち一種又は二種以上を任意の組み合わせ及び組成で含有していてもよいことを示している。例えば、「(Ba,Sr,Ca)Al:Eu」という組成式は、「BaAl:Eu」と、「SrAl:Eu」と、「CaAl:Eu」と、「Ba1−xSrAl:Eu」と、「Ba1−xCaAl:Eu」と、「Sr1−xCaAl:Eu」と、「Ba1−x−ySrCaAl:Eu」とを全て包括的に示しているものとする(但し、前記式中、0<x<1、0<y<1、0<x+y<1)。
【0024】
[1.蛍光体]
[1−1.組成]
本発明の蛍光体は、下記式[1]で表される組成を有することを特徴とする。
n(1−y)Alnx+zSi16−(nx+z)nx+z20+n−(nx+z):M ・・・[1]
(但し、前記式[1]において、MはSr、Ba、Ca、Mg及びZnからなる群より選ばれる少なくとも1種類の二価金属元素を示し、MはCr、Mn、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、及びYbからなる群より選ばれる少なくとも1種類の付活元素を示す。
また、x、y、z、及びnは、それぞれ以下の範囲の数値を示す。
0≦x≦1
0<y≦1
0≦z≦13
3.6≦n≦4.4 )
【0025】
ここで、前記式[1]において、Mは、Sr、Ba、Ca、Mg及びZnからなる群より選ばれる少なくとも1種類の二価金属元素である。Mとしては、これらの元素のうち何れか一種を単独で含有していてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で含有していてもよい。Mとしては、Sr、Ba、及びCaからなる群より選ばれる少なくとも1種を必須とすることが好ましい。このとき、Sr、Ba、又はCaの、M全体に占める割合は好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは90モル%以上である。
【0026】
なお、後述するように、Mとして含有されるSr、Ba、Caの各元素の割合を変更することで蛍光体の発光色を調整することができる。
【0027】
前記式[1]において、Mは、付活元素であり、具体的には、Cr、Mn、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、及びYbからなる群より選ばれる少なくとも1種類の遷移金属元素又は希土類元素である。Mとしては、これらの元素のうち何れか一種を単独で含有していてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有していてもよい。
【0028】
中でも、Mとしては、希土類元素であるEu、Ce、Pr、Sm、Tb、及びYbからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素が好ましく、発光量子効率の点で、少なくともEu及び/又はCeを含有することがより好ましく、発光ピーク波長の点で、Euを必須とすることがさらに好ましい。M全体に占めるEuの割合は、50モル%以上が好ましく、70モル%以上がより好ましく、90モル%以上がさらに好ましく、MはEuからなることが特に好ましい。
【0029】
前記Mは、M元素のサイトを置換するものと考えられ、本発明の蛍光体中において2価のカチオン及び/又は3価のカチオンとして存在することになる。この際、付活元素Mは2価のカチオンの存在割合が高い方が好ましい。MがEuである場合、具体的には、全Euの量に対するEu2+の割合は、通常20モル%以上、好ましくは50モル%以上、より好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上である。
【0030】
なお、本発明の蛍光体に含まれる全Eu中のEu2+の割合は、例えば、X線吸収微細構造(X−ray Absorption Fine Structure)の測定によって調べることができる。すなわち、Eu原子のL3吸収端を測定すると、Eu2+とEu3+が別々の吸収ピークを示すので、その面積から比率を定量できる。また、本発明の蛍光体に含まれる全Eu中のEu2+の割合は、電子スピン共鳴(ESR)の測定によっても知ることができる。
【0031】
前記式[1]において、xは、NとOに関する変数である。xの値が大きいほどO(酸素)含有量が多いことを意味する。xの範囲としては、通常0以上、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.75以上であり、より好ましくは0.9以上であり、1に近いほど好ましい。
【0032】
前記式[1]において、yは、付活元素Mの濃度を意味する。yの範囲としては、通常0より大きく、好ましくは0.005以上、より好ましくは0.02以上であり、また、通常1以下、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.3以下である。yの値が大きすぎると濃度消光を起こす可能性があり、小さすぎると発光中心の濃度が低すぎる可能性が生じる。
【0033】
前記式[1]において、zは、蛍光体結晶構造中でSi−Nの組をAl−Oの組で置換する割合を意味し、zの値が大きいほどAl−Oの組が多いことを意味する。例えば、本発明の蛍光体に含まれるSi−Nの組が全てAl−Oの組に置換される場合がz=13となる。zの範囲としては、通常0以上であり、また、通常13より小さく、好ましくは5以下、より好ましくは3以下である。
【0034】
前記式[1]において、nは、蛍光体の組成中にM(O,N)が含まれる割合を意味する。nの範囲としては、通常3.6以上、好ましくは3.8以上、より好ましくは3.9以上であり、また、通常4.4以下、好ましくは4.2以下、より好ましくは4.1以下である。nの値が大きすぎても小さすぎても不純物相が生成しやすくなる可能性がある。
【0035】
また、本発明の蛍光体の組成は、M元素の組成比に対する、Alの組成比とSiの組成比との合計(即ち、{(nx+z)+16−(nx+z)}/{n−(1−y)}=16/{n−(1−y)})が、通常3.6以上、好ましくは3.9以上であり、また、通常4.4以下、好ましくは4.1以下であることが好ましい。このような組成を有することで結晶性の高い蛍光体が得られやすい。
【0036】
また、本発明の蛍光体は、前記式[1]に表される組成の他に、蛍光体としての特性に影響を与えない範囲内で不純物や添加元素等を含有していてもよい。このような元素としては、F、Cl等のハロゲン元素、Fe、Co等の遷移金属、B(ホウ素)、C(炭素)等が挙げられる。また、本発明の蛍光体では、酸素元素あるいは窒素元素と共に、M元素が欠損することや、結晶格子の隙間にM元素が余分に入り込むことがある。また、窒素元素の一部が酸素元素のサイトに、又は酸素元素の一部が窒素元素のサイトに存在する場合もある。
【0037】
本発明の蛍光体の好ましい組成の具体例を以下に挙げるが、本発明の蛍光体の組成は以下に例示に制限されるものではない。
本発明の蛍光体の好ましい具体例としては、(Ca,Sr,Ba)Si:(Eu,Ce,Mn)、((Ca,Sr,Ba)ON)(AlSi1520):(Eu,Ce,Mn)、((Ca,Sr,Ba))(AlSi1420):(Eu,Ce,Mn)、((Ca,Sr,Ba)N)(AlSi1320):(Eu,Ce,Mn)、((Ca,Sr,Ba)O)(AlSi1220):(Eu,Ce,Mn)、((Ca,Sr,Ba)O)(AlSi11ON19):(Eu,Ce,Mn)、((Ca,Sr,Ba)O)(AlSi1018):(Eu,Ce,Mn)、((Ca,Sr,Ba)O)(AlSi17):(Eu,Ce,Mn)、((Ca,Sr,Ba)O)(AlSi16):(Eu,Ce,Mn)、((Ca,Sr,Ba)O)(AlSi15):(Eu,Ce,Mn)、((Ca,Sr,Ba)O)(Al10Si14):(Eu,Ce,Mn)、((Ca,Sr,Ba)O)(Al11Si13):(Eu,Ce,Mn)、((Ca,Sr,Ba)O)(Al12Si12):(Eu,Ce,Mn)、((Ca,Sr,Ba)O)(Al13Si11):(Eu,Ce,Mn)、((Ca,Sr,Ba)O)(Al14Si1010):(Eu,Ce,Mn)、((Ca,Sr,Ba)O)(Al15Si11):(Eu,Ce,Mn)、((Ca,Sr,Ba)O)(Al1612):(Eu,Ce,Mn)が挙げられる。
【0038】
[1−2.蛍光体の特性]
<重量メジアン径>
本発明の蛍光体は、その重量メジアン径が、通常10μm以上、中でも15μm以上であり、また、通常30μm以下、中でも20μm以下の範囲であることが好ましい。重量メジアン径が小さすぎると、輝度が低下し、蛍光体粒子が凝集してしまう傾向があり好ましくない。一方、重量メジアン径が大きすぎると、塗布ムラやディスペンサー等の閉塞が生じる傾向があり好ましくない。なお、本発明の蛍光体の重量メジアン径は、例えばレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置等の装置を用いて測定することができる。
【0039】
<量子効率・吸収効率>
本発明の蛍光体は、その内部量子効率が高いほど好ましい。その値は、通常0.5以上、好ましくは0.6以上、更に好ましくは0.7以上である。内部量子効率が低いと発光効率が低下する傾向にあり、好ましくない。
【0040】
本発明の蛍光体は、その吸収効率も高いほど好ましい。その値は、通常0.5以上、好ましくは0.6以上、更に好ましくは0.7以上である。吸収効率が低いと発光効率が低下する傾向にあり、好ましくない。
【0041】
本発明の蛍光体は、その外部量子効率も高いほど好ましい。その値は、通常0.5以上、好ましくは0.6以上、更に好ましくは0.7以上である。外部量子効率が低いと発光効率が低下する傾向にあり、好ましくない。
【0042】
[1−3.超構造]
本発明の蛍光体は、超構造を有することが好ましい。特に、本発明の蛍光体は好ましくは後述の結晶相Aを含み、この結晶相Aが超構造を有することが好ましい。
以下に、超構造について説明する。
【0043】
試料のX線回折や電子線回折において、当該試料の基本構造(basic structure)の回折スポット以外にストリーク等が観察されるとき、「超構造を有する」という。
超構造としては、基本構造の整数倍でストリーク等が観察される超格子構造(superlattice structure)と、基本構造の非整数倍でストリーク等が観察される変調構造(modulated structure)とがあるが、本発明の蛍光体が有する超構造は変調構造であることが好ましい。
【0044】
例えば、MとしてSrを有する本発明の蛍光体が、後述の結晶相Aを有する場合、結晶構造において、Sr(O,N)から構成されるブロックと、Si−Alから構成されるブロックとが交互に積み重なってできており、この積み重なりに、ずれ(変調)が生じる傾向がある。このずれ(変調)が、発光中心元素(付活元素)が置き換わる相手の元素(例えば、Sr)の周囲環境に影響を与え、様々な異なった発光サイトが形成されるため、演色性の高い半値幅の広い発光が得られることとなる。
【0045】
一般的に、X線回折法によって求められる平均結晶構造において結晶中のSrサイトは一つであり、Eu等の付活元素は、Srサイトに固溶置換される傾向にあり、Srの独立なサイトの数が一つである場合、半値幅の狭い発光ピークの観測が期待できる。しかしながら、結晶相Aのように、SrO層で欠陥生成に起因する積層不正があるとき、それぞれのSr元素に着目すると、さまざまな配位環境を有するSr元素が結晶中に存在していると予想される。よって、本発明の蛍光体はこのような特徴的な結晶構造により、様々な発光サイトが形成されるため、Srサイトに付活されるEu等の付活元素の発光は半値幅の大きいブロードな発光ピークとして観察される。
【0046】
[1−4.結晶相A]
本発明の蛍光体は、以下に定義される結晶相Aを含むことが好ましい。
【0047】
CuKαのX線源を用いたX線回折装置において、回折角(2θ)27°〜29°の範囲(R0)に回折ピークが観察される結晶相であって、当該回折ピーク(P0)を基準回折ピークとし、P0のブラック角(θ0)より導かれる5つの回折ピークを低角度から順にそれぞれP1、P2、P3、P4、及びP5とし、これらの回折ピークの回折角度範囲を、R1、R2、R3、R4、及びR5としたときに、R1、R2、R3、R4、及びR5がそれぞれ、
R1=R1s−R1e
R2=R2s−R2e
R3=R3s−R3e
R4=R4s−R4e
R5=R5s−R5e
の角度範囲を示すものであり、R1、R2、R3、R4、及びR5のすべての範囲に回折ピークが少なくとも1本存在し、且つ、P1、P2、P3、P4、及びP5のうち、回折ピーク高さが最も高い回折ピークの高さに対して、P0の強度が回折ピーク高さ比で通常20%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは40%以上、特に好ましくは50%以上の強度を有するものであり、P1、P2、P3、P4、及びP5のうち、回折ピーク高さが最も高い回折ピークの高さに対して、それ以外のP1、P2、P3、P4、及びP5のうち少なくとも1以上のピーク強度が回折ピーク高さ比で通常5%以上、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上、特に好ましくは20%以上である結晶相。
【0048】
ここで、角度範囲R0、R1、R2、R3、R4、及びR5のそれぞれの角度範囲内に回折ピークが2本以上存在する場合は、これらのうち最もピーク強度の高いピークをそれぞれP0、P1、P2、P3、P4及びP5とする。
また、R1s、R2s、R3s、R4s、及びR5sは、それぞれR1、R2、R3、R4、及びR5の開始角度を示し、R1e、R2e、R3e、R4e、及びR5eは、それぞれR1、R2、R3、R4及びR5の終了角度を示すものであり、具体的には、以下の角度を示す。
R1s: 2×arcsin{sin(θ0)/(0.943×1.015)}
R1e: 2×arcsin{sin(θ0)/(0.943×0.985)}
R2s: 2×arcsin{sin(θ0)/(0.912×1.015)}
R2e: 2×arcsin{sin(θ0)/(0.912×0.985)}
R3s: 2×arcsin{sin(θ0)/(0.869×1.015)}
R3e: 2×arcsin{sin(θ0)/(0.869×0.985)}
R4s: 2×arcsin{sin(θ0)/(0.834×1.015)}
R4e: 2×arcsin{sin(θ0)/(0.834×0.985)}
R5s: 2×arcsin{sin(θ0)/(0.731×1.015)}
R5e: 2×arcsin{sin(θ0)/(0.731×0.985)}
【0049】
以下、結晶相Aについて説明する。
結晶相Aは、斜方晶系の単位格子を有するものである。その格子定数としては、結晶を構成する元素の種類により変化するが、格子定数aは、通常4.0オングストローム以上、好ましくは4.5オングストローム以上、より好ましくは5.0オングストローム以上であり、また、通常7.5オングストローム以下、好ましくは7.0オングストローム以下、より好ましくは6.5オングストローム以下である。また、格子定数bは、通常35オングストローム以上、好ましくは36オングストローム以上、より好ましくは37オングストローム以上であり、また、通常41オングストローム以下、好ましく40オングストローム以下、より好ましくは39オングストローム以下である。また、格子定数cは、通常8.0オングストローム以上、好ましくは8.5オングストローム以上、より好ましくは9.0オングストローム以上であり、また、通常11.5オングストローム以下、好ましく11.0オングストローム以下、より好ましくは10.5オングストローム以下である。
【0050】
なお、上記格子定数は、X線回折及び中性子回折の結果をリートベルト(Rietveld)法を用いた解析法により求めることができ、空間群は、電子回折、又は収束電子回折により一義的に求めることができる。尚、リートベルト(Rietveld)解析は、中井泉、泉富士夫編著「粉末X線解析の実際−リートベルト法入門」朝倉書店刊(2002年)を参考にし、解析プログラムRIETAN2000を使用して行えばよい。
【0051】
さらに、結晶相Aの空間群としては、「International Tables for Crystallography(Third, revised edition)、Volume A Space−Group Symmetry」に基づく43番(Fdd2)に属するものであることが好ましい。
【0052】
結晶相の同定は上述した結晶系や空間群などを用いて行うこともできる。ただし、本発明の蛍光体の結晶相は、その組成変化によって結晶構造に歪みや微妙な構造変化を生じるものであり、それにより、結晶系及び/又は空間群に変化が生じるため、一義的な相同定を行うことが難しい側面がある。そこで、以下に、発光に寄与する結晶相を同定するのに必要なX線回折パターンによって本発明の蛍光体を規定する。
【0053】
通常、X線回折パターンによって、二つの化合物の結晶構造が同じであることを特定する(同定する)にはそれら化合物の示す回折ピークの角度(2θ)が一致すればよい。しかしながら、本発明の蛍光体のように構成元素比が異なる場合には結晶構造が同一であっても回折ピークの角度が移動するため、回折ピークの角度を数値として詳細に定義することができない。よって、本発明者らはブラッグの式を用いて算出される回折ピークの面間隔に着目し、以下の表示方法で回折ピークの角度範囲を特定した。
【0054】
ブラッグの式:
d=λ/{2×sin(θ)} (式1)
θ=arcsin{λ/(2×d)} (式2)
ここで、式2は式1を変形したものである。
前記式1及び式2において、d、θ及びλはそれぞれ以下のものを表す。
d:面間隔(Å)
θ:ブラッグ角(°)
λ:CuKαのX線波長=1.54184Å
【0055】
ここで、基準回折ピーク(P0)の面間隔範囲を3.3Å〜3.1Åと規定すると、式2より回折角(2θ)の範囲は27°〜29°となる。また、観測された基準回折ピーク(P0)の角度(θ0)より、基準回折ピークの面間隔(d0)は式1より下記式3となる。
d0=λ/{2×sin(θ0)} (式3)
【0056】
基準回折ピーク(P0)以外の5本の回折ピークを低角度側からそれぞれP1、P2、P3、P4及びP5とし、それぞれのピークが出現する角度範囲を順にR1、R2、R3、R4及びR5とすると、P1が出現する角度範囲R1は次のように定まる。即ち、基準回折ピーク由来の面間隔(d0)の0.943倍の面間隔を有する回折面とし、構造のひずみに伴う面間隔の偏位を1.5%とすると角度範囲R1の開始角度(R1s)及び終了角度(R1e)は式2より次のように導かれる。
R1s:2×arcsin{λ/(2×d0×0.943×1.015)}
R1e:2×arcsin{λ/(2×d0×0.943×0.985)}
それぞれに式3を代入すると、
R1s:2×arcsin{sin(θ0)/(0.943×1.015)}
R1e:2×arcsin{sin(θ0)/(0.943×0.985)}
となる。
【0057】
以下同様に、P2、P3、P4及びP5が出現する角度範囲を基準回折ピーク由来の面間隔に対して0.912倍、0.869倍、0.834倍、0.731倍と定義し、構造のひずみに伴う面間隔の偏位を一律1.5%とすると各角度範囲は以下の通りとなる。
R2s:2×arcsin{sin(θ0)/(0.912×1.015)}
R2e:2×arcsin{sin(θ0)/(0.912×0.985)}
R3s:2×arcsin{sin(θ0)/(0.869×1.015)}
R3e:2×arcsin{sin(θ0)/(0.869×0.985)}
R4s:2×arcsin{sin(θ0)/(0.834×1.015)}
R4e:2×arcsin{sin(θ0)/(0.834×0.985)}
R5s:2×arcsin{sin(θ0)/(0.731×1.015)}
R5e:2×arcsin{sin(θ0)/(0.731×0.985)}
【0058】
得られたX線回折測定結果について基準ピークP0からP5までの各ピークが上記の角度範囲に出現することを確認することによって、本発明における特定の結晶構造(結晶相A)が存在することが確認できる。
【0059】
なお、本発明の蛍光体はCuKαのX線源を用いたX線回折測定で同定された二酸化珪素の一結晶形態であるクリストバライト、あるいはα−窒化珪素やβ−窒化珪素などの不純物相を含有してもよい。これら不純物相の含有量はX線回折測定により知ることができ、含有された不純物相の最強回折ピーク強度が前記のP0、P1、P2、P3、P4及びP5のうちの最強ピーク強度と比較して、通常40%以下、好ましくは30%以下、より好ましくは20%以下、更に好ましくは10%以下であり、特には、不純物相のピークが観察されないで結晶相Aが単一相として存在することが好ましい。これにより、発光強度を高めることができる。
なお、上述したようなX線回折測定は、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0060】
[1−5.MとしてSrを必須とする場合]
本発明の蛍光体は、結晶構造の安定性の観点から、MとしてSrを含有することが好ましい。以下、本発明の蛍光体が前記式[1]のMとしてSrを必須とする場合について説明する。
【0061】
<組成>
としてSrを必須とする場合において、MとしてBaを共存させるときは、MとMとの合計に対するSrの割合は、通常50モル%より大きく、好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上であり、95モル%以上であることが特に好ましい。目的とする組成の蛍光体が得やすいからである。また、MとMとの合計に対するBaの割合が、25モル%以下であることが好ましい。
としてSrを必須とする場合において、MとしてCaを共存させるときは、MとMとの合計に対するSrの割合は、通常85モル%より大きく、好ましくは90モル%以上であり、95モル%以上であることが特に好ましい。目的とする組成の蛍光体が得やすいからである。
【0062】
なお、前記式[1]におけるその他の条件(Mとして含まれる元素や、x、y、z、及びnの数値範囲等)は、前述の説明を援用できる。
【0063】
また、MとしてSrを必須とし、かつ、前述の結晶相Aを含有する蛍光体の組成は、下記式[2]を用いても表すことができる。
4(1−a)Al4bSi4c4d4e:M …[2]
(但し、前記式[2]において、MはSr、Ba、Ca、Mg及びZnからなる群より選ばれる少なくとも1種類の二価金属元素を示し、MはCr、Mn、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、及びYbからなる群より選ばれる少なくとも1種類の付活元素を示す。
また、a、b、c、d、及びeは、それぞれ以下の範囲の数値を示す。
0<a≦1
0≦b≦4.4
0≦c≦4.4
0≦d≦6.4
0≦e≦6.4 )
【0064】
前記式[2]において、M、及びMに関する説明は、式[1]に関する説明を援用することができる。
前記式[2]において、aの範囲としては、通常0より大きく、好ましくは0.005以上、より好ましくは0.02以上であり、また、通常1以下、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.3以下である。aの値が大きすぎると濃度消光を起こす可能性があり、小さすぎると発光中心の濃度が低すぎる可能性が生じる。
前記式[2]において、bの範囲としては、通常0以上、好ましくは0.5以上であり、また、通常4.4以下、好ましくは4以下である。
前記式[2]において、cの範囲としては、通常0以上、好ましくは2以上であり、また、通常4.4以下、好ましくは3以下である。
前記式[2]において、dの範囲としては、通常0以上、好ましくは2以上であり、また、通常6.4以下、好ましくは6以下である。
前記式[2]において、eの範囲としては、通常0以上、好ましくは3以上であり、また、通常6.4以下、好ましくは5以下である。
【0065】
<蛍光体の特性>
上記のような組成範囲の、Srを必須とする場合の本発明の蛍光体は、発光色は青色ないし緑色の発光を示す。より具体的には、発光ピーク波長が、通常460nm以上、530nm以下の範囲となる。
青緑色蛍光体を得たい場合は、発光ピーク波長が460nm以上、510nm以下となるようにし、緑色蛍光体を得たい場合は、発光ピーク波長が510nm以上、530nm以下となるようにすると好ましい。
【0066】
また、Srを必須とする場合の本発明の蛍光体の発光ピークの半値幅(full width at half maximum)は、通常80nm以上、好ましくは90nm以上であり、また、通常110nm以下、好ましくは100nm以下である。この半値幅が狭過ぎると発光強度が低下する傾向があり、広過ぎると色純度が低下する傾向がある。
【0067】
また、Srを必須とする場合の本発明の蛍光体の励起波長は、通常200nm以上であり、また、通常460nm以下、好ましくは420nm以下である。従って、LED用途のほか、蛍光灯等の他の用途にも適用可能である。
【0068】
<蛍光体の結晶構造>
Srを必須とする場合の本発明の蛍光体の代表的な組成は、SrAlSi1119をEuで付活したものである。この組成は、後述する実施例に示すように、X線回折法により新規な結晶構造として、前述の結晶相Aを有することが確認された。
としてSrを必須とする本発明の蛍光体としては、その組成が前記式[1]で表され、かつ、結晶相Aを含有する複合酸窒化物蛍光体であることが好ましい。
【0069】
なお、Srイオンサイトの一部をBaで置換した場合、置換量がある値を超えた場合は新しい結晶構造(以下、「結晶相B」と称する場合がある。)が得られる。また、SrイオンサイトをCaで置換した場合も、置換量がある値を超えた場合は別の結晶構造(以下、「結晶相C」と称する場合がある。)が得られる。
【0070】
[1−6.MとしてBaを必須とする場合]
本発明の蛍光体は、発光ピークを橙〜赤色領域に移動させ、さらに半値幅を広げる観点から、MとしてBaを含有することが好ましい。以下、前記式[1]のMとしてBaを必須とする場合について説明する。
【0071】
<組成>
としてBaを必須とする場合において、MとしてSrを共存させるときは、MとMとの合計に対するBaの割合は、通常50モル%より大きく、好ましくは70%以上、さらに好ましくは90モル%以上であり、95モル%以上であることが特に好ましい。新しい蛍光体結晶相を主相とするからである。
【0072】
なお、前記式[1]におけるその他の条件(Mとして含まれる元素や、x、y、z、及びnの数値範囲等)は、前述の説明を援用できる。
【0073】
<蛍光体の特性>
上記のような組成範囲の、Baを必須とする場合の本発明の蛍光体は、発光色は赤色の発光を示す。より具体的には、発光ピーク波長が、通常590nm以上、好ましくは630nm以上、また、通常700nm以下、好ましくは680nm以下の範囲となる。
【0074】
また、Baを必須とする場合の本発明の蛍光体の発光ピークの半値幅(full width at half maximum)は、通常80nm以上、好ましくは90nm以上であり、また、通常200nm以下、好ましくは150nm以下である。この半値幅が狭過ぎると発光強度が低下する傾向があり、広過ぎると色純度が低下する傾向がある。
【0075】
また、Baを必須とする場合の本発明の蛍光体の励起波長は、通常180nm以上、好ましくは200nm以上であり、また、通常500nm以下、好ましくは460nm以下である。従って、LED用途のほか、蛍光灯等の用途にも適用可能である。
【0076】
[1−7.MとしてCaを必須とする場合]
本発明の蛍光体は、発光ピークを緑色領域に移動させ、さらに半値幅を広げる観点から、MとしてCaを含有することが好ましい。以下、前記式[1]のMとしてCaを必須とする場合について説明する。
【0077】
<組成>
としてCaを必須とする場合において、MとしてSrを共存させるときは、MとMとの合計に対するCaの割合は、通常10モル%以上、好ましくは15モル%以上、より好ましくは20モル%以上であり、また、通常50モル%以下、好ましくは40モル%以下、さらに好ましくは35モル%以下である。Caの含有量が多すぎると不純物相が生成する傾向にあるからである。
【0078】
なお、前記式[1]におけるその他の条件(Mとして含まれる元素や、x、y、z、及びnの数値範囲等)は、前述の説明を援用できる。
【0079】
<蛍光体の特性>
上記のような組成範囲の、MとしてCaを必須とする場合の本発明の蛍光体は、発光色は緑色の発光を示す。より具体的には、発光ピーク波長が、通常480nm以上、好ましくは500nm以上、また、通常550nm以下、好ましくは540nm以下の範囲となる。
【0080】
また、MとしてCaを必須とする場合の本発明の蛍光体の発光ピークの半値幅(full width at half maximum)は、通常80nm以上、好ましくは90nm以上であり、また、通常200nm以下、好ましくは150nm以下である。この半値幅が狭過ぎると発光強度が低下する傾向があり、広過ぎると色純度が低下する傾向がある。
【0081】
また、MとしてCaを必須とする場合の本発明の蛍光体の励起波長は、通常180nm以上、好ましくは200nm以上であり、また、通常500nm以下、好ましくは460nm以下である。従って、LED用途のほか、蛍光灯等の用途にも適用可能である。
【0082】
[2.蛍光体の製造方法]
本発明の蛍光体の製造方法は特に制限されないが、例えば、上述の式[1]における、金属元素Mの原料(以下、適宜「M源」という。)、Siの原料(以下、適宜「Si源」という。)、Alの原料(以下、適宜「Al源」という。)、及び、付活元素Mの原料(以下、適宜「M源」という。)を混合し(混合工程)、得られた混合物を焼成する(焼成工程)ことにより製造することができる。
【0083】
<原料>
本発明の蛍光体の製造に使用されるM源、Si源、Al源及びM源としては、M、Si、Al、及びMの各元素の酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、蓚酸塩、カルボン酸塩、ハロゲン化物等が挙げられる。これらの化合物の中から、複合酸化物への反応性や、焼成時におけるNO、SO等の発生量の低さ等を考慮して、適宜選択すればよい。
【0084】
源の具体例を、M元素の種類毎に分けて列挙すると、以下の通りである。
源のうち、Sr源の具体例としては、SrO、SrCO、SrN、Sr(NH)、Sr(NH、Sr(OH)等が好ましい。
源のうち、Ba源の具体例としては、BaCO、BaN、Ba(NH)、Ba(NH、Ba(OH)等が好ましい。
源のうち、Ca源の具体例としては、CaCO、Ca、Ca(NH)、Ca(NH、Ca(OH)等が好ましい。
源のうち、Mg源の具体例としては、MgCO、Mg、Mg(NH)、Mg(NH、Mg(OH)等が好ましい。
源のうち、Zn源の具体例としては、ZnCO、Zn、Zn(NH)、Zn(NH、Zn(OH)等が好ましい。
【0085】
Si源の具体例としては、Si、SiO等が挙げられる。
【0086】
Al源の具体例としては、AlN、Al、Al(OH)、AlOOH、Al(NO等が挙げられる。
【0087】
源の具体例を、M元素の種類毎に分けて列挙すると、以下の通りである。
源のうち、Eu源の具体例としては、Eu、Eu(SO、Eu(OCO)、EuCl、EuCl、Eu(NO・6HO等が挙げられる。中でもEu、EuCl等が好ましい。
【0088】
また、Ce源、Sm源、Tm源、Yb源等の具体例としては、Eu源の具体例として挙げた各化合物において、EuをそれぞれCe、Sm、Tm、Yb等に置き換えた化合物が挙げられる。
【0089】
源、Si源、Al源及びM源は、いずれも1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
【0090】
ここで、例えば、Sr3.96AlSi1119:Eu0.04を製造する場合の仕込み組成は、以下の式[3]となる。
3.96・SrCO+5・AlN+3.5・Si+0.5・SiO+0.02・Eu ・・・[3]
ただし、SrCOの代わりにSrOを使用する場合は、分析の精度の範囲内で仕込み組成通りの蛍光体が得られるものと考えられる。
【0091】
<混合工程>
源、Si源、Al源、及びM源を混合する手法は特に制限されないが、例としては、下記の(A)及び(B)の手法が挙げられる。
【0092】
(A)ハンマーミル、ロールミル、ボールミル、ジェットミル等の乾式粉砕機、又は、乳鉢と乳棒等を用いる粉砕と、リボンブレンダー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー等の混合機、又は、乳鉢と乳棒を用いる混合とを組み合わせ、M源、Si源、Al源、及びM源等の原料を粉砕混合する乾式混合法
【0093】
(B)M源、Si源、Al源、及びM源等の原料に水等の溶媒又は分散媒を加え、粉砕機、乳鉢と乳棒、又は蒸発皿と撹拌棒等を用いて混合し、溶液又はスラリーの状態とした上で、噴霧乾燥、加熱乾燥、又は自然乾燥等により乾燥させる湿式混合法
【0094】
<焼成工程>
(焼成条件)
焼成工程は通常、上述の混合工程により得られたM源、Si源、Al源、及びM源等の原料の混合物を、各原料と反応性の低い材料からなるルツボやトレイ等の耐熱容器中に入れ、加熱することにより行なう。
【0095】
焼成時の温度は、通常1200℃以上、好ましくは1500℃以上、また、通常2200℃以下、好ましくは2000℃以下の範囲である。焼成温度が低過ぎると充分に結晶が成長せず、粒径が小さくなるおそれがある一方で、焼成温度が高過ぎると結晶が成長しすぎて粒径が大きくなりすぎるおそれがある。
【0096】
焼成時の圧力は、焼成温度等によっても異なるが、通常、常圧以上、好ましくは0.5MPa以上であり、また、通常200MPa以下、好ましくは1MPa以下である。
【0097】
焼成時間は、焼成時の温度や圧力等によっても異なるが、通常10分以上、好ましくは1時間以上であり、通常24時間以下、好ましくは6時間以下の範囲である。
【0098】
焼成時の雰囲気は、特に制限はないが、基本的には、不活性ガス又は還元性ガス雰囲気とする。酸素濃度が0.1ppm〜10ppmの範囲の微量酸素を含有する雰囲気とすると、比較的低温での蛍光体の合成が可能となるので好ましい。酸素濃度が0.1体積%を超えるような酸素含有ガス中や大気中など酸化雰囲気下で焼成すると原料及び生成物からの窒素の揮散が多くなり、目的の蛍光体を得ることができない可能性がある。
【0099】
不活性ガス又は還元性ガスの具体例としては、窒素、水素、アルゴン、アンモニア等が挙げられる。なお、不活性ガス及び還元性ガスは、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。中でも、原料及び生成物からの窒素の揮散を防ぐために、窒素雰囲気下が好ましい。窒素雰囲気とするときの窒素ガスの濃度は、通常50体積%以上、好ましくは70体積%以上であり、また、通常100体積%以下、好ましくは90体積%以下である。
【0100】
なお、焼成は1回でもよいが、複数回に渡って繰り返し行ってもよい。
【0101】
<フラックス>
焼成工程においては、良好な結晶を成長させる観点から、反応系にフラックスを共存させてもよい。フラックスの種類は特に制限されないが、例としてはNHCl、LiCl、NaCl、KCl、CsCl、CaCl、BaCl、SrCl等の塩化物、LiF、NaF、KF、CsF、CaF、BaF、SrF、AlF等のフッ化物などが挙げられる。フラックスの使用量は、原料の種類やフラックスの材料等によっても異なるが、M源、Si源、Al源及びM源の合計に対して通常0.01重量%以上、更には0.1重量%以上、また、通常20重量%以下、更には10重量%以下の範囲が好ましい。フラックスの使用量が少な過ぎると、フラックスの効果が現れず、フラックスの使用量が多過ぎると、フラックス効果が飽和したり、母体結晶に取り込まれて発光色を変化させたり、輝度低下を引き起こす場合がある。これらのフラックスは一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0102】
(後処理)
上述の焼成工程後、必要に応じて洗浄、乾燥、分級等の処理を行なうとよい。
なお、本発明の蛍光体を用いて、後述の方法で発光装置を製造する際には、必要に応じて公知の表面処理、例えば燐酸カルシウム処理を行なってから、使用に供することが好ましい。
【0103】
[3.蛍光体の用途]
本発明の蛍光体は、青色光又は近紫外光に対する変換効率に優れているという特性を生かして、各種の発光装置(後述する「本発明の発光装置」)に好適に用いることができる。例えば、青緑色の発光を発する発光装置(以下適宜「青緑色発光装置」という。)に用いれば、高効率の青緑色発光装置を実現することができる。また、青緑色蛍光体である本発明の蛍光体に、赤色蛍光体、青色蛍光体、橙色蛍光体等を組み合わせれば、高性能の白色発光装置を実現することができる。こうして得られた発光装置を、画像表示装置の発光部や照明装置として使用することができる。
【0104】
また、本発明の蛍光体は、紫外線、電子線等でも励起可能であるので、LED用途に限らず、蛍光灯、蛍光ランプ等にも好適に用いることができる。
【0105】
[4.蛍光体含有組成物]
本発明の蛍光体は、液体媒体と混合して用いることもできる。特に、本発明の蛍光体を発光装置等の用途に使用する場合には、これを液体媒体中に分散させた形態で用いることが好ましい。本発明の蛍光体を液体媒体中に分散させたものを、適宜「本発明の蛍光体含有組成物」と呼ぶものとする。
【0106】
[4−1.蛍光体]
本発明の蛍光体含有組成物に含有させる本発明の蛍光体の種類に制限は無く、上述したものから任意に選択することができる。また、本発明の蛍光体含有組成物に含有させる本発明の蛍光体は、1種のみであってもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。更に、本発明の蛍光体含有組成物には、本発明の効果を著しく損なわない限り、本発明の蛍光体以外の蛍光体を含有させてもよい。
【0107】
[4−2.液体媒体]
本発明の蛍光体含有組成物に用いられる液体媒体の種類は特に限定されず、通常、半導体発光素子を覆ってモールディングすることのできる硬化性材料を用いることができる。硬化性材料とは、流体状の材料であって、何らかの硬化処理を施すことにより硬化する材料のことをいう。ここで、流体状とは、例えば液状又はゲル状のことをいう。硬化性材料は、固体発光素子から発せられた光を蛍光体へ導く役割を担保するものであれば、具体的な種類に制限は無い。また、硬化性材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。従って、硬化性材料としては、無機系材料、有機系材料、並びに両者の混合物のいずれを用いることも可能である。
【0108】
無機系材料としては、例えば、金属アルコキシド、セラミック前駆体ポリマー若しくは金属アルコキシドを含有する溶液をゾル−ゲル法により加水分解重合して成る溶液、又はこれらの組み合わせを固化した無機系材料(例えばシロキサン結合を有する無機系材料)等を挙げることができる。
【0109】
一方、有機系材料としては、例えば、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等が挙げられる。具体例を挙げると、ポリ(メタ)アクリル酸メチル等の(メタ)アクリル樹脂(ここで、「(メタ)アクリル」とは「アクリル」と「メタクリル」の双方をさす。);ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体等のスチレン樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリエステル樹脂;フェノキシ樹脂;ブチラール樹脂;ポリビニルアルコール;エチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート等のセルロース系樹脂;エポキシ樹脂;フェノール樹脂;シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0110】
これら硬化性材料の中では、半導体発光素子からの発光に対して劣化が少なく、耐アルカリ性、耐酸性、耐熱性にも優れる珪素含有化合物を使用することが好ましい。珪素含有化合物とは分子中に珪素原子を有する化合物をいい、ポリオルガノシロキサン等の有機材料(シリコーン系化合物)、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素等の無機材料、及びホウケイ酸塩、ホスホケイ酸塩、アルカリケイ酸塩等のガラス材料を挙げることができる。中でも、透明性、接着性、ハンドリングの容易さ、機械的、熱的応力の緩和特性に優れる等の点から、シリコーン系材料が好ましい。
【0111】
シリコーン系材料とは、通常、シロキサン結合を主鎖とする有機重合体をいい、例えば、縮合型、付加型、改良ゾルゲル型、光硬化型等のシリコーン系材料を用いることができる。
【0112】
縮合型シリコーン系材料としては、例えば、特開2007−112973〜112975号公報、特開2007−19459号公報、特開2008−34833号公報等に記載の半導体発光デバイス用部材を用いることができる。縮合型シリコーン系材料は半導体発光デバイスに用いられるパッケージや電極、発光素子などの部材との接着性に優れるため、密着向上成分の添加を最低限とすることが出来、架橋はシロキサン結合主体のため耐熱性・耐光性に優れる利点がある。
【0113】
付加型シリコーン系材料としては、例えば、特開2004−186168号公報、特開2004−221308号公報、特開2005−327777号公報等に記載のポッティング用シリコーン材料、特開2003−183881号公報、特開2006−206919号公報等に記載のポッティング用有機変性シリコーン材料、特開2006−324596号公報に記載の射出成型用シリコーン材料、特開2007−231173号公報に記載のトランスファー成型用シリコーン材料等を好適に用いることができる。付加型シリコーン材料は、硬化速度や硬化物の硬度などの選択の自由度が高い、硬化時に脱離する成分が無く硬化収縮しにくい、深部硬化性に優れるなどの利点がある。
【0114】
また、縮合型の一つである改良ゾルゲル型シリコーン系材料としては、例えば、特開2006−077234号公報、特開2006−291018号公報、特開2007−119569号公報等に記載のシリコーン材料を好適に用いることができる。改良ゾルゲル型のシリコーン材料は高架橋度で耐熱性・耐光性高く耐久性に優れ、ガス透過性低く耐湿性の低い蛍光体の保護機能にも優れる利点がある。
【0115】
光硬化型シリコーン系材料としては、例えば特開2007−131812号公報、特開2007−214543号公報等に記載のシリコーン材料を好適に用いることが出来る。紫外硬化方シリコーン材料は、短時間に硬化するため生産性に優れる、硬化に高い温度をかける必要が無く発光素子の劣化が起こりにくいなどの利点がある。
【0116】
これらのシリコーン系材料は単独で使用してもよいし、混合することにより硬化阻害が起きなければ複数のシリコーン系材料を混合して用いてもよい。
【0117】
[4−3.液体媒体及び蛍光体の含有率]
液体媒体の含有率は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、本発明の蛍光体含有組成物全体に対して、通常25重量%以上、好ましくは40重量%以上であり、また、通常99重量%以下、好ましくは95重量%以下、より好ましくは80重量%以下である。液体媒体の量が多い場合には特段の問題は起こらないが、半導体発光装置とした場合に所望の色度座標、演色指数、発光効率等を得るには、通常、上記のような配合比率で液体媒体を用いることが望ましい。一方、液体媒体が少な過ぎると流動性が低下し取り扱い難くなる可能性がある。
【0118】
液体媒体は、本発明の蛍光体含有組成物において、主にバインダーとしての役割を有する。液体媒体は、一種を単独で用いてもよいが、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。例えば、耐熱性や耐光性等を向上させることを目的として珪素含有化合物を使用する場合は、当該珪素含有化合物の耐久性を損なわない程度に、エポキシ樹脂など他の熱硬化性樹脂を含有してもよい。この場合、他の熱硬化性樹脂の含有量は、バインダーである液体媒体全量に対して通常25重量%以下、好ましくは10重量%以下とすることが望ましい。
【0119】
本発明の蛍光体含有組成物中の蛍光体の含有率は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、本発明の蛍光体含有組成物全体に対して、通常1重量%以上、好ましくは5重量%以上、より好ましくは20重量%以上であり、通常75重量%以下、好ましくは60重量%以下である。また、蛍光体含有組成物中の蛍光体に占める本発明の蛍光体の割合についても任意であるが、通常30重量%以上、好ましくは50重量%以上であり、通常100重量%以下である。蛍光体含有組成物中の蛍光体含有量が多過ぎると蛍光体含有組成物の流動性が劣り、取り扱いにくくなることがあり、蛍光体含有量が少な過ぎると発光装置の発光の効率が低下する傾向にある。
【0120】
[4−4.その他の成分]
本発明の蛍光体含有組成物には、本発明の効果を著しく損なわない限り、蛍光体及び液体媒体以外に、その他の成分、例えば、屈折率調整のための金属酸化物や、拡散剤、フィラー、粘度調整剤、紫外線吸収剤等の添加剤を含有させても良い。その他の成分は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0121】
[5.発光装置]
本発明の発光装置(以下、適宜「発光装置」という)は、第1の発光体(励起光源)と、当該第1の発光体からの光の照射によって可視光を発する第2の発光体とを有する発光装置であって、該第2の発光体として前述の[1.蛍光体]の項で記載した本発明の蛍光体を1種以上含む第1の蛍光体を含有するものである。
【0122】
本発明の発光装置に用いられる本発明の蛍光体の好ましい具体例としては、前述の[1.蛍光体]の欄に記載した本発明の蛍光体や、後述の[実施例]の欄の各実施例に用いた蛍光体が挙げられる。また、本発明の蛍光体は、何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0123】
本発明の発光装置は、第1の発光体(励起光源)を有し、且つ、第2の発光体として少なくとも本発明の蛍光体を使用している他は、その構成は制限されず、公知の装置構成を任意にとることが可能である。装置構成の具体例については後述する。
【0124】
本発明の発光装置のうち、特に白色発光装置として、具体的には、第1の発光体として後述するような励起光源を用い、上述のように本発明の蛍光体の他、後述するような青色の蛍光を発する蛍光体(以下、適宜「青色蛍光体」という)、緑色の蛍光を発する蛍光体(以下、適宜「緑色蛍光体」という)、赤色の蛍光を発する蛍光体(以下、適宜「赤色蛍光体」という)、黄色の蛍光を発する蛍光体(以下、適宜「黄色蛍光体」という)等の公知の蛍光体を任意に組み合わせて使用し、公知の装置構成をとることにより得られる。
【0125】
ここで、該白色発光装置の白色とは、JIS Z8701により規定された、(黄みの)白、(緑みの)白、(青みの)白、(紫みの)白及び白の全てを含む意であり、このうち好ましくは白である。
【0126】
[5−1.発光装置の構成]
<5−1−1.第1の発光体>
本発明の発光装置における第1の発光体は、後述する第2の発光体を励起する光を発光するものである。
【0127】
第1の発光体の発光ピーク波長は、後述する第2の発光体の吸収波長と重複するものであれば、特に制限されず、幅広い発光波長領域の発光体を使用することができる。通常は、紫外領域から青色領域までの発光波長を有する発光体が使用され、青色領域の発光波長を有する発光体を使用することが特に好ましい。
【0128】
第1の発光体の発光ピーク波長の具体的数値としては、通常200nm以上が望ましい。このうち、青色光を励起光として用いる場合には、通常420nm以上、好ましくは430nm以上、より好ましくは440nm以上、また、通常480nm以下、好ましくは470nm以下、より好ましくは460nm以下の発光ピーク波長を有する発光体を使用することが望ましい。一方、近紫外光を励起光として用いる場合には、本発明の蛍光体が、近紫外光により励起されて青色光を発する蛍光体からの青色光で励起されるので、当該青色蛍光体の励起帯に合うような波長を有する励起光(近紫外光)を選ぶことが好ましい。具体的には、通常300nm以上、好ましくは330nm以上、より好ましくは360nm以上、また、通常420nm以下、好ましくは410nm以下、より好ましくは400nm以下の発光ピーク波長を有する発光体を使用することが望ましい。
【0129】
第1の発光体としては、一般的には半導体発光素子が用いられ、具体的には発光ダイオード(LED)やレーザーダイオード(LD)等が使用できる。その他、第1の発光体として使用できる発光体としては、例えば、有機エレクトロルミネッセンス発光素子、無機エレクトロルミネッセンス発光素子等が挙げられる。但し、第1の発光体として使用できるものは本明細書に例示されるものに限られない。
【0130】
中でも、第1の発光体としては、GaN系化合物半導体を使用したGaN系LEDやLDが好ましい。なぜなら、GaN系LEDやLDは、この領域の光を発するSiC系LED等に比し、発光出力や外部量子効率が格段に大きく、前記蛍光体と組み合わせることによって、低電力で非常に明るい発光が得られるからである。例えば、20mAの電流負荷に対し、通常GaN系LEDやLDはSiC系の100倍以上の発光強度を有する。GaN系LEDやLDとしては、AlGaN発光層、GaN発光層又はInGaN発光層を有しているものが好ましい。中でも、発光強度が非常に高いことから、GaN系LEDとしては、InGaN発光層を有するものが特に好ましく、InGaN層とGaN層との多重量子井戸構造のものがさらに好ましい。
【0131】
なお、上記においてX+Yの値は通常0.8〜1.2の範囲の値である。GaN系LEDにおいて、これら発光層にZnやSiをドープしたものやドーパント無しのものが発光特性を調節する上で好ましいものである。
【0132】
GaN系LEDはこれら発光層、p層、n層、電極、及び基板を基本構成要素としたものであり、発光層をn型とp型のAlGaN層、GaN層、又はInGaN層などでサンドイッチにしたヘテロ構造を有しているものが、発光効率が高くて好ましく、更にヘテロ構造を量子井戸構造にしたものが、発光効率が更に高いため、より好ましい。
なお、第1の発光体は、1個のみを用いてもよく、2個以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0133】
<5−1−2.第2の発光体>
本発明の発光装置における第2の発光体は、上述した第1の発光体からの光の照射によって可視光を発する発光体であり、第1の蛍光体として本発明の蛍光体を1種以上含有するとともに、その用途等に応じて適宜、後述する第2の蛍光体(青色蛍光体、緑色蛍光体、黄色蛍光体、橙色蛍光体、赤色蛍光体等)を含有する。また、例えば、第2の発光体は、第1及び第2の蛍光体を封止材料中に分散させて構成される。
【0134】
上記第2の発光体中に用いられる、本発明の蛍光体以外の蛍光体の組成には特に制限はないが、母体結晶となる、Y、YVO、ZnSiO、YAl12、SrSiO等に代表される金属酸化物、SrSi等に代表される金属窒化物、Ca(POCl等に代表されるリン酸塩及びZnS、SrS、CaS等に代表される硫化物、YS、LaS等に代表される酸硫化物等にCe、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb等の希土類金属のイオンやAg、Cu、Au、Al、Mn、Sb等の金属のイオンを付活元素又は共付活元素として組み合わせたものが挙げられる。
【0135】
下表に、好ましい結晶母体の具体例を示す。
【0136】
【表1】

【0137】
但し、上記の母体結晶及び付活元素又は共付活元素は、元素組成には特に制限はなく、同族の元素と一部置き換えることもでき、得られた蛍光体は近紫外から可視領域の光を吸収して可視光を発するものであれば用いることが可能である。
【0138】
具体的には、蛍光体として以下に挙げるものを用いることが可能であるが、これらはあくまでも例示であり、本発明で使用できる蛍光体はこれらに限られるものではない。なお、以下の例示では、前述の通り、構造の一部のみが異なる蛍光体を、適宜省略して示している。
【0139】
<5−1−2−1.第1の蛍光体>
本発明の発光装置における第2の発光体は、少なくとも上述の本発明の蛍光体を含む第1の蛍光体を含有する。本発明の蛍光体は、何れか1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよく、所望の発光色となるよう、本発明の蛍光体の組成を適宜調整すればよい。
【0140】
本発明の発光装置に使用される第1の蛍光体の重量メジアン径は、通常2μm以上、中でも5μm以上、また、通常30μm以下、中でも25μm以下の範囲であることが好ましい。重量メジアン径が小さ過ぎると、輝度が低下し、蛍光体粒子が凝集してしまう傾向がある。一方、重量メジアン径が大き過ぎると、塗布ムラやディスペンサー等の閉塞が生じる傾向がある。
【0141】
<5−1−2−2.第2の蛍光体>
本発明の発光装置における第2の発光体は、その用途に応じて、上述の第1の蛍光体以外にも蛍光体(即ち、第2の蛍光体)を含有していてもよい。通常、これらの第2の蛍光体は、第2の発光体の発光の色調を調節するために使用されるため、第2の蛍光体としては第1の蛍光体とは異なる色の蛍光を発する蛍光体を使用することが多い。例えば、第1の蛍光体として緑色蛍光体を使用する場合、第2の蛍光体としては、青色蛍光体、赤色蛍光体、黄色蛍光体等の緑色蛍光体以外の蛍光体を用いるとよい。但し、第1の蛍光体と同色の蛍光体を第2の蛍光体として用いることも可能である。
【0142】
本発明の発光装置に使用される第2の蛍光体の重量メジアン径D50は、通常2μm以上、中でも5μm以上、また、通常30μm以下、中でも20μm以下の範囲であることが好ましい。重量メジアン径D50が小さ過ぎると、輝度が低下し、蛍光体粒子が凝集してしまう傾向がある。一方、重量メジアン径が大き過ぎると、塗布ムラやディスペンサー等の閉塞が生じる傾向がある。
【0143】
<青色蛍光体>
本発明の蛍光体に加えて青色蛍光体を使用する場合、当該青色蛍光体は本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを使用することができる。この際、青色蛍光体の発光ピーク波長は、通常420nm以上、好ましくは430nm以上、より好ましくは440nm以上、また、通常490nm以下、好ましくは480nm以下、より好ましくは470nm以下、更に好ましくは460nm以下の波長範囲にあることが好適である。使用する青色蛍光体の発光ピーク波長がこの範囲にあると、本発明の蛍光体の励起帯と重なり、当該青色蛍光体からの青色光により、本発明の蛍光体を効率良く励起することができるからである。
このような青色蛍光体として使用できる蛍光体を下表に示す。
【0144】
【表2】

【0145】
以上の中でも、青色蛍光体としては、(Ba,Sr,Ca)MgAl1017:Eu、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO(Cl,F):Eu、(Ba,Ca,Mg,Sr)SiO:Eu、(Ba,Ca,Sr)MgSi:Euが好ましく、(Ba,Sr)MgAl1017:Eu、(Ca,Sr,Ba)10(PO(Cl,F):Eu、BaMgSi:Euがより好ましく、Sr10(POCl:Eu、BaMgAl1017:Euが特に好ましい。
【0146】
以上例示した青色蛍光体は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0147】
<緑色蛍光体>
第2の蛍光体として緑色蛍光体を使用する場合、当該緑色蛍光体は本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを使用することができる。この際、緑色蛍光体の発光ピーク波長は、通常500nmより大きく、中でも510nm以上、更には515nm以上、また、通常550nm以下、中でも542nm以下、更には535nm以下の範囲であることが好ましい。この発光ピーク波長が短過ぎると青味を帯びる傾向がある一方で、長過ぎると黄味を帯びる傾向があり、何れも緑色光としての特性が低下する場合がある。
このような緑色蛍光体として利用できる蛍光体を下表に示す。
【0148】
【表3】

【0149】
以上の中でも、緑色蛍光体としては、Y(Al,Ga)12:Tb、CaSc:Ce、Ca(Sc,Mg)Si12:Ce、(Sr,Ba)SiO:Eu、(Si,Al)(O,N):Eu(β−sialon)、(Ba,Sr)Si12:Eu、SrGa:Eu、BaMgAl1017:Eu,Mnが好ましい。
【0150】
得られる発光装置を照明装置に用いる場合には、Y(Al,Ga)12:Tb、CaSc:Ce、Ca(Sc,Mg)Si12:Ce、(Sr,Ba)SiO:Eu、(Si,Al)(O,N):Eu(β−sialon)、(Ba,Sr)Si12:Euが好ましい。
また、得られる発光装置を画像表示装置に用いる場合には、(Sr,Ba)SiO:Eu、(Si,Al)(O,N):Eu(β−sialon)、(Ba,Sr)Si12:Eu、SrGa:Eu、BaMgAl1017:Eu,Mnが好ましい。
【0151】
以上例示した緑色蛍光体は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0152】
<黄色蛍光体>
第2の蛍光体として黄色蛍光体を使用する場合、当該黄色蛍光体は本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを使用することができる。この際、黄色蛍光体の発光ピーク波長は、通常530nm以上、好ましくは540nm以上、より好ましくは550nm以上、また、通常620nm以下、好ましくは600nm以下、より好ましくは580nm以下の波長範囲にあることが好適である。
このような黄色蛍光体として利用できる蛍光体を下表に示す。
【0153】
【表4】

【0154】
以上の中でも、黄色蛍光体としては、YAl12:Ce、(Y,Gd)Al12:Ce、(Sr,Ca,Ba,Mg)SiO:Eu、(Ba,Sr)Si:Euが好ましい。
【0155】
以上例示した黄色蛍光体は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0156】
<橙色ないし赤色蛍光体>
第2の蛍光体として橙色ないし赤色蛍光体を使用する場合、当該橙色ないし赤色蛍光体は本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを使用することができる。この際、橙色ないし赤色蛍光体の発光ピーク波長は、通常570nm以上、好ましくは580nm以上、より好ましくは585nm以上、また、通常780nm以下、好ましくは700nm以下、より好ましくは680nm以下の波長範囲にあることが好適である。
このような橙色ないし赤色蛍光体として使用できる蛍光体を下表に示す。
【0157】
【表5】

【0158】
以上の中でも、赤色蛍光体としては、(Ca,Sr,Ba)Si(N,O):Eu、(Ca,Sr,Ba)Si(N,O):Eu、(Ca,Sr,Ba)AlSi(N,O):Eu、(Sr,Ba)SiO:Eu、(Ca,Sr)S:Eu、(La,Y)S:Eu、Eu(ジベンゾイルメタン)・1,10−フェナントロリン錯体等のβ−ジケトン系Eu錯体、カルボン酸系Eu錯体、KSiF:Mnが好ましく、(Ca,Sr,Ba)Si(N,O):Eu、(Sr,Ca)AlSi(N,O):Eu、(La,Y)S:Eu、KSiF:Mnがより好ましい。
【0159】
また、橙色蛍光体としては、(Sr,Ba)SiO:Eu、(Sr,Ba)SiO:Eu、(Ca,Sr,Ba)Si(N,O):Eu、(Ca,Sr,Ba)AlSi(N,O):Ceが好ましい。
【0160】
以上例示した橙色ないし赤色蛍光体は、何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0161】
[6.発光装置の実施形態]
[6−1.発光装置の実施形態]
以下、本発明の発光装置について、具体的な実施の形態を挙げて、より詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変形して実施することができる。
【0162】
本発明の発光装置の一例における、励起光源となる第1の発光体と、蛍光体を有する蛍光体含有部として構成された第2の発光体との位置関係を示す模式的斜視図を図1に示す。図1中の符号1は蛍光体含有部(第2の発光体)、符号2は励起光源(第1の発光体)としての面発光型GaN系LD、符号3は基板を表す。相互に接触した状態をつくるために、LD(2)と蛍光体含有部(第2の発光体)(1)とそれぞれ別個に作製し、それらの面同士を接着剤やその他の手段によって接触させてもよいし、LD(2)の発光面上に蛍光体含有部(第2の発光体)を製膜(成型)させてもよい。これらの結果、LD(2)と蛍光体含有部(第2の発光体)(1)とを接触した状態とすることができる。
【0163】
このような装置構成をとった場合には、励起光源(第1の発光体)からの光が蛍光体含有部(第2の発光体)の膜面で反射されて外にしみ出るという光量損失を避けることができるので、装置全体の発光効率を良くすることができる。
【0164】
図2(a)は、一般的に砲弾型と言われる形態の発光装置の代表例であり、励起光源(第1の発光体)と蛍光体含有部(第2の発光体)とを有する発光装置の一実施例を示す模式的断面図である。該発光装置(4)において、符号5はマウントリード、符号6はインナーリード、符号7は励起光源(第1の発光体)、符号8は蛍光体含有部、符号9は導電性ワイヤ、符号10はモールド部材をそれぞれ指す。
【0165】
また、図2(b)は、表面実装型と言われる形態の発光装置の代表例であり、励起光源(第1の発光体)と蛍光体含有部(第2の発光体)とを有する発光装置の一実施例を示す模式的断面図である。図中、符号22は励起光源(第1の発光体)、符号23は蛍光体含有部(第2の発光体)、符号24はフレーム、符号25は導電性ワイヤ、符号26及び符号27は電極をそれぞれ指す。
【0166】
[6−2.発光装置の用途]
本発明の発光装置の用途は特に制限されず、通常の発光装置が用いられる各種の分野に使用することが可能であるが、演色性が高い、及び色再現範囲が広いことから、中でも照明装置や画像表示装置の光源として、とりわけ好適に用いられる。
【0167】
<6−2−1.照明装置>
本発明の発光装置を照明装置に適用する場合には、前述のような発光装置を公知の照明装置に適宜組み込んで用いればよい。例えば、図3に示されるような、前述の発光装置(4)を組み込んだ面発光照明装置(11)を挙げることができる。
【0168】
図3は、本発明の照明装置の一実施形態を模式的に示す断面図である。この図3に示すように、該面発光照明装置は、内面を白色の平滑面等の光不透過性とした方形の保持ケース(12)の底面に、多数の発光装置(13)(前述の発光装置(4)に相当)を、その外側に発光装置(13)の駆動のための電源及び回路等(図示せず。)を設けて配置し、保持ケース(12)の蓋部に相当する箇所に、乳白色としたアクリル板等の拡散板(14)を発光の均一化のために固定してなる。
【0169】
そして、面発光照明装置(11)を駆動して、発光装置(13)の励起光源(第1の発光体)に電圧を印加することにより光を発光させ、その発光の一部を、蛍光体含有部(第2の発光体)としての蛍光体含有樹脂部における前記蛍光体が吸収し、可視光を発光し、一方、蛍光体に吸収されなかった青色光等との混色により演色性の高い発光が得られ、この光が拡散板(14)を透過して、図面上方に出射され、保持ケース(12)の拡散板(14)面内において均一な明るさの照明光が得られることとなる。
【0170】
<6−2−2.画像表示装置>
本発明の発光装置を画像表示装置の光源として用いる場合には、その画像表示装置の具体的構成に制限は無いが、カラーフィルターとともに用いることが好ましい。例えば、画像表示装置として、カラー液晶表示素子を利用したカラー画像表示装置とする場合は、上記発光装置をバックライトとし、液晶を利用した光シャッターと赤、緑、青の画素を有するカラーフィルターとを組み合わせることにより画像表示装置を形成することができる。
【実施例】
【0171】
以下、本発明について実施例を用いて更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0172】
[蛍光体の測定評価方法]
後述の各実施例及び各比較例において、蛍光体粒子の各種の評価は、特に断りの無い限り、以下の手法で行った。
【0173】
<発光スペクトルの測定方法>
発光スペクトルは、励起光源として150Wキセノンランプを備え、スペクトル測定装置としてマルチチャンネルCCD検出器C7041(浜松フォトニクス社製)を備える蛍光測定装置(日本分光社製)を用いて測定した。
具体的には、励起光源からの光を焦点距離が10cmである回折格子分光器に通し、波長405nmの励起光のみを光ファイバーを通じて蛍光体に照射した。励起光の照射により蛍光体から発生した光を焦点距離が25cmである回折格子分光器により分光し、300nm以上800nm以下の波長範囲においてスペクトル測定装置により各波長の発光強度を測定し、パーソナルコンピュータによる感度補正等の信号処理を経て発光スペクトルを得た。なお、測定時には、受光側分光器のスリット幅を1nmに設定して測定を行った。
また、発光ピーク波長(以下、「ピーク波長」と称することがある。)と発光ピークの半値幅は、得られた発光スペクトルから読み取った。
相対発光ピーク強度(以下、「相対ピーク強度」と称することがある。)及び相対輝度は、化成オプトニクス社製LP−B4の波長365nm励起時のピーク強度を基準値100とした相対値で表した。この発光ピーク強度及び相対輝度は高い方が好ましい。
【0174】
<色度座標の測定方法>
430nm〜800nmの波長領域のデータから、JIS Z8724に準じた方法で、JIS Z8701で規定されるXYZ表色系における色度座標CIExとCIEyを算出した。
【0175】
<励起スペクトルの測定方法>
日立製作所製蛍光分光光度計F−4500を使用し、波長は発光ピーク波長に合わせてモニターして250nm〜500nmの波長範囲内の励起スペクトルを得た。
【0176】
<粉末X線回折測定>
粉末X線回折はPANalytical製粉末X線回折装置X’Pertにて精密測定した。測定条件は以下の通りである。また、測定データについては、データ処理用ソフトX’Pert High Score(PANalytical製)を用い、ベンディングフィルターを5として自動バックグラウンド処理を実施した。
CuKα管球使用
X線出力=45KV,40mA
発散スリット=1/4°,X線ミラー
検出器=半導体アレイ検出器X’Celerator使用
Niフィルター使用
走査範囲 2θ=10°〜65°
読み込み幅=0.05°
計数時間=33秒
【0177】
[使用原料]
蛍光体原料として、SrO、SrN、SrCO(レアメタリック社製)、AlN(トクヤマ社製)、Si(宇部興産(株)社製)、SiO(アドマファイン社製)、Eu(レアメタリック社製)、BaO、CaOを用いた。SrO、BaO、CaO、SrNは、それぞれ以下の方法により合成したものを用いた。
SrO原料にはSrCO(レアメタリック社製)を、BaO原料にはBaCO(レアメタリック社製)を、CaO原料にはCaCO(白辰化学社製)を用い、SrCO、及びBaCOについては1200℃で、CaCOについては1000℃で、それぞれ大気圧で5時間焼成し、脱炭酸ガス化して得た。
また、SrNはSr金属(アルドリッチ社製)を窒素雰囲気中、600℃で8時間焼成して得た。これら試料は窒素で満たしたグローボックス内で保管した。
【0178】
[実施例1]
仕込み組成が表6に示す組成比となるように、SrCOを0.84g、AlNを0.31g、Siを0.74g、SiOを0.05g、Euを0.06g、電子天秤で秤量した。秤量後、これら原料粉末すべてをアルミナ乳鉢に入れ、均一になるまで粉砕、及び混合した。この秤量、粉砕、及び混合の操作は、Nガスで満たしたグローブボックス中で行った。
【0179】
【表6】

【0180】
得られた混合粉末を、窒化ホウ素坩堝(BN坩堝)にそのまま充填した。このBN坩堝を、抵抗加熱式真空加圧雰囲気熱処理炉(富士電波工業製)内に置いた。次いで、5×10−3Pa以下まで減圧した後、室温から800℃まで昇温速度20℃/分で真空加熱した。800℃に達したところで、その温度で維持して炉内圧力が0.92MPaになるまで高純度窒素ガス(99.9995%)を30分間導入した。高純度窒素ガスの導入後、0.92MPaを保持しながら、さらに、昇温速度20℃/分で1200℃まで昇温した。1200℃で5分間保持する間に熱電対から放射温度計に換えて、さらに昇温速度20℃/分で1800℃まで加熱した。1800℃に達したところで2時間維持し、さらに引き続いて20℃/分で1900℃まで加熱し、その温度で2時間維持した。焼成後1200℃まで降温速度20℃/分で冷却し、次いで放冷した。
【0181】
得られた蛍光体のX線回折パターンを図4に示す。この回折パターンはPDFに記載されていない未知のX線回折パターンであった。このとき、試料中に単結晶が観察されたので、後述のように単結晶構造解析を理学電機社製RAXIS−RAPIDを用いて行い、各原子の座標を決定した。また、その座標を基にX線回折パターンをシュミレーションし、本発明の蛍光体の化学組成を決定した。
【0182】
また、得られた蛍光体の405nm励起照射下での発光特性の測定結果を表7に示した。
【0183】
【表7】

【0184】
また、この蛍光体の405nm励起照射下での発光スペクトルを図5に示す。発光ピーク波長が490nmで半値幅が97nmである発光スペクトルが観察された。
【0185】
実施例1で得られた蛍光体の半値幅は、後述する比較例1で得られた蛍光体の半値幅(70nm)と比較して大きかった。本発明の蛍光体の結晶構造において発光中心としてEuがSrと置換される場所は積層不正が起こりやすく、Euの周囲環境が僅かに異なるものが結晶構造中に多く生成し、いろいろな環境から発せられるEuの発光が合わさって半値幅の広いブロードな発光が得られたものと考えられる。
【0186】
次に、実施例1で得られた蛍光体について、以下のようにして化学組成と結晶構造の解析を行い、前述の結晶相Aを有し、かつこの結晶相Aが超構造であることを確認した。
【0187】
<単結晶X線回折法の測>
単結晶のX線回折強度を、Rigaku RAXIS−RAPID II(X線源:MoKα 0.71075Å)により、室温で測定、及び積算を行った。得られた回折データの解析に基づき、解析ソフトウェア(Superflip)により単斜晶系(P1)として構造モデルの導出を試みた。ほぼ正解の単位モデルが得られたものの、回折強度のデータを十分説明するには至らなかった。
【0188】
<電子線回折の測定と格子像観>
そこで、回折データに観測されるストリークの分布や格子の対称性を確認するために電子線回折を行った。試料粉末中の透明板状単結晶(0.3mm〜0.5mm)を十数個拾い出し、メノウ乳鉢で軽く粉砕した。この粉砕片をアルコールに分散させた後、コロジオン膜を貼ったTEM用マイクロCuグリッドの上ですくい取った。
200kVの透過型電子顕微鏡(JEOL、JEM−2000EX)で、結晶片試料の電子線回折パターンを撮影し、特定の方向からの電子線入射で、ミラー指数hklでh,lが奇数の反射において、37.7Å周期の軸(b軸)方向にDiffuse streaksが観察された。さらに、電子線回折でDiffuse streaksが観察された結晶方位から積層欠陥に伴う幅の異なる縞状のコントラストが観察された。
これにより積層欠陥は (010)に入っていることがわかる。また、実施例1で得られた蛍光体は超構造(変調構造)を有することがわかる。
【0189】
<単結晶の化学組成分析>
構造解析の前に(株)堀場製作所製エネルギー分散形X線分析装置(EMAX ENERGY)を付帯した走査型電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジーズ、S−3400N)を用いたEDX分析により単結晶の化学組成を決定した。
カーボン蒸着した4つの結晶試料について各結晶についてそれぞれ40数箇所を分析し、平均した。分析の結果、いずれの結晶においても大きな差はなく、Sr:Eu:Al:Siのモル比は0.94(2):0.06(1):1.19(3):2.81(5)となった(なお、括弧内の数値は標準偏差を表す)。また、NおよびOの特性X線ピークも検出され、NとOのモル比は、ほぼ4:1となった。そこで、組成式を(Sr0.94Eu0.06)(Al0.3Si0.7(N0.80.2として結晶構造解析を行った。
【0190】
<結晶構造解析>
電子線回折の測定結果より、得られた蛍光体の結晶が面心格子(F格子a=5.8055(6)、b=37.764(4)、c=9.5910(10)Å)であることが明らかとなり、少なくともb軸方向とa軸方向にはミラー指数0klでk=4nのとき、及びミラー指数00lでl=4nのときに消滅則が認められ、X線回折データからもミラー指数h00で、h=4nのときに消滅則が確認された。これらのことから、空間群はFdd2(Fd2d、F2dd)またはFdddのいずれかの可能性が考えられた。そして、結晶構造モデルを得ることができた空間群はFdd2であり、表8にその解析結果をまとめて示す。
【0191】
【表8】

【0192】
以上の結果から、本発明の蛍光体の出来上がり組成は、仕込み組成に基づくものであることがわかる。
【0193】
[比較例1]
表9に示した仕込み組成となるように蛍光体原料として、SrNを0.55g、AlNを0.24g、Siを1.09g、SiOを0.12g、Euを0.01g用いたこと以外は、実施例1と同様の条件で蛍光体を製造した。
【0194】
【表9】

【0195】
得られた蛍光体のX線回折パターンを図6に示す。この蛍光体のX線回折パターンは、東芝福田らによって報告されたSrSi13Al21相として同定できた。また、得られた蛍光体の405nm励起下における発光特性の測定結果を表10に示す。
また、この蛍光体の405nm励起下における発光スペクトルを図7に示す。発光ピーク波長は500nmで実施例と比較して長波長側にピークが観察された。
【0196】
【表10】

【0197】
[実施例2]
蛍光体原料として、仕込み組成が表11に示す組成比となるように、SrOを0.72g、AlNを0.36g、Siを0.86g、SiOを0.05g、Euを0.012g用いたこと以外は、実施例1と同様の条件で蛍光体を製造した。なお、本実施例においては、Sr源として実施例1のSrCOの代わりにSrOを用いた。
【0198】
【表11】

【0199】
得られた蛍光体のX線回折パターンを図8に示す。この回折パターンはPDFに記載されていない未知のX線回折パターンであった。実施例1において実施された単結晶構造解析結果(前掲の表8に示す)に基づいて、得られた蛍光体の相同定を行い、式[1]で表される化学組成を有する物質であることを同定した。
【0200】
得られた蛍光体を405nm励起したときの発光特性を測定結果を表12に示す。
【0201】
【表12】

【0202】
また、この蛍光体の405nm励起下での発光スペクトルを図9に示す。図9から474nmにピークを有する青色発光を示すことが明らかとなった。
また、この蛍光体を発光のピーク波長474nmでモニターしたときの励起スペクトルを図10に示す。450nmの長波長まで裾を引く励起スペクトルが観察された。
【0203】
[実施例3〜15]
表13に示す蛍光体原料を、表13の仕込み組成になるように表13に示す量で秤量したこと以外は、実施例1と同様の条件で蛍光体を製造した。なお、Sr源としては、SrOを用いた。例えば、実施例3においては、SrOを0.72g、AlNを0.36g、Siを0.86g、SiOを0.05g、Euを0.006g用いた。なお、表13において、Eu濃度は、Srサイトに対するEu濃度を示す。
【0204】
【表13】

【0205】
実施例3,6,10,15で得られた蛍光体のX線回折パターンを図11に示す。実施例3,6,10,15において本発明の蛍光体(式[1]で表される組成を有する物質)が主相として生成していることが確認された。
【0206】
また、得られた蛍光体を405nm励起したときの発光特性の測定結果を表14に示す。
【0207】
【表14】

【0208】
また、実施例3,6,10,15の蛍光体の405nm励起下での発光スペクトルを図12に示す。
【0209】
実施例6におけるEu置換量6atm%のとき、発光強度が最大となった。また、Eu濃度を増加させると発光波長が長波長側へシフトしていくことが観察された。発光ピーク波長は、例えば、実施例3は467nm、実施例6は491nm、実施例10は501nm、実施例15は517nmとなった。
【0210】
[実施例16〜21]
仕込み組成が表15に示す組成比となるように、SrO、BaO、AlN、Si、SiO、Euをそれぞれ秤量したこと以外は、実施例1と同様の条件で蛍光体を製造した。例えば、実施例16ではSrOを0.632g、BaOを0.053g、AlNを0.351g、Siを0.841g、SiOを0.051g、Euを0.072g用いた。
【0211】
【表15】

【0212】
得られた蛍光体のX線回折パターンを図13に示す。このX線回折測定の結果より、Srサイトに対してBa置換量が10atm%以下のとき(即ち、実施例16、及び17のとき)、前記式[1]で示される蛍光体相が観察されることが確認された。実施例18においてBa置換量を25atm%とすると上記蛍光体相とそれ以外の相が入った混合相が観察された。さらに、実施例19から21においてBa置換量を50atm%以上としたとき、上記結晶相Aとは異なる新しい結晶相Bが確認できた。
【0213】
得られた蛍光体を405nm励起したときの発光特性の測定結果を表16に示す。また、405nm励起下での発光スペクトルを図14に示す。
【0214】
【表16】

【0215】
表16、あるいは図14よりBa置換量25atm%では、481nmと651nmに発光ピーク波長が表れ、さらにBa置換量を50atm%以上では、659nmにピークを有する赤色発光を示すことが分かった。
【0216】
[実施例22〜25]
蛍光体原料として、表17に示す仕込み組成比となるように、SrO、CaO、AlN、Si、SiO、Euをそれぞれ秤量したこと以外は、実施例1と同様の条件で蛍光体を製造した。例えば、実施例22において、SrOを0.64g、CaOを0.02g、AlNを0.36g、Siを0.86g、SiOを0.05g、Euを0.07g用いた。
【0217】
【表17】

【0218】
得られた蛍光体のX線回折パターンを図15に示す。X線回折結果によれば、Sr(Srサイト)に対してCa置換量をそれぞれ5atm%以下、及び10atm%以下としたとき(実施例22、23)、結晶相Aの存在が認められた。
【0219】
また、得られた蛍光体を405nm励起したときの発光特性の測定結果を表18に示す。また、405nm励起下での発光スペクトルを図16に示す。
【0220】
【表18】

【0221】
405nm照射下における実施例22、23における発光ピークはほぼ490〜500nmに確認された。
実施例24のCa置換量25atm%では、Kecheleらが報告している非特許文献1に記載のSr3.44Ca1.07Si13.12Al2.8820.144.87相のみが図15より確認され、上記結晶相Aの生成が確認できなかった。つまり、蛍光体としては新しい結晶相(以下、「結晶相C」と称する。)が確認された。図16より、実施例24における発光スペクトルはピーク波長が533nmに観察された。実施例25のCa置換量を50atm%としたときも結晶相Cのみしか粉末X線回折測定で観察されなかったが、発光スペクトル中に黄色発光が観察され、α−サイアロン相の存在が確認された。
【符号の説明】
【0222】
1 蛍光体含有部(第2の発光体)
2 励起光源(第1の発光体)(LD)
3 基板
4 発光装置
5 マウントリード
6 インナーリード
7 励起光源(第1の発光体)
8 蛍光体含有部
9 導電性ワイヤ
10 モールド部材
11 面発光照明装置
12 保持ケース
13 発光装置
14 拡散板
22 励起光源(第1の発光体)
23 蛍光体含有部(第2の発光体)
24 フレーム
25 導伝性ワイヤ
26,27 電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式[1]で表される組成を有することを特徴とする、蛍光体。
n(1−y)Alnx+zSi16−(nx+z)nx+z20+n−(nx+z):M ・・・[1]
(但し、前記式[1]において、MはSr、Ba、Ca、Mg及びZnからなる群より選ばれる少なくとも1種類の二価金属元素を示し、MはCr、Mn、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、及びYbからなる群より選ばれる少なくとも1種類の付活元素を示す。
また、x、y、z、及びnは、それぞれ以下の範囲の数値を示す。
0≦x≦1
0<y≦1
0≦z≦13
3.6≦n≦4.4 )
【請求項2】
超構造を有することを特徴する、請求項1に記載の蛍光体。
【請求項3】
以下に定義される結晶相Aを含むことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の蛍光体。
CuKαのX線源を用いたX線回折装置において、回折角(2θ)27°〜29°の範囲(R0)に回折ピークが観察される結晶相であって、当該回折ピーク(P0)を基準回折ピークとし、P0のブラック角(θ0)より導かれる5つの回折ピークを低角度から順にそれぞれP1、P2、P3、P4、及びP5とし、これらの回折ピークの回折角度範囲を、R1、R2、R3、R4、及びR5としたときに、R1、R2、R3、R4、及びR5がそれぞれ、
R1=R1s−R1e
R2=R2s−R2e
R3=R3s−R3e
R4=R4s−R4e
R5=R5s−R5e
の角度範囲を示すものであり、R1、R2、R3、R4、及びR5のすべての範囲に回折ピークが少なくとも1本存在し、
且つ、P1、P2、P3、P4、及びP5のうち、回折ピーク高さが最も高い回折ピークの高さに対して、P0の強度が回折ピーク高さ比で20%以上の強度を有するものであり、
P1、P2、P3、P4、及びP5のうち、回折ピーク高さが最も高い回折ピークの高さに対して、それ以外のP1、P2、P3、P4、及びP5のうち少なくとも1以上のピーク強度が回折ピーク高さ比で5%以上である結晶相。
ここで、角度範囲R0、R1、R2、R3、R4、及びR5のそれぞれの角度範囲内に回折ピークが2本以上存在する場合は、これらのうち最もピーク強度の高いピークをそれぞれP0、P1、P2、P3、P4及びP5とする。
また、R1s、R2s、R3s、R4s、及びR5sは、それぞれR1、R2、R3、R4、及びR5の開始角度を示し、R1e、R2e、R3e、R4e、及びR5eは、それぞれR1、R2、R3、R4及びR5の終了角度を示すものであり、具体的には、以下の角度を示す。
R1s: 2×arcsin{sin(θ0)/(0.943×1.015)}
R1e: 2×arcsin{sin(θ0)/(0.943×0.985)}
R2s: 2×arcsin{sin(θ0)/(0.912×1.015)}
R2e: 2×arcsin{sin(θ0)/(0.912×0.985)}
R3s: 2×arcsin{sin(θ0)/(0.869×1.015)}
R3e: 2×arcsin{sin(θ0)/(0.869×0.985)}
R4s: 2×arcsin{sin(θ0)/(0.834×1.015)}
R4e: 2×arcsin{sin(θ0)/(0.834×0.985)}
R5s: 2×arcsin{sin(θ0)/(0.731×1.015)}
R5e: 2×arcsin{sin(θ0)/(0.731×0.985)}
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の蛍光体と、液体媒体とを含有することを特徴とする、蛍光体含有組成物。
【請求項5】
第1の発光体と、該第1の発光体からの光の照射によって可視光を発する第2の発光体とを備え、
該第2の発光体が、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の蛍光体の1種以上を、第1の蛍光体として含有することを特徴とする、発光装置。
【請求項6】
請求項5に記載の発光装置を光源として備えることを特徴とする、画像表示装置。
【請求項7】
請求項5に記載の発光装置を光源として備えることを特徴とする、照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−256340(P2011−256340A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133970(P2010−133970)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】