説明

蛍光体デバイス、照明装置及びプロジェクタ装置

【課題】発光体から発光光を発光させるために適した構造を有し、発光体から発光された発光光を効率高く出射すること。
【解決手段】蛍光体デバイスは、少なくとも蛍光体を含有して錐体状に形成され、かつ前記錐体状の斜面を交差して互いに対向するそれぞれ面積の異なる第1と第2の面を形成し、前記第1と前記第2の面とのうち前記面積の小さい前記第1の面と前記斜面とに反射層を形成し、前記面積の大きい前記第2の面に反射防止層を形成し、前記第2の面を励起光の入射口とすると共に前記蛍光体から発光された発光光の出射口とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体に励起光を照射して発光された発光光を出射させる蛍光体デバイス、この蛍光体デバイスを用いて各色の照明光を出力する照明装置、及びこの照明装置から出力される照明光を用いてカラー画像として投影するプロジェクタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光源装置には、光源から出力された励起光を照射することにより当該励起光の波長と異なる波長の光を発光する発光体を用いたものがある。この光源装置は、例えば照明装置や画像表示装置等の種々の光源として利用されている。
このような光源装置は、一般的に光源として例えば半導体光源として発光ダイオード(LED)、レーザダイオード(LD)が多く用いられている。蛍光体は、例えば透明なシリコーン又はエポキシ樹脂等を樹脂性バインダとし、この樹脂性バインダ中に複数散在させることにより発光層を形成している。
【0003】
この樹脂性バインダは、半導体光源からの励起光によって劣化、或いは特に励起光の強度が強い場合にダメージが加わる。又、蛍光体を散在するシリコーン又はエポキシ樹脂等の樹脂は、熱伝導率が低いので、蛍光体の温度上昇が起こり、この温度上昇によって蛍光体から発光される発光波長にシフトが生たり或いは発光強度が低下する温度消光等の現象が発生する。このため、光源装置としての輝度が低下してしまう。
【0004】
このような樹脂性バインダの例えば透明なシリコーン又はエポキシ樹脂に代わる部材として例えば特許文献1は、透光性の無機材料、例えばガラスを用いることを開示し、特許文献2、3は、それぞれ熱伝導の高いセラミクスを用いることを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−258308号公報
【特許文献2】特開2006−282447号公報
【特許文献3】特開2010−024278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記透光性のセラミクスを用いたバインダ(透光性セラミクスバインダ)を用いて形成した蛍光体の発光層は、先の樹脂性バインダを用いて形成した蛍光体の発光層の置き換えで使用されることが多い。このため、透光性セラミクスバインダは、発光体から発光光を発光させる光源装置として適した構造になっていない。
【0007】
本発明の目的は、発光体から発光光を発光させるために適した構造を有し、発光体から発光された発光光を効率高く出射できる蛍光体デバイス、照明装置及びプロジェクタ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の主要な局面に係る蛍光体デバイスは、少なくとも蛍光体を含有して錐体状に形成され、かつ前記錐体状の斜面を交差して互いに対向するそれぞれ面積の異なる第1と第2の面を形成し、前記第1と前記第2の面とのうち前記面積の小さい前記第1の面と前記斜面とに反射層を形成し、前記面積の大きい前記第2の面に反射防止層を形成し、前記第2の面を励起光の入射口とすると共に前記蛍光体から発光された発光光の出射口とする。
【0009】
本発明の主要な局面に係る照明装置は、請求項1乃至9のうちいずれか1項に記載の蛍光体デバイスと、励起光を出力する励起光源と、前記励起光源から出力された前記励起光を前記蛍光体デバイスに照射する照射光学系と、前記蛍光体デバイスから発光された前記発光光を照明光として取り出す発光光取出光学系とを具備する。
【0010】
本発明の主要な局面に係るプロジェクタ装置は、上記照明装置と、前記照明装置から出力された前記照明光を含む各色の光をカラー画像として投影する投影光学系とを有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、発光体から発光光を発光させるために適した構造を有し、発光体から発光された発光光を効率高く出射できる蛍光体デバイス、照明装置及びプロジェクタ装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る蛍光体デバイスを示す構成図。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係る蛍光体デバイスを用いた照明装置を示す構成図。
【図3】本発明の第3の実施の形態に係る2つの蛍光体デバイスを用いた照明装置を示す構成図。
【図4】本発明に係る蛍光体デバイスの先行技術を示す構成図。
【図5】同先行技術における励起スペクトルの長波長側の波長と発光体の発光スペクトルの短波長側の波長との一部重なり合いを示す図。
【図6】同先行技術における発光の自己吸収という現象を説明するための模式図。
【図7】本発明の第4の実施の形態に係る複数の蛍光体デバイスを用いた照明装置を示す構成図。
【図8】同装置における複数の蛍光体デバイスを示す構成図。
【図9】本発明の第5の実施の形態に係る照明装置を用いたプロジェクタ装置を示す構成図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の第1の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1(a)(b)は蛍光体デバイスの構造図を示し、同図(a)は外観図、同図(b)は断面構造図を示す。この蛍光体デバイス1は、例えばAl203等の透光性無機材料(以下、無機バインダと称する)2と、YAG:Ce等の複数の蛍光体3とを焼結して形成されている。複数の蛍光体3は、無機バインダ2中に例えば一様な間隔で散在している。これら蛍光体3は、例えば青色(波長455〜492nm内の波長値)の励起光Eの照射により緑色(波長492〜577nm内の波長値)の発光光を発光する。
【0014】
この蛍光体デバイス1は、無機バインダ2と各蛍光体3とを焼結して例えば四角錐台形状等の錐体状に形成されている。なお、蛍光体デバイス1は、錐体状として四角錐台形状に限らず、六角錐体状、四角錐台形状又は円錐状でもよい。
具体的に蛍光体デバイス1は、錐体状を形成するための4つの側面4−1〜4−4と、互いに平行に対向する第1と第2の面4−5、4−6とから成る。
4つの側面4−1〜4−4は、それぞれ四角錐の形状を形成するための斜面を形成する。これら側面4−1〜4−4の傾斜角θ、例えば側面4−1と第1の面4−5との成す角度θは、図1(b)に示すように例えば45°に形成されている。他の各側面4−2〜4−4と第1の面4−5との成す各傾斜角θも例えば45°に形成されている。
【0015】
第1の面4−5と第2の面4−6とは、それぞれ錐体状の斜面である各側面4−1〜4−4と交差するように設けられている。このうち第1の面4−5は、面積S1を有する。第2の面4−6は、面積S2を有する。第1の面4−5の面積S1は、第2の面4−6の面積S2よりも小さく形成されている。
【0016】
第1の面4−5及び各側面4−1〜4−4の全面上には、反射層5が成膜されている。この反射層5は、例えば銀、アルミニウム等の金属反射膜、又は金属酸化物や弗化物を積層して成る多層光学反射膜により形成されている。この反射層5は、例えば波長455nm〜577nmの可視領域の波長、すなわち青色の波長領域(455nm〜492nm)の光及び緑色の波長領域(492nm〜577nm)の光を反射する。これにより、第1の面4−5及び各側面4−1〜4−4は、反射層5の形成により可視光領域の波長を有する蛍光光、すなわち各蛍光体3により発光した発光光を反射する反射面となる。以下、第1の面4−5を平面反射面4−5と称し、各側面4−1〜4−4を斜面反射面4−1〜4−4と称する。
【0017】
第2の面4−6は、当該蛍光体デバイス1の外部からの励起光Eを入射すると共に、各蛍光体3により発光した発光光を当該蛍光体デバイス1の外部に出射する。この第2の面4−6は、以下、入射・出射面4−6と称する。この入射・出射面4−6上には、薄膜の反射防止膜6が形成されている。この反射防止膜6は、例えば波長400nm〜700nmの可視領域以外の波長の光の反射を防止する。この反射防止膜6は、例えば金属酸化物、弗化物等から成る。これら金属酸化物、弗化物の代表的なものには、例えばTiO2、MgF2、SiO2、Al2O3などがある。この反射防止膜6は、例えば可視光線の波長よりも小さい波長のピッチの微細な凹凸形状の反射防止構造に形成してもよい。この反射防止膜6は、例えば、蛍光体デバイス1を製造するときの焼結時に型から転写して形成したり、エッチングにより形成される。
【0018】
このような蛍光体デバイス1であれば、例えば青色(波長455〜492nm内の波長値)の励起光Eが入射・出射面4−6から蛍光体デバイス1内に入射すると、この励起光Eは、無機バインダ2中に散在している複数の蛍光体3に照射される。これら蛍光体3は、それぞれ励起光Eの照射により励起されて任意の波長分布を持って発光する。例えば各蛍光体3は、例えば緑色(波長492〜577nm内の波長値)の発光光を発光する。これら蛍光体3は、それぞれ四方に均等な光量で発光するので、各蛍光体3から発光される各発光光は、それぞれ無機バインダ2中の全方向に放射される。
【0019】
このうち各蛍光体3から入射・出射面4−6に向かった各発光光は、当該入射・出射面4−6を透過して蛍光体デバイス1の外部に向けて出射する。
各蛍光体3から平面反射面4−5に向かって放射された各発光光は、当該平面反射面4−5に形成されている反射層5で反射して入射・出射面4−6に向かい、この入射・出射面4−6を透過して蛍光体デバイス1の外部に向けて出射する。
各蛍光体3から各斜面反射面4−1〜4−4に向かって放射された各発光光は、それぞれ各斜面反射面4−1〜4−4に形成されている反射層5で反射して入射・出射面4−6に向かう。
又、各蛍光体3から放射された各発光光の中には、平面反射面4−5に形成されている反射層5で反射し、続いて斜面反射面4−1〜4−4に形成されている反射層5で反射して入射・出射面4−6に向かい、この入射・出射面4−6を透過して蛍光体デバイス1の外部に向けて出射する発光光もある。
これら斜面反射面4−1〜4−4は、それぞれ四角錐の各側面で例えば45°の斜面に形成されているので、これら斜面反射面4−1〜4−4で反射した各発光光は、それぞれ入射・出射面4−6に効率よく導かれ、入射・出射面4−6を透過して蛍光体デバイス1の外部に向けて出射する。
【0020】
このように上記第1の実施の形態によれば、複数の蛍光体3が散在する無機バインダ2を四角錐台形状に形成し、この四角錐台形状に4つの斜面反射面4−1〜4−4と、互いに平行な平面反射面4−5と入射・出射面4−6とを設け、これら斜面反射面4−1〜4−4と平面反射面4−5とに反射層5を形成したので、各蛍光体3から全方向に発光された発光光は、直接入射・出射面4−6から蛍光体デバイス1の外部に向けて出射されたり、平面反射面4−5や各斜面反射面4−1〜4−4に形成されている反射層5でそれぞれ反射してから入射・出射面4−6を通って蛍光体デバイス1の外部に向けて出射されるものとなり、各蛍光体3から発光された発光光を効率良く蛍光体デバイス1の外部に出射できる。
蛍光体デバイス1は、錐体状として四角錐台形状に限らず、六角錐体状、四角錐台形状又は円錐状であっても、上記第1の実施の形態と同様の効果を奏することが出来る。
【0021】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について図面を参照して説明する。
図2は蛍光体デバイス1を用いた照明装置10の構成図を示す。なお、図1(a)(b)と同一部分には同一符号を付してその詳しい説明は省略する。
励起光源としての半導体レーザ11が設けられている。この半導体レーザ11は、励起光Eとして例えば青色の波長領域(455〜492nm)内の波長値の励起レーザ光(以下、励起レーザ光Eと称する)を出力する。
【0022】
この半導体レーザ11から出力される励起レーザ光Eの光路上には、コリメータレンズ12と、発光光取出光学系としてのダイクロイックミラー13と、照射光学系としての集光光学系14とが設けられている。
コリメータレンズ12は、半導体レーザ11から出力される励起レーザ光Eをコリメートする。
集光光学系14は、半導体レーザ11から出力された励起レーザ光Eを蛍光体デバイス12に向けて集光して照射する。
【0023】
ダイクロイックミラー13は、コリメータレンズ12によりコリメートされた励起レーザ光Eを透過すると共に、蛍光体デバイス1で発光して当該蛍光体デバイス1の外部に出射され、集光光学系14を通って入射する発光光Hを反射して照明光として取り出す。すなわち、ダイクロイックミラー13は、青色の波長領域(455〜492nm)内の波長値の励起レーザ光Eを透過すると共に、蛍光体デバイス1で発光した緑色の波長領域(492〜577nm)内の波長値の発光光を反射する。
【0024】
このような照明装置であれば、半導体レーザ11から青色の波長値の励起レーザ光Eが出力されると、この励起レーザ光Eは、コリメータレンズ12によりコリメートされてダイクロイックミラー13に入射する。この励起レーザ光Eは、ダイクロイックミラー13を透過し、集光光学系14により集光された蛍光体デバイス1に照射される。
【0025】
この蛍光体デバイス1では、上記同様に、励起光Eが入射・出射面4−6から蛍光体デバイス1内に入射すると、無機バインダ2中に散在している複数の蛍光体3は、それぞれ例えば緑色の波長値の発光光を発光する。これら発光光は、直接入射・出射面4−6から蛍光体デバイス1の外部に向けて出射されたり、平面反射面4−5や各斜面反射面4−1〜4−4に形成されている反射層5でそれぞれ反射してから入射・出射面4−6を通ってされる。
蛍光体デバイス1から出射された緑色の波長値の発光光は、集光光学系14を通ってダイクロイックミラー13に入射し、このダイクロイックミラー13で反射して照明光として取り出す。
【0026】
このように上記第2の実施の形態によれば、蛍光体デバイス1を備え、半導体レーザ11から出力された青色の波長値の励起レーザ光Eをコリメータレンズ12、ダイクロイックミラー13、集光光学系14を通して蛍光体デバイス1に照射し、この蛍光体デバイス1から出射された緑色の波長値の発光光Hを集光光学系14を通してダイクロイックミラー13により取り出すので、蛍光体デバイス1から効率良く取り出された各蛍光体3から例えば緑色の波長値の発光光を照明光として出力できる。
【0027】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について図面を参照して説明する。
図3は蛍光体デバイス1を用いた照明装置20の構成図を示す。なお、図1(a)(b)及び図2と同一部分には同一符号を付してその詳しい説明は省略する。
基板21上には、2つの蛍光体デバイス1、1が一体的に配置されている固定されている。これら蛍光体デバイス1、1は、第2の面である各入射・出射面4−6を同一平面上に配置し、かつ一体的に形成されている。これら蛍光体デバイス1、1は、励起レーザ光Eの照射範囲内に配置されている。
【0028】
このような照明装置であれば、半導体レーザ11から青色の波長値の励起レーザ光Eが出力されると、この励起レーザ光Eは、コリメータレンズ12によりコリメートされてダイクロイックミラー13に入射する。この励起レーザ光Eは、ダイクロイックミラー13を透過し、集光光学系14により集光された2つの蛍光体デバイス1、1に照射される。
【0029】
これら蛍光体デバイス1、1では、それぞれ上記同様に、励起レーザ光Eが入射・出射面4−6から各蛍光体デバイス1、1内に入射すると、各蛍光体デバイス1、1の各無機バインダ2中に散在している複数の蛍光体3は、それぞれ例えば緑色の波長値の発光光を発光する。これら発光光は、それぞれ直接入射・出射面4−6から蛍光体デバイス1、1の外部に向けて出射されたり、各平面反射面4−5や各斜面反射面4−1〜4−4でそれぞれ反射してから各入射・出射面4−6を通って効率高く出射される。
各蛍光体デバイス1、1から出射された緑色の波長値の各発光光は、集光光学系14を通ってダイクロイックミラー13に入射し、このダイクロイックミラー13で反射して照明光として取り出す。
【0030】
このように上記第3の実施の形態によれば、2つの蛍光体デバイス1、1を一体的に配置し、かつ励起レーザ光Eの照射範囲内に配置したので、2つの蛍光体デバイス1、1から効率良く取り出された各蛍光体3からの発光光を照明光として出力でき、かつ2つの蛍光体デバイス1、1から効率良く取り出された各蛍光体3からの発光光を照明光として出力することで、1つの蛍光体デバイス1から取り出された照明光よりも多くの照明光量の照明光を取り出すことができる。
【0031】
ところで、照明装置では、励起光源としての半導体レーザ11は、例えば図4(a)に示すように蛍光体3を含む無機バインダ30の外部に設けたり、同図(b)に示すように無機バインダ30の内部に設けたものがある。なお、同図(a)において無機バインダ30は、基板31上に反射膜32を介して設けられている。又、同図(b)において無機バインダ30は、基板33に形成された傾斜面を有する穴部34内に設けられている。基板33に形成された傾斜面には、反射膜35が形成されている。
このような照明装置において一般的に用いられる蛍光体3は、図5に示すように励起スペクトルS1の長波長側の波長と、発光体3の発光スペクトルS2の短波長側の波長との一部が重なり合っている。すなわち、発光体3は、発光光3aを発光するが、この発光光3aは、図6に示すように無機バインダ30内を伝播して他の発光体3に照射されて当該他の発光体3を励起、すなわち別の賦活原子を励起して蛍光体3の発光強度が低下するという発光の自己吸収という現象が発生するおそれがある。
【0032】
これに対して上記第3の実施の形態においては、2つの蛍光体デバイス1、1の各無機バインダ2中に散在している複数の蛍光体3から発光される例えば緑色の波長値の発光光は、それぞれ直接各入射・出射面4−6から各蛍光体デバイス1、1の外部に向けて出射されたり、各平面反射面4−5や各斜面反射面4−1〜4−4でそれぞれ反射してから各入射・出射面4−6を通って効率高く出射されるので、別の賦活原子を励起して蛍光体3の発光強度が低下するという発光の自己吸収という現象が発生するおそれがない。なお、上記第1、2の実施の形態においても発光の自己吸収という現象が発生するおそれがない。
【0033】
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態について図面を参照して説明する。
上記第3の実施の形態では、基板21上に2つの蛍光体デバイス1を配置しているが、これに限らず、2つ以上の複数の蛍光体デバイス1、1、…、1、例えば図7の外観図に示すように4つの蛍光体デバイス1を格子状(マトリクス状)に配置されている固定してもよい。これら蛍光体デバイス1、1、…、1は、図8に示すように第2の面である各入射・出射面4−6を同一平面上に配置し、かつ一体的に形成されている。これら蛍光体デバイス1、1、…、1は、励起レーザ光Eの照射範囲内に配置されている。
なお、複数の蛍光体デバイス1、1、…、1は、4つに限らず、4つ以上を格子状(マトリクス状)に配置してもよい。又、複数の蛍光体デバイス1、1、…、1は、格子状(マトリクス状)に配置するに限らず、一定の間隔毎に縦横方向に配置してもよいし、同心円状に配置しても良いし、ランダムな位置に配置してもよい。
【0034】
このような照明装置であれば、半導体レーザ11から青色の波長値の励起レーザ光Eが出力されると、この励起レーザ光Eは、コリメータレンズ12によりコリメートされてダイクロイックミラー13に入射する。この励起レーザ光Eは、ダイクロイックミラー13を透過し、集光光学系14により集光された複数の蛍光体デバイス1、1、…、1、例えば4つの蛍光体デバイス1、1、…、1に照射される。
【0035】
これら蛍光体デバイス1、1、…、1では、それぞれ上記同様に、励起レーザ光Eが入射・出射面4−6から各蛍光体デバイス1内に入射すると、各蛍光体デバイス1、1、…、1の各無機バインダ2中に散在している複数の蛍光体3は、それぞれ例えば緑色の波長値の発光光を発光する。これら発光光は、それぞれ直接入射・出射面4−6から蛍光体デバイス1の外部に向けて出射されたり、各平面反射面4−5や各斜面反射面4−1〜4−4に形成されている反射膜5でそれぞれ反射してから各入射・出射面4−6を通って出射される。
各蛍光体デバイス1、1、…、1から出射された緑色の波長値の各発光光は、集光光学系14を通ってダイクロイックミラー13に入射し、このダイクロイックミラー13で反射して照明光として取り出す。
【0036】
このように上記第4の実施の形態によれば、複数、例えば4つの蛍光体デバイス1、1、…、1を一体的に配置し、かつ励起レーザ光Eの照射範囲内に配置したので、複数の蛍光体デバイス1、1、…、1から効率良く取り出された各蛍光体3からの発光光を照明光として出力でき、かつ4つの蛍光体デバイス1、1、…、1から効率良く取り出された各蛍光体3からの発光光を照明光として出力することで、1つの蛍光体デバイス1から取り出された照明光よりも多くの照明光量の照明光を取り出すことができる。
【0037】
[第5の実施の形態]
次に、本発明の第5の実施の形態について図面を参照して説明する。
図9は上記図2に示す照明装置10等を用いたプロジェクタ装置40の構成図を示す。このプロジェクタ装置40は、例えば半導体発光素子を用いたDLP(Digital Light Processing:登録商標)方式を適用している。このプロジェクタ装置40は、CPU41を搭載する。このCPU41には、操作部42と、メインメモリ43と、プログラムメモリ44とが接続されている。又、CPU41には、システムバス45を介して入力部46と、画像変換部47と、投影処理部48と、音声処理部49とが接続されている。このうち投影処理部48には、光源部50と、マイクロミラー素子51とが接続されている。光源部50から出力される照明光の光路上には、ミラー52が配置され、このミラー52の反射光路上にマイクロミラー素子51が配置されている。このマイクロミラー素子51の反射光路上に投影レンズ部53が配置されている。音声処理部49には、スピーカ部54が接続されている。
【0038】
入力部46は、各種規格のアナログ画像信号を入力し、このアナログ画像信号をデジタル化した画像データとしてシステムバス45を通して画像変換部47に送る。
画像変換部47は、スケーラとも称し、入力部46から入力される画像データを投影に適した所定のフォーマットの画像データに統一処理して投影処理部48に送る。この際、画像変換部47は、OSD(On Screen Display)用の各種動作状態を示すシンボル等のデータも必要に応じて画像データに重畳加工し、この加工後の画像データを投影処理部48に送る。
【0039】
投影処理部48は、画像変換部47から送られてきた画像データに応じて所定のフォーマットに従ったフレームレート、例えば60[フレーム/秒」と色成分の分割数、及び表示階調数を乗算した高速な時分割駆動により空間的光変調素子であるマイクロミラー素子51を駆動する。
音声処理部49は、PCM(Pulse-Code Modulation)音源等の音源回路を備え、投影動作時に与えられる音声データをアナログ化し、スピーカ部54を駆動して拡声放音させる、或いは必要によりビープ音等を発生させる。
【0040】
マイクロミラー素子51は、例えばWXGA(Wide eXtended Graphic Array)であり、複数の微小ミラーをアレイ状に配列、例えば横×縦(1250×800画素)で複数の微小ミラーを配列して成るもので、これら微小ミラーの各傾斜角度をそれぞれ高速にオン・オフ動作して画像を表示することで、その反射光により光像を形成する。
光源部50は、赤(R)、緑(G)、青(B)の原色光を含む複数色の照明光を循環的に時分割で順次出射する。この光源部50から順次出射されるRGBの各光は、ミラー52で全反射してマイクロミラー素子51に照射される。このマイクロミラー素子51での反射光で光像が形成され、この形成された光像が投影光学系としての投影レンズ部53を通してカラー画像として投影対象となるスクリーンに投影表示される。
【0041】
この光源部50は、例えば上記図2に示す照明装置10等を用いてなる。この光源部50は、例えば赤(R)の波長領域(622〜777nm)内の波長値のレーザ光を出力する半導体レーザと、青(B)の波長領域(455〜492nm)内の波長値のレーザ光を出力する半導体レーザ11と、この半導体レーザ11から出力されるレーザ光を励起光として用い、緑(G)の波長値の発光光を照明光として出力する上記図2に示す照明装置10とを有し、これら赤(R)、緑(G)、青(B)の照明光を時分割で順次出射する。
なお、この光源部50は、上記図2に示す照明装置10に限らず、上記図3に示す照明装置20や、図7に示す複数の蛍光体デバイス1を用いた照明装置を用いてもよい。
【0042】
CPU41は、操作部42からの操作指示を受け、又、メインメモリ43に対してデータの読み取り・書き込みを行い、かつプログラムメモリ44に記憶されているプログラムを実行する。又、CPU41は、システムバス45を介して入力部46と、画像変換部47と、投影処理部48と、音声処理部49とをそれぞれ制御する。すなわち、CPU41は、メインメモリ43及びプログラムメモリ44を用いて本プロジェクタ装置40内の制御動作を実行する。
メインメモリ43は、例えばSRAMで構成され、CPU41のワークメモリとして機能する。プログラムメモリ44は、電気的に書換可能な不揮発性メモリで構成され、CPU41が実行する動作プログラムや各種定型データ等を記憶する。
【0043】
CPU41は、操作部42からのキー操作信号に応じて各種投影動作を実行する。この操作部42は、本プロジェクタ装置40の本体に設けられるキー操作部と、本プロジェクタ装置40の専用のリモートコントローラからの赤外光を受光する赤外線受光部とを含み、ユーザが本体のキー操作部又はリモートコントローラで操作したキーに基づくキー操作信号をCPU41に直接送る。
【0044】
このような構成であれば、各種規格のアナログ画像信号が入力部46に入力すると、この入力部46は、アナログ画像信号をデジタル化した画像データとしてシステムバス45を通して画像変換部47に送る。
この画像変換部47は、入力部46から入力される画像データを投影に適した所定のフォーマットの画像データに統一処理すると共に、OSD用の各種動作状態を示すシンボル等のデータも必要に応じて画像データに重畳加工し、この加工後の画像データを投影処理部48に送る。
【0045】
この投影処理部48は、画像変換部47から送られてきた画像データに応じて所定のフォーマットに従ったフレームレート、例えば60[フレーム/秒」と色成分の分割数、及び表示階調数を乗算した高速な時分割駆動により空間的光変調素子であるマイクロミラー素子51を駆動する。
このマイクロミラー素子51は、投影処理部48の駆動によって複数の微小ミラーの各傾斜角度をそれぞれ高速にオン・オフ動作して画像を表示することで、その反射光により光像を形成する。
【0046】
一方、光源部50は、例えば上記図2に示す照明装置10から出力される緑(G)の照明光と、半導体レーザ11から出力される青(B)の波長値のレーザ光と、別の半導体レーザから出力される赤(R)の波長値のレーザ光とを循環的に時分割で照明光として順次出射する。この光源部50から順次出射されるRGBの照明光は、ミラー52で全反射してマイクロミラー素子51に照射される。このマイクロミラー素子51での反射光で光像が形成され、この形成された光像が投影光学系としての投影レンズ部53を通してカラー画像として投影対象となるスクリーンに投影表示される。
これと共に音声処理部49は、投影動作時に与えられる音声データをアナログ化し、スピーカ部54を駆動して拡声放音させる、或いは必要によりビープ音等を発生させる。
【0047】
このように上記第5の実施の形態によれば、光源部50として上記図2に示す照明装置10や、上記図3に示す照明装置20、図7に示す複数の蛍光体デバイス1を用いた照明装置を用いてプロジェクタ装置40を構成したので、蛍光体デバイス1から効率良く取り出された各蛍光体3からの発光光を照明光としてカラー画像をスクリーンに投影表示できる。
【0048】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0049】
以下、本発明の出願当初の特徴点について説明する。
請求項1に対応する発明は、少なくとも蛍光体を含有して錐体状に形成され、かつ前記錐体状の斜面を交差して互いに対向するそれぞれ面積の異なる第1と第2の面を形成し、前記第1と前記第2の面とのうち前記面積の小さい前記第1の面と前記斜面とに反射層を形成し、前記面積の大きい前記第2の面に反射防止層を形成し、前記第2の面を励起光の入射口とすると共に前記蛍光体から発光された発光光の出射口とすることを特徴とする蛍光体デバイスである。
請求項2に対応する発明は、請求項1に対応する蛍光体デバイスにおいて、前記錐体状として四角錐体状、六角錐体状、四角錐台形状又は円錐状を含むことを特徴とする。
【0050】
請求項3に対応する発明は、請求項1又は2に対応する蛍光体デバイスにおいて、前記蛍光体を含有する無機材料を焼結して前記錐体状に形成することを特徴とする。
【0051】
請求項4に対応する発明は、請求項1乃至3のうちいずれか1項に対応する蛍光体デバイスにおいて、前記反射層は、可視光領域の波長を有する前記蛍光体から発光された前記発光光を反射し、前記反射防止層は、前記発光光を透過することを特徴とする。
【0052】
請求項5に対応する発明は、請求項1乃至4のうちいずれか1項に対応する蛍光体デバイスにおいて、前記反射防止層は、反射防止膜により形成、又は可視光領域の波長の長さよりも小さい長さのピッチを有する凹凸形状に形成されていることを特徴とする。
【0053】
請求項6に対応する発明は、請求項1乃至5のうちいずれか1項に記載の蛍光体デバイスを複数配置してなることを特徴とする。
請求項7に対応する発明は、請求項6に対応する蛍光体デバイスにおいて、前記複数の蛍光体デバイスは、格子状に配置されていることを特徴とする。
【0054】
請求項8に対応する発明は、請求項6又は7に対応する蛍光体デバイスにおいて、前記複数の蛍光体デバイスは、前記各第2の面を同一平面上に配置して一体的に形成されていることを特徴とする。
【0055】
請求項9に対応する発明は、請求項6、7又は8に対応する蛍光体デバイスにおいて、前記複数の蛍光体デバイスは、前記励起光の照射範囲内に配置されることを特徴とする。
【0056】
請求項10に対応する発明は、請求項1乃至9のうちいずれか1項に記載の蛍光体デバイスと、励起光を出力する励起光源と、前記励起光源から出力された前記励起光を前記蛍光体デバイスに照射する照射光学系と、前記蛍光体デバイスから発光された前記発光光を照明光として取り出す発光光取出光学系とを具備することを特徴とする照明装置である。
請求項11に対応する発明は、請求項10に対応する照明装置において、前記発光光取出光学系は、前記励起光を透過し、かつ前記蛍光体デバイスから発光された前記発光光を反射するダイクロイックミラーを有することを特徴とする。
【0057】
請求項12に対応する発明は、請求項10、11のうちいずれか1項に対応する照明装置と、前記照明装置から出力された前記照明光を含む各色の光をカラー画像として投影する投影光学系とを有することを特徴とするプロジェクタ装置である。
【符号の説明】
【0058】
1:蛍光体デバイス、2:透光性無機材料(無機バインダ)、3:蛍光体、4−1〜4−4:側面、4−5:第1の面(平面反射面)、4−6:第2の面(入射・出射面)、5:反射層、6:反射防止膜、11:半導体レーザ、12:コリメータレンズ、13:ダイクロイックミラー、14:集光光学系、20:照明装置、21:基板、40:プロジェクタ装置、41:CPU、42:操作部、43:メインメモリ、44:プログラムメモリ、45:システムバス、46:入力部、47:画像変換部、48:投影処理部、49:音声処理部、50:光源部、51:マイクロミラー素子、52:ミラー、53:投影レンズ部、54:スピーカ部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも蛍光体を含有して錐体状に形成され、かつ前記錐体状の斜面を交差して互いに対向するそれぞれ面積の異なる第1と第2の面を形成し、前記第1と前記第2の面とのうち前記面積の小さい前記第1の面と前記斜面とに反射層を形成し、前記面積の大きい前記第2の面に反射防止層を形成し、前記第2の面を励起光の入射口とすると共に前記蛍光体から発光された発光光の出射口とすることを特徴とする蛍光体デバイス。
【請求項2】
前記錐体状として四角錐体状、六角錐体状、四角錐台形状又は円錐状を含むことを特徴とする請求項1記載の蛍光体デバイス。
【請求項3】
前記蛍光体を含有する無機材料を焼結して前記錐体状に形成することを特徴とする請求項1又は2記載の蛍光体デバイス。
【請求項4】
前記反射層は、可視光領域の波長を有する前記蛍光体から発光された前記発光光を反射し、
前記反射防止層は、前記発光光を透過することを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載の蛍光体デバイス。
【請求項5】
前記反射防止層は、反射防止膜により形成、又は可視光領域の波長の長さよりも小さい長さのピッチを有する凹凸形状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか1項に記載の蛍光体デバイス。
【請求項6】
請求項1乃至5のうちいずれか1項に記載の蛍光体デバイスを複数配置してなることを特徴とする蛍光体デバイス。
【請求項7】
前記複数の蛍光体デバイスは、格子状に配置されていることを特徴とする請求項6記載の蛍光体デバイス。
【請求項8】
前記複数の蛍光体デバイスは、前記各第2の面を同一平面上に配置して一体的に形成されていることを特徴とする請求項6又は7記載の蛍光体デバイス。
【請求項9】
前記複数の蛍光体デバイスは、前記励起光の照射範囲内に配置されることを特徴とする請求項6、7又は8記載の蛍光体デバイス。
【請求項10】
請求項1乃至9のうちいずれか1項に記載の蛍光体デバイスと、
励起光を出力する励起光源と、
前記励起光源から出力された前記励起光を前記蛍光体デバイスに照射する照射光学系と、
前記蛍光体デバイスから発光された前記発光光を照明光として取り出す発光光取出光学系と、
を具備することを特徴とする照明装置。
【請求項11】
前記発光光取出光学系は、前記励起光を透過し、かつ前記蛍光体デバイスから発光された前記発光光を反射するダイクロイックミラーを有することを特徴とする請求項10記載の照明装置。
【請求項12】
請求項10、11のうちいずれか1項に記載の照明装置と、
前記照明装置から出力された前記照明光を含む各色の光をカラー画像として投影する投影光学系と、
を有することを特徴とするプロジェクタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−73217(P2013−73217A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214620(P2011−214620)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】