説明

蛍光体混合物と、それを用いた発光装置およびプラズマディスプレイパネル

【課題】PDPの蛍光体層などに適用可能であって、PDPに適用された場合に短残光時間と、良好な色度および波長変換効率とを実現できる蛍光体を提供する。
【解決手段】本発明の蛍光体混合物は、一般式(1−x−y)Gd23・xY23・yEu23(0≦x≦0.5、0.01≦y≦0.1)で表される蛍光体Aと、一般式p((1−q−r)Gd23・q(Y23)・rEu23)・(1−s)P25・sV25(1.001≦p≦1.1、0≦q≦0.97、0.03≦r≦0.1、q+r≦1、0≦s≦0.95)で表される蛍光体Bとの混合物である。この混合物全体に対する前記蛍光体Aのモル比aは、0.3≦a≦0.9を満たすことが望ましい。この蛍光体混合物は、PDP10の赤色蛍光体層31に適用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体混合物と、それを用いた発光装置、特にプラズマディスプレイパネル(以下、「PDP」という場合がある。)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
PDP用赤色蛍光体には、真空紫外光励起による輝度が高い(Y,Gd)BO3:Euが広く使用されている。(Y,Gd)BO3:Euは、パネル製造プロセスによる劣化が少なく、また、適切な光学フィルタ設計により良好な色度を示す。しかし、残光時間が10ms程度と比較的長く、この長残光時間が画面サイズの増大により問題となってきている。
【0003】
一方、3波長混合蛍光灯などに広く使用されているY23:Euは、適切なEu量を選択することによって5ms以下の短残光時間を示すことが確認されている。しかし、Y23:Euには、パネル製造プロセスによる劣化と画像表示のための駆動による劣化があることが知られており、PDPに使用することはできなかった。
【0004】
PDP用赤色蛍光体としては、例えば特許文献1では、(Y,Gd)23:Euを使用する方法が開示されている。また、特許文献2では,(Y,Gd)(P,V)O4:Euを使用する方法が提示されている。
【特許文献1】特開平10−195432号公報
【特許文献2】特開平11−73138号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、発明者らの詳細な検討では、特許文献1に開示された蛍光体は、残光時間は短いものの、パネル製造プロセスおよび画像表示のための駆動において劣化することが分かった。また、色度および真空紫外線から可視光への波長変換効率も十分ではないため、光学フィルタを如何に改善しても、現行PDPと等しい消費電力で同等の輝度、色度およびコントラストを満足することが困難であった。
【0006】
特許文献2に開示された蛍光体も、残光時間は短いものの、パネル製造プロセスおよび画像表示のための駆動において劣化することが分かった。また、色度は改善されているものの、波長変換効率が十分ではないため、光学フィルタを如何に改善しても、現行PDPと等しい消費電力で同等の輝度、色度およびコントラストを満足することが困難であった。
【0007】
以上の理由から、特許文献1および特許文献2に開示されている蛍光体は、PDP用途として十分ではなかった。また、単にこれらの蛍光体を混合しても、劣化の抑制と十分な発光特性とを実現でき、且つ、PDPの蛍光体層へ適用可能な蛍光体を得ることは困難であった。発明者らの検討によれば、例えばY23:Euと(Y,Gd)(P,V)O4:Euとを混合すると、蛍光体ペーストがゲル化しやすく、パネルへの塗布が困難であることが分かった。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑み、例えばPDPの蛍光体層に適用可能であって、PDPに適用された場合に、短残光時間と、良好な色度および波長変換効率とを実現できる蛍光体を提供することを目的とする。また、本発明は、そのような蛍光体を用いた発光装置およびPDPを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の蛍光体混合物は、一般式(1−x−y)Gd23・xY23・yEu23(0≦x≦0.5、0.01≦y≦0.1)で表される蛍光体Aと、一般式p((1−q−r)Gd23・qY23・rEu23)・(1−s)P25・sV25(1.001≦p≦1.1、0≦q≦0.97、0.03≦r≦0.1、q+r≦1、0≦s≦0.95)で表される蛍光体Bとの混合物である。
【0010】
本発明の発光装置は、蛍光体層を備えており、前記蛍光体層が上記本発明の蛍光体混合物を含有する。このような発光装置としては、例えば、蛍光ランプ、蛍光パネル、なかでも、無水銀蛍光ランプ、無水銀蛍光パネル、液晶ディスプレイ用無水銀バックライトなどが挙げられる。
【0011】
本発明のプラズマディスプレイパネルは、前面板と、前記前面板と対向配置された背面板と、前記前面板と前記背面板との間隔を規定する隔壁と、前記背面板または前記前面板に設けられた一対の電極と、少なくとも前記電極間に存在する、キセノンを含有する放電ガスと、前記キセノンによって発生した真空紫外線によって可視光を発する蛍光体層と、を備えており、前記蛍光体層に含まれる赤色蛍光体層が上記本発明の蛍光体混合物を含有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の蛍光体混合物は、例えばPDPに適用した場合、残光時間が5ms程度と十分短く、かつ、色度が改善されており、波長変換効率も高いので、適切な光学フィルタを用いることによって、現行PDPと等しい消費電力で同等の輝度、色度およびコントラストを実現できる。また、パネル製造プロセスおよび画像表示のための駆動による劣化が無視できるほど小さいため、PDPへ好適に用いることができる。さらに、ペースト化した際の扱いやすさについても特に問題がないため、蛍光体層を形成する際に問題が生じにくい。
【0013】
本発明の発光装置およびPDPは、上記のように優れた発光特性を有し、かつ劣化しにくい蛍光体混合物を用いて形成されているので、発光特性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の説明は本発明の一例であり、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0015】
<蛍光体混合物>
本発明の蛍光体混合物は、一般式(1−x−y)Gd23・xY23・yEu23(0≦x≦0.5、0.01≦y≦0.1)で表される蛍光体Aと、一般式p((1−q−r)Gd23・qY23・rEu23)・(1−s)P25・sV25(1.001≦p≦1.1、0≦q≦0.97、0.03≦r≦0.1、q+r≦1、0≦s≦0.95)で表される蛍光体Bとの混合物である。この混合物全体に対する蛍光体Aのモル比aは、0.3≦a≦0.9を満たすことが好ましい。すなわち、蛍光体混合物における蛍光体Aのモル含有率は、30mol%以上90mol%以下であることが好ましい。
【0016】
蛍光体Aの一般式(1−x−y)Gd23・xY23・yEu23において、xが0.5を超えると、輝度維持率効果が十分でなくなり好ましくない。また、yが0.01未満あるいは0.1を超えると、初期輝度が不十分となり好ましくない。発明者らの検討によれば、0≦x≦0.1および/または0.03≦y≦0.06であると、パネル製造プロセスおよび画像表示のための駆動における劣化がより低減されるので、例えばPDPの赤色蛍光体層に用いる場合には特に好ましい。
【0017】
また、蛍光体Bの一般式p((1−q−r)Gd23・qY23・rEu23)・(1−s)P25・sV25において、pが1.001未満であると、焼成途中で液相が生じやすくなるので好ましくない。また、pが1.1を超えると、初期輝度が顕著に低下するので好ましくない。また、rが0.03未満あるいは0.1を超えると、初期輝度が顕著に低下するので好ましくない。
【0018】
蛍光体混合物における蛍光体Aの含有率(モル比a)によって、発光色度の調節が可能である。例えばPDPの赤色蛍光体層に本発明の蛍光体混合物を適用する場合は、前面フィルタ(光学フィルタ)の設計に合わせてモル比aを0.3≦a≦0.9の範囲内で調整することによって、良好な発光色度を実現できる。
【0019】
また、蛍光体Aおよび蛍光体Bの一般式がx=qおよびy=rを満たす場合、蛍光体Aの製造途中で作製される乾燥粉体を蛍光体Bの原料としてそのまま使用でき、かつ、波長変換効率の向上および低コスト化にもつながるので、特に好ましい。
【0020】
次に、本発明の蛍光体混合物に用いられる蛍光体Aおよび蛍光体Bの製造方法の一例について説明する。なお、蛍光体Aおよび蛍光体Bの製造方法は以下に説明する方法に限定されるものではなく、例えば公知の方法を適用することも可能である。
【0021】
蛍光体Aは、各種蛍光体原料(Gd23、Y23およびEu23)を所定の組成となるように配合することによって製造できる。ガドリニウム原料としては、酸化ガドリニウムや、焼成によって酸化ガドリニウムとなりうる炭酸ガドリニウムおよび硝酸ガドリニウムなどが使用できる。イットリウム原料としては、酸化イットリウムや、焼成によって酸化イットリウムとなりうる炭酸イットリウムおよび硝酸イットリウムなどが使用可能である。ユーロピウム原料としては、酸化ユーロピウムや、焼成によって酸化ユーロピウムとなりうる炭酸ユーロピウムおよび硝酸ユーロピウムなどが使用可能である。所定の組成となるように秤量されたこれらの原料を硝酸などの酸に溶解し、さらにシュウ酸によって共沈させる。沈殿物を濾過および水洗し、さらにスプレイドライなどの方法で乾燥処理を施すことによって混合粉体を得る。この混合粉体を例えば1150〜1300℃で2〜20時間焼成することによって、蛍光体Aが得られる。なお、LiF、MgF2などのフラックスを使用して焼成することもできる。この場合、焼成温度を調整することが必要となる。例えば、LiFを使用する場合には,1300〜1400℃とする。
【0022】
蛍光体Bも、各種蛍光体原料(Gd23、Y23、Eu23、P25およびV25)を所定の組成となるように配合することによって製造できる。ガドリニウム原料、イットリウム原料およびユーロピウム原料については、蛍光体Aの場合と同様の原料が使用可能である。蛍光体Aの場合と同様の方法で、Gd23、Y23およびEu23の混合粉体を作製できる。一方、燐酸アンモニウム((NH42HPO4)などの燐化合物と五酸化バナジウム(V25)などのバナジウム化合物とを所定の組成となるように秤量し、Gd23、Y23およびEu23の混合粉体に湿式混合する。この混合物を、例えば1100〜1400℃で2〜20時間焼成することによって、蛍光体Bが得られる。
【0023】
以上のようにして作製された蛍光体Aおよび蛍光体Bを混合することによって、本実施の形態の蛍光体混合物が得られる。
【0024】
<PDP>
本発明のPDPの一例について説明する。
【0025】
本実施の形態では、交流面放電型PDPを本発明の一例として説明する。図1は、交流面放電型PDP10の主要構造を示す断面斜視図である。なお、ここで示すPDPは、便宜的に、42インチクラスの1024×768画素仕様に合わせたサイズ設定にて図示しているが、他のサイズや仕様に適用してもよいのは勿論である。
【0026】
図1で示すように、このPDP10は、フロントパネル(前面板)20とバックパネル(背面板)26とを有しており、それぞれの主面が対向するようにして配置されている。
【0027】
このフロントパネル20は、前面基板としてのフロントパネルガラス21と、このフロントパネルガラス21の一方の主面(バックパネル26側の主面)に設けられた一対の電極である帯状の表示電極(X電極23、Y電極22)と、この表示電極を覆う厚さ約30μmの前面側誘電体層24と、この前面側誘電体層24の上に設けられた厚さ約1.0μmの保護層25とを含んでいる。
【0028】
上記表示電極は、厚さ0.1μm、幅150μmの帯状の透明電極220,230と、この透明電極上に重ね設けられた厚さ7μm、幅95μmのバスライン221,231とを含んでいる。また、各対の表示電極が、図中に示したx軸方向を長手方向としてy軸方向に複数配置されている。
【0029】
また、各対の表示電極(X電極23、Y電極22)は、それぞれフロントパネルガラス21の幅方向(y軸方向)の端部付近で、パネル駆動回路(図示せず)と電気的に接続されている。なお、Y電極22は一括してパネル駆動回路に接続され、X電極23はそれぞれ独立してパネル駆動回路に接続されている。パネル駆動回路を用いて、Y電極22と特定のX電極23とに給電すると、X電極23とY電極22との間隙(約80μm)に面放電(維持放電)が発生する。X電極23はスキャン電極として作動させることもでき、これにより、後述するアドレス電極28との間で書き込み放電(アドレス放電)を発生させることができる。
【0030】
上記バックパネル26は、背面基板としてのバックパネルガラス27と、複数のアドレス電極28と、背面側誘電体層29と、隔壁30と、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の何れかに対応する蛍光体層31〜33とを含んでいる。蛍光体層31〜33は、隣り合う2つの隔壁30の側壁とその間の背面側誘電体層29とに接して設けられており、また、x軸方向に繰り返して配列されている。
【0031】
蛍光体層(R)(赤色蛍光体層31)は、上述した実施の形態の蛍光体混合物を含んでいる。他方、蛍光体層(B)(青色蛍光体層33)および蛍光体層(G)(緑色蛍光体層32)は一般的な公知の蛍光体を含んでいる。例えば、青色蛍光体としてはBaMgAl1017:Eu、(Ba,Sr)MgAl1017:Eu、CaMgSi27:Eu、SrMgSi28:Euおよび(Ba,Sr)MgSi28:Euが、緑色蛍光体としてはZn2SiO4:Mn、YBO3:Tbおよび(Y,Gd)BO3:Tbが挙げられる。
【0032】
各蛍光体層は、蛍光体粒子を溶解させた蛍光体インクを、例えばメニスカス法やラインジェット法などの公知の塗布方法により隔壁30および背面側誘電体層29に塗布し、これを乾燥や焼成(例えば500℃で10分)することにより形成できる。上記蛍光体インクは、例えば体積平均粒径2μmの青色蛍光体30質量%と、質量平均分子量約20万のエチルセルロース4.5質量%と、ブチルカルビトールアセテート65.5質量%とを混合して作製することができる。また、その粘度を、最終的に2000〜6000cps程度となるように調整すると、隔壁30に対するインクの付着力を高めることができて好ましい。
【0033】
アドレス電極28はバックパネルガラス27の一方の主面(フロントパネル20側の主面)に設けられている。また、背面側誘電体層29はアドレス電極28を覆うようにして設けられている。また、隔壁30は、高さが約150μm、幅が約40μmであり、y軸方向を長手方向とし、隣接するアドレス電極28のピッチに合わせて、背面側誘電体層29の上に設けられている。
【0034】
上記アドレス電極28は、それぞれが厚さ5μm、幅60μmであり、y軸方向を長手方向としてx軸方向に複数配置されている。また、このアドレス電極28は、ピッチが一定間隔(約150μm)となるように配置されている。なお、複数のアドレス電極28は、それぞれ独立して上記パネル駆動回路に接続されている。それぞれのアドレス電極に個別に給電することによって、特定のアドレス電極28と特定のX電極23との間でアドレス放電させることができる。
【0035】
フロントパネル20とバックパネル26とは、アドレス電極28と表示電極とが直交するようして配置されている。封着部材としてのフリットガラス封着部(図示せず)により両パネル20、26の外周縁部が封着されている。
【0036】
フリットガラス封着部によって密封された、フロントパネル20とバックパネル26との間の密閉空間には、He、Xe、Neなどの希ガス成分からなる放電ガスが所定の圧力(通常6.7×104〜1.0×105Pa程度)で封入されている。
【0037】
なお、隣接する2つの隔壁30の間に対応する空間が、放電空間34となる。また、一対の表示電極と1本のアドレス電極28とが放電空間34を挟んで交叉する領域が、画像を表示するセルに対応している。なお、本例では、x軸方向のセルピッチは約300μm、y軸方向のセルピッチは約675μmに設定されている。
【0038】
また、PDP10の駆動時には、パネル駆動回路によって、特定のアドレス電極28と特定のX電極23とにパルス電圧を印加してアドレス放電させた後、一対の表示電極(X電極23、Y電極22)の間にパルスを印加し、維持放電させる。これにより発生させた短波長の紫外線(波長約147nmを中心波長とする共鳴線および172nmを中心波長とする分視線)を用いて、蛍光体層31〜33に含まれる蛍光体を可視光発光させることで、所定の画像をフロントパネル側に表示することができる。
【0039】
<発光装置>
なお、本発明の蛍光体混合物は、PDPの蛍光体層材料として使用する態様に限らず、紫外線により励起、発光する蛍光パネルの材料として用いることもでき、従来の蛍光パネルに比して輝度および輝度劣化耐性に優れたものを提供することができる。このような蛍光パネルは、例えば液晶表示装置のバックライトとして適用することができる。すなわち、PDP以外の発光装置としては、液晶表示装置のバックライトなどの蛍光パネル、さらには無水銀蛍光ランプなどの蛍光ランプが挙げられる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。
【0041】
<蛍光体混合物の作製>
(実施例)
赤色蛍光体AとしてGd1.93Eu0.073(x=0,y=0.035)を、赤色蛍光体Bとして(Y0.93Eu0.071.02(P0.80.2)O4(p=1.02,q=0.93,r=0.07,s=0.2)を用いた。赤色蛍光体Aのモル比aは、0.5とした。
【0042】
まず、赤色蛍光体Aの製造においては、出発原料として、Gd23およびEu23を用い、これらを所定の組成になるよう秤量して0.1mol/Lの硝酸水溶液に溶解した。溶解は80℃に加熱して実施した。その後、0.4mol/Lのシュウ酸水溶液により共沈させた。この沈殿物に対してろ過および水洗を数回実施し、スプレイドライにて乾燥させた。得られた乾燥粉体Aを大気中1200℃にて3時間焼成し、赤色蛍光体Aを得た。硝酸水溶液の量は、原料1kgに対して約35Lとし、シュウ酸水溶液量もそれに合わせた。
【0043】
次に、赤色蛍光体Bの製造においては、出発原料として、まず、Y23およびEu23を所定の組成になるよう秤量して0.1mol/Lの硝酸水溶液に溶解した。溶解は80℃に加熱して実施した。その後、0.4mol/Lのシュウ酸水溶液により共沈させた。この沈殿物に対してろ過および水洗を数回実施し、スプレイドライにて乾燥させた。得られた乾燥粉体Bと、(NH42HPO4およびV25とを用い、これらを所定の組成になるように秤量し、遊星ミルにより湿式混合した。その後、大気中1250℃で5時間焼成し、2wt%(NH42CO3水溶液で洗浄および水洗後、スプレイドライにて乾燥させることによって、赤色蛍光体Bを得た。
【0044】
次に、赤色蛍光体Aと赤色蛍光体Bを混合した。赤色蛍光体Aの混合モル比aが0.5になるように、赤色蛍光体Aと赤色蛍光体Bを秤量して、遊星ミルにて湿式混合した。混合後、スプレイドライにて乾燥させ、本実施例の蛍光体混合物を得た。
【0045】
(比較例1〜4)
比較例1の赤色蛍光体としては、Y23:Euを用いた。具体的には、市販の日亜化学社製蛍光体を用いた。
【0046】
比較例2の赤色蛍光体としては、上記の(比較例1の)Y23:Euと試作したY(P,V)O4:Euとの混合物を用いた。具体的には、実施例において作製した乾燥粉体Bと(NH42HPO4およびV25と混合し、大気中で1400℃で3時間焼成した試料を用いた。
【0047】
比較例3の赤色蛍光体としては、Gd23:Euを用いた。具体的には、実施例として作製した乾燥粉体Aを大気中1200℃で3時間焼成した試料を用いた。
【0048】
比較例4の赤色蛍光体としては、(Y,Gb)BO3:Euを用いた。具体的には、市販の日亜化学社製蛍光体を用いた。
【0049】
<輝度の測定>
輝度の測定は、真空中で波長146nmの真空紫外線を照射し、可視領域の発光を測定することで実施した。なお、輝度は、PDPの赤色蛍光体として一般的に用いられている比較例4の蛍光体の輝度を基準値100として相対的に示す。また、発光測定には、ウシオ電機製の146nm光照射器と浜松ホトニクス製のマルチチャンネル検出器PMA−11を用いた。
【0050】
<粉体の耐劣化測定>
実施例および比較例1〜4の蛍光体を塗膜化し、放電管試験法を用いて各塗膜の耐劣化測定を行った。まず、塗膜化プロセスを以下に記述する。
【0051】
α−テルピネオール:エチルセルロース=9:1(質量比)のバインダーにより蛍光体粉末をペースト化した。このペーストは、蛍光体粉末とバインダーとを質量比1:1で混合することによって作製した。このペーストを試料基板上に厚さ約200μmで塗布して、大気中150℃で15分乾燥させた後、大気中500℃で30分焼成した。このようにして、塗膜化された試料を作製した。
【0052】
次に、実施した放電管試験法を以下に記述する。
【0053】
真空引きおよびガス置換可能な直径7cm、長さ50cmの石英管の中央付近に、所定のホルダ内部に塗膜化された試料を設置し、石英管の両端に間隔30cmで対向する1対の熱電極を設けた。石英管内部を一度真空引きした後、Xe5%、Ne95%のガスをフローさせ500Paに維持した。その後、電極間に交流電圧を印加し、放電を生じせしめた後、150Vに維持しながら2時間後に取り出した。塗膜化前(粉体)および放電管処理前後の塗膜についての発光特性(輝度)を評価することによって、劣化耐性評価とした。
【0054】
<残光時間の測定>
浜松ホトニクス社製の重水素ランプL1835により発せられる紫外線を、UNIBLITZ製高速動作シャッタ609M2によりチョッピングし、McPherson社製の615型真空紫外集光光学系、234/302型真空紫外分光器により160nmに分光し、真空中に静置された蛍光体試料に照射した。試料から発する可視光を石英窓からファイバープローブにて真空チャンバ外に取り出し、浜松ホトニクス社製のUV−可視光電子増倍管R928に入射し、電流信号に変換した後、Stanford Research Systems(SRS)社製SR445A型高速プレアンプで電圧信号に変換し、シャッタと同期して動作するSRS社製マルチチャンネルスケーラSR430にて記録した。残光時間は、シャッタ閉後、輝度が1/10になる時間と定義した。データ収集ソフトウェアは,ナショナルインスツルメンツのLabVIEW Ver.8を使用して自作した。
【0055】
表1に、粉体、塗膜(放電管試験前)、放電管試験2時間後および4時間後の輝度と、粉体の残光時間を示す。
【0056】
【表1】

【0057】
図2に、実施例および比較例1〜4について、粉体時の輝度を100とした場合の塗膜化ならびに放電管試験後の輝度維持率を示す。実施例は、比較例1〜4より顕著に輝度維持率が高く、放電管試験後の輝度低下がほとんどないことが確認できる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明にかかる蛍光体混合物は、色度および輝度を維持したまま残光時間を短くできる。さらに、パネル製造プロセスおよび画像表示の際の駆動時における劣化が少ないので、特にPDPに好適に利用できる。また、無電極蛍光ランプなどの発光装置にも応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明のPDPにおける一実施形態を示す概略断面斜視図である。
【図2】本発明の蛍光体混合物の実施例についての輝度維持率を示すグラフである。
【符号の説明】
【0060】
10 PDP
20 フロントパネル(前面板)
21 フロントパネルガラス
22 Y電極(表示電極)
23 X電極(表示電極)
24 前面側誘電体層
25 保護層
26 バックパネル(背面板)
27 バックパネルガラス
28 アドレス電極
29 背面側誘電体層
30 隔壁
31 蛍光体層(R)(赤色蛍光体層)
32 蛍光体層(G)
33 蛍光体層(B)
34 放電空間
220 透明電極
221 バスライン
230 透明電極
231 バスライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1−x−y)Gd23・xY23・yEu23(0≦x≦0.5、0.01≦y≦0.1)で表される蛍光体Aと、
一般式p((1−q−r)Gd23・qY23・rEu23)・(1−s)P25・sV25(1.001≦p≦1.1、0≦q≦0.97、0.03≦r≦0.1、q+r≦1、0≦s≦0.95)で表される蛍光体Bと、
の混合物である、蛍光体混合物。
【請求項2】
前記混合物に対する前記蛍光体Aのモル比aが0.3≦a≦0.9を満たす、請求項1に記載の蛍光体混合物。
【請求項3】
x=qおよびy=rである、請求項1に記載の蛍光体混合物。
【請求項4】
前記xが0≦x≦0.1を満たす、請求項1に記載の蛍光体混合物。
【請求項5】
前記yが0.03≦y≦0.06を満たす、請求項1に記載の蛍光体混合物。
【請求項6】
蛍光体層を備え、
前記蛍光体層が、請求項1〜5の何れか1項に記載の蛍光体混合物を含有する、発光装置。
【請求項7】
前面板と、
前記前面板と対向配置された背面板と、
前記前面板と前記背面板との間隔を規定する隔壁と、
前記背面板または前記前面板に設けられた一対の電極と、
少なくとも前記電極間に存在する、キセノンを含有する放電ガスと、
前記キセノンによって発生した真空紫外線によって可視光を発する蛍光体層と、
を備え、
前記蛍光体層に含まれる赤色蛍光体層が、請求項1〜5の何れか1項に記載の蛍光体混合物を含有する、プラズマディスプレイパネル。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−138076(P2008−138076A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−325499(P2006−325499)
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】