説明

蛍光基準部材、及び蛍光基準部材を備える蛍光検知装置

【課題】信頼性の高い検出基準を与えることができる蛍光基準部材、及び蛍光基準部材を備える蛍光検知装置を提供する。
【解決手段】蛍光基準部材は、励起光が照射された場合に蛍光を発する蛍光体が含まれている蛍光インクが、前記励起光が照射される照射面に塗布された蛍光基準板61を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照射された励起光に応じて蛍光を発光する蛍光基準部材、及び蛍光基準部材を備える蛍光検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、紙葉類などの媒体に対して紫外線を照射し、紙葉類の表面から放出される蛍光を検出する蛍光検知装置が提供されている。蛍光検知装置は、例えば、紙葉類の種類を判定する為の紙葉類処理装置などに組み込まれている。
【0003】
蛍光検知装置は、紙葉類が搬送される搬送路に設置されている。蛍光検知装置は、発光素子及び受光素子を備えた蛍光センサと、蛍光ガラスとを有する。蛍光ガラスは、蛍光センサに対して検出基準となる蛍光を発光する蛍光基準部材である。蛍光センサと蛍光ガラスとは、紙葉類処理装置の搬送路を挟み、互いに対向して設けられている。蛍光検知装置は、紙葉類が搬送されていない状態における蛍光ガラスからの蛍光を検出する。蛍光検知装置は、検出した蛍光の値に基づいて、発光素子の発光量、若しくは、受光素子の感度を補正する。
【0004】
しかし、例えば、蛍光ガラスの表面に付着したほこりや傷などが原因で、蛍光ガラスにより発光される蛍光の発光量が変化する場合がある。この為、安定した発光量が得られない場合があるという問題がある。
【0005】
そこで、蛍光ガラスの発光面を除く面に光吸収部材を配置した蛍光基準部材、及び蛍光基準部材を用いた蛍光検査装置が提供されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−64828号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した蛍光検査装置に用いられている蛍光基準部材は、発光面以外に励起光(紫外線)が照射することを光吸収部材により防ぐ構成となっている。これにより、蛍光基準部材は、蛍光ガラスを保持している金属部材において外乱光により生じる反射を軽減させている。
【0007】
しかし、光吸収部材は、紫外線を受け続けることにより変色する。この為、蛍光基準部材から発せられる光の光量、及び分光特性が変化する可能性がある。この結果、蛍光検知装置は、安定して発光素子の発光量、若しくは、受光素子の感度の補正を行なう事ができないという問題がある。
【0008】
また、従来の蛍光ガラスを用いた蛍光検知装置は、蛍光ガラスを蛍光基準部材に固定する為に接着部材などを用いている。しかし、接着剤は、紫外線を受け続けることにより変色する。この為、蛍光基準部材から発せられる光が変化する。この結果、蛍光検知装置は、安定して発光素子の発光量、若しくは、受光素子の感度の補正を行なう事ができないという問題がある。
【0009】
またさらに、従来の蛍光ガラスを用いた蛍光検知装置は、蛍光ガラスから放出される蛍光と、紙葉類の表面に塗布されている蛍光体から放出される蛍光とを近いレベルにする必要がある。しかし、蛍光ガラスの種類は限られている為、蛍光基準部材は、透過する光量を制限する為の透過光量制限部材を備えている。この為、蛍光基準部材のサイズが大きくなるという問題もある。
【0010】
またさらに、蛍光ガラスを装置に組み込んで運用を開始する場合、一時的に発光光量が紫外線により少し低下することが知られている。この為、蛍光ガラスを用いた蛍光検知装置は、予め蛍光ガラスに紫外線を数時間照射するエージング工程が必要であるという問題もある。
【0011】
本発明の一形態における目的は、信頼性の高い検出基準を与えることができる蛍光基準部材、及び蛍光基準部材を備える蛍光検知装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施形態に係る蛍光基準部材は、励起光が照射された場合に蛍光を発する蛍光体が含まれている蛍光インクが、前記励起光が照射される照射面に塗布された蛍光基準板を具備する。
【0013】
また、本発明の一実施形態に係る蛍光検知装置は、検知対象である媒体に励起光を照射する光源と、励起光が照射された場合に蛍光を発する蛍光体が含まれている蛍光インクが、前記光源からの励起光が照射される照射面に塗布された蛍光基準板を有する蛍光基準部材と、前記蛍光基準部材から発せられた蛍光を受光する受光手段と、前記受光手段により受光した蛍光に基づいて前記受光手段の感度を補正する補正手段と、前記補正手段により感度の補正が行われた前記受光手段により、前記検知対象である媒体に含まれる蛍光体から発せられた蛍光を検知する検知手段と、を具備する。
【0014】
また、本発明の一実施形態に係る蛍光検知装置は、検知対象である媒体に励起光を照射する光源と、励起光が照射された場合に蛍光を発する蛍光体が含まれている蛍光インクが、前記光源からの励起光が照射される照射面に塗布された蛍光基準板を有する蛍光基準部材と、前記蛍光基準部材から発せられた蛍光を受光する第1の受光手段と、前記蛍光基準部材から発せられた蛍光を受光する第2の受光手段と、前記第1の受光手段により受光した蛍光に基づいて前記第1の受光手段の感度を補正する第1の補正手段と、前記第2の受光手段により受光した蛍光に基づいて前記第2の受光手段の感度を補正する第2の補正手段と、前記第1の補正手段により感度の補正が行われた前記第1の受光手段により前記検知対象である媒体に含まれる蛍光体から検知した蛍光と、前記第2の補正手段により感度の補正が行われた前記第2の受光手段により前記検知対象である媒体に含まれる蛍光体から検知した蛍光とを比較することにより、前記検知対象である媒体の種類を判定する判定手段と、を具備する。
【発明の効果】
【0015】
この発明の一形態によれば、信頼性の高い検出基準を与えることができる蛍光基準部材、及び蛍光基準部材を備える蛍光検知装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図を参照しながら、本発明の一実施形態に係る蛍光基準部材、及び蛍光基準部材を備える蛍光検知装置について詳細に説明する。
図1及び図2は、本発明の第1の実施形態に係る蛍光検知装置1の構成例を概略的に説明するためのブロック図である。蛍光検知装置1は、例えば、紙葉類の種類の判定などを行う紙葉類処理装置に組み込まれていると仮定する。蛍光検知装置1は、検知対象である紙葉類が搬送される搬送路の沿部に設けられている。
【0017】
ここで、紙葉類処理装置は、例えば、郵便物などを処理する郵便物処理装置、または、複写機などの画像形成装置などである。
【0018】
表面に、蛍光物質(蛍光体)を含む蛍光インクによる印刷が施されている紙葉類などがある。蛍光体は、特定の波長の光により励起され、蛍光を発する特徴を備えている。例えば、蛍光体は、紫外光によって励起される。励起されて発せられる蛍光は、蛍光体の種類(成分)により決定される。
【0019】
蛍光検知装置1は、紙葉類の表面に紫外光を照射する。蛍光検知装置1は、照射した紫外光によって蛍光体から励起発光される蛍光を検知する。蛍光検知装置1は、この蛍光の検知結果に基づいて、紙葉類の種類を判定する。
【0020】
図1は、紙葉類が手前から奥に搬送される向きで蛍光検知装置1を見た図である。図2は、紙葉類が右から左、即ち、矢印aの方向に搬送される向きで蛍光検知装置1を見た図である。
【0021】
蛍光検知装置1は、蛍光インクにより紙葉類上に印刷されている印刷パターンを検知する。図1に示すように、蛍光検知装置1は、光源2、受光部3、画像処理部4、制御部5、及び蛍光基準部材6を備えている。
【0022】
光源2は、照明装置である。光源2は、例えば紫外線等の、蛍光体を励起する発光帯域の光(例えば紫外光)を発するランプを備えている。光源2は、搬送される紙葉類7、及び蛍光基準部材6に対して光を照射する。光源2には、例えば、ブラックライト、またはUVランプなどの波長365nmを中心とする紫外線を放出するランプが用いられる。なお、紫外線の波長を365nmとしたが、励起発光を生じさせるものであれば如何なる波長であってもよい。
【0023】
図1及び図2に示すように、光源2は、搬送路の一側(受光部3と同じ側)に設けられている。光源2は、紙葉類7の搬送方向aに対して垂直な方向に伸びている。
【0024】
受光部3は、受光手段として機能する。受光部3は、光を受光するためのレンズなどの光学系と、光学系により受光した光を電気信号に変換して画像(信号)を取得するセンサとを備えている。光学系は、蛍光体を含む搬送媒体からの蛍光発光を結像する。センサは、光学系により結像した光を電気信号に変換し、画像を取得する。
【0025】
図1及び図2に示すように、受光部3は、搬送路の一側(光源2と同じ側)に設けられている。即ち、受光部3が設置されている側は、読取面である。
【0026】
画像処理部4は、受光部3により取得した画像に対して、画像処理を施し、蛍光画像を検出する。
【0027】
制御部5は、光源2、受光部3、及び、画像処理部4の動作を総合的に制御する。制御部5は、メモリを備えている。メモリは、例えば、ROM、及びRAMなどにより構成される。ROMは、制御用のプログラム、および制御データなどを予め記憶している。RAMは、ワーキングメモリとして機能する。RAMは、制御部5が処理中のデータなどを一時保管する。また、制御部5は、受光部3により取得した蛍光画像に基づいて、蛍光インクにより紙葉類上に印刷されている印刷パターンを認識する。
【0028】
蛍光基準部材6は、検出基準を受光部3に与える。図1及び図2に示すように、蛍光基準部材6は、搬送路を挟んで受光部と対向する位置に設けられている。蛍光基準部材6は、蛍光体を備えている。蛍光基準部材6は、紫外光が照射された場合、蛍光を受光部3に対して発する。蛍光基準部材6については、詳細に説明する。
【0029】
図3及び図4は、蛍光検知装置1の構成をより詳細に説明するためのブロック図である。図3は、図1に示す蛍光検知装置1の構成をより詳細に説明するためのブロック図である。図4は、図2に示す蛍光検知装置1の構成をより詳細に説明するためのブロック図である。
【0030】
図3及び図4に示すように、受光部3は、センサ31、レンズ32、第1のフィルタ33、第2のフィルタ34、及びスリット35を備えている。
【0031】
センサ31は、光学系により結像した光を電気信号に変換し、画像を取得する。レンズ32は、光学系である。レンズ32は、蛍光体を含む搬送媒体からの蛍光発光を結像する。レンズ32は、媒体が搬送される搬送路のうちの特定の領域から光を受光するように設置されている。
【0032】
第1のフィルタ33は、外乱光の影響を軽減するために、特定の波長の光のみを透過する。第2のフィルタ34は、レンズ32を通った光のうち、例えば、センサ31の感度領域外などの、不要な波長の光を除去する。スリット板35は、制御部5の制御により制御されるタイミングで動作し、光をセンサ31に入射させる。
【0033】
センサ31は、拡散板36を備えている。拡散板36は、センサ31に入射した光を、センサの感度面に均一入射するように拡散させる。
【0034】
蛍光基準部材6は、蛍光基準板61及びマスク板62を備えている。蛍光基準板61は、蛍光体を含む部材である。紫外光が蛍光基準板61に照射された場合、蛍光体が励起され蛍光が発せられる。マスク板62は、蛍光基準板61の発光強度を制限する。マスク板62は、開口部を有する。マスク板62は、開口部のサイズにより蛍光基準板61の紫外光が照射される面積を調整する。
【0035】
図5及び図6は、蛍光基準部材6の構成をより詳細に説明するための説明図である。
図5は、受光部3側から蛍光基準部材6を見た図である。図6は、図5に示す蛍光基準部材6をAA線で切り取った断面図である。
【0036】
図5に示すように、蛍光基準部材6は、例えば、蛍光基準板61、マスク板62、ホルダ63、及び防塵ガラス64を備えている。また、蛍光基準部材6は、受光部3側に、励起光(紫外線)が照射される照射面を備えている。
ホルダ63は、例えば鉄などの不透明な金属材料を加工して形成された筐体である。金属製の筐体である。ホルダ63は、6つの面を有する矩形状の本体を有している。ホルダ63は、6つの面のうちの1面(受光部3側を向く面)に、蛍光基準板61及びマスク板62を収容可能なサイズで形成された凹所を有する。即ち、凹所は、照射面に設けられている。防塵ガラス64は、紫外線を透過させる材質で構成された保護部材である。
【0037】
ホルダ63は、ホルダ63の有する凹所により蛍光基準板61及びマスク板62を包囲するように収納する。さらに、図6に示すように、蛍光基準板61及びマスク板62は、防塵ガラス64によりホルダ63の凹所に封入される。即ち、蛍光基準板61及びマスク板62は、ホルダ63及び防塵ガラス64により包囲されて固定されている。このように、蛍光基準部材6の表面を防塵ガラス64により保護している為、係員は、蛍光基準部材6の表面に堆積した埃を、保守時に拭き取ることができる。
【0038】
なお、防塵ガラス64とホルダ63との隙間には、例えば、接着剤などが注入される。これにより、防塵ガラス64は、埃がホルダ63の凹所に入り込むことを防いでいる。
【0039】
この蛍光基準部材6は、防塵ガラス64が設置された面と受光部3とが対向する向きで、図示しない持具等により搬送路に隣接して取り付けられる。
【0040】
上記したように、蛍光基準板61は、蛍光体を含む部材である。蛍光基準板61は、表面に蛍光インクが塗布された台紙により構成される。台紙は、例えば、ポリプロピレン樹脂を主原料とした厚さ300μm程度の平面物体である。平面物体の表面及び裏面は、多数の表面亀裂(ミクロボイド)が形成された構成となっているため、種々の印刷が可能となっている。
【0041】
台紙は、耐水性、耐油性、及び耐薬品性などを備えている。また、台紙は、紫外線による品質の劣化が生じにくいという特性を有する。例えば、「ユポコーポレーション」製の「ユポ紙(FGS300)」(登録商標)が台紙として用いられる。
【0042】
上記した台紙の表面及び裏面のうちの少なくとも一面に、蛍光インクが塗布される。台紙に塗布される蛍光インクは、通常の照明条件下では白色であり、紫外光が照射された場合に蛍光を発する。台紙に塗布される蛍光インクは、紫外線による品質の劣化が生じにくいという特性を有する。一般的な蛍光インクは、蛍光インクに含まれている蛍光体を組成している成分により、種々の波長の蛍光を発する。なお、本実施形態では、例えば、「シンロイヒ」製の「ルミライトユセイインキ」(登録商標)が蛍光インクとして用いられる。
【0043】
本発明の一実施形態に係る蛍光基準板61は、複数の蛍光インクが混合された蛍光インクが、例えばアプリケータなどにより台紙に塗布されて形成される。塗布される蛍光インクに混合されている複数種類の蛍光インクの混合比を変えることにより、発せられる蛍光の色を変化させることが出来る。少なくとも、例えば、赤、青、及び緑などの3種の蛍光インクの混合比を調整することにより、如何なる波長の蛍光でも発光させることができる。
【0044】
これにより、例えば、紙葉類に塗布されている蛍光インクから発せられる蛍光の色と、蛍光基準板61に塗布されている蛍光インクから発せられる蛍光とをより近い色味になるように調整することができる。
【0045】
また、蛍光インクを台紙に塗布する場合、蛍光インクを台紙に定着させる為に固着剤が用いられる。蛍光インクと固着剤とは、混合されてアプリケータにより塗布される。アプリケータは、3milのものが使用される。この為、塗布膜の厚さは、およそ75μmとなる。塗布膜は、用紙吸収と乾燥硬化により最終的に15乃至20μmの膜厚になる。
【0046】
乾燥後の膜厚は、蛍光インクと固着剤との混合比によって定まる。乾燥後の膜厚は、蛍光体の発光強度に対応する。この為、蛍光インクの発光強度を、蛍光インクと固着剤との混合比により制御することが出来る。例えば、蛍光インクの比率を高くした場合、即ち、乾燥後の膜厚が厚い場合、蛍光インクの発光強度が強くなる。また、例えば、蛍光インクの比率を低くした場合、即ち、乾燥後の膜厚が薄い場合、蛍光インクの発光強度が弱くなる。
【0047】
これにより、例えば、紙葉類に塗布されている蛍光インクから発せられる蛍光の発光強度と、蛍光基準板61に塗布されている蛍光インクから発せられる蛍光の発光強度とを近づけることができる。
【0048】
しかし、蛍光インクを台紙に定着させる為に、一定以上の固着剤の比率が必要になる。蛍光インクを台紙に定着させる為に必要な固着剤の比率は、印刷を行う台紙の表面の状態によっても異なる。この為、台紙を選択することにより、より広い範囲で発光強度を制御することが出来る。
【0049】
本実施形態では、例えば、「永瀬スクリーン印刷研究所」製の「ビニエイト、蛍光Sメジューム」が固着剤として用いられる。「ビニエイト、蛍光Sメジューム」は、3種の樹脂の混合体である。「ビニエイト、蛍光Sメジューム」は、メタアクリル樹脂塩ビ酢ビ共重合樹脂混合体により構成されている。「ビニエイト、蛍光Sメジューム」は、溶剤として、高沸点芳香族炭化水素及びシクロヘキサノンが用いられている。
【0050】
上記したような蛍光インクが蛍光基準板61の少なくとも受光部3側の面に塗布されている。
【0051】
マスク板62は、蛍光基準板61の発光強度を制限する。マスク板62は、つや消し黒色の薄い板金により構成されている。マスク板62は、蛍光基準板61の蛍光インクが塗布されている面の、紫外線が照射する範囲を制限する。即ち、マスク板62は、例えば、塗布膜の縁部などの蛍光インキの濃度で発光強度の制御を行なう事ができない範囲への紫外線の照射を制限する。
【0052】
図6に示すように、マスク板62は、蛍光基準板61と防塵ガラス64との間に設置されている。図5及び図6に示すように、マスク板62は、開口部を有している。即ち、蛍光基準部材6は、蛍光基準板61の塗布膜のうちの、マスク板62の開口部に対応する範囲のみに紫外線が照射される構成となっている。
【0053】
上記のような蛍光基準部材6に紫外線が照射された場合、蛍光基準部材6のマスク板62の開口部から発せられる検出基準である蛍光が発せられる。センサ31は、蛍光基準部材6のマスク板62の開口部から発せられる検出基準である蛍光から画像を取得する。制御部5は、センサ31により取得した検出基準である蛍光の画像に基づいて、センサ31の感度を補正する。即ち、制御部5は、検出する物体から発せられる蛍光がセンサ31のダイナミックレンジに入るようにセンサ31の感度を補正する。制御部5は、補正手段として機能する。
【0054】
また、制御部5は、補正を行ったセンサ31により搬送媒体の蛍光から取得した信号に基づいて、搬送媒体の検知を行う。即ち、制御部5は、搬送媒体の種類の検知を行う検知手段として機能する。
【0055】
上記したように、本発明の第1の実施形態に係る蛍光基準部材は、紫外光が照射された場合に蛍光を発する蛍光インクが塗布された蛍光基準板を備えている。このように、蛍光基準部材は、紫外線によって劣化する光吸収部材、及び接着部材などが用いられていない。この為、蛍光基準部材は、励起光に対して常に安定した強度の蛍光を発する。この結果として、信頼性の高い検出基準を与えることができる蛍光基準部材、及び蛍光基準部材を備える蛍光検知装置を提供することができる。
【0056】
また、蛍光基準部材は、例えば、赤、青、及び緑などの少なくとも3種の蛍光インクの混合比を調整することにより、如何なる波長の蛍光でも発光させることができる。これにより、検出する物体から発せられる蛍光と近い波長の蛍光を発する蛍光基準部材を実現することが出来る。
【0057】
なお、台紙の厚さを300μmとしたが、台紙の厚さは、蛍光基準部材6のサイズに影響を与えない程度の厚さであれば、如何なる厚さであってもよい。また、台紙を、主原料をポリプロピレン樹脂とするユポコーポレーション製のユポ紙(FGS300)を例に挙げて説明したがこれに限定されない。蛍光インクによる印刷が可能であり、紫外線による品質の劣化が生じにくいものであれば、如何なるものを台紙として用いてもよい。
【0058】
また、蛍光インクとして、「シンロイヒ」製の「ルミライトユセイインキ」を例に挙げて説明したがこれに限定されない。本発明の一実施形態に係る蛍光基準部材に用いられる蛍光インクは、紫外光が照射された場合に蛍光を発する特性と、紫外線による品質の劣化が生じにくいという特性とを有するものであれば如何なるものであってもよい。
【0059】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0060】
図7及び図8は、本発明の第2の実施形態に係る蛍光検知装置10の構成例を概略的に説明するためのブロック図である。図7は、紙葉類が手前から奥に搬送される向きで蛍光検知装置10を見た図である。図8は、紙葉類が右から左、即ち、矢印aの方向に搬送される向きで蛍光検知装置10を見た図である。
【0061】
図7及び図8に示す蛍光検知装置10は、2つの受光部3A及び受光部3Bを備えている。他の構成は、図1乃至図4に示す蛍光検知装置1と動揺である為、同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0062】
図7に示すように、受光部3A及び受光部3Bは、同じポイントから光を受光するように設置されている。受光部3Aが備えている第1のフィルタ33Aと受光部3Bが備えている第1のフィルタ33Bとは構成が異なる。
【0063】
即ち、受光部3Aが備えている第1のフィルタ33Aは、青色の波長の光のみを透過させるフィルタである。また、受光部3Bが備えている第1のフィルタ33Bは、赤色の波長の光のみを透過させるフィルタである。この為に、検出される信号が受光部3Aと受光部3Bとで異なる。
【0064】
蛍光検知装置10の制御部5は、受光部3Aにより取得した信号と受光部3Bにより取得した信号とのレベルの差を検査することにより、搬送媒体の種類の判定を行う。即ち、制御部5は、搬送媒体の種類の判定を行う判定手段として機能する。
【0065】
図9は、図7及び図8に示す蛍光基準部材6の発光特性とフィルタ33A及びフィルタ33Bのフィルタ特性との一例を示す図である。例えば、検知対象となる搬送媒体に含まれている蛍光体が緑色を中心とした蛍光を発する分光特性を持つと仮定する。この場合、蛍光基準部材6の発光色が、検知媒体の発光色と一致するように調整される。この為、蛍光基準部材6に含まれている蛍光体も、緑色の蛍光を発する分光特性を持つ。
【0066】
図9に示すAは、フィルタ33Aのフィルタ特性を示すグラフである。Bは、フィルタ33Bのフィルタ特性を示すグラフである。Cは、蛍光基準部材6の発光特性を示すグラフである。
【0067】
即ち、図9に示すように、フィルタ33Aのフィルタ特性のピークと、フィルタ33Bのフィルタ特性のピークとの中間が搬送媒体に含まれている蛍光体の分光特性のピークになるように、各特性が調整されている。この為、正規の媒体から緑色の蛍光が発せられた場合、受光部3Aにより取得した信号のレベルと、受光部3Bにより取得した信号のレベルとが一致する。
【0068】
蛍光検知装置10の制御部5は、搬送媒体から発せられた蛍光に基づいて受光部3A及び受光部3Bにより信号を取得する。蛍光検知装置10の制御部5は、受光部3Aにより取得した信号のレベルと、受光部3Bにより取得した信号のレベルとが一致するか否かを判定する。
【0069】
例えば、受光部3Aにより取得した信号のレベルと、受光部3Bにより取得した信号のレベルとが一致しないと判定した場合、蛍光検知装置10の制御部5は、搬送媒体が正規の媒体ではないと判定する。即ち、制御部5は、検知対象と異なる蛍光体が搬送媒体に含まれていると判定する。
【0070】
また、受光部3Aにより取得した信号のレベルと、受光部3Bにより取得した信号のレベルとが一致すると判定した場合、蛍光検知装置10の制御部5は、搬送媒体が正規の媒体であると判定する。
【0071】
また、上記したように、蛍光基準部材6の発光特性は、検知媒体の発光特性と一致するように調整されている。この為、搬送媒体がセンサの読み取り位置に存在しない場合、蛍光基準部材6からの発せられる蛍光が2つの受光部3A及び受光部3Bに取り込まれる。
【0072】
受光部3Aにより取得される信号と受光部3Bにより取得される信号は、波長が異なる。制御部5は、受光部3Aにより取得される信号に基づいて、受光部3Aのセンサ31の感度を補正する。制御部5は、受光部3Bにより取得される信号に基づいて、受光部3Bのセンサ31の感度を補正する。
【0073】
また、蛍光基準部材6のマスク板62の開口部のサイズは、蛍光基準板61からの発光が、受光部3Aのセンサ31及び受光部3Bのセンサ31のそれぞれのダイナミックレンジに入るように調整される。
【0074】
上記したように、本発明の第2の実施形態に係る蛍光検知装置は、2系統の光学系により受光した光から取得した信号のレベル差を判定することにより、媒体の種類の判定を行う。これにより、蛍光検知装置は、発光強度だけでなく、発光色に基づいて種類の判定を行うことができる。この結果として、より信頼性の高い種類の判定を行なうことができる蛍光検知装置を提供することができる。
【0075】
また、昨今、紙葉類の種類を判別する機能を持つ複写機、またはスキャナなどの紙葉類処理装置がある。このような紙葉類処理装置は、特定の種類の紙葉類を検出した場合、紙葉類から画像を取得することを禁止する構成となっている。例えば、本発明の一実施形態に係る蛍光基準板を備えた蛍光検知装置を搭載することにより、上記の紙葉類処理装置は、より高い精度で紙葉類の種類の判定を行なうことができる。
【0076】
また、本発明の一実施形態に係る蛍光基準板は、形状、及び発光レベルを自由に可変することができる。即ち、本発明の一実施形態に係る蛍光基準板は、高い汎用性を有している為、種々の装置に適用することが出来る。
【0077】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具現化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態に係る蛍光検知装置の構成例を概略的に説明するためのブロック図である。
【図2】図2は、本発明の第1の実施形態に係る蛍光検知装置の構成例を概略的に説明するためのブロック図である。
【図3】図3は、蛍光検知装置の構成をより詳細に説明するためのブロック図である。
【図4】図4は、蛍光検知装置の構成をより詳細に説明するためのブロック図である。
【図5】図5は、蛍光基準部材の構成をより詳細に説明するための説明図である。
【図6】図6は、蛍光基準部材の構成をより詳細に説明するための説明図である。
【図7】図7は、本発明の第2の実施形態に係る蛍光検知装置の構成例を概略的に説明するためのブロック図である。
【図8】図8は、本発明の第2の実施形態に係る蛍光検知装置の構成例を概略的に説明するためのブロック図である。
【図9】図9は、図7及び図8に示す蛍光基準部材の発光特性及びフィルタのフィルタ特性の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0079】
1…蛍光検知装置、2…光源、3…受光部、3A…受光部、3B…受光部、4…画像処理部、5…制御部、6…蛍光基準部材、7…紙葉類、10…蛍光検知装置、31…センサ、32…レンズ、33…フィルタ、33A…フィルタ、33B…フィルタ、34…フィルタ、35…スリット板、36…拡散板、61…蛍光基準板、62…マスク板、63…ホルダ、64…防塵ガラス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起光が照射された場合に蛍光を発する蛍光体が含まれている蛍光インクが、前記励起光が照射される照射面に塗布された蛍光基準板を具備することを特徴とする蛍光基準部材。
【請求項2】
前記蛍光インクは、異なる蛍光体が含まれている蛍光インクが少なくとも3種類混合されたものであることを特徴とする請求項1に記載の蛍光基準部材。
【請求項3】
前記照射面に設けられた、紫外線を透過させる保護部材をさらに具備することを特徴とする請求項1に記載の蛍光基準部材。
【請求項4】
前記蛍光基準板の発光強度を制限するマスク板をさらに具備する請求項1に記載の蛍光基準部材。
【請求項5】
検知対象である媒体に励起光を照射する光源と、
励起光が照射された場合に蛍光を発する蛍光体が含まれている蛍光インクが、前記光源からの励起光が照射される照射面に塗布された蛍光基準板を有する蛍光基準部材と、
前記蛍光基準部材から発せられた蛍光を受光する受光手段と、
前記受光手段により受光した蛍光に基づいて前記受光手段の感度を補正する補正手段と、
前記補正手段により感度の補正が行われた前記受光手段により、前記検知対象である媒体に含まれる蛍光体から発せられた蛍光を検知する検知手段と、
を具備することを特徴とする蛍光検知装置。
【請求項6】
前記受光手段は、
前記検知対象である媒体から発せられる蛍光のみを透過させる第1のフィルタと、
前記第1のフィルタを透過した光のうちの前記受光手段のセンサ感度を外れる光を遮断する第2のフィルタと、
前記受光手段のセンサに光が入射するタイミングを制御するスリットと、
前記スリットを抜けた光が前記受光手段のセンサの感度面に均一に入射するように拡散させる拡散板と、
受光した光を電気信号に変換するセンサと、
を具備することを特徴とする請求項5に記載の蛍光検知装置。
【請求項7】
検知対象である媒体に励起光を照射する光源と、
励起光が照射された場合に蛍光を発する蛍光体が含まれている蛍光インクが、前記光源からの励起光が照射される照射面に塗布された蛍光基準板を有する蛍光基準部材と、
前記蛍光基準部材から発せられた蛍光を受光する第1の受光手段と、
前記蛍光基準部材から発せられた蛍光を受光する第2の受光手段と、
前記第1の受光手段により受光した蛍光に基づいて前記第1の受光手段の感度を補正する第1の補正手段と、
前記第2の受光手段により受光した蛍光に基づいて前記第2の受光手段の感度を補正する第2の補正手段と、
前記第1の補正手段により感度の補正が行われた前記第1の受光手段により前記検知対象である媒体に含まれる蛍光体から検知した蛍光と、前記第2の補正手段により感度の補正が行われた前記第2の受光手段により前記検知対象である媒体に含まれる蛍光体から検知した蛍光とを比較することにより、前記検知対象である媒体の種類を判定する判定手段と、
を具備することを特徴とする蛍光検知装置。
【請求項8】
前記第1の受光手段は、
第1の波長帯域の光のみを透過させる第1のフィルタを具備し、
前記第2の受光手段は、
第2の波長帯域の光のみを透過させる第2のフィルタを具備し、
前記第1の波長帯域の光のピーク波長及び前記第2の波長帯域の光のピーク波長は、それぞれのピーク波長の中間波長が、前記検知対象である媒体に含まれている蛍光体から発せられる蛍光のピーク波長となるような波長であることを特徴とする請求項7に記載の蛍光検知装置。
【請求項9】
前記蛍光基準部材は、前記検知対象である媒体からの蛍光と前記蛍光基準板からの蛍光との両方が共に前記第1及び第2の受光手段のセンサのダイナミックレンジに入るように、前記蛍光基準板の発光強度を制限するマスク板をさらに具備することを特徴とする請求項7に記載の蛍光検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−101835(P2010−101835A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−275565(P2008−275565)
【出願日】平成20年10月27日(2008.10.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】