説明

蛍光画像取得装置、及び蛍光画像取得方法

【課題】 高解像度での試料の蛍光観察画像を好適に取得することが可能な蛍光画像取得装置、及び蛍光画像取得方法を提供する。
【解決手段】 試料ステージ15と、試料Sの蛍光観察画像として第1の方向を長手方向とする画像を取得する撮像装置31を含む画像取得部30と、励起光を供給する励起光源40と、試料Sに対する励起光の照射領域を整形するためのシリンドリカルレンズ系を含む励起光照射光学系41とを備えて蛍光画像取得装置を構成する。また、XYステージであるステージ15により、撮像装置31によって試料Sが第2の方向に走査されるようにステージ15と画像取得部30との位置関係を調整する構成とする。光学系41は、試料Sでの照射領域と撮像装置31による撮像領域とで長軸方向が互いに一致し、照射領域が撮像領域よりも広くなるように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料の蛍光観察画像を取得するための蛍光画像取得装置、及び蛍光画像取得方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、病理学の分野などにおいて、パーソナルコンピュータ等の仮想空間上であたかも実際の顕微鏡で試料を見ているかのように操作可能なバーチャル顕微鏡が知られている。このバーチャル顕微鏡で扱われる試料データは、予め実際の顕微鏡を利用して高解像度で取得された試料の画像データに基づいている。
【0003】
このようにバーチャル顕微鏡で利用される試料の画像データを取得する画像取得装置では、バーチャル顕微鏡での画像操作を実現するために、充分に高解像度で試料の画像を取得することが要求される。このような高解像度の画像取得には、例えば、所定の方向を長手方向とする1次元画像または2次元画像を取得可能な撮像装置で試料を走査することによって、試料全体に対する観察画像を取得する方法が用いられている。また、このような画像取得装置での画像取得の対象となる試料としては、吸光性の色素で染色された試料の観察画像に加えて、蛍光性の色素で染色された試料を対象とする蛍光観察画像の取得が検討されている(例えば、特許文献1:特開2005−164815号公報、特許文献2:特表2004−514920号公報参照)。
【特許文献1】特開2005−164815号公報
【特許文献2】特表2004−514920号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
試料の蛍光観察画像を取得するための蛍光顕微鏡では、試料を載置する試料ステージと画像を取得する撮像装置との間に設けられたダイクロイックミラーを用いて、試料に励起光を照射する落射照明の構成が用いられる。また、このような蛍光顕微鏡では、一般に、励起光源から供給される励起光をコリメートし、顕微鏡対物レンズをコンデンサレンズとして機能させて励起光を試料に照射する構成が用いられている。
【0005】
これに対して、上記したように所定の方向を長手方向とする1次元状の画像を取得する場合、通常の顕微鏡での円形視野に対応する励起光の照射領域では、試料に供給される励起光の光量のうちの多くの部分が無駄になるという問題がある。また、このように撮像装置による撮像領域に対応する視野外に余分な励起光が照射されると、試料において退色が発生する原因となる。
【0006】
本発明は、以上の問題点を解決するためになされたものであり、高解像度での試料の蛍光観察画像を好適に取得することが可能な蛍光画像取得装置、及び蛍光画像取得方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するために、本発明による蛍光画像取得装置は、(1)蛍光測定の対象となる試料を載置する試料ステージと、(2)試料の蛍光観察画像として、第1の方向を長手方向とする1次元画像または2次元画像を取得する撮像装置を含む画像取得手段と、(3)試料に対して蛍光測定用の励起光を供給する励起光源と、(4)試料へと照射される励起光の照射領域を整形するためのシリンドリカルレンズ系を含む励起光照射光学系と、(5)撮像装置によって試料が第2の方向に走査されるように、試料ステージと画像取得手段との位置関係を調整する走査手段とを備え、(6)励起光照射光学系は、試料での照射領域と撮像装置による撮像領域とで長軸方向が互いに一致するとともに、照射領域が撮像領域よりも広くなるように励起光を試料へと照射することを特徴とする。
【0008】
また、本発明による蛍光画像取得方法は、(a)試料ステージ上に載置された試料を蛍光測定の対象とし、試料の蛍光観察画像として、撮像装置によって第1の方向を長手方向とする1次元画像または2次元画像を取得する画像取得ステップと、(b)試料に対して蛍光測定用の励起光を励起光源から供給し、試料へと照射される励起光の照射領域を整形するためのシリンドリカルレンズ系を含む励起光照射光学系を介して励起光を試料へと照射する励起光照射ステップと、(c)撮像装置によって試料が第2の方向に走査されるように、試料ステージと画像取得手段との位置関係を調整する走査ステップとを備え、(d)励起光照射ステップにおいて、試料での照射領域と撮像装置による撮像領域とで長軸方向が互いに一致するとともに、照射領域が撮像領域よりも広くなるように励起光を試料へと照射することを特徴とする。
【0009】
上記した蛍光画像取得装置、及び蛍光画像取得方法においては、励起光源から供給される蛍光測定用の励起光を試料へと導く励起光照射光学系においてシリンドリカルレンズ系を設置し、このシリンドリカルレンズ系により、試料に対する照射領域が所定の方向を長軸方向とする領域となるように励起光束を整形している。また、このように整形された照射領域について、試料での励起光の照射領域の長軸方向と、撮像装置による視野となる撮像領域の長軸方向とを互いに一致させている。これにより、試料に供給される励起光の光量のうちで撮像装置の視野外に照射される余分な励起光の光量が低減される。
【0010】
ここで、上記のように励起光の照射領域を整形する構成では、試料に照射される励起光に含まれる各波長成分について、色収差によって照射領域の位置、範囲等が波長に応じて変化する場合がある。これに対して、上記構成では、シリンドリカルレンズ系で整形された励起光束の試料への照射領域について、照射領域が撮像領域よりも広くなるように設定している。これにより、色収差によって波長に応じた照射領域の変化が生じている場合であっても、撮像装置による撮像領域を、励起光の各波長での照射領域内に確実に位置させることが可能となる。なお、励起光源としては、例えば放電管を用いることができる。また、励起光源として、LEDなどの発光素子を用いても良い。
【0011】
上記した蛍光画像取得装置において、励起光照射光学系は、励起光源からの励起光を反射して試料へと照射するとともに、試料からの蛍光を画像取得手段へと通過させるダイクロイックミラーを含む蛍光光学系ユニット(落射照明光学系ユニット)を有することが好ましい。このような構成によれば、試料に対する励起光の落射照明光学系と、試料において発生した蛍光の画像取得手段への導光光学系とを好適に両立させることができる。
【0012】
また、蛍光画像取得装置において、試料の蛍光観察画像の取得に用いられる画像取得手段は、試料からの蛍光を異なる3つの波長成分に分解する波長分解光学系を有するとともに、撮像装置として、波長分解光学系によって分解された3つの波長成分のそれぞれによる蛍光観察画像を取得する3つの撮像装置を含むことが好ましい。このような構成では、3つの撮像装置は、異なる波長成分(色成分)によってそれぞれ形成される試料の光像を取得する。これにより、3つの撮像装置のそれぞれで取得された光像に基づいて、試料のカラーでの蛍光観察画像を取得することが可能となる。
【0013】
また、蛍光画像取得装置において、画像取得手段における撮像装置については、第1の方向を長手方向とする1次元画像の取得が可能な1次元センサ、または第1の方向を長手方向とする2次元画像の取得及びTDI駆動が可能な2次元センサである構成を用いることが好ましい。
【0014】
このような構成によれば、1次元センサまたはTDI駆動2次元センサで試料を走査することで、試料の蛍光観察画像を充分に高解像度で効率良く取得することが可能となる。例えば、このような構成では、1次元センサまたはTDI駆動2次元センサで試料を一方向に走査したストリップ状の部分画像を高解像度で取得するとともに、他方向について複数の部分画像を合成して試料全体に対する蛍光観察画像とすることで、試料の画像データを充分に高い解像度で好適に取得することができる。
【0015】
蛍光画像取得装置において用いられる励起光源は、励起光として白色光を供給する白色光源であることが好ましい。このような励起光源としては、例えば、水銀ランプ、ハロゲンランプなどの放電管、あるいはLEDなどが挙げられる。
【0016】
蛍光観察画像の具体的な取得方法については、蛍光画像取得装置は、走査手段が、撮像装置が取得する画像の長手方向となる第1の方向に直交する方向を試料の走査方向となる第2の方向とし、撮像装置によって試料を第2の方向に走査して部分画像を取得するとともに、この部分画像の取得を第1の方向に沿って撮像位置をずらしながら複数回繰り返して複数の部分画像を取得するように、試料ステージと画像取得手段との位置関係を調整することが好ましい。
【0017】
同様に、蛍光画像取得方法は、走査ステップにおいて、撮像装置が取得する画像の長手方向となる第1の方向に直交する方向を試料の走査方向となる第2の方向とし、撮像装置によって試料を第2の方向に走査して部分画像を取得するとともに、この部分画像の取得を第1の方向に沿って撮像位置をずらしながら複数回繰り返して複数の部分画像を取得するように、試料ステージと画像取得手段との位置関係を調整することが好ましい。
【0018】
また、この場合、蛍光画像取得装置は、それぞれ第2の方向に走査された複数の部分画像を、第1の方向に並べて合成することで、試料の蛍光観察画像を生成する画像合成手段を備えることが好ましい。同様に、蛍光画像取得方法は、それぞれ第2の方向に走査された複数の部分画像を、第1の方向に並べて合成することで、試料の蛍光観察画像を生成する画像合成ステップを備えることが好ましい。
【0019】
試料への励起光の照射条件については、蛍光画像取得装置は、励起光照射光学系が、照射領域が、撮像領域に対して長軸方向に1.05倍〜3倍、短軸方向に2倍〜20倍となるように励起光を試料へと照射することが好ましい。同様に、蛍光画像取得方法は、励起光照射ステップにおいて、照射領域が、撮像領域に対して長軸方向に1.05倍〜3倍、短軸方向に2倍〜20倍となるように励起光を試料へと照射することが好ましい。これにより、撮像装置の視野外に照射される余分な励起光の光量の低減と、撮像装置による撮像領域を励起光の各波長での照射領域内に確実に位置させる構成とを、好適に両立することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の蛍光画像取得装置、及び蛍光画像取得方法によれば、励起光源から試料へと照射される励起光の照射領域を整形するためのシリンドリカルレンズ系を励起光照射光学系に設置し、試料での照射領域と撮像装置による撮像領域とで長軸方向が互いに一致するとともに、照射領域が撮像領域よりも広くなる照射条件で励起光を試料へと照射することにより、試料に供給される励起光の光量のうちで撮像装置の視野外に照射される余分な励起光の光量が低減される。また、色収差によって波長に応じた照射領域の変化が生じている場合であっても、撮像装置による撮像領域を、励起光の各波長での照射領域内に確実に位置させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面とともに本発明による蛍光画像取得装置、及び蛍光画像取得方法の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0022】
まず、蛍光画像取得装置の全体構成について説明する。図1は、本発明による蛍光画像取得装置の一実施形態の構成を示すブロック図である。本実施形態による蛍光画像取得装置は、試料Sの蛍光観察画像を高解像度で取得するために用いられる蛍光顕微鏡システムであり、試料Sの蛍光観察画像取得を行う顕微鏡装置10と、顕微鏡装置10における画像取得の制御等を行う制御装置60とを備える。蛍光測定の対象となる試料Sとしては、例えば、バーチャル顕微鏡で利用される画像データを取得する場合における、スライドガラスに蛍光性の色素で染色された組織切片等の生体サンプルが密封されたスライド(プレパラート)が例として挙げられる。
【0023】
顕微鏡装置10は、試料格納部11と、マクロ画像取得部20と、ミクロ画像取得部30とを有している。試料格納部11は、それぞれ画像取得の対象となる複数の試料(例えばそれぞれ生体サンプルが密封された複数のスライド)Sを格納可能に構成された格納手段である。この試料格納部11には、操作者による試料Sの格納、及び取り出し等に用いられる扉12が設けられている。また、本実施形態においては、画像取得中に誤って扉12が開放されることを防止するためのインターロック機構13が付設されている。
【0024】
マクロ画像取得部20は、試料Sの低倍率画像であるマクロ画像を取得するための第1の画像取得手段である。この画像取得部20では、蛍光観察画像であるミクロ画像の取得に先立って、試料Sの全体像に相当する低解像度でのマクロ画像が取得される。マクロ画像は、例えば、試料Sの蛍光観察画像を取得する際の撮像条件を設定するために、必要に応じて用いられる。また、マクロ画像取得部20に対して、マクロ画像取得時に試料Sの光像を生成するための光を照射するマクロ用光源25が設置されている。
【0025】
一方、ミクロ画像取得部30は、試料Sの高倍率画像であるミクロ画像を取得するための第2の画像取得手段である。この画像取得部30では、目的とする試料Sの高解像度でのミクロ画像が取得される。本実施形態においては、後述するように、このミクロ画像取得部30が、試料Sの高解像度での蛍光観察画像を取得するための撮像装置を含む画像取得手段として機能する。また、ミクロ画像取得部30に対して、ミクロ画像取得時に試料Sの光像を生成するための光を照射するミクロ用光源35が設置されている。
【0026】
また、顕微鏡装置10には、顕微鏡装置10内での各位置の間で試料Sを移動させる試料移動手段として、試料搬送部14及び試料ステージ15が設けられている。試料搬送部14は、試料格納部11での試料Sの格納位置と、マクロ画像取得部20及びミクロ画像取得部30のそれぞれでの画像取得位置との間で、必要に応じて試料Sを搬送する搬送手段である。また、試料ステージ15は、マクロ画像またはミクロ画像の画像取得時に試料Sが載置されるとともに、試料Sの画像取得位置の設定、調整等に用いられる。
【0027】
制御装置60は、顕微鏡装置10における画像取得動作の制御、画像取得条件の設定、及び取得された試料Sの画像データの処理等を行う制御手段である。制御装置60は、例えばCPU及び必要なメモリ、ハードディスクなどの記憶装置を含むコンピュータによって構成される。また、この制御装置60に対して、表示装置71、及び入力装置72が接続されている。表示装置71は、例えばCRTディスプレイまたは液晶ディスプレイであり、本画像取得装置の動作に必要な操作画面の表示、あるいは取得された試料Sの画像の表示等に用いられる。また、入力装置72は、例えばキーボードまたはマウスであり、画像取得に必要な情報の入力、画像取得動作についての指示の入力等に用いられる。
【0028】
図1に示した画像取得装置の構成について、さらに説明する。図2は、蛍光画像取得装置における顕微鏡装置10、及び制御装置60の構成の一例を示すブロック図である。また、図3は、顕微鏡装置10におけるマクロ画像取得用の光学系の構成の一例を概略的に示す図である。また、図4は、顕微鏡装置10におけるミクロ画像取得用(高解像度での蛍光観察画像取得用)の光学系の構成の一例を概略的に示す図である。
【0029】
ここで、図3及び図4中に示すように、顕微鏡装置10の構成について水平方向で互いに直交する2方向をX軸方向及びY軸方向とし、水平方向に直交する垂直方向をZ軸方向とする。これらのうち、垂直方向であるZ軸方向が本顕微鏡システムにおける画像取得の光軸の方向となっている。また、図2においては、試料格納部11及び試料搬送部14等については図示を省略している。また、本顕微鏡装置10において画像取得の対象となる試料Sは、上述したように、例えば蛍光性の色素で染色された生体サンプルが密封されたスライドである。
【0030】
蛍光測定の対象となる試料Sは、画像取得部20、30における画像取得時には、試料ステージ15上に載置される。この試料ステージ15は、ステッピングモータ、DCモータ、またはサーボモータ等を用い、X軸方向及びY軸方向(水平方向)に移動可能なXYステージとして構成されている。このような構成において、試料ステージ15をXY面内で駆動することにより、画像取得部20、30での試料Sに対する画像取得位置の設定、調整が行われる。また、本実施形態においては、この試料ステージ15は、マクロ画像取得部20での画像取得位置、及びミクロ画像取得部30での画像取得位置の間で移動可能となっている。
【0031】
試料Sのマクロ画像を取得するためのマクロ画像取得位置に対し、図3に示すように、光軸20aに対して所定位置にそれぞれマクロ画像取得部20、及びマクロ用光源25が設置されている。マクロ用光源25は、試料Sに対してマクロ画像取得用の光像を生成するための光を照射する照明手段である。
【0032】
また、マクロ画像取得部20は、試料Sの光像による2次元画像の取得が可能な2次元CCDセンサなどのマクロ用撮像装置21を用いて構成されている。また、試料Sが配置されるマクロ画像取得位置と、撮像装置21との間には、試料Sの光像を導く光学系として撮像光学系22が設けられている。
【0033】
図3に示す構成例においては、マクロ用光源25として、暗視野光源26、及び明視野光源27の2つの光源が設けられている。これらのうち、マクロ用暗視野光源26は、試料Sのマクロ画像として試料Sからの散乱光を検出することによる暗視野マクロ画像を取得する際に用いられる暗視野照明手段であり、マクロ画像を取得する際の光軸と直交する面に対して、マクロ画像取得部20とは反対側から斜めに光を照射する位置に配置されている。
【0034】
具体的には、図3に示す構成においては、暗視野光源26は、光軸20aに対して、試料Sの斜め下方から光を照射する位置に斜光照明手段として設置されている。このような暗視野光源26によれば、蛍光性の色素で染色された試料Sが画像取得の対象となっている場合でも、試料Sのマクロ画像を充分なコントラストで好適に取得することができる。このような高コントラストのマクロ画像は、蛍光観察画像であるミクロ画像を取得する際の画像取得範囲などの撮像条件の設定に利用する上で有効であり、蛍光観察画像の撮像条件を確実に設定することが可能となる。
【0035】
また、本構成例では、マクロ用光源25として、暗視野光源26に加えて、明視野光源27が設置されている。マクロ用明視野光源27は、試料Sのマクロ画像として明視野マクロ画像を取得する際に用いられる明視野照明手段であり、試料ステージ15の下方に透過照明手段として設置されている。これらの暗視野光源26及び明視野光源27は、具体的な試料Sの状態等によって必要に応じて使い分けられる。
【0036】
一方、試料Sのミクロ画像を取得するためのミクロ画像取得位置に対し、図4に示すように、光軸30aに対して所定位置にそれぞれミクロ画像取得部30、及びミクロ用光源35が設置されている。ミクロ用光源35は、試料Sに対してミクロ画像取得用の光像を生成するための光を照射する照明手段である。
【0037】
また、ミクロ画像取得部30は、試料Sの光像による高解像度の画像を取得可能なミクロ用撮像装置31を含んで構成されている。ミクロ用撮像装置31は、具体的には、所定の方向(第1の方向)を長手方向(長軸方向)とする1次元画像または2次元画像を取得可能な撮像装置であり、試料Sの蛍光観察画像、またはその他の高解像度での観察画像の取得に用いられる。
【0038】
このようなミクロ画像取得部30の撮像装置31に対し、試料ステージ15は、蛍光観察画像を取得する際に、撮像装置31によって試料Sが第2の方向に走査されるように、試料ステージ15と画像取得部30との位置関係を調整する走査手段として機能する。ここで、撮像装置31による試料Sに対する撮像領域(視野)の長手方向となる第1の方向と、試料Sの走査方向となる第2の方向とは、XY面(水平面)内において互いに異なる方向、好ましくは互いに直交する方向として設定される。
【0039】
また、試料ステージ15上で試料Sが配置されるミクロ画像取得位置と、撮像装置31との間には、試料Sの光像を撮像装置31へと導く光学系として、対物レンズ32、及び導光光学系34が設けられている。対物レンズ32は、試料Sからの光(例えば蛍光)を入射して、試料Sの光像(例えば蛍光像)を生成する。また、導光光学系34は、例えばチューブレンズによって構成され、対物レンズ32を通過した試料Sの蛍光像などの光像をミクロ用撮像装置31へと導く。
【0040】
また、図4に示した構成では、対物レンズ32に対して、ステッピングモータまたはピエゾアクチュエータ等を用いたZステージ33が設けられており、このZステージ33で対物レンズ32をZ軸方向に駆動することで、試料Sに対する焦点合わせ等が可能となっている。
【0041】
図4に示す構成例においては、ミクロ用光源35として、透過光源36、及び励起光源40の2つの光源が設けられている。これらのうち、透過光源36は、試料Sのミクロ画像として透過観察画像を取得する際に用いられる透過照明手段であり、透過照明光学系37とともに試料ステージ15の下方から光を照射するように設置されている。また、透過照明光学系37には、透過照明のON/OFFを切り換えるためのシャッタ38が設けられている。
【0042】
また、励起光源40は、試料Sのミクロ画像として試料Sで発生した蛍光による蛍光観察画像を取得する際に用いられる励起光供給手段であり、試料Sに対して蛍光測定用の励起光を供給する放電管などの光源によって、落射照明手段として構成されている。また、この励起光源40に対し、試料Sへと励起光を照射するための光学系として、導光光学系42及び蛍光光学系ユニット44を含む励起光照射光学系41が設置されている。
【0043】
励起光照射光学系41のうちで励起光源40側の光学系部分を構成する導光光学系42には、励起光による落射照明のON/OFFを切り換えるためのシャッタ43が設けられている。また、蛍光光学系ユニット(蛍光キューブ)44は、励起光源40からの励起光を反射して試料ステージ15上の試料Sへと照射するとともに、試料Sからの蛍光を画像取得部30の撮像装置31へと通過させるダイクロイックミラー45を含んで構成されている。
【0044】
また、この蛍光光学系ユニット44は、図4及び図5に示すように、ミクロ画像取得用の光軸30aに対して、光軸30aを含む挿入位置と、光軸30aを外れた待機位置との間で移動可能に構成されている。透過光源36からの透過照明によって試料Sの透過観察画像を取得する際には、図5(a)に示すように、光学系ユニット44は光軸30aを外れた待機位置(図4中に破線で示す位置)に配置される。一方、励起光源40からの落射照明によって試料Sの蛍光観察画像を取得する際には、図5(b)に示すように、光学ユニット44は光軸30aを含む挿入位置(図4中に実線で示す位置)に配置される。
【0045】
また、励起光照射光学系41は、励起光源40から試料Sへと照射される励起光の照射領域を整形するためのシリンドリカルレンズ系を含んで構成されている。このシリンドリカルレンズ系は、図4に示した構成では、例えば導光光学系42内において設けられる。このようなシリンドリカルレンズ系を用いることにより、試料Sに対する励起光の照射領域は、所定の方向を長手方向(長軸方向)とする領域に設定される。
【0046】
また、このシリンドリカルレンズ系を含む励起光照射光学系41は、試料Sでの励起光の照射領域と、撮像装置31による試料S上での撮像領域(撮像の視野)とで長軸方向が互いに一致するとともに、照射領域が撮像領域よりも広くなるように励起光を試料Sへと照射するように構成される。すなわち、励起光照射光学系41は、試料Sでの撮像領域が励起光の照射領域内に含まれる照射条件で、励起光を試料Sへと照射する。なお、試料Sと撮像装置31との間の光路上、あるいは励起光源40とダイクロイックミラー45との間の光路上には、必要に応じて励起光または蛍光を選択するための光フィルタを設置しても良い。
【0047】
図6は、図4に示したミクロ画像取得用の光学系の構成の具体例を示す図である。本構成例では、励起光を供給する励起光源40として、放電管である水銀ランプ40aが用いられている。また、励起光源40と蛍光光学系ユニット44との間の導光光学系42は、シリンドリカルレンズ系46、フォーカスレンズ系47、及びコリメートレンズ系48の3つのレンズ系によって構成されている。
【0048】
蛍光光学系ユニット44のダイクロイックミラー45等とともに励起光照射光学系41を構成するこれらのレンズ系46、47、48は、それぞれ1または複数のレンズによって構成されている。また、透過光源36と試料Sとの間の透過照明光学系37は、ライトガイド37a、コリメートレンズ37b、ミラー37c、及びコンデンサレンズ37dによって構成されている。
【0049】
試料Sの蛍光観察画像などのミクロ画像の取得に用いられるミクロ画像取得部30での撮像装置31としては、上記したように第1の方向を長手方向とする1次元画像または2次元画像を取得可能な撮像装置が用いられる。この撮像装置31としては、具体的には、第1の方向を長手方向とする1次元画像の取得が可能な1次元センサを用いることができる。あるいは、撮像装置31として、第1の方向を長手方向とする2次元画像の取得及びTDI駆動が可能な2次元センサを用いることができる。
【0050】
これらの試料ステージ15、マクロ画像取得部20、ミクロ画像取得部30、マクロ用光源25である光源26、27、及びミクロ用光源35である光源36、40に対して、それらを駆動制御する制御手段としてステージ制御部16、マクロ用光源制御部17、及びミクロ用光源制御部18が設けられている。また、マクロ画像取得部20、ミクロ画像取得部30は、それぞれ撮像制御部の機能を含んで構成されている。
【0051】
ステージ制御部16は、XYステージである試料ステージ15、及びZステージ33を駆動制御することにより、試料Sに対する撮像条件の設定、調整、蛍光観察画像取得時の撮像装置31による試料Sの走査等を制御する。また、マクロ用光源制御部17は、暗視野光源26及び明視野光源27を駆動制御することにより、試料Sの暗視野マクロ画像及び明視野マクロ画像を取得する際の光の照射を制御する。また、ミクロ用光源制御部18は、透過光源36、励起光源40、及びシャッタ38、43を駆動制御することにより、試料Sの透過観察画像及び蛍光観察画像を取得する際の光の照射を制御する。
【0052】
制御装置60は、マクロ画像取得制御部61及びミクロ画像取得制御部62を含む画像取得制御部と、マクロ画像処理部68及びミクロ画像処理部69を含む画像データ処理部と、撮像条件設定部65とを有している。画像取得制御部は、上記した制御部16〜18等を介して、顕微鏡装置10における試料Sの画像取得動作を制御する。
【0053】
また、画像データ処理部には、画像データ通信I/F(インターフェイス)66、67を介して、画像取得部20で取得されたマクロ画像の画像データ、及び画像取得部30で取得されたミクロ画像の画像データが入力されており、これらの画像データについて必要なデータ処理が行われる。また、画像データ処理部に入力された画像データ、画像データを処理して得られた各種のデータや情報、あるいは画像取得制御部で用いられる制御情報等は、必要に応じてデータ記憶部に記憶、保持される。
【0054】
具体的には、画像取得制御部のマクロ画像取得制御部61は、ステージ制御部16、マクロ画像取得部20、及びマクロ用光源制御部17を介し、試料Sのマクロ画像取得位置の設定動作、マクロ画像取得部20の撮像装置21によるマクロ画像の取得動作、暗視野光源26による暗視野マクロ画像取得用の光の照射動作、及び明視野光源27による明視野マクロ画像取得用の光の照射動作を制御する。
【0055】
ミクロ画像取得制御部62は、ステージ制御部16、ミクロ画像取得部30、及びミクロ用光源制御部18を介し、試料Sのミクロ画像取得位置の設定動作、ミクロ画像取得部30の撮像装置31によるミクロ画像の取得動作、透過光源36による透過観察画像取得用の光の照射動作、励起光源40による蛍光観察画像取得用の励起光の照射動作、及び光学系ユニット44の移動動作を制御する。また、ミクロ画像取得制御部62は、撮像条件設定部65で設定された撮像条件を参照して、試料Sのミクロ画像の取得を制御する。
【0056】
マクロ画像処理部68には、マクロ用画像データ通信I/F66を介して、マクロ画像取得部20の撮像装置21によって取得された試料Sのマクロ画像の画像データが入力されている。この画像処理部68は、入力されたマクロ画像の画像データに対して補正、加工、記憶などの必要なデータ処理を実行する。
【0057】
ミクロ画像処理部69には、ミクロ用画像データ通信I/F67を介して、ミクロ画像取得部30の撮像装置31によって取得された試料Sのミクロ画像の画像データが入力されている。この画像処理部69は、画像処理部68と同様に、入力されたミクロ画像の画像データに対して補正、加工、記憶などの必要なデータ処理を実行する。本実施形態においては、ミクロ画像処理部69は、取得されたミクロ画像の画像データを用い、目的とする試料Sの高解像度の蛍光観察画像のデータである試料データを作成する。
【0058】
撮像条件設定部65は、顕微鏡装置10のマクロ画像取得部20で取得された試料Sのマクロ画像を参照してミクロ画像の撮像条件を設定する設定手段である。撮像条件設定部65は、マクロ画像処理部68において必要な処理が行われたマクロ画像を参照し、試料Sの蛍光観察画像などのミクロ画像の撮像条件として、画像取得の対象物を含む範囲に応じた画像取得範囲を設定する。あるいは、撮像条件設定部65は、必要に応じて他の撮像条件、例えば焦点合わせを実行するための焦点計測位置、画像取得範囲での対象物の画像取得についての焦点情報などの焦点関連情報を設定する。
【0059】
ここで、画像取得部20、30における試料Sのマクロ画像及びミクロ画像の取得について説明しておく。マクロ画像取得部20では、蛍光観察画像などのミクロ画像の撮像条件の設定に用いられる試料Sの全体像であるマクロ画像が取得される。例えば、上記したスライドガラスに組織切片等の生体サンプルが密封されたスライドを試料Sとした場合、マクロ画像としては、スライド全体、または蛍光性の色素で染色された生体サンプルを含む所定範囲の画像が取得される。
【0060】
また、図3に示した構成の光学系では、マクロ画像の取得においては、対象となる試料Sの種類、あるいは取得しようとするマクロ画像の種類等に応じて、試料Sに対して斜め下方に配置された暗視野光源26による斜光照明、または試料Sの下方に配置された明視野光源27による透過照明が、適宜選択されて用いられる。
【0061】
また、ミクロ画像取得部30では、設定された撮像条件を参照して、目的とする解像度での試料Sのミクロ画像が取得される。このミクロ画像の取得は、好ましくは図7(a)に模式的に示すように、マクロ画像よりも高い所定の解像度で試料Sを2次元に走査することによって行われる。ここで、1次元CCDカメラあるいはTDI駆動2次元CCDカメラなどの撮像装置31を用いたミクロ画像の取得について、例えば、試料Sに対して平行なXY面内において、撮像装置31による撮像領域の長軸方向(第1の方向)をX軸方向、この長軸方向に直交する方向をY軸方向とする。このとき、ミクロ画像の取得においては、撮像装置31による撮像領域の長軸方向に直交する方向、図7(a)においてはY軸の負の方向が、試料Sに対する走査方向(第2の方向)となる。
【0062】
画像取得部30の撮像装置31を用いた蛍光観察画像の取得(画像取得ステップ)においては、まず、試料Sに対して、励起光照射光学系41を介して励起光を照射するとともに(励起光照射ステップ)、撮像装置31によって試料ステージ15上の試料Sを走査方向に走査して(走査ステップ)、所望の解像度を有するストリップ状の部分画像Aを取得する。さらに、図7(a)に示すように、このような部分画像の取得を撮像面の長軸方向(X軸の正の方向)に沿って撮像位置をずらしながら複数回繰り返して、複数の部分画像A、B、…、Iを取得する。このような試料Sの走査は、例えば、走査手段として機能する試料ステージ15を駆動して試料ステージ15と画像取得部30の撮像装置31との位置関係を調整することによって行われる。
【0063】
このようにして得られた部分画像A〜IをX軸方向に並べて合成することで、試料Sの全体の蛍光観察画像などのミクロ画像を生成することができる。このようなミクロ画像の取得方法によれば、試料Sの画像データを充分に高い解像度で好適に取得することが可能である。
【0064】
なお、図7(a)中において、部分画像A内に斜線で示したX軸方向を長手方向とする領域は、撮像装置31での撮像面に対応し、X軸方向を長軸方向とする試料S上での撮像領域を示している。また、このような撮像領域に対して、シリンドリカルレンズ系を含む励起光照射光学系41による励起光の照射領域は、図7(a)中において上記の撮像領域を囲む破線によって示すように、照射領域と撮像領域とで長軸方向が互いに一致するとともに、照射領域が撮像領域よりも広くなるように設定されている。
【0065】
また、蛍光観察画像などのミクロ画像の撮像条件の設定については、撮像条件設定部65において、マクロ画像取得部20で取得されたマクロ画像を参照して、ミクロ画像の撮像条件として画像取得範囲、及び焦点計測位置を設定することが好ましい。これにより、ミクロ画像取得に用いられるパラメータを好適に設定して、高解像度で良好な状態の試料の蛍光観察画像を取得することが可能となる。
【0066】
具体的には、上記と同様にスライドを試料Sとした場合、図7(b)に示すように、試料Sに対する画像取得範囲は、画像取得の対象であるスライド中の生体サンプルLを含む矩形状の範囲Rによって設定することができる。ミクロ画像取得部30における試料Sの2次元の走査(図7(a)参照)は、このように設定された画像取得範囲R内について行われる。また、焦点計測位置は、ミクロ画像取得部30において、試料Sのミクロ画像の取得に先立って試料Sに対する焦点情報を取得する際に用いられるものである。ミクロ画像取得部30では、設定された1点または複数点の焦点計測位置について焦点計測を行って、試料Sのミクロ画像を取得する際の焦点情報としての焦点位置、焦点面、焦点マップ等を決定する。
【0067】
図7(b)においては、マクロ画像を用いた焦点計測位置の設定について、9点の焦点計測位置を自動で設定する場合の例を示している。ここでは、試料Sに対して先に設定された画像取得範囲Rを3×3で9等分し、そのそれぞれの領域の中心点によって、9点の焦点計測位置Pを設定している。
【0068】
また、ここでは、9点の焦点計測位置のうち8点については初期設定された位置が画像取得の対象物である生体サンプルLの範囲内に含まれているため、そのまま焦点計測位置として設定される。一方、左下の1点については生体サンプルLの範囲外にあるため、この左下の焦点計測位置については、例えば画像取得範囲R内で中心に向けて移動するなどの方法で求められる位置Qを焦点計測位置として設定しても良い。あるいは、このような位置については焦点計測位置から除外しても良い。また、このような焦点計測位置については、自動ではなく操作者による手動で設定する構成としても良い。
【0069】
以上説明した例のように、試料Sをスライドとした場合、ミクロ画像を取得するための撮像条件については、好ましくは、まず、マクロ画像取得部20で取得されたマクロ画像を参照して、ミクロ画像の撮像条件として生体サンプルLを含む画像取得範囲R、及び所定の点数の焦点計測位置Pを設定する。そして、ミクロ画像取得部30において焦点計測位置Pに基づいて試料Sに対する焦点位置または焦点面などについての焦点情報を取得するとともに、得られた焦点情報、及び設定された画像取得範囲Rなどの撮像条件に基づいて、試料Sの蛍光観察画像などのミクロ画像の取得が行われる。
【0070】
また、ミクロ画像処理部69における試料Sの蛍光観察画像の画像データの作成は、例えば図7(a)に示した複数の部分画像A、B、…、Iを元にして、図8に示すように行われる。ここでは、ミクロ画像取得部30の撮像装置31で取得されたミクロ画像の画像データとして、ストリップ状の部分画像A、B、C、…の画像データ群が、画像データ通信I/F67を介して制御装置60に入力される。
【0071】
ミクロ画像処理部69は、これらの複数の部分画像を撮像領域の長手方向に並べて合成することにより、試料Sの全体に対する蛍光観察画像となる画像データを生成して試料データとする(画像合成ステップ)。これにより、ミクロ画像処理部69は、複数の部分画像を合成して試料Sの蛍光観察画像を生成する画像合成手段として機能する。この画像処理部69によって生成された試料データは、例えば、バーチャル顕微鏡での蛍光観察画像データとして利用することができる。
【0072】
本実施形態による蛍光画像取得装置、及び蛍光画像取得方法の効果について説明する。
【0073】
上記した蛍光画像取得装置、及び蛍光画像取得方法においては、画像取得用の撮像装置として、第1の方向を長手方向とする1次元画像または2次元画像を取得可能な撮像装置31を用い、この撮像装置31によって試料Sを第2の方向に走査することで、試料Sの蛍光観察画像を取得している。このような構成によれば、試料Sの蛍光観察画像を、充分に高解像度で効率良く取得することが可能となる。
【0074】
また、このような画像取得系の構成に対し、励起光源40の放電管から供給される蛍光測定用の励起光を試料Sへと導く励起光照射光学系41においてシリンドリカルレンズ系46を設置し、このシリンドリカルレンズ系46により、試料Sに対する照射領域が所定の方向を長軸方向とする領域となるように励起光源40からの励起光束を整形している。また、このように整形された照射領域について、試料Sでの励起光の照射領域の長軸方向と、撮像装置31による視野となる撮像領域の長軸方向(上記した第1の方向)とを互いに一致させている。これにより、試料Sに供給される励起光の光量のうちで撮像装置31の視野外に照射される余分な励起光の光量が低減される。
【0075】
ここで、上記のように励起光照射光学系41のシリンドリカルレンズ系46で試料Sに対する励起光の照射領域を整形する構成では、励起光に含まれる各波長成分について、色収差によって試料Sでの照射領域の範囲、面積等が波長に応じて変化する場合がある。例えば、図9(a)〜(c)には、波長λ1、λ2、λ3の3つの波長で変化する照射領域R1、R2、R3を模式的に示している。
【0076】
これに対して、上記構成では、シリンドリカルレンズ系46で整形された励起光束の試料Sへの照射領域について、照射領域が撮像領域よりも広くなるように設定している。これにより、色収差によって波長に応じた照射領域の変化が生じている場合であっても、図9(d)に示すように、撮像装置31による撮像領域R0を、励起光の各波長成分での照射領域R1〜R3内に確実に位置させることが可能となる。また、図9に示す例では、図9(e)に設定範囲R5を示すように、撮像領域R0の設定範囲は、短軸方向について照射領域R3の範囲内であれば良い。この場合、例えば、照射領域R3の略中心に撮像領域R0を設定する方法を用いることができる。
【0077】
このような励起光照射光学系41の構成、及び試料Sに対する励起光の照射領域の具体例について説明する。図10は、励起光照射光学系の構成の一例を示す図であり、図10(a)は試料Sに対する照射領域の長軸方向(第1の方向)についての光学系の構成図、図10(b)は照射領域の短軸方向(第2の方向)についての光学系の構成図である。ここで、本構成例においては、シリンドリカルレンズ系46は、図10(b)の構成においてf=∞となる向きに配置されている。
【0078】
図10に示す構成例において、励起光源40のランプハウスでの発光点から出射された励起光は、その前方に内蔵され、前側焦点位置が発光点と合致するように調整されたコレクタレンズによって平行光束とされた後、シリンドリカルレンズ系46へと入射される。ここで、コレクタレンズを光軸に沿って移動可能とすることにより、励起光源40から出射される励起光束の収束、発散状態を調整することができる。
【0079】
コレクタレンズから出射された平行光束は、図10(a)に示すように第1の方向について圧縮され、第2の方向を長軸方向とする第1のライン状励起光像を形成する。このとき、第2の方向については、励起光束は平行光束のままである。
【0080】
次に、この第1のライン状励起光像に対し、前側焦点位置が合致するようにフォーカスレンズ系47を設置する。これにより、第1の方向では、圧縮された励起光束が再び平行光束に戻される。一方、平行光束のままとなっていた第2の方向では、フォーカスレンズ系47の後側焦点位置に光束が圧縮される。これにより、フォーカスレンズ系47の後側焦点位置において、シリンドリカルレンズ系46による第1のライン状励起光像とは直交する第1の方向を長軸方向とする第2のライン状励起光像が形成される。
【0081】
さらに、この第2のライン状励起光像に対し、前側焦点位置が合致するようにコリメートレンズ系48を設置する。これにより、第2の方向では、圧縮された励起光束が再び平行光束に戻される。一方、平行光束となっていた第1の方向では、コリメートレンズ系48の後側焦点位置に光束が圧縮され、再び第2の方向を長軸方向とする第3のライン状励起光像が形成される。
【0082】
ここで、この第3のライン状励起光像に対して、顕微鏡対物レンズ32をその入射瞳が合致するように配置する。これにより、第1の方向を長軸方向とする第2のライン状励起光像が、コリメートレンズ系48及び対物レンズ32によって試料面上に投影され、試料Sに対する励起光の照射領域を形成することとなる。このような構成において、長軸方向となる第1の方向についての試料面上での光像幅は、例えば1mm程度である。また、短軸方向となる第2の方向についての試料面上での光像幅は、例えば15μm程度である。
【0083】
このような励起光照射光学系41において、各レンズ及びレンズ系の焦点距離、配置、及びその組合せは、試料Sに対する励起光の照射領域となる試料面上に形成される励起光像の形状、大きさ等、あるいは対物レンズ32の入射瞳に対する励起光束の入射条件などに応じて設定することが好ましい。
【0084】
また、このような構成では、励起光束の長軸方向はケーラー照明の構成となっており、励起光による均一な照明が実現できる。一方、励起光束が圧縮された短軸方向は、励起光源40の発光点における輝度分布が反映されたクリティカル照明の構成となっている。ただし、この励起光の照射領域の短軸方向は、撮像装置31による試料Sの走査方向となるため、励起光による照明がこの方向で不均一になった場合であっても、蛍光観察画像の取得上、問題は生じない。
【0085】
図11及び図12は、励起光照射光学系41によって試料Sへと照射される励起光の照射領域の例を示す図である。ここで、図11は、波長365nmの励起光をスリット無しの条件で試料Sに照射した場合の照射領域(励起光の照射光量分布)を示す図である。また、図12は、波長576nmの励起光を同じくスリット無しの条件で試料Sに照射した場合の照射領域を示す図である。
【0086】
これらの図11及び図12に示す励起光の照射領域では、波長によって照射領域の形状や範囲が変化していることがわかる。また、励起光照射光学系41においてレンズなどの光学素子の軸ずれ等があった場合、図9に模式的に示したように、照射領域の位置ずれも発生する。これに対して、上記したように試料面上での励起光の照射領域を撮像領域よりも広く設定しておくことにより、色収差によって波長に応じた照射領域の変化が生じている場合であっても、撮像装置31による撮像領域を、励起光の照射領域内に確実に位置させることが可能となる。
【0087】
ここで、試料Sに対する励起光の具体的な照射条件については、励起光照射光学系41は、励起光の照射領域が、撮像装置31による撮像領域に対して長軸方向に1.05倍〜3倍、短軸方向に2倍〜20倍となるように励起光を試料へと照射することが好ましい。これにより、撮像装置31の視野外に照射される余分な励起光の光量の低減と、撮像装置31による撮像領域を励起光の各波長での照射領域内に確実に位置させる構成とを、好適に両立することが可能となる。このような照射領域の設定については、具体的には光学系に使用するレンズの収差などの条件を考慮して設定することが好ましい。
【0088】
図13は、励起光の導光光路上にスリットを置いた場合の試料面上での励起光の光量効率の波長依存性を示すグラフである。ここで、励起光照射光学系でのレンズ等の構成については、励起光の中心波長を470nmとして最適化した配置を想定し、励起光源から出射される光量を1とした場合の各波長での光量効率をシミュレーションした結果を示している。また、図13において、グラフ(a)はスリット幅をやや狭い181μmに設定した場合の光量効率の波長依存性を示し、グラフ(b)はスリット幅を800μmまで広げた場合の光量効率の波長依存性を示している。
【0089】
これらのグラフからわかるように、スリット幅を狭くしたグラフ(a)では、試料面上での励起光の光量効率が波長によって変化している。これは、励起光の照射領域について上述したように、色収差の影響により波長に応じて励起光の光路が変化することによるものである。一方、スリット幅を広くしたグラフ(b)では、励起光の光量効率は波長の影響を受けなくなっている。
【0090】
ここで、上記したようにシリンドリカルレンズ系46を用いて試料Sへの励起光の照射領域を整形する構成では、スリットを用いることなく照射領域を整形することが可能である。このような構成は、励起光の光量効率の向上、及び光量効率の波長依存性の抑制などの点でも有効である。
【0091】
また、励起光の照射領域の整形にスリットを用いた場合、照射領域の縁部において励起光の光量が急激に変化する。このような励起光の照射光量の急激な変化は、蛍光観察画像の取得において、視野外からの蛍光の影響、あるいは色収差や退色の影響が発生する原因となる場合がある。これに対して、シリンドリカルレンズ系46を含む光学系41によって照射領域を整形する構成では、スリットを用いる場合に比べて照射領域の縁部での励起光の光量の変化を緩やかにすることができる。ただし、このような場合でも、必要に応じて励起光照射光学系41内に追加的にスリットを設ける構成としても良い。
【0092】
上記実施形態による蛍光画像取得装置、及び蛍光画像取得方法の効果、及びその具体的な構成についてさらに説明する。
【0093】
上記した蛍光画像取得装置においては、図4に示したように、励起光照射光学系41において、励起光源40からの励起光を反射して試料Sへと照射するとともに、試料Sからの蛍光を画像取得部30の撮像装置31へと通過させるダイクロイックミラー45を含む蛍光光学系ユニット(落射照明光学系ユニット)44を設けた構成としている。このような構成によれば、試料Sに対する励起光の落射照明光学系と、試料Sにおいて発生した蛍光の画像取得部30への導光光学系とを好適に両立させることができる。
【0094】
また、このような蛍光光学系ユニット44については、図5に示したように、ミクロ画像取得用の光軸30aに対して、光軸30aを含む挿入位置と、光軸30aを外れた待機位置との間で移動可能に構成されていることが好ましい。このような構成では、さらに、透過光源36による試料Sの透過観察画像の取得と、励起光源40による蛍光観察画像の取得とを好適に両立させることができる。
【0095】
図14及び図15は、蛍光光学系ユニット(蛍光キューブ)44の移動機構を含む励起光の落射照明光学系の構成の一例を示す斜視図である。本構成例では、励起光源40に対して所定方向に配置された光学系支持板41a上に、光源40側から順にシリンドリカルレンズ系46、落射照明用シャッタ43、フォーカスレンズ系47、コリメートレンズ系48、及び蛍光光学系ユニット44が設置されている。また、蛍光光学系ユニット44に対して移動機構44aが設けられており、蛍光光学系ユニット44を待機位置(図14、図5(a))、及び挿入位置(図15、図5(b))の間で移動することが可能な構成となっている。なお、図14及び図15においては、この移動機構44aの具体的な構造については、図示を省略している。
【0096】
また、このような蛍光光学系ユニット44では、必要に応じて、ダイクロイックミラー45に加えて励起光の波長成分を選択する励起フィルタ、あるいは蛍光成分に対する蛍光フィルタ等をさらに設置して光学系ユニットを構成しても良い。また、蛍光測定の対象となる試料Sには様々な種類のものがあるため、励起光照射光学系41においては、励起光の光量を調整するためのNDフィルタ等を必要に応じて設置するための光学素子設置部を設けておくことが好ましい。また、各レンズ系の前側焦点位置、及び後側焦点位置は、このような光学素子の設置位置等を考慮して設定することが好ましい。
【0097】
上記した蛍光画像取得装置において励起光源40として用いられる放電管については、励起光として白色光を供給する白色光源であることが好ましい。このような放電管としては、具体的には例えば、水銀ランプ、あるいはハロゲンランプなどが挙げられる。また、励起光源としては、例えばLEDなどの発光素子を用いても良い。
【0098】
また、試料の蛍光観察画像の取得に用いられる画像取得手段は、上記実施形態においては単一の撮像装置31を有するミクロ画像取得部30を用いているが、画像取得手段の構成については、具体的には様々な構成を用いることが可能である。そのような構成の1つとして、試料Sからの蛍光を異なる3つの波長成分に分解する波長分解光学系を有するとともに、試料の蛍光観察画像を取得するための撮像装置として、波長分解光学系によって分解された3つの波長成分のそれぞれによる蛍光観察画像を取得する3つの撮像装置を含む構成を用いることができる。このような構成では、3つの撮像装置は、異なる波長成分(色成分)によってそれぞれ形成される試料の光像を取得する。これにより、3つの撮像装置のそれぞれで取得された光像に基づいて、試料のカラーでの蛍光観察画像を取得することが可能となる。
【0099】
図16は、試料の蛍光観察画像の取得に用いられる画像取得部(上記実施形態におけるミクロ画像取得部30)の変形例を示す構成図である。本構成例の画像取得部80は、モアレ縞を抑制するためのローパスフィルタ81と、ローパスフィルタ81を透過した光のうち赤外線を更にカットするIRフィルタ82とを有する。また、画像取得部80は、IRフィルタ82を透過した入射光L10を3つの波長成分の緑色光L11、赤色光L12及び青色光L13に分解する波長分解光学系である色分解光学系83を有する。
【0100】
色分解光学系83は、IRフィルタ82側から順に配置された3つのプリズム(ダイクロイックプリズム)84、85、86から構成されている。そして、色分解光学系83の一部を構成するプリズム84のうち、プリズム85と対面する面上には赤色領域の波長の光成分を反射するダイクロイック膜84aが形成されている。また、プリズム85とプリズム86との間には、青色領域の波長の光成分を反射するダイクロイック膜85aが形成されている。また、これらのダイクロイック膜84a、85aは、何れも緑色領域の波長の光成分を透過させる。
【0101】
従って、プリズム84が有しIRフィルタ82と対面する受光面F10から入射した入射光L10のうち緑色光L11は色分解光学系83内を直進し、プリズム86が有する光出射面F11から出力される。また、赤色光L12は、ダイクロイック膜84aで反射した後、プリズム84内で更に反射してからプリズム84が有する光出射面F12から出力される。更に、青色光L13は、ダイクロイック膜84aを透過した後にダイクロイック膜85aによって反射し、プリズム85内で更に反射してからプリズム85が有する光出射面F13から出力される。
【0102】
各光出射面F11、F12、F13上には、それぞれ各色成分の光の分光特性を整えるためのトリミングフィルタ87を介して、試料Sの蛍光観察画像を取得するための撮像装置88であるCCDセンサが設けられている。また、これらの3つの撮像装置88のそれぞれは、撮像制御部89に接続されている。このように、色分解光学系83と、3つの撮像装置88とを用いる構成によれば、上記したように試料Sのカラーでの蛍光観察画像を取得することが可能となる。
【0103】
また、試料Sの蛍光観察画像を取得するための撮像装置としては、上記したように、1次元CCDセンサ以外にも、例えば、TDI駆動が可能な2次元CCDセンサを用いることができる。このようなTDI駆動2次元センサの利用は、試料Sを撮像装置で走査することによる高解像度の蛍光観察画像の取得を高速化、高感度化する上で有効である。
【0104】
図17は、TDI駆動が可能な2次元CCDセンサからなる撮像装置の構成の一例を示すブロック図である。本構成例による撮像装置90は、光検出部91と、電荷転送部92と、A/D変換部93とを備えている。また、この撮像装置90は、電荷の出力端を複数有するマルチタップの構成を有している。このようなマルチタップ構造は、撮像装置90からの電荷の読み出しを高速化する等の点で有効である。
【0105】
光検出部91は、2次元アレイ状に配列され、それぞれ光電変換機能を有する複数の画素を有し、画素において光入射量に応じて生成された電荷を出力するように構成されている。また、光検出部91に対し、その図中の下方に複数の画素の一方の配列方向である水平方向(図中の左右方向)に沿って、電荷転送部92が設けられている。この電荷転送部92は、光検出部10を構成する複数の垂直シフトレジスタから出力されて並列に入力された電荷を、水平方向に転送して出力端から出力する水平シフトレジスタである。
【0106】
本構成例においては、電荷転送部92は、水平方向について複数に分割された16個の部分電荷転送部T01〜T16を有している。部分電荷転送部T01〜T16は、それぞれ複数かつ同数のセルを有して構成され、図中の左側から右側に向けて順に配置されている。また、部分電荷転送部T01〜T16のそれぞれでの電荷転送方向は、水平方向で図中の右側から左側に向かう方向であり、その左端部が電荷の出力端となっている。
【0107】
また、この電荷転送部92での部分電荷転送部T01〜T16に対し、光検出部91を対応する16個の光検出領域R01〜R16に区分することができる。このような構成において、電荷転送部92の第1部分電荷転送部T01は、光検出部91の第1光検出領域R01内にある画素から垂直シフトレジスタによって出力された電荷を出力方向に転送して、その出力端から出力する。このとき、部分電荷転送部T01の出力端から出力される信号は、光検出領域R01内の複数の垂直シフトレジスタから部分電荷転送部T01の複数のセルに並列に入力された電荷による信号が順次出力される信号列となる。電荷転送部92の第2〜第16部分電荷転送部T02〜T16、及び光検出部91の第2〜第16光検出領域R02〜R16についても、その構成は第1部分電荷転送部T01、及び第1光検出領域R01と同様である。
【0108】
これらの部分電荷転送部T01〜T16に対応して、A/D変換部93には、16個のA/D変換器C01〜C16が設けられている。部分電荷転送部T01〜T16の出力端から出力された光検出部91からの電荷によるアナログ信号は、A/D変換器C01〜C16のうちの対応するA/D変換器においてデジタルのデータ信号へと変換されて、後段の処理回路等へと出力される。
【0109】
図18は、図17に示した撮像装置における光検出部及び電荷転送部の構成の一例を示す平面図である。本構成例においては、光検出部91は、水平方向に4096セル、垂直方向に70ラインで、2次元アレイ状の4096×70画素から構成されている。また、垂直方向については、上下のそれぞれ3ラインずつがダミー領域91bとされ、内側の64ラインが光検出に用いられる領域91aとなっている。
【0110】
この光検出部91に対応して、電荷転送部92は、それぞれ256セルで16個の部分電荷転送部T01〜T16によって構成されている。また、個々の部分電荷転送部の出力端側には、必要に応じてダミーセルが設けられる。また、本構成例においては、光検出部91と電荷転送部92との間に、光検出部91と同様に4096セル、70ラインの蓄積部92aが設けられている。
【0111】
さらに、図18の構成においては、光検出部91の上方に、下方の蓄積部92a及び電荷転送部92と同様の構成の蓄積部93a、及び部分電荷転送部T17〜T32を有する電荷転送部93を設けている。このような構成により、本構成例においては、光検出部91の垂直シフトレジスタにおける電荷転送方向を上下2つの方向のいずれにも設定可能となっている。
【0112】
続いて、上記構成の蛍光画像取得装置を用いた試料Sの画像取得方法の一例について説明する。図19は、試料の蛍光画像取得方法、及び蛍光画像取得装置の各部の駆動方法について概略的に示す図である。まず、画像取得を実行する試料であるスライドSを試料格納部11から取り出して、試料搬送部14で搬送して試料ステージ15上の所定位置にロードする(ステップ1)。そして、マクロ画像取得部20により、スライドSのマクロ画像を取得する。
【0113】
スライドSのマクロ画像の取得においては、スライドS中の生体サンプルLの画像を取得する際には、暗視野光源26が用いられる(ステップ2)。また、スライドSのラベルなどの他の部分の画像を取得する際には、明視野光源27が用いられる(ステップ3)。また、マクロ画像の取得においては、ミクロ画像取得用の光学系では、透過照明用のシャッタ38、及び励起光の落射照明用のシャッタ43はともに閉じた状態である。なお、図19においてはシャッタが閉じた状態を「×」で示し、シャッタが開いた状態を「○」で示している。
【0114】
マクロ画像取得部20で取得されたマクロ画像の画像データは、制御装置60のマクロ画像処理部68へと入力され、マクロ画像に対して必要な処理が行われる。続いて、撮像条件設定部65において、スライドSのマクロ画像を参照して、蛍光観察画像であるミクロ画像の撮像条件として、画像取得の対象物である生体サンプルLを含む範囲に応じた画像取得範囲Rが設定され、さらに、焦点計測位置Pが設定される。
【0115】
一方、マクロ画像の取得が完了したスライドSは、試料搬送部14、または試料ステージ15により、マクロ画像取得部20での画像取得位置から移動され、ミクロ画像取得部30での画像取得位置にセットされる。そして、設定された焦点計測位置Pのそれぞれに対して焦点計測を行うことによる自動焦点合わせが実行され、ミクロ画像の撮像条件として、画像取得範囲Rでの対象物である生体サンプルLの画像取得についての焦点情報が取得される(ステップ4)。
【0116】
この焦点情報の取得においては、透過照明用のシャッタ38が開の状態とされ、透過光源36からの透過照明によって焦点情報の取得が行われる(図5(a)参照)。また、このとき、蛍光光学系ユニット44については、必要に応じて待機位置(OUT)または挿入位置(IN)に配置される。また、蛍光測定の対象となるスライドSに対して、露光時間の設定が行われる(ステップ5)。ここでは、落射照明用のシャッタ43が開の状態とされるとともに、蛍光光学系ユニット44が挿入位置(IN)に配置され、励起光源40からの励起光の落射照明によって露光時間の設定が行われる(図5(b)参照)。
【0117】
続いて、取得された焦点情報、及び設定された露光時間に基づいて、スライドS中の生体サンプルLの蛍光観察画像であるミクロ画像が取得される(ステップ6)。このとき、撮像装置31によってスライドSを走査して部分画像を取得している際には、落射照明用のシャッタ43が開の状態とされ、蛍光光学系ユニット44が挿入位置に配置される。また、部分画像の取得の間で撮像位置を移動する際には、蛍光光学系ユニット44は挿入位置に配置されたままであるが、落射照明用のシャッタ43は閉の状態とされる。以上のステップによってスライドSについて蛍光観察画像の取得を終了したら、そのスライドSをアンロードして試料格納部11へと戻す(ステップ7)。
【0118】
本発明による蛍光画像取得装置、及び蛍光画像取得方法は、上記した実施形態及び構成例に限られるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態では、高解像度の蛍光観察画像を取得するためのミクロ画像取得部30に加えて、マクロ画像取得部20を設けた構成としているが、このようなマクロ画像取得部20等については、不要であれば設けない構成としても良い。また、励起光照射光学系41の構成については、導光光学系42及び蛍光光学系ユニット44を有する上記構成はその一例を示すものであり、それ以外にも様々な構成を用いて良い。
【0119】
また、上記において、ミクロ画像取得部30について3板CCDを例示したが、これに限定されるものではなく、例えば単板CCDなど具体的には様々な変形が可能である。このように単板CCDを用いる場合、光源または単板CCDセンサ前において波長選択フィルタを交換可能としておき、3回画像を取得してそれらを画像合成する構成を用いることができる。あるいは、波長選択せずに単色で画像を取得しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明は、高解像度での試料の蛍光観察画像を好適に取得することが可能な蛍光画像取得装置、及び蛍光画像取得方法として利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】蛍光画像取得装置の一実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】顕微鏡装置及び制御装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図3】マクロ画像取得用の光学系の構成の一例を概略的に示す図である。
【図4】蛍光観察画像であるミクロ画像取得用の光学系の構成の一例を概略的に示す図である。
【図5】蛍光光学系ユニットの待機位置及び挿入位置について示す図である。
【図6】図4に示したミクロ画像取得用の光学系の構成の具体例を示す図である。
【図7】試料の観察画像の取得方法を模式的に示す図である。
【図8】ミクロ画像を用いた試料データの作成について模式的に示す図である。
【図9】試料に対する励起光の照射領域、及び撮像装置による撮像領域について示す模式図である。
【図10】励起光照射光学系の構成の一例を示す図である。
【図11】試料へと照射される励起光の照射領域の一例を示す図である。
【図12】試料へと照射される励起光の照射領域の一例を示す図である。
【図13】試料面上での励起光の光量効率の波長依存性を示すグラフである。
【図14】励起光の落射照明光学系の構成の一例を示す斜視図である。
【図15】励起光の落射照明光学系の構成の一例を示す斜視図である。
【図16】画像取得部の変形例を示す構成図である。
【図17】撮像装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図18】図17に示した撮像装置における光検出部及び電荷転送部の構成の一例を示す平面図である。
【図19】試料の蛍光画像取得方法、及び蛍光画像取得装置の各部の駆動方法について示す図である。
【符号の説明】
【0122】
10…顕微鏡装置、11…試料格納部、12…扉、13…インターロック機構、14…試料搬送部、15…試料ステージ、16…ステージ制御部、17…マクロ用光源制御部、18…ミクロ用光源制御部、20…マクロ画像取得部、21…マクロ用撮像装置、22…撮像光学系、25…マクロ用光源、26…暗視野光源、27…明視野光源、30…ミクロ画像取得部、31…ミクロ用撮像装置、32…対物レンズ、33…Zステージ、34…導光光学系、35…ミクロ用光源、36…透過光源、37…透過照明光学系、38…透過照明用シャッタ、40…励起光源、41…励起光照射光学系、42…導光光学系、43…落射照明用シャッタ、44…蛍光光学系ユニット、45…ダイクロイックミラー、46…シリンドリカルレンズ系、47…フォーカスレンズ系、48…コリメートレンズ系、
60…制御装置、61…マクロ画像取得制御部、62…ミクロ画像取得制御部、65…撮像条件設定部、66、67…画像データ通信I/F、68…マクロ画像処理部、69…ミクロ画像処理部、71…表示装置、72…入力装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光測定の対象となる試料を載置する試料ステージと、
前記試料の蛍光観察画像として、第1の方向を長手方向とする1次元画像または2次元画像を取得する撮像装置を含む画像取得手段と、
前記試料に対して蛍光測定用の励起光を供給する励起光源と、
前記試料へと照射される前記励起光の照射領域を整形するためのシリンドリカルレンズ系を含む励起光照射光学系と、
前記撮像装置によって前記試料が第2の方向に走査されるように、前記試料ステージと前記画像取得手段との位置関係を調整する走査手段とを備え、
前記励起光照射光学系は、前記試料での前記照射領域と前記撮像装置による撮像領域とで長軸方向が互いに一致するとともに、前記照射領域が前記撮像領域よりも広くなるように前記励起光を前記試料へと照射することを特徴とする蛍光画像取得装置。
【請求項2】
前記励起光照射光学系は、前記励起光源からの前記励起光を反射して前記試料へと照射するとともに、前記試料からの蛍光を前記画像取得手段へと通過させるダイクロイックミラーを含む蛍光光学系ユニットを有することを特徴とする請求項1記載の蛍光画像取得装置。
【請求項3】
前記画像取得手段は、前記試料からの蛍光を異なる3つの波長成分に分解する波長分解光学系を有するとともに、
前記撮像装置として、前記波長分解光学系によって分解された3つの波長成分のそれぞれによる前記蛍光観察画像を取得する3つの撮像装置を含むことを特徴とする請求項1または2記載の蛍光画像取得装置。
【請求項4】
前記画像取得手段における前記撮像装置は、前記第1の方向を長手方向とする1次元画像の取得が可能な1次元センサ、または前記第1の方向を長手方向とする2次元画像の取得及びTDI駆動が可能な2次元センサであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の蛍光画像取得装置。
【請求項5】
前記励起光源は、前記励起光として白色光を供給する白色光源であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の記載の蛍光画像取得装置。
【請求項6】
前記走査手段は、前記撮像装置が取得する画像の長手方向となる前記第1の方向に直交する方向を前記試料の走査方向となる前記第2の方向とし、前記撮像装置によって前記試料を前記第2の方向に走査して部分画像を取得するとともに、この部分画像の取得を前記第1の方向に沿って撮像位置をずらしながら複数回繰り返して複数の部分画像を取得するように、前記試料ステージと前記画像取得手段との位置関係を調整することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載の蛍光画像取得装置。
【請求項7】
それぞれ前記第2の方向に走査された前記複数の部分画像を、前記第1の方向に並べて合成することで、前記試料の蛍光観察画像を生成する画像合成手段を備えることを特徴とする請求項6記載の蛍光画像取得装置。
【請求項8】
前記励起光照射光学系は、前記照射領域が、前記撮像領域に対して長軸方向に1.05倍〜3倍、短軸方向に2倍〜20倍となるように前記励起光を前記試料へと照射することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項記載の蛍光画像取得装置。
【請求項9】
試料ステージ上に載置された試料を蛍光測定の対象とし、前記試料の蛍光観察画像として、撮像装置によって第1の方向を長手方向とする1次元画像または2次元画像を取得する画像取得ステップと、
前記試料に対して蛍光測定用の励起光を励起光源から供給し、前記試料へと照射される前記励起光の照射領域を整形するためのシリンドリカルレンズ系を含む励起光照射光学系を介して前記励起光を前記試料へと照射する励起光照射ステップと、
前記撮像装置によって前記試料が第2の方向に走査されるように、前記試料ステージと画像取得手段との位置関係を調整する走査ステップとを備え、
前記励起光照射ステップにおいて、前記試料での前記照射領域と前記撮像装置による撮像領域とで長軸方向が互いに一致するとともに、前記照射領域が前記撮像領域よりも広くなるように前記励起光を前記試料へと照射することを特徴とする蛍光画像取得方法。
【請求項10】
前記走査ステップにおいて、前記撮像装置が取得する画像の長手方向となる前記第1の方向に直交する方向を前記試料の走査方向となる前記第2の方向とし、前記撮像装置によって前記試料を前記第2の方向に走査して部分画像を取得するとともに、この部分画像の取得を前記第1の方向に沿って撮像位置をずらしながら複数回繰り返して複数の部分画像を取得するように、前記試料ステージと前記画像取得手段との位置関係を調整することを特徴とする請求項9記載の蛍光画像取得方法。
【請求項11】
それぞれ前記第2の方向に走査された前記複数の部分画像を、前記第1の方向に並べて合成することで、前記試料の蛍光観察画像を生成する画像合成ステップを備えることを特徴とする請求項10記載の蛍光画像取得方法。
【請求項12】
前記励起光照射ステップにおいて、前記照射領域が、前記撮像領域に対して長軸方向に1.05倍〜3倍、短軸方向に2倍〜20倍となるように前記励起光を前記試料へと照射することを特徴とする請求項9〜11のいずれか一項記載の蛍光画像取得方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2008−51772(P2008−51772A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−231022(P2006−231022)
【出願日】平成18年8月28日(2006.8.28)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】