説明

蛍光表示管の電源供給回路

【課題】 本発明は、トランスと蛍光表示管との間の配線本数を削減でき、抵抗で分圧することなく効率的にグリッド電圧をヒータ電圧に比べて低くできる蛍光表示管の電源供給回路を提供することを目的とする。
【解決手段】 トランス112の第1の2次巻線T3から出力される交流電圧を整流して得た負の直流電圧を第2の2次巻線T2の一端に供給して第2の2次巻線から出力される交流電圧に重畳し、ヒータの両端のうちの第2の2次巻線の他端と接続された一端から負の直流電圧が重畳された交流電圧を整流して蛍光表示管にグリッド電圧として供給するため、トランス112と蛍光表示管114との間の配線本数を削減でき、また、抵抗で分圧することなく効率的にグリッド電圧をヒータ電圧に比べて低くできる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は蛍光表示管の電源供給回路に関し、特に、ディスクに記録された音楽をリミックスするための特殊再生機能を有するCDプレーヤ等の蛍光表示管の電源供給回路に関する。
【0002】
【従来の技術】図5に従来の蛍光表示管の電源供給回路の一例の回路図を示す。本体110側のトランス112の1次巻線T1には交流電源が供給される。トランス112の2次巻線T3から得られた交流電圧は、ダイオードD1とコンデンサC1からなる整流回路によって負の直流電圧に整流され、コントローラ114側の蛍光表示管116のグリッドGにグリッド電圧として供給される。また、2次巻線T3の中間タップから取り出された交流電圧はダイオードD2とコンデンサC2からなる整流回路により正の直流電圧に整流され、コントローラ114側のドライバコントローラ118に蛍光表示管116のプレート電圧として供給される。
【0003】また、トランス112の2次巻線T2のセンタタップには2次巻線T3出力を整流した負の直流電圧が供給されており、2次巻線T2から得られる交流電圧と重畳されて、コントローラ114側へ蛍光表示管116のヒータ(フィラメント)Hにヒータ電圧として供給される。なお、本体110とコントローラ114の間にはこの他にアース線が存在するが、ここでは図示を省略する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本体110からコントローラ114に対して電源を供給するのに、アース線を含めると5本の配線が必要であり、本体110,コントローラ114それぞれにはその分だけの端子が必要であった。また、ヒータHにはグリッド電圧を加えることからヒータ電圧とグリッド電圧はほぼ同電位となるが、ヒータ電圧とグリッド電圧が同電位であると、表示が不要な場合であってもカソードから多少の熱電子がプレートPに達し、表示管が薄く点灯してしまうという不都合があることから、グリッド電圧はヒータ電圧に対し電位を下げる必要がある。
【0005】このために2次巻線T3から得られる交流電圧を高くしてグリッドGに加える負の直流電圧を低くし(絶対値を大きく)、2次巻線T2のセンタタップには抵抗で分圧した電圧を加えることが考えられるが、2次巻線T3は高い電圧を得るために巻線数を多くする必要があり、またヒータHに加える直流電圧については、2次巻線T3から得られた直流電圧を抵抗で分圧して下げる必要があるので効率的ではないという問題があった。
【0006】本発明は、上記の点に鑑みなされたもので、トランスと蛍光表示管との間の配線本数を削減でき、抵抗で分圧することなく効率的にグリッド電圧をヒータ電圧に比べて低くできる蛍光表示管の電源供給回路を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の発明は、蛍光表示管と離間して配置された1次巻線と、第1,第2の2次巻線を有するトランスと、前記第1の2次巻線から出力される交流電圧を整流して得た負の直流電圧を前記第2の2次巻線の一端に供給して前記第2の2次巻線から出力される交流電圧に重畳する、前記トランスの近傍に配置された第1の整流回路と、前記第1の2次巻線の中間タップから出力される交流電圧を整流して得た正の直流電圧を前記蛍光表示管にプレート電圧として供給する、前記トランスの近傍に配置された第2の整流回路と、前記第2の2次巻線と両端を接続された前記蛍光表示管のヒータの両端のうちの前記第2の2次巻線の他端と接続された一端に接続されており前記第2の2次巻線から供給される前記負の直流電圧が重畳された交流電圧を整流して前記蛍光表示管にグリッド電圧として供給する、前記蛍光表示管の近傍に配置された第3の整流回路とを有する。
【0008】このように、第1の2次巻線から出力される交流電圧を整流して得た負の直流電圧を第2の2次巻線の一端に供給して第2の2次巻線から出力される交流電圧に重畳し、ヒータの両端のうちの第2の2次巻線の他端と接続された一端から負の直流電圧が重畳された交流電圧を整流して蛍光表示管にグリッド電圧として供給するため、トランスと蛍光表示管との間の配線本数を削減でき、また、抵抗で分圧することなく効率的にグリッド電圧をヒータ電圧に比べて低くできる。
【0009】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の蛍光表示管の電源供給回路の第1実施例の回路図を示す。同図中、図5と同一部分には同一符号を付す。図1において、本体110側のトランス112の1次巻線T1には交流電源が供給される。トランス112の2次巻線T3から得られる交流電圧はダイオードD4とコンデンサC4からなる整流回路により整流されて直流電圧−20Vとされ、ダイオードD3を介してトランス112の2次巻線T2の一端に供給される。
【0010】また、トランス112の2次巻線T2には交流電圧5Vが得られ、この交流電圧5Vに上記2次巻線T3からの直流電圧−20Vが重畳される。この2次巻線T2の両端は配線120,121によってコントローラ114側の蛍光表示管116のヒータ(フィラメント)Hの両端に接続されている。
【0011】また、2次巻線T3の中間タップから取り出された交流信号はダイオードD2とコンデンサC2からなる整流回路により正電圧に整流され、配線122を通してコントローラ114側のドライバコントローラ118に蛍光表示管116のプレート電圧として供給される。
【0012】コントローラ114側では、ヒータHの両端のうち、ダイオードD3が接続されていない側の一端にダイオードD5のカソードが接続され、そのアノードはコンデンサC5を介して接地され、ダイオードD5とコンデンサC5で半波整流回路が構成されている。この半波整流回路は直流電圧−20Vが重畳された交流電圧5Vを整流して負の直流電圧−27V(=−20−5・√2)を得て(コンデンサC5の容量が十分大きな場合)、ダイオードD5とコンデンサC5の接続点から蛍光表示管116のグリッドGにグリッド電圧として供給する。つまり、グリッド電圧はヒータ電圧に比べて電位が低い。なお、本体110とコントローラ114の間にはこの他にアース線が存在するが、ここでは図示を省略している。
【0013】このように、本実施例では本体110とコントローラ114の間の配線をアース線を含めて4本の配線で済み、本体110,コントローラ114それぞれの端子数も少なくできる。また、グリッド電圧がヒータ電圧に比べて低いため、表示が不要な場合に表示管が薄く点灯してしまうことを防止でき、そのために分圧抵抗を用いる必要がなく、従来に比して効率的となる。また、グリッド電圧を得るための2次巻線T3の出力電圧を下げることができ、2次巻線T3の巻線数を少なくすることができる。
【0014】図2は、本発明の蛍光表示管の電源供給回路の第2実施例の回路図を示す。同図中、図1と同一部分には同一符号を付す。図2において、本体110側のトランス112の1次巻線T1には交流電源が供給される。トランス112の2次巻線T3から得られる交流電圧はダイオードD4とコンデンサC4からなる整流回路により整流されて直流電圧−20Vとされ、ダイオードD3を介してトランス112の2次巻線T2の一端に供給されると共に、ダイオードD6を介してトランス112の2次巻線T2の他端に供給される。
【0015】また、トランス112の2次巻線T2には交流電圧5Vが得られ、この交流電圧5Vに上記2次巻線T3からの直流電圧−20Vが重畳される。この2次巻線T2の両端は配線120,121によってコントローラ114側の蛍光表示管116のヒータ(フィラメント)Hの両端に接続されている。
【0016】また、2次巻線T3の中間タップから取り出された交流信号はダイオードD2とコンデンサC2からなる整流回路により正電圧に整流され、配線122を通してコントローラ114側のドライバコントローラ118に蛍光表示管116のプレート電圧として供給される。
【0017】コントローラ114側では、ヒータHの一端にダイオードD5のカソードが接続され、そのアノードはコンデンサC5を介して接地され、ダイオードD5とコンデンサC5で半波整流回路が構成されている。また、ヒータHの他端にダイオードD7のカソードが接続され、そのアノードはコンデンサC5を介して接地され、ダイオードD7とコンデンサC5で半波整流回路が構成されている。
【0018】この2つの半波整流回路は直流電圧−20Vが重畳された交流電圧5Vを全波整流して負の直流電圧−27.0V(=−20−5・√2)を得て、ダイオードD5とコンデンサC5の接続点から蛍光表示管116のグリッドGにグリッド電圧として供給する。つまり、グリッド電圧はヒータ電圧に比べて電位が低い。なお、本体110とコントローラ114の間にはこの他にアース線が存在するが、ここでは図示を省略している。
【0019】本実施例では、第1実施例に比べ、コンデンサC5の容量を小さくすることができる。
【0020】なお、第1,第2実施例では、本体110とコントローラ114を分離し、配線ケーブルを介して接続する場合を述べたが、これらを一体としてもよい。
【0021】図3は、本発明が適応されるディスク再生装置の一実施例のブロック構成図を示す。このディスク再生装置は、音楽が記録されたCD(コンパクトディスク)を使用して、音楽のテンポやキーを変えたり、同一フレーズを繰り返し再生したり、気に入ったフレーズをミックスしたり、さらにミキサのクロスフェーダを使って音楽をつないだりすることにより自分用のオリジナル演奏を行ったりする、DJ( ディスクジョッキー) 等に用いられる。
【0022】図3において、CD再生部10は、ディスクであるCD(コンパクトディスク)を通常の再生速度の2倍の速度で回転駆動し、CD再生部10のピックアップより再生された2倍速の再生信号はRFアンプを通じてCD再生部10内のCD再生用DSP(ディジタル・シグナル・プロセッサ)に供給され、ここで、EFM(エイト・ツー・フォーティーン・モジュレーション)復調、CIRC(クロスインターリーブ・リードソロモン・コード)のデコード等の信号処理が行われる。
【0023】また、再生信号からサブコードが分離され、サブコードのデコード処理が行われる。サブコードデータはメインマイクロコンピュータ(以降、「メインマイコン」と略す。)12からのカウンタ信号にしたがってメインマイコン12内のRAMに格納される。また、CD再生用DSPで信号処理されたオーディオデータはデータメンテナンス用のDSP14に供給される。
【0024】DSP14にはオーディオデータを格納するためのDRAM(ダイナミックRAM)16が接続されており、DSP14はメモリコントローラの役割を持っている。DRAM16は送られてくるオーディオデータを例えば約10秒間格納することができ、ディフェクト等により音飛びが生じた場合の保護のためのアンチショック機能、また所望の曲を瞬時に音出しするためのクイックスタート機能、所定の2点間を繰り返し再生するためのシームレスループ機能、スクラッチ処理を行う機能、曲のテンポの可変する機能、再生速度を徐々に減速して曲を止めるブレーキ機能等を実現するために用いられる。
【0025】DSP14は2倍速で読み出されたオーディオデータをメインマイコン12からのカウンタ信号に従ってDRAM16に書き込むと同時に、メインマイコン12からのカウンタ信号に従ってオーディオデータを1倍速で読み出してCD音エフェクト用のDSP18に供給する。
【0026】DSP18には作業用メモリとしてのDRAM20が接続されており、DSP18はキー(音程)の調整、出力レベルの調整、曲中のボーカル音量のみを下げるボイス機能等の各種エフェクト処理を実行する。DSP18の出力するオーディオデータはデジタルフィルタを通じてD/Aコンバータ22に供給されると共に、サンプラーエフェクト用のDSP26に供給される。
【0027】DSP26にはデータを格納するためのDRAM(ダイナミックRAM)28が接続されており、DSP26はメモリコントローラの役割を持っている。DRAM28はオーディオデータを例えば約10秒間格納することができる。DSP26はサンプラー処理を行う。ユーザが指定するサンプリング開始点からサンプリング終了点までの期間のオーディオデータをDRAM28に記憶し、ユーザが指定する再生タイミングで記憶されたオーディオデータを読み出してD/Aコンバータ30に供給すると共にDSP18に供給する。DSP18では自装置の出力オーディオデータにDSP26からのオーディオデータを混合してD/Aコンバータ22に供給する。
【0028】また、メインマイコン12には処理のためのプログラムやデータが記憶されたEPROM(イレーザブル・プログラマブルROM)32と、曲( またはトラック) 毎にテンポ値、ループポイント等の各種設定値が記憶されるEEPROM(エレクトリック・イレーザブル・プログラマブルROM)34が接続されている。クロックジェネレータ36はクロック信号を生成してCD再生部10及びメインマイコン12に供給している。
【0029】また、メインマイコン12はカウンタ信号に従って内蔵するRAMからサブコードを読み出してコントローラユニット40のマイクロコンピュータ(以降、「マイコン」と略す。)42に供給する。マイコン42はサブコードをタイムコードに変換してディスプレイ44上に表示する。コントローラユニット40にはユーザが操作する各種の操作キー等が設けられた操作部46が設けられ、マイコン42に接続されている。
【0030】上記のCD再生部10〜EEPROM34が図1,図2における本体110に対応し、コントローラユニット40が図1,図2におけるコントローラ114に対応しており、ディスプレイ44が蛍光表示管116及びドライバコントローラ118に対応している。
【0031】なお、図3に示すディスク再生装置は2台1組とされ、各ディスク再生装置のメインマイコン12は相互に制御情報を送受することにより連動して動作する。図4は2台1組のディスク再生装置のコントローラユニット40の平面図を示す。なお、各ディスク再生装置のコントローラユニット40は同一構成であるため、図4においては一方にのみ符号を付す。
【0032】図4中、ディスプレイ44の表示部80には、トラック番号やタイムコードを初めとする各種情報が表示され、表示部81には、BPM値が表示される。また、操作部46のプリセットキー82、ジョグダイヤル83,スキップキー84,サーチキー85,プレイ/ポーズキー86,バンクキー87,メモリキー88,リコールキー89,エンターキー90,TAPキー91,BPMキー92,テンポSYNCキー93,ビートSYNCキー94,ループキー95,Aキー96,Bキー97,サンプルキー98,INキー99,OUTキー100,テンポキー101,テンポボリューム102,スクラッチキー103,ブレーキキー104、テンキー105等が設けられている。
【0033】なお、2次巻線T3が請求項記載の第1の2次巻線に対応し、2次巻線T2が第2の2次巻線に対応し、ダイオードD4とコンデンサC4が第1の整流回路に対応し、ダイオードD2とコンデンサC2が第2の整流回路に対応し、ダイオードD5とコンデンサC5が第3の整流回路に対応する。
【0034】
【発明の効果】上述の如く、請求項1に記載の発明は、第1の2次巻線から出力される交流電圧を整流して得た負の直流電圧を第2の2次巻線の一端に供給して第2の2次巻線から出力される交流電圧に重畳し、ヒータの両端のうちの第2の2次巻線の他端と接続された一端から負の直流電圧が重畳された交流電圧を整流して蛍光表示管にグリッド電圧として供給するため、トランスと蛍光表示管との間の配線本数を削減でき、また、抵抗で分圧することなく効率的にグリッド電圧をヒータ電圧に比べて低くできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の蛍光表示管の電源供給回路の第1実施例の回路図である。
【図2】本発明の蛍光表示管の電源供給回路の第2実施例の回路図である。
【図3】本発明が適応されるディスク再生装置の一実施例のブロック構成図である。
【図4】2台1組のディスク再生装置のコントローラユニット40の平面図である。
【図5】従来の蛍光表示管の電源供給回路の一例の回路図である。
【符号の説明】
10 CD再生部
12 メインマイコン
14 データメンテナンス用DSP14
16,20,28 DRAM
18 CD音エフェクト用DSP18
22,30 D/Aコンバータ
26 サンプラーエフェクト用DSP26
32 EPROM
34 EEPROM
36 クロックジェネレータ
40 コントローラユニット
42 マイコン
44 ディスプレイ
46 操作部
110 本体
112 トランス112
114 コントローラ
116 蛍光表示管
118 ドライバコントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 蛍光表示管と離間して配置された1次巻線と、第1,第2の2次巻線を有するトランスと、前記第1の2次巻線から出力される交流電圧を整流して得た負の直流電圧を前記第2の2次巻線の一端に供給して前記第2の2次巻線から出力される交流電圧に重畳する、前記トランスの近傍に配置された第1の整流回路と、前記第1の2次巻線の中間タップから出力される交流電圧を整流して得た正の直流電圧を前記蛍光表示管にプレート電圧として供給する、前記トランスの近傍に配置された第2の整流回路と、前記第2の2次巻線と両端を接続された前記蛍光表示管のヒータの両端のうちの前記第2の2次巻線の他端と接続された一端に接続されており前記第2の2次巻線から供給される前記負の直流電圧が重畳された交流電圧を整流して前記蛍光表示管にグリッド電圧として供給する、前記蛍光表示管の近傍に配置された第3の整流回路とを有することを特徴とする蛍光表示管の電源供給回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2001−242815(P2001−242815A)
【公開日】平成13年9月7日(2001.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−50086(P2000−50086)
【出願日】平成12年2月25日(2000.2.25)
【出願人】(000003676)ティアック株式会社 (339)
【Fターム(参考)】