説明

融合蛋白質

本発明は特異的IgG4−Fc誘導体に融合する治療用活性ペプチドを提供する。こういう融合蛋白質は、半減期が長く、半抗体形成が少なく、エフェクター活性も少なく、しかも免疫原生がない。融合蛋白質は、人の疾患および種々の他の症状や障害の処置に有効である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療用活性ペプチドおよび治療用活性ペプチドのインビボ半減期を長くする効果を有する免疫グロブリンの定常H鎖(Fc)部分を含む非相同融合蛋白質に関する。
【背景技術】
【0002】
治療用活性ペプチドの多くが、種々の疾患の処置のための臨床試験で将来性を示している。しかし、こういうペプチドを含む治療の有効性は、多くのペプチドの活性が低く、インビボで急速に排泄されてしまう、インビボの半減期が非常に短いという事実により制限されている。生物活性を維持すると同時に、こういうペプチドの半減期を長くする、またはこういうペプチドの排泄を減少させるための種々の試みが行なわれている。その中の1つの試みは、治療用活性ペプチドを免疫グロブリンの定常H鎖(Fc)部分に融合させることに関係している。免疫グロブリンは通常インビボで長い半減期を有している。例えば、ヒトのIgG分子は23日までの半減期を有している。インビボの安定性に部分的に関係しているのが、免疫グロブリンのFc部分である。こういう非相同融合蛋白質は、ペプチドの生物活性を維持しながら、免疫グロブリンのFc部分が提供する安定性も利用する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
こういうアプローチはペプチド療法として有効ではあるが(WO 02/46227を参照)、半抗体形成、好ましくないエフェクター機能、グリコシル化部位、および不均質発現に関して問題がある。本発明は、分子のFc部分の種々の位置に存在して半抗体を減少させエフェクター機能を減少または排除するアミノ酸を同定し、置換することにより、この問題を乗り越えようと試みている。更に本発明は、分子のFc部分の種々の位置に存在し、グリコシル化部位を持たず、発現のとき不均質性の少ないアミノ酸を同定し、置換する方法も提供する。更に、分子のFc部分の種々の位置にあるアミノ酸を同定し、置換したとしても、非相同融合蛋白質の反復および長期投与の後も免疫反応を引き起こさないことが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の化合物には、SEQ ID NO:1である配列
【0005】
【化1】


(ここで、
位置1のXaaは、Alaであるか、存在しない、
位置16のXaaは、ProまたはGluであり、
位置17のXaaは、Phe、ValまたはAlaであり、
位置18のXaaは、Leu、GluまたはAlaであり、
位置80のXaaは、AsnまたはAlaであり、
位置230にあるXaaは、Lysであるか、存在しない)
を含む免疫グロブリンのFc部分に融合した治療用活性ペプチドを含む非相同融合蛋白質が含まれる。
【0006】
本発明のペプチド部分とFc部分は直接一体となって、またはリンカーを通して融合される。リンカーの例としては、配列Gly-Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser (SEQ ID NO:2)を有するGに富むペプチドである。リンカーの他の例としては、Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser (1.5L) (SEQ ID NO:4)、Gly-Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser (2L) (SEQ ID NO:6)、Asp-Ala-Ala-Ala-Lys-Glu-Ala-Ala-Ala-Lys-Asp-Ala-Ala-Ala-Arg-Glu-Ala-Ala-Ala-Arg-Asp-Ala-Ala-Ala-Lys (SEQ ID NO:7)、およびAsn-Val-Asp-His-Lys-Pro-Ser-Asn-Thr-Lys-Val-Asp-Lys-Arg (SEQ ID NO:8)などが含まれるが、これに限定するものではない。
【0007】
ペプチド部分のC末端とFc部分のN末端を融合する。あるいは、ペプチド部分のN末端とFc部分のC末端を融合する。更に、ペプチド部分のC末端とFc部分のN末端を融合し、別のペプチド分子のN末端とそのFc部分のC末端を融合し、その結果、ペプチド−Fc−ペプチド融合蛋白質を得る。
【0008】
本発明は、本発明の非相同融合蛋白質をコード化するポリヌクレオチド、およびそういうポリヌクレオチドを含むベクターおよび宿主細胞も含んでいる。非相同融合蛋白質の投与を含む、ヒトの疾患および種々の他の症状または障害で苦しんでいる患者を処置する方法も、本発明に含まれる。
【0009】
本発明の非相同融合蛋白質には、治療用活性ペプチド部分とFc部分が含まれる。Fc部分には、Fc配列と融合していない治療用活性ペプチドと比較してインビボ安定性が増大した非相同融合蛋白質を提供するヒトIgG4配列への置換体も含まれる。
【0010】
本発明の非相同融合蛋白質には、ヒトIgG4由来であるがヒトの野生型配列と比べて1つまたはそれ以上の置換体を含むFc部分が含まれる。免疫グロブリンのFc部分と言うのは、本出願で使用される場合、免疫学の分野で一般的に使用されている意味で言及されている。特にこの用語は、2つの抗原結合部位(Fab断片)を含まない抗体断片を意味する。Fc部分は、非共有結合の相互作用とジスルフィド結合を通して関連している2つのH鎖を含む抗体の定常部で構成されている。Fc部分はヒンジ部位を含み、CH2およびCH3ドメインを通して抗体のC末端へ延びている場合がある。Fc部分には1つまたはそれ以上のグリコシル化部位が含まれる場合もある。
【0011】
ヒトの免疫グロブリンは5種類あり、それぞれ異なるエフェクター機能と薬物動態特性を有している。IgGは5種類のうち最も安定しており、ヒト血清の半減期は約23日である。IgGには4種類のサブクラス (G1、G2、G3、およびG4)があり、それぞれエフェクター機能と呼ばれる異なる生物機能を有している。こういうエフェクター機能は通常Fcガンマ受容体(FcγR)との相互作用を通して仲介される。または免疫グロブリンGまたは免疫グロブリンMのH鎖を認識し、それと結合して、古典的補体活性化経路を開始する補体1(C1q)の亜成分と結合することにより仲介される。FcγRとの結合は抗体依存細胞仲介で細胞を溶解する場合があり、補体因子との結合は補体仲介で細胞を溶解する場合がある。非相同融合蛋白質をデザインするにあたり、半減期を長くする機能のためだけにFc部分を利用する場合、エフェクター機能を抑えることが重要である。従って、本発明の非相同融合蛋白質は、FcγRおよび補体因子との結合能力がIgGの他の亜型と比べて低いIgG4 Fc部位に由来する。しかしIgG4はヒトの標的細胞を枯渇させることが証明されている[アイザックス(Issacs)等, Clin.Exp.Immunol.106:427−433(1996)]。本発明の非相同融合蛋白質は体内の種々の器官の細胞を標的にするので、非相同融合蛋白質にIgG4由来の部位を使用すれば、非相同融合蛋白質と標的細胞に存在する受容体との相互作用を通して、免疫反応が始まる場合がある。従って、本発明の非相同融合蛋白質の一部であるIgG4 Fc部位には、エフェクター機能を排除する置換体が含まれている。本発明の非相同融合蛋白質のIgG4 Fc部分は、残基233のグルタミン酸塩をプロリンで置換、残基234のフェニルアラニンをアラニンまたはバリンで置換、および残基235のロイシンをアラニンまたはグルタミン酸塩で置換(EU番号付け, カバット(Kabat)、E.A.等(1991)免疫学的関心の蛋白質の配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest), 第5版, 米国保健福祉省, メリーランド州べテスダ(Bethesda、MD), NIH出版番号91−3242)、の1つまたはそれ以上を含んでいる場合がある。こういう残基はSEQ ID NO:1の位置16、17、および18に対応している。更に、SEQ ID NO:1の位置80に相当する残基297(EU番号付け)のAsnをAlaで置換することによりIgG4 Fc部位のN連結グリコシル化部位を除去するのも、非相同融合蛋白質の残基作動体活性を排除する方法である。
【0012】
更に、本発明の非相同融合蛋白質のIgG4 Fc部分には、H鎖ダイマー形成を安定化し半IgG4 Fc鎖の形成を阻害する置換体も含まれる。本発明の非相同融合蛋白質は、ジスルフィド結合と種々の非共有結合の相互作用により結合するダイマーとして存在するのが望ましい。野生型IgG4には、残基224(EU番号付け)で始まるPro-Pro-Cys-Pro-Ser-Cys (SEQ ID NO:3)が含まれている。治療用活性ペプチドFc鎖のこのモチーフは、それに対応する別の治療用活性ペプチドFc鎖のモチーフとジスルフィド結合を形成する。しかしモチーフ内にセリンが存在すれば、単鎖の非相同融合蛋白質が形成される。本発明には、IgG4配列が更に修飾され、位置228(EU番号付け)のセリンをプロリン(SEQ ID NO:1のアミノ酸残基11)で置換した非相同融合蛋白質も含まれる。
【0013】
天然分子に存在するC末端のリジン残基は、本出願記載の非相同融合蛋白質のIgG4由来Fc部分から削除されている場合がある(SEQ ID NO:1の位置230、削除されたリジンはdes−Kと呼ばれる)。リジンがC末端コドンでコード化されているある種の細胞(例えばNSO細胞)で発現される非相同融合蛋白質は、分子のある部分がC末端アミノ酸としてリジンを有し、別の部分のリジンが削除されているので、非均質である。削除が起きるのは、ある種の哺乳類細胞で発現するときに生じる蛋白質分解酵素の作用の所為である。従って、この非均質性を避けるため、非相同融合発現物は、リジン用のC末端コドンが欠如していることが望ましい。
【0014】
治療用活性ペプチドのC末端アミノ酸をグリシンの豊富なリンカーを通して、IgG4 Fc類似体部分のN末端に融合するのが望ましい。本発明の非相同融合蛋白質のインビボ機能と安定性は、小ペプチド・リンカーを加え、望ましくないドメイン間の相互作用の可能性を防止することにより、最適化が可能である。更に、グリシンの豊富なリンカーは構造上の柔軟性を提供するので、治療用活性ペプチド部分が標的細胞の受容体と生産的に相互作用できるようになる。しかしこういうリンカーは、非相同融合蛋白質がインビボで免疫原生となる可能性を有意に高める場合がある。従って、望ましくないドメイン間の相互作用を阻止するのに必要な長さ、および/または生物活性および/または安定性を最適化するのに必要な長さ以上の長さにしないのが望ましい。グリシンの豊富な好ましいリンカーには、配列Gly-Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser (SEQ ID NO:2)も含まれる。本発明の非相同融合蛋白質では、このリンカーのコピーを増やすのも可能ではあるが、長期および反復投与に伴う免疫原生の危険性を最小限に抑えるには、この単一のリンカーを使用するのが望ましい。
【0015】
治療用活性ペプチドには、これだけに限定されるものではないが、酵素、酵素阻害剤、抗原、抗体、ホルモン、凝固のコントロールに関係している因子、インターフェロン、サイトカイン、成長因子および/または分化因子、骨組織の発生・吸収に関係する因子、細胞の運動性と移動に関係する因子、抗菌性または亢真菌性因子、走化性因子、細胞増殖抑制因子、血漿または間質性の接着性分子または細胞外基質、あるいは循環器系および間質性部分の病理および動脈・静脈血栓の形成、癌の転移、腫瘍血管形成、炎症性ショック、自己免疫疾患、骨および骨関節疾患などに関係する細胞および/または細胞間相互作用の拮抗薬または作用薬であるペプチド配列などが含まれる。治療用活性ペプチドの具体例としては、これだけに限定されるものではないが、G−CSF、GM−CSF、好酸球(EOS)−CSF、マクロファージ(M)−CSF、multi−CSF(造血幹細胞増殖因子)、赤血球(EPO)、IL−1、IL−2、IL−4、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−18、c−kitリガンド、線維芽細胞成長因子(FGF)21、幹細胞因子(SCF)、肥満細胞成長因子、赤血球強化活性(EPA)、ラクトフェリン(LF), H−サブユニット・フェリチン(すなわち酸性イソフェリチン)、プロスタグランジン(PG)E1およびE2、腫瘍壊死因子(TNF)−α、−β(すなわちリンフォトキシン)、インターフェロン(IFN)−α(1b、2a、および2b)、−β、−ω、および−γ、形質転換成長因子(TGF)−β、アクチビン、インヒビン、白血病抑制因子、オンコスタチンM、マクロファージ炎症蛋白(MIP)−1−α(すなわち幹細胞阻害物質)、マクロファージ炎症蛋白(MIP)−1β、マクロファージ炎症蛋白(MIP)−2−α(すなわちGRO−β)、GRO−α、MIP−2−β(すなわちGRO−γ)、血小板因子−4、マクロファージ走化性および活性因子、IP−10、カルシトニン、成長ホルモン、PTH、TR6、BLyS、BLyS単鎖抗体、レジスチン、成長ホルモン放出因子、VEGF−2、KGF−2、D−SLAM、KDI、TR2、グルカゴン様ペプチド1(GLP−1)、エキセンディン4、神経ペプチド脳下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)またはその受容体PAC−1、VPAC−1またはVPAC−2のいずれか1つ、あるいは前述のペプチドのいずれかの類似体、断片または誘導体などが含まれる。
【0016】
特定の非相同融合蛋白質に関して本出願で使用されている命名法は、次の通りである。Lは配列Gly-Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser (SEQ ID NO:2)を有するリンカーである。Lの直前の番号はFc部分から治療用活性ペプチド部分を分離しているリンカーの数を示す。1.5Lで示されるリンカーは、配列
Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser (SEQ ID NO:4)を意味する。2Lで示されるリンカーは、配列Gly-Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser (SEQ ID NO:6)を意味する。IgG4は、SEQ ID NO:1で示されるヒトIgG4 Fc配列の類似体を意味する。非相同融合蛋白質のIgG4 Fc部分の置換体は括弧内に示される。野生型アミノ酸は一般的な略号で表され、その後にEU番号付けシステムを使って全IgG4配列内の位置番号が付され、その後にその位置に置換されたアミノ酸が一般的な略号により示される。
【0017】
本発明の非相同融合蛋白質は、非相同融合蛋白質の様々な大きさのゆえに、種々の方法を使って作成可能ではあるが、好ましいのは組み換え法である。本出願で開示・請求されている本発明の目的に照らし、分子生物学の一般用語と略号を以下のように定義する。
【0018】
本出願で使用される“塩基対”または“bp”は、DNAまたはRNAを意味する。略号A、C、G、およびTは、それがDNA分子に関係している場合、それぞれデオキシリボヌクレオチドの(デオキシ)アデノシン、(デオキシ)シチジン、(デオキシ)グアノシン、およびチミジンの5’−モノリン酸塩に相当する。略号U、C、G、およびAは、RNA分子に関係している場合、それぞれリボヌクレオシドのウリジン、シチジン、グアノシン、およびアデノシンの5’−モノリン酸塩に相当する。二本鎖DNAにおいては、塩基対はAとTまたはCとGの対を意味する。DNA/RNAにおいては、ヘテロ二本鎖塩基対はAとUまたはCとGの対を意味する(後出の相補の定義を参照)。
【0019】
DNAの“消化”または“制限”と言うのは、DNAのある配列だけに作用する制限酵素(配列特異的エンドヌクレアーゼ)でDNAを触媒的に開裂することを意味する。本出願で使用される種々の制限酵素は商業的に容易に入手可能であり、反応条件、補助因子、および他の要求事項も当業者には良く知られている。特定の制限酵素の適切な緩衝液および基質量は製造業者により明記されているか、文献ですぐ見出せる。
【0020】
“ライゲーション”と言うのは、2つの二本鎖核酸断片間でホスホジエステル結合を形成するプロセスを意味する。特別の記載がない限り、ライゲーションは、既知の緩衝液と条件を使い、T4DNAリガーゼなどのDNAリガーゼを使って達成される。
【0021】
“プラスミド”と言うのは、(通常)自己複製する染色体外の遺伝子要素を意味する。
【0022】
“組み換えDNAクローン化ベクター”と言うのは、本出願で使用される場合、自動的に複製する因子すべてを意味し、例えば、これだけに限定されるものではないが、プラスミドやファージなどが該当し、1つまたはそれ以上のDNA断片が付加できるまたは付加されているDNA断片もその中に含まれる。
【0023】
“組み換えDNA発現ベクター”と言うのは、本出願で使用される場合、挿入DNAの転写をコントロールするプロモーターが導入されている組み換えDNAクローン化ベクターのすべてを意味する。
【0024】
“転写”というのは、DNAの核酸配列に含まれている情報が相補的RNA配列に移されるプロセスを意味する。
【0025】
“形質移入”と言うのは、コード化されている配列が実際に発現しているか否かに関係なく、発現ベクターが宿主細胞に取り込まれることを意味する。形質移入の数多くの方法が当業者に知られている。例えば、リン酸カルシウム共沈降反応、リポソーム形質移入、エレクトロポレーション法などである。宿主細胞内でベクターの作用を示すものが何か生じた場合、一般に形質移入が成功したと認識される。
【0026】
“形質転換”と言うのは、DNAが複製できるように、染色体外の要素としてまたは染色体の取り込みにより、生物体にDNAを導入することを意味する。細菌および真核宿主を形質転換する方法は当業者には良く知られており、そのうちの多く、例えば、核注入、原形質融合、塩化カルシウムを使ったカルシウム処理法などがJ.サムブルック(Sambrook)等により要約されている(分子クローニング:実験室マニュアル(1989))。DNAを酵母に導入する場合、一般的に、形質移入と言う用語ではなく形質転換と言う用語が使用される。
【0027】
本出願で使用される“翻訳”と言う用語は、メッセンジャーRNA(mRNA)の遺伝情報がポリペプチド鎖の合成を特定し方向付けるのに使用されるプロセスを意味する。
【0028】
“べクター”と言うのは、適切なコントロール配列との組み合わせにより形質移入および/または形質転換の対象となる宿主細胞に特定の性質を付与する適切な蛋白質分子が存在し、それに対応するポリヌクレオチド配列を含む遺伝子操作において、細胞の形質移入および/または形質転換に使用される核酸化合物を意味する。プラスミド、ウイルス、およびバクテリオファージは適切なベクターである。人工的なベクターは、制限酵素とリガーゼを使って、異なる起源のDNAを切断・結合することにより作成される。本出願で使用されるベクターと言う用語には、組み換えDNAクローン化ベクターおよび組み換えDNA発現ベクターも含まれる。
【0029】
本出願で使用される“相補的”または“相補性”と言う用語は、二本鎖核酸において水素結合により連結している塩基対(プリンおよびピリミジン)を意味する。グアミンおよびシトシン、アデニンおよびチミン、そしてアデニンおよびウラシルの塩基対が相補的である。
【0030】
“プライマー”と言うのは、酵素または合成による伸長のための開始基質として機能する核酸断片を意味する。
【0031】
“プロモーター”と言うのは、DNAからRNAへの転写を開始するDNA配列を意味する。
【0032】
“プローブ”と言うのは、別の核酸化合物とハイブリダイズする核酸配列またはその断片を意味する。
【0033】
“リーダー配列”と言うのは、目的のポリペプチドを生産するため、酵素的または化学的に除去可能なアミノ酸配列を意味する。
【0034】
“分泌シグナル配列”と言うのは、一般的に分子量の比較的大きいポリペプチドのN末端部位に存在し、そのポリペプチドと細胞膜の一部との結合を開始する機能を行い、原形質膜を通してそのポリペプチドを分泌するアミノ酸配列を意味する。
【0035】
ヒトの野生型IgG4蛋白質は、種々の源から入手可能である。例えば、そういう蛋白質は、目的のmRNAを検出可能なレベルで発現する細胞を使って調製されるcDNAライブラリーから得られる。ライブラリーのスクリーニングは、公表されているDNAまたは蛋白質配列を使って目的の蛋白質用にデザインしたプローブを使用すれば実現できる。例えば、免疫グロブリンのL鎖またはH鎖の定常部に関しては、次の文献に記載されている:アダムス(Adams)等, 生化学(Biochemistry) 19:2711−2719(1980); ゴーゲット(Goughet)等, 生化学(Biochemistry)19:2702−2710; ドルビー(Dolby)等, (1980) Proc.Natl.Acad.Sci.USA、77:6027−6031(1980); ライス(Rice)等, Proc.Natl.Acad.Sci.USA、79:7862−7862(1982); フォークナー(Falkner)等、ネーチャー(Nature)、298:286−288(1982); モリソン(Morrison)等, Ann.Rev.Immunol.2:239−256(1984))。
【0036】
選択プローブによるcDNAまたはゲノム・ライブラリーのスクリーニングは、サムブルック(Sambrook)等, 分子クローニング:実験室マニュアル, コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス(Cold Spring Harbor )Laboratory Press),NY(1989)に記載されているような標準の方法を使って行なっても良い。免疫グロブリン蛋白質をコード化する遺伝子を単離する別の方法は、PCR法である(サムブルック(Sambrook)等,前出;ディーフェンバック(Dieffenbach)等, PCRプライマー:実験室マニュアル、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、NY(1995))。PCRプライマーは、公表されている配列を基にデザインできる。
【0037】
一般的に、特定のライブラリーからクローン化される全長の野生型配列は、非相同融合蛋白質の一部である治療用活性ペプチドの血漿半減期を長期化させる機能を保持している本発明のIgG4 Fc類似体断片の作成用テンプレートとして利用できる。IgG4 Fc類似体の断片は、目的の断片の端に対応する配列にハイブリダイズするようにデザインしたプライマーを使って、PCR法により生成できる。PCRプライマーは、制限酵素部位を作成するようにデザインして、発現ベクター中でのクローニングを簡便化することも可能である。
【0038】
本発明の治療用活性ペプチドをコード化するDNAは、種々の方法を使って作成できる。例えば、上述のようなクローニング方法や化学合成方法などである。コード化されているペプチドが短いので、化学合成は優れた選択であるかもしれない。治療用活性ペプチドのアミノ酸配列は一般的に良く知られており、公表もされている(ロペス(Lopez)等, Proc.Natl.Acad.Sci.,USA、80:5485−5489(1983);ベル(Bell)等、ネーチャー(Nature)、302:716−718(1983);ハインリッヒ(Heinrich,G.)等、Endocrinol., 115:2176−2181(1984);ギグリオン(Ghiglione、M.)等、 Diabetologia27:599−600(1984))。
【0039】
非相同融合蛋白質をコード化する遺伝子は、治療用活性蛋白をインフレームでコード化するDNAを本出願記載のIgG Fc蛋白質をコード化するDNAと結合させることにより作成できる。治療用活性蛋白とIgG4 Fc断片をコード化するDNAは、ライゲーションの前または非相同融合蛋白質全体をコード化するcDNAのいずれかにおいて、突然変異させることができる。種々の変異誘発技術が当業者には知られている。治療用活性蛋白をコード化する遺伝子およびIgG4 Fc類似体蛋白をコード化する遺伝子は、Gに富むリンカー・ペプチドをコード化するDNAを使ってインフレームで結合させることも可能である。本発明の非相同融合蛋白質の1つをコード化するDNA配列の例として、Gly8-Glu22-Gly36-GLP-1(7-37)-1L-IgG4 (S228P, F234A, L235A, des-K)
は、次のSEQ ID NO:5として示される
CACGGCGAGGGCACCTTCACCTCCGACGTGTCCTCCTATCTCGAGGAGCAGGCCGCCAAGGAATTCATCGCCTGGCTGGTGAAGGGCGGCGGCGGTGGTGGTGGCTCCGGAGGCGGCGGCTCTGGTGGCGGTGGCAGCGCTGAGTCCAAATATGGTCCCCCATGCCCACCCTGCCCAGCACCTGAGGCCGCCGGGGGACCATCAGTCTTCCTGTTCCCCCCAAAACCCAAGGACACTCTCATGATCTCCCGGACCCCTGAGGTCACGTGCGTGGTGGTGGACGTGAGCCAGGAAGACCCCGAGGTCCAGTTCAACTGGTACGTGGATGGCGTGGAGGTGCATAATGCCAAGACAAAGCCGCGGGAGGAGCAGTTCAACAGCACGTACCGTGTGGTCAGCGTCCTCACCGTCCTGCACCAGGACTGGCTGAACGGCAAGGAGTACAAGTGCAAGGTCTCCAACAAAGGCCTCCCGTCCTCCATCGAGAAAACCATCTCCAAAGCCAAAGGGCAGCCCCGAGAGCCACAGGTGTACACCCTGCCCCCATCCCAGGAGGAGATGACCAAGAACCAGGTCAGCCTGACCTGCCTGGTCAAAGGCTTCTACCCCAGCGACATCGCCGTGGAGTGGGAAAGCAATGGGCAGCCGGAGAACAACTACAAGACCACGCCTCCCGTGCTGGACTCCGACGGCTCCTTCTTCCTCTACAGCAGGCTAACCGTGGACAAGAGCAGGTGGCAGGAGGGGAATGTCTTCTCATGCTCCGTGATGCATGAGGCTCTGCACAACCACTACACACAGAAGAGCCTCTCCCTGTCTCTGGGT (SEQ ID NO:5)。
【0040】
宿主細胞は、本出願記載の非相同融合蛋白質用の発現ベクターまたはクローン化ベクターを使って形質移入または形質転換させ、プロモーターの誘発、形質転換体の選択、または目的の配列をコード化する遺伝子の増幅用に修飾した従来の培地で培養する。培地、温度、pHなどの培養条件は、過度の予備実験なしに、当業者により選択可能である。細胞培養の生産性を最大にするための原理、プロトコール、および実際的な技術は、次の文献に見出せる: 哺乳類細胞バイオテクノロジー(Mammalian Cell Biotechnology):実践的アプローチ(A Practical Approach)、バトラー(Butler、M.)編、 (IRLプレス(IRL Press)、1991)およびサムブルック(Sambrook)等, 前出。形質移入の方法は、当業者には良く知られている。例えば、CaPO4およびエレクトロポレーションなどである。哺乳動物の細胞宿主系の形質転換については、一般的な説明が米国特許番号4,399,216に記載されている。酵母への形質転換は、通常、次の方法に従って行なわれる。バン・ソリンゲン(van Solingen)等, J Bact.130(2):946−7(1977)およびシャオ(Hsiao)等, Proc.Natl.Acad.Sci. USA76(8):3829−33(1979)。しかし、DNAを細胞に導入する他の方法、例えば、核微量注入法、エレクトロポレーション、細菌の原形質と無傷の細胞の融合、ポリブレンやポリオメチンなどのポリカチオンなども使用できる。哺乳動物の細胞の形質転換に使用される種々の技術に関しては、ケオウン(Keown)等, 酵素学の方法(Methods in Enzymology)185:527−37(1990)およびマンサウア(Mansour)等, ネーチャー(Nature)336(6197):348−52(1988)を参照の事。
【0041】
本出願のベクターを使って核酸(例えばDNA)をクローン化または発現させるための適切な宿主細胞には、酵母や高等真核細胞が含まれる。
【0042】
糸状真菌や酵母などの真核微生物は、非相同融合蛋白質ベクターのクローン化宿主または発現宿主として適している。サッカロミセス属のSaccharomyces cerevisiaeは、よく使われる下等真核宿主微生物である。他には、分裂酵母のSchizosaccharomyces pombe [ビーチ(Beach)およびナース(Nurse)、ネーチャー(Nature)290: 140−3(1981);EP139,383、1995年5月2日出版]、Klactis(MW98−8C、CBS683、CBS4574)[ド・ルーベンコート(de Louvencourt)等、J.Bacteriol.154(2):737−42 (1983)]などのMuyveromyces宿主[米国特許番号4,943,529;フリート(Fleer)等, Bio/Technology9(10): 968−75(1991)]、K.fiagilis(ATCC12,424)、K.bulgaricus(ATCC16,045)、K wickeramii(ATCC24,178)、K waltii(ATCC 56,500)、K. drosophilarum(ATCC36.906)[バン・デン・バーグ(Van den Berg)等、Bio/Technology8(2):]135−9 (1990)]、K.thermotoieransおよびK.marxianus、Yarrowia(EP402,226)、ピチア属のPichia pastoris(EP183,070)[スリークリシュナ(Sreekrishna)等, J.Basic Microbiol.28(4):265−78(1988)]、カンジダ属、トリコデルマ属のTrichoderma reesia(EP 244,234)、アカパンカビ(Neurospora crassa)[ケース(Case)等、Proc.Natl.Acad Sci.USA76(10):5259−63 (1979)]、Schwanniomyces occidentulisなどのシュワニオミセス属(EP 394,538, 1990年10月31日出版)、そしてアカパンカビ属、ペニシリン属、Tolypocladium属 (WO 91/00357, 1991年1月10日出版)、A. nidulans[バランス(Balance)等, Biochem.Biophys.Res.Comm.112(1):284−9(1983); ティルバーン(Tilburn)等, 遺伝子(Gene)26(2−3):205−21(1983);イェルトン(Yelton)等, Proc.Natl.Acad.Sci.USA81(5):1470−4(1984)]およびA.niger[ケリー(Kelly)およびハインズ(Hynes)、EMBO J.4(2):475−9 (1985)]などのアスペルギルス属(Aspergillus)宿主などの糸状真菌などが含まれる。メチロトローフ酵母は、ハンセニューラ属、カンジダ属、Kloeckera属、ピチア属、サッカロミセス属、トルロプシス属、およびRhodotoruia属からなる属から選択される。このクラスの酵母の特定の種のリストは、C.アントニー(Antony)のメチロトローフの生化学(The Biochemistry of Methylotrophs)269(1982)に掲載されている。
【0043】
本発明の非相同融合蛋白質の発現に適した宿主細胞は、多細胞生物から導かれる。無脊椎生物の細胞には、Drosophila S2、Spodoptera Sp、Spodoptera high−5などの昆虫の細胞および植物の細胞が含まれる。哺乳動物の有効な宿主細胞株には、NSO骨髄腫細胞、チャイニーズ・ハムスターの卵巣(CHO)細胞、SP2細胞、およびCOS細胞などが含まれる。より具体的な例としては、SV40(COS−7、ATCC CRL 1651)により形質転換したサルの腎臓CVl株、ヒトの胎児の腎臓株[293細胞または懸濁培養で成長させるためにサブクローン化した293細胞, グラハム(Graham)等、J.Gen Virol.、36(1):59−74(1977)]、チャイニーズ・ハムスターの卵巣細胞/−DHFR[CHO、ウルラウブ(Urlaub)およびチャシン(Chasin)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、77(7):4216−20 (1980)]、マウスのセルトリ細胞[TM4, メザー(Mather), Biol.Reprod.23(1):243−52 ](1980)]、ヒトの肺の細胞(W138.ATCC CCL 75)、ヒトの肝細胞(Hep G2、HB 8065)、マウスの乳癌(MMT 060562、ATCC CCL51)などが挙げられる。本発明の非相同融合蛋白質の生産にとって好ましい細胞株はNSO骨髄腫細胞株であり、これはヨーロッパ細胞培養コレクション(European Collection )of Cell Cultures) (ECACC、カタログ番号85110503)から入手可能で、ガルフレ(Galfre、G.)およびミルシュタイン(Milstein、C.)に記載されている(1981)酵素学の方法(Methods in Enzymology)73(13):3−46;および単クローン抗体の調製(Preparation of Monoclonal Antibodies):戦術および方法(Strategies and Procedures)、アカデミック・プレス(Academic Press)、ニューヨーク州ニューヨーク市(N.Y.、N.Y.))。
【0044】
本発明の非相同融合蛋白質は遺伝子組み換えで直接生成しても良いし、シグナル配列を有する蛋白質または成熟した非相同融合蛋白質のN末端に特異的な開裂部位を作成する他の追加配列を有する蛋白質として生成しても良い。一般的に、シグナル配列はベクターの成分であっても良いし、ベクターに挿入される非相同融合蛋白質をコード化するDNAの一部であっても良い。酵母の分泌では、シグナル配列は、例えば、酵母インベルターゼ・リーダー、アルファ因子リーダー(サッカロミセス属およびKluyveromyces属のcc因子リーダーを含む;後者は米国特許番号5,010,182に記載されている)、酸性リン酸分解酵素リーダー、C. albicansグルコアミラーゼ・リーダー(EP362,179)、またはWO 90/13646に記載のシグナルであっても良い。哺乳動物の細胞発現では、蛋白質の分泌をコントロールするのに、哺乳動物のシグナル配列、例えば同種または関連種の分泌ポリペプチドのシグナル配列などやウイルスの分泌リーダーを使用しても良い。
【0045】
発現ベクターにもクローン化ベクターにも、1つまたはそれ以上の選択された宿主細胞でベクターの複製を可能にする核酸配列が含まれている。発現ベクターにもクローン化ベクターにも、選択可能マーカーとも呼ばれる選択遺伝子が含まれている。典型的な選択遺伝子は、(a)ネオマイシン、メトトレキサート、テトラサイクリンなどの抗生物質や他の毒素に抵抗性を与える蛋白質、(b)独立栄養欠乏を補足する蛋白質、または(c)天然培地では入手できない重要な栄養素、例えば、バチルス菌用のDアラニン・ラセマーゼをコード化する遺伝子等を供給する蛋白質、をコード化する。
【0046】
哺乳動物の細胞に適した選択可能マーカーの例は、非相同融合蛋白質をコード化する核酸を取り込むことのできる細胞の同定を可能にするもので、例えばDHFRやチミジンキナーゼなどである。野生型DHFRが使用される場合の適切な宿主細胞は、DHFR活性が欠如しているCHO細胞株で、[ウルラウブ(Urlaub)およびチャシン(Chasin)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、 77(7):4216−20(1980)]に記載されているように調製・増殖される。酵母で使用される適切な選択遺伝子は、酵母プラスミドYRp7に存在するtrpl遺伝子である[スティンクコーム(Stinchcomb)等, ネーチャー(Nature)282(5734):39−43(1979);キングスマン(Kingsman)等、遺伝子(Gene)7(2):141−52(1979);チュンパー(Tschumper)等、遺伝子(Gene)10(2): 157−66(1980)]。このtrpl遺伝子は、トリプトファンで成長できない酵母の変異株、例えばATCC No.44076またはPEPC1に選択マーカーを提供する[ジョーンズ(Jones), 遺伝学(Genetics)85: 23−33(1977)]。
【0047】
発現ベクターおよびクローニングベクターは、mRNA合成をコントロールするため、非相同融合蛋白質をコード化する核酸配列と操作可能な状態で結合しているプロモーターを通常含んでいる。種々の宿主細胞で認識されるプロモーターは良く知られている。酵母宿主と一緒に使用するのに適したプロモーター配列には、3−ホスホグリセリン酸キナーゼのプロモーター[ヒッチェマン(Hitzeman)等、 J.Biol.Chem.255(24):12073−80(1980)]、または他の解糖酵素[ヘス(Hess)等、 J. Adv. Enzyme Reg. 7: 149(1968);ホランド(Holland)、生化学(Biochemistry)17(23):4900−7(1978)]、例えば、エノラーゼ、グリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素、へキソキナーゼ、ピルビン酸脱炭素酵素、ホスフォフルクトキナーゼ、グルコース−6−リン酸イソメラーゼ、3−ホスホグリセリン酸ムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオースホスフェート・イソメラーゼ、ホスホグルコース・イソメラーゼ、グルコキナーゼなどのプロモーターが含まれる。増殖条件で転写をコントロールするという別の特長も有している誘導性プロモーターである他の酵母プロモーターは、アルコール脱水素酵素2、イソチトクロームC、酸性ホスファターゼ、窒素代謝に関連している変性酵素、メタロチオネイン、グリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素、およびマルトースとガラクトースの利用に関係している酵素のプロモーターである。酵母発現の使用に適したベクターおよびプロモーターは更にEP73,657にも記載されている。非相同融合蛋白質をコード化するmRNAを哺乳類の宿主細胞のベクターから転写する場合、例えば、次のようなプロモーターを使ってその転写をコントロール可能である:ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス、アデノウイルス(例えばアデノウイルス2)、ウシの乳頭腫ウイルス、鳥の肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス、シミアンウイルス40(SV40)などのウイルスのゲノムから得られるプロモーター、アクチン・プロモーターや免疫グロブリン・プロモーターなどの非相同哺乳類プロモーターから得られるプロモーター、および熱ショックプロモーターから得られるプロモーター。但し、そういうプロモーターは宿主細胞系と適合性であることを条件とする。
【0048】
高等真核生物の非相同融合蛋白質をコード化するポリヌクレオチドの転写は、ベクターにエンハンサー配列を挿入することにより増大できる。エンハンサーはDNAのcis作用性要素で、通常10から300bpで、プロモーターに作用して転写を増大させる。今では、哺乳動物の遺伝子から多くのエンハンサー配列が知られている(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α−ケト蛋白質、およびインスリン)。しかし、通常は、真核細胞のウイルスから得られるエンハンサーが使用される。例には、複製開始点の後部側にあるSV40エンハンサー(bp 100−270)、サイトメガロウイルス早期プロモーター・エンハンサー、複製開始点の後部側にあるポリオマ・エンハンサー、アデノウイルス・エンハンサーなどである。エンハンサーは、ベクターの中の非相同融合蛋白質をコード化する配列の5’または3’の位置に挿入して良いが、プロモーターの5’の位置に位置するのがより好ましい。
【0049】
真核宿主細胞(酵母、真菌、昆虫、植物、動物、ヒトまたは他の多細胞生物体由来の有核細胞)で使用される発現ベクターには、転写の終結およびmRNAの安定化に必要な配列も含まれる。そういう配列は、通常、真核生物またはウイルスのDNAまたはcDNAの5’および時には3’の未翻訳部位から得られる。こういう部位には、非相同融合蛋白質をコード化するmRNAの未翻訳部分に、ポリアデニル化された断片として転写されているヌクレオチド断片が含まれている。
【0050】
非相同融合蛋白質の種々の形態を、培養培地または宿主細胞の溶解産物から回収できる。膜結合している場合は、適切な洗浄液(例えばTriton−X100)または酵素による開裂により、膜から遊離させることができる。非相同融合蛋白質の発現に使用された細胞は、凍結溶解サイクル、音波処理、機械的分断、細胞溶解剤などの種々の物理的または化学的方法で破砕できる。
【0051】
本発明の非相同融合蛋白質が適切な宿主細胞で発現すると、このアナログを単離し精製する。精製には、カルボキシメチルセルロース上での分画、Sephadex G−75などのゲル濾過、DEAEまたはMono−Qなどの陰イオン交換樹脂、CMまたはMono−Sなどの陽イオン交換樹脂、ポリペプチドのエピトープ標識物と結合させる金属キレートカラム、逆相HPLC、クロマトフォーカシング、シリカゲル、エタノール沈降、および硫酸アンモニウム沈降、の方法が適切である。
【0052】
種々の蛋白質精製方法が使用できる。そういう方法は当業者には良く知られており、様々な文献にも記載されている(例えば、ドイチャー(Deutscher), 酵素学の方法(Methods in Enzymology)182: 83−9(1990)およびスコープス(Scopes)、蛋白質精製(Protein Purification):原理と実践(Principles and Practice)、シュプリンガー・フェアラーク(Springer−Verlag)、ニューヨーク(1982))。どの精製方法を選択するかは、使用する精製プロセスの性質および生成する非相同融合蛋白質の内容次第である。例えば、Fc断片を含む非相同融合蛋白質は、プロテインAまたはプロテインBアフィニティーマトリックスを使えば、効果的に精製できる。 アフィニティーマトリックスから非相同融合蛋白質を溶出するには、低または高pHの緩衝液を使えば良い。マイルドな溶出条件を使用すれば、非相同融合蛋白質の不可逆的変性を防止できる。
【0053】
本発明の非相同融合蛋白質は、1つまたはそれ以上の賦形剤と共に調剤しても良い。本発明の非相同融合蛋白質は、製薬的に容認できる緩衝液と組み合わせ、容認可能な安定性を得るためのpHおよび非経口投与などの投与に適したpHに調整しても良い。適宜、1つまたはそれ以上の製薬的に容認可能な抗菌剤を加えても良い。製薬的に容認可能な抗菌剤としては、メタクレゾールおよびフェノールが好ましい。イオン強度または張度を調整するのに、1つまたはそれ以上の製薬的に容認できる塩を加えても良い。調剤の等張性を更に調整するため、1つまたはそれ以上の賦形剤を加えても良い。等張性を調整する賦形剤にはグリセリンなどがある。製薬的に容認できると言うのは、ヒトまたは他の動物への投与に適している、従って毒性物質や好ましくない汚染物が含まれておらず、活性成分の活性を阻害しないことを意味する。
【0054】
本発明の非相同融合蛋白質は、溶液として、または適切な希釈剤を用いて溶液にし得る凍結乾燥粉末として製剤してもよい。非相同融合蛋白質が安定している形態の1つが凍結乾燥方法であり、緩衝剤を使っても使わなくても、溶液化した製品の貯蔵期間にわたり溶液のpHを維持できる。本出願記載の非相同融合蛋白質を含む溶液は、元に戻したときに等張性の溶液を得るため、凍結乾燥の前に十分等張性にしておくのが望ましい。
【0055】
本発明の非相同融合蛋白質の製薬的に容認できる塩も、本発明の範囲に含まれている。酸付加塩を形成するのに一般的に使用される酸は、塩酸、臭化水素酸、ヨー化水素酸、硫酸、リン酸などの無機酸、およびp−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、p−ブロモフェニルスルホン酸、炭酸、琥珀酸、クエン酸、安息香酸、酢酸などの有機酸である。好ましい酸付加塩は、塩酸や臭化水素酸などの無機酸を使って形成される塩である。
【0056】
塩基付加塩には、アンモニウムまたはアルカリまたはアルカリ性の土類金属の水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩などの無機塩基から導かれる塩が含まれる。従って、本発明の塩を調製するのに有効な塩基には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、炭酸カリウムなどが含まれる。
【0057】
本発明の非相同融合蛋白質は生物活性を有している。生物活性を有するとは、インビボで受容体に結合し、それを活性化し、反応を引き出す機能が非相同融合蛋白質にあることを意味する。いくつかの代表的な非相同融合蛋白質について、インビボおよびインビトロ活性の試験を行った。実施例1および2は、ヒトGLP−1受容体と相互作用しそれを活性化する非相同融合蛋白質の機能に基づいて、インビトロ活性の代表例を提供する。両試験では、ヒトGLP−1受容体を過剰発現するHEK293細胞が使用される。この細胞におけるGLP−1受容体の活性はアデニル酸シクラーゼを活性化し、それがサイクリックAMP反応要素(CRE)が作用するレポーター遺伝子の発現を促す。実施例1(表1)は、レポーター遺伝子がベータラクタマーゼである場合の代表的なデータを提供する。実施例2(表2)は、レポーター遺伝子がルシフェラーゼである場合の代表的なデータを提供する。実施例3は、本発明の非相同融合蛋白質をラットに投与した場合の代表的なデータを提供する。実施例4(表6)は、本発明の非相同融合蛋白質をサルに投与した場合の代表的なデータを提供する。実施例5(表7)は、非相同融合蛋白質を反復皮下注射した後の抗体形成の可能性について、代表的な評価データを提供する。実施例6(表8)は、非相同融合蛋白質をサルに注射した後の薬力学的研究に関して、代表的なデータを提供する。実施例7(表9)は、3種類の投薬量をラットに注射した後の薬力学的研究に基づいて、代表的なデータを提供する。実施例8(表10)は、本発明の別の非相同融合蛋白質をマウスに投与した場合の代表的なデータを提供する。代表的データを総合すると、非相同融合蛋白質は、受容体に結合しそれを活性化し、治療用活性ペプチドよりも効力が高く、インビボでも活性であり、治療用活性ペプチドよりも長い半減期を有し、免疫原生ではなく、用量応答的であることが証明される。
【0058】
非相同融合蛋白質は、通常の技術を有する医師が有効であると知られる経路であればどの経路を使って投与しても良い。非経口末梢投与はその1つである。非経口投与は、滅菌した注射器または注入ポンプなどの他の機械装置を使って投与量を体に注射するものとして、医学文献で一般的に理解されている。非経口末梢経路には、静脈内、筋肉内、皮下、腹腔内経路も含まれる。
【0059】
本発明の非相同融合蛋白質は、腸管経路である経口、直腸、鼻腔または下気道経路で投与しても良い。こういう腸管経路の中では、下気道経路と経口が好ましい。
【0060】
本発明の非相同融合蛋白質は、様々な疾患や症状を処置するのに使用できる。
【0061】
本出願記載の非相同融合蛋白質の有効量は、治療用活性ペプチド受容体の刺激を必要としている被験者に投与される場合、容認できない副作用を生じることなく、好ましい治療効果および/または予防効果をもたらす量である。“好ましい治療効果”には、(1)疾患または症状に伴う症候の改善、(2)疾患または症状に伴う症候の開始の遅延、(3)処置しない場合と比べた場合の寿命の延長、(4)処置しない場合と比べた場合のクオリティー・オブ・ライフの向上、の内容の1つまたはそれ以上が含まれる。
【0062】
本発明の非相同融合蛋白質は、2週間に1回または週1回投与するのが好ましい。処置される疾患によっては、より頻繁に、例えば週2〜3回非相同融合蛋白質を投与した方が良い場合もある。
【0063】
ここで本発明をこれだけに限定されるものではないが、以下の実施例を用いて記載する。
【実施例1】
【0064】
インビトロGLP−1受容体活性化アッセイ
CRE−BLAMシステムを使い、20,000から40,000細胞/ウェル/10%FBSを含む100μlDMEM培地の濃度で、ヒトGLP−1受容体を発現するHEK−293細胞をpoly−d−lysineでコーティングした透明な底を持つ96ウェルのブラックプレートに播種する。播種の翌日、培地をフリックオフし、血漿を含まない80μlのDMEM培地を加える。播種の3日後、様々な濃度の種々のGLP−1−Fc非相同融合蛋白質を含む20μlのDMEM血漿不含培地(0.5%BSA入り)を各ウェルに加え、用量応答曲線を作成する。通常、3ナノモルから30ナノモルの非相同GLP−1 Fc融合蛋白質の希釈液を使って用量応答曲線を作成し、それを基にEC50値を決定する。融合蛋白質を5時間インキュベートした後、20μlのβ−ラクタマーゼ基質(CCF2/AM、パンベラ社(PanVera LLC))を加え、更に1時間インキュベーションを続け、その時点でcytofluorを使って蛍光を測定する。このアッセイに関しては、ズロカルニック(Zlokarnik)等、(1998)、サイエンス(Science)、278:84−88に更に詳しく記載されている。種々のGLP−1−Fc融合蛋白質を試験し、EC50値を表1に示した。この値は、全実験で内部コントロールとして使用したVal−GLP−1(7−37)OHの値を基準にしてある。
【表1】

【実施例2】
【0065】
インビボGLP−1受容体活性化アッセイ
CRE−ルシフェラーゼ・システムを使い、30,000細胞/ウェル/80μl低血清DMEM F12培地の濃度で、ヒトGLP−1受容体を安定的に発現するHEK−293細胞を96ウェルプレートに播種する。播種の翌日、0.5%BSAに溶解した試験蛋白質の20μlを細胞と一緒に混合し、5時間インキュベーションする。細胞に添加する前に、各試験蛋白質の5倍濃度で3pMから3nMを含む12の希釈液を調製し、用量応答曲線を作成し、それを基にEC50値を決定する。インキュベーションの後、100μlのルシフェラーゼ試薬を各プレートに直接加え、2分間穏やかに撹拌する。プレートをTri−luxルミノメーターに載せ、ルシフェラーゼ発現により生じる発光量を計算する。種々のGLP−1−Fc融合蛋白質が試験され、EC50値は表2に示してある。値は、全実験で内部コントロールとして使用されたVal−GLP−1(7−37)OHの値を基準にしてある。試験された非相同融合蛋白質はダイマーなので、値は、モル濃度の2倍の違いを考慮に入れ修正を施してある。
【表2】

【実施例3】
【0066】
ラットの静脈内耐糖能試験
非相同融合蛋白質
Gly8-Glu22-Gly36-GLP-1(7-37)-L-IgG4 (S228P, F234A, L235A)
をラットの静脈内耐糖能試験(IVGTT)で評価する。3つのグループのそれぞれに少なくとも4匹のラットが含まれている。グループIは溶媒を摂取し(表3)、グループIIは1.79mg/kgのGly8-Glu22-Gly36-GLP-1(7-37)-L-IgG4 (S228P, F234A, L235A)を1回の皮下注射で摂取し(表4)、グループIIIは0.179mg/kgのGly8-Glu22-Gly36-GLP-1(7-37)-L-IgG4 (S228P, F234A, L235A)を1回の皮下注射で摂取する(表5)。ラットには1日目の朝皮下注射する。最初の注射の24時間後、ラットの体重1グラム当たり1μlのグルコース(D50)をボーラスとして注入する。血液のサンプルをグルコースのボーラス注入の後、2、4、6、10、20、および30分後に採取する。
【表3】


【表4】

【表5】

【実施例4】
【0067】
カニクイザル(Cynomolgus Monkey)に1回皮下注射した後の薬物動態試験
雄のカニクイザル(cynomolgus monkey)に非相同融合蛋白質
Gly8-Glu22-Gly36-GLP-1(7-37)-L-IgG4 (S228P, F234A, L235A)を0.1mg/kg皮下(SC)注射したときの薬物動態(PK)を調べる試験を行う。RIA抗体はGLPの中間部分に特異的である。ELISAはN末端に特異的な捕捉抗体およびFcに特異的な検出抗体を使用する。
ELISAとRIAの両方から得られる血漿濃度を使用して、薬物動態パラメーター値を決定した。
【0068】
PKパラメーター値の代表値を表6に示す。RIAの単一用量SC PKは、平均Cmax 446.7ng/mLとそれに対応するTmax 17.3時間に関連している。消失半減期の平均値は約79.3時間(3.3日)である。ELISAのPKは平均Cmax 292.2ng/mLとそれに対応するTmax16.7時間に関連している。消失半減期の平均値は約51.6時間(2.2日)である。
【表6】


a 観察された最大血漿濃度
b 最大血漿濃度が観察された時間
c 0から無限まで測定した血漿濃度時間曲線の下の面積
d 消失半減期
e 全身クレアランス、生物学的利用能の関数として
f 分布容積、生物学的利用能の関数として
SD=標準偏差
【実施例5】
【0069】
反復皮下注射の後の抗体形成の可能性評価
直接ELISAを使い、指定されたカニクイザル(cynomolgus monkey)の血清サンプルをGly8-Glu22-Gly36-GLP-1(7-37)-L-IgG4 (S228P, F234A, L235A)に対する抗体形成の可能性試験に供する。マイクロタイター・プレートを0.1μg/mLの濃度のGly8-Glu22-Gly36-GLP-1(7-37)-L-IgG4 (S228P, F234A, L235A)でコーティングする。サルの血清サンプルを50倍、500倍、1000倍、そして5000倍のブロッキング液で希釈し、0.05mLサンプル/ウェルを約1時間インキュベートする。二次抗体であるヤギ<ヒトFab’2>−ペルオキシダーゼ(ヒトへの75%交差感受性)を10,000倍のブロッキング液に希釈し、0.05mL/ウェル加え、約1時間インキュベートする。テトラメチルベンジジン(TMB)基質を使って発色させ、それを光学密度450nm〜630nmで読み取る。読取りを2回行い平均する。GLP−1抗体を正の対照として使い、ヤギ<ウサギ>(H+L)−ペルオキシダーゼコンジュゲートを検出用に二次的に使用する。ポイント血清サンプルを投与前、第2投与の24時間後、そして第1と第2のSC投与の168時間後に集め、免疫原生の可能性を評価する。G8E22−CEX−L−hIgG4に対する抗体力価の存在は、投与前の血清サンプルおよび正の対照と比較して解釈する。結果の代表例を表7に示す。
【表7】

【実施例6】
【0070】
絶食状態およびグルコースの段階的静脈内注射期間中のカニクイザル(Cynomolgus Monkey)に単回の皮下注射をした後の薬力学的試験:
第一段階(試験第1日目):溶媒を皮下注射する。溶媒の注射の直後、グルコース(20%ブドウ糖)の段階的(5、10、および25mg/kg/分)静脈内注射を行なう。第二段階(試験第3日目):GLP−1融合蛋白質(0.1mg/kg)を皮下注射する。第3段階:GLP−1融合蛋白質の注射の約96時間後グルコースの段階的静脈内注射を行なう。
【0071】
一晩(16時間)絶食状態の後に鎮静剤を投与されたサルに、グルコースの段階的静脈内注射を行なう。両方の静脈内グルコース注射について、ベースラインサンプルの抽出を10分毎に20分間行い、ベースラインを決める。グルコースの段階的注入を5mg/kg/分で開始20分後に行い、次に10mg/kg/分、そして25mg/kg/分と増加させる。各注入は20分間ずつ行なう。血液サンプルを10分間隔で採取し、グルコース、インスリン、そしてグルカゴンの測定を行なう。第1段階と第3段階で、グルコース注入前20分、10分、0分、そしてグルコース注入後の10、20、30、40、50、および60分目に血液を1.0mLずつ採取する。
【0072】
データの代表例を表8に示す。
【表8】


グルカゴン値に関しては、溶媒を投与されたサルとGLP−1融合蛋白質を投与されたサルの間に統計的差は見られなかった。
【実施例7】
【0073】
絶食状態およびグルコースの段階的静脈内注射期間中のラットに3種類の用量の単回皮下注射を行なった後の薬力学的試験
慢性的にカニューレを挿入されたラットを溶媒対照(生理食塩水)または3つの処置グループ(GLP−1融合蛋白質:0.0179mg/kg、0.179mg/kgまたは1.79mg/kg)のいずれかに割り当てる。処置の24時間後、一晩絶食状態(16時間)にあるラットにグルコースの段階的静脈内注射試験を行う。グルコースの段階的静脈内注射は、生理食塩水注入のベースライン期間(20分)、次に30分のグルコース注入を2度(5mg/kg/分および15mg/kg/分)行なう期間で構成される。血漿サンプルの採取は、グルコース注入(ベースライン)前20分、10分、0分、そして10分、20分、30分、40分、50分、および60分後に行なう。
【0074】
データの代表例を表9に示す。
【表9】

*P≦0.05 対溶媒
【実施例8】
【0075】
FGF−21融合蛋白質の薬物動態分析
用量0.4mg/kgのFGF−21融合蛋白質を静脈内(IV)または皮下(SC)経路でCD−1マウスに投与する。投与後0から336時間の間に、様々な時点でマウスを採血する。各サンプルから血漿を集め、ラジオイムノアッセイで分析する。薬物動態パラメーターをモデル依存(IVデータ)および独立(SCデータ)方法(WinNonlin Pro)を使って計算する。その結果を以下の表10に示してある。IV投与によれば、天然のFGF−21の消失半減期0.5時間と比べ、FGF−21−Fc融合蛋白質の消失半減期は約53.9時間である。SC投与によれば、天然のFGF−21の消失半減期0.6時間と比べ、FGF−21−Fc融合蛋白質の消失半減期は約24時間である。両投与経路とも、FGF−21−Fc融合蛋白質は、天然のFGF−21と比べ長い作用期間を示している。

【表10】


a 観察された最大血漿濃度
b 最大血漿濃度が観察された時間
c 0から無限まで測定した血漿濃度時間曲線の下の面積
d 消失半減期(時間)
e 全身クレアランス、生物学的利用能の関数として
f 生物学的利用能%

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SEQ ID NO:1である配列
【化1】

(ここで、
位置1のXaaは、Alaであるか、存在しない、
位置16のXaaは、ProまたはGluであり、
位置17のXaaは、Phe、ValまたはAlaであり、
位置18のXaaは、Leu、GluまたはAlaであり、
位置80のXaaは、AsnまたはAlaであり、
位置230のXaaは、Lysであるか、存在しない)
を含む免疫グロブリンのFc部分に融合した治療用活性ペプチドを含む非相同融合蛋白質。
【請求項2】
a) Gly-Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser (SEQ ID NO:2)、
b) Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser (SEQ ID NO:4)、
c) Gly-Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser (SEQ ID NO:6)、
d) Asp-Ala-Ala-Ala-Lys-Glu-Ala-Ala-Ala-Lys-Asp-Ala-Ala-Ala-Arg-Glu-Ala-Ala-Ala-Arg-Asp-Ala-Ala-Ala-Lys (SEQ ID NO:7)、
e) Asn-Val-Asp-His-Lys-Pro-Ser-Asn-Thr-Lys-Val-Asp-Lys-Arg (SEQ ID NO:8)
からなる群から選択される配列を含むペプチド・リンカーを介し、治療用活性ペプチドのC末端アミノ酸がFc部分のN末端アラニン残基と融合している、請求項1記載の非相同融合蛋白質。
【請求項3】
請求項1または2に記載の非相同融合蛋白質をコード化するポリヌクレオチド。
【請求項4】
請求項3記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項5】
請求項4記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項6】
請求項1または2に記載の非相同融合蛋白質を発現する宿主細胞。
【請求項7】
宿主細胞がCHO細胞である、請求項6記載の宿主細胞。
【請求項8】
宿主細胞がNSO細胞である、請求項6記載の宿主細胞。
【請求項9】
非相同融合蛋白質が検出可能な量で発現する条件の下に、請求項3記載のポリヌクレオチドを転写および翻訳するステップを含む、非相同融合蛋白質の産生方法。
【請求項10】
治療的有効量の請求項1または2記載の非相同融合蛋白質を投与することを含む、患者を処置する方法。
【請求項11】
非相同融合蛋白質が週1回投与される、請求項10記載の方法。
【請求項12】
請求項1または2に記載の非相同融合蛋白質の医薬品としての使用。

【公表番号】特表2007−505643(P2007−505643A)
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533432(P2006−533432)
【出願日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【国際出願番号】PCT/US2004/016611
【国際公開番号】WO2004/110472
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(594197872)イーライ リリー アンド カンパニー (301)
【Fターム(参考)】