説明

融解曲線データを収集するための温度レファレンシング・システムおよび方法

本発明は、融解曲線データを収集するための温度レファレンシング・システムおよび方法に関する。より具体的には、本発明は、DNA試料および温度基準物質のDNA融解曲線データを収集するシステムおよび方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、融解曲線データ(melt curve data)を収集するための温度レファレンシング(temperature referencing)システムおよび方法に関する。より具体的には、本発明は、DNA試料および温度基準物質(temperature reference material)のDNA融解曲線データを収集するシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
核酸の検出は、医学、法科学、工業加工、作物および家畜育種ならびに他の多くの分野において極めて重要である。病気状態(例えば癌)、感染性生物(例えばHIV)、遺伝的系統関係、遺伝マーカなどを検出する能力は、病気の診断および予後、マーカ援用選抜(marker assisted selection)、犯行現場の特徴の正確な同定、産業用生物を繁殖させる技能および他の多くの技法において頻繁に必要となる技術である。ある関心の核酸の完全性の決定が、ある感染または癌の病理に関連することがある。少量の核酸を検出する最も強力で基本的な技術の1つは、ある核酸配列の一部または全部を何回も複製し、次いでその増幅生成物を分析する技術である。PCRはおそらく、いくつかの異なる増幅技法の中で最もよく知られている技法である。
【0003】
PCRは、短いDNA断片を増幅する強力な技法である。PCRを用いると、単一のテンプレート(template)DNA分子から出発して、数百万個のDNAコピー(copy)を高速に生成することができる。PCRは、DNAの1本鎖への変性、変性鎖へのプライマーのアニール、および耐熱性DNAポリメラーゼ酵素によるプライマーの伸長からなる3段階温度サイクルを含む。このサイクルを繰り返して、検出および分析に十分な量のコピーが生成されるようにする。原理上、PCRサイクルごとにコピーの数が2倍になる。実際には、各サイクル後に達成される増倍率は常に2倍未満である。さらに、PCRサイクリング(cycling)を続けると、必要な反応物の濃度が低下するため、ついには増幅DNA生成物の蓄積が停止する。PCRに関する一般的な詳細については、SambrookおよびRussell、「Molecular Cloning−−A Laboratory Manual」第3版、1〜3巻、Cold Spring Harbor Laboratory刊、米ニューヨーク州Cold Spring Harbor(2000)、「Current Protocols in Molecular Biology」、F.M.Ausubel他編、Current Protocols社(Greene Publishing Associates,Inc.社とJohn Wiley & Sons,Inc.社との合弁会社)刊(2005年補遺)および「PCR Protocols A Guide to Methods and Applications」、M.A.Innis他編、Academic Press Inc.社刊、米カリフォルニア州San Diego(1990)を参照されたい。
【0004】
リアルタイムPCR(real−time PCR)は、増幅DNA生成物の蓄積を、反応の進行とともに、一般的には1PCRサイクルごとに測定する発展中の一組の技法である。生成物の蓄積を経時的に監視すると、その反応の効率を決定すること、およびDNAテンプレート分子の初期濃度を推定することができる。リアルタイムPCRに関する全般的な詳細については、「Real−Time PCR:An Essential Guide」、K.Edwards他編、Horizon Bioscience社刊、英Norwich(2004)を参照されたい。
【0005】
これらよりも後に、PCRおよび他の増幅反応を実行する高処理能力のいくつかの方法、例えばマイクロフルイディック・デバイス(microfluidic device)中での増幅反応を含む方法、ならびにマイクロフルイディック・デバイス中またはマイクロフルイディック・デバイス上で増幅核酸を検出し、分析する方法が開発された。増幅のための試料の熱サイクリングは通常、2つの方法のうちの一方で実施される。第1の方法では、デバイス内へ試料溶液を注入し、従来のPCR機器の場合とほぼ同じように、温度を時間に関して循環させる。第2の方法では、試料溶液を連続的にポンプ注入して、溶液が、空間的に異なる複数の温度ゾーンを通過するようにする。例えば、Lagally他(Anal Chem 73:565〜570(2001))、Kopp他(Science 280:1046〜1048(1998))、Park他(Anal Chem 75:6029〜6033(2003))、Hahn他(WO2005/075683)Enzelberger他(米国特許第6,960,437号)およびKnapp他(米国特許出願公開第2005/0042639号)を参照されたい。
【0006】
マイクロフルイディック・システムは、その中に流体を流すことができ、少なくとも1つの内側断面寸法(例えば深さ、幅、長さ、直径)が約1000マイクロメートル未満である少なくとも1本のチャネルを有するシステムである。一般に、マイクロチャネル(microchannel)の断面寸法は約5ミクロンから約500ミクロン、深さは約1ミクロンから約100ミクロンである。
【0007】
融解曲線の解析は、核酸を分析するための重要な技法である。この方法では、2本の鎖が結合しているのかまたは結合していないのかを指示する染料の存在下で、2本鎖核酸を変性させる。このような指示染料の例としては、SYBR(登録商標)Green Iなどの非特異的結合染料があり、その蛍光効率(fluorescence efficiency)は、その染料が2本鎖DNAに結合しているかどうかに強く依存する。混合物の温度を上昇させると、染料からの蛍光が低減し、この低減が、核酸分子が部分的にまたは完全に融解したこと、すなわち2重らせんがほどけたことを指示する。したがって、染料蛍光を温度の関数として測定することによって、二本鎖(duplex)の長さ、GC含量に関する情報、さらには正確な配列に関する情報が得られる。例えば、Ririe他(Anal Biochem 245:154〜160、1997)、Wittwer他(Clin Chem 49:853〜860、2003)、Liew他(Clin Chem 50:1156〜1164、2004)、Herrmann他(Clin Chem 52:494〜503、2006)、Knapp他(米国特許出願公開第2002/0197630号)、Wittwer他(米国特許出願公開第2005/0233335号)、Wittwer他(米国特許出願公開第2006/0019253号)およびSundberg他(米国特許出願公開第2007/0026421号)を参照されたい。
【0008】
DNAに対して熱融解を実行するいくつかの市販の機器が存在する。入手可能な機器の例には、Idaho Technology HR−1高分解能メルタ(high resolution melter)、Idaho Technology LightScanner高分解能メルタなどがある。HR−1高分解能メルタは、市販装置の中で最も高い分解能の蛍光信号対雑音比および温度分解能を有する。しかしながら、この機器には、一度に1試料しか分析することができず、試料容器を手動で取り替えなければならないという限界がある。試験ごとに容器を取り替えることはおそらく、ランとランとの間の温度変動性(run−to−run temperature variability)につながる。LightScanner高分解能メルタは、やはり良好な信号および温度分解能を有し、96ウェル・プレート試料容器上で動作する。しかしながら、この装置は、標準ウェル・プレートに基づく他のシステムと同様に、プレート全体を横切る温度勾配がかなり大きい(約0.3℃)ことが欠点である。これらの分析機器の一般的な動作モードは、温度を時間に対して直線的な上昇させる制御された方法で、試料(1つまたは複数)に熱を加えるモードである。同時に、安定した連続蛍光励起光を当て、固定された積分時間間隔にわたって、放出された蛍光を連続的に収集する。この蛍光強度データを、時間に対する温度上昇の情報に基づいて時間ベースから温度ベースに変換する。
【0009】
この方法に固有の難点の1つは、温度制御システムの精度および正確さが限られていることである。例えば、ヒータを制御するために使用するフィードバック信号は、試料から物理的に離れた温度センサから到来する。温度上昇の間、熱は、試料容器を通して熱源から試料へ拡散し、したがって、試料内の温度勾配および試料容器を横切る温度勾配が存在する。試料容器の外側にある温度センサは、たとえそれが完全に正確であっても、試料の瞬時温度値から多少ずれた温度を報告する。さらに、このずれは、温度上昇速度、幾何形状およびヒータと試料容器との間の熱接触の質に依存する。
【0010】
現在の市場の関心は、DNA配列を検出し、分析するマイクロフルイディック・ゲノム試料分析システムをさらに開発することにある。これらのマイクロフルイディック・システムの開発はしばしば、チャネル構成、入口、出口、緩衝液注入法、ゲノム試料注入法のボーラス(bolus)、温度サイクリングおよび制御法、ならびに光学分析法のさまざまな組合せを伴う。さらに、融解曲線データ収集用の温度レファレンシング・システムおよび方法を開発することにも関心が寄せられている。
【0011】
マイクロフルイディック融解曲線の解析は一般に、停止流型式(stopped flow format)または連続流型式(continuous flow format)で実施される。停止流型式では、マイクロフルイディック・デバイスのマイクロチャネル内の流れを停止し、そのチャネル内の温度を、所望の融解曲線を生成するのに必要なある温度範囲にわたって上昇させる。停止流型式の欠点は、この型式が、停止させることなく流れを継続させる必要があるプロセスの中でその流れとシステム内でうまく統合されないことである。蛍光指示染料を使用して変性を監視するときの停止流型式の他の欠点は、温度上昇を実施している間の染料のフォトブリーチング(photobleaching)に起因する蛍光信号の損失である。
【0012】
連続流型式では、マイクロフルイディック・デバイス内のマイクロチャネルの長さ(流れの方向)に沿って温度勾配を与えることによって融解曲線の解析を実行する。融解曲線の解析において、分析中の分子を、第1の温度から第2の温度までの温度範囲の温度にさらすことが必要な場合には、マイクロチャネルの一端の温度を第1の温度に、もう一端の温度を第2の温度に制御し、それにより、第1の選択温度から第2の選択温度までの温度範囲にまたがる連続温度勾配を生み出す。連続流型式のある種の実施態様の欠点は、所望の融解曲線を生成するためには、温度勾配に沿った複数の点で、流れの中の分子の熱特性を測定しなければならないことである。このことは、流れの中の分子の熱特性を単一の点で測定して所望の融解曲線を生成することができる停止流型式の場合よりも、流れの中の分子の熱特性の測定を複雑にする。
【0013】
それぞれ参照により本明細書に組み込まれているSundberg他(米国特許出願公開第2007/0026421号)およびKnight他(米国特許出願公開第2007/0231799号)は、マイクロフルイディック・デバイス内での分子の融解曲線を使用して結合検定(binding assay)を実施する方法、システム、キットおよびデバイスを記載している。検定する対象である分子(1つまたは複数)をデバイス内のマイクロチャネルに流すことができ、任意選択で、マイクロチャネル内で、この分子(1つまたは複数)を、例えば蛍光指示分子および/または検定中の分子の結合相手を構成する追加の分子に露出する。次いで、これらの関係分子を加熱(および/または冷却)し、それらの分子の検出可能な特性を、ある温度範囲にわたって測定する。その結果得られたデータから、これらの関係分子の結合親和力の決定および定量を可能にする熱特性曲線(1つまたは複数)を構築する。
【0014】
知られている融解曲線解析システムおよび方法は、ある程度の不確実性および再現性の欠如、とりわけ温度制御および測定システムに関するある程度の不確実性および再現性の欠如を欠点として有する。したがって、空間的および時間的な温度変動の影響を低減させることによって融解曲線解析技術の有用性を向上させることが、継続的に求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】WO2005/075683
【特許文献2】米国特許第6,960,437号
【特許文献3】米国特許出願公開第2005/0042639号
【特許文献4】米国特許出願公開第2002/0197630号
【特許文献5】米国特許出願公開第2005/0233335号
【特許文献6】米国特許出願公開第2006/0019253号
【特許文献7】米国特許出願公開第2007/0026421号
【特許文献8】米国特許出願公開第2007/0231799号
【特許文献9】米国特許出願公開第2008/0003593号
【特許文献10】米国特許出願公開第2008/0003588号
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】SambrookおよびRussell、「Molecular Cloning−−A Laboratory Manual」、第3版、1〜3巻、Cold Spring Harbor Laboratory刊、米ニューヨーク州Cold Spring Harbor(2000)
【非特許文献2】「Current Protocols in Molecular Biology」、F.M.Ausubel他編、Current Protocols社(Greene Publishing Associates,Inc.社とJohn Wiley & Sons,Inc.社との合弁会社)刊(2005年補遺)
【非特許文献3】「PCR Protocols A Guide to Methods and Applications」、M.A.Innis他編、Academic Press Inc.社刊、米カリフォルニア州San Diego(1990)
【非特許文献4】「Real−Time PCR:An Essential Guide」、K.Edwards他編、Horizon Bioscience社刊、英Norwich(2004)
【非特許文献5】Lagally他、Anal Chem 73:565〜570(2001)
【非特許文献6】Kopp他、Science 280:1046〜1048(1998)
【非特許文献7】Park他、Anal Chem 75:6029〜6033(2003)
【非特許文献8】Ririe他、Anal Biochem 245:154〜160、1997
【非特許文献9】Wittwer他、Clin Chem 49:853〜860、2003
【非特許文献10】Liew他、Clin Chem 50:1156〜1164、2004
【非特許文献11】Herrmann他、Clin Chem 52:494〜503、2006
【非特許文献12】Genome Analysis:A Laboratory Manual Series(I〜IV巻)、Using Antibodies:A LaboratoryManual、Cells:A Laboratory Manual、PCR Primer:A Laboratory ManualおよびMolecular Cloning:A Laboratory Manual(全てCold Spring Harbor Laboratory Press社刊)
【非特許文献13】Stryer,L.(1995)「Biochemistry」(第4版)、米ニューヨーク州Freeman
【非特許文献14】Gait、「Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach」、1984、IRL Press社刊、英London
【非特許文献15】NelsonおよびCox(2000)、「Lehinger,Principles of Biochemistry」、第3版、W.H.Freeman Pub.社刊、米ニューヨーク州New York
【非特許文献16】Berg他(2002)、「Biochemistry」、第5版、W.H.Freeman Pub.社刊、米ニューヨーク州New York
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、融解曲線データを収集するための温度レファレンシング・システムおよび方法に関する。より具体的には、本発明は、DNA試料および温度基準物質のDNA融解曲線データを収集するシステムおよび方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
したがって、第1の態様では、本発明が、融解曲線データの収集を実行するシステムであって、容器、加熱システムおよび検出システムを備え、容器が、熱的に緊密に接続した少なくとも2つのチャンバを備え、少なくとも1つのチャンバが、試験する対象であるDNA試料を含み、少なくとも1つチャンバが温度基準物質を含むシステムを提供する。いくつかの実施形態では、加熱システムが、これらのチャンバの全てのチャンバに同時に熱を供給する。いくつかの実施形態では、空間的な温度勾配を決定するために、チャンバが、空間的に分離された少なくとも2つの温度基準物質を含む。他の実施形態では、温度基準物質が、空間と時間の両方に関してDNA試料を間に挟む。他の実施形態では、温度基準物質がDNA試料と混合される。いくつかの実施形態では、検出システムが光学検出システムである。他の実施形態では、温度基準物質からの検出可能信号が加熱システムにフィードバックを提供する。他の実施形態では、容器がマイクロフルイディック・チップであり、チャンバが、チップ内のマイクロフルイディック・チャネルである。いくつかの実施形態では、容器が少なくとも3つのチャンバを備え、空間的な温度勾配を決定するために、これらのチャンバのうちの少なくとも2つのチャンバが互いに空間的に分離されており、温度基準物質を含む。他の実施形態では、温度基準物質を含む2つのチャンバ間に、DNA試料を含む少なくとも2つのチャンバが配置される。いくつかの実施形態では、温度基準物質が既知のDNA混合物である。他の実施形態では、温度基準物質がサーモクロマチック物質(thermochromatic material)である。
【0019】
第2の態様では、本発明が、融解曲線データの収集を実行するシステムであって、容器、加熱システムおよび検出システムを備え、容器が、容器を移動させることなく再充填可能な(refillable)少なくとも1つのチャンバを備え、容器が、試験する対象であるDNA試料および温度基準物質を含むシステムを提供する。いくつかの実施形態では、加熱システムが、これらのチャンバの全てのチャンバに同時に熱を供給する。いくつかの実施形態では、検出システムが光学検出システムである。他の実施形態では、温度基準物質からの検出可能信号が加熱システムにフィードバックを提供する。いくつかの実施形態では、チャンバの中で、DNA試料と温度基準物質とが交互に並ぶ。他の実施形態では、温度基準物質が、空間と時間の両方に関してDNA試料を間に挟む。他の実施形態では、DNA試料と温度基準物質とが混合され、温度基準物質が、DNA試料の検出シグナチャから識別可能な検出シグナチャを有し、試料からのデータと温度基準物質からのデータの両方が、同じ場所で、同じ時刻に収集される。いくつかの実施形態では、温度基準物質がフロー・マーカ(flow marker)でもある。
【0020】
いくつかの実施形態では、容器がマイクロフルイディック・チップであり、チャンバが、チップ内のマイクロフルイディック・チャネルである。いくつかの実施形態では、容器が少なくとも3つのチャンバを備え、空間的な温度勾配を決定するために、これらのチャンバのうちの少なくとも2つのチャンバが互いに空間的に分離されており、温度基準物質を含む。他の実施形態では、温度基準物質を含む2つのチャンバ間に、DNA試料を含む少なくとも2つのチャンバが配置される。いくつかの実施形態では、温度基準物質が既知のDNA混合物である。他の実施形態では、温度基準物質がサーモクロマチック物質である。
【0021】
第3の態様では、本発明が、融解曲線データの収集を実行する方法であって、熱的に緊密に接続した少なくとも2つのチャンバを備える容器を提供すること、これらのチャンバのうちの少なくとも1つのチャンバに、試験する対象であるDNA試料を導入し、残りのチャンバのうちの少なくとも1つのチャンバに温度基準物質を導入すること、チャンバを第1の温度から第2の温度まで加熱すること、ならびにDNA試料から発せられた検出可能な特性および温度基準物質から発せられた検出可能な特性を測定することであって、DNA試料の検出可能な特性が、試料中のDNAの変性の程度を指示し、温度基準物質の検出可能な特性が温度と相関することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、空間的な温度勾配を決定するために、チャンバが、空間的に分離された少なくとも2つの温度基準物質を含み、温度基準物質から発せられた検出可能な特性が測定される。他の実施形態では、温度基準物質が、空間と時間の両方に関してDNA試料を間に挟む。いくつかの実施形態では、いくつかの実施形態では、空間的な温度勾配および時間的変動を決定するために、DNA試料を間に挟む温度基準物質から発せられた検出可能な特性が測定される。他の実施形態では、温度基準物質がDNA試料と混合される。
【0022】
いくつかの実施形態では、検出可能な特性が光学検出システムによって測定される。他の実施形態では、温度基準物質からの検出可能信号が加熱システムにフィードバックを提供する。他の実施形態では、容器がマイクロフルイディック・チップであり、チャンバが、チップ内のマイクロフルイディック・チャネルである。いくつかの実施形態では、容器が少なくとも3つのチャンバを備え、空間的な温度勾配を決定するために、これらのチャンバのうちの少なくとも2つのチャンバが互いに空間的に分離されており、温度基準物質を含み、温度基準物質から発せられた検出可能な特性が測定される。他の実施形態では、温度基準物質を含む2つのチャンバ間に、DNA試料を含む少なくとも2つのチャンバが配置される。いくつかの実施形態では、温度基準物質が既知のDNA混合物である。他の実施形態では、温度基準物質がサーモクロマチック物質である。
【0023】
第4の態様では、本発明が、融解曲線データの収集を実行する方法であって、容器を移動させることなく再充填可能な少なくとも1つのチャンバを含む容器を提供すること、これらのチャンバのうちの少なくとも1つのチャンバに、試験する対象であるDNA試料を導入し、これらのチャンバのうちの少なくとも1つのチャンバに温度基準物質を導入すること、チャンバを第1の温度から第2の温度まで加熱すること、ならびにDNA試料から発せられた検出可能な特性および温度基準物質から発せられた検出可能な特性を測定することであって、DNA試料の検出可能な特性がDNAの変性の程度を指示し、温度基準物質の検出可能な特性が温度と相関することを含む方法を提供する。
【0024】
いくつかの実施形態では、検出可能な特性が光学検出システムによって測定される。他の実施形態では、温度基準物質からの検出可能信号が加熱システムにフィードバックを提供する。いくつかの実施形態では、同じチャンバの中で、DNA試料と温度基準物質とが交互に並ぶ。他の実施形態では、温度基準物質が、空間と時間の両方に関してDNA試料を間に挟む。いくつかの実施形態では、いくつかの実施形態では、空間的な温度勾配および時間的変動を決定するために、DNA試料を間に挟む温度基準物質から発せられた検出可能な特性が測定される。
【0025】
他の実施形態では、DNA試料と温度基準物質とが混合され、温度基準物質が、DNA試料の検出シグナチャから識別可能な検出シグナチャを有し、試料からのデータと温度基準物質からのデータの両方が、同じ場所で、同じ時刻に収集される。いくつかの実施形態では、温度基準物質がフロー・マーカでもある。いくつかの実施形態では、容器がマイクロフルイディック・チップであり、チャンバが、チップ内のマイクロフルイディック・チャネルである。いくつかの実施形態では、容器が少なくとも3つのチャンバを備え、空間的な温度勾配を決定するために、これらのチャンバのうちの少なくとも2つのチャンバが互いに空間的に分離されており、温度基準物質を含み、温度基準物質から発せられた検出可能な特性が測定される。他の実施形態では、温度基準物質を含む2つのチャンバ間に、DNA試料を含む少なくとも2つのチャンバが配置される。いくつかの実施形態では、温度基準物質が既知のDNA混合物である。他の実施形態では、温度基準物質がサーモクロマチック物質である。
【0026】
次に、添付図面を参照して、本発明の上記の実施形態および他の実施形態を説明する。
【0027】
本明細書に組み込まれており、本明細書の一部を構成する添付図面は、本発明のさまざまな実施形態を例示する。図中、同様の参照符号は、同一の要素または機能的に同様の要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態に基づくシステムを示す図である。
【図2】本発明の他の実施形態に基づくシステムを示す図である。
【図3】融解曲線データの収集を実行することができる本発明の一実施形態に基づくマイクロフルイディック・マイクロフルイディック・デバイスを示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に基づくDNA試料と温度基準物質の空間関係を示す図である。
【図5】本発明の他の実施形態に基づくDNA試料と温度基準物質の空間関係を示す図である。
【図6】本発明の他の実施形態に基づくDNA試料と温度基準物質の空間関係を示す図である。
【図7】本発明の他の実施形態に基づくDNA試料と温度基準物質の空間関係を示す図である。
【図8】本発明の他の実施形態に基づくDNA試料と温度基準物質の空間関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明はいくつかの実施形態を有し、当業者に知られている詳細については特許、特許出願および他の参照文献に基づく。したがって、特許、特許出願または他の参照文献が本明細書に引用され、または繰り返されているときには、その特許、特許出願または他の参照文献が、あらゆる目的のためおよび列挙された提案のために、その全体が参照により組み込まれていることを理解すべきである。
【0030】
本発明の実施を実施する際には、特に明記されていない限りにおいて、当技術分野の技能の範囲に含まれる有機化学、高分子技術、分子生物学(組換え技法を含む)、細胞生物学、生化学および免疫学の従来の技法および記述を使用することができる。従来の技法には、ポリマー・アレイ合成、ハイブリッド形成、連結反応、および標識を使用したハイブリッド形成の検出などが含まれる。適当な技法の具体的な説明は、本明細書に示す例を参照することによって得ることができる。しかし、当然ながら、従来の他の等価の手法を使用することもできる。このような従来の技法および記述は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれているGenome Analysis:A Laboratory Manual Series(I〜IV巻)、Using Antibodies:A LaboratoryManual、Cells:A Laboratory Manual、PCR Primer:A Laboratory ManualおよびMolecular Cloning:A Laboratory Manual(全てCold Spring Harbor Laboratory Press社刊)、Stryer,L.(1995)「Biochemistry」(第4版)、米ニューヨーク州Freeman、Gait、「Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach」、1984、IRL Press社刊、英London、NelsonおよびCox(2000)、Lehinger、「Principles of Biochemistry」、第3版、W.H.Freeman Pub.社刊、米ニューヨーク州New York、およびBerg他(2002)、「Biochemistry」、第5版、W.H.Freeman Pub.社刊、米ニューヨーク州New Yorkなどの標準実験室マニュアルに出ている。
【0031】
上で述べたとおり、知られている融解曲線解析システムおよび方法は、ある程度の不確実性および再現性の欠如、とりわけ温度制御および測定システムに関するある程度の不確実性および再現性の欠如を欠点として有する。本発明は、融解曲線データを収集するための温度レファレンシング・システムおよび方法を提供する。本発明は、空間的および時間的な温度変動の影響を低減させることによって融解曲線解析技術を向上させる。
【0032】
図1に示すように、本発明の一実施形態は、融解曲線データの収集を実行するシステムであって、容器101、加熱システム108および検出システム106を備えるシステムを提供する。容器101は、少なくとも2つのチャンバ102aおよび102bを備える。一実施形態では、これらのチャンバが同じ物理寸法を有する。他の実施形態では、これらのチャンバが熱的に緊密に接続されるように、これらのチャンバが互いのすぐ近くに配置される。いくつかの実施形態では、これらのチャンバが互いから1mm未満のところに配置される。他の実施形態では、これらのチャンバが互いから0.3mm未満のところに配置される。いくつかの実施形態では、加熱システム108が、これらのチャンバの全てのチャンバに同時に熱を供給する。いくつかの実施形態では、任意選択の温度センサが容器を監視し、加熱システムにフィードバック制御を提供する。いくつかの実施形態では、検出システム106が光学検出システムである。他の実施形態では、検出システム106が、チャンバからの光学特性(例えば蛍光放出)を同時に監視する。このシステムはさらに、チャンバを照明する励起源104(例えばレーザまたは他の励起源)を備えることができる。検出システム106は、励起源104によって照明された後にチャンバから到来する光(例えば蛍光または他の光)を検出する。このシステムはさらに制御ユニット110を備えることができる。制御ユニット110は加熱システム108を制御し、加熱システムからフィードバックを受け取ることができる。いくつかの実施形態では、検出システム106が受け取った検出可能信号(例えば蛍光放出)が、制御ユニット110を通して加熱システムにフィードバックを提供する。他の実施形態では、励起源104が、検出システム106による検出可能信号の検出を制御する制御ユニット110にフィードバックを提供する。
【0033】
一実施形態では、このシステムの少なくとも1つのチャンバが、試験する(すなわち融解曲線の解析によって測定する)対象である未知DNAの試験試料(すなわちDNA試料)を含み、少なくとも1つのチャンバが温度基準物質を含む。いくつかの実施形態では、DNA試料がPCRの増幅産物(amplicon)を含む。他の実施形態では、PCRの増幅産物がdsDNA結合染料を含む。適当なdsDNA結合染料には、SYBR(登録商標)Green 1(Invitrogen Corp.社、米カリフォルニア州Carlsbad)、SYTO(登録商標)9(Invitrogen Corp.社、米カリフォルニア州Carlsbad)、LC Green(登録商標)(Idaho Technologies社、米ユタ州Salt Lake City)およびEva Green(商標)(Biotium Inc.社、米カリフォルニア州Hayward)などがある。他の実施形態では、DNA試料が、標識されていないプローブおよび非対称PCRによって生成された1本鎖の増幅産物を含む。いくつかの実施形態では、空間的な温度勾配を決定するために、チャンバが、空間的に分離された少なくとも2つの温度基準物質を含む。他の実施形態では、温度基準物質が、空間と時間の両方に関してDNA試料を間に挟む。他の実施形態では、温度基準物質がDNA試料と混合される。この実施形態では、温度基準物質が、DNA試料の検出シグナチャから識別可能な検出シグナチャを有する。いくつかの実施形態では、試料からのデータと温度基準物質からのデータの両方が、同じ場所で、同じ時刻に収集される。
【0034】
いくつかの実施形態では、容器がマイクロフルイディック・チップであり、チャンバが、チップ内のマイクロフルイディック・チャネルである。いくつかの実施形態では、容器が少なくとも3つのチャンバを備え、空間的な温度勾配を決定するために、これらのチャンバのうちの少なくとも2つのチャンバが互いに空間的に分離されており、温度基準物質を含む。他の実施形態では、温度基準物質を含む2つのチャンバ間に、DNA試料を含む少なくとも2つのチャンバが配置される。
【0035】
チャンバ(1つまたは複数)内に存在するDNAを融解させて(すなわちチャンバ内のdsDNAをssDNAに転移させて)融解曲線を生成するため、加熱システム108は、実質的に一様に増大する量の熱をチャンバに供給する。一例では、加熱システム108が、一般に毎秒0.1℃から2℃の温度上昇速度を提供する。好ましい上昇速度は毎秒0.5℃から1℃である。温度は一般に、温度t1(例えば約65℃)から温度t2(例えば約95℃)まで上昇させることができる。いくつかの実施形態では、加熱システム108が、チャンバに熱を供給し、かつ/またはチャンバから熱を吸収するように構成され、したがって、加熱システム108は、1つまたは複数の熱源および/またはヒート・シンク(heat sink)を含むことができる(例えば、加熱システム108は、ペルチエ素子(peltier device)あるいは他の熱源またはヒート・シンクを含むことができる)。
【0036】
温度基準物質は、十分に特徴づけられた再現可能な光学特性変化を温度の関数として示す既知の標準物質である。いくつかの実施形態では、温度基準物質が既知のDNA混合物である。いくつかの実施形態では、DNA混合物が、既知の融解転移を有する均質な短いDNAデュープレックスの混合物である。他の実施形態では、DNA混合物が、2つ以上の融解転移を有するDNAデュープレックスの混合物である。他の実施形態では、DNA混合物が、複数の融解ドメイン(melting domain)を有するより長いDNAデュープレックスの混合物である。いくつかの実施形態では、温度基準物質がサーモクロマチック物質である。いくつかの実施形態では、サーモクロマチック物質が、サーモクロミック・ロイコ染料(leuco dye)である。他の実施形態では、サーモクロマチック物質が、サーモクロミック液晶物質である。サーモクロミック・ロイコ染料の例には、限定はされないが、スピロラクトン(spirolactone)、フルオラン(fluoran)、スピロピラン(spiropyran)およびフルギド(fulgide)などがある。サーモクロミック液晶物質の例には、限定はされないが、コレステリルノナノアート(cholesteryl nonanoate)(コレステリルペラルゴナート(cholesteryl pelargonate)、3β−コレスト−5−エン−3−オールノナノアート(3β−cholest−5−en−3−ol nonanoate)またはコレスト−5−エン−3−β−イルノナノアート(cholest−5−ene−3−β−yl nonanoate)とも呼ばれる)およびシアノビフェニル(cyanobiphenyl)が含まれる。
【0037】
図2に示すように、本発明は、融解曲線データの収集を実行するシステムであって、容器202、加熱システム108および検出システム106を備えるシステムを提供する。本発明のこの実施形態では、容器202が、容器を移動させることなく再充填可能な少なくとも1つのチャンバを備える。容器202は、試験する対象であるDNA試料および温度基準物質を含む。いくつかの実施形態では、加熱システム108が、これらのチャンバの全てのチャンバに同時に熱を供給する。いくつかの実施形態では、任意選択の温度センサが容器を監視し、加熱システムにフィードバック制御を提供する。いくつかの実施形態では、検出システム106が光学検出システムである。他の実施形態では、検出システム106が、チャンバからの光学特性(例えば蛍光放出)を同時に監視する。このシステムはさらに、チャンバを照明する励起源104(例えばレーザまたは他の励起源)を備えることができる。検出システム106は、励起源104によって照明された後にチャンバから到来する光(例えば蛍光または他の光)を検出する。このシステムはさらに制御ユニット110を備えることができる。制御ユニット110は加熱システム108を制御し、加熱システムからフィードバックを受け取ることができる。いくつかの実施形態では、検出システム106が受け取った検出可能信号(例えば蛍光放出)が、制御ユニット110を通して加熱システムにフィードバックを提供する。他の実施形態では、励起源104が、検出システム106による検出可能信号の検出を制御する制御ユニット110にフィードバックを提供する。したがって、本発明のこの実施形態は、励起源104、検出システム106、加熱システム108および制御ユニット110に対して試料容器全体を物理的に取り外し、取り替える必要なしに、内容物を取り出し、新たな溶液を再充填することができるチャンバを有する容器202を提供する。
【0038】
いくつかの実施形態では、容器202内のチャンバの中で、DNA試料と温度基準物質とが交互に並ぶ。他の実施形態では、温度基準物質が、空間と時間の両方に関してDNA試料を間に挟む。DNA試料を間に挟んだ温度基準物質の図が図2に示されている。他の実施形態では、DNA試料と温度基準物質とが混合される。この実施形態では、温度基準物質が、DNA試料の検出シグナチャから識別可能な検出シグナチャを有する。いくつかの実施形態では、試料からのデータと温度基準物質からのデータの両方が、同じ場所で、同じ時刻に収集される。いくつかの実施形態では、温度基準物質が、チャンバの中の流れを監視するフロー・マーカでもある。
【0039】
いくつかの実施形態では、図2に示されているもののように、容器が少なくとも3つのチャンバを備え、空間的な温度勾配を決定するために、これらのチャンバのうちの少なくとも2つのチャンバが互いに空間的に分離されており、温度基準物質を含む。他の実施形態では、温度基準物質を含む2つのチャンバ間に、DNA試料を含む少なくとも2つのチャンバが配置される。いくつかの実施形態では、温度基準物質が、本明細書に記載したものなどの既知のDNA混合物である。他の実施形態では、温度基準物質が、本明細書に記載したものなどのサーモクロマチック物質である。
【0040】
いくつかの実施形態では、図3に示すもののように、容器がマイクロフルイディック・チップであり、チャンバが、チップ内のマイクロフルイディック・チャネルである。図3に示すように、チップ302は、いくつかのマイクロフルイディック・チャネル308を含む。示した例では、32本のマイクロフルイディック・チャネルがあるが、チップ302が32本よりも多くのチャネルを有し、または32本よりも少ないチャネルを有することも企図される。示されているように、それぞれのマイクロフルイディック・チャネルの第1の部分をPCR処理ゾーン304内に置き、それぞれのマイクロフルイディック・チャネルの第2の部分を融解解析ゾーン306内に置くことができる。やはり示されているように、ゾーン306はゾーン304のすぐ後に続くことができ、ゾーン304の長さを、ゾーン306の長さよりもかなり大きくすることができる。本発明とともに使用することができるマイクロフルイディック・チップの一例が、参照により本明細書に組み込まれている米国特許出願公開第2008/0003593号に記載されている。マイクロフルイディック・チップ内でPCRを実行するシステムおよび方法の一例が、参照により本明細書に組み込まれている米国特許出願公開第2008/0003588号に記載されている。当技術分野では、他のマイクロフルイディック・チップもよく知られている。
【0041】
本発明はさらに、融解曲線データの収集を実行する方法を提供する。一態様によれば、この方法は、(a)熱的に緊密に接続した少なくとも2つのチャンバを含む容器を提供すること、(b)これらのチャンバのうちの少なくとも1つのチャンバに、試験する対象であるDNA試料を導入し、残りのチャンバのうちの少なくとも1つのチャンバに温度基準物質を導入すること、(c)これらのチャンバを第1の温度から第2の温度へ加熱すること、ならびに(d)DNA試料から発せられた検出可能な特性および温度基準物質から発せられた検出可能な特性を測定することを含む。DNA試料のこの検出可能な特性は、試料中のDNAの変性(すなわち融解)の程度を指示する。温度基準物質の検出可能な特性は温度と相関する。
【0042】
一例では、DNA試料および温度基準物質が、本明細書に記載されたとおりである。これらのチャンバは、一般に毎秒0.1℃から2℃の温度上昇速度が得られるような方法で加熱される。好ましい上昇速度は毎秒0.5℃から1℃である。温度は一般に、温度t1(例えば約65℃)から温度t2(例えば約95℃)まで上昇させることができる。
【0043】
一実施形態では、これらのチャンバのうちの1つのチャンバが温度基準物質を含む。この実施形態では、温度を上昇させたときに、DNA試料からの融解データと温度基準物質からのデータを同時に収集する。これらのチャンバは小さく、すぐ近くに位置し、ヒータは、熱を均一に供給するように設計されているため、これらの2つのチャンバ間の温度差は小さいはずである。次いで、これらの2つのデータ・セットを比較して、DNA試料の実際の融解特性を推論する。
【0044】
いくつかの実施形態では、空間的な温度勾配を決定するために、チャンバが、空間的に分離された少なくとも2つの温度基準物質を含み、温度基準物質から発せられた検出可能な特性が測定される。他の実施形態では、温度基準物質が、空間と時間の両方に関してDNA試料を間に挟む。いくつかの実施形態では、空間的な温度勾配および時間的変動を決定するために、DNA試料を間に挟む温度基準物質から発せられた検出可能な特性が測定される。空間的に分離された少なくとも2つの温度基準物質を同時に測定することによって、温度勾配を測定することができ、この勾配を考慮するためにデータを補償することができる。例えば、未知試料の位置における温度を、その位置の周囲の温度標準物質からの結果を補間することによって推定することができる。
【0045】
他の実施形態では、温度基準物質がDNA試料と混合される。温度基準物質が、未知試料と同じ位置で、同じ時刻に測定されるため、この方法は、正確さにおいて最も優れている。この方法では、温度変化に伴うその物質の光学特性の変化と、試験中のDNA/結合染料からの融解依存蛍光とを識別できる物質を使用する必要がある。測定することができると考えられるいくつかの物理特性があり、これらには、吸光度およびルミネセンス(luminescence)、放出された蛍光の効率、波長、偏光または寿命、波長に対する吸光度、複屈折などが含まれる。理論的には、温度標準物質の追加はDNA融解の測定を一切妨害しないと考えられる。すなわち、温度標準物質の追加は融解特性を変化させず、測定過程に影響を及ぼさず、好ましくはPCRを妨害しないと考えられる。
【0046】
いくつかの実施形態では、検出可能な特性が、本明細書に記載された光学検出システムによって測定される。他の実施形態では、温度基準物質からの検出可能信号が加熱システムにフィードバックを提供する。他の実施形態では、容器がマイクロフルイディック・チップであり、チャンバが、チップ内のマイクロフルイディック・チャネルである。いくつかの実施形態では、容器が少なくとも3つのチャンバを備え、空間的な温度勾配を決定するために、これらのチャンバのうちの少なくとも2つのチャンバが互いに空間的に分離されており、温度基準物質を含み、温度基準物質から発せられた検出可能な特性が測定される。他の実施形態では、温度基準物質を含む2つのチャンバ間に、DNA試料を含む少なくとも2つのチャンバが配置される。いくつかの実施形態では、温度基準物質が、本明細書に記載したものなどの既知のDNA混合物である。他の実施形態では、温度基準物質が、本明細書に記載したものなどのサーモクロマチック物質である。
【0047】
第2の態様では、本発明の方法が、(a)容器を移動させることなく再充填可能な少なくとも1つのチャンバを備える容器を提供すること、(b)これらのチャンバのうちの少なくとも1つのチャンバに、試験する対象であるDNA試料を導入し、これらのチャンバのうちの少なくとも1つのチャンバに温度基準物質を導入すること、(c)これらのチャンバを第1の温度から第2の温度まで加熱すること、ならびに(d)DNA試料から発せられた検出可能な特性および温度基準物質から発せられた検出可能な特性を測定することを含む。DNA試料のこの検出可能な特性は、試料中のDNAの変性(すなわち融解)の程度を指示する。温度基準物質の検出可能な特性は温度と相関する。
【0048】
この態様では、単に、新しいDNA試料および温度基準物質が再充填可能なチャンバの中へポンプ注入される。光学システムおよび温度制御システムに対して試料容器全体を物理的に取り外し、取り替える必要はない。容器の熱特性ならびにヒータ(および追加の温度センサ)と容器との接触が変わらないため、この属性は、ランとランとの間の温度変動の可能性を低減させる。さらに、この方法は、温度基準物質と未知のDNA試料とを逐次的に交互に並べることによって、同じチャネルの中で温度基準標準物質を測定することができるため、この態様では、温度変動の影響がさらに低減される。同じ時刻に空間に関して未知の試料を間に挟む着想と似ているが、この着想は、同じ位置で時間に関して未知の試料を間に挟む。
【0049】
一例では、DNA試料および温度基準物質が、本明細書に記載されたとおりである。これらのチャンバは、一般に毎秒0.1℃から2℃の温度上昇速度が得られるような方法で加熱される。好ましい上昇速度は毎秒0.5℃から1℃である。温度は一般に、温度t1(例えば約65℃)から温度t2(例えば約95℃)まで上昇させることができる。
【0050】
いくつかの実施形態では、検出可能な特性が、本明細書に記載された光学検出システムによって測定される。他の実施形態では、温度基準物質からの検出可能信号が加熱システムにフィードバックを提供する。いくつかの実施形態では、チャンバの中で、DNA試料と温度基準物質とが交互に並ぶ。他の実施形態では、温度基準物質が、空間と時間の両方に関してDNA試料を間に挟む。いくつかの実施形態では、空間的な温度勾配および時間的変動を決定するために、DNA試料を間に挟む温度基準物質から発せられた検出可能な特性が測定される。
【0051】
他の実施形態では、DNA試料と温度基準物質とが混合され、温度基準物質が、DNA試料の検出シグナチャから識別可能な検出シグナチャを有し、試料からのデータと温度基準物質からのデータの両方が、同じ場所で、同じ時刻に収集される。いくつかの実施形態では、温度基準物質がフロー・マーカでもある。いくつかの実施形態では、容器がマイクロフルイディック・チップであり、チャンバが、チップ内のマイクロフルイディック・チャネルである。いくつかの実施形態では、容器が少なくとも3つのチャンバを備え、空間的な温度勾配を決定するために、これらのチャンバのうちの少なくとも2つのチャンバが互いに空間的に分離されており、温度基準物質を含み、温度基準物質から発せられた検出可能な特性が測定される。他の実施形態では、温度基準物質を含む2つのチャンバ間に、DNA試料を含む少なくとも2つのチャンバが配置される。いくつかの実施形態では、温度基準物質が既知のDNA混合物である。他の実施形態では、温度基準物質がサーモクロマチック物質である。
【0052】
再充填可能なチャンバを有する容器の一例は、チャネルを含むマイクロフルイディック・チップまたはマイクロキャピラリ・システム(microcapillary system)である。単に、新しいDNA試料ボーラスおよび温度基準物質ボーラスが、容器を移動させることなく、融解検出領域の中へポンプ注入される。容器の熱特性ならびにヒータ(および追加の温度センサ)と容器との接触が変わらないため、この属性は、ランとランとの間の温度変動の可能性を低減させる。温度変動の影響をさらに低減させるため、この実施形態は、基準溶液と未知の試験試料とを逐次的に交互に並べることによって、同じチャネルの中で温度基準標準物質を測定することができる。同じ時刻に空間に関して未知の試料を間に挟む着想と似ているが、この着想は、同じ位置で時間に関して未知の試料を間に挟む。
【0053】
この実施形態では、任意選択で、これらの逐次温度基準物質ボーラスが2重の目的を果たすことができる。例えば、フローイング(flowing)リアルタイムPCRシステム(参照により本明細書に組み込まれている米国特許出願公開第2008/0003588号参照)とともに使用する場合には、流量および/またはチャネルに沿った分散を測定するため、これらの温度基準物質ボーラスをフロー・マーカとして使用することもできる。
【0054】
他の実施形態では、温度基準物質が、空間と時間の両方に関して未知DNA試料ボーラスを間に挟む目的に使用される。言い換えると、上記の実施形態を組み合わせて、それらを一緒に使用する。
【0055】
他の実施形態では、未知のDNA試料の中に温度基準物質が混入される。温度基準物質が、未知試料と同じ位置で、同じ時刻に測定されるため、この方法は、正確さにおいて最も優れている。この方法では、温度変化に伴うその物質の光学特性の変化と、試験中のDNA/結合染料からの融解依存蛍光とを識別できる物質を使用する必要がある。測定することができると考えられるいくつかの物理特性があり、これらには、吸光度およびルミネセンス、放出された蛍光の効率、波長、偏光または寿命、波長に対する吸光度、複屈折などが含まれる。理論的には、温度標準物質の追加はDNA融解の測定を一切妨害しないと考えられる。すなわち、温度標準物質の追加は融解特性を変化させず、測定過程に影響を及ぼさず、好ましくはPCRを妨害しないと考えられる。
【0056】
他の実施形態では、ヒータにフィードバックを提供して、その位置でのより正確な温度制御を可能にするために、温度基準物質からの光学シグナチャが使用される。
【0057】
容器が、1つまたは複数のマイクロチャネルを備えた平面マイクロフルイディック・チップである本発明(多くの実施形態および動作モード)の例を図4〜7に示す。融解曲線解析によって試験する対象であるPCR生成物のボーラス(DNA試料または試験ボーラス)は、これらのチャネルの中を一定の速度で流れる。これらの例は、マイクロフルイディック・チャネルの中で、DNA試料ボーラスが温度基準物質ボーラスと交互に並び、またはDNA試料ボーラスが温度基準物質ボーラスと結合される例を示す。それぞれの例では、DNA融解による蛍光信号または温度基準物質からの信号が収集される。この過程は、マイクロフルイディック・チップを物理的に移動させ、または取り替えることなく、何回も繰り返すことができる。空間的な温度勾配を決定するために、温度基準物質からのデータが使用される。時間的変動が起こったかどうかを判定するために、異なる時刻における温度基準物質からのデータ(すなわち融解1対融解2)が使用される。
【0058】
図4は、分析する対象であるDNAを含む試験ボーラス(400a、400b)と温度基準ボーラス(402a、402b)とが交互に並ぶ本発明の一例を示す。各試験ボーラスと各温度基準ボーラスとは、スペーサ流体(spacer fluid)(404a、404b、404c、404d)によって分離される。
【0059】
図5は、分析する対象であるDNAを含む試験ボーラス(500a、500b、500c、500d)と、フロー・マーカと温度基準物質とを結合したものを含むボーラス(502a、502b、502c、502d、502e)とが交互に並ぶ本発明の一例を示す。
【0060】
図6は、試験ボーラスが、分析する対象であるDNAと温度基準物質の両方を含む(600a、600b、600c、600d)本発明の一例を示す。試験ボーラスは、スペーサ流体(602a、602b、602c、602d、602e)によって分離される。
【0061】
図7は、マイクロフルイディック・チップが3本のチャネル(レーン(lane)1〜3)を含む本発明の一例を示す。分析する対象であるDNAを含む試験ボーラス(700a、700b)は、フロー・マーカと温度基準物質とを結合したものを含むボーラス(702a、702b、702c、702d、702e、702f)によって挟まれている。同じチャネルの中の試験ボーラスと温度基準ボーラスとは、スペーサ流体(704a、704b、704c、704d、702e)によって分離される。
【0062】
図8は、容器が、32本の平行なマイクロチャネル(レーン1〜32)を有する平面マイクロフルイディック・チップである(多くの実施形態および動作モードの)一例を示す。融解曲線解析によって試験する対象であるPCR生成物のボーラス(DNA試料ボーラス)(800a、800b、800c、800d)は、スペーサ流体(802a、802b、802c、802d、802e)と交互に並んで、これらのチャネルの中を一定の速度で流れる。チャネルの一部(例えばこの図に示すようにレーン1、11、22および32)は温度基準物質(804a、804b、804c、804d)を含む。DNA試料ボーラスの第1の群が融解ゾーンに到達すると、32本の全てのチャネルが温度上昇にさらされ(融解1)、DNA融解による蛍光信号および温度基準物質からの信号が全てのレーンから収集される。後に、DNA試料ボーラスの第2の群が融解ゾーン検出器に到達すると、融解測定が再び実行される(融解2)。この過程は、マイクロフルイディック・チップを物理的に移動させ、または置き換えることなく、何回も繰り返すことができる(融解3、4など)。空間的な温度勾配を決定するために、異なる位置で同時に測定された温度基準物質からのデータが使用される。時間的変動が起こったかどうかを判定するために、異なる時刻における温度基準物質からのデータ(すなわち融解1対融解2)が使用される。
【0063】
以上の説明から明らかなように、本発明は、融解曲線データを収集するシステムにおける温度勾配および温度変動の影響を低減させる方法を提供する。
【0064】
・チャンバの熱的に緊密な接触を維持し、ヒータの幾何形状を適切にすることにより、チャンバ間の瞬時温度差が小さく保たれる。
【0065】
(温度上昇の動的性質により、かなりの温度のずれを経験することがある)容器の外側の温度センサからのデータではなく、試料チャンバの近くに位置するチャンバ内の温度基準からのデータを使用することによって、試料チャンバ内の温度のより正確で精密な推定値を得ることができる。
【0066】
空間的に分離されたチャンバ内の2つ以上の温度基準からのデータを使用すると、温度勾配の大きさに関する情報が得られ、他の位置における温度をより精密に推定することができる。
【0067】
(例えばマイクロキャピラリ管またはマイクロフルイディック・チャネルを通して)再充填可能なチャンバを使用すると、容器を移動させることなく異なる溶液を試験することができ、これによって、温度制御/測定システムまたは光学測定システムの特性を変更することができる。これにより、測定間の再現性はより大きくなるはずである。
【0068】
DNA試験試料と同じチャンバ内で温度基準物質を逐次的に測定することによって、時間の経過に伴う測定間の温度変動の程度を監視することができる。
【0069】
DNA試料ボーラスに温度基準物質を直接に混入し、これらの両方を同じ位置で同時に測定することによって、勾配および時間的変動に起因する誤差を排除することができる。これには、DNA融解測定または他のプロセスを妨害しない基準物質が必要である。
【0070】
上記の方法を単独でまたは組み合わせて使用すると、温度測定の正確さおよび信頼性が向上することにより、融解曲線解析技術の有用性が高まると考えられる。
【0071】
本発明を説明する文脈(特に以下の特許請求の範囲の文脈)における用語「a」、「an」および「the」ならびに同様の指示物(referent)の使用は、本明細書に特に明記されていない限りにおいて、または文脈によって明らかに否定されない限りにおいて、単数と複数の両方をカバーするものと解釈すべきである。用語「備える(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」および「含む(containing)」は、特に明記されていない限り、オープン・エンド(open−ended)型の用語(すなわち「〜を含むが、それらだけに限定されない」ことを意味する)と解釈すべきである。本明細書に特に明記されていない限り、本明細書における値範囲の記載は単に、その範囲に含まれる個々の値を個別に示す方法の簡便法の役目を果たすことが意図されており、それぞれの個々の値は、それらの値が本明細書に個別に列挙されているのと全く同じように本明細書に組み込まれる。例えば、範囲10〜15が開示されている場合には、11、12、13および14も開示されている。本明細書に特に明記されていない限りにおいて、または文脈によって明らかに否定されない限りにおいて、本明細書に記載された方法は全て、適当な任意の順序で実行することができる。本明細書に提供された全ての例または例示用語(例えば「〜など(such as)」)の使用は単に、本発明をより明らかにすることを意図したものであり、特に明記されていない限り、本発明の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載のない要素が、本発明の実施にとって不可欠であることを指示する表現は、本明細書中にはないものと解釈すべきである。
【0072】
本発明の方法および構成は、さまざまな実施形態で組み込むことができ、本明細書には、そのうちの一部のみが開示されていることが理解される。以上の説明を読めば、当業者には、これらの実施形態の変型形態が明らかになる可能性がある。本発明の発明者らは、当業者が、そのような変型形態を適切に使用することを期待し、本発明の発明者らは、本明細書に具体的に記載した方法とは別の方法で本発明が実施されることを意図している。したがって、本発明は、本明細書に添付された特許請求の範囲に記載された主題の、準拠法で許された全ての変更および等価物を含む。さらに、本明細書に特に明記されていない限りにおいて、または文脈によって明らかに否定されない限りにおいて、本発明は、その全ての可能な変型形態における上述の要素の任意の組合せを包含する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
融解曲線データの収集を実行するシステムであって、容器、加熱システムおよび検出システムを備え、前記容器が、熱的に緊密に接続した少なくとも2つのチャンバを備え、少なくとも1つのチャンバが、試験する対象であるDNA試料を含み、少なくとも1つのチャンバが温度基準物質を含むシステム。
【請求項2】
前記加熱システムが、前記チャンバの全てのチャンバに同時に熱を供給する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
空間的な温度勾配を決定するために、前記チャンバが、空間的に分離された少なくとも2つの温度基準物質を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記温度基準物質が、空間と時間の両方に関して前記DNA試料を間に挟む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記温度基準物質が前記DNA試料と混合される、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記検出システムが光学検出システムである、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記温度基準物質からの検出可能信号が前記加熱システムにフィードバックを提供する、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記容器がマイクロフルイディック・チップであり、前記チャンバが、前記チップ内のマイクロフルイディック・チャネルである、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記容器が少なくとも3つのチャンバを備え、空間的な温度勾配を決定するために、前記チャンバのうちの少なくとも2つのチャンバが互いに空間的に分離されており、温度基準物質を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記温度基準物質を含む2つのチャンバ間に、DNA試料を含む少なくとも2つのチャンバが配置される、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記温度基準物質が既知のDNA混合物である、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記温度基準物質がサーモクロマチック物質である、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
融解曲線データの収集を実行するシステムであって、
容器、加熱システムおよび検出システムを備え、前記容器が、前記容器を移動させることなく再充填可能な少なくとも1つのチャンバを備え、前記容器が、試験する対象であるDNA試料および温度基準物質を含む
システム。
【請求項14】
前記加熱システムが、前記チャンバの全てのチャンバに同時に熱を供給する、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記検出システムが光学検出システムである、請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
前記温度基準物質からの検出可能信号が前記加熱システムにフィードバックを提供する、請求項13に記載のシステム。
【請求項17】
前記チャンバの中で、前記DNA試料と前記温度基準物質とが交互に並ぶ、請求項13に記載のシステム。
【請求項18】
前記温度基準物質が、空間と時間の両方に関して前記DNA試料を間に挟む、請求項13に記載のシステム。
【請求項19】
前記DNA試料と前記温度基準物質とが混合され、前記温度基準物質が、前記DNA試料の検出シグナチャから識別可能な検出シグナチャを有し、前記試料からのデータと前記温度基準物質からのデータの両方が、同じ場所で、同じ時刻に収集される、請求項13に記載のシステム。
【請求項20】
前記温度基準物質がフロー・マーカでもある、請求項13に記載のシステム。
【請求項21】
前記容器がマイクロフルイディック・チップであり、前記チャンバが、前記チップ内のマイクロフルイディック・チャネルである、請求項13に記載のシステム。
【請求項22】
前記容器が少なくとも3つのチャンバを備え、空間的な温度勾配を決定するために、前記チャンバのうちの少なくとも2つのチャンバが空間的に分離されており、温度基準物質を含む、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記温度基準物質を含む2つのチャンバ間に、DNA試料を含む少なくとも2つのチャンバが配置される、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記容器が少なくとも3つのチャンバを備え、空間的な温度勾配を決定するために、前記チャンバのうちの少なくとも2つのチャンバが空間的に分離されており、温度基準物質を含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項25】
前記温度基準物質を含む2つのチャンバ間に、DNA試料を含む少なくとも2つのチャンバが配置される、請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
前記温度基準物質が既知のDNA混合物である、請求項13に記載のシステム。
【請求項27】
前記温度基準物質がサーモクロマチック物質である、請求項13に記載のシステム。
【請求項28】
融解曲線データの収集を実行する方法であって、
(a)熱的に緊密に接続した少なくとも2つのチャンバを備える容器を提供すること、
(b)前記チャンバのうちの少なくとも1つのチャンバに、試験する対象であるDNA試料を導入し、残りの前記チャンバのうちの少なくとも1つのチャンバに温度基準物質を導入すること、
(c)前記チャンバを第1の温度から第2の温度まで加熱すること、ならびに
(d)前記DNA試料から発せられた検出可能な特性および前記温度基準物質から発せられた検出可能な特性を測定することであって、前記DNA試料の前記検出可能な特性が、前記試料中のDNAの変性の程度を指示し、前記温度基準物質の前記検出可能な特性が温度と相関すること
を含む方法。
【請求項29】
空間的な温度勾配を決定するために、前記チャンバが、空間的に分離された少なくとも2つの温度基準物質を含み、前記温度基準物質から発せられた前記検出可能な特性が測定される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記温度基準物質が、空間と時間の両方に関して前記DNA試料を間に挟む、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
空間的な温度勾配および時間的変動を決定するために、前記温度基準物質から発せられた前記検出可能な特性が測定される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記温度基準物質が前記DNA試料と混合される、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
前記検出可能な特性が光学検出システムによって測定される、請求項28に記載の方法。
【請求項34】
前記温度基準物質からの前記検出可能な特性が加熱システムにフィードバックを提供する、請求項28に記載の方法。
【請求項35】
前記容器がマイクロフルイディック・チップであり、前記チャンバが、前記チップ内のマイクロフルイディック・チャネルである、請求項28に記載の方法。
【請求項36】
前記容器が少なくとも3つのチャンバを備え、空間的な温度勾配を決定するために、前記チャンバのうちの少なくとも2つのチャンバが互いに空間的に分離されており、温度基準物質を含み、前記温度基準物質から発せられた前記検出可能な特性が測定される、請求項28に記載の方法。
【請求項37】
前記温度基準物質を含む2つのチャンバ間に、DNA試料を含む少なくとも2つのチャンバが配置される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記温度基準物質が既知のDNA混合物である、請求項28に記載の方法。
【請求項39】
前記温度基準物質がサーモクロマチック物質である、請求項28に記載の方法。
【請求項40】
融解曲線データの収集を実行する方法であって、
(a)容器を移動させることなく再充填可能な少なくとも1つのチャンバを備える容器を提供することであって、前記容器が2つ以上のチャンバを備える場合に、前記チャンバが熱的に緊密に接続していること、
(b)前記チャンバのうちの少なくとも1つのチャンバに、試験する対象であるDNA試料を導入し、前記チャンバのうちの少なくとも1つのチャンバに温度基準物質を導入すること、
(c)前記チャンバを第1の温度から第2の温度まで加熱すること、ならびに
(d)前記DNA試料から発せられた検出可能な特性および前記温度基準物質から発せられた検出可能な特性を測定することであって、前記DNA試料の前記検出可能な特性がDNAの変性の程度を指示し、前記温度基準物質の前記検出可能な特性が温度と相関すること
を含む方法。
【請求項41】
前記検出可能な特性が光学検出システムによって測定される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記温度基準物質からの前記検出可能な特性が加熱システムにフィードバックを提供する、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
同じチャンバの中で、前記DNA試料と前記温度基準物質とが交互に並ぶ、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
前記温度基準物質が、空間と時間の両方に関して前記DNA試料を間に挟む、請求項40に記載の方法。
【請求項45】
空間的な温度勾配および時間的変動を決定するために、前記温度基準物質から発せられた前記検出可能な特性が測定される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記DNA試料と前記温度基準物質とが混合され、前記温度基準物質が、前記DNA試料の検出シグナチャから識別可能な検出シグナチャを有し、前記試料からのデータと前記温度基準物質からのデータの両方が、同じ場所で、同じ時刻に収集される、請求項40に記載の方法。
【請求項47】
前記温度基準物質がフロー・マーカでもある、請求項40に記載の方法。
【請求項48】
前記容器がマイクロフルイディック・チップであり、前記チャンバが、前記チップ内のマイクロフルイディック・チャネルである、請求項40に記載の方法。
【請求項49】
前記容器が少なくとも3つのチャンバを備え、空間的な温度勾配を決定するために、前記チャンバのうちの少なくとも2つのチャンバが空間的に分離されており、温度基準物質を含み、前記温度基準物質から発せられた前記検出可能な特性が測定される、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記温度基準物質を含む2つのチャンバ間に、DNA試料を含む少なくとも2つのチャンバが配置される、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記容器が少なくとも3つのチャンバを備え、空間的な温度勾配を決定するために、前記チャンバのうちの少なくとも2つのチャンバが空間的に分離されており、温度基準物質を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項52】
前記温度基準物質を含む2つのチャンバ間に、DNA試料を含む少なくとも2つのチャンバが配置される、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記温度基準物質が既知のDNA混合物である、請求項40に記載の方法。
【請求項54】
前記温度基準物質がサーモクロマチック物質である、請求項40に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公表番号】特表2011−525812(P2011−525812A)
【公表日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516491(P2011−516491)
【出願日】平成21年6月22日(2009.6.22)
【国際出願番号】PCT/US2009/048109
【国際公開番号】WO2009/158304
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(507028217)キヤノン ユー.エス. ライフ サイエンシズ, インコーポレイテッド (22)
【氏名又は名称原語表記】CANON U.S. LIFE SCIENCES, INC.
【住所又は居所原語表記】9800 Medical Center Drive Suite A−100 Rockville,Maryland 20850 U.S.A.
【Fターム(参考)】