説明

融雪屋根

【目的】本発明は、雪国等で屋根に積もった雪を室内の暖気を屋根面上に排気することにより、屋根面に積もった雪を融かすものであり、その構造により常に屋根面上の雪が平均して融解するようにしたものである。
【構成】この目的を達成するため、屋根の野地板に穿設した挿通孔に排気用の排熱筒を設置して小屋裏の暖気を排出し、更に、その暖気が屋根裏に平均して均一に排気されるようにファン装置を設置したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雪国等豪雪地域にて屋根に積もった雪を室内からの排熱を利用して融解する融雪屋根の改良に関するもので、複雑な設備でなく簡単な構造で効果のあるしかも経済的な融雪屋根を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、雪国北海道、東北、北陸等豪雪地域で屋根に積もった雪を室内の暖気や特別な熱源を用いて融雪する事は広く知られていた。
このためには、屋根の裏面側にあたる小屋裏の暖気或いは、特別な熱源を野地板に穿設した通気口に設置した排熱筒から屋根面と積雪の間に排出するものであった。
この排出された屋内暖気或いは熱源の熱によって積雪を速やかに融かし、雨水のように軒先側に流下して排水するものである。
【0003】
しかるに、小屋裏の暖気の温度は全体が常に一定均一ではなく、すなわち暖かい空気は上部の棟部分に上昇する傾向があり、軒先側は低いので低温となり、更に場所によって屋内温度にムラを生じているものであった。
これは、より暖かい暖気は上方に昇る性質があり、従って軒先は比較的冷えた空気となりやすく、このため、その温度のバラついた暖気を排気すると、屋根の融雪も場所によってバラツキが出て、棟側は融解がより早く、軒先側等は遅く残りやすかった。
【0004】
したがって、軒先等に積雪が融解しないで残り、この残った雪が後々落下の問題や凍結してつらら等となり、それらが落下すると軒先等で通行人等に怪我を発生させる危険が多々認められ責任問題を生じさせた。又従来技術にあっては、積雪を屋根面より融解させるより寧ろ滑動落下させて、積雪等を速やかになくす技術が主であった。
この問題を解決するため、本発明は融解のための暖気である小屋裏の空気の温度のバラツキを防止し、屋根面全体に一定温度の室内暖気を排出して、均一に且つ速やかに融雪できる構造としたものである。
又従来の屋内の特別な熱源としては、太陽熱を利用したものや屋内の暖房熱を利用したもの或いは給湯装置を利用したものにおいては、装置や構造が複雑で設置に高額な投資を要するものであった。
【0005】
【特許文献1】実開昭63−69204
【特許文献2】特許第2552207号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来技術における融雪の屋根面上におけるバラツキにより、軒先側等の積雪が融けるのが遅くて、残ってしまう等の課題が発生するものであった。
この軒先等に残った積雪は、前記の通り後々落雪の危険があるばかりでなく、凍結してつららの発生原因にもなりそれが大変危険であった。又積雪等の滑落を予定しての従来技術は、危険性についての考慮がなく積雪等の除去のみを主としたものであった。更に又、熱源の装置や構造が複雑で高額な投資をしたにも拘らず、毎年シーズン前のメンテナンスを要しそれ程の効果が生じないものであった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、斯かる従来技術の存在及び屋根の融雪に鑑みて提案するもので、小屋裏の暖気を撹拌し一定温度に確保し、それを屋根面上に排出するために、小屋裏のハリなどにファン等を設置し、これにより小屋裏の暖気を強制的に撹拌し均一化するものである。
【0008】
この小屋裏の空気を撹拌することにより、ここから屋根面上に排出される暖気の温度にもムラがなくなり、小屋裏の温度を一定に保つことができるものとなる。又屋内の暖気を利用するものであり、特別の熱源発生装置を必要としたものではなく、簡単な構造からなり特段の機器を要するものではない。
【発明の効果】
【0009】
このようにして撹拌された小屋裏の暖気を、屋根面と積雪の間に排出することにより、積雪を棟側と軒先等を安定して、しかも屋根全面を平均にして速やかに融解させ消滅させることが可能となるものである。
したがって、比較的温度の低い軒先側等の積雪が融けないで残ってしまうなどの不都合が防げる効果が期待でき、結果屋根全面の速やかなる融雪が可能となる。
【0010】
すなわち、軒先側等と棟部側の屋根面にある積雪が、同様のスピードで融解され、雨水と同様に排水されるものである。
これにより、豪雪地域における積雪を降ろす雪降ろし等の重労働から解放され、又屋根に上がっての危険な特に、軒先側の作業もないため、毎年安全に且つ効率よく屋根面の積雪を除去できるものである。又、屋根面からの積雪等の滑落を生じさせるものではない点で軒下での落雪等の危険はなく、更に、簡単な構造からなり特段の熱源例えば、既存の給湯器や暖房機等を利用するものではなく、熱エネルギーの節減が期待されその経済性が大と認められるものである。
【実施例】
【0011】
以下、本発明を添付した図面に従って詳説する。
図1は、本発明に係る融雪屋根の斜視図であり、図2は、その要部の側面断面図である。建物の屋根Aは金属製の薄板にて瓦棒Bにて葺かれているが、この形式の屋根は、前記雪国等地方で最も多くみられる一般的な葺き方である。又屋根Aの瓦棒Bに直交するように融雪カバーCが配置されて施工されている。
屋根Aは、屋根板Hの下面に野地板Dが施工され、さらにその下面はタル木13によって支持されており、場合によっては、野地板の上面にルーフィングなどを敷設することもある。
【0012】
この融雪カバーCは、熱伝導が良いように、溶融アルミ亜鉛メッキ鋼板などの金属薄板を折曲して形成され、空気の流通を良くして暖気を隅々にまで循環し放熱させ、接雪面積を広くするためと、積雪等の落下を止めるために凹凸状に交互に折曲されている。すなわち、図2に示す如く凸部1と凹部11とが棟部 I と平行方向に交互に折曲して形成されている。
この凸部1と凹部11の大きさや形状は、特に限定されるものでなく、暖気の流通と強度の保持及び積雪等の滑落防止ができれば曲線状でもよく、接雪面積を考慮して屋根に適応した任意な形状に設計できるものである。
【0013】
図3は、要部の拡大断面図を示すが、融雪カバーCの棟部 I 側の端縁と軒先J側の端縁は、段差を介して下方に折曲され垂設板12が形成されている。
この垂設板12は、屋根面との間に空気の流通する空間を作ったり、その高さを調整すると共に瓦棒Bとの固定を図り、又融雪カバーCの端縁の補強ともなっている。
融雪カバーCの固定方法は、特に図示していないが、通常のビスなどによる瓦棒Bへの固定が可能である。(図示せず)
【0014】
この融雪カバーCと屋根板Hとの隙間に小屋裏Gの暖気を送り込んで融雪に供するが、暖気は、室内を暖めているものが天井を経て小屋裏に入ったものなどである。
或いは暖められた天井面から小屋裏Gの空気が暖められ、それを屋根面に排気するものである。
【0015】
この排熱筒2の一端部には、周縁につば部21が形成され、又筒状の本体2a部分には、虫などの侵入を防ぐため網部22を被せて被閉すればよい。(図6)
この網の材質は、金属でも樹脂でも可能で、虫が入らない程度のメッシュ形状であれば適当である。又実施例では、R形状となっているが、特に形が限定されるものではない。又網部22の上面頂部は凸形状にしてあるが、これにより舞い上がった紙やゴミ等が乗ったときでも落下し易く、網目が容易に塞がれないように考慮されている。
排熱筒2は、予め野地板Dと屋根板Hを貫通させて穿設した挿通孔23を屋根Aの裏面である野地板Dから挿通させて取り付ける。(図5)
この挿通孔23は、ホールソーなどで明けられるが、排熱筒2は同径としておいて圧入してもよく、又つば部21の野地板Dに当接する面に、接着剤を塗布して設置してもよく(図7)、或いはビス(図示せず)で止めて設置してもよい。
【0016】
この排熱筒2は、図8の如く、融雪カバーCの凸部1の裏側に位置するように設置され、その数はその地域の積雪や屋根の大きさ等を勘案して適宜に選択されるものである。又その取付位置は、瓦棒Bと融雪カバーCが交差する部分で融雪カバーCの中心より下側に取り付けられる。融雪カバーCの軒先側方向に位置させれば、暖気が上昇して融雪カバーCの全体を効率的に暖めるものとなる。
そして小屋裏Gの全体の暖気を撹拌するためにファン装置Eが設置され、この装置のプロペラFによって暖気が撹拌される構造となっている。(図2 図8)
このファン装置は、小屋裏のハリや柱等、適宜な場所に取り付けて暖気を撹拌して、小屋裏全体の空気の温度を平均化させ流動させるものである。
【0017】
このようにファン装置EのプロペラFで、小屋裏Gの空気を撹拌させることによって、棟部 I 付近の暖気と軒先J付近の暖気の温度を均一にし、排熱筒2から排出させる暖気の温度を一定にするものである。(図1)
この一定温度の暖気を排熱筒2によって、屋根Aの複数箇所に排出することにより、屋根の積雪を平均して安定的に速やかに融解させることが可能となる。
このときファン装置Eは、図示例では2ケ所に設置してあるが、屋根の形状や大きさ、或いは屋根勾配などによっては増減することも可能であり、適宜に設計すればよい。
【0018】
この排熱筒2から上昇した暖気は、融雪カバーCの凸部1に流入し、この凸部1の形状に沿って横方向に拡散して放熱し、その上に積もっている接雪を融解するものである。 融解した雪は、凹部12に沿って左右方向に流れ、そのあと屋根面に落下して通常の雨水と同様に流れて処理されるものとなる。
【0019】
又本発明に係る融雪屋根は、家の新築時に限らず既存の屋根にも容易に設置することができ、その利用範囲は非常に広範なものとなる。
又設置する屋根の形状や葺き方などにも左右されず、ほとんどの建物形状の屋根に適応できるものである。
【0020】
このように簡易にして効果的な融雪屋根を実現するために、融雪カバーや排熱筒やファン装置を設置することは極めて効果的なものであり、その設置コストも毎年の雪下ろしの経費や特別の熱源を利用した装置等を考えると極めて安価なもので、豪雪地域における経済性を考慮し期待できる。寧ろ、毎年の雪下ろしの重労働・危険性から高齢者世帯や女人世帯を守る点において、極めて効用大なるものと言わざるを得ない。
【産業上の利用可能性】
【0021】
叙述のように本発明の融雪屋根は、屋根の積雪を融解するに際し、室内の暖気を効率よく使うため、極めて安価に融解でき経済性が認められる。
小屋裏の気温のバラツキが防止され、軒先側等と棟側の温度差を少なくして、屋根面全体の雪を均等に速やかに融解させる事ができる。
設置や設備に多大な費用もかからず、少ない投資で大きな融雪効果が得られる。
又雪下ろしなどの過酷な作業や危険作業から解放され、特に、豪雪地域である雪国における高齢者世帯や女人世帯にとって有用であること明らかである。
特に、屋根より積雪或いは凍結したつらら等の滑落を主とした融雪ではない点において、従来技術における危険性はなく、利用価値大なるものと認められる。
通常では屋根面以外の妻側等から無駄に排気していた暖気を効率よく使用するためエネルギーの節約になり、その経済性において特記すべきものと認められる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る融雪屋根を施工したときの斜視図
【図2】同上の側面断面図
【図3】本発明に係る融雪屋根を施工したときの拡大側面断面図
【図4】融雪屋根を施工して一部を切り欠いたときの斜視図
【図5】本発明に係る排熱筒と野地板の斜視図
【図6】同上の排熱筒の分解斜視図
【図7】同上の野地板に排熱筒を施工したときの側面断面図
【図8】同上の施工の完了した屋根の側面断面図
【符号の説明】
【0023】
A・・・屋根
B・・・瓦棒
C・・・融雪カバー
D・・・野地板
E・・・ファン装置
F・・・プロペラ
G・・・小屋裏
H・・・屋根板
1・・・凸部
11・・凹部
12・・垂設板
13・・タル木
2・・・排熱筒
2a・・本体
21・・つば部
22・・網部
23・・挿通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根面に複数の排熱筒を設け、該排熱筒から室内の暖気を小屋裏を通して屋根上面に排気し、屋根面上の積雪を融解する融雪屋根構造において、小屋裏の棟側に上昇した暖気を軒先部分にまで移動させ温度を均一化させるための撹拌ファンを設置してなる融雪屋根。
【請求項2】
小屋裏の撹拌ファンが複数個設置されてなる、請求項1記載の融雪屋根。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−7272(P2010−7272A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−165258(P2008−165258)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【出願人】(508191330)有限会社高道板金 (1)
【出願人】(000133180)株式会社タニタハウジングウェア (16)
【Fターム(参考)】