血圧上昇抑制作用を有する組成物
【課題】血圧上昇抑制作用を発揮し、かつ最適なカリウム供給源となる天然素材を見出し、それを配合した飲食品等の組成物を提供することにある。
【解決手段】K型γ-ポリグルタミン酸を有効成分として含有する血圧上昇抑制作用を有する飲食品、医薬などの組成物。
【解決手段】K型γ-ポリグルタミン酸を有効成分として含有する血圧上昇抑制作用を有する飲食品、医薬などの組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血圧上昇抑制作用を有する組成物、より詳しくは、納豆に含まれるγ-ポリグルタミン酸をカリウム置換したK型γ-ポリグルタミン酸を有効成分とする血圧上昇抑制作用を有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
食生活の欧米化や運動不足、ストレス、喫煙、遺伝的要因などが引き金となって、いわゆる生活習慣病の代表格である高血圧症や高脂血症(高コレステロール血症や高中性脂肪血症)が引き起こされることは、広く知られるようになってきた。なかでも、高血圧症は最も罹患率が高く、医療経済面からも早急な対応を要する疾患といえる。薬物治療はこれらの症状の改善に効果をもたらすが、胃の不快感や下痢、血管浮腫などの副作用を引き起こすことから、食品による疾患の予防と改善が社会的に求められている。
【0003】
日本の伝統的発酵食品である納豆は、このような高血圧症や高脂血症に対して改善効果があるものとして近年もっとも期待され、注目されている天然食品素材である。これまでに、納豆中に含まれる物質が血圧の上昇を抑制するという報告はいくつかある。たとえば、須見ら(非特許文献1)は納豆菌のエタノール可溶性画分に血圧上昇抑制効果があると報告している。また、岡本ら(非特許文献2)は高血圧自然発症ラット(SHR)を用いて納豆にアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害能があることを確認できたことを報告している。しかしながら、血圧の上昇抑制に作用する納豆中の構成成分については明らかにされていない。
【0004】
一方、辻ら(非特許文献3)は食物繊維が血圧上昇を抑制するという報告をしており、その作用機構は食物繊維が腸管内でナトリウムと結合して、ナトリウムの排泄を促進することによるナトリウムの吸収阻害であることを明らかにしている。また、カリウムの降圧作用に関しても多数の報告があり(非特許文献4,5)、その作用はナトリウムの排尿作用、血管拡張作用、アンジオテンシンIIやノルエピネフリンによる昇圧反応の減弱効果が主に論じられている(非特許文献6)。
【0005】
このように、カリウムによる血圧上昇の抑制はその作用機構とともに知られているところであり、カリウム供給手段の一つとしてクエン酸三カリウムが提案されているが(非特許文献7)、えぐ味や苦味があるなど、呈味性に好ましくない影響を与えることも指摘されている。従って、呈味性や安全性などすべての面を満足する最適なカリウム供給源となるさらなる天然素材が求められている。
【0006】
【非特許文献1】須見洋行. 1990: 納豆の機能性. 日本醸造協会誌. 85: 518-524.
【非特許文献2】岡本章子, 柳田藤治. 1997: ダイズのヘルシーテクノロジー8 大豆発酵食品の機能性アンギオテンシン変換酵素阻害能と高血圧抑制作用を中心として.食品工学会誌. 40: 70-79.
【非特許文献3】辻啓介, 辻悦子, 鈴木慎次郎, 中川靖枝. 1988: 食物繊維のナトリウム吸着能が高血圧自然発症ラットの血圧に及ぼす影響. 日本家政学会誌.39:187-195.
【非特許文献4】Dahl, L.K., Leiti, G and Heine, M. 1972: J. Exp. Med., 136: 318-330
【非特許文献5】MacGregor, G.A., Smith, S.J., Markandu, N.D., Banks, R.A. and Sagnella, G.A. 1982: Lancet. 2: 567-570.
【非特許文献6】藤田敏朗. 1985: カリウム. 臨床医学会誌. 11: 1896-1899.
【非特許文献7】本田真樹. 2006: 高血圧対応素材"クエン酸三カリウム"の有用性と将来性. FOOD STYLE 21, Vol.10, No.8:27-29.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、血圧上昇抑制作用を発揮し、かつ最適なカリウム供給源となる天然素材を見出し、それを配合した飲食品等の組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、納豆粘質物に特異的に含まれているγ-ポリグルタミン酸(γ-PGA)に注目し、このγ-PGAをカリウム置換したK型γ-PGAを脳卒中易発性高血圧自然発症ラット(Stroke-Prone Spontaneously Hypertensive Rat:SHRSP)に与えたところ、収縮期血圧の上昇が有意に抑制されること、糞便中のナトリウム量の増加と尿中のカリウムの増加が認められること、加えて、レニン-アンジオテンシン系が有意に抑制されることを見出した。本発明はかかる知見により完成したものである。
【0009】
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)K型γ-ポリグルタミン酸を有効成分として含有する血圧上昇抑制作用を有する組成物。
(2)γ-ポリグルタミン酸が、納豆菌由来である、(1)に記載の組成物。
(3)飲食品である、(1)に記載の組成物。
(4)前記飲食品が、健康食品、機能性食品、栄養補助食品、または特定保健用食品である、(3)に記載の飲食品。
(5)医薬品である、(1)に記載の組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、新規な血圧上昇抑制作用を有する組成物が提供される。本発明の組成物の血圧上昇抑制成分であるγ-PGAは納豆菌により生産される天然物由来であるから、安全性に優れ、長期に摂取しても副作用がない。従って、本発明の組成物は、日常的にかつ継続的に摂取しうる飲食品として、非常に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明について詳細に述べる。
【0012】
本発明の血圧上昇抑制作用を有する組成物は、次式で示されるγ-ポリグルタミン酸のカリウム塩(K型γ-ポリグルタミン酸、以下、「K型γ-PGA」という)を有効成分として含有する。
【0013】
【化1】
【0014】
γ-ポリグルタミン酸(γ-PGA)は、納豆粘質物の構成成分であり、納豆の水抽出物に多く(9.1%(w/w))含まれている。γ-PGAの調製方法は特に限定はされないが、例えば、以下の方法により調製できる。まず、酵母エキス、ペプトン、尿素、リン酸第一カリウム、グルコースからなる培地にL−グルタミン酸を添加し、納豆菌を約3日間培養することにより得た納豆菌培養液、あるいは、納豆に2〜5倍量の蒸留水を加え、攪拌することによって得た納豆水抽出液をろ過することにより粘稠なろ液を得る。このろ液を塩酸でpH2.0に調整することによってγ-PGAを沈殿させ、この沈殿物をろ過してろ液を除き、水洗、乾燥することにより、γ-PGAを粉末として得る。次に、K型γ-PGAは、前記で得られたγ-PGAを水に懸濁し、水酸化カリウム水溶液で中和してγ-PGAすべてを溶解させ、中和した水溶液を凍結乾燥することによって得ることがきる。
【0015】
上記のK型γ-PGAは、血圧上昇抑制作用を有する。従って、K型γ-PGAは、高血圧を発症する傾向のあるヒト等の被験者に対して、血圧上昇抑制剤、高血圧発症予防剤、あるいは高血圧症改善剤として、適当な添加剤とともに飲食品や医薬品等の組成物に配合することができる。
【0016】
本発明において、飲食品とは、健康食品、機能性食品、栄養補助食品、または特定保健用食品を含む意味で用いられる。さらに、本発明の飲食品をヒト以外の哺乳動物を対象として使用される場合には、ペットフード、飼料を含む意味で用いることができる。
【0017】
飲食品の形態は、食用に適した形態、例えば、固形状、液状、顆粒状、粒状、粉末状、カプセル状、クリーム状、ペースト状のいずれであってもよい。
【0018】
飲食品の種類としては、具体的には、清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果実飲料、乳飲料など飲料(これらの飲料の濃縮原液及び調整用粉末を含む);アイスクリーム、アイスシャーベット、かき氷等の冷菓;そば、うどん、はるさめ、ぎょうざの皮、しゅうまいの皮、中華麺、即席麺等の麺類;飴、チューインガム、キャンディー、グミ、ガム、キャラメル、チョコレート、錠菓、スナック菓子、ビスケット等の焼き菓子、ゼリー、ジャム、クリーム等の菓子類;かまぼこ、ちくわ、ハンバーグ、ハム、ソーセージ等の水産・畜産加工食品;加工乳、発酵乳、ヨーグルト、バター、チーズ等の乳製品;マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリーム、ドレッシング等の油脂及び油脂加工食品;ソース、たれ等の調味料;スープ、シチュー、カレー、パン、ジャム、サラダ、惣菜、漬物などが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0019】
本発明の飲食品は、その種類に応じて通常使用される添加物を適宜配合してもよい。添加物としては、食品衛生上許容されうる添加物であればいずれも使用できるが、例えば、アスパルテーム、ステビア等の甘味料、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸等の酸味料、デキストリン、澱粉等の賦形剤、結合剤、希釈剤、香料、着色料、緩衝剤、増粘剤、ゲル化剤、安定剤、保存剤、乳化剤、分散剤、懸濁化剤、防腐剤等が挙げられる。
【0020】
本発明の飲食品におけるK型γ-PGAの配合量は、その血圧上昇抑制作用が発揮できる量であればよいが、対象飲食品の一般的な摂取量を考慮して、通常、成人1日当たりの摂取量が100mg〜1,000gとなる量とすればよい
【0021】
本発明の飲食品は、例えば、生活習慣、体質、または遺伝などの要素によって高血圧を発症する傾向のある人はもとより、正常人であっても、高血圧症の予防または改善を目的として日常的に摂取することができる。
【0022】
また、本発明の組成物を医薬品として提供する場合は、K型γ-PGAはそのままで、または医薬上許容され、かつ剤型に応じて適宜選択した適当な添加剤(例えば担体、賦形剤、希釈剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤又は崩壊補助剤、可溶化剤、安定化剤、保存剤、防腐剤、増量剤、分散剤等)を用いて、公知の種々の方法にて経口又は非経口的に全身又は局所投与することができる各種製剤形態に調製すればよい。本発明の医薬を経口投与する場合は、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、丸剤、内用水剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤等に製剤化するか、使用する際に再溶解させる乾燥生成物にしてもよい。また、本発明の医薬を非経口投与する場合は、静脈内注射剤(点滴を含む)、筋肉内注射剤、腹腔内注射剤、皮下注射剤、坐剤などに製剤化し、注射用製剤の場合は単位投与量アンプル又は多投与量容器の状態で提供される。
【0023】
本発明の医薬は、血圧上昇の抑制によって病態が改善される疾患の予防及び/又は治療用医薬として用いることができる。かかる疾患としては、例えば、高血圧症、血栓症、動脈硬化症、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞などが挙げられるが、これらに限定はされない。本発明の医薬は上記疾患の発症を抑制する予防薬として、及び/又は、正常な状態に改善する治療薬として機能する。
【0024】
本発明の医薬は、前述の疾患の予防及び/又は治療用医薬として用いる場合、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ等の哺乳動物に対して経口または非経口的に安全に投与することができる。本発明の医薬の投与量は、疾患の種類、投与対象の年齢、性別、体重、症状の程度、又は投与方法などに応じて適宜決定することができる。例えば、軽症の高血圧症患者に経口投与する場合には、体重1kg当たり1mg〜200mgの範囲で1日1回から数回に分けて投与される。
【実施例】
【0025】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0026】
(実施例1)K型γ-PGAを用いたナトリウム吸着試験(in vitro)
被験物質には前述の方法にて納豆菌培養液から調製したγ-PGAを水酸化カリウム溶液で中和することによって得られたK型γ-PGA、陽イオン交換樹脂アンバーライトIR-120、セルロースを用いた。500mlビーカー中に0.1%(w/v)NaCl水溶液を200ml入れ、被験物質を2g加えた。この溶液に、イオン交換水5mlを入れた透析膜(分画分子量12000、ADVANTEC)を3個、液面が外液と同じ位置になるように浸した。マグネチックスターラーを用いて、外液を一定速度で撹拌しながら、サック内の溶液を15, 30, 60, 120 分後に100μlずつ採取し、NaあるいはK量を原子吸光法(HITACHI Z-6100)で定量した。
【0027】
被験物質を加えていないControlの内液のNa濃度は、120分後で176mg/lに達した。外液にセルロースを添加して、120 分撹拌した内液のNa 濃度は174mg/lで、Controlと同じ値であった。反対に、アンバーライトIR120とK型γ-PGAを添加した内液のNa濃度は120 分後で84.3mg/lと78.5mg/lに低下した。K型γ-PGAはポジティブコントロールとして添加したアンバーライトと同等のNa結合能を示した(図1)。
【0028】
K 型γ-PGAのみを添加した溶液中の遊離K 濃度は、120 分後で69.8mg/l だった。一方、NaClを添加したK 型γ-PGA 溶液中の遊離K 濃度は急激に上昇して、30 分でプラトーに達し、120 分後で338mg/l に達した(図2)。これらの結果は、K 型γ-PGAはNaCl 存在下でK とNa を置換して、Na 型γ-PGAと遊離のK を生成したことを示している。
【0029】
(実施例2)動物実験
動物実験は「近畿大学動物実験指針」ならびに「実験動物の飼養及び保管等に関する基準」(昭和55 年3 月総理府告示6 号)を遵守して行い、実験動物倫理委員会の承認を得て行った。
(1) 実験動物と飼育条件
実験には、5週齢の雄性SHRSP(近畿大学医学部実験動物共同研究室)30匹を用いた。1 つのケージに2 匹ずつ飼育した。室内の明暗サイクルは12 時間(07:00-19:00 点灯)、室内温度は23±1℃、湿度は60%に調整した。
【0030】
(2) 飼料と飼育方法
市販固形飼料(船橋SP、船橋農場)を用いて、予備飼育を1 週間行った後、ラットをランダムにControl 群(n=10)、K 型γ-PGA群(n=10)、およびKHCO3群(n=10)の3 群に分けた。飼料中のK 含量は、K 型γ-PGA群とKHCO3群でともに1.3g/100g に調製した。基本食には市販粉末飼料(船橋SP、船橋農場)を用い、食塩濃度は1.5%(w/w)とした(表1)。飼育期間は6 週間とし、飼料と水は自由摂取とした。
【0031】
【表1】
【0032】
(3) 血液と糞便採取、臓器摘出
血液採取は0, 2, 4 週目に行った。ヘパリンナトリウム処理した注射針を用いて、尾
静脈より1ml の血液を採取した。血液はヘパリンナトリウム入りのエッペンチューブに入れ、遠心分離(10000rpm、15min)を行って、血漿を採取した。血漿は4℃で保存し、血漿電解質測定用サンプルとした。
【0033】
糞便と尿の採取は0, 2, 4 週目に行った。ラットを代謝ケージで個別に24 時間飼育し、糞便と尿を回収した。糞便量は糞便を凍結乾燥した後、重量を測定した。また、糞便は−30℃で保存し、糞便電解質分析用サンプルとした。尿量は採取時に重量を測定して求めた。その後、遠心分離(10000rpm、15min)を行い、4℃で保存し、尿中電解質分析用サンプルとした。
【0034】
臓器摘出は飼育期間終了後に行った。ペントバルビタール麻酔(50mg/kgB.W.)下で開腹し、腹部大動脈から全採血した。その後、脳、心臓、肺、腎臓を摘出した。
【0035】
(4) 測定項目
下記の各項目について測定し、得られた結果は統計処理して、平均値±標準偏差(SD)で表示した。統計処理にはStatcel2(星雲社、東京都)を用いた。各群間の比較は、一元配置分散分析(One-way analysis of variance; One-way ANOVA)を用いて行い、多重比較はtukey 法を用いて行った。
【0036】
(4-1)体重と飼料摂取量
実験期間終了日まで隔日に測定した。飼育期間を通して、体重増加量と飼料摂取量は3群で同等の値を示し、ラットの成長に対する影響は認められなかった(表2)。
【0037】
【表2】
【0038】
(4-2)血圧測定
実験期間中、週一回収縮期血圧を測定した。ラットを37℃で10分間加温した後、無麻酔下で尾動脈圧をtail-cuff法によりUeda UR-5000 を用いて、非観血式で測定した。
【0039】
3 群の収縮期血圧の変化を図3に示した。Control群の収縮期血圧は飼育4週目以降急激に上昇したのに対して、K 型γ-PGA群の血圧は飼育5 週目以降、上昇が緩やかとなり、5 週目を経過してから収縮期血圧の有意な上昇抑制が認められた。飼育6 週目の収縮期血圧はControl 群が273.6±11.3mmHg に達したのに対して、K 型γ-PGA群では254.2±15.8 mmHg であった。また、KHCO3群でも飼育6 週目の収縮期血圧は263.2±16.3 mmHg で、Control 群と比べて血圧の上昇抑制傾向が認められた。
【0040】
(4-3)糞便中のナトリウムとカリウム分析
糞便中のナトリウムとカリウムは次の方法で定量した。凍結乾燥した糞便を粉砕後0.1g 採取し、1%(v/v)塩酸溶液10mlを加え、37℃で2h 間インキュベートした後、遠心分離(3500rpm,15min)にかけて上清を回収した。この液を10 倍段階希釈して、フィルターろ過した後、原子吸光度計で定量した。Na 吸収量はNa 摂取量から糞便中のNa 排泄量を引いて求めた。また、Na 排泄率はNa 排泄量をNa 摂取量で割り、100 倍して値を求めた。
【0041】
3 群間の乾燥糞便重量に差異は認められなかった(図4)。糞便中のNa排泄量は、飼育2, 4 週目でControl 群と比べて、K 型γ-PGA群で有意に増加した(図5)。一方、Control 群とKHCO3群ではNa 排泄量に差は認められなかったが、KHCO3 群で増加傾向が認められた(図5)。また、糞便中のK 排泄量は飼育2, 4 週目にControl 群と比べ、K 型γ-PGA群とKHCO3群で有意に増加した(図6)。Na 吸収量は飼育4 週目でK 型γ-PGA群で有意に減少し(図7)、Na 排泄率は飼育2,4 週目でK 型γ-PGA群で有意に高い値を示した(図8)。
【0042】
以上の結果から、K 型γ-PGAは腸管内でナトリウムの吸収を阻害し、糞便へのナトリウム排泄を高めていることが明らかとなった。一方、糞便へのカリウム排泄量はK 型γ-PGA群とKHCO3 群で有意に高かったが、これは飼料中のカリウム量がControl 群より高かったためと考えられる。
【0043】
(4-4) 尿中のナトリウムとカリウム分析
採取した尿0.1ml に1%(v/v)塩酸溶液0.9ml を加え、37℃で2h 間インキュベートした後、10 倍段階希釈して、フィルターろ過後、原子吸光度計で定量した。
【0044】
3 群間の摂水量に差は認められなかった(図9)が、尿量は飼育2 週目にControl 群がK型γ-PGA群とKHCO3群に比べ、有意に低値を示した(図10)。
【0045】
尿中のNa 排泄量は飼育期間を通して3 群間に有意差は認められなかったが、K 型γ-PGA群とKHCO3 群はControl 群より高い値を示した(図11)。また尿中のK 排泄量は飼育2, 4 週目でK 型γ-PGA群とKHCO3群が、Control 群と比べて有意に増加した(図12)。
【0046】
Fujitaら(Fujita T. 1980: Factros influenceing blood pressure in salt-sensitive patients with hypertension. Am J Med. 69: 334-344.)は、食塩の過剰摂取がナトリウムの体内貯留量を上昇させ、これが循環血液量を増加させて、心拍出量と血圧を上昇させると報告している。ナトリウムイオンは細胞外液のイオン濃度の大部分を占める主要なイオンであり、ナトリウムイオンが体内に蓄積すると、細胞外液が増加して、血圧を上昇させる。上記(4-3)の試験において、K 型γ-PGA群は他の群よりナトリウム吸収量が有意に少ないこと、また、上記(4-4)の試験において、K 型γ-PGA群は尿中へのナトリウム排泄量がControl群より多い傾向が認められたことから、K 型γ-PGAは体内でのナトリウム貯留量の上昇を抑制することによって、血圧上昇を抑制したと考えられる。
【0047】
またFujita ら(Fujita T, Sato Y. 1983: Natriureuretic and antihyper-tensive effects of potassium in DOCA-salt hypertensive rats. Kindey Int. 24: 731-739.;Fujita T,Ando K. 1984: Hemodynamic and endocrine changes associated with potassium supplementation in sodium-loaded hypertensives. hypertension. 6: 184-192.)は、食塩感受性高血圧モデル動物の一つであるdeoxycortico-sterone acetate(DOCA)-食塩高血圧ラットならびにヒト本態性高血圧患者とヒト若年境界域高血圧患者に対して、カリウムの降圧効果を明らかにし、カリウムの降圧機序として、ナトリウム利尿と交感神経系の抑制を示している。上記(4-4)の試験において、Control 群よりK 型γ-PGAとKHCO3 群で尿中のカリウム量が有意に増加したことから、カリウムの降圧作用も血圧の上昇を抑制した要因の一つと考えられる。
【0048】
(4-5) 血漿中のナトリウムとカリウム分析
採取した血漿0.1ml に1%(v/v)塩酸溶液0.9ml を加え、37℃で2h 間インキュベートした後、10 倍段階希釈して、フィルターろ過後、原子吸光度計で定量した。
【0049】
3 群間の血漿電解質に差は認められなかった(表3)。
【0050】
【表3】
【0051】
(4-6)血漿レニン活性、血清ACE 活性、血漿アンジオテンシンII 濃度
飼育6週後の屠殺時に血中のレニンとACE 活性、アンジオテンシン濃度を測定した。血漿レニン活性はRIA 法(三菱化学B.C.L.)を用いて、血清ACE 活性は笠原法(三菱化学B.C.L.)を用いて測定した。また、血漿アンジオテンシンII 濃度はRIA 法(三菱化学B.C.L.)を用いて測定した。
【0052】
血漿レニン活性と血清ACE 活性、血漿アンジオテンシンII濃度を表4に示した。血漿レニン活性はControl 群と比べてK 型γ-PGA群で有意に抑制され、KHCO3 群では抑制傾向が認められた。また、血清ACE 活性はControl 群と比べてK 型γ-PGAとKHCO3群で有意に抑制され、血漿アンジオテンシンII濃度はK型γ-PGA群で低値を示し、抑制傾向が認められた。
【0053】
【表4】
【0054】
レニン-アンジオテンシン系で血圧を上昇させる機構が明らかにされている(日和田邦男. 1998:日和田邦男ほか編,レニン・アンジオテンシン系と高血圧. 先端医学社, 東京, 325-331.)。肝臓で生合成されたアンジオテンシノーゲンが血液中に分泌され、腎皮質の傍糸球体細胞から分泌されるレニンで、アンジオテンシンI に変換される。アンジオテンシンIは、肺、血漿、腎に存在するACEで、アンジオテンシンIIに変換され、生成されたアンジオテンシンIIが、血管平滑筋を収縮させて、血圧を上昇させることが知られている。上記結果に示すように、K 型γ-PGAは、血漿レニン活性、血清ACE 活性、血漿アンジオテンシンIIの全てを低下させたことから、レニン-アンジオテンシン系における血圧上昇機構の抑制にも関与していることが確認できた。
【0055】
(4-7) 臓器重量
心臓重量はControl 群と比べて、K 型γ-PGA群が有意に低い値を示し、KHCO3群で低い傾向が認められた。その他の臓器重量は3 群間で有意差が認められなかった(表5)。
【0056】
【表5】
【0057】
(4-8)血漿中のNO 分析
血漿中の一酸化窒素代謝産物(NOx)の濃度は、血漿を限外濾過フィルター(UltraFree-MC BioMax,ミリポア,東京)を用いて、遠心濾過(13,000 rpm, 1hr, 4℃)を行って除蛋白してから、グリース法(NO2/NO3 Assay Kit-C II,同仁化学)で、NO2-とNO3-の総量を測定した。
【0058】
血漿NOx 濃度はControl 群が高い傾向を示したが、3 群間で有意差は認められなかった(表6)。
【0059】
【表6】
【0060】
NO は血管拡張作用や血栓形成阻止などの生理活性を有する(平田恭信: 2004 NO: 本態性高血圧. 日本臨床. 62: 518-521.)。一方、NO とスーパーオキシド(O2-)が反応すると細胞傷害性の強いperoxynitrite(ONOO-)が生成され、酵素活性の低下や生理活性物質の減少など、さまざまな疾患の病因となることが示されている(Eiserich, JP., Hristova, M., Cross, CE., Jones, AD., Freeman, BA., Halliwell, B. and van der Vliet, A. 1998: Formation of nitric oxide-derived inflammatory oxidants by myeloperoxidase in neutrophils. Nature, 391: 393-397.)。Tabuchi ら(Tabuchi M, Ito T, Suzuki M, Ikeda M, Tomita T, Umegaki K. 2001: Disturbance of Circadian Rhythm in Heart Rate, Blood Pressure and Locomotive Activity at the Stroke-Onset in Malignant Stroke-Prone Spontaneously Hypertensive Rats. Jpn J Pharmacol. 85: 197-202.)はNOx濃度が脳卒中発症前のM-SHRSPで徐々に上昇することを明らかにしている。上記結果に示すように、屠殺したSHRSPのNOx濃度はK型γ-PGA群において低い傾向であったことから、K型γ-PGAはNOxの生成に起因する血圧上昇の抑制にも機能していることが示唆された。
【0061】
以上の各試験結果を統合すると、K型γ-PGAの摂取による血圧上昇抑制は、K型γ-PGA が、(i)ナトリウム吸収量を有意に低下させて、ナトリウム貯留を抑制するとともに、カリウムを体内に有意に多く吸収させる、(ii)レニン-アンジオテンシン系を有意に抑制させる、(iii)血漿NOx 濃度を低下させる、といった機能を有することによって達成されると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】K 型γ-PGAのナトリウム吸着試験結果を示す(◆:コントロール、■:アンバーライト、●:セルロース、▲:K 型γ-PGA)。
【図2】ナトリウム吸着時における外液中のK濃度の経時的変化を示す(▲:K 型γ-PGA+NaCl、■:K 型γ-PGA)。
【図3】K 型γ-PGAとKHCO3がSHRSPの収縮期血圧に与える効果を示す[コントロール群(◆:n=8-10)、K 型γ-PGA群(■:n=8-10)、KHCO3群(▲:n=8-10)]。*p<0.05対コントロール群。
【図4】K 型γ-PGAとKHCO3がSHRSPの乾燥糞便重量に与える効果を示す[コントロール群(白色バー:n=10)、K 型γ-PGA群(黒色バー:n=10)、KHCO3群(斜線バー:n=10)]。
【図5】K 型γ-PGAとKHCO3がSHRSPの糞便Na排泄量に与える効果を示す[コントロール群(白色バー:n=6-10)、K 型γ-PGA群(黒色バー:n=8-10)、KHCO3群(斜線バー:n=8-10)]。**p<0.01。
【図6】K 型γ-PGAとKHCO3がSHRSPの糞便K排泄量に与える効果を示す[コントロール群(白色バー:n=6-10)、K 型γ-PGA群(黒色バー:n=8-10)、KHCO3群(斜線バー:n=8-10)]。**p<0.01。
【図7】K 型γ-PGAとKHCO3がSHRSPのNa吸収量に与える効果を示す[コントロール群(白色バー:n=6-10)、K 型γ-PGA群(黒色バー:n=8-10)、KHCO3群(斜線バー:n=9-10)]。**p<0.05。
【図8】K 型γ-PGAとKHCO3がSHRSPの糞便Na排泄率に与える効果を示す[コントロール群(白色バー:n=6-10)、K 型γ-PGA群(黒色バー:n=8-10)、KHCO3群(斜線バー:n=9-10)]。**p<0.01。
【図9】K 型γ-PGAとKHCO3がSHRSPの摂水量に与える効果を示す[コントロール群(白色バー:n=6-10)、K 型γ-PGA群(黒色バー:n=8-10)、KHCO3群(斜線バー:n=8-10)]。
【図10】K 型γ-PGAとKHCO3がSHRSPの尿量に与える効果を示す[コントロール群(白色バー:n=6-10)、K 型γ-PGA群(黒色バー:n=8-10)、KHCO3群(斜線バー:n=8-10)]。**p<0.01。
【図11】K 型γ-PGAとKHCO3がSHRSPの尿中のNa排泄量に与える効果を示す[コントロール群(白色バー:n=6-10)、K 型γ-PGA群(黒色バー:n=8-10)、KHCO3群(斜線バー:n=8-10)]。
【図12】K 型γ-PGAとKHCO3がSHRSPの尿中のK排泄量に与える効果を示す[コントロール群(白色バー:n=6-10)、K 型γ-PGA群(黒色バー:n=8-10)、KHCO3群(斜線バー:n=8-10)]。**p<0.01。
【技術分野】
【0001】
本発明は、血圧上昇抑制作用を有する組成物、より詳しくは、納豆に含まれるγ-ポリグルタミン酸をカリウム置換したK型γ-ポリグルタミン酸を有効成分とする血圧上昇抑制作用を有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
食生活の欧米化や運動不足、ストレス、喫煙、遺伝的要因などが引き金となって、いわゆる生活習慣病の代表格である高血圧症や高脂血症(高コレステロール血症や高中性脂肪血症)が引き起こされることは、広く知られるようになってきた。なかでも、高血圧症は最も罹患率が高く、医療経済面からも早急な対応を要する疾患といえる。薬物治療はこれらの症状の改善に効果をもたらすが、胃の不快感や下痢、血管浮腫などの副作用を引き起こすことから、食品による疾患の予防と改善が社会的に求められている。
【0003】
日本の伝統的発酵食品である納豆は、このような高血圧症や高脂血症に対して改善効果があるものとして近年もっとも期待され、注目されている天然食品素材である。これまでに、納豆中に含まれる物質が血圧の上昇を抑制するという報告はいくつかある。たとえば、須見ら(非特許文献1)は納豆菌のエタノール可溶性画分に血圧上昇抑制効果があると報告している。また、岡本ら(非特許文献2)は高血圧自然発症ラット(SHR)を用いて納豆にアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害能があることを確認できたことを報告している。しかしながら、血圧の上昇抑制に作用する納豆中の構成成分については明らかにされていない。
【0004】
一方、辻ら(非特許文献3)は食物繊維が血圧上昇を抑制するという報告をしており、その作用機構は食物繊維が腸管内でナトリウムと結合して、ナトリウムの排泄を促進することによるナトリウムの吸収阻害であることを明らかにしている。また、カリウムの降圧作用に関しても多数の報告があり(非特許文献4,5)、その作用はナトリウムの排尿作用、血管拡張作用、アンジオテンシンIIやノルエピネフリンによる昇圧反応の減弱効果が主に論じられている(非特許文献6)。
【0005】
このように、カリウムによる血圧上昇の抑制はその作用機構とともに知られているところであり、カリウム供給手段の一つとしてクエン酸三カリウムが提案されているが(非特許文献7)、えぐ味や苦味があるなど、呈味性に好ましくない影響を与えることも指摘されている。従って、呈味性や安全性などすべての面を満足する最適なカリウム供給源となるさらなる天然素材が求められている。
【0006】
【非特許文献1】須見洋行. 1990: 納豆の機能性. 日本醸造協会誌. 85: 518-524.
【非特許文献2】岡本章子, 柳田藤治. 1997: ダイズのヘルシーテクノロジー8 大豆発酵食品の機能性アンギオテンシン変換酵素阻害能と高血圧抑制作用を中心として.食品工学会誌. 40: 70-79.
【非特許文献3】辻啓介, 辻悦子, 鈴木慎次郎, 中川靖枝. 1988: 食物繊維のナトリウム吸着能が高血圧自然発症ラットの血圧に及ぼす影響. 日本家政学会誌.39:187-195.
【非特許文献4】Dahl, L.K., Leiti, G and Heine, M. 1972: J. Exp. Med., 136: 318-330
【非特許文献5】MacGregor, G.A., Smith, S.J., Markandu, N.D., Banks, R.A. and Sagnella, G.A. 1982: Lancet. 2: 567-570.
【非特許文献6】藤田敏朗. 1985: カリウム. 臨床医学会誌. 11: 1896-1899.
【非特許文献7】本田真樹. 2006: 高血圧対応素材"クエン酸三カリウム"の有用性と将来性. FOOD STYLE 21, Vol.10, No.8:27-29.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、血圧上昇抑制作用を発揮し、かつ最適なカリウム供給源となる天然素材を見出し、それを配合した飲食品等の組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、納豆粘質物に特異的に含まれているγ-ポリグルタミン酸(γ-PGA)に注目し、このγ-PGAをカリウム置換したK型γ-PGAを脳卒中易発性高血圧自然発症ラット(Stroke-Prone Spontaneously Hypertensive Rat:SHRSP)に与えたところ、収縮期血圧の上昇が有意に抑制されること、糞便中のナトリウム量の増加と尿中のカリウムの増加が認められること、加えて、レニン-アンジオテンシン系が有意に抑制されることを見出した。本発明はかかる知見により完成したものである。
【0009】
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)K型γ-ポリグルタミン酸を有効成分として含有する血圧上昇抑制作用を有する組成物。
(2)γ-ポリグルタミン酸が、納豆菌由来である、(1)に記載の組成物。
(3)飲食品である、(1)に記載の組成物。
(4)前記飲食品が、健康食品、機能性食品、栄養補助食品、または特定保健用食品である、(3)に記載の飲食品。
(5)医薬品である、(1)に記載の組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、新規な血圧上昇抑制作用を有する組成物が提供される。本発明の組成物の血圧上昇抑制成分であるγ-PGAは納豆菌により生産される天然物由来であるから、安全性に優れ、長期に摂取しても副作用がない。従って、本発明の組成物は、日常的にかつ継続的に摂取しうる飲食品として、非常に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明について詳細に述べる。
【0012】
本発明の血圧上昇抑制作用を有する組成物は、次式で示されるγ-ポリグルタミン酸のカリウム塩(K型γ-ポリグルタミン酸、以下、「K型γ-PGA」という)を有効成分として含有する。
【0013】
【化1】
【0014】
γ-ポリグルタミン酸(γ-PGA)は、納豆粘質物の構成成分であり、納豆の水抽出物に多く(9.1%(w/w))含まれている。γ-PGAの調製方法は特に限定はされないが、例えば、以下の方法により調製できる。まず、酵母エキス、ペプトン、尿素、リン酸第一カリウム、グルコースからなる培地にL−グルタミン酸を添加し、納豆菌を約3日間培養することにより得た納豆菌培養液、あるいは、納豆に2〜5倍量の蒸留水を加え、攪拌することによって得た納豆水抽出液をろ過することにより粘稠なろ液を得る。このろ液を塩酸でpH2.0に調整することによってγ-PGAを沈殿させ、この沈殿物をろ過してろ液を除き、水洗、乾燥することにより、γ-PGAを粉末として得る。次に、K型γ-PGAは、前記で得られたγ-PGAを水に懸濁し、水酸化カリウム水溶液で中和してγ-PGAすべてを溶解させ、中和した水溶液を凍結乾燥することによって得ることがきる。
【0015】
上記のK型γ-PGAは、血圧上昇抑制作用を有する。従って、K型γ-PGAは、高血圧を発症する傾向のあるヒト等の被験者に対して、血圧上昇抑制剤、高血圧発症予防剤、あるいは高血圧症改善剤として、適当な添加剤とともに飲食品や医薬品等の組成物に配合することができる。
【0016】
本発明において、飲食品とは、健康食品、機能性食品、栄養補助食品、または特定保健用食品を含む意味で用いられる。さらに、本発明の飲食品をヒト以外の哺乳動物を対象として使用される場合には、ペットフード、飼料を含む意味で用いることができる。
【0017】
飲食品の形態は、食用に適した形態、例えば、固形状、液状、顆粒状、粒状、粉末状、カプセル状、クリーム状、ペースト状のいずれであってもよい。
【0018】
飲食品の種類としては、具体的には、清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果実飲料、乳飲料など飲料(これらの飲料の濃縮原液及び調整用粉末を含む);アイスクリーム、アイスシャーベット、かき氷等の冷菓;そば、うどん、はるさめ、ぎょうざの皮、しゅうまいの皮、中華麺、即席麺等の麺類;飴、チューインガム、キャンディー、グミ、ガム、キャラメル、チョコレート、錠菓、スナック菓子、ビスケット等の焼き菓子、ゼリー、ジャム、クリーム等の菓子類;かまぼこ、ちくわ、ハンバーグ、ハム、ソーセージ等の水産・畜産加工食品;加工乳、発酵乳、ヨーグルト、バター、チーズ等の乳製品;マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリーム、ドレッシング等の油脂及び油脂加工食品;ソース、たれ等の調味料;スープ、シチュー、カレー、パン、ジャム、サラダ、惣菜、漬物などが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0019】
本発明の飲食品は、その種類に応じて通常使用される添加物を適宜配合してもよい。添加物としては、食品衛生上許容されうる添加物であればいずれも使用できるが、例えば、アスパルテーム、ステビア等の甘味料、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸等の酸味料、デキストリン、澱粉等の賦形剤、結合剤、希釈剤、香料、着色料、緩衝剤、増粘剤、ゲル化剤、安定剤、保存剤、乳化剤、分散剤、懸濁化剤、防腐剤等が挙げられる。
【0020】
本発明の飲食品におけるK型γ-PGAの配合量は、その血圧上昇抑制作用が発揮できる量であればよいが、対象飲食品の一般的な摂取量を考慮して、通常、成人1日当たりの摂取量が100mg〜1,000gとなる量とすればよい
【0021】
本発明の飲食品は、例えば、生活習慣、体質、または遺伝などの要素によって高血圧を発症する傾向のある人はもとより、正常人であっても、高血圧症の予防または改善を目的として日常的に摂取することができる。
【0022】
また、本発明の組成物を医薬品として提供する場合は、K型γ-PGAはそのままで、または医薬上許容され、かつ剤型に応じて適宜選択した適当な添加剤(例えば担体、賦形剤、希釈剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤又は崩壊補助剤、可溶化剤、安定化剤、保存剤、防腐剤、増量剤、分散剤等)を用いて、公知の種々の方法にて経口又は非経口的に全身又は局所投与することができる各種製剤形態に調製すればよい。本発明の医薬を経口投与する場合は、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、丸剤、内用水剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤等に製剤化するか、使用する際に再溶解させる乾燥生成物にしてもよい。また、本発明の医薬を非経口投与する場合は、静脈内注射剤(点滴を含む)、筋肉内注射剤、腹腔内注射剤、皮下注射剤、坐剤などに製剤化し、注射用製剤の場合は単位投与量アンプル又は多投与量容器の状態で提供される。
【0023】
本発明の医薬は、血圧上昇の抑制によって病態が改善される疾患の予防及び/又は治療用医薬として用いることができる。かかる疾患としては、例えば、高血圧症、血栓症、動脈硬化症、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞などが挙げられるが、これらに限定はされない。本発明の医薬は上記疾患の発症を抑制する予防薬として、及び/又は、正常な状態に改善する治療薬として機能する。
【0024】
本発明の医薬は、前述の疾患の予防及び/又は治療用医薬として用いる場合、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ等の哺乳動物に対して経口または非経口的に安全に投与することができる。本発明の医薬の投与量は、疾患の種類、投与対象の年齢、性別、体重、症状の程度、又は投与方法などに応じて適宜決定することができる。例えば、軽症の高血圧症患者に経口投与する場合には、体重1kg当たり1mg〜200mgの範囲で1日1回から数回に分けて投与される。
【実施例】
【0025】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0026】
(実施例1)K型γ-PGAを用いたナトリウム吸着試験(in vitro)
被験物質には前述の方法にて納豆菌培養液から調製したγ-PGAを水酸化カリウム溶液で中和することによって得られたK型γ-PGA、陽イオン交換樹脂アンバーライトIR-120、セルロースを用いた。500mlビーカー中に0.1%(w/v)NaCl水溶液を200ml入れ、被験物質を2g加えた。この溶液に、イオン交換水5mlを入れた透析膜(分画分子量12000、ADVANTEC)を3個、液面が外液と同じ位置になるように浸した。マグネチックスターラーを用いて、外液を一定速度で撹拌しながら、サック内の溶液を15, 30, 60, 120 分後に100μlずつ採取し、NaあるいはK量を原子吸光法(HITACHI Z-6100)で定量した。
【0027】
被験物質を加えていないControlの内液のNa濃度は、120分後で176mg/lに達した。外液にセルロースを添加して、120 分撹拌した内液のNa 濃度は174mg/lで、Controlと同じ値であった。反対に、アンバーライトIR120とK型γ-PGAを添加した内液のNa濃度は120 分後で84.3mg/lと78.5mg/lに低下した。K型γ-PGAはポジティブコントロールとして添加したアンバーライトと同等のNa結合能を示した(図1)。
【0028】
K 型γ-PGAのみを添加した溶液中の遊離K 濃度は、120 分後で69.8mg/l だった。一方、NaClを添加したK 型γ-PGA 溶液中の遊離K 濃度は急激に上昇して、30 分でプラトーに達し、120 分後で338mg/l に達した(図2)。これらの結果は、K 型γ-PGAはNaCl 存在下でK とNa を置換して、Na 型γ-PGAと遊離のK を生成したことを示している。
【0029】
(実施例2)動物実験
動物実験は「近畿大学動物実験指針」ならびに「実験動物の飼養及び保管等に関する基準」(昭和55 年3 月総理府告示6 号)を遵守して行い、実験動物倫理委員会の承認を得て行った。
(1) 実験動物と飼育条件
実験には、5週齢の雄性SHRSP(近畿大学医学部実験動物共同研究室)30匹を用いた。1 つのケージに2 匹ずつ飼育した。室内の明暗サイクルは12 時間(07:00-19:00 点灯)、室内温度は23±1℃、湿度は60%に調整した。
【0030】
(2) 飼料と飼育方法
市販固形飼料(船橋SP、船橋農場)を用いて、予備飼育を1 週間行った後、ラットをランダムにControl 群(n=10)、K 型γ-PGA群(n=10)、およびKHCO3群(n=10)の3 群に分けた。飼料中のK 含量は、K 型γ-PGA群とKHCO3群でともに1.3g/100g に調製した。基本食には市販粉末飼料(船橋SP、船橋農場)を用い、食塩濃度は1.5%(w/w)とした(表1)。飼育期間は6 週間とし、飼料と水は自由摂取とした。
【0031】
【表1】
【0032】
(3) 血液と糞便採取、臓器摘出
血液採取は0, 2, 4 週目に行った。ヘパリンナトリウム処理した注射針を用いて、尾
静脈より1ml の血液を採取した。血液はヘパリンナトリウム入りのエッペンチューブに入れ、遠心分離(10000rpm、15min)を行って、血漿を採取した。血漿は4℃で保存し、血漿電解質測定用サンプルとした。
【0033】
糞便と尿の採取は0, 2, 4 週目に行った。ラットを代謝ケージで個別に24 時間飼育し、糞便と尿を回収した。糞便量は糞便を凍結乾燥した後、重量を測定した。また、糞便は−30℃で保存し、糞便電解質分析用サンプルとした。尿量は採取時に重量を測定して求めた。その後、遠心分離(10000rpm、15min)を行い、4℃で保存し、尿中電解質分析用サンプルとした。
【0034】
臓器摘出は飼育期間終了後に行った。ペントバルビタール麻酔(50mg/kgB.W.)下で開腹し、腹部大動脈から全採血した。その後、脳、心臓、肺、腎臓を摘出した。
【0035】
(4) 測定項目
下記の各項目について測定し、得られた結果は統計処理して、平均値±標準偏差(SD)で表示した。統計処理にはStatcel2(星雲社、東京都)を用いた。各群間の比較は、一元配置分散分析(One-way analysis of variance; One-way ANOVA)を用いて行い、多重比較はtukey 法を用いて行った。
【0036】
(4-1)体重と飼料摂取量
実験期間終了日まで隔日に測定した。飼育期間を通して、体重増加量と飼料摂取量は3群で同等の値を示し、ラットの成長に対する影響は認められなかった(表2)。
【0037】
【表2】
【0038】
(4-2)血圧測定
実験期間中、週一回収縮期血圧を測定した。ラットを37℃で10分間加温した後、無麻酔下で尾動脈圧をtail-cuff法によりUeda UR-5000 を用いて、非観血式で測定した。
【0039】
3 群の収縮期血圧の変化を図3に示した。Control群の収縮期血圧は飼育4週目以降急激に上昇したのに対して、K 型γ-PGA群の血圧は飼育5 週目以降、上昇が緩やかとなり、5 週目を経過してから収縮期血圧の有意な上昇抑制が認められた。飼育6 週目の収縮期血圧はControl 群が273.6±11.3mmHg に達したのに対して、K 型γ-PGA群では254.2±15.8 mmHg であった。また、KHCO3群でも飼育6 週目の収縮期血圧は263.2±16.3 mmHg で、Control 群と比べて血圧の上昇抑制傾向が認められた。
【0040】
(4-3)糞便中のナトリウムとカリウム分析
糞便中のナトリウムとカリウムは次の方法で定量した。凍結乾燥した糞便を粉砕後0.1g 採取し、1%(v/v)塩酸溶液10mlを加え、37℃で2h 間インキュベートした後、遠心分離(3500rpm,15min)にかけて上清を回収した。この液を10 倍段階希釈して、フィルターろ過した後、原子吸光度計で定量した。Na 吸収量はNa 摂取量から糞便中のNa 排泄量を引いて求めた。また、Na 排泄率はNa 排泄量をNa 摂取量で割り、100 倍して値を求めた。
【0041】
3 群間の乾燥糞便重量に差異は認められなかった(図4)。糞便中のNa排泄量は、飼育2, 4 週目でControl 群と比べて、K 型γ-PGA群で有意に増加した(図5)。一方、Control 群とKHCO3群ではNa 排泄量に差は認められなかったが、KHCO3 群で増加傾向が認められた(図5)。また、糞便中のK 排泄量は飼育2, 4 週目にControl 群と比べ、K 型γ-PGA群とKHCO3群で有意に増加した(図6)。Na 吸収量は飼育4 週目でK 型γ-PGA群で有意に減少し(図7)、Na 排泄率は飼育2,4 週目でK 型γ-PGA群で有意に高い値を示した(図8)。
【0042】
以上の結果から、K 型γ-PGAは腸管内でナトリウムの吸収を阻害し、糞便へのナトリウム排泄を高めていることが明らかとなった。一方、糞便へのカリウム排泄量はK 型γ-PGA群とKHCO3 群で有意に高かったが、これは飼料中のカリウム量がControl 群より高かったためと考えられる。
【0043】
(4-4) 尿中のナトリウムとカリウム分析
採取した尿0.1ml に1%(v/v)塩酸溶液0.9ml を加え、37℃で2h 間インキュベートした後、10 倍段階希釈して、フィルターろ過後、原子吸光度計で定量した。
【0044】
3 群間の摂水量に差は認められなかった(図9)が、尿量は飼育2 週目にControl 群がK型γ-PGA群とKHCO3群に比べ、有意に低値を示した(図10)。
【0045】
尿中のNa 排泄量は飼育期間を通して3 群間に有意差は認められなかったが、K 型γ-PGA群とKHCO3 群はControl 群より高い値を示した(図11)。また尿中のK 排泄量は飼育2, 4 週目でK 型γ-PGA群とKHCO3群が、Control 群と比べて有意に増加した(図12)。
【0046】
Fujitaら(Fujita T. 1980: Factros influenceing blood pressure in salt-sensitive patients with hypertension. Am J Med. 69: 334-344.)は、食塩の過剰摂取がナトリウムの体内貯留量を上昇させ、これが循環血液量を増加させて、心拍出量と血圧を上昇させると報告している。ナトリウムイオンは細胞外液のイオン濃度の大部分を占める主要なイオンであり、ナトリウムイオンが体内に蓄積すると、細胞外液が増加して、血圧を上昇させる。上記(4-3)の試験において、K 型γ-PGA群は他の群よりナトリウム吸収量が有意に少ないこと、また、上記(4-4)の試験において、K 型γ-PGA群は尿中へのナトリウム排泄量がControl群より多い傾向が認められたことから、K 型γ-PGAは体内でのナトリウム貯留量の上昇を抑制することによって、血圧上昇を抑制したと考えられる。
【0047】
またFujita ら(Fujita T, Sato Y. 1983: Natriureuretic and antihyper-tensive effects of potassium in DOCA-salt hypertensive rats. Kindey Int. 24: 731-739.;Fujita T,Ando K. 1984: Hemodynamic and endocrine changes associated with potassium supplementation in sodium-loaded hypertensives. hypertension. 6: 184-192.)は、食塩感受性高血圧モデル動物の一つであるdeoxycortico-sterone acetate(DOCA)-食塩高血圧ラットならびにヒト本態性高血圧患者とヒト若年境界域高血圧患者に対して、カリウムの降圧効果を明らかにし、カリウムの降圧機序として、ナトリウム利尿と交感神経系の抑制を示している。上記(4-4)の試験において、Control 群よりK 型γ-PGAとKHCO3 群で尿中のカリウム量が有意に増加したことから、カリウムの降圧作用も血圧の上昇を抑制した要因の一つと考えられる。
【0048】
(4-5) 血漿中のナトリウムとカリウム分析
採取した血漿0.1ml に1%(v/v)塩酸溶液0.9ml を加え、37℃で2h 間インキュベートした後、10 倍段階希釈して、フィルターろ過後、原子吸光度計で定量した。
【0049】
3 群間の血漿電解質に差は認められなかった(表3)。
【0050】
【表3】
【0051】
(4-6)血漿レニン活性、血清ACE 活性、血漿アンジオテンシンII 濃度
飼育6週後の屠殺時に血中のレニンとACE 活性、アンジオテンシン濃度を測定した。血漿レニン活性はRIA 法(三菱化学B.C.L.)を用いて、血清ACE 活性は笠原法(三菱化学B.C.L.)を用いて測定した。また、血漿アンジオテンシンII 濃度はRIA 法(三菱化学B.C.L.)を用いて測定した。
【0052】
血漿レニン活性と血清ACE 活性、血漿アンジオテンシンII濃度を表4に示した。血漿レニン活性はControl 群と比べてK 型γ-PGA群で有意に抑制され、KHCO3 群では抑制傾向が認められた。また、血清ACE 活性はControl 群と比べてK 型γ-PGAとKHCO3群で有意に抑制され、血漿アンジオテンシンII濃度はK型γ-PGA群で低値を示し、抑制傾向が認められた。
【0053】
【表4】
【0054】
レニン-アンジオテンシン系で血圧を上昇させる機構が明らかにされている(日和田邦男. 1998:日和田邦男ほか編,レニン・アンジオテンシン系と高血圧. 先端医学社, 東京, 325-331.)。肝臓で生合成されたアンジオテンシノーゲンが血液中に分泌され、腎皮質の傍糸球体細胞から分泌されるレニンで、アンジオテンシンI に変換される。アンジオテンシンIは、肺、血漿、腎に存在するACEで、アンジオテンシンIIに変換され、生成されたアンジオテンシンIIが、血管平滑筋を収縮させて、血圧を上昇させることが知られている。上記結果に示すように、K 型γ-PGAは、血漿レニン活性、血清ACE 活性、血漿アンジオテンシンIIの全てを低下させたことから、レニン-アンジオテンシン系における血圧上昇機構の抑制にも関与していることが確認できた。
【0055】
(4-7) 臓器重量
心臓重量はControl 群と比べて、K 型γ-PGA群が有意に低い値を示し、KHCO3群で低い傾向が認められた。その他の臓器重量は3 群間で有意差が認められなかった(表5)。
【0056】
【表5】
【0057】
(4-8)血漿中のNO 分析
血漿中の一酸化窒素代謝産物(NOx)の濃度は、血漿を限外濾過フィルター(UltraFree-MC BioMax,ミリポア,東京)を用いて、遠心濾過(13,000 rpm, 1hr, 4℃)を行って除蛋白してから、グリース法(NO2/NO3 Assay Kit-C II,同仁化学)で、NO2-とNO3-の総量を測定した。
【0058】
血漿NOx 濃度はControl 群が高い傾向を示したが、3 群間で有意差は認められなかった(表6)。
【0059】
【表6】
【0060】
NO は血管拡張作用や血栓形成阻止などの生理活性を有する(平田恭信: 2004 NO: 本態性高血圧. 日本臨床. 62: 518-521.)。一方、NO とスーパーオキシド(O2-)が反応すると細胞傷害性の強いperoxynitrite(ONOO-)が生成され、酵素活性の低下や生理活性物質の減少など、さまざまな疾患の病因となることが示されている(Eiserich, JP., Hristova, M., Cross, CE., Jones, AD., Freeman, BA., Halliwell, B. and van der Vliet, A. 1998: Formation of nitric oxide-derived inflammatory oxidants by myeloperoxidase in neutrophils. Nature, 391: 393-397.)。Tabuchi ら(Tabuchi M, Ito T, Suzuki M, Ikeda M, Tomita T, Umegaki K. 2001: Disturbance of Circadian Rhythm in Heart Rate, Blood Pressure and Locomotive Activity at the Stroke-Onset in Malignant Stroke-Prone Spontaneously Hypertensive Rats. Jpn J Pharmacol. 85: 197-202.)はNOx濃度が脳卒中発症前のM-SHRSPで徐々に上昇することを明らかにしている。上記結果に示すように、屠殺したSHRSPのNOx濃度はK型γ-PGA群において低い傾向であったことから、K型γ-PGAはNOxの生成に起因する血圧上昇の抑制にも機能していることが示唆された。
【0061】
以上の各試験結果を統合すると、K型γ-PGAの摂取による血圧上昇抑制は、K型γ-PGA が、(i)ナトリウム吸収量を有意に低下させて、ナトリウム貯留を抑制するとともに、カリウムを体内に有意に多く吸収させる、(ii)レニン-アンジオテンシン系を有意に抑制させる、(iii)血漿NOx 濃度を低下させる、といった機能を有することによって達成されると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】K 型γ-PGAのナトリウム吸着試験結果を示す(◆:コントロール、■:アンバーライト、●:セルロース、▲:K 型γ-PGA)。
【図2】ナトリウム吸着時における外液中のK濃度の経時的変化を示す(▲:K 型γ-PGA+NaCl、■:K 型γ-PGA)。
【図3】K 型γ-PGAとKHCO3がSHRSPの収縮期血圧に与える効果を示す[コントロール群(◆:n=8-10)、K 型γ-PGA群(■:n=8-10)、KHCO3群(▲:n=8-10)]。*p<0.05対コントロール群。
【図4】K 型γ-PGAとKHCO3がSHRSPの乾燥糞便重量に与える効果を示す[コントロール群(白色バー:n=10)、K 型γ-PGA群(黒色バー:n=10)、KHCO3群(斜線バー:n=10)]。
【図5】K 型γ-PGAとKHCO3がSHRSPの糞便Na排泄量に与える効果を示す[コントロール群(白色バー:n=6-10)、K 型γ-PGA群(黒色バー:n=8-10)、KHCO3群(斜線バー:n=8-10)]。**p<0.01。
【図6】K 型γ-PGAとKHCO3がSHRSPの糞便K排泄量に与える効果を示す[コントロール群(白色バー:n=6-10)、K 型γ-PGA群(黒色バー:n=8-10)、KHCO3群(斜線バー:n=8-10)]。**p<0.01。
【図7】K 型γ-PGAとKHCO3がSHRSPのNa吸収量に与える効果を示す[コントロール群(白色バー:n=6-10)、K 型γ-PGA群(黒色バー:n=8-10)、KHCO3群(斜線バー:n=9-10)]。**p<0.05。
【図8】K 型γ-PGAとKHCO3がSHRSPの糞便Na排泄率に与える効果を示す[コントロール群(白色バー:n=6-10)、K 型γ-PGA群(黒色バー:n=8-10)、KHCO3群(斜線バー:n=9-10)]。**p<0.01。
【図9】K 型γ-PGAとKHCO3がSHRSPの摂水量に与える効果を示す[コントロール群(白色バー:n=6-10)、K 型γ-PGA群(黒色バー:n=8-10)、KHCO3群(斜線バー:n=8-10)]。
【図10】K 型γ-PGAとKHCO3がSHRSPの尿量に与える効果を示す[コントロール群(白色バー:n=6-10)、K 型γ-PGA群(黒色バー:n=8-10)、KHCO3群(斜線バー:n=8-10)]。**p<0.01。
【図11】K 型γ-PGAとKHCO3がSHRSPの尿中のNa排泄量に与える効果を示す[コントロール群(白色バー:n=6-10)、K 型γ-PGA群(黒色バー:n=8-10)、KHCO3群(斜線バー:n=8-10)]。
【図12】K 型γ-PGAとKHCO3がSHRSPの尿中のK排泄量に与える効果を示す[コントロール群(白色バー:n=6-10)、K 型γ-PGA群(黒色バー:n=8-10)、KHCO3群(斜線バー:n=8-10)]。**p<0.01。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
K型γ-ポリグルタミン酸を有効成分として含有する血圧上昇抑制作用を有する組成物。
【請求項2】
γ-ポリグルタミン酸が、納豆菌由来である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
飲食品である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記飲食品が、健康食品、機能性食品、栄養補助食品、または特定保健用食品である請求項3に記載の飲食品。
【請求項5】
医薬品である、請求項1に記載の組成物。
【請求項1】
K型γ-ポリグルタミン酸を有効成分として含有する血圧上昇抑制作用を有する組成物。
【請求項2】
γ-ポリグルタミン酸が、納豆菌由来である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
飲食品である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記飲食品が、健康食品、機能性食品、栄養補助食品、または特定保健用食品である請求項3に記載の飲食品。
【請求項5】
医薬品である、請求項1に記載の組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
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【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−255063(P2008−255063A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−100667(P2007−100667)
【出願日】平成19年4月6日(2007.4.6)
【出願人】(000006091)明治製菓株式会社 (180)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月6日(2007.4.6)
【出願人】(000006091)明治製菓株式会社 (180)
【Fターム(参考)】
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