説明

血圧上昇抑制剤

【課題】心臓疾患や脳血管障害の発症を抑制し、高血圧症の予防、治療に有用な血圧上昇を抑制する組成物、及び該組成物を含む飲食品又は医薬品を提供。
【解決手段】ニンニクのスプラウトの葉と茎の部分をさすガーリック(Allium sativum)プラウト葉抽出成分を、一日当たり0.01〜10g/kg体重程度摂取して、抽出物の有するアンジオテンシンII1型受容体拮抗作用により血圧上昇を抑制組成物、及び該組成物を含有する飲食品又は医薬品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は血圧上昇抑制を目的とした組成物、及び該組成物を含む飲食品又は医薬品に関する。
【背景技術】
【0002】
レニン−アンジオテンシン系は、生体内における血圧、水分量、体内電解質バランスなどの恒常性調節系として重要な役割を持つ。主要な生理活性物質はアンジオテンシンIIである。アンジオテンシンIIは細胞膜上のアンジオテンシンII受容体、特に1型(AT)を介して血管収縮作用を示す。従って、AT受容体を拮抗させることにより、血圧降下作用が期待できる。
【0003】
血圧上昇を抑制する飲食品、医薬品は高血圧症の予防、治療に有用である。また、高血圧症の進行により発生する心臓疾患や脳血管障害の発症が抑制され、これらの疾病による死亡を防ぐことができる。現在、血圧上昇抑制剤としてギャバや、かつお節・いわし・ローヤルゼリーなどのペプチド類、ロサルタン、カプトプリルなどが知られているが、より効果の高い新しい素材が求められている。
【0004】
ガーリックスプラウト葉はニンニクのスプラウトの葉と茎の部分をさし、ニンニクはネギ(Alliaceae)科ネギ(Allium)属の植物である。ニンニクでは、ニンニクに含まれるγ−グルタミル−S−アリルシステインとガーリックオイルが血圧低下作用をもつこと、ニンニクのジペプチドがアンジオテンシン変換酵素阻害作用があることが報告されている。しかし、ガーリックスプラウト葉にアンジオテンシンII1型受容体拮抗作用による血圧上昇抑制作用があることは全く知られていなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、血圧上昇抑制作用及び、アンジオテンシンII1型受容体拮抗作用を有する組成物を提供し、ひいては該組成物を含有する飲食品又は医薬品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ガーリックスプラウト葉に顕著な血圧上昇抑制作用があることを見出した。すなわち本発明は、以下の構成を有する。
(1)ガーリックスプラウト葉の成分を含有することを特徴とする血圧上昇抑制組成物。
(2)上記(1)に記載の組成物を含有する飲食品又は医薬品。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、ガーリックスプラウト葉の成分を含有することを特徴とする血圧上昇抑制組成物、及び該組成物を含有する飲食品又は医薬品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
ガーリックスプラウト葉はニンニクのスプラウトの葉と茎の部分をさし、ニンニクはネギ(Alliaceae)科ネギ(Allium)属の植物である。ガーリックスプラウト葉は、ニンニクの種子を発芽、成長させたもので、従来より公知のものであり、既に商品として販売されている。本発明に係るガーリックスプラウト葉のメタノール抽出物とは、上記公知の葉を乾燥粉末状にしたものをメタノールで抽出して得られた化合物である。メタノール抽出は一般的な方法で行う。例えば、乾燥粉末状にしたものにメタノールを加え、室温で数時間から数日放置し、その抽出液に濾過、遠心分離等の操作を加え、濃縮する。
【0009】
ガーリックスプラウト葉を粉末状にすると、メタノールとの接触面積が増大し抽出を効率的に行うことができる。また、ガーリックスプラウト葉から有効成分を溶出させる溶媒は、メタノールに限定されるものではなく、エタノール、アセトン、酢酸エチル、ヘキサン等の類似した他の有機溶媒等を用いることもできる。さらに、水抽出、熱水抽出、酸性ドでの抽出、アルカリ性下での抽出で得られたサングレ・デ・グラードの樹脂の抽出物でも、同様の作用を発揮し得るものである。また、浸漬する時間は、樹脂の大きさ、抽出雰囲気の温度によって異なるが、粉末状の樹脂であれば、通常の室温下では一昼夜の浸漬で十分である。
【0010】
本発明に関わる血圧上昇抑制剤を製造するには、上記の方法で製造した樹脂を粉末状にすると、メタノールとの接触面積が増大し抽出を効率的に行うことができるが、粉末状の樹脂でなくても良い。また、樹脂から有効成分を溶出させる溶媒は、メタノールに限定されるものではなく、エタノール、アセトン、酢酸エチル、ヘキサン等の類似した他の有機溶媒等を用いることもできる。さらに、水抽出、熱水抽出、酸性下での抽出、アルカリ性下での抽出で得られたガーリックスプラウト葉の抽出物でも、同様の作用を発揮し得るものである。また、浸漬する時間は、樹脂の大きさ、抽出雰囲気の温度によって異なるが、粉末状の樹脂であれば、通常の室温下では一昼夜の浸漬で十分である。
【0011】
ガーリックスプラウト葉及びそのメタノール抽出物は、常法に従って従来公知の医薬用無毒性担体と組み合わせることにより、種々の剤形に製剤化できる。経口投与剤としては、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、ソフトカプセル剤等の固形剤や、溶液剤、懸濁剤、乳剤等の液剤や、凍結乾燥製剤が挙げられる。非経口投与剤としては、注射剤のほか、座薬、噴霧剤、経皮吸収剤が挙げられる。これらの製剤は、製剤上の常套手段により調製することができる。
【0012】
医薬用無毒性担体としては、グルコース、乳糖、蔗糖、澱粉、マンニトール、デキストリン、コレステロール酸グリセリド、ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルデンプン、エチレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタンコレステロール酸エステル、アミノ酸、アルブミン、水、生理食塩水等が挙げられる。また、必要に応じて、安定化剤、滑剤、湿潤剤、乳化剤、結合剤等の慣用の添加剤を適宜添加することができる。サングレ・デ・グラード樹脂の投与量は、被投与者の年齢、体重、症状、疾患の程度、投与スケジュール、製剤形態等により適宜選択・決定されるが、一日当たり、0.01〜10g/kg体重程度とされ、一日数回に分けて投与しても良い。
【0013】
ガーリックスプラウト葉は、食経験もあることから安全性が高いと考えられ、本発明の血圧上昇抑制剤を食品として摂取することもできる。本発明のガーリックスプラウト葉に適当な助剤を添加し、慣用の手段を用いて食用に適した形態、例えば粒状、顆粒状、ペースト状に形成し機能性食品として、これを直接供するか、ハム、ソーセージ、かまぼこ、ちくわ、パン、バター、乳製品、菓子、水、酒類、清涼飲料水等の種々の飲食物に添加し飲食品として、これを直接供することもできる。ガーリックスプラウト葉を含む食品の摂取量は、摂取者の年齢、体重、症状、疾患の程度、食品の形態等により適宜選択・決定されるが、ガーリックスプラウト葉抽出物の摂取量が、一日当たり0.01〜10g/kg体重程度になるようにする。
【実施例】
【0014】
以下に本発明をより詳細に説明するために実施例を挙げるが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【0015】
実施例 ガーリックスプラウト葉抽出物の血圧上昇抑制作用
被験試料としてガーリックスプラウト葉のメタノール抽出物を用いた。6週齢の雄ddYマウスをコントロール群とガーリックスプラウト葉投与群に分け、アンジオテンシンII(150μg/kg)を腹腔内投与した。アンジオテンシンII投与の30分前に、コントロール群には蒸留水を投与し、投与群には蒸留水に溶解させたガーリックスプラウト葉メタノール抽出物を投与した。アンジオテンシンIIを投与する直前とアンジオテンシンII投与4分後にマウスの尾動脈収縮期血圧を測定した。4分後に測定した値から直前に測定した値を引いた値を収縮期血圧上昇値(mmHg)とした。その結果を表1に示す。また、酢酸エチルと水で分液し、分画物を投与した実験の結果を表2に示す。それぞれの値は、平均値(mmHg)±標準誤差を示す。*、**、***はそれぞれ危険率5%、1%、0.5%で、注射4分後の収縮期血圧は注射直前の収縮期血圧に対し有意に上昇していた。#、##はそれぞれ危険率5%、1%でコントロール群の収縮期血圧上昇値に対し有意に低下していた。有意差検定はStudentのt−testによって行った。
【0016】
【表1】

【表2】

【0017】
この結果より、ガーリックスプラウト葉抽出物はアンジオテンシンIIによる血圧の上昇を顕著に抑制することが示された。また、活性成分が脂溶性成分であることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明により、ガーリックスプラウト葉の成分を含有することを特徴とする、血圧上昇抑制作用及びアンジオテンシンII1型受容体拮抗作用を有する組成物及び該組成物を含有する飲食品又は医薬品提供することが可能となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガーリックスプラウト葉の成分を含有することを特徴とする血圧上昇抑制組成物。
【請求項2】
上記ガーリックスプラウト葉の成分が、ガーリックスプラウト葉のメタノール抽出物である、請求項1に記載の血圧上昇抑制組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の組成物を含有する飲食品又は医薬品。

【公開番号】特開2010−202630(P2010−202630A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−77462(P2009−77462)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(300076688)有限会社湘南予防医科学研究所 (54)
【Fターム(参考)】