説明

血圧測定装置

【課題】特別なセンサを別途備えず、不整脈発生に拘らず、時間を要しない。
【解決手段】同一カフ圧力下において圧力パルス検出手段により検出された連続した2個の圧力パルスの波形形状を比較し、両パルスの波形形状がほぼ同一であるか否かを判別する第一判別手段と、該第一判別手段により両パルスの波形形状がほぼ同一であると判別されない場合、両パルスの直前に検出された圧力パルスおよび前記両パルスの所定のパラメータを比較して不整脈に相当する所定の条件に合致するか否かを判別する第二判別手段と、前記第一判別手段により両パルスの波形形状がほぼ同一であると判別された場合、両パルスを血圧算出に使用する脈波と決定し、前記第二判別手段により前記3個の圧力パルスの所定のパラメータが前記所定の条件に合致すると判別された場合、3個の圧力パルスを血圧算出に使用する脈波として決定する決定手段と、該決定手段によって決定された血圧算出に使用する脈波に基づいて血圧を算出する血圧算出手段とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、カフの圧力に対応する信号から圧力パルスを取り込み、この信号に基づいて血圧を算出するようにしたオシロメトリック方式の血圧測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の血圧測定装置においては、被検者の上腕部などにカフを巻回し、カフの圧力を所定値に維持させた状態でカフの圧力に対応する信号から圧力パルスを連続して取り込み、ほぼ同一波形の圧力パルスが2個連続した場合、当該圧力パルスを血圧算出に使用できる圧力パルスとして認識し、次いでカフの圧力を微少ステップ減圧させて同様に圧力パルスの測定を行う。これらの測定は、血圧の計算が可能となるまで行われる。ここで問題となるのは、期外収縮などによって圧力パルスの波高値及び脈拍数が変化するなどの不整脈が発生したときである。この場合、連続する2拍の圧力パルスが揃わず、揃うまでカフの圧力を維持して繰り返し測定するため、測定に時間がかかるという問題がある。係る事情に関しては、例えば、特許文献1における0006欄及び図2により説明されている。
【0003】
上記の問題点を解決するために、特許文献1にあっては、不整脈の存在を検出するセンサ(ECGセンサ)を用いて、不整脈が検出されない場合には振動複素数の整合基準の第1で検出を行い、不整脈が検出された場合には整合基準の第1よりも整合基準を緩めた、振動複素数の整合基準の第2で検出を行うようにして、不整脈の存在を補償している。
【0004】
また、特許文献2においてはカフ脈波振幅を補正するカフ脈波振幅補正手段によって、カフ圧と生体の平均血圧との差である圧較差と、カフ脈波振幅との間の非線形の関係に基づいて、各カフ脈波の振幅がそれぞれ補正され、その補正されたカフ脈波の振幅の変化に基づいて生体の血圧値が決定されるため、不整脈発生時においてもエンベロープが正確となり、血圧測定が可能となるか或いは高い精度で血圧測定を可能とするものである。
【特許文献1】特開2002−112972号公報
【特許文献2】特開2003−144399号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に記載の装置は、特別に不整脈の存在を検出するセンサが必要となり、構成の複雑化、大型化を招来することになる。また、前記特許文献2に記載の装置においては、カフ脈波振幅補正手段として光電脈波センサが必要であり、やはり構成の複雑化、大型化を招く。
【0006】
本発明は、前述の従来技術の問題点に鑑み、特別なセンサを別途備えずに、簡単な構成で、不整脈が発生してもそれほど時間を要することなく高精度な血圧測定を可能とする血圧測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る血圧測定装置は、生体の所定部位に巻回されたカフの圧力を微少ステップで段階的に変化させ、それぞれの圧力下における心拍に同期した脈波を検出し、該脈波に基づいて血圧値を算出するオシロメトリック式の血圧測定装置であって、前記カフの圧力から圧力パルスを連続的に検出する圧力パルス検出手段と、該圧力パルス検出手段により検出された最新の圧力パルス(第1のパルス)と、該第1のパルスと同一のカフ圧力下において第1のパルスの直前に検出された圧力パルス(第2のパルス)との波形形状を比較し、第1のパルスおよび第2のパルスの波形形状がほぼ同一であるか否かを判別する第一判別手段と、該第一判別手段により第1のパルスおよび第2のパルスの波形形状がほぼ同一であると判別されない場合、第1のパルスおよび第2のパルスと同一のカフ圧力下において、第2のパルスの直前に検出された圧力パルス(第3のパルス)と第2のパルスと第1のパルスとの所定のパラメータを比較して不整脈に相当する所定の条件に合致するか否かを判別する第二判別手段と、前記第一判別手段により第1のパルスおよび第2のパルスの波形形状がほぼ同一であると判別された場合、第1のパルスおよび第2のパルスを血圧算出に使用する脈波と決定し、前記第二判別手段により第1のパルス、第2のパルスおよび第3のパルスの所定のパラメータが前記所定の条件に合致すると判別された場合、第1のパルス、第2のパルスおよび第3のパルスを血圧算出に使用する脈波として決定する決定手段と、該決定手段によって決定された血圧算出に使用する脈波に基づいて血圧を算出する血圧算出手段と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明に係る血圧測定装置は、前記所定のパラメータが、第1のパルス、第2のパルスおよび第3のパルスの波高値および隣り合う各パルス間のインターバルであり、前記所定の条件が、第1のパルス、第2のパルス、第3のパルスの波高値をそれぞれA1、A2、A3とし、第1のパルスと第2のパルスとの間のインターバルをT12、第2のパルスと第3のパルスとの間のインターバルをT23とすると、A1>A2かつA2<A3かつT12>T23(第1の条件)、またはA1<A2かつA2>A3かつT12<T23(第2の条件)であることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る血圧測定装置は、前記所定のパラメータとして、所定基準値から第1のパルス、第2のパルスおよび第3のパルスそれぞれのピーク値までの大きさをさらに含み、前記所定基準値からピーク値までの大きさをそれぞれP1、P2、P3とすると、前記所定の条件は、前記第1の条件に加えてP1>P2かつP2<P3、または前記第2の条件に加えてP1<P2かつP2>P3であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る血圧測定装置では、第1のパルスおよび第1のパルスと同一のカフ圧力下において直前に検出された第2のパルスの波形形状がほぼ同一であると判別されない場合、第1のパルスおよび第2のパルスと同一のカフ圧力下において、第2のパルスの直前に検出された圧力パルス(第3のパルス)と第2のパルスと第1のパルスとの所定のパラメータを比較して不整脈に相当する所定の条件に合致するか否かを判別し、第1のパルス、第2のパルスおよび第3のパルスの所定のパラメータが前記所定の条件に合致すると判別された場合、第1のパルス、第2のパルスおよび第3のパルスを血圧算出に使用する脈波としたので、従来は血圧算出に使用されなかった、不整脈に相当する所定の条件に合致する圧力パルスが血圧算出に使用でき、特別なセンサを別途備えずに、簡単な構成で、不整脈の発生により測定に時間がかかるという状況を改善できる。
【0011】
また、本発明においては、前記所定のパラメータは、第1のパルス、第2のパルスおよび第3のパルスの波高値および隣り合う各パルス間のインターバルであり、前記所定の条件は、第1のパルス、第2のパルス、第3のパルスの波高値をそれぞれA1、A2、A3とし、第1のパルスと第2のパルスとの間のインターバルをT12、第2のパルスと第3のパルスとの間のインターバルをT23とすると、A1>A2かつA2<A3かつT12>T23(第1の条件)、またはA1<A2かつA2>A3かつT12<T23(第2の条件)であるので、圧力パルスの波高値およびインターバルについて、第1の条件または第2の条件に合致する圧力パルスが血圧算出に使用できる脈波として取り扱われ、特別なセンサを別途備えずに、簡単な構成で、不整脈の発生により測定に時間がかかるという状況を改善できると共に適切な測定が確保される。
【0012】
また、本発明においては、前記所定のパラメータとして、所定基準値から第1のパルス、第2のパルスおよび第3のパルスそれぞれのピーク値までの大きさをさらに含み、前記所定基準値からピーク値までの大きさをそれぞれP1、P2、P3とすると、前記所定の条件は、前記第1の条件に加えてP1>P2かつP2<P3、または前記第2の条件に加えてP1<P2かつP2>P3であるので、検出された圧力パルスが血圧算出に使用できないパルスであったとしても、圧力パルスがドリフトしたりノイズが混入するなどして、パルスの波高値およびインターバルが前記第1の条件あるいは前記第2の条件に合致して、血圧算出に使用できる脈波として処理してしまう誤りを有効に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明においては、期外収縮などの不整脈の場合における次のような生体生理に基づき、従来、血圧算出に使用されなかったパルス波を血圧算出に使用されるようにしたものである。即ち、期外収縮による心拍(期外収縮拍)は、直前の正常拍からの期間が短いため、心室に血液が貯溜する期間が短く、これによって小さな心拍動となる。そして、このように期外収縮拍が早期心拍として生じた場合には、その後に長い休止期が生じ、次の正常拍へと続くので、早期収縮拍の次に現れる正常拍は大きな心拍動となる。このようなパルス波が検出された場合、これらのパルス波を血圧算出に使用できるようにしたものである。
【0014】
図1には、本発明に係る血圧測定装置1の機能ブロック図が示されている。血圧測定装置1は、被検者の上腕等に巻回されたカフ2の圧力を微小ステップで段階的に変化させて、それぞれの圧力下において心拍に同期した脈波を検出し、この脈波に基づいて血圧値を算出するものである。
【0015】
圧力パルス検出手段3でカフ2の圧力から所定の閾値以上の圧力バルスを連続的に検出し、第一判別手段4において前記圧力パルス検出手段3で検出された最新の圧力パルス(第1のパルス)と該第1の圧力パルスと同一のカフ圧力下において第1のパルスの直前に検出された圧力パルス(第2のパルス)との波形形状を比較し、第1のパルスおよび第2のパルスの波形形状がほぼ同一であるか否かを判別する。なお、判別パラメータとして、前記波高値Aおよび前記立ち上がり時間Tに、パルスの立ち上がりの傾き(A/T)を加えてもよい。これにより、より正確な判別が可能になる。
【0016】
図2には、前記第一判別手段4で比較される圧力パルスの波形形状が示されている。第1のパルスおよび第2のパルスの波形形状がほぼ同一であるか否かの判別は、両パルスの波高値Aおよびパルスの立ち上がり時間Tを比較することにより行われる。例えば、それぞれの差が10%以内であれば、両パルスはほぼ同一であるとする。
【0017】
前記第一判別手段4により、第1のパルスおよび第2のパルスの波形形状がほぼ同一であると判別されない場合、第二判別手段5において、第1のパルスおよび第2のパルスと同一のカフ圧力下において、第2のパルスの直前に検出された圧力パルス(第3のパルス)と第2のパルスと第1のパルスとの所定のパラメータが不整脈に相当する所定の条件に合致するか否かを判別する。この場合、第1〜第3のパルスを、前述の不整脈の場合における生体生理に基づいて血圧算出に使用できるか否かを判別する。
【0018】
前記所定のパラメータを、第1〜第3のパルスの波高値およびそれぞれ隣り合う圧力パルス間のインターバルとし、それぞれの値を求める。第1〜第3のパルスのそれぞれの波高値をA1、A2、A3とし、第1のパルスと第2のパルスとの間のインターバルをT12、第2のパルスと第3のパルスとの間のインターバルをT23とする。
【0019】
前述の生体生理によれば、次の場合が前記所定の条件となり、不整脈によるものであると推定できる。すなわち、A3>A2のときA2<A1で、かつT23<T12の場合(第1の条件)、およびA3<A2のときA2>A3で、かつT23>T12の場合(第2の条件)の二つの場合である。
【0020】
図3には、前記第1の条件に合致する圧力パルスの波形形状が示されており、それぞれ隣り合う圧力パルス同士の波形形状は、前記第一判別手段によりほぼ同一であるとは判別されなかったものである。図において、右側の波形は最新に検出された第1のパルスPL1を示し、中央の波形は第1のパルスPL1の直前に検出された第2のパルスPL2を示し、左側の波形は第2のパルスPL2の直前に検出された第3のパルスPL3を示す。この場合、第2のパルスPL2が期外収縮拍であって、従来は血圧算出に使用されなかった圧力パルスであるが、本発明では血圧算出に使用できる脈波として判別される。
【0021】
本発明では、また、所定の基準値から第1、第2、第3のパルスそれぞれのパルスのピーク値までの大きさを、前記所定のパラメータに加えても良い。図3において、符号THは所定の基準値であって、例えば0ボルトとする。この基準値から第1のパルスPL1のピーク値までの大きさをP1、第2のパルスPL2のピーク値までの大きさをP2、第3のパルスPL3のピーク値までの大きさをP3とすると、前記所定の条件は、前記第1の条件に加えて、P3>P2かつP2<P1とする。
【0022】
図4には、前記第2の条件に合致する圧力パルスの波形形状が示されており、それぞれ隣り合う圧力パルス同士の波形形状は、前記第一判別手段によりほぼ同一であるとは判別されなかったものである。図において、右側の波形は最新に検出された第1のパルスPL1を示し、中央の波形は第1のパルスPL1の直前に検出された第2のパルスPL2を示し、左側の波形は第2のパルスPL2の直前に検出された第3のパルスPL3を示す。この場合、第3のパルスPL3が期外収縮拍であって、従来は血圧算出に使用されなかった圧力パルスであるが、本発明では血圧算出に使用できる脈波として判別される。
【0023】
また、所定の基準値から第1、第2、第3のパルスそれぞれのパルスのピーク値までの大きさを、前記所定のパラメータに加えても良い。図4において、符号THは所定の基準値であって、例えば0ボルトとする。この基準値から第1のパルスPL1のピーク値までの大きさをP1、第2のパルスPL2のピーク値までの大きさをP2、第3のパルスPL3のピーク値までの大きさをP3とすると、前記所定の条件は、前記第2の条件に加えて、P3<P2かつP2>P1とする。
【0024】
符号6で示されるのは、前記第一判別手段4により第1のパルスおよび第2のパルスの波形形状がほぼ同一であると判別された場合、または前記第二判別手段5により第1のパルス、第2のパルスおよび第3のパルスの前記パラメータが前記所定の条件に合致していると判別された場合に、判別されたそれぞれの圧力パルスを血圧算出に使用する脈波として決定し、そのときのカフ圧力における脈波の波高値を計算して決定する決定手段である。前記脈波の波高値は、以下のようにして決定される。
【0025】
前記第一判別手段4により第1のパルスおよび第2のパルスの波形形状がほぼ同一であると判別された場合、そのときの脈波の波高値は、第1のパルスおよび第2のパルスの波高値の平均値とする。
【0026】
前記第2判別手段により第1〜第3のパルスが前記第1の条件または前記第2の条件に合致すると判別された場合、そのときの脈波の波高値は、第1〜第3のパルスの波高値の平均値とする。
【0027】
このようにして前記決定手段6で決定された脈波の波高値に基づいて、血圧算出手段7において平均血圧、最高血圧および最低血圧が算出される。
【実施例1】
【0028】
次に、本発明に係る血圧測定装置の実施例を、以下の図面を参照して説明する。各図において、同一の構成要素には同一の符号を付して重複する説明を省略する。図5には、本発明に係る血圧測定装置10の実施例の構成図が示されており、図1に示した機能を中央演算処理装置(CPU)を使用して実現したものである。この血圧測定装置10には、被検者の腕等に装着されるカフ11が備えられ、このカフ11には、圧力センサ12、加圧ポンプ13、排気弁14が接続されている。
【0029】
血圧測定装置10は、CPUを備える制御部20の制御の基に処理を行うものであり、制御部20からは加圧ポンプ13へ加圧及び停止指示信号が送出されるように構成されており、制御部20から排気弁14に対してはカフ11内の空気を排気するバルブの閉開に係る指示信号が送出されるように構成されているこの構成により、制御部20はカフ11の圧力を微小ステップで段階的に制御し、各カフ圧力下において心拍に同期した脈波を検出し、それらの脈波に基づいて血圧を算出する。
【0030】
制御部20と圧力センサ12との間には、A/D変換器15が設けられており、圧力センサ12の出力は、A/D変換器15によって必要なサンプリング周期でディジタル化され制御部20へ送られる。制御部20は、A/D変換器15のディジタル出力を得て、カフ11の圧力に対応する信号(ディジタル)として取り込み、この信号中のパルスについてCPUが以下に説明する各手段の処理を行う。
【0031】
すなわち、制御部20には、図1の各手段に対応する、圧力パルス検出手段23、第一判別手段24、第二判別手段25、決定手段26、血圧算出手段27が備えられており、CPUはこれらの各手段の機能を実行する。
【0032】
前記第一判別手段24における前記両パルスの波形形状の比較は、パラメータとして波高値Aまたは立ち上がり時間Tのどちらか一方のみでも良いし、パルスの立ち上がりの傾き(A/T)を考慮しても良い。考慮するパラメータが多いほど両パルスの波形形状の比較を厳密に行うことができる。また、前記差はパラメータによって異ならせても良い。
【0033】
血圧算出手段27は、例えば、特開平6−47009号公報に記載されているように、前記決定手段26により決定された脈波をカフ圧に応じて並べ、波高値に関して、最大値が得られたときに対応するカフ圧を平均血圧、その最大値の1/2の振幅値が得られたときのカフ圧であって平均血圧より高い方のカフ圧を最高血圧、また、最大値の1/2の振幅値が得られたときのカフ圧であって平均血圧より低い方のカフ圧を最低血圧として血圧算出を行う。
【0034】
上記の各手段を実現するCPUが備えられた制御部20には、情報を表示するための表示器16が接続されており、血圧等が制御部20の制御により表示器16に表示されるように構成されている。また、制御部20には、スタートスイッチなどが設けられた操作部17が接続されており、操作部17の情報は制御部20へ取り込まれるように構成されている。
【0035】
以上のように構成された血圧測定装置にあっては、CPUが図6に示すフローチャートに対応する血圧検出プログラムを実行することにより各手段を実現するので、このフローチャートに従って本実施例の血圧測定装置の動作を説明する。操作部17におけるスタートスイッチが操作されると、図示しないカフ圧制御プログラムが起動されて、制御部20は加圧ポンプ13を制御して所定のカフ圧となるまでカフ11へ空気を供給し、所定カフ圧となると加圧ポンプ13を停止すると共に排気弁14を制御して微小ステップで段階的に排気を行う。これと並行して、前記血圧検出プログラムが起動され、図6に示される通り、A/D変換器15の出力を取り込み(S11)、圧力パルス検出を行う(S12)。
【0036】
上記ステップS12において圧力パルスが検出されると、この圧力パルスと同一カフ圧力下においてその直前に検出された圧力パルスとの波形形状を比較し、連続する両圧力パルスの波形形状がほぼ同一であるか否かを判別する(S13)。前記両圧力パルスの波形形状がほぼ同一であるか否かの判別は、図2を用いて説明したとおり、両圧力パルスの波高値Aおよび立ち上がり時間Tを比較することによって行う。
【0037】
ステップS13において、2連続する圧力パルスの波形形状がほぼ同一であると判別されると、ステップS14において、前記2連続する圧力パルスが血圧算出に使用できる脈波として、図1の決定手段6で説明したように、両圧力パルスの平均の波高値を計算してこのときのカフ圧力における脈波の波高値と決定し、次いでステップS15において、このカフ圧力下において血圧算出に使用できる脈波が検出されたことを示す脈波検出済みフラグをセットする。この脈波検出済みフラグに応答して、前記カフ圧制御プログラムは、カフ圧を微小ステップ低下させるように排気弁14を制御すると共に、前記脈波検出済みフラグをリセットする。
【0038】
次いで、ステップS16において、血圧を算出できるか否かを判別する。このステップS16における判別基準は、例えば、脈波の波高値が最大波高値の1/2より小となったとき血圧を算出するようにすることができる。上記ステップS16において、血圧算出の基準に達していなければ、再びステップS11へ戻って処理を続ける。
【0039】
ところで、上記ステップS13において、2連続する圧力パルスの波形形状がほぼ同一であると判別されなかった場合、ステップS17において、連続する3個の圧力パルスが、図3で説明した不整脈の第1の条件に合致するか否かが判別される。このステップS17で不整脈の第1の条件に合致していないと判別されると、ステップS18において、連続する3個の圧力パルスが、図4で説明した不整脈の第2の条件に合致しているか否かを判別する。このステップS18で不整脈の第2の条件に合致していないと判別されると、ステップS11に戻って処理を続ける。
【0040】
一方、上記ステップS17において不整脈の第1条件に合致していると判別されると、ステップS19において、前記連続する3個の圧力パルスが血圧算出に使用できる脈波として、図1の決定手段6で説明したように、3個の圧力パルスの平均の波高値を計算してこのときのカフ圧力における脈波の波高値と決定し、ステップS15に進む。また、ステップS18において、不整脈の第2の条件に合致していると判別されると、ステップS20において、前記連続する3個の圧力パルスが血圧算出に使用できる脈波として、図1の決定手段6で説明したように、3個の圧力パルスの平均の波高値を計算してこのときのカフ圧力における脈波の波高値と決定し、ステップS15に進む。
【0041】
以上のような処理を繰り返し、ステップS16において血圧を算出することができると判別されると、ステップS21において、前記ステップS14、ステップS19およびステップS20で決定された脈波の波高値を用いて血圧を算出し、これを表示器16へ表示する。
【0042】
斯して本実施例に係る血圧測定装置では、従来は血圧算出に使用できる脈波として処理されない不整脈時の圧力パルスが、不整脈に相当する所定の条件に合致した場合に、前記圧力パルスを血圧算出に使用できる脈波として取り込んで血圧算出を行うので、不整脈の場合に血圧測定に要する時間を従来に比べて短縮できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施例に係る血圧測定装置の機能ブロック図。
【図2】本発明の実施例に係る血圧測定装置によって行われる脈波検出の基準を説明する波形図。
【図3】本発明の実施例に係る血圧測定装置によって用いられる不整脈の第1の条件を説明する波形図。
【図4】本発明の実施例に係る血圧測定装置によって用いられる不整脈の第2の条件を説明する波形図。
【図5】本発明の実施例に係る血圧測定装置の構成を示すブロック図。
【図6】本発明の実施例に係る血圧測定装置の動作を説明するためのフローチャート。
【符号の説明】
【0044】
1、10 血圧測定装置
2、11 カフ
3、23 圧力パルス検出手段
4、24 第一判別手段
5、25 第二判別手段
6、26 決定手段
7、27 血圧算出手段
12 圧力センサ
13 加圧ポンプ
14 排気弁
15 A/D変換器
16 表示器
17 操作部
20 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体の所定部位に巻回されたカフの圧力を微少ステップで段階的に変化させ、それぞれの圧力下における心拍に同期した脈波を検出し、該脈波に基づいて血圧値を算出するオシロメトリック式の血圧測定装置であって、
前記カフの圧力から圧力パルスを連続的に検出する圧力パルス検出手段と、
該圧力パルス検出手段により検出された最新の圧力パルス(第1のパルス)と、該第1のパルスと同一のカフ圧力下において第1のパルスの直前に検出された圧力パルス(第2のパルス)との波形形状を比較し、第1のパルスおよび第2のパルスの波形形状がほぼ同一であるか否かを判別する第一判別手段と、
該第一判別手段により第1のパルスおよび第2のパルスの波形形状がほぼ同一であると判別されない場合、第1のパルスおよび第2のパルスと同一のカフ圧力下において、第2のパルスの直前に検出された圧力パルス(第3のパルス)と第2のパルスと第1のパルスとの所定のパラメータを比較して不整脈に相当する所定の条件に合致するか否かを判別する第二判別手段と、
前記第一判別手段により第1のパルスおよび第2のパルスの波形形状がほぼ同一であると判別された場合、第1のパルスおよび第2のパルスを血圧算出に使用する脈波と決定し、前記第二判別手段により第1のパルス、第2のパルスおよび第3のパルスの所定のパラメータが前記所定の条件に合致すると判別された場合、第1のパルス、第2のパルスおよび第3のパルスを血圧算出に使用する脈波として決定する決定手段と、
該決定手段によって決定された血圧算出に使用する脈波に基づいて血圧を算出する血圧算出手段と、
を備えたことを特徴とする血圧測定装置。
【請求項2】
前記所定のパラメータは、第1のパルス、第2のパルスおよび第3のパルスの波高値および隣り合う各パルス間のインターバルであり、前記所定の条件は、第1のパルス、第2のパルス、第3のパルスの波高値をそれぞれA1、A2、A3とし、第1のパルスと第2のパルスとの間のインターバルをT12、第2のパルスと第3のパルスとの間のインターバルをT23とすると、A1>A2かつA2<A3かつT12>T23(第1の条件)、またはA1<A2かつA2>A3かつT12<T23(第2の条件)であることを特徴とする請求項1に記載の血圧測定装置。
【請求項3】
前記所定のパラメータとして、所定基準値から第1のパルス、第2のパルスおよび第3のパルスそれぞれのピーク値までの大きさをさらに含み、前記所定基準値からピーク値までの大きさをそれぞれP1、P2、P3とすると、前記所定の条件は、前記第1の条件に加えてP1>P2かつP2<P3、または前記第2の条件に加えてP1<P2かつP2>P3であることを特徴とする請求項2に記載の血圧測定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−125531(P2009−125531A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−306903(P2007−306903)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【出願人】(000230962)日本光電工業株式会社 (179)
【Fターム(参考)】