説明

血圧測定装置

【課題】空気ポンプ駆動による振動がオシレーション信号にノイズとして重畳し、精度の良い血圧値が得られないという問題を解決した血圧測定装置を提供する。
【解決手段】生体の血圧値を測定する血圧測定装置100であって、生体の一部をカフ1により圧迫するカフ圧の大きさを制御するカフ圧制御部と、カフ圧よりオシレーション信号を検出するオシレーション信号検出部と、オシレーション信号の変化に基づいて生体の血圧値として収縮期血圧値および拡張期血圧値を特定する血圧値特定部と、血圧値が正常値であるか否かを判定する血圧値判定部と、を備え、オシレーション信号検出部は、カフ圧を第一の設定値までの昇圧に伴って変化するオシレーション信号を検出し、血圧値特定部は、検出されたオシレーション信号から収縮期血圧値および拡張期血圧値を特定し、収縮期血圧値と前記拡張期血圧値の両方が正常値であると血圧値判定部が判定した場合は、カフ圧制御部は、カフ圧の昇圧を終了して、直ちにカフ圧を開放する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血圧を非観血的に測定する血圧測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血圧を非観血的に測定する血圧測定装置は、初めに収縮期血圧よりも十分に高いカフ圧(例えば収縮期血圧より40mmHg高いカフ圧)まで昇圧し、そこから降圧させながら、脈動によってカフ圧に生じる圧力振動をオシレーション信号として検出して血圧測定を行う血圧測定装置が一般的である。このような降圧時の血圧測定に比べて測定に要する時間を短縮することを目的として、カフ圧の昇圧時に血圧を測定する血圧測定装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−322811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、カフ圧の昇圧時には、空気ポンプからカフへ空気を吐出してカフを昇圧させているので、空気ポンプの駆動に伴う周期的な振動が、脈動によるカフ内の圧力振動にノイズとして重畳する。したがって、空気ポンプの駆動に伴う振動の周期と脈波における主たる成分である脈動成分の周期とが近い場合には、カフ圧の昇圧時に検出したオシレーション信号から正確な血圧値を測定することが難しかった。
【0005】
さらに、従来の降圧過程での血圧測定においては、収縮期血圧を測定するには、収縮期血圧より十分に高い圧でカフを加圧する必要があり、被測定者(患者等)に負担となる場合があった。よって、低負荷で迅速かつ正確な血圧測定が望まれていた。
【0006】
本発明の目的は上記課題を解消することに係り、空気ポンプ駆動による振動がオシレーション信号にノイズとして重畳し、精度の良い血圧値が得られないという問題を解決した血圧測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る血圧測定装置は、生体の血圧値を測定する血圧測定装置であって、
前記生体の一部をカフにより圧迫するカフ圧の大きさを制御するカフ圧制御部と、
前記カフ圧よりオシレーション信号を検出するオシレーション信号検出部と、
前記オシレーション信号の変化に基づいて前記生体の血圧値として収縮期血圧値および拡張期血圧値を特定する血圧値特定部と、
前記血圧値が正常値であるか否かを判定する血圧値判定部と、
を備え、
前記オシレーション信号検出部は、前記カフ圧を第一の設定値までの昇圧に伴って変化するオシレーション信号を検出し、
前記血圧値特定部は、検出された前記オシレーション信号から収縮期血圧値および拡張期血圧値を特定し、
前記収縮期血圧値と前記拡張期血圧値の両方が正常値であると前記血圧値判定部が判定した場合は、前記カフ圧制御部は、前記カフ圧の昇圧を終了して、直ちに前記カフ圧を開放することを特徴とする。

【0008】
また、上記血圧測定装置は、好ましくは、前記カフ圧制御部により制御され、前記カフに空気を吐出して前記カフ圧を昇圧させる空気ポンプを更に備え、前記カフ圧制御部は、前記空気ポンプを制御して、前記脈波の主たる周期と異なる周期で前記カフに空気を吐出させる。
【0009】
また、上記血圧測定装置は、好ましくは、前記カフ圧制御部は、前記空気ポンプが空気を吐出する周期が、脈波の主たる成分の周期の少なくとも5分の1以下の周期となるように前記空気ポンプを制御する。
【0010】
また、上記血圧測定装置は、好ましくは、前記空気ポンプは、吐出する空気の流量が0.1L/分〜3L/分である。
【0011】
また、上記血圧測定装置は、好ましくは、前記カフ圧制御部は、前記カフ圧を略直線状に昇圧させる。
【0012】
また、上記血圧測定装置は、好ましくは、前記血圧値が正常値でないと前記血圧値判定部が判定した場合は、前記カフ圧制御部は、前記カフ圧を第二の設定値まで昇圧した後、降圧させ、前記血圧値特定部は、前記カフ圧を第二の設定値からの降圧時に前記オシレーション信号検出部により検出された前記オシレーション信号の変化に基づいて前記血圧値を特定する。
【0013】
また、上記血圧測定装置は、好ましくは、前記カフ圧制御部は、前記カフ圧をステップ状に降圧させる。あるいは、上記血圧測定装置は、好ましくは、前記カフ圧制御部は、前記カフ圧を略直線状に降圧させる。
【0014】
また、上記血圧測定装置は、好ましくは、前記第一の設定値は、前記第二の設定値より低い値であり、前記第一の設定値は、生体の収縮期血圧値より高い値であり、前記第二の設定値は、生体の収縮期血圧値に少なくとも30mmHg〜50mmHgを追加した値よりも高い値である。
【0015】
また、上記血圧測定装置は、好ましくは、カフ圧を昇圧する際にカフのサイズを特定するカフサイズ特定部をさらに備え、前記カフ圧制御部は、前記カフサイズ特定部により特定されたカフのサイズに基づき、カフの昇圧を制御する。
【0016】
また、上記血圧測定装置は、好ましくは、前記カフ圧制御部は、前記カフ圧を5mmHg/sec.〜20mmHg/sec.の範囲で昇圧又は降圧可能である。
【0017】
本発明に係る血圧測定装置によれば、昇圧過程での収縮期血圧値と拡張期血圧値の両方の測定値が正常であれば急速に降圧するため、精度の良い血圧測定を迅速かつ被測定者(患者等)に低負荷な血圧測定を実現できる。
また、空気ポンプの空気を吐出する周期が脈波の周期と異なるので、空気ポンプの動作による吐出雑音は明らかなノイズとしてオシレーション信号に重畳するため、この吐出雑音を明確に区別し除去できるので精度の良い血圧測定が可能である。
また、空気ポンプが短い周期(少なくとも脈波の主たる成分の周期の5分の1以下の周期)で空気を吐出するので、略直線的にカフを加圧することが可能となり、昇圧過程において迅速な血圧測定を実現する。
また、空気ポンプの吐出する空気の流量を低流量(0.1L/分程度)から高流量(3L/分程度)まで、連続的に変化させることができるので、加圧が階段状(ステップ状)にならず、昇圧過程において迅速な血圧測定を実現する。
また、略直線状に昇圧するので、昇圧過程において迅速な血圧測定を実現する。
また、昇圧での血圧測定が異常の場合(測定値が正常値でない場合)、そのまま第二の設定値までカフを加圧し、通常の減圧測定ができるので、迅速な血圧測定を実現する。特に昇圧過程で迅速な血圧測定を実現し、降圧過程で正確な血圧測定を実現するため、一回のカフの加減圧で確実に血圧測定を実施できるため、血圧の再測定の回数を減らすことを可能とする。
また、ステップ状に降圧するので、被測定者(患者等)が不整脈であったり体動が混入した場合でも、確実にオシレーション信号を検出でき、結果的に迅速かつ正確な血圧測定を実現する。あるいは、略直線状に降圧するので、降圧過程において迅速な血圧測定を実現する。
また、昇圧過程での第一の設定値は従来の設定値(第二の設定値)に比べて低いので、昇圧過程での血圧測定が正常であれば、迅速かつ、低負荷の血圧測定を実現する。
また、カフのサイズに応じた昇圧が可能となり、昇圧過程で精度良く血圧測定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態係る血圧測定装置100の概略を示す機能ブロック図である。
【図2】血圧測定装置100の動作を説明するためのフローチャート(その1)である。
【図3】血圧測定装置100の動作を説明するためのフローチャート(その2)である。
【図4】血圧測定装置100の昇圧時の血圧測定においてオシレーション信号とカフ圧の波形を示す図である。
【図5】血圧測定装置100の降圧時の血圧測定においてオシレーション信号とカフ圧の波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る血圧測定装置100について詳細に説明する。図1は、血圧測定装置100の概略を示す機能ブロック図である。血圧測定装置100は、図1に示すように、カフ1、圧力センサ2、空気ポンプ3、電磁弁4、直流増幅部6、A/D変換部7,9、交流増幅部8、BPF(バンドパスフィルタ)10、ポンプ制御部11、電磁弁駆動部12、制御部13、キーパネル14、および液晶ディスプレイ(LCD)15を備える。
【0020】
なお、血圧測定装置100におけるポンプ制御部11、空気ポンプ3、電磁弁駆動部12、電磁弁4、および制御部13は、本願発明におけるカフ圧制御部として機能し、生体の一部をカフにより圧迫するカフ圧を制御する。
【0021】
また、圧力センサ2、直流増幅部6、A/D変換部7,9、交流増幅部8、BPF(バンドパスフィルタ)10、および制御部13は、本願発明におけるオシレーション信号検出部として機能し、カフ圧よりオシレーション信号を検出する。
【0022】
また、制御部13は、本願発明における血圧値特定部および血圧値判定部としても機能し、検出されるオシレーション信号の変化に基づいて生体の血圧値として収縮期血圧値および拡張期血圧値を特定するとともに、血圧値が正常であるか否かを判定する。また、制御部13は、本願発明におけるカフサイズ特定部としても機能し、カフ圧を昇圧する際にカフのサイズを特定する。
【0023】
カフ1は、被測定者の指または上腕部または下肢等に巻き付けられ、オシレーション信号の主たる周期(通常5Hz以下)と空気の吐出雑音の周期(少なくとも30Hz以上)が異なる空気ポンプ3から吐出された空気が送り込まれ昇圧される。ポンプ制御部11は、CPU(セントラル・プロセッシング・ユニット)13bからI/Oポート(入出力ポート)13aを介して与えられる制御信号C1に応じて空気ポンプ3に供給する駆動電力および空気を吐出する周期を制御する。
【0024】
空気ポンプ3は、例えば、複数のシリンダー(例えば、2気筒または3気筒または4気筒のシリンダー)を備えたローリングポンプ等の低流量の空気ポンプであり、カフ1の加圧時には空気ポンプ3を高速駆動する。より具体的には、空気ポンプ3は、空気を吐出する動作に伴う振動の周期が、脈波(脈動の時間波形)の主たる成分の周期よりも極めて短い周期(例えば5分の1以下の周期)で駆動する。このように、低流量(0.1L/分程度)の空気ポンプを脈波の周期よりも大幅に短い周期で駆動(高速駆動)することにより、脈波を測定するときに、後述のように、空気ポンプ3から吐出される空気圧の振動成分を容易にキャンセルすることができる。
なお、空気ポンプ3は、上記のように、ポンプ制御部11による制御により、駆動電力および空気を吐出する周期を変化させることにより、吐出する空気の流量を低流量(0.1L/分程度)から高流量(3L/分程度)まで連続的に変化させることができる空気ポンプを用いても良い。
【0025】
電磁弁駆動部12は、I/Oポート13aを介してCPU13bから制御信号C2が与えられ、当該制御信号C2の内容に応じて電磁弁4を駆動してカフ1内の空気を排気する。
【0026】
圧力センサ2は、カフ1内の空気圧、すなわちカフ圧を検出する。圧力センサ2からの出力信号は、直流増幅部6でその直流成分(脈波等による周期的な変動に依らない成分)が増幅された後、A/D変換部(アナログ・ディジタル変換回路)7でディジタル信号に変換される。そして、A/D変換部7で変換されたディジタル信号は、直流成分が強調された圧力信号DとしてI/Oポート13aを介してCPU13bに送られる。
【0027】
また、直流増幅部6の出力信号は、交流増幅部8でその交流成分(脈波成分を主たる成分とする周期変動成分)が増幅され、BPF10で脈波成分以外の成分がフィルタリングされる。ここで、上記のように、空気ポンプ3の駆動周期が、脈波の主たる成分の周期よりも極めて短い周期であるので、脈波成分と空気ポンプ3から吐出される空気圧の振動成分とを容易に分離することができる。
【0028】
A/D変換部9は、BPF10でフィルタリングされた信号をディジタル信号に変換する。そして、A/D変換部9で変換されたディジタル信号は、脈波の主たる成分を含む圧力信号MとしてI/Oポート13aを介してCPU13bに取り込まれる。
【0029】
キーパネル14は、例えば、測定スタートを指示したり各種の操作を行なうための操作キーが配されたコントローラーであり、I/Oポート13aに接続されている。また、I/Oポート13aには、測定結果の血圧値等を画面表示する液晶ディスプレイ(LCD)15も接続されている。なお、測定結果の血圧値等を画面表示できる表示手段は、本例の液晶ディスプレイ(LCD)15に替えて、例えば、LED、有機ELディスプレイ等でもよい。
【0030】
制御部13は、CPU13b、I/Oポート13a、RAM13c、ROM13dを有し、血圧測定装置100の各部を制御するとともに、各部から入力される様々な入力信号や検出信号を処理するとともに、その結果に基づいて様々な制御信号および測定結果を出力する。
【0031】
I/Oポート13aは、CPU13bの入出力ポートであり、A/D変換部7,9、ポンプ制御部11、および電磁弁駆動部12と接続している。そして、A/D変換部7,9で変換された圧力信号Dおよび圧力信号Mは、I/Oポート13aを介してCPU13bに入力され、CPU13bからの制御信号は、I/Oポート13aを介してポンプ制御部11および電磁弁駆動部12へと送られる。
【0032】
CPU13bに接続されるデータ保持手段となるRAM(ランダム・アクセス・メモリ)13cには、処理過程のデータが逐次記憶される。また、CPU13bに接続されるROM(リード・オンリ・メモリ)13dには、CPU13bの処理プログラムが格納されている。
【0033】
CPU13bは、入力される上記圧力信号Dおよび圧力信号Mに基づいて、オシレーション信号の値を算出する。そして、CPU13bは、例えば、算出されるオシレーション信号波形における所定のタイミング毎にサンプリングして振幅値を算出する。ここで算出される振幅値は昇圧により次第に大きくなり、振幅値が最大値となり、この最大値となった時点を過ぎると振幅値は徐々に小さくなる。
【0034】
CPU13bは、カフ圧の経時的な変化に伴う上記オシレーション振幅値の変化に基づいて、被測定者の血圧値として収縮期血圧値および拡張期血圧値を特定する。そして、CPU13bは、血圧値が正常値であるか否かを判定する。より具体的には、CPU13bは、予め記憶されている判定基準に基づいて、特定した上記血圧値が、被測定者の体動あるいは不整脈等による異常な血圧値であるか否かを判定する。そして、CPU13bは、特定した収縮期血圧値および拡張期血圧値の両方が正常値であると判定した場合は、カフ圧の昇圧を第一の設定値まで昇圧した後に終了させるべく、ポンプ制御部11に対して空気ポンプ3の駆動を停止させる旨の制御信号C1を送る。また、CPU13bは、カフ圧の昇圧終了とともにカフ圧を直ちに開放させるべく、電磁弁駆動部12に対して電磁弁4を全開にしてカフ1内の空気を排気させる旨の制御信号C2を送る。ここで、第一の設定値とは、収縮期血圧の値より高く、通常の降圧測定で用いられる設定値(好ましくは、収縮期血圧より30mmHg〜50mmHg程度:以下、第二の設定値とする)よりも低い値である。
【0035】
なお、第一の設定値とは、固定の値であっても良いし、昇圧測定中に得られたオシレーション振幅値の変化に基づき適宜可変な値であっても良い。
【0036】
一方、CPU13bは、特定した収縮期血圧値および拡張期血圧値の両方が正常値でないと判定した場合は、カフ圧をさらに予め設定された加圧目標値(第二の設定値)まで加圧するべく、ポンプ制御部11に対して、カフ圧が上記加圧目標値に達するまで空気ポンプ3を駆動させる旨の制御信号C1を送る。そして、CPU13bは、カフ圧が上記加圧目標値に達したことに応じて、電磁弁駆動部12に対して電磁弁4を間欠で開いてカフ圧をステップ状に降圧させる旨の制御信号C2を送る。そして、CPU13bは、カフ圧の降圧時に上記と同様の方法でオシレーション信号の値を算出し、その値の変化に基づいて被測定者の収縮期血圧値および拡張期血圧値を特定する。ここで、ステップ状に降圧して行う血圧測定は、直線状に降下して行う血圧測定に比べ、計測に要する時間は長いものの、オシレーション信号を確実に測定できるため、正確な血圧測定が可能となる。
【0037】
次に、本発明の実施形態に係る血圧測定装置による動作について、図2および図3を参照して詳細に説明する。図2は、血圧測定装置100の動作を説明するためのフローチャート(その1)である。図3は、血圧測定装置100の動作を説明するためのフローチャート(その2)である。
【0038】
まず、被測定者の指または上腕部にカフ1を巻き付けたあと、キーパネル14から測定スタートのボタンを押すと、CPU13bは、空気ポンプ3の駆動電力を所定の値(例えば、空気ポンプに対する駆動電力のDUTY100%とする)に設定してポンプ制御部11に制御信号C1を送信し、ポンプ制御部11は空気ポンプ3を一定の駆動電力で駆動してカフ圧を昇圧させる(ステップS1)。なお、空気ポンプに対する駆動電力のDUTYとは、空気ポンプ3に一定間隔の電圧パルスを与えて駆動した場合に、パルス間隔とパルス幅の割合を示すものである。
【0039】
続くステップS2では、CPU13bは、圧力信号Dによるカフ圧を最低血圧よりも低い第1のカフ圧P1(例えば、15mmHg)より大きいか否かを判断し、ステップS2の判断がYESとなるまでカフ圧を昇圧させるようにポンプ制御部11を介して空気ポンプ3を制御する。
【0040】
ステップS2の判断がYESとなった場合、CPU13bは計時を開始し、続いて、CPU13bは、最低血圧よりも低い第2のカフ圧P2(例えば、20mmHg)より大きいか否かを判断する(ステップS3)。
なお、上記の第1のカフ圧P1は15mmHg〜45mmHgの範囲の値、第2のカフ圧P2は20mmHg〜50mmHgの範囲の値、且つ、P1<P2の関係を満たせば良い。
ステップS3の判断がYESとなった場合、CPU13bは、計時を終了し、計時された時間(P1からP2まで昇圧するのにかかった時間)と空気ポンプ3の単位時間当たりの空気吐出量から、カフ容量値を計算し、得られたカフ容量値は、RAM13cに保存する(ステップS4:カフ容量測定)。
すなわち、以上の手順でカフ容量値を測定することにより、制御部13は、カフ圧を昇圧する際にカフのサイズを特定するカフサイズ特定部として機能する。
【0041】
次に、CPU13bは、ステップS4のカフ容量測定で得られたカフ容量値(RAM13cに保存されたカフ容量値)に応じて、続く昇圧におけるポンプ駆動電力のDUTYとポンプ吐出周期(空気を吐出する周期)を計算し、算出されたポンプ駆動電力のDUTYとポンプ吐出周期により空気ポンプ3を駆動させるように、ポンプ制御信号C1を変更する(ステップS5)。
これに応じて、ポンプ制御部11は、変更したポンプ駆動電力のDUTYとポンプ吐出周期によって空気ポンプ3を駆動し、カフ圧を第一の設定値まで昇圧させる(ステップS6)。
すなわち、カフ圧制御部は、以上の手順で測定されたカフ容量値(特定されたカフのサイズ)に基づき、カフの昇圧を制御する。
このように、カフ容量値、すなわちカフ1の容量の大小に応じて、昇圧時の空気ポンプ3の駆動能力(より具体的には、直線状にカフ圧を昇圧する際の直線の傾き)を変えることができるので、異なるサイズのカフに対応することができる。
【0042】
上記ステップS6では、空気ポンプ3の駆動によりカフ圧が昇圧され、圧力センサ2にて検出された圧力信号Dに基づくカフ圧Dは、図4に示すように上昇する。図4は、血圧測定装置100の昇圧時の血圧測定においてオシレーション信号とカフ圧の波形を示す図である。このときの昇圧速度は、例えば5mmHg/sec.〜20mmHg/sec.の範囲の一定の速度を目標とする。また、検出されたオシレーション信号は、図4に示すように、昇圧するにしたがって、その振幅が急激に大きくなる変化点Tにおいて拡張期血圧(最低血圧)となり、さらに振幅が大きくなり振幅が最大となった後、振幅が徐々に小さくなり、急激に小さくなる変化点Tにおいて収縮期血圧(最高血圧)となる。
【0043】
CPU13bは、昇圧中にオシレーション信号のサンプリングを行って振幅値を求め、上述のように、振幅の急激な変化点を見つけて、拡張期血圧(最低血圧)および収縮期血圧(最高血圧)を特定する(ステップS7)。そして、CPU13bは、拡張期血圧(最低血圧)と収縮期血圧(最高血圧)が両方共に特定できたか否かを判断する(ステップS8)。なお、収縮期血圧(最高血圧)は、オシレーション信号の最大振幅から所定の割合だけ小さい振幅(例えば、最大振幅の半分の振幅)となった時点を収縮期血圧(最高血圧)としてもよい。
【0044】
なお、収縮期血圧と拡張期血圧の特定は、上記手法に限らず、当業者が知りうる既知の手法が採用されてもよい。例えば、オシレーション信号の最大振幅の50%時のカフ圧をそれぞれ収縮期血圧と拡張期血圧として特定してもよい。
【0045】
ステップS8の判断がYESとなった場合は、CPU13bは、電磁弁駆動部12に制御信号C2を送信して電磁弁4を全開にして、第一の設定値まで達したカフ圧Dを急速に降圧させる(ステップS9)。そして、CPU13bは、特定された各血圧値をRAM13cに保存するかLCD15にその値を表示する、もしくはその両方を実行し(ステップS10)、血圧値測定を終了する。
【0046】
一方、ステップS8の判断がNOの場合、CPU13bは、カフ圧が第二の設定値以上か否かを判断する(ステップS11)。ステップS8の判断がYESとなるか、若しくは、ステップS11の判断がYESとなる(カフ圧が第二の設定値に達する)まで昇圧を続ける。ステップS11の判断がYESとなった場合は、図5に示すような降圧測定を行う。図5は、血圧測定装置100の降圧時の血圧測定においてオシレーション信号とカフ圧の波形を示す図である。この降圧測定では、CPU13bは、電磁弁駆動部12に制御信号C2を送信し、電磁弁4の開閉を制御して、カフ圧をステップ状に降圧させる(ステップS12)。これにより、図5に示すように、圧力信号Dに基づくカフ圧Dは、ステップ状に下降する。
【0047】
また、図5に示すように、検出されたオシレーション信号は、カフ圧Dが降圧するにしたがって、その振幅が急激に大きくなる変化点Tにおいて収縮期血圧(最高血圧)となり、さらに振幅が大きくなり振幅が最大となった後、振幅が徐々に小さくなり、急激に小さくなる変化点Tにおいて拡張期血圧(最低血圧)となる。
【0048】
CPU13bは、カフ圧の降圧中にオシレーション信号のサンプリングを行って振幅値を求め、上述のように、振幅の急激な変化点を見つけて、収縮期血圧(最高血圧)および拡張期血圧(最低血圧)を特定する(ステップS13)。そして、CPU13bは、拡張期血圧(最低血圧)と収縮期血圧(最高血圧)が両方共に特定できたか否かを判断する(ステップS14)。
【0049】
なお、前述同様に、収縮期血圧と拡張期血圧の特定は、上記手法に限らず、当業者が知りうる既知の手法が採用されてもよい。例えば、オシレーション信号の最大振幅の50%時のカフ圧をそれぞれ収縮期血圧と拡張期血圧として特定してもよい。
【0050】
ステップS14の判断がYESとなった場合は、CPU13bは、電磁弁駆動部12に制御信号C2を送信し電磁弁4を全開にして、カフ圧Dを急速に降圧させる(ステップS15)。そして、CPU13bは、測定された各血圧値をRAM13cに保存するかLCD15にその値を表示する、もしくはその両方を実行し(ステップS16)、血圧値測定を終了する。
【0051】
また、本実施例では、減圧過程での血圧測定はステップ状に降圧して行ったが、昇圧過程の血圧測定と同様に直線状に降圧して血圧測定を行ってもよい。この場合、ステップ状に降圧して行った血圧測定に比べ、被測定者が不整脈であったり体動が混入した場合では、精度は落ちるものの、迅速な血圧測定が可能となる場合もある。
【0052】
一方、ステップS14の判断がNOの場合、CPU13bは、カフ圧Dが所定の値以下になったか否かを判断し(ステップS17)、ステップS14の判断がYESとなるか、若しくは、ステップS17の判断がYESとなるまでステップ降圧を続ける。
ステップS17の判断がYESとなった場合は、CPU13bは、電磁弁駆動部12に制御信号C2を送信し電磁弁4を全開にして、カフ圧Dを急速に降圧させる(ステップS18)。そして、血圧測定が不能であったとの内容の表示をLCD15に表示する(ステップS19)。
【0053】
以上、説明したように、本実施形態の血圧測定装置によれば、カフ圧の昇圧時に、空気ポンプの駆動に伴う振動が脈動によるカフ内の圧力振動にノイズとして重畳した場合でも、空気ポンプの駆動に伴う振動の周期が脈波の主たる成分の周期(脈動周期)と大きく異なるので、カフ圧の昇圧時に検出したオシレーション信号から正確な血圧値を測定することができる。また、測定した血圧値が正常値である場合には、カフ圧の昇圧を終了して直ちにカフ圧を開放するので、測定時間も短くて済むので、測定に伴う被測定者(患者等)の負担が軽くなる。
また、測定中に被測定者(患者等)の体動、不整脈等などによって、昇圧時に正常な血圧値が測定できなかった場合においても、続けて、体動、不整脈等に強いカフ圧をステップ状に降圧させる降圧測定によって血圧値を測定することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 カフ
2 圧力センサ
3 空気ポンプ
4 電磁弁
6 直流増幅部
7 A/D変換部
8 交流増幅部
9 A/D変換部
11 ポンプ制御部
12 電磁弁駆動部
13 制御部
13a I/Oポート
13b CPU
13c RAM
13d ROM
14 キーパネル
15 液晶ディスプレイ(LCD)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体の血圧値を測定する血圧測定装置であって、
前記生体の一部をカフにより圧迫するカフ圧の大きさを制御するカフ圧制御部と、
前記カフ圧よりオシレーション信号を検出するオシレーション信号検出部と、
前記オシレーション信号の変化に基づいて前記生体の血圧値として収縮期血圧値および拡張期血圧値を特定する血圧値特定部と、
前記血圧値が正常値であるか否かを判定する血圧値判定部と、
を備え、
前記オシレーション信号検出部は、前記カフ圧を第一の設定値までの昇圧に伴って変化するオシレーション信号を検出し、
前記血圧値特定部は、検出された前記オシレーション信号から収縮期血圧値および拡張期血圧値を特定し、
前記収縮期血圧値と前記拡張期血圧値の両方が正常値であると前記血圧値判定部が判定した場合は、前記カフ圧制御部は、前記カフ圧の昇圧を終了して、直ちに前記カフ圧を開放することを特徴とする血圧測定装置。
【請求項2】
前記カフ圧制御部により制御され、前記カフに空気を吐出して前記カフ圧を昇圧させる空気ポンプを更に備え、
前記カフ圧制御部は、前記空気ポンプを制御して、前記脈波の主たる周期と異なる周期で前記カフに空気を吐出させることを特徴とする請求項1に記載の血圧測定装置。
【請求項3】
前記カフ圧制御部は、前記空気ポンプが空気を吐出する周期が、脈波の主たる成分の周期の少なくとも5分の1以下の周期となるように前記空気ポンプを制御することを特徴とする請求項2に記載の血圧測定装置。
【請求項4】
前記空気ポンプは、吐出する空気の流量が0.1L/分〜3.0L/分であることを特徴とする請求項2または3に記載の血圧測定装置。
【請求項5】
前記カフ圧制御部は、前記カフ圧を略直線状に昇圧させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の血圧測定装置。
【請求項6】
前記血圧値が正常値でないと前記血圧値判定部が判定した場合は、前記カフ圧制御部は、前記カフ圧を第二の設定値まで昇圧した後、降圧させ、
前記血圧値特定部は、前記カフ圧を第二の設定値からの降圧時に前記オシレーション信号検出部により検出された前記オシレーション信号の変化に基づいて前記血圧値を特定することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の血圧測定装置。
【請求項7】
前記カフ圧制御部は、前記カフ圧をステップ状に降圧させることを特徴とする請求項6に記載の血圧測定装置。
【請求項8】
前記カフ圧制御部は、前記カフ圧を略直線状に降圧させることを特徴とする請求項6に記載の血圧測定装置。
【請求項9】
前記第一の設定値は、前記第二の設定値より低い値であり、
前記第一の設定値は、生体の収縮期血圧値より高い値であり、
前記第二の設定値は、生体の収縮期血圧値に少なくとも30mmHg〜50mmHgを追加した値よりも高い値であることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の血圧測定装置。
【請求項10】
カフ圧を昇圧する際にカフのサイズを特定するカフサイズ特定部を更に備え、
前記カフ圧制御部は、前記カフサイズ特定部により特定されたカフのサイズに基づき、カフの昇圧を制御することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の血圧測定装置。
【請求項11】
前記カフ圧制御部は、前記カフ圧を5mmHg/sec.〜20mmHg/sec.の範囲で昇圧又は降圧可能であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の血圧測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−40088(P2012−40088A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182150(P2010−182150)
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【出願人】(000230962)日本光電工業株式会社 (179)
【Fターム(参考)】