説明

血圧計

【課題】被測定者が血圧測定を行う前に、被測定者をリラックスした状態にして正確に血圧測定を行うことができる血圧計を提供する。
【解決手段】被測定者の上腕に装着される腕帯部2と、腕帯部内を加圧する加圧手段110と、制御部120と、腕帯部2内の圧力を検出する圧力センサ140と、腕帯部2内の圧力を減圧する減圧手段111,112とを備え、圧力センサ140からの圧力信号を受けて制御部120により加圧手段と減圧手段を制御して血圧を測定する血圧計1であって、音楽データが記憶されている記憶部153と、制御部120の指示により腕帯部2内を加圧して被測定者の血圧を測定する前に記憶部153から音楽データが読み出されると被測定者に音楽を聞かせる報知部85を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血圧測定前に被測定者(使用者)が音楽を聞くことで、被測定者がリラックスした状態で血圧測定を行うことができる機能を有する血圧計に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療機関で行われている高血圧治療向けの血圧測定において、白衣性高血圧症による擬似高血圧が問題にされている。この擬似高血圧症の原因としては、病院内での医師の前での緊張、不安等の精神面での不安定が考えられている。これに対して、被測定者が精神的に安定している家庭にて測定した血圧値に注目が集まっている。このため、この家庭での血圧測定に用いる電子血圧計が注目されている。
【0003】
このタイプの血圧計で測定上問題となるのが、腕帯部の腕への装着の仕方である。腕帯部内の空気袋の位置が上腕に対して適当でない場合や、上腕に対して巻き付け強さが適当でない場合に、腕帯部の空気袋による上腕の圧迫が正しく行われず、血圧が高く測定される場合がある。近年、これを解決するために、筒状の腕帯部に腕を挿入するだけで、自動的に腕帯部の阻血用の空気袋を腕の正しい位置に配置し、正しい巻き付け強さにて血圧測定を行うことができるようにした血圧計本体と腕帯部を一体とした電子血圧計が開発されている(特許文献1を参照)。
【0004】
しかし、被測定者が上記血圧計を使用すると、腕を挿入する腕帯部が血圧計本体と一体となっているので、血圧計本体の位置が被測定者の前方に離れていた場合には、被測定者は前かがみ状態での測定となり易い。このため、被測定者の腹部が圧迫されて腹圧が上昇し、その結果血圧が上昇する現象が見られる場合がある。この血圧上昇は、新たな擬似高血圧症の発生として指摘されている。
【0005】
そこで、腕帯部が血圧計本体とは別体に形成されているものが提案されており、腕帯部は剛体のケースを有しており、このケース内に阻血用の空気袋が配置されている。これにより、被測定者が座位にて血圧測定する場合に、血圧計本体から腕帯部を分離できるので、上腕を腕帯部に挿入するだけで測定可能となる利便性を損なわず、血圧計本体の設置場所が被測定者から前方に離れていても、測定者が正しく、背を伸ばした状態にて腹圧の掛からない状態で血圧測定をすることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005―237427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、被測定者が上述した血圧計により血圧測定する際に、被測定者が例えば精神面で緊張した状態であって被測定者の気分がリラックスした状態でないと、測定した血圧測定値が本来のリラックスした状態での血圧測定値に比べて上昇してしまい、正しい血圧測定結果が得られないという問題がある。
そこで、本発明は、被測定者が血圧測定を行う前に、被測定者をリラックスした状態にして正確に血圧測定を行うことができる血圧計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の血圧計は、被測定者の上腕に装着される腕帯部と、前記腕帯部内を加圧する加圧手段と、制御部と、前記腕帯部内の圧力を検出する圧力センサと、前記腕帯部内の圧力を減圧する減圧手段とを備え、前記圧力センサからの圧力信号を受けて前記制御部により前記加圧手段と前記減圧手段を制御して血圧を測定する血圧計であって、音楽データが記憶されている記憶部と、前記制御部の指示により、前記腕帯部内を加圧して前記被測定者の血圧を測定する前に前記記憶部から前記音楽データが読み出されると、前記音楽データに基づいて音楽を再生する報知部とを備えることを特徴とする。
上記構成によれば、被測定者が血圧測定を行う前に、被測定者を精神的にリラックスした状態にして正確に血圧測定を行うことができる。すなわち、制御部の指示により、腕帯部内を加圧して被測定者の血圧を測定する前に、記憶部から音楽データが読み出された音楽データに基づいて、報知部は被測定者に対してリラックス用の音楽を聞かせることができるので、被測定者を精神的にリラックスした状態にして安静な状態を実現して血圧の降圧を図るので、正確な血圧測定が行える。
【0009】
好ましくは、前記記憶部は、前記被測定者の血圧を測定する前に、前記被測定者に対して深呼吸を示唆するための深呼吸示唆メッセージを記憶しており、前記制御部の指示により、前記報知部は、前記被測定者の血圧を測定する前に、前記深呼吸示唆メッセージを前記被測定者に報知した後に前記被測定者に音楽を再生して聞かせる構成としたことを特徴とする。
上記構成によれば、被測定者に対して、深呼吸をすることを促すことができ、被測定者はこの深呼吸示唆メッセージに従って任意の回数深呼吸動作をすることで、被測定者は精神的にリラックス状態に進むことができる。被測定者による深呼吸することを促すことと、被測定者を精神的にリラックスした状態にするために被測定者が深呼吸し易い楽曲を被測定者に聞かせることにより、被測定者は血圧測定を行う前に、リラックス状態に移行して安静の実現を図り、血圧の降圧を実現して、自律神経安定化の実現を図ることができる。
【0010】
好ましくは、前記報知部は、前記制御部の指示により、前記被測定者が血圧を測定中にも、前記音楽データに基づいて音楽を再生する構成としたことを特徴とする。
上記構成によれば、血圧を測定中においても、被測定者は音楽を聞きながらリラックス状態を維持することができるので、安静の実現を図り、血圧の降圧を実現して、自律神経安定化の実現を図り、正確な血圧測定が行える。
好ましくは、前記被測定者に前記音楽を再生した後に前記被測定者の血圧測定を行うリラックスモードと、前記音楽の再生は行わずに前記被測定者の血圧測定を直接行う通常測定モードのいずれかを選択する機能選択部を有することを特徴とする。
上記構成によれば、被測定者は、リラックスを必要とする場合にはリラックスモードを用い、そうでない場合には通常測定モードを選択して血圧測定ができる。
【0011】
好ましくは、前記腕帯部は、血圧計本体とは別体になっており、前記腕帯部は、前記上腕に装着された時に前記上腕を阻血する阻血用空気袋と、前記上腕に装着された時に対向位置になるように配置されたコロトコフ音検出用のコロトコフ音検出用空気袋とを収納し、前記阻血用空気袋とコロトコフ音検出用空気袋は、前記血圧計本体内に配置された前記加圧手段と前記減圧手段に対して接続されていることを特徴とする。
上記構成によれば、腕帯部と血圧計本体が別体であることから、上腕を腕帯部に挿入するだけで測定可能となる利便性を損なわず、血圧計本体の設置場所が被測定者から前方に離れていても、測定者が正しく、背を伸ばした状態にて腹圧の掛からない状態で血圧測定できる。
【0012】
好ましくは、前記報知部はスピーカであり、前記スピーカと、測定された前記血圧値を表示する表示部とは、前記血圧計本体に配置されていることを特徴とする。
上記構成によれば、スピーカと表示部がともに血圧計本体に配置されていることから、被測定者は音楽を血圧計本体側のスピーカから聞きながらリラックスした状態で正確に血圧測定を行うことができ、得られた血圧測定結果は血圧計本体側の表示部を目視するだけで容易に確認できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、被測定者が血圧測定を行う前に、被測定者をリラックスした状態にして正確に血圧測定を行うことができる血圧計を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の血圧計の実施形態の全体を示す斜視図である。
【図2】図2(A)は、図1に示す血圧計の血圧計本体を左後ろ側から見た斜視図である。図2(B)は、図1に示す血圧計の血圧計本体を右後ろ側から見た斜視図である。
【図3】図3(A)は、腕帯部の内部構造例を示す断面図であり、図3(B)は、腕帯部を折り畳んだ状態を示す正面図であり、図3(C)は、腕帯部を折り畳んだ状態を示す斜視図である。
【図4】折り畳まれた腕帯部が筐体部の背面側に保持部を用いて着脱可能に収納される様子を示す側面図である。
【図5】本発明の血圧計の実施形態の電気的な構成例を示すブロック図である。
【図6】血圧計の血圧測定動作例を示す図である。
【図7】本発明の血圧計の実施形態の使用動作例を示すフロー図である。
【図8】本発明の別の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
図1は、本発明の血圧計の実施形態の全体を示す斜視図である。図2(A)は、図1に示す血圧計の血圧計本体を左後ろ側から見た斜視図である。図2(B)は、図1に示す血圧計の血圧計本体を右後ろ側から見た斜視図である。
【0016】
図1と図2に示す血圧計1は、血圧計の好ましい一例を示しており、電子血圧計とも言う。この血圧計1では、腕帯部2と血圧計本体10は別体になっており、図1と図2に示す血圧計本体10から図1に示す腕帯部2を分離して使用する。これにより、この血圧計1は、腕帯部と本体部が一体となった一体型血圧計と違い、被測定者が座位にて測定する時に、血圧計本体10の設置場所が被測定者から前方に離れていても、腕帯部2を上腕Tに装着することで、背を伸ばして腹圧の掛からない状態で血圧測定が可能である。
【0017】
図1に示す腕帯部2はカフともいい、腕帯部2は一定(所定)の外周長さを有しており、折り畳み可能で柔らかな材質で作られた切れ目の無いソフトな筒体であり、2つの開口部11P、11Rを有している。
図1に示すように、被測定者の上腕Tに腕帯部2を装着すると、開口部11Pは手指側に位置され、反対側の開口部11Rは肩側に位置される。開口部11Rの内径は、開口部11Pの内径よりも大きい。これにより、被測定者の手指は、開口部11R側から開口部11Pにかけて容易に挿入することができ、腕帯部2は、被測定者の肘よりも上の上腕Tに保持して血圧を測定するようになっている。
【0018】
図1に示すように、腕帯部2は、上腕Tを阻血するための阻血用空気袋14と、K音(コロトコフ音)信号を検出するための2つのK音検出用空気袋50を内蔵している。
この阻血用空気袋14は、血圧計本体10側からエアを供給することにより上腕Tの動脈を加圧して阻血する。阻血用空気袋14の空気収容容量は、K音検出用空気袋50の空気収容容量に比べて大きい。図1に示すように、2つのK音検出用空気袋50は、腕帯部2が上腕Tに装着された状態では、上腕Tを挟むようにして対向位置になるように配置されている。これらのK音検出用空気袋50はK音を検出するための空気袋であり、K音は、腕帯部2の阻血用空気袋14の内圧を最高血圧以上に上げて血管を一旦圧閉した後、内圧を徐々に下げて内圧が最高血圧以下になり、血管が開き始めると発生し、内圧が最低血圧以下になり、血管の圧閉が消失するまでの間検出できる音信号である。
【0019】
図1に示すように、腕帯部2と血圧計本体10とは、エアチューブ4,5とエアプラグ6を介して接続されている。エアチューブ4,5は、好ましくは複胴管(複導管ともいう)を構成しているフレキシブルなエラストマチューブである。エアチューブ4,5は、全長に渡って(あるいはほぼ全長に渡って)一体的に形成されている。第1エアチューブとしてのエアチューブ4は、腕帯部2の阻血用空気袋14へのエアの給排気に用いられ、第2エアチューブとしてのエアチューブ5は、K音信号を検出する2つのK音検出用空気袋50へのエアの給排気に用いられる。エアチューブ4はエアチューブ5に比べてより太いチューブであり、エアチューブ4の内径と外径は、エアチューブ5の内径と外径に比べて大きく設定されている。これにより、エアチューブ4は空気容量の大きい阻血用空気袋14に対するエアの給排気を迅速に行える。
【0020】
図1と図3を参照して、腕帯部2の構造例を説明する。
図3(A)は、腕帯部2の内部構造例を示す断面図であり、図3(B)は、腕帯部2を折り畳んだ状態を示す正面図であり、図3(C)は、腕帯部2を折り畳んだ状態を示す斜視図である。
図1と図3に示すように、腕帯部2は、外周方向に沿っては切れ目のない筒状の部材であり、所定(一定)の長さの外周を有していて、この腕帯部2の中に被測定者の上腕Tを通すことができるようになっている。図3(B)と図3(C)に示すように、腕帯部2は被測定者が簡単に折り畳むことができる柔軟性を有し、図1と図3(A)に示すように、例えば外布16と、内布17と、上腕Tを阻血するための阻血用空気袋14と、K音信号を検出する2つのK音検出用空気袋50を有している。
【0021】
図3(A)に示すように、外布16の内側面と内布17の外側面は、阻血用空気袋14と2つのK音検出用空気袋50を包んでおり、外布16と内布17は、阻血用空気袋14と2つのK音検出用空気袋50が収納可能なド−ナツ状の空間を作るために、外布16の端部と内布17の両端部は、例えば縫製により接合している。なお、図3(A)に例示するように、2つのK音検出用空気袋50は、好ましくは腕帯部2の長手方向(軸方向)の中間位置よりも開口部11P側寄りの位置(肩側寄りではなく、手指より側の位置)に配置するのが良い。このようにすることで、2つのK音検出用空気袋50のいずれかを上腕Tの動脈に対応する部分に当てることができる。これにより、簡単な構成でありながら、上腕Tを確実に加圧して動脈を阻血して、そしてK音検出用空気袋50によりK音を検出できる。
【0022】
図3(A)に示す外布16は、阻血用空気袋14の外面を覆う筒体でなり、円周方向及び長手方向に非伸縮性の材料で形成されており、変形可能であるが伸縮性が非常に低いかほとんど無い布部材である。これにより、外布16は、阻血用空気袋14と2つのK音検出用空気袋50内にエアを供給した際に、阻血用空気袋14と2つのK音検出用空気袋50が腕帯部2の半径方向の外側に膨れないようにすることができ、阻血用空気袋14と2つのK音検出用空気袋50は半径方向の内側である上腕T側に膨れることになる。このため、阻血用空気袋14と2つのK音検出用空気袋50の圧力は、腕帯部2の外側へは逃げずに上腕に対して加圧でき、正確な血圧測定をすることができる。
【0023】
図3(A)に示す外布16は、例えば伸びにくい生地(201BE)を採用でき、引張強度は、JIS L1096−A法で測定した値として、タテが1430N/in〜1460N/inで、ヨコが810N/in〜850N/inである。さらには、タテが1430N/in〜1460N/inで、ヨコが810N/in〜850N/inであることが好ましい。タテとヨコともに、この数値範囲よりも小さいと阻血用空気袋14の外側への膨らみの抑制が弱くなり、また、この数値範囲よりも大きいと上腕Tの挿入に影響が出る可能性がある。外布16としては、例えば、ポリエステル100%の生地を用いると、タテが1445N/inで、ヨコが827N/inである。
【0024】
一方、図3(A)に示す内布17は、阻血用空気袋14と2つのK音検出用空気袋50の内面を覆う筒体でなり、変形可能で伸縮性を有し、上腕Tの被測定面に当接する当接布部である。内布17は、弾性を備えていてしかも伸縮性を有する布部材である例えば伸びやすい生地を採用でき、引張強度は、JIS L1096−A法で測定した値として、タテが94.9N/inで、ヨコが150.7N/inである。引張伸度は、JIS L1096−A法で測定した値として、タテが517%で、ヨコが400%である。内布としては、例えば、ナイロン80%、ポリウレタン20%の生地である。内布17は、阻血用空気袋14と2つのK音検出用空気袋50が上腕Tの被測定面に向けて膨張できるように伸縮性を持たせた素材にて、かつ、腕帯部2を被測定者の手先から挿入して、肘の上部の上腕Tまでスライドさせて装着させる必要があるので、スベリの良い材質、例えば、ジャ−ジ素材を使用している。
【0025】
図1と図3(A)〜図3(C)に示すように、開口閉鎖部材30は、腕帯部2の内部において、開口部11P側であってしかもエアチューブ4とエアチューブ5が導出(接続)されている側に設けられている。この開口閉鎖部材30は、例えば着脱可能な面ファスナーを用いることができ、面ファスナーのオス部材31とメス部材32を有している。オス部材31とメス部材32は、腕帯部2の内側において対面する位置に固定されており、図3(B)と図3(C)に示すように、オス部材31とメス部材32を着脱可能に連結することにより、腕帯部2の開口部11P側だけを閉じて、開口部11Rは開放した状態に維持することができる。
【0026】
これにより、腕帯部2に対して開口閉鎖部材30を設けることで、被測定者が腕帯部2に対して手先を通して血圧測定をしようとする際に、閉じている開口部11P側からは手先を通すことが無く、開いている開口部11R側から迷わずに手先を通すことができる。このため、被測定者が腕帯部2に対して誤って手先を開口部11P側から逆挿入してしまうことを防止することができる。もし、被測定者が腕帯部2に対して開口部11P側から逆挿入してしまうと、K音検出用空気袋50が上腕Tの動脈に適切に当たらなくなり、正確に血圧測定ができなくなる。また、腕帯部2に対して開口閉鎖部材30を設けることで、腕帯部2を使用しない時に折り畳むのが容易にできる。
【0027】
図1と図3に示すように、腕帯部2は、好ましくは方向視認用部材であるタグ33を有している。このタグ33は、開口部11R側であって、外布16に対して例えば接着剤を用いるか、縫製により固定されている。タグ33は、腕帯部2の開口部11R側の端部からV方向に沿って突出して設けられており、例えば布部材あるいはプラスチック部材により作ることができる。図3(A)に示すように、被測定者が例えば腕帯部2に左腕を挿入して血圧測定をする際には、タグ33を右腕の指Fでつかんで腕帯部2をV方向に移動することができる。このタグ33には、好ましくは「肩側」表示33Sを表記することができる。
【0028】
これにより、被測定者は、このタグ33をつかんでV方向に移動するだけで上腕Tに対して腕帯部2の装着動作が容易にできるばかりでなく、腕帯部2の装着方向が明確になるので、開口部11R側から迷わずに手先を通すことができる。このため、被測定者が腕帯部2に対して誤って手先を開口部11P側から逆挿入してしまうことを防止することができる。すなわち、エアチューブ4,5側の開口部11Pだけを閉じることができるので、被測定者が上腕に対して誤って逆方向に装着することを容易に防止でき、被測定者が上腕Tに対して正しい方向に装着することができる。
【0029】
次に、図1と図2を参照して、血圧計本体10の構造例について説明する。
図1と図2に示すように、血圧計本体10は、筐体部60と、表示面部61と、腕帯部2の保持部62を有している。筐体部60と表示面部61と保持部62は、電気絶縁性を有する材料、例えばプラスチックにより作られている。表示面部61は、筐体部60の前面側に設けられ、被測定者が表示部63に表示される表示内容が見やすいように傾斜されており、この表示面部61の傾斜角度θが例えば60度程度に設定されている。
【0030】
図2(A)と図2(B)に示すように、筐体部60は、側面部68,69と、背面66と、破線で示す長方形状の前面側開口部70と、筐体部60から突出して設けられた上面部71と、底部72を有している。
図1に示すように、表示面部61は、表示部63と、透明な例えばアクリル板のような保護板64と、枠状の保持部材65を有している。表示部63は保持部材65により保持され、保護板64は保持部材65に固定されて表示部63の表面を保護している。この保持部材65は、筐体部60の破線で示す前面側開口部70に対して着脱可能に装着されている。この保持部材65を筐体部60から取り外すことにより、筐体部60の破線で示す前面側開口部70を通じて筐体部60の内部を露出させることができる。これにより、筐体部60内に配置されている回路基板等の修理や交換を容易に行うことができる。
【0031】
図2に示すように、腕帯部の保持部62は、筐体部60の背面側に着脱可能に取り付けられている。これにより、保持部62が不要の場合には、筐体部60から取り外すことができる。図4には、折り畳まれた腕帯部2が筐体部60の背面66側に保持部62を用いて着脱可能に収納される様子を示している。
図2に示すように、腕帯部の保持部62は、保持面62Aと脚部62Bを有している。筐体部60の下部側には、差込口67が形成されている。脚部62Bの先端部62Cは、この差込口67に挿入されることにより、腕帯部の保持部62は、筐体部60の背面66側に着脱可能に取り付けることができる。保持面62Aと筐体部60の背面66の間には、折り畳まれた腕帯部2を着脱可能に収納することができる。これにより、被測定者が腕帯部2を使用しない場合には、折り畳まれた腕帯部2を保持面62Aと筐体部60の背面66の間に、容易にしかも確実に収納することができる。
【0032】
このように、被測定者が血圧測定しない場合に、腕帯部2が筐体部60の背部側に保持されるので、被測定者は、腕帯部2により邪魔されることなく、図1の表示部63の表示内容例えば時間や室温等を目視で確認できる。このため、被測定者は、表示部63の表示温度を目視することで、血圧測定に適した温度(環境温度)であるか否か容易に確認できる。
被測定者が血圧測定しない場合に、腕帯部2が筐体部60の背部側に保持されるので、血圧計1の見栄えを良くすることができる。このため、血圧計本体10は、使用しない時には例えば時計としてリビングルーム等に飾っておくことができる。
【0033】
図2(A)に示すように、筐体部60の側面部(筐体部60の正面に向かって左側側面部)68の下部位置には、O−リング(不図示)を備えたエアプラグ差込口73が形成されている。このエアプラグ差込口73には、エアプラグ6が着脱可能に装着できる。エアプラグ差込口73は、エアプラグ6の形状に合わせて、直線状の上部分73Aの幅d1は、半円形状の下部分73Bの幅d2に比べて大きく設定されている。エアプラグ差込口73の内部には、差し込み穴73G、73Hを有している。
エアプラグ6は例えばプラスチックにより作られており、図2(A)に示すように、筐体6Aと、接続筒部6B、6Cと、接続ガイド部6Fを有する。接続筒部6B、6Cは、筐体6Aの一方の面から平行に突出して形成されている。これらの接続筒部6B、6Cは、エアプラグ差込口73の差し込み穴73G、73Hにそれぞれ着脱可能に挿入される。接続ガイド部6Fの上部分は、図2(A)に示すエアプラグ差込口73の上部分73Aに案内して挿入され、接続ガイド部6Fの下部分は、図2(A)に示すエアプラグ差込口73の下部分73Bに案内して挿入されるようになっている。
【0034】
これにより、エアプラグ6は、エアプラグ差込口73に対して上下逆に装着されることを防止しており、血圧計本体10側から阻血用空気袋14と2つのK音検出用空気袋50に対して逆にエア供給されることはない。なお、エアプラグ6に接続される腕帯部2は、複数のサイズ、例えば、大、中、小の3サイズがあり、使用者の上腕の大きさに合わせて最も適合したものを選択できるようになっている。
エアプラグ6は、血圧計本体10の正面側ではなく側面側に設けることで、駆動ポンプ110が万一暴走して異常に腕帯部2が加圧された場合でも、複雑な電子回路や異常時のスイッチを設けたりすることなく、被測定者がエアプラグ6を引き抜くことでエアの供給を断絶できることから、腕帯部2の異常加圧を極めて容易に回避できる。
【0035】
図2に示す、筐体部60の側面部(エアプラグ差込口73が形成された側面部68とは反対側)69には、図2(B)に示すように、スピーカ85と、ACアダプタを接続するための接続穴86が設けられている。この接続穴86には、ACアダプタ87の接続ジャック87Aが接続されることで、血圧計本体10には商用電源から電源供給できる。図2(B)に示す接続穴86は、図2(A)に示すエアプラグ差込口73とは、設けられている配置位置も大きさも形状も全く異なる。これにより、エアプラグ6を接続穴86に対して間違えて差し込むことを防止することができる。
図2(A)に示すように、筐体部60の上面に突出して設けられた上面部71には、筐体部60の正面に向かって、右側から、開始/停止スイッチ88、機能選択キー400等の各種の操作ボタンが並べて配置されている。
【0036】
図5は、図1に示す血圧計1のブロック構成図である。
図5に示すように、腕帯部2の阻血用空気袋14は、エアチューブ4を通じて、血圧計本体10内のエアフィルタ130、圧力検出部(圧力センサ)140、2つの駆動ポンプ110、制御バルブ111、そして排気バルブ112に接続されている。K音信号を検出するK音検出用空気袋50は、エアチューブ5を通じて、血圧計本体10内のコンデンサマイクロフォン125に接続されている。圧力検出部(圧力センサ)140は、腕帯部2内の圧力を検出する。K音検出用空気袋50は、図5に示すように2つ(上腕に腕帯部を装着したときに円周方向で対向位置になる)設けることで、K音を的確に検出できるが、K音検出用空気袋50の採用は1つであってもよい。
【0037】
図5に示す2つの駆動ポンプ110は、腕帯部2内の阻血用空気袋14と2つのK音検出用空気袋50にエアを供給して腕帯部2内の上腕を加圧する加圧手段である。このように、2つの駆動ポンプ110を用いるのは、腕帯部2のサイズが大きい場合には、2つの駆動ポンプを駆動させ、腕帯部2のサイズが小さい場合には、1つの駆動ポンプを駆動させて、阻血用空気袋14と2つのK音検出用空気袋50にエアを供給できるようにするためである。
一方、制御バルブ111と排気バルブ112は、腕帯部2内の阻血用空気袋14と2つのK音検出用空気袋50内のエアを抜いて加圧した上腕を減圧する減圧手段である。図5の駆動部150は、制御部120の指令により2つの駆動ポンプ110を駆動し、駆動部151は、制御部120の指令により制御バルブ111と排気バルブ112を駆動する。
図5に示す制御部120は、表示部63に指令を与えて、例えば図1に示すような温度表示、時刻表示、最高血圧、最低血圧等の必要とされる表示内容を表示させる。制御部120には、記憶部153とデータメモリ154が接続されている。表示部63としては、液晶表示装置や有機EL装置等を採用できる。制御部120は、マイクロコンピュータを含み、装置全体の制御プログラムや各種データを記憶するROMとワークエリアとして測定データや各種データを一時的に記憶するRAMなどを備えている。
【0038】
図5の血圧計本体10では、血圧を測定する前に、被測定者をリラックス状態にさせるために被測定者に聞かせる音楽を発生するための測定前音楽発生モードと、そして血圧を測定中に被測定者をリラックス状態にさせるために被測定者に聞かせる音楽を発生するための測定中音楽発生モードと、を備えている。
これらの測定前音楽発生モードで発生する音楽データと測定中音楽発生モードで発生する音楽データは、音楽データを記憶する記憶部153に予め記憶されている。すなわち、記憶部153には、血圧を測定する前に被測定者に対してリラックスのために流す音楽データと、血圧を測定中に被測定者に対して行うべき音声ガイダンス内容と例えば軽音楽等の音楽データと、が予め記憶されている。
【0039】
図5に示す制御部120は、測定前音楽発生モードでは、血圧を測定する前に、被測定者をリラックス状態にさせるために被測定者に聞かせる音楽を、スピーカ85を通じて流すことで、被測定者に精神的にリラックスさせるためのリラックス音楽を聞かせることができる。しかも、制御部120は、測定前音楽発生モードでは血圧を測定する前に、スピーカ85を通じて被測定者に対して、被測定者をリラックス状態にさせるために、音楽を聞かせる前の段階で、例えば「深呼吸をしてください」という深呼吸示唆メッセージを報知することができるようになっている。
同様にして、制御部120は、測定中音楽発生モードでは、血圧を測定中に、被測定者に対して行うべき音声ガイダンス内容と、例えば軽音楽等の音楽データとを、スピーカ85を通じて流すことで、被測定者に精神的にリラックスさせるためのリラックス音楽と必要に応じて音声ガイダンス内容を聞かせることができる。ここで、血圧測定中に報知される音声ガイダンス内容例としては、最低血圧値と最高血圧値を測定開始する際に、スピーカ85が、例えば「最低血圧値と最高血圧値を測定しています」を流すことができるようになっている。
【0040】
図5に示すデータ用メモリ154には、血圧測定に必要な一連の動作を行うためのプログラムが記憶されており、制御部120はこのプログラムに従って、血圧測定動作を実施する。
図5では、開始/停止スイッチ88と機能選択部としての機能選択キー400が、制御部120に電気的に接続されている。
被測定者が開始/停止スイッチ88を押した後、被測定者が図2に示す機能選択キー400を押すと、機能選択信号SSあるいは機能選択信号SS1が制御部120に送られることで測定モードを選択することができる。測定モードとしては、図7のステップS1に示すリラックスモードRMと、ステップS20に示す通常測定モードNMがある。
リラックスモードRMとは、血圧測定を行う前、すなわち図1に示すように腕帯2により上腕Tを加圧する前に、被測定者が音楽データのメロディを聞くことで、被測定者をリラックスした状態にすることができるモードである。これに対して、通常測定モードNMは、リラックスモードRMのように音楽データのメロディを血圧測定前に予め被測定者に聞かせることはなく、直ちに血圧測定を行うモードである。
【0041】
図5において、被測定者が開始/停止スイッチ88を押した後、被測定者が機能選択キー400を短く1回押して機能選択信号SSが制御部120に送られると、制御部120はリラックスモードRMを選択でき、被測定者が機能選択キー400を時間的に長押しして機能選択信号SS1が制御部120に送られると、制御部120は通常測定モードNMを選択することができるようになっている。
図5のスピーカ85は、リラックス用の音楽や音声ガイダンス内容を報知するための報知部の一例であり、フィルタ164を介して制御部120に電気的に接続されている。電源コントロール部160は、電池93とACアダプタ87に電気的に接続され、所定の直流電圧を制御部120に供給する。電源コントロール部160、K音アンプ161、OSCアンプ162が、制御部120に電気的に接続されている。
【0042】
図5に示すK音アンプ161は、マイクロフォンの好ましい1例であるコンデンサマイクロフォン125により検出したK音を増幅して制御部120に供給する。コンデンサマイクロフォン125とK音アンプ161の間には、音楽ノイズ除去フィルタ700が電気的に接続されている。
この音楽ノイズ除去フィルタ700は、コンデンサマイクロフォン125に入った音の中から、K音を通し、K音以外の音楽をノイズとして除去するためのフィルタである。すなわち、コンデンサマイクロフォン125に入力されたK音の周波数範囲と、スピーカ85が発生する音楽の周波数範囲から、この音楽の周波数範囲をノイズとして除去して、K音の周波数範囲だけをK音アンプ161側に通すようになっている。これにより、スピーカ85が発生するリラックス用の音楽がK音検出の障害になることが無く、K音を正確に検出することができ、正確な血圧測定が実現できる。
【0043】
なお、図6を参照すると、図5の血圧計1による血圧動作では、制御部120が指令すると、図5の制御バルブ111と2つの駆動ポンプ110を作動して、図5に示す阻血用空気袋14にエアを供給して上腕を、図6に示す時点t1まで加圧して、その後制御バルブ111が作動して阻血用空気袋14内のエア圧を傾きが一定になるように減圧させていく。この減圧させる途中では制御部120は、最高血圧と最低血圧を検出して、その後排気バルブ112を作動して阻血用空気袋14と2つのK音検出用空気袋50内のエアを抜くようになっている。
【0044】
次に、上述した構成を有する血圧計1の使用動作例を、図7を参照して説明する。
図7は、血圧計1の使用動作例を示すフロー図である。
被測定者は血圧測定操作を開始する前に、図1に示すように、予め被測定者の上腕Tに腕帯部2を装着して、開口部11Pは手指側に位置され、反対側の開口部11Rは肩側に位置されている。被測定者の手指は、開口部11R側から開口部11Pにかけて挿入することで、腕帯部2は、被測定者の肘よりも上の上腕Tに保持して血圧の測定準備をする。この際、2つのK音検出用空気袋50は、好ましくは腕帯部2の長手方向(軸方向)の中間位置よりも開口部11P側寄りの位置(肩側寄りではなく、手指より側の位置)に配置するので、2つのK音検出用空気袋50のいずれかを上腕Tの動脈に対応する部分に当てることができる。これにより、K音検出用空気袋50は動脈からK音を正確に得ることができる。
【0045】
被測定者が、被測定者が開始/停止スイッチ88を押した後、ステップS0において図2に示す機能選択キー400を押すと、測定モードを選択することができる。測定モードとしては、ステップS1に示すリラックスモードRMと、ステップS20に示す通常測定モードNMを有している。被測定者が機能選択キー400を時間的に短く1回押すと、ステップS1に示すリラックスモードRMを選択でき、被測定者が機能選択キー400を続けてある一定時間以上長押しすると、ステップS20に示す通常測定モードNMを選択することができる。
【0046】
まず、被測定者が、ステップS0において、図2に示す機能選択キー400を時間的に短く1回押して、ステップS1のリラックスモードRMを選択すると、ステップS1からステップS2に進む。ステップS2では、図5の制御部120は、スピーカ85を通じて被測定者に対して、「深呼吸をしてください」という深呼吸示唆メッセージを報知する。
これにより、被測定者に対して、深呼吸をすることを促すことができ、被測定者はこの深呼吸示唆メッセージに従って任意の回数深呼吸動作をすることで、被測定者は精神的にリラックス状態に進むことができる。被測定者による深呼吸することを促すことと、被測定者を精神的にリラックスした状態にするために被測定者が深呼吸し易い楽曲を被測定者に聞かせることにより、被測定者は血圧測定を行う前に、リラックス状態に移行して安静の実現を図り、血圧の降圧を実現して、自律神経安定化の実現を図ることができる。
【0047】
そして、制御部120は、深呼吸示唆メッセージを報知した後、ステップS3では、任意の一定時間、例えば1分間、任意のリラックス促進用の音楽を、スピーカ85を通じて被測定者に対して流す。
このリラックス促進用の音楽のメロディは、被測定者をリラックスした状態にするために被測定者が深呼吸し易い楽曲を採用しており、例えば「ブラームスの子守唄」を採用することができる。
被測定者が深呼吸し易い楽曲としての「ブラームスの子守唄」は、一定時間、例えば1分間に全16小節で完結して、2小節毎に1呼吸(吸気+排気)のリズムをもたらすもので、結果的に被測定者は1分間に8回の深呼吸が行え、チェロを主体とした低音域60〜100Hzでリラックスできる楽曲である。
このリラックス用の音楽を再生するための一定時間は、1分間に限らず例えば1分ないし1分30秒であっても良く、任意に選択することができる。被測定者をリラックスした状態にするために被測定者が深呼吸し易い楽曲としては、上述した「ブラームスの子守唄」に限定されず、例えば「シューベルトのアベマリア」等であっても良い。
【0048】
これにより、ステップS2において被測定者による「深呼吸」を促すことと、ステップS3において被測定者をリラックスした状態にするために被測定者が深呼吸し易い楽曲を被測定者に聞かせることにより、被測定者は血圧測定をステップS4からステップS11に従って行う前に、リラックス状態に移行して安静の実現を図り、血圧の降圧を実現して、自律神経安定化の実現を図ることができる。
上述したように、図7のステップS2において被測定者による「深呼吸」を促すことと、ステップS3において被測定者をリラックスした状態にするために、被測定者が深呼吸し易い楽曲を被測定者に聞かせた後に、次に説明する図7のステップS4からステップS13に示すように、図1に示すように血圧計1を用いて自動的に血圧測定を行い、しかも血圧計本体1の表示部63には血圧測定結果を表示することができる。
【0049】
図7のステップS4では、図1の血圧計1により血圧測定の動作が開始され、上腕Tに装着された腕帯部2を所定の加圧速度で加圧して通常の血圧測定を行う。このように血圧を測定するために腕帯部2を加圧開始すると、ステップS5では、図5の制御部120は、スピーカ85を通じて、さらに被測定者に対してリラックスできる音楽データを再生して流す。これにより、被測定者は、ステップS4からステップS11における血圧測定動作の際に音楽を聞くことができるので、被測定者はリラックス状態を保つことができ、正確な血圧測定を実施できることになる。つまり、血圧を測定中においても、被測定者は音楽を聞きながら精神的なリラックス状態を維持することができるので、安静の実現を図り、血圧の降圧を実現して、自律神経安定化の実現を図り、正確な血圧測定が行える。
【0050】
図7のステップS6では、図5の制御部120は、制御バルブ111と2つの駆動ポンプ110を作動させて、阻血用空気袋14にエアを供給して、上腕を図6の時点t1まで加圧する。この加圧の際にステップS7において脈が消失すると、ステップ8では、加圧を停止して、ステップS9では、制御部120は制御バルブ111を作動して阻血用空気袋14内のエア圧を傾きが一定になるように減圧させていく。
そして、ステップS10では、この減圧させる途中では、図5に示すコンデンサマイクロフォン125は、コロトコフ音(K音)を検出することで最高血圧値(収縮期血圧)と最低血圧値(拡張期血圧)を決定する。最高血圧値と最低血圧値を検出後、ステップS11では、制御部120は排気バルブ112を作動して阻血用空気袋14と2つのK音検出用空気袋50内のエアを抜き、急速排気する。
ステップS12では、制御部120は、スピーカ85を通じてステップS5において行われた音楽再生動作を停止させる。そして、ステップS13では、被測定者の得られた最高血圧値と最低血圧値は、例えば図1に例示するように表示部63においてデジタル表示することができる。これにより、被測定者は表示部63において大きく表示された最高血圧値と最低血圧値等の数値を目視で確認できる。
【0051】
一方、図7において、被測定者が、被測定者が開始/停止スイッチ88を押した後、機能選択キー400を続けてある一定時間以上長押しすると、ステップS20に示す通常測定モードNMを選択することができる。
通常測定モードNMを選択すると、図7のステップS4の加圧開始動作に自動的に進む。ステップS4では、図1の血圧計1により血圧測定を開始して腕帯部2により上腕Tを加圧して通常の血圧測定を行う。このように血圧を測定するために上腕Tを自動的に加圧開始すると、ステップS5では、図5の制御部120は、スピーカ85を通じて、さらに被測定者に対してリラックスできる音楽データを再生して流す。これにより、被測定者は、ステップS6からステップS11における血圧測定動作の際に音楽を聞くことができるので、被測定者はリラックス状態を保つことができ、正確な血圧測定を実施できることになる。つまり、血圧を測定中においても、被測定者は音楽を聞きながら精神的なリラックス状態を維持することができるので、安静の実現を図り、血圧の降圧を実現して、自律神経安定化の実現を図り、正確な血圧測定が行える。
【0052】
図7のステップS6では、図5の制御部120は、制御バルブ111と2つの駆動ポンプ110を作動させて、阻血用空気袋14にエアを供給して、上腕を図6の時点t1まで加圧する。この加圧の際にステップS7において脈が消失すると、ステップ8では、加圧を停止して、ステップS9では、制御部120は制御バルブ111を作動して阻血用空気袋14内のエア圧を傾きが一定になるように減圧させていく。
そして、ステップS10では、この減圧させる途中では、図5に示すコンデンサマイクロフォン125は、コロトコフ音(K音)を検出することで最高血圧値と最低血圧値を決定する。最高血圧値と最低血圧値を検出後、ステップS11では、制御部120は排気バルブ112を作動して阻血用空気袋14と2つのK音検出用空気袋50内のエアを抜き、急速排気する。
ステップS12では、制御部120は、スピーカ85を通じてステップS5において行われた音楽再生動作を停止させる。そして、ステップS13では、被測定者の得られた最高血圧値と最低血圧値は、例えば図1に例示するように表示部63においてデジタル表示することができる。これにより、被測定者は表示部63において大きく表示された最高血圧値と最低血圧値等の数値を目視で確認できる。
【0053】
ところで、すでに説明したように、このK音は、腕帯部2の阻血用空気袋14の内圧を最高血圧値以上に上げて血管を一旦圧閉した後、内圧を徐々に下げて内圧が最高血圧値以下になり、血管が開き始めると発生し、内圧が最低血圧値以下になり、血管の圧閉が消失するまでの間検出できる音信号である。図5に示すコンデンサマイクロフォン125が、図7のステップS5からステップS11において血圧測定中に、スピーカ85から出るリラックス用の音楽をノイズとして拾ってしまった場合には、図5に示すコンデンサマイクロフォン125により検出されたK音と、スピーカ85から出るリラックス用の音楽は、音楽ノイズ除去フィルタ700を通る。
【0054】
しかし、この音楽ノイズ除去フィルタ700は、コンデンサマイクロフォン125に入った音の中から、K音の周波数範囲だけを通して、K音以外の音楽ノイズの周波数範囲を除去することができる。すなわち、K音の周波数範囲は、好ましい例では40Hz〜59Hzであるのに対して、除去したい音楽ノイズ(音楽メロディノイズ)の周波数範囲は、さらに高い周波数範囲である例えば60Hz〜100Hzである。図5に示すK音アンプ161は、コンデンサマイクロフォン125により検出したK音の周波数範囲だけを増幅して制御部120に供給することができる。
このように、音楽ノイズ除去フィルタ700がK音の周波数範囲だけを通して、K音以外のリラックス用の音楽ノイズの周波数範囲を除去することにより、図7のステップS5からステップS11において血圧測定中にスピーカ85からリラックス用の音楽が流れている状況下であっても、制御部120は、ステップS9とステップS10において、K音の検出精度を上げて血圧測定精度を向上できる。
【0055】
上述したようにステップS6からステップS11の各ステップでは、制御部120が、血圧測定時に、記憶部153内の音声ガイダンス内容と予め用意された音楽データを、スピーカ85を通じて同時に被測定者に報知することができる。例えば、スピーカ85は、最低血圧値と最高血圧値を測定開始する際に、「最低血圧値と最高血圧値を測定しています」という音声ガイダンスと、予め用意されたリラックスできる軽音楽等の音楽とともに流すこともできる。なお、ステップS3で流すリラックス用の音楽の種類と、ステップS5で再生するリラックス用の音楽の種類は同じであっても、異なるようにしても良い。
【0056】
本発明の実施形態では、被測定者が血圧測定を行う前に、被測定者を精神的にリラックスした状態にした後に正確に血圧測定を行うことができる。すなわち、制御部120の指示により、腕帯部2内を加圧して被測定者の血圧を測定する前に、記憶部153から音楽データが読み出された音楽データに基づいて、報知部85は被測定者に対してリラックス用の音楽を聞かせることができるので、被測定者を精神的にリラックスした状態にして安静な状態を実現して血圧の降圧を図るので、正確な血圧測定が行える。また、被測定者は、リラックスを必要とする場合にはリラックスモードを用い、そうでない場合には通常測定モードを選択して血圧測定ができる。
本発明の実施形態では、腕帯部2と血圧計本体10が別体であることから、上腕Tを腕帯部2に挿入するだけで測定可能となる利便性を損なわず、血圧計本体10の設置場所が被測定者から前方に離れていても、測定者が正しく、背を伸ばした状態にて腹圧の掛からない状態で血圧測定できる。
【0057】
報知部は例えばスピーカ85であり、このスピーカ85と、測定された血圧値を表示する表示部63とは、血圧計本体10に配置されている。これにより、被測定者は音楽を血圧計本体10側のスピーカ85から聞きながら精神的にリラックスした状態で正確に血圧測定を行うことができ、得られた血圧測定結果は、血圧計本体10側の表示部63を目視するだけで容易に確認できる。
リラックス用の音楽や音声ガイダンス内容を報知する報知部としては、スピーカを採用しているが、スピーカの種類としては、コーン紙を振動させるコーン信号スピーカや、圧電振動体を振動させる圧電スピーカ等を採用できる。
【0058】
ところで、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明は様々な修正と変更が可能であり、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変形が可能である。
図1〜図3に示す腕帯部2は折り畳み可能な柔軟性を有する素材で作られている。しかしこれに限らず、本発明の血圧計としては、図8に示すように腕帯部2の外側がプラスチック製の剛性体2Wで覆われており取っ手2Vを備え、この剛性体2Wの中に図1〜図3に示す腕帯部2の柔軟性を有する積層体が内蔵されている構造を採用しても良い。
また、図示例では、腕帯部2と血圧計本体1とが別体に構成されているが、本発明の血圧計としては、腕帯部2と血圧計本体1が一体化された構造のものであっても良い。
また、図7のフロー図において、腕帯部の加圧開始後に、音楽再生することは必ずしも必要ではない。また、オシロメトリック法による血圧測定では、腕帯部の加圧開始から腕帯部の加圧停止までの間で最高血圧と最低血圧を決定するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1・・・血圧計、2・・・腕帯部、4・・・エアチューブ(第1エアチューブ),5・・・エアチューブ(第2エアチューブ)、6・・・エアプラグ、10・・・血圧計本体、11P、11R・・・開口部、14・・・阻血用空気袋、16・・・外布、17・・・内布、50・・・K音信号を検出する2つのK音検出用空気袋、63・・・表示部、85・・・スピーカ(報知部の例)、88・・・開始/停止スイッチ、120・・・制御部、153・・・記憶部、400・・・機能選択キー(機能選択部の一例)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定者の上腕に装着される腕帯部と、前記腕帯部内を加圧する加圧手段と、制御部と、前記腕帯部内の圧力を検出する圧力センサと、前記腕帯部内の圧力を減圧する減圧手段とを備え、前記圧力センサからの圧力信号を受けて前記制御部により前記加圧手段と前記減圧手段を制御して血圧を測定する血圧計であって、
音楽データが記憶されている記憶部と、
前記制御部の指示により、前記腕帯部内を加圧して前記被測定者の血圧を測定する前に前記記憶部から前記音楽データが読み出されると、前記音楽データに基づいて音楽を再生する報知部と
を備えることを特徴とする血圧計。
【請求項2】
前記記憶部は、前記被測定者の血圧を測定する前に、前記被測定者に対して深呼吸を示唆するための深呼吸示唆メッセージを記憶しており、
前記制御部の指示により、前記報知部は、前記被測定者の血圧を測定する前に、前記深呼吸示唆メッセージを前記被測定者に報知した後に前記被測定者に音楽を再生して聞かせる構成としたことを特徴とする請求項1に記載の血圧計。
【請求項3】
前記報知部は、前記制御部の指示により、前記被測定者が血圧を測定中にも、前記音楽データに基づいて音楽を再生する構成としたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の血圧計。
【請求項4】
前記被測定者に前記音楽を再生した後に前記被測定者の血圧測定を行うリラックスモードと、前記音楽の再生は行わずに前記被測定者の血圧測定を直接行う通常測定モードのいずれかを選択する機能選択部を有することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の血圧計。
【請求項5】
前記腕帯部は、血圧計本体とは別体になっており、
前記腕帯部は、前記上腕に装着された時に前記上腕を阻血する阻血用空気袋と、前記上腕に装着された時に対向位置になるように配置されたコロトコフ音検出用のコロトコフ音検出用空気袋とを収納し、前記阻血用空気袋とコロトコフ音検出用空気袋は、前記血圧計本体内に配置された前記加圧手段と前記減圧手段に対して接続されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の血圧計。
【請求項6】
前記報知部はスピーカであり、前記スピーカと、測定された前記血圧値を表示する表示部とは、前記血圧計本体に配置されていることを特徴とする請求項5に記載の血圧計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−27632(P2013−27632A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167244(P2011−167244)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】