説明

血小板グルー創傷密封材

【課題】創傷に塗布してその密封及びゆ合を容易にする組成物を提供する。
【解決手段】血漿、1.0×10細胞/mlの濃度の血小板及び5mg/ml以上の濃度のフィブリノーゲンを含む血漿−バフィコート濃縮物。該フィブリノーゲン活性化物質がトロンビン又はバトロクソビンから成るグループの中から選択され、これらを含有する創傷密封材組成物。ここで該トロンビンは、密封材の血漿成分の中に存在するプロトロンビンから産生されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、創傷密封材、特に創傷のゆ合力を高めることのできる血小板グルー創傷密封材に関する。
【背景技術】
【0002】
損傷を受けた組織及び血管の修復は、全ての外科的な専門分野に普遍的に関与するものである。往々にして外科手術の結果としての組織に対する損傷は、修復が困難なことがある。創傷から又はその中への連続的な流体の溢出は、結果として、患者の病的状態を増大させ、回復を引伸ばし、そうでなければ見込みのある成果を得られなくする可能性がある。
【0003】
外傷又は手術の後、正常なゆ合プロセスは低減し、これは、糖尿病といったような付随する疾病プロセスに直面して悪化し得る問題であり、こうしてさらに治ゆの進捗は妨げられる。切開された組織表面からの重大な流体滲出物は、創傷のゆ合を緩慢にする可能性があり、感染のための培地を担う。多くの組織において、流体の漏れは、外科技術がいかに細心なものであるかとは無関係に発生する。
【0004】
血管の多い組織は、電気メスの焼痂を通してでさえ出血し続け、血管損失が停止した後も長い間滲出物を生成し続ける。
【0005】
生体又は合成のいずれのものであれ、動脈血管樹内の移植片は、往々にして縫合線において又は移植片材料自体を通して漏出する。予め存在したか又は医原性の凝血異常が、このプロセスを往々にして悪化させる。硬膜に対する創傷は、周知の通り修復が困難であり、歴史的アプローチによると、或る種の処置については35%という高い持続性の脳脊髄液の漏洩を伴う失敗率が報告されている。切除された肺組織からの持続性空気漏洩は修復が困難であり、結果として回復を実質的に引伸ばす可能性がある。
【0006】
これらの問題に対処するため数多くのアプローチが構じられてきた。合成又は高度に改質された生物学的材料で作られた局所的止血物質は、広く用いられているものの密封材としての有効性には限界があり、接着剤としては効果がなく、それ自体ゆ合プロセスを引伸ばす可能性のある異物の炎症性応答を結果としてもたらす。
【0007】
トロンビンでフィブリノーゲンを分解し結果として得られたフィブリンを重合させることによって形成されたフィブリングルーは、これらの問題に対する一般的解決法として広く提案されてきたものであり、完璧な手術用密封材とさえ呼ばれてきた。外科医に対し必要に応じてフィブリングルーを提供するため、数多くの試みがなされてきた。低温沈降及び密度分離による血漿からのその他の凝固タンパク質と合わせた濃縮フィブリノーゲンの分画化は広く研究されてきた。寒冷沈降反応は、大部分の血漿タンパク質及び大半の液体体積を廃棄する一方で、凝固カスケードの成分を選択的に抽出する。450mlの血液からの標準的収量は10〜12mlである。
【0008】
ヨーロッパで広く用いられているものの、フィブリングルーのための基質としての市販のプールされた供与体寒冷沈降物は、潜在的な汚染及び疾病の伝播を取締り機関が恐れていたため、長い間アメリカでは利用できなかった。単一の供与体に由来する寒冷沈降物からのフィブリングルーの局所的塗布の結果が報告されていることから、単一供与体寒冷沈降物は疾病伝播及びHIV感染の危険性を免れているわけではない。自己由来の寒冷沈降物を作るための自己由来の血液又は血漿の予備的供与には、必要性の予測のみならず、有資格処理施設の地理的な利用可能性と組合わせた厳しい血液バンク供与基準を満たすことのできる外来の動機づけある患者が必要となる。
【0009】
これらの障害に直面して、単一供与体及び自己由来のフィブリノーゲン濃縮物の利用可能性を容易にするため、数多くのアプローチが考案されてきた。これらの努力の成果は、広範な外科的利用分野において有用であることが証明されてきたものの、これらには全て、処理技術が複雑であるか又は長いこと、コストが高いこと、予備供与が必要であること、又はこのような制限条件の組合せ、といった欠点がある。その上、機能する上で主としてフィブリノーゲンに基づいている組織接着性密封材は、その有効性に必要とされる高いフィブリノーゲン含有量のためにゆ合速度が損なわれるということが示されてきた。しかしながら15mg/ml未満のフィブリノーゲン濃度は創傷のゆ合を阻害しないことがわかっており、むしろ早期段階の創傷ゆ合を促進することが示されてきた。
【0010】
最近になって、イオンカルシウムの存在下でのトロンビンによるエントレインドフィブリノーゲンの活性化の時点で、外科的な局所的組織密封材のための基質として、重力又は遠心分離のいずれかにより密度基によって全血から分離された自己由来の血漿を使用する試みが行なわれてきた。これらの方法は、未変性レベルのフィブリノーゲンを含む血漿産物を結果としてもたらし、これは単独では適切なフィブリンゲルを信頼性ある形で形成するには不充分であることが示された。フィブリンゲルの強度は直接フィブリノーゲンの濃度に関係しており、自然に発生するレベルは良くても、組織密封材及び接着剤を形成するためにはぎりぎりのものである。疾病、収集のために必要とされる抗凝固物質溶液による希釈、手術自体と同時に起こる血液希釈又はこれらの要因の組合せに起因して正常以下のレベルが往々にして見られ、これは、受容可能なもの以下の機械特性及び接着特性をもつフィブリンゲルを生じさせる。
【0011】
全てのフィブリノーゲンベースの密封材接着剤は、その機能に関して、フィブリノーゲンのフィブリン単量体への変換、そしてその後のその重合そして安定したメッシュを形成するための架橋を通しての、一般的経路として知られている凝固カスケードの一部分に依存している。このプロセスの開始は、最も一般的には、イオン化カルシウムを含む水溶液中に市販の濃縮トロンビンを混和させることによる。適切に機能的で有効なフィブリン密封材接着剤を得るためには、イオンカルシウムを提供するべくトロンビン活性化物質と共に低い濃度の溶解カルシウム塩を含み入れることが必要である、ということが一般に主張されている。溶解カルシウムの所要濃度は、トロンビン1単位あたり0.0036から0.072mgのCa++まで変動する。イオンカルシウムをトロンビンに対して付加すると、結果としてコストは高くなり、調製段階が増え、複雑性も増大する。
【0012】
しかしながら、血小板と同時に凝塊中にイオンカルシウムが存在することにより、活性化された血小板は、凝塊を収縮させ、ここから漿液性流体を排出させ、そのサイズを著しい割合で縮小させ、その接着剤及び密封材としての特性を低減させることができるようになる。従って、血小板は、大部分のフィブリングルー調製物から厳密に排除されており、又存在する場合でも一般に生理学的濃度未満に制限されていた。血小板含有量が高くなればなるほど、イオンカルシウムの付加により望ましくない血ぺい収縮が結果としてもたらされる確率は大きくなる。
【0013】
しかしながら、血小板濃度の上昇は、創傷のゆ合を加速する上で貴重であることが示されてきた。血小板ベースの創傷ゆ合抽出物は、凝固能力の欠如したフィブリン除去された血漿の煎出である。これらの調製物の使用には、直接利用に充分なレベルで粘度及び機械的無欠性を増大させるよう、微結晶性コラーゲンといった担体の添加が必要となる。これらの担体はそれ自体、異物炎症性応答を結果としてもたらし、かくして創傷ゆ合の利点をことごとく阻害又は低減させる可能性がある。
【0014】
従って、創傷密封を増強し創傷のゆ合を促進させるための既知の方法及び技術は、信頼性が高く生物学的適合性のある治療効果の高い組成物を提供するには及ばないものであるということがわかる。外因性物質は、ゆ合を遅延するか又は阻害する炎症性異物を誘発する。同種産物は、疾病の伝播又は生物学的不適合性反応の危険性をはらんでいる。濃度の高いフィブリノーゲン溶液は、調製に時間がかかり、本質的に創傷のゆ合を阻害する。全血漿基質は往々にして、増加として血小板を取込むものを含め、効果的な利用のためには低すぎるフィブリノーゲンレベルを有し、創傷ゆ合の促進において価値あるものとみなされるレベルで血小板を含むことは稀である。血小板濃縮物の抽出物は、創傷ゆ合の促進剤としては有効であるとみなされているものの、それ自体が創傷密封材又は接着材として作用することはできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って、安全で容易に又は迅速に調製され、しかも好ましくはゆ合プロセスを増強又は促進する効果的な創傷密封材に対する必要性が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、血漿、1.30×10細胞/ml以上の濃度の血小板、及び5mg/ml以上の濃度のフィブリノーゲンを含む血漿−バフィコート濃縮物を提供する。血漿−バフィコート濃縮物が、血ぺい形成を開始するのに充分な濃度でフィブリノーゲン活性化物質と組合わされた時点で、血小板グルー創傷密封材が形成される。好ましい実施形態においては、創傷密封材は、3.0×10細胞/mlの濃度で白血球を含み、感染を低減させるか又は治療し、血小板と合わさって創傷ゆ合を促進するのに使用することができる。
【0017】
血漿−バフィコート濃縮物を生成するべく血液を処理するための方法も同様に提供されている。この方法には、赤血球を除去し血漿−バフィコート混合物を生成するべく、凝固阻止された血液を遠心分離する方法が含まれている。血漿−バフィコート濃縮物を生成するため、混合物から水が除去される。前述の通り、フィブリノーゲン混合物が血漿−バフィコート濃縮物と混合されて創傷密封材を生成し、次に、創傷の密封及びゆ合を容易にするべくこれを創傷に塗布することができる。
【0018】
この創傷密封材調製方法は、患者自身の血液で術中に容易に実施される。本発明の方法及び組成物は、哺乳動物全搬に有用であるが特に人間に利用される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、血漿及び濃縮血小板及びフィブリノーゲンを内含する血漿−バフィコート濃縮物を提供する。好ましい実施形態では、血漿−バフィコート濃縮物は同様に濃縮白血球も含んでいる。血漿−バフィコート濃縮物は、創傷密封材を生成するべくフィブリノーゲン活性化物質と組合わせることができる。
【0020】
本発明は同様に、本発明の血漿−バフィコート濃縮物を生成し、創傷密封及び創傷ゆ合を促進できる血小板グルー創傷密封材を調製するために使用できる血液処理方法をも提供している。この方法には、赤血球を除去し血漿−バフィコート混合物を生成するために、凝固阻止された血液を遠心分離する段階が含まれている。血漿−バフィコート濃縮物を生成するため、血漿−バフィコート混合物から水が除去される。濃縮物は、損傷を受けた組織と接触した時点で創傷を密封し創傷のゆ合を促進できる創傷密封材を生成するべくフィブリノーゲン活性化物質と混合される。この方法は、自己由来の血小板グルー創傷密封材を調製するべく術中に実施可能である。
【0021】
本発明の血漿−バフィコート濃縮物及び血小板グルー創傷密封材について、以下で詳述する。本発明の組成物の調製方法については、その後詳細に説明する。
【0022】
血漿−バフィコート濃縮物/血小板グルー創傷密封材
本発明の血漿−バフィコート濃縮物は、1.0×10細胞/mlの濃度の血小板及び5mg/mlの濃度のフィブリノーゲンを含む血漿を含んで成る。好ましくは、血小板濃度は、約1.0×10細胞/ml〜約2.5×10細胞/mlである。好ましい実施形態においては、フィブリノーゲン濃度は、約5〜約15mg/mlである。
【0023】
血漿−バフィコート濃縮物はさらに、好ましくは3.0×10細胞/mlの濃度で白血球を含むことができる。さらに好ましくは、白血球濃度は、約3.0×10細胞/ml〜約6.0×10細胞/mlである。好ましい実施形態では、血漿−バフィコート濃縮物内に存在する白血球は、約60〜約70%のリンパ球、約15〜約25%の単球、及び約5〜約25%の好中球を含む。
【0024】
本発明の血小板グルー創傷密封材は、上述の血漿−バフィコート濃縮物及び血ぺい形成を開始するのに充分な濃度でのフィブリノーゲン活性化物質を含んで成る。フィブリノーゲン活性化物質は周知のものであり、例えばトロンビン及びバトロクソビンを含んでいる。フィブリノーゲン活性化物質は、血ぺいを形成するための望ましい時間に応じてさまざまな濃度で存在することができる。フィブリノーゲン活性化物質がトロンビンである場合、創傷密封材中1mlあたり約100単位以上のトロンビン濃度で、フィブリノーゲン濃度は、凝固における速度制限段階となる。より高い濃度のトロンビンを用いることもできるが、付加的な利点が生じることはない。その上、脈管内空間の中にトロンビンが進入する危険性は大きくなる。約100U/ml未満の濃度では、トロンビンレベルは、創傷密封材の中の速度制御要素である。かくして、ゲル化時間を制御するために、トロンビン濃度を使用することができる。凝固時間に対するトロンビン濃度の関係について、以下の方法の節で論述する。
【0025】
一般にフィブリノーゲン活性化物質は外因的に添加されるが、血漿−バフィコート濃縮物の血漿成分の中に存在する内因性プロトロンビンから血漿−バフィコート濃縮物内でトロンビンを生成することも可能である。濃縮物内のくえん酸塩抗凝固物質は、プロトロンビンを分解しトロンビンを生成するべく凝固カスケードを容易にするのに必要とされるイオンカルシウムを結合する。従って、血漿−バフィコート濃縮物中に存在するプロトロンビンからトロンビンを生成するためには、凝固カスケードの進捗を容易にするのに充分な量でカルシウムが添加される。
【0026】
適切には、無菌薬学溶液として市販されている10%の塩化カルシウムといったカルシウム塩が使用される。血ぺい形成のための内因性トロンビンの産生を容易にするべく血漿−バフィコート濃縮物を充分にカルシウム再添加させるのに必要なカルシウム塩の量は、調製物中に存在する残留くえん酸抗凝固物質の量によって変動する。しかしながら、11〜12部の血漿−バフィコート濃縮物に対する1部の10%くえん酸カルシウム又はその他の供給源からの等価のカルシウムの添加で充分である。血漿−バフィコート濃縮物中のトロンビンの活性化のためにカルシウムを使用することは、1〜2分以上の全凝固時間が望まれる手術において有利である。このような血ぺい形成時間は、骨又は骨成長基質が血ぺいのゲル化に先立って調製物に添加される骨欠損症の手術において有用であり得る。
【0027】
本発明の血小板グルー創傷密封材のための血液供与体は、好ましくは創傷密封材が塗布される損傷を受けた組織と同じ種からのものである。創傷密封材は、哺乳動物全般に有用であるが、好ましくは、人間のために用いられる。好ましくは、供与体と受容体は、関与する種の標準的献血実施方法にあるように整合されている。可能な場合、血液供与体は好ましくは、創傷密封材が塗布される動物と同じ動物である。可能であれば、好ましくは、創傷密封材は術中又は塗布直前のいずれかに調製される。
【0028】
フィブリン凝固プロセス及び血小板の機能は、全ての哺乳動物種に共通である。しかしながら、明らかに、本発明の血小板グルー創傷密封材の供与体と受容体の関係が近くなればなるほど、危険度と利益の比率及び望ましい成果の確率という点で受容体にとって優れたものとなる。本発明の創傷密封材は、30分以内に有効作用物質を実質的な量だけ生成でき、かくして、同種異系間の血液製剤注入に付随する危険度及び合併症を軽減できることから自己由来の利用分野に特に適している。
【0029】
血小板グルー創傷密封材の使用
本発明の創傷密封材組成物は特に人間に使用するのに適していることから、これは哺乳動物の種全般に適している。例えば、馬においては、脚、特に全層性表皮剥脱は、きわめて治ゆが困難である。血小板内含創傷密封材を塗布すると、従来の処理に比べ、このタイプの創傷のゆ合が促進される。
【0030】
血漿−バフィコート混合物内への処理に必要な血液量をたとえ一時的にであれ引き出すことができるようにするのに充分な血液量が受容体に無い場合には、同種異系間で使用さざるを得なくなる可能性がある。例えば、小児の心臓外科手術においては、フィブリノーゲングルーの使用は、実質的価値のあるものと思われてきたが、小児自身、自分の血液を処理のために提供するには小さすぎる。しかしながら、このような先行技術のグルーの量は、往々にして単一の供与体から誘導できるものを上回り、合併症の危険度を著しく増大した。しかしながら本発明の創傷密封材を使用することにより、創傷密封材として使用するため、単一の単位の指向性供与体全血を処理することができる。ポンプの呼び水として赤血球を用い、外科手術後の凝固因子収集のために血漿を用いながら、有効な局所的接着剤密封材を調製して、供与体の露呈の回数を増大せずに術後の血液喪失を実質的に低減させるために、血漿−バフィコート混合物を使用することができる。
【0031】
上述のものに加えて、人間に対する広範な有用な用途が探究され報告されてきた。高度の成功率でかつ合併症が全く無い状態で、一連の同情的用途の自己由来の利用が実施されてきた。本発明の血小板グルー創傷密封材は、切断された硬膜を通しての脳脊髄液の漏出を密封するため;未変性の補てつ用脈管移植片の吻合を密封するため;根治的前立腺切除術、トラム弁再形成術、頸根部などの広範な切開を伴う手術において;火傷移植及びその他の自由皮ふ移植の利用分野を含む形成外科において;又腎臓、肝臓及びひ臓などの脈管の多い切断組織内で、使用されてきた。本発明の創傷密封材は、これらの利用分野における術後の出血及び漿液性又はその他の流体の管外遊出又は喪失を削除又は大幅に減少させる上で、均等に有効であった。
【0032】
骨粉体と混合されると、本発明の創傷密封材は、脳顔面頭蓋及び整形外科手術中の骨の迅速かつ均等な再生を提供することが立証されてきた。糖尿病の非ゆ合性創傷においても、ゆ合は劇的に促進され、従来の療法を何週間続けても効果がなかった場合でもうまく閉鎖を達成することができた。本発明に基づく創傷密封材は同様に、抗生物質耐性細菌による感染を含む、標準的アプローチに対し長年にわたる耐性をもつ敗血性創傷のゆ合においても成功を収めてきた。
【0033】
本発明の創傷密封材を、内視鏡による血脈洞手術の後の血脈洞窩に適用した場合、従来の治療方法に比べ粘膜の再生がより急速で均等であることがわかった。
【0034】
内耳手術も又成果を上げ、うずまき管から鼓膜まで首尾よく補てつ用骨を付着でき、鼓膜自体の再構築についてさえ成果があった。数ミリメートルの創傷密封材を、医療用コップの中でゲル化させ、吸収性パットに移し、圧縮して血清を浸出させ、フィブリン、血小板及び白血球の薄いパッドを形成させた。この圧縮された血ぺいを次に、ヒートランプ下で30分間乾燥させ、乾燥した丈夫な、ただし弾力性のあるシートを形成させた。このシートを次に適正なサイズにトリミングし、数本の細かい再吸収可能な縫合糸で欠損した鼓膜の代りに縫いつけ、血小板グルー創傷密封材で外部及び内部を充てんした。鼓膜の機能修復は6週間で見られ、同時に本発明の創傷密封材は再吸収され消滅した。
【0035】
血小板グルー創傷密封材は、骨成長基質クスとしての削孔プロセスから得られた自己由来の骨髄質と血漿−バフィコート濃縮物を混和することにより、頭蓋内の削孔(まくれ)の修復において使用されてきた。血小板グルー創傷密封材は同様に、脊柱の骨欠損の修復において自己由来の骨移植片(腸骨稜)、自己由来の骨細片、死骸骨及び鉱物質除去された骨基質と合わせて使用されてきた。血小板グルー創傷密封材は又、自己由来の骨移植片(腸骨稜及びろっ骨)と合わせて、又偽関節の病的下顎骨骨折の修復においても使用されてきた。下顎骨修復の1つの症例においては、創傷密封材の中に一連の抗生物質含浸メチルメタクリレートビーズが含み入れられ、下顎骨移植片の外部の軟質組織に埋め込まれ、付加的な血小板グルー創傷密封材で包埋された。骨欠損症の利用分野で血小板グルー創傷密封材を使用する毎に、骨の内殖についての医師の評価は、良から優であった。全ての移植片が定着し、付随する病的状態は全くなかった。水酸化リン灰石又は骨髄といった骨成長基質のその他の供給源も又、本発明の創傷密封材と合わせて利用できる。
【0036】
血小板グルー創傷密封材のその他の利用分野は、局所化された制御された利用分野のための薬剤又はその他の化学物質の添加を含め、当業者にとって明らかである。
【0037】
凝固阻止された全血の調製
アクセス可能なあらゆる部位から、無菌技術を用いて哺乳動物の全血を採血する。この血液は、採血の時点で、くえん酸塩ベースの抗凝固物質を用いて凝固阻止されている。くえん酸塩ベースの抗凝固物質であれば、何でも適切である。標準的な採血バッグは、くえん酸塩ベースの抗凝固物質を含有している。例えばTerumo Corporation製のもの(Teruflex,CPDA−1)は、450mlの血液の収集のため63mlのくえん酸りん酸デキストロース(CPD)アデニン抗凝固物質を含有する。
【0038】
各々の63mlの抗凝固物質は206mgのくえん酸(含水)USP,1.66gのくえん酸ナトリウム(含水)USP,140mgの一塩基性リン酸ナトリウム(含水)USP,1.83gのデキストロース(無水)USP及び17.3gのアデニンを含有する。凝固阻止された血液は、最高5日間室温に保存することができる。好ましくは凝結阻止された血液は、3日間、さらに好ましくは24時間未満の間(というのも、この時点以降血小板の機能は減少し始め、凝固因子は劣化し始めるからである)保管される。
【0039】
代替的には、くえん酸塩ベースの抗凝固物質を伴う2重管腔式採血セットを用いて、凝血阻止を行なうことができる。適切な採血セットとしては、例えばElectromedics BT727BP 型及びHaemonetics 247 型が含まれる。適切なくえん酸塩ベースの抗凝固物質としてはElectromedics からのもの(ELMD−CPD型)がある。
【0040】
抗凝固物質1ミリリットル毎に3mgのくえん酸(無水)USP,26.3mgのくえん酸ナトリウム(含水)USP、一塩基性リン酸ナトリウム(一水化物)USP及び23.2mgのデキストロースUSPが含まれている。これらの採血セットは、採血と同時にくえん酸塩抗凝固物質の混和を容易にする。凝固を防止するのに充分な抗凝固物質が存在するかぎりにおいて、抗凝固物質の量は重要ではない。一般に、100mlの採血につき上述の抗凝固物物質10〜15mlの比率が用いられる。投与比率を適切に調節しながら、より濃度の高い抗凝固物質溶液を使用することもできる。これらのセットを用いて採血された血液は、採血時点で適切に処理される。
【0041】
血液は、好ましくは、望みに応じて室温近くで収集され、凝固阻止され、保管される。プロセスの残りの部分も、室温にて適切に実施できる。18℃未満又は21℃以上の温度は、血小板機能のさらに急速な低下及び望ましい凝固因子の劣化をひき起こす。
【0042】
血漿−バフィコート混合物の調製
その後、凝固阻止された血液を遠心分離プロセスに付して、血漿中の全血のバフィコート成分を含有し赤血球を除去する血漿−バフィコート混合物を生成する。
【0043】
赤血球を除去するこのような2重遠心分離技術は周知のものであり、分離を行なう装置は、市販されている。Electromedics AT500,AT750,AT750EF,AT1000、及びELMD500;Dideco Sorin BT795シリーズ、STAT及びSTAT-P;Haemoretics Cell Saver5;及びCobe-Gambro BRAT2といったようないくつかのブランドの装置が適当である。装置には、プロセス用の遠心分離ボウル、細管及び収集用バッグを含む使い捨てのセットであり装置のメーカーから入手可能な標準的遠心分離式血液分画化セットが備わっている。収集用バッグは、遠心分離用ボウルの出口ラインに連絡され、血液アクセスラインは、処理用セットの入口ラインに取付けられている。アクセス及び収集用の適切な無菌の使い捨て用品も、例えばElectromedics(BT727BP又はBT727SP)、Haemonetics(#247)、及びCobe−Gambroから市販されている。
【0044】
このとき、遠心分離機は、好ましくは最大RPMで回転するようにセットされる。これより低い遠心分離機速度も利用できるが、利用可能な最高のRPMは、最も速い血液流で最大の収量を可能にし、かくして処理時間が短縮される。その上、最高の遠心分離機速度の使用により、最高の赤血球充てん密度、ひいては血小板及び血漿の最大収量が得られる。標準的な高速遠心分離機の速度は4800〜5600RPMであり、約2000Gの遠心力を生成する。このとき血液流は一分あたり約50mlから約150mlの流速で始められる。さらに低い流速は、収量の著しい増大なく、プロセスの時間を増加させる。より高い流速は、血小板を血漿から分離させず、かくして収量を減少させる。この段階における約100ml/分の流れは、望ましい効果のバランスを提供する。
【0045】
血液が遠心分離機ボウルを通って流れるにつれて、比較的密度の高い形成された要素が周辺へと強制され、一方、比較的密度の低い無細胞血漿は中心へと強制されて、そこで収集バッグ内へとあふれ出す。このプロセスは好ましくは、透明な血漿の小さい中心核だけが残っている状態で、遠心分離機ボウルが、形成された要素でほぼ満たされるまで続行される。細胞パックは、標準的に、70%〜80%の形成された要素と20%〜30%の血漿である。
【0046】
このとき血液ポンプは停止され、遠心分離機速度は約2400RPMまで低減される。約250Gという今度はさらに低い力で、より密度の高い赤血球及び好中球が遠心分離機ボウルの周囲上にとどまり、一方、より密度の低い血小板、単球及びリンパ球、つまりいわゆる「バフィコート」は、中心血漿カラム内へ強制され、このカラムは曇った状態となる。より低いRPMは、赤血球と血漿の間の分離を維持するのに充分な力を及ぼすことができず、こうして、赤血球を含まないバフィコートの収集は妨げられる。
【0047】
このとき、血漿収集バッグへと導く退出ラインは閉じられる。もう1つの収集バックへと導く退出ラインは開放され、血液流は、約25〜約125ml/分で再開される。より低い流速は、プロセスを不必要に延長させ、一方より高い流速は、血小板の収量を減少させる。ここで遠心分離機のボウルに入る血液は再び分画化される。これらのより低い遠心分離力では、赤血球及び好中球は遠心分離機ボウルの中にとどまり、一方血漿分画はボウルから退出し続け、それと共に血小板、単球及びリンパ球の大部分を第2の収集バッグ内へと運ぶ。赤血球で満たすように血液をボウル内に圧送し続けることにより、中心血漿カラム及びひき込まれた形成された要素は、退出ライン内へと強制される。血液流は、赤血球がまず第2の収集バック内に入り始め、その時点で血液流が停止させられるまで続けられる。
【0048】
この点に達することが求められている血液の量は、そのヘマトクリット値に比例する。
【0049】
このとき血小板バッグへの退出ラインはクランプされ、遠心分離機は停止される。このとき血漿収集バッグは開放される。血液ポンプは逆転させられ、血小板の少ない赤血球は第3の収集バッグまで導かれる。任意には、細胞の少ない血漿の一部分又は全てが赤血球と組換えられてもよい。充てんされた赤血球、細胞の少ない血漿又は組換えられた血小板の少ない全血は直ちに患者に再注入するか、その後の再注入のために保持するか、又は廃棄することができる。充てん、分画化及び排出という単一のサイクルは、遠心分離機ボウルの容量、採取した血液のヘマトクリット値及び選ばれた流速に応じて、約10〜13分を要する。このプロセスをくり返して、望まれるだけのより大量の血液成分分画を得ることができる。
【0050】
さまざまな分画の体積収量は、処理時間に影響を与える同じパラメータによって左右される。標準的には、125ml入りの遠心分離機ボウルは、処理中の血液のヘマトクリット値に応じて充てん赤血球を約125ml、細胞の少ない血漿を約100〜350ml、バフィコートを約25〜60ml生成する。さらに大きい遠心分離機ボウルは、比例して多い量を生成する。ひき続き、さらに大量の採取血液は、供与体により大きなストレスを加え、使用される遠心分離機ボウルのサイズ及び処理速度又は合計処理量を左右する可能性がある。
【0051】
バフィコート内の血小板の収量は同様に、サイクル時間及び体積収量に影響を及ぼすパラメータ、ならびに採取血液中の血小板計数及び成分である形成された要素の相対的密度により左右される。収量範囲は、ボウルに入る血小板の約50%〜約80%であり、約60%〜約70%が基準である。このバフィコート分画内の血小板濃度は、1mlにつき約350,000,000〜約800,000,000であり、基準は1mlあたり約500,000,000〜約650,000,000である。フィブリノーゲンレベルは、供与体血液値以下である。
【0052】
ひとたび処理されると、血漿−バフィコート混合物は、最高5日間検定済みの血小板保管容器内で室温に保つことができるが、血小板は、採取後36時間以内に利用されると最も機能的である。採取後24時間以上保持されると、血小板には連続的撹拌が必要となる。
【0053】
血漿−バフィコート濃縮物の調製
血漿−バフィコート濃縮物を調製するため、水を血漿−バフィコート混合物から除去する。この段階は、従来の血液濃縮装置を用いて適切に実施される。
【0054】
一般に利用可能な血液バッグスパイク、ストップコック及び細管の無菌アセンブリは、血漿−バフィコート混合物の入った収集バッグが3方ストップコックに接続されるような形で構成されている。ラチュットクランプが備わり、一方の端部では血液スパイクにもう一方の端部では雌ルーアロックに取りつけられた小さな径のPVC細管を含む、雌ルーアロック(Codon Medlon Inc.,Cat.No.B310)を伴う流体移送セットが、血液スパイクを用いてバフィコート血漿混合物収集バッグに連結されている。移送セットルーアロック取付け具に、3方ストップコック(Medex.Incを含む数多くの供給元から市販されているもの)が取付けられている。60cc入り注射器(Pharmaseal Inc.を含む数多くの供給源から市販されている)が、ストップコックのアームに取り付けられている。第3のストップコックアームは、それ自体1/4″のPVC細管(長さ約2cm〜約3cm)の部品に取りつけられた1/4″の細管アダプタ(Minntech Corp.といった供給元から市販されているもの)に対して雄ルーアロックではめ込まれている。
【0055】
次に(Minntech Corp.,Amicon Corp 他を含む数多くの供給源から市販されている)血液濃縮装置がその入口で1/4″の細管に連結される。血液濃縮装置の出口には同様に、血液移送バッグの入口連結器(Terumo Corporationその他の供給源から市販されているもの)のための取付け部位として役立つ1/4″のPVC細管(長さ約2〜3cm)の部品がはめ込まれている。こうして、血漿−バフィコート混合物を注射器の中へ吸い込むことができる。ストップコックを調整することにより、注射器と血液濃縮装置の間の流路が開放される。約−400トールの真空が、次に、血液濃縮装置の放出ポートに加えられ、注射器のプランジャが圧縮されて、20〜35ml/分で血液濃縮装置の血液通路を通して血漿−バフィコート混合物を強制的に送る。混合物の流速が逆比例して調整されている状態で、血漿−バフィコート濃縮物を形成するべく血漿−バフィコート混合物から水を引き抜くために、約−100から約−400トールまでの真空を利用することができる。血漿−バフィコート混合物が全て血液濃縮装置の中に入った時点で、真空は連結解除される。空の注射は、実質的にイオン化カルシウムを含まない生理溶液を満杯にした注射器と交換される。生理食塩水、くえん酸塩添加された血漿、リン酸緩衝溶液及び食塩の少ないアルブミンが適当である。20cc入り注射器が適切に使用される。生理溶液は、血液濃縮装置から収容用移送バッグ内へ残留血小板及び血漿−バフィコート濃縮物を洗い流すべく、血液濃縮装置内に注入される。
【0056】
血漿−バフィコート濃縮物を生成するため血漿−バフィコート混合物から水を引き出すための所要時間は、流速及び処理量に応じて変動する。血漿−バフィコート濃縮物の最終量は、流速対真空レベルの比率の関数として変動する。理想的には、血漿−バフィコート混合物の量は、約50%〜約66%減少させられる。約25%〜約50%の減少は適切であるものの好ましいものではない。約70%以上の減少は、流れが起こるのが困難又は不可能となるほどの高い粘度をもつ液体を作り出す危険性がある。
【0057】
プロセス中のこの血液濃縮段階は、最も適切には室温で行なわれる。
【0058】
血漿−バフィコート濃縮物は、粘性で黄褐色のコハク様の液体である。血小板計数は、1mlにつき約1,000,000,000〜約2,500,000,000以上の範囲内にあり、採取血液中の濃度に比べ9倍〜12倍の増加である。白血球計数は、1mlあたり約30,000,000〜約60,000,000であり、これは供与体レベルの6〜9倍で、約60%〜約70%のリンパ球、約15%〜約25%の単球そして約5〜25%の好中球の較差を伴う。その他の白血球、例えば好塩基球及び好酸球は実質的に不在である。特に、標準的に好塩基球及び好酸球は、検出可能な量で存在しない。リンパ球含有量は、出発血液のものの約12〜約15倍増大し、単球は約20〜約25倍増大している。血漿タンパク質レベルは、約12〜約20gm/dlである。フィブリノーゲンレベルは、同様に、その他の凝固タンパク質と同様に、供与体血液値に比べ約2倍〜3倍増大している。電解質レベルは、電解質が水やその他の小さな分子と共に血液濃縮装置膜を通して運ばれることから、採取血液値から実質的に変化していない。
【0059】
血液凝集装置膜の孔径又はふるい分け係数は、血液濃縮中に血漿の中に浸出され得る血小板のあらゆる含有物を含め、タンパク質及びその他の望ましい血液成分を保持するように選択される。理想的には、孔径又はふるい分け係数は、45000ダルトンで100%のカットオフである。これはすなわち、45000ダルトン以上の分子が、血漿−バフィコート濃縮物の中で保持されることになる、ということを意味する。
【0060】
ひとたび調製されたならば、血漿−バフィコート濃縮物は直ちに使用でき、或いは又、血小板機能を最も良く保存するため好ましくは室温で保管することもできる。効力は、血液が最初に採取された時点から約36時間後に劣化し始め、室温で5日目までに廃棄されなくてはならない。
【0061】
血漿−バフィコート濃縮物が創傷ゆ合物質として使用されている場合には創傷のゆ合の臨床的に意義ある促進を提供するため、そして創傷密封材として用いられる場合には接着性に関する臨床的に識別可能な増大を得るため、1mlにつき約1,000,000,000の血小板濃度が必要とされる。血液濃縮に先立って血漿−バフィコート混合物上で血小板の計数が行なわれ、計数が1mlにつき約500,000,000以上であるとわかったならば、血小板計数を1mlにつき約500,000,000までにするような量まで血小板−バフィコート混合物と、血小板の少ない血漿を組み合わせることができる。血漿及び血漿−バフィコート混合物を血液濃縮に先立って組合わせることができる。代替的には、まず血漿−バフィコート混合物を、次に血漿のアリクウェントを血液濃縮し、血液濃縮装置から残留バフィコート含有量を追い出す。いずれの方法によっても、臨床的有効性を減少させることなく、より大量の血漿−バフィコート濃縮物を作ることが可能である。
【0062】
創傷密封材を調製するべく大量の血液を処理するための一実施形態においては、方法は、以下の通りに行なわれた。ただし、当業者であれば、この手順を容易に変更することができる。
【0063】
遠心分離された血液分画化セット(標準的自己輸血処理キットとも呼ばれる)を段取りする間、1/4″の等しい「Y字形」取付け具が、「Y字形」を遠心分離機ボウルに連結するべく1/4″のPVC細管の一定長(適切には約15cm)を用いて、血液ポンプブーツと遠心分離ボウルの間にそのアームのうちの2つと共に設置される。「Y字形」の第3のアームの方は、血液濃縮装置の入口に取付けられた第2の一定長の1/4″PVC細管(適切には約15cm)に連結される。血液濃縮装置の出口は、それ自体血液移送バッグの入口連結器に連結されている1/4″のPVC細管(長さ約2〜約3cm)の部品に取りつけられている。「Y字形」から血液濃縮装置まで導くラインはクランプ留めされている。
【0064】
次に、処置は血液を3つの成分すなわち充てんされた赤血球、血漿及び血漿−バフィコート混合物へと分画化する方向へ進む。分画化が完了した時点で、充てんされた赤血球だけ保持用バッグへと圧送され、遠心分離機ボウルの中で、収集用バッグの1つの中に予め保持された無菌空気と置換される。
【0065】
血漿及び血漿−バフィコート混合物収集用バッグは、その後、通常洗浄溶液専用となっている自己輸血処理キットのクランプ留めされたデュアルスパイクラインで封じられる。処理用セットの洗浄ライン及び充てんラインはその後、自己輸血処理機のクランプ留め用取付け具の中で逆転させられ、かくして充てん指令により洗浄ラインを通して流体が引き出されるようになっている。血漿収集バッグ内のスパイクラインはクランプ解除され、血液ポンプは約50ml/分以下で始動させられて血漿を収集用バッグから処理用キットを通して遠心分離機ボウルまで引き抜き、かくして残留赤血球を全て細管セットから遠心分離機ボウル内へと洗い流す。
【0066】
細管に赤血球が無くなった時点で、血漿バッグに対するスパイクランイはクランプ留めされ、血漿−バフィコート混合物収集用バッグへのスパイクラインは開放され、気泡が血漿−バフィコート混合物を血漿から分離している状態で、血液ポンプに向かって血漿−バフィコート混合物を引き出す。気泡が「Y字形」に達するにつれて、血液濃縮装置に対するラインはクランプ解除され、遠心分離機ボウルへのラインはクランプで閉じられる。このとき、流れは血液濃縮装置へと進み、約−400トールの真空が加えられる。血漿−バフィコート混合物が血液濃縮装置に達した時点で、水が除去され、血漿−バフィコート濃縮物が移送バッグ内に現われる。
【0067】
血漿−バフィコート混合物の全てがその収集用バッグから空にされた時点で、血液ポンプは一時的に停止させられる。血漿−バフィコート混合物収集用バッグからのスパイクラインはクランプ留めされ、血漿−バフィコート混合物バッグから取外され、バフィコート血漿濃縮物を含む移送バッグの中に挿入される。水−除去段階により望ましい水の量が除去されなかった場合、血漿−バフィコート濃縮物は、充分な量の水が除去されるまで血液濃縮装置を通して再度処理され得る。水除去が完了した時点で、血液濃縮装置から真空を連結解除しなければならない。血液濃縮装置からの残留血漿−バフィコート濃縮物の回収は、血漿保持用バッグから血液濃縮装置内へ、移送用バッグ内に血漿−バフィコート濃縮物を移動させるのに充分な量で血漿を圧送することによって達成できる。前述の通り、その他の生理溶液も使用できるが、かかる溶液は血液凝結タンパク質を含有していないことから、さほど好ましくない。
【0068】
フィブリノーゲン活性化物質との混合
創傷に対する塗布の直前に、血漿−バフィコート濃縮物は、フィブリノーゲン活性化物質と混合される。フィブリノーゲン活性化物質の添加は、以下で詳述する通り、血液凝固プロセスを開始させる。
【0069】
フィブリノーゲン活性化物質は周知のもので市販されており、トロンビン及びバトロクソビンを含む。トロンビンが好ましい。トロンビンはフィブリノーゲンをフィブリン単量体へと分割し、この単量体は、架橋結合してフィブリンメッシュを形成する。
【0070】
血漿−バフィコート濃縮物とフィブリノーゲン活性化物質の混合は、接着性凝塊を形成する迅速かつ有効な手段である。その上、トロンビンは、接着性を刺激し、血小板顆粒の含有物が追い出される放出反応を開始する血小板の潜在的活性化物質である。トロンビンは、Armour,Park Davisその他を含めた複数の供給元から市販されている。現在、市販のトロンビン調製物は、ウシ又はウマ由来のものである。トロンビンに対するアレルギー又は反応歴をもつ人については、標準的な予防措置を構じる必要がある。
【0071】
その他のフィブリノーゲンベースの密封材接着剤とは対照的に、活性化された血漿−バフィコート濃縮物は、カルシウム塩の添加を必要とすることなく、トロンビン単独に露呈した時点で、凝集性の強力なグルーを形成する。血小板に運ばれるカルシウムは、有効なフィブリン架橋結合を可能にするのに充分なものであることが立証された。血小板の存在下での添加されたイオンカルシウムの存在は、それにより血小板が凝塊からの血清を収縮し発現できるという望ましくない変換が可能となることから、一般に望まれない。従って、単独の溶解状態のフィブリノーゲン活性化物質が好ましく、予想外に有効である。しかしながら、血ぺいの緩慢な形成が望ましい利用分野においては、数分の時間にわたる血ぺいの形成のための血漿−バフィコート濃縮物内に存在するプロトロンビンからトロンビンを生成するのにカルシウムを単独で使用することができる。
【0072】
凝集性の均質な凝塊を生成するためには、フィブリノーゲン活性化物質と血漿−バフィコート濃縮物を、標的組織表面との接触に先立ち均等に混合させなければならない。これは、フィブリノーゲン活性化物質を溶解状態にし、次に2つの液体を混合することによって最も容易に達成される。市販のトロンビン調製物は、調製物を再構成するための希釈剤として無菌食塩水を伴って、乾燥した形で供給される。トロンビン活性の保存及び血漿−バフィコート濃縮物の成分との一貫性をもつその他の生理溶液を使用することも可能性ある。凝固速度は、創傷密封材の塗布を可能にするのに充分なほど遅いものの、ひとたび塗布されたならば急速な接着及び密封を確保するのに充分なほど速い速度に調整される。血ぺいを形成するのに充分なフィブリノーゲンの存在下で、凝塊形成速度は、最終的混合物内のフィブリノーゲン活性化物質の濃度に直接左右される。例えば1mlあたり100Uのトロンビンで、凝塊は、約3〜約5秒で形成し、50U/mlでは、速度は約15〜約20秒であり、10U/mlでは血ぺいは約60〜約120秒以内で形成する。従って、特定の利用分野の(最高約1〜2分の)より速い又はより遅い硬化時間に対する必要性は、フィブリノーゲン活性化物質の濃度を調整することによって満たすことができる。
【0073】
温度も又血ぺい形成の速度に影響を及ぼす。少量すなわち薄層内で一度に数ミリメートルの塗布は、混合に先立って成分を室温以上に暖める必要性なく、血ぺい形成を最大限に加速するのに充分な熱を標的組織が提供することを可能にする。最高42℃のさらに高い温度も利用できるが、このような温度はいかなる利益ももたらしてはくれない。望ましい場合、血液凝固時間を延長するため、さらに低い温度を使用することができる。
【0074】
2つの液体の体積比は、創傷密封材の強度、接着性及び血小板含有量を決定する上で重要である。フィブリノーゲン活性化物質溶液によるフィブリノーゲン及び血小板の希釈を最小限におさえることにより、これらの濃度は最大になる。血漿−バフィコート濃縮物とフィブリノーゲン活性化物質溶液の約5対1という体積比を用いるとうまくいったが、満足のいかない結果の発生率は、より高い体積比の場合に比べて大きい。約10:1〜約12:1の比が、高い信頼度で有効である。これ以上の体積比は、2つの溶液の徹底的な混合をより困難かつより信頼性の低いものにする。
【0075】
望ましい混合均等性度を達成するため、2つの方法が利用されてきた。両方の方法共、好ましくは室温で行なわれる。単一注射器方法では、混合を容易にするための約1〜2mlの空気と共に約10〜約12mlの血漿−バフィコート濃縮物が吸い込まれる。次に1mlのフィブリノーゲン活性化物質溶液が吸い込まれ、注射器は、垂直平面内で約180度にわたり約3回傾動させられ、気泡が注射器の長さを横断して2つの溶液を反復的に混合させることができるようにする。
【0076】
代替的には、急速に撹拌するべくロッド、スバテュラ又はその他の適切な器具を用いて小さなカップ又は容器の中で2つの溶液を混合することも可能である。
【0077】
複式流体かんがいシステム(Research Medical and Hemaedics社から入手可能)といったような市販の混合装置も試されてきたが、不適切であることがわかった。このような装置は、望ましくない希釈をひき起こす1:1という体積混合比に設計されており、これ以上の体積比に容易に適合させることができない。又Hemaedics 装置内の凝固頻度とその結果もたらされる開栓は過剰なものであった。創傷密封材の塗布は、組織表面に対する最大の接着性を得るためゲル化の最中に行なわれる必要がある。注射器方法では、状況の必要性に応じて、カニューレ、カテーテル、内視鏡、又はその他の適当な管又はノズルを用いて、直接、望ましい部位の上に射出することができる。創傷密封材は、薄層の形で塗布された場合に最も有効であり、さらに強度を高めるために必要に応じて付加的な層が塗布される。
【0078】
凝固用創傷密封材は、なお液状である間に望ましい部位全体にわたりカップから注ぎ込むこともできるし、或いはマスパチュラや類似の道具を用いてこて塗りすることもできる。いずれの場合でも、比較的乾燥した部位は、有効性にとって最良の機会を提供する。創傷密封材の塗布時点まで意図された部位上に吸収性のス ポンジやパッドを保持することは、きわめて有利である。
【0079】
血液処理キット
本発明には同様に、血漿−バフィコート濃縮物を形成するべく血液を処理するためのキットも内含されている。このキットは、遠心分 離による血液分画化セット及び血液濃縮装置を内含する。前述の通り、遠心分離式血液分画化セットには、2重遠心分離技術において赤血球を除去するための遠心分離機ボウル、細管及び収集用バッグが含まれている。好ましくは、キットの構成要素は無菌で使い捨てである。もう1つの実施形態においては、キットは同様に、血漿−バフィコート濃縮物を調製するための血液バッグスパイク、ストップコック及び細管も含んでいる。
【実施例】
【0080】
本発明の教示を特定の問題又は状況に応用することは、本書に含まれている教示に照らして当業者がもつ能力の範囲内にあるものであるということが理解できる。本発明の製品及びその代表的分離プロセス、用途及び製造方法の例を以下に示すが、これを本発明を制限するものとみなすべきではない。本書に含まれている全ての文献引用は、参考として明示的に内含されている。
【0081】
[実施例1]
本発明に基づく創傷密封材の調製及び使用例においては、57才の肥満した糖尿病の女性が、多レベル脊椎弓切除術から6週間後に、ゆ合していない創傷及び由来のわからない持続性の大規模な脳脊髄液(CSF)の漏出を訴えて来院した。3回の再検査手術でも漏出の部位を識別できず、血液貼剤、コラーゲンフォーム、移植脂肪パッド、圧迫及びヘッドでの休息により漏出を密封しようとする試みは全て失敗した。全身的及び局所的洗浄抗生物質処置、反復的壊死組織切除、湿及び乾パックそしてドレンの設置によっても、もとの外科的切除よりも50%大きくなった未ゆ合創傷に対処することはできなかった。
【0082】
その4回目の手術のための麻酔の誘発後、患者自身の血液を一単位、その肘前静脈から無菌状態で採取した。血液は、CPDA−1抗凝固物質(Terumo Corporation)を用いて、標準的な無菌採血セットの中に収集した。収集した血液の分析は、34%というヘマトクリット値及び224000000という血小板計数を示した。白血球計数は1mlにつき7200であり、示差分析は、63%の好中球、29%のリンパ球、5%の単球、2.2%の好酸球及び0.8%の好塩素球を示した。フィブリノーゲンは2.85mg/mlで検定された。
【0083】
収集した血液を、それ自体同じくElectromedics 製のELMD500 自己輸血システム上に取りつけられたElectromedics Inc.製の無菌使い捨て血液処理セットに連絡した。遠心分離機ボウル(125ml)を5600RPMで回転して約2000Gでボウル内の血液通路内で力を生成するようにセットした。次に血液を、分あたり50mlの速度でボウル内に圧送した。
【0084】
清澄な血漿の小さな中央コアのみが残っている状態で、充てんされた細胞でボウルがほぼ満杯になった時点で、血液ポンプを停止させ、遠心分離機速度を2400RPMまで減少させた。血漿収集用バッグに導く出口ラインを閉じ、もう1つの収集用バッグに導く出口ラインを開き、血液流を50ml/分で再開した。そのとき遠心分離機ボウル内に入る血液は、再び分画化されたが、さらに低い遠心力では、赤血球及び好中球は遠心分離機ボウル内に残った。
【0085】
血漿分画は、ボウルから退出し続け、大部分の血小板、単球及びリンパ球を共に第2の収集用バッグ内に運び込み、血漿−バフィコート混合物を生成した。血液はひきつづきボウル内へと、それが赤血球で満たされるような形で圧送され、中央血漿カラム及びひき込まれた形成要素を出口ライン内へ強制した。赤血球が最初に第2の収集用バッグ内に入り始める時点まで、流れは続行した。この時点で、血液流を停止させ、血漿−バフィコート混合物を含むバッグへの出口ラインをクランプ留めし、遠心分離機を停止させた。
【0086】
血漿−バフィコート混合物を含む血漿収集用バッグを次に開放した。血液ポンプを逆転させた。クランプを用いて、血小板の少ない赤血球及び血漿を第3の収集用バッグに導いた。収集した全血を処理し終るまで、このプロセスを反復した。再構築された血小板の枯渇した全血を次に、患者に再注入した。
【0087】
2重速度遠心分離分画化プロセスのための経過した処理時間は、18分であった。血漿−バフィコート混合物の収量は45mlで、血小板計数は1ミリリットルにつき628,000,000、白血球計数は1ミリリットルにつき14,300であった。白血球示差分析は、72%のリンパ球、21%の単球、6%の好中球、1%未満のその他のタイプを示した。ヘマトクリット値は0.3であった。フィブリノーゲンは2.80mg/mlであった。その後、この血漿−バフィコート混合物をさらに処理した。
【0088】
一般に入手可能な血液バッグスパイク、ストップコック及び細管の無菌アセンブリを、血小板バッグが3方ストップコックに連結されるような形で構築した。
【0089】
ストップコックの第2のポートが60ccの注射器へと導き、第3の脚部は、Minntech Inc.製の表面積0.25平方メートルの血液濃縮装置まで導き、この装置の出口の方は、Terumo Corporationの無菌血液移送バッグに連結された。その後、血漿−バフィコート混合物を60ccの注射器の中に吸い込んだ。取付けられたストップコックを調整することにより、注射器と血液濃縮装置の間の流路を開放した。−400トールの真空を、血液濃縮装置の排出ポートに加え、血漿−バフィコート濃縮物を生成するべく約2分間にわたり血液濃縮装置の血液通路を通って血漿を強制するように、60cc入り注射器のプランジャを圧縮した。
【0090】
真空を直ちに連結解除し、空の60cc入り注射器を通常生理食塩溶液を満たした20cc入り注射器と交換した。残留血漿−バフィコート濃縮物を装置から受入れ用移送バッグまで洗い流して、最終的な血漿−バフィコート濃縮物を形成するべく、血液濃縮装置内に食塩水を直ちに注入した。このプロセスを完了するにはわずか1分しか必要でなかった。
【0091】
血漿−バフィコート濃縮物は、18mlの粘性で黄褐色のこはく様の液体であった。分析によると血小板計数は、1ミリリットルあたり1,532,000,000であり白血球計数は35600であり、示差分析は変わらなかった。フィブリノーゲンは、6.68mg/mlと測定され、ヘマトクリット値は0.5%と測定された。
【0092】
この血漿−バフィコート濃縮物と20ccの注射器の中に吸い込ませ、無菌外科フィールド上で医療用カップ内に無菌状態で移送させた。2本の12cc入り注射器の各々の中に、9mlの血漿−バフィコート濃縮物を2mlの空気と共に吸い込ませ、この注射器に14ゲージのプラスチックのカニューレをとりつけ、取り置いた。さらに、1ミリリットルあたり1000Uの濃度を得るため、付随する無菌食塩水5mlの中に、5000単位のウシトロンビンUSP(Parke DavisからのThrombostat)を溶解させた。
【0093】
外科医が壊死組織切除及び創傷のその他の処置を終え、CSF漏出の見かけ上の部位を露呈した時点で、外科助手は12cc入り注射器の1本を回収して1mlのトロンビン溶液を吸い込んだ。垂直に180度だけ注射器をゆすることにより、気泡は2つの液体の休息な混合をひき起こした。注射器は、外科医に渡され、外科医は直ちに中味を直接望ましい組織部位上に押し出した。白っぽい凝塊が5秒以内に形成し、疑わしいCSF漏出部位を覆った。小さい自已由来の筋膜貼剤が、さらなる安定性を得る目的で凝塊全体の上に縫いつけられた。第2の血漿−バフィコート濃縮物の注射器の中味も同様に処理され、残りの創傷表面内に塗布された。創傷の従来通りの閉鎖が、小型シリコンサンプドレン及び乾式皮ふ包帯剤を使用して、達成された。
【0094】
患者は、術後48時間で座位に移され、見かけ上のCSF漏出は全くなかった。創傷排液は10cc未満で、術後72時間でドレンを引き抜いた。創傷は、周囲の組織の発赤を最低限におさえながら、創傷浸出物が全くない状態で、従来のゆ合を示した。患者は、術後4日目に無事退院した。3ヵ月の追跡調査時点で、患者は、CSF漏出の兆候無く完全にゆ合した創傷を示した。
【0095】
[実施例2]
本発明の血小板グルー創傷密封材のもう1つの使用例では、72才、体重58kgの女性が、10年来の補てつ僧帽弁の交換及び3重冠状動脈バイパス移植を伴う関心術及び心肺バイパスのため、診察を受けにきた。研究及び経験から、このタイプの患者が、高齢であること身体質量が小さいこと、再手術であること、そして心臓外科手術が組合さっていることを含めて、血液喪失及び輸血の必要性についての実質的なリスク要因をはらんでいることがわかった。この患者は、1500ml以上の術後胸部創傷排液を生成し、輸血を必要とするリスクは50%以上、多数の輸血のリスクは30%以上であると予測された。
【0096】
麻酔の誘発後、Electromedics 2重管腔ラインを介して右側内部頸静脈内に置かれ血液処理用使い捨てセットの入口ラインに連結されたカテーテルから採血した。同様にElectromedics製のくえん酸塩抗凝固物質溶液(3mgのくえん酸(無水)USP,26.3mgのくえん酸ナトリウム(含水)USP、一塩基リン酸ナトリウム(一水化物)USP及び23.2mgのデキストロースUSPを第2の管腔に連結し、かくして、くえん酸塩溶液15mg対患者の血液100mlの比率で、採血された状態の患者の血液と混和させた。
【0097】
Sorin Inc.製の血液処理用使い捨てセットの入口ラインを、患者からの血液流を制御する自己輸血システム(Dideco Inc.,BT795AT型)上の血液ポンプまで導いた。第1の分離段階のためには、遠心分離機の速度を4800RPMにセットし、血液流は100ml/分で始まった。細胞の少ない血漿分画を生成する前に、例1中で記述されている通り、遠心分離機ボウル(容量225ml)を充てんした。例1の場合と同様に、血流を中断させ、遠心分離機速度を2400RPMまで減少させ、血液流を50ml/分で再開させて、68ml量のバフィコート分画を生成した。
【0098】
注射器内への採取の後、分画化プロセスを続行して、心肺バイパスの中断後の再注入のための自己由来の血漿−バフィコート混合物及び血漿の貯蔵を作り出し、一方赤血球は、バイパスを開始する前に患者に戻した。
【0099】
例1にあるとおり、この場合にはAmicon Inc.からの血液濃縮装置を用いて、血漿−バフィコート混合物を濃縮した。生成された血漿−バフィコート濃縮物の量は26mlであった。血液のそのさまざまなプロセス段階における分析(患者から採血された状態、血漿−バフィコート混合物内、及び血漿−バフィコート濃縮物内)は、以下の通りであった。
【0100】
【表1】

【0101】
心肺バイパスの完了時点で、創傷密封材中に使用されていない、取っておいた残りの血漿及び血漿−バフィコート濃縮物を静脈中に投与した。血漿−バフィコート濃縮物を、例1の場合に記述した通りに、10ccの通常生理食塩溶液中に溶解させたトロンビンUSP(Armour,Inc)10000単位と共に、無菌フィールドに移行させた。血漿−バフィコート濃縮物を、2本の20cc入り注射器の中に同等に吸込ませ、トロンビン溶液を2本の5cc入り注射器内に同等に吸込ませた。各々の注射器に、Hemaedics, Inc製のスプレーノズルチップをとりつけた。
【0102】
塗布が望ましくなった時点で、外科医は、片手に血漿−バフィコート濃縮物の注射器を持ち、もう一方の手にトロンビンの注射器を持って、各々の中味を重なり合ったスプレーパターンで組織表面上に押し出す。4本の注射器全ての中味を押し出し、縦隔、心臓表面を覆う切除された索状帯、心臓切開術部位、大動脈の根部、胸部の内部壁及び切断された胸骨を覆った。ドレンを設置し、標準的プロトコルにより創傷を閉じた。
【0103】
術後の縦隔胸部排液合計は358mlであり、患者は、外科手術の翌朝、人工呼吸器を外され、ICUから一般病棟に移された。術後の経過は良好で、患者は、同種異系のの血液を必要とすることなく6日目に退院した。
【0104】
[実施例3]
血漿−バフィコート濃縮物における内因性トロンビンの再活性化のゲル化に対する効果を研究した。以下の表は、22℃でのゲル化に対して10%のくえん酸カルシウム対血漿−バフィコート濃縮物のさまざまな比率が及ぼす効果を例示している。この研究中、いかなる外因性フィブリノーゲン活性化物質も使用されなかった。
【0105】
【表2】

【0106】
ゲル化時間に対する濃度の効果を決定するため、研究を行なった。この研究では、10%のCaCl溶液1部分を、11.5部分の血漿−バフィコート濃縮物と混合した。
【0107】
【表3】

【0108】
この研究からわかるように、2〜30分のゲル化時間は、望ましい場合、血漿−バフィコート濃縮物に対するイオンカルシウムの添加によって生み出すことができる。
【0109】
[実施例4]
この例は、塩化カルシウムに対する露呈によって血ぺい形成が生み出される、血漿−バフィコート濃縮物及び磨砕された乾燥骨を用いた研究について記述している。この研究は、ウシの血液から生成され、570mg/dlのフィブリノーゲン濃度及び1,200,000,000/mlの血小板計数をもつ血漿−バフィコート濃縮物を用いて行なわれた。
【0110】
6つの異なる組成物を研究した。ウシの血漿−バフィコート濃縮物を単独で用いるか、又は、10%のCaCl又は市販の磨砕乾燥骨粉と組合わせた。研究結果は、以下の表に例示されている。この表では、血漿−バフィコート濃縮物とCaClの比は、濃縮物ml数対CaClのml数の単位で表わされており、濃縮物対骨粉の比率は、濃縮物ml数対骨粉cc数の単位で表わされている。組成物のいずれにも、トロンビンは全く添加されなかった。全ての組成物を、室温(22℃)でカバーをした状態で放置した。
【0111】
【表4】

【0112】
標本(2)及び(3)を(1)に比較することにより、この研究は、全ての遊離くえん酸塩を中和するのに必要とされる量より余分に存在する場合に、緩慢ではあるものの血漿−バフィコート濃縮物を凝固するのにカルシウムイオン単独でも充分である、ということを確認した。標本(4),(5)及び(6)は、乾燥磨砕骨、特に水酸化リン灰石が同じ効果を持ちうるということを実証した。これは、固体骨によるくえん酸塩のキレート化に起因するものであってかくして血ぺい形成のためにカルシウムイオンが遊離されるか、又は、骨基質からカルシウムイオンを溶解させて凝固が起こりうるのに充分な遊離イオン化カルシウムを提供することになるか、又はその両方の組合せによるものである。標本(4)は同様に、はるかに大量の血漿−バフィコート濃縮物を凝固させるのに、少量の骨粉しか必要でないことをも実証した。標本(5)及び(6)は、血漿−バフィコート濃縮物の量との関係において増大する量の骨粉を混和することによって、増々堅いゲルを生成することができるということを示した。これらのゲルは、混合直後に優れた作業特性を生み出し、これにより、望ましいあらゆる形状又は形態を形成することが可能となる。放置時点で、これらの混合物は、高い堅さ及び強度を達成する。
【0113】
血液凝固を開始させるためにその他の技術に増してカルシウムの使用がもつ利点は、患者のいくつかの合併症の源である外因性トロンビンを必要としないことにある。標本(4),(5)及び(6)によって例示されるもう1つの利点は、望まれるほぼ全ての形態にぴったり合うように組成物を成形できることであり、特に標本(5)及び(6)においては、堅いペーストの形成は、密封材が血ぺい形成に先立ち意図された塗布部位から動きここから離れがちになるのを排除する。同時に、血漿−バフィコート濃縮物の存在は、骨粉を、細かい粒子状から、あらゆる受容体部位への塗布を容易にする成形可能なペーストへと変化させる。もう1つの利点は、自己由来の骨髄質と共に用いられた場合に創傷ゆ合を促進し完了させたということが示されてきた。血小板からの組織成長刺激物質の存在、にある。同じ利点は、トロンビン露呈の必要なく、水酸化リン灰石又はもう1つの骨成長基質の供給源に対しても付与され得る。
【0114】
この研究は、人間及び類似の獣医学的利用分野における骨の補修のための血小板グルー創傷密封材の使用がもつ利点を例示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.血漿;
b.1.0×10細胞/ml以上の濃度の血小板;及びc.5mg/ml以上の濃度のフィブリノーゲンを含んで成る血漿−バフィコート濃縮物。
【請求項2】
血小板濃度が約1.0×10細胞/ml〜約2.5×10細胞/mlである請求項1に記載の血漿−バフィコート濃縮物。
【請求項3】
フィブリノーゲン濃度が約5〜約15mg/mlである、請求項1に記載の血漿−バフィコート濃縮物。
【請求項4】
濃縮物が少なくとも3.0×10細胞/mlの濃度で白血球をさらに含んでいる請求項1に記載の血漿−バフィコート濃縮物。
【請求項5】
白血球濃度が約3.0×10細胞/ml〜約6.0×10細胞/mlである請求項4に記載の血漿−バフィコート濃縮物。
【請求項6】
白血球が約60〜約70%のリンパ球、約15〜約25%の単球、及び約5〜約25%の好中球を含んで成る、請求項5に記載の血漿−バフィコート濃縮物。
【請求項7】
a.血漿;
b.1.0×10細胞/mlの濃度の血小板;
c.少なくとも5mg/mlの濃度のフィブリノーゲン;
d.血ぺい形成を開始させるのに充分な濃度のフィブリノーゲン活性化物質、を含んで成る創傷密封材。
【請求項8】
3.0×10細胞/ml以上の濃度でさらに白血球を含んで成る請求項7に記載の創傷密封材。
【請求項9】
フィブリノーゲン活性化物質がトロンビン又はバトロクソビンから成るグループの中から選択される請求項7に記載の創傷密封材。
【請求項10】
フィブリノーゲン活性化物質がトロンビンである請求項9に記載の創傷密封材。
【請求項11】
トロンビンは、密封材の血漿成分の中に存在するプロトロンビンから産生されている請求項10に記載の創傷密封材。
【請求項12】
a.赤血球を除去し血漿−バフィコート混合物を生成するべく、凝固阻止された血液を遠心分離する段階;及びb.血漿−バフィコート濃縮物を生成するべく混合物から水を除去する段階、を含んで成る血液処理方法。
【請求項13】
創傷密封材を製造するべく、血漿−バフィコート濃縮物をフィブリノーゲン活性化物質と混合する段階をさらに含んで成る請求項12に記載の方法。
【請求項14】
創傷密封材を創傷に塗布する段階をさらに含んで成る請求項13に記載の方法。
【請求項15】
段階(a)は、a.血液から血漿を除去し、血漿−バフィコート−赤血球混合物を生成するべく凝固阻止された血液を遠心分離すること;及びb.赤血球を除去し血漿−バフィコート濃合物を生成するべく、血漿−バフィコート−赤血球の混合物を遠心分離すること;
によって実施される、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
血液が術中に処理される請求項12に記載の方法。
【請求項17】
段階(b)において血漿から除去される水の量がもとの血漿量の約50〜約75パーセントである、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
血漿−バフィコート濃縮物の白血球濃度が、血液の白血球濃度の少なくとも5倍である請求項12に記載の方法。
【請求項19】
血漿−バフィコート濃縮物のリンパ球、単球及び血小板の濃度が、血液のそれぞれの濃度の少なくとも10倍である請求項18に記載の方法。
【請求項20】
a.赤血球を除去し血漿−バフィコート混合物を生成するべく、凝固阻止された血液を遠心分離する段階;
b.血漿−バフィコート濃縮物を生成するべく、混合物から水を除去する段階;
c.創傷密封材を製造するべく、血漿−バフィコート濃縮物をフィブリノーゲン活性化物質と混合する段階;及びd.損傷を受けた組織に創傷密封材を塗布する段階;
を含んで成る、創傷の密封を促進する方法。
【請求項21】
血液及び組織が人間のものである請求項20に記載の方法。
【請求項22】
血液及び組織が同じ動物からのものである請求項20に記載の方法。
【請求項23】
遠心分離による血液分画化セット及び血液濃縮装置を含んで成る血液処理キット。
【請求項24】
さらに、血液バッグスパイク、ストップコック及び細管を含んで成る、請求項23に記載の血液処理キット。
【請求項25】
構成要素が使い捨てである、請求項24に記載の血液処理キット。

【公開番号】特開2010−5410(P2010−5410A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−179053(P2009−179053)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【分割の表示】特願平8−526886の分割
【原出願日】平成8年2月28日(1996.2.28)
【出願人】(509217530)インターポア オーソピーディクス,インコーポレイティド (1)
【Fターム(参考)】