説明

血栓形成抑制剤

【課題】血栓形成抑制剤を提供する。
【解決手段】本発明の血栓形成抑制剤は、有効成分としてトリフルサル及びクロピドグレル二硫酸塩を含む。トリフルサルとクロピドグレル二硫酸塩との質量比は、(100〜650):(30〜150)であり、好ましくは、(1〜20):1であり、さらに好ましくは、(3〜6):1であり、最も好ましくは、3:1又は6:1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血栓形成抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
心筋梗塞、脳血栓などの血栓性疾患の発病率、障害発生率及び死亡率は、非常に高い。冠状動脈又は脳血管動脈の狭窄及び血栓形成は、血管が損傷し、アテローム性動脈硬化症になることによって引き起こされる。血管が損傷した際、露出した皮下組織に血小板が粘着し、血小板が内容物であるアデノシン二リン酸と、膜リン脂質の代謝によって形成されるトロンボキサンA(TXA)と、を放出する。アデノシン二リン酸及びトロンボキサンAは、循環中の血小板を活性化し、フィブリノゲンが参与することにより、血小板を凝集させる。これにより、血小板血栓が形成される。また、血管の損傷によって凝血システムが活性化される。この際、トロンビンが生成され、血小板を一層凝集させる。これにより、フィブリンが形成され、交差結合により、動脈血栓が安定的に固定される。抗血小板剤は、血小板の粘着、凝集及び解放を抑制することにより、血栓の形成を抑制するものである。従って、血栓性疾患の予防及び治療において、重要な薬剤である。
【0003】
トリフルサルは、抗血小板剤に属する。トリフルサルは、血栓性疾患及び合併症の予防及び治療において、アセチルサリチル酸(アスピリン)よりも特殊な効果を有する。トリフルサルは、アスピリンと比較し、シクロオキシゲナーゼ及びサイクリックAMPホスホジエステラーゼの活性を同時に抑制し、血小板の凝集を抑制する能力が高い。しかし、薬用量の場合、プロスタサイクリン生合成への影響が少なく、出血の危険性も少ない。研究により、末梢動脈閉塞性疾患(PAOD)患者に重篤な心血管の疾患が発生するのを予防することに対しては、トリフルサルとアスピリンとには、差がないが、重篤な出血性合併症の発生率は、アスピリンよりトリフルサルの方が顕著に低いことが示された。
【0004】
クロピドグレルは、頻繁に使用される抗血小板剤である。そのメカニズムは、ADPレセプタであるP2Y12に不可逆変化を発生させ、ADPが誘導する血小板凝集を選択的に抑制するものである。また、コラーゲン及びトロンビンによって誘導される血小板凝集も抑制することができる。一般に、クロピドグレルの効果は、アスピリンよりも若干優れるとされる。しかし、その他の有効性に関しては、統計学的な差異がない。また、如何なる専門家もクロピドグレルがアスピリンより優れることを示す依拠を開示していない。しかし、高危険度の冠状脳血管疾患又は末梢血管疾患の患者中、低薬量のアスピリンの禁忌者にとって、クロピドグレル(75mg/d)は、好適な代替薬剤である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、血栓形成抑制剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するために、請求項1の発明は、有効成分がトリフルサル及びクロピドグレル二硫酸塩(clopidogrel bisulfate)であり、トリフルサルとクロピドグレル二硫酸塩との質量比が(100〜650):(30〜150)であることを特徴とする血栓形成抑制剤である。
【0007】
請求項2の発明は、薬剤の有効成分中、トリフルサルとクロピドグレル二硫酸塩との質量比が(100〜600):(30〜100)であり、好ましくは、(100〜600):(50〜100)であることを特徴とする請求項1に記載の血栓形成抑制剤である。
【0008】
請求項3の発明は、薬剤の有効成分中、トリフルサルとクロピドグレル二硫酸塩との質量比が(100〜600):(92〜104)であり、好ましくは、(300〜600):(92〜104)であることを特徴とする請求項1に記載の血栓形成抑制剤である。
【0009】
請求項4の発明は、薬剤の有効成分中、トリフルサルとクロピドグレル二硫酸塩との質量比が(250〜650):(50〜150)であることを特徴とする請求項1に記載の血栓形成抑制剤である。
【0010】
請求項5の発明は、薬剤の有効成分中、トリフルサルとクロピドグレル二硫酸塩との質量比が(285〜315):(95〜105)であることを特徴とする請求項1に記載の血栓形成抑制剤である。
【0011】
請求項6の発明は、薬剤の有効成分中、トリフルサルとクロピドグレル二硫酸塩との質量比が(570〜630):(95〜105)であることを特徴とする請求項1に記載の血栓形成抑制剤である。
【0012】
請求項7の発明は、薬剤の有効成分中、トリフルサルとクロピドグレル二硫酸塩との質量比が(1〜20):1であり、好ましくは、(3〜6):1であり、最も好ましくは、3:1又は6:1であることを特徴とする請求項1に記載の血栓形成抑制剤である。
【0013】
請求項8の発明は、薬剤の有効成分中、トリフルサルとクロピドグレル二硫酸塩との質量比が(300〜600):98±5%であり、好ましくは、300:97.875又は600:97.875であることを特徴とする請求項1に記載の血栓形成抑制剤である。
【0014】
請求項9の発明は、単位投与量における薬剤中、130mg〜800mgの有効成分を含み、好ましくは、130mg〜700mgの有効成分を含むことを特徴とする請求項1から8に記載の血栓形成抑制剤である。
【0015】
請求項10の発明は、単位投与量における薬剤中、100mg〜600mgのトリフルサル及び30mg〜100mgのクロピドグレル二硫酸塩を含み、好ましくは、100mg〜600mgのトリフルサル及び50mg〜100mgのクロピドグレル二硫酸塩を含むことを特徴とする請求項9に記載の血栓形成抑制剤である。
【0016】
請求項11の発明は、単位投与量における薬剤中、100mg〜600mgのトリフルサル及び92mg〜104mgのクロピドグレル二硫酸塩を含み、好ましくは、300mg〜600mgのトリフルサル及び92mg〜104mgのクロピドグレル二硫酸塩を含むことを特徴とする請求項9に記載の血栓形成抑制剤である。
【0017】
請求項12の発明は、単位投与量における薬剤中、285mg〜315mgのトリフルサル及び95mg〜105mgのクロピドグレル二硫酸塩を含み、好ましくは、300mgのトリフルサル及び100mgのクロピドグレル二硫酸塩を含むことを特徴とする請求項9に記載の血栓形成抑制剤である。
【0018】
請求項13の発明は、単位投与量における薬剤中、570mg〜630mgのトリフルサル及び95mg〜105mgのクロピドグレル二硫酸塩を含み、好ましくは、600mgのトリフルサル及び100mgのクロピドグレル二硫酸塩を含むことを特徴とする請求項9に記載の血栓形成抑制剤である。
【0019】
請求項14の発明は、薬剤は、経口剤であることを特徴とする請求項1〜13に記載の血栓形成抑制剤である。
【0020】
請求項15の発明は、薬剤は、タブレット剤、カプセル剤、顆粒剤又は乾燥懸濁剤であることを特徴とする請求項14に記載の血栓形成抑制剤である。
【0021】
請求項16の発明は、薬剤は、補助剤を含み、補助剤は、微結晶性セルロース、デンプングリコール酸ナトリウム、デキストリン、乳糖及びステアリン酸マグネシウム中の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1から請求項15に記載の血栓形成抑制剤である。
【0022】
請求項17の発明は、薬剤は、心血管疾患及び脳血管疾患の治療に応用されることを特徴とする請求項1から請求項16に記載の血栓形成抑制剤である。
【0023】
請求項18の発明は、心血管疾患及び脳血管疾患は、血小板が凝集されることによって引き起こされる心血管疾患及び脳血管疾患であることを特徴とする請求項17に記載の血栓形成抑制剤である。
【0024】
請求項19の発明は、心血管疾患及び脳血管疾患は、狭心症、冠動脈血栓及び脳塞栓症中の少なくとも1つであることを特徴とする請求項18に記載の血栓形成抑制剤である。
【0025】
請求項20の発明は、薬剤は、血小板凝集及び/又は血栓形成の抑制に応用されることを特徴とする請求項1から請求項16に記載の血栓形成抑制剤である。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、心血管疾患及び脳血管疾患の治療薬を提供するものである。本発明の提供する薬剤の有効成分は、トリフルサル及びクロピドグレル二硫酸塩であり、両者は協同作用を有する。実験結果から、トリフルサルとクロピドグレル二硫酸塩との混合薬剤は、トリフルサルとクロピドグレルとの混合薬剤(対照薬剤)より、血栓形成及び血小板凝集の抑制効果が高いことが示された。また、本発明のトリフルサルとクロピドグレル二硫酸塩との混合薬剤は、トリフルサル単体の薬剤及びクロピドグレル二硫酸塩単体の薬剤より、血栓形成及び血小板凝集の抑制効果が遥かに高いことが示された。また、6ヶ月間の安定性試験から、トリフルサルとクロピドグレル二硫酸塩との混合薬剤は、トリフルサルとクロピドグレルとの混合薬剤(対照薬剤)より、安定性が高いことが示された。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】薬剤IIのスペクトル図である。
【図2】対照薬剤IIのスペクトル図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の目的、特徴および効果を示す実施形態を図面に沿って詳細に説明する。以下に示す実施例中の実験方法は、特に説明がない限り、従来の実験方法である。以下に示す実施例中の実験材料は、特に説明がない限り、一般の生化学試薬の販売業者から購入可能なものである。以下の実施例中の%は、特に説明がない限り、含有量の重量パーセントである。
【0029】
実験に使用したトリフルサル、クロピドグレル及びクロピドグレル二硫酸塩は、大連天宇海浜製薬有限公司の新薬研究開発センターから購入した。
【0030】
(実施例1)
1.ラットに対する血栓形成抑制作用
体重が300g〜400gのSDラット130匹を雄雌各半数ずつ準備した。それをランダムに13群に分け(各群10匹ずつ)、投薬状況の違いに応じ、第1群〜第13群とした。第1群〜第13群の投薬内容を以下に示す。
【0031】
第1群:対照群である。生理食塩水を与えた。
【0032】
第2群:トリフルサルとクロピドグレルとの混合薬剤の対照群である。トリフルサルとクロピドグレルとの混合薬剤を投与した。トリフルサルとクロピドグレルとの重量比は、1:1である。
【0033】
第3群:トリフルサルとクロピドグレル二硫酸塩との混合薬剤を投与した。トリフルサルとクロピドグレル二硫酸塩との重量比は、20:1である。
【0034】
第4群:トリフルサルとクロピドグレル二硫酸塩との混合薬剤を投与した。トリフルサルとクロピドグレル二硫酸塩との重量比は、12:1である。
【0035】
第5群:トリフルサルとクロピドグレル二硫酸塩との混合薬剤を投与した。トリフルサルとクロピドグレル二硫酸塩との重量比は、6:1である。
【0036】
第6群:トリフルサルとクロピドグレル二硫酸塩との混合薬剤を投与した。トリフルサルとクロピドグレル二硫酸塩との重量比は、3:1である。
【0037】
第7群:トリフルサルとクロピドグレル二硫酸塩との混合薬剤を投与した。トリフルサルとクロピドグレル二硫酸塩との重量比は、1:1である。
【0038】
第8群:トリフルサルのみを投与した。
【0039】
第9群:クロピドグレル二硫酸塩のみを投与した。
【0040】
第10群:トリフルサルとクロピドグレルとの混合薬剤を投与した。トリフルサルとクロピドグレルとの重量比は、20:1である。
【0041】
第11群:トリフルサルとクロピドグレルとの混合薬剤を投与した。トリフルサルとクロピドグレルとの重量比は、12:1である。
【0042】
第12群:トリフルサルとクロピドグレルとの混合薬剤を投与した。トリフルサルとクロピドグレルとの重量比は、6:1である。
【0043】
第13群:トリフルサルとクロピドグレルとの混合薬剤を投与した。トリフルサルとクロピドグレルとの重量比は、3:1である。
【0044】
実験方法:各群に薬剤を胃内投与した。対照群には、同質量の生理食塩水を与えた。1日1回、毎回、体重1kgあたり10mgの薬剤(混合薬剤の場合、10mgは、混合薬剤の質量)を5日間投与した。
【0045】
ラットへの投薬5日目の最後の投薬から1時間後に、ラットの体重を測定し、3%のペントバルビタール麻酔を注射した(体重1kgあたり1ml)。その後、ラットを仰臥位で固定し、頚部中央を切開し、気管、両側の頚動脈及び静脈を分離した。ポリエチレン管内に6cmの絹糸を通し、ポリエチレン管内をヘパリン生理食塩水で充満させた。ポリエチレン管の一方の端部を左側の頚静脈に挿入した後、凝集を阻害するために、ポリエチレン管からヘパリンを正確に注入し、ポリエチレン管の他方の端部を右側の頚動脈に挿入した。その後、動脈鉗子を開け、A−Vバイパスを形成した。血流を15分間開放し、ポリエチレン管を取り出し、絹糸(血栓を含む)を引き出した。絹糸を重量を測定した小型ペトリ皿中に置き、化学天秤で血栓の湿重量を測定した。総重量から絹糸の重量を引いたものが血栓の重量である。血栓形成抑制率(%)=(生理食塩水対照群の血栓重量−投薬群の血栓重量)/生理食塩水対照群の血栓重量×100%である。結果を表1に示す。
【0046】
(表1)各投薬群の血栓重量比較(χ±s)

注:生理食塩水対照群との比較 **P<0.01
実験結果から以下に示すことが分かった。トリフルサルとクロピドグレル又はクロピドグレル二硫酸塩とは、血栓形成阻害に対して協同作用がある。質量比が1:1であるトリフルサル及びクロピドグレル二硫酸塩の群(第7群)の血栓形成抑制作用は、質量比が1:1であるトリフルサル及びクロピドグレルの群(第2群)より優れる。他の質量比の薬剤においても、トリフルサル及びクロピドグレル二硫酸塩の群の血栓形成抑制作用は、トリフルサル及びクロピドグレルの群より優れる。トリフルサル及びクロピドグレル二硫酸塩の群中、6:1及び3:1の質量比が優れる。また、トリフルサル及びクロピドグレル二硫酸塩の群は、トリフルサル単体の群及びクロピドグレル二硫酸塩単体の群より優れる。
【0047】
2.ラットの血小板凝集に対する影響(比濁法)
体重が300g〜400gのSDラット130匹を雄雌各半数ずつ準備した。それをランダムに13群に分け(各群10匹ずつ)、投薬状況の違いに応じ、第1群〜第13群とした。第1群〜第13群の投薬内容を以下に示す。
【0048】
第1群:対照群である。生理食塩水を与えた。
【0049】
第2群:トリフルサルとクロピドグレルとの混合薬剤の対照群である。トリフルサルとクロピドグレルとの混合薬剤を投与した。トリフルサルとクロピドグレルとの重量比は、1:1である。
【0050】
第3群:トリフルサルとクロピドグレル二硫酸塩との混合薬剤を投与した。トリフルサルとクロピドグレル二硫酸塩との重量比は、20:1である。
【0051】
第4群:トリフルサルとクロピドグレル二硫酸塩との混合薬剤を投与した。トリフルサルとクロピドグレル二硫酸塩との重量比は、12:1である。
【0052】
第5群:トリフルサルとクロピドグレル二硫酸塩との混合薬剤を投与した。トリフルサルとクロピドグレル二硫酸塩との重量比は、6:1である。
【0053】
第6群:トリフルサルとクロピドグレル二硫酸塩との混合薬剤を投与した。トリフルサルとクロピドグレル二硫酸塩との重量比は、3:1である。
【0054】
第7群:トリフルサルとクロピドグレル二硫酸塩との混合薬剤を投与した。トリフルサルとクロピドグレル二硫酸塩との重量比は、1:1である。
【0055】
第8群:トリフルサルのみを投与した。
【0056】
第9群:クロピドグレル二硫酸塩のみを投与した。
【0057】
第10群:トリフルサルとクロピドグレルとの混合薬剤を投与した。トリフルサルとクロピドグレルとの重量比は、20:1である。
【0058】
第11群:トリフルサルとクロピドグレルとの混合薬剤を投与した。トリフルサルとクロピドグレルとの重量比は、12:1である。
【0059】
第12群:トリフルサルとクロピドグレルとの混合薬剤を投与した。トリフルサルとクロピドグレルとの重量比は、6:1である。
【0060】
第13群:トリフルサルとクロピドグレルとの混合薬剤を投与した。トリフルサルとクロピドグレルとの重量比は、3:1である。
【0061】
実験方法:各群に薬剤を胃内投与した。対照群には、同質量の生理食塩水を与えた。1日1回、毎回、体重1kgあたり10mgの薬剤(混合薬剤の場合、10mgは、混合薬剤の質量)を7日間投与した。
【0062】
ラットへの投薬7日目の最後の投薬から30分後に、ラットの眼部後部の動脈から採血し、凝固を阻止するために、0.13%のクエン酸ナトリウムを添加した(血液と抗凝血剤との容積比は、9:1)。血液をシリコン試験管に注入し、プラスチックフィルムでシリコン試験管口に蓋をした。シリコン試験管を3回から4回転倒混和し、血液と抗凝血剤とを十分に混合させた。清潔なろ紙を用いて管壁に残留した血液を取り除き、シリコン試験管の蓋をきつく閉めた。次に、1000r/minの速度で10分間遠心処理し、上層の血漿(PRP)を取り出した。残った血漿を3000r/minの速度で20分間遠心処理した。下層の透明液体がPPPである。PRP中の血小板数を計数し、PPPを用いてPRP中の血小板を200×10/Lに調整した。次に、シリコン処理されたピペットを用いて、PPP及びPRPを450ulずつ不透明管内に入れた。測定時、まず、PPP標本により、記録計器の透光度を100に調整した。その後、PRP標本を測定孔に入れ、透光度を10に調節し、磁気撹拌棒を加え、37℃で3分間予熱した。記録計器を開け、PRP中に血小板凝集を誘導するアデノシン二リン酸(ADP)を加えた。CHROND−Log血小板凝集測定装置(米国製)を用いて、凝集曲線から血小板の最大凝集率Amax(%)を算出した。Amax=h1/h0×100%である。血小板凝集抑制率=[(生理食塩水群のAmax−投薬群のAmax)/生理食塩水群のAmax]×100%である。
【0063】
実験結果を表2に示す。
【0064】
(表2)各投薬群のラットの血小板凝集性への影響(χ±s)

注:生理食塩水対照群との比較 **P<0.01
実験結果から以下に示すことが分かった。トリフルサルとクロピドグレル二硫酸塩との混合薬剤の血小板凝集抑制率は、トリフルサル単体及びクロピドグレル二硫酸塩単体より高い。また、他の質量比の薬剤においても、トリフルサルとクロピドグレル二硫酸塩との混合薬剤の血小板凝集抑制率は、トリフルサルとクロピドグレルとの混合薬剤より高い。
【0065】
3.本発明の薬剤の安定性
以下の薬剤I〜薬剤Vに示す比率で各種薬剤を調合した。
【0066】
薬剤I:トリフルサルとクロピドグレル二硫酸塩との質量比が1:1
薬剤II:トリフルサルとクロピドグレル二硫酸塩との質量比が3:1
薬剤III:トリフルサルとクロピドグレル二硫酸塩との質量比が6:1
薬剤IV:トリフルサルとクロピドグレル二硫酸塩との質量比が12:1
薬剤V:トリフルサルとクロピドグレル二硫酸塩との質量比が20:1
対照薬剤I:トリフルサルとクロピドグレルとの質量比が1:1
対照薬剤II:トリフルサルとクロピドグレルとの質量比が3:1
対照薬剤III:トリフルサルとクロピドグレルとの質量比が6:1
対照薬剤IV:トリフルサルとクロピドグレルとの質量比が12:1
対照薬剤V:トリフルサルとクロピドグレルとの質量比が20:1
各10gの薬剤を薬用プラスチック瓶内に装入した。温度が40℃±2℃で、相対湿度が75%±5%の条件下において、6ヶ月間放置した。0、1、3及び6ヶ月後に外観を観察し、有効成分を測定した。有効成分の測定には、高性能液体クロマトグラフィー法を用いた。クロマトグラフィーカラムは、シアノ基カラムであった。流動相は、メタノール−水−トリエチルアミン(体積比は、500:500:2であり、リン酸により、phを3.8に調整した)であった。流動速度は、1ml/minであった。検出波長は、235nmであった。カラム温度は、35℃であった。注入量は、20μlであった。実験の結果、クロピドグレル二硫酸塩とトリフルサルとを完全に分離させることができ、クロピドグレルとトリフルサルとを完全に分離させることができ、良好な分離性を有した。クロピドグレル二硫酸塩の12.0mg/l〜100.0mg/l内における質量濃度は、ピーク面積と良好な直線関係にあり、回帰方程式は、A=0.176C+0.0474r=0.9995であった。クロピドグレルの9.2mg〜75.9mg/l内における質量濃度は、ピーク面積と良好な直線関係にあり、回帰方程式は、A=0.191C+0.0584r=0.9997であった。トリフルサルの38.4mg/l〜320.0mg/l内における質量濃度は、ピーク面積と良好な直線関係にあり、回帰方程式は、A=0.2991C+0.9882r=0.9997であった。クロピドグレル二硫酸塩、クロピドグレル及びトリフルサルの平均回収率は、それぞれ、99.7±1.80%、99.2±1.01%及び100.2±0.81%であったため、クロピドグレル二硫酸塩、クロピドグレル及びトリフルサルの測定には、高速液体クロマトグラフィー法(HPLC法)が適用された。クロピドグレルの保持時間は、15.165分間であった。トリフルサルの保持時間は、約7.682分間であった。クロピドグレル二硫酸塩の保持時間は、約15.298分間であった。薬剤IIのスペクトル図を図1に示し、対照薬剤IIのスペクトル図を図2に示す。結果を表3及び表4に示す。
【0067】
(表3)各経過時間後における薬剤中のクロピドグレル二硫酸塩及びトリフルサルの残余質量

(表4)各経過時間後における薬剤中のクロピドグレル及びトリフルサルの残余質量

以上の結果から、各質量比におけるトリフルサルとクロピドグレル二硫酸塩との混合薬剤の室温における安定性は、トリフルサルとクロピドグレルとの混合薬剤より優れることが示された。
【0068】
(実施例2)
心血管疾患及び脳血管疾患の治療薬(カプセル剤)の製造及び応用
1.トリフルサル及びクロピドグレル二硫酸塩のカプセル剤の製造
トリフルサル100gとクロピドグレル二硫酸塩30gとを均一に混合した後、ステアリン酸マグネシウム2gを加え、均一に混合した後、カプセル1000粒に充填した。
【0069】
2.トリフルサル及びクロピドグレル二硫酸塩のカプセル剤の製造
トリフルサル600gとクロピドグレル二硫酸塩100gとを均一に混合した後、デキストリンを適量加え、均一に混合した後、顆粒状にし、その後、カプセル1000粒に充填した。
【0070】
3.トリフルサル及びクロピドグレルのカプセル剤の製造
トリフルサル300g及びクロピドグレル75gにカルボキシメチルデンプン120g及びステアリン酸マグネシウム5gを加え、均一に混合した後、カプセル1000粒に充填した。
【0071】
4.トリフルサル及びクロピドグレルのカプセル剤の製造
トリフルサル600gとクロピドグレル75gとを均一に混合した後、デキストリンを適量加え、均一に混合した後、顆粒状にし、その後、カプセル1000粒に充填した。
【0072】
5.トリフルサル及びクロピドグレル二硫酸塩のカプセル剤の製造
トリフルサル300gとクロピドグレル二硫酸塩97.875gとカルボキシメチルデンプン100gとステアリン酸マグネシウム2.1gとを均一に混合した後、カプセル1000粒に充填した。
【0073】
(実施例3)
心血管疾患及び脳血管疾患の治療薬(タブレット剤)の製造
1.トリフルサル600mg及びクロピドグレル二硫酸塩97.9mgを含有するタブレット剤の製造
クロピドグレル二硫酸塩97.9mgと無水コロイド状二酸化ケイ素2mgとを混合した後、膠化コーンスターチ30mg及び無水乳糖20mgを加えて混合し、トリフルサル600mg及び微結晶性セルロース30mgを加えた後、成形した。
【0074】
2.トリフルサル及びクロピドグレル二硫酸塩の混合薬剤(タブレット剤)の製造
トリフルサル300gとクロピドグレル二硫酸塩97.875gとを均一に混合した後、微結晶性セルロース150g及び架橋ポリビニルピロリドン10gを加えた。その後、粉砕し、エタノールによって軟化させた。次に、60メッシュの篩で篩った後、粒剤にし、50℃で乾燥させた。次に、60メッシュの篩で整粒し、カルボキシルメチルデンプンナトリウム10g、アスパルテーム2g及びステアリン酸マグネシウム30gを加えて均一に混合し、成形して1000個のタブレット剤を製造した。
【0075】
3.トリフルサル及びクロピドグレル二硫酸塩の混合薬剤(タブレット剤)の製造
トリフルサル600g及びクロピドグレル二硫酸塩97.875gにデンプン及びステアリン酸マグネシウムを適量加え、直接成形して1000個のタブレット剤を製造した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分がトリフルサル及びクロピドグレル二硫酸塩であり、前記トリフルサルと前記クロピドグレル二硫酸塩との質量比が(100〜650):(30〜150)であることを特徴とする血栓形成抑制剤。
【請求項2】
前記薬剤の有効成分中、前記トリフルサルと前記クロピドグレル二硫酸塩との質量比が(100〜600):(30〜100)であり、好ましくは、(100〜600):(50〜100)であることを特徴とする請求項1に記載の血栓形成抑制剤。
【請求項3】
前記薬剤の有効成分中、前記トリフルサルと前記クロピドグレル二硫酸塩との質量比が(100〜600):(92〜104)であり、好ましくは、(300〜600):(92〜104)であることを特徴とする請求項1に記載の血栓形成抑制剤。
【請求項4】
前記薬剤の有効成分中、前記トリフルサルと前記クロピドグレル二硫酸塩との質量比が(250〜650):(50〜150)であることを特徴とする請求項1に記載の血栓形成抑制剤。
【請求項5】
前記薬剤の有効成分中、前記トリフルサルと前記クロピドグレル二硫酸塩との質量比が(285〜315):(95〜105)であることを特徴とする請求項1に記載の血栓形成抑制剤。
【請求項6】
前記薬剤の有効成分中、前記トリフルサルと前記クロピドグレル二硫酸塩との質量比が(570〜630):(95〜105)であることを特徴とする請求項1に記載の血栓形成抑制剤。
【請求項7】
前記薬剤の有効成分中、前記トリフルサルと前記クロピドグレル二硫酸塩との質量比が(1〜20):1であり、好ましくは、(3〜6):1であり、最も好ましくは、3:1又は6:1であることを特徴とする請求項1に記載の血栓形成抑制剤。
【請求項8】
前記薬剤の有効成分中、前記トリフルサルと前記クロピドグレル二硫酸塩との質量比が(300〜600):98±5%であり、好ましくは、300:97.875又は600:97.875であることを特徴とする請求項1に記載の血栓形成抑制剤。
【請求項9】
単位投与量における前記薬剤中、130mg〜800mgの前記有効成分を含み、好ましくは、130mg〜700mgの前記有効成分を含むことを特徴とする請求項1から8に記載の血栓形成抑制剤。
【請求項10】
単位投与量における前記薬剤中、100mg〜600mgのトリフルサル及び30mg〜100mgのクロピドグレル二硫酸塩を含み、好ましくは、100mg〜600mgのトリフルサル及び50mg〜100mgのクロピドグレル二硫酸塩を含むことを特徴とする請求項9に記載の血栓形成抑制剤。
【請求項11】
単位投与量における前記薬剤中、100mg〜600mgのトリフルサル及び92mg〜104mgのクロピドグレル二硫酸塩を含み、好ましくは、300mg〜600mgのトリフルサル及び92mg〜104mgのクロピドグレル二硫酸塩を含むことを特徴とする請求項9に記載の血栓形成抑制剤。
【請求項12】
単位投与量における前記薬剤中、285mg〜315mgのトリフルサル及び95mg〜105mgのクロピドグレル二硫酸塩を含み、好ましくは、300mgのトリフルサル及び100mgのクロピドグレル二硫酸塩を含むことを特徴とする請求項9に記載の血栓形成抑制剤。
【請求項13】
単位投与量における前記薬剤中、570mg〜630mgのトリフルサル及び95mg〜105mgのクロピドグレル二硫酸塩を含み、好ましくは、600mgのトリフルサル及び100mgのクロピドグレル二硫酸塩を含むことを特徴とする請求項9に記載の血栓形成抑制剤。
【請求項14】
前記薬剤は、経口剤であることを特徴とする請求項1〜13に記載の血栓形成抑制剤。
【請求項15】
前記薬剤は、タブレット剤、カプセル剤、顆粒剤又は乾燥懸濁剤であることを特徴とする請求項14に記載の血栓形成抑制剤。
【請求項16】
前記薬剤は、補助剤を含み、前記補助剤は、微結晶性セルロース、デンプングリコール酸ナトリウム、デキストリン、乳糖及びステアリン酸マグネシウム中の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1から請求項15に記載の血栓形成抑制剤。
【請求項17】
前記薬剤は、心血管疾患及び脳血管疾患の治療に応用されることを特徴とする請求項1から請求項16に記載の血栓形成抑制剤。
【請求項18】
前記心血管疾患及び脳血管疾患は、血小板が凝集されることによって引き起こされる心血管疾患及び脳血管疾患であることを特徴とする請求項17に記載の血栓形成抑制剤。
【請求項19】
前記心血管疾患及び脳血管疾患は、狭心症、冠動脈血栓及び脳塞栓症中の少なくとも1つであることを特徴とする請求項18に記載の血栓形成抑制剤。
【請求項20】
前記薬剤は、血小板凝集及び/又は血栓形成の抑制に応用されることを特徴とする請求項1から請求項16に記載の血栓形成抑制剤。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−507400(P2013−507400A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−533455(P2012−533455)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【国際出願番号】PCT/CN2010/000328
【国際公開番号】WO2011/044742
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(512079392)貴州聨盛薬業有限公司 (1)
【Fターム(参考)】