血液検査装置
【課題】穿刺部における上ホルダと下ホルダの負圧差により気泡を生じ、この気泡のため適正な量の血液を得ることができず正確な測定ができなかった。
【解決手段】上ホルダ23aと下ホルダ23bとでセンサ25を挟むように形成された穿刺部23と、この穿刺部23に対向して設けられるとともに、センサ25に形成された貯留部34を貫通して皮膚4を穿刺するレーザ穿刺ユニット24と、センサ25と接続される電気回路部30と、この電気回路部30に接続されるとともに、上ホルダ23aへ負圧を加える負圧手段27とを備え、上ホルダ23aと下ホルダ23bとの圧力を同一にする流体貫通孔36を設けたものである。これにより、所期の目的を達成することができる。
【解決手段】上ホルダ23aと下ホルダ23bとでセンサ25を挟むように形成された穿刺部23と、この穿刺部23に対向して設けられるとともに、センサ25に形成された貯留部34を貫通して皮膚4を穿刺するレーザ穿刺ユニット24と、センサ25と接続される電気回路部30と、この電気回路部30に接続されるとともに、上ホルダ23aへ負圧を加える負圧手段27とを備え、上ホルダ23aと下ホルダ23bとの圧力を同一にする流体貫通孔36を設けたものである。これにより、所期の目的を達成することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
以下、従来の血液検査装置について説明する。従来の血液検査装置1は、図13に示すように、 上ホルダ2aと下ホルダ2bとで血液センサ(以下センサという)3を挟むように形成された穿刺部2と、この穿刺部2に対向して設けられるとともに、センサ3に形成された貯留部3a(図14参照)を貫通して皮膚4を穿刺するレーザ穿刺ユニット5と、穿刺部2に装填されたセンサ3と接続される電気回路部6と、この電気回路部6に接続されるとともに、上ホルダ2aへ負圧を加える負圧手段7と、これらに電源を供給する電池8と、センサ3が積層収納されたセンサカートリッジ9とで構成されており、これらは筐体10内に収納されていた。
【0003】
以上のように構成された血液検査装置1の操作について以下説明する。先ず、センサカートリッジ9に積層収納された一番下のセンサ3を出口9aから穿刺部2へ装填する。センサ3は上ホルダ2aと下ホルダ2bの間に挟まれて固定される。
【0004】
次に、図14に示すように、指の皮膚4を穿刺部2へ当接させる。そして、負圧手段7を動作させることにより、吸引口7bから上ホルダ2aに形成された上ホルダ負圧空間2c内に負圧が加えられる。上ホルダ2aに加わった負圧は、センサ3に形成された貯留部3aを介して下ホルダ2bに形成された下ホルダ負圧空間2d内を負圧にする。下ホルダ2b内に負圧が加えられると、下ホルダ負圧空間2dが減圧状態になり皮膚4が盛り上がって貯留部3aを塞ぐ。
【0005】
この状態において、穿刺ボタン5a(図13参照)を押下するとレーザ穿刺ユニット5からはレーザ光5bが放射される。このレーザ光5bは貯留部3aを貫通して皮膚4を穿刺する。穿刺された皮膚4からは血液11が滲出する。滲出した血液11は貯留部3aに貯えた後、この貯留部3aから導出された供給路を介してセンサ3内に取り込まれる。そして、センサ3に取り込まれた血液11は試薬と化学反応する。その反応結果は、電気回路部6内で演算されて血糖値が算出される。
【0006】
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1、特許文献2が知られている。
【特許文献1】特表2003−524496号公報
【特許文献2】特開2002−219114号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながらこのような従来の血液検査装置1においては、貯留部3aが塞がれるため、穿刺部2を構成する上ホルダ2aと下ホルダ2bとの間に圧力差が生ずる。そのため、以下に述べる問題があった。即ち、皮膚4の表面は一様ではなく凹凸が有り、皮膚4と下ホルダ2bとの接触が一定とは限らないため、貯留部3aの密閉状態を維持できない場合がある。このような場合、負圧差により貯留部3a周辺から空気漏れが発生すると、血液11と空気とが混ざった状態となり、図15に示すように気泡12が発生する。この気泡12が血液11へ混入して供給路へ流入する。
【0008】
この気泡12がセンサ3の供給路へ流入することにより、所定の血液量を確保することができず、正確な測定を妨害したり、或いは気泡12の破裂時に血液11が飛散したりするため、血液検査装置1内が汚されることがあるという問題があった。
【0009】
そこで本発明は、このような問題点の原因となる気泡の発生を防止した血液検査装置を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するために本発明の血液検査装置は、上ホルダと下ホルダとの圧力を同一にする圧力同一化手段を設けたものである。これにより、初期の目的を達成することができる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように本発明は、上ホルダと下ホルダとの圧力を同一にする圧力同一化手段を設けたものであり、この圧力同一化手段により、上ホルダと下ホルダの圧力が同一となるので、気泡が発生して混入することはない。従って、予め定められた適正量の血液を用いて測定することができ、正確な測定を行うことができる。
【0012】
また、気泡が発生することはないので、そもそも気泡が破裂することはなく、血液検査装置内を汚すことはない。従って、血液検査装置の衛生面・安全面の向上につながる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(実施の形態1)
図5は、実施の形態1における血液検査装置21の透視平面図である。図5において、22は樹脂で成形された筐体であり、この筐体22は、本体部22aと蓋体部22bとで構成されている。蓋体部22bは、ヒンジ部22cで本体部22aと回動自在に連結されている。本体部22aの下辺には、蓋体部22bの開閉を検知する開閉センサ22dが装着されている。
【0014】
本体部22aの左下角には、上ホルダ23aと下ホルダ23bとで構成された穿刺部23が設けられており、この穿刺部23に対向してレーサ穿刺ユニット24(穿刺手段の一例として用いた)が装着されている。なお、これはレーザ穿刺ユニット24に限ることはなく、穿刺針を用いた針穿刺手段であっても良い。レーザ穿刺ユニット24と並列に血液センサ(以後センサという)25が積層収納されたセンサカートリッジ26が着脱自在に挿入されている。
【0015】
また、センサカートリッジ26の下方には搬送手段を形成するスライドプレート26aが設けられており、このスライドプレート26aにより、積層収納されたセンサ25の内一番下のセンサ25が出口26bから穿刺部23へ搬送される。
【0016】
センサカートリッジ26の上方には、負圧手段27が収納されており、この負圧手段27からは負圧路27aを介して穿刺部23へ負圧が供給される。また、レーザ穿刺ユニット24の上方には、電気回路部30が装着されており、この電気回路部30の上方には二次電池29が着脱自在に挿入されている。
【0017】
次に、センサカートリッジ26の詳細について説明する。センサカートリッジ26は、センサ25が積層収納されるセンサ室26dと、このセンサ室26dと並列に設けられた乾燥剤室26eと、センサ室26d内のセンサ25を穿刺部23へ搬送する搬送手段としてのスライドプレート26aから構成されている。乾燥剤室26eには、乾燥剤26fが収納されている。乾燥剤26fが収納される理由は、センサ25は湿気で性能が劣化するので、この湿気による性能劣化を防止するためである。
【0018】
センサ室26dには、センサ25を下方に押圧する押圧板26gが設けられており、この押圧板26gはバネ26hで下方へ付勢されている。また、スライドプレート26aには装填レバー26jが一体的に連結されており、装填レバー26jを指で左方へ移動させることにより、センサ25が穿刺部23へ装填される。なお、この装填レバー26jはバネ26kで右方へ付勢されている。従って、指を離すと装填レバー26jは元の位置に戻る。
【0019】
図2は、穿刺部23に装填されるセンサ25の平面図である。センサ25は長方形状をした板体であり、幅寸法25aは12mmであり、長さ寸法25bは14mmである。このセンサ25の略中央には貫通孔で形成された貯留部34が形成されており、この貯留部34からは毛細管で形成された供給路35が一方の辺に向かって形成されている。そして、この供給路35の終端には空気孔38が設けられている。
【0020】
36は、流体貫通孔(圧力同一化手段の一例として用いた)であり、板体を貫通して設けられている。従って、穿刺部23を構成する上ホルダ23aと下ホルダ23bとの圧力を同一にすることができる。この流体貫通孔36は、貯留部34と空気孔38とを連結する供給路35の略中間位置近傍に設けられている。この位置に流体貫通孔36を設けることにより、流体貫通孔36形成のために特別なスペースを設ける必要がなく、センサ25の小型化を図ることができる。
【0021】
27bは負圧路27a(図5参照)に連結された吸引口であり、上ホルダ23aに形成されている。従って、センサ25を穿刺部23に装填したとき、流体貫通孔36はこの吸引口27b側に位置するように装填される。流体貫通孔36を吸引口27b側に設けることにより、吸引損失を少なくし効率良く吸引することができる。
【0022】
貯留部34の孔の面積は12.6mm2とし、流体貫通孔36の面積は0.785mm2とし、空気孔38の面積は0.007mm2としている。流体貫通孔36の面積は、貯留部34の面積の6.2%以上にすることにより、気泡12の発生を防止することができるからである。
【0023】
本実施の形態では、センサ25の小型化を勘案して上記の値とした。また、空気孔38の面積は、血液11が空気孔38から流出することを防止するとともに、毛細管現象の効果を確実にするために設定した値である。このような理由から、流体貫通孔36の面積は、貯留部34の面積より小さく空気孔38の面積より大きくしている。センサ25の他方の辺には、電気回路部30と接続される接続電極41a〜45a,47aが形成されている。
【0024】
図3は、上ホルダ23aとセンサ25との関係を示す平面図である。上ホルダ23aの下側には点線で示すセンサ25が装填される。そして、レーザ光24a(図1、図5参照)が貯留部34を貫通して皮膚4(図1参照)を穿刺する。49は、電気回路部30と接続されたコネクタであり、このコネクタ49(49a〜49f)は、センサ25に形成された接続電極41a〜45a,47aと夫々接続される。上ホルダ23aには第1の空間である上ホルダ負圧空間23cが形成されており、この上ホルダ負圧空間23c内へは吸引口27bが連結されている。センサ25が穿刺部23に装填された状態では、流体貫通孔36がこの上ホルダ負圧空間23c内に位置するようにセンサ25は装填される。
【0025】
図4は、センサ25が装填された穿刺部23を下方から見た斜視図である。センサ25は、上ホルダ23aと下ホルダ23bとの間に装填される。センサ25が穿刺部23に装填された状態では、下ホルダ23bに形成された第2の空間である下ホルダ負圧空間23d内にセンサ25に形成された貯留部34と流体貫通孔36が配置されるように装填される。また、下ホルダ負圧空間23dを形成する皮膚当接部23eには、皮膚4の当接を検知する皮膚検知センサ27cが設けられている。
【0026】
図1は、穿刺時における穿刺部23周辺の要部断面図を示している。穿刺部23は、上ホルダ23aと下ホルダ23bにより構成されており、この上ホルダ23aと下ホルダ23bの間にセンサ25が装填される。上ホルダ23aに設けられた上ホルダ負圧空間23cには吸引口27bが連結され、上ホルダ負圧空間23c内に負圧を加える。上ホルダ負圧空間23cの天面には、レーザ光を透過し且つ着脱自在なレーザ透過フィルム23fが装着されている。これは、レーザ穿刺時に飛散する飛散物でレーザ穿刺ユニット24の部分を汚さないためである。
【0027】
穿刺動作時には、下ホルダ23bに設けられた下ホルダ負圧空間23dを形成する皮膚当接部23eが皮膚4に当接する。この下ホルダ負圧空間23dは、センサ25に形成された貯留部34と流体貫通孔36を介して上ホルダ負圧空間23cから負圧が供給される。
【0028】
皮膚当接部23eに設けられた皮膚検知センサ27cが皮膚4を検知すると、負圧手段27が動作し負圧を発生する。この負圧は負圧路27aと吸引口27bを介して、上ホルダ負圧空間23c内に負圧を加える。上ホルダ負圧空間23c内の負圧は、貯留部34と流体貫通孔36を介して下ホルダ負圧空間23dに負圧を加える。
【0029】
下ホルダ負圧空間23dに負圧が加わると皮膚4が吸引されて盛り上がり、貯留部34を塞ぐ。この状態において、穿刺ボタン24b(図5参照)を押下すると、レーザ穿刺ユニット24からレーザ光24aが放射される。このレーザ光24aは、透明フィルム23fと上ホルダ負圧空間23cと貯留部34と下ホルダ負圧空間23dとを、この順に一直線状に通過して皮膚4を穿刺する。穿刺された皮膚4からは血液11が滲出する。この滲出した血液11は貯留部34内に取り込まれる。
【0030】
このとき、盛り上がった皮膚4と貯留部34との間に微小の隙間が形成されたとしても、流体貫通孔36を介して上ホルダ負圧空間23cと下ホルダ負圧空間23dの圧力は等しくなる。従って、貯留部34と皮膚4との間に形成される微小の隙間を介しての空気の流れはなく、気泡12が発生することはない。即ち、血液11に気泡12が混入することはなく、予め定められた適正量の血液11を供給路に流入させることができ、正確な測定を行うことができる。また、気泡12が発生することはないので、そもそも気泡12が破裂することはなく、血液検査装置21内を汚すことはない。従って、血液検査装置21の衛生面・安全面の向上につながる。
【0031】
次に、センサ25の内部構造について説明する。図6は、センサ25の断面図である。このセンサ25は、基板31と、この基板31の上面に貼り合わされたスペーサ32と、このスペーサ32の上面に貼り合わされたカバー33とで構成されている。
【0032】
34は、血液11(図1参照)の貯留部であり、この貯留部34は、基板31の略中央に形成された基板孔31aと、この基板孔31aに対応してスペーサ32に形成されたスペーサ孔32aと、基板孔31aに対応してカバー33に形成されたカバー孔33aとが連通して形成されている。
【0033】
35は、この貯留部34に一方の端が連結された血液11の供給路であり、貯留部34に溜められた血液11を毛細管現象で一気に検出部37へ導く路である。また、この供給路35の他方の端は空気孔38に連結している。貯留部34の容積は0.904μLであり、供給路35の容積は0.144μLとしている。このように少量の血液11で検査可能とし、患者への負担を軽減している。
【0034】
40は、検出部37上に載置された試薬である。この試薬40は、0.01〜2.0wt%CMC水溶液に、PQQ−GDHを0.1〜5.0U/センサ、フェリシアン化カリウムを10〜200mM、マルチトールを1〜50mM、タウリンを20〜200mM添加して融解させて試薬溶液を調整し、これを基板31に形成された検出部37を構成する検出電極41,43(図7参照)上に滴下し、乾燥させることで形成したものである。
【0035】
基板31の上面には金、白金、パラジウム等を材料として、スパッタリング法或いは蒸着法により導電層を形成し、これをレーザ加工により検出電極41〜45と、この検出電極41〜45から夫々導出された接続電極41a〜45aと識別電極47aが一体的に形成されている。
【0036】
図7は、センサ25の透視平面図であり、一方の端には、接続電極41a〜45aと、識別電極47aが形成されている。接続電極43aと識別電極47aとの間に、導電体パターンで形成された識別部47が形成されている。
【0037】
34は、センサ25の略中央に設けられた血液11の貯留部であり、この貯留部34に一方の端が接続された供給路35が検出電極42に向かって設けられている。そして、この供給路35の他方の端は空気孔38に連結している。この供給路35上には、貯留部34側から順に接続電極44aに接続された検出電極44と、接続電極45aに接続された検出電極45と、接続電極43aに接続された検出電極43と、接続電極41aに接続された検出電極41と、接続電極42aに接続された検出電極42が設けられている。また、検出電極41,43上には、試薬40が載置される。
【0038】
接続電極43aと識別電極47a間の電気的な導通があるか無いかで、センサ25が穿刺部23に装着されたか否かを識別することができる。若し電気的な導通がなければ、センサ25が穿刺部23に装着されていない訳である。
【0039】
また、識別部47の電気抵抗値を変えることにより、使用する検量線の情報を格納したり、製造情報を格納したりすることが可能となる。従って、これらの情報を用いて、より精密な血液検査を行なうことができる。
【0040】
以上のように構成されているので、貯留部34に血液11を点着すと、この血液11は供給路35内を毛細管現象で、検出電極45,43を順に通過して検出電極42上へ導かれる。血液11が検出電極42へ導かれることにより、検出電極42より手前にある検出部37を構成する検出電極41,43へ十分な血液11が到達していることを知ることができる。この血液11は、試薬40と反応する。その反応結果は接続電極41a、43aに導かれる。
【0041】
図8は、電気回路部30とその周辺のブロック図である。図8において、センサ25の接続電極41a〜45a、識別電極47a(図7参照)は、上ホルダ23aに設けられたコネクタ49(49a〜49e)を介して夫々切換回路30aに接続されている。この切換回路30aの出力は、電流/電圧変換器30bの入力に接続されている。そして、その出力はアナログ/デジタル変換器(以後、A/D変換器という)30cを介して演算部30dの入力に接続されている。この演算部30dの出力は、液晶で形成された表示部50と通信部30eに接続されている。また、切換回路30aには基準電圧源30fが接続されている。なお、この基準電圧源30fはグランド電位であっても良い。
【0042】
30gは制御部であり、この制御部30gの出力は、レーザ穿刺ユニット24に接続された高電圧発生回路30hと、切換回路30aの制御端子と、演算部30dと、通信部30eと、負圧手段27に接続されている。また、制御部30gの入力には、レーザ光24aを発射させる穿刺ボタン24bと、コネクタ49fと、皮膚検知センサ27cと、タイマ30kと,開閉検知センサ22dが接続されている。
【0043】
以下、電気回路部30の動作を説明する。先ず、穿刺ボタン24bを押下して、レーザ穿刺ユニット24で皮膚4を穿刺する。そして、この穿刺により滲出した血液11の性質を測定する。血液11の性質を測定する測定動作では、切換回路30aを切換えて、検出電極41(図7参照)を電流/電圧変換器30bに接続する。また、血液11流入を検知するための検知極となる検出電極42を基準電圧源30fに接続する。そして、検出電極41及び検出電極42間に一定の電圧を印加する。この状態において、血液11が流入すると、検出電極41,42間に電流が流れる。この電流は、電流/電圧変換器30bによって電圧に変換され、その電圧値はA/D変換器30cによってデジタル値に変換される。そして、演算部30dに向かって出力される。演算部30dはそのデジタル値に基づいて血液11が十分に流入したことを検出する。なお、この時点で負圧手段27の動作をオフにする。
【0044】
次に、血液成分であるグルコースの測定が行なわれる。グルコース成分量の測定は、先ず、制御部30gの指令により、切換回路30aを切換えて、グルコース成分量の測定のための作用極となる検出電極41を電流/電圧変換器30bに接続する。また、グルコース成分量の測定のための対極となる検出電極43を基準電圧源30fに接続する。
【0045】
なお、血液中のグルコースとその酸化還元酵素とを一定時間反応させる間は、電流/電圧変換器30b及び基準電圧源30fをオフにしておく。そして、一定時間(1〜10秒)の経過後に、制御部30gの指令により、検出電極41と43間に一定の電圧(0.2〜0.5V)を印加する。そうすると、検出電極41,43間に電流が流れる。この電流は電流/電圧変換器30bによって電圧に変換され、その電圧値はA/D変換器30cによってデジタル値に変換される。そして、演算部30dに向かって出力される。演算部30dではそのデジタル値を基にグルコース成分量に換算する。
【0046】
グルコース成分量の測定後、Hct値の測定が行なわれる。Hct値の測定は次のように行なわれる。先ず、制御部30gからの指令により切換回路30aを切換える。そして、Hct値の測定のための作用極となる検出電極45を電流/電圧変換器30bに接続する。また、Hct値の測定のための対極となる検出電極41を基準電圧源30fに接続する。
【0047】
次に、制御部30gの指令により、電流/電圧変換器30b及び基準電圧源30fから検出電極45と41間に一定の電圧(2V〜3V)を印加する。検出電極45と41間に流れる電流は、電流/電圧変換器30bによって電圧に変換され、その電圧値はA/D変換器30cによってデジタル値に変換される。そして演算部30dに向かって出力される。演算部30dはそのデジタル値に基づいてHct値に換算する。
【0048】
この測定で得られたHct値とグルコース成分量を用い、予め求めておいた検量線または検量線テーブルを参照して、グルコース成分量をHct値で補正し、その補正された結果を表示部50に表示する。また、補正された結果は送信部30eからインスリンを注射する注射装置に向けて送信する。
【0049】
以上、グルコースの測定を例に説明したが、センサ25の試薬40を交換して、グルコースの測定の他に乳酸値やコレステロールの血液成分の測定にも適用できる。
【0050】
次に、図9の動作フローチャートを用いて検査方法を説明する。先ずステップ61では、血液検査装置21の蓋体部22bを開ける。この蓋体部22bの開は、開閉検知センサ22dで検知される。次に、ステップ62に移行し、スライドプレート26aをセンサカートリッジ26の出口26b方向に移動させる。このことにより、積層収納されたセンサ25の内、一番下のセンサ25を穿刺部23へ搬送することができる。この搬送の確認は、センサ25の接続電極43a(図7参照)と識別電極47aの導通を検知することにより行う。その後、スライドプレート26aはバネ26kの力で待機状態に戻る。
【0051】
次に、ステップ63に移行する。ステップ63では、血液検査装置21の穿刺部23を患者の皮膚4に当接させる。この皮膚4への当接は皮膚検知センサ27cの出力で行う。皮膚4への当接が確認されたらステップ64に移行し、負圧手段27を動作させて穿刺部23の下ホルダ負圧空間23dに負圧を加える。負圧を加えることにより皮膚4は盛り上がる。この下ホルダ負圧空間23dへの負圧は貯留部34と流体貫通孔36を介して加えられるので、皮膚4の盛り上がりにより、貯留部34が塞がれても流体貫通孔36を介して加えられ、上ホルダ負圧空間23cと下ホルダ負圧空間23dとの圧力は等しくなる。
【0052】
負圧手段27の動作に伴う電流の変化、或いはタイマ30kにより予め定められた時間が経過すると、下ホルダ負圧空間23d内の皮膚4が負圧により十分盛り上がったと判断し、ステップ65に移行する。ステップ65では、表示部50に穿刺可である旨の表示をする。そして、ステップ66に移行し、穿刺ボタン24bの押下を待つ。なお、この穿刺は自動的に行うこともできる。自動的に行う場合、穿刺タイミングを表示部50に表示するか、或いは音で患者に警告して知らせることが望ましい。
【0053】
穿刺ボタン24bが押下されるとレーザ光24aを放射してステップ67に移行する。ステップ67では、ステップ65で行った表示部50への表示をオフする。そして、ステップ68へ移行する。ステップ68では皮膚4の穿刺により、滲出した血液11がセンサ25の貯留部34に取り込まれる。この貯留部34に取り込まれた血液11は、供給路35による毛細管現象により一気に(定まった流速で)検出部37に取り込まれる。そして、血液11の血糖値が測定される。
【0054】
ステップ68で血糖値が測定されたら、ステップ69に移行し、負圧手段27をオフする。そして、ステップ70に移行する。ステップ70では、測定した血糖値を表示部50に表示する。なお、負圧手段27のオフは、血液11が検出電極42へ到達した時点でオフにしても良い。
【0055】
これで、血液11の測定は終了し、ステップ71へ移行する。ステップ71では、使用済みのセンサ25を廃棄する。この廃棄の確認は、接続電極43aと識別電極47a間の導通を確認して、穿刺部23内にセンサ25が在るか無いかを確認し、表示部50にその旨を表示することができる。
【0056】
次に、ステップ72へ移行する。ステップ72では、血液検査装置21の蓋体部22bを閉じる。蓋体部22b閉は、開閉検知センサ22dで検知する。
【0057】
以上、説明したように、ステップ64において、下ホルダ負圧空間23dへの負圧は、貯留部34と流体貫通孔36を介して加えられるので、皮膚4の盛り上がりにより、貯留部34が塞がれても流体貫通孔36を介して加えられる。従って、上センサ負圧空間23cと下センサ負圧空間23dの圧力は常に等しくなり、貯留部34を介しての空気の流入はなくなり、気泡12が発生することはない。従って、予め定められた適正量の血液11を用いて測定することができるので、正確な測定を行うことができる。
【0058】
(実施の形態2)
図10〜12は、本発明の実施の形態2における図を示している。図10は、実施の形態2における血液検査装置81(実施の形態1における血液検査装置21に該当)を用いた穿刺部周辺の要部断面図である。
【0059】
実施の形態2において、実施の形態1と同じ構成要素については同符号を付し、説明を簡略化している。
【0060】
図11は、上ホルダ82a(実施の形態1における上ホルダ23aに該当)とセンサ83(実施の形態1におけるセンサ25に該当)との関係を示す平面図である。
【0061】
上ホルダ82aの下側には点線で示すセンサ83が装填される。そして、レーザ光24a(図5、図10参照)が貯留部34を貫通して皮膚4を穿刺する。49は、電気回路部30と接続されるコネクタであり、このコネクタ49(49a〜49f)は、センサ83に形成された接続電極41a〜45a,47aと夫々接続される。上ホルダ82aには第1の空間である上ホルダ負圧空間82cが形成されており、この上ホルダ負圧空間82c内へは、分岐路84を介して上ホルダ吸引路82e(図10参照)が連結されている。
【0062】
図12は、センサ83が装填された穿刺部82を下方から見た斜視図である。センサ83は、上ホルダ82aと下ホルダ82b(実施の形態1における下ホルダ23bに該当)との間に装填される。センサ83が穿刺部82に装填された状態では、分岐路84を介して、上ホルダ82aに形成された第1の空間である上ホルダ負圧空間82cと下ホルダ82bに形成された第2の空間である下ホルダ負圧空間82dが、それぞれ上ホルダ吸引路82eと下ホルダ吸引路82fに連結されている。また、下ホルダ負圧空間82dを形成する皮膚当接部23eには、皮膚4の当接を検知する皮膚検知センサ27c(図10参照)が設けられている。
【0063】
次に、図10において、穿刺部82は、上ホルダ82aと下ホルダ82bとで構成されており、上ホルダ82aに設けられた上ホルダ負圧空間82cの天面には、レーザ光を透過し且つ着脱自在なレーザ透過フィルム23fが装着されている。これは、レーザ穿刺時に飛散する飛散物でレーザ穿刺ユニット24の部分を汚さないように設けられたものである。
【0064】
センサカートリッジ26(図5参照)から搬送されたセンサ83は、上ホルダ82aと下ホルダ82bとの間に挟まれて固定される。
【0065】
このセンサ83には、流体貫通孔36は形成されていない。この流体貫通孔36の役目を補うものとして、負圧手段27に連結された分岐部84(圧力同一化手段の一例として用いた)により上ホルダ吸引路82eと下ホルダ吸引路82fに分岐され、上ホルダ吸引路82eは第1の空間である上ホルダ負圧空間82cへ、下ホルダ吸引路82fは第2の空間である下ホルダ負圧空間82dへそれぞれ連結されている。
【0066】
穿刺動作時には、下ホルダ82bに設けられた下ホルダ負圧空間82dを形成する皮膚当接部23eが皮膚4に当接する。この下ホルダ負圧空間82dは、センサ83に形成された貯留部34と分岐部84に連結している上ホルダ吸引路82eと下ホルダ吸引路82fを介して負圧手段27から負圧が供給される。
【0067】
皮膚当接部23eに設けられた皮膚検知センサ27cが皮膚4を検知すると、負圧手段27が動作し負圧を発生する。この負圧は分岐部84に連結している上ホルダ吸引路82eと下ホルダ吸引路82fを介して、上ホルダ負圧空間82c内と下ホルダ負圧空間内82dに負圧を加える。
【0068】
下ホルダ負圧空間82dに負圧が加わると皮膚4が吸引されて盛り上がり、貯留部34を塞ぐ。この状態において、穿刺ボタン24b(図5参照)を押下すると、レーザ穿刺ユニット24からレーザ光24aが放射される。このレーザ光24aは、レーザ透過フィルム23fと上ホルダ負圧空間82cと貯留部34と下ホルダ負圧空間82dとを、この順に一直線状に通過して皮膚4を穿刺する。穿刺された皮膚4からは血液11が滲出する。この滲出した血液11は貯留部34内に取り込まれる。
【0069】
このとき、盛り上がった皮膚4と貯留部34との間に微小の隙間が形成されたとしても、分岐部84に連結している上ホルダ吸引路82eと下ホルダ吸引路82fを介して上ホルダ負圧空間82cと下ホルダ負圧空間82dの圧力は等しくなる。従って、上ホルダ負圧空間82cと下ホルダ負圧空間82dの圧力は常に等しくなる。即ち、貯留部34が皮膚4で塞がれたとしても、上ホルダ負圧空間82cと下ホルダ負圧空間82dとの圧力差はないので、皮膚4と貯留部34との間の微小な隙間による空気の流入はなくなり、気泡12が発生することはない。従って、予め定められた適正量の血液11を用いて測定することができるので、正確な測定を行うことができる。また、気泡12が発生することがないので、そもそも気泡12がはれつすることがなく、血液検査装置21内を汚すことはない。従って、血液検査装置21の衛生面・安全上の向上につながる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明にかかる血液検査装置は、適正な血液を得て正確な測定ができるので、血液検査装置等に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の実施の形態1における血液検査装置の穿刺部周辺の要部断面図
【図2】同、穿刺部に装填されるセンサの平面図
【図3】同、上ホルダとセンサの関係を示す平面図
【図4】同、穿刺部の下ホルダ側から見た斜視図
【図5】同、血液検査装置の透視平面図
【図6】同、血液検査装置に使用するセンサの断面図
【図7】同、センサの透視平面図
【図8】同、電気回路部とその周辺のブロック図
【図9】同、動作フローチャート
【図10】本発明の実施の形態2における血液検査装置の穿刺部周辺の要部断面図
【図11】同、穿刺部における上ホルダとセンサの関係を示す平面図
【図12】同、穿刺部の下ホルダ側から見た斜視図
【図13】従来の血液検査装置の透視平面図
【図14】同、穿刺時における第1の状態の要部断面図
【図15】同、穿刺時における第2の状態の要部断面図
【符号の説明】
【0072】
4 皮膚
21 血液検査装置
23 穿刺部
23a 上ホルダ
23b 下ホルダ
23c 上ホルダ負圧空間
23d 下ホルダ負圧空間
24 レーザ穿刺ユニット
25 センサ
27 負圧手段
30 電気回路部
34 血液の貯留部
36 流体貫通孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
以下、従来の血液検査装置について説明する。従来の血液検査装置1は、図13に示すように、 上ホルダ2aと下ホルダ2bとで血液センサ(以下センサという)3を挟むように形成された穿刺部2と、この穿刺部2に対向して設けられるとともに、センサ3に形成された貯留部3a(図14参照)を貫通して皮膚4を穿刺するレーザ穿刺ユニット5と、穿刺部2に装填されたセンサ3と接続される電気回路部6と、この電気回路部6に接続されるとともに、上ホルダ2aへ負圧を加える負圧手段7と、これらに電源を供給する電池8と、センサ3が積層収納されたセンサカートリッジ9とで構成されており、これらは筐体10内に収納されていた。
【0003】
以上のように構成された血液検査装置1の操作について以下説明する。先ず、センサカートリッジ9に積層収納された一番下のセンサ3を出口9aから穿刺部2へ装填する。センサ3は上ホルダ2aと下ホルダ2bの間に挟まれて固定される。
【0004】
次に、図14に示すように、指の皮膚4を穿刺部2へ当接させる。そして、負圧手段7を動作させることにより、吸引口7bから上ホルダ2aに形成された上ホルダ負圧空間2c内に負圧が加えられる。上ホルダ2aに加わった負圧は、センサ3に形成された貯留部3aを介して下ホルダ2bに形成された下ホルダ負圧空間2d内を負圧にする。下ホルダ2b内に負圧が加えられると、下ホルダ負圧空間2dが減圧状態になり皮膚4が盛り上がって貯留部3aを塞ぐ。
【0005】
この状態において、穿刺ボタン5a(図13参照)を押下するとレーザ穿刺ユニット5からはレーザ光5bが放射される。このレーザ光5bは貯留部3aを貫通して皮膚4を穿刺する。穿刺された皮膚4からは血液11が滲出する。滲出した血液11は貯留部3aに貯えた後、この貯留部3aから導出された供給路を介してセンサ3内に取り込まれる。そして、センサ3に取り込まれた血液11は試薬と化学反応する。その反応結果は、電気回路部6内で演算されて血糖値が算出される。
【0006】
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1、特許文献2が知られている。
【特許文献1】特表2003−524496号公報
【特許文献2】特開2002−219114号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながらこのような従来の血液検査装置1においては、貯留部3aが塞がれるため、穿刺部2を構成する上ホルダ2aと下ホルダ2bとの間に圧力差が生ずる。そのため、以下に述べる問題があった。即ち、皮膚4の表面は一様ではなく凹凸が有り、皮膚4と下ホルダ2bとの接触が一定とは限らないため、貯留部3aの密閉状態を維持できない場合がある。このような場合、負圧差により貯留部3a周辺から空気漏れが発生すると、血液11と空気とが混ざった状態となり、図15に示すように気泡12が発生する。この気泡12が血液11へ混入して供給路へ流入する。
【0008】
この気泡12がセンサ3の供給路へ流入することにより、所定の血液量を確保することができず、正確な測定を妨害したり、或いは気泡12の破裂時に血液11が飛散したりするため、血液検査装置1内が汚されることがあるという問題があった。
【0009】
そこで本発明は、このような問題点の原因となる気泡の発生を防止した血液検査装置を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するために本発明の血液検査装置は、上ホルダと下ホルダとの圧力を同一にする圧力同一化手段を設けたものである。これにより、初期の目的を達成することができる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように本発明は、上ホルダと下ホルダとの圧力を同一にする圧力同一化手段を設けたものであり、この圧力同一化手段により、上ホルダと下ホルダの圧力が同一となるので、気泡が発生して混入することはない。従って、予め定められた適正量の血液を用いて測定することができ、正確な測定を行うことができる。
【0012】
また、気泡が発生することはないので、そもそも気泡が破裂することはなく、血液検査装置内を汚すことはない。従って、血液検査装置の衛生面・安全面の向上につながる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(実施の形態1)
図5は、実施の形態1における血液検査装置21の透視平面図である。図5において、22は樹脂で成形された筐体であり、この筐体22は、本体部22aと蓋体部22bとで構成されている。蓋体部22bは、ヒンジ部22cで本体部22aと回動自在に連結されている。本体部22aの下辺には、蓋体部22bの開閉を検知する開閉センサ22dが装着されている。
【0014】
本体部22aの左下角には、上ホルダ23aと下ホルダ23bとで構成された穿刺部23が設けられており、この穿刺部23に対向してレーサ穿刺ユニット24(穿刺手段の一例として用いた)が装着されている。なお、これはレーザ穿刺ユニット24に限ることはなく、穿刺針を用いた針穿刺手段であっても良い。レーザ穿刺ユニット24と並列に血液センサ(以後センサという)25が積層収納されたセンサカートリッジ26が着脱自在に挿入されている。
【0015】
また、センサカートリッジ26の下方には搬送手段を形成するスライドプレート26aが設けられており、このスライドプレート26aにより、積層収納されたセンサ25の内一番下のセンサ25が出口26bから穿刺部23へ搬送される。
【0016】
センサカートリッジ26の上方には、負圧手段27が収納されており、この負圧手段27からは負圧路27aを介して穿刺部23へ負圧が供給される。また、レーザ穿刺ユニット24の上方には、電気回路部30が装着されており、この電気回路部30の上方には二次電池29が着脱自在に挿入されている。
【0017】
次に、センサカートリッジ26の詳細について説明する。センサカートリッジ26は、センサ25が積層収納されるセンサ室26dと、このセンサ室26dと並列に設けられた乾燥剤室26eと、センサ室26d内のセンサ25を穿刺部23へ搬送する搬送手段としてのスライドプレート26aから構成されている。乾燥剤室26eには、乾燥剤26fが収納されている。乾燥剤26fが収納される理由は、センサ25は湿気で性能が劣化するので、この湿気による性能劣化を防止するためである。
【0018】
センサ室26dには、センサ25を下方に押圧する押圧板26gが設けられており、この押圧板26gはバネ26hで下方へ付勢されている。また、スライドプレート26aには装填レバー26jが一体的に連結されており、装填レバー26jを指で左方へ移動させることにより、センサ25が穿刺部23へ装填される。なお、この装填レバー26jはバネ26kで右方へ付勢されている。従って、指を離すと装填レバー26jは元の位置に戻る。
【0019】
図2は、穿刺部23に装填されるセンサ25の平面図である。センサ25は長方形状をした板体であり、幅寸法25aは12mmであり、長さ寸法25bは14mmである。このセンサ25の略中央には貫通孔で形成された貯留部34が形成されており、この貯留部34からは毛細管で形成された供給路35が一方の辺に向かって形成されている。そして、この供給路35の終端には空気孔38が設けられている。
【0020】
36は、流体貫通孔(圧力同一化手段の一例として用いた)であり、板体を貫通して設けられている。従って、穿刺部23を構成する上ホルダ23aと下ホルダ23bとの圧力を同一にすることができる。この流体貫通孔36は、貯留部34と空気孔38とを連結する供給路35の略中間位置近傍に設けられている。この位置に流体貫通孔36を設けることにより、流体貫通孔36形成のために特別なスペースを設ける必要がなく、センサ25の小型化を図ることができる。
【0021】
27bは負圧路27a(図5参照)に連結された吸引口であり、上ホルダ23aに形成されている。従って、センサ25を穿刺部23に装填したとき、流体貫通孔36はこの吸引口27b側に位置するように装填される。流体貫通孔36を吸引口27b側に設けることにより、吸引損失を少なくし効率良く吸引することができる。
【0022】
貯留部34の孔の面積は12.6mm2とし、流体貫通孔36の面積は0.785mm2とし、空気孔38の面積は0.007mm2としている。流体貫通孔36の面積は、貯留部34の面積の6.2%以上にすることにより、気泡12の発生を防止することができるからである。
【0023】
本実施の形態では、センサ25の小型化を勘案して上記の値とした。また、空気孔38の面積は、血液11が空気孔38から流出することを防止するとともに、毛細管現象の効果を確実にするために設定した値である。このような理由から、流体貫通孔36の面積は、貯留部34の面積より小さく空気孔38の面積より大きくしている。センサ25の他方の辺には、電気回路部30と接続される接続電極41a〜45a,47aが形成されている。
【0024】
図3は、上ホルダ23aとセンサ25との関係を示す平面図である。上ホルダ23aの下側には点線で示すセンサ25が装填される。そして、レーザ光24a(図1、図5参照)が貯留部34を貫通して皮膚4(図1参照)を穿刺する。49は、電気回路部30と接続されたコネクタであり、このコネクタ49(49a〜49f)は、センサ25に形成された接続電極41a〜45a,47aと夫々接続される。上ホルダ23aには第1の空間である上ホルダ負圧空間23cが形成されており、この上ホルダ負圧空間23c内へは吸引口27bが連結されている。センサ25が穿刺部23に装填された状態では、流体貫通孔36がこの上ホルダ負圧空間23c内に位置するようにセンサ25は装填される。
【0025】
図4は、センサ25が装填された穿刺部23を下方から見た斜視図である。センサ25は、上ホルダ23aと下ホルダ23bとの間に装填される。センサ25が穿刺部23に装填された状態では、下ホルダ23bに形成された第2の空間である下ホルダ負圧空間23d内にセンサ25に形成された貯留部34と流体貫通孔36が配置されるように装填される。また、下ホルダ負圧空間23dを形成する皮膚当接部23eには、皮膚4の当接を検知する皮膚検知センサ27cが設けられている。
【0026】
図1は、穿刺時における穿刺部23周辺の要部断面図を示している。穿刺部23は、上ホルダ23aと下ホルダ23bにより構成されており、この上ホルダ23aと下ホルダ23bの間にセンサ25が装填される。上ホルダ23aに設けられた上ホルダ負圧空間23cには吸引口27bが連結され、上ホルダ負圧空間23c内に負圧を加える。上ホルダ負圧空間23cの天面には、レーザ光を透過し且つ着脱自在なレーザ透過フィルム23fが装着されている。これは、レーザ穿刺時に飛散する飛散物でレーザ穿刺ユニット24の部分を汚さないためである。
【0027】
穿刺動作時には、下ホルダ23bに設けられた下ホルダ負圧空間23dを形成する皮膚当接部23eが皮膚4に当接する。この下ホルダ負圧空間23dは、センサ25に形成された貯留部34と流体貫通孔36を介して上ホルダ負圧空間23cから負圧が供給される。
【0028】
皮膚当接部23eに設けられた皮膚検知センサ27cが皮膚4を検知すると、負圧手段27が動作し負圧を発生する。この負圧は負圧路27aと吸引口27bを介して、上ホルダ負圧空間23c内に負圧を加える。上ホルダ負圧空間23c内の負圧は、貯留部34と流体貫通孔36を介して下ホルダ負圧空間23dに負圧を加える。
【0029】
下ホルダ負圧空間23dに負圧が加わると皮膚4が吸引されて盛り上がり、貯留部34を塞ぐ。この状態において、穿刺ボタン24b(図5参照)を押下すると、レーザ穿刺ユニット24からレーザ光24aが放射される。このレーザ光24aは、透明フィルム23fと上ホルダ負圧空間23cと貯留部34と下ホルダ負圧空間23dとを、この順に一直線状に通過して皮膚4を穿刺する。穿刺された皮膚4からは血液11が滲出する。この滲出した血液11は貯留部34内に取り込まれる。
【0030】
このとき、盛り上がった皮膚4と貯留部34との間に微小の隙間が形成されたとしても、流体貫通孔36を介して上ホルダ負圧空間23cと下ホルダ負圧空間23dの圧力は等しくなる。従って、貯留部34と皮膚4との間に形成される微小の隙間を介しての空気の流れはなく、気泡12が発生することはない。即ち、血液11に気泡12が混入することはなく、予め定められた適正量の血液11を供給路に流入させることができ、正確な測定を行うことができる。また、気泡12が発生することはないので、そもそも気泡12が破裂することはなく、血液検査装置21内を汚すことはない。従って、血液検査装置21の衛生面・安全面の向上につながる。
【0031】
次に、センサ25の内部構造について説明する。図6は、センサ25の断面図である。このセンサ25は、基板31と、この基板31の上面に貼り合わされたスペーサ32と、このスペーサ32の上面に貼り合わされたカバー33とで構成されている。
【0032】
34は、血液11(図1参照)の貯留部であり、この貯留部34は、基板31の略中央に形成された基板孔31aと、この基板孔31aに対応してスペーサ32に形成されたスペーサ孔32aと、基板孔31aに対応してカバー33に形成されたカバー孔33aとが連通して形成されている。
【0033】
35は、この貯留部34に一方の端が連結された血液11の供給路であり、貯留部34に溜められた血液11を毛細管現象で一気に検出部37へ導く路である。また、この供給路35の他方の端は空気孔38に連結している。貯留部34の容積は0.904μLであり、供給路35の容積は0.144μLとしている。このように少量の血液11で検査可能とし、患者への負担を軽減している。
【0034】
40は、検出部37上に載置された試薬である。この試薬40は、0.01〜2.0wt%CMC水溶液に、PQQ−GDHを0.1〜5.0U/センサ、フェリシアン化カリウムを10〜200mM、マルチトールを1〜50mM、タウリンを20〜200mM添加して融解させて試薬溶液を調整し、これを基板31に形成された検出部37を構成する検出電極41,43(図7参照)上に滴下し、乾燥させることで形成したものである。
【0035】
基板31の上面には金、白金、パラジウム等を材料として、スパッタリング法或いは蒸着法により導電層を形成し、これをレーザ加工により検出電極41〜45と、この検出電極41〜45から夫々導出された接続電極41a〜45aと識別電極47aが一体的に形成されている。
【0036】
図7は、センサ25の透視平面図であり、一方の端には、接続電極41a〜45aと、識別電極47aが形成されている。接続電極43aと識別電極47aとの間に、導電体パターンで形成された識別部47が形成されている。
【0037】
34は、センサ25の略中央に設けられた血液11の貯留部であり、この貯留部34に一方の端が接続された供給路35が検出電極42に向かって設けられている。そして、この供給路35の他方の端は空気孔38に連結している。この供給路35上には、貯留部34側から順に接続電極44aに接続された検出電極44と、接続電極45aに接続された検出電極45と、接続電極43aに接続された検出電極43と、接続電極41aに接続された検出電極41と、接続電極42aに接続された検出電極42が設けられている。また、検出電極41,43上には、試薬40が載置される。
【0038】
接続電極43aと識別電極47a間の電気的な導通があるか無いかで、センサ25が穿刺部23に装着されたか否かを識別することができる。若し電気的な導通がなければ、センサ25が穿刺部23に装着されていない訳である。
【0039】
また、識別部47の電気抵抗値を変えることにより、使用する検量線の情報を格納したり、製造情報を格納したりすることが可能となる。従って、これらの情報を用いて、より精密な血液検査を行なうことができる。
【0040】
以上のように構成されているので、貯留部34に血液11を点着すと、この血液11は供給路35内を毛細管現象で、検出電極45,43を順に通過して検出電極42上へ導かれる。血液11が検出電極42へ導かれることにより、検出電極42より手前にある検出部37を構成する検出電極41,43へ十分な血液11が到達していることを知ることができる。この血液11は、試薬40と反応する。その反応結果は接続電極41a、43aに導かれる。
【0041】
図8は、電気回路部30とその周辺のブロック図である。図8において、センサ25の接続電極41a〜45a、識別電極47a(図7参照)は、上ホルダ23aに設けられたコネクタ49(49a〜49e)を介して夫々切換回路30aに接続されている。この切換回路30aの出力は、電流/電圧変換器30bの入力に接続されている。そして、その出力はアナログ/デジタル変換器(以後、A/D変換器という)30cを介して演算部30dの入力に接続されている。この演算部30dの出力は、液晶で形成された表示部50と通信部30eに接続されている。また、切換回路30aには基準電圧源30fが接続されている。なお、この基準電圧源30fはグランド電位であっても良い。
【0042】
30gは制御部であり、この制御部30gの出力は、レーザ穿刺ユニット24に接続された高電圧発生回路30hと、切換回路30aの制御端子と、演算部30dと、通信部30eと、負圧手段27に接続されている。また、制御部30gの入力には、レーザ光24aを発射させる穿刺ボタン24bと、コネクタ49fと、皮膚検知センサ27cと、タイマ30kと,開閉検知センサ22dが接続されている。
【0043】
以下、電気回路部30の動作を説明する。先ず、穿刺ボタン24bを押下して、レーザ穿刺ユニット24で皮膚4を穿刺する。そして、この穿刺により滲出した血液11の性質を測定する。血液11の性質を測定する測定動作では、切換回路30aを切換えて、検出電極41(図7参照)を電流/電圧変換器30bに接続する。また、血液11流入を検知するための検知極となる検出電極42を基準電圧源30fに接続する。そして、検出電極41及び検出電極42間に一定の電圧を印加する。この状態において、血液11が流入すると、検出電極41,42間に電流が流れる。この電流は、電流/電圧変換器30bによって電圧に変換され、その電圧値はA/D変換器30cによってデジタル値に変換される。そして、演算部30dに向かって出力される。演算部30dはそのデジタル値に基づいて血液11が十分に流入したことを検出する。なお、この時点で負圧手段27の動作をオフにする。
【0044】
次に、血液成分であるグルコースの測定が行なわれる。グルコース成分量の測定は、先ず、制御部30gの指令により、切換回路30aを切換えて、グルコース成分量の測定のための作用極となる検出電極41を電流/電圧変換器30bに接続する。また、グルコース成分量の測定のための対極となる検出電極43を基準電圧源30fに接続する。
【0045】
なお、血液中のグルコースとその酸化還元酵素とを一定時間反応させる間は、電流/電圧変換器30b及び基準電圧源30fをオフにしておく。そして、一定時間(1〜10秒)の経過後に、制御部30gの指令により、検出電極41と43間に一定の電圧(0.2〜0.5V)を印加する。そうすると、検出電極41,43間に電流が流れる。この電流は電流/電圧変換器30bによって電圧に変換され、その電圧値はA/D変換器30cによってデジタル値に変換される。そして、演算部30dに向かって出力される。演算部30dではそのデジタル値を基にグルコース成分量に換算する。
【0046】
グルコース成分量の測定後、Hct値の測定が行なわれる。Hct値の測定は次のように行なわれる。先ず、制御部30gからの指令により切換回路30aを切換える。そして、Hct値の測定のための作用極となる検出電極45を電流/電圧変換器30bに接続する。また、Hct値の測定のための対極となる検出電極41を基準電圧源30fに接続する。
【0047】
次に、制御部30gの指令により、電流/電圧変換器30b及び基準電圧源30fから検出電極45と41間に一定の電圧(2V〜3V)を印加する。検出電極45と41間に流れる電流は、電流/電圧変換器30bによって電圧に変換され、その電圧値はA/D変換器30cによってデジタル値に変換される。そして演算部30dに向かって出力される。演算部30dはそのデジタル値に基づいてHct値に換算する。
【0048】
この測定で得られたHct値とグルコース成分量を用い、予め求めておいた検量線または検量線テーブルを参照して、グルコース成分量をHct値で補正し、その補正された結果を表示部50に表示する。また、補正された結果は送信部30eからインスリンを注射する注射装置に向けて送信する。
【0049】
以上、グルコースの測定を例に説明したが、センサ25の試薬40を交換して、グルコースの測定の他に乳酸値やコレステロールの血液成分の測定にも適用できる。
【0050】
次に、図9の動作フローチャートを用いて検査方法を説明する。先ずステップ61では、血液検査装置21の蓋体部22bを開ける。この蓋体部22bの開は、開閉検知センサ22dで検知される。次に、ステップ62に移行し、スライドプレート26aをセンサカートリッジ26の出口26b方向に移動させる。このことにより、積層収納されたセンサ25の内、一番下のセンサ25を穿刺部23へ搬送することができる。この搬送の確認は、センサ25の接続電極43a(図7参照)と識別電極47aの導通を検知することにより行う。その後、スライドプレート26aはバネ26kの力で待機状態に戻る。
【0051】
次に、ステップ63に移行する。ステップ63では、血液検査装置21の穿刺部23を患者の皮膚4に当接させる。この皮膚4への当接は皮膚検知センサ27cの出力で行う。皮膚4への当接が確認されたらステップ64に移行し、負圧手段27を動作させて穿刺部23の下ホルダ負圧空間23dに負圧を加える。負圧を加えることにより皮膚4は盛り上がる。この下ホルダ負圧空間23dへの負圧は貯留部34と流体貫通孔36を介して加えられるので、皮膚4の盛り上がりにより、貯留部34が塞がれても流体貫通孔36を介して加えられ、上ホルダ負圧空間23cと下ホルダ負圧空間23dとの圧力は等しくなる。
【0052】
負圧手段27の動作に伴う電流の変化、或いはタイマ30kにより予め定められた時間が経過すると、下ホルダ負圧空間23d内の皮膚4が負圧により十分盛り上がったと判断し、ステップ65に移行する。ステップ65では、表示部50に穿刺可である旨の表示をする。そして、ステップ66に移行し、穿刺ボタン24bの押下を待つ。なお、この穿刺は自動的に行うこともできる。自動的に行う場合、穿刺タイミングを表示部50に表示するか、或いは音で患者に警告して知らせることが望ましい。
【0053】
穿刺ボタン24bが押下されるとレーザ光24aを放射してステップ67に移行する。ステップ67では、ステップ65で行った表示部50への表示をオフする。そして、ステップ68へ移行する。ステップ68では皮膚4の穿刺により、滲出した血液11がセンサ25の貯留部34に取り込まれる。この貯留部34に取り込まれた血液11は、供給路35による毛細管現象により一気に(定まった流速で)検出部37に取り込まれる。そして、血液11の血糖値が測定される。
【0054】
ステップ68で血糖値が測定されたら、ステップ69に移行し、負圧手段27をオフする。そして、ステップ70に移行する。ステップ70では、測定した血糖値を表示部50に表示する。なお、負圧手段27のオフは、血液11が検出電極42へ到達した時点でオフにしても良い。
【0055】
これで、血液11の測定は終了し、ステップ71へ移行する。ステップ71では、使用済みのセンサ25を廃棄する。この廃棄の確認は、接続電極43aと識別電極47a間の導通を確認して、穿刺部23内にセンサ25が在るか無いかを確認し、表示部50にその旨を表示することができる。
【0056】
次に、ステップ72へ移行する。ステップ72では、血液検査装置21の蓋体部22bを閉じる。蓋体部22b閉は、開閉検知センサ22dで検知する。
【0057】
以上、説明したように、ステップ64において、下ホルダ負圧空間23dへの負圧は、貯留部34と流体貫通孔36を介して加えられるので、皮膚4の盛り上がりにより、貯留部34が塞がれても流体貫通孔36を介して加えられる。従って、上センサ負圧空間23cと下センサ負圧空間23dの圧力は常に等しくなり、貯留部34を介しての空気の流入はなくなり、気泡12が発生することはない。従って、予め定められた適正量の血液11を用いて測定することができるので、正確な測定を行うことができる。
【0058】
(実施の形態2)
図10〜12は、本発明の実施の形態2における図を示している。図10は、実施の形態2における血液検査装置81(実施の形態1における血液検査装置21に該当)を用いた穿刺部周辺の要部断面図である。
【0059】
実施の形態2において、実施の形態1と同じ構成要素については同符号を付し、説明を簡略化している。
【0060】
図11は、上ホルダ82a(実施の形態1における上ホルダ23aに該当)とセンサ83(実施の形態1におけるセンサ25に該当)との関係を示す平面図である。
【0061】
上ホルダ82aの下側には点線で示すセンサ83が装填される。そして、レーザ光24a(図5、図10参照)が貯留部34を貫通して皮膚4を穿刺する。49は、電気回路部30と接続されるコネクタであり、このコネクタ49(49a〜49f)は、センサ83に形成された接続電極41a〜45a,47aと夫々接続される。上ホルダ82aには第1の空間である上ホルダ負圧空間82cが形成されており、この上ホルダ負圧空間82c内へは、分岐路84を介して上ホルダ吸引路82e(図10参照)が連結されている。
【0062】
図12は、センサ83が装填された穿刺部82を下方から見た斜視図である。センサ83は、上ホルダ82aと下ホルダ82b(実施の形態1における下ホルダ23bに該当)との間に装填される。センサ83が穿刺部82に装填された状態では、分岐路84を介して、上ホルダ82aに形成された第1の空間である上ホルダ負圧空間82cと下ホルダ82bに形成された第2の空間である下ホルダ負圧空間82dが、それぞれ上ホルダ吸引路82eと下ホルダ吸引路82fに連結されている。また、下ホルダ負圧空間82dを形成する皮膚当接部23eには、皮膚4の当接を検知する皮膚検知センサ27c(図10参照)が設けられている。
【0063】
次に、図10において、穿刺部82は、上ホルダ82aと下ホルダ82bとで構成されており、上ホルダ82aに設けられた上ホルダ負圧空間82cの天面には、レーザ光を透過し且つ着脱自在なレーザ透過フィルム23fが装着されている。これは、レーザ穿刺時に飛散する飛散物でレーザ穿刺ユニット24の部分を汚さないように設けられたものである。
【0064】
センサカートリッジ26(図5参照)から搬送されたセンサ83は、上ホルダ82aと下ホルダ82bとの間に挟まれて固定される。
【0065】
このセンサ83には、流体貫通孔36は形成されていない。この流体貫通孔36の役目を補うものとして、負圧手段27に連結された分岐部84(圧力同一化手段の一例として用いた)により上ホルダ吸引路82eと下ホルダ吸引路82fに分岐され、上ホルダ吸引路82eは第1の空間である上ホルダ負圧空間82cへ、下ホルダ吸引路82fは第2の空間である下ホルダ負圧空間82dへそれぞれ連結されている。
【0066】
穿刺動作時には、下ホルダ82bに設けられた下ホルダ負圧空間82dを形成する皮膚当接部23eが皮膚4に当接する。この下ホルダ負圧空間82dは、センサ83に形成された貯留部34と分岐部84に連結している上ホルダ吸引路82eと下ホルダ吸引路82fを介して負圧手段27から負圧が供給される。
【0067】
皮膚当接部23eに設けられた皮膚検知センサ27cが皮膚4を検知すると、負圧手段27が動作し負圧を発生する。この負圧は分岐部84に連結している上ホルダ吸引路82eと下ホルダ吸引路82fを介して、上ホルダ負圧空間82c内と下ホルダ負圧空間内82dに負圧を加える。
【0068】
下ホルダ負圧空間82dに負圧が加わると皮膚4が吸引されて盛り上がり、貯留部34を塞ぐ。この状態において、穿刺ボタン24b(図5参照)を押下すると、レーザ穿刺ユニット24からレーザ光24aが放射される。このレーザ光24aは、レーザ透過フィルム23fと上ホルダ負圧空間82cと貯留部34と下ホルダ負圧空間82dとを、この順に一直線状に通過して皮膚4を穿刺する。穿刺された皮膚4からは血液11が滲出する。この滲出した血液11は貯留部34内に取り込まれる。
【0069】
このとき、盛り上がった皮膚4と貯留部34との間に微小の隙間が形成されたとしても、分岐部84に連結している上ホルダ吸引路82eと下ホルダ吸引路82fを介して上ホルダ負圧空間82cと下ホルダ負圧空間82dの圧力は等しくなる。従って、上ホルダ負圧空間82cと下ホルダ負圧空間82dの圧力は常に等しくなる。即ち、貯留部34が皮膚4で塞がれたとしても、上ホルダ負圧空間82cと下ホルダ負圧空間82dとの圧力差はないので、皮膚4と貯留部34との間の微小な隙間による空気の流入はなくなり、気泡12が発生することはない。従って、予め定められた適正量の血液11を用いて測定することができるので、正確な測定を行うことができる。また、気泡12が発生することがないので、そもそも気泡12がはれつすることがなく、血液検査装置21内を汚すことはない。従って、血液検査装置21の衛生面・安全上の向上につながる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明にかかる血液検査装置は、適正な血液を得て正確な測定ができるので、血液検査装置等に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の実施の形態1における血液検査装置の穿刺部周辺の要部断面図
【図2】同、穿刺部に装填されるセンサの平面図
【図3】同、上ホルダとセンサの関係を示す平面図
【図4】同、穿刺部の下ホルダ側から見た斜視図
【図5】同、血液検査装置の透視平面図
【図6】同、血液検査装置に使用するセンサの断面図
【図7】同、センサの透視平面図
【図8】同、電気回路部とその周辺のブロック図
【図9】同、動作フローチャート
【図10】本発明の実施の形態2における血液検査装置の穿刺部周辺の要部断面図
【図11】同、穿刺部における上ホルダとセンサの関係を示す平面図
【図12】同、穿刺部の下ホルダ側から見た斜視図
【図13】従来の血液検査装置の透視平面図
【図14】同、穿刺時における第1の状態の要部断面図
【図15】同、穿刺時における第2の状態の要部断面図
【符号の説明】
【0072】
4 皮膚
21 血液検査装置
23 穿刺部
23a 上ホルダ
23b 下ホルダ
23c 上ホルダ負圧空間
23d 下ホルダ負圧空間
24 レーザ穿刺ユニット
25 センサ
27 負圧手段
30 電気回路部
34 血液の貯留部
36 流体貫通孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上ホルダと下ホルダとで血液センサを挟むように形成された穿刺部と、この穿刺部に対向して設けられるとともに、前記血液センサに形成された血液の貯留部を貫通して皮膚を穿刺する穿刺手段と、前記血液センサと接続される電気回路部と、この電気回路部に接続されるとともに、前記上ホルダと前記血液センサで形成される第1の空間へ負圧を加える負圧手段とを備え、前記第1の空間と、前記下ホルダと前記血液センサ及び皮膚で形成される第2の空間との圧力を同一にする圧力同一化手段を設けた血液検査装置。
【請求項2】
圧力同一化手段は、血液センサに形成された流体貫通孔とした請求項1に記載の血液検査装置。
【請求項3】
流体貫通孔は、血液の貯留部と空気孔とを連結する血液の供給路の略中間位置であって、負圧を供給する吸引口側に設けられた請求項2に記載の血液検査装置。
【請求項4】
流体貫通孔は、血液の貯留部を中心とし、血液の貯留部と空気孔との距離を半径とする円状内部にあり、血液の貯留部と空気孔とそれらを連結する血液の供給路に重なることのない位置に設けられた請求項2に記載の血液検査装置。
【請求項5】
流体貫通孔の面積は、空気孔の面積より大きくした請求項3記載の血液検査装置。
【請求項6】
圧力同一化手段は、負圧手段に連結された負圧路を分岐して上ホルダと下ホルダに夫々接続した請求項1に記載の血液検査装置。
【請求項7】
流体貫通孔は、皮膚および血液と非当接の位置に設けられた請求項1に記載の血液検査装置。
【請求項8】
前記穿刺手段が、レーザ穿刺ユニットである請求項1に記載の血液検査装置。
【請求項9】
前記上ホルダの天面には、フィルムを設けたことを特徴とする請求項1に記載の血液検査装置。
【請求項10】
前記上ホルダの天面には、レーザ光を透過するレーザ透過フィルムを設けたことを特徴とする請求項8に記載の血液検査装置。
【請求項11】
上ホルダと下ホルダとで血液センサを挟むように形成された穿刺部と、前記穿刺部に設けられたコネクタを介して前記血液センサと接続される電気回路部と、この電気回路部に接続されるとともに、前記上ホルダと前記血液センサで形成される第1の空間へ負圧を加える負圧手段とを備え、前記第1の空間と、前記下ホルダと前記血液センサ及び皮膚で形成される第2の空間との圧力を同一にする圧力同一化手段を設けた血液検査装置。
【請求項1】
上ホルダと下ホルダとで血液センサを挟むように形成された穿刺部と、この穿刺部に対向して設けられるとともに、前記血液センサに形成された血液の貯留部を貫通して皮膚を穿刺する穿刺手段と、前記血液センサと接続される電気回路部と、この電気回路部に接続されるとともに、前記上ホルダと前記血液センサで形成される第1の空間へ負圧を加える負圧手段とを備え、前記第1の空間と、前記下ホルダと前記血液センサ及び皮膚で形成される第2の空間との圧力を同一にする圧力同一化手段を設けた血液検査装置。
【請求項2】
圧力同一化手段は、血液センサに形成された流体貫通孔とした請求項1に記載の血液検査装置。
【請求項3】
流体貫通孔は、血液の貯留部と空気孔とを連結する血液の供給路の略中間位置であって、負圧を供給する吸引口側に設けられた請求項2に記載の血液検査装置。
【請求項4】
流体貫通孔は、血液の貯留部を中心とし、血液の貯留部と空気孔との距離を半径とする円状内部にあり、血液の貯留部と空気孔とそれらを連結する血液の供給路に重なることのない位置に設けられた請求項2に記載の血液検査装置。
【請求項5】
流体貫通孔の面積は、空気孔の面積より大きくした請求項3記載の血液検査装置。
【請求項6】
圧力同一化手段は、負圧手段に連結された負圧路を分岐して上ホルダと下ホルダに夫々接続した請求項1に記載の血液検査装置。
【請求項7】
流体貫通孔は、皮膚および血液と非当接の位置に設けられた請求項1に記載の血液検査装置。
【請求項8】
前記穿刺手段が、レーザ穿刺ユニットである請求項1に記載の血液検査装置。
【請求項9】
前記上ホルダの天面には、フィルムを設けたことを特徴とする請求項1に記載の血液検査装置。
【請求項10】
前記上ホルダの天面には、レーザ光を透過するレーザ透過フィルムを設けたことを特徴とする請求項8に記載の血液検査装置。
【請求項11】
上ホルダと下ホルダとで血液センサを挟むように形成された穿刺部と、前記穿刺部に設けられたコネクタを介して前記血液センサと接続される電気回路部と、この電気回路部に接続されるとともに、前記上ホルダと前記血液センサで形成される第1の空間へ負圧を加える負圧手段とを備え、前記第1の空間と、前記下ホルダと前記血液センサ及び皮膚で形成される第2の空間との圧力を同一にする圧力同一化手段を設けた血液検査装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−94166(P2010−94166A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−265059(P2008−265059)
【出願日】平成20年10月14日(2008.10.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月14日(2008.10.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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