説明

血液脳関門を通過しないKW−3902コンジュゲート

本発明は、化学および医学の分野において使用することができる特定の化合物、および、そのような特定の化合物を調製するための方法に関連する。具体的には、本明細書中には、様々な化合物および中間体を調製するための方法、ならびに、そのような化合物自体および中間体自体が記載される。より具体的には、本明細書中には、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)および式(VI)のKW−3902誘導体を合成するための方法が記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、米国仮特許出願第60/839,457号(2006年8月22日出願、Dittrich他、発明の名称「血液脳関門を通過しないKW−3902コンジュゲート」)および米国仮特許出願第60/942415号(2007年6月6日出願、Mugerditchian他、発明の名称「血液脳関門を通過しないKW−3902コンジュゲート」)の優先権を主張する(それらの開示全体がその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。
【0002】
発明の分野
本発明は、化学および医学の分野において使用することができる特定の化合物、および、そのような特定の化合物を調製するための方法に関連する。
【背景技術】
【0003】
関連技術分野の説明
アデノシンは、腎臓の血行力学、体液および溶質の尿細管再吸収の調節、ならびに、腎臓におけるレニン放出に関与する。他の血管床とは対照的に、アデノシンは腎臓における血管収縮を誘導し、それにより、腎臓の灌流を器官の代謝速度に共役させる。その腎臓作用および利尿作用に加えて、アデノシンは発作を調節する。発作および痙攣は、電気的ニューロン活動の異常な同調を生じさせる、脳の一時的な異常な電気生理学的現象の結果である。どの個体も、発作閾値、すなわち、それを越えた場合には発作が誘導され得る許容点を有する。例えば、発作障害を発症する個体は、発作について、他の個体よりも低い閾値を有する。睡眠遮断、長期または急性のストレス、極度の疲労、恐怖、病気、呼吸速度の増大または血糖レベルの変化は、発作閾値を低下させることが知られている例示的な要因である。
【0004】
アデノシンは、その生物学的機能を、種々のGタンパク質共役受容体(「GPCRs」)(例えば、A、A2A、A2B、AおよびA)に結合することにより発揮する。アデノシンA受容体は腎臓の体液バランスを調節し、同様にまた、その抗痙攣活性に寄与する興奮性のグルタミン酸作動性神経伝達を調節する。A受容体に対するアンタゴニスト(AARA)は、利尿およびナトリウム利尿を、糸球体ろ過速度(「GFR」)における大きな変化を伴うことなく引き起こし、また、輸入細動脈の圧力を低下させる。キサンチン由来のアデノシンA受容体アンタゴニスト(例えば、KW−3902など)は、効果的な利尿剤、腎臓保護剤および気管支拡張剤であり、個体の発作閾値もまた低下させる。
【0005】
AARAのKW−3902の化学名は8−(3−ノルアダマンチル)−1,3−ジプロピルキサンチンであり、これはまた、3,7−ジヒドロ−1,3−ジプロピル−8−(3−トリシクロ[3.3.1.03,7]ノニル)−1H−プリン−2,6−ジオンとして知られており、その構造は、
【化1】


である。
【0006】
KW−3902および関連化合物が、例えば、米国特許第5,290,782号、同第5,395,836号、同第5,446,046号、同第5,631,260号、同第5,736,528号、同第6,210,687号および同第6,254,889号に記載される(これらのすべての開示全体が、いかなる図面も含め、参考として本明細書中に組み込まれる)。
【0007】
KW−3902および関連化合物は、利尿作用、腎臓保護作用および気管支拡張作用を有する。さらに、KW−3902は、標準的な利尿剤と併用されたとき、標準的治療に対して不応性である対象に対して有益である。KW−3902はまた、上記で記載される(A受容体を介して)アデノシンにより媒介される尿細管糸球体フィードバック(「TGF」)機構を阻止する。これは最終的には、増大したGFRおよび改善された腎機能を可能にし、これは、より多くの体液がヘンレ係蹄および遠位尿細管を通過することをもたらす。加えて、KW−3902は近位尿細管におけるナトリウム(および、従って、水)の再吸収を阻害し、これによって、利尿がもたらされる。さらには、KW−3902はTGFの阻害剤であり、これにより、TGFを活性化するか、または促進させるいくつかの利尿剤(例えば、近位利尿剤など)の有害な影響を打ち消すことができる。例えば、米国特許第5,290,782号、ならびに、米国特許出願第10/830,617号(2004年4月23日出願)、同第11/248,479号(2005年10月11日出願)、同第11/248,905号(2005年10月11日出願)および同第11/464,665号(2006年6月16日出願)を参照のこと(これらのすべての開示全体が、いかなる図面を含め、参考として本明細書中に組み込まれる)。
【0008】
効果的なアデノシンA受容体アンタゴニストとして機能する能力を保持し、しかし、血液脳関門を通過する能力が低下した化合物が求められている。そのような化合物はAARAの利尿機能および腎臓保護機能を保持することができ、しかし、アデノシンA受容体拮抗作用の望ましくない中枢神経系(CNS)副作用を低下させるか、または排除すると考えられる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書中に開示される実施形態は一般には、血液脳関門を実質的に通過しないキサンチン誘導体を含めて、様々な化学化合物の合成に関連する。いくつかの実施形態はそのような化学化合物および中間体化合物に関連する。他の実施形態は、本明細書中に開示される化学化合物および中間体を合成する個々の方法に関する。さらに他の実施形態は、本明細書中に記載される化学化合物を使用する方法に関連する。
【0010】
本明細書中に開示される実施形態は、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)および式(VI)の化合物、あるいは、これらの医薬的に許容され得る塩、エステル、代謝産物またはプロドラッグに関連する。
【0011】
本明細書中に開示される他の実施形態は、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)および式(VI)の化合物を合成する個々の方法に関連する。
【0012】
さらに他の実施形態は、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)の化合物、あるいは、その医薬的に許容され得る塩、エステル、代謝産物またはプロドラッグと、アデノシン非緩和利尿剤とを含む医薬組成物に関連する。
【0013】
他の実施形態は、利尿をその必要性のある対象において誘導する方法であって、その必要性のある対象を特定すること、および、前記対象に、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)の化合物、あるいは、その医薬的に許容され得る塩、エステル、代謝産物またはプロドラッグの治療効果的な量と、アデノシン非緩和利尿剤とを与えることによる方法に関連する。
【0014】
さらに他の実施形態は、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)の化合物、あるいは、その医薬的に許容され得る塩、エステル、代謝産物またはプロドラッグと、アデノシン非緩和利尿剤とを与えることによって、アデノシン非緩和利尿剤の利尿作用を対象において維持または回復する方法に関連する。
【0015】
さらに他の実施形態は、損なわれたクレアチニンクリアランスを患う対象を特定すること、および、前記対象に、クレアチニンクリアランスを維持または増大するために効果的な、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)、あるいは、その医薬的に許容され得る塩、エステル、代謝産物またはプロドラッグの所定量と、アデノシン非緩和利尿剤とを与えることによって、腎機能を改善する方法に関連する。
【0016】
他の実施形態は、損なわれたクレアチニンクリアランスを患う対象を特定すること、および、前記対象に、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)、あるいは、その医薬的に許容され得る塩、エステル、代謝産物またはプロドラッグの所定量と、アデノシン非緩和利尿剤とを与え、それにより、クレアチニンクリアランスにおける障害を所定の期間にわたって遅くするか、または停止させることによって、腎機能を維持する方法に関連する。
【0017】
他の実施形態は、増大した血清クレアチニンレベルおよび/または低下したクレアチニンクリアランスを有する対象を特定すること、および、前記対象に、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)の化合物、あるいは、その医薬的に許容され得る塩、エステル、代謝産物またはプロドラッグの所定量と、アデノシン非緩和利尿剤とを与え、それにより、血清クレアチニンレベルを低下させ、および/または、クレアチニンクリアランスの障害を遅くするか、または停止させることによって、腎機能を回復する方法に関連する。
【0018】
さらに他の実施形態は、うっ血性心不全および腎障害を患う対象を特定すること、および、前記対象に、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)の化合物、あるいは、その医薬的に許容され得る塩、エステル、代謝産物またはプロドラッグの所定量と、アデノシン非緩和利尿剤とを与えることによって、腎機能を改善するか、または維持するか、または回復する方法に関連する。
【0019】
さらに他の実施形態は、標準的な利尿剤治療に対して不応性である、うっ血性心不全に苦しんでいる対象を特定すること、および、前記対象に、クレアチニンクリアランスおよび利尿を維持または増大するために効果的な、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)の化合物、あるいは、そらの医薬的に許容され得る塩、エステル、代謝産物またはプロドラッグの所定量を与えることによって、腎機能を対象において改善するか、または維持するか、または回復する方法に関連する。
【0020】
さらに他の実施形態は、急性の体液過剰を処置するための短期入院の必要性のある対象を特定すること、前記対象を入院させること、および、前記対象に、アデノシン非緩和利尿剤と、過剰な体液を対象から除くことを、利尿剤治療だけと比較して加速させるために効果的な、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)の化合物、あるいは、その医薬的に許容され得る塩、エステル、代謝産物またはプロドラッグの所定量とを与えることによって、急性体液過剰を対象において処置する方法に関連する。
【0021】
さらに他の実施形態は、長期の利尿剤を服用する安定型うっ血性心不全の対象を特定すること、および、前記対象に、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)の化合物、あるいは、その医薬的に許容され得る塩、エステル、代謝産物またはプロドラッグの治療効果的な量を約4日〜約1ヶ月の間隔にわたって与えることによって、長期の利尿剤を服用する安定型うっ血性心不全の対象において腎機能を改善するか、または維持するか、または回復する方法に関連し、ただし、この場合、対象は、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)の化合物による処置の経過の期間中を通して長期の利尿剤治療を同時に継続する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
KW−3902およびその類似体は数多くの生物学的活性を有しており、これらの生物学的活性が、例えば、米国特許第5,290,782号、同第5,395,836号、同第5,446,046号、同第5,631,260号、同第5,736,528号、同第6,210,687号および同第6,254,889号、ならびに、同時係属中の米国特許出願第10/830,617号(2004年4月23日出願)、同第11/248,479号(2005年10月11日出願)、同第11/248,905号(2005年10月11日出願)および同第11/464,665号(2006年6月16日出願)に記載される(これらのすべての開示全体が、いかなる図面を含め、参考として本明細書中に組み込まれる)。
【0023】
本明細書中に提供されるのは、置換キサンチン環またはノルアダマンチル環を有するKW−3902の誘導体、同様にまた、その医薬的に許容され得る塩、エステル、アミド、代謝産物およびプロドラッグ、それらの合成方法、ならびに、それらの使用方法である。KW−3902の誘導体は、KW−3902のキサンチン環またはノルアダマンチル基のどちらかに連結された極性成分または荷電成分を有することができる。
【0024】
KW−3902の様々な代謝産物が知られている。これらには、キサンチン部分におけるプロピル基がヒドロキシル化される化合物、または、プロピル基がアセチルメチル(CHC(O)CH−)基である化合物が含まれる。他の代謝産物には、ノルアダマンチル基がヒドロキシル化される(すなわち、−OH基により置換される)か、または、オキシル化される(すなわち、=O基により置換される)化合物が含まれる。従って、KW−3902の代謝産物の例には、8−(trans−9−ヒドロキシ−3−トリシクロ[3.3.1.03,7]ノニル)−1,3−ジプロピルキサンチン(これはまた、本明細書中では「M1−trans」として示される)、8−(cis−9−ヒドロキシ−3−トリシクロ[3.3.1.03,7]ノニル)−1,3−ジプロピルキサンチン(これはまた、本明細書中では「M1−cis」として示される)、8−(trans−9−ヒドロキシ−3−トリシクロ[3.3.1.03,7]ノニル)−1−(2−オキソプロピル)−3−プロピルキサンチン、および、1−(2−ヒドロキシプロピル)−8−(trans−9−ヒドロキシ−3−トリシクロ[3.3.1.03,7]ノニル)−3−プロピルキサンチンが含まれるが、これらに限定されない。
【0025】
上記化合物の代謝産物、エステルまたはアミドにおけるアミン側鎖、ヒドロキシ側鎖またはカルボキシル側鎖はどれも、エステル化またはアミド化することができる。この目的を達成するために使用されるための様々な手法および具体的な基が当業者には知られており、また、様々な参考源において、例えば、GreeneおよびWuts、Protective Groups in Organic Synthesis(第3版、John Wiley&Sons、New York、NY、1999;これはその全体が本明細書中に組み込まれる)などにおいて容易に見出され得る。従って、いくつかの実施形態はKW−3902の誘導体の代謝産物に関連する。
【0026】
「プロドラッグ」は、生体内で元の薬物に変換される薬剤である。プロドラッグは、いくつかの状況では、投与することが元の薬物よりも容易であることがあるので、有用であることが多い。例えば、元の薬物が経口投与によって生物学的に利用可能でないとしても、プロドラッグが経口投与によって生物学的に利用可能である場合がある。プロドラッグはまた、元の薬物を上回る、医薬組成物における改善された溶解性を有する場合がある。プロドラッグの一例が、限定されないが、水溶性が移動性に対して有害である細胞膜通過の透過を容易にするためにエステル(「プロドラッグ」)として投与され、しかし、その後、水溶性が有益である細胞の内部に入ると、カルボン酸(活性な実体)に代謝的に加水分解される本発明の化合物である。プロドラッグのさらなる一例として、酸基に結合した短いペプチド(ポリアミノ酸)を挙げることができ、この場合、ペプチドが、活性な成分を現すために代謝される。従って、いくつかの実施形態はKW−3902の誘導体のプロドラッグに関連する。
【0027】
上記で言及されたように、本明細書中に開示されるKW−3902の誘導体は、キサンチン環および/またはアダマンチル基に連結された荷電成分または極性成分を有することができる。極性成分は、δ+の電荷およびδ−の電荷が、一緒に結合した原子の対の間における電気陰性度の違いのために化学基の内部に存在することによって特徴づけられる。荷電成分は、典型的には、塩基性成分の場合におけるプロトン化のために、あるいは、酸性成分の場合における1つ以上のタンパク質の喪失のためにそのどちらかで、生理学的条件のもとで、部分的に、または完全にそのどちらかでイオン化する任意の化学的成分を示す。本明細書中に記載される実施形態において有用である例示的な極性成分および荷電成分には、−SO(スルホナート)基、−OSO(スルファート)基、−SO(スルフィナート)基、−CO(カルボキシラート)基、−PO2−(ホスホナート)基、−OPO2−(ホスファートモノエステル)基、−OP(O)OR(ホスファートジエステル)基、−PO(ホスフィナート)基、−B(OH)O(ボラート)基、−O(CHCHO)H(PEG)基、−ONO(ニトラートエステル)基、−ONO(ニトリトエステル)基、−CF基、−CHF基、−CHF基、シアノ基、イソシアノ基、アミド基、グアナジニウム(guanadinium)基およびアミノ基が含まれるが、これらに限定されない。
【0028】
様々なタイプのリンカーを、極性成分または荷電成分と、キサンチン基またはノルアダマンチル基との間に存在させることができる。例えば、これらの基を、置換または非置換の分枝型または非分枝型のアルキル、アルケニル、アルキニル、エステル、エーテル、チオエーテル、アミドまたは他のタイプの連結を介して連結することができる。いくつかの実施形態において、リンカーは、炭素鎖成分(例えば、−CH−またはCH=、あるいは、カルボニル)と、エステル連結、エーテル連結、チオエーテル連結またはアミド連結との組合せを含むことができる。好ましい実施形態において、リンカーは、0個〜10個の残基、例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個またはそれ以上から、12個、14個、16個、18個または20個(あるいはさらにそれ以上)に至る残基が存在する。いくつかの実施形態は、極性成分または荷電成分がKW−3902のキサンチン環および/またはノルアダマンチルにC−C連結を介して連結されるKW−3902誘導体に関連する。いくつかの実施形態は、極性成分または荷電成分がノルアダマンチル基にエーテル架橋を介して連結されるKW−3902誘導体に関連する。
【0029】
キサンチン環における置換を有するKW−3902誘導体
従って、いくつかの実施形態は、下記の式(I)または式(II)のKW−3902の誘導体、および、それらの合成方法を提供する:
【化2】

【0030】
上記式において、RおよびRは、水素、低級アルキル、アリル、プロパルギル、あるいは、ヒドロキシル置換またはオキソ置換または非置換の低級アルキルを表し、Rは水素または低級アルキルを表し、XおよびXのそれぞれは独立して、酸素または硫黄を表し、Aは、分枝型アルキルもしくは非分枝型アルキル、アルケニル、アルキニル、エステル、エーテル、チオエーテル、アミドまたはアリールアミドからなる群から選択される置換された置換基または非置換の置換基である。Rは、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキルおよびヘテロシクリルアルキルを表し、ただし、前記のそれぞれが荷電成分または極性成分により置換される。あるいは、それらの医薬的に許容され得る塩、エステル、アミド、代謝産物またはプロドラッグである。
【0031】
ノルアダマンチル環におけるC−C置換を有するKW−3902誘導体
いくつかの実施形態は、下記の式(III)または式(IV)のKW−3902の誘導体、および、それらの合成方法を提供する:
【化3】

【0032】
上記式において、R、Rのそれぞれは独立して、水素、低級アルキル、アリル、プロパルギル、あるいは、ヒドロキシ置換またはオキソ置換または非置換の低級アルキルを表し、Rは水素または低級アルキルを表し、XおよびXのそれぞれは独立して、酸素または硫黄を表す。Rは、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキルおよびヘテロシクリルアルキルを表し、ただし、前記のそれぞれが荷電成分または極性成分により置換される。あるいは、それらの医薬的に許容され得る塩、エステル、アミド、代謝産物またはプロドラッグである。
【0033】
ノルアダマンチル環におけるエーテル連結の置換を有するKW−3902誘導体
さらには下記で議論されるように、他の実施形態は、ノルアダマンチル環における置換をエーテル連結により有する下記の式(V)または式(VI)のKW−3902の誘導体、および、それらの合成方法を提供する:
【化4】

【0034】
上記式において、R、Rのそれぞれは独立して、水素、低級アルキル、アリル、プロパルギル、あるいは、ヒドロキシ置換またはオキソ置換または非置換の低級アルキルを表し、Rは水素または低級アルキルを表し、XおよびXのそれぞれは独立して、酸素または硫黄を表す。Rは、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキルおよびヘテロシクリルアルキルを表し、ただし、前記のそれぞれが荷電成分または極性成分により置換される。あるいは、それらの医薬的に許容され得る塩、エステル、アミド、代謝産物またはプロドラッグである。
【0035】
本明細書中に記載される化合物について、それぞれのステレオジェン炭素はRまたはSの立体配置が可能である。本出願において例示される具体的な化合物は特定の立体配置で示され得るが、逆の立体化学を任意の所与のキラル中心において有する化合物、または、その混合を有する化合物のどちらも、別途指定されない限り、想定される。キラル中心が本発明の誘導体において見出されるとき、そのような化合物は、別途示されない限り、すべての可能な立体異性体を包含することを理解しなければならない。
【0036】
本明細書中で使用されるように、任意の「R」基、例えば、限定されないが、R、R、R、R、Rなどは、示された原子に結合することができる置換基を表す。R基は置換または非置換である場合がある。2つの「R」基が同じ原子または隣接原子に共有結合により結合するならば、これら2つの「R」基は、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールまたは複素環を形成するために、本明細書中で定義されるように「一緒になる」ことができる。例えば、限定されないが、NR1a1b基のR1aおよびR1bが、「一緒になる」と示されるならば、それらの末端原子において互いに共有結合により結合して、下記の環を形成することを意味する:
【化5】



【0037】
用語「アルキル」は、本明細書中で使用される場合、非分岐型または分岐型である任意の置換された飽和炭化水素または非置換の飽和炭化水素を意味し、C〜C24が好ましく、C〜C炭化水素が好ましく、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチルおよびtert−ブチルおよびペンチルが最も好ましい。
【0038】
用語「アルケニル」、および、そのすべてのE型立体異性体、Z型立体異性体は、本明細書中で使用される場合、1つ以上の二重結合を含有する、非分岐型または分岐型である任意の置換された不飽和炭化水素または非置換の不飽和炭化水素を意味する。アルケニル基のいくつかの例には、アリル、ホモアリル、ビニル、クロチル、ブテニル、ペンテニル、へキセニル、ヘプテニルおよびオクテニルが含まれる。
【0039】
用語「アルキニル」は、本明細書中で使用される場合、1つ以上の三重結合を有する、非分岐型または分岐型である任意の置換された不飽和炭化水素または非置換の不飽和炭化水素を意味する。
【0040】
用語「シクロアルキル」は、環を構成する5個〜12個の原子を好ましくは有する任意の非芳香族の置換された炭化水素環または非置換の炭化水素環を示す。さらには、本発明の関連において、用語「シクロアルキル」は、この定義が二環式構造および三環式構造を包含するように縮合環系を含む。
【0041】
用語「シクロアルケニル」は、環を構成する5個〜12個の原子を好ましくは有する、二重結合を含む任意の非芳香族の置換された炭化水素環または非置換の炭化水素環を示す。さらには、本発明の関連において、用語「シクロアルケニル」は、この定義が二環式構造および三環式構造を包含するように縮合環系を含む。
【0042】
用語「シクロアルキニル」は、環を構成する5個〜12個の原子を好ましくは有する、三重結合を含む任意の非芳香族の置換された炭化水素環または非置換の炭化水素環を示す。さらには、本発明の関連において、用語「シクロアルキニル」は、この定義が二環式構造および三環式構造を包含するように縮合環系を含む。
【0043】
用語「アシル」は、カルボニル基を介して置換基として結合する水素、低級アルキル、低級アルケニルまたはアリールを示す。例には、ホルミル、アセチル、プロパノイル、ベンゾイルおよびアクリルが含まれる。アシルは置換または非置換であり得る。
【0044】
本発明の関連において、用語「アリール」は、炭素環式の芳香族環または芳香族環系を意味することが意図される。そのうえ、用語「アリール」には、少なくとも2つのアリール環、または、少なくとも1つのアリールおよび少なくとも1つのC3〜8シクロアルキルが少なくとも1つの化学結合を共有する縮合環系が含まれる。「アリール」環のいくつかの例には、場合により置換フェニル、ナフタレニル、フェナントレニル、アントラセニル、テトラリニル、フルオレニル、インデニルおよびインダニルが含まれる。アリール基は置換または非置換であり得る。
【0045】
本発明の関連において、用語「ヘテロアリール」は、芳香族環における1つ以上の炭素原子が、窒素、硫黄、リンおよび酸素を含む群から選択される1つ以上のヘテロ原子により置換されている複素環式芳香族基を意味することが意図される。さらには、本発明の関連において、用語「ヘテロアリール」は、少なくとも1つのアリール環および少なくとも1つのヘテロアリール環、少なくとも2つのヘテロアリール環、少なくとも1つのヘテロアリール環および少なくとも1つのヘテロシクリル環、または、少なくとも1つのヘテロアリール環および少なくとも1つのC3〜8シクロアルキル環が少なくとも1つの化学結合を共有する縮合環系を含む。ヘテロアリールは置換または非置換が可能である。
【0046】
用語「複素環」および用語「ヘテロシクリル」は、炭素原子が1個〜3個のヘテロ原子と一緒になって環を構成する3員環、4員環、5員環、6員環、7員環および8員環を意味することが意図される。しかしながら、複素環は、芳香族π電子系が生じないような様式で位置する1つ以上の不飽和結合を場合により含有することができる。ヘテロ原子は独立して、酸素、硫黄および窒素から選択される。複素環は、1つ以上のカルボニル官能基またはチオカルボニル官能基をさらに含有することができ、その結果、この定義には、オキソ系およびチオ系(例えば、ラクタム、ラクトン、環状イミド、環状チオイミドおよび環状カルバマートなど)が含められる。ヘテロシクリル環はまた、場合により、この定義が二環式構造および三環式構造を包含するように、少なくとも他のヘテロシクリル環、少なくとも1つのC3〜8シクロアルキル環、少なくとも1つのC3〜8シクロアルケニル環および/または少なくとも1つのC3〜8シクロアルキニル環に縮合することができる。ベンゾ縮合ヘテロシクリル基の例には、ベンゾイミダゾリジノン環構造、テトラヒドロキノリン環構造およびメチレンジオキシベンゼン環構造が含まれるが、これらに限定されない。「複素環」のいくつかの例には、テトラヒドロチオピラン、4H−ピラン、テトラヒドロピラン、ピペリジン、1,3−ジオキシン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキシン、1,4−ジオキサン、ピペラジン、1,3−オキサチアン、1,4−オキサチイン、1,4−オキサチアン、テトラヒドロ−1,4−チアジン、2H−1,2−オキサジン、マレイミド、スクシンイミド、バルビツル酸、チオバルビツル酸、ジオキソピペラジン、ヒダントイン、ジヒドロウラシル、モルホリン、トリオキサン、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン、テトラヒドロチオフェン、テトラヒドロフラン、ピリジン、ピリジニウム、ピロリン、ピロリジン、ピロリドン、ピロリジオン、ピラゾリン、ピラゾリジン、イミダゾリン、イミダゾリジン、1,3−ジオキソール、1,3−ジオキソラン、1,3−ジチオール、1,3−ジチオラン、イソオキサゾリン、イソオキサゾリジン、オキサゾリン、オキサゾリジン、オキサゾリジノン、チアゾリン、チアゾリジンおよび1,3−オキサチオランが含まれるが、これらに限定されない。本発明の複素環基は置換または非置換であり得る。
【0047】
用語「アルコキシ」は、非分岐型または分岐型である、置換または非置換の任意の飽和エーテルまたは不飽和エーテルを示し、C〜Cの非分岐型の飽和した非置換エーテルが好ましく、メトキシが好ましい。
【0048】
用語「シクロアルコキシ」は、分子において別の炭素原子に自身が結合する酸素原子に結合する任意の非芳香族炭化水素環を示す。シクロアルコキシは置換または非置換が可能である。
【0049】
用語「アルコキシカルボニル」は、カルボニル基に結合する、線状、分枝状または環状で、飽和または不飽和である任意の脂肪族または芳香族のアルコキシまたはヘテロアルコキシを示す。例には、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロピルオキシカルボニル基、イソプロピルオキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、シクロペンチルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、フェニルオキシカルボニル基およびピリジルオキシカルボニル基などが含まれる。アルコキシカルボニルは置換または非置換であり得る。
【0050】
用語「(シクロアルキル)アルキル」は、低級アルキレンを介して置換基として結合するシクロアルキル基として理解される。(シクロアルキル)アルキル基および(シクロアルキル)アルキル基の低級アルキレンは置換または非置換であり得る。
【0051】
用語「(複素環)アルキル」および用語「(ヘテロシクリル)アルキル」は、低級アルキレンを介して置換基として結合する複素環基として理解される。(複素環)アルキル基の複素環基および低級アルキレンは置換または非置換であり得る。
【0052】
用語「アリールアルキル」は、低級アルキレンを介して置換基として結合するアリール基を意味することが意図される(それぞれが、本明細書中で定義される通りである)。アリールアルキルのアリール基および低級アルキレンは置換または非置換であり得る。例には、ベンジル、置換ベンジル、2−フェニルエチル、3−フェニルプロピルおよびナフチルアルキルが含まれる。
【0053】
用語「ヘテロアリールアルキル」は、低級アルキレンを介して置換基として結合するヘテロアリール基として理解される(それぞれが、本明細書中で定義される通りである)。ヘテロアリールアルキル基のヘテロアリールおよび低級アルキレンは置換または非置換であり得る。例には、2−チエニルメチル、3−チエニルメチル、フリルメチル、チエニルエチル、ピロリルアルキル、ピリジルアルキル、イソオキサゾリルアルキル、イミダゾリルアルキル、ならびに、それらの置換類似体およびベンゾ縮合類似体が含まれる。
【0054】
用語「ハロゲン原子」は、本明細書中で使用される場合、元素周期表の第7欄の放射安定性原子のいずれか1つ、すなわち、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を意味し、フッ素および塩素が好ましい。
【0055】
用語「保護基成分」(“protecting group moiety”および“protecting group moieties”)は、本明細書中で使用される場合、分子内の存在する基が、望まれない化学反応を受けることを防止するために、分子に付加される任意の原子または原子団を示す。保護基成分の様々な例が、T.W.GreeneおよびP.G.M.Wuts、Protective Groups in Organic Synthesis(第3版、John Wiley&Sons、1999)に、また、J.F.W.McOmie、Protective Groups in Organic Chemistry(Plenum Press、1973)に記載される(これらはともに、本明細書に参考として組み込まれる)。保護基成分は、保護基成分が、加えられた反応条件に対して安定であり、かつ、当該技術分野から知られている方法論を使用して好都合な段階で容易に除去されるような様式で選ぶことができる。保護基の限定されない列挙には、ベンジル;置換ベンジル;アルキルカルボニル(例えば、t−ブトキシカルボニル(BOC));アリールアルキルカルボニル(例えば、ベンジルオキシカルボニル、ベンゾイル);置換メチルエーテル(例えば、メトキシメチルエーテル);置換エチルエーテル;置換ベンジルエーテル;テトラヒドロピラニルエーテル;シリルエーテル(例えば、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル、t−ブチルジメチルシリルまたはt−ブチルジフェニルシリル);エステル(例えば、ベンゾアートエステル);カルボナート(例えば、メトキシメチルカルボナート);非環状ケタール(例えば、ジメチルケタール);環状ケタール(例えば、1,3−ジオキサンまたは1,3−ジオキソラン類);および環状ジチオケタール(例えば、1,3−ジチアンまたは1,3−ジチオラン)が含まれる。本明細書中で使用される場合、任意の「PG」基は、例えば、限定されないが、PGおよびPGなどが保護基成分を表す。
【0056】
用語「エーテル」は、本明細書中で使用される場合、式R−O−R’(式中、Rおよび/またはR’は非置換または置換のアルキル基である)を有する化学成分を示す。
【0057】
用語「エステル」は、式−(R)−COOR’(式中、RおよびR’は独立して、アルキル、シクロアルキル、アリール、(環炭素を介して結合する)ヘテロアリール、および、(環炭素を介して結合する)ヘテロ脂環からなる群から選択され、nは0または1である)を有する化学成分を示す。
【0058】
「アミド」は、式−X−C(O)NHR’または式−X−NHC(O)R’(式中、Xは直鎖成分もしくは分枝鎖成分または環状成分または複素環成分であり、RおよびR’は独立して、アルキル、シクロアルキル、アリール、(環炭素を介して結合する)ヘテロアリール、および、(環炭素を介して結合する)ヘテロ脂環からなる群から選択され、nは0または1である)を有する化学成分を示す。アミドは、本発明の分子に結合されるアミノ酸分子またはペプチド分子の結合によって誘導することができ、それによりプロドラッグを形成する。
【0059】
用語「代謝産物」は、KW−3902が哺乳動物の細胞内で変換される化合物を示す。本明細書中で議論される医薬組成物はKW−3902の代謝産物をKW−3902の代わりに含むことができる。本明細書中で議論される方法の範囲には、KW−3902が対象に投与され、それにもかかわらず、その代謝産物が生物活性な実体であるそのような場合が含まれる。
【0060】
用語「純粋な」、用語「精製された」、用語「実質的に精製された」および用語「単離された」は、本明細書中で使用される場合、そのような実施形態の化合物には、その化合物がその天然の状態において見出されるならば、その化合物がその天然の状態において会合する他の異なった化合物が含まれないことを示す。「純粋な」、「精製された」、「実質的に精製された」または「単離された」として本明細書中で記載されるいくつかの実施形態において、化合物は、重量比で所与のサンプルの少なくとも0.5%、1%、5%、10%または20%の量を含むことができ、最も好ましくは、重量比で所与のサンプルの少なくとも50%または75%の量を含むことができる。
【0061】
用語「誘導体」、用語「変異体」または他の類似する用語は、他方の化合物の類似体である化合物を示す。
【0062】
NACA(3−ノルアダマンタンカルボン酸)およびNACA誘導体の合成
式(I)、式(II)、式(III)および式(IV)の化合物は、市販されている出発化合物および常法的プロトコルを使用して容易に合成することができる。化合物(I)、化合物(II)、化合物(III)および化合物(IV)の合成では、反応性のノルアダマンタン誘導体を形成するために使用することができるノルアダマンタンカルボン酸(NACA)誘導体を利用することができ、この場合、この反応性ノルアダマンタン誘導体も同様に、市販されている出発化合物から常法的プロトコルを使用して調製することができる。例示的なNACA化合物および対応する反応性ノルアダマンタン誘導体のための合成経路が下記においてスキーム1に示される。
スキーム1
【化6】

【0063】
スキーム1を参照して、工程(a)において、市販されている2−アダマンタノン(Acros Organics、Geel、ベルギー;カタログ番号29250)を、グリニャール反応を使用して2−メチルアダマンタノールに変換することができる。例えば、2−アダマンタノンを適切な溶媒の存在下でグリニャール試薬(例えば、MeMgBrまたはMeMgIなど)と反応させることができる。この反応を、単独または組合せで使用することができるいくつかの反応溶媒(例えば、ベンゼン、トルエン、ヘプタン、ヘキサン、ジクロロメタンおよびエーテル(例えば、ジオキサン、テトラヒドロフランなど)など)において行うことができる。好ましくは、この反応はテトラヒドロフランの存在下で行われる。これに飽和NHCl水溶液を加えることができ、その後、6N HClおよび酢酸エチル(EtOAc)を加えることができる。EtOAc層を洗浄することができ、MgSOを、生成物の2−メチルアダマンタノールを乾燥および濃縮するために加えることができる。
【0064】
工程(b)および工程(c)において、環構造を、上記アダマンタノールを適切な溶媒(例えば、CHClまたはCClなど)の存在下でハロゲン化剤(例えば、NaOCl、NaOBr、NCSまたはNBSなど)と反応させることによって開環することができる。いくつかの実施形態において、酢酸を、上記アダマンタノール化合物、ハロゲン化剤およびCClの反応混合物に滴下様式で加えることができる。これにより、中間体の2−メチル−2−アダマンチルヒポクロリトが形成する。好ましくは、この反応は2℃で行われる(工程(b))。反応液は続いて処理することができ、有機層をアルカリ性溶液(例えば、NaHCOなど)で洗浄し、その後、水により洗浄することができる(工程(c))。MgSOを、塩素化誘導体を乾燥するために加えることができる。塩素化誘導体は、環構造を開環させるために70℃〜100℃に加熱することができる。冷却後、開環したアダマンタノン誘導体を濃縮することができる。
【0065】
工程(d)において、環構造を、アセチル化ノルアダマンタン誘導体を生じさせるために塩基性溶液(例えば、KOHなど)および低級アルコール(例えば、メタノールなど)の存在下で再び閉環することができる。アセチル化ノルアダマンタン誘導体は、BrおよびNaOHを用いて、または、別のハロゲンを塩基の存在下で用いてノルアダマンタンカルボン酸誘導体に変換することができる。
【0066】
工程(e)において、ノルアダマンタンカルボン酸誘導体を反応性誘導体(例えば、酸クロリド、H−ヒドロキシスクシンイミドのエステル、混合無水物および対称無水物など)に変換することができる。いくつかの実施形態において、工程(d)から得られるカルボン酸誘導体を、酸塩化物を生成させるために塩化チオニルにより処理することができる。工程(e)は、ピリジン、ジクロロエタン、塩化メチレン、トルエンおよびクロロホルムなど(これらに限定されない)の様々な溶媒において行うことができる。いくつかの実施形態において、反応を15℃〜30℃の間で行うことができる。
【0067】
いくつかの実施形態において、KW−3902あるいはその代謝産物またはプロドラッグのノルアダマンチル基は極性成分または荷電成分に連結することができ、また、極性成分または荷電成分が、式(III)および式(IV)において例示されるノルアダマンチル基に連結されるKW−3902誘導体を作製するために使用することができる。スキーム1に示される類似した経路で、下記のノルアダマンチル反応性誘導体を、式(III)および式(IV)の化合物の合成において使用するために、市販されている試薬から出発して作製することができる:
【化7】


式IIIのための前駆体 式IVのための前駆体



式IIIのための前駆体 式IVのための前駆体

【0068】
上記で示される式(III)および式(IV)の出発化合物は、市販されている2−アダマンタノン(Acros Organics、Geel、ベルギー;カタログ番号29250)から下記に示されるベンジルアダマンタノン中間体およびフェニルアダマンタノン中間体を経由して合成することができる:
【化8】

4−ベンジルアダマンタン−2−オン 4−フェニルアダマンタン−2−オン

【0069】
上記で示されるベンジルアダマンタノン誘導体およびフェニルアダマンタノン誘導体は、D.A.Lightner他(1987)、J.Org.Chem.、52:4171〜4175(この開示は、いかなる図面を含み、、その全体が参考として本明細書に明確に組み込まれる)によって記載される方法を使用して作製することができる。異性体を、標準的なクロマトグラフィー技術を使用して、要求される場合には分離することができる。例示的なフェニルアダマンタノン誘導体およびベンジルアダマンタノン誘導体の合成が下記においてスキーム2およびスキーム3にそれぞれ示される。
スキーム2
【化9】

【0070】
場合により、アダマンタノン誘導体の種々のエナンチオマーを、デヒドロアビエチルアミンとの結晶化によって分割することができる。調製用GCを、Lightner他に記載されるようにエピマーを分離するために使用することができる。上記のアダマンタノン誘導体は反応性アダマンタン誘導体に変換することができる。上記で示されるようなベンジル置換またはフェニル置換を有する、アダマンタンの反応性誘導体を作製するための例示的な経路が下記においてスキーム3およびスキーム4に示される。
スキーム3
【化10】

スキーム4
【化11】

【0071】
スキーム3およびスキーム4を参照して、工程(a)〜工程(e)に示される反応は、スキーム1に関連して記載される反応と類似している。
【0072】
1,3−二置換5,6−ジアミノウラシル
式(I)、式(II)、式(III)および式(IV)の化合物を作製するために、上記で記載される反応性ノルアダマンタン誘導体はジアミノウラシル誘導体(例えば、下記の化合物など)と化合させることができる:
【化12】



【0073】
1,3−二置換5,6−ジアミノウラシルを、対応する対称的または非対称的に置換された尿素をシアノ酢酸で処理し、その後、ニトロソ化および還元を行うことによって調製することができる。例えば、J.Org.Chem.(1951)、16:1879;Can.J.Chem.(1968)、46:3413を参照のこと(これらの開示全体はそれぞれが、いかなる図面を含め、その全体において参考として本明細書に明確に組み込まれる)。RおよびRのそれぞれが独立して、水素、低級アルキル、アリル、プロパルギル、あるいは、ヒドロキシ置換またはオキソ置換または非置換の低級アルキルを表すことができる。XおよびXのそれぞれが独立して、酸素または硫黄を表す。上記化合物は、例えば、特開昭54−79296(1979年)および特開昭59−42383(1984年)に記載される方法によって得ることができる(これらの開示全体はそれぞれが、いかなる図面を含め、その全体において本明細書に参考として明確に組み込まれる)。
【0074】
いくつかの好ましい実施形態において、そのような二置換ジアミノウラシルは下記の構造を有する:
【化13】



【0075】
いくつかの実施形態において、下記の二置換ジアミノウラシル化合物を、下記で記載されるように、キサンチン環に連結された荷電成分または極性成分を有する、式(I)または式(II)の化合物の合成において使用することができる。
【化14】

(式Iの化合物のために)、および
【化15】



(式IIの化合物のために)
【0076】
これらのジアミノウラシル化合物は、例えば、スキーム5およびスキーム6に、ならびに、J.Org.Chem.(1951)、16:1879;Can.J.Chem.(1968)、46:3413、特開昭54−79296(1979年)および特開昭59−42383(1984年)に示される経路によって調製することができる(これらの開示全体はそれぞれが、いかなる図面を含め、その全体において本明細書に参考として明確に組み込まれる)。
スキーム5
【化16】



スキーム6
【化17】




【0077】
スキーム5を参照して、工程(a)において、6−アミノウラシル(Sigma Aldrich(カタログ番号09630)、St.Louis、MO)が、化合物をN−3位においてアルキル化するために、ヨウ化プロピルおよびNa水溶液の存在下で(NHSOと反応させられる。工程(b)において、3−プロピル,6−アミノウラシルが、加熱の存在下、酸性溶液(例えば、酢酸水溶液など)においてNaNOにより処理される。工程(c)において、ニトロソ基が、工程(b)から得られる化合物を塩基(例えば、NHOH水溶液(54%)など)中でジチオン酸ナトリウム(12.5%)により処理することによって還元される。
【0078】
スキーム6を参照して、工程(a)において、1−プロピル尿素が、化合物1−(2−シアノアセチル)−3−プロピル尿素を得るために、無水酢酸および加熱の存在下でシアノ酢酸と反応させられる。工程(b)において、1−(2−シアノアセチル)−3−プロピル尿素が、1−プロピル−6−アミノウラシルを得るために、加熱の存在下で塩基により処理される。工程(c)において、1−プロピル−6−アミノウラシルが、加熱の存在下で酸性溶液(例えば、酢酸水溶液など)においてNaNOにより処理される。工程(d)において、ニトロソ基が、工程(c)から得られる化合物を塩基(例えば、NHOH水溶液(54%)など)中でジチオン酸ナトリウム(12.5%)により処理することによって還元される。例えば、Beauglehole,A.他(2000)、43:4973を参照のこと(この開示全体が、その全体において本明細書に参考として組み込まれる)。
【0079】
式(I)および式(II)の化合物の合成−キサンチン環における置換
前節で記載される置換ジアミノウラシルは、化合物Iaおよび化合物IIa(これらに限定されない)を含めて、式(I)および式(II)の化合物を作製するために使用することができる。式(I)の化合物(例えば、化合物Ia)を合成するための例示的な経路が下記においてスキーム7に示される。
スキーム7
【化18】



【0080】
工程(a)において、反応性ノルアダマンタン誘導体が、アミドをペプチド化学において一般に使用される縮合反応条件の下で形成させるために、ジアミノウラシル誘導体にN−5位においてカップリングさせられる。例えば、この反応を添加剤または塩基の存在下で行うことができる。反応のための例示的な溶媒には、ハロゲン化炭化水素、例えば、塩化メチレン、クロロホルムおよび二塩化エチレンなど;エーテル、例えば、ジオキサンおよびテトラヒドロフランなど;ジメチルホルムアミドおよびジメチルスルホキシド、ならびに、水などが含まれ得る。例示的な添加剤には、1−ヒドロキシベンゾトリアゾールなどが含まれるが、これに限定されない。例示的な塩基には、ピリジン、トリエチルアミン、4−ジメチオルアミノピリジンおよびN−メチルモルホリンなどが含まれる。この反応を約30分〜約24時間の間での任意の時間にわたって約−80℃〜約50℃の間で行うことができる。
【0081】
工程(b)において、保護基をキサンチン環のN−1位に選択的に付加することができる。例えば、臭化ベンジルを塩基(例えば、炭酸カリウムまたは炭酸ナトリウムなど)の存在下でN−(4−アミノ−2,6−ジオキソ−1−プロピル−1,2,3,6−テトラヒドロピリミジン−5−イル)(3−ノルアダマンタン)カルボキサミドと反応させることができる。この反応は、ジメチルホルムアミドなどを含めて、様々な溶媒において進行し得る。
【0082】
工程(c)において、キサンチン環を、アルキル化化合物を、塩基、脱水剤または熱により処理することによって形成させることができる。例えば、いくつかの実施形態において、アルキル化化合物を塩基により処理することができ、例えば、水酸化アルカリ金属(例えば、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなど)または水酸化アルカリ土類金属(例えば、水酸化カルシウムなど)により処理することができる。キサンチン環を形成させる際において有用な反応溶媒には、水、低級アルコール(例えば、メタノールまたはエタノールなど)、エーテル(例えば、ジオキサンまたはテトラヒドロフランなど)、ジメチルホルムアミドまたはジメチルスルホキシドなど、あるいは、これらの任意の組合せが含まれ得る。いくつかの実施形態において、この反応を約30分〜約5時間の間での任意の時間にわたって約0℃〜約180℃で行うことができる。工程(c)の反応において有用な例示的な塩基には、水酸化アルカリ金属(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)が含まれる。反応溶媒は、水、低級アルコール(例えば、メタノール、エタノールなど)、エーテル(例えば、ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどが単独または組合せで可能である。この反応は室温〜180℃で行うことができ、通常的には約10分〜約6時間で完了する。
【0083】
環構造を工程(c)に示されるように閉環させる際に使用される例示的な脱水剤には、ハロゲン化チオニル(例えば、塩化チオニルなど)、オキシハロゲン化リン(例えば、オキシ塩化リンなど)が含まれる。この反応は、溶媒を何ら用いることなく、または、反応に対して不活性である溶媒(例えば、ハロゲノ炭化水素(例えば、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタンなど)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなど)において室温〜180℃の温度で行うことができ、約0.5時間〜12時間にわたって続けることができる。
【0084】
代替として、環を極性溶媒(例えば、ジメチルスルホキシドまたはジメチルホルムアミドなど)における50℃〜200℃の温度での加熱によって閉環させることができる。
【0085】
工程(d)において、キサンチン環のN−9位を保護することができる。例えば、工程(c)から得られる化合物を2−(トリメチルシリル)エチオキシメチルクロリド(Sigma Aldrich、カタログ番号92749)と反応させることができる。この反応は、標準的な反応条件のもとで、例えば、塩基(例えば、炭酸カリウムまたは炭酸ナトリウムなど)の存在下で進行し得る。この反応は溶媒(例えば、ジメチルホルムアミドまたはジメチルスルホキシドなど)において行うことができる。
【0086】
工程(e)において、保護基が、標準的な反応条件を使用してN−1位から除かれる。例えば、保護基を、触媒としての10%Pd/C(パラジウム担持活性炭素)または水酸化パラジウム担持炭素を溶媒(例えば、低級アルコール(例えば、メタノールまたはエタノール)など)において使用して、水素ガスまたはギ酸アンモニウムの存在下で除くことができる。
【0087】
工程(f)において、N−1位を、反応性のプロピルアミン基を最終的に形成させるために、塩基(例えば、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、水素化ナトリウムまたはカリウムtert−ブトキシドなど)の存在下で、N−(2−ブロモエチル)フタルイミド(Sigma Aldrich、カタログ番号16170)などの化合物と反応させることができる。この反応は溶媒(例えば、ジメチルホルムアミドまたはジメチルスルホキシドなど)の存在下で進行し得る。
【0088】
工程(g)において、フタルイミド基が、エチルアミン基をキサンチン環のN−1位において得るために除かれる。これは、例えば、工程(f)から得られる化合物をヒドラジン一水和物とともに加熱することによって進行し得る。この反応は溶媒(ジメチルホルムアミドなど)の存在下で進行し得る。
【0089】
工程(g)から得られる化合物、3−(2−アミノエチル)−8−(3−ノルアダマンチル)−1−プロピル−7−((2−(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)−1H−プリン−2,6(3H,7H)−ジオンにおける得られる反応性アミン基を、例えば、スルホベンゼン成分などにより誘導体化することができる。例えば、工程(g)の生成物を、例えば、4−スルホ安息香酸モノカリウム塩(Cole−Parmer(カタログ番号EW−88357−07)、Vernon Hills、IL)あるいは類似する反応性極性成分または反応性荷電成分と反応させることができる。この反応は、例えば、アルコール(例えば、メタノールなど)における溶媒(例えば、二塩化エチレンなど)において進行し得る。
【0090】
工程(i)において、N−9の保護基を、化合物Iaを得るために除くことができる。この脱保護は、例えば、低級アルコール(例えば、エタノールまたはメタノールなど)における酸(例えば、塩酸など)において進行し得る。
【0091】
式(II)の化合物の合成
式(II)、例えば、化合物IIaを合成するための例示的な経路がスキーム8に示される:
スキーム8
【化19】

【0092】
スキーム8を参照して、工程(a)〜工程(i)に示される反応は、スキーム7に関連して記載される反応と類似している。スキーム8に示される経路は、式(II)の化合物、例えば、化合物IIaなどをもたらす。
【0093】
式(III)および式(IV)の化合物の合成
スキーム9は、ノルアダマンチル基において置換されるキサンチン誘導体、例えば、式(III)の化合物などを合成するための例示的な経路を示す。
スキーム9
【化20】

【0094】
工程(a)において、反応性ノルアダマンタン誘導体、例えば、スキーム3およびスキーム4で作製されるノルアダマンタン誘導体などが、縮合のための標準的な条件を使用して、例えば、スキーム7およびスキーム8で示される条件などを使用してノルアダマンチル誘導体に結合される。中間体化合物の環構造を、スキーム7およびスキーム8において上記で記載されるように、塩基、脱水剤または熱のいずれかの存在下で、式(III)の化合物を得るために閉環させることができる。
【0095】
同様に、式(IV)の化合物を、類似する反応条件をノルアダマンチル誘導体(例えば、下記に示される化合物など)とともに使用して作製することができる。
【化21】



【0096】
極性基による誘導体化
極性基、例えば、SO、SOH、PO、POH、NO、NOH、CF、CHF、CHF、シアノ、イソシアノ、アミド、グアニジニウムおよびNHなどを、標準的な反応条件を使用して、上記で記載された手順によって得られる化合物に付加することができる。例えば、スキーム9から得られる化合物のスルホン化を、工程(b)から作製される化合物を加熱の存在下でHSO/SOと化合させることによって達成することができる。同様に、化合物のニトロ化を、スキーム9の化合物を加熱の存在下でHNO/HSOと化合させることによって達成することができる。例えば、式(II)の化合物のスルホン化が下記に示される。
スキーム10
【化22】

【0097】
好ましい実施形態により、下記の化合物が提供される:
【化23】

および
【化24】

【0098】
エーテル連結された置換を有するKW−3902誘導体
本明細書中にはまた、KW−3902のノルアダマンチル基がエーテル連結(例えば、下記の式(V)および式(VI)の化合物におけるエーテル連結など)を介して置換されるKW−3902の誘導体を合成するための方法が提供される:
【化25】

【0099】
従来の反応を、式(V)および式(VI)の化合物を既知の出発化合物(例えば、米国特許第5,290,782号(1994年3月1日発行;その内容全体が、その全体において参考として本明細書に明確に組み込まれる)に記載される化合物など)から合成するために使用することができる。式(V)および式(VI)の化合物の合成が下記においてスキーム11およびスキーム12に示される。
スキーム11
【化26】

スキーム12
【化27】

【0100】
好ましい実施形態において、下記の化合物が、式(V)および式(VI)の化合物を作製するために使用される:
【化28】

【0101】
式(VI)の例示的な化合物が下記に示される:
【化29】


式(V)の例示的な化合物が下記に示される:
【化30】

【0102】
本明細書中にはまた、下記の構造を有する化合物が提供される:
【化31】

【化32】



【0103】
上記式において、Aは任意の好適な連結基であり、例えば、置換または非置換である分枝型または非分枝型のアルキル連結基、アルケニル連結基、アルキニル連結基、エステル連結基、エーテル連結基、チオエーテル連結基またはアミド連結基などである。いくつかの実施形態において、連結基Aは、炭素鎖成分(例えば、−CH−または−CH=またはカルボニル)と、エステル連結、エーテル連結、チオエーテル連結またはアミド連結との組合せを含むことができる。鎖成分の数は、0、1、2、3、4、5またはそれ以上の鎖成分または炭素残基から、10、12、14、16または20(あるいはさらにそれ以上)の鎖成分または炭素残基にまで及び得る。Rは上記のように定義される。
【0104】
医薬組成物
本明細書中において提供されるいくつかの実施形態は、上記で記載されるような、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)のKW−3902誘導体と、生理学的に許容され得るキャリア、希釈剤または賦形剤、あるいは、これらの組合せとを含む医薬組成物に関連する。
【0105】
用語「医薬組成物」は、本発明の化合物と、他の化学的成分(例えば、希釈剤またはキャリアなど)との混合物を示す。医薬組成物は、生物への化合物の投与を容易にする。化合物を投与する多数の技術が当該技術分野において存在し、これらには、経口投与、注入投与、エアロゾル投与、非経口投与および局所投与が含まれるが、これらに限定されない。医薬組成物はまた、化合物を無機酸または有機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸およびサリチル酸など)と反応することによって得ることができる。
【0106】
用語「キャリア」により、細胞内または組織内への化合物の取り込みを容易にする化学化合物が定義される。例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)が、生物の細胞内または組織内への多くの有機化合物の取り込みを容易にするので、一般に利用されるキャリアである。
【0107】
用語「希釈剤」により、目的とする化合物を溶解し、同様にまた、化合物の生物学的に活性な形態を安定化する、水に希釈される化学化合物が定義される。緩衝化された溶液に溶解される塩が当該技術分野では希釈剤として利用される。1つの一般に使用される緩衝化された溶液がリン酸塩緩衝化溶液である。これは、リン酸塩緩衝化溶液がヒト血液の塩状態を模倣するからである。緩衝剤塩は低い濃度で溶液のpHを制御することができるので、緩衝化された希釈剤は化合物の生物学的活性をほとんど変化させない。
【0108】
用語「生理学的に許容され得る」により、化合物の生物学的な活性および特性を妨げないキャリアまたは希釈剤が定義される。
【0109】
本明細書中に記載される医薬組成物は、それ自体で、あるいは、本明細書中に記載される医薬組成物が混合治療でのように他の有効成分と混合されるか、または、好適なキャリアもしくは賦形剤と混合される医薬組成物でヒト対象に投与することができる。本出願の化合物を配合および投与するための様々な技術が、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」(Mack Publishing Co.、Easton、PA;第18版、1990年)に見出され得る。
【0110】
好適な投与経路には、例えば、経口投与、直腸投与、経粘膜投与または腸管投与;筋肉内注射、皮下注射、静脈内注射、髄内注射、ならびに、クモ膜下注射、直接脳室内注射、腹腔内注射、鼻腔内注射または眼内注射を含めて、非経口送達が含まれ得る。
【0111】
代替では、化合物を、全身的様式ではなく、むしろ、局所的様式で投与することができ、例えば、化合物を、多くの場合にはデポー配合物または持続放出配合物で、直接に腎臓領域または心臓領域に注入することによって投与することができる。さらには、薬物を、標的化された薬物送達システムで投与することができ、例えば、組織特異的な抗体により被覆されたリポソームにおいて投与することができる。リポソームが器官に標的化され、器官によって選択的に取り込まれる。
【0112】
本明細書中に開示される医薬組成物は、それ自体は知られている様式で、例えば、混合、溶解、造粒、糖衣錠作製、研和、乳化、カプセル化、包括化または錠剤化の従来のプロセスによって製造することができる。
【0113】
従って、本明細書中に記載される実施形態に従って使用される医薬組成物は、活性な化合物を、医薬品として使用され得る調製物に加工することを容易にする賦形剤および補助剤を含む1つ以上の生理学的に許容され得るキャリアを使用して従来の様式で配合することができる。適正な配合は、選ばれる投与経路に依存する。広く知られている技術、キャリアおよび賦形剤はどれも、好適であるとして、また、当該技術分野において、例えば、Remington’s Sciences(上記)において理解されるように使用することができる
【0114】
注射のために、本発明の薬剤は水溶液または脂質エマルションにおいて配合することができ、好ましくは、生理学的に適合し得る緩衝液(例えば、ハンクス溶液、リンゲル溶液または生理学的な生理的食塩水緩衝液など)において配合することができる。経粘膜投与のために、透過されるバリアに対して適切である浸透剤が配合において使用される。そのような様々な浸透剤が当該技術分野では一般に知られている。
【0115】
経口投与のために、化合物は、活性な化合物を当該技術分野では広く知られている医薬的に許容され得るにキャリアと組み合わせることによって容易に配合することができる。そのようなキャリアは、本発明の化合物が、処置されることになる対象によって経口摂取されるための錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、溶液、ゲル、シロップ、スラリーおよび懸濁物などとして配合されることを可能にする。経口使用のための医薬調製物は、1つ以上の固体賦形剤を本発明の薬学的組合せと混合し、得られた混合物を場合により粉砕し、そして、顆粒の混合物を、錠剤または糖衣錠コアを得るために、所望されるならば、適切な補助剤を加えた後で加工することによって得ることができる。好適な賦形剤は、具体的には、フィラーであり、例えば、糖(これには、ラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトールが含まれる);セルロース調製物、例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロースなど、および/または、ポリビニルピロリドン(PVP)などである。所望されるならば、崩壊剤を加えることができる(例えば、架橋されたポリビニルピロリドン、寒天、あるいは、アルギン酸またはその塩(例えば、アルギン酸ナトリウムなど)など)。
【0116】
糖衣錠コアには、好適な被覆が施される。この目的のために、高濃度の糖溶液を使用することができ、この場合、糖溶液は、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/または、二酸化チタン、ラッカー溶液、ならびに、好適な有機溶媒または有機溶媒混合物を場合により含有することができる。色素または顔料を、活性な化合物の用量を特定するために、または、活性な化合物の用量の種々の組合せを特徴づけるために、錠剤または糖衣錠被覆に加えることができる。
【0117】
経口使用することができる医薬調製物には、ゼラチンから作製される押し込み型カプセル、ならびに、ゼラチンおよび可塑剤(例えば、グリセロールまたはソルビトールなど)から作製される密封されたソフトカプセルが含まれる。押し込み型カプセルは、有効成分を、フィラー(例えば、ラクトースなど)、結合剤(例えば、デンプンなど)および/または滑剤(例えば、タルクまたはステアリン酸マグネシウムなど)、ならびに、必要な場合には安定剤との混合で含有することができる。ソフトカプセルでは、活性な化合物を、好適な液体(例えば、脂肪オイル、流動パラフィンまたは液状ポリエチレングリコールなど)に溶解または懸濁することができる。加えて、安定剤を加えることができる。さらには、本発明の配合物は腸溶性ポリマーにより被覆することができる。経口投与のための配合物はすべて、そのような投与のために好適である投薬量でなければならない。
【0118】
口内投与のために、組成物は、従来の様式で配合される錠剤またはトローチ剤の形態を取ることができる。
【0119】
吸入による投与のために、本発明に従って使用される化合物は好都合には、好適な噴射剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフロロエタン、二酸化炭素または他の好適なガス)の使用とともに、加圧パックまたはネブライザーからのエアロゾルスプレー提示物の形態で送達される。加圧エアロゾルの場合、投薬量単位を、一定の量を送達するためのバルブを提供することによって決定することができる。化合物と、好適な粉末基剤(例えば、ラクトースまたはデンプンなど)との粉末混合物を含有する、例えば、吸入器または吹き入れ器において使用されるゼラチンのカプセルおよびカートリッジを配合することができる。
【0120】
化合物は、注射による非経口投与のために、例えば、ボーラス注射または連続注入による非経口投与のために配合することができる。注射用の配合物は、保存剤が添加された単位投薬形態で、例えば、アンプルまたは多回服用容器において提供され得る。組成物は、油性ビヒクルまたは水性ビヒクルにおける懸濁物、溶液またはエマルションのような形態を取ることができ、また、配合剤(例えば、懸濁化剤、可溶化剤および/または分散化剤など)を含有することができる。
【0121】
非経口投与のための医薬配合物には、水溶性形態での活性な化合物の水溶液が含まれる。加えて、活性な化合物の懸濁物を好適な油性の注射用懸濁物として調製することができる。好適な親油性溶媒または親油性ビヒクルには、脂肪オイル(例えば、ゴマ油など)または合成脂肪酸エステル(例えば、オレイン酸エチルまたはトリグリセリドなど)またはリポソームが含まれる。水性の注射用懸濁物は、懸濁物の粘度を増大させる物質を含有することができ、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトールまたはデキストランなどを含有することができる。場合により、懸濁物はまた、好適な安定剤、または、高濃度溶液の調製を可能にするために化合物の溶解性を増大させる好適な薬剤を含有することができる。
【0122】
代替では、有効成分は、好適なビヒクル(例えば、無菌のパイロジェン非含有水)を用いて使用前に組み立てられるための粉末形態である場合がある。
【0123】
化合物はまた、例えば、従来の坐薬基剤(例えば、カカオ脂または他のグリセリドなど)を含有する直腸用組成物(例えば、坐薬または停留浣腸剤など)に配合することができる。
【0124】
前記で記載された配合物に加えて、化合物はまた、デポー調製物として配合することができる。長く作用するそのような配合物は埋め込みによって(例えば、皮下または筋肉内に)投与することができ、または、筋肉内注射によって投与することができる。従って、例えば、化合物は、(例えば、許容され得るオイルにおけるエマルションとして)好適なポリマー物質または疎水性物質とともに、または、イオン交換樹脂とともに配合することができ、あるいは、難溶性の誘導体として、例えば、難溶性の塩として配合することができる。
【0125】
本明細書中に記載される疎水性化合物のための医薬用キャリアとして、ベンジルアルコール、非極性の界面活性剤、水混和性の有機ポリマーおよび水相を含む共溶媒系である。使用される一般的な共溶媒系がVPD共溶媒系であり、これは、無水エタノールで所定の体積にまでされる、3%(w/v)のベンジルアルコール、8%(w/v)の非極性の界面活性剤POLYSORBATE 80(商標)、および、65%(w/v)のポリエチレングリコール300の溶液である。当然のことではあるが、共溶媒系の割合は、その溶解性特性および毒性特性を傷つけることなく、大幅に変化させることができる。さらには、共溶媒成分の正体を変えることができる:例えば、他の低毒性の非極性界面活性剤をPOLYSORBATE 80(商標)の代わりに使用することができる;ポリエチレングリコールの分画サイズを変えることができる;他の生体適合性ポリマーがポリエチレングリコールに取って代わることができる(例えば、ポリビニルピロリドン);また、他の糖または多糖類をデキストロースの代用とすることができる。
【0126】
代替では、疎水性の医薬用化合物のための他の送達システムを用いることができる。リポソームおよびエマルションが、疎水性薬物のための送達ビヒクルまたはキャリアの広く知られている例である。より大きな毒性の代償を通常の場合には払うが、特定の有機溶媒(例えば、ジメチルスルホキシドなど)もまた用いることができる。加えて、化合物は、持続放出システム(例えば、治療剤を含有する固体の疎水性ポリマーの半透過性マトリックスなど)を使用して送達することができる。様々な持続放出物質が確立されており、当業者によって広く知られている。持続放出カプセルは、その化学的性質に依存して、化合物を数週間〜100日を超えるまで放出することができる。治療試薬の化学的性質および生物学的安定性に依存して、タンパク質安定化のためのさらなる方策を用いることができる。
【0127】
上記で記載されるキサンチン誘導体を可溶化および送達することにおいて使用されるいくつかのエマルションが、米国特許第6,210,687号および米国特許出願第60/674,080号において議論される(これらの開示はそれぞれが、いかなる図面を含め、その全体において本明細書に参考として組み込まれる)。
【0128】
本明細書中に記載される薬学的組合せにおいて使用される化合物の多くは、医薬的に適合し得る対イオンとの塩として提供され得る。医薬的に適合し得る塩を多くの酸により形成させることができ、そのような酸には、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸などが含まれるが、これらに限定されない。塩は、水性溶媒または他のプロトン性溶媒において、その対応する遊離酸形態または遊離塩基形態よりも可溶性である傾向を有する。
【0129】
本明細書中に記載される実施形態における使用のために好適な医薬組成物には、有効成分が、その意図された目的を達成するために効果的な量で含有される組成物が含まれる。より具体的には、治療効果的な量は、処置されている対象の疾患の症状を防止し、または緩和し、または改善するために、あるいは、処置されている対象の生存を延ばすために効果的な化合物の量を意味する。治療効果的な量を決定することは、特に本明細書中に提供される詳細な開示に照らして、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0130】
本明細書中に開示される医薬組成物についての適確な配合、投与経路および投薬量は、対象の状態を考慮して個々の医師によって選ぶことができる。(例えば、Fingl他、1975、「The Pharmacological Basis of Therapeutics」、第1章、1頁を参照のこと)。典型的には、対象に投与される組成物の用量範囲は約0.5mg/kg対象体重〜1000mg/kg対象体重が可能である。投薬は、対象によって必要とされるように、1回だけであり得るか、あるいは、1日または数日の経過において与えられる連続する2回以上であり得る。
【0131】
成人対象のための1日の投薬療法は、例えば、本明細書中に記載される医薬組成物、または、遊離塩基として計算されるその医薬的に許容され得る塩が、0.1mg〜500mgの間(好ましくは1mg〜250mgの間、例えば、5mg〜200mg)である経口用量、あるいは、0.01mg〜100mg(好ましくは0.1mg〜60mgの間、例えば、1mg〜40mg)である静脈内用量、皮下用量または筋肉内用量であり得る。この場合、組成物が1日に1回〜4回投与される。代替として、本明細書中に記載される組成物は、好ましくは400mg/日に至るまでの用量で、連続静脈内注入によって投与することができる。従って、経口投与による1日の総投薬量は1mg〜2000mgの範囲であり、非経口投与による1日の総投薬量は0.1mg〜400mgの範囲である。好適には、化合物は、継続的治療の期間にわたって、例えば、1週間またはそれ以上、あるいは、数ヶ月間または数年間にわたって投与される。
【0132】
投薬量および投薬間隔は、調節効果または最小有効濃度(MEC)を維持するために十分である、活性な成分の血漿中レベルを提供するために個々に調節することができる。MECはそれぞれの化合物について変化し、しかし、インビトロでのデータから推定することができる。MECを達成するために必要な投薬量は個体の特徴および投与経路に依存する。しかしながら、HPLCアッセイまたはバイオアッセイを使用して、血漿中の濃度を求めることができる。
【0133】
投薬間隔もまた、MEC値を使用して決定することができる。組成物は、血漿中レベルを、その時間の10%〜90%にわたって、好ましくは30%〜90%の間で、最も好ましくは50%〜90%の間でMECを超えて維持する療法を使用して投与されなければならない。
【0134】
局所的投与または選択的取り込みの場合には、薬物の効果的な局所的濃度は血漿中の濃度に関連づけられなくてもよい。
【0135】
投与される組成物の量は、当然のことではあるが、処置されている対象、ならびに、対象の体重、病気の重篤度、投与様式、および、処方する医師の判断に依存している。
【0136】
組成物は、所望されるならば、有効成分を含有する1つ以上の単位投薬形態物を含有することができるパックまたはディスペンサーデバイスで与えることができる。パックは、例えば、金属ホイルまたはプラスチックホイルを含むことができる(例えば、ブリスターパックなど)。パックまたはディスペンサーデバイスには、投与のための説明書を添えることができる。パックまたはディスペンサーにはまた、医薬品の製造、使用または販売を規制する政府当局によって定められる形式で容器に関連する通知を添えることができ、その場合、そのような通知は、ヒトまたは動物への投与のための薬物の形態の、当局による承認を反映する。そのような通知は、例えば、処方薬物について米国食品医薬品局によって承認されたラベル書き、または、承認された製品添付文書であり得る。適合し得る医薬用キャリアに配合された本発明の化合物を含む組成物はまた、適応状態を処置するために調製され、適切な容器に詰められ、ラベル添付され得る。
【0137】
上記の例は、本発明の実施形態を理解することを助けるためだけに示される。従って、当業者は、本発明の方法が化合物の様々な誘導体を提供し得ることを理解する。
【0138】
KW−3902誘導体を使用する方法
本明細書中には、上記で記載されるKW−3902誘導体、あるいは、その塩、エステル、アミド、代謝産物またはプロドラッグの治療効果的な量を使用して対象を処置する方法が提供される。他の実施形態は、その必要性のある対象を特定すること、および、前記対象に、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)の化合物、あるいは、その医薬的に許容され得る塩、エステル、代謝産物またはプロドラッグの治療効果的な量を与えることによって、利尿をその必要性のある対象において誘導することに関連する。いくつかの実施形態において、アデノシン非緩和利尿剤もまた与えられる。
【0139】
さらに他の実施形態は、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)の化合物、あるいは、その医薬的に許容され得る塩、エステル、代謝産物またはプロドラッグと、アデノシン非緩和利尿剤とを与えることによって、アデノシン非緩和利尿剤の利尿作用を対象において維持または回復することに関連する。
【0140】
さらに他の実施形態は、損なわれたクレアチニンクリアランスを患う対象を特定すること、および、前記対象に、クレアチニンクリアランスを維持または増大するために効果的な、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)、あるいは、その医薬的に許容され得る塩、エステル、代謝産物またはプロドラッグの治療効果的な量と、アデノシン非緩和利尿剤とを与えることによって、腎機能を改善する方法に関連する。
【0141】
他の実施形態は、損なわれたクレアチニンクリアランスを有する対象を特定すること、および、前記対象に、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)、あるいは、その医薬的に許容され得る塩、エステル、代謝産物またはプロドラッグの治療効果的な量と、アデノシン非緩和利尿剤とを与え、それにより、クレアチニンクリアランスにおける障害を所定の期間にわたって遅くするか、または停止させることによって、腎機能を維持する方法に関連する。
【0142】
他の実施形態は、増大した血清クレアチニンレベルおよび/または低下したクレアチニンクリアランスを有する対象を特定すること、および、前記対象に、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)の化合物、あるいは、その医薬的に許容され得る塩、エステル、代謝産物またはプロドラッグの治療効果的な量と、アデノシン非緩和利尿剤とを与え、それにより、血清クレアチニンレベルを低下させ、および/または、クレアチニンクリアランスの障害を遅くするか、または停止させることによって、腎機能を回復する方法に関連する。
【0143】
さらに他の実施形態は、うっ血性心不全および腎臓障害を患う対象を特定すること、および、前記対象に、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)の化合物、あるいは、その医薬的に許容され得る塩、エステル、代謝産物またはプロドラッグの治療効果的な量と、アデノシン非緩和利尿剤とを与えることによって、腎機能を改善し、または維持し、または回復する方法に関連する。
【0144】
さらに他の実施形態は、標準的な利尿剤治療に対して不応性である、うっ血性心不全に苦しんでいる対象を特定すること、および、前記対象に、クレアチニンクリアランスおよび利尿を維持または増大するために効果的な、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)の化合物、あるいは、その医薬的に許容され得る塩、エステル、代謝産物またはプロドラッグの治療効果的な量と、利尿剤とを与えることによって、腎機能を対象において改善し、または維持し、または回復する方法に関連する。
【0145】
さらに他の実施形態は、急性の体液過剰を処置するための短期入院を必要とする対象を特定すること、前記対象を入院させること、および、前記対象に、アデノシン非緩和利尿剤と、過剰な体液を対象から除くことを、利尿剤治療だけと比較して加速させるために効果的な、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)の化合物、あるいは、その医薬的に許容され得る塩、エステル、代謝産物またはプロドラッグの治療効果的な量とを与えることによって、急性の体液過剰を対象において処置する方法に関連する。
【0146】
さらに他の実施形態は、長期の利尿剤を服用する安定型うっ血性心不全の対象を特定すること、および、前記対象に、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)の化合物、あるいは、その医薬的に許容され得る塩、エステル、代謝産物またはプロドラッグの治療効果的な量を約4日〜約1ヶ月の間隔で与えることによって、長期の利尿剤を服用する安定型うっ血性心不全の対象において腎機能を改善するか、または維持するか、または回復する方法に関連し、ただし、この場合、対象は、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)の化合物による処置の経過の期間中を通して長期の利尿剤治療を同時に継続する。
【0147】
いくつかの実施形態は、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)の化合物、あるいは、その塩、エステル、アミド、代謝産物またはプロドラッグの治療効果的な量と、アデノシン非緩和利尿剤とを使用して、利尿を、体液過剰の対象において腎機能を維持しながら改善する方法を提供する。
【0148】
本明細書中で使用される用語「治療効果的な量」は、処置されている障害の徴候または症状の1つ以上をある程度に緩和する、投与されている組成物のそのような量を示す。
【0149】
特定の実施形態において、本明細書中に記載される方法によって処置されている対象は腎障害を患う。他の実施形態において、対象は腎障害を患わない。
【0150】
腎機能は、腎臓が老廃物を排出し、かつ、適正な化学的バランスを維持することができることを示す。典型的には、腎機能は、腎機能を求めるために、クレアチニン、尿素および電解質の血漿中の濃度によって測定される。クレアチニンは、かなり一定の速度で体内で産生され、正常な場合には腎臓によってろ過され、尿に排出される、正常な筋肉代謝の副産物である。腎機能を測定するために当業者に知られている任意の方法が、本明細書中に記載される方法において使用され得ることが理解される。例えば、血清のクレアチニンレベル、尿のクレアチニンレベル、および、糸球体ろ過速度(GFR)を、腎機能を評価するために使用することができる。
【0151】
成人男性における正常な血清クレアチニンレベルは一般には約0.8mg/dL〜1.4mg/dLである。成人女性における正常な血清クレアチニンレベルは一般には約0.6mg/dL〜1.1mg/dLである。小児における正常な血清クレアチニンレベルは一般には約0.2mg/dL〜1.0mg/dLの間である。いくつかの実施形態において、対象は、2.0mg/dL超、3.0mg/dL超、約4.0mg/dL、5.0mg/dL超、6.0mg/dL超、7.0mg/dL超、8.0mg/dL超、9.0mg/dL超、10mg/dL超、12mg/dL超、14mg/dL超、16mg/dL超、18mg/dL超、20mg/dL超、25mg/dL超、または、その間における任意の数字もしくは端数である上昇した血清クレアチニンレベルを有する。
【0152】
いくつかの実施形態において、損なわれた腎機能は、入院前において約80mL/分未満のGFR(例えば、約20mL/分、30mL/分、40mL/分、50mL/分、60mL/分、70mL/分または75mL/分、あるいは、その間における任意の数字)を示す。従って、いくつかの実施形態において、対象は、軽度に損なわれた腎機能(例えば、約50mL/分〜約80mL/分のGFR)を示す。いくつかの実施形態において、対象は、中程度に損なわれた腎機能(例えば、約30mL/分〜約50mL/分のGFR)を示す。さらに他の実施形態において、対象は、重度に損なわれた腎機能(例えば、約30mL/分以下のGFR)を示す。
【0153】
いくつかの実施形態において、対象は、損なわれたクレアチニンクリアランスを有する。いくつかの実施形態において、対象は、上昇した血清クレアチニンレベルを有する。いくつかの実施形態において、損なわれたクレアチニンクリアランスまたは上昇した血清クレアチニンレベルを有する対象は、心不全(例えば、うっ血性心不全など)、または、体液過剰を生じさせる他の疾患を有し得るが、正常な腎機能を未だ乱していない。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される方法によって処置されている対象は標準的利尿剤治療に対して不応性である。他の実施形態において、対象は標準的利尿剤治療に対して不応性ではない。
【0154】
他の実施形態は、治療効果的な量のKW−3902、あるいは、その塩、エステル、アミド、代謝産物またはプロドラッグと、アデノシン非緩和利尿剤とを投与することを含む、個体における腎機能の悪化を防止する方法に関連する。
【0155】
いくつかの実施形態において、医薬組成物はまた、アデノシン非緩和利尿剤を含むことができる。いくつかの実施形態において、アデノシン非緩和利尿剤は、近位利尿剤、すなわち、主に近位尿細管に作用する利尿剤である。近位利尿剤の例には、アセタゾラミド、メタゾラミドおよびジクロルフェナミドが含まれるが、これらに限定されない。カルボニックアンヒドラーゼ阻害剤は、近位尿細管に作用する利尿剤であることが知られており、従って、近位利尿剤である。従って、いくつかの実施形態は、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)のKW−3902誘導体、あるいは、その医薬的に許容され得る塩、エステル、アミド、プロドラッグまたは代謝産物と、カルボニックアンヒドラーゼ阻害剤との組合せを含む組成物を提供する。式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)のKW−3902誘導体、あるいは、その医薬的に許容され得る塩、エステル、アミド、プロドラッグまたは代謝産物と、現在知られているか、または、今後発見される任意の近位利尿剤との組合せは、本明細書中に開示される実施形態の範囲内である。
【0156】
他の実施形態において、アデノシン非緩和利尿剤は、ループ利尿剤、すなわち、主にヘンレ係蹄に作用する利尿剤である。ループ利尿剤の例には、フロセミド(LASIX(登録商標))、ブメタニド(BUMEX(登録商標))およびトルセミド(TOREM(登録商標))が含まれるが、これらに限定されない。式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)のKW−3902誘導体と、現在知られているか、または、今後発見される任意のループ利尿剤との組合せは、本明細書中に開示される実施形態の範囲内である。
【0157】
さらに他の実施形態において、アデノシン非緩和利尿剤は、遠位利尿剤、すなわち、主に遠位ネフロンに作用する利尿剤である。遠位利尿剤の例には、メトラゾン、チアジド系薬剤およびアミロリドが含まれるが、これらに限定されない。式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)のKW−3902誘導体、あるいは、その医薬的に許容され得る塩、エステル、アミド、プロドラッグまたは代謝産物と、現在知られているか、または、今後発見される任意の遠位利尿剤との組合せは、本明細書中に開示される実施形態の範囲内である。
【0158】
いくつかの実施形態において、本明細書中に提供される組成物はまた、β遮断剤を含むことができる。数多くのβ遮断剤が市販されている。これらの化合物には、塩酸アセブトロール、アテノロール、塩酸ベタキソロール、フマル酸ビソプロロール、塩酸カルテオロール、塩酸エスモロール、メトプロロール、酒石酸メトプロロール、ナドロール、硫酸ペンブトロール、ピンドロール、塩酸プロプラノロール、スクシナートおよびマレイン酸チモロールが含まれるが、これらに限定されない。β遮断剤は一般には、β−アドレナリン作動性受容体アゴニストによって引き起こされる正の変時性応答、正の変力性応答、気管支拡張剤応答および血管拡張剤応答を低下させるβアドレナリン作動性受容体遮断剤および/またはβアドレナリン作動性受容体遮断剤である。本明細書中に開示される実施形態には、現在知られているすべてのβ遮断剤との組合せ、および、将来において発見されるすべてのβ遮断剤との組合せが含まれる。
【0159】
いくつかの実施形態において、本明細書中に提供される組成物はまた、アンギオテンシン変換酵素阻害剤またはアンギオテンシンII受容体遮断剤を含むことができる。数多くのACE阻害剤が市販されている。これらの化合物(それらの化学構造は幾分か類似している)には、リシノプリル、エナラプリル、キナプリル、ラミプリル、ベナゼプリル、カプトプリル、ホシノプリル、モエキシプリル、トランドラプリルおよびペリンドプリルが含まれる。ACE阻害剤は一般には、アンギオテンシンIをアンギオテンシンIIに変換するアンギオテンシン変換酵素の作用を阻害する化合物である。現在知られているすべてのACE阻害剤、および、将来において発見されるすべてのACE阻害剤が、本明細書中に提供される実施形態において使用され得ることが理解される。
【0160】
数多くのARBもまた市販されているか、または、当該技術分野では知られている。これらの化合物には、ロサルタン、イルベサルタン、カンデサルタン、テルミサルタン、エポサルタンおよびバルサルタンが含まれる。ARBは、血管を弛緩させることによって血圧を低下させる。これはより良好な血流を可能にする。ARBの機能は、通常の場合には血管を収縮させるアンギオテンシンIIの結合をARBが阻止できることから生じている。現在知られているすべてのARB、および、将来において発見されるすべてのARBが、本明細書中に提供される実施形態において使用され得ることが理解される。
【0161】
特定の実施形態において、対象は哺乳動物であり得る。哺乳動物は、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、イヌ、ネコ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、霊長類(例えば、サル、チンパンジーおよび類人猿など)およびヒトからなる群から選択され得る。いくつかの実施形態において、対象はヒトである。
【0162】
他の態様において、本発明は、関連した有害な事象(例えば、発作または痙攣など)が生じる可能性を低下させながら、アデノシン非緩和利尿剤の利尿作用を対象において維持または回復する方法に関連し、この場合、この方法は、その必要性のある対象を特定すること、および、その対象に、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)のKW−3902誘導体、あるいは、その医薬的に許容され得る塩、エステル、アミド、プロドラッグまたは代謝産物の治療効果的な量を投与することを含む。例えば、いくつかの実施形態は、利尿剤(例えば、フロセミドなど)の利尿作用を維持または回復する方法に関連する。いくつかの実施形態において、フロセミドが、20mg、40mg、60mg、80mg、100mg、120mg、140mgまたは160mgあるいはそれ以上の用量で投与される。投与は経口または静脈内であり得る。フロセミドが静脈内投与されるとき、フロセミドを単回注射として、または、連続注入として投与することができる。投与が連続注入によるとき、フロセミドの投薬量は、1時間あたり1mg未満、1時間あたり1mg、1時間あたり3mg、1時間あたり5mg、1時間あたり10mg、1時間あたり15mg、1時間あたり20mg、1時間あたり40mg、1時間あたり60mg、1時間あたり80mg、1時間あたり100mg、1時間あたり120mg、1時間あたり140mgまたは1時間あたり160mgあるいはそれ以上であり得る。
【0163】
さらに別の態様において、本発明は、腎機能を対象において維持または回復する方法に関連し、この場合、この方法は、その必要性のある対象を特定すること、および、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)のKW−3902誘導体、あるいは、その医薬的に許容され得る塩、エステル、アミド、プロドラッグまたは代謝産物の治療効果的な量と、利尿作用を誘導することができる第2の医薬組成物とを投与することを含む。
【0164】
本開示に関連して、腎機能を「維持する」によって、腎機能が、クレアチニンクリアランス速度によって測定された場合、治療を開始した後の所定の期間にわたって変化しないままであることが意味される。言い換えれば、腎機能を「維持する」によって、腎障害の速度、すなわち、クレアチニンクリアランス速度における低下速度が、そのような期間がどんなに短くても、所定の期間にわたって遅くなるか、または停止されることが意味される。腎機能を「回復する」によって、腎機能が、クレアチニンクリアランス速度によって測定された場合、治療を開始した後では改善していること、すなわち、治療を開始した後ではより大きくなっていることが意味される。
【0165】
本明細書中に提供される他の実施形態は、対象を本明細書中に記載されるような医薬組成物により処置する方法に関連する。いくつかの実施形態において、対象は標準的利尿剤治療に対して不応性である。
【0166】
心臓の病気(例えば、うっ血性心不全など)を患う特定の対象は遅れて、腎障害を発症する。本発明者らは、心臓の病気を示し、かつ、腎障害をほとんど示さないか、または全く示さない対象が、本明細書中に記載されるような医薬組成物により処置されるならば、腎障害の発症が、標準的利尿剤処置を受ける対象と比較して、遅れるか、または停止されることを発見している。従って、いくつかの実施形態は、腎機能の悪化を対象において防止するか、または、腎障害の発症を対象において遅らせるか、または、腎障害の進行を対象において停止させる方法に関連し、この場合、この方法は、その必要性のある対象を特定すること、および、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)のKW−3902誘導体、あるいは、その医薬的に許容され得る塩、エステル、アミド、プロドラッグまたは代謝産物の治療効果的な量と、アデノシン非緩和利尿剤とを投与することを含む。
【0167】
用語「処置する」または用語「処置」は完全な治癒を必ずしも意味しない。疾患の何らかの望まれない徴候または症状を任意の程度に何らか緩和すること、あるいは、疾患の進行を遅くすることが、処置であると見なすことができる。さらには、処置には、安寧または様子の、患者の全体的な感覚を悪くし得る作用を含むことができる。処置にはまた、たとえ、症状が緩和されない場合でも、または、疾患の状態が改善されない場合でも、または、安寧の、患者の全体的な感覚が改善されない場合でも、患者の寿命を長くすることが含まれ得る。従って、本発明の関連において、尿排出量を増大させること、血清クレアチニンのレベルを低下させること、または、クレアチニンクリアランスを増大させることは、たとえ、患者が治癒されないか、または、一般に、気分良くならない場合でも、処置と見なすことができる。
【0168】
他の実施形態は、損なわれたクレアチニンクリアランスとともにCHFを患う対象を処置する方法に関連し、この場合、この方法は、その必要性のある対象を特定すること、および、前記対象に、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)のKW−3902誘導体、あるいは、その医薬的に許容され得る塩、エステル、アミド、プロドラッグまたは代謝産物の治療効果的な量と、アデノシン非緩和利尿剤とを投与することを含む。
【0169】
さらに他の実施形態は、全体的な健康成績を対象において改善するか、または、罹病率を対象において低下させるか、または、致死率を対象において低下させる方法に関連し、この場合、この方法は、その必要性のある対象を特定すること、および、前記対象に、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)のKW−3902誘導体、あるいは、その医薬的に許容され得る塩、エステル、アミド、プロドラッグまたは代謝産物の治療効果的な量と、アデノシン非緩和利尿剤とを投与することを含む。
【0170】
全体的な健康成績が当該技術分野における様々な手段によって求められる。例えば、罹病率および/または死亡率における改善、対象の全身的な感覚における改善、生活の質における改善、ならびに、人生の最期での安らぎのレベルにおける改善などが、全体的な健康成績が求められるときには考慮される。致死率は、同じ処置または類似する処置を同じ期間にわたって受ける対象の総数に対して比較される、特定の処置を所定の期間にわたって受けている間に死亡する対象の数である。罹病率は、様々な基準を使用して、例えば、病院滞在の頻度、病院滞在の長さ、医院への通院頻度、および、投与されている医薬品の投薬量などを使用して求められる。
【0171】
他の実施形態は、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)のKW−3902誘導体、あるいは、その医薬的に許容され得る塩、エステル、アミド、プロドラッグまたは代謝産物の治療効果的な量を投与することを含む、個体における腎機能の悪化の防止に関連する。いくつかの実施形態において、この方法はまた、アデノシン非緩和利尿剤のそのような投与を含む。
【0172】
いくつかの実施形態において、その全体的な健康成績、罹病率および/または死亡率が改善されつつある対象はCHFを患う。他の実施形態において、そのような対象は腎障害を患う。いくつかの実施形態において、そのような対象は、CHFおよび損なわれた腎機能、および/または、損なわれたクレアチニンクリアランスを患う。
【0173】
式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)のKW−3902誘導体、あるいは、その医薬的に許容され得る塩、エステル、アミド、プロドラッグまたは代謝産物がアデノシン非緩和利尿剤との組合せで投与される実施形態において、投与する工程は、前記KW−3902誘導体および前記アデノシン非緩和利尿剤をほぼ同時に投与することを含む。これらの実施形態には、KW−3902誘導体およびアデノシン非緩和利尿剤が同じ投与可能な組成物に存在する実施形態、すなわち、1つの錠剤、ピルまたはカプセル、あるいは、静脈内注射用の1つの溶液、あるいは、1つの飲用可能な溶液、あるいは、1つの糖衣錠配合物またはパッチが両方の化合物を含有する実施形態が含まれる。これらの実施形態にはまた、それぞれの化合物が別個の投与可能な組成物に存在し、しかし、対象には、これらの別個の組成物をほぼ同時に服用するように指示される実施形態、すなわち、一方のピルが他方のピルの直後に服用される実施形態、または、一方の化合物の1回の注射が別の化合物の注射の直後になされる実施形態などが含まれる。
【0174】
他の実施形態において、投与する工程は、アデノシン非緩和利尿剤を最初に投与し、その後、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(V)のKW−3902誘導体を投与することを含む。さらに他の実施形態において、投与する工程は、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(V)のKW−3902誘導体を最初に投与し、その後、アデノシン非緩和利尿剤を投与することを含む。これらの実施形態において、対象には、これらの化合物の一方を含む組成物を投与することができ、その後、しばらくして、数分後または数時間後に、これらの化合物のもう一方を含む別の組成物を投与することができる。これらの実施形態にはまた、対象には、これらの化合物の一方を含む組成物が定期的または連続的に投与され、その間に、対象は時々、他方の化合物を含む組成物を受ける実施形態が含まれる。
【0175】
本明細書中に開示される方法は、うっ血性心不全、高血圧、無症候性左心室機能不全、冠状動脈疾患または急性心筋梗塞を含む得る心臓血管疾患のための処置を提供することが意図される。いくつかの場合において、心臓血管疾患を患う対象は後負荷軽減の必要性がある。本発明の方法は、これらの対象のための処置を提供するために同様に好適である。心臓の病気(例えば、うっ血性心不全など)を患う特定の対象は遅れて、腎障害を発症し、および/または、損なわれたクレアチニンクリアランスもしくは上昇した血清クレアチニンレベルを示す。
【0176】
他の実施形態は、β遮断剤と、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)のKW−3902誘導体の治療効果的な量との組合せを使用する心臓血管疾患の処置に関連する。本発明者らは、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)のKW−3902誘導体と、β遮断剤との組合せが、うっ血性心不全(CHF)または高血圧のどちらでも、あるいは、本明細書中に示されるそれ以外の適応例のいずれかにおいて有益であることを発見している。同時係属中の米国特許出願第10/785,446号(発明の名称「アデノシンA1受容体アンタゴニストを使用する疾患の処置方法およびアデノシンA1受容体アンタゴニスト」、2004年2月23日出願)を参照のこと(これはその全体において本明細書中に参考として特に組み込まれる)。
【0177】
様々なβ遮断剤が、抗高血圧作用を有することが知られている。それらの作用の正確な機構は不明ではあるが、考えられる様々な機構、例えば、心拍出量における低下、血漿レニン活性における低下、および、中枢神経系の交感神経遮断作用などが提案されている。様々な臨床研究から、β遮断剤を高血圧の対象に投与することにより、心拍出量における低下、血圧における即時的変化がほとんどないこと、および、計算された末梢抵抗における増大が最初にもたらされることが明らかである。継続した投与により、血圧が数日以内に低下し、心拍出量は低下したままであり、また、末梢抵抗が処置前のレベルに向かって低下する。血漿レニン活性もまた、高血圧の対象において顕著に低下し、これは、レニン−アンギオテンシン系に対する阻害作用を有しており、従って、後負荷を低下させ、心臓のより効率的な順方向機能を可能にする。これらの化合物の使用は、CHFまたは高血圧を患う対象の間での生存率を増大させることが示されている。これらの化合物は今や、CHFおよび高血圧のための治療の標準の一部である。式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)のKW−3902誘導体と、β剤との組合せは、高血圧またはCHFを有する対象の状態をさらに改善するように相乗的に作用し得る。特に、塩感受性の高血圧対象者における、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)のKW−3902誘導体の利尿作用は、βアドレナリン作動性受容体の遮断と一緒になって、それらの作用が相互にさらに高まる2つの異なる機構を介して血圧を低下させることができる。加えて、ほとんどのCHF対象者はまた、さらなる利尿剤を常用している。このような組合せは、腎臓の血流および腎機能を改善することによって、より遠位に作用する他の利尿剤のより大きな効力を可能にする。
【0178】
β遮断剤は高血圧の処置において十分に確立されている。式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)のKW−3902誘導体を加えることにより、高血圧が、近位尿細管を介するナトリウム再吸収を阻害することに由来するその利尿作用によりさらに処置される。加えて、多くの高血圧対象者はナトリウム感受性であるので、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)のKW−3902誘導体をβ遮断剤に加えることにより、さらなる血圧低下がもたらされる。尿細管糸球体フィードバックに対するAARA作用(例えば、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)のKW−3902誘導体)はさらに、より大きな利尿およびより低い血圧をもたらすように腎機能を改善することができる。
【0179】
式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)のKW−3902誘導体と、β遮断剤とを投与することを伴う方法に関連するいくつかの実施形態において、投与する工程は、前記β遮断剤と、前記AARAと、前記抗痙攣剤とをほぼ同時に投与することを含む。これらの実施形態には、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)のKW−3902誘導体と、β遮断剤とが、同じ投与可能な組成物に存在する実施形態、すなわち、1つの錠剤、ピルまたはカプセル、あるいは、静脈内注射用の1つの溶液、あるいは、1つの飲用可能な溶液、あるいは、1つの糖衣錠配合物またはパッチが両方の化合物を含有する実施形態が含まれる。これらの実施形態にはまた、それぞれの化合物が別個の投与可能な組成物に存在し、しかし、対象には、これらの別個の組成物をほぼ同時に服用するように指示される実施形態、すなわち、一方のピルが他方のピルの直後に服用される実施形態、または、一方の化合物の1回の注射が別の化合物の注射の直後になされる実施形態などが含まれる。
【0180】
他の実施形態において、投与する工程は、β遮断剤、および、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)のKW−3902誘導体の一方を最初に投与し、その後、β遮断剤、および、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)のKW−3902誘導体の他方を投与することを含む。これらの実施形態において、対象には、これらの化合物の1つ以上を含む組成物を投与することができ、その後、しばらくして、数分後または数時間後に、残る化合物の他の1つ以上を含む別の組成物を投与することができる。これらの実施形態にはまた、対象には、これらの化合物の1つを含む組成物が定期的または連続的に投与され、その間に、対象は時々、他方の化合物を含む組成物を受ける実施形態が含まれる。
【0181】
別の態様において、本発明は、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)のKW−3902誘導体と、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害またはアンギオテンシンII受容体遮断剤(ARB)との組合せを使用する、腎臓疾患および/または心臓疾患の処置に関連する。AARA(例えば、KW−3902)、ACE阻害剤およびARBは、心臓疾患(例えば、うっ血性心不全、高血圧、無症候性左心室機能不全または急性心筋梗塞など)または腎臓疾患(例えば、糖尿病性腎症、造影剤媒介腎症、毒素誘導腎障害または酸素フリーラジカル媒介腎症など)の処置において幾分か効果的であることが個々に示されている。
【0182】
本発明者らは、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)のKW−3902誘導体と、ACE阻害またはARBとの組合せが、うっ血性心不全(CHF)または高血圧のどちらでも有益であることを発見している。同時係属中の米国特許出願第10/785,446号を参照のこと。CHFにおけるACE阻害剤およびARBの使用は、レニン−アンギオテンシン系の阻害に依るものである。これらの化合物は後負荷を低下させ、それにより、心臓のより効率的な順方向機能を可能にする。加えて、腎機能が、対象が過剰な体液をより効果的に除くように「正常化」または改善される。これらの化合物の使用は、CHFまたは高血圧を患う対象の間での生存率を増大させることが示されている。これらの化合物は今や、CHFおよび高血圧のための治療の標準の一部である。
【0183】
式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)のKW−3902誘導体と、ACE阻害剤またはARBとの組合せは、腎機能を継続した利尿のためにさらに改善するように相乗的に作用する。加えて、ほとんどのCHF対象者はまた、さらなる利尿剤を常用している。このような組合せは、腎臓の血流および腎機能を改善することによって、より遠位に作用する他の利尿剤のより大きな効力を可能にする。
【0184】
ACE阻害剤およびARBはともに、レニン−アンギオテンシン系を介するそれらの作用により高血圧の処置において十分に確立されている。式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)のKW−3902誘導体を加えることにより、高血圧が、近位尿細管を介するナトリウム再吸収を阻害することに由来するその利尿作用によりさらに処置される。加えて、多くの高血圧対象者はナトリウム感受性であるので、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)のKW−3902誘導体をACE阻害剤またはARBに加えることにより、さらなる血圧低下がもたらされる。尿細管糸球体フィードバックに対するAARA作用(例えば、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)のKW−3902誘導体)はさらに、より大きな利尿およびより低い血圧をもたらすように腎機能を改善する。
【0185】
ACE阻害剤およびARBはまた、免疫抑制剤のシクロスポリンAによって誘導される腎臓損傷のいくらかを防止することが知られている。しかしながら、それらの使用にもかかわらず、腎臓損傷作用が認められる。本発明者らは、ACE阻害剤およびARBと、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)のKW−3902誘導体との組合せが、薬物誘導による腎毒性(例えば、シクロスポリンA、造影剤(ヨウ素化造影剤)およびアミノグリコシド抗体により誘導される腎毒性など)を防止することにおいてより効果的であることを発見している。この状況において、両方の化合物によって最小限に抑えることができる腎臓の血管収縮が認められる。加えて、シクロスポリンによる尿細管上皮に対する直接の負の影響は、A受容体を阻止することにより、活発なプロセスが低下するという点で、アデノシンA受容体拮抗の状況においてそれほど顕著ではない。さらには、尿細管上皮に対して傷害的である酸化性副生成物がより一層認められない。加えて、尿細管糸球体フィードバック機構に対するAARA(例えば、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)のKW−3902誘導体)阻止の阻害作用は、機能を腎毒性薬物の状況において保つことを助ける。
【0186】
ACE阻害剤およびARBは、アルブミン尿(タンパク尿)によって測定されるような糖尿病における腎機能不全の悪化を防止することにおいて有益であることが知られている。糖尿病が始まると、糖尿が発症し、腎臓が、特に近位尿細管曲部を介してグルコースを能動的に再吸収し始める。この能動的プロセスは酸化的ストレスをもたらし、糖尿病性腎症の疾患プロセスを開始させ得る。このプロセスの初期症状発現が腎臓の肥大および過形成である。最終的には、腎臓は、他の徴候(例えば、ミクロアルブミン尿および低下した機能など)を現し始める。グルコースの能動的な再吸収は部分的にはアデノシンA受容体によって媒介されると仮定される。AARAによるこのプロセスの阻止により、糖尿病において現れる初期損傷が制限または防止される。
【0187】
式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)のKW−3902誘導体と、ACE阻害剤またはARBとの組合せは、本明細書中に開示されるように、糖尿病における腎臓に対する初期の損傷およびその後の損傷の両方を制限するように働く。現時点で開示されるこれらの組合せは糖尿病の診断時に施されるか、または、糖尿が危険性の対象(メタボリック症候群)において検出されるや否や施される。本発明の組合せを使用する長期間の処置では、本明細書中に記載される医薬組成物の毎日の投与が含まれる。
【0188】
別の態様において、本発明は、心臓血管疾患または腎臓疾患を処置する方法に関連し、この場合、この方法は、そのような処置の必要性のある対象を特定すること、および、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)のKW−3902誘導体と、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤またはアンギオテンシンII受容体遮断剤(ARB)との組合せを前記対象に投与することを含む。特定の実施形態において、対象は哺乳動物であり得る。哺乳動物は、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ブタ、イヌ、ネコ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、霊長類(例えば、サル、チンパンジーおよび類人猿など)およびヒトからなる群から選択され得る。いくつかの実施形態において、対象はヒトである。
【0189】
いくつかの実施形態において、投与する工程は、前記ACE阻害剤または前記ARBと、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(VI)または式(V)の前記KW−3902誘導体とをほぼ同時に投与することを含む。これらの実施形態には、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)のKW−3902誘導体と、ACE阻害剤またはARBとが、同じ投与可能な組成物に存在する実施形態、すなわち、1つの錠剤、ピルまたはカプセル、あるいは、静脈内注射用の1つの溶液、あるいは、1つの飲用可能な溶液、あるいは、1つの糖衣錠配合物またはパッチが両方の化合物を含有する実施形態が含まれる。これらの実施形態にはまた、それぞれの化合物が別個の投与可能な組成物に存在し、しかし、対象には、これらの別個の組成物をほぼ同時に服用するように指示される実施形態、すなわち、一方のピルが他方のピルの直後に服用される実施形態、または、一方の化合物の1回の注射が別の化合物の注射の直後になされる実施形態などが含まれる。
【0190】
他の実施形態において、投与する工程は、ACE阻害またはARB、および、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)のKW−3902誘導体の一方を最初に投与し、その後、ACE阻害またはARB、および、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)のKW−3902誘導体の他方を投与することを含む。これらの実施形態において、対象には、これらの化合物の一方を含む組成物を投与することができ、その後、しばらくして、数分後または数時間後に、これらの化合物の他方を含む別の組成物を投与することができる。これらの実施形態にはまた、対象には、これらの化合物の一方を含む組成物が定期的または連続的に投与され、その間に、対象は時々、他方の化合物を含む組成物を受ける実施形態が含まれる。
【0191】
本発明の方法は、うっ血性心不全、高血圧、無症候性左心室機能不全または急性心筋梗塞を含む得る心臓血管疾患のための処置を提供することが意図される。いくつかの場合において、心臓血管疾患を患う対象は後負荷軽減の必要性がある。本発明の方法は、これらの対象のための処置を提供するために同様に好適である。
【0192】
本発明の方法はまた、腎臓肥大、腎臓過形成、ミクロタンパク尿、タンパク尿、糖尿病性腎症、造影剤媒介腎症、毒素誘導腎傷害または酸素フリーラジカル媒介腎症、高血圧性腎症、糖尿病性腎症、造影剤媒介腎症、毒素誘導腎傷害または酸素フリーラジカル媒介腎症を含む得る腎臓疾患のための処置を提供することが意図される。
【0193】
さらに他の態様は、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)のKW−3902誘導体を使用してアルコーシス(alkosis)を処置する方法に関連する。アルカローシスは、血漿中の重炭酸塩(HCO)濃度における上昇によって引き起こされる酸塩基障害である。アルカローシスは、重炭酸塩の増加または細胞外液からの不揮発性酸の喪失によって特徴づけられる原発性の病態生理学的事象である。腎臓は正常な酸塩基バランスを2つの機構によって保つ:主に近位尿細管における重炭酸塩の再利用、および、主として遠位ネフロンにおける重炭酸塩の生成。重炭酸塩の再利用は主にNa−H対向輸送体によって媒介され、また、より小さい程度ではあるが、H−ATPase(アデノシントリホスファターゼ)によって媒介される。HCOの再吸収に影響を及ぼす主要な要因には、有効動脈血量、糸球体ろ過速度、カリウムおよび二酸化炭素分圧が含まれる。重炭酸塩の再生は、遠位のNa送達およびNa再吸収、アルドステロン、全身的pH、アンモニウム排出、ならびに、滴定可能な酸の排出によって主に影響される。
【0194】
いくつかの異なるタイプのアルカローシスが認められる:例えば、代謝性アルカローシスおよび呼吸性アルカローシス。呼吸性アルカローシスは、登山者を高所状況において襲う状態である。
【0195】
代謝性アルカローシスを生じさせるためには、塩基の増加または酸の喪失のどちらかが生じなければならない。酸の喪失が上部胃腸管または腎臓を介してであり得る。過剰な塩基が、経口または非経口によるHCO投与によって、あるいは、乳酸塩、酢酸塩またはクエン酸塩の投与によって生じ得る。
【0196】
代謝性アルカローシスを維持することを促進させる要因には、低下した糸球体ろ過速度、体積収縮、低カリウム血症およびアルドステロン過剰が含まれる。代謝性アルカローシスに関連する臨床的状態が、嘔吐、電解質コルチコイド過剰、副腎性器症候群、甘草の摂取、利尿剤投与、ならびに、バーター症候群およびギテルマン症候が含まれる。
【0197】
代謝性アルカローシスの2つのタイプ(すなわち、塩化物応答性、塩化物抵抗性)が、尿における塩化物の量に基づいて分類される。塩化物応答性の代謝性アルカローシスは10mEq/L未満の尿塩化物レベルを伴い、例えば、嘔吐を伴って生じるように、低下した細胞外液(ECF)量および低い血清塩化物によって特徴づけられる。このタイプは塩化物塩の投与に応答する。塩化物抵抗性の代謝性アルカローシスは、20mEq/Lを越える尿塩化物レベルを伴い、増大したECF量によって特徴づけられる。その名が意味するように、このタイプは塩化物塩の投与に影響されない。過度な経口アルカリ(通常的にはミルクおよび炭酸カルシウム)の摂取、および、原発性アルドステロン症を併発するアルカローシスは、塩化物抵抗性アルカローシスの例である。
【0198】
浮腫性状態を有する多くの対象者が利尿剤により処置される。残念ながら、継続した治療により、対象者の重炭酸塩レベルが増大し、進行性アルカローシスがその結果として生じ得る。利尿剤は、(1)細胞外液(ECF)量の急激な収縮(HCOを伴わないNaCl排出)、それにより、ECFにおけるHCOの濃度が増大すること;(2)利尿剤誘導によるカリウムおよび塩化物の枯渇;および(3)二次的なアルドステロン症を含めて、いくつかの機構によって代謝性アルカローシスを引き起こす。利尿剤の継続した使用、または、後者の2つの要因のどちらかにより、アルカローシスが維持される。
【0199】
AARA(例えば、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)のKW−3902誘導体)を加えることにより、継続した利尿剤および維持された腎機能が、アルカローシスを悪化させることなく可能になる。AARAは、腎臓の近位尿細管を通過するHCOの能動的な再吸収を阻害する。
【0200】
従って、1つの態様において、いくつかの実施形態は、関連した有害な事象(例えば、発作または痙攣など)が生じる可能性を低下させるながら、代謝性アルカローシスを処置する方法を提供し、この場合、この方法は、その必要性のある対象を特定すること、および、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)のKW−3902誘導体を前記対象に投与することを含む。特定の実施形態において、対象は高所での高山病に苦しんでいる。いくつかの実施形態において、対象は浮腫を有する。これらの実施形態のいくつかにおいて、対象は利尿剤治療を受けている場合がある。利尿剤は、ループ利尿剤、近位利尿剤または遠位利尿剤であり得る。他の実施形態において、対象は、対象の上部胃腸管からの酸喪失、例えば、過度な嘔吐による酸喪失を患う。さらに他の実施形態において、対象は過度な経口アルカリを摂取している。
【0201】
さらに別の態様は、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)のKW−3902誘導体を用いた糖尿病性腎症の処置に関連する。制御されない糖尿病は損傷を身体の多くの組織に対して引き起こす。糖尿病によって引き起こされる腎臓損傷は、ほとんどの場合、内部の腎臓構造体(具体的には、糸球体(腎臓膜))の肥厚および硬化(硬化症)を引き起こす。キンメルスティール・ウィルソン病は、糸球体の硬化症にヒアリンの結節性沈着物が付随する、糖尿病性腎症の特異な顕微鏡的特徴である。
【0202】
糸球体は、血液がろ過され、尿が形成される部位である。糸球体は、いくつかの物質が尿に排出され、他の物質が体内に留まることを可能にする選択的な膜として作用する。糖尿病性腎症が進行するにつれ、ますます多くの糸球体が破壊され、その結果、腎臓の機能が損なわれる。ろ過が遅くなり、正常な場合には体内に保持されるタンパク質(すなわち、アルブミン)が尿に漏れ出ることがある。アルブミンが、他の症状が発症するまでの5年間〜10年間にわたって尿に現れることがある。高血圧が多くの場合、糖尿病性腎症に付随する。
【0203】
糖尿病性腎症は最終的には、ネフローゼ症候群(尿におけるタンパク質の過度な喪失によって特徴づけられる一群の症状)および慢性腎不全を引き起こし得る。この障害は進行し続け、末期腎疾患を、タンパク尿を伴う腎機能不全が現れた後、通常の場合には2年〜6年の内に発症する。
【0204】
糖尿病性腎症を引き起こす機構は不明である。糖尿病性腎症は、糸球体の基底膜および組織の構造体の中へのグルコース分子の不適切な取り込みによって引き起こされ得る。高い血糖レベルに関連する過剰ろ過(増大した尿産生)が疾患発生のさらなる機構であり得る。
【0205】
糖尿病性腎症は合衆国における慢性腎不全および末期腎疾患の最も一般的な原因である。インスリン依存性糖尿病の人々の約40%が最終的には末期腎疾患を発症する。糖尿病性腎症をインスリン依存性糖尿病(IDDM)の結果として有する人々の80%がこの糖尿病を18年以上にわたって罹っている。インスリン非依存性糖尿病(NIDDM)の人々の少なくとも20%が糖尿病性腎症を発症し、しかし、この障害の発達の経時変化はIDDMの場合よりもはるかに不定である。危険性が血中グルコースレベルの制御に関連づけられる。危険性が、グルコースが良好に制御されないならば、グルコースレベルが十分に制御される場合よりも高くなる。
【0206】
糖尿病性腎症には一般に、高血圧、網膜症および管(血管)変化を含めて、他の糖尿病合併症が付随し、だが、これらは腎症の初期段階の期間中に明白でないことがある。腎症が、ネフローゼ症候群または慢性腎不全が発症するまでに長年にわたって存在し得る。腎症は多くの場合、日常的な尿検査が尿中のタンパク質を示すときに診断される。
【0207】
糖尿病性腎症のための現在の処置には、この疾患のより進行した段階の期間中におけるアンギオテンシン変換酵素阻害剤(ACE阻害剤)の投与が含まれる。現在、この疾患のより初期段階における処置は何らない。これは、ACE阻害剤は、疾患が無症状であるとき(すなわち、対象がタンパク尿を示すだけであるとき)には効果的でないことがあるからである。
【0208】
糖尿病における初期の腎疾患に関係する機構は高血糖症の機構であるが、可能性のある機構が、近位尿細管におけるグルコースの能動的な再吸収に関連づけられ得る。この再吸収は部分的にはアデノシンA受容体に依存している。
【0209】
AARAsは腎臓の輸入細動脈に作用して、血管拡張を生じさせ、それにより、糖尿病対象者における腎臓血流を改善する。これは最終的には、増大したGFRおよび改善された腎機能を可能にする。加えて、AARAsは、新たに診断された糖尿病の対象者において、または、そのような状態(メタボリック症候群)についての危険性がある対象者において近位尿細管におけるグルコースの再吸収を阻害する。
【0210】
従って、1つの態様において、本発明は、糖尿病性腎症を処置する方法に関連し、この場合、この方法は、その必要性のある対象を特定すること、および、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)のKW−3902誘導体を前記対象に投与することを含む。特定の実施形態において、対象は前糖尿病性であり、これに対して、他の実施形態において、対象は初期段階の糖尿病である。いくつかの実施形態において、対象はインスリン依存性糖尿病(IDDM)を患い、これに対して、他の実施形態において、対象はインスリン非依存性糖尿病(NIDDM)を患う。
【0211】
特定の実施形態において、本発明の方法は、腎臓肥大を防止するために、または逆戻りさせるために使用される。他の実施形態において、本発明の方法は、腎臓過形成を防止するために、または逆戻りさせるために使用される。さらに他の実施形態において、本発明の方法は、ミクロタンパク尿またはタンパク尿を改善するために使用される。
【0212】
II型糖尿病、すなわち、NIDDMを発症する前に、人々はほとんど常に「前糖尿病」を有する。前糖尿病性の対象者は、正常よりも高く、しかし、糖尿病として診断されるためには未だ十分に高くない血中グルコースレベルを有する。例えば、前糖尿病性の対象者の血中グルコースレベルは、空腹時血漿グルコース試験(FPG)を使用するときには110mg/dL〜126mg/dLの間であるか、または、経口グルコース負荷試験(OGTT)を使用するときには140mg/dL〜200mg/dLの間である。FPGまたはOGTTを使用したときにそれぞれ、110未満または140未満の血中グルコースレベルが、正常であると見なされ、これに対して、126超または200超の血中グルコースレベルを、FPGまたはOGTTを使用したときにそれぞれ有する個体が、糖尿病であると見なされる。本発明の方法は、アデノシンA受容体に拮抗する任意の化合物を用いて行うことができる。
【0213】
特定の態様において、本発明の方法は、混合治療を使用して、すなわち、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)のKW−3902誘導体が第2の化合物との組合せで対象に投与される混合治療を使用して行うことができる。特定の実施形態において、第2の化合物は、プロテインキナーゼC阻害剤、組織増殖の阻害剤、抗酸化剤、グリコシル化の阻害剤、および、エンドセリンB受容体阻害剤からなる群から選択することができる。
【0214】
これまで本発明を大まかに記載してきたが、本発明は、例示目的のためだけに本明細書中に含まれ、また、別途指定されない限り、限定であることが意図されないいくつかの具体的な実施例を参照することによってより良く理解される。すべての参照される刊行物および特許がそれらの全体において参考として本明細書中に組み込まれる。
【実施例】
【0215】
実施例1:体液過剰および腎障害を有する個体の処置
二重盲検の、ランダム化された、多施設でのプラセボ対照研究が下記のように行われる。ニューヨーク心臓協会分類のII〜IVのCHFを有し、推定クレアチニンクリアランスが20mL/分〜80mL/分の間にある、年齢が少なくとも18歳の男性および女性が特定される。これらの対象者は経口ループ利尿剤を服用している。
【0216】
研究通院には、−2日〜−1日での前処理、処置期間の1日目〜3日目、4日目/早期終了、および、30日目での経過観察接触が含まれる。手順および観察には、病歴、理学的検査、CHFの分類、生命徴候、体重、CHFの徴候および症状スコア、ホルターモニター記録、胸部X線、CBC化学、クレアチニンクリアランス、水分摂取量ならびに尿排出量が含まれる。
【0217】
処置日において、個体は、単独療法として、また、利尿剤との併用療法として、その両方で、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)のKW−3902誘導体を、プラセボに対して、約2.5mg〜約100mgの間での用量で120分間かけて静脈内に受ける。式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)のKW−3902誘導体(あるいはプラセボ)が1日目から3日目まで投与される。1日目において、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)のKW−3902誘導体(あるいはプラセボ)が単独療法として投与される。KW−3902誘導体の投与後6時間で、IVループ利尿剤が、必要とされるようなすべての処置群に与えられる。2日目および3日目において、KW−3902誘導体が、臨床的に適応されるならば、静脈内フロセミドとの混合療法として投与される。最終的な研究室データが4日目または早期終了時に集められる。経過観察の電話接触が30日目に行われる。
【0218】
2.5mgもの低い、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)のKW−3902誘導体を受ける個体は、ベースラインレベルに対して比較されたとき、血清クレアチニンレベルによって測定されるような腎機能における改善を示す。この作用は、プラセボを受ける個体において見られる作用よりも大きい。
【0219】
式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)のKW−3902誘導体と、アデノシン非緩和利尿剤(例えば、フロセミドなど)との組合せは、尿排出量によって測定されるように、利尿に対する相乗的な有益な作用を有する。式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)のKW−3902誘導体を受ける個体はまた、アデノシン非緩和利尿剤をほとんど必要としない。
【0220】
実施例2:体液過剰および腎障害を有する個体の処置
末梢浮腫、呼吸困難および/または他の徴候もしくは症状が現れるとき、体液過剰の患者が、病院、診療所または医院に現れる。そのような患者はまた、ある程度の腎障害を示す。IV利尿剤(例えば、IVフロセミド)、ブメタニドおよび/または経口メトラゾンを含むケア治療の標準に加えて、患者にはまた、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)のKW−3902誘導体の所定量が、約2.5mg〜約100mgの間(例えば、10mg、20mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mgまたは100mgあるいはそれ以上)で、注射可能な形態で与えられる。患者には、30mgの、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)のKW−3902誘導体と、40mgのフロセミドとが、必要に応じて24時間の間隔またはより多くの頻度で与えられる。患者の水分摂取量および水分流出量、尿量、血清および尿のクレアチニンレベル、電解質ならびに心臓機能がモニターされる。
【0221】
主治医の裁量で、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)のKW−3902誘導体の投薬量を、処置の期間中に、または、初期用量としてそのどちらでも増減することができる。加えて、フロセミドの投薬量を、処置の期間中に、または、初期用量としてそのどちらでも、60mg、80mg、100mg、120mg、140mgまたは160mgに増大することができ、あるいは、フロセミドを連続注入として与えることができる。
【0222】
実施例3:標準的なIV利尿剤治療に対して不応性である個体の処置
二重盲検の、ランダム化された、多施設でのプラセボ対照研究が下記のように行われる:推定クレアチニンクリアランスが20mL/分〜80mL/分の間であり、かつ、高用量の利尿剤治療に対して不応性である、うっ血性心不全を示す対象者が、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)のKW−3902誘導体あるいはプラセボを受ける処置群にランダム化される。10mg、30mgおよび60mgの用量の、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)のKW−3902誘導体(静脈内)あるいはプラセボが120分かけて1回投与される。尿排出量における変化が1時間毎に測定される。クレアチニンクリアランス速度が3時間毎に測定される。
【0223】
KW−3902誘導体のすべての用量が、プラセボと比較して、その後の9時間にわたる増大した1時間毎の尿量をもたらす。式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)のKW−3902誘導体が投与された対象者はまた、クレアチニンクリアランスにおける改善を示す。
【0224】
最大量のIV利尿剤により処置されており、依然として症状を有し、体液過剰である入院患者、または、その尿排出量が水分摂取量よりも少ない入院患者がさらなる処置のために評価される。10mg、20mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mgまたは100mgの用量の、注射可能な形態での式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)のKW−3902誘導体がIVラインを介して注入される。患者はフロセミドによる継続された処置を受け、同様にまた、10mgのKW−3902を、必要に応じて、6時間間隔で、あるいは、それよりも多い頻度または少ない頻度で受ける。患者の水分摂取量および水分流出量、尿量、血清および尿のクレアチニンレベル、電解質ならびに心臓機能がモニターされる。
【0225】
主治医の裁量で、KW−3902誘導体の投薬量を、処置の期間中に、または、初期用量としてそのどちらでも増減することができ、あるいは、フロセミドを連続注入として与えることができる。
【0226】
実施例4:標準的なIV利尿剤治療に対して不応性である個体の処置
最大量のIV利尿剤により処置されており、依然として症状を有し、体液過剰である入院患者、または、その尿排出量が水分摂取量よりも少ない入院患者がさらなる処置のために評価される。10mg、20mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mgまたは100mgの用量の、注射可能な形態での式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)のKW−3902誘導体がIVラインを介して注入される。患者はフロセミドによる継続された処置を受け、同様にまた、様々な用量の、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)のKW−3902誘導体を、必要に応じて、6時間の間隔で、あるいは、それよりも多い頻度または少ない頻度で受ける。患者の水分摂取量および水分流出量、尿量、血清および尿のクレアチニンレベル、電解質ならびに心臓機能がモニターされる。
【0227】
主治医の裁量で、KW−3902誘導体の投薬量を、処置の期間中に、または、初期用量としてそのどちらでも増減することができ、あるいは、フロセミドを連続注入として与えることができる。
【0228】
実施例5:体液過剰を有する個体の処置
末梢浮腫、呼吸困難および/または他の徴候もしくは症状が現れるとき、体液過剰の患者が、病院、診療所または医院に現れる。IV利尿剤(例えば、IVフロセミド)、ブメタニドおよび/または経口メトラゾンを含むケア治療の標準に加えて、患者にはまた、注射可能な形態での、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)のKW−3902誘導体の2.5mg〜100mg(例えば、10mg、20mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mgまたは100mgあるいはそれ以上)が与えられる。患者には、所定用量のKW−3902誘導体と、40mgのフロセミドとが24時間の間隔で与えられるか、または、フロセミドを連続注入として与えることができる。患者の水分摂取量および水分流出量、尿量、血清および尿のクレアチニンレベル、電解質ならびに心臓機能がモニターされる。
【0229】
主治医の裁量で、KW−3902誘導体の投薬量を、処置の期間中に、または、初期用量としてそのどちらでも増減することができる。加えて、フロセミドの投薬量を、処置の期間中に、または、初期用量としてそのどちらでも、60mg、80mg、100mg、120mg、140mgまたは160mgに増大することができる。この処置は、腎障害を患うか否かによらず、患者のために使用することができる。
【0230】
実施例6:体液過剰および損なわれた腎機能を有する個体の処置
末梢浮腫、呼吸困難および/または他の徴候もしくは症状が現れるとき、体液過剰の患者が医院または診療所に現れる。患者は、経口利尿剤を含む治療療法をそれまで受けており、また、その体液バランスを管理するために、より高用量の利尿剤を必要とすることに加えて、患者は今や、損なわれた腎障害を示している。患者には、5mg、10mg、20mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mgまたは100mgあるいはそれ以上の用量の、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)のKW−3902誘導体が、他の利尿剤治療と同時に、1日に1回、経口服用するように処方される。患者の水分摂取量および水分流出量、尿量、血清および尿のクレアチニンレベル、電解質ならびに心臓機能がモニターされる。
【0231】
主治医の裁量で、KW−3902誘導体の投薬量を、処置の期間中に、または、初期用量としてそのどちらでも増減することができる。加えて、フロセミドの投薬量を、処置の期間中に、または、初期用量としてそのどちらでも、60mg、80mg、100mg、120mg、140mgまたは160mgに増大することができる。
【0232】
実施例7:体液過剰を有する個体の処置
末梢浮腫、呼吸困難および/または他の徴候もしくは症状が現れるとき、体液過剰の患者が医院または診療所に現れる。患者は、経口利尿剤を含む治療療法をそれまで受けており、また、その体液バランスを管理するために、より高用量の利尿剤を必要とする。腎障害の発症を遅らせるか、もしくは防止するために、および/または、より大きな投薬量の標準的利尿剤を使用する必要性を遅らせるために、患者には、5mg、10mg、20mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mgまたは100mgあるいはそれ以上の、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)のKW−3902誘導体が、その利尿剤治療と同時に、1日に1回、経口服用するように処方される。患者の水分摂取量および水分流出量、尿量、血清および尿のクレアチニンレベル、電解質ならびに心臓機能がモニターされる。
【0233】
主治医の裁量で、KW−3902誘導体の投薬量を、処置の期間中に、または、初期用量としてそのどちらでも増減することができる。加えて、フロセミドの投薬量を、処置の期間中に、または、初期用量としてそのどちらでも、60mg、80mg、100mg、120mg、140mgまたは160mgに増大することができる。
【0234】
実施例8:うっ血性心不全を有する個体の処置
うっ血性心不全の患者が医院または診療所に現れる。患者には、経口利尿剤を含む治療療法が、その体液バランスを管理するために課される。腎障害の発症を遅らせるか、もしくは防止するために、および/または、より大きな投薬量の標準的利尿剤を使用する必要性を遅らせるために、患者にはまた、5mg、10mg、20mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mgまたは100mgあるいはそれ以上の、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)のKW−3902誘導体が、その利尿剤治療と同時に、1日に1回、経口服用するように処方される。患者の体液レベル、尿量、血清および尿のクレアチニンレベル、電解質ならびに心臓機能がモニターされる。
【0235】
主治医の裁量で、KW−3902誘導体の投薬量を、処置の期間中に、または、初期用量としてそのどちらでも増減することができる。加えて、フロセミドの投薬量を、処置の期間中に、または、初期用量としてそのどちらでも、60mg、80mg、100mg、120mg、140mgまたは160mgに増大することができる。
【0236】
実施例9:うっ血性心不全を有する個体についての健康成績を改善すること
うっ血性心不全の患者が医院または診療所に現れる。患者には、経口利尿剤を含む治療療法が、その体液バランスを管理するために課される。全体的な健康成績(すなわち、CHFに起因する罹病率または死亡率)を改善するために、患者にはまた、5mg、10mg、20mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mgまたは100mgあるいはそれ以上の、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)のKW−3902誘導体が、その利尿剤治療と同時に、1日に1回、経口服用するように処方されるか、あるいは、類似する用量のKW−3902誘導体が患者に静脈内投与される。。患者の体液レベル、尿量、血清および尿のクレアチニンレベル、電解質ならびに心臓機能がモニターされる。
【0237】
主治医の裁量で、KW−3902誘導体の投薬量を、処置の期間中に、または、初期用量としてそのどちらでも増減することができる。加えて、フロセミドの投薬量を、処置の期間中に、または、初期用量としてそのどちらでも、60mg、80mg、100mg、120mg、140mgまたは160mgに増大することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式Iによって表されるキサンチン化合物:
【化1】


(式中、Rは、水素、低級アルキル、アリル、プロパルギル、あるいは、ヒドロキシル置換またはオキソ置換または非置換の低級アルキルを表し、および、
は水素または低級アルキルを表し、
およびXのそれぞれは独立して、酸素または硫黄を表し、
Aは、分枝型アルキルもしくは非分枝型アルキル、アルケニル、アルキニル、エステル、エーテル、チオエーテル、アミドまたはアリールアミドからなる群から選択される置換された置換基または非置換の置換基であり、
ならびに、Rは、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキルおよびヘテロシクリルアルキルを表し、ただし、前記のそれぞれが荷電成分または極性成分により置換される)
あるいは、その医薬的に許容され得る塩、エステル、アミド、代謝産物またはプロドラッグ。
【請求項2】
がアリール基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Aがアミド基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
前記アミド基がプロピルアミドである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
前記荷電成分がパラ位に存在する、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
前記極性成分または荷電成分が、SO、SOH、PO、POH、NO、NOH、CF、CHF、CHF、シアノ、イソシアノ、アミド、グアナジニウム(guanadinium)およびアミノからなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
前記極性成分または荷電成分がSOである、請求項2に記載の化合物。
【請求項8】
前記極性成分または荷電成分がSOである、請求項3に記載の化合物。
【請求項9】
前記極性成分または荷電成分がSOである、請求項6に記載の化合物。
【請求項10】
下記の化合物:
【化2】


である、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
請求項1に記載されるキサンチン化合物と、医薬的に許容され得るキャリアとを含む医薬組成物。
【請求項12】
請求項10に記載されるキサンチン化合物と、医薬的に許容され得るキャリアとを含む医薬組成物。
【請求項13】
下記の式IIによって表されるキサンチン化合物:
【化3】


(式中、Rは、水素、低級アルキル、アリル、プロパルギル、あるいは、ヒドロキシル置換またはオキソ置換または非置換の低級アルキルを表し、かつ、
は水素または低級アルキルを表し、
およびXのそれぞれは独立して、酸素または硫黄を表し、
Aは、分枝型アルキルもしくは非分枝型アルキル、アレニル(alenyl)、アルキニル、エステル、エーテル、チオエーテル、アミドまたはアリールアミドからなる群から選択される置換された置換基または非置換の置換基であり、
ならびに、Rは、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキルおよびヘテロシクリルアルキルを表し、ただし、前記のそれぞれが荷電成分または極性成分により置換される)
あるいは、その医薬的に許容され得る塩、エステル、アミド、代謝産物またはプロドラッグ。
【請求項14】
がアリール基である、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
Aがアミド基である、請求項13に記載の化合物。
【請求項16】
前記アミド基がプロピルアミドである、請求項13に記載の化合物。
【請求項17】
前記荷電成分がパラ位に存在する、請求項13に記載の化合物。
【請求項18】
前記極性成分または荷電成分が、SO、SOH、PO、POH、NO、NOH、CF、CHF、CHF、シアノ、イソシアノ、アミド、グアナジニウム(guanadinium)およびアミノからなる群から選択される、請求項13に記載の化合物。
【請求項19】
前記極性成分または荷電成分がSOである、請求項14に記載の化合物。
【請求項20】
前記極性成分または荷電成分がSOである、請求項15に記載の化合物。
【請求項21】
前記極性成分または荷電成分がSOである、請求項18に記載の化合物。
【請求項22】
下記の化合物:
【化4】


である、請求項13に記載の化合物。
【請求項23】
請求項13に記載されるキサンチン化合物と、医薬的に許容され得るキャリアとを含む医薬組成物。
【請求項24】
請求項22に記載されるキサンチン化合物と、医薬的に許容され得るキャリアとを含む医薬組成物。
【請求項25】
下記の式IIIによって表されるキサンチン化合物:
【化5】


(式中、R、Rのそれぞれが独立して、水素、低級アルキル、アリル、プロパルギル、あるいは、ヒドロキシ置換またはオキソ置換または非置換の低級アルキルを表し、かつ、Rは水素または低級アルキルを表し、
ならびに、XおよびXのそれぞれは独立して、酸素または硫黄を表し、
ならびに、Rは、アリール、ヘテロリル(heteroryl)、ヘテロシクリル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキルおよびヘテロシクリルアルキルを表し、ただし、前記のそれぞれが荷電成分または極性成分により置換される)
あるいは、その医薬的に許容され得る塩、エステル、アミド、代謝産物またはプロドラッグ。
【請求項26】
がアリール基である、請求項25に記載の化合物。
【請求項27】
前記極性成分または荷電成分がパラ位に存在する、請求項25に記載の化合物。
【請求項28】
前記極性成分または荷電成分が、SO、SOH、PO、POH、NO、NOH、CF、CHF、CHF、シアノ、イソシアノ、アミド、グアナジニウム(guanadinium)およびアミノからなる群から選択される、請求項25に記載の化合物。
【請求項29】
前記極性成分または荷電成分がSOである、請求項29に記載の化合物。
【請求項30】
前記極性成分または荷電成分がSOである、請求項27に記載の化合物。
【請求項31】
請求項25に記載されるキサンチン化合物と、医薬的に許容され得るキャリアとを含む医薬組成物。
【請求項32】
下記の化合物:
【化6】


である、請求項25に記載の化合物。
【請求項33】
下記の式IVによって表されるキサンチン化合物:
【化7】


(式中、R、Rのそれぞれは独立して、水素、低級アルキル、アリル、プロパルギル、あるいは、ヒドロキシ置換またはオキソ置換または非置換の低級アルキルを表し、かつ、Rは水素または低級アルキルを表し、
ならびに、XおよびXのそれぞれは独立して、酸素または硫黄を表し、
ならびに、Rは、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキルおよびヘテロシクリルアルキルを表し、ただし、前記のそれぞれが荷電成分または極性成分により置換される)
あるいは、その医薬的に許容され得る塩、エステル、アミド、代謝産物またはプロドラッグ。
【請求項34】
がアリール基である、請求項33に記載の化合物。
【請求項35】
前記極性成分または荷電成分がパラ位に存在する、請求項33に記載の化合物。
【請求項36】
前記極性成分または荷電成分が、SO、SOH、PO、POH、NO、NOH、CF、CHF、CHF、シアノ、イソシアノ、アミド、グアナジニウム(guanadinium)およびアミノからなる群から選択される、請求項33に記載の化合物。
【請求項37】
前記極性成分または荷電成分がSOである、請求項36に記載の化合物。
【請求項38】
前記極性成分または荷電成分がSOである、請求項34に記載の化合物。
【請求項39】
請求項33に記載されるキサンチン化合物と、医薬的に許容され得るキャリアとを含む医薬組成物。
【請求項40】
下記の化合物:
【化8】


である、請求項33に記載の化合物。
【請求項41】
下記の式Vによって表されるキサンチン化合物:
【化9】


(式中、R、Rのそれぞれは独立して、水素、低級アルキル、アリル、プロパルギル、あるいは、ヒドロキシ置換またはオキソ置換または非置換の低級アルキルを表し、かつ、Rは水素または低級アルキルを表し、
ならびに、XおよびXのそれぞれは独立して、酸素または硫黄を表し、
ならびに、Rは、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキルおよびヘテロシクリルアルキルを表し、ただし、前記のそれぞれが荷電成分または極性成分により置換される)
あるいは、その医薬的に許容され得る塩、エステル、アミド、代謝産物またはプロドラッグ。
【請求項42】
がアリール基である、請求項41に記載の化合物。
【請求項43】
前記極性成分または荷電成分がパラ位に存在する、請求項41に記載の化合物。
【請求項44】
前記極性成分または荷電成分が、SO、SOH、PO、POH、NO、NOH、CF、CHF、CHF、シアノ、イソシアノ、アミド、グアナジニウム(guanadinium)およびアミノからなる群から選択される、請求項41に記載の化合物。
【請求項45】
前記極性成分または荷電成分がSOである、請求項44に記載の化合物。
【請求項46】
前記極性成分または荷電成分がSOである、請求項42に記載の化合物。
【請求項47】
請求項41に記載されるキサンチン化合物と、医薬的に許容され得るキャリアとを含む医薬組成物。
【請求項48】
下記の化合物:
【化10】


である、請求項41に記載の化合物。
【請求項49】
下記の式(VI)によって表されるキサンチン化合物:
【化11】


(式中、R、Rのそれぞれは独立して、水素、低級アルキル、アリル、プロパルギル、あるいは、ヒドロキシ置換またはオキソ置換または非置換の低級アルキルを表し、かつ、Rは水素または低級アルキルを表し、
ならびに、XおよびXのそれぞれは独立して、酸素または硫黄を表し、
ならびに、Rは、アリール、ヘテラリル(heteraryl)、ヘテロシクリル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキルおよびヘテロシクリルアルキルを表し、ただし、前記のそれぞれが荷電成分または極性成分により置換される)
あるいは、その医薬的に許容され得る塩、エステル、アミド、代謝産物またはプロドラッグ。
【請求項50】
がアリール基である、請求項49に記載の化合物。
【請求項51】
前記極性成分または荷電成分がパラ位に存在する、請求項49に記載の化合物。
【請求項52】
前記極性成分または荷電成分が、SO、SOH、PO、POH、NO、NOH、CF、CHF、CHF、シアノ、イソシアノ、アミド、グアナジニウム(guanadinium)およびアミノからなる群から選択される、請求項49に記載の化合物。
【請求項53】
前記極性成分または荷電成分がSOである、請求項52に記載の化合物。
【請求項54】
前記極性成分または荷電成分がSOである、請求項50に記載の化合物。
【請求項55】
請求項49に記載されるキサンチン化合物と、医薬的に許容され得るキャリアとを含む医薬組成物。
【請求項56】
下記の化合物:
【化12】


である、請求項49に記載の化合物。


【公表番号】特表2010−501557(P2010−501557A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−525570(P2009−525570)
【出願日】平成19年8月17日(2007.8.17)
【国際出願番号】PCT/US2007/018235
【国際公開番号】WO2008/024277
【国際公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(505316990)ノヴァカーディア,インク. (9)
【Fターム(参考)】