説明

血液製剤を製造するための装置及び方法

本発明は、最も広い意味での血液製剤を採取、製造、保管及び輸送するための装置及び方法、特に閉鎖式の採血、処理及び保管システム、並びに医薬品投薬システムに関するものであり、この医薬品は血液又は血液製剤から得られ、及び対応する方法で法規及びGMPに準拠して、血液製剤又は血液成分又は血液分画又は全血製剤(薬事法AMGの意味において)が取得、製造、保管及び輸送される。本発明により、完全に等分された、直接患者に使用可能な自家血清点眼剤又は血液又は血液製剤から成る医薬品を、クリーンルーム試験室を必要とすることなく製造、保管、輸送及び投薬することが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、採血が全血採血でもヘマフェレーシスによるものでも、採血後に、クリーンルーム試験室を必要とせずに、血液製剤(又は薬事法AMG及び輸血法TFGの意味における血液成分又は血液分画又は全血製剤)を製造、保管、輸送、投薬するための装置および方法に関する。特にこれは閉鎖式の採血及び加工システム、および血液製剤の保管、輸送、投薬のためのシステム及びそれに対応する方法であって、クリーンルーム試験室を必要とすることなく法規及びGMPに準拠した採血、血液製剤の製造、保管、輸送及び投薬を行う方法に関する。特に特別な方法により、本発明は、完全に等分された、例えば自家血清点眼剤又は血液製剤から成る他の薬品のような直接患者に使用可能な血液製剤を、クリーンルーム試験室を必要とすることなく製造、保管、輸送及び投薬することに関する。
【0002】
本発明は特に、クリーンルーム試験室を必要とすることのない、法規及びGMPに準拠した条件下で自家血清点眼剤を製造、保管、輸送及び投薬するための閉鎖式の採血及び加工システムに関する。
【0003】
この装置及び方法は、自家血又は他家血供血者の血液を採取および加工する、すなわち自己由来の又は同種から得られた血液を使用可能にするためのものである。
自己由来の又は同種から得られた血液のために、必要に応じて滅菌のため、その他の薬剤が、装置に又は装置内に、例えば液体の形で、備えられていてよい。
【0004】
この装置及び方法は、全血採血の後でもヘマフェレーシスの後でも使用可能である。
同様にこの装置及び方法は、人間の患者にも動物の患者、特に脊椎動物にも適している。
【0005】
これにより、本発明は初めて、自家血又は他家血又はその成分から医薬品を製造する手段を記述しており、この医薬品は等分されることが可能であり、及び患者に対して直接患者自身が、又は他の人によって、又は動物に対して、好ましくは脊椎動物に対して、別の補助手段なしに使用可能である。
【0006】
これは特に、特定の眼疾患の患者にとって重要である。なぜなら、法規及びGMPに準拠した自家血清点眼剤の製造は、特に自家血清点眼剤を適切な投薬手段に等分及び充填する際にクリーンルーム試験室を必要とすることにより費用がかかるからである。
[技術水準]
「血液製剤」とは、全血製剤、薬事法による血液からの血清、および有効成分又は医薬品を製造するための血液分画又は血液成分又は全血製剤であると解釈するものとする。
【0007】
「供血者」とは、有効成分又は医薬品として使用するために、あるいは人間又は動物のために使用される有効成分又は医薬品又は他の製品を製造するために、決められた量の血液又は血液分画を採取される、人間又は動物、好ましくは脊椎動物であると解釈するものとする。
【0008】
「血液」又は「全血」とは、供血後の、人間又は動物、好ましくは脊椎動物の、天然成分をすべて含んでいる血液であると解釈するものとする。
「血液分画」とは、すべての、血液又は全血から得ることのできる成分であると解釈することができ、この成分は手動式又は機械式の分離方法で得られるか又は直接ヘマフェレーシスによって生成することができる。
【0009】
「ヘマフェレーシス」とは、体外循環による血液成分分離装置を供血者に直接使用して血液又は全血をさまざまな血液分画に分離し、その際必要のない血液分画が供血者に再び直接戻されることであると解釈するものとする。
【0010】
「血液血清」又は「血清」とは、血液又は全血の各分画が、血液が凝固した後に、液状の、タンパク質を豊富に含むが血球の少ない上澄みとして残ったものであると解釈するものとする。
【0011】
「自家血清」又は「自家血血清」とは、各患者が自己供血によって得た自分の血液血清であると解釈するものとする。
「点眼液」(点眼薬)とは、目に又は目の中に使用するための医薬品の剤形であると解釈するものとする。
【0012】
「自家血清点眼剤」とは、自家血清から作られた点眼液であると解釈するものとする。
「供血前試料採取(predonation sampling)」とは、供血の最初の血液量の少なくとも15mlを、採血の過程で血液又は全血の細菌汚染を低減するために除去することであると解釈するものとする。通常、供血前試料採取は供血前試料採取バッグを使用して行われる。
【0013】
「GMP」とは、医薬品、医療機器、有効成分および食品及び飼料の優良製造規範(good manufacturing practise)であると解釈するものとする。
【0014】
当業者には、全血採血としての、およびヘマフェレーシスによる、法規及びGMPに準拠した供血の実施は、公知である(例えば輸血法TFGに含まれるガイドライン、又は優良製造規範のためのEUガイドライン補遺1を参照)。同様に血液分画及び血液製剤の法規及びGMPに準拠した製造も公知である。同じことは点眼液の製造にも有効である。このことは人間用医薬品にも動物用医薬品にも適用される。
【0015】
供血の実施及び血液製剤の製造における重要な点は、適切な容器の選択である。従来技術では、例えばDE1065138A1(B. Braun社、1956年6月15日)又はUS5224937(NPBI、1991年6月21日)のような血液を収容するための多数の容器、又は例えばDE1123800(Fenwal Laboratories, Inc.、1957年2月12日)のような採血又は血液採取のためのシステムが公知である。
【0016】
しかしこれらは、装置内で血液製剤から生成された医薬品を患者のために直接すなわち補助手段を使用せずに投薬できるように形成されている適切な投薬手段を備えていないか、又は、供血者からの採血ステップ及び患者への投薬段階まで開くことがないという意味で閉鎖式のシステムに関するものではない。
【0017】
従って、従来技術では、血液製剤、特に血液又は血液血清から作られる点眼液を、簡単に、法規及びGMPに準拠して製造、保管、輸送及び特に投薬するための適切な装置は欠如している。
【0018】
ヨーロッパ薬局方(Pharmacopoea Europaea、Ph. Eur.)の規定によると、点眼液は常に無菌で製造しなければならない。点眼液は、ドイツ国内では薬局医薬品であり、薬局でしか提供できない。点眼液は、プラスチック製の1回量バイアル又は特殊ガラス製(茶色ガラス、ガラスクラスI)の点眼薬瓶に入ったものが入手できる。工場での製造のほかに、点眼液は医師の指示により処方箋に従って薬局で調剤することもできる。そのために一般に薬局には設けられていないクリーンルーム試験室が必要である。
【0019】
現在血液血清から作られる点眼液、特に眼疾患の治療に重要な役割を果たしている自家血清点眼剤を、法規及びGMPに準拠して製造、保管、輸送及び投薬するためには、特別な問題がある。自家血清から得られる点眼液の典型的な使用分野は、目の乾燥と刺激性炎症、結膜炎(conjunctivitis)及び角膜炎(keratitis)の治療である。
【0020】
しかし今や他の眼科的目的のためにも自家血清は盛んに使用されている。ミュンヘン工科大学イザール右岸病院の年次報告2003によると、黄斑での網膜裂孔形成(黄斑円孔)にも自家血清による接着が定期的に実施されており、すなわち自家血清が接着剤として使用されている。
【0021】
約10年前から供血者自身の血清(自己由来又は自家血清とも呼ばれる)又は他家血供血者の血清(同種又は他家血清とも呼ばれる)から作られた点眼液の効果が実証されているその他の使用範囲は、「眼表面疾患の治療のための自家血清及び大体の血液製剤(Eigenserum und alternative Blutprodukte zur Behandlung von Augenoberflachenerkrankungen)」(G. Geerlingら、「Der Ophthalmologe」7、2008年、623ページ以降および644ページ以降)に挙げられており、多数の眼疾患および眼表面疾患が該当している。
【0022】
現在例えば自家血清点眼剤はイギリスで製造されており、この場合自家血供血は異なる地域のクリーンルーム試験室まで送られ、そこで自家血清点眼剤に加工、等分、充填され、続いて治療している医師に返送される。この方法は時間と費用がかかる。供血施設(例:血液銀行)内での自家血清点眼剤の製造自体はこれまで不可能であった。なぜならそこには大抵の場合法律が要求するクリーンルーム試験室がないからである。
[発明の課題]
本発明の課題は従って、従来技術の上述の欠点を取り除いた装置及び方法を提示することであり、この装置内では、及びこの方法によって、供血者の血液から、クリーンルーム試験室を必要とすることなく、直接装置内で及びこの装置が常に閉じられた状態で(充填後及び投薬に至るまで)血液又は例えば血液血清などの最も広い意味での血液製剤を含めた医薬品が製造可能になる。ここでこの装置は、血液又は血液製剤から製造された医薬品を、後に直接装置の要素から、及びその他の補助手段なしに投与することができるように形成される。さらにこの装置及び方法は全血採血によってもヘマフェレーシスによっても所望の血液製剤を生成可能であるように作られる。その際この装置及び方法は、人間の患者にも動物の患者にも適しているように形成される。
[解決]
この課題は発明に従い、請求項1に従った装置によって解決される。特に装置は採取手段(1)及び少なくとも1つの収集及び分離手段(5)を備えており、この装置は少なくとも1つの投薬手段(10)を含み、採取手段(1)、収集及び分離手段(5)及び少なくとも1つの投薬手段(10)が液体貫流可能に互いに接続されていることを特徴としている。
【0023】
方法に関しては、上述の課題は、発明に従い、請求項15の対象物によって解決される。
本発明に記載された装置及び方法により、短時間で、少ない人件費及び材料費で、血液又は自家血供血設備を備えたいずれの医療施設でも、血液製剤、例えば血清点眼剤若しくは自家血清点眼剤、又は血液若しくは血液成分から作られた類似した医薬品を、法規及びGMPに準拠して製造、保管、輸送することができ、それによって患者がそれを利用できるようにすることができる。これは全血採血ばかりでなくヘマフェレーシスにも、また人間の患者にも動物の患者にも有効である。
【0024】
本発明は、装置に血液(好ましくは自家血)を充填した後は、装置がもはや開かれることがなく、つまり滅菌されていない状態を呈することがない(本発明による方法で作られた血液製剤が患者に投薬される際、例えば自家血血清点眼液が目に点眼される際を除く)。すなわち、発明による方法は、GMP及び法規(例えば「優良製造規範のためのEUガイドライン補遺1」又は「Gesetz zur Regelung des Transfusionswesens(輸血制度規制法)」、輸血法TFG)に準拠した、例えば他家血供血者又は自家血供血者の血液から作られたそのような点眼液のような血液製剤の製造が保証されるように形成される。
【0025】
本発明による装置及び方法はそれゆえに、すべての法的規定に準拠して自家血清点眼剤の直接製造を供血の現場において自前で行うことを初めて可能にする。
発明に従った装置が、そのために適した材料を使用することで実行可能であることは、当業者には即座に明らかである。
【0026】
実施例は図1から図5に示される。さらに1つの実施例が図6に示される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明による装置の第一の実施例の断面図であり、採取手段(1)、収集及び分離手段(5)、供給ライン(6)及び投薬手段(10)が備えられており、この投薬手段は本実施例では開口手段(11)及びマーキング用装置(12)を備えている。
【図2】第二の実施例の同じく断面図であり、複数の投薬手段(14)を備えており、充填方向から見て最後の投薬手段が最後尾の投薬手段(15)である。
【図3】第三の実施例の同じく断面図であり、供血前試料採取を実施するための収集手段(2)、いわゆる供血前試料採取バッグ、補足的な収集及び分離手段(7)、さらなる供給ライン(8)及び末端の収容手段(16)を備えている。
【図4】複数の投薬手段(14)の拡大された同じく断面図であり、充填マーキング及び充填方向マーキングを備えている。
【図5】個々の投薬手段を互いに分離し、及び少なくとも1つの供給ライン(6又は8)及び末端の収容手段(16)から分離した後の複数の投薬手段(14)の、拡大された同じく断面図である。
【図6】採取、収集及び分離手段とは無関係に示された複数の投薬手段(14)の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
これらの図は以下で詳細に記述される。
図1には、最も単純な実施例として、本発明による装置の個々の構成要素の配置が請求項1に従って示されている。採取手段(1)は採取された血液を少なくとも1つの収集及び分離手段(5)に導く。この収集及び分離手段では、最終製品として血液血清が所望されている場合、血液が凝固する。血液凝固の結果生じた血液血清は、少なくとも1つの収集及び分離手段(5)から少なくとも1つの供給ライン(6)を通って少なくとも1つの投薬手段(10)に移行する。好ましくは少なくとも1つの投薬手段(10)が開口手段(11)を備えており、この開口手段は、薬剤使用者が、投薬手段(10)を使用前に簡単に、その他の補助手段なしに開くことを可能にする。さらに、好ましくは少なくとも1つの投薬手段(10)がマーキング用装置(12)を備えており、このマーキング用装置により、恒久的で取り違えようのない印、例えば連続したシリアルナンバー又はバーコードを、投薬手段(10)の上に付けることができる。
【0029】
その他の有利な(図示していない)実施形態では、さらなる手段(例えば血漿を取得するための抗凝血剤、又は例えば取得した血液製剤又は例えば1つ又は複数の薬学的に許容できる物質を希釈するための希釈液)を使用してもよい。これらその他の手段の選択と配置は、所望されている血液製剤に合わせてあり、及び当業者には即座に明らかである。
【0030】
その他の特に好ましい(図示されていない)実施例は、採取手段(1)が少なくとも1つの収集及び分離手段(5)へ合流する直前に、例えば輪、結節、留め具、球、円錐、バルブ、カプセル化された破断部又は折り曲げ破断部の形状の遮断部を備えることを示している。血液を流入させるために、球、円錐、カプセル化された破断部又は折り曲げ破断部は、手作業で少なくとも1つの収集及び分離手段(5)の中に押し込まれ、そこから先にはこれが到達することはできない。なぜなら供給ライン(6)の横断面は、採取手段(1)の横断面よりも小さく形成されているからである。意図せずに又は予定よりも早く血液又は血液分画が少なくとも1つの収集及び分離手段(5)から供給ライン(6)内に入ることを阻止するために、同じ遮断部が有利には少なくとも1つの収集及び分離手段(5)から供給ライン(6)への移行部に設けられる。
【0031】
本発明による装置が、血液又は血液製剤の収集、保管、輸送及び投薬のための使用を許容された適切な材料を使用することで実行可能であることは、当業者には即座に明らかである。
【0032】
図2には、有利な実施例として、本発明による装置の個々の構成要素の配置が示されている。採取手段(1)は、採取された血液を少なくとも1つの収集及び分離手段(5)に導く。所望の血液製剤は、少なくとも1つの収集及び分離手段(5)から少なくとも1つの供給ライン(6)を通って任意の複数の投薬手段(14)に移行する。図2から図5に示された8つの投薬手段は、1つの例として理解するべきであり、決して投薬手段の可能数を限定しているわけではない。投薬手段が複数ある場合は、これが本発明に従い、最後尾の投薬手段(15)まで、投薬手段が完全に血液製剤で充填されることができる順序で配置され、この血液製剤は患者に使用されることが意図されている。さらに、複数の投薬手段の場合、これらは本発明に従い接続ブリッジ(13)によって接続され、投薬手段は1つのユニットを形成し、及び個別に取り外すことができる。
【0033】
また複数の投薬手段の場合、それぞれ個々の投薬手段が好ましくは開口手段(11)及びマーキング用装置(12)を備えている。
別の特に好ましい(図示していない)実施例は、さらに以下の変更を意図している。
−最初の供血血液約15mlを供血前試料採取の意味で、さらなる血液が少なくとも1つの収集及び分離手段(5)に導かれる前に、装置の分離可能な部分、例えば供血前試料採取を実施するための収集手段(2)中に導くための、採取手段(1)への分岐(例えば三方コック又はY字ピースの形で)の装備(輸血法ガイドライン参照)。この分岐は、特に有利にはいわゆる供血前試料採取バッグの形で形成されてよい。
−少なくとも2つの供給ラインを通る、複数の投薬手段(14)への並行した流入。それによって下からも上からも複数の投薬手段(14)を充填することができる。
【0034】
図3には、さらに有利な実施例として、本発明による装置の個々の構成要素の配置が示されている。血液の所望の血液製剤への分離を改善するため、すでに言及した手段に加えて、収集及び分離手段(5)と供給ライン(6)の間に少なくとも1つの追加の収集及び分離手段(7)が挿入される。採取手段(1)には、供血前試料採取を実施するための収集手段(2)が付け加えられ、この収集手段は化学的、血清学的、検査室診断的及び細菌性の各検査のための血液試料の獲得を、装置全体の無菌状態を危うくすることなく可能にする。特に有利には、採取手段(1)から供血前試料採取を実施するための収集手段(2)への合流口の直前で、例えば輪、結節、留め具、球、円錐、バルブ、カプセル化された破断部又は折り曲げ破断部の形状の遮断部が装備される(図中には示していない)。その上、最後尾の投薬手段(15)には末端の収容手段(16)が挿入され、この収容手段は投薬手段の充填を容易にする。
【0035】
別の特に好ましい(図示していない)実施例は、さらに以下の変更を意図している。
−例えば生成された血液製剤を希釈するため、血液凝固を阻止するため又は薬学的に許容できる物質を供給するための薬剤を混合するための、少なくとも1つの容器の装備。
−本発明による装置全体の中で、流路方向の液体の流れの、少なくとも1回の遮断を活性化又は非活性化するための装置の装備。
−少なくとも1つの収集及び分離手段(5)内の血液を少なくとも1つの投薬手段(10又は14)に割り当てることを保証するための、各分離箇所のそれぞれ前と後ろに位置する記録手段の装備。
−装置一式が無菌で納品されることの準備。
−装置一式が真空で納品されることの準備。
−装置一式が無菌の空気圧下で納品され、その結果滅菌されていない空気が静脈穿刺時に、採血の過程で入り込むことを不可能にすることの準備。その場合は、必然的に末端の収容手段(16)が空気のために流路の末端に設けられる。
−血液又は個々の血液製剤を濾過滅菌ユニット又は白血球フィルター又はその他の細胞フィルターに通せるようにするための準備。
【0036】
図4は、複数の投薬手段(14)の拡大詳細図である。ここでは投薬手段への所望の血液製剤の充填が斜線で示されている。矢印は、投薬手段(14)に本発明に従った方法で充填する際の血液製剤の流れ方向を示している。すべての投薬手段が完全に充填されるよう、液体の流れが末端の収容手段(16)に到達するだけの分量が、所望の血液製剤のそのような投薬手段に移行される。
【0037】
図5は、個々の投薬手段の間の液体貫流可能な接続を切り離し、少なくとも1つの供給ライン(6又は8)と末端の収容手段(16)を切り離した後の複数の投薬手段(14)の拡大詳細図である。投薬手段が所望の血液製剤で充填されていることは、斜線で示されている。これで投薬手段が一定分量に分けられた所望の血液製剤で充填され、患者への投薬の準備ができた状態になる。投薬手段は、個別に接続ブリッジ(13)から取り外すことができ、開口手段(11)で開くことができ、患者自身によって又は他の人員によって本発明に従った使用が可能になる。
【0038】
本発明による装置のための適切な材料は例えば以下であるが、これらに限定されることはない:
−ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン(PU、PUR)。
【0039】
適切な採取手段は例えば以下であるが、これらに限定されることはない:
−輸血針、中空針。
医薬品を血液又は血液製剤から生成するために手段(1、5又は10)と液体貫流可能に接続されている、装置の追加容器内の適切な薬剤は、例えば以下であるが、これらに限定されることはない:
−希釈溶液(例えば食塩水)、抗凝血剤(例えばEDTA)、その他の薬学的に許容できる物質(例えばBSS(登録商標)、平衡塩類溶液)。
【0040】
装置の手段(1、5、10)の間の適切な分離手段は例えば以下であるが、これらに限定されることはない:
−輪、結節、留め具、球、円錐、バルブ、カプセル化された破断部又は折り曲げ破断部など。
【0041】
プラスチックチューブ又はプラスチックパイプなどを無菌で分離するための適切な方法又はツールは例えば以下であるが、これらに限定されることはない:
−例えばニッパーのような圧接切断ツールを使った溶断。
−破断規定箇所での線熱溶接。
−分離前における、分離箇所の両端の凍結。
−超音波溶接。
【0042】
図6は、複数の投薬手段(14)の特に有利な配置の詳細図である。それぞれ個々の投薬手段はねじ蓋を備え、このねじ蓋は特に好ましくはルアーロックキャップの形で取り外し可能なロックキャップとして形成される。個々の投薬手段間の液体貫流可能な流入及び排出接続は、ねじ接続として形成され、各ねじ蓋の反対側に位置し、それによって点眼時に目を負傷する危険を排除している。複数の投薬手段は、採取手段及び収集及び分離手段とは無関係に見ることができる。好ましい一実施形態では、複数の投薬手段がそれぞれ寸法に合った収集及び分離手段に滅菌溶接によって接続され、その結果必要に応じて血清点眼液が適切な量だけ血液から取り出される。
【0043】
方法ステップの一覧:
1)供血者の静脈血管系に採取手段(1)によって、特に当業者には公知の静脈穿刺によって通路を確保した後、血液が少なくとも1つの収集及び分離手段(5)内に集められる。
その際以下の変更が可能である:
−希釈液、血液凝固防止剤又は薬学的に許容できる物質の添加。
−これら薬剤の装置内への装備。
−採血の完了後に採取手段(1)を本発明による装置の残り部分から無菌分離。
−供血前試料採取を実施するための収集手段(2)を、採血の完了後に本発明による装置の残り部分から無菌分離。
2)残っている血液から、凝固及び血液血清の形成により、血液の残った成分の上澄みとして血液血清を少なくとも1つの収集及び分離手段(5)内に分離。
その際以下の変更が可能である:
−周囲温度で、約1時間以上、好ましくは2時間以上凝固。
−特に有利には、発明による装置、少なくとも収集及び分離手段(5)を、遠心分離機にかけ、血液の残った成分からの血液血清の分離を加速し、改善する。
3)得られた血液血清を少なくとも1つの投薬手段(10)へ送る。
その際以下の変更が可能である:
−必要に応じて濾過滅菌ユニット又は白血球フィルター又は細胞フィルターを通して送る。
−別の薬学的に許容できる物質を添加、又は別の薬学的に許容できる物質を装置内に装備。
4)少なくとも1つの投薬手段(10)又は複数の投薬手段(14)を本発明による装置の残り部分から無菌分離。これによって患者が1つ又は複数の投薬手段を使用できるようになる。
【0044】
さらなるステップを必要に応じてこの後に続けることができ、これらのステップには、複数の投薬手段(14)を使用する場合には等分、無菌状態の検査(例えば供血前試料採取を実施するための収集手段(2)を装備することによって容易になる)、所望の血液製剤が充填された投薬手段を例えば約−20℃で冷凍保管、又は12時間から24時間以内に4℃で引き渡す(挙げられた時間内に使用されなかった場合は投与拒否する)保管、が含まれる。所望の血液製剤が充填された投薬手段の輸送も同様に可能である。
[符号の説明]
(1)採取手段
(2)供血前試料採取を実施するための収集手段
(5)収集及び分離手段
(6)供給ライン
(7)追加の収集及び分離手段
(8)追加の供給ライン
(10)投薬手段
(11)開口手段
(12)マーキング用装置
(13)接続ブリッジ
(14)複数の投薬手段
(15)最後尾の投薬手段
(16)末端の収容手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
採血及び血液から血液製剤を製造し、保管及び輸送するための装置であって、採取手段(1)及び少なくとも1つの収集及び分離手段(5)を備えた装置において、
少なくとも1つの投薬手段(10)を含み、採取手段(1)、収集及び分離手段(5)及び前記少なくとも1つの投薬手段(10)が液体貫流可能に互いに接続されていることを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記採取手段(1)、収集及び分離手段(5)及び前記少なくとも1つの投薬手段(10)が、好ましくはポリ塩化ビニル(PVC)又はポリウレタン(PU、PUR)などの滅菌可能な材料から成り、一体成型されるか又は複数の部分要素から成ることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記採取手段(1)、収集及び分離手段(5)及び前記少なくとも1つの投薬手段(10)が、少なくとも、少なくとも1つの投薬手段(10)を装置の残りから、装置内、少なくとも、少なくとも1つの投薬手段(10)内にある血液製剤の滅菌性を失うことなく、分離することが可能であるように形成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つの投薬手段(10)が開口手段(11)を備え、該開口手段が患者又は他の人員によってその他の補助手段なしに開口するために適していることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
複数の投薬手段(14)を備えていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記投薬手段(10又は14)が、投薬手段当たり最大400mlの容積を備え、好ましくは最大100mlの容積を備え、特に好ましくは最大10mlの容積を備え、及び最も特に好ましくは10ml未満の容積を備えていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記収集及び分離手段(5)と前記投薬手段(10、14)の間に追加の収集及び分離手段(7)を備えており、この追加の収集及び分離手段が血液分画を互いに分離するために及び個々の血液分画を先へ送るために適しているよう形成されていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
少なくとも前記収集及び分離手段(5)又は前記装置全体が、内容物の遠心分離がこれら内容物の滅菌性を失うことなく、すなわち基本的に収集及び分離手段(5)又は装置全体の壁を損傷することなく可能であるように形成され、それが可能な材料、好ましくはプラスチックから、ポリ塩化ビニル(PVC)又はポリウレタン(PU、PUR)などの材料から形成されていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
複数の投薬手段(14)がある場合に、これが直列に及びさらに交互に、容器形状に関して好ましくは長く形成された投薬手段(10、14)のそれぞれ上及び/又は下に、前記収集及び分離手段(5)からの内容物が該投薬手段から流出可能に形成されるか、又は並行して流出可能に形成されていることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記収集及び分離手段(5)又は前記追加の収集及び分離手段(7)からの内容物を流れ方向に少なくとも1つの投薬手段(10)内に送る場合、該少なくとも1つの投薬手段(10)の向こう側で及び該投薬手段と流体連通している末端の収容手段(16)が、空気又は/及び余った内容物を収容するために設けられており、又は複数の直列に流入する投薬手段(14)が流れ方向において最後尾の投薬手段(15)の後に末端の収容手段(16)が空気又は/及び余った内容物を収容するために備えられていることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記採取手段(1)に、供血前試料採取を実施するためのさらなる収集手段(2)が、好ましくは供血前試料採取バッグの形で備えられていることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記装置の液体貫流可能な要素の間、少なくとも収集及び分離手段(5)と少なくとも1つの投薬手段(10)との間に、少なくとも1回有効化及び無効化が可能な分離手段、好ましくは折り曲げ破断部を備えていることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
前記採取手段(1)と前記供血前試料採取を実施するための収集手段(2)との間、及び収集及び分離手段(5)と前記少なくとも1つの投薬手段(10)との間の、備えられた分離箇所の向こう側の両側に、それぞれこれらの要素のところに少なくとも1つの記録エリアが備えられ、又は例えば手段(2、5、10、14、15)の壁の切り欠きによって、好ましくは連続したシリアルナンバーの形で、特に好ましくはバーコードとしてすでに印を付けられており、それによって後から供血者の分類を少なくとも1つの投薬手段(10)で可能にすることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
前記装置が、例えば希釈又は血液凝固阻止又は別の薬学的に許容できる物質を使用する目的で、供血者血液から医薬品を製造するための薬剤を別の容器内に備えており、該容器が液体貫流可能に前記装置の前記手段(1、5、10)と接続されているか、又は前記手段(1、5、10)がそのような薬剤によって満たされて形成されていることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項に記載の装置。
【請求項15】
請求項1に従った装置内で採血及び血液から血液分画を製造する方法であって、以下のステップ:
1.収集及び分離手段(5)内への血液の収集
2.血液の少なくとも1つの血液製剤への分離、及び残りの血液分画の収集及び分離手段(5)内への分離
3.少なくとも1つの血液血清の、少なくとも1つの投薬手段(10)への送達
4.少なくとも1つの投薬手段(10)を請求項1に従った装置の残りから無菌分離
を備えることを特徴とする、方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つの血液製剤が、濾過滅菌ユニット又は白血球フィルター又は他の細胞フィルターを通って送られることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つの血液製剤の送達が、収集及び分離手段(5)の後ろの濾過滅菌ユニット又は白血球フィルター又は他の細胞フィルターを通して行われることを特徴とする、請求項15及び16に記載の方法。
【請求項18】
少なくとも1つの血液製剤が血清であり、血液の分離が、凝固及び血液の残った成分の上澄みとして血清が形成されることによって行われることを特徴とする、請求項15〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記血液製剤の分離が、請求項1に従った装置又は前記収集及び分離手段(5)によって行われることを特徴とする、請求項15〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
採血後に前記採取手段(1)が本発明による装置の残りから無菌で離されることを特徴とする、請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−527922(P2012−527922A)
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−512380(P2012−512380)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際出願番号】PCT/EP2010/057344
【国際公開番号】WO2010/136535
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(508159123)ユストゥス−リービッヒ−ウニヴェルジテート・ギーセン (3)
【Fターム(参考)】