血液量再配分によって心不全を治療するための医療用デバイス
肺水腫に関連した肺の体液状態についての第1の体液状態指標および肺以外の体液状態についての第2の体液状態指標は、肺水腫に関する警報の提供または治療の制御のために使用可能である。さらに、間欠的な心臓の血液量再配分療法は、心不全患者における心臓のコンディショニングを提供するために使用可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は血液量再配分によって心不全を治療するための医療用デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
心不全(HF)は、心臓の機能異常が身体の組織および臓器の不適切に低い灌流をもたらす、衰弱性の疾患である。HFの初期段階では、組織の適切な灌流を維持し、かつ心臓に対するストレスを緩和するために、多くの代償機構が用いられる。そのような機構のいくつかの例には、レニン‐アンギオテンシン‐アルドステロン系(RAAS)の活性化および神経制御を介した血液量再配分が挙げられる。HFが進行するにつれて、心臓機能が悪化する可能性があるだけでなく、代償機構自体も最終的には適応的でなくなりHFの症状に寄与し始める可能性がある。例えば、RAASの過活性化は重篤な心室リモデリングをもたらす可能性がある。特に重篤な種類の心不全はうっ血性心不全(CHF)であり、心臓の弱い拍出が、交感神経活動のような過剰に活動的な代償機構とともに、肺における体液の蓄積をもたらす可能性がある。
【0003】
肺水腫は、肺における腫脹および/または体液蓄積である。肺水腫は、CHFのうっ血症状のうちの1つに相当する。貧弱な心臓機能は肺からの流出低下をもたらし、これは、特に全身の臓器が収縮して全身から肺ループへとさらなる血液を再配分している場合、肺における血圧を上昇させる。肺循環内における圧上昇は、肺組織および肺胞の中への体液の漏出をもたらす可能性がある。これは、息切れのような重篤な呼吸器障害をもたらす可能性がある。息切れは、病院を訪れる非代償性CHF患者が有する最も多い症状である(〜89%)。
【0004】
優先権の主張
本願において、2009年7月27日に出願された米国仮特許出願シリアル番号第61/228,745号に対する優先権の利益が主張されており、前記出願の優先権の利益は本願において主張され、前記出願の全体が参照により本願に組込まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在の肺水腫治療の主流は、HF症状の悪化をもたらすのは総容量の過負荷であるという考えに基づいて、利尿治療を施すことによる全血量の低減を目指している。しかしながら多くの場合、総容量の過負荷は代償不全の原因ではないおそれがあり、したがって利尿剤はもはや最適な治療でない可能性があり、また腎機能の悪化のようなさらなる障害すら引き起こす可能性がある。
【0006】
本明細書は、とくに、肺水腫について警告を発するかまたは肺水腫の治療を制御するために使用することができる、肺水腫に関連した肺の体液状態を示す第1の体液状態指標および肺以外の体液状態を示す第2の体液状態指標について述べる。さらに、心不全患者のための心臓コンディショニング療法(cardiac conditioning therapy)について述べる。該コンディショニング療法は心臓の血液量再配分を含む。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施例1は移植式医療用デバイスについて述べる。この実施例において、該デバイスは、肺水腫に関連した肺の体液状態についての第1の体液状態指標をモニタリングするように構成された第1の体液状態モニタリング回路であって、第1の体液状態指標の増大は肺水腫に関連した肺の体液の増大と相関することを特徴とする、回路と;肺以外の体液状態
についての別個かつ異なる第2の体液状態指標をモニタリングするように構成された第2の体液状態モニタリング回路であって、第2の体液状態指標の増大は肺以外の体液の増大と相関することを特徴とする、回路と;第1および第2の体液状態モニタリング回路に連結されたコントローラであって、治療を制御するための治療制御信号を決定するために第1および第2の体液状態指標に関する情報を使用するように構成されたコントローラと;治療制御信号を受信するためにコントローラに連結され、治療制御信号に応答して、肺の体液状態または肺以外の体液状態のうち少なくとも1つを調整するための治療を提供するように構成された治療回路と、からなる。
【0008】
実施例2において、実施例1のデバイスは、内臓器官に関連した体液状態を表す内臓インピーダンス計測値をモニタリングするように構成された第2の体液状態モニタリング回路を任意選択で含んでなる。
【0009】
実施例3において、実施例1〜2のうち1つ以上のデバイスは、動脈血圧、内臓インピーダンス、骨格筋インピーダンス、または皮膚インピーダンスのうち少なくとも1つをモニタリングするように構成された第2の体液状態モニタリング回路を任意選択で含んでなる。
【0010】
実施例4において、実施例1〜3のうち1つ以上のデバイスは、指定された閾値を下回る第2の体液状態指標の減少、指定された閾値を上回る第1の体液状態指標の増大、医療用デバイスによって発せられる心不全代償不全の警告、患者が発した警告、またはユーザ入力、のうち少なくとも1つに応答して治療の提供を始動するように構成されたコントローラを任意選択で含んでなる。
【0011】
実施例5において、実施例1〜4のうち1つ以上のデバイスは、肺以外の体液状態を調整するために神経修飾療法を提供するように構成された神経修飾回路であって、該神経修飾療法は交感神経系または副交感神経系のうち少なくとも一方の刺激または抑制を含むことを特徴とする神経修飾回路、を任意選択で含んでなる。
【0012】
実施例6において、実施例1〜5のうち1つ以上のデバイスは、局所的血管拡張療法または局所的血管収縮療法のうち少なくとも一方を提供するように構成された治療回路であって、局所的血管拡張療法または局所的血管収縮療法のうち少なくとも一方は、神経修飾療法、薬物療法、または血管血流制御療法のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする治療回路、を任意選択で含んでなる。
【0013】
実施例7において、実施例1〜6のうち1つ以上のデバイスは、少なくとも2つの別個の局所血管領域に、その2つの別個の局所領域の間における体液状態のバランスを調整するために局所的血管拡張療法または局所的血管収縮療法のうち少なくとも一方を同時に送達するように構成された治療回路を任意選択で含んでなる。
【0014】
実施例8において、実施例1〜7のうち1つ以上のデバイスは、第1の指定された閾値を上回る第1の体液状態指標の増大;第2の指定された閾値を下回る第1の体液状態指標の減少;第3の指定された閾値を上回る第2の体液状態指標の増大;または、第4の指定された閾値を下回る第2の体液状態指標の減少、のうち少なくとも1つに応答して治療を縮小または停止するように構成されたコントローラを任意選択で含んでなる。
【0015】
実施例9において、実施例1〜8のうち1つ以上のデバイスは、指定された期間後に治療を停止するために第1および第2の体液状態指標に関する情報を使用するように構成されたコントローラを任意選択で含んでなる。
【0016】
実施例10において、実施例1〜9のうち1つ以上のデバイスは、対象者の心臓の信号を検出するように構成された心臓信号検出回路を任意選択で含んでなり、コントローラは該心臓信号検出回路に連結され、かつ対象者の心臓周期の指定された部分と同期化された治療の提供を始動するように構成されている。
【0017】
実施例11において、実施例1〜10のうち1つ以上のデバイスは、対象者の姿勢を検出するように構成された姿勢感知回路を任意選択で含んでなり、コントローラは、治療を制御する治療制御信号を決定するために(1)第1および第2の体液状態指標に関する情報、ならびに(2)対象者の姿勢に関する情報、を使用するように構成されている。
【0018】
実施例12において、実施例1〜11のうち1つ以上のデバイスは、対象者の身体活動レベルを検出するように構成された活動感知回路を任意選択で含んでなり、コントローラは、治療を制御する治療制御信号を決定するために(1)第1および第2の体液状態指標に関する情報、ならびに(2)対象者の活動レベルに関する情報、を使用するように構成されている。
【0019】
実施例13は方法について述べる。この実施例において、該方法は、肺水腫に関連した肺の体液状態についての第1の体液状態指標をモニタリングすることと;肺以外の体液状態についての別個かつ異なる第2の体液状態指標をモニタリングすることと;第1および第2の体液状態指標に関する情報を使用し、肺の体液状態または肺以外の体液状態のうち少なくとも一方を調整するために治療を制御することと、を含んでなる。
【0020】
実施例14において、実施例13の方法は、内臓器官に関連した体液状態を表す内臓インピーダンス計測値をモニタリングすることを任意選択で含んでなる。
実施例15において、実施例13〜14のうち1つ以上の方法は、肺領域および対象とする内臓領域の両方を横切る第1のインピーダンス・ベクトルを計測することと;肺領域を横切るが対象とする内臓領域は横切らない第2のインピーダンス・ベクトルを計測することと;第1のインピーダンス・ベクトルから第2のインピーダンス・ベクトルを減じて内臓インピーダンスを決定することと、を任意選択で含んでなる。
【0021】
実施例16において、実施例13〜15のうち1つ以上の方法は、動脈血圧、内臓インピーダンス、骨格筋インピーダンス、または皮膚インピーダンスのうち少なくとも1つをモニタリングすることを任意選択で含んでなる。
【0022】
実施例17において、実施例13〜16のうち1つ以上の方法は、指定された閾値を下回る第2の体液状態指標の減少によって治療の提供を始動することを任意選択で含んでなる。
【0023】
実施例18において、実施例13〜17のうち1つ以上の方法は、肺以外の体液に関連した領域において交感神経系または副交感神経系のうち少なくとも1つを刺激または抑制するように神経修飾を制御することを任意選択で含んでなる。
【0024】
実施例19において、実施例13〜18のうち1つ以上の方法は、神経修飾療法、薬物療法、または血管血流制御療法のうち少なくとも1つを提供することにより、対象者の局所血管領域における血管拡張または血管収縮のうち少なくとも1つを制御することを任意選択で含んでなる。
【0025】
実施例20において、実施例13〜19のうち1つ以上の方法は、少なくとも2つの別個の局所血管領域において、その2つの別個の局所領域の間における体液状態のバランスを調整するために血管拡張または血管収縮のうち少なくとも1つを同時に制御することを
任意選択で含んでなる。
【0026】
実施例21において、実施例13〜20のうち1つ以上の方法は、第1の指定された閾値を上回る第1の体液状態指標の増大;第2の指定された閾値を下回る第1の体液状態指標の減少;第3の指定された閾値を上回る第2の体液状態指標の増大;または、第4の指定された閾値を下回る第2の体液状態指標の減少、のうち少なくとも1つに応答して治療を縮小または停止することを任意選択で含んでなる。
【0027】
実施例22において、実施例13〜21のうち1つ以上の方法は、指定された期間後に治療を停止するために第1および第2の体液状態指標に関する情報を使用することを任意選択で含んでなる。
【0028】
実施例23において、実施例13〜22のうち1つ以上の方法は、治療の送達を対象者の心臓周期の指定された部分と同期化することを任意選択で含んでなる。
実施例24において、実施例13〜23のうち1つ以上の方法は、患者の姿勢を検出することを任意選択で含んでなり、治療の制御は、肺の体液状態または肺以外の体液状態のうち少なくとも1つを調整するために、(1)第1および第2の体液状態指標に関する情報、ならびに(2)患者の姿勢に関する情報、を使用することを含んでなる。
【0029】
実施例25において、実施例13〜24のうち1つ以上の方法は、患者の身体活動レベルを検出することを任意選択で含んでなり、治療の制御は、肺の体液状態または肺以外の体液状態のうち少なくとも1つを調整するために、(1)第1および第2の体液状態指標に関する情報、ならびに(2)患者の身体活動レベルに関する情報、を使用することを含んでなる。
【0030】
実施例1Aは装置について述べる。この実施例では、該装置は、内臓領域に神経修飾を送達するように構成された、神経修飾回路と;神経修飾回路に連結されたコントローラ回路であって、指定された期間の間、該指定期間のうち少なくとも一時期に心臓の血液量を変調するのに十分な量で内臓領域に神経修飾を送達するように神経修飾回路を制御するように構成されたコントローラ回路と、を含んでなる。
【0031】
実施例2Aでは、実施例1Aの装置は、内臓領域に神経修飾を送達する神経修飾回路を制御するコントローラ回路に心臓血液量状態の指標を提供する心臓血液量状態モニタリング回路を任意選択で含んでなる。
【0032】
実施例3Aでは、装置の実施例2Aは、内臓領域に神経修飾を送達する神経修飾回路を制御するコントローラ回路に内臓血液量状態の指標を提供する内臓血液量状態モニタリング回路を任意選択で含んでなる。
【0033】
実施例4Aでは、実施例2A〜3Aのうち1つ以上の装置は、内臓領域に神経修飾を送達する神経修飾回路を制御するコントローラ回路に、心臓内インピーダンスに基づいた心臓血液量状態の指標を提供する心臓内インピーダンス計測値モニタリング回路を任意選択で含んでなる。
【0034】
実施例5Aでは、実施例4Aの装置は、内臓領域に神経修飾を送達する神経修飾回路を制御するコントローラ回路に、拍動インピーダンスに基づいた心臓血液量状態の指標を提供するように構成された、心臓内インピーダンス計測値モニタリング回路を任意選択で含んでなる。
【0035】
実施例6Aでは、実施例2A〜5Aのうち1つ以上の装置は、心臓血液量状態の指標を
閾値と比較するように構成されたコンパレータ回路を任意選択で含んでなり、コントローラは、心臓血液量状態の指標が第1の値の閾値を下回る場合に内臓領域への神経修飾の量を調整するように構成されている。
【0036】
実施例7Aでは、実施例6Aの装置は、心臓血液量状態の指標が第1の値の閾値を下回る場合に内臓領域への交感神経刺激の量を増大するように構成されたコントローラを任意選択で含んでなる。
【0037】
実施例8Aでは、実施例6A〜7Aのうち1つ以上(one of more)の装置は、心臓血
液量状態の指標が第1の値の閾値を下回る場合に内臓領域への交感神経抑制の量を減少するように構成されたコントローラを任意選択で含んでなる。
【0038】
実施例9Aでは、実施例6A〜8Aのうち1つ以上の装置は、心臓血液量状態の指標が第1の値の閾値を下回る場合に内臓領域への副交感神経刺激の量を減少するように構成されたコントローラを任意選択で含んでなる。
【0039】
実施例10Aでは、実施例6A〜9Aのうち1つ以上の装置は、心臓血液量状態の指標が第1の値の閾値を下回る場合に内臓領域への副交感神経抑制の量を増大するように構成されたコントローラを任意選択で含んでなる。
【0040】
実施例11Aでは、実施例6Aの装置は、心臓血液量状態の指標が第2の値の閾値を上回る場合に内臓領域への神経修飾の量を調整するように構成されたコントローラを任意選択で含んでなる。
【0041】
実施例12Aでは、実施例11Aの装置は、心臓血液量状態の指標が第2の値の閾値を上回る場合に内臓領域への交感神経刺激の量を減少するように構成されたコントローラを任意選択で含んでなる。
【0042】
実施例13Aでは、実施例11A〜12Aのうち1つ以上の装置は、心臓血液量状態の指標が第2の値の閾値を上回る場合に内臓領域への交感神経抑制の量を増大するように構成されたコントローラを任意選択で含んでなる。
【0043】
実施例14Aでは、実施例11A〜13Aのうち1つ以上の装置は、心臓血液量状態の指標が第2の値の閾値を上回る場合に内臓領域への副交感神経刺激の量を増大するように構成されたコントローラを任意選択で含んでなる。
【0044】
実施例15Aでは、実施例11A〜14Aのうち1つ以上の装置は、心臓血液量状態の指標が第2の値の閾値を上回る場合に内臓領域への副交感神経抑制の量を減少するように構成されたコントローラを任意選択で含んでなる。
【0045】
実施例16Aでは、実施例2A〜15Aのうち1つ以上の装置は、内臓領域に神経修飾を送達する神経修飾回路を制御するコントローラ回路に、肺インピーダンスに基づいた心臓血液量状態の指標を提供する、経胸的インピーダンス計測値モニタリング回路を備えた心臓血液量状態モニタリング回路を任意選択で含んでなり;コントローラは経胸的インピーダンスの減少に応答して内臓領域への神経修飾の量を調整するように構成されている。
【0046】
実施例17Aでは、実施例16Aの装置は、内臓領域への交感神経刺激の量の減少;内臓領域への交感神経抑制の量の増大;内臓領域への副交感神経刺激の量の増大;または、内臓領域への副交感神経抑制の量の減少、のうち少なくとも1つを行うように構成されたコントローラを任意選択で含んでなる。
【0047】
実施例18Aでは、実施例1A〜17Aのうち1つ以上の装置は、心臓血液量を増大させるために局所的な内臓血管収縮療法を提供するように構成された神経修飾回路を任意選択で含んでなる。
【0048】
実施例19Aでは、実施例1A〜18Aのうち1つ以上の装置は、心臓血液量を減少させるために局所的な内臓血管拡張療法を提供するように構成された神経修飾回路を任意選択で含んでなる。
【0049】
実施例20Aでは、実施例1A〜19Aのうち1つ以上の装置は、心拍数モニタリング回路;心拍出量モニタリング回路;心筋収縮能モニタリング回路;動脈血圧モニタリング回路;または静脈血圧モニタリング回路、のうち少なくとも1つを任意選択で含んでなり、コントローラは、第1の指定された閾値を上回る心拍数の増加;第2の指定された閾値を下回る心拍出量の減少;第3の指定された閾値を下回る心筋収縮能の計測値の低下;第4の指定された閾値を下回る動脈血圧の低下;または、第5の指定された閾値を上回る静脈血圧の上昇、のうち少なくとも1つに応答して内臓領域への神経修飾の量を調整するように構成されている。
【0050】
実施例21Aでは、実施例20Aの装置は、内臓領域への交感神経刺激の量の減少;内臓領域への交感神経抑制の量の増大;内臓領域への副交感神経刺激の量の増大;または、内臓領域への副交感神経抑制の量の減少、のうち少なくとも1つを行うように構成されたコントローラを任意選択で含んでなる。
【0051】
実施例22Aでは、実施例1A〜21Aのうち1つ以上の装置は、コントローラに連結されたペーシング回路を任意選択で含んでなり;コントローラは、心腔の一部を伸展させるために、固有の収縮に対して非同期化されているかまたは固有の収縮から十分にオフセットされたペーシングパルスを生じるようにペーシング回路を制御するように構成されている。
【0052】
実施例23Aでは、実施例1A〜22Aのうち1つ以上の装置は、心房性催不整脈状態センサを任意選択で含んでなり、コントローラは、心房性催不整脈状態の検出に応答して内臓領域への神経修飾の送達を制御するように構成されている。
【0053】
実施例24Aでは、実施例23Aの装置は、不整頻拍治療法に伴って、例えば細動除去または不整頻拍治療ペーシングに伴って内臓領域に神経修飾を送達するように構成された神経修飾回路を任意選択で含んでなり;神経修飾は、副交感神経刺激の量の増大、副交感神経抑制の量の減少、交感神経抑制の量の増大、または交感神経刺激の量の減少、のうち少なくとも1つを含む。
【0054】
実施例25Aは方法について述べる。この実施例において、該方法は、内臓領域に神経修飾を送達することと;指定された期間の間、該指定期間のうち少なくとも一時期に心臓血液量を変調するのに十分な量で内臓領域への神経修飾の送達を制御することと、を含んでなる。
【0055】
実施例26Aでは、実施例25Aの方法は、心臓血液量状態をモニタリングすることと;モニタリングされた心臓血液量状態を使用して、心臓血液量状態の指標を提供することと;心臓血液量状態の指標を使用して、内臓領域への神経修飾の送達を制御することと、を任意選択で含んでなる。
【0056】
実施例27Aでは、実施例26Aの方法は、内臓血液量状態をモニタリングすることと
;モニタリングされた内臓血液量状態を使用して、内臓血液量状態の指標を提供することと;内臓血液量状態の指標を使用して、内臓領域への神経修飾の送達を制御することと、を任意選択で含んでなる。
【0057】
実施例28Aでは、実施例26A〜27Aのうち1つ以上の方法は、心臓内インピーダンスをモニタリングすることと、モニタリングされた心臓内インピーダンスを使用して心臓内インピーダンスに基づいた心臓血液量状態の指標を提供することと、心臓内インピーダンスに基づいた心臓血液量状態の指標を使用して、内臓領域への神経修飾の送達を制御することと、を任意選択で含んでなる。
【0058】
実施例29Aでは、実施例28Aの方法は、拍動インピーダンスに基づいた心臓血液量の指標を提供することを任意選択で含んでなる。
実施例30Aでは、実施例26A〜29Aのうち1つ以上の方法は、心臓血液量状態の指標を閾値と比較することと;心臓血液量状態の指標が第1の値の閾値を下回る場合に内臓領域への神経修飾の量を調整することと、を任意選択で含んでなる。
【0059】
実施例31Aでは、実施例30Aの方法は、心臓血液量状態の指標が第1の値の閾値を下回る場合に内臓領域への交感神経刺激の量を増大させることを任意選択で含んでなる。
実施例32Aでは、実施例30A〜31Aのうち1つ以上の方法は、心臓血液量状態の指標が第1の値の閾値を下回る場合に内臓領域への交感神経抑制の量を減少させることを任意選択で含んでなる。
【0060】
実施例33Aでは、実施例30A〜32Aのうち1つ以上の方法は、心臓血液量状態の指標が第1の値の閾値を下回る場合に内臓領域への副交感神経刺激の量を減少させることを任意選択で含んでなる。
【0061】
実施例34Aでは、実施例30A〜33Aのうち1つ以上の方法は、心臓血液量状態の指標が第1の値の閾値を下回る場合に内臓領域への副交感神経抑制の量を増大させることを任意選択で含んでなる。
【0062】
実施例35Aでは、実施例30Aの方法は、心臓血液量状態の指標が第2の値の閾値を上回る場合に内臓領域への神経修飾の量を調整することを任意選択で含んでなる。
実施例36Aでは、実施例35Aの方法は、心臓血液量状態の指標が第2の値の閾値を上回る場合に内臓領域への交感神経刺激の量を減少させることを任意選択で含んでなる。
【0063】
実施例37Aでは、実施例35A〜36Aのうち1つ以上の方法は、心臓血液量状態の指標が第2の値の閾値を上回る場合に内臓領域への交感神経抑制の量を増大させることを任意選択で含んでなる。
【0064】
実施例38Aでは、実施例35A〜37Aのうち1つ以上の方法は、心臓血液量状態の指標が第2の値の閾値を上回る場合に内臓領域への副交感神経刺激の量を増大させることを任意選択で含んでなる。
【0065】
実施例39Aでは、実施例35A〜38Aのうち1つ以上の方法は、心臓血液量状態の指標が第2の値の閾値を上回る場合に内臓領域への副交感神経抑制の量を減少させることを任意選択で含んでなる。
【0066】
実施例40Aでは、実施例26A〜39Aのうち1つ以上の方法は、経胸的インピーダンス計測値をモニタリングすることと;経胸的インピーダンス計測値を使用して肺インピーダンスに基づいた心臓血液量状態の指標を提供することと;経胸的インピーダンスの減
少に応答して内臓領域に送達される神経修飾の量を調整することと、を任意選択で含んでなる。
【0067】
実施例41Aでは、実施例40Aの方法は、内臓領域への交感神経刺激の量を減少させること;内臓領域への交感神経抑制の量を増大させること;内臓領域への副交感神経刺激の量を増大させること;または内臓領域への副交感神経抑制の量を減少させること、のうち少なくとも1つを任意選択で含んでなる。
【0068】
実施例42Aでは、実施例25A〜41Aのうち1つ以上の方法は、心臓血液量を増大させるために局所的な内臓血管収縮療法を提供することを任意選択で含んでなる。
実施例43Aでは、実施例25A〜42Aのうち1つ以上の方法は、心臓血液量を減少させるために局所的な内臓血管拡張療法を提供することを任意選択で含んでなる。
【0069】
実施例44Aでは、実施例25A〜43Aのうち1つ以上の方法は、心拍数、心拍出量、心筋収縮能、動脈血圧、または静脈血圧のうち少なくとも1つをモニタリングすることと;第1の指定された閾値を上回る心拍数の増加、第2の指定された閾値を下回る心拍出量の減少、第3の指定された閾値を下回る心筋収縮能の計測値の低下、第4の指定された閾値を下回る動脈血圧の低下、または、第5の指定された閾値を上回る静脈血圧の上昇、のうち少なくとも1つに応答して内臓領域への神経修飾の量を調整することと、を任意選択で含んでなる。
【0070】
実施例45Aでは、実施例44Aの方法は、内臓領域への交感神経刺激の量を減少させること;内臓領域への交感神経抑制の量を増大させること;内臓領域への副交感神経刺激の量を増大させること;または、内臓領域への副交感神経抑制の量を減少させること、を任意選択で含んでなる。
【0071】
実施例46Aでは、実施例25A〜45Aのうち1つ以上の方法は、心腔の一部を伸展させるために、固有の収縮に対して非同期化されているかまたは固有の収縮から十分にオフセットされた心臓ペーシングパルスを送達することを任意選択で含んでなる。
【0072】
実施例47Aでは、実施例25A〜46Aのうち1つ以上の方法は、心房性催不整脈状態を検出することと;心房性催不整脈状態の検出に応答して内臓領域に神経修飾を送達することとを任意選択で含んでなる。
【0073】
実施例48Aでは、実施例47Aの方法は、不整頻拍治療法に伴って、例えば細動除去または不整頻拍治療ペーシングに伴って内臓領域に神経修飾を送達することを任意選択で含んでなり;該神経修飾は、副交感神経刺激の量の増大、副交感神経抑制の量の減少、交感神経抑制の量の増大、または交感神経刺激の量の減少、のうち少なくとも1つを含む。
【0074】
以上の概観は、本特許出願の主題の概観を提供することが意図されたものである。この概観は、本発明の排他的または網羅的な説明を提供するようには意図されていない。詳細な説明は、本特許出願に関するさらなる情報を提供するために含まれている。
【0075】
図面は必ずしも原寸に比例するものではなく、図中、類似の数字は異なる図面において同様の構成要素を示している。異なる添字を有する類似の数字は、同様の構成要素の異なる実例を表わす。図面は、限定するためではなく例示のために、本明細書中において議論される様々な実施形態を概説している。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】心臓および内臓器官に繋がっているリードワイヤを備えた心臓機能管理デバイスを含む医療用デバイスの例を示す図。
【図2】医療用デバイスの一部分の例を様々な電極への接続の概略図とともに例証するブロック図。
【図3】信号処理部の一部分の例を概略的に例証するブロック図。
【図4A】インピーダンスに由来する肺および内臓の体液状態の信号を計測するため、かつ対象とする内臓領域に神経修飾療法またはその他の治療法を提供するための、様々な電極構成の例を概略的に示す概要図。
【図4B】インピーダンスに由来する肺および内臓の体液状態の信号を計測するため、かつ対象とする内臓領域に神経修飾療法またはその他の治療法を提供するための、様々な電極構成の例を概略的に示す概要図。
【図4C】インピーダンスに由来する肺および内臓の体液状態の信号を計測するため、かつ対象とする内臓領域に神経修飾療法またはその他の治療法を提供するための、様々な電極構成の例を概略的に示す概要図。
【図4D】インピーダンスに由来する肺および内臓の体液状態の信号を計測するため、かつ対象とする内臓領域に神経修飾療法またはその他の治療法を提供するための、様々な電極構成の例を概略的に示す概要図。
【図4E】インピーダンスに由来する肺および内臓の体液状態の信号を計測するため、かつ対象とする内臓領域に神経修飾療法またはその他の治療法を提供するための、様々な電極構成の例を概略的に示す概要図。
【図5】肺の体液状態の指標および肺以外の体液状態の指標の両方を使用することにより、肺水腫の治療を制御する方法の例を示すチャート。
【図6】心臓血液量を変調するために内臓領域に神経修飾を送達することにより心臓コンディショニング療法を提供する方法の例を概略的に示すチャート。
【図7】心臓血液量状態の指標を使用して心臓コンディショニング療法を提供する方法の例を示すチャート。
【発明を実施するための形態】
【0077】
詳細な説明
本発明者らは、数ある中でも特に、HF患者における肺水腫は、過剰な肺血液量を、1つ以上の標的とする高体液容量の全身血管床、例えば内臓器官、骨格筋、または皮膚の血管床へと制御可能に再配分することにより、緩和される可能性があることを認めた。HF患者において肺水腫をもたらす機構は、全血量の増大ではなく、肺へ向かう体液の再配分であると考えられている。過剰な肺血液量の肺からの再配分は、例えば、全身小動脈の対象を絞った局所的血管拡張、または、対象を絞った局所的な静脈容量の増大もしくは静脈抵抗の増大によって、達成することができる。
【0078】
図1は、心臓機能管理システム100の例を示す。この例では、システム100は、数ある中でも特に、心臓機能管理デバイス(「CFM」)105、ならびに、デバイス105と、生体の一部、例えば心臓115との間で信号を通信するためのリードワイヤ(「リード」)110を含むことができる。デバイス105の例には、徐脈および抗頻脈ペースメーカー、電気除細動器、細動除去器、組合せ型ペースメーカー/細動除去器、心臓再同期化デバイス、神経修飾デバイス、薬物送達デバイス、または、心臓血管機能のモニタリングもしくは例えば心臓115のための心血管療法を提供することが可能な任意の他の心律動管理装置を挙げることができる。システム100は、他の構成要素、例えば、デバイス105と通信することが可能な局所もしくは遠隔のプログラマ、または肺動脈圧センサのような追加の付属デバイスを備えることができる。
【0079】
システム100は、デバイス105と、内臓器官に関連した血管またはリンパ管192との間で信号を通信するための第2のリード112を含むことができる。内臓器官は、概して、脾臓、肝臓、膵臓、胃、胆のう、小腸、および大腸のうち1つ以上などの内臓の腹
部器官として理解されうる。内臓器官は、概して、「内臓領域」とも呼ばれる、5番目および12番目の胸部肋骨の高さの間(「T5」〜「T12」)に位置している。
【0080】
一例において、システム100は、生物体内に、例えばヒト患者の胸部もしくは腹部、または他所に移植可能または部分的に移植可能であってよい。一例において、システム100の1つ以上の部分(例えばデバイス105)はヒト患者の体外に配置されてもよい。図中の例では、リード110の一部は右心室に配置されているが;リード110の任意の他の配置も用いることが可能である。例えば、リード110は心房内または他所に配置されてもよい。図中の例では、リード112の一部は、内臓器官に関連した血管またはリンパ管192の中に配置されているが;内臓領域または他の領域の内部へのリード112の任意の他の配置も使用可能である。一例において、リード110および112には、市販の単極または双極のペーシング用リードが挙げられる。システム100は、例えばリード110および112に加えて、またはリード110および112の代替として、例えば心臓115、内臓領域(splanchic region)、または他所の中または周囲に適切に配置された1つ以上の他のリードまたは電極(例えばリード付き電極またはリードレス電極)を含むことができる。リードレスの電気刺激電極の一例は、ヘースティングズ(Hastings)らの米国特許出願公開第2009/0018599号、表題「CARDIAC STIMULATION USING LEADLESS ELECTRODE ASSEMBLIES」に記載されており、前記特許文献の開示内容は全体が
参照により本願に組込まれる。
【0081】
一例において、システム100は、例えば体液状態を示す胸部または内臓のインピーダンスを感知するための少なくとも4つの電極を含むことができる。4つの電極を使用するインピーダンス感知の例は、本特許出願の譲受人に譲渡されたハウク(Hauck)らの米国
特許第5,284,136号、表題「DUAL INDIFFERENT ELECTRODE PACEMAKER」に記載されており、前記特許文献の開示内容はインピーダンス感知システムの説明を含む全体が本願に組込まれる。本発明のシステムおよび方法は、様々な数の電極(例えば2個もしくは3個の電極、または4個を超える電極)の使用を含むことができる。一例では、多重導体リード110の第1の導体は、チップ電極120(例えば、心臓115の右室心尖に配置されたもの)のような第1の電極をデバイス105に電気的に結合することができる。多重導体リード110の第2の導体は、リング電極125のような第2の電極をデバイス105に独立に電気的に結合することができる。一例において、多重導体リード112の第1の導体は、チップ電極196(例えば、T12より上の内臓領域に配置されたもの)のような第1の電極をデバイス105に電気的に結合することができる。多重導体リード112の第2の導体は、リング電極194(例えば、T5より下の内臓領域に配置されたもの)のような第2の電極をデバイス105に独立に電気的に結合することができる。一例において、デバイス105は、チタンのような導電性金属から形成された、空気を通さないように密封されたハウジング130を備えることができる。ハウジング130(「ケース」または「缶」とも呼ばれる)は、適切な絶縁体、例えばシリコーンゴムによって、「ケース」または「缶」電極135と呼ばれる第3の電極を形成するウィンドウを除き、その表面全体をほぼ覆われていてもよい。一例において、例えばリード110および112を受承するために、ヘッダ140がハウジング130に載置されてもよい。ヘッダ140は、成型プラスチックのような絶縁性材料から形成可能である。ヘッダ140は、例えばリード110および112を受承し、かつリード110および112の導体をデバイス105に電気的に結合するための、少なくとも1つのレセプタクルを含むことができる。ヘッダ140は第4の電極を含んでもよく、該電極は不関電極145と呼ぶことができる。
【0082】
図2は、デバイス105の一部について、様々な電極への接続の概略図と共に概要を示している。デバイス105は、励振器250のような電気刺激源を備えることができる。励振器250は、ストローブされた一連の電流パルスまたは他の計測値刺激のような電気的興奮信号を、心臓115に(例えばリング電極125とチップ電極120との間に、ま
たは電流パルスを送達するのに適した任意の他の電極構成を使用して)、および内臓領域に(例えば、リング電極194とチップ電極196との間に、または(our)電流パルス
を送達するのに適した任意の他の電極構成を使用して)、送達することができる。励振器250は、コントローラ265から1つ以上のクロック信号または他の制御信号を受信するように構成可能である。励振器250によって提供される興奮信号に応答して、応答信号が、信号処理部255によって(例えばチップ電極120と不関電極145との間で、チップ電極196と不関電極145との間で、または任意の他の適切な電極構成で)感知されうる。一例において、信号処理部255によって感知される応答信号は、経胸的(例えば胸部または胸郭の一部を横切る)インピーダンスまたは内臓(例えば内臓器官を横切る)インピーダンスを表す電圧であってよい。
【0083】
経胸的インピーダンスを計測するための手法の一例は、本特許出願の譲受人に譲渡されたスターマン(Stahmann)らの米国特許第7,387,610号、表題「THORACIC IMPEDANCE DETECTION WITH BLOOD RESISTIVITY COMPENSATION」に記載されており、前記特許文献の開示内容は、インピーダンスの計測のための、例えば経胸的インピーダンスまたは内臓インピーダンスを計測する本願の適用のための手法の説明を含む全体が本願に組込まれる。
【0084】
一例において、インピーダンスに由来する体液状態の信号は、経胸的(胸部または胸郭を横切る)インピーダンスまたは内臓(内臓器官または内臓領域を横切る)インピーダンスを計測することにより得ることができる。例えば、経胸的インピーダンスは、肺水腫に関連する肺の体液状態を示す第1の体液状態指標を得るために計測可能であり、第1の体液状態指標の増大は肺水腫に関連した肺の体液増大と相関する。第1の体液状態指標は、例えば、励振器250、信号処理部255、ならびに電極120および125を備えた第1の体液状態モニタリング回路によってモニタリング可能である。さらに、内臓インピーダンスは、内臓の体液状態を示す第2の体液状態指標を得るために計測可能であり、第2の体液状態指標の増大は内臓の流体の増大と相関する。第2の体液状態指標は、例えば、励振器250、信号処理部255、ならびに電極194および196を備えた第2の体液状態モニタリング回路によってモニタリング可能である。
【0085】
コントローラ265は、治療回路270によって提供される治療を制御するために第1および第2の体液状態指標に関する情報を使用するように構成されうる。一例において、コントローラ265は、治療回路270によって提供される治療を制御するために、第1および第2の体液状態指標に関する情報に加えて、または該情報の代わりに、他の情報を使用するように構成されてもよい。そのような情報の例には、心不全代償不全の警告、感知された生理学的パラメータ、患者が発した警告、またはユーザ入力が挙げられる。治療回路によって提供される治療は、第1または第2の体液状態のうち少なくとも一方を調整することができる。治療回路270によって提供することができる治療法の例には、神経修飾療法、薬物療法、または血管血流制御療法が挙げられる。図2に示される例において、治療回路270は心臓機能管理デバイス105の内部に含められてよい。他の例では、治療回路270は別個の移植デバイスまたは体外デバイスの一部であってもよい。治療回路270が別個のデバイスの一部である場合、デバイス105は治療回路と通信することができる。これは、ヒトの体内または身体の上の2つのデバイスの間の直接通信を含み、そのような通信は、ヒトの体内において、例えば、説明に役立つ実例としては電磁結合、超音波通信、または電気導体としての体組織の使用によって実行可能である。追加として、または別例として、移植された2つのデバイスの間の、または移植されたデバイスと体外デバイスとの間の間接通信であって、例えば通信を実施するための仲介物として局所または遠隔の外部デバイスを使用することによる間接通信が含まれてもよい。実例となる例には、移植されたデバイス105と、別個に移植されたデバイスの中にある治療回路との間の通信であって、例えば、ボストン・サイエンティフィック社(Boston Scientific Co
rp.)(カルディアック・ペースメーカーズ社(Cardiac Pacemakers, Inc.))のLAT
ITUDE(R)システムの使用による通信があり、該システムは、ある対象者の移植型医療用デバイス105からの情報を自動的に収集し、該情報を、例えば通信ネットワーク294を介して安全なリモートコンピュータ292に通信接続可能な外部ローカルインタフェース290を介して、その対象者の別の移植型または携帯型個人用医療用デバイスに伝達することができる。
【0086】
図2はセンスアンプ275の一例を示しており、1つ以上のセンスアンプを使用して、下記に説明されるように、例えば治療の送達を対象者の心臓周期の指定された部分と同期化するために、対象者の体内で心臓の電気的な活動をモニタリングすることができる。さらに、図2はテレメトリトランシーバ285を示しており、該テレメトリトランシーバは、コントローラ265からの情報(例えば第1および第2の体液状態指標に関する情報、または治療の制御に関する情報)を受信し、該情報を例えば外部ローカルインタフェース290との一方向または双方向の無線通信リンクによって伝達するように、構成可能である。ある例において、外部ローカルインタフェース290はさらに、例えば共有の通信ネットワークまたはコンピュータネットワーク294を介して、無線により、またはその他の方法で、外部の遠隔インタフェース292と一方向または双方向に通信することができる。遠隔インタフェース292は、警告またはアラームを提供することによって家庭モニタリングまたは医師もしくは他の医療従事者による対象者の遠隔モニタリングを可能にするように、構成されうる。
【0087】
図3は、信号処理部255の1つ以上の部分の例を概略的に示している。信号処理部255は、アナログ信号処理回路300およびデジタル信号処理回路305を備えることができる。アナログ信号処理回路300の前置増幅器310(プリアンプまたはレシーバとも呼ばれる)の入力部は、例えば励振器250によって提供される上記刺激に応答した信号の受信のために、不関電極145ならびにチップ電極120および196に電気的に結合されうる。励振器250および信号処理部255により時分割多重スキームが使用されて、励振信号が所望のベクトル(例えば経胸的ベクトルおよび経内臓ベクトル)に対して時間的にオーバーラップせずに提供される(また、応答の計測値が所望のベクトルから得られる)ことにより、肺領域および内臓領域からの個別の入力を可能にするようになっていてもよい。別例では、例えば肺および内臓のインピーダンス信号の別々のモニタリングまたは処理のために、別個の信号処理部255が提供されてもよい。アナログ信号処理回路300は、例えば前置増幅器310の出力を受信してローパスフィルタ335に出力信号を提供する、デモジュレータ315を備えることができる。ローパスフィルタ335からの出力信号はアナログ‐デジタル(A/D)コンバータ325によって受信されうる。
【0088】
一例において、A/Dコンバータ325は、およそ1ボルトの入力範囲を有する12ビットの逐次比較形スイッチドキャパシタA/Dコンバータとして実装可能である。一例において、A/Dコンバータ325は、励振器250によって送達された一連の電流パルスに対応する1つの12ビット・ワードを提供する。A/Dコンバータ325の様々な実装が、本発明のシステムおよび方法において使用するのに適切となりうる。
【0089】
一例において、ローパスフィルタ335には、A/Dコンバータ325からの12ビットのデジタル出力信号を受信することができる単極の無限インパルス応答(IIR)デジタルフィルタを挙げることができる。ローパスフィルタ335は、そのローパス臨界周波数およそ0.1Hzを上回る周波数成分を減衰または除去することができる。ローパスフィルタ335の多くの他の異なる例も本発明のシステムおよび方法において使用するのに適切となりうる。ローパスフィルタ335は、ローパスフィルタ335のローパス臨界周波数を上回る信号の周波数成分を、好都合に減衰することができる。減衰される周波数には、心臓115が各心臓周期の間に収縮するときの心臓115の中の血液量の変化に起因
する心臓の拍出信号があり、これは経胸的インピーダンス信号の成分として現われる。一例において、フィルタ335のローパス臨界周波数は、患者の心拍数に適応的に基づいたものであってよい。一例において、ローパス臨界周波数は、患者から得られるいかなる呼吸数信号にも依存しなくてよい。一例において、ローパスフィルタ335はチェビシェフフィルタを使用することができる。一例において、ローパスフィルタ335は楕円フィルタを含むことができる。一例において、ローパスフィルタ335は従来の直接形構造ではなく、状態空間構造を使用することができる。状態空間構造は、係数量子化および丸め雑音の影響をさらに低減することができる。そのような状態空間構造の一例は、レランドB.ジャクソン(Leland B. Jackson)「Digital Filters and Signal Processing」2nd ed., pp. 332-340, Kluwer Academic Publishers, Boston, Mass.に記載されており、前記
文献の開示内容は参照により本願に組込まれる。
【0090】
一例において、デジタル信号処理回路305は、例えばマイクロプロセッサにより実行される一連の命令として、コントローラ265の内部に含められてもよい。一例において、デジタル信号処理回路305は、本明細書中に記載されたデジタル信号処理タスクの実施のために設けられた別個に実装されたハードウェア部分を含むことができる。体液状態計算モジュール340はローパスフィルタ335からの出力信号を受信可能であり、下に説明されるように、得られる体液状態指標をノード260においてコントローラ265に提供することができる。一例において、体液状態計算モジュール340は、任意の適切なマイクロプロセッサ上で実行される一連の命令として実装可能である。一例において、体液状態計算モジュール340は、インピーダンス由来の体液状態情報に基づいて体液状態指標を計算することができる任意の他のハードウェア構成またはソフトウェア構成として実装されてもよい。
【0091】
一例において、体液状態計算モジュール340は、例えばローパスフィルタを通した肺または内臓のインピーダンス信号をそれぞれの閾値と比較するための、コンパレータを含むことができる。この比較の出力は、それぞれの体液状態の指標を提供するために使用することが可能であり、例えば特定の領域のインピーダンスが指定された閾値よりも低下すると該領域における体液の過剰を示す。一例において、指定の閾値は、正常状態(例えば、浮腫なし)の時に対象者から得られるような長期的またはその他のインピーダンスのベースライン値を使用して指定可能である。例えば、指定の閾値は、そのような正常状態の値からのオフセットとして指定されてもよい。一例において、指定の閾値は、異常状態の間、例えば代償不全の発現時、または関連する代償不全の発現に先行する期間中に得られた値を使用して指定されてもよい。
【0092】
一例において、長期の平均(またはその他のベースライン代表値)と短期の平均(またはより急性の代表値)との間の違いまたは比は、体液状態の表示として使用されてもよいし、閾値と比較されるかまたは他の方法で信号処理され、その結果として体液状態の表示が得られてもよい。
【0093】
一例において、体液状態を決定するためにヒストグラム手法が使用されてもよい。そのようなヒストグラム手法の一例は、ハットルスタッド(Hatlestad)らの米国特許出願公
開第2009/0069708号明細書、表題「HISTOGRAM-BASED THORACIC IMPEDANCE MONITORING」に記載されており、前記特許文献は、体液状態を決定するためのヒストグラ
ム手法の使用についての議論含む全体が参照により本願に組み込まれる。
【0094】
図4A〜4Eは、例えばインピーダンス由来の肺および内臓の体液状態の信号の計測のため、または対象とする内臓領域などに対して神経修飾もしくは他の治療法を提供するために使用することができる様々な電極構成の例を概略的に例証する概略図である。図4A〜4Eはそれぞれ、図1に関して上述されたような缶電極135および不関電極145を
含むCFMデバイス105を例証する。図4Aはさらに、図1に関して上記に記載されたような、チップ電極120およびリング電極125を備えた血管内心臓リード110、ならびにチップ電極196およびリング電極194を備えた内臓リード112も示している。
【0095】
図4Aの例では、第1の対象領域(「ROI1」)は心臓115とデバイス105との間に示されている。ROI1は、例えば電極120、125、135および145を使用して、例えば第1の体液状態指標を提供するために使用される肺の体液状態をモニタリングするために、肺水腫に関連した肺の体液のインピーダンス由来の計測値を計測することが可能なエリアを表わす。第2の対象領域(「ROI2」)は、内臓の電極194および196とデバイス105との間に示されている。ROI2は、例えば電極194、196、135、および145を使用して、例えば第2の体液状態指標を提供するために使用される内臓の体液状態をモニタリングするために、内臓のインピーダンスを計測することが可能なエリアを表わす。図4Aは、電極402および404を備えたリード400を含む。リード400およびその関連の電極は、内臓領域に神経刺激療法のような治療を提供するために使用可能であり、該治療は、下記に述べるように、肺の体液状態の情報または内臓の体液状態の情報のうち一方または両方に応答して制御可能である。
【0096】
図4Bは、内臓領域の近位端または近位端付近に(例えば、よりデバイス105に接近して)位置する電極194と、内臓領域の遠位端または遠位端付近に(例えば、デバイス105からより遠くに)位置する電極196とを備えた内臓リード112の例を示している。この場合、ROI2は電極194と196との間にある。一例において、内臓インピーダンスは、例えば励振信号(例えば電流)の送達および応答信号(例えば電圧)の計測の両方を行うための、電極194および196を使用して計測可能であり、該応答信号からインピーダンスを決定可能である。リード400ならびにその関連電極402および404は、内臓領域に神経刺激療法のような治療を提供するために使用可能である。
【0097】
図4Cは、リード112Aおよびリード112Bのような2つの内臓リードの例を示している。リード112Aは電極194を備え、リード112Bは電極196を備えている。図4CのROI2は図4Bと同じとなりうる。内臓インピーダンスは、図4Bに関して上記に記載されたように、例えば電極194および196を使用することによって計測可能である。しかしながら、図4Cでは電極194および196は異なるリード上に示されている。リード400ならびにその関連電極402および404は、内臓領域に神経刺激療法のような治療を提供するために使用可能である。
【0098】
図4Dは、4つの異なる電極194、406、408、および196を備えた内臓リード112の例を示している。電極194および506は内臓領域の近位端または近位端付近に(例えば、よりデバイス105に接近して)位置し、電極408および196は内臓領域の遠位端または遠位端付近に(例えば、デバイス105からより遠くに)位置することができる。ROI2は電極406と408との間に位置することができる。この例において、内臓インピーダンスは、例えば、電極194と196との間に電流を提供し、次いで電極406と408との間の応答電圧を感知することによって、計測可能である。リード400ならびにその関連電極402および404は、内臓領域に神経刺激療法のような治療を提供するために使用可能である。
【0099】
図4Eは、リード112Aおよびリード112Bのような2つの内臓リードの例を示している。リード112Aは電極194および406を備え、リード112Bは電極196および408を備えている。ROI2は、図4Dに関して上記に記載されたように、電極406と408との間に位置することができる。この例では、内臓インピーダンスは、例えば電極194と196との間に電流を提供し、次いで電極406と408との間の応答
電圧を感知することによって、計測可能である。リード400ならびにその関連電極402および404は、内臓領域に神経刺激療法のような治療を提供するために使用可能である。
【0100】
図5は、肺の体液状態の指標および肺以外の体液状態の指標の両方の使用により肺水腫の治療を制御する方法の例を示すチャートである。502では、肺水腫に関連した肺の体液状態を示す第1の体液状態指標がモニタリングされる。第1の体液状態指標は、経胸的インピーダンス計測値から導くことが可能である。例えば、インピーダンス由来の体液計測値を使用する第1の体液状態指標のモニタリングは、例えば、励振器250、信号処理部255、ならびに電極120および125を備えた第1の体液状態モニタリング回路の使用によって実施可能である。第1の体液状態指標のモニタリングは、肺水腫に関連した肺の体液を、例えば胸水のような他の疾患状態または病因に関連した肺の体液から識別することを含みうる。肺水腫に関連した肺の体液のみをモニタリングし、胸水に関連した肺の体液をモニタリングしないために、生理学的情報、患者の症状情報、および姿勢情報のような要素を使用して、本特許出願の譲受人に譲受されたスターマン(Stahmann)らの米国特許出願公開第2008/0108907号、表題「DETECTION OF PLEURAL EFFUSION USING TRANSTHORACIC IMPEDANCE」に記載されているようにして肺水腫に関連した体液を
特異的に検出かつモニタリングすることが可能である。前記特許文献の開示内容は全体が参照により本願に組込まれる。
【0101】
第1の体液状態指標をモニタリングするためにインピーダンス由来の計測値を使用することに加えて、または代替として、肺動脈圧計測値を第1の体液状態指標のモニタリングに使用することができる。肺動脈圧の上昇は、肺水腫に起因する肺の体液増大に概ね相当し、肺動脈圧の低下は肺の体液減少に概ね相当する。肺動脈圧は、例えば、本特許出願の譲受人に譲受されたスターマン(Stahmann)らの米国特許第7,566,308号、表題「METHOD AND APPARATUS FOR PULMONARY ARTERY PRESSURE SIGNAL ISOLATION」に開示さ
れているもののような、肺動脈圧(PAP)信号を感知するために肺動脈内に配置される個別に移植可能な血管内PAPセンサによって計測可能であり、前記特許文献は、PA内に配置された移植可能な圧力センサを使用してPAP信号を感知するという開示を含む全容が参照により本願に組み込まれる。他の例では、PAP信号を感知するために他の圧力センサ構成が使用されてもよい。
【0102】
504では、肺以外の体液状態を示す第2の体液状態指標がモニタリングされる。第2の体液状態指標のモニタリングは、例えば、励振器250、信号処理部255、電極194および196を備えた第2の体液状態モニタリング回路の使用などによって実施可能である。第2の体液状態のモニタリングは、動脈血圧、内臓インピーダンス、骨格筋インピーダンス、または皮膚インピーダンスのうち少なくとも1つをモニタリングすることを含みうる。内臓インピーダンスのモニタリングには、例えば、内臓器官または内臓領域に関連した体液状態を表すインピーダンス由来またはその他の計測値のモニタリングを伴う。
【0103】
内臓インピーダンスは、(1)直接的に、内臓領域において計測されてもよいし、または(2)間接的に、例えば内臓および胸部の領域の両方を横切って計測されてから、胸部領域を横切るインピーダンスの別個の計測値が減算されてもよい。ROI2における内臓インピーダンスは、図4Dに示された電極506および508を使用して直接計測可能である。内臓インピーダンスは、(図4Aに示されるような励磁を送達し応答を計測する4電極の例における)電極194、196、135、および145を使用するような肺および内臓の第1のインピーダンスの計測と、例えば(図4Aに示されるような同様の4電極の例における)電極120、125、135および145の使用によるROI1の対応する肺単独の第2のインピーダンスの計測とによって、間接的に計測可能である。肺および内臓の第1のインピーダンスと肺単独の第2のインピーダンスとの間の差をとることによ
って、内臓インピーダンスが間接的に得られる。
【0104】
506では、第1および第2の体液状態指標に関する情報を使用して、ユーザへの警告もしくは自動プロセスの提供、または肺水腫を治療するための治療の制御がなされうる。該治療は、第1の体液状態(例えば肺の体液状態)または第2の体液状態(例えば肺以外の体液状態)のうち少なくとも一方の調整を目的とすることができる。一例において、第1および第2の体液状態指標に関する情報を使用した治療の制御にコントローラ265が使用されうる。一例において、コントローラ265は、第1および第2の体液状態指標に関する情報に加えて、他の情報、例えばHF代償不全の警告情報または生理的パラメータに関する情報を使用して治療を制御するように構成されてもよい。一例において、コントローラ265は、例えば治療が慢性HFの対象者に間欠的な方式で所定期間にわたって提供される場合のように、第1および第2の体液状態指標に関する情報を使用せずに治療を制御するように構成されてもよい。
【0105】
治療の制御には、肺水腫に関連した肺の体液状態指標の増大に応答して治療を始動または調整することを含みうる。治療の制御は、指定された閾値を下回る内臓の体液状態指標の減少に応答して治療法を始動または調整することを含みうる。内臓の体液状態指標の減少は、肺水腫に起因する肺の体液の増加など、対象者における不適当な体液分布を示す可能性がある。治療は、常時提供されてもよいし、所定の間隔で提供されてもよい。肺または内臓の体液状態指標によって肺水腫が示される場合、治療はより高頻度で提供されうる。更に、治療には、神経修飾療法、薬物療法、または血管血流制御療法が挙げられる。そのような治療は、対象者の局所的血管領域における血管拡張または血管収縮を制御することによって、肺の体液状態または肺以外の体液状態(例えば内臓の体液状態)のうち少なくとも1つを調整するために使用されうる。
【0106】
神経修飾療法は、心臓に直接的な電気刺激を提供して該電気刺激から直接もたらされる脱分極を喚起するのではなく、自律神経系の機能を変調する。自律神経系(ANS)は「不髄意」器官を調節する一方、随意(骨格)筋の収縮は体性運動神経によって制御されている。不髄意器官の例には呼吸器官および内臓器官があり、血管および心臓が含まれる。多くの場合、ANSは不髄意の反射的な方式で機能して、例えば、腺を調節し、皮膚、眼、胃、腸および膀胱の筋肉を調節し、心筋および血管周囲の筋肉を調節する。
【0107】
ANSは交感神経系と副交感神経系とを含んでいる。交感神経系は、緊急事態に対するストレスおよび「戦うか逃げるか反応」に関連している。他の作用の中でもとくに、「戦うか逃げるか反応」は、血圧増大(例えば血管収縮の誘発による)および心拍数増大をもたらして骨格筋の血流を増大させ、消化作用を減少させて「闘争または逃走」のためのエネルギーを提供する。副交感神経系は、休養および「休んで消化する反応」に関連し、他の作用の中でもとくに、血圧低下(例えば血管拡張の誘発による)および心拍数低下をもたらし、消化作用を上昇させてエネルギーを蓄える。ANSは正常な体内機能を維持し、体性神経系と協働する。
【0108】
神経の刺激は、神経連絡を刺激または増大させるために使用されてもよいし、神経連絡を抑制または減少させるために使用されてもよい。神経連絡を刺激する神経刺激の一例は、低周波数信号(例えば20Hz〜50Hz程度の範囲内)を使用することができる。神経連絡を抑制する神経刺激の一例は、高周波数信号(例えば120Hz〜150Hz程度の範囲内)を使用することができる。神経連絡を刺激または抑制するための他の方法も使用可能である。
【0109】
一例において、神経修飾療法は、内臓器官に神経を分布させる上腹部の2つの大きな神経集団のうちの1つである、腹腔神経節に提供されてもよい。腹腔神経節は自律神経系の
交感神経部門の一部であり、ほとんどの消化管に神経を分布させる。高周波の神経刺激は、CFMデバイスから下大静脈を通って腹腔神経節へと走るリードに接続された電極を介するようにして、腹腔神経節に提供されてもよい。そのような神経刺激は、腹腔神経節の交感神経系における神経連絡を抑制して、内臓器官内およびその周囲の血管床の血管拡張をもたらすことができる。これらの高キャパシタンスの内臓血管床の血管拡張は、血液量の再配分をもたらし、内臓領域への血流を増大させる結果として肺領域における血液量を減少させるようになっていると考えられる。肺領域における血液量減少は、ひいては肺水腫に関連した肺の体液の減少を引き起こす可能性がある。
【0110】
一例において、神経修飾療法は、脊髄の神経に、例えば内臓器官に分布する神経が位置しうる場所である第5よび第6胸椎(「T5」〜「T6」)の高さに、直接提供されてもよい。神経刺激は、CFMデバイスから鎖骨下静脈および胸管を通って脊髄のT5/T6領域へと走るリードに接続された電極を介するようにして、脊髄に提供されてもよい。脊髄は交感神経および副交感神経の両方を含む。副交感神経を刺激するための低周波神経刺激、または交感神経を抑制するための高周波神経刺激の使用は、内臓器官内およびその周囲の血管床の血管拡張をもたらすことができる。上述のように、内臓の血管床の血管拡張は肺の血管床からの血液の再配分をもたらし、これにより肺水腫を縮小すると考えられている。
【0111】
神経修飾は、より低い高さで、例えば第4腰椎(「L4」)の高さで脊髄に提供されてもよい。L4の高さにおいて脊髄から出る神経には、脚部の骨格筋に分布する神経が挙げられる。内臓の血管床と同様に、骨格筋の血管床は概して高キャパシタンスであり、血流の大規模な増加が可能となっている。したがって、脚部の骨格筋の血管床の血管拡張を引き起こす神経修飾を使用して、上述のようにして血流の再配分を介して肺水腫を治療することができると考えられる。
【0112】
更に、神経修飾は、例えば食道神経叢またはその下方における迷走神経の刺激または抑制によるなど、副交感神経系の内臓神経に対して提供されてもよい。神経修飾は、神経カフを介して、または経静脈的もしくは経リンパ管的な刺激/抑制を介して提供されてもよい。神経修飾は、交感神経系の緊張を変調するための副腎神経の刺激または抑制により提供されてもよい。圧受容器の刺激または抑制は、神経修飾を提供する別の例である。
【0113】
一例において、局所的な血管拡張または血管収縮をもたらす治療が、少なくとも2つの別個の局所的血管領域において同時に制御されてもよい。これは、2つの別個の局所領域の間の体液バランスの調整をもたらすことができる。例えば、局所的な血管収縮療法が脚部の骨格筋に提供される一方で、局所的な血管拡張療法が内臓領域に提供されてもよい。血液量のそのような再配分は、肺の血管床の血液量減少をもたらすことによって、肺水腫を緩和すると考えられる。更に、その2つの別個の局所領域を、例えば一方の領域で血管拡張、他方の領域で血管収縮を引き起こすことにより、同時に標的とすることで、一つの領域に対する標的療法の結果生じるおそれのある全身血圧の低下または上昇を防止することができる。
【0114】
一例において、肺の体液状態または肺以外の体液状態のうち少なくとも一方を調整するための治療の制御は、該治療を抑制することを含みうる。例えば、治療は所定期間提供された後で抑制されてもよい。治療は、指定された閾値を下回る肺の体液状態指標の減少に応答して低減または抑制されてもよい。この場合、肺水腫は改善済みなので、治療はもはや必要でないことになろう。治療は、指定された閾値を上回る肺の体液状態指標の増大に応答して抑制されてもよい。この場合、肺水腫を有効に治療できなかったので該治療は中止されることになろう。治療は、指定された閾値を上回る肺以外の体液状態指標の増大に応答して縮小または停止されてもよい。この場合、血液は既に肺以外の領域に再配分され
ており、その領域へのさらなる再配分は末梢性浮腫またはその他の有害事象をもたらすことも考えられる。最後に、治療は、指定された閾値を下回る肺以外の体液状態指標の減少に応答して停止されてもよい。この場合、肺水腫が解消されたかどうかにかかわらず、さらなる処置は臓器の低血圧または低灌流をもたらすことも考えられる。指定された閾値を越える上記体液状態の増減の任意の組合せを使用して治療を終了することが考えられる。
【0115】
一例において、肺の体液状態または肺以外の体液状態のうち少なくとも1つを調整するための治療の制御は、治療の送達を対象者の心臓周期の指定された部分と同期化することを含むことができる。例えば、治療の送達は対象者の心臓周期の収縮期の部分と同期化されてもよい。これはHFの患者において後負荷を軽減する助けとなり、その結果、弱った心筋にかかっているストレスをより少なくすることになる。同様に、治療の送達は、対象者の心臓周期の他の部分、例えば心拡張期、またはP波、T波、もしくはQRS群を含む特定の波形の出現と同期化されることも考えられる。
【0116】
治療は急性の方式で提供されてもよいし、慢性の方式で提供されてもよい。一例において、急性の治療は、第1および第2の体液状態指標、代償不全の警告、患者が発した警告、または医師の入力に関する情報に応答して始動されうる。例えば、代償不全の警告は、各々が肺水腫の存在を示唆する可能性のある、肺の体液インピーダンスの減少、肺動脈圧の上昇、または内臓インピーダンスの上昇に基づいて、CFMデバイスによって発せられうる。代償不全の警告の他の例には、心拍数情報、呼吸速度情報、呼吸タイミング情報、血圧情報、肺一回呼吸量情報、体重情報、胸内インピーダンス情報(例えば、体液の蓄積を評価するための情報、呼吸関連のパラメータをモニタリングするための情報、または心臓関連のパラメータをモニタリングするための情報)、心音のタイミング情報、心音の大きさ情報(例えばS3の心音の大きさ)または他の情報(例えば生理学的情報に関するユーザのクエリに対する応答)、に基づくものが挙げられる。HF代償不全の警告は、本特許出願の譲受人に譲受されたハットルスタッド(Hatlestad)らの米国仮特許出願第61
/096,364号、表題「CHRONICALLY IMPLANTED ABDOMINAL PRESSURE SENSOR FOR CONTINUOUS AMBULATORY ASSESSMENT OF RENAL FUNCTIONS」に記載されているように、腹腔
内の圧力センサから得られた情報に基づくことが可能であり、前記特許文献の全開示内容は参照により本願に組込まれる。HF代償不全を検出してHF代償不全の警告を発するために使用可能な生理学的な徴候および症状についてのさらなる議論は、本特許出願の譲受人に譲受されたSiejkoらの米国仮特許出願第60/098,858号、表題「SYSTEM AND
METHOD FOR DETECTION OF HF DECOMPENSATION BASED ON SIGNS AND SYMPTOMS」に見出すことが可能であり、前記特許文献の全開示内容は参照により本願に組込まれる。一例において、急性の治療は、既に発せられている代償不全の警告に応答して提供されるように制御されてもよい。これは、対象者が急性のHF代償不全を示している場合に限り治療が提供されることを確実にする助けとなりうる。急性の治療は、例えば最大24時間、または対象者の第1および第2の体液状態指標もしくは他の生理的パラメータがベースラインに戻るまで、常時送達されうる。
【0117】
治療は慢性の方式で送達されてもよい。一例において、慢性の治療は、代償不全の警告が指定された先行期間内に発せられていない場合にのみ提供されてもよい。このことは、慢性の治療が、医師による応急手当を必要とする可能性のある急性患者に対してではなく、慢性HFの患者に提供されるのみであることを確実にする助けとなる。慢性の治療には、例えば、1日当たり15分間提供される治療のような間欠治療が挙げられる。慢性の治療を制御するために第1および第2の体液状態指標に関する情報を使用することに加えて、患者のパラメータに関する他の情報を使用して治療を制御することもできる。例えば、対象者の姿勢を、本特許出願の譲受人に譲受されたワング(Wang)らの米国特許第7,471,290号、表題「POSTURE DETECTION SYSTEM」に記載されているようにして、姿勢感知装置を使用して検出することが可能であり、前記特許文献の開示内容は全体が参照に
より本願に組込まれる。治療は、一例では、対象者が臥位にある場合にのみ提供されるように制御されうる。臥位は、鉛直から規定の度数(例えば65度)をなして背が倒された角度として決定可能である。肺水腫のHF患者は一般に、肺が体液で一杯であり呼吸が困難になっているため臥位に耐えることができない。従って、急性HFまたは不安定なHFの患者は、数個の枕を使用して眠る場合もあれば、立位で眠る場合もあり、これは肺循環または肺のうち少なくともいずれかに貯留する体液の量を制限する助けとなる。したがって、対象者が臥位の場合にのみ提供されるように治療を制御することは、この治療が慢性HFに罹患している対象者にのみ使用され、即時入院を必要とする可能性のあるHFの急性増悪および肺水腫の対象者には用いられないことを確実にする方法となりうる。さらに、対象者が臥位の場合にのみ提供されるように治療を制御することは、重力が該治療によって誘導される血液再配分の妨げになるのを防止するのにも有用となりうる。
【0118】
姿勢に加えて、患者の身体活動レベルを、第1および第2の体液状態指標に関する情報と共に使用して、慢性の治療が制御されてもよい。例えば、対象者の身体活動レベルが加速度計を用いて検出されてもよい。治療は、一例においては、対象者の身体活動レベルが指定された閾値を下回る場合にのみ提供されるように制御されてもよい。これは、一例においては、患者の安静時または就寝中に治療が提供されるのを確実にする助けとなりうる。患者の安静時または就寝中に治療を提供することは、血液量の再配分の妨げになることも考えられる重力の変化または代謝要求の変化を回避するために有用となりうる。患者がいつ眠っているかを測定するために、睡眠検出器が備えられてもよい。睡眠検出器の一例は、カルディアック・ペースメーカーズ・インコーポレイテッド(Cardiac Pacemakers, Inc.)に譲渡されたカールソン(Carlson)らの米国特許出願シリアル番号第09/80
2,316号、表題「CARDIAC RHYTHM MANAGEMENT SYSTEM USING TIME-DOMAIN HEART RATE VARIABILITY INDICIA」に記載されており、前記特許文献は、睡眠検出器の説明を含む
全体が参照により本願に組み込まれる。睡眠検出器の別の例は、カルディアック・ペースメーカーズ・インコーポレイテッドに譲渡されたハットルスタッド(Hatlestad)らの米
国特許出願シリアル番号第2004/0073128号、表題「DETECTION OF CONGESTION FROM MONITORING PATIENT RESPONSE TO RECUMBENT POSITION」に記載されており、前記特許文献は全体が参照により本願に組み込まれる。
【0119】
急性または慢性の治療は第1および第2の体液状態指標を使用してモニタリングされてもよい。したがって、図5に示されるように、第1および第2体液状態指標は、例えばその治療が肺水腫を治すように作用しているか否かを評価するために、該治療の提供または制御の後に継続してモニタリングされてもよい。さらに、治療は警告センサのフィードバックまたは患者のフィードバックによってモニタリングされてもよい。
【0120】
心臓コンディショニングなどのためのさらなる実施例
別の適用としては、例えば間欠周期の心臓血液量再配分により提供可能な、心臓コンディショニング療法を挙げることができる。本発明者らは、心臓と、その他の高体液容量の全身血管床、例えば内臓器官、骨格筋、または皮膚の血管床との間の短周期の血流再配分がHF患者にとって有益な可能性があることを認めた。
【0121】
心臓血液量の一時的増加は心筋層の伸展において有用となり得る。心筋の伸展は、例えば、心房からの心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)および心室からの脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)の放出を誘導することにより、治療上の利益をもたらすことができる。ANPは、血圧上昇および血液量増大に応答して血管拡張および利尿を引き起こすことができるホルモンである。ANPは、例えば、虚血事象の間または虚血事象後に生じる可能性のある心筋層の肥厚および線維化(「リモデリング」と呼ばれることが多い)を抑制する助けとなりうる。ANPおよびBNPは、レニン‐アンギオテンシン‐アルドステロン系(RAAS)を抑制することにより適応的でない心臓リモデリングを防止また
は抑制することができる、とも考えられている。したがって、ANPおよびBNPは、心臓リモデリングを抑制するだけでなく心臓に対する血液量過負荷のストレスを低減することにより、HF患者に有益となる可能性がある。
【0122】
本発明者らは、心臓における一時的な血液量過剰を作り出すことにより、例えば心臓の前負荷もしくは後負荷または両方を増大させることにより、ANPおよびBNPの放出が増大されてその結果心筋層の伸展を引き起こす可能性があることを認めた。心臓への血液の一時的な再配分は、例えば、全身の小動脈の対象を絞った局所的血管収縮、または対象を絞った局所的な静脈キャパシタンスの低下もしくは静脈抵抗の低下によって達成可能である。これらの対象を絞った血管反応は、例えば上述の神経修飾に類似しているような局所的な神経修飾によって達成されうる。一例において、一時的な血液再配分療法は、1日当たり約15分間、例えば1日当たり5分間を3回として施用可能である。
【0123】
図1に示したCFMデバイス105に類似の移植式医療用デバイスは、上述の心臓コンディショニング療法を提供するために使用可能である。一例において、電極120または125に類似の4個以上の電極は、心臓内、例えば心臓115の右心室内に位置付けられた多重導体リード110に配置されうる。T5とT12との間、かつ電極194と196との間の内臓領域に配置される多重導体リード112は、図1に関して上述されるように構成可能である。
【0124】
デバイス105は、図2に関する上記の説明と同じように構成可能である。一例において、信号処理部255によって感知される応答信号は、心臓内(例えば心臓の少なくとも一部を横切る)インピーダンスまたは内臓の(例えば内臓器官の少なくとも一部を横切る)インピーダンスを表わす電圧であってよい。心臓内インピーダンスを計測するための手法の一例は、本特許出願の譲受人に譲渡されたチタック(Citak)らの米国特許第4,7
73,401号、表題「PHYSIOLOGIC CONTROL OF PACEMAKER RATE USING PRE-EJECTION INTERVALS AS THE CONTROLLING PARAMETER」に記載されており、前記特許文献の開示内容
は、心臓内インピーダンスを計測するための手法の説明を含む全体が本願に組込まれる。
【0125】
一例において、インピーダンスに由来する心臓血液量状態の指標は、例えば心臓内の(心臓内部の)インピーダンスの計測によって得ることができる。例えば、心臓内インピーダンスは、心臓血液量状態についての心臓血液量状態指標を得るために計測されてもよく、心臓血液量状態指標の増大は心臓の血液量の増加と相関する。一例において、インピーダンスに由来する心臓血液量状態の指標は、心臓内インピーダンスの成分である拍出インピーダンスの計測によって得ることができる。拍出インピーダンスは心臓周期における心臓内の血液量の変化を表す。拍出インピーダンスは、例えば心臓内インピーダンスの最高計測値と最低計測値との間の差をとることにより、心臓内インピーダンスから導き出すことが可能である。一例において、インピーダンスに由来する心臓血液量状態の指標は、例えば肺のインピーダンスに基づいた心臓血液量状態の指標を提供するようにして、経胸的インピーダンスを計測することにより得ることができる。経胸的インピーダンスは図3に関して上記に説明されたように計測可能である。
【0126】
心臓血液量状態の指標は、心臓血液量状態モニタリング回路によってモニタリング可能であり、該回路は、例えば、励振器250、信号処理部255、ならびに電極120および125のような電極を備えることができる。さらに、内臓の血液量が、内臓血液量状態についての内臓血液量状態指標を得るために計測されてもよく、内臓血液量状態指標の増大は内臓の血液量の増加と相関する。内臓血液量状態指標は、内臓血液量状態モニタリング回路によってモニタリング可能であり、該回路は、例えば、励振器250、信号処理部255、ならびに電極194および196のような電極を備えることができる。
【0127】
コントローラ265は、一例において、治療回路270によって提供される治療を制御するために、心臓血液量状態の指標もしくは内臓血液量状態の指標、または両方に関する情報を使用するように構成可能である。治療回路270によって提供される治療は、心臓血液量状態または内臓血液量状態のうち一方または両方を一時的に調整することができる。治療回路270によって提供されうる治療の一例には、上述したものに類似の、内臓領域に提供される神経修飾療法が挙げられる。治療回路270は、局所的な内臓の血管収縮をもたらし、ひいては内臓血液量を減少させて心臓血液量を増加させることが可能な神経修飾を提供することができる。治療回路270は、局所的な内臓の血管拡張をもたらし、ひいては内臓血液量を増加させて心臓血液量を減少させることが可能な神経修飾を提供することもできる。
【0128】
一例において、コントローラ265は、治療回路270によって提供される治療を制御するために、心臓および内臓血液量状態の指標に関する情報に加えて、または該情報の代わりに、他の情報を使用するように構成されてもよい。そのような情報の例には心拍数、心拍出量、心筋収縮能、動脈血圧、および静脈血圧が挙げられる。これらの生理学的指標は、コンディショニング療法を提供するために一時的に心臓の血液量を増加させることが好ましくない場合のある事例を同定するために使用可能である。例えば、心拍数の増加、拍出量の減少、収縮能の低下、動脈血圧の低下、静脈血圧の上昇、または上記のうちの任意の組合せにより、心臓の状態の弱体化または障害を示すことができる。これらの条件下では、心臓は、血液量の一時的増加を代償することができない場合があり、患者はコンディショニング療法から恩恵を受けることができない可能性がある。したがって、コントローラ265は、第1の指定された閾値を上回る心拍数の増加、第2の指定された閾値を下回る心拍出量の減少、第3の指定された閾値を下回る心筋収縮能の計測値の低下、第4の指定された閾値を下回る動脈血圧の低下、第5の指定された閾値を上回る静脈血圧の上昇、または上記のうち2以上の任意の組合せに応答して、治療回路270により内臓領域に提供される神経修飾の量を調整することができる。1つ以上のそのような生理学的指標の存在下では、コントローラ265は、内臓領域への交感神経刺激の量の減少、内臓領域への交感神経抑制の量の増大、内臓領域への副交感神経刺激の量の増大、内臓領域への副交感神経抑制の量の減少、または上記のうち2以上の任意の組合せを行うように構成可能である。そのような神経修飾療法の効果は、内臓血液量の増加および心臓血液量の減少であってよく、これが弱体化または障害された心臓に対する負荷を軽減しうると考えられる。
【0129】
図2に示される例において、治療回路270は心臓機能管理デバイス105の内部に含められてよい。他の例では、治療回路270は別個の移植デバイスまたは外部デバイスの一部であってもよい。治療回路270が別個のデバイスの一部である場合、デバイス105は治療回路と通信することができる。これは、人体内または人体上の2つのデバイスの間の直接通信を含み、そのような通信は、人体内部において、実例となる例としては電磁結合、超音波通信、または電気導体としての身体組織の使用を介して実行可能である。該通信は、追加として、または別例として、2つの移植デバイスの間、または移植デバイスと外部デバイスとの間の間接通信であって、例えば通信を実施するための仲介物として局所または遠隔の外部デバイスを使用することによる、例えば誘導、RF、またはその他の遠隔通信を介する間接通信を含むことができる。実例となる例には、移植されたデバイス105と、別個に移植されたデバイスの中にある治療回路との間の通信、例えば、ボストン・サイエンティフィック社(Boston Scientific Corp.)(カルディアック・ペースメ
ーカーズ社(Cardiac Pacemakers, Inc.))のLATITUDE(R)システムの使用による通信があり、該システムは、ある対象者の移植型医療用デバイス105からの情報を自動的に収集し、該情報を、例えば通信ネットワーク294を介して安全なリモートコンピュータ292に通信接続可能な外部ローカルインタフェース290によって、その対象者の別の移植型または携帯型個人用医療用デバイスに伝達することができる。
【0130】
信号処理部255は、図3に関して上述されたものと同様に構成可能である。しかしながら、例えば胸部インピーダンス信号の、より低周波数の肺水腫または同様の体液状態の成分の代わりに、心臓内インピーダンス信号の心収縮の成分を通すように、ローパスフィルタ355の代わりにバンドパスフィルタを使用することができる。(しかしながら、内臓インピーダンス信号のより低周波数の体液状態の成分を通すように、今までどおりローパスフィルタ355も含められてよい)。さらに、血液量状態計算モジュールが、体液状態計算モジュール340の代わりに使用されてもよい。血液量状態計算モジュールは、バンドパスフィルタからの出力信号を受信可能であり、以下に説明されるように、得られた血液量状態の表示をノード260でコントローラ265に提供することができる。一例において、血液量状態計算モジュールは、マイクロプロセッサによって実行されるかまたは他の方法で実施される一連の命令として実装可能である。一例において、血液量状態計算モジュールは、インピーダンスに由来する血液量状態の情報に基づいて血液量状態の指標を計算することができる任意の他のハードウェアまたはソフトウェアの構成として実装可能である。
【0131】
一例において、血液量状態計算モジュールは、例えばバンドパスフィルタを通った心臓内インピーダンス信号またはローパスフィルタを通った内臓インピーダンス信号をそれぞれの閾値と比較するための、コンパレータを含むことができる。比較の出力結果を使用してそれぞれの血液量状態の指標を提供可能であり、例えば、特定の領域のインピーダンスが指定された閾値より下に下がった場合は該領域における血液過剰を示す。一例において、指定の閾値は、長期的またはその他のベースラインのインピーダンス値、例えば正常状態(例えば、心臓血液量の過負荷がない)の間に対象者から得られるような値を使用して指定可能である。例えば、指定の閾値は、そのような正常状態の値からのオフセットとして指定可能である。一例において、指定の閾値は、異常状態の間、例えば代償不全発生時、または関連する代償不全の発生に先行する期間に得られた値を使用して指定されてもよい。
【0132】
一例において、長期の平均(または他のベースライン代表値)と短期の平均(またはより急性の代表値)との間の違いまたは比は、血液量状態の表示として使用されてもよいし、閾値と比較されるかまたは他の方法で信号処理されて、結果として生じる血液量状態の表示が得られてもよい。
【0133】
コントローラ265は、心臓血液量状態の指標が指定された閾値を下回る場合に、内臓領域への(治療回路270によって提供される)神経修飾の量を調整するように構成可能である。例えば、コントローラ265は、心臓血液量状態の指標が指定された閾値を下回る場合に内臓領域への交感神経刺激の量を増大させるように構成されうる。一例において、コントローラ265は、心臓血液量状態の指標が指定された閾値を下回る場合に内臓領域への交感神経抑制の量を減少させるように構成されうる。一例において、コントローラ265は、心臓血液量状態の指標が指定された閾値を下回る場合に内臓領域への副交感神経刺激の量を減少させるように構成されうる。一例において、コントローラ265は、心臓血液量状態の指標が指定された閾値を下回る場合に内臓領域への副交感神経抑制の量を増大させるように構成されうる。上記の神経修飾療法のうちいずれも、単独または組合せで、内臓血液量の減少および心臓血液量の増大をもたらすことができると考えられる。
【0134】
コントローラ265は、心臓血液量状態の指標が指定された閾値を上回る場合に、内臓領域への(治療回路270によって提供される)神経修飾の量を調整するように構成可能である。例えば、コントローラ265は、心臓血液量状態の指標が指定された閾値を上回る場合に内臓領域への交感神経刺激の量を減少させるように構成されうる。一例において、コントローラ265は、心臓血液量状態の指標が指定された閾値を上回る場合に内臓領域への交感神経抑制の量を増大させるように構成されうる。一例において、コントローラ
265は、心臓血液量状態の指標が指定された閾値を上回る場合に内臓領域への副交感神経刺激の量を増大させるように構成されうる。一例において、コントローラ265は、心臓血液量状態の指標が指定された閾値を上回る場合に内臓領域への副交感神経抑制の量を減少させるように構成されうる。上記の神経修飾療法のうちいずれも、単独または組合せで、内臓血液量の増大および心臓血液量の減少をもたらすことができると考えられる。
【0135】
一例において、コントローラ265は、肺水腫および心臓内の血液量過負荷を示唆する経胸的インピーダンスの低下に応答して、内臓領域への(治療回路270によって提供される)神経修飾の量を調整するように構成可能である。例えば、経胸的インピーダンスの低下に応答して、コントローラは、内臓領域への交感神経刺激の量の減少、内臓領域への交感神経抑制の量の増大、内臓領域への副交感神経刺激の量の増大、内臓領域への副交感神経抑制の量の減少、または上記のうち任意の組合せを行うように構成されうる。上記の神経修飾療法のうちいずれも、単独または組合せで、内臓血液量の増大および心臓血液量の減少をもたらすことによって、心臓の血液量過負荷を緩和すると考えられる。
【0136】
一例において、デバイス105は、コントローラ265に連結可能なペーシング回路によって心臓血液量再配分療法を提供することができる。コントローラ265は、心筋層の一部を伸展させるために、固有の収縮に対して非同期されているかまたは固有の収縮から十分にオフセットされたペーシングパルスを発するようにペーシング回路を制御するように構成可能である。そのようなペーシング療法は、神経修飾療法に加えて、または該療法の代わりに、治療回路270によって提供されうる。
【0137】
一例において、デバイス105は、心房性不整頻拍を抑制防止するために心臓の血液量再配分療法を使用するように構成可能である。心拍出量の低下または弁の機能不全に起因する拡張終期圧の上昇は、心房の伸展の増大を引き起こす可能性があり、これが心房性不整頻拍をもたらす場合があると考えられている。更に、心臓の左側における血液量の低下は心房の伸展を緩和し、したがって心房性不整脈を抑制または防止するのに役立つと考えられている。一例において、デバイス105は、コントローラ265に連結可能な心房性催不整脈状態センサを備えることができる。心房性催不整脈センサは、一例では、心電図の形態変化の変化、心拍数の変化、または心拍数の規則性の変化を感知するように構成可能である。コントローラ265は、心房性催不整脈状態の検出に応答して内臓領域への治療回路270による神経修飾の送達を制御するように構成可能である。一例において、治療回路270は、不整頻拍治療法、例えば細動除去または不整頻拍治療ペーシング(ATP)に伴って内臓領域に神経修飾を送達するように構成可能である。心房性催不整脈状態に応答して送達されうる神経修飾療法の例には、副交感神経刺激の量の増大、副交感神経抑制の量の減少、交感神経抑制の量の増大、または交感神経刺激の量の減少が挙げられる。神経修飾のこれらの例は、内臓血液量の増加および心臓血液量の減少をもたらすことができる。神経修飾は、不整頻拍治療後の電気除細動が成功し次第、または心房性催不整脈状態がもはや検出されない場合、中止することができる。
【0138】
心臓の血液量再配分療法を提供するために使用される電極構成は、図4A〜4Eに関して上述されたものと同様であってよいが、ROI1は心臓内にある2つの異なる電極の間にあるものとする。
【0139】
図6は、心臓血液量を変調するために内臓領域に神経修飾を送達することにより心臓のコンディショニング療法を提供する方法の例を概略的に示すチャートである。600において、神経修飾療法が内臓領域に送達されうる。内臓領域への神経修飾療法の送達の例は、図5に関して上述されている。神経の電気的活性化(例えば刺激)は、神経伝達物質の制御かつ対象設定された放出を伴うことができる。神経ペプチドYおよびノルエピネフリンのようないくつかの神経伝達物質は血管収縮を引き起こすことが可能であり、ATPお
よびアセチルコリン(ACh)のようないくつかは血管拡張を引き起こすことができる。同じ神経が、異なる刺激プロトコールの下で異なる神経伝達物質を放出し、したがって標的の血管または臓器の広く様々な機能的反応を誘発することが可能である。さらに、神経伝達物質が結合する受容体の種類が血管の機能的反応を決定することができる。例えば、AChは、骨格筋血管系の血管拡張を引き起こし、冠状動脈循環においては収縮を引き起こすことができる。したがって、交感神経線維の刺激は一般に血管収縮を引き起こすが、交感神経線維が血管拡張を引き起こしうる場合もある。
【0140】
602では、内臓領域への神経修飾の送達は、所定期間の間制御されて、該所定期間の少なくとも一時期は心臓血液量を変調するのに十分な量とすることが可能である。図5に関して上述されるように、内臓領域への神経修飾の送達の制御は、局所的な内臓の血管収縮療法または局所的な内臓の血管拡張療法を提供することを含みうる。内臓血管床の間欠的な血管収縮とその後の血管拡張は、血液による心臓の一時的負荷とその後の除荷をもたらすと考えられる。内臓血管床の血管収縮は、血液が内臓領域から心臓へと再配分されるので心臓負荷をもたらすと考えられる。同様に、内臓血管床の血管拡張は、血液が心臓から内臓領域へと再配分されるので心臓除荷をもたらすと考えられる。心臓のこの間欠的な負荷および除荷は心筋の伸展を引き起こし、上述のように、心臓細胞からのANPまたはBNPのうち少なくともいずれか一方の放出をもたらすことができる。一例において、内臓の血管収縮は1日当たり約20〜30分の期間にわたって提供されてもよい。そのような、内臓の血管収縮/血管拡張の間欠的な短期負荷サイクルは、心臓血液量再配分とその結果生じる心筋の伸展の作用を高めることができる。
【0141】
一例において、図6に示された方法は、心拍数、心拍出量、または心筋収縮能のモニタリングをさらに含むことができる。血液量再配分療法の際に、拍出量の減少、収縮能の低下、心拍数の劇的な上昇、動脈血圧の低下、または静脈血圧の上昇がある場合、神経修飾は、弱体化した心臓に対して過剰なストレスがかかるのを回避するように、調整または中止することが可能である。そのような弱体化した心臓は、再配分療法において提供される高い前負荷を代償することができない可能性がある。神経修飾は、例えば、内臓領域への交感神経刺激の減少、内臓領域への交感神経抑制の増大、内臓領域への副交感神経刺激の増大、または内臓領域への副交感神経抑制の減少により、調整可能である。神経修飾のそのような調整は、内臓の血管拡張、ひいては心臓血液量の減少を引き起こすことができる。これは、心臓に対するストレスを緩和する助けとなりうる。
【0142】
一例において、図6に示された方法は、心筋層の一部に伸展をもたらすために、固有の収縮と非同期化されているかまたは固有の収縮から十分にオフセットされた心臓ペーシングパルスを一時的に送達することをさらに含みうる。例えば、短いAVDまたはVVIモードのペーシングは、心臓が非同期に拍動して、心房または心室の血液量増加をもたらし、ひいてはそれぞれの房室における伸展の増大をもたらすように提供される。上述のように、一時的な伸展は、ANPまたはBNPのうち少なくともいずれか一方の放出を通じて心臓のコンディショニングをもたらすことができる。
【0143】
一例において、図6に示された方法は、心房性催不整脈状態の検出と、心房性催不整脈状態の検出に応答した内臓領域への神経修飾の送達とを含むことができる。心房性催不整脈状態の一例は、心拍出量の低下または弁の機能不全に起因する拡張終期圧の上昇である。拡張終期圧の上昇は、心房の伸展の増大を引き起こし、かつ心房性不整頻拍をもたらす可能性がある。血液を心臓から遠ざけて内臓領域に向かって再配分することにより、心房の伸展を緩和し、不整脈を防止することができると考えられる。一例において、神経修飾のような再配分療法は、感知された心房性不整脈の際に始動されてもよい。さらに、そのような再配分療法は、細動除去または不整頻拍治療ペーシングのような不整頻拍治療法に伴って提供されてもよい。感知された心房性不整脈または心房性催不整脈状態に応答して
送達されうる神経修飾療法の例には、副交感神経刺激の量の増大、副交感神経抑制の量の減少、交感神経抑制の量の増大、または交感神経刺激の量の減少が挙げられる。神経修飾のこれらの例は、内臓血液量の増加および心臓血液量の減少をもたらすことができる。神経修飾は、不整頻拍治療後の電気除細動が成功し次第、または心房性催不整脈状態がもはや検出されない場合、中止することができる。
【0144】
図7は、心臓血液量状態の指標を使用して心臓コンディショニング療法を提供する方法の例を示すチャートである。700において、心臓血液量状態がモニタリングされる。心臓血液量状態のモニタリングは、例えば、心臓内インピーダンスのモニタリングにより行うことができる。心臓内インピーダンスを計測する方法の一例は、上記に引用されたチタック(Citak)らの文献に記載されている。心臓血液量状態のモニタリングは肺インピー
ダンスを示す経胸的インピーダンス計測値のモニタリングにより行うこともできる。例えば、指定された閾値を下回る肺インピーダンスの低下は肺水腫を示している可能性があり、これはひいては心臓容量の過負荷を示唆する可能性がある。更に、一例において、心臓血液量状態のモニタリングは、内臓血液量状態のモニタリングと同時に行われてもよい。この例では、心臓血液量状態および内臓血液量状態の両方に関する情報が、血液再配分療法を制御するために使用されうる。
【0145】
702において、心臓血液量状態の指標はモニタリングされた心臓血液量状態のデータを使用して提供される。心臓血液量状態の指標は心臓内インピーダンスに基づいていてもよい。一例において、心臓血液量状態の指標は、心臓内インピーダンスの最高計測値と最低計測値との間の差をとることなどにより、心臓内インピーダンスから算出可能な計測値である拍出インピーダンスに基づくことができる。拍出インピーダンスは、心臓周期における心臓内での血液量の変化を表わす。
【0146】
704では、内臓領域への神経修飾の送達は、閉ループフィードバック構成のように、心臓血液量状態の指標を使用して制御される。一例では、心臓血液量状態の指標が閾値と比較され、心臓血液量状態の指標が第1の閾値を下回る場合に、内臓領域に送達される神経修飾の量が調整されうる。心臓血液量状態の指標は、例えば、心臓血液量が低減されるように神経修飾によって一時的に除荷された心臓において、第1の閾値を下回る可能性がある。これらの条件下では、心臓の一時的負荷は好都合となりうるものであり、心臓体積の増大および心筋の伸展をもたらす。心臓の一時的負荷は、例えば、内臓領域への交感神経刺激の量の増大、内臓領域への交感神経抑制の量の減少、内臓領域への副交感神経刺激の量の減少、または内臓領域への副交感神経抑制の量の増大により実施可能である。神経修飾の上記の各例は、内臓の血管収縮、ひいては内臓領域から心臓への血液の再配分をもたらすことができる。
【0147】
一例において、心臓血液量状態の指標は閾値と比較されてもよく、心臓血液量状態の指標が第2の閾値を上回る場合に、内臓領域に送達される神経修飾の量が調整されうる。心臓血液量状態の指標は、例えば、心臓血液量が増大し、かつ心筋層が伸展されるように、神経修飾によって一時的に負荷をかけられた心臓において、第2の閾値を上回る可能性がある。これらの条件下では、心臓の一時的除荷は好都合となりうるものであり、心臓体積の減少および心筋の伸展の緩和をもたらす。心臓の一時的除荷は、例えば、内臓領域への交感神経刺激の量の減少、内臓領域への交感神経抑制の量の増大、内臓領域への副交感神経刺激の量の増大、または内臓領域への副交感神経抑制の量の減少により実施可能である。神経修飾の上記の各例は、内臓の血管拡張、ひいては心臓から内臓領域への血液の再配分をもたらすことができる。
【0148】
付記
上記の詳細な説明は、詳細な説明の一部を形成する添付図面の参照を含んでいる。図面
は、例証のために、本発明を実行することができる特定の実施形態を示している。これらの実施形態は本明細書中において「実施例」とも呼ばれる。そのような実施例は図示かつ説明されたものに加えて要素を含むことができる。しかしながら、本発明者らは、図示かつ説明された要素のみを具備する実施例も企図している。
【0149】
本文書において参照された全ての出版物、特許および特許文献は、参照によって個々に組み込まれるかのように、参照によってその全体が本願に組み込まれる。本文書と、参照によってそのように組み込まれた文書との間で矛盾する使用法の場合には、組み込まれた参照における使用法は、本文書の使用法への補足と考えるべきであり;両立し難い矛盾については、本文書中の使用法に従う。
【0150】
本文書において、用語「1つの(a, an)」は、「少なくとも1(at least one)」ま
たは「1以上(one or more)」という他の実例または使用法とは無関係に、特許文献に
おいて一般に見られるように1または2以上を含むように使用される。本文書において、用語「または、もしくは(or)」は、別途記載のない限り、非独占的であること、すなわち「AまたはB」は、「AであるがBではない」、「BであるがAではない」、および「AおよびB」を含むことを指すために使用される。添付の特許請求の範囲においては、用語「〜を備えている(including)」および「〜であることを特徴とする(in which)」
は、それぞれ用語「〜を含んでなる(comprising)」および「〜であることを特徴とする(wherein)」の平易な英語による同意語として使用される。同様に、特許請求の範囲に
おいて、用語「〜を備えている(including)」および「〜を含んでなる(comprising)
」ことはオープンエンドである、すなわち、請求項においてそのような用語の後に列挙された要素以外に要素を備えたシステム、デバイス、物品、または工程もなおその請求項の範囲以内にあると見なされる。さらに、特許請求の範囲において、用語「第1の(first
)」、「第2の(second)」および「第3の(third)」などは、単に表記として使用さ
れており、該用語の対象物に番号順の要件を課するようには意図されない。
【0151】
上記の説明は、例示を意図したものであり、限定を意図したものではない。例えば、上記の実施例(または該実施例の1以上の態様)は互いに組み合わせて使用されてもよい。例えば当業者が上記の説明を概観すれば、他の実施形態を使用することもできる。要約書は、読み手が技術的開示内容の性質をより迅速に確認できるように、米国特許法施行規則第1.72条(b)に準拠するように提供されている。要約書は、特許請求の範囲の範囲または意味を解釈または限定するために使用されることはないという合意を持って提供されている。さらに、上記の詳細な説明においては、開示内容を簡素化するために様々な特徴がひとまとめにされる場合がある。これは、特許請求の範囲に記載されていない開示の特徴が任意の請求項にとって必須であることを意図すると解釈されるべきでない。むしろ、発明の主題は、特定の開示された実施形態のすべての特徴より少ない中に存在しうる。したがって、このように特許請求の範囲は、個別の実施形態として自立している各請求項と共に、詳細な説明に組み込まれる。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲に、そのような特許請求の範囲に付与される等価物の範囲全体を加えた範囲に関して決定されるべきである。
【技術分野】
【0001】
本発明は血液量再配分によって心不全を治療するための医療用デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
心不全(HF)は、心臓の機能異常が身体の組織および臓器の不適切に低い灌流をもたらす、衰弱性の疾患である。HFの初期段階では、組織の適切な灌流を維持し、かつ心臓に対するストレスを緩和するために、多くの代償機構が用いられる。そのような機構のいくつかの例には、レニン‐アンギオテンシン‐アルドステロン系(RAAS)の活性化および神経制御を介した血液量再配分が挙げられる。HFが進行するにつれて、心臓機能が悪化する可能性があるだけでなく、代償機構自体も最終的には適応的でなくなりHFの症状に寄与し始める可能性がある。例えば、RAASの過活性化は重篤な心室リモデリングをもたらす可能性がある。特に重篤な種類の心不全はうっ血性心不全(CHF)であり、心臓の弱い拍出が、交感神経活動のような過剰に活動的な代償機構とともに、肺における体液の蓄積をもたらす可能性がある。
【0003】
肺水腫は、肺における腫脹および/または体液蓄積である。肺水腫は、CHFのうっ血症状のうちの1つに相当する。貧弱な心臓機能は肺からの流出低下をもたらし、これは、特に全身の臓器が収縮して全身から肺ループへとさらなる血液を再配分している場合、肺における血圧を上昇させる。肺循環内における圧上昇は、肺組織および肺胞の中への体液の漏出をもたらす可能性がある。これは、息切れのような重篤な呼吸器障害をもたらす可能性がある。息切れは、病院を訪れる非代償性CHF患者が有する最も多い症状である(〜89%)。
【0004】
優先権の主張
本願において、2009年7月27日に出願された米国仮特許出願シリアル番号第61/228,745号に対する優先権の利益が主張されており、前記出願の優先権の利益は本願において主張され、前記出願の全体が参照により本願に組込まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在の肺水腫治療の主流は、HF症状の悪化をもたらすのは総容量の過負荷であるという考えに基づいて、利尿治療を施すことによる全血量の低減を目指している。しかしながら多くの場合、総容量の過負荷は代償不全の原因ではないおそれがあり、したがって利尿剤はもはや最適な治療でない可能性があり、また腎機能の悪化のようなさらなる障害すら引き起こす可能性がある。
【0006】
本明細書は、とくに、肺水腫について警告を発するかまたは肺水腫の治療を制御するために使用することができる、肺水腫に関連した肺の体液状態を示す第1の体液状態指標および肺以外の体液状態を示す第2の体液状態指標について述べる。さらに、心不全患者のための心臓コンディショニング療法(cardiac conditioning therapy)について述べる。該コンディショニング療法は心臓の血液量再配分を含む。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施例1は移植式医療用デバイスについて述べる。この実施例において、該デバイスは、肺水腫に関連した肺の体液状態についての第1の体液状態指標をモニタリングするように構成された第1の体液状態モニタリング回路であって、第1の体液状態指標の増大は肺水腫に関連した肺の体液の増大と相関することを特徴とする、回路と;肺以外の体液状態
についての別個かつ異なる第2の体液状態指標をモニタリングするように構成された第2の体液状態モニタリング回路であって、第2の体液状態指標の増大は肺以外の体液の増大と相関することを特徴とする、回路と;第1および第2の体液状態モニタリング回路に連結されたコントローラであって、治療を制御するための治療制御信号を決定するために第1および第2の体液状態指標に関する情報を使用するように構成されたコントローラと;治療制御信号を受信するためにコントローラに連結され、治療制御信号に応答して、肺の体液状態または肺以外の体液状態のうち少なくとも1つを調整するための治療を提供するように構成された治療回路と、からなる。
【0008】
実施例2において、実施例1のデバイスは、内臓器官に関連した体液状態を表す内臓インピーダンス計測値をモニタリングするように構成された第2の体液状態モニタリング回路を任意選択で含んでなる。
【0009】
実施例3において、実施例1〜2のうち1つ以上のデバイスは、動脈血圧、内臓インピーダンス、骨格筋インピーダンス、または皮膚インピーダンスのうち少なくとも1つをモニタリングするように構成された第2の体液状態モニタリング回路を任意選択で含んでなる。
【0010】
実施例4において、実施例1〜3のうち1つ以上のデバイスは、指定された閾値を下回る第2の体液状態指標の減少、指定された閾値を上回る第1の体液状態指標の増大、医療用デバイスによって発せられる心不全代償不全の警告、患者が発した警告、またはユーザ入力、のうち少なくとも1つに応答して治療の提供を始動するように構成されたコントローラを任意選択で含んでなる。
【0011】
実施例5において、実施例1〜4のうち1つ以上のデバイスは、肺以外の体液状態を調整するために神経修飾療法を提供するように構成された神経修飾回路であって、該神経修飾療法は交感神経系または副交感神経系のうち少なくとも一方の刺激または抑制を含むことを特徴とする神経修飾回路、を任意選択で含んでなる。
【0012】
実施例6において、実施例1〜5のうち1つ以上のデバイスは、局所的血管拡張療法または局所的血管収縮療法のうち少なくとも一方を提供するように構成された治療回路であって、局所的血管拡張療法または局所的血管収縮療法のうち少なくとも一方は、神経修飾療法、薬物療法、または血管血流制御療法のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする治療回路、を任意選択で含んでなる。
【0013】
実施例7において、実施例1〜6のうち1つ以上のデバイスは、少なくとも2つの別個の局所血管領域に、その2つの別個の局所領域の間における体液状態のバランスを調整するために局所的血管拡張療法または局所的血管収縮療法のうち少なくとも一方を同時に送達するように構成された治療回路を任意選択で含んでなる。
【0014】
実施例8において、実施例1〜7のうち1つ以上のデバイスは、第1の指定された閾値を上回る第1の体液状態指標の増大;第2の指定された閾値を下回る第1の体液状態指標の減少;第3の指定された閾値を上回る第2の体液状態指標の増大;または、第4の指定された閾値を下回る第2の体液状態指標の減少、のうち少なくとも1つに応答して治療を縮小または停止するように構成されたコントローラを任意選択で含んでなる。
【0015】
実施例9において、実施例1〜8のうち1つ以上のデバイスは、指定された期間後に治療を停止するために第1および第2の体液状態指標に関する情報を使用するように構成されたコントローラを任意選択で含んでなる。
【0016】
実施例10において、実施例1〜9のうち1つ以上のデバイスは、対象者の心臓の信号を検出するように構成された心臓信号検出回路を任意選択で含んでなり、コントローラは該心臓信号検出回路に連結され、かつ対象者の心臓周期の指定された部分と同期化された治療の提供を始動するように構成されている。
【0017】
実施例11において、実施例1〜10のうち1つ以上のデバイスは、対象者の姿勢を検出するように構成された姿勢感知回路を任意選択で含んでなり、コントローラは、治療を制御する治療制御信号を決定するために(1)第1および第2の体液状態指標に関する情報、ならびに(2)対象者の姿勢に関する情報、を使用するように構成されている。
【0018】
実施例12において、実施例1〜11のうち1つ以上のデバイスは、対象者の身体活動レベルを検出するように構成された活動感知回路を任意選択で含んでなり、コントローラは、治療を制御する治療制御信号を決定するために(1)第1および第2の体液状態指標に関する情報、ならびに(2)対象者の活動レベルに関する情報、を使用するように構成されている。
【0019】
実施例13は方法について述べる。この実施例において、該方法は、肺水腫に関連した肺の体液状態についての第1の体液状態指標をモニタリングすることと;肺以外の体液状態についての別個かつ異なる第2の体液状態指標をモニタリングすることと;第1および第2の体液状態指標に関する情報を使用し、肺の体液状態または肺以外の体液状態のうち少なくとも一方を調整するために治療を制御することと、を含んでなる。
【0020】
実施例14において、実施例13の方法は、内臓器官に関連した体液状態を表す内臓インピーダンス計測値をモニタリングすることを任意選択で含んでなる。
実施例15において、実施例13〜14のうち1つ以上の方法は、肺領域および対象とする内臓領域の両方を横切る第1のインピーダンス・ベクトルを計測することと;肺領域を横切るが対象とする内臓領域は横切らない第2のインピーダンス・ベクトルを計測することと;第1のインピーダンス・ベクトルから第2のインピーダンス・ベクトルを減じて内臓インピーダンスを決定することと、を任意選択で含んでなる。
【0021】
実施例16において、実施例13〜15のうち1つ以上の方法は、動脈血圧、内臓インピーダンス、骨格筋インピーダンス、または皮膚インピーダンスのうち少なくとも1つをモニタリングすることを任意選択で含んでなる。
【0022】
実施例17において、実施例13〜16のうち1つ以上の方法は、指定された閾値を下回る第2の体液状態指標の減少によって治療の提供を始動することを任意選択で含んでなる。
【0023】
実施例18において、実施例13〜17のうち1つ以上の方法は、肺以外の体液に関連した領域において交感神経系または副交感神経系のうち少なくとも1つを刺激または抑制するように神経修飾を制御することを任意選択で含んでなる。
【0024】
実施例19において、実施例13〜18のうち1つ以上の方法は、神経修飾療法、薬物療法、または血管血流制御療法のうち少なくとも1つを提供することにより、対象者の局所血管領域における血管拡張または血管収縮のうち少なくとも1つを制御することを任意選択で含んでなる。
【0025】
実施例20において、実施例13〜19のうち1つ以上の方法は、少なくとも2つの別個の局所血管領域において、その2つの別個の局所領域の間における体液状態のバランスを調整するために血管拡張または血管収縮のうち少なくとも1つを同時に制御することを
任意選択で含んでなる。
【0026】
実施例21において、実施例13〜20のうち1つ以上の方法は、第1の指定された閾値を上回る第1の体液状態指標の増大;第2の指定された閾値を下回る第1の体液状態指標の減少;第3の指定された閾値を上回る第2の体液状態指標の増大;または、第4の指定された閾値を下回る第2の体液状態指標の減少、のうち少なくとも1つに応答して治療を縮小または停止することを任意選択で含んでなる。
【0027】
実施例22において、実施例13〜21のうち1つ以上の方法は、指定された期間後に治療を停止するために第1および第2の体液状態指標に関する情報を使用することを任意選択で含んでなる。
【0028】
実施例23において、実施例13〜22のうち1つ以上の方法は、治療の送達を対象者の心臓周期の指定された部分と同期化することを任意選択で含んでなる。
実施例24において、実施例13〜23のうち1つ以上の方法は、患者の姿勢を検出することを任意選択で含んでなり、治療の制御は、肺の体液状態または肺以外の体液状態のうち少なくとも1つを調整するために、(1)第1および第2の体液状態指標に関する情報、ならびに(2)患者の姿勢に関する情報、を使用することを含んでなる。
【0029】
実施例25において、実施例13〜24のうち1つ以上の方法は、患者の身体活動レベルを検出することを任意選択で含んでなり、治療の制御は、肺の体液状態または肺以外の体液状態のうち少なくとも1つを調整するために、(1)第1および第2の体液状態指標に関する情報、ならびに(2)患者の身体活動レベルに関する情報、を使用することを含んでなる。
【0030】
実施例1Aは装置について述べる。この実施例では、該装置は、内臓領域に神経修飾を送達するように構成された、神経修飾回路と;神経修飾回路に連結されたコントローラ回路であって、指定された期間の間、該指定期間のうち少なくとも一時期に心臓の血液量を変調するのに十分な量で内臓領域に神経修飾を送達するように神経修飾回路を制御するように構成されたコントローラ回路と、を含んでなる。
【0031】
実施例2Aでは、実施例1Aの装置は、内臓領域に神経修飾を送達する神経修飾回路を制御するコントローラ回路に心臓血液量状態の指標を提供する心臓血液量状態モニタリング回路を任意選択で含んでなる。
【0032】
実施例3Aでは、装置の実施例2Aは、内臓領域に神経修飾を送達する神経修飾回路を制御するコントローラ回路に内臓血液量状態の指標を提供する内臓血液量状態モニタリング回路を任意選択で含んでなる。
【0033】
実施例4Aでは、実施例2A〜3Aのうち1つ以上の装置は、内臓領域に神経修飾を送達する神経修飾回路を制御するコントローラ回路に、心臓内インピーダンスに基づいた心臓血液量状態の指標を提供する心臓内インピーダンス計測値モニタリング回路を任意選択で含んでなる。
【0034】
実施例5Aでは、実施例4Aの装置は、内臓領域に神経修飾を送達する神経修飾回路を制御するコントローラ回路に、拍動インピーダンスに基づいた心臓血液量状態の指標を提供するように構成された、心臓内インピーダンス計測値モニタリング回路を任意選択で含んでなる。
【0035】
実施例6Aでは、実施例2A〜5Aのうち1つ以上の装置は、心臓血液量状態の指標を
閾値と比較するように構成されたコンパレータ回路を任意選択で含んでなり、コントローラは、心臓血液量状態の指標が第1の値の閾値を下回る場合に内臓領域への神経修飾の量を調整するように構成されている。
【0036】
実施例7Aでは、実施例6Aの装置は、心臓血液量状態の指標が第1の値の閾値を下回る場合に内臓領域への交感神経刺激の量を増大するように構成されたコントローラを任意選択で含んでなる。
【0037】
実施例8Aでは、実施例6A〜7Aのうち1つ以上(one of more)の装置は、心臓血
液量状態の指標が第1の値の閾値を下回る場合に内臓領域への交感神経抑制の量を減少するように構成されたコントローラを任意選択で含んでなる。
【0038】
実施例9Aでは、実施例6A〜8Aのうち1つ以上の装置は、心臓血液量状態の指標が第1の値の閾値を下回る場合に内臓領域への副交感神経刺激の量を減少するように構成されたコントローラを任意選択で含んでなる。
【0039】
実施例10Aでは、実施例6A〜9Aのうち1つ以上の装置は、心臓血液量状態の指標が第1の値の閾値を下回る場合に内臓領域への副交感神経抑制の量を増大するように構成されたコントローラを任意選択で含んでなる。
【0040】
実施例11Aでは、実施例6Aの装置は、心臓血液量状態の指標が第2の値の閾値を上回る場合に内臓領域への神経修飾の量を調整するように構成されたコントローラを任意選択で含んでなる。
【0041】
実施例12Aでは、実施例11Aの装置は、心臓血液量状態の指標が第2の値の閾値を上回る場合に内臓領域への交感神経刺激の量を減少するように構成されたコントローラを任意選択で含んでなる。
【0042】
実施例13Aでは、実施例11A〜12Aのうち1つ以上の装置は、心臓血液量状態の指標が第2の値の閾値を上回る場合に内臓領域への交感神経抑制の量を増大するように構成されたコントローラを任意選択で含んでなる。
【0043】
実施例14Aでは、実施例11A〜13Aのうち1つ以上の装置は、心臓血液量状態の指標が第2の値の閾値を上回る場合に内臓領域への副交感神経刺激の量を増大するように構成されたコントローラを任意選択で含んでなる。
【0044】
実施例15Aでは、実施例11A〜14Aのうち1つ以上の装置は、心臓血液量状態の指標が第2の値の閾値を上回る場合に内臓領域への副交感神経抑制の量を減少するように構成されたコントローラを任意選択で含んでなる。
【0045】
実施例16Aでは、実施例2A〜15Aのうち1つ以上の装置は、内臓領域に神経修飾を送達する神経修飾回路を制御するコントローラ回路に、肺インピーダンスに基づいた心臓血液量状態の指標を提供する、経胸的インピーダンス計測値モニタリング回路を備えた心臓血液量状態モニタリング回路を任意選択で含んでなり;コントローラは経胸的インピーダンスの減少に応答して内臓領域への神経修飾の量を調整するように構成されている。
【0046】
実施例17Aでは、実施例16Aの装置は、内臓領域への交感神経刺激の量の減少;内臓領域への交感神経抑制の量の増大;内臓領域への副交感神経刺激の量の増大;または、内臓領域への副交感神経抑制の量の減少、のうち少なくとも1つを行うように構成されたコントローラを任意選択で含んでなる。
【0047】
実施例18Aでは、実施例1A〜17Aのうち1つ以上の装置は、心臓血液量を増大させるために局所的な内臓血管収縮療法を提供するように構成された神経修飾回路を任意選択で含んでなる。
【0048】
実施例19Aでは、実施例1A〜18Aのうち1つ以上の装置は、心臓血液量を減少させるために局所的な内臓血管拡張療法を提供するように構成された神経修飾回路を任意選択で含んでなる。
【0049】
実施例20Aでは、実施例1A〜19Aのうち1つ以上の装置は、心拍数モニタリング回路;心拍出量モニタリング回路;心筋収縮能モニタリング回路;動脈血圧モニタリング回路;または静脈血圧モニタリング回路、のうち少なくとも1つを任意選択で含んでなり、コントローラは、第1の指定された閾値を上回る心拍数の増加;第2の指定された閾値を下回る心拍出量の減少;第3の指定された閾値を下回る心筋収縮能の計測値の低下;第4の指定された閾値を下回る動脈血圧の低下;または、第5の指定された閾値を上回る静脈血圧の上昇、のうち少なくとも1つに応答して内臓領域への神経修飾の量を調整するように構成されている。
【0050】
実施例21Aでは、実施例20Aの装置は、内臓領域への交感神経刺激の量の減少;内臓領域への交感神経抑制の量の増大;内臓領域への副交感神経刺激の量の増大;または、内臓領域への副交感神経抑制の量の減少、のうち少なくとも1つを行うように構成されたコントローラを任意選択で含んでなる。
【0051】
実施例22Aでは、実施例1A〜21Aのうち1つ以上の装置は、コントローラに連結されたペーシング回路を任意選択で含んでなり;コントローラは、心腔の一部を伸展させるために、固有の収縮に対して非同期化されているかまたは固有の収縮から十分にオフセットされたペーシングパルスを生じるようにペーシング回路を制御するように構成されている。
【0052】
実施例23Aでは、実施例1A〜22Aのうち1つ以上の装置は、心房性催不整脈状態センサを任意選択で含んでなり、コントローラは、心房性催不整脈状態の検出に応答して内臓領域への神経修飾の送達を制御するように構成されている。
【0053】
実施例24Aでは、実施例23Aの装置は、不整頻拍治療法に伴って、例えば細動除去または不整頻拍治療ペーシングに伴って内臓領域に神経修飾を送達するように構成された神経修飾回路を任意選択で含んでなり;神経修飾は、副交感神経刺激の量の増大、副交感神経抑制の量の減少、交感神経抑制の量の増大、または交感神経刺激の量の減少、のうち少なくとも1つを含む。
【0054】
実施例25Aは方法について述べる。この実施例において、該方法は、内臓領域に神経修飾を送達することと;指定された期間の間、該指定期間のうち少なくとも一時期に心臓血液量を変調するのに十分な量で内臓領域への神経修飾の送達を制御することと、を含んでなる。
【0055】
実施例26Aでは、実施例25Aの方法は、心臓血液量状態をモニタリングすることと;モニタリングされた心臓血液量状態を使用して、心臓血液量状態の指標を提供することと;心臓血液量状態の指標を使用して、内臓領域への神経修飾の送達を制御することと、を任意選択で含んでなる。
【0056】
実施例27Aでは、実施例26Aの方法は、内臓血液量状態をモニタリングすることと
;モニタリングされた内臓血液量状態を使用して、内臓血液量状態の指標を提供することと;内臓血液量状態の指標を使用して、内臓領域への神経修飾の送達を制御することと、を任意選択で含んでなる。
【0057】
実施例28Aでは、実施例26A〜27Aのうち1つ以上の方法は、心臓内インピーダンスをモニタリングすることと、モニタリングされた心臓内インピーダンスを使用して心臓内インピーダンスに基づいた心臓血液量状態の指標を提供することと、心臓内インピーダンスに基づいた心臓血液量状態の指標を使用して、内臓領域への神経修飾の送達を制御することと、を任意選択で含んでなる。
【0058】
実施例29Aでは、実施例28Aの方法は、拍動インピーダンスに基づいた心臓血液量の指標を提供することを任意選択で含んでなる。
実施例30Aでは、実施例26A〜29Aのうち1つ以上の方法は、心臓血液量状態の指標を閾値と比較することと;心臓血液量状態の指標が第1の値の閾値を下回る場合に内臓領域への神経修飾の量を調整することと、を任意選択で含んでなる。
【0059】
実施例31Aでは、実施例30Aの方法は、心臓血液量状態の指標が第1の値の閾値を下回る場合に内臓領域への交感神経刺激の量を増大させることを任意選択で含んでなる。
実施例32Aでは、実施例30A〜31Aのうち1つ以上の方法は、心臓血液量状態の指標が第1の値の閾値を下回る場合に内臓領域への交感神経抑制の量を減少させることを任意選択で含んでなる。
【0060】
実施例33Aでは、実施例30A〜32Aのうち1つ以上の方法は、心臓血液量状態の指標が第1の値の閾値を下回る場合に内臓領域への副交感神経刺激の量を減少させることを任意選択で含んでなる。
【0061】
実施例34Aでは、実施例30A〜33Aのうち1つ以上の方法は、心臓血液量状態の指標が第1の値の閾値を下回る場合に内臓領域への副交感神経抑制の量を増大させることを任意選択で含んでなる。
【0062】
実施例35Aでは、実施例30Aの方法は、心臓血液量状態の指標が第2の値の閾値を上回る場合に内臓領域への神経修飾の量を調整することを任意選択で含んでなる。
実施例36Aでは、実施例35Aの方法は、心臓血液量状態の指標が第2の値の閾値を上回る場合に内臓領域への交感神経刺激の量を減少させることを任意選択で含んでなる。
【0063】
実施例37Aでは、実施例35A〜36Aのうち1つ以上の方法は、心臓血液量状態の指標が第2の値の閾値を上回る場合に内臓領域への交感神経抑制の量を増大させることを任意選択で含んでなる。
【0064】
実施例38Aでは、実施例35A〜37Aのうち1つ以上の方法は、心臓血液量状態の指標が第2の値の閾値を上回る場合に内臓領域への副交感神経刺激の量を増大させることを任意選択で含んでなる。
【0065】
実施例39Aでは、実施例35A〜38Aのうち1つ以上の方法は、心臓血液量状態の指標が第2の値の閾値を上回る場合に内臓領域への副交感神経抑制の量を減少させることを任意選択で含んでなる。
【0066】
実施例40Aでは、実施例26A〜39Aのうち1つ以上の方法は、経胸的インピーダンス計測値をモニタリングすることと;経胸的インピーダンス計測値を使用して肺インピーダンスに基づいた心臓血液量状態の指標を提供することと;経胸的インピーダンスの減
少に応答して内臓領域に送達される神経修飾の量を調整することと、を任意選択で含んでなる。
【0067】
実施例41Aでは、実施例40Aの方法は、内臓領域への交感神経刺激の量を減少させること;内臓領域への交感神経抑制の量を増大させること;内臓領域への副交感神経刺激の量を増大させること;または内臓領域への副交感神経抑制の量を減少させること、のうち少なくとも1つを任意選択で含んでなる。
【0068】
実施例42Aでは、実施例25A〜41Aのうち1つ以上の方法は、心臓血液量を増大させるために局所的な内臓血管収縮療法を提供することを任意選択で含んでなる。
実施例43Aでは、実施例25A〜42Aのうち1つ以上の方法は、心臓血液量を減少させるために局所的な内臓血管拡張療法を提供することを任意選択で含んでなる。
【0069】
実施例44Aでは、実施例25A〜43Aのうち1つ以上の方法は、心拍数、心拍出量、心筋収縮能、動脈血圧、または静脈血圧のうち少なくとも1つをモニタリングすることと;第1の指定された閾値を上回る心拍数の増加、第2の指定された閾値を下回る心拍出量の減少、第3の指定された閾値を下回る心筋収縮能の計測値の低下、第4の指定された閾値を下回る動脈血圧の低下、または、第5の指定された閾値を上回る静脈血圧の上昇、のうち少なくとも1つに応答して内臓領域への神経修飾の量を調整することと、を任意選択で含んでなる。
【0070】
実施例45Aでは、実施例44Aの方法は、内臓領域への交感神経刺激の量を減少させること;内臓領域への交感神経抑制の量を増大させること;内臓領域への副交感神経刺激の量を増大させること;または、内臓領域への副交感神経抑制の量を減少させること、を任意選択で含んでなる。
【0071】
実施例46Aでは、実施例25A〜45Aのうち1つ以上の方法は、心腔の一部を伸展させるために、固有の収縮に対して非同期化されているかまたは固有の収縮から十分にオフセットされた心臓ペーシングパルスを送達することを任意選択で含んでなる。
【0072】
実施例47Aでは、実施例25A〜46Aのうち1つ以上の方法は、心房性催不整脈状態を検出することと;心房性催不整脈状態の検出に応答して内臓領域に神経修飾を送達することとを任意選択で含んでなる。
【0073】
実施例48Aでは、実施例47Aの方法は、不整頻拍治療法に伴って、例えば細動除去または不整頻拍治療ペーシングに伴って内臓領域に神経修飾を送達することを任意選択で含んでなり;該神経修飾は、副交感神経刺激の量の増大、副交感神経抑制の量の減少、交感神経抑制の量の増大、または交感神経刺激の量の減少、のうち少なくとも1つを含む。
【0074】
以上の概観は、本特許出願の主題の概観を提供することが意図されたものである。この概観は、本発明の排他的または網羅的な説明を提供するようには意図されていない。詳細な説明は、本特許出願に関するさらなる情報を提供するために含まれている。
【0075】
図面は必ずしも原寸に比例するものではなく、図中、類似の数字は異なる図面において同様の構成要素を示している。異なる添字を有する類似の数字は、同様の構成要素の異なる実例を表わす。図面は、限定するためではなく例示のために、本明細書中において議論される様々な実施形態を概説している。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】心臓および内臓器官に繋がっているリードワイヤを備えた心臓機能管理デバイスを含む医療用デバイスの例を示す図。
【図2】医療用デバイスの一部分の例を様々な電極への接続の概略図とともに例証するブロック図。
【図3】信号処理部の一部分の例を概略的に例証するブロック図。
【図4A】インピーダンスに由来する肺および内臓の体液状態の信号を計測するため、かつ対象とする内臓領域に神経修飾療法またはその他の治療法を提供するための、様々な電極構成の例を概略的に示す概要図。
【図4B】インピーダンスに由来する肺および内臓の体液状態の信号を計測するため、かつ対象とする内臓領域に神経修飾療法またはその他の治療法を提供するための、様々な電極構成の例を概略的に示す概要図。
【図4C】インピーダンスに由来する肺および内臓の体液状態の信号を計測するため、かつ対象とする内臓領域に神経修飾療法またはその他の治療法を提供するための、様々な電極構成の例を概略的に示す概要図。
【図4D】インピーダンスに由来する肺および内臓の体液状態の信号を計測するため、かつ対象とする内臓領域に神経修飾療法またはその他の治療法を提供するための、様々な電極構成の例を概略的に示す概要図。
【図4E】インピーダンスに由来する肺および内臓の体液状態の信号を計測するため、かつ対象とする内臓領域に神経修飾療法またはその他の治療法を提供するための、様々な電極構成の例を概略的に示す概要図。
【図5】肺の体液状態の指標および肺以外の体液状態の指標の両方を使用することにより、肺水腫の治療を制御する方法の例を示すチャート。
【図6】心臓血液量を変調するために内臓領域に神経修飾を送達することにより心臓コンディショニング療法を提供する方法の例を概略的に示すチャート。
【図7】心臓血液量状態の指標を使用して心臓コンディショニング療法を提供する方法の例を示すチャート。
【発明を実施するための形態】
【0077】
詳細な説明
本発明者らは、数ある中でも特に、HF患者における肺水腫は、過剰な肺血液量を、1つ以上の標的とする高体液容量の全身血管床、例えば内臓器官、骨格筋、または皮膚の血管床へと制御可能に再配分することにより、緩和される可能性があることを認めた。HF患者において肺水腫をもたらす機構は、全血量の増大ではなく、肺へ向かう体液の再配分であると考えられている。過剰な肺血液量の肺からの再配分は、例えば、全身小動脈の対象を絞った局所的血管拡張、または、対象を絞った局所的な静脈容量の増大もしくは静脈抵抗の増大によって、達成することができる。
【0078】
図1は、心臓機能管理システム100の例を示す。この例では、システム100は、数ある中でも特に、心臓機能管理デバイス(「CFM」)105、ならびに、デバイス105と、生体の一部、例えば心臓115との間で信号を通信するためのリードワイヤ(「リード」)110を含むことができる。デバイス105の例には、徐脈および抗頻脈ペースメーカー、電気除細動器、細動除去器、組合せ型ペースメーカー/細動除去器、心臓再同期化デバイス、神経修飾デバイス、薬物送達デバイス、または、心臓血管機能のモニタリングもしくは例えば心臓115のための心血管療法を提供することが可能な任意の他の心律動管理装置を挙げることができる。システム100は、他の構成要素、例えば、デバイス105と通信することが可能な局所もしくは遠隔のプログラマ、または肺動脈圧センサのような追加の付属デバイスを備えることができる。
【0079】
システム100は、デバイス105と、内臓器官に関連した血管またはリンパ管192との間で信号を通信するための第2のリード112を含むことができる。内臓器官は、概して、脾臓、肝臓、膵臓、胃、胆のう、小腸、および大腸のうち1つ以上などの内臓の腹
部器官として理解されうる。内臓器官は、概して、「内臓領域」とも呼ばれる、5番目および12番目の胸部肋骨の高さの間(「T5」〜「T12」)に位置している。
【0080】
一例において、システム100は、生物体内に、例えばヒト患者の胸部もしくは腹部、または他所に移植可能または部分的に移植可能であってよい。一例において、システム100の1つ以上の部分(例えばデバイス105)はヒト患者の体外に配置されてもよい。図中の例では、リード110の一部は右心室に配置されているが;リード110の任意の他の配置も用いることが可能である。例えば、リード110は心房内または他所に配置されてもよい。図中の例では、リード112の一部は、内臓器官に関連した血管またはリンパ管192の中に配置されているが;内臓領域または他の領域の内部へのリード112の任意の他の配置も使用可能である。一例において、リード110および112には、市販の単極または双極のペーシング用リードが挙げられる。システム100は、例えばリード110および112に加えて、またはリード110および112の代替として、例えば心臓115、内臓領域(splanchic region)、または他所の中または周囲に適切に配置された1つ以上の他のリードまたは電極(例えばリード付き電極またはリードレス電極)を含むことができる。リードレスの電気刺激電極の一例は、ヘースティングズ(Hastings)らの米国特許出願公開第2009/0018599号、表題「CARDIAC STIMULATION USING LEADLESS ELECTRODE ASSEMBLIES」に記載されており、前記特許文献の開示内容は全体が
参照により本願に組込まれる。
【0081】
一例において、システム100は、例えば体液状態を示す胸部または内臓のインピーダンスを感知するための少なくとも4つの電極を含むことができる。4つの電極を使用するインピーダンス感知の例は、本特許出願の譲受人に譲渡されたハウク(Hauck)らの米国
特許第5,284,136号、表題「DUAL INDIFFERENT ELECTRODE PACEMAKER」に記載されており、前記特許文献の開示内容はインピーダンス感知システムの説明を含む全体が本願に組込まれる。本発明のシステムおよび方法は、様々な数の電極(例えば2個もしくは3個の電極、または4個を超える電極)の使用を含むことができる。一例では、多重導体リード110の第1の導体は、チップ電極120(例えば、心臓115の右室心尖に配置されたもの)のような第1の電極をデバイス105に電気的に結合することができる。多重導体リード110の第2の導体は、リング電極125のような第2の電極をデバイス105に独立に電気的に結合することができる。一例において、多重導体リード112の第1の導体は、チップ電極196(例えば、T12より上の内臓領域に配置されたもの)のような第1の電極をデバイス105に電気的に結合することができる。多重導体リード112の第2の導体は、リング電極194(例えば、T5より下の内臓領域に配置されたもの)のような第2の電極をデバイス105に独立に電気的に結合することができる。一例において、デバイス105は、チタンのような導電性金属から形成された、空気を通さないように密封されたハウジング130を備えることができる。ハウジング130(「ケース」または「缶」とも呼ばれる)は、適切な絶縁体、例えばシリコーンゴムによって、「ケース」または「缶」電極135と呼ばれる第3の電極を形成するウィンドウを除き、その表面全体をほぼ覆われていてもよい。一例において、例えばリード110および112を受承するために、ヘッダ140がハウジング130に載置されてもよい。ヘッダ140は、成型プラスチックのような絶縁性材料から形成可能である。ヘッダ140は、例えばリード110および112を受承し、かつリード110および112の導体をデバイス105に電気的に結合するための、少なくとも1つのレセプタクルを含むことができる。ヘッダ140は第4の電極を含んでもよく、該電極は不関電極145と呼ぶことができる。
【0082】
図2は、デバイス105の一部について、様々な電極への接続の概略図と共に概要を示している。デバイス105は、励振器250のような電気刺激源を備えることができる。励振器250は、ストローブされた一連の電流パルスまたは他の計測値刺激のような電気的興奮信号を、心臓115に(例えばリング電極125とチップ電極120との間に、ま
たは電流パルスを送達するのに適した任意の他の電極構成を使用して)、および内臓領域に(例えば、リング電極194とチップ電極196との間に、または(our)電流パルス
を送達するのに適した任意の他の電極構成を使用して)、送達することができる。励振器250は、コントローラ265から1つ以上のクロック信号または他の制御信号を受信するように構成可能である。励振器250によって提供される興奮信号に応答して、応答信号が、信号処理部255によって(例えばチップ電極120と不関電極145との間で、チップ電極196と不関電極145との間で、または任意の他の適切な電極構成で)感知されうる。一例において、信号処理部255によって感知される応答信号は、経胸的(例えば胸部または胸郭の一部を横切る)インピーダンスまたは内臓(例えば内臓器官を横切る)インピーダンスを表す電圧であってよい。
【0083】
経胸的インピーダンスを計測するための手法の一例は、本特許出願の譲受人に譲渡されたスターマン(Stahmann)らの米国特許第7,387,610号、表題「THORACIC IMPEDANCE DETECTION WITH BLOOD RESISTIVITY COMPENSATION」に記載されており、前記特許文献の開示内容は、インピーダンスの計測のための、例えば経胸的インピーダンスまたは内臓インピーダンスを計測する本願の適用のための手法の説明を含む全体が本願に組込まれる。
【0084】
一例において、インピーダンスに由来する体液状態の信号は、経胸的(胸部または胸郭を横切る)インピーダンスまたは内臓(内臓器官または内臓領域を横切る)インピーダンスを計測することにより得ることができる。例えば、経胸的インピーダンスは、肺水腫に関連する肺の体液状態を示す第1の体液状態指標を得るために計測可能であり、第1の体液状態指標の増大は肺水腫に関連した肺の体液増大と相関する。第1の体液状態指標は、例えば、励振器250、信号処理部255、ならびに電極120および125を備えた第1の体液状態モニタリング回路によってモニタリング可能である。さらに、内臓インピーダンスは、内臓の体液状態を示す第2の体液状態指標を得るために計測可能であり、第2の体液状態指標の増大は内臓の流体の増大と相関する。第2の体液状態指標は、例えば、励振器250、信号処理部255、ならびに電極194および196を備えた第2の体液状態モニタリング回路によってモニタリング可能である。
【0085】
コントローラ265は、治療回路270によって提供される治療を制御するために第1および第2の体液状態指標に関する情報を使用するように構成されうる。一例において、コントローラ265は、治療回路270によって提供される治療を制御するために、第1および第2の体液状態指標に関する情報に加えて、または該情報の代わりに、他の情報を使用するように構成されてもよい。そのような情報の例には、心不全代償不全の警告、感知された生理学的パラメータ、患者が発した警告、またはユーザ入力が挙げられる。治療回路によって提供される治療は、第1または第2の体液状態のうち少なくとも一方を調整することができる。治療回路270によって提供することができる治療法の例には、神経修飾療法、薬物療法、または血管血流制御療法が挙げられる。図2に示される例において、治療回路270は心臓機能管理デバイス105の内部に含められてよい。他の例では、治療回路270は別個の移植デバイスまたは体外デバイスの一部であってもよい。治療回路270が別個のデバイスの一部である場合、デバイス105は治療回路と通信することができる。これは、ヒトの体内または身体の上の2つのデバイスの間の直接通信を含み、そのような通信は、ヒトの体内において、例えば、説明に役立つ実例としては電磁結合、超音波通信、または電気導体としての体組織の使用によって実行可能である。追加として、または別例として、移植された2つのデバイスの間の、または移植されたデバイスと体外デバイスとの間の間接通信であって、例えば通信を実施するための仲介物として局所または遠隔の外部デバイスを使用することによる間接通信が含まれてもよい。実例となる例には、移植されたデバイス105と、別個に移植されたデバイスの中にある治療回路との間の通信であって、例えば、ボストン・サイエンティフィック社(Boston Scientific Co
rp.)(カルディアック・ペースメーカーズ社(Cardiac Pacemakers, Inc.))のLAT
ITUDE(R)システムの使用による通信があり、該システムは、ある対象者の移植型医療用デバイス105からの情報を自動的に収集し、該情報を、例えば通信ネットワーク294を介して安全なリモートコンピュータ292に通信接続可能な外部ローカルインタフェース290を介して、その対象者の別の移植型または携帯型個人用医療用デバイスに伝達することができる。
【0086】
図2はセンスアンプ275の一例を示しており、1つ以上のセンスアンプを使用して、下記に説明されるように、例えば治療の送達を対象者の心臓周期の指定された部分と同期化するために、対象者の体内で心臓の電気的な活動をモニタリングすることができる。さらに、図2はテレメトリトランシーバ285を示しており、該テレメトリトランシーバは、コントローラ265からの情報(例えば第1および第2の体液状態指標に関する情報、または治療の制御に関する情報)を受信し、該情報を例えば外部ローカルインタフェース290との一方向または双方向の無線通信リンクによって伝達するように、構成可能である。ある例において、外部ローカルインタフェース290はさらに、例えば共有の通信ネットワークまたはコンピュータネットワーク294を介して、無線により、またはその他の方法で、外部の遠隔インタフェース292と一方向または双方向に通信することができる。遠隔インタフェース292は、警告またはアラームを提供することによって家庭モニタリングまたは医師もしくは他の医療従事者による対象者の遠隔モニタリングを可能にするように、構成されうる。
【0087】
図3は、信号処理部255の1つ以上の部分の例を概略的に示している。信号処理部255は、アナログ信号処理回路300およびデジタル信号処理回路305を備えることができる。アナログ信号処理回路300の前置増幅器310(プリアンプまたはレシーバとも呼ばれる)の入力部は、例えば励振器250によって提供される上記刺激に応答した信号の受信のために、不関電極145ならびにチップ電極120および196に電気的に結合されうる。励振器250および信号処理部255により時分割多重スキームが使用されて、励振信号が所望のベクトル(例えば経胸的ベクトルおよび経内臓ベクトル)に対して時間的にオーバーラップせずに提供される(また、応答の計測値が所望のベクトルから得られる)ことにより、肺領域および内臓領域からの個別の入力を可能にするようになっていてもよい。別例では、例えば肺および内臓のインピーダンス信号の別々のモニタリングまたは処理のために、別個の信号処理部255が提供されてもよい。アナログ信号処理回路300は、例えば前置増幅器310の出力を受信してローパスフィルタ335に出力信号を提供する、デモジュレータ315を備えることができる。ローパスフィルタ335からの出力信号はアナログ‐デジタル(A/D)コンバータ325によって受信されうる。
【0088】
一例において、A/Dコンバータ325は、およそ1ボルトの入力範囲を有する12ビットの逐次比較形スイッチドキャパシタA/Dコンバータとして実装可能である。一例において、A/Dコンバータ325は、励振器250によって送達された一連の電流パルスに対応する1つの12ビット・ワードを提供する。A/Dコンバータ325の様々な実装が、本発明のシステムおよび方法において使用するのに適切となりうる。
【0089】
一例において、ローパスフィルタ335には、A/Dコンバータ325からの12ビットのデジタル出力信号を受信することができる単極の無限インパルス応答(IIR)デジタルフィルタを挙げることができる。ローパスフィルタ335は、そのローパス臨界周波数およそ0.1Hzを上回る周波数成分を減衰または除去することができる。ローパスフィルタ335の多くの他の異なる例も本発明のシステムおよび方法において使用するのに適切となりうる。ローパスフィルタ335は、ローパスフィルタ335のローパス臨界周波数を上回る信号の周波数成分を、好都合に減衰することができる。減衰される周波数には、心臓115が各心臓周期の間に収縮するときの心臓115の中の血液量の変化に起因
する心臓の拍出信号があり、これは経胸的インピーダンス信号の成分として現われる。一例において、フィルタ335のローパス臨界周波数は、患者の心拍数に適応的に基づいたものであってよい。一例において、ローパス臨界周波数は、患者から得られるいかなる呼吸数信号にも依存しなくてよい。一例において、ローパスフィルタ335はチェビシェフフィルタを使用することができる。一例において、ローパスフィルタ335は楕円フィルタを含むことができる。一例において、ローパスフィルタ335は従来の直接形構造ではなく、状態空間構造を使用することができる。状態空間構造は、係数量子化および丸め雑音の影響をさらに低減することができる。そのような状態空間構造の一例は、レランドB.ジャクソン(Leland B. Jackson)「Digital Filters and Signal Processing」2nd ed., pp. 332-340, Kluwer Academic Publishers, Boston, Mass.に記載されており、前記
文献の開示内容は参照により本願に組込まれる。
【0090】
一例において、デジタル信号処理回路305は、例えばマイクロプロセッサにより実行される一連の命令として、コントローラ265の内部に含められてもよい。一例において、デジタル信号処理回路305は、本明細書中に記載されたデジタル信号処理タスクの実施のために設けられた別個に実装されたハードウェア部分を含むことができる。体液状態計算モジュール340はローパスフィルタ335からの出力信号を受信可能であり、下に説明されるように、得られる体液状態指標をノード260においてコントローラ265に提供することができる。一例において、体液状態計算モジュール340は、任意の適切なマイクロプロセッサ上で実行される一連の命令として実装可能である。一例において、体液状態計算モジュール340は、インピーダンス由来の体液状態情報に基づいて体液状態指標を計算することができる任意の他のハードウェア構成またはソフトウェア構成として実装されてもよい。
【0091】
一例において、体液状態計算モジュール340は、例えばローパスフィルタを通した肺または内臓のインピーダンス信号をそれぞれの閾値と比較するための、コンパレータを含むことができる。この比較の出力は、それぞれの体液状態の指標を提供するために使用することが可能であり、例えば特定の領域のインピーダンスが指定された閾値よりも低下すると該領域における体液の過剰を示す。一例において、指定の閾値は、正常状態(例えば、浮腫なし)の時に対象者から得られるような長期的またはその他のインピーダンスのベースライン値を使用して指定可能である。例えば、指定の閾値は、そのような正常状態の値からのオフセットとして指定されてもよい。一例において、指定の閾値は、異常状態の間、例えば代償不全の発現時、または関連する代償不全の発現に先行する期間中に得られた値を使用して指定されてもよい。
【0092】
一例において、長期の平均(またはその他のベースライン代表値)と短期の平均(またはより急性の代表値)との間の違いまたは比は、体液状態の表示として使用されてもよいし、閾値と比較されるかまたは他の方法で信号処理され、その結果として体液状態の表示が得られてもよい。
【0093】
一例において、体液状態を決定するためにヒストグラム手法が使用されてもよい。そのようなヒストグラム手法の一例は、ハットルスタッド(Hatlestad)らの米国特許出願公
開第2009/0069708号明細書、表題「HISTOGRAM-BASED THORACIC IMPEDANCE MONITORING」に記載されており、前記特許文献は、体液状態を決定するためのヒストグラ
ム手法の使用についての議論含む全体が参照により本願に組み込まれる。
【0094】
図4A〜4Eは、例えばインピーダンス由来の肺および内臓の体液状態の信号の計測のため、または対象とする内臓領域などに対して神経修飾もしくは他の治療法を提供するために使用することができる様々な電極構成の例を概略的に例証する概略図である。図4A〜4Eはそれぞれ、図1に関して上述されたような缶電極135および不関電極145を
含むCFMデバイス105を例証する。図4Aはさらに、図1に関して上記に記載されたような、チップ電極120およびリング電極125を備えた血管内心臓リード110、ならびにチップ電極196およびリング電極194を備えた内臓リード112も示している。
【0095】
図4Aの例では、第1の対象領域(「ROI1」)は心臓115とデバイス105との間に示されている。ROI1は、例えば電極120、125、135および145を使用して、例えば第1の体液状態指標を提供するために使用される肺の体液状態をモニタリングするために、肺水腫に関連した肺の体液のインピーダンス由来の計測値を計測することが可能なエリアを表わす。第2の対象領域(「ROI2」)は、内臓の電極194および196とデバイス105との間に示されている。ROI2は、例えば電極194、196、135、および145を使用して、例えば第2の体液状態指標を提供するために使用される内臓の体液状態をモニタリングするために、内臓のインピーダンスを計測することが可能なエリアを表わす。図4Aは、電極402および404を備えたリード400を含む。リード400およびその関連の電極は、内臓領域に神経刺激療法のような治療を提供するために使用可能であり、該治療は、下記に述べるように、肺の体液状態の情報または内臓の体液状態の情報のうち一方または両方に応答して制御可能である。
【0096】
図4Bは、内臓領域の近位端または近位端付近に(例えば、よりデバイス105に接近して)位置する電極194と、内臓領域の遠位端または遠位端付近に(例えば、デバイス105からより遠くに)位置する電極196とを備えた内臓リード112の例を示している。この場合、ROI2は電極194と196との間にある。一例において、内臓インピーダンスは、例えば励振信号(例えば電流)の送達および応答信号(例えば電圧)の計測の両方を行うための、電極194および196を使用して計測可能であり、該応答信号からインピーダンスを決定可能である。リード400ならびにその関連電極402および404は、内臓領域に神経刺激療法のような治療を提供するために使用可能である。
【0097】
図4Cは、リード112Aおよびリード112Bのような2つの内臓リードの例を示している。リード112Aは電極194を備え、リード112Bは電極196を備えている。図4CのROI2は図4Bと同じとなりうる。内臓インピーダンスは、図4Bに関して上記に記載されたように、例えば電極194および196を使用することによって計測可能である。しかしながら、図4Cでは電極194および196は異なるリード上に示されている。リード400ならびにその関連電極402および404は、内臓領域に神経刺激療法のような治療を提供するために使用可能である。
【0098】
図4Dは、4つの異なる電極194、406、408、および196を備えた内臓リード112の例を示している。電極194および506は内臓領域の近位端または近位端付近に(例えば、よりデバイス105に接近して)位置し、電極408および196は内臓領域の遠位端または遠位端付近に(例えば、デバイス105からより遠くに)位置することができる。ROI2は電極406と408との間に位置することができる。この例において、内臓インピーダンスは、例えば、電極194と196との間に電流を提供し、次いで電極406と408との間の応答電圧を感知することによって、計測可能である。リード400ならびにその関連電極402および404は、内臓領域に神経刺激療法のような治療を提供するために使用可能である。
【0099】
図4Eは、リード112Aおよびリード112Bのような2つの内臓リードの例を示している。リード112Aは電極194および406を備え、リード112Bは電極196および408を備えている。ROI2は、図4Dに関して上記に記載されたように、電極406と408との間に位置することができる。この例では、内臓インピーダンスは、例えば電極194と196との間に電流を提供し、次いで電極406と408との間の応答
電圧を感知することによって、計測可能である。リード400ならびにその関連電極402および404は、内臓領域に神経刺激療法のような治療を提供するために使用可能である。
【0100】
図5は、肺の体液状態の指標および肺以外の体液状態の指標の両方の使用により肺水腫の治療を制御する方法の例を示すチャートである。502では、肺水腫に関連した肺の体液状態を示す第1の体液状態指標がモニタリングされる。第1の体液状態指標は、経胸的インピーダンス計測値から導くことが可能である。例えば、インピーダンス由来の体液計測値を使用する第1の体液状態指標のモニタリングは、例えば、励振器250、信号処理部255、ならびに電極120および125を備えた第1の体液状態モニタリング回路の使用によって実施可能である。第1の体液状態指標のモニタリングは、肺水腫に関連した肺の体液を、例えば胸水のような他の疾患状態または病因に関連した肺の体液から識別することを含みうる。肺水腫に関連した肺の体液のみをモニタリングし、胸水に関連した肺の体液をモニタリングしないために、生理学的情報、患者の症状情報、および姿勢情報のような要素を使用して、本特許出願の譲受人に譲受されたスターマン(Stahmann)らの米国特許出願公開第2008/0108907号、表題「DETECTION OF PLEURAL EFFUSION USING TRANSTHORACIC IMPEDANCE」に記載されているようにして肺水腫に関連した体液を
特異的に検出かつモニタリングすることが可能である。前記特許文献の開示内容は全体が参照により本願に組込まれる。
【0101】
第1の体液状態指標をモニタリングするためにインピーダンス由来の計測値を使用することに加えて、または代替として、肺動脈圧計測値を第1の体液状態指標のモニタリングに使用することができる。肺動脈圧の上昇は、肺水腫に起因する肺の体液増大に概ね相当し、肺動脈圧の低下は肺の体液減少に概ね相当する。肺動脈圧は、例えば、本特許出願の譲受人に譲受されたスターマン(Stahmann)らの米国特許第7,566,308号、表題「METHOD AND APPARATUS FOR PULMONARY ARTERY PRESSURE SIGNAL ISOLATION」に開示さ
れているもののような、肺動脈圧(PAP)信号を感知するために肺動脈内に配置される個別に移植可能な血管内PAPセンサによって計測可能であり、前記特許文献は、PA内に配置された移植可能な圧力センサを使用してPAP信号を感知するという開示を含む全容が参照により本願に組み込まれる。他の例では、PAP信号を感知するために他の圧力センサ構成が使用されてもよい。
【0102】
504では、肺以外の体液状態を示す第2の体液状態指標がモニタリングされる。第2の体液状態指標のモニタリングは、例えば、励振器250、信号処理部255、電極194および196を備えた第2の体液状態モニタリング回路の使用などによって実施可能である。第2の体液状態のモニタリングは、動脈血圧、内臓インピーダンス、骨格筋インピーダンス、または皮膚インピーダンスのうち少なくとも1つをモニタリングすることを含みうる。内臓インピーダンスのモニタリングには、例えば、内臓器官または内臓領域に関連した体液状態を表すインピーダンス由来またはその他の計測値のモニタリングを伴う。
【0103】
内臓インピーダンスは、(1)直接的に、内臓領域において計測されてもよいし、または(2)間接的に、例えば内臓および胸部の領域の両方を横切って計測されてから、胸部領域を横切るインピーダンスの別個の計測値が減算されてもよい。ROI2における内臓インピーダンスは、図4Dに示された電極506および508を使用して直接計測可能である。内臓インピーダンスは、(図4Aに示されるような励磁を送達し応答を計測する4電極の例における)電極194、196、135、および145を使用するような肺および内臓の第1のインピーダンスの計測と、例えば(図4Aに示されるような同様の4電極の例における)電極120、125、135および145の使用によるROI1の対応する肺単独の第2のインピーダンスの計測とによって、間接的に計測可能である。肺および内臓の第1のインピーダンスと肺単独の第2のインピーダンスとの間の差をとることによ
って、内臓インピーダンスが間接的に得られる。
【0104】
506では、第1および第2の体液状態指標に関する情報を使用して、ユーザへの警告もしくは自動プロセスの提供、または肺水腫を治療するための治療の制御がなされうる。該治療は、第1の体液状態(例えば肺の体液状態)または第2の体液状態(例えば肺以外の体液状態)のうち少なくとも一方の調整を目的とすることができる。一例において、第1および第2の体液状態指標に関する情報を使用した治療の制御にコントローラ265が使用されうる。一例において、コントローラ265は、第1および第2の体液状態指標に関する情報に加えて、他の情報、例えばHF代償不全の警告情報または生理的パラメータに関する情報を使用して治療を制御するように構成されてもよい。一例において、コントローラ265は、例えば治療が慢性HFの対象者に間欠的な方式で所定期間にわたって提供される場合のように、第1および第2の体液状態指標に関する情報を使用せずに治療を制御するように構成されてもよい。
【0105】
治療の制御には、肺水腫に関連した肺の体液状態指標の増大に応答して治療を始動または調整することを含みうる。治療の制御は、指定された閾値を下回る内臓の体液状態指標の減少に応答して治療法を始動または調整することを含みうる。内臓の体液状態指標の減少は、肺水腫に起因する肺の体液の増加など、対象者における不適当な体液分布を示す可能性がある。治療は、常時提供されてもよいし、所定の間隔で提供されてもよい。肺または内臓の体液状態指標によって肺水腫が示される場合、治療はより高頻度で提供されうる。更に、治療には、神経修飾療法、薬物療法、または血管血流制御療法が挙げられる。そのような治療は、対象者の局所的血管領域における血管拡張または血管収縮を制御することによって、肺の体液状態または肺以外の体液状態(例えば内臓の体液状態)のうち少なくとも1つを調整するために使用されうる。
【0106】
神経修飾療法は、心臓に直接的な電気刺激を提供して該電気刺激から直接もたらされる脱分極を喚起するのではなく、自律神経系の機能を変調する。自律神経系(ANS)は「不髄意」器官を調節する一方、随意(骨格)筋の収縮は体性運動神経によって制御されている。不髄意器官の例には呼吸器官および内臓器官があり、血管および心臓が含まれる。多くの場合、ANSは不髄意の反射的な方式で機能して、例えば、腺を調節し、皮膚、眼、胃、腸および膀胱の筋肉を調節し、心筋および血管周囲の筋肉を調節する。
【0107】
ANSは交感神経系と副交感神経系とを含んでいる。交感神経系は、緊急事態に対するストレスおよび「戦うか逃げるか反応」に関連している。他の作用の中でもとくに、「戦うか逃げるか反応」は、血圧増大(例えば血管収縮の誘発による)および心拍数増大をもたらして骨格筋の血流を増大させ、消化作用を減少させて「闘争または逃走」のためのエネルギーを提供する。副交感神経系は、休養および「休んで消化する反応」に関連し、他の作用の中でもとくに、血圧低下(例えば血管拡張の誘発による)および心拍数低下をもたらし、消化作用を上昇させてエネルギーを蓄える。ANSは正常な体内機能を維持し、体性神経系と協働する。
【0108】
神経の刺激は、神経連絡を刺激または増大させるために使用されてもよいし、神経連絡を抑制または減少させるために使用されてもよい。神経連絡を刺激する神経刺激の一例は、低周波数信号(例えば20Hz〜50Hz程度の範囲内)を使用することができる。神経連絡を抑制する神経刺激の一例は、高周波数信号(例えば120Hz〜150Hz程度の範囲内)を使用することができる。神経連絡を刺激または抑制するための他の方法も使用可能である。
【0109】
一例において、神経修飾療法は、内臓器官に神経を分布させる上腹部の2つの大きな神経集団のうちの1つである、腹腔神経節に提供されてもよい。腹腔神経節は自律神経系の
交感神経部門の一部であり、ほとんどの消化管に神経を分布させる。高周波の神経刺激は、CFMデバイスから下大静脈を通って腹腔神経節へと走るリードに接続された電極を介するようにして、腹腔神経節に提供されてもよい。そのような神経刺激は、腹腔神経節の交感神経系における神経連絡を抑制して、内臓器官内およびその周囲の血管床の血管拡張をもたらすことができる。これらの高キャパシタンスの内臓血管床の血管拡張は、血液量の再配分をもたらし、内臓領域への血流を増大させる結果として肺領域における血液量を減少させるようになっていると考えられる。肺領域における血液量減少は、ひいては肺水腫に関連した肺の体液の減少を引き起こす可能性がある。
【0110】
一例において、神経修飾療法は、脊髄の神経に、例えば内臓器官に分布する神経が位置しうる場所である第5よび第6胸椎(「T5」〜「T6」)の高さに、直接提供されてもよい。神経刺激は、CFMデバイスから鎖骨下静脈および胸管を通って脊髄のT5/T6領域へと走るリードに接続された電極を介するようにして、脊髄に提供されてもよい。脊髄は交感神経および副交感神経の両方を含む。副交感神経を刺激するための低周波神経刺激、または交感神経を抑制するための高周波神経刺激の使用は、内臓器官内およびその周囲の血管床の血管拡張をもたらすことができる。上述のように、内臓の血管床の血管拡張は肺の血管床からの血液の再配分をもたらし、これにより肺水腫を縮小すると考えられている。
【0111】
神経修飾は、より低い高さで、例えば第4腰椎(「L4」)の高さで脊髄に提供されてもよい。L4の高さにおいて脊髄から出る神経には、脚部の骨格筋に分布する神経が挙げられる。内臓の血管床と同様に、骨格筋の血管床は概して高キャパシタンスであり、血流の大規模な増加が可能となっている。したがって、脚部の骨格筋の血管床の血管拡張を引き起こす神経修飾を使用して、上述のようにして血流の再配分を介して肺水腫を治療することができると考えられる。
【0112】
更に、神経修飾は、例えば食道神経叢またはその下方における迷走神経の刺激または抑制によるなど、副交感神経系の内臓神経に対して提供されてもよい。神経修飾は、神経カフを介して、または経静脈的もしくは経リンパ管的な刺激/抑制を介して提供されてもよい。神経修飾は、交感神経系の緊張を変調するための副腎神経の刺激または抑制により提供されてもよい。圧受容器の刺激または抑制は、神経修飾を提供する別の例である。
【0113】
一例において、局所的な血管拡張または血管収縮をもたらす治療が、少なくとも2つの別個の局所的血管領域において同時に制御されてもよい。これは、2つの別個の局所領域の間の体液バランスの調整をもたらすことができる。例えば、局所的な血管収縮療法が脚部の骨格筋に提供される一方で、局所的な血管拡張療法が内臓領域に提供されてもよい。血液量のそのような再配分は、肺の血管床の血液量減少をもたらすことによって、肺水腫を緩和すると考えられる。更に、その2つの別個の局所領域を、例えば一方の領域で血管拡張、他方の領域で血管収縮を引き起こすことにより、同時に標的とすることで、一つの領域に対する標的療法の結果生じるおそれのある全身血圧の低下または上昇を防止することができる。
【0114】
一例において、肺の体液状態または肺以外の体液状態のうち少なくとも一方を調整するための治療の制御は、該治療を抑制することを含みうる。例えば、治療は所定期間提供された後で抑制されてもよい。治療は、指定された閾値を下回る肺の体液状態指標の減少に応答して低減または抑制されてもよい。この場合、肺水腫は改善済みなので、治療はもはや必要でないことになろう。治療は、指定された閾値を上回る肺の体液状態指標の増大に応答して抑制されてもよい。この場合、肺水腫を有効に治療できなかったので該治療は中止されることになろう。治療は、指定された閾値を上回る肺以外の体液状態指標の増大に応答して縮小または停止されてもよい。この場合、血液は既に肺以外の領域に再配分され
ており、その領域へのさらなる再配分は末梢性浮腫またはその他の有害事象をもたらすことも考えられる。最後に、治療は、指定された閾値を下回る肺以外の体液状態指標の減少に応答して停止されてもよい。この場合、肺水腫が解消されたかどうかにかかわらず、さらなる処置は臓器の低血圧または低灌流をもたらすことも考えられる。指定された閾値を越える上記体液状態の増減の任意の組合せを使用して治療を終了することが考えられる。
【0115】
一例において、肺の体液状態または肺以外の体液状態のうち少なくとも1つを調整するための治療の制御は、治療の送達を対象者の心臓周期の指定された部分と同期化することを含むことができる。例えば、治療の送達は対象者の心臓周期の収縮期の部分と同期化されてもよい。これはHFの患者において後負荷を軽減する助けとなり、その結果、弱った心筋にかかっているストレスをより少なくすることになる。同様に、治療の送達は、対象者の心臓周期の他の部分、例えば心拡張期、またはP波、T波、もしくはQRS群を含む特定の波形の出現と同期化されることも考えられる。
【0116】
治療は急性の方式で提供されてもよいし、慢性の方式で提供されてもよい。一例において、急性の治療は、第1および第2の体液状態指標、代償不全の警告、患者が発した警告、または医師の入力に関する情報に応答して始動されうる。例えば、代償不全の警告は、各々が肺水腫の存在を示唆する可能性のある、肺の体液インピーダンスの減少、肺動脈圧の上昇、または内臓インピーダンスの上昇に基づいて、CFMデバイスによって発せられうる。代償不全の警告の他の例には、心拍数情報、呼吸速度情報、呼吸タイミング情報、血圧情報、肺一回呼吸量情報、体重情報、胸内インピーダンス情報(例えば、体液の蓄積を評価するための情報、呼吸関連のパラメータをモニタリングするための情報、または心臓関連のパラメータをモニタリングするための情報)、心音のタイミング情報、心音の大きさ情報(例えばS3の心音の大きさ)または他の情報(例えば生理学的情報に関するユーザのクエリに対する応答)、に基づくものが挙げられる。HF代償不全の警告は、本特許出願の譲受人に譲受されたハットルスタッド(Hatlestad)らの米国仮特許出願第61
/096,364号、表題「CHRONICALLY IMPLANTED ABDOMINAL PRESSURE SENSOR FOR CONTINUOUS AMBULATORY ASSESSMENT OF RENAL FUNCTIONS」に記載されているように、腹腔
内の圧力センサから得られた情報に基づくことが可能であり、前記特許文献の全開示内容は参照により本願に組込まれる。HF代償不全を検出してHF代償不全の警告を発するために使用可能な生理学的な徴候および症状についてのさらなる議論は、本特許出願の譲受人に譲受されたSiejkoらの米国仮特許出願第60/098,858号、表題「SYSTEM AND
METHOD FOR DETECTION OF HF DECOMPENSATION BASED ON SIGNS AND SYMPTOMS」に見出すことが可能であり、前記特許文献の全開示内容は参照により本願に組込まれる。一例において、急性の治療は、既に発せられている代償不全の警告に応答して提供されるように制御されてもよい。これは、対象者が急性のHF代償不全を示している場合に限り治療が提供されることを確実にする助けとなりうる。急性の治療は、例えば最大24時間、または対象者の第1および第2の体液状態指標もしくは他の生理的パラメータがベースラインに戻るまで、常時送達されうる。
【0117】
治療は慢性の方式で送達されてもよい。一例において、慢性の治療は、代償不全の警告が指定された先行期間内に発せられていない場合にのみ提供されてもよい。このことは、慢性の治療が、医師による応急手当を必要とする可能性のある急性患者に対してではなく、慢性HFの患者に提供されるのみであることを確実にする助けとなる。慢性の治療には、例えば、1日当たり15分間提供される治療のような間欠治療が挙げられる。慢性の治療を制御するために第1および第2の体液状態指標に関する情報を使用することに加えて、患者のパラメータに関する他の情報を使用して治療を制御することもできる。例えば、対象者の姿勢を、本特許出願の譲受人に譲受されたワング(Wang)らの米国特許第7,471,290号、表題「POSTURE DETECTION SYSTEM」に記載されているようにして、姿勢感知装置を使用して検出することが可能であり、前記特許文献の開示内容は全体が参照に
より本願に組込まれる。治療は、一例では、対象者が臥位にある場合にのみ提供されるように制御されうる。臥位は、鉛直から規定の度数(例えば65度)をなして背が倒された角度として決定可能である。肺水腫のHF患者は一般に、肺が体液で一杯であり呼吸が困難になっているため臥位に耐えることができない。従って、急性HFまたは不安定なHFの患者は、数個の枕を使用して眠る場合もあれば、立位で眠る場合もあり、これは肺循環または肺のうち少なくともいずれかに貯留する体液の量を制限する助けとなる。したがって、対象者が臥位の場合にのみ提供されるように治療を制御することは、この治療が慢性HFに罹患している対象者にのみ使用され、即時入院を必要とする可能性のあるHFの急性増悪および肺水腫の対象者には用いられないことを確実にする方法となりうる。さらに、対象者が臥位の場合にのみ提供されるように治療を制御することは、重力が該治療によって誘導される血液再配分の妨げになるのを防止するのにも有用となりうる。
【0118】
姿勢に加えて、患者の身体活動レベルを、第1および第2の体液状態指標に関する情報と共に使用して、慢性の治療が制御されてもよい。例えば、対象者の身体活動レベルが加速度計を用いて検出されてもよい。治療は、一例においては、対象者の身体活動レベルが指定された閾値を下回る場合にのみ提供されるように制御されてもよい。これは、一例においては、患者の安静時または就寝中に治療が提供されるのを確実にする助けとなりうる。患者の安静時または就寝中に治療を提供することは、血液量の再配分の妨げになることも考えられる重力の変化または代謝要求の変化を回避するために有用となりうる。患者がいつ眠っているかを測定するために、睡眠検出器が備えられてもよい。睡眠検出器の一例は、カルディアック・ペースメーカーズ・インコーポレイテッド(Cardiac Pacemakers, Inc.)に譲渡されたカールソン(Carlson)らの米国特許出願シリアル番号第09/80
2,316号、表題「CARDIAC RHYTHM MANAGEMENT SYSTEM USING TIME-DOMAIN HEART RATE VARIABILITY INDICIA」に記載されており、前記特許文献は、睡眠検出器の説明を含む
全体が参照により本願に組み込まれる。睡眠検出器の別の例は、カルディアック・ペースメーカーズ・インコーポレイテッドに譲渡されたハットルスタッド(Hatlestad)らの米
国特許出願シリアル番号第2004/0073128号、表題「DETECTION OF CONGESTION FROM MONITORING PATIENT RESPONSE TO RECUMBENT POSITION」に記載されており、前記特許文献は全体が参照により本願に組み込まれる。
【0119】
急性または慢性の治療は第1および第2の体液状態指標を使用してモニタリングされてもよい。したがって、図5に示されるように、第1および第2体液状態指標は、例えばその治療が肺水腫を治すように作用しているか否かを評価するために、該治療の提供または制御の後に継続してモニタリングされてもよい。さらに、治療は警告センサのフィードバックまたは患者のフィードバックによってモニタリングされてもよい。
【0120】
心臓コンディショニングなどのためのさらなる実施例
別の適用としては、例えば間欠周期の心臓血液量再配分により提供可能な、心臓コンディショニング療法を挙げることができる。本発明者らは、心臓と、その他の高体液容量の全身血管床、例えば内臓器官、骨格筋、または皮膚の血管床との間の短周期の血流再配分がHF患者にとって有益な可能性があることを認めた。
【0121】
心臓血液量の一時的増加は心筋層の伸展において有用となり得る。心筋の伸展は、例えば、心房からの心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)および心室からの脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)の放出を誘導することにより、治療上の利益をもたらすことができる。ANPは、血圧上昇および血液量増大に応答して血管拡張および利尿を引き起こすことができるホルモンである。ANPは、例えば、虚血事象の間または虚血事象後に生じる可能性のある心筋層の肥厚および線維化(「リモデリング」と呼ばれることが多い)を抑制する助けとなりうる。ANPおよびBNPは、レニン‐アンギオテンシン‐アルドステロン系(RAAS)を抑制することにより適応的でない心臓リモデリングを防止また
は抑制することができる、とも考えられている。したがって、ANPおよびBNPは、心臓リモデリングを抑制するだけでなく心臓に対する血液量過負荷のストレスを低減することにより、HF患者に有益となる可能性がある。
【0122】
本発明者らは、心臓における一時的な血液量過剰を作り出すことにより、例えば心臓の前負荷もしくは後負荷または両方を増大させることにより、ANPおよびBNPの放出が増大されてその結果心筋層の伸展を引き起こす可能性があることを認めた。心臓への血液の一時的な再配分は、例えば、全身の小動脈の対象を絞った局所的血管収縮、または対象を絞った局所的な静脈キャパシタンスの低下もしくは静脈抵抗の低下によって達成可能である。これらの対象を絞った血管反応は、例えば上述の神経修飾に類似しているような局所的な神経修飾によって達成されうる。一例において、一時的な血液再配分療法は、1日当たり約15分間、例えば1日当たり5分間を3回として施用可能である。
【0123】
図1に示したCFMデバイス105に類似の移植式医療用デバイスは、上述の心臓コンディショニング療法を提供するために使用可能である。一例において、電極120または125に類似の4個以上の電極は、心臓内、例えば心臓115の右心室内に位置付けられた多重導体リード110に配置されうる。T5とT12との間、かつ電極194と196との間の内臓領域に配置される多重導体リード112は、図1に関して上述されるように構成可能である。
【0124】
デバイス105は、図2に関する上記の説明と同じように構成可能である。一例において、信号処理部255によって感知される応答信号は、心臓内(例えば心臓の少なくとも一部を横切る)インピーダンスまたは内臓の(例えば内臓器官の少なくとも一部を横切る)インピーダンスを表わす電圧であってよい。心臓内インピーダンスを計測するための手法の一例は、本特許出願の譲受人に譲渡されたチタック(Citak)らの米国特許第4,7
73,401号、表題「PHYSIOLOGIC CONTROL OF PACEMAKER RATE USING PRE-EJECTION INTERVALS AS THE CONTROLLING PARAMETER」に記載されており、前記特許文献の開示内容
は、心臓内インピーダンスを計測するための手法の説明を含む全体が本願に組込まれる。
【0125】
一例において、インピーダンスに由来する心臓血液量状態の指標は、例えば心臓内の(心臓内部の)インピーダンスの計測によって得ることができる。例えば、心臓内インピーダンスは、心臓血液量状態についての心臓血液量状態指標を得るために計測されてもよく、心臓血液量状態指標の増大は心臓の血液量の増加と相関する。一例において、インピーダンスに由来する心臓血液量状態の指標は、心臓内インピーダンスの成分である拍出インピーダンスの計測によって得ることができる。拍出インピーダンスは心臓周期における心臓内の血液量の変化を表す。拍出インピーダンスは、例えば心臓内インピーダンスの最高計測値と最低計測値との間の差をとることにより、心臓内インピーダンスから導き出すことが可能である。一例において、インピーダンスに由来する心臓血液量状態の指標は、例えば肺のインピーダンスに基づいた心臓血液量状態の指標を提供するようにして、経胸的インピーダンスを計測することにより得ることができる。経胸的インピーダンスは図3に関して上記に説明されたように計測可能である。
【0126】
心臓血液量状態の指標は、心臓血液量状態モニタリング回路によってモニタリング可能であり、該回路は、例えば、励振器250、信号処理部255、ならびに電極120および125のような電極を備えることができる。さらに、内臓の血液量が、内臓血液量状態についての内臓血液量状態指標を得るために計測されてもよく、内臓血液量状態指標の増大は内臓の血液量の増加と相関する。内臓血液量状態指標は、内臓血液量状態モニタリング回路によってモニタリング可能であり、該回路は、例えば、励振器250、信号処理部255、ならびに電極194および196のような電極を備えることができる。
【0127】
コントローラ265は、一例において、治療回路270によって提供される治療を制御するために、心臓血液量状態の指標もしくは内臓血液量状態の指標、または両方に関する情報を使用するように構成可能である。治療回路270によって提供される治療は、心臓血液量状態または内臓血液量状態のうち一方または両方を一時的に調整することができる。治療回路270によって提供されうる治療の一例には、上述したものに類似の、内臓領域に提供される神経修飾療法が挙げられる。治療回路270は、局所的な内臓の血管収縮をもたらし、ひいては内臓血液量を減少させて心臓血液量を増加させることが可能な神経修飾を提供することができる。治療回路270は、局所的な内臓の血管拡張をもたらし、ひいては内臓血液量を増加させて心臓血液量を減少させることが可能な神経修飾を提供することもできる。
【0128】
一例において、コントローラ265は、治療回路270によって提供される治療を制御するために、心臓および内臓血液量状態の指標に関する情報に加えて、または該情報の代わりに、他の情報を使用するように構成されてもよい。そのような情報の例には心拍数、心拍出量、心筋収縮能、動脈血圧、および静脈血圧が挙げられる。これらの生理学的指標は、コンディショニング療法を提供するために一時的に心臓の血液量を増加させることが好ましくない場合のある事例を同定するために使用可能である。例えば、心拍数の増加、拍出量の減少、収縮能の低下、動脈血圧の低下、静脈血圧の上昇、または上記のうちの任意の組合せにより、心臓の状態の弱体化または障害を示すことができる。これらの条件下では、心臓は、血液量の一時的増加を代償することができない場合があり、患者はコンディショニング療法から恩恵を受けることができない可能性がある。したがって、コントローラ265は、第1の指定された閾値を上回る心拍数の増加、第2の指定された閾値を下回る心拍出量の減少、第3の指定された閾値を下回る心筋収縮能の計測値の低下、第4の指定された閾値を下回る動脈血圧の低下、第5の指定された閾値を上回る静脈血圧の上昇、または上記のうち2以上の任意の組合せに応答して、治療回路270により内臓領域に提供される神経修飾の量を調整することができる。1つ以上のそのような生理学的指標の存在下では、コントローラ265は、内臓領域への交感神経刺激の量の減少、内臓領域への交感神経抑制の量の増大、内臓領域への副交感神経刺激の量の増大、内臓領域への副交感神経抑制の量の減少、または上記のうち2以上の任意の組合せを行うように構成可能である。そのような神経修飾療法の効果は、内臓血液量の増加および心臓血液量の減少であってよく、これが弱体化または障害された心臓に対する負荷を軽減しうると考えられる。
【0129】
図2に示される例において、治療回路270は心臓機能管理デバイス105の内部に含められてよい。他の例では、治療回路270は別個の移植デバイスまたは外部デバイスの一部であってもよい。治療回路270が別個のデバイスの一部である場合、デバイス105は治療回路と通信することができる。これは、人体内または人体上の2つのデバイスの間の直接通信を含み、そのような通信は、人体内部において、実例となる例としては電磁結合、超音波通信、または電気導体としての身体組織の使用を介して実行可能である。該通信は、追加として、または別例として、2つの移植デバイスの間、または移植デバイスと外部デバイスとの間の間接通信であって、例えば通信を実施するための仲介物として局所または遠隔の外部デバイスを使用することによる、例えば誘導、RF、またはその他の遠隔通信を介する間接通信を含むことができる。実例となる例には、移植されたデバイス105と、別個に移植されたデバイスの中にある治療回路との間の通信、例えば、ボストン・サイエンティフィック社(Boston Scientific Corp.)(カルディアック・ペースメ
ーカーズ社(Cardiac Pacemakers, Inc.))のLATITUDE(R)システムの使用による通信があり、該システムは、ある対象者の移植型医療用デバイス105からの情報を自動的に収集し、該情報を、例えば通信ネットワーク294を介して安全なリモートコンピュータ292に通信接続可能な外部ローカルインタフェース290によって、その対象者の別の移植型または携帯型個人用医療用デバイスに伝達することができる。
【0130】
信号処理部255は、図3に関して上述されたものと同様に構成可能である。しかしながら、例えば胸部インピーダンス信号の、より低周波数の肺水腫または同様の体液状態の成分の代わりに、心臓内インピーダンス信号の心収縮の成分を通すように、ローパスフィルタ355の代わりにバンドパスフィルタを使用することができる。(しかしながら、内臓インピーダンス信号のより低周波数の体液状態の成分を通すように、今までどおりローパスフィルタ355も含められてよい)。さらに、血液量状態計算モジュールが、体液状態計算モジュール340の代わりに使用されてもよい。血液量状態計算モジュールは、バンドパスフィルタからの出力信号を受信可能であり、以下に説明されるように、得られた血液量状態の表示をノード260でコントローラ265に提供することができる。一例において、血液量状態計算モジュールは、マイクロプロセッサによって実行されるかまたは他の方法で実施される一連の命令として実装可能である。一例において、血液量状態計算モジュールは、インピーダンスに由来する血液量状態の情報に基づいて血液量状態の指標を計算することができる任意の他のハードウェアまたはソフトウェアの構成として実装可能である。
【0131】
一例において、血液量状態計算モジュールは、例えばバンドパスフィルタを通った心臓内インピーダンス信号またはローパスフィルタを通った内臓インピーダンス信号をそれぞれの閾値と比較するための、コンパレータを含むことができる。比較の出力結果を使用してそれぞれの血液量状態の指標を提供可能であり、例えば、特定の領域のインピーダンスが指定された閾値より下に下がった場合は該領域における血液過剰を示す。一例において、指定の閾値は、長期的またはその他のベースラインのインピーダンス値、例えば正常状態(例えば、心臓血液量の過負荷がない)の間に対象者から得られるような値を使用して指定可能である。例えば、指定の閾値は、そのような正常状態の値からのオフセットとして指定可能である。一例において、指定の閾値は、異常状態の間、例えば代償不全発生時、または関連する代償不全の発生に先行する期間に得られた値を使用して指定されてもよい。
【0132】
一例において、長期の平均(または他のベースライン代表値)と短期の平均(またはより急性の代表値)との間の違いまたは比は、血液量状態の表示として使用されてもよいし、閾値と比較されるかまたは他の方法で信号処理されて、結果として生じる血液量状態の表示が得られてもよい。
【0133】
コントローラ265は、心臓血液量状態の指標が指定された閾値を下回る場合に、内臓領域への(治療回路270によって提供される)神経修飾の量を調整するように構成可能である。例えば、コントローラ265は、心臓血液量状態の指標が指定された閾値を下回る場合に内臓領域への交感神経刺激の量を増大させるように構成されうる。一例において、コントローラ265は、心臓血液量状態の指標が指定された閾値を下回る場合に内臓領域への交感神経抑制の量を減少させるように構成されうる。一例において、コントローラ265は、心臓血液量状態の指標が指定された閾値を下回る場合に内臓領域への副交感神経刺激の量を減少させるように構成されうる。一例において、コントローラ265は、心臓血液量状態の指標が指定された閾値を下回る場合に内臓領域への副交感神経抑制の量を増大させるように構成されうる。上記の神経修飾療法のうちいずれも、単独または組合せで、内臓血液量の減少および心臓血液量の増大をもたらすことができると考えられる。
【0134】
コントローラ265は、心臓血液量状態の指標が指定された閾値を上回る場合に、内臓領域への(治療回路270によって提供される)神経修飾の量を調整するように構成可能である。例えば、コントローラ265は、心臓血液量状態の指標が指定された閾値を上回る場合に内臓領域への交感神経刺激の量を減少させるように構成されうる。一例において、コントローラ265は、心臓血液量状態の指標が指定された閾値を上回る場合に内臓領域への交感神経抑制の量を増大させるように構成されうる。一例において、コントローラ
265は、心臓血液量状態の指標が指定された閾値を上回る場合に内臓領域への副交感神経刺激の量を増大させるように構成されうる。一例において、コントローラ265は、心臓血液量状態の指標が指定された閾値を上回る場合に内臓領域への副交感神経抑制の量を減少させるように構成されうる。上記の神経修飾療法のうちいずれも、単独または組合せで、内臓血液量の増大および心臓血液量の減少をもたらすことができると考えられる。
【0135】
一例において、コントローラ265は、肺水腫および心臓内の血液量過負荷を示唆する経胸的インピーダンスの低下に応答して、内臓領域への(治療回路270によって提供される)神経修飾の量を調整するように構成可能である。例えば、経胸的インピーダンスの低下に応答して、コントローラは、内臓領域への交感神経刺激の量の減少、内臓領域への交感神経抑制の量の増大、内臓領域への副交感神経刺激の量の増大、内臓領域への副交感神経抑制の量の減少、または上記のうち任意の組合せを行うように構成されうる。上記の神経修飾療法のうちいずれも、単独または組合せで、内臓血液量の増大および心臓血液量の減少をもたらすことによって、心臓の血液量過負荷を緩和すると考えられる。
【0136】
一例において、デバイス105は、コントローラ265に連結可能なペーシング回路によって心臓血液量再配分療法を提供することができる。コントローラ265は、心筋層の一部を伸展させるために、固有の収縮に対して非同期されているかまたは固有の収縮から十分にオフセットされたペーシングパルスを発するようにペーシング回路を制御するように構成可能である。そのようなペーシング療法は、神経修飾療法に加えて、または該療法の代わりに、治療回路270によって提供されうる。
【0137】
一例において、デバイス105は、心房性不整頻拍を抑制防止するために心臓の血液量再配分療法を使用するように構成可能である。心拍出量の低下または弁の機能不全に起因する拡張終期圧の上昇は、心房の伸展の増大を引き起こす可能性があり、これが心房性不整頻拍をもたらす場合があると考えられている。更に、心臓の左側における血液量の低下は心房の伸展を緩和し、したがって心房性不整脈を抑制または防止するのに役立つと考えられている。一例において、デバイス105は、コントローラ265に連結可能な心房性催不整脈状態センサを備えることができる。心房性催不整脈センサは、一例では、心電図の形態変化の変化、心拍数の変化、または心拍数の規則性の変化を感知するように構成可能である。コントローラ265は、心房性催不整脈状態の検出に応答して内臓領域への治療回路270による神経修飾の送達を制御するように構成可能である。一例において、治療回路270は、不整頻拍治療法、例えば細動除去または不整頻拍治療ペーシング(ATP)に伴って内臓領域に神経修飾を送達するように構成可能である。心房性催不整脈状態に応答して送達されうる神経修飾療法の例には、副交感神経刺激の量の増大、副交感神経抑制の量の減少、交感神経抑制の量の増大、または交感神経刺激の量の減少が挙げられる。神経修飾のこれらの例は、内臓血液量の増加および心臓血液量の減少をもたらすことができる。神経修飾は、不整頻拍治療後の電気除細動が成功し次第、または心房性催不整脈状態がもはや検出されない場合、中止することができる。
【0138】
心臓の血液量再配分療法を提供するために使用される電極構成は、図4A〜4Eに関して上述されたものと同様であってよいが、ROI1は心臓内にある2つの異なる電極の間にあるものとする。
【0139】
図6は、心臓血液量を変調するために内臓領域に神経修飾を送達することにより心臓のコンディショニング療法を提供する方法の例を概略的に示すチャートである。600において、神経修飾療法が内臓領域に送達されうる。内臓領域への神経修飾療法の送達の例は、図5に関して上述されている。神経の電気的活性化(例えば刺激)は、神経伝達物質の制御かつ対象設定された放出を伴うことができる。神経ペプチドYおよびノルエピネフリンのようないくつかの神経伝達物質は血管収縮を引き起こすことが可能であり、ATPお
よびアセチルコリン(ACh)のようないくつかは血管拡張を引き起こすことができる。同じ神経が、異なる刺激プロトコールの下で異なる神経伝達物質を放出し、したがって標的の血管または臓器の広く様々な機能的反応を誘発することが可能である。さらに、神経伝達物質が結合する受容体の種類が血管の機能的反応を決定することができる。例えば、AChは、骨格筋血管系の血管拡張を引き起こし、冠状動脈循環においては収縮を引き起こすことができる。したがって、交感神経線維の刺激は一般に血管収縮を引き起こすが、交感神経線維が血管拡張を引き起こしうる場合もある。
【0140】
602では、内臓領域への神経修飾の送達は、所定期間の間制御されて、該所定期間の少なくとも一時期は心臓血液量を変調するのに十分な量とすることが可能である。図5に関して上述されるように、内臓領域への神経修飾の送達の制御は、局所的な内臓の血管収縮療法または局所的な内臓の血管拡張療法を提供することを含みうる。内臓血管床の間欠的な血管収縮とその後の血管拡張は、血液による心臓の一時的負荷とその後の除荷をもたらすと考えられる。内臓血管床の血管収縮は、血液が内臓領域から心臓へと再配分されるので心臓負荷をもたらすと考えられる。同様に、内臓血管床の血管拡張は、血液が心臓から内臓領域へと再配分されるので心臓除荷をもたらすと考えられる。心臓のこの間欠的な負荷および除荷は心筋の伸展を引き起こし、上述のように、心臓細胞からのANPまたはBNPのうち少なくともいずれか一方の放出をもたらすことができる。一例において、内臓の血管収縮は1日当たり約20〜30分の期間にわたって提供されてもよい。そのような、内臓の血管収縮/血管拡張の間欠的な短期負荷サイクルは、心臓血液量再配分とその結果生じる心筋の伸展の作用を高めることができる。
【0141】
一例において、図6に示された方法は、心拍数、心拍出量、または心筋収縮能のモニタリングをさらに含むことができる。血液量再配分療法の際に、拍出量の減少、収縮能の低下、心拍数の劇的な上昇、動脈血圧の低下、または静脈血圧の上昇がある場合、神経修飾は、弱体化した心臓に対して過剰なストレスがかかるのを回避するように、調整または中止することが可能である。そのような弱体化した心臓は、再配分療法において提供される高い前負荷を代償することができない可能性がある。神経修飾は、例えば、内臓領域への交感神経刺激の減少、内臓領域への交感神経抑制の増大、内臓領域への副交感神経刺激の増大、または内臓領域への副交感神経抑制の減少により、調整可能である。神経修飾のそのような調整は、内臓の血管拡張、ひいては心臓血液量の減少を引き起こすことができる。これは、心臓に対するストレスを緩和する助けとなりうる。
【0142】
一例において、図6に示された方法は、心筋層の一部に伸展をもたらすために、固有の収縮と非同期化されているかまたは固有の収縮から十分にオフセットされた心臓ペーシングパルスを一時的に送達することをさらに含みうる。例えば、短いAVDまたはVVIモードのペーシングは、心臓が非同期に拍動して、心房または心室の血液量増加をもたらし、ひいてはそれぞれの房室における伸展の増大をもたらすように提供される。上述のように、一時的な伸展は、ANPまたはBNPのうち少なくともいずれか一方の放出を通じて心臓のコンディショニングをもたらすことができる。
【0143】
一例において、図6に示された方法は、心房性催不整脈状態の検出と、心房性催不整脈状態の検出に応答した内臓領域への神経修飾の送達とを含むことができる。心房性催不整脈状態の一例は、心拍出量の低下または弁の機能不全に起因する拡張終期圧の上昇である。拡張終期圧の上昇は、心房の伸展の増大を引き起こし、かつ心房性不整頻拍をもたらす可能性がある。血液を心臓から遠ざけて内臓領域に向かって再配分することにより、心房の伸展を緩和し、不整脈を防止することができると考えられる。一例において、神経修飾のような再配分療法は、感知された心房性不整脈の際に始動されてもよい。さらに、そのような再配分療法は、細動除去または不整頻拍治療ペーシングのような不整頻拍治療法に伴って提供されてもよい。感知された心房性不整脈または心房性催不整脈状態に応答して
送達されうる神経修飾療法の例には、副交感神経刺激の量の増大、副交感神経抑制の量の減少、交感神経抑制の量の増大、または交感神経刺激の量の減少が挙げられる。神経修飾のこれらの例は、内臓血液量の増加および心臓血液量の減少をもたらすことができる。神経修飾は、不整頻拍治療後の電気除細動が成功し次第、または心房性催不整脈状態がもはや検出されない場合、中止することができる。
【0144】
図7は、心臓血液量状態の指標を使用して心臓コンディショニング療法を提供する方法の例を示すチャートである。700において、心臓血液量状態がモニタリングされる。心臓血液量状態のモニタリングは、例えば、心臓内インピーダンスのモニタリングにより行うことができる。心臓内インピーダンスを計測する方法の一例は、上記に引用されたチタック(Citak)らの文献に記載されている。心臓血液量状態のモニタリングは肺インピー
ダンスを示す経胸的インピーダンス計測値のモニタリングにより行うこともできる。例えば、指定された閾値を下回る肺インピーダンスの低下は肺水腫を示している可能性があり、これはひいては心臓容量の過負荷を示唆する可能性がある。更に、一例において、心臓血液量状態のモニタリングは、内臓血液量状態のモニタリングと同時に行われてもよい。この例では、心臓血液量状態および内臓血液量状態の両方に関する情報が、血液再配分療法を制御するために使用されうる。
【0145】
702において、心臓血液量状態の指標はモニタリングされた心臓血液量状態のデータを使用して提供される。心臓血液量状態の指標は心臓内インピーダンスに基づいていてもよい。一例において、心臓血液量状態の指標は、心臓内インピーダンスの最高計測値と最低計測値との間の差をとることなどにより、心臓内インピーダンスから算出可能な計測値である拍出インピーダンスに基づくことができる。拍出インピーダンスは、心臓周期における心臓内での血液量の変化を表わす。
【0146】
704では、内臓領域への神経修飾の送達は、閉ループフィードバック構成のように、心臓血液量状態の指標を使用して制御される。一例では、心臓血液量状態の指標が閾値と比較され、心臓血液量状態の指標が第1の閾値を下回る場合に、内臓領域に送達される神経修飾の量が調整されうる。心臓血液量状態の指標は、例えば、心臓血液量が低減されるように神経修飾によって一時的に除荷された心臓において、第1の閾値を下回る可能性がある。これらの条件下では、心臓の一時的負荷は好都合となりうるものであり、心臓体積の増大および心筋の伸展をもたらす。心臓の一時的負荷は、例えば、内臓領域への交感神経刺激の量の増大、内臓領域への交感神経抑制の量の減少、内臓領域への副交感神経刺激の量の減少、または内臓領域への副交感神経抑制の量の増大により実施可能である。神経修飾の上記の各例は、内臓の血管収縮、ひいては内臓領域から心臓への血液の再配分をもたらすことができる。
【0147】
一例において、心臓血液量状態の指標は閾値と比較されてもよく、心臓血液量状態の指標が第2の閾値を上回る場合に、内臓領域に送達される神経修飾の量が調整されうる。心臓血液量状態の指標は、例えば、心臓血液量が増大し、かつ心筋層が伸展されるように、神経修飾によって一時的に負荷をかけられた心臓において、第2の閾値を上回る可能性がある。これらの条件下では、心臓の一時的除荷は好都合となりうるものであり、心臓体積の減少および心筋の伸展の緩和をもたらす。心臓の一時的除荷は、例えば、内臓領域への交感神経刺激の量の減少、内臓領域への交感神経抑制の量の増大、内臓領域への副交感神経刺激の量の増大、または内臓領域への副交感神経抑制の量の減少により実施可能である。神経修飾の上記の各例は、内臓の血管拡張、ひいては心臓から内臓領域への血液の再配分をもたらすことができる。
【0148】
付記
上記の詳細な説明は、詳細な説明の一部を形成する添付図面の参照を含んでいる。図面
は、例証のために、本発明を実行することができる特定の実施形態を示している。これらの実施形態は本明細書中において「実施例」とも呼ばれる。そのような実施例は図示かつ説明されたものに加えて要素を含むことができる。しかしながら、本発明者らは、図示かつ説明された要素のみを具備する実施例も企図している。
【0149】
本文書において参照された全ての出版物、特許および特許文献は、参照によって個々に組み込まれるかのように、参照によってその全体が本願に組み込まれる。本文書と、参照によってそのように組み込まれた文書との間で矛盾する使用法の場合には、組み込まれた参照における使用法は、本文書の使用法への補足と考えるべきであり;両立し難い矛盾については、本文書中の使用法に従う。
【0150】
本文書において、用語「1つの(a, an)」は、「少なくとも1(at least one)」ま
たは「1以上(one or more)」という他の実例または使用法とは無関係に、特許文献に
おいて一般に見られるように1または2以上を含むように使用される。本文書において、用語「または、もしくは(or)」は、別途記載のない限り、非独占的であること、すなわち「AまたはB」は、「AであるがBではない」、「BであるがAではない」、および「AおよびB」を含むことを指すために使用される。添付の特許請求の範囲においては、用語「〜を備えている(including)」および「〜であることを特徴とする(in which)」
は、それぞれ用語「〜を含んでなる(comprising)」および「〜であることを特徴とする(wherein)」の平易な英語による同意語として使用される。同様に、特許請求の範囲に
おいて、用語「〜を備えている(including)」および「〜を含んでなる(comprising)
」ことはオープンエンドである、すなわち、請求項においてそのような用語の後に列挙された要素以外に要素を備えたシステム、デバイス、物品、または工程もなおその請求項の範囲以内にあると見なされる。さらに、特許請求の範囲において、用語「第1の(first
)」、「第2の(second)」および「第3の(third)」などは、単に表記として使用さ
れており、該用語の対象物に番号順の要件を課するようには意図されない。
【0151】
上記の説明は、例示を意図したものであり、限定を意図したものではない。例えば、上記の実施例(または該実施例の1以上の態様)は互いに組み合わせて使用されてもよい。例えば当業者が上記の説明を概観すれば、他の実施形態を使用することもできる。要約書は、読み手が技術的開示内容の性質をより迅速に確認できるように、米国特許法施行規則第1.72条(b)に準拠するように提供されている。要約書は、特許請求の範囲の範囲または意味を解釈または限定するために使用されることはないという合意を持って提供されている。さらに、上記の詳細な説明においては、開示内容を簡素化するために様々な特徴がひとまとめにされる場合がある。これは、特許請求の範囲に記載されていない開示の特徴が任意の請求項にとって必須であることを意図すると解釈されるべきでない。むしろ、発明の主題は、特定の開示された実施形態のすべての特徴より少ない中に存在しうる。したがって、このように特許請求の範囲は、個別の実施形態として自立している各請求項と共に、詳細な説明に組み込まれる。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲に、そのような特許請求の範囲に付与される等価物の範囲全体を加えた範囲に関して決定されるべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用デバイスであって、
肺水腫に関連した肺の体液状態についての第1の体液状態指標をモニタリングするように構成された第1の体液状態モニタリング回路であって、第1の体液状態指標の増大は肺水腫に関連した肺の体液の増大と相関することを特徴とする、回路と、
肺以外の体液状態についての別個かつ異なる第2の体液状態指標をモニタリングするように構成された第2の体液状態モニタリング回路であって、第2の体液状態指標の増大は肺以外の体液の増大と相関することを特徴とする、回路と、
第1および第2の体液状態モニタリング回路に連結されたコントローラであって、治療を制御するための治療制御信号を決定するために第1および第2の体液状態指標に関する情報を使用するように構成されたコントローラと、
治療制御信号を受信するためにコントローラに連結され、治療制御信号に応答して、肺の体液状態または肺以外の体液状態のうち少なくとも一方を調整するための治療を提供するように構成された治療回路と
からなるデバイス。
【請求項2】
第2の体液状態モニタリング回路は、内臓器官に関連した体液状態を表す内臓インピーダンス計測値をモニタリングするように構成されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
第2の体液状態モニタリング回路は、動脈血圧、内臓インピーダンス、骨格筋インピーダンス、または皮膚インピーダンスのうち少なくとも1つをモニタリングするように構成されている、請求項1および2のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項4】
コントローラは、指定された閾値を下回る第2の体液状態指標の減少、指定された閾値を上回る第1の体液状態指標の増大、医療用デバイスによって発せられる心不全代償不全の警告、患者が発した警告、またはユーザ入力、のうち少なくとも1つに応答して治療の提供を始動するように構成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項5】
治療回路は肺以外の体液状態を調整するための神経修飾療法を提供するように構成された神経修飾回路を備えていることと、該神経修飾療法は、交感神経系または副交感神経系のうち少なくとも一方の刺激または抑制を含むこととを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項6】
治療回路は局所的血管拡張療法または局所的血管収縮療法のうち少なくとも一方を提供するように構成されていることと、局所的血管拡張療法または局所的血管収縮療法のうち少なくとも一方は、神経修飾療法、薬物療法、または血管血流制御療法のうち少なくとも1つを含むこととを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項7】
治療回路は、少なくとも2つの別個の局所血管領域に、その2つの別個の局所領域の間における体液状態のバランスを調整するために局所的血管拡張療法または局所的血管収縮療法のうち少なくとも一方を同時に送達するように構成されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項8】
コントローラは、
第1の指定された閾値を上回る第1の体液状態指標の増大、
第2の指定された閾値を下回る第1の体液状態指標の減少、
第3の指定された閾値を上回る第2の体液状態指標の増大、または、
第4の指定された閾値を下回る第2の体液状態指標の減少
のうち少なくとも1つに応答して治療を縮小または停止するように構成されている、請求
項1〜7のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項9】
コントローラは、指定された期間後に治療を停止するために第1および第2の体液状態指標に関する情報を使用するように構成されている、請求項1〜8のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項10】
コントローラ回路は、指定された期間の間、該指定期間のうち少なくとも一時期に心臓血液量を変調するのに十分な量で内臓領域に神経修飾を提供するように治療回路を制御するように構成されている、請求項1〜9のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項11】
対象者の心臓の信号を検出するように構成された心臓信号検出回路を含んでなり、コントローラは該心臓信号検出回路に連結され、かつ対象者の心臓周期の指定された部分と同期化された治療の提供を始動するように構成されている、請求項1〜10のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項12】
対象者の姿勢を検出するように構成された姿勢感知回路を含んでなり、コントローラは、治療を制御する治療制御信号を決定するために(1)第1および第2の体液状態指標に関する情報、ならびに(2)対象者の姿勢に関する情報、を使用するように構成されている、請求項1〜11のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項13】
対象者の身体活動レベルを検出するように構成された活動感知回路を含んでなり、コントローラは、治療を制御する治療制御信号を決定するために(1)第1および第2の体液状態指標に関する情報、ならびに(2)対象者の活動レベルに関する情報、を使用するように構成されている、請求項1〜12のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項14】
命令を含んでなる、デバイス読み取り可能な媒体であって、該命令は、先に移植された医療用デバイスによって実施される場合、該デバイスに、
肺水腫に関連した肺の体液状態についての第1の体液状態指標をモニタリングすることと、
肺以外の体液状態についての別個かつ異なる第2の体液状態指標をモニタリングすることと、
第1および第2の体液状態指標に関する情報を使用して、肺の体液状態または肺以外の体液状態のうち少なくとも一方を調整するために治療を制御する制御信号を提供することと
からなる動作を実施させる、デバイス読み取り可能な媒体。
【請求項15】
第2の体液状態指標のモニタリングは、内臓器官に関連した体液状態を表す内臓インピーダンス計測値をモニタリングすることを含む、請求項14に記載のデバイス読み取り可能な媒体。
【請求項16】
内臓インピーダンスのモニタリングは、
肺領域および対象とする内臓領域の両方を横切る第1のインピーダンス・ベクトルを計測することと、
肺領域を横切るが対象とする内臓領域は横切らない第2のインピーダンス・ベクトルを計測することと、
第1のインピーダンス・ベクトルから第2のインピーダンス・ベクトルを減じて内臓インピーダンスを決定することと
を含む、請求項15に記載のデバイス読み取り可能な媒体。
【請求項17】
第2の体液状態指標のモニタリングは、動脈血圧、内臓インピーダンス、骨格筋インピ
ーダンス、または皮膚インピーダンスのうち少なくとも1つをモニタリングすることを含む、請求項14〜16のいずれか1項に記載のデバイス読み取り可能な媒体。
【請求項18】
治療を制御する制御信号の提供は、治療を提供する制御信号の提供を始動するために、指定された閾値を下回る第2の体液状態指標の減少についてモニタリングすることを含んでなる、請求項14〜17のいずれか1項に記載のデバイス読み取り可能な媒体。
【請求項19】
治療を制御する制御信号の提供は、肺以外の体液に関連した領域において交感神経系または副交感神経系のうち少なくとも一方を刺激または抑制するように神経修飾を制御する制御信号を提供することを含む、請求項14〜18のいずれか1項に記載のデバイス読み取り可能な媒体。
【請求項20】
治療を制御する制御信号の提供は、神経修飾療法、薬物療法、または血管血流制御療法のうち少なくとも1つを提供することにより、対象者の局所血管領域における血管拡張または血管収縮のうち少なくとも1つを制御する制御信号を提供することを含む、請求項14〜19のいずれか1項に記載のデバイス読み取り可能な媒体。
【請求項21】
先に移植された医療用デバイスによって実施される場合、該デバイスに、少なくとも2つの別個の局所血管領域において、その2つの別個の局所領域の間における体液状態のバランスを調整するために血管拡張または血管収縮のうち少なくとも1つを制御する制御信号を同時に提供することからなる動作を実施させる命令を含んでなる、請求項20に記載のデバイス読み取り可能な媒体。
【請求項22】
治療を制御する制御信号の提供は、
第1の指定された閾値を上回る第1の体液状態指標の増大、
第2の指定された閾値を下回る第1の体液状態指標の減少、
第3の指定された閾値を上回る第2の体液状態指標の増大、または、
第4の指定された閾値を下回る第2の体液状態指標の減少
のうち少なくとも1つに応答して治療を縮小または停止する制御信号を提供することを含む、請求項14〜20のいずれか1項に記載のデバイス読み取り可能な媒体。
【請求項23】
治療を制御する制御信号の提供は、指定された期間後に治療を停止する制御信号を提供するために第1および第2の体液状態指標に関する情報を使用することを含む、請求項14〜22のいずれか1項に記載のデバイス読み取り可能な媒体。
【請求項24】
治療を制御する制御信号の提供は、治療の送達を対象者の心臓周期の指定された部分と同期化する制御信号を提供することを含む、請求項14〜23のいずれか1項に記載のデバイス読み取り可能な媒体。
【請求項25】
先に移植された医療用デバイスによって実施される場合、該デバイスに、患者の姿勢を検出することからなる動作を実施させる命令を含んでなり、治療を制御する制御信号の提供は、肺の体液状態または肺以外の体液状態のうち少なくとも1つを調整するために、(1)第1および第2の体液状態指標に関する情報、ならびに(2)患者の姿勢に関する情報、を使用することを含んでなる、請求項14〜24のいずれか1項に記載のデバイス読み取り可能な媒体。
【請求項26】
先に移植された医療用デバイスによって実施される場合、該デバイスに、患者の身体活動レベルを検出することからなる動作を実施させる命令を含んでなり、治療を制御する制御信号の提供は、肺の体液状態または肺以外の体液状態のうち少なくとも1つを調整するために、(1)第1および第2の体液状態指標に関する情報、ならびに(2)患者の身体
活動レベルに関する情報、を使用することを含んでなる、請求項14〜25のいずれか1項に記載のデバイス読み取り可能な媒体。
【請求項27】
内臓領域に神経修飾を送達するように構成された神経修飾回路と、
神経修飾回路に連結されたコントローラ回路であって、指定された期間の間、該指定期間のうち少なくとも一時期に心臓の血液量を変調するのに十分な量で内臓領域に神経修飾を送達するように神経修飾回路を制御するように構成されたコントローラ回路と
を含んでなる装置。
【請求項28】
内臓領域に神経修飾を送達する神経修飾回路を制御するコントローラ回路に心臓血液量状態の指標を提供するように構成された、心臓血液量状態モニタリング回路を含んでなる、請求項27に記載の装置。
【請求項29】
内臓領域に神経修飾を送達する神経修飾回路を制御するコントローラ回路に内臓血液量状態の指標を提供する内臓血液量状態モニタリング回路を含んでなる、請求項28に記載の装置。
【請求項30】
内臓領域に神経修飾を送達する神経修飾回路を制御するコントローラ回路に心臓内インピーダンスに基づいた心臓血液量状態の指標を提供するように構成された、心臓内インピーダンス計測値モニタリング回路を含んでなる、請求項28および29のいずれか1項に記載の装置。
【請求項31】
心臓内インピーダンス計測値モニタリング回路は、内臓領域に神経修飾を送達する神経修飾回路を制御するコントローラ回路に拍動インピーダンスに基づいた心臓血液量状態の指標を提供するように構成されている、請求項30に記載の装置。
【請求項32】
心臓血液量状態の指標を閾値と比較するように構成されたコンパレータ回路を含んでなり、コントローラは、心臓血液量状態の指標が第1の値の閾値を下回る場合に内臓領域への神経修飾の量を調整するように構成されている、請求項28〜31のいずれか1項に記載の装置。
【請求項33】
コントローラは、心臓血液量状態の指標が第1の値の閾値を下回る場合に内臓領域への交感神経刺激の量を増大するように構成されている、請求項32に記載の装置。
【請求項34】
コントローラは、心臓血液量状態の指標が第1の値の閾値を下回る場合に内臓領域への交感神経抑制の量を減少するように構成されている、請求項32および33のいずれか1項に記載の装置。
【請求項35】
コントローラは、心臓血液量状態の指標が第1の値の閾値を下回る場合に内臓領域への副交感神経刺激の量を減少するように構成されている、請求項32〜34のいずれか1項に記載の装置。
【請求項36】
コントローラは、心臓血液量状態の指標が第1の値の閾値を下回る場合に内臓領域への副交感神経抑制の量を増大するように構成されている、請求項32〜35のいずれか1項に記載の装置。
【請求項37】
コントローラは、心臓血液量状態の指標が第2の値の閾値を上回る場合に内臓領域への神経修飾の量を調整するように構成されている、請求項32に記載の装置。
【請求項38】
コントローラは、心臓血液量状態の指標が第2の値の閾値を上回る場合に内臓領域への
交感神経刺激の量を減少するように構成されている、請求項37に記載の装置。
【請求項39】
コントローラは、心臓血液量状態の指標が第2の値の閾値を上回る場合に内臓領域への交感神経抑制の量を増大するように構成されている、請求項37および38のいずれか1項に記載の装置。
【請求項40】
コントローラは、心臓血液量状態の指標が第2の値の閾値を上回る場合に内臓領域への副交感神経刺激の量を増大するように構成されている、請求項37〜39のいずれか1項に記載の装置。
【請求項41】
コントローラは、心臓血液量状態の指標が第2の値の閾値を上回る場合に内臓領域への副交感神経抑制の量を減少するように構成されている、請求項37〜40のいずれか1項に記載の装置。
【請求項42】
心臓血液量状態モニタリング回路は、内臓領域に神経修飾を送達する神経修飾回路を制御するコントローラ回路に肺インピーダンスに基づいた心臓血液量状態の指標を提供するように構成された経胸的インピーダンス計測値モニタリング回路を備え、コントローラは、経胸的インピーダンスの減少に応答して内臓領域への神経修飾の量を調整するように構成されている、請求項28〜41のいずれか1項に記載の装置。
【請求項43】
コントローラは、
内臓領域への交感神経刺激の量の減少、
内臓領域への交感神経抑制の量の増大、
内臓領域への副交感神経刺激の量の増大、または
内臓領域への副交感神経抑制の量の減少
のうち少なくとも1つを行うように構成されている、請求項42に記載の装置。
【請求項44】
神経修飾回路は、心臓血液量を増大させるために局所的な内臓血管収縮療法を提供するように構成されている、請求項27〜43のいずれか1項に記載の装置。
【請求項45】
神経修飾回路は、心臓血液量を減少させるために局所的な内臓血管拡張療法を提供するように構成されている、請求項27〜44のいずれか1項に記載の装置。
【請求項46】
心拍数モニタリング回路、
心拍出量モニタリング回路、
心筋収縮能モニタリング回路、
動脈血圧モニタリング回路、または
静脈血圧モニタリング回路
のうち少なくとも1つを含んでなり、
コントローラは、
第1の指定された閾値を上回る心拍数の増加、
第2の指定された閾値を下回る心拍出量の減少、
第3の指定された閾値を下回る心筋収縮能の計測値の低下、
第4の指定された閾値を下回る動脈血圧の低下、または
第5の指定された閾値を上回る静脈血圧の上昇
のうち少なくとも1つに応答して内臓領域への神経修飾の量を調整するように構成されている、請求項27〜45のいずれか1項に記載の装置。
【請求項47】
コントローラは、
内臓領域への交感神経刺激の量の減少、
内臓領域への交感神経抑制の量の増大、
内臓領域への副交感神経刺激の量の増大、または
内臓領域への副交感神経抑制の量の減少
のうち少なくとも1つを行うように構成されている、請求項46に記載の装置。
【請求項48】
コントローラに連結されたペーシング回路を含んでなり、コントローラは、心腔の一部を伸展させるために、固有の収縮に対して非同期化されているかまたは固有の収縮から十分にオフセットされたペーシングパルスを生じるようにペーシング回路を制御するように構成されている、請求項27〜47のいずれか1項に記載の装置。
【請求項49】
心房性催不整脈状態センサを含んでなり、コントローラは、心房性催不整脈状態の検出に応答して内臓領域への神経修飾の送達を制御するように構成されている、請求項27〜48のいずれか1項に記載の装置。
【請求項50】
神経修飾回路は、不整頻拍治療法、例えば細動除去または不整頻拍治療ペーシングに伴って内臓領域に神経修飾を送達するように構成されており、神経修飾は、
副交感神経刺激の量の増大、
副交感神経抑制の量の減少、
交感神経抑制の量の増大、または
交感神経刺激の量の減少
のうち少なくとも1つを含む、請求項49に記載の装置。
【請求項51】
命令を含んでなる、デバイス読み取り可能な媒体であって、該命令は、先に移植された医療用デバイスによって実施される場合、該デバイスに、
内臓領域に神経修飾を送達する制御信号を提供することと、
指定された期間の間、該指定期間のうち少なくとも一時期に心臓血液量を変調するのに十分な量で内臓領域への神経修飾の送達を制御する制御信号を提供することと
からなる動作を実施させる、デバイス読み取り可能な媒体。
【請求項52】
先に移植された医療用デバイスによって実施される場合、該デバイスに、
心臓血液量状態をモニタリングすることと、
モニタリングされた心臓血液量状態を使用して、心臓血液量状態の指標を提供することと、
心臓血液量状態の指標を使用して、内臓領域への神経修飾の送達を制御する制御信号を提供することと
からなる動作を実施させる命令を含んでなる、請求項51に記載のデバイス読み取り可能な媒体。
【請求項53】
先に移植された医療用デバイスによって実施される場合、該デバイスに、
内臓血液量状態をモニタリングすることと、
モニタリングされた内臓血液量状態を使用して、内臓血液量状態の指標を提供することと、
内臓血液量状態の指標を使用して、内臓領域への神経修飾の送達を制御する制御信号を提供することと
からなる動作を実施させる命令を含んでなる、請求項52に記載のデバイス読み取り可能な媒体。
【請求項54】
先に移植された医療用デバイスによって実施される場合、該デバイスに、
心臓内インピーダンスをモニタリングすることと、
モニタリングされた心臓内インピーダンスを使用して心臓内インピーダンスに基づいた
心臓血液量状態の指標を提供することと、
心臓内インピーダンスに基づいた心臓血液量状態の指標を使用して、内臓領域への神経修飾の送達を制御する制御信号を提供することと
からなる動作を実施させる命令を含んでなる、請求項52および53のいずれか1項に記載のデバイス読み取り可能な媒体。
【請求項55】
先に移植された医療用デバイスによって実施される場合、該デバイスに、拍動インピーダンスに基づいた心臓血液量の指標を提供することからなる動作を実施させる命令を含んでなる、請求項54に記載のデバイス読み取り可能な媒体。
【請求項56】
先に移植された医療用デバイスによって実施される場合、該デバイスに、
心臓血液量状態の指標を閾値と比較することと、
心臓血液量状態の指標が第1の値の閾値を下回る場合に内臓領域への神経修飾の量を調整する制御信号を提供することと
からなる動作を実施させる命令を含んでなる、請求項52〜55のいずれか1項に記載のデバイス読み取り可能な媒体。
【請求項57】
先に移植された医療用デバイスによって実施される場合、該デバイスに、心臓血液量状態の指標が第1の値の閾値を下回る場合に内臓領域への交感神経刺激の量を増大させる制御信号を提供することからなる動作を実施させる命令を含んでなる、請求項56に記載のデバイス読み取り可能な媒体。
【請求項58】
先に移植された医療用デバイスによって実施される場合、該デバイスに、心臓血液量状態の指標が第1の値の閾値を下回る場合に内臓領域への交感神経抑制の量を減少させる制御信号を提供することからなる動作を実施させる命令を含んでなる、請求項56および57のいずれか1項に記載のデバイス読み取り可能な媒体。
【請求項59】
先に移植された医療用デバイスによって実施される場合、該デバイスに、心臓血液量状態の指標が第1の値の閾値を下回る場合に内臓領域への副交感神経刺激の量を減少させる制御信号を提供することからなる動作を実施させる命令を含んでなる、請求項56〜58のいずれか1項に記載のデバイス読み取り可能な媒体。
【請求項60】
先に移植された医療用デバイスによって実施される場合、該デバイスに、心臓血液量状態の指標が第1の値の閾値を下回る場合に内臓領域への副交感神経抑制の量を増大させる制御信号を提供することからなる動作を実施させる命令を含んでなる、請求項56〜59のいずれか1項に記載のデバイス読み取り可能な媒体。
【請求項61】
先に移植された医療用デバイスによって実施される場合、該デバイスに、心臓血液量状態の指標が第2の値の閾値を上回る場合に内臓領域への神経修飾の量を調整する制御信号を提供することからなる動作を実施させる命令を含んでなる、請求項56に記載のデバイス読み取り可能な媒体。
【請求項62】
先に移植された医療用デバイスによって実施される場合、該デバイスに、心臓血液量状態の指標が第2の値の閾値を上回る場合に内臓領域への交感神経刺激の量を減少させる制御信号を提供することからなる動作を実施させる命令を含んでなる、請求項61に記載のデバイス読み取り可能な媒体。
【請求項63】
先に移植された医療用デバイスによって実施される場合、該デバイスに、心臓血液量状態の指標が第2の値の閾値を上回る場合に内臓領域への交感神経抑制の量を増大させる制御信号を提供することからなる動作を実施させる命令を含んでなる、請求項61および6
2のいずれか1項に記載のデバイス読み取り可能な媒体。
【請求項64】
先に移植された医療用デバイスによって実施される場合、該デバイスに、心臓血液量状態の指標が第2の値の閾値を上回る場合に内臓領域への副交感神経刺激の量を増大させる制御信号を提供することからなる動作を実施させる命令を含んでなる、請求項61〜63のいずれか1項に記載のデバイス読み取り可能な媒体。
【請求項65】
先に移植された医療用デバイスによって実施される場合、該デバイスに、心臓血液量状態の指標が第2の値の閾値を上回る場合に内臓領域への副交感神経抑制の量を減少させる制御信号を提供することからなる動作を実施させる命令を含んでなる、請求項61〜64のいずれか1項に記載のデバイス読み取り可能な媒体。
【請求項66】
先に移植された医療用デバイスによって実施される場合、該デバイスに、
経胸的インピーダンス計測値をモニタリングすることと、
経胸的インピーダンス計測値を使用して肺インピーダンスに基づいた心臓血液量状態の指標を提供することと、
経胸的インピーダンスの減少に応答して内臓領域に送達される神経修飾の量を調整する制御信号を提供することと
からなる動作を実施させる命令を含んでなる、請求項52〜65のいずれか1項に記載のデバイス読み取り可能な媒体。
【請求項67】
先に移植された医療用デバイスによって実施される場合、該デバイスに、
内臓領域への交感神経刺激の量を減少させる制御信号を提供することと、
内臓領域への交感神経抑制の量を増大させる制御信号を提供することと、
内臓領域への副交感神経刺激の量を増大させる制御信号を提供することと、または
内臓領域への副交感神経抑制の量を減少させる制御信号を提供することと
のうち少なくとも1つからなる動作を実施させる命令を含んでなる、請求項66に記載のデバイス読み取り可能な媒体。
【請求項68】
先に移植された医療用デバイスによって実施される場合、該デバイスに、心臓血液量を増大させるために局所的な内臓血管収縮療法を提供する制御信号を提供することからなる動作を実施させる命令を含んでなる、請求項51〜67のいずれか1項に記載のデバイス読み取り可能な媒体。
【請求項69】
先に移植された医療用デバイスによって実施される場合、該デバイスに、心臓血液量を減少させるために局所的な内臓血管拡張療法を提供する制御信号を提供することからなる動作を実施させる命令を含んでなる、請求項51〜68のいずれか1項に記載のデバイス読み取り可能な媒体。
【請求項70】
先に移植された医療用デバイスによって実施される場合、該デバイスに、
心拍数、心拍出量、心筋収縮能、動脈血圧、または静脈血圧のうち少なくとも1つをモニタリングすることと、
第1の指定された閾値を上回る心拍数の増加、第2の指定された閾値を下回る心拍出量の減少、第3の指定された閾値を下回る心筋収縮能の計測値の低下、第4の指定された閾値を下回る動脈血圧の低下、または第5の指定された閾値を上回る静脈血圧の上昇、のうち少なくとも1つに応答して内臓領域への神経修飾の量を調整する制御信号を提供することと
からなる動作を実施させる命令を含んでなる、請求項51〜69のいずれか1項に記載のデバイス読み取り可能な媒体。
【請求項71】
先に移植された医療用デバイスによって実施される場合、該デバイスに、
内臓領域への交感神経刺激の量を減少させる制御信号を提供すること、
内臓領域への交感神経抑制の量を増大させる制御信号を提供すること、
内臓領域への副交感神経刺激の量を増大させる制御信号を提供すること、または
内臓領域への副交感神経抑制の量を減少させる制御信号を提供すること
からなる動作を実施させる命令を含んでなる、請求項70に記載のデバイス読み取り可能な媒体。
【請求項72】
先に移植された医療用デバイスによって実施される場合、該デバイスに、心腔の一部を伸展させるために、固有の収縮に対して非同期化されているかまたは固有の収縮から十分にオフセットされた心臓ペーシングパルスを送達する制御信号を提供することからなる動作を実施させる命令を含んでなる、請求項51〜71のいずれか1項に記載のデバイス読み取り可能な媒体。
【請求項73】
先に移植された医療用デバイスによって実施される場合、該デバイスに、
心房性催不整脈状態を検出することと、
心房性催不整脈状態の検出に応答して内臓領域に神経修飾を送達する制御信号を提供することと
からなる動作を実施させる命令を含んでなる、請求項51〜72のいずれか1項に記載のデバイス読み取り可能な媒体。
【請求項74】
先に移植された医療用デバイスによって実施される場合、該デバイスに、不整頻拍治療法、例えば細動除去または不整頻拍治療ペーシングに伴って内臓領域に神経修飾を送達する制御信号を提供することからなる動作を実施させる命令を含んでなり、該神経修飾は、
副交感神経刺激の量を増大させる制御信号を提供すること、
副交感神経抑制の量を減少させる制御信号を提供すること、
交感神経抑制の量を増大させる制御信号を提供すること、または
交感神経刺激の量を減少させる制御信号を提供すること、
のうち少なくとも1つを含む、請求項73に記載のデバイス読み取り可能な媒体。
【請求項1】
医療用デバイスであって、
肺水腫に関連した肺の体液状態についての第1の体液状態指標をモニタリングするように構成された第1の体液状態モニタリング回路であって、第1の体液状態指標の増大は肺水腫に関連した肺の体液の増大と相関することを特徴とする、回路と、
肺以外の体液状態についての別個かつ異なる第2の体液状態指標をモニタリングするように構成された第2の体液状態モニタリング回路であって、第2の体液状態指標の増大は肺以外の体液の増大と相関することを特徴とする、回路と、
第1および第2の体液状態モニタリング回路に連結されたコントローラであって、治療を制御するための治療制御信号を決定するために第1および第2の体液状態指標に関する情報を使用するように構成されたコントローラと、
治療制御信号を受信するためにコントローラに連結され、治療制御信号に応答して、肺の体液状態または肺以外の体液状態のうち少なくとも一方を調整するための治療を提供するように構成された治療回路と
からなるデバイス。
【請求項2】
第2の体液状態モニタリング回路は、内臓器官に関連した体液状態を表す内臓インピーダンス計測値をモニタリングするように構成されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
第2の体液状態モニタリング回路は、動脈血圧、内臓インピーダンス、骨格筋インピーダンス、または皮膚インピーダンスのうち少なくとも1つをモニタリングするように構成されている、請求項1および2のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項4】
コントローラは、指定された閾値を下回る第2の体液状態指標の減少、指定された閾値を上回る第1の体液状態指標の増大、医療用デバイスによって発せられる心不全代償不全の警告、患者が発した警告、またはユーザ入力、のうち少なくとも1つに応答して治療の提供を始動するように構成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項5】
治療回路は肺以外の体液状態を調整するための神経修飾療法を提供するように構成された神経修飾回路を備えていることと、該神経修飾療法は、交感神経系または副交感神経系のうち少なくとも一方の刺激または抑制を含むこととを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項6】
治療回路は局所的血管拡張療法または局所的血管収縮療法のうち少なくとも一方を提供するように構成されていることと、局所的血管拡張療法または局所的血管収縮療法のうち少なくとも一方は、神経修飾療法、薬物療法、または血管血流制御療法のうち少なくとも1つを含むこととを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項7】
治療回路は、少なくとも2つの別個の局所血管領域に、その2つの別個の局所領域の間における体液状態のバランスを調整するために局所的血管拡張療法または局所的血管収縮療法のうち少なくとも一方を同時に送達するように構成されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項8】
コントローラは、
第1の指定された閾値を上回る第1の体液状態指標の増大、
第2の指定された閾値を下回る第1の体液状態指標の減少、
第3の指定された閾値を上回る第2の体液状態指標の増大、または、
第4の指定された閾値を下回る第2の体液状態指標の減少
のうち少なくとも1つに応答して治療を縮小または停止するように構成されている、請求
項1〜7のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項9】
コントローラは、指定された期間後に治療を停止するために第1および第2の体液状態指標に関する情報を使用するように構成されている、請求項1〜8のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項10】
コントローラ回路は、指定された期間の間、該指定期間のうち少なくとも一時期に心臓血液量を変調するのに十分な量で内臓領域に神経修飾を提供するように治療回路を制御するように構成されている、請求項1〜9のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項11】
対象者の心臓の信号を検出するように構成された心臓信号検出回路を含んでなり、コントローラは該心臓信号検出回路に連結され、かつ対象者の心臓周期の指定された部分と同期化された治療の提供を始動するように構成されている、請求項1〜10のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項12】
対象者の姿勢を検出するように構成された姿勢感知回路を含んでなり、コントローラは、治療を制御する治療制御信号を決定するために(1)第1および第2の体液状態指標に関する情報、ならびに(2)対象者の姿勢に関する情報、を使用するように構成されている、請求項1〜11のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項13】
対象者の身体活動レベルを検出するように構成された活動感知回路を含んでなり、コントローラは、治療を制御する治療制御信号を決定するために(1)第1および第2の体液状態指標に関する情報、ならびに(2)対象者の活動レベルに関する情報、を使用するように構成されている、請求項1〜12のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項14】
命令を含んでなる、デバイス読み取り可能な媒体であって、該命令は、先に移植された医療用デバイスによって実施される場合、該デバイスに、
肺水腫に関連した肺の体液状態についての第1の体液状態指標をモニタリングすることと、
肺以外の体液状態についての別個かつ異なる第2の体液状態指標をモニタリングすることと、
第1および第2の体液状態指標に関する情報を使用して、肺の体液状態または肺以外の体液状態のうち少なくとも一方を調整するために治療を制御する制御信号を提供することと
からなる動作を実施させる、デバイス読み取り可能な媒体。
【請求項15】
第2の体液状態指標のモニタリングは、内臓器官に関連した体液状態を表す内臓インピーダンス計測値をモニタリングすることを含む、請求項14に記載のデバイス読み取り可能な媒体。
【請求項16】
内臓インピーダンスのモニタリングは、
肺領域および対象とする内臓領域の両方を横切る第1のインピーダンス・ベクトルを計測することと、
肺領域を横切るが対象とする内臓領域は横切らない第2のインピーダンス・ベクトルを計測することと、
第1のインピーダンス・ベクトルから第2のインピーダンス・ベクトルを減じて内臓インピーダンスを決定することと
を含む、請求項15に記載のデバイス読み取り可能な媒体。
【請求項17】
第2の体液状態指標のモニタリングは、動脈血圧、内臓インピーダンス、骨格筋インピ
ーダンス、または皮膚インピーダンスのうち少なくとも1つをモニタリングすることを含む、請求項14〜16のいずれか1項に記載のデバイス読み取り可能な媒体。
【請求項18】
治療を制御する制御信号の提供は、治療を提供する制御信号の提供を始動するために、指定された閾値を下回る第2の体液状態指標の減少についてモニタリングすることを含んでなる、請求項14〜17のいずれか1項に記載のデバイス読み取り可能な媒体。
【請求項19】
治療を制御する制御信号の提供は、肺以外の体液に関連した領域において交感神経系または副交感神経系のうち少なくとも一方を刺激または抑制するように神経修飾を制御する制御信号を提供することを含む、請求項14〜18のいずれか1項に記載のデバイス読み取り可能な媒体。
【請求項20】
治療を制御する制御信号の提供は、神経修飾療法、薬物療法、または血管血流制御療法のうち少なくとも1つを提供することにより、対象者の局所血管領域における血管拡張または血管収縮のうち少なくとも1つを制御する制御信号を提供することを含む、請求項14〜19のいずれか1項に記載のデバイス読み取り可能な媒体。
【請求項21】
先に移植された医療用デバイスによって実施される場合、該デバイスに、少なくとも2つの別個の局所血管領域において、その2つの別個の局所領域の間における体液状態のバランスを調整するために血管拡張または血管収縮のうち少なくとも1つを制御する制御信号を同時に提供することからなる動作を実施させる命令を含んでなる、請求項20に記載のデバイス読み取り可能な媒体。
【請求項22】
治療を制御する制御信号の提供は、
第1の指定された閾値を上回る第1の体液状態指標の増大、
第2の指定された閾値を下回る第1の体液状態指標の減少、
第3の指定された閾値を上回る第2の体液状態指標の増大、または、
第4の指定された閾値を下回る第2の体液状態指標の減少
のうち少なくとも1つに応答して治療を縮小または停止する制御信号を提供することを含む、請求項14〜20のいずれか1項に記載のデバイス読み取り可能な媒体。
【請求項23】
治療を制御する制御信号の提供は、指定された期間後に治療を停止する制御信号を提供するために第1および第2の体液状態指標に関する情報を使用することを含む、請求項14〜22のいずれか1項に記載のデバイス読み取り可能な媒体。
【請求項24】
治療を制御する制御信号の提供は、治療の送達を対象者の心臓周期の指定された部分と同期化する制御信号を提供することを含む、請求項14〜23のいずれか1項に記載のデバイス読み取り可能な媒体。
【請求項25】
先に移植された医療用デバイスによって実施される場合、該デバイスに、患者の姿勢を検出することからなる動作を実施させる命令を含んでなり、治療を制御する制御信号の提供は、肺の体液状態または肺以外の体液状態のうち少なくとも1つを調整するために、(1)第1および第2の体液状態指標に関する情報、ならびに(2)患者の姿勢に関する情報、を使用することを含んでなる、請求項14〜24のいずれか1項に記載のデバイス読み取り可能な媒体。
【請求項26】
先に移植された医療用デバイスによって実施される場合、該デバイスに、患者の身体活動レベルを検出することからなる動作を実施させる命令を含んでなり、治療を制御する制御信号の提供は、肺の体液状態または肺以外の体液状態のうち少なくとも1つを調整するために、(1)第1および第2の体液状態指標に関する情報、ならびに(2)患者の身体
活動レベルに関する情報、を使用することを含んでなる、請求項14〜25のいずれか1項に記載のデバイス読み取り可能な媒体。
【請求項27】
内臓領域に神経修飾を送達するように構成された神経修飾回路と、
神経修飾回路に連結されたコントローラ回路であって、指定された期間の間、該指定期間のうち少なくとも一時期に心臓の血液量を変調するのに十分な量で内臓領域に神経修飾を送達するように神経修飾回路を制御するように構成されたコントローラ回路と
を含んでなる装置。
【請求項28】
内臓領域に神経修飾を送達する神経修飾回路を制御するコントローラ回路に心臓血液量状態の指標を提供するように構成された、心臓血液量状態モニタリング回路を含んでなる、請求項27に記載の装置。
【請求項29】
内臓領域に神経修飾を送達する神経修飾回路を制御するコントローラ回路に内臓血液量状態の指標を提供する内臓血液量状態モニタリング回路を含んでなる、請求項28に記載の装置。
【請求項30】
内臓領域に神経修飾を送達する神経修飾回路を制御するコントローラ回路に心臓内インピーダンスに基づいた心臓血液量状態の指標を提供するように構成された、心臓内インピーダンス計測値モニタリング回路を含んでなる、請求項28および29のいずれか1項に記載の装置。
【請求項31】
心臓内インピーダンス計測値モニタリング回路は、内臓領域に神経修飾を送達する神経修飾回路を制御するコントローラ回路に拍動インピーダンスに基づいた心臓血液量状態の指標を提供するように構成されている、請求項30に記載の装置。
【請求項32】
心臓血液量状態の指標を閾値と比較するように構成されたコンパレータ回路を含んでなり、コントローラは、心臓血液量状態の指標が第1の値の閾値を下回る場合に内臓領域への神経修飾の量を調整するように構成されている、請求項28〜31のいずれか1項に記載の装置。
【請求項33】
コントローラは、心臓血液量状態の指標が第1の値の閾値を下回る場合に内臓領域への交感神経刺激の量を増大するように構成されている、請求項32に記載の装置。
【請求項34】
コントローラは、心臓血液量状態の指標が第1の値の閾値を下回る場合に内臓領域への交感神経抑制の量を減少するように構成されている、請求項32および33のいずれか1項に記載の装置。
【請求項35】
コントローラは、心臓血液量状態の指標が第1の値の閾値を下回る場合に内臓領域への副交感神経刺激の量を減少するように構成されている、請求項32〜34のいずれか1項に記載の装置。
【請求項36】
コントローラは、心臓血液量状態の指標が第1の値の閾値を下回る場合に内臓領域への副交感神経抑制の量を増大するように構成されている、請求項32〜35のいずれか1項に記載の装置。
【請求項37】
コントローラは、心臓血液量状態の指標が第2の値の閾値を上回る場合に内臓領域への神経修飾の量を調整するように構成されている、請求項32に記載の装置。
【請求項38】
コントローラは、心臓血液量状態の指標が第2の値の閾値を上回る場合に内臓領域への
交感神経刺激の量を減少するように構成されている、請求項37に記載の装置。
【請求項39】
コントローラは、心臓血液量状態の指標が第2の値の閾値を上回る場合に内臓領域への交感神経抑制の量を増大するように構成されている、請求項37および38のいずれか1項に記載の装置。
【請求項40】
コントローラは、心臓血液量状態の指標が第2の値の閾値を上回る場合に内臓領域への副交感神経刺激の量を増大するように構成されている、請求項37〜39のいずれか1項に記載の装置。
【請求項41】
コントローラは、心臓血液量状態の指標が第2の値の閾値を上回る場合に内臓領域への副交感神経抑制の量を減少するように構成されている、請求項37〜40のいずれか1項に記載の装置。
【請求項42】
心臓血液量状態モニタリング回路は、内臓領域に神経修飾を送達する神経修飾回路を制御するコントローラ回路に肺インピーダンスに基づいた心臓血液量状態の指標を提供するように構成された経胸的インピーダンス計測値モニタリング回路を備え、コントローラは、経胸的インピーダンスの減少に応答して内臓領域への神経修飾の量を調整するように構成されている、請求項28〜41のいずれか1項に記載の装置。
【請求項43】
コントローラは、
内臓領域への交感神経刺激の量の減少、
内臓領域への交感神経抑制の量の増大、
内臓領域への副交感神経刺激の量の増大、または
内臓領域への副交感神経抑制の量の減少
のうち少なくとも1つを行うように構成されている、請求項42に記載の装置。
【請求項44】
神経修飾回路は、心臓血液量を増大させるために局所的な内臓血管収縮療法を提供するように構成されている、請求項27〜43のいずれか1項に記載の装置。
【請求項45】
神経修飾回路は、心臓血液量を減少させるために局所的な内臓血管拡張療法を提供するように構成されている、請求項27〜44のいずれか1項に記載の装置。
【請求項46】
心拍数モニタリング回路、
心拍出量モニタリング回路、
心筋収縮能モニタリング回路、
動脈血圧モニタリング回路、または
静脈血圧モニタリング回路
のうち少なくとも1つを含んでなり、
コントローラは、
第1の指定された閾値を上回る心拍数の増加、
第2の指定された閾値を下回る心拍出量の減少、
第3の指定された閾値を下回る心筋収縮能の計測値の低下、
第4の指定された閾値を下回る動脈血圧の低下、または
第5の指定された閾値を上回る静脈血圧の上昇
のうち少なくとも1つに応答して内臓領域への神経修飾の量を調整するように構成されている、請求項27〜45のいずれか1項に記載の装置。
【請求項47】
コントローラは、
内臓領域への交感神経刺激の量の減少、
内臓領域への交感神経抑制の量の増大、
内臓領域への副交感神経刺激の量の増大、または
内臓領域への副交感神経抑制の量の減少
のうち少なくとも1つを行うように構成されている、請求項46に記載の装置。
【請求項48】
コントローラに連結されたペーシング回路を含んでなり、コントローラは、心腔の一部を伸展させるために、固有の収縮に対して非同期化されているかまたは固有の収縮から十分にオフセットされたペーシングパルスを生じるようにペーシング回路を制御するように構成されている、請求項27〜47のいずれか1項に記載の装置。
【請求項49】
心房性催不整脈状態センサを含んでなり、コントローラは、心房性催不整脈状態の検出に応答して内臓領域への神経修飾の送達を制御するように構成されている、請求項27〜48のいずれか1項に記載の装置。
【請求項50】
神経修飾回路は、不整頻拍治療法、例えば細動除去または不整頻拍治療ペーシングに伴って内臓領域に神経修飾を送達するように構成されており、神経修飾は、
副交感神経刺激の量の増大、
副交感神経抑制の量の減少、
交感神経抑制の量の増大、または
交感神経刺激の量の減少
のうち少なくとも1つを含む、請求項49に記載の装置。
【請求項51】
命令を含んでなる、デバイス読み取り可能な媒体であって、該命令は、先に移植された医療用デバイスによって実施される場合、該デバイスに、
内臓領域に神経修飾を送達する制御信号を提供することと、
指定された期間の間、該指定期間のうち少なくとも一時期に心臓血液量を変調するのに十分な量で内臓領域への神経修飾の送達を制御する制御信号を提供することと
からなる動作を実施させる、デバイス読み取り可能な媒体。
【請求項52】
先に移植された医療用デバイスによって実施される場合、該デバイスに、
心臓血液量状態をモニタリングすることと、
モニタリングされた心臓血液量状態を使用して、心臓血液量状態の指標を提供することと、
心臓血液量状態の指標を使用して、内臓領域への神経修飾の送達を制御する制御信号を提供することと
からなる動作を実施させる命令を含んでなる、請求項51に記載のデバイス読み取り可能な媒体。
【請求項53】
先に移植された医療用デバイスによって実施される場合、該デバイスに、
内臓血液量状態をモニタリングすることと、
モニタリングされた内臓血液量状態を使用して、内臓血液量状態の指標を提供することと、
内臓血液量状態の指標を使用して、内臓領域への神経修飾の送達を制御する制御信号を提供することと
からなる動作を実施させる命令を含んでなる、請求項52に記載のデバイス読み取り可能な媒体。
【請求項54】
先に移植された医療用デバイスによって実施される場合、該デバイスに、
心臓内インピーダンスをモニタリングすることと、
モニタリングされた心臓内インピーダンスを使用して心臓内インピーダンスに基づいた
心臓血液量状態の指標を提供することと、
心臓内インピーダンスに基づいた心臓血液量状態の指標を使用して、内臓領域への神経修飾の送達を制御する制御信号を提供することと
からなる動作を実施させる命令を含んでなる、請求項52および53のいずれか1項に記載のデバイス読み取り可能な媒体。
【請求項55】
先に移植された医療用デバイスによって実施される場合、該デバイスに、拍動インピーダンスに基づいた心臓血液量の指標を提供することからなる動作を実施させる命令を含んでなる、請求項54に記載のデバイス読み取り可能な媒体。
【請求項56】
先に移植された医療用デバイスによって実施される場合、該デバイスに、
心臓血液量状態の指標を閾値と比較することと、
心臓血液量状態の指標が第1の値の閾値を下回る場合に内臓領域への神経修飾の量を調整する制御信号を提供することと
からなる動作を実施させる命令を含んでなる、請求項52〜55のいずれか1項に記載のデバイス読み取り可能な媒体。
【請求項57】
先に移植された医療用デバイスによって実施される場合、該デバイスに、心臓血液量状態の指標が第1の値の閾値を下回る場合に内臓領域への交感神経刺激の量を増大させる制御信号を提供することからなる動作を実施させる命令を含んでなる、請求項56に記載のデバイス読み取り可能な媒体。
【請求項58】
先に移植された医療用デバイスによって実施される場合、該デバイスに、心臓血液量状態の指標が第1の値の閾値を下回る場合に内臓領域への交感神経抑制の量を減少させる制御信号を提供することからなる動作を実施させる命令を含んでなる、請求項56および57のいずれか1項に記載のデバイス読み取り可能な媒体。
【請求項59】
先に移植された医療用デバイスによって実施される場合、該デバイスに、心臓血液量状態の指標が第1の値の閾値を下回る場合に内臓領域への副交感神経刺激の量を減少させる制御信号を提供することからなる動作を実施させる命令を含んでなる、請求項56〜58のいずれか1項に記載のデバイス読み取り可能な媒体。
【請求項60】
先に移植された医療用デバイスによって実施される場合、該デバイスに、心臓血液量状態の指標が第1の値の閾値を下回る場合に内臓領域への副交感神経抑制の量を増大させる制御信号を提供することからなる動作を実施させる命令を含んでなる、請求項56〜59のいずれか1項に記載のデバイス読み取り可能な媒体。
【請求項61】
先に移植された医療用デバイスによって実施される場合、該デバイスに、心臓血液量状態の指標が第2の値の閾値を上回る場合に内臓領域への神経修飾の量を調整する制御信号を提供することからなる動作を実施させる命令を含んでなる、請求項56に記載のデバイス読み取り可能な媒体。
【請求項62】
先に移植された医療用デバイスによって実施される場合、該デバイスに、心臓血液量状態の指標が第2の値の閾値を上回る場合に内臓領域への交感神経刺激の量を減少させる制御信号を提供することからなる動作を実施させる命令を含んでなる、請求項61に記載のデバイス読み取り可能な媒体。
【請求項63】
先に移植された医療用デバイスによって実施される場合、該デバイスに、心臓血液量状態の指標が第2の値の閾値を上回る場合に内臓領域への交感神経抑制の量を増大させる制御信号を提供することからなる動作を実施させる命令を含んでなる、請求項61および6
2のいずれか1項に記載のデバイス読み取り可能な媒体。
【請求項64】
先に移植された医療用デバイスによって実施される場合、該デバイスに、心臓血液量状態の指標が第2の値の閾値を上回る場合に内臓領域への副交感神経刺激の量を増大させる制御信号を提供することからなる動作を実施させる命令を含んでなる、請求項61〜63のいずれか1項に記載のデバイス読み取り可能な媒体。
【請求項65】
先に移植された医療用デバイスによって実施される場合、該デバイスに、心臓血液量状態の指標が第2の値の閾値を上回る場合に内臓領域への副交感神経抑制の量を減少させる制御信号を提供することからなる動作を実施させる命令を含んでなる、請求項61〜64のいずれか1項に記載のデバイス読み取り可能な媒体。
【請求項66】
先に移植された医療用デバイスによって実施される場合、該デバイスに、
経胸的インピーダンス計測値をモニタリングすることと、
経胸的インピーダンス計測値を使用して肺インピーダンスに基づいた心臓血液量状態の指標を提供することと、
経胸的インピーダンスの減少に応答して内臓領域に送達される神経修飾の量を調整する制御信号を提供することと
からなる動作を実施させる命令を含んでなる、請求項52〜65のいずれか1項に記載のデバイス読み取り可能な媒体。
【請求項67】
先に移植された医療用デバイスによって実施される場合、該デバイスに、
内臓領域への交感神経刺激の量を減少させる制御信号を提供することと、
内臓領域への交感神経抑制の量を増大させる制御信号を提供することと、
内臓領域への副交感神経刺激の量を増大させる制御信号を提供することと、または
内臓領域への副交感神経抑制の量を減少させる制御信号を提供することと
のうち少なくとも1つからなる動作を実施させる命令を含んでなる、請求項66に記載のデバイス読み取り可能な媒体。
【請求項68】
先に移植された医療用デバイスによって実施される場合、該デバイスに、心臓血液量を増大させるために局所的な内臓血管収縮療法を提供する制御信号を提供することからなる動作を実施させる命令を含んでなる、請求項51〜67のいずれか1項に記載のデバイス読み取り可能な媒体。
【請求項69】
先に移植された医療用デバイスによって実施される場合、該デバイスに、心臓血液量を減少させるために局所的な内臓血管拡張療法を提供する制御信号を提供することからなる動作を実施させる命令を含んでなる、請求項51〜68のいずれか1項に記載のデバイス読み取り可能な媒体。
【請求項70】
先に移植された医療用デバイスによって実施される場合、該デバイスに、
心拍数、心拍出量、心筋収縮能、動脈血圧、または静脈血圧のうち少なくとも1つをモニタリングすることと、
第1の指定された閾値を上回る心拍数の増加、第2の指定された閾値を下回る心拍出量の減少、第3の指定された閾値を下回る心筋収縮能の計測値の低下、第4の指定された閾値を下回る動脈血圧の低下、または第5の指定された閾値を上回る静脈血圧の上昇、のうち少なくとも1つに応答して内臓領域への神経修飾の量を調整する制御信号を提供することと
からなる動作を実施させる命令を含んでなる、請求項51〜69のいずれか1項に記載のデバイス読み取り可能な媒体。
【請求項71】
先に移植された医療用デバイスによって実施される場合、該デバイスに、
内臓領域への交感神経刺激の量を減少させる制御信号を提供すること、
内臓領域への交感神経抑制の量を増大させる制御信号を提供すること、
内臓領域への副交感神経刺激の量を増大させる制御信号を提供すること、または
内臓領域への副交感神経抑制の量を減少させる制御信号を提供すること
からなる動作を実施させる命令を含んでなる、請求項70に記載のデバイス読み取り可能な媒体。
【請求項72】
先に移植された医療用デバイスによって実施される場合、該デバイスに、心腔の一部を伸展させるために、固有の収縮に対して非同期化されているかまたは固有の収縮から十分にオフセットされた心臓ペーシングパルスを送達する制御信号を提供することからなる動作を実施させる命令を含んでなる、請求項51〜71のいずれか1項に記載のデバイス読み取り可能な媒体。
【請求項73】
先に移植された医療用デバイスによって実施される場合、該デバイスに、
心房性催不整脈状態を検出することと、
心房性催不整脈状態の検出に応答して内臓領域に神経修飾を送達する制御信号を提供することと
からなる動作を実施させる命令を含んでなる、請求項51〜72のいずれか1項に記載のデバイス読み取り可能な媒体。
【請求項74】
先に移植された医療用デバイスによって実施される場合、該デバイスに、不整頻拍治療法、例えば細動除去または不整頻拍治療ペーシングに伴って内臓領域に神経修飾を送達する制御信号を提供することからなる動作を実施させる命令を含んでなり、該神経修飾は、
副交感神経刺激の量を増大させる制御信号を提供すること、
副交感神経抑制の量を減少させる制御信号を提供すること、
交感神経抑制の量を増大させる制御信号を提供すること、または
交感神経刺激の量を減少させる制御信号を提供すること、
のうち少なくとも1つを含む、請求項73に記載のデバイス読み取り可能な媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図5】
【図6】
【図7】
【公表番号】特表2013−500138(P2013−500138A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522934(P2012−522934)
【出願日】平成22年7月26日(2010.7.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/043228
【国際公開番号】WO2011/017049
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(505003528)カーディアック ペースメイカーズ, インコーポレイテッド (466)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月26日(2010.7.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/043228
【国際公開番号】WO2011/017049
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(505003528)カーディアック ペースメイカーズ, インコーポレイテッド (466)
【Fターム(参考)】
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