血管内皮増殖因子Dを発現する発現ベクターおよび細胞系、およびメラノーマを治療する方法
【課題】VEGF−Dおよびその生物学的に活性の誘導体を含む発現ベクター、VEGF−Dおよびその生物学的に活性の誘導体を安定に発現する細胞系、およびそれらの発現ベクターおよび宿主細胞を用いてポリペプチドを作る方法の提供。
【解決手段】VEGF−Dおよびその生物学的に活性の誘導体を含む発現ベクター、VEGF−Dおよびその生物学的に活性の誘導体を安定に発現する細胞系、およびそれらの発現ベクターおよび宿主細胞を用いてポリペプチドを作る方法、およびメラノーマまたはVEGF−Dを発現する腫瘍および種々の疾患を治療および軽減する方法。
【解決手段】VEGF−Dおよびその生物学的に活性の誘導体を含む発現ベクター、VEGF−Dおよびその生物学的に活性の誘導体を安定に発現する細胞系、およびそれらの発現ベクターおよび宿主細胞を用いてポリペプチドを作る方法、およびメラノーマまたはVEGF−Dを発現する腫瘍および種々の疾患を治療および軽減する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景および概要
本発明は、VEGF−Dおよびその生物学的に活性の誘導体を含む発現ベクター、VEGF−Dおよびその生物学的に活性の誘導体を安定に発現する細胞系、および、これらの発現ベクターおよび宿主細胞を用いてポリペプチドを作る方法に関する。本発明はまた、メラノーマおよび種々の疾患を治療および軽減する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
血管新生は、組織の正常な成長および発達のために必要な基礎的なプロセスであり、既存の血管からの新しい毛細血管の増殖に関与する。血管新生は胚の発生および正常な組織の成長、修復、および再生に関わっているだけでなく、女性の生殖のサイクル、妊娠の確立および維持に、そして創傷および骨折の修復にも関与している。正常な個体において起こる血管新生の他に、血管形成の現象は、特に腫瘍増殖および転移、そしてとりわけ微小血管系の血管増殖が増加するようなその他の状態、例えば糖尿病性網膜症、乾癬および関節症などの多くの病理学的プロセスに関与している。血管新生の阻害はそのような病理学的プロセスを防止または軽減することにおいて有用である。
【0003】
一方、血管新生(angiogenesis)の促進は、例えば、組織または器官の移植の後、あるいは、虚血性心疾患および閉塞性血栓性血管炎(thromboangitis obliterans)などの組織梗塞または動脈狭窄において側副循環の確立を刺激するために、血管新生(vascularization)が確立または伸展されるべき状況において望ましい。
【0004】
血管新生は非常に多くの生理学的および病理学的プロセスにおいて重大な役割を持つことから、血管新生の調節に関与する因子について集中的に研究されてきた。多くの増殖因子が血管新生の調節に関与していることが示されている。これらには、線維芽細胞増殖因子(FGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、トランスフォーミング増殖因子α(TGFα)、および肝細胞増殖因子(HGF)が含まれる。例えば、概説として、フォークマン(Folkman)他, J. Biol. Chem., 1992 267 10931-10934を参照されたい。
【0005】
特定のファミリーの内皮細胞−特異的増殖因子およびそれらに対応する受容体は、主に内皮細胞の増殖および分化の刺激について、そして分化細胞のある機能についての原因であるということが示唆されている。これらの因子はPDGFファミリーのメンバーであり、第一に内皮の受容体チロシンキナーゼ(RTK)を介して作用するようである。今までにいくつかの血管内皮増殖因子ファミリーメンバーが同定されている。血管内皮増殖因子(VEGF)は、複数のソースから単離されているホモダイマーの糖タンパク質である。VEGFは内皮細胞に対して高度に特異的な分裂促進活性を示し、血管新生に通じる全ての一連の現象を刺激することができる。さらにそれは、単球に対する強い化学誘引物質活性を有しており、内皮細胞におけるプラスミノーゲンアクチベーターおよびプラスミノーゲンアクチベーターインヒビターを誘導することができ、また、微小血管の透過性にも影響することができる。後者の活性のために、それは血管透過因子(VPF)と称されることもある。VEGFの単離および性質について概説されている;ファーララ(Ferrara)他, J. Cellular Biochem., 1991 47 211-218およびコノリー(Connolly), J. Cellular Biochem., 1991 47 219-223を参照されたい。
【0006】
より最近では、VEGFファミリーの6つのさらなるメンバーが同定された。これらは以下のように命名されている。即ち、VEGF−B、これはLudwig Institute for Cancer Research および The University of Helsinki によって、国際特許出願PCT/US96/02957(WO96/26736)において、そして、米国特許5,840,693号および5,607,918号において記載されている;VEGF−C、これはヨウコフ(Joukov)他, The EMBO Journal, 1996 15 290-298において記載されている;VEGF−D、これは国際特許出願PCT/US97/14696(WO98/07832)において記載されている;胎盤増殖因子(PlGF)、これはマグリオーネ(Maglione)他, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1991 88 9267-9271 において記載されている;VEGF2、これはHuman Genome Sciences, Inc によって国際特許出願PCT/US94/05291(WO95/24473)において記載されている;そしてVEGF3、これはHuman Genome Sciences, Inc によって国際特許出願PCT/US95/07283(WO96/39421)において記載されている。それぞれが30%から45%のVEGFとのアミノ酸配列アイデンティティを示す。VEGFファミリーメンバーは、システインノットモチーフを形成する6つのシステイン残基を含むVEGFホモロジードメインを共有している。VEGFファミリーの機能の特性には、異なる程度の、内皮細胞に対する分裂促進性、血管透過性の誘導、そして、血管形成およびリンパ脈管形成(lymphangiogenic)の性質が含まれる。
【0007】
VEGF−Bは、VEGFと類似の血管形成およびその他の性質を有しているが、VEGFとは異なる組織において分布および発現している。特に、VEGF−Bは、心臓において非常に強く発現しており、肺においては弱くしか発現していないが、VEGFの場合は逆である。これは、VEGFとVEGF−Bは、多くの組織において共発現している(co-expressed)という事実にもかかわらず、機能の差を有している可能性があるということを示唆するものである。
【0008】
VEGF−Bは、酵母共ハイブリッド(co-hybrid)相互作用トラップスクリーニング技術を用いて、細胞のレチノイン酸−結合タンパク質タイプI(CRABP−I)と相互作用する可能性のある細胞のタンパク質をスクリーニングすることによって単離された。その単離および特性は、PCT/US96/02597およびオロフソン(Olofsson)他, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1996 93 2576-2581において詳細に記載されている。
【0009】
VEGF−Cは、VEGFR−3を発現するようにトランスフェクト(transfect)された細胞を用いて、内皮細胞−特異的受容体チロシンキナーゼVEGFR−3(Flt4)のチロシンリン酸化を引き起こす培地の能力についてスクリーニングすることによって、PC−3前立腺癌細胞系(CRL1435)のならし培地(培養上清conditioned medium)から単離された。VEGF−Cは組換えVEGFR−3を用いたアフィニティークロマトグラフィーを使用して精製され、そしてPC−3 cDNAライブラリーからクローニングされた。その単離および特性は、ヨウコフ(Joukov)他, The EMBO Journal, 1996 15 290-298において詳細に記載されている。
【0010】
VEGF−Dは、Clontechから販売されているヒト乳房cDNAライブラリーから、ハイブリダイゼーションプローブとして“Soares Breast 3NbHBst”と命名されているヒトcDNAライブラリーから得たEST(expressed sequence tag)を用いてスクリーニングすることによって単離された(アーヘン(Achen)他, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1998 95 548-553)。その単離および特性は、国際特許出願PCT/US97/14696において詳細に記載されている。
【0011】
PCT/US97/14696において、VEGF−D△N△Cと命名された、VEGF−Dの生物学的に活性のフラグメントの単離についても記載されている。このフラグメントは、アフィニティータグペプチドFLAG(登録商標)に連結した、VEGF−Dアミノ酸残基93から201からなる。国際特許出願PCT/US97/14696(WO98/07832)の全体の開示を参考文献として本出願に合体させる。
【0012】
VEGF−Dは、VEGFファミリーのその他のメンバーに対する構造的な類似性を有している。しかし、そのような構造的な類似性にもかかわらず、それは、構造的および機能的にVEGFファミリーのその他のメンバーから区別される。ヒトVEGF−DはVEGF−Cに対して48%しか同一ではなく、VEGF−CはVEGF−Dと最も密接に関連している、ファミリーのメンバーである。
【0013】
VEGF−D遺伝子は成人のヒトにおいて広く発現しているが、必ず至るところに発現しているという訳ではない。VEGF−Dは、心臓、肺および骨格筋において強く発現している。中度のレベルのVEGF−Dが、脾臓、卵巣、小腸および大腸において発現しており、腎臓、膵臓、胸腺、前立腺および精巣においてはより低い発現が起こっている。脳、胎盤、肝臓または末梢血白血球からのRNAにおいてはVEGF−D mRNAは検出されなかった。
【0014】
PlGFは、末期 (term)胎盤cDNAライブラリーから単離された。その単離および特性は、マグリオーネ(Maglione)他, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1991 88 9267-9271において詳細に記載されている。現在その生物学的機能についてはあまり理解されていない。
【0015】
VEGF2は、高度に腫瘍形成性の(tumorgenic)、エストロゲン−非依存性ヒト乳癌細胞系から単離された。この分子はPDGFに対して約22%のホモロジーを、そしてVEGFに対して30%のホモロジーを有するといわれているが、VEGF2をコードする遺伝子の単離方法は不明暸であり、生物学的活性の特徴づけについては開示されていない。
【0016】
VEGF3は、大腸組織に由来するcDNAライブラリーから単離された。VEGF3はVEGFに対して約36%のアイデンティティおよび66%の類似度を有するといわれている。VEGF3をコードする遺伝子の単離方法は不明暸であり、生物学的活性の特徴づけについては開示されていない。
【0017】
血管内皮増殖因子は第一に受容体チロシンキナーゼに結合することによって作用すると思われる。5つの内皮細胞−特異的受容体チロシンキナーゼ、すなわち、VEGFR−1(Flt−1)、VEGFR−2(KDR/Flk−1)、VEGFR−3(Flt−4)、TieおよびTek/Tie−2、が同定されている。これらのすべてはシグナル伝達に必要な固有のチロシンキナーゼ活性を有している。VEGFR−1、VEGFR−2、VEGFR−3、TieおよびTek/Tie−2の血管形成および血管新生における、重要な特異的な役割が、マウス胚においてこれらの受容体を不活性化する標的化(targeted) 突然変異によって実証されている。
【0018】
VEGF類に結合することが知られている受容体チロシンキナーゼは、VEGFR−1、VEGFR−2およびVEGFR−3のみである。VEGFR−1とVEGFR−2とは、VEGFに高いアフィニティーで結合し、VEGFR−1は、VEGF−Bにも結合する。VEGF−CはVEGFR−3に対するリガンドであることが示されており、VEGFR−2も活性化する(ヨウコフ(Joukov)他、The EMBO Journal, 1996 15 290-298)。VEGF−DはVEGF−Cと受容体特異性を共有する(アーヘン(Achen)他, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1998 95 548-553)。Tek/Tie−2に対するリガンドは記載されている(Regeneron Pharmaceuticals, Inc. による国際特許出願PCT/US95/12935(WO96/11269));しかしながら、Tieに対するリガンドは同定されていない。
【0019】
VEGF−DとVEGF−Cの一次翻訳産物は、中心のVEGFホモロジードメイン(VHD)に加えて、長いN−末端およびC−末端ポリペプチド延長を有している。VEGF−Cの場合、これらのポリペプチド延長はプロペプチドであり、プロペプチドはタンパク分解性に切断されて、VHDのみからなりVEGFR−2およびVEGFR−3に対して結合する能力のある分泌される形態を生じる(ヨウコフ(Joukov)他, The EMBO Journal, 1996 15 290-298; ヨウコフ(Joukov)他, EMBO J., 1997 16 3898-3911)。同様に、VHDのみからなる組換え型のVEGF−Dは、これらの受容体に結合して活性化すること、および内皮細胞に対して分裂促進的であることが示されたが、VEGF−Dプロセシングについては特徴づけられていない(アーヘン(Achen)他, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1998 95 548-553)。
【0020】
最近、新規な130−135kDaのVEGF−Aアイソフォーム特異的受容体が精製およびクローニングされた(ソーカー(Soker)他, Cell, 1998 92 735-745)。このVEGF受容体は、エキソン7にコードされる配列を介して、ヘパリンに対して弱いアフィニティーを示すVEGF−A165アイソフォームに特異的に結合することが判明した(ソーカー(Soker)他, Cell, 1998 92 735-745)。驚いたことに、この受容体は初期の神経形態形成(neuromorphogenesis)に関与する受容体である、ヒトニューロピリン(neuropilin)−1(NP−1)と同一であることが示された。PlGF−2もNP−1と相互作用すると思われる(ミッドガル(Midgal)他, J. Biol. Chem., 1998 273 22272-22278)。
【0021】
遺伝子ターゲッテッイング研究により、胚の発生のために、VEGFR−1、VEGFR−2およびVEGFR−3が絶対的に必要であることが実証された。これらの研究は、VEGFR−1は血管内皮管形成において役割を果たすということ、VEGFR−2は内皮/造血細胞の分化および有糸分裂誘発のために重要であること、そしてVEGFR−3は血管の再構築の調節、大血管の形成およびリンパ脈管形成(lymphangiogenesis)に関与しているということを示すものである。これらの受容体の機能は、ムストネン(Mustonen)およびアリタロ(Alitalo), J. Cell Biol., 1995 129 895-898において概説されている。
【0022】
VEGFR−3は、胎児においては静脈およびリンパの内皮において発現しており、成体においては主にリンパの内皮において発現している(カイパイネン(Kaipainen)他, Cancer Res, 1994 54 6571-6577; Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1995 92 3566-3570)。VEGFR−3は、リンパ管の出現の前の胚の心臓血管系の発達において重要な役割を有する(デュモン(Dumont)他, Science, 1998 282 946-949)。VEGF−Cはリンパ内皮において第一の機能を有しており、血管新生および透過性の調節において、VEGFと共有される第二の機能を有している可能性があるということが示唆されている(ヨウコフ(Joukov)他, The EMBO Journal, 1996 15 290-298)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】国際公開第96/26736号(国際特許出願PCT/US96/02957号)
【特許文献2】米国特許5,840,693号
【特許文献3】米国特許5,607,918号
【特許文献4】国際公開第98/07832号(国際特許出願PCT/US97/14696号)
【特許文献5】国際公開第95/24473号(国際特許出願PCT/US94/05291号)
【特許文献6】国際公開第96/39421号(国際特許出願PCT/US95/07283号)
【特許文献7】国際特許出願PCT/US96/02597号
【特許文献8】国際公開98/07832号(国際特許出願PCT/US97/14696号)
【特許文献9】国際公開96/11269号(国際特許出願PCT/US95/12935号)
【非特許文献】
【0024】
【非特許文献1】Folkman et al., J. Biol. Chem., 1992 267 10931-10934
【非特許文献2】Ferrara et al., J. Cellular Biochem., 1991 47 211-218
【非特許文献3】Connolly et al., J. Cellular Biochem., 1991 47 219-223
【非特許文献4】Joukov et al., The EMBO Journal, 1996 15 290-298
【非特許文献5】Maglione et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1991 88 9267-9271
【非特許文献6】Olofsson et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1996 93 2576-2581
【非特許文献7】Achen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1998 95 548-553
【非特許文献8】Joukov et al., EMBO J., 1997 16 3898-3911
【非特許文献9】Soker et al., Cell, 1998 92 735-745
【非特許文献10】Midgal et al., J. Biol. Chem., 1998 273 22272-22278
【非特許文献11】Mustonen and Alitalo, J. Cell Biol., 1995 129 895-898
【非特許文献12】Kaipainen et al., Cancer Res, 1994 54 6571-6577
【非特許文献13】Kaipainen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1995 92 3566-3570
【非特許文献14】Dumont et al., Science, 1998 282 946-949
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明は、VEGF−Dおよびその生物学的に活性の誘導体を含む発現ベクター、VEGF−Dおよびその生物学的に活性の誘導体を安定に発現する細胞系、およびそれらの発現ベクターおよび宿主細胞を用いてポリペプチドを作る方法の確立を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明は、概して、VEGF−Dおよびその生物学的に活性の誘導体を含む発現ベクター、VEGF−Dおよびその生物学的に活性の誘導体を安定に発現する細胞系、およびそれらの発現ベクターおよび宿主細胞を用いてポリペプチドを作る方法を提供する。本発明はまた、概して、メラノーマまたはVEGF−Dを発現する腫瘍および種々の疾患を治療および軽減する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】293−EBNA細胞におけるヒトVEGF−D誘導体の発現のためのApex−3プラスミドコンストラクトの概略のマップを示す図である。
【図2】VEGF−D誘導体の、293−EBNA細胞による発現を示す図である。
【図3】可溶性のVEGF受容体−免疫グロブリン融合タンパク質による、VEGF−Dの沈降を示す図である。
【図4】市販のマウス肺cDNAライブラリーからハイブリダイゼーションスクリーニングによって単離された、マウスVEGF−D1をコードするcDNAのヌクレオチド配列(配列番号2)を示す図である。
【図5】VEGF−DアンチセンスおよびセンスRNAとハイブリダイズさせた、交尾後15.5日のマウス組織切片の露出2日後に得たオートラジオグラフを示す図 である。
【図6A】交尾後15.5日のマウス胚におけるVEGF−D mRNAの分布の、in situハイブリダイゼーションによる分析の結果を示す図である。
【図6B】交尾後15.5日のマウス胚におけるVEGF−D mRNAの分布の、in situハイブリダイゼーションによる分析の結果を示す図である。
【図6C】交尾後15.5日のマウス胚におけるVEGF−D mRNAの分布の、in situハイブリダイゼーションによる分析の結果を示す図である。
【図6D】交尾後15.5日のマウス胚におけるVEGF−D mRNAの分布の、in situハイブリダイゼーションによる分析の結果を示す図である。
【図7A】VEGF−Dモノクローナル抗体を用いた免疫組織化学による、ヒトの悪性のメラノーマの分析を示す図である。
【図7B】VEGF−Dモノクローナル抗体を用いた免疫組織化学による、ヒトの悪性のメラノーマの分析を示す図である。
【図7C】VEGF−Dモノクローナル抗体を用いた免疫組織化学による、ヒトの悪性のメラノーマの分析を示す図である。
【図7D】VEGF−Dモノクローナル抗体を用いた免疫組織化学による、ヒトの悪性のメラノーマの分析を示す図である。
【図7E】VEGF−Dモノクローナル抗体を用いた免疫組織化学による、ヒトの悪性のメラノーマの分析を示す図である。
【図8】VEGF−DおよびいくつかのVEGF−D誘導体の、構造上のドメインの概略表示を提供する図である。
【図9A】VEGF−DFullNFlag(A、BおよびC)およびVEGF−D△C(DおよびE)を発現する293−EBNA細胞によって分泌されるVEGF−D誘導体の分析を示す図である。
【図9B】VEGF−DFullNFlag(A、BおよびC)およびVEGF−D△C(DおよびE)を発現する293−EBNA細胞によって分泌されるVEGF−D誘導体の分析を示す図である。
【図9C】VEGF−DFullNFlag(A、BおよびC)およびVEGF−D△C(DおよびE)を発現する293−EBNA細胞によって分泌されるVEGF−D誘導体の分析を示す図である。
【図9D】VEGF−DFullNFlag(A、BおよびC)およびVEGF−D△C(DおよびE)を発現する293−EBNA細胞によって分泌されるVEGF−D誘導体の分析を示す図である。
【図9E】VEGF−DFullNFlag(A、BおよびC)およびVEGF−D△C(DおよびE)を発現する293−EBNA細胞によって分泌されるVEGF−D誘導体の分析を示す図である。
【図10A】サイズ排除クロマトグラフィーおよびSDS−PAGEによるVEGF−D△N△Cの分析を示す図である。
【図10B】サイズ排除クロマトグラフィーおよびSDS−PAGEによるVEGF−D△N△Cの分析を示す図である。
【図11】VEGF−Dプロセシングの機序の概略表示を提供する図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
第一の側面によると、本発明は、VEGF−DまたはVEGF−Dの生物学的活性を有するそのフラグメントまたはアナログを安定に発現する哺乳類の細胞系を提供する。本発明の細胞系によって産生されるVEGF−Dは随意に、アフィニティー精製およびVEGF−Dの局在化を補助するために、FLAG(登録商標)、ヘキサヒスチジン(hexahistidine)、またはI−SPY(商標)などのエピトープタグ(tag)に連結される。好ましくは哺乳類の細胞系は、293−EBNAヒト胎児性(embryonal)腎臓細胞系である。好ましくは、発現されるVEGF−Dは、本明細書において記載されるような、VEGF−DFullNFlag、VEGF−DFullCFlag、VEGF−D△N△C、またはVEGF−D△Cである。
【0029】
“VEGF−Dの生物学的活性”という語句は、内皮細胞増殖、分化、遊走、生存(残存)または血管透過性のうち一以上を刺激する能力を意味するものと理解されるべきものである。
【0030】
VEGF−Dの好適なフラグメントは、PCT/US97/14696の配列番号5の、アミノ酸残基93からアミノ酸残基201のVEGF−Dの部分(すなわち、VEGFホモロジードメイン(VHD))(配列番号1)であり、随意にFLAG(登録商標)ペプチドに連結したものである。フラグメントがFLAG(登録商標)に連結している場合、そのフラグメントを、本明細書では、VEGF−D△N△Cと称する。
【0031】
本明細書で用いられる、“VEGF−D”という語は、国際特許出願PCT/US97/14696において定義されている、配列番号3、配列番号5、配列番号8、および配列番号9のポリペプチドのすべて、および本明細書において定義されているVEGF−Dの生物学的活性を有するそのフラグメントまたはアナログを集合的に指す。
【0032】
第二の側面によると、本発明は、哺乳類の発現ベクターApex−3に挿入された、VEGF−DをコードするヒトcDNAの配列を含む発現ベクターを提供する。好ましくは、発現ベクターは、本明細書において記載する、pVDApexFullNFlag、VEGF−DFullCFlag、pVDApex△N△C、またはpVDApex△Cである。
【0033】
好ましくは、発現ベクターは、FLAG(登録商標)、ヘキサヒスチジン、またはI−SPY(商標)などのアフィニティータグをコードする配列も含む。
【0034】
本発明は更に、本発明によるポリペプチドを作る方法を提供する。この方法は、宿主細胞において本発明の発現ベクターを発現させる工程、および、宿主細胞から、または、宿主細胞の増殖培地からポリペプチドを単離する工程、を有する。本発明のこの側面の1つの好適な態様において、発現ベクターはさらに、アフィニティークロマトグラフィーによるポリペプチドの精製を促進するために、FLAG(登録商標)、ヘキサヒスチジン、またはI−SPY(商標)などの、アフィニティータグをコードする配列を含む。
【0035】
保存的な(conservative)置換、挿入、または欠失を含むがそれでもなおVEGF−Dの生物学的活性を保持するポリペプチドは、明らかに本発明の枠内に含まれるということが理解されるべきである。当業者であれば、例えば部位特異的突然変異誘発の利用、または、特異的な酵素での切断および連結(ライゲーション)などの、そのようなポリペプチドを産生するために容易に用いることができる方法についてよく知っているであろう。また、当業者であれば、ペプチド疑似の(peptidomimetic)化合物、または、1または複数のアミノ酸残基が、非−自然発生アミノ酸またはアミノ酸アナログによって置換された化合物が、VEGF−Dの生物学的活性の必要とされる側面を保持することができるであろうということも知っているであろう。そのような化合物は、当業者に周知の方法によって容易に作ることおよびテストすることができ、それらはまた、本発明の枠内に含まれる。
【0036】
さらに、VEGFおよびVEGF−Bについて起こることが知られているような、選択的スプライシングの結果として起こる、VEGF−Dポリペプチドの変異体形態、および、VEGF−Dをコードする核酸配列の自然に発生する対立遺伝子の変異体も、本発明の枠内に含まれる。対立遺伝子の変異体は当業者に周知であり、コードされるポリペプチドの代替の(オルターナティブな)形態を表す。
【0037】
VEGF−Dのそのような変異体形態は、修飾のためにVEGF−Dポリペプチドの非−必須領域をターゲッティングすることによって調製することができる。これらの非−必須領域は、強く保存された領域の外側になると予想される。特に、VEGFを含む、PDGFファミリーの増殖因子は二量体であり、そして、VEGF、VEGF−B、VEGF−C、VEGF−D、PDGF−AおよびPDGF−Bは、PDGF−様ドメインにおける8つのシステイン残基の完全な保存を示す(オロフソン(Olofsson)他, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1996 93 2576-2581; ヨウコフ(Joukov)他, The EMBO Journal, 1996 15 290-298)。これらシステインは分子内および分子間のジスルフィド結合に関与すると考えられている。分子内のジスルフィド結合によって形成される、各サブユニットのループ1、2および3は、PDGF/VEGFファミリーの増殖因子の受容体に対する結合に関与している(アンダーソン(Andersson)他, Growth Factors, 1995 12 159-164)。上述のように、以前に知られているVEGFファミリーのメンバーにおいて保存されているシステインは、VEGF−Dにおいても保存されている。
【0038】
したがって当業者であれば、提案されるあらゆる変異体形態においてこれらのシステイン残基が保存されるべきであるということ、およびループ1、2および3にある活性部位も保存されるべきであるということについてよく知っているであろう。しかし、この分子のその他の領域は、生物学的機能にとってより重要性が低いということを予想することができ、そしてそれゆえ修飾のための適切なターゲットを提供することができる。修飾されたポリペプチドは、VEGF−Dの生物学的活性を示すそれらの能力について、細胞増殖テストなどのルーチン活性アッセイ手順によって容易にテストすることができる。
【0039】
修飾されたVEGF−Dポリペプチドには、内皮細胞、すなわちVEGF−D受容体に対して結合する能力を有するが、内皮細胞増殖、分化、遊走、または生存(残存)を刺激することができない、または、血管透過性を誘導することができないものがあると予想される。これらの修飾されたポリペプチドは、競合的または非−競合的なVEGF−Dの阻害剤として作用することができ、VEGF−D作用の防止または低下が望ましい状況において有用であると予想される。したがって、そのような受容体−結合性であるが非−分裂促進的、非−分化誘導性、非−遊走誘導性、または非−生存(残存)促進性の、VEGF−Dの変異体もまた、本発明の枠内に含まれ、そして本明細書において、“受容体−結合性の、しかしその他の点では不活性または妨害性の変異体”と称される。
【0040】
同様に修飾されたVEGF−Dポリペプチドには、VEGF−Dに結合する能力を有し、二量体(ダイマー)の、内皮細胞におけるVEGF−D受容体(例えば、VEGFR−2およびVEGFR−3)に対する結合を妨げるものがあると予想される。したがってこれら二量体は、内皮細胞増殖、分化、遊走、または生存(残存)を刺激することができず、または、血管透過性を誘導することができない。これらの修飾されたポリペプチドは、競合的または非−競合的なVEGF−Dの阻害剤として作用することができ、VEGF−D作用の防止または低下が望ましい状況において有用であると予想される。したがって、そのようなVEGF−D−結合性であるが非−分裂促進的、非−分化誘導性、非−遊走誘導性、または非−生存(残存)促進性の、VEGF−Dの変異体もまた、本発明の枠内に含まれ、そして本明細書において、“VEGF−D−結合性の、しかしその他の点では不活性または妨害性の変異体”と称される。
【0041】
第三の側面によると、本発明は、悪性のメラノーマまたはVEGF−Dを発現する腫瘍の治療または軽減方法を提供する。この方法は、メラノーマまたは腫瘍の付近においてVEGF−Dの発現または活性を阻害する工程を有する。VEGF−D発現の局所的な阻害は、例えばアンチセンス核酸またはVEGF−Dをコードする三本鎖DNAの使用によって達成することができる。代わりに、上述のような、VEGF−Dに対して結合してVEGF−D受容体に対する結合を妨げる能力を有するか、あるいは、VEGF−D受容体に結合するが、内皮細胞増殖、分化、遊走、または生存(残存)を刺激することができない、VEGF−D変異体ポリペプチドを、競合的または非−競合的なVEGF−Dの阻害剤として利用することができる。VEGF−D、VEGFR−2またはVEGFR−3に対する小分子阻害剤、およびVEGF−D、VEGFR−2またはVEGFR−3に対する抗体も利用することができる。
【0042】
上記の方法の利用はまた、乾癬におけるように、VEGF−Dの発現が増加しているか持続的であるような非−悪性の状態においても考えられる。発生中のマウス胚の皮膚におけるVEGF−Dの分布に基づくと、上部真皮(upper dermis)における血管の増殖が一貫した、そして顕著な組織病理学的な特徴である、乾癬などの高い表皮細胞ターンオーバー皮膚疾患(high epidermal cell turnover dermatoses)の開始または存続において、VEGF−Dが役割を果たしているということがありうる。
【0043】
本発明のさらなる側面において、VEGF−Dは内皮細胞阻害活性を有する毒素または薬剤と結合され、それは、例えばVEGFR−2およびVEGFR−3などのVEGF−D受容体を発現する、増殖している血管およびリンパの内皮細胞に標的化される(targeted)。したがって、腫瘍増殖などの多くの病理学的状態にとって重要なものである血管の増殖をブロックすることができる。
【0044】
第五の側面によると、本発明は皮膚移植の受け入れおよび/または治癒を増強する方法を提供する。この方法は、有効量の、VEGF−D、またはVEGF−Dの生物学的活性を有するそのフラグメントまたはアナログによって、血管新生およびリンパ脈管形成(lymphangiogenesis)を刺激する工程を有する。
【0045】
第六の側面によると、本発明は皮膚に対する外科または外傷の創傷の治癒を刺激する方法を提供する。この方法は、有効量の、VEGF−D、またはVEGF−Dの生物学的活性を有するそのフラグメントまたはアナログによって、血管新生およびリンパ脈管形成を刺激する工程を有する。
【0046】
前記した本発明の最後の2つの側面は、火傷の治療において、および形成外科において、特に有用であろうと考えられる。
【0047】
本発明の別の側面において、リンパ浮腫の治療または軽減のためにリンパ脈管形成を刺激するための方法が提供される。この方法は、有効量の、VEGF−D、またはVEGF−Dの生物学的活性を有するそのフラグメントまたはアナログによって、リンパ脈管形成を刺激する工程を有する。リンパ浮腫ほど醜くなる疾患はあまりない。リンパ浮腫は、組織を満たす体液の排出に関与するリンパ管の閉塞(妨害物)がある場合に起こる。この閉塞の結果、組織の中にリンパ液または脂肪性の体液が蓄積し、そしてその結果として肢および組織の怒張が起こる。最終的な結果は、局所性の感染症、不快感および変形(奇形)のためにしばしばグロテスクであり、そして激しく無力化する。リンパ浮腫にはいくつかの原因がある。最も注目すべきは、リンパ節閉塞または手術中の除去に関連する乳癌である。再発性の感染症およびその他の形態の手術もリンパ浮腫に関連する。有意な割合のリンパ浮腫の患者は、同一とみなしうるもの(identifiable precitant)を有さない。VEGF−Dの量を増加させることによって、リンパ脈管形成が誘導され、そしてリンパ液および脂肪性の体液の蓄積が軽減するであろう。
【0048】
胚形成の間のVEGF−D合成の不適当なダウンレギュレーションは、無汗性外胚葉性異形成を含む付属器構造異常発育においても重要である可能性がある。通常は真皮における汗腺は、血管新生化した(vascularized)脂肪性の結合組織によって囲まれている。おそらくはVEGF−Dの欠乏によって、血管の供給が損なわれるか、または補充することができない場合、汗腺低酸素血症および機能不全が起こるであろう。これらの病変はおそらく、発生のなんらかの段階における分化細胞のVEGF−Dを産生する能力の欠如、または、遮断剤を産生する分化している付属器細胞の近くの血管におけるVEGF−D受容体に対する遮断剤の産生によるものであろう。したがって、本発明は脂肪性の結合組織の血管新生(vascularization)を刺激することによって、無汗性外胚葉性異形成を治療または軽減するための方法を提供する。この方法は、有効量の、VEGF−D、またはVEGF−Dの生物学的活性を有するそのフラグメントまたはアナログを投与する工程を有する。
【0049】
VEGF−Dの欠乏またはVEGF−Dに対する応答の欠乏に関連する可能性がある更に別の疾患は、強皮症である。強皮症は、血管新生および/または線維芽細胞機能における変化によると考えられる、皮膚の肥厚およびコラーゲン化(collagenization)の増加によって特徴づけられる結合組織の珍しい障害である。VEGF−Dの欠乏またはVEGF−Dに対する応答の不足による内皮細胞への障害(ダメージ)は、おそらく血管が修復できないことに寄与する要因であろう。血管が修復できないため、連続性の血小板凝集が観察され、そして引き続いて線維芽細胞に対して分裂促進的な作用を有する増殖因子が放出される。この結果、コラーゲン産生が増加する。強皮症における全身的な器官の関与にも同様の考慮があてはまる。したがって、本発明は、血管内皮細胞の増殖を刺激することによって強皮症を治療または軽減する方法を提供する。この方法は、有効量の、VEGF−D、またはVEGF−Dの生物学的活性を有するそのフラグメントまたはアナログを投与する工程を有する。
【0050】
第七の側面によると、本発明は、血管透過性を誘導せずに、内皮細胞の増殖、遊走、生存(残存)および分化、そしてリンパ脈管形成から選択される、VEGF−Dの少なくとも1つの生物活性を刺激する方法を提供する。この方法は、生物活性を刺激する量の完全にプロセシングされたVEGF−Dを投与する工程を有する。
【0051】
本発明のさらなる側面では、VEGF−Dの受容体−結合特異性を調節する方法を提供する。この方法は、プロセシングされていない(unprocessed) VEGF−Dをコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターを発現させる工程、および、コードされるVEGF−Dをプロセシングしてタンパク分解性にプロセシングされた形態のVEGF−Dを産生するために、少なくとも1つのタンパク分解量(proteolytic amount)の酵素を供給する工程を有する。
【0052】
本明細書での目的のため、“完全にプロセシングされたVEGF−D”という語句はN−末端およびC−末端プロペプチドを有さないVEGF−Dポリペプチドを意味し、“タンパク分解性にプロセシングされた形態のVEGF−D” という語句はN−末端および/またはC−末端プロペプチドを有さないVEGF−Dポリペプチドを意味し、そして、“プロセシングされていないVEGF−D”という語句はN−末端およびC−末端プロペプチドの両方を備えたVEGF−Dポリペプチドを意味するということが、明らかに理解されるであろう。
【0053】
本発明はまた、生物学的サンプルにおいてVEGF−Dを発現する腫瘍を検出する方法も提供する。この方法は、前記サンプルをVEGF−Dに対する特異的結合性試薬に接触させる工程、VEGF−Dに対する前記特異的結合性試薬の結合のために時間を与える工程、および前記結合を検出する工程を有する。好適な態様において、VEGF−Dに対する特異的結合性試薬は抗体であり、結合および/または結合の程度は、検出可能な標識を備えた抗体によって検出される。癌バイオプシー標本におけるVEGF−Dの定量化は将来の転移のリスクの指標として有用であろう。
【0054】
本発明による抗体を検出可能な標識で標識して、診断の目的のために利用することができる。抗体は、イメージングのために、適当な超磁性(supermagnetic)、パラ磁性(paramagnetic)、高電子密度、エコジェニック(ecogenic)、または放射性剤と共有結合的または非−共有結合的に結合させるとよい。診断上のアッセイにおける使用のために、放射性標識または非−放射性標識を用いてもよい。放射性標識の例には、125Iまたは32Pなどの放射性の原子または基が含まれる。非−放射性標識の例には、西洋わさびペルオキシダーゼなどの酵素標識、またはフルオレセイン−5−イソチオシアナート(FITC)などの蛍光定量的標識が含まれる。標識化は、直接的であっても間接的であってもよく、また、共有結合性であっても非−共有結合性であってもよい。
【0055】
VEGF−Dの生物学的活性を誘導するポリペプチドまたは抗体は、適当な製薬の担体と組み合わせて使用することができる。VEGF−Dの生物学的活性を阻害するポリペプチド、VEGF−Dアンタゴニストまたは抗体も、適当な製薬の担体と組み合わせて使用することができる。そのような組成物は、治療的に有効な量の抗体および薬学で受け入れられる担体またはアジュバントを含む。そのような担体の例には、塩類溶液、緩衝食塩水、鉱物油、タルク、ブドウ糖、水、グリセロール、エタノール、増粘剤、安定剤、懸濁剤、およびそれらの組み合わせが含まれるがそれらに限定されるものではない。そのような組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、カプセル剤、クリーム、こう薬(salve)、軟膏剤(ointment)の形態、またはその他の従来の形態とすればよい。製剤形態は投与方法に適するように選択される。ポリペプチド、VEGF−Dアンタゴニストまたは抗体が治療の目的のために使用される場合、適用用量および経路は患者の性質および治療される状態に依存するであろうし、主治医または獣医師の考え次第のものとなるであろう。適当な経路には、皮下の、筋肉内の、腹腔内の、または静脈内の注射、局所適用、インプラントなどが含まれる。VEGF−Dの局所適用はVEGFと類似の方法において行えばよい。
【0056】
本明細書での目的において、“からなる”という語は“含むが限定されるものではない”ことを意味することが明らかに理解されるであろう。それに対応する意味が“からなる”という語にあてはまる。
【実施例】
【0057】
実施例の詳細な説明
例1
VEGF−D誘導体を安定に発現する細胞系 VEGF−Dの誘導体を構成的に発現する細胞系を産生するために、ヒトVEGF−D cDNAの領域を哺乳類の発現ベクターApex−3(エヴァンス(Evans)他, Mol. Immunol., 1995 32 1183-1195)に挿入した。このベクターを293−EBNAヒト胎児性(embryonal)腎臓細胞にトランスフェクトした(transfected)場合、エピソームとして(episomally)維持した。VEGF−D△N△Cの発現のために、IL−3シグナル配列、FLAG(登録商標)オクタペプチドおよびVEGF−D△N△Cをコードする配列を含む、pEFBOSVEGF−D△N△Cの領域をApex−3のXbaI部位に挿入した(国際特許出願PCT/US97/14696における例9を参照)。その結果得られたプラスミドをpVDApex△N△Cと命名した。これは図1において図式的に図示されている。N−末端にFLAG(登録商標)がタグ付加された(tagged)全長ヒトVEGF−Dの誘導体である、VEGF−DFullNFlagの発現のため、また、VEGF−D△Cと命名された、アミノ酸残基2から202からなるヒトVEGF−Dの切形の(truncated)誘導体の発現のために、同様のタイプのコンストラクトを作成した。これらのVEGF−D誘導体のための発現コンストラクトを、それぞれpVDApexFullNFlagおよびpVDApex△Cと命名した。これらもまた、図1において図式的に示されている。IL−3 SSは、インターロイキン−3シグナル配列を表し、矢印は、サイトメガロウイルスプロモーター(CMV)から発現カセットへと進行する、転写の方向を表す。これらのベクターをヒト胎児(embryo)腎臓細胞系293−EBNAの細胞に、リン酸カルシウム法によってトランスフェクトし、そして安定なトランスフェクタントをハイグロマイシンの存在下で選抜した。高レベルのVEGF−DFullNFlag、VEGF−D△CおよびVEGF−D△N△Cを発現する細胞系を、引き続いて、図2に示すように、代謝標識、免疫沈降およびウエスタンブロット分析によって同定した。
【0058】
図2において、VEGF−DFullNFlag、VEGF−D△N△CおよびVEGF−D△Cを発現する293−EBNA細胞系を代謝的に標識し、ならし培地(培養上清conditioned medium)サンプルにおけるタンパク質を、抗−FLAG抗体(M2)またはVEGF−DのVEGFホモロジードメインに対して特異的な抗血清(A2)によって、免疫沈降した。沈降したタンパク質をSDS−PAGEによって分析し、VEGF−DFullNFlagおよびVEGF−D△N△Cの場合にはオートラジオグラフィーによって可視化し、また、VEGF−D△Cの場合にはM2抗体によるウエスタンブロット分析で検出した。矢印はVEGF−D誘導体の位置を示す。これらの誘導体は親の(parental) 293−EBNA細胞に由来するコントロール上清からは検出されなかった(データは示さない)。分子量マーカーの(kDaにおける)位置を各パネルの右側に示す。VEGF−D△Cのウエスタンブロット分析によって検出されたおよそ50kDaのバンドは、免疫グロブリン重鎖に対応する。
【0059】
多数のVEGF−D誘導体が、VEGF−DFullNFlagおよびVEGF−D△Cを発現する細胞の上清において検出された。これらの誘導体は、VEGF−Dの生合成の一部として起こるタンパク分解性プロセシングの結果として形成される。VEGF−DNFullFlag、VEGF−D△CおよびVEGF−D△N△Cを発現する細胞系は、少なくとも20回継代する間、ハイグロマイシン選抜下で維持し、そしてVEGF−D誘導体を発現させ続けた。
【0060】
例2
VEGF−D△N△Cの可溶性のVEGF受容体への結合 VEGF−DとVEGF受容体との間の相互作用をさらに評価するため、VEGF−D△N△Cを、ヒトVEGFR−1、ヒトVEGFR−2およびヒトVEGFR−3の細胞外ドメインを含む可溶性の免疫グロブリン融合タンパク質に対して結合するその能力についてテストした。対応するVEGF−Cのフラグメント、VEGF−C△N△Cを比較のために使用した。結合実験のために、293Tヒト胎児性腎臓細胞を、リン酸カルシウム(Ca−ホスフェイト)法を用いて、可溶性の受容体−免疫グロブリン融合タンパク質であるVEGFR−1−Ig、VEGFR−2−IgまたはVEGFR−3−Igをコードするプラスミドによってトランスフェクトした。これらの融合タンパク質において、関連するVEGF受容体の細胞外ドメインを、ヒトIgG1のFc部分に融合させた。トランスフェクションの後、細胞を24時間インキュベートし、0.2%ウシ血清アルブミン(BSA)を含有するダルベッコ修飾イーグル培地(DMEM:Dulbecco's Modified Eagle's Medium)で洗浄し、そして24時間飢餓させた。次に培地を収集し、遠心分離によって清澄にし、そして融合タンパク質をプロテインAセファロースビーズを用いて沈降させた。このセファロースビーズを次に、Ca−ホスフェイト法を用いてヒトVEGF−D△N△C、ヒトVEGF−C△N△CまたはヒトVEGF165をコードする発現プラスミドによってトランスフェクトされた293−EBNA細胞からの、900μlの代謝的に35S−標識された培地とともに、室温で3時間インキュベートした。293−EBNA細胞の代謝標識は基本的に記載されているようにして行った(ヨウコフ(Joukov)他, 1997)。セファロースビーズを次に結合緩衝液(リン酸緩衝食塩水(PBS)中の0.5% BSA、0.02% Tween20、1μg/ml ヘパリン)で4℃で2回、そしてPBSで1回洗浄し、Laemmliサンプル緩衝液中でボイルし、そして次にタンパク質をSDS−PAGEによって分析した。結果を図3に示す。
【0061】
図3において、標識されたVEGF165、VEGF−C△N△CおよびVEGF−D△N△Cの、VEGFR−1−Ig、VEGFR−2−IgおよびVEGFR−3−Igによる沈降を上記のように行った。沈降のために用いた融合タンパク質を右に示す。“ベクター”は、VEGF類をコードする配列を欠く発現ベクターによってトランスフェクトされた細胞に由来する培地からの沈降の結果を示す。分子量マーカーは、kDaにて示されている。
【0062】
VEGF−D△N△Cについて予想されるサイズ(およそ22kDa)のポリペプチドが、VEGF−D△N△Cを発現する細胞の培地から、VEGFR−2−IgおよびVEGFR−3−Igによって沈降した。対照的に、同じ培地から、VEGFR−1−Igによってはこのサイズのタンパク質は沈降しなかった。VEGF−C△N△Cの沈降についても基本的に同じ結果が観察された。予想されたように、およそ24kDaの主なポリペプチドが、VEGF165を発現する細胞の培地から、VEGFR−1−IgおよびVEGFR−2−Igによって沈降したが、VEGFR−3−Igによっては沈降しなかった。VEGF類をコードする配列を欠く発現ベクターによってトランスフェクトされた細胞の培地からは、3つの融合タンパク質によって、いずれの標識されたタンパク質も沈降しなかった。これらのデータは、VEGF−D△N△CはVEGFR−2およびVEGFR−3には結合することができるがVEGFR−1には結合することができないということを示している。したがって、VEGF−D△N△Cは、VEGFR−2およびVEGFR−3に対する受容体−結合特異性において、VEGF−C△N△Cと似ている。
【0063】
例3
マウス胚におけるVEGF−D遺伝子発現のin situハイブリダイゼーション研究 マウスVEGF−D1 cDNAのヌクレオチド1から340に対応する放射能標識したアンチセンスRNAプローブを用いたin situハイブリダイゼーションによって、VEGF−D遺伝子発現のパターンを研究した。マウスVEGF−D1 cDNAの配列を図4に示す。アンチセンスRNAは、T3 RNAポリメラーゼおよび[35S]UTPαsを用いたインビトロの転写によって合成した。マウスVEGF−Dは、国際特許出願PCT/US97/14696において完全に記載されている。このアンチセンスRNAプローブを、交尾後15.5日のマウス胚のパラフィン−包埋した組織切片にハイブリダイズさせた。標識された切片を2日間オートラジオグラフィーにかけた。その結果得られた、アンチセンスRNAおよび(ネガティブコントロールとして)相補的なセンスRNAに対してハイブリダイズした切片についてのオートラジオグラフを、図5に示す。図5において、“L”は肺を表し、“Sk”は皮膚を表す。そして図示されたこれら2つの組織切片は連続的な切片である。VEGF−D mRNAに対する強いシグナルが、発生中の肺において検出され、そして、皮膚に付随していた。コントロールセンスRNAを用いた場合は、シグナルは検出されなかった。
【0064】
図6において、矢状の(sagittal)組織切片をVEGF−DアンチセンスRNAプローブにハイブリダイズさせ、そして引き続いて写真乳剤とともにインキュベートし、現像および染色した。顕微鏡的な分析によってVEGF−D mRNAは発生中の肺の間葉細胞において大量にあるということが明らかにされた(図6A−C)。対照的に、気管支および細気管支(気管支梢)の上皮細胞、そして気管支を囲む発生中の平滑筋細胞は、ネガティブであった。気管支動脈の内皮細胞もネガティブであった。図6Aにおいて、顕微鏡写真の暗い領域は、肺(Lu)におけるVEGF−D mRNAに対する強いシグナルを示す。肝臓(Li)および肋骨(R)も示されている。図6Bは、より高い拡大率における肺を示す。顕微鏡写真の明るい領域は、気管支(Br)および気管支動脈(BA)を示す。黒い長方形の輪郭は、図6Cに示される切片の領域を示すものであるが、図6Cはより高い拡大率のものである。図6Cは、気管支の上皮細胞(Ep)、上皮細胞層を囲む発生中の平滑筋細胞(SM)および間葉細胞(Mes)を示す。間葉細胞に付随する銀粒子が大量であることが明らかである。図6Dにおいて、顕微鏡写真の暗い領域は、肢芽を示す。線維芽細胞および発生中のメラノサイトに富む組織の領域における皮膚のすぐ下に、強いシグナルが位置していた。図6AおよびDについての拡大率は×40であり、図6Bについての拡大率は×200であり、図6Cについての拡大率は×500であった。
【0065】
ここに示した結果は、VEGF−Dは血管およびリンパ管の増殖を、発生中の肺および皮膚のすぐに下側の領域へと誘引している可能性があることを示唆するものである。皮膚の近くでVEGF−D遺伝子が発現していることにより、VEGF−Dは悪性のメラノーマに関連する血管新生を誘導することにおいて役割を果たしている可能性があると考えられる。悪性のメラノーマは非常に高度に血管新生化された(vascularized)腫瘍である。このことは、例えばVEGF−DまたはVEGF−D受容体−2またはVEGF−D受容体−3に対する抗体を用いた、VEGF−D発現の局所的な阻害が、悪性のメラノーマの治療において有用であることを示唆するものである。アンチセンス核酸または三本鎖DNAなどのその他の好適なVEGF−D活性の阻害剤も利用することができる。
【0066】
例4
ヒトVEGF−Dに結合するモノクローナル抗体の産生 VEGF−D△N△Cに対するモノクローナル抗体をマウスにおいて産生させた。VEGF−D△N△Cは、VEGF−DのVHDのアミノ酸配列を含み、VEGFファミリーの他のすべてのメンバーと配列において似ている。それゆえ、VEGF−Dの生理活性の部分はおそらくVHDにおいて存在すると考えられている。ヒトVEGF−Dの残基93から201の切形の(truncated)部分、すなわち、N−末端領域およびC−末端領域が除去された部分をコードするDNAフラグメントを、テンプレートとして全長ヒトVEGF−D cDNAを含むプラスミドを使用した、Pfu DNAポリメラーゼを用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって増幅した。増幅されたDNAフラグメントの配列をヌクレオチドシークエンシングによって確認し、そして発現ベクターpEFBOSSFLAG(The Walter and Eliza Hall Institute for Medical Research (WEHI)、Melbourne、Australiaの Dr. Clare McFarlane から寄贈)に挿入し、pEFBOSVEGF−D△N△Cと命名したプラスミドを生じさせた。pEFBOSSFLAGベクターは、インターロイキン−3(IL−3)遺伝子からのタンパク質分泌のためのシグナル配列およびFLAG(登録商標)オクタペプチド(Sigma-Aldrich)をコードするDNAを含むものである。FLAG(登録商標)オクタペプチドはM2モノクローナル抗体(Sigma-Aldrich)などの市販の抗体によって認識され得る。VEGF−D PCRフラグメントをこのベクターに、IL−3シグナル配列がFLAG(登録商標)オクタペプチドのすぐに上流になり、FLAG(登録商標)オクタペプチドが切形のVEGF−D配列のすぐに上流になるように挿入した。これら3つのすべての配列は同じ読み枠になっており、したがってpEFBOSVEGF−D△N△Cの哺乳類の細胞へのトランスフェクションの結果としておこるmRNAの翻訳により、そのN−末端にIL−3シグナル配列を、続いてFLAG(登録商標)オクタペプチド、および切形のVEGF−D配列を有するタンパク質が生じることになる。シグナル配列の切断およびそれに引き続く細胞からのタンパク質の分泌により、N−末端に隣接してFLAG(登録商標)オクタペプチドがタグ付加された(tagged)、VEGF−Dポリペプチドが生じることになる。このタンパク質をVEGF−D△N△Cと命名した。VEGF−D△N△Cを、プラスミドpEFBOSVEGF−D△N△Cによって一過性にトランスフェクトされたCOS細胞の培地から、抗−FLAG(登録商標)アフィニティークロマトグラフィーによって精製した。(国際特許出願PCT/US97/14696における例9を参照)。
【0067】
精製したVEGF−D△N△Cを用いて雌のBalb/cマウスを免疫した。免疫されるマウスから脾臓細胞を収集する85日前(腹腔内)、71日前(腹腔内)および4日前(静脈内)に免疫し、引き続いてこれら脾臓細胞をマウスミエローマP3X63Ag8.653(NS−1)細胞に融合させた。最初の2回の免疫化には、PBSとTiterMaxアジュバント(#R-1 Research adjuvant; CytRx Corp., Norcross, GA)との1:1混合物中で、およそ10μgのVEGF−D△N△Cを注射し、3回目の免疫化にはPBS中の、35μgのVEGF−D△N△Cを用いた。
【0068】
エンザイムイムノアッセイ(酵素免疫測定法)を用いて精製したVEGF−D△N△Cについてハイブリドーマをスクリーニングすることによって、VEGF−D△N△Cに対するモノクローナル抗体を選抜した。簡単に説明すると、96ウェルマイクロタイタープレートを、VEGF−D△N△Cでコーティングし、そしてハイブリドーマ上清を添加し、4℃で2時間インキュベートした。続いて、0.02% Tween20を含むPBS中で6回洗浄した。次に西洋わさびペルオキシダーゼ結合(conjugated)抗−マウスIg(Bio-Rad, Hercules, CA)とともに4℃で1時間インキュベーションを行った。洗浄後、2,2’−アジノ−ジ−(3−エチルベンズチアゾリンスルホン酸(ABTS;2,2'-azino-di-(3-ethylbenz-thiazoline sulfonic acid)基質システム(Zymed, San Francisco, CA)によってアッセイを明らかにし、そしてマルチウェルプレートリーダー(multiwell plate reader)(Flow Laboratories MCC/340, McLean, VA)で405nmの吸光度を判断することによってアッセイを数量化した。6つの抗体をさらなる分析のために選択し、限界希釈(法)によって2回サブクローニングした。これらの抗体を、2F8、3C10、4A5、4E10、4H4および5F12と命名した。これら抗体のアイソタイプを、Isostrip(商標)アイソタイピング(isotyping)キット(Boehringer Mannheim, Indianapolis, IN)を用いて判定した。抗体2F8、4A5、4E10および5F12はIgG1クラスであり、4H4および3C10はIgMクラスのものであった。6つのすべての抗体がκ軽鎖を含んでいた。
【0069】
ハイブリドーマ細胞系を、5% v/v IgG−除去(depleted)血清(Gibco BRL, Gaithersburg, MD)、5mM L−グルタミン、50μg/ml ゲンタマイシンおよび10μg/ml 組換えIL−6を含有するDMEM中で培養した。ダービー(Darby)他, J. Immunol. Methods, 1993 159 125-129 の技法にしたがって、プロテインG−セファロースを用いたアフィニティークロマトグラフィーによって、抗体2F8、4A5、4E10および5F12を精製し、そして収率を280nmにおける吸収を測定することによって評価した。
【0070】
例5
ヒト腫瘍の免疫組織化学的分析のための、ヒトVEGF−Dに対するモノクローナル抗体の使用 腫瘍形成におけるVEGF−Dの役割を評価するために、上述のMAbをヒトの悪性のメラノーマの免疫組織化学的分析のために使用した。この分析のために、4つのVEGF−D MAb、2F8、5F12、4A5および4E10を使用した。LMM774と命名された、顆粒球コロニー刺激因子の受容体に対して産生されたMAb(レイトン(Layton)他, Growth Factors, 1997 14 117-130)をネガティブコントロールとして使用した。これら(4つ)のVEGF−D MAbと同様に、LMM774は、マウスIgG1アイソタイプのものであり、それゆえアイソタイプ−一致(matched)コントロール抗体として役立った。これらのMAbを、2つのランダムに選ばれた浸潤性の悪性のメラノーマに対して免疫組織化学によってテストした。皮膚の悪性のメラノーマの、ホルマリン固定およびパラフィン包埋した組織からの厚さ5マイクロメーターの切片を、テスト組織として用いた。切片を脱ろう(dewaxed)および再水和(rehydrated)し、そしてPBSで洗浄した。1:50に希釈された正常なウサギ血清を、各切片に対して20分間与えた(applied)。過剰の血清を取り除き(blotted off)、そして一次抗体、すなわちクルードに(crudely)至適化された1:100および1:200の希釈度のVEGF−D MAbおよびLMM774を、切片に与え、そして室温で一晩、湿室においてインキュベートした。切片を再びPBS中で5分間洗浄し、続いてPBS中の1:400の希釈度の、ビオチン標識したウサギ抗−マウス抗体(DAKO Corp., Carpinteria, CA)を室温で35分間与えた。切片を次にtris緩衝食塩水(TBS)中で5分間洗浄し、そしてTBS中、1:500の希釈度にて、ストレプトアビジン−アルカリホスファターゼ(Silenus, Australia)を与えた。切片をTBS中で5分間洗浄し、そして高速赤色基質(the fast red substrate)(Sigma, St. Louis, MO)を室温で20分間与えた。切片を水中で洗浄し、そしてマウントした(mounted)。赤色の反応産物を用いたのは、メラニンを産生する腫瘍の解釈における混同を回避するためである。VEGF−D MAbを省略したステップ省略コントロール、およびLMM774抗体を用いたアイソタイプ−一致(mathed)コントロールを、実験に含ませた。
【0071】
図7A−Cは、同じメラノーマサンプルでの結果を示し、図7Dおよび7Eは、同じバッチにおいて染色した異なる腫瘍についての結果を示す。免疫反応性のメラノーマ細胞の島が、(1)図7Aおよび7Bにおける矢印で示された部分の内側によって示され、免疫反応性の血管が、(2)7Cにおける矢印で示された部分の内側によって示されている。7Eにおいて、異なるレベルのVEGF−Dを有するメラノーマ細胞が明らかとなっている。図7A、7Dおよび7Eにおける拡大率はおよそ×60であり、図7Bおよび7Cにおける拡大率はおよそ×300である。
【0072】
陽性の(ポジティブな)反応が4つのすべてのVEGF−D MAbについてみられ、それらは基本的に同じ染色パターンであった。図7A−Cおよび7Eに示す結果は、MAb 2F8によるものである。光学顕微鏡的な検査による染色パターンの評価によって、メラノーマの大部分にわたってむらがある染色が示された。大きい方の腫瘍では、浸潤性の部分の周囲における腫瘍細胞の小さい島において(図7Aおよび7B)、および表皮内の腫瘍細胞の巣(nest)において、染色がより明白であり、腫瘍の中心の浸潤性の部分においては、染色はより薄いかまたは検出不可能であった。陽性(ポジティブ)に反応する腫瘍細胞の近くの乳頭および網状の真皮における小さい毛細血管サイズの血管では、内皮細胞の細胞質において抗体に対するむらがある粒状の反応が示された(図7C)。小さい方の腫瘍についての反応は、腫瘍塊(tumor mass) 全体を通じて、分布においてより均等であった(図7E)。腫瘍の外側の不定な距離にある、免疫反応性の腫瘍細胞から離れている中部および深部の網状の真皮および皮下の組織における血管は、VEGF−D MAbとの反応を示さなかった。VEGF−D MAbによる結果とは対照的に、同じ腫瘍におけるLMM774コントロールは陰性(ネガティブ)であり(図7D)、ステップ省略コントロールも陰性(ネガティブ)であった。
【0073】
いくつかの腫瘍について、VEGF合成および分泌は低酸素の腫瘍細胞において開始されうること、および、腫瘍は血管の近くの内皮細胞におけるVEGFR−2の発現も誘導することができることが示されている(プレート(Plate)他, Cancer Res., 1993 53 5822-5827)。このように、腫瘍血管新生を誘導するためのパラクリンシステムが確立しており、それによって腫瘍において分泌されるVEGFは、間質に拡散して標的内皮細胞におけるVEGFR−2に結合し、そしてその結果、内皮細胞増殖を誘導する。メラノーマにおいてVEGF−Dが局在しているという結果は、VEGF−Dが悪性のメラノーマにおいて同様の機能を果たしている可能性があることを示すものである。テストされた両方の臨床サンプルにおいて、VEGF−D MAbはメラノーマ細胞におけるVEGF−Dを検出した。これら腫瘍細胞はVEGF−Dを産生している可能性が非常に高い。さらに、VEGF−Dは、プロデューサー腫瘍細胞の付近における血管の内皮細胞において検出されたが、より遠い血管では検出されなかった。VEGF−Dは、おそらく腫瘍血管においてしばしば発現しているVEGF−Dに対する受容体であるVEGFR−2との相互作用のために、これらの内皮細胞に局在しているのであろう(プレート(Plate)他, Cancer Res., 1993 53 5822-5827)。VEGF−Dが腫瘍の付近におけるリンパ管においても局在しているかどうかを評価するために、さらなる免疫組織化学的分析が必要であろう。そのようなシナリオはありうる。というのは、リンパ内皮細胞は、VEGF−Dに対する高アフィニティー受容体であるVEGFR−3を発現しているからである(ヨウコフ(Joukov)他, The EMBO Journal, 1996 15 290-298)。
【0074】
前記の諸結果は、メラノーマ細胞がVEGF−D遺伝子を発現することができるということを示すものである。交尾後15.5日のマウス胚の、in situハイブリダイゼーションによる分析は、発生中のメラノサイトおよび線維芽細胞に富む領域における、発生中の皮膚のすぐ下でのVEGF−D遺伝子の発現を示すものであった(例3および図5および図6)。したがって、胚発生における場合のように、トランスフォームされたメラノサイトは、VEGF−Dに対する遺伝子を発現する能力を再獲得している可能性がある。もし発癌トランスフォーメーション以外の現象が、メラノサイトにおけるVEGF−D遺伝子発現を誘導することができるとすれば、このタンパク質は、炎症または血管および/またはリンパ管の増殖によって特徴づけられる、他のタイプの皮膚障害においても関与している可能性がある。治療的な設定において、組織損傷に応じてVEGF−Dを適用することは、再生中の皮膚の近くの血管およびリンパ管の増殖を刺激するために有用であろう。同様に、血管新生およびリンパ脈管形成を刺激するためにVEGF−Dを適用することは、皮膚移植法の成功性を高めるために有用であろう。これらは、火傷およびその他の外傷の傷害などの多様な状態の治療、外科的な瘢痕の回避または減少、美容整形など、において利用される。
【0075】
例6
VEGF−Cに対して結合する能力についての抗体のテスト 前述のエンザイムイムノアッセイ(酵素免疫測定法)を用いて、VEGF−C△N△Cに結合する能力について、6つのVEGF−D MAbをテストした。VEGF−C△N△Cは、VEGF−CのVEGFホモロジードメイン(残基103から215)からなり、VEGF−D△N△Cに最も似ているVEGF−Cの領域である。C−末端に6×ヒスチジンタグを加えたVEGF−C△N△Cを、発現ベクターpIC9(Invitrogen, San Diego, CA)を用いて製造業者の指示に従って、酵母p.pastorisの菌株GS115中で発現させ、Ni−NTA スーパーフロー(Superflow)樹脂(QIAGEN, Valencia, CA)を用いて精製した。このイムノアッセイによってテストした6つの抗体の内、4E10のみがVEGF−C△N△Cに結合した。
【0076】
例7
VEGF−Dは、VEGF−Cと類似の様式でタンパク分解性にプロセシングされる VEGF−Dのタンパク分解性プロセシングを研究するために、293−EBNA細胞を、pVDApex△C、pVDApexFullNFlag、pVDApex△N△C(例1および図1)、およびpVDApexFullCFlagによって安定にトランスフェクトした。これらの発現コンストラクトはそれぞれ、VEGF−D△C、VEGF−DFullNFlag、VEGF−D△N△C(例1および図1)およびVEGF−DFullCFlagをコードするものである(図8)。VEGF−Dの構造上のドメインを、図8の最上部に示す。“SS”は、タンパク質分泌のためのシグナル配列を示し、N−末端プロおよびC−末端プロは、プロペプチドを示し、そしてVHDは、VEGFホモロジードメインを示す。その下方に、VEGF−Dにおける特徴づけされた推定上のタンパク分解性(proteolytic)切断部位が矢印によってしるしを付けられて示されている。可能性のあるN−結合型グリコシル化部位は、星印によってしるしを付けられている。A2抗血清(下記)を産生するために免疫原として使用されたVEGF−Dの領域は、黒いバーによって示されている。図の下側半分は、293−EBNA細胞において発現された、VEGF−D誘導体の一次翻訳産物を示している。簡明さのために、タンパク質分泌のためのシグナル配列は省略してある。FLAGオクタペプチドエピトープは、丸で囲まれた“F”によって示されている。プラスミドpVDApexFullCFlagは、タンパク質分泌のための内因性のVEGF−Dシグナル配列に対するDNAが保持されており、翻訳開始のための“Kozak”コンセンサス配列が至適化され、VEGF−Dの開始コドンのすぐ後に、3つのアミノ酸“A−R−L”の挿入が必要となっているという点をのぞいては、pVDApexFullNFlag(例1)と類似の方法によって構築された。このコンストラクトは、タンパク質のC−末端において、アミノ酸“A−R−Q”、それに続いてFLAGオクタペプチド配列もコードするものであった。293−EBNA細胞系は、VEGF−Cをタンパク分解性にプロセシングする能力を有しており(ヨウコフ(Joukov)他、EMBO J., 1997 16 3898-3911)、このことのよって、これらトランスフェクトされた細胞に由来するVEGF−D誘導体の分析を、細胞の生合成およびプロセシングの間に行うことが可能になる。
【0077】
VEGF−D誘導体を、安定にトランスフェクトされた293−EBNA細胞のならし培地(培養上清)から、M2(抗−FLAG)ゲル(Sigma-Aldrich)でのアフィニティークロマトグラフィーによって精製し、製造業者の指示に従って、FLAG(登録商標)ペプチドを用いて溶出した。FLAG(登録商標)ペプチドを、遠心濃縮機(Amicon, Beverly, MA)を用いて除去した。M2アフィニティーカラムから溶出されたフラクションのアリコットを、精製された種の正体を確認するために、SDS−PAGEおよび銀染色によって分析するか、あるいはM2抗体(Sigma-Aldrich)によってイムノブロットした。
【0078】
種々のVEGF−D誘導体を発現する293−EBNA細胞のSDS−PAGEによる分析は、VEGF−Dポリペプチドがタンパク分解性にプロセシングされていることを示すものである。VEGF−DFullNFlagを発現する293−EBNA細胞からの培地を用いた精製により、N−末端にFLAGオクタペプチドを備えたVEGF−Dポリペプチドのみの、または、FLAG(登録商標)−タグ付加された(tagged)ポリペプチドに共有結合的にあるいは非−共有結合的に結合した誘導体の、特異的な分析が可能になった(図8および図11)。
【0079】
VHD内にある、ヒトVEGF−Dの残基190から205の領域に対応する合成ペプチド、KCLPTAPRHPYSIIRR(配列番号3)(PCT/US97/14696の配列番号5)に対する、A2と命名されたポリクローナル抗血清をウサギにおいて産生させた。
【0080】
SDS−PAGEおよびウエスタンブロット分析のために、精製VEGF−D誘導体を含有するサンプルを、2xSDS−PAGEサンプル緩衝液と1:1の割合で混合し、ボイルし、そしてSDS−PAGEによって分離した(レームリ(Laemmli)、Nature, 1970 227 680-685)。タンパク質を次にImmobilon−Pメンブラン(Millipore, Bedford, MA)にトランスファーし、そして非−特異的な結合部位を、3% BSA、100mM Tris−HCl(pH7.5)、150mM NaClおよび0.02% Tween20中でインキュベーションすることによってブロッキングした。ブロットを次に1:2000の希釈度のA2抗血清とともに室温で2時間インキュベートするか、あるいはその代わりに、製造業者によって記載されているようにしてM2(抗−FLAG)抗体とともにインキュベートした。緩衝液(3% BSA、100mM Tris−HCl(pH7.5)、150mM NaClおよび0.02% Tween20)中で洗浄した後、ブロットを抗−ウサギIg西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)結合体または抗−マウスIg HRP結合体(Biorad, Hercules, CA)によってプローブ(探索)し、化学発光(ECL, Amersham, UK)を用いて現像した。
【0081】
VEGF−DFullNFlagを発現する細胞によって分泌されるタンパク質の、還元条件下でのSDS−PAGEおよび銀染色による分析によって、プロセシングされていないVEGF−Dの予想されるサイズである、およそ53kDaの種、および、およそ31および29kDaの2つのポリペプチドが明らかにされた(図9A)。(kDaにおける)分子量マーカーのサイズは、各パネルの左側に示され、VEGF−D誘導体の位置は(kDaにおける分子量とともに)、右側に矢印によってしるしを付けられている。この結果はVHDのC−末端近くで起こる、タンパク分解性切断現象と一致している。このモデルによると、およそ53kDaのポリペプチドは、プロセシングされていないVEGF−Dを表すものであり、およそ31kDaのポリペプチドは、N−末端プロペプチドおよびVHDからなる(すなわち、C−末端プロペプチドを欠いている)ものであろう。N−末端プロペプチドおよびVHDからなるポリペプチドの予想されるサイズは確かにおよそ31kDaである。というのは、グリコシル化されているVHDはおよそ21kDaであることが以前に示されており(アーヘン(Achen)他, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1998 95 548-553; PCT/US97/14696の図12b)、FLAG−タグ付加された(tagged) N−末端延長の予想されるサイズはおよそ10kDaであるからである。もしVEGF−Dのプロセシングに、VHDのC−末端の近くでの切断に加えて、VHDのN−末端の近くでの切断が関与しているとすれば、VEGF−DFullNFlagを発現する細胞は、N−末端延長のみからなる10kDaのFLAG−タグ付加されたポリペプチドも分泌するはずである。銀染色によって評価した場合(図9A)、これら細胞によって分泌されるVEGF−D誘導体の中に10kDaのポリペプチドは検出されなかったが、それは、M2抗体を用いた同じ材料のウエスタンブロット分析によって明瞭に検出された(図9B)。銀染色によって検出されたおよそ29kDaのポリペプチドは、同じサンプルにおいてA2ポリクローナル抗血清を用いたウエスタンブロットによっては検出されなかった(図9C)。したがってこれはC−末端プロペプチドを表すものであろう。このことを、このポリペプチドのN−末端アミノ酸によって確認した。すなわち、このポリペプチドのN−末端配列は“SIQIPEED”(配列番号4)であると確認され、この配列は、VEGF−Cとの比較に基づいて予想されるVHDのC−末端切断部位のすぐに近くのものである。したがって、VEGF−DにおけるC−末端切断部位は、アルギニン205のすぐ後に位置する(“R↓SIQIPEED”)(配列番号5)。このおよそ29kDaのポリペプチドは、おそらく、N−末端およびC−末端プロペプチドの間の鎖間ジスルフィド結合のために、アフィニティー−精製された物質中に存在していたのであろう(VEGF−Dプロセシングのスキーム(模式図)については図11を参照)。
【0082】
VHDのN−末端の近くでのVEGF−Dのタンパク分解性切断の可能性をさらに調べるために、VEGF−D△Cを発現する293−EBNA細胞によって分泌されるタンパク質を精製し、上記のように分析した。VEGF−D△Cのためのコンストラクトは、C−末端延長が欠失しておりFLAGによって置換されている、VEGF−D誘導体を発現させる(図8)。これら細胞からの ならし培地(培養上清)は、銀染色によって評価した場合、およそ31および21kDaの、2つのFLAG−タグ付加されたポリペプチドを含んでいた(図9D)。この結果は、VHDのN−末端近く、即ちプロセシングされていないVEGF−DのN−末端からおよそ10kDaのところで起こる、N−末端切断現象と一致したものである。したがって、およそ31kDaのポリペプチドは、N−末端延長とVHDとからなり、一方、およそ21kDaのポリペプチドは、VHDのみからなるものであろう。およそ31およびおよそ21kDaのバンドの両方が、M2抗体によるウエスタンブロット分析によって検出されたという知見は、このモデルと一致している(図9E)。また、予想されたように、これら両方のバンドは、A2抗血清によるウエスタンブロット分析によっても検出された(データは示さない)。
【0083】
VEGF−DにおけるN−末端タンパク分解性切断部位の正確な位置を判定するために、VEGF−D△Cを発現する細胞の上清から精製された、およそ21kDaのポリペプチドに対してN−末端アミノ酸シークエンシングを行った。アフィニティー−精製されたタンパク質のN−末端アミノ酸シークエンシングは、Hewlett-Packardタンパク質シークエンサー、モデルG1000A(Hewlett-Packard Palo Alto, CA)を用いて行った。このポリペプチドのN−末端配列は不均一であった。材料のおよそ80%を代表する主な配列は、“FAATFY”(配列番号6)で始まっており、材料の10−15%を代表する少ない方の配列は、“KVIDEE”(配列番号7)で始まっていた。したがって、予想されたように、およそ21kDaのポリペプチドのN−末端は、VHDのN−末端とほぼ同じ位置に位置している。VEGF−Dの主な(メジャー)N−末端切断部位はアルギニン88のすぐ後に位置しており(“R↓FAATFY”)(配列番号8)、そして少ない方の(マイナー)切断部位はロイシン99のすぐ後にある(“L↓KVIDEE”)(配列番号9)(図8)。
【0084】
例8
VEGF−D△N△Cは主に非−共有結合性の二量体の形態で存在する 一般に、VEGFファミリーメンバーはジスルフィド−結合したホモ二量体として存在する。しかし、VEGF−C△N△Cは、主に非−共有結合性の二量体の形態で存在する(ヨウコフ(Joukov)他, EMBO J., 1997 16 3898-3911)。VEGF−Dの成熟した形態である、VEGF−D△Npro△Cproも、ジスルフィド−結合した二量体ではない。というのは、このポリペプチドはSDS−PAGEで、還元条件下および非−還元条件下においてほとんど全く同じに移動するからである。成熟した形態のVEGF−Dの性質をテストするために、アフィニティー−精製したVEGF−D△N△Cをサイズ排除クロマトグラフィーにかけた。サイズ排除クロマトグラフィーは、アフィニティー−精製したタンパク質をTSKG2000SW(7.5x60mm Id)カラム(LKB Bromo, Sweden)にローディングすることによって行った。カラムをPBSで平衡化した。タンパク質を流速0.25ml/分で溶出し、1分間のフラクションを収集した。タンパク質の溶出は215nmでモニターした。見かけ上の分子量(各ピークの上に括弧内で示す)が、73kDa(ピーク1)、49kDa(ピーク2)および25kDa(ピーク3)である3つの主なピークがカラムから溶出した。そしてこれらのピークにおける全タンパク質の比を分光光度的に評価したところ、およそ、1:2.1:0.9であった(図10A)。見かけ上の分子量は、既知のタンパク質:ウシ血清アルブミン二量体、ウシ血清アルブミン、卵白アルブミンおよびトリプシンインヒビター(Sigma Aldrich Pty Ltd, Australia)から作成した検量線を用いて判定した。これらのピークに対応するフラクションをプールし、遠心濃縮機を用いて100μlまで濃縮し、そして還元条件下でのSDS−PAGEによって分析し、銀染色した(図10B)。トラック1、2および3は、それぞれピーク1、2および3からのタンパク質に対応する。VEGF−D△N△Cサブユニットの位置は図10Bにおいて左側に示されており、(kDaにおける)分子量マーカーの位置は右側に示されている。
【0085】
VEGF−D△N△Cサブユニット(およそ21kDa)は、ピーク2において最も大量であり、ピーク3においては容易に検出可能であり、そしてピーク1からは検出不可能であった(図10B)。ピーク1における主な種は、M2アフィニティークロマトグラフィーによって精製されたタンパク質のサンプルにおいてしばしば検出される混入物であり、M2抗体またはA2抗血清によるウエスタンブロット分析によっては検出することのできない(データは示さない)、73kDaのタンパク質であった。この73kDaのタンパク質は、VEGF−Dをコードする配列を欠くApex−3プラスミドによってトランスフェクトされた293−EBNA細胞からの上清を用いたコントロールM2アフィニティー精製においても観察された(データは示さない)。サイズ排除クロマトグラフィーから判定された見かけ上の分子量は、ピーク2および3におけるタンパク質はそれぞれVEGF−D△N△C二量体およびVEGF−D△N△C単量体であることを示すものであった。したがって、そのサブユニットが還元条件下または非−還元条件下でのSDS−PAGEにおいて分離する、非−共有結合性の二量体が、VEGF−D△N△Cのアフィニティー−精製された調製物における主な分子種であった。
【0086】
VEGF−D△N△Cの二量体の形態および単量体の形態が、VEGFR−2に結合する能力を、カラムから溶出したフラクションを用いて評価し、VEGFR−2に結合する能力について、国際特許出願PCT/US95/16755に記載のBa/F3細胞バイオアッセイを用いてアッセイした。ピーク3におけるVEGFR−2−結合活性は、ピーク2におけるもののおよそ2%であり、このことは、VEGF−D△N△C非−共有結合性ホモ二量体は単量体よりも生理活性が大きいことを示している。ピーク1におけるVEGFR−2結合活性は、ピーク2におけるもののおよそ1%であり、このことは、おそらくこのピークにおける少量のVEGF−D△N△C非−共有結合性ホモ二量体を反映している。明らかに二量体の形態のVEGF−D△N△Cの方が、単量体の形態のものより、はるかによくVEGFR−2に結合する。
【0087】
例6において示されるデータは、VEGF−Dがタンパク分解性にプロセシングされること、および、タンパク分解性切断の部位が、VEGF−Cにおけるものと位置において同じではないが、類似していることを実証するものである。タンパク分解性プロセシングはおそらくかなりの生物学的な重要性を有するものである。というのは、異なるVEGF−D誘導体は、VEGF受容体を活性化することに関して異なる能力を有しているからである。完全にプロセシングされたVEGF−DはVEGFR−2とVEGFR−3との両方に結合してそれらを活性化する(アーヘン(Achen)他, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1998 95 548-553) 一方、プロセシングされていない形態のVEGF−DはVEGFR−3を活性化するが、VEGFR−2は活性化しない(PCT/US97/14696の図14および図15)。したがって、段階的なタンパク分解性プロセシングは、インビボでVEGF−Dの受容体−結合特異性を調節する方法である可能性がある。
【0088】
サイズ排除クロマトグラフィーはまた、アフィニティー−精製されたVEGF−D△N△Cは主に非−共有結合性の二量体であるが、小部分は単量体であることを実証するものであった。二量体の形態のみがVEGFR−2の細胞外ドメインを含むキメラの受容体を強く活性化することができた。この知見は、細胞表面受容体チロシンキナーゼの活性化が受容体二量体化に関与するとすれば、予想されたものであった。おそらく、二量体のリガンドは1分子あたり2つの受容体結合部位を提供する一方、単量体の形態は1つしか提供しない。したがって、二量体のリガンドは受容体の二量体化を引き起こすことができるが、単量体のリガンドはそれができないのである。
【0089】
293−EBNA細胞によって行われ、単量体および二量体を生じさせる、VEGF−Dのプロセシングについてのスキームを図11に示す。2つの異なる形態のプロセシングされていないVEGF−Dが細胞から分泌される:1つは単量体であり(左側)、もう1つは逆平行の(anti-parallel)ジスルフィド−結合した二量体であってN−末端およびC−末端プロペプチドの間にジスルフィド架橋を有するものである(右側)。矢印は、細胞内の形態から、VHDのN−末端およびC−末端における段階的なタンパク分解性プロセシングの産物へと導くものであり、最後にはVHDの非−共有結合性の二量体および単量体からなるVEGF−Dの成熟した形態が生じる。ここに記載された細胞系からのVEGF−Dの誘導体の分析は、VHDからのC−末端プロペプチドの切断の方が、N−末端プロペプチドの切断よりも効率的におこるということを示唆するものである。簡明さのため、タンパク分解性プロセシングから生じるすべてのありうる誘導体を示してはいない。図11において、N−プロはN−末端プロペプチドを示す;C−プロは、C−末端プロペプチド;VHDは、VEGFホモロジードメイン;灰色の箱は、ドメイン間の非−共有結合性の相互作用;−S−は、サブユニット間のジスルフィド架橋;N−は、ポリペプチドのN−末端;そして、矢印は、タンパク分解性切断部位のおよその位置を表す。
【0090】
例9
VEGF−Dおよび血管透過性 アフィニティー−精製したヒトVEGF−D△N△Cを、Milesアッセイを用いて血管透過性を誘導する能力についてテストした。Milesアッセイ(マイルズ,エイ・エイ(Miles, A. A.)およびマイルズ,イー・エム(Miles, E. M.), J. Physiol., 1952 118 228-257)は、麻酔したモルモットを用いて行った。透過性因子によって誘導される血管外遊出の定量化のために、サンプル注射の領域を切除し、そしてホルムアミド中、42℃で3日間のインキュベーションによってエバンスブルー色素を抽出した。抽出された色素の量を、620nmでのサンプルの吸光度を判断することによって分光光度的に定量化した。VEGF−D△N△Cを用いたのは、ヒトVEGF−CのVHD(VEGF−C△N△C)が血管透過性を誘導することが知られていたためである(ヨウコフ(Joukov)他, EMBO J., 1997 16 3898-3911)。精製したマウスVEGF164をポジティブコントロールとして含めた。予想されたように、マウスVEGF164は血管透過性を強く誘導した。検出可能な血管透過性を誘導した、マウスVEGF164の最も低い濃度は60ng/mlであった。同様に、ヒトVEGF−C△N△Cも血管透過性を誘導したが、検出可能な活性を示す最も低い濃度は250ng/mlであった。対照的に、VEGF−D△N△Cは、1μg/mlという高さのタンパク質濃度においてさえも、活性を示さなかった。これらの結果はヒトVEGF−D△N△Cは、モルモットにおける血管透過性の誘導物質ではないということを示すものである。
【0091】
VEGF−DとVEGF−Cとは、一次構造および受容体−結合特異性における類似性のために、VEGFファミリーのサブファミリーのメンバーであるとみなされている(アーヘン(Achen)他, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1998 95 548-553)。これら2つの分子のプロセシングのメカニズムは似ているが、同じではない。しかし、これら2つの増殖因子は、VEGF−D△N△Cは血管透過性を誘導しないという知見によって例証されるように、生物活性において相違を示す。対照的に、VEGF−C△N△Cは、VEGFほど強力ではないが血管透過性を誘導する(ヨウコフ(Joukov)他, EMBO J., 1997 16 3898-3911)。
【0092】
上述の記載および諸例は、単に本発明を例示するために記載されたものであり、限定されることを意図するものではない。本発明の精神及び本質を組み込んだ開示された実施態様を改変することが当業者になされうるものであり、本発明は請求の範囲およびその均等物の枠内に入るすべての改変を含むものであると広く解釈されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、VEGF−Dおよびその生物学的に活性の誘導体を含む発現ベクター、VEGF−Dおよびその生物学的に活性の誘導体を安定に発現する細胞系、および、これらの発現ベクターおよび宿主細胞を用いてポリペプチドを作る方法を提供し、例えば、メラノーマおよび種々の疾患を治療および軽減する方法に利用可能である。
【技術分野】
【0001】
発明の背景および概要
本発明は、VEGF−Dおよびその生物学的に活性の誘導体を含む発現ベクター、VEGF−Dおよびその生物学的に活性の誘導体を安定に発現する細胞系、および、これらの発現ベクターおよび宿主細胞を用いてポリペプチドを作る方法に関する。本発明はまた、メラノーマおよび種々の疾患を治療および軽減する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
血管新生は、組織の正常な成長および発達のために必要な基礎的なプロセスであり、既存の血管からの新しい毛細血管の増殖に関与する。血管新生は胚の発生および正常な組織の成長、修復、および再生に関わっているだけでなく、女性の生殖のサイクル、妊娠の確立および維持に、そして創傷および骨折の修復にも関与している。正常な個体において起こる血管新生の他に、血管形成の現象は、特に腫瘍増殖および転移、そしてとりわけ微小血管系の血管増殖が増加するようなその他の状態、例えば糖尿病性網膜症、乾癬および関節症などの多くの病理学的プロセスに関与している。血管新生の阻害はそのような病理学的プロセスを防止または軽減することにおいて有用である。
【0003】
一方、血管新生(angiogenesis)の促進は、例えば、組織または器官の移植の後、あるいは、虚血性心疾患および閉塞性血栓性血管炎(thromboangitis obliterans)などの組織梗塞または動脈狭窄において側副循環の確立を刺激するために、血管新生(vascularization)が確立または伸展されるべき状況において望ましい。
【0004】
血管新生は非常に多くの生理学的および病理学的プロセスにおいて重大な役割を持つことから、血管新生の調節に関与する因子について集中的に研究されてきた。多くの増殖因子が血管新生の調節に関与していることが示されている。これらには、線維芽細胞増殖因子(FGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、トランスフォーミング増殖因子α(TGFα)、および肝細胞増殖因子(HGF)が含まれる。例えば、概説として、フォークマン(Folkman)他, J. Biol. Chem., 1992 267 10931-10934を参照されたい。
【0005】
特定のファミリーの内皮細胞−特異的増殖因子およびそれらに対応する受容体は、主に内皮細胞の増殖および分化の刺激について、そして分化細胞のある機能についての原因であるということが示唆されている。これらの因子はPDGFファミリーのメンバーであり、第一に内皮の受容体チロシンキナーゼ(RTK)を介して作用するようである。今までにいくつかの血管内皮増殖因子ファミリーメンバーが同定されている。血管内皮増殖因子(VEGF)は、複数のソースから単離されているホモダイマーの糖タンパク質である。VEGFは内皮細胞に対して高度に特異的な分裂促進活性を示し、血管新生に通じる全ての一連の現象を刺激することができる。さらにそれは、単球に対する強い化学誘引物質活性を有しており、内皮細胞におけるプラスミノーゲンアクチベーターおよびプラスミノーゲンアクチベーターインヒビターを誘導することができ、また、微小血管の透過性にも影響することができる。後者の活性のために、それは血管透過因子(VPF)と称されることもある。VEGFの単離および性質について概説されている;ファーララ(Ferrara)他, J. Cellular Biochem., 1991 47 211-218およびコノリー(Connolly), J. Cellular Biochem., 1991 47 219-223を参照されたい。
【0006】
より最近では、VEGFファミリーの6つのさらなるメンバーが同定された。これらは以下のように命名されている。即ち、VEGF−B、これはLudwig Institute for Cancer Research および The University of Helsinki によって、国際特許出願PCT/US96/02957(WO96/26736)において、そして、米国特許5,840,693号および5,607,918号において記載されている;VEGF−C、これはヨウコフ(Joukov)他, The EMBO Journal, 1996 15 290-298において記載されている;VEGF−D、これは国際特許出願PCT/US97/14696(WO98/07832)において記載されている;胎盤増殖因子(PlGF)、これはマグリオーネ(Maglione)他, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1991 88 9267-9271 において記載されている;VEGF2、これはHuman Genome Sciences, Inc によって国際特許出願PCT/US94/05291(WO95/24473)において記載されている;そしてVEGF3、これはHuman Genome Sciences, Inc によって国際特許出願PCT/US95/07283(WO96/39421)において記載されている。それぞれが30%から45%のVEGFとのアミノ酸配列アイデンティティを示す。VEGFファミリーメンバーは、システインノットモチーフを形成する6つのシステイン残基を含むVEGFホモロジードメインを共有している。VEGFファミリーの機能の特性には、異なる程度の、内皮細胞に対する分裂促進性、血管透過性の誘導、そして、血管形成およびリンパ脈管形成(lymphangiogenic)の性質が含まれる。
【0007】
VEGF−Bは、VEGFと類似の血管形成およびその他の性質を有しているが、VEGFとは異なる組織において分布および発現している。特に、VEGF−Bは、心臓において非常に強く発現しており、肺においては弱くしか発現していないが、VEGFの場合は逆である。これは、VEGFとVEGF−Bは、多くの組織において共発現している(co-expressed)という事実にもかかわらず、機能の差を有している可能性があるということを示唆するものである。
【0008】
VEGF−Bは、酵母共ハイブリッド(co-hybrid)相互作用トラップスクリーニング技術を用いて、細胞のレチノイン酸−結合タンパク質タイプI(CRABP−I)と相互作用する可能性のある細胞のタンパク質をスクリーニングすることによって単離された。その単離および特性は、PCT/US96/02597およびオロフソン(Olofsson)他, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1996 93 2576-2581において詳細に記載されている。
【0009】
VEGF−Cは、VEGFR−3を発現するようにトランスフェクト(transfect)された細胞を用いて、内皮細胞−特異的受容体チロシンキナーゼVEGFR−3(Flt4)のチロシンリン酸化を引き起こす培地の能力についてスクリーニングすることによって、PC−3前立腺癌細胞系(CRL1435)のならし培地(培養上清conditioned medium)から単離された。VEGF−Cは組換えVEGFR−3を用いたアフィニティークロマトグラフィーを使用して精製され、そしてPC−3 cDNAライブラリーからクローニングされた。その単離および特性は、ヨウコフ(Joukov)他, The EMBO Journal, 1996 15 290-298において詳細に記載されている。
【0010】
VEGF−Dは、Clontechから販売されているヒト乳房cDNAライブラリーから、ハイブリダイゼーションプローブとして“Soares Breast 3NbHBst”と命名されているヒトcDNAライブラリーから得たEST(expressed sequence tag)を用いてスクリーニングすることによって単離された(アーヘン(Achen)他, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1998 95 548-553)。その単離および特性は、国際特許出願PCT/US97/14696において詳細に記載されている。
【0011】
PCT/US97/14696において、VEGF−D△N△Cと命名された、VEGF−Dの生物学的に活性のフラグメントの単離についても記載されている。このフラグメントは、アフィニティータグペプチドFLAG(登録商標)に連結した、VEGF−Dアミノ酸残基93から201からなる。国際特許出願PCT/US97/14696(WO98/07832)の全体の開示を参考文献として本出願に合体させる。
【0012】
VEGF−Dは、VEGFファミリーのその他のメンバーに対する構造的な類似性を有している。しかし、そのような構造的な類似性にもかかわらず、それは、構造的および機能的にVEGFファミリーのその他のメンバーから区別される。ヒトVEGF−DはVEGF−Cに対して48%しか同一ではなく、VEGF−CはVEGF−Dと最も密接に関連している、ファミリーのメンバーである。
【0013】
VEGF−D遺伝子は成人のヒトにおいて広く発現しているが、必ず至るところに発現しているという訳ではない。VEGF−Dは、心臓、肺および骨格筋において強く発現している。中度のレベルのVEGF−Dが、脾臓、卵巣、小腸および大腸において発現しており、腎臓、膵臓、胸腺、前立腺および精巣においてはより低い発現が起こっている。脳、胎盤、肝臓または末梢血白血球からのRNAにおいてはVEGF−D mRNAは検出されなかった。
【0014】
PlGFは、末期 (term)胎盤cDNAライブラリーから単離された。その単離および特性は、マグリオーネ(Maglione)他, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1991 88 9267-9271において詳細に記載されている。現在その生物学的機能についてはあまり理解されていない。
【0015】
VEGF2は、高度に腫瘍形成性の(tumorgenic)、エストロゲン−非依存性ヒト乳癌細胞系から単離された。この分子はPDGFに対して約22%のホモロジーを、そしてVEGFに対して30%のホモロジーを有するといわれているが、VEGF2をコードする遺伝子の単離方法は不明暸であり、生物学的活性の特徴づけについては開示されていない。
【0016】
VEGF3は、大腸組織に由来するcDNAライブラリーから単離された。VEGF3はVEGFに対して約36%のアイデンティティおよび66%の類似度を有するといわれている。VEGF3をコードする遺伝子の単離方法は不明暸であり、生物学的活性の特徴づけについては開示されていない。
【0017】
血管内皮増殖因子は第一に受容体チロシンキナーゼに結合することによって作用すると思われる。5つの内皮細胞−特異的受容体チロシンキナーゼ、すなわち、VEGFR−1(Flt−1)、VEGFR−2(KDR/Flk−1)、VEGFR−3(Flt−4)、TieおよびTek/Tie−2、が同定されている。これらのすべてはシグナル伝達に必要な固有のチロシンキナーゼ活性を有している。VEGFR−1、VEGFR−2、VEGFR−3、TieおよびTek/Tie−2の血管形成および血管新生における、重要な特異的な役割が、マウス胚においてこれらの受容体を不活性化する標的化(targeted) 突然変異によって実証されている。
【0018】
VEGF類に結合することが知られている受容体チロシンキナーゼは、VEGFR−1、VEGFR−2およびVEGFR−3のみである。VEGFR−1とVEGFR−2とは、VEGFに高いアフィニティーで結合し、VEGFR−1は、VEGF−Bにも結合する。VEGF−CはVEGFR−3に対するリガンドであることが示されており、VEGFR−2も活性化する(ヨウコフ(Joukov)他、The EMBO Journal, 1996 15 290-298)。VEGF−DはVEGF−Cと受容体特異性を共有する(アーヘン(Achen)他, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1998 95 548-553)。Tek/Tie−2に対するリガンドは記載されている(Regeneron Pharmaceuticals, Inc. による国際特許出願PCT/US95/12935(WO96/11269));しかしながら、Tieに対するリガンドは同定されていない。
【0019】
VEGF−DとVEGF−Cの一次翻訳産物は、中心のVEGFホモロジードメイン(VHD)に加えて、長いN−末端およびC−末端ポリペプチド延長を有している。VEGF−Cの場合、これらのポリペプチド延長はプロペプチドであり、プロペプチドはタンパク分解性に切断されて、VHDのみからなりVEGFR−2およびVEGFR−3に対して結合する能力のある分泌される形態を生じる(ヨウコフ(Joukov)他, The EMBO Journal, 1996 15 290-298; ヨウコフ(Joukov)他, EMBO J., 1997 16 3898-3911)。同様に、VHDのみからなる組換え型のVEGF−Dは、これらの受容体に結合して活性化すること、および内皮細胞に対して分裂促進的であることが示されたが、VEGF−Dプロセシングについては特徴づけられていない(アーヘン(Achen)他, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1998 95 548-553)。
【0020】
最近、新規な130−135kDaのVEGF−Aアイソフォーム特異的受容体が精製およびクローニングされた(ソーカー(Soker)他, Cell, 1998 92 735-745)。このVEGF受容体は、エキソン7にコードされる配列を介して、ヘパリンに対して弱いアフィニティーを示すVEGF−A165アイソフォームに特異的に結合することが判明した(ソーカー(Soker)他, Cell, 1998 92 735-745)。驚いたことに、この受容体は初期の神経形態形成(neuromorphogenesis)に関与する受容体である、ヒトニューロピリン(neuropilin)−1(NP−1)と同一であることが示された。PlGF−2もNP−1と相互作用すると思われる(ミッドガル(Midgal)他, J. Biol. Chem., 1998 273 22272-22278)。
【0021】
遺伝子ターゲッテッイング研究により、胚の発生のために、VEGFR−1、VEGFR−2およびVEGFR−3が絶対的に必要であることが実証された。これらの研究は、VEGFR−1は血管内皮管形成において役割を果たすということ、VEGFR−2は内皮/造血細胞の分化および有糸分裂誘発のために重要であること、そしてVEGFR−3は血管の再構築の調節、大血管の形成およびリンパ脈管形成(lymphangiogenesis)に関与しているということを示すものである。これらの受容体の機能は、ムストネン(Mustonen)およびアリタロ(Alitalo), J. Cell Biol., 1995 129 895-898において概説されている。
【0022】
VEGFR−3は、胎児においては静脈およびリンパの内皮において発現しており、成体においては主にリンパの内皮において発現している(カイパイネン(Kaipainen)他, Cancer Res, 1994 54 6571-6577; Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1995 92 3566-3570)。VEGFR−3は、リンパ管の出現の前の胚の心臓血管系の発達において重要な役割を有する(デュモン(Dumont)他, Science, 1998 282 946-949)。VEGF−Cはリンパ内皮において第一の機能を有しており、血管新生および透過性の調節において、VEGFと共有される第二の機能を有している可能性があるということが示唆されている(ヨウコフ(Joukov)他, The EMBO Journal, 1996 15 290-298)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】国際公開第96/26736号(国際特許出願PCT/US96/02957号)
【特許文献2】米国特許5,840,693号
【特許文献3】米国特許5,607,918号
【特許文献4】国際公開第98/07832号(国際特許出願PCT/US97/14696号)
【特許文献5】国際公開第95/24473号(国際特許出願PCT/US94/05291号)
【特許文献6】国際公開第96/39421号(国際特許出願PCT/US95/07283号)
【特許文献7】国際特許出願PCT/US96/02597号
【特許文献8】国際公開98/07832号(国際特許出願PCT/US97/14696号)
【特許文献9】国際公開96/11269号(国際特許出願PCT/US95/12935号)
【非特許文献】
【0024】
【非特許文献1】Folkman et al., J. Biol. Chem., 1992 267 10931-10934
【非特許文献2】Ferrara et al., J. Cellular Biochem., 1991 47 211-218
【非特許文献3】Connolly et al., J. Cellular Biochem., 1991 47 219-223
【非特許文献4】Joukov et al., The EMBO Journal, 1996 15 290-298
【非特許文献5】Maglione et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1991 88 9267-9271
【非特許文献6】Olofsson et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1996 93 2576-2581
【非特許文献7】Achen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1998 95 548-553
【非特許文献8】Joukov et al., EMBO J., 1997 16 3898-3911
【非特許文献9】Soker et al., Cell, 1998 92 735-745
【非特許文献10】Midgal et al., J. Biol. Chem., 1998 273 22272-22278
【非特許文献11】Mustonen and Alitalo, J. Cell Biol., 1995 129 895-898
【非特許文献12】Kaipainen et al., Cancer Res, 1994 54 6571-6577
【非特許文献13】Kaipainen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1995 92 3566-3570
【非特許文献14】Dumont et al., Science, 1998 282 946-949
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明は、VEGF−Dおよびその生物学的に活性の誘導体を含む発現ベクター、VEGF−Dおよびその生物学的に活性の誘導体を安定に発現する細胞系、およびそれらの発現ベクターおよび宿主細胞を用いてポリペプチドを作る方法の確立を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明は、概して、VEGF−Dおよびその生物学的に活性の誘導体を含む発現ベクター、VEGF−Dおよびその生物学的に活性の誘導体を安定に発現する細胞系、およびそれらの発現ベクターおよび宿主細胞を用いてポリペプチドを作る方法を提供する。本発明はまた、概して、メラノーマまたはVEGF−Dを発現する腫瘍および種々の疾患を治療および軽減する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】293−EBNA細胞におけるヒトVEGF−D誘導体の発現のためのApex−3プラスミドコンストラクトの概略のマップを示す図である。
【図2】VEGF−D誘導体の、293−EBNA細胞による発現を示す図である。
【図3】可溶性のVEGF受容体−免疫グロブリン融合タンパク質による、VEGF−Dの沈降を示す図である。
【図4】市販のマウス肺cDNAライブラリーからハイブリダイゼーションスクリーニングによって単離された、マウスVEGF−D1をコードするcDNAのヌクレオチド配列(配列番号2)を示す図である。
【図5】VEGF−DアンチセンスおよびセンスRNAとハイブリダイズさせた、交尾後15.5日のマウス組織切片の露出2日後に得たオートラジオグラフを示す図 である。
【図6A】交尾後15.5日のマウス胚におけるVEGF−D mRNAの分布の、in situハイブリダイゼーションによる分析の結果を示す図である。
【図6B】交尾後15.5日のマウス胚におけるVEGF−D mRNAの分布の、in situハイブリダイゼーションによる分析の結果を示す図である。
【図6C】交尾後15.5日のマウス胚におけるVEGF−D mRNAの分布の、in situハイブリダイゼーションによる分析の結果を示す図である。
【図6D】交尾後15.5日のマウス胚におけるVEGF−D mRNAの分布の、in situハイブリダイゼーションによる分析の結果を示す図である。
【図7A】VEGF−Dモノクローナル抗体を用いた免疫組織化学による、ヒトの悪性のメラノーマの分析を示す図である。
【図7B】VEGF−Dモノクローナル抗体を用いた免疫組織化学による、ヒトの悪性のメラノーマの分析を示す図である。
【図7C】VEGF−Dモノクローナル抗体を用いた免疫組織化学による、ヒトの悪性のメラノーマの分析を示す図である。
【図7D】VEGF−Dモノクローナル抗体を用いた免疫組織化学による、ヒトの悪性のメラノーマの分析を示す図である。
【図7E】VEGF−Dモノクローナル抗体を用いた免疫組織化学による、ヒトの悪性のメラノーマの分析を示す図である。
【図8】VEGF−DおよびいくつかのVEGF−D誘導体の、構造上のドメインの概略表示を提供する図である。
【図9A】VEGF−DFullNFlag(A、BおよびC)およびVEGF−D△C(DおよびE)を発現する293−EBNA細胞によって分泌されるVEGF−D誘導体の分析を示す図である。
【図9B】VEGF−DFullNFlag(A、BおよびC)およびVEGF−D△C(DおよびE)を発現する293−EBNA細胞によって分泌されるVEGF−D誘導体の分析を示す図である。
【図9C】VEGF−DFullNFlag(A、BおよびC)およびVEGF−D△C(DおよびE)を発現する293−EBNA細胞によって分泌されるVEGF−D誘導体の分析を示す図である。
【図9D】VEGF−DFullNFlag(A、BおよびC)およびVEGF−D△C(DおよびE)を発現する293−EBNA細胞によって分泌されるVEGF−D誘導体の分析を示す図である。
【図9E】VEGF−DFullNFlag(A、BおよびC)およびVEGF−D△C(DおよびE)を発現する293−EBNA細胞によって分泌されるVEGF−D誘導体の分析を示す図である。
【図10A】サイズ排除クロマトグラフィーおよびSDS−PAGEによるVEGF−D△N△Cの分析を示す図である。
【図10B】サイズ排除クロマトグラフィーおよびSDS−PAGEによるVEGF−D△N△Cの分析を示す図である。
【図11】VEGF−Dプロセシングの機序の概略表示を提供する図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
第一の側面によると、本発明は、VEGF−DまたはVEGF−Dの生物学的活性を有するそのフラグメントまたはアナログを安定に発現する哺乳類の細胞系を提供する。本発明の細胞系によって産生されるVEGF−Dは随意に、アフィニティー精製およびVEGF−Dの局在化を補助するために、FLAG(登録商標)、ヘキサヒスチジン(hexahistidine)、またはI−SPY(商標)などのエピトープタグ(tag)に連結される。好ましくは哺乳類の細胞系は、293−EBNAヒト胎児性(embryonal)腎臓細胞系である。好ましくは、発現されるVEGF−Dは、本明細書において記載されるような、VEGF−DFullNFlag、VEGF−DFullCFlag、VEGF−D△N△C、またはVEGF−D△Cである。
【0029】
“VEGF−Dの生物学的活性”という語句は、内皮細胞増殖、分化、遊走、生存(残存)または血管透過性のうち一以上を刺激する能力を意味するものと理解されるべきものである。
【0030】
VEGF−Dの好適なフラグメントは、PCT/US97/14696の配列番号5の、アミノ酸残基93からアミノ酸残基201のVEGF−Dの部分(すなわち、VEGFホモロジードメイン(VHD))(配列番号1)であり、随意にFLAG(登録商標)ペプチドに連結したものである。フラグメントがFLAG(登録商標)に連結している場合、そのフラグメントを、本明細書では、VEGF−D△N△Cと称する。
【0031】
本明細書で用いられる、“VEGF−D”という語は、国際特許出願PCT/US97/14696において定義されている、配列番号3、配列番号5、配列番号8、および配列番号9のポリペプチドのすべて、および本明細書において定義されているVEGF−Dの生物学的活性を有するそのフラグメントまたはアナログを集合的に指す。
【0032】
第二の側面によると、本発明は、哺乳類の発現ベクターApex−3に挿入された、VEGF−DをコードするヒトcDNAの配列を含む発現ベクターを提供する。好ましくは、発現ベクターは、本明細書において記載する、pVDApexFullNFlag、VEGF−DFullCFlag、pVDApex△N△C、またはpVDApex△Cである。
【0033】
好ましくは、発現ベクターは、FLAG(登録商標)、ヘキサヒスチジン、またはI−SPY(商標)などのアフィニティータグをコードする配列も含む。
【0034】
本発明は更に、本発明によるポリペプチドを作る方法を提供する。この方法は、宿主細胞において本発明の発現ベクターを発現させる工程、および、宿主細胞から、または、宿主細胞の増殖培地からポリペプチドを単離する工程、を有する。本発明のこの側面の1つの好適な態様において、発現ベクターはさらに、アフィニティークロマトグラフィーによるポリペプチドの精製を促進するために、FLAG(登録商標)、ヘキサヒスチジン、またはI−SPY(商標)などの、アフィニティータグをコードする配列を含む。
【0035】
保存的な(conservative)置換、挿入、または欠失を含むがそれでもなおVEGF−Dの生物学的活性を保持するポリペプチドは、明らかに本発明の枠内に含まれるということが理解されるべきである。当業者であれば、例えば部位特異的突然変異誘発の利用、または、特異的な酵素での切断および連結(ライゲーション)などの、そのようなポリペプチドを産生するために容易に用いることができる方法についてよく知っているであろう。また、当業者であれば、ペプチド疑似の(peptidomimetic)化合物、または、1または複数のアミノ酸残基が、非−自然発生アミノ酸またはアミノ酸アナログによって置換された化合物が、VEGF−Dの生物学的活性の必要とされる側面を保持することができるであろうということも知っているであろう。そのような化合物は、当業者に周知の方法によって容易に作ることおよびテストすることができ、それらはまた、本発明の枠内に含まれる。
【0036】
さらに、VEGFおよびVEGF−Bについて起こることが知られているような、選択的スプライシングの結果として起こる、VEGF−Dポリペプチドの変異体形態、および、VEGF−Dをコードする核酸配列の自然に発生する対立遺伝子の変異体も、本発明の枠内に含まれる。対立遺伝子の変異体は当業者に周知であり、コードされるポリペプチドの代替の(オルターナティブな)形態を表す。
【0037】
VEGF−Dのそのような変異体形態は、修飾のためにVEGF−Dポリペプチドの非−必須領域をターゲッティングすることによって調製することができる。これらの非−必須領域は、強く保存された領域の外側になると予想される。特に、VEGFを含む、PDGFファミリーの増殖因子は二量体であり、そして、VEGF、VEGF−B、VEGF−C、VEGF−D、PDGF−AおよびPDGF−Bは、PDGF−様ドメインにおける8つのシステイン残基の完全な保存を示す(オロフソン(Olofsson)他, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1996 93 2576-2581; ヨウコフ(Joukov)他, The EMBO Journal, 1996 15 290-298)。これらシステインは分子内および分子間のジスルフィド結合に関与すると考えられている。分子内のジスルフィド結合によって形成される、各サブユニットのループ1、2および3は、PDGF/VEGFファミリーの増殖因子の受容体に対する結合に関与している(アンダーソン(Andersson)他, Growth Factors, 1995 12 159-164)。上述のように、以前に知られているVEGFファミリーのメンバーにおいて保存されているシステインは、VEGF−Dにおいても保存されている。
【0038】
したがって当業者であれば、提案されるあらゆる変異体形態においてこれらのシステイン残基が保存されるべきであるということ、およびループ1、2および3にある活性部位も保存されるべきであるということについてよく知っているであろう。しかし、この分子のその他の領域は、生物学的機能にとってより重要性が低いということを予想することができ、そしてそれゆえ修飾のための適切なターゲットを提供することができる。修飾されたポリペプチドは、VEGF−Dの生物学的活性を示すそれらの能力について、細胞増殖テストなどのルーチン活性アッセイ手順によって容易にテストすることができる。
【0039】
修飾されたVEGF−Dポリペプチドには、内皮細胞、すなわちVEGF−D受容体に対して結合する能力を有するが、内皮細胞増殖、分化、遊走、または生存(残存)を刺激することができない、または、血管透過性を誘導することができないものがあると予想される。これらの修飾されたポリペプチドは、競合的または非−競合的なVEGF−Dの阻害剤として作用することができ、VEGF−D作用の防止または低下が望ましい状況において有用であると予想される。したがって、そのような受容体−結合性であるが非−分裂促進的、非−分化誘導性、非−遊走誘導性、または非−生存(残存)促進性の、VEGF−Dの変異体もまた、本発明の枠内に含まれ、そして本明細書において、“受容体−結合性の、しかしその他の点では不活性または妨害性の変異体”と称される。
【0040】
同様に修飾されたVEGF−Dポリペプチドには、VEGF−Dに結合する能力を有し、二量体(ダイマー)の、内皮細胞におけるVEGF−D受容体(例えば、VEGFR−2およびVEGFR−3)に対する結合を妨げるものがあると予想される。したがってこれら二量体は、内皮細胞増殖、分化、遊走、または生存(残存)を刺激することができず、または、血管透過性を誘導することができない。これらの修飾されたポリペプチドは、競合的または非−競合的なVEGF−Dの阻害剤として作用することができ、VEGF−D作用の防止または低下が望ましい状況において有用であると予想される。したがって、そのようなVEGF−D−結合性であるが非−分裂促進的、非−分化誘導性、非−遊走誘導性、または非−生存(残存)促進性の、VEGF−Dの変異体もまた、本発明の枠内に含まれ、そして本明細書において、“VEGF−D−結合性の、しかしその他の点では不活性または妨害性の変異体”と称される。
【0041】
第三の側面によると、本発明は、悪性のメラノーマまたはVEGF−Dを発現する腫瘍の治療または軽減方法を提供する。この方法は、メラノーマまたは腫瘍の付近においてVEGF−Dの発現または活性を阻害する工程を有する。VEGF−D発現の局所的な阻害は、例えばアンチセンス核酸またはVEGF−Dをコードする三本鎖DNAの使用によって達成することができる。代わりに、上述のような、VEGF−Dに対して結合してVEGF−D受容体に対する結合を妨げる能力を有するか、あるいは、VEGF−D受容体に結合するが、内皮細胞増殖、分化、遊走、または生存(残存)を刺激することができない、VEGF−D変異体ポリペプチドを、競合的または非−競合的なVEGF−Dの阻害剤として利用することができる。VEGF−D、VEGFR−2またはVEGFR−3に対する小分子阻害剤、およびVEGF−D、VEGFR−2またはVEGFR−3に対する抗体も利用することができる。
【0042】
上記の方法の利用はまた、乾癬におけるように、VEGF−Dの発現が増加しているか持続的であるような非−悪性の状態においても考えられる。発生中のマウス胚の皮膚におけるVEGF−Dの分布に基づくと、上部真皮(upper dermis)における血管の増殖が一貫した、そして顕著な組織病理学的な特徴である、乾癬などの高い表皮細胞ターンオーバー皮膚疾患(high epidermal cell turnover dermatoses)の開始または存続において、VEGF−Dが役割を果たしているということがありうる。
【0043】
本発明のさらなる側面において、VEGF−Dは内皮細胞阻害活性を有する毒素または薬剤と結合され、それは、例えばVEGFR−2およびVEGFR−3などのVEGF−D受容体を発現する、増殖している血管およびリンパの内皮細胞に標的化される(targeted)。したがって、腫瘍増殖などの多くの病理学的状態にとって重要なものである血管の増殖をブロックすることができる。
【0044】
第五の側面によると、本発明は皮膚移植の受け入れおよび/または治癒を増強する方法を提供する。この方法は、有効量の、VEGF−D、またはVEGF−Dの生物学的活性を有するそのフラグメントまたはアナログによって、血管新生およびリンパ脈管形成(lymphangiogenesis)を刺激する工程を有する。
【0045】
第六の側面によると、本発明は皮膚に対する外科または外傷の創傷の治癒を刺激する方法を提供する。この方法は、有効量の、VEGF−D、またはVEGF−Dの生物学的活性を有するそのフラグメントまたはアナログによって、血管新生およびリンパ脈管形成を刺激する工程を有する。
【0046】
前記した本発明の最後の2つの側面は、火傷の治療において、および形成外科において、特に有用であろうと考えられる。
【0047】
本発明の別の側面において、リンパ浮腫の治療または軽減のためにリンパ脈管形成を刺激するための方法が提供される。この方法は、有効量の、VEGF−D、またはVEGF−Dの生物学的活性を有するそのフラグメントまたはアナログによって、リンパ脈管形成を刺激する工程を有する。リンパ浮腫ほど醜くなる疾患はあまりない。リンパ浮腫は、組織を満たす体液の排出に関与するリンパ管の閉塞(妨害物)がある場合に起こる。この閉塞の結果、組織の中にリンパ液または脂肪性の体液が蓄積し、そしてその結果として肢および組織の怒張が起こる。最終的な結果は、局所性の感染症、不快感および変形(奇形)のためにしばしばグロテスクであり、そして激しく無力化する。リンパ浮腫にはいくつかの原因がある。最も注目すべきは、リンパ節閉塞または手術中の除去に関連する乳癌である。再発性の感染症およびその他の形態の手術もリンパ浮腫に関連する。有意な割合のリンパ浮腫の患者は、同一とみなしうるもの(identifiable precitant)を有さない。VEGF−Dの量を増加させることによって、リンパ脈管形成が誘導され、そしてリンパ液および脂肪性の体液の蓄積が軽減するであろう。
【0048】
胚形成の間のVEGF−D合成の不適当なダウンレギュレーションは、無汗性外胚葉性異形成を含む付属器構造異常発育においても重要である可能性がある。通常は真皮における汗腺は、血管新生化した(vascularized)脂肪性の結合組織によって囲まれている。おそらくはVEGF−Dの欠乏によって、血管の供給が損なわれるか、または補充することができない場合、汗腺低酸素血症および機能不全が起こるであろう。これらの病変はおそらく、発生のなんらかの段階における分化細胞のVEGF−Dを産生する能力の欠如、または、遮断剤を産生する分化している付属器細胞の近くの血管におけるVEGF−D受容体に対する遮断剤の産生によるものであろう。したがって、本発明は脂肪性の結合組織の血管新生(vascularization)を刺激することによって、無汗性外胚葉性異形成を治療または軽減するための方法を提供する。この方法は、有効量の、VEGF−D、またはVEGF−Dの生物学的活性を有するそのフラグメントまたはアナログを投与する工程を有する。
【0049】
VEGF−Dの欠乏またはVEGF−Dに対する応答の欠乏に関連する可能性がある更に別の疾患は、強皮症である。強皮症は、血管新生および/または線維芽細胞機能における変化によると考えられる、皮膚の肥厚およびコラーゲン化(collagenization)の増加によって特徴づけられる結合組織の珍しい障害である。VEGF−Dの欠乏またはVEGF−Dに対する応答の不足による内皮細胞への障害(ダメージ)は、おそらく血管が修復できないことに寄与する要因であろう。血管が修復できないため、連続性の血小板凝集が観察され、そして引き続いて線維芽細胞に対して分裂促進的な作用を有する増殖因子が放出される。この結果、コラーゲン産生が増加する。強皮症における全身的な器官の関与にも同様の考慮があてはまる。したがって、本発明は、血管内皮細胞の増殖を刺激することによって強皮症を治療または軽減する方法を提供する。この方法は、有効量の、VEGF−D、またはVEGF−Dの生物学的活性を有するそのフラグメントまたはアナログを投与する工程を有する。
【0050】
第七の側面によると、本発明は、血管透過性を誘導せずに、内皮細胞の増殖、遊走、生存(残存)および分化、そしてリンパ脈管形成から選択される、VEGF−Dの少なくとも1つの生物活性を刺激する方法を提供する。この方法は、生物活性を刺激する量の完全にプロセシングされたVEGF−Dを投与する工程を有する。
【0051】
本発明のさらなる側面では、VEGF−Dの受容体−結合特異性を調節する方法を提供する。この方法は、プロセシングされていない(unprocessed) VEGF−Dをコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターを発現させる工程、および、コードされるVEGF−Dをプロセシングしてタンパク分解性にプロセシングされた形態のVEGF−Dを産生するために、少なくとも1つのタンパク分解量(proteolytic amount)の酵素を供給する工程を有する。
【0052】
本明細書での目的のため、“完全にプロセシングされたVEGF−D”という語句はN−末端およびC−末端プロペプチドを有さないVEGF−Dポリペプチドを意味し、“タンパク分解性にプロセシングされた形態のVEGF−D” という語句はN−末端および/またはC−末端プロペプチドを有さないVEGF−Dポリペプチドを意味し、そして、“プロセシングされていないVEGF−D”という語句はN−末端およびC−末端プロペプチドの両方を備えたVEGF−Dポリペプチドを意味するということが、明らかに理解されるであろう。
【0053】
本発明はまた、生物学的サンプルにおいてVEGF−Dを発現する腫瘍を検出する方法も提供する。この方法は、前記サンプルをVEGF−Dに対する特異的結合性試薬に接触させる工程、VEGF−Dに対する前記特異的結合性試薬の結合のために時間を与える工程、および前記結合を検出する工程を有する。好適な態様において、VEGF−Dに対する特異的結合性試薬は抗体であり、結合および/または結合の程度は、検出可能な標識を備えた抗体によって検出される。癌バイオプシー標本におけるVEGF−Dの定量化は将来の転移のリスクの指標として有用であろう。
【0054】
本発明による抗体を検出可能な標識で標識して、診断の目的のために利用することができる。抗体は、イメージングのために、適当な超磁性(supermagnetic)、パラ磁性(paramagnetic)、高電子密度、エコジェニック(ecogenic)、または放射性剤と共有結合的または非−共有結合的に結合させるとよい。診断上のアッセイにおける使用のために、放射性標識または非−放射性標識を用いてもよい。放射性標識の例には、125Iまたは32Pなどの放射性の原子または基が含まれる。非−放射性標識の例には、西洋わさびペルオキシダーゼなどの酵素標識、またはフルオレセイン−5−イソチオシアナート(FITC)などの蛍光定量的標識が含まれる。標識化は、直接的であっても間接的であってもよく、また、共有結合性であっても非−共有結合性であってもよい。
【0055】
VEGF−Dの生物学的活性を誘導するポリペプチドまたは抗体は、適当な製薬の担体と組み合わせて使用することができる。VEGF−Dの生物学的活性を阻害するポリペプチド、VEGF−Dアンタゴニストまたは抗体も、適当な製薬の担体と組み合わせて使用することができる。そのような組成物は、治療的に有効な量の抗体および薬学で受け入れられる担体またはアジュバントを含む。そのような担体の例には、塩類溶液、緩衝食塩水、鉱物油、タルク、ブドウ糖、水、グリセロール、エタノール、増粘剤、安定剤、懸濁剤、およびそれらの組み合わせが含まれるがそれらに限定されるものではない。そのような組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、カプセル剤、クリーム、こう薬(salve)、軟膏剤(ointment)の形態、またはその他の従来の形態とすればよい。製剤形態は投与方法に適するように選択される。ポリペプチド、VEGF−Dアンタゴニストまたは抗体が治療の目的のために使用される場合、適用用量および経路は患者の性質および治療される状態に依存するであろうし、主治医または獣医師の考え次第のものとなるであろう。適当な経路には、皮下の、筋肉内の、腹腔内の、または静脈内の注射、局所適用、インプラントなどが含まれる。VEGF−Dの局所適用はVEGFと類似の方法において行えばよい。
【0056】
本明細書での目的において、“からなる”という語は“含むが限定されるものではない”ことを意味することが明らかに理解されるであろう。それに対応する意味が“からなる”という語にあてはまる。
【実施例】
【0057】
実施例の詳細な説明
例1
VEGF−D誘導体を安定に発現する細胞系 VEGF−Dの誘導体を構成的に発現する細胞系を産生するために、ヒトVEGF−D cDNAの領域を哺乳類の発現ベクターApex−3(エヴァンス(Evans)他, Mol. Immunol., 1995 32 1183-1195)に挿入した。このベクターを293−EBNAヒト胎児性(embryonal)腎臓細胞にトランスフェクトした(transfected)場合、エピソームとして(episomally)維持した。VEGF−D△N△Cの発現のために、IL−3シグナル配列、FLAG(登録商標)オクタペプチドおよびVEGF−D△N△Cをコードする配列を含む、pEFBOSVEGF−D△N△Cの領域をApex−3のXbaI部位に挿入した(国際特許出願PCT/US97/14696における例9を参照)。その結果得られたプラスミドをpVDApex△N△Cと命名した。これは図1において図式的に図示されている。N−末端にFLAG(登録商標)がタグ付加された(tagged)全長ヒトVEGF−Dの誘導体である、VEGF−DFullNFlagの発現のため、また、VEGF−D△Cと命名された、アミノ酸残基2から202からなるヒトVEGF−Dの切形の(truncated)誘導体の発現のために、同様のタイプのコンストラクトを作成した。これらのVEGF−D誘導体のための発現コンストラクトを、それぞれpVDApexFullNFlagおよびpVDApex△Cと命名した。これらもまた、図1において図式的に示されている。IL−3 SSは、インターロイキン−3シグナル配列を表し、矢印は、サイトメガロウイルスプロモーター(CMV)から発現カセットへと進行する、転写の方向を表す。これらのベクターをヒト胎児(embryo)腎臓細胞系293−EBNAの細胞に、リン酸カルシウム法によってトランスフェクトし、そして安定なトランスフェクタントをハイグロマイシンの存在下で選抜した。高レベルのVEGF−DFullNFlag、VEGF−D△CおよびVEGF−D△N△Cを発現する細胞系を、引き続いて、図2に示すように、代謝標識、免疫沈降およびウエスタンブロット分析によって同定した。
【0058】
図2において、VEGF−DFullNFlag、VEGF−D△N△CおよびVEGF−D△Cを発現する293−EBNA細胞系を代謝的に標識し、ならし培地(培養上清conditioned medium)サンプルにおけるタンパク質を、抗−FLAG抗体(M2)またはVEGF−DのVEGFホモロジードメインに対して特異的な抗血清(A2)によって、免疫沈降した。沈降したタンパク質をSDS−PAGEによって分析し、VEGF−DFullNFlagおよびVEGF−D△N△Cの場合にはオートラジオグラフィーによって可視化し、また、VEGF−D△Cの場合にはM2抗体によるウエスタンブロット分析で検出した。矢印はVEGF−D誘導体の位置を示す。これらの誘導体は親の(parental) 293−EBNA細胞に由来するコントロール上清からは検出されなかった(データは示さない)。分子量マーカーの(kDaにおける)位置を各パネルの右側に示す。VEGF−D△Cのウエスタンブロット分析によって検出されたおよそ50kDaのバンドは、免疫グロブリン重鎖に対応する。
【0059】
多数のVEGF−D誘導体が、VEGF−DFullNFlagおよびVEGF−D△Cを発現する細胞の上清において検出された。これらの誘導体は、VEGF−Dの生合成の一部として起こるタンパク分解性プロセシングの結果として形成される。VEGF−DNFullFlag、VEGF−D△CおよびVEGF−D△N△Cを発現する細胞系は、少なくとも20回継代する間、ハイグロマイシン選抜下で維持し、そしてVEGF−D誘導体を発現させ続けた。
【0060】
例2
VEGF−D△N△Cの可溶性のVEGF受容体への結合 VEGF−DとVEGF受容体との間の相互作用をさらに評価するため、VEGF−D△N△Cを、ヒトVEGFR−1、ヒトVEGFR−2およびヒトVEGFR−3の細胞外ドメインを含む可溶性の免疫グロブリン融合タンパク質に対して結合するその能力についてテストした。対応するVEGF−Cのフラグメント、VEGF−C△N△Cを比較のために使用した。結合実験のために、293Tヒト胎児性腎臓細胞を、リン酸カルシウム(Ca−ホスフェイト)法を用いて、可溶性の受容体−免疫グロブリン融合タンパク質であるVEGFR−1−Ig、VEGFR−2−IgまたはVEGFR−3−Igをコードするプラスミドによってトランスフェクトした。これらの融合タンパク質において、関連するVEGF受容体の細胞外ドメインを、ヒトIgG1のFc部分に融合させた。トランスフェクションの後、細胞を24時間インキュベートし、0.2%ウシ血清アルブミン(BSA)を含有するダルベッコ修飾イーグル培地(DMEM:Dulbecco's Modified Eagle's Medium)で洗浄し、そして24時間飢餓させた。次に培地を収集し、遠心分離によって清澄にし、そして融合タンパク質をプロテインAセファロースビーズを用いて沈降させた。このセファロースビーズを次に、Ca−ホスフェイト法を用いてヒトVEGF−D△N△C、ヒトVEGF−C△N△CまたはヒトVEGF165をコードする発現プラスミドによってトランスフェクトされた293−EBNA細胞からの、900μlの代謝的に35S−標識された培地とともに、室温で3時間インキュベートした。293−EBNA細胞の代謝標識は基本的に記載されているようにして行った(ヨウコフ(Joukov)他, 1997)。セファロースビーズを次に結合緩衝液(リン酸緩衝食塩水(PBS)中の0.5% BSA、0.02% Tween20、1μg/ml ヘパリン)で4℃で2回、そしてPBSで1回洗浄し、Laemmliサンプル緩衝液中でボイルし、そして次にタンパク質をSDS−PAGEによって分析した。結果を図3に示す。
【0061】
図3において、標識されたVEGF165、VEGF−C△N△CおよびVEGF−D△N△Cの、VEGFR−1−Ig、VEGFR−2−IgおよびVEGFR−3−Igによる沈降を上記のように行った。沈降のために用いた融合タンパク質を右に示す。“ベクター”は、VEGF類をコードする配列を欠く発現ベクターによってトランスフェクトされた細胞に由来する培地からの沈降の結果を示す。分子量マーカーは、kDaにて示されている。
【0062】
VEGF−D△N△Cについて予想されるサイズ(およそ22kDa)のポリペプチドが、VEGF−D△N△Cを発現する細胞の培地から、VEGFR−2−IgおよびVEGFR−3−Igによって沈降した。対照的に、同じ培地から、VEGFR−1−Igによってはこのサイズのタンパク質は沈降しなかった。VEGF−C△N△Cの沈降についても基本的に同じ結果が観察された。予想されたように、およそ24kDaの主なポリペプチドが、VEGF165を発現する細胞の培地から、VEGFR−1−IgおよびVEGFR−2−Igによって沈降したが、VEGFR−3−Igによっては沈降しなかった。VEGF類をコードする配列を欠く発現ベクターによってトランスフェクトされた細胞の培地からは、3つの融合タンパク質によって、いずれの標識されたタンパク質も沈降しなかった。これらのデータは、VEGF−D△N△CはVEGFR−2およびVEGFR−3には結合することができるがVEGFR−1には結合することができないということを示している。したがって、VEGF−D△N△Cは、VEGFR−2およびVEGFR−3に対する受容体−結合特異性において、VEGF−C△N△Cと似ている。
【0063】
例3
マウス胚におけるVEGF−D遺伝子発現のin situハイブリダイゼーション研究 マウスVEGF−D1 cDNAのヌクレオチド1から340に対応する放射能標識したアンチセンスRNAプローブを用いたin situハイブリダイゼーションによって、VEGF−D遺伝子発現のパターンを研究した。マウスVEGF−D1 cDNAの配列を図4に示す。アンチセンスRNAは、T3 RNAポリメラーゼおよび[35S]UTPαsを用いたインビトロの転写によって合成した。マウスVEGF−Dは、国際特許出願PCT/US97/14696において完全に記載されている。このアンチセンスRNAプローブを、交尾後15.5日のマウス胚のパラフィン−包埋した組織切片にハイブリダイズさせた。標識された切片を2日間オートラジオグラフィーにかけた。その結果得られた、アンチセンスRNAおよび(ネガティブコントロールとして)相補的なセンスRNAに対してハイブリダイズした切片についてのオートラジオグラフを、図5に示す。図5において、“L”は肺を表し、“Sk”は皮膚を表す。そして図示されたこれら2つの組織切片は連続的な切片である。VEGF−D mRNAに対する強いシグナルが、発生中の肺において検出され、そして、皮膚に付随していた。コントロールセンスRNAを用いた場合は、シグナルは検出されなかった。
【0064】
図6において、矢状の(sagittal)組織切片をVEGF−DアンチセンスRNAプローブにハイブリダイズさせ、そして引き続いて写真乳剤とともにインキュベートし、現像および染色した。顕微鏡的な分析によってVEGF−D mRNAは発生中の肺の間葉細胞において大量にあるということが明らかにされた(図6A−C)。対照的に、気管支および細気管支(気管支梢)の上皮細胞、そして気管支を囲む発生中の平滑筋細胞は、ネガティブであった。気管支動脈の内皮細胞もネガティブであった。図6Aにおいて、顕微鏡写真の暗い領域は、肺(Lu)におけるVEGF−D mRNAに対する強いシグナルを示す。肝臓(Li)および肋骨(R)も示されている。図6Bは、より高い拡大率における肺を示す。顕微鏡写真の明るい領域は、気管支(Br)および気管支動脈(BA)を示す。黒い長方形の輪郭は、図6Cに示される切片の領域を示すものであるが、図6Cはより高い拡大率のものである。図6Cは、気管支の上皮細胞(Ep)、上皮細胞層を囲む発生中の平滑筋細胞(SM)および間葉細胞(Mes)を示す。間葉細胞に付随する銀粒子が大量であることが明らかである。図6Dにおいて、顕微鏡写真の暗い領域は、肢芽を示す。線維芽細胞および発生中のメラノサイトに富む組織の領域における皮膚のすぐ下に、強いシグナルが位置していた。図6AおよびDについての拡大率は×40であり、図6Bについての拡大率は×200であり、図6Cについての拡大率は×500であった。
【0065】
ここに示した結果は、VEGF−Dは血管およびリンパ管の増殖を、発生中の肺および皮膚のすぐに下側の領域へと誘引している可能性があることを示唆するものである。皮膚の近くでVEGF−D遺伝子が発現していることにより、VEGF−Dは悪性のメラノーマに関連する血管新生を誘導することにおいて役割を果たしている可能性があると考えられる。悪性のメラノーマは非常に高度に血管新生化された(vascularized)腫瘍である。このことは、例えばVEGF−DまたはVEGF−D受容体−2またはVEGF−D受容体−3に対する抗体を用いた、VEGF−D発現の局所的な阻害が、悪性のメラノーマの治療において有用であることを示唆するものである。アンチセンス核酸または三本鎖DNAなどのその他の好適なVEGF−D活性の阻害剤も利用することができる。
【0066】
例4
ヒトVEGF−Dに結合するモノクローナル抗体の産生 VEGF−D△N△Cに対するモノクローナル抗体をマウスにおいて産生させた。VEGF−D△N△Cは、VEGF−DのVHDのアミノ酸配列を含み、VEGFファミリーの他のすべてのメンバーと配列において似ている。それゆえ、VEGF−Dの生理活性の部分はおそらくVHDにおいて存在すると考えられている。ヒトVEGF−Dの残基93から201の切形の(truncated)部分、すなわち、N−末端領域およびC−末端領域が除去された部分をコードするDNAフラグメントを、テンプレートとして全長ヒトVEGF−D cDNAを含むプラスミドを使用した、Pfu DNAポリメラーゼを用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって増幅した。増幅されたDNAフラグメントの配列をヌクレオチドシークエンシングによって確認し、そして発現ベクターpEFBOSSFLAG(The Walter and Eliza Hall Institute for Medical Research (WEHI)、Melbourne、Australiaの Dr. Clare McFarlane から寄贈)に挿入し、pEFBOSVEGF−D△N△Cと命名したプラスミドを生じさせた。pEFBOSSFLAGベクターは、インターロイキン−3(IL−3)遺伝子からのタンパク質分泌のためのシグナル配列およびFLAG(登録商標)オクタペプチド(Sigma-Aldrich)をコードするDNAを含むものである。FLAG(登録商標)オクタペプチドはM2モノクローナル抗体(Sigma-Aldrich)などの市販の抗体によって認識され得る。VEGF−D PCRフラグメントをこのベクターに、IL−3シグナル配列がFLAG(登録商標)オクタペプチドのすぐに上流になり、FLAG(登録商標)オクタペプチドが切形のVEGF−D配列のすぐに上流になるように挿入した。これら3つのすべての配列は同じ読み枠になっており、したがってpEFBOSVEGF−D△N△Cの哺乳類の細胞へのトランスフェクションの結果としておこるmRNAの翻訳により、そのN−末端にIL−3シグナル配列を、続いてFLAG(登録商標)オクタペプチド、および切形のVEGF−D配列を有するタンパク質が生じることになる。シグナル配列の切断およびそれに引き続く細胞からのタンパク質の分泌により、N−末端に隣接してFLAG(登録商標)オクタペプチドがタグ付加された(tagged)、VEGF−Dポリペプチドが生じることになる。このタンパク質をVEGF−D△N△Cと命名した。VEGF−D△N△Cを、プラスミドpEFBOSVEGF−D△N△Cによって一過性にトランスフェクトされたCOS細胞の培地から、抗−FLAG(登録商標)アフィニティークロマトグラフィーによって精製した。(国際特許出願PCT/US97/14696における例9を参照)。
【0067】
精製したVEGF−D△N△Cを用いて雌のBalb/cマウスを免疫した。免疫されるマウスから脾臓細胞を収集する85日前(腹腔内)、71日前(腹腔内)および4日前(静脈内)に免疫し、引き続いてこれら脾臓細胞をマウスミエローマP3X63Ag8.653(NS−1)細胞に融合させた。最初の2回の免疫化には、PBSとTiterMaxアジュバント(#R-1 Research adjuvant; CytRx Corp., Norcross, GA)との1:1混合物中で、およそ10μgのVEGF−D△N△Cを注射し、3回目の免疫化にはPBS中の、35μgのVEGF−D△N△Cを用いた。
【0068】
エンザイムイムノアッセイ(酵素免疫測定法)を用いて精製したVEGF−D△N△Cについてハイブリドーマをスクリーニングすることによって、VEGF−D△N△Cに対するモノクローナル抗体を選抜した。簡単に説明すると、96ウェルマイクロタイタープレートを、VEGF−D△N△Cでコーティングし、そしてハイブリドーマ上清を添加し、4℃で2時間インキュベートした。続いて、0.02% Tween20を含むPBS中で6回洗浄した。次に西洋わさびペルオキシダーゼ結合(conjugated)抗−マウスIg(Bio-Rad, Hercules, CA)とともに4℃で1時間インキュベーションを行った。洗浄後、2,2’−アジノ−ジ−(3−エチルベンズチアゾリンスルホン酸(ABTS;2,2'-azino-di-(3-ethylbenz-thiazoline sulfonic acid)基質システム(Zymed, San Francisco, CA)によってアッセイを明らかにし、そしてマルチウェルプレートリーダー(multiwell plate reader)(Flow Laboratories MCC/340, McLean, VA)で405nmの吸光度を判断することによってアッセイを数量化した。6つの抗体をさらなる分析のために選択し、限界希釈(法)によって2回サブクローニングした。これらの抗体を、2F8、3C10、4A5、4E10、4H4および5F12と命名した。これら抗体のアイソタイプを、Isostrip(商標)アイソタイピング(isotyping)キット(Boehringer Mannheim, Indianapolis, IN)を用いて判定した。抗体2F8、4A5、4E10および5F12はIgG1クラスであり、4H4および3C10はIgMクラスのものであった。6つのすべての抗体がκ軽鎖を含んでいた。
【0069】
ハイブリドーマ細胞系を、5% v/v IgG−除去(depleted)血清(Gibco BRL, Gaithersburg, MD)、5mM L−グルタミン、50μg/ml ゲンタマイシンおよび10μg/ml 組換えIL−6を含有するDMEM中で培養した。ダービー(Darby)他, J. Immunol. Methods, 1993 159 125-129 の技法にしたがって、プロテインG−セファロースを用いたアフィニティークロマトグラフィーによって、抗体2F8、4A5、4E10および5F12を精製し、そして収率を280nmにおける吸収を測定することによって評価した。
【0070】
例5
ヒト腫瘍の免疫組織化学的分析のための、ヒトVEGF−Dに対するモノクローナル抗体の使用 腫瘍形成におけるVEGF−Dの役割を評価するために、上述のMAbをヒトの悪性のメラノーマの免疫組織化学的分析のために使用した。この分析のために、4つのVEGF−D MAb、2F8、5F12、4A5および4E10を使用した。LMM774と命名された、顆粒球コロニー刺激因子の受容体に対して産生されたMAb(レイトン(Layton)他, Growth Factors, 1997 14 117-130)をネガティブコントロールとして使用した。これら(4つ)のVEGF−D MAbと同様に、LMM774は、マウスIgG1アイソタイプのものであり、それゆえアイソタイプ−一致(matched)コントロール抗体として役立った。これらのMAbを、2つのランダムに選ばれた浸潤性の悪性のメラノーマに対して免疫組織化学によってテストした。皮膚の悪性のメラノーマの、ホルマリン固定およびパラフィン包埋した組織からの厚さ5マイクロメーターの切片を、テスト組織として用いた。切片を脱ろう(dewaxed)および再水和(rehydrated)し、そしてPBSで洗浄した。1:50に希釈された正常なウサギ血清を、各切片に対して20分間与えた(applied)。過剰の血清を取り除き(blotted off)、そして一次抗体、すなわちクルードに(crudely)至適化された1:100および1:200の希釈度のVEGF−D MAbおよびLMM774を、切片に与え、そして室温で一晩、湿室においてインキュベートした。切片を再びPBS中で5分間洗浄し、続いてPBS中の1:400の希釈度の、ビオチン標識したウサギ抗−マウス抗体(DAKO Corp., Carpinteria, CA)を室温で35分間与えた。切片を次にtris緩衝食塩水(TBS)中で5分間洗浄し、そしてTBS中、1:500の希釈度にて、ストレプトアビジン−アルカリホスファターゼ(Silenus, Australia)を与えた。切片をTBS中で5分間洗浄し、そして高速赤色基質(the fast red substrate)(Sigma, St. Louis, MO)を室温で20分間与えた。切片を水中で洗浄し、そしてマウントした(mounted)。赤色の反応産物を用いたのは、メラニンを産生する腫瘍の解釈における混同を回避するためである。VEGF−D MAbを省略したステップ省略コントロール、およびLMM774抗体を用いたアイソタイプ−一致(mathed)コントロールを、実験に含ませた。
【0071】
図7A−Cは、同じメラノーマサンプルでの結果を示し、図7Dおよび7Eは、同じバッチにおいて染色した異なる腫瘍についての結果を示す。免疫反応性のメラノーマ細胞の島が、(1)図7Aおよび7Bにおける矢印で示された部分の内側によって示され、免疫反応性の血管が、(2)7Cにおける矢印で示された部分の内側によって示されている。7Eにおいて、異なるレベルのVEGF−Dを有するメラノーマ細胞が明らかとなっている。図7A、7Dおよび7Eにおける拡大率はおよそ×60であり、図7Bおよび7Cにおける拡大率はおよそ×300である。
【0072】
陽性の(ポジティブな)反応が4つのすべてのVEGF−D MAbについてみられ、それらは基本的に同じ染色パターンであった。図7A−Cおよび7Eに示す結果は、MAb 2F8によるものである。光学顕微鏡的な検査による染色パターンの評価によって、メラノーマの大部分にわたってむらがある染色が示された。大きい方の腫瘍では、浸潤性の部分の周囲における腫瘍細胞の小さい島において(図7Aおよび7B)、および表皮内の腫瘍細胞の巣(nest)において、染色がより明白であり、腫瘍の中心の浸潤性の部分においては、染色はより薄いかまたは検出不可能であった。陽性(ポジティブ)に反応する腫瘍細胞の近くの乳頭および網状の真皮における小さい毛細血管サイズの血管では、内皮細胞の細胞質において抗体に対するむらがある粒状の反応が示された(図7C)。小さい方の腫瘍についての反応は、腫瘍塊(tumor mass) 全体を通じて、分布においてより均等であった(図7E)。腫瘍の外側の不定な距離にある、免疫反応性の腫瘍細胞から離れている中部および深部の網状の真皮および皮下の組織における血管は、VEGF−D MAbとの反応を示さなかった。VEGF−D MAbによる結果とは対照的に、同じ腫瘍におけるLMM774コントロールは陰性(ネガティブ)であり(図7D)、ステップ省略コントロールも陰性(ネガティブ)であった。
【0073】
いくつかの腫瘍について、VEGF合成および分泌は低酸素の腫瘍細胞において開始されうること、および、腫瘍は血管の近くの内皮細胞におけるVEGFR−2の発現も誘導することができることが示されている(プレート(Plate)他, Cancer Res., 1993 53 5822-5827)。このように、腫瘍血管新生を誘導するためのパラクリンシステムが確立しており、それによって腫瘍において分泌されるVEGFは、間質に拡散して標的内皮細胞におけるVEGFR−2に結合し、そしてその結果、内皮細胞増殖を誘導する。メラノーマにおいてVEGF−Dが局在しているという結果は、VEGF−Dが悪性のメラノーマにおいて同様の機能を果たしている可能性があることを示すものである。テストされた両方の臨床サンプルにおいて、VEGF−D MAbはメラノーマ細胞におけるVEGF−Dを検出した。これら腫瘍細胞はVEGF−Dを産生している可能性が非常に高い。さらに、VEGF−Dは、プロデューサー腫瘍細胞の付近における血管の内皮細胞において検出されたが、より遠い血管では検出されなかった。VEGF−Dは、おそらく腫瘍血管においてしばしば発現しているVEGF−Dに対する受容体であるVEGFR−2との相互作用のために、これらの内皮細胞に局在しているのであろう(プレート(Plate)他, Cancer Res., 1993 53 5822-5827)。VEGF−Dが腫瘍の付近におけるリンパ管においても局在しているかどうかを評価するために、さらなる免疫組織化学的分析が必要であろう。そのようなシナリオはありうる。というのは、リンパ内皮細胞は、VEGF−Dに対する高アフィニティー受容体であるVEGFR−3を発現しているからである(ヨウコフ(Joukov)他, The EMBO Journal, 1996 15 290-298)。
【0074】
前記の諸結果は、メラノーマ細胞がVEGF−D遺伝子を発現することができるということを示すものである。交尾後15.5日のマウス胚の、in situハイブリダイゼーションによる分析は、発生中のメラノサイトおよび線維芽細胞に富む領域における、発生中の皮膚のすぐ下でのVEGF−D遺伝子の発現を示すものであった(例3および図5および図6)。したがって、胚発生における場合のように、トランスフォームされたメラノサイトは、VEGF−Dに対する遺伝子を発現する能力を再獲得している可能性がある。もし発癌トランスフォーメーション以外の現象が、メラノサイトにおけるVEGF−D遺伝子発現を誘導することができるとすれば、このタンパク質は、炎症または血管および/またはリンパ管の増殖によって特徴づけられる、他のタイプの皮膚障害においても関与している可能性がある。治療的な設定において、組織損傷に応じてVEGF−Dを適用することは、再生中の皮膚の近くの血管およびリンパ管の増殖を刺激するために有用であろう。同様に、血管新生およびリンパ脈管形成を刺激するためにVEGF−Dを適用することは、皮膚移植法の成功性を高めるために有用であろう。これらは、火傷およびその他の外傷の傷害などの多様な状態の治療、外科的な瘢痕の回避または減少、美容整形など、において利用される。
【0075】
例6
VEGF−Cに対して結合する能力についての抗体のテスト 前述のエンザイムイムノアッセイ(酵素免疫測定法)を用いて、VEGF−C△N△Cに結合する能力について、6つのVEGF−D MAbをテストした。VEGF−C△N△Cは、VEGF−CのVEGFホモロジードメイン(残基103から215)からなり、VEGF−D△N△Cに最も似ているVEGF−Cの領域である。C−末端に6×ヒスチジンタグを加えたVEGF−C△N△Cを、発現ベクターpIC9(Invitrogen, San Diego, CA)を用いて製造業者の指示に従って、酵母p.pastorisの菌株GS115中で発現させ、Ni−NTA スーパーフロー(Superflow)樹脂(QIAGEN, Valencia, CA)を用いて精製した。このイムノアッセイによってテストした6つの抗体の内、4E10のみがVEGF−C△N△Cに結合した。
【0076】
例7
VEGF−Dは、VEGF−Cと類似の様式でタンパク分解性にプロセシングされる VEGF−Dのタンパク分解性プロセシングを研究するために、293−EBNA細胞を、pVDApex△C、pVDApexFullNFlag、pVDApex△N△C(例1および図1)、およびpVDApexFullCFlagによって安定にトランスフェクトした。これらの発現コンストラクトはそれぞれ、VEGF−D△C、VEGF−DFullNFlag、VEGF−D△N△C(例1および図1)およびVEGF−DFullCFlagをコードするものである(図8)。VEGF−Dの構造上のドメインを、図8の最上部に示す。“SS”は、タンパク質分泌のためのシグナル配列を示し、N−末端プロおよびC−末端プロは、プロペプチドを示し、そしてVHDは、VEGFホモロジードメインを示す。その下方に、VEGF−Dにおける特徴づけされた推定上のタンパク分解性(proteolytic)切断部位が矢印によってしるしを付けられて示されている。可能性のあるN−結合型グリコシル化部位は、星印によってしるしを付けられている。A2抗血清(下記)を産生するために免疫原として使用されたVEGF−Dの領域は、黒いバーによって示されている。図の下側半分は、293−EBNA細胞において発現された、VEGF−D誘導体の一次翻訳産物を示している。簡明さのために、タンパク質分泌のためのシグナル配列は省略してある。FLAGオクタペプチドエピトープは、丸で囲まれた“F”によって示されている。プラスミドpVDApexFullCFlagは、タンパク質分泌のための内因性のVEGF−Dシグナル配列に対するDNAが保持されており、翻訳開始のための“Kozak”コンセンサス配列が至適化され、VEGF−Dの開始コドンのすぐ後に、3つのアミノ酸“A−R−L”の挿入が必要となっているという点をのぞいては、pVDApexFullNFlag(例1)と類似の方法によって構築された。このコンストラクトは、タンパク質のC−末端において、アミノ酸“A−R−Q”、それに続いてFLAGオクタペプチド配列もコードするものであった。293−EBNA細胞系は、VEGF−Cをタンパク分解性にプロセシングする能力を有しており(ヨウコフ(Joukov)他、EMBO J., 1997 16 3898-3911)、このことのよって、これらトランスフェクトされた細胞に由来するVEGF−D誘導体の分析を、細胞の生合成およびプロセシングの間に行うことが可能になる。
【0077】
VEGF−D誘導体を、安定にトランスフェクトされた293−EBNA細胞のならし培地(培養上清)から、M2(抗−FLAG)ゲル(Sigma-Aldrich)でのアフィニティークロマトグラフィーによって精製し、製造業者の指示に従って、FLAG(登録商標)ペプチドを用いて溶出した。FLAG(登録商標)ペプチドを、遠心濃縮機(Amicon, Beverly, MA)を用いて除去した。M2アフィニティーカラムから溶出されたフラクションのアリコットを、精製された種の正体を確認するために、SDS−PAGEおよび銀染色によって分析するか、あるいはM2抗体(Sigma-Aldrich)によってイムノブロットした。
【0078】
種々のVEGF−D誘導体を発現する293−EBNA細胞のSDS−PAGEによる分析は、VEGF−Dポリペプチドがタンパク分解性にプロセシングされていることを示すものである。VEGF−DFullNFlagを発現する293−EBNA細胞からの培地を用いた精製により、N−末端にFLAGオクタペプチドを備えたVEGF−Dポリペプチドのみの、または、FLAG(登録商標)−タグ付加された(tagged)ポリペプチドに共有結合的にあるいは非−共有結合的に結合した誘導体の、特異的な分析が可能になった(図8および図11)。
【0079】
VHD内にある、ヒトVEGF−Dの残基190から205の領域に対応する合成ペプチド、KCLPTAPRHPYSIIRR(配列番号3)(PCT/US97/14696の配列番号5)に対する、A2と命名されたポリクローナル抗血清をウサギにおいて産生させた。
【0080】
SDS−PAGEおよびウエスタンブロット分析のために、精製VEGF−D誘導体を含有するサンプルを、2xSDS−PAGEサンプル緩衝液と1:1の割合で混合し、ボイルし、そしてSDS−PAGEによって分離した(レームリ(Laemmli)、Nature, 1970 227 680-685)。タンパク質を次にImmobilon−Pメンブラン(Millipore, Bedford, MA)にトランスファーし、そして非−特異的な結合部位を、3% BSA、100mM Tris−HCl(pH7.5)、150mM NaClおよび0.02% Tween20中でインキュベーションすることによってブロッキングした。ブロットを次に1:2000の希釈度のA2抗血清とともに室温で2時間インキュベートするか、あるいはその代わりに、製造業者によって記載されているようにしてM2(抗−FLAG)抗体とともにインキュベートした。緩衝液(3% BSA、100mM Tris−HCl(pH7.5)、150mM NaClおよび0.02% Tween20)中で洗浄した後、ブロットを抗−ウサギIg西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)結合体または抗−マウスIg HRP結合体(Biorad, Hercules, CA)によってプローブ(探索)し、化学発光(ECL, Amersham, UK)を用いて現像した。
【0081】
VEGF−DFullNFlagを発現する細胞によって分泌されるタンパク質の、還元条件下でのSDS−PAGEおよび銀染色による分析によって、プロセシングされていないVEGF−Dの予想されるサイズである、およそ53kDaの種、および、およそ31および29kDaの2つのポリペプチドが明らかにされた(図9A)。(kDaにおける)分子量マーカーのサイズは、各パネルの左側に示され、VEGF−D誘導体の位置は(kDaにおける分子量とともに)、右側に矢印によってしるしを付けられている。この結果はVHDのC−末端近くで起こる、タンパク分解性切断現象と一致している。このモデルによると、およそ53kDaのポリペプチドは、プロセシングされていないVEGF−Dを表すものであり、およそ31kDaのポリペプチドは、N−末端プロペプチドおよびVHDからなる(すなわち、C−末端プロペプチドを欠いている)ものであろう。N−末端プロペプチドおよびVHDからなるポリペプチドの予想されるサイズは確かにおよそ31kDaである。というのは、グリコシル化されているVHDはおよそ21kDaであることが以前に示されており(アーヘン(Achen)他, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1998 95 548-553; PCT/US97/14696の図12b)、FLAG−タグ付加された(tagged) N−末端延長の予想されるサイズはおよそ10kDaであるからである。もしVEGF−Dのプロセシングに、VHDのC−末端の近くでの切断に加えて、VHDのN−末端の近くでの切断が関与しているとすれば、VEGF−DFullNFlagを発現する細胞は、N−末端延長のみからなる10kDaのFLAG−タグ付加されたポリペプチドも分泌するはずである。銀染色によって評価した場合(図9A)、これら細胞によって分泌されるVEGF−D誘導体の中に10kDaのポリペプチドは検出されなかったが、それは、M2抗体を用いた同じ材料のウエスタンブロット分析によって明瞭に検出された(図9B)。銀染色によって検出されたおよそ29kDaのポリペプチドは、同じサンプルにおいてA2ポリクローナル抗血清を用いたウエスタンブロットによっては検出されなかった(図9C)。したがってこれはC−末端プロペプチドを表すものであろう。このことを、このポリペプチドのN−末端アミノ酸によって確認した。すなわち、このポリペプチドのN−末端配列は“SIQIPEED”(配列番号4)であると確認され、この配列は、VEGF−Cとの比較に基づいて予想されるVHDのC−末端切断部位のすぐに近くのものである。したがって、VEGF−DにおけるC−末端切断部位は、アルギニン205のすぐ後に位置する(“R↓SIQIPEED”)(配列番号5)。このおよそ29kDaのポリペプチドは、おそらく、N−末端およびC−末端プロペプチドの間の鎖間ジスルフィド結合のために、アフィニティー−精製された物質中に存在していたのであろう(VEGF−Dプロセシングのスキーム(模式図)については図11を参照)。
【0082】
VHDのN−末端の近くでのVEGF−Dのタンパク分解性切断の可能性をさらに調べるために、VEGF−D△Cを発現する293−EBNA細胞によって分泌されるタンパク質を精製し、上記のように分析した。VEGF−D△Cのためのコンストラクトは、C−末端延長が欠失しておりFLAGによって置換されている、VEGF−D誘導体を発現させる(図8)。これら細胞からの ならし培地(培養上清)は、銀染色によって評価した場合、およそ31および21kDaの、2つのFLAG−タグ付加されたポリペプチドを含んでいた(図9D)。この結果は、VHDのN−末端近く、即ちプロセシングされていないVEGF−DのN−末端からおよそ10kDaのところで起こる、N−末端切断現象と一致したものである。したがって、およそ31kDaのポリペプチドは、N−末端延長とVHDとからなり、一方、およそ21kDaのポリペプチドは、VHDのみからなるものであろう。およそ31およびおよそ21kDaのバンドの両方が、M2抗体によるウエスタンブロット分析によって検出されたという知見は、このモデルと一致している(図9E)。また、予想されたように、これら両方のバンドは、A2抗血清によるウエスタンブロット分析によっても検出された(データは示さない)。
【0083】
VEGF−DにおけるN−末端タンパク分解性切断部位の正確な位置を判定するために、VEGF−D△Cを発現する細胞の上清から精製された、およそ21kDaのポリペプチドに対してN−末端アミノ酸シークエンシングを行った。アフィニティー−精製されたタンパク質のN−末端アミノ酸シークエンシングは、Hewlett-Packardタンパク質シークエンサー、モデルG1000A(Hewlett-Packard Palo Alto, CA)を用いて行った。このポリペプチドのN−末端配列は不均一であった。材料のおよそ80%を代表する主な配列は、“FAATFY”(配列番号6)で始まっており、材料の10−15%を代表する少ない方の配列は、“KVIDEE”(配列番号7)で始まっていた。したがって、予想されたように、およそ21kDaのポリペプチドのN−末端は、VHDのN−末端とほぼ同じ位置に位置している。VEGF−Dの主な(メジャー)N−末端切断部位はアルギニン88のすぐ後に位置しており(“R↓FAATFY”)(配列番号8)、そして少ない方の(マイナー)切断部位はロイシン99のすぐ後にある(“L↓KVIDEE”)(配列番号9)(図8)。
【0084】
例8
VEGF−D△N△Cは主に非−共有結合性の二量体の形態で存在する 一般に、VEGFファミリーメンバーはジスルフィド−結合したホモ二量体として存在する。しかし、VEGF−C△N△Cは、主に非−共有結合性の二量体の形態で存在する(ヨウコフ(Joukov)他, EMBO J., 1997 16 3898-3911)。VEGF−Dの成熟した形態である、VEGF−D△Npro△Cproも、ジスルフィド−結合した二量体ではない。というのは、このポリペプチドはSDS−PAGEで、還元条件下および非−還元条件下においてほとんど全く同じに移動するからである。成熟した形態のVEGF−Dの性質をテストするために、アフィニティー−精製したVEGF−D△N△Cをサイズ排除クロマトグラフィーにかけた。サイズ排除クロマトグラフィーは、アフィニティー−精製したタンパク質をTSKG2000SW(7.5x60mm Id)カラム(LKB Bromo, Sweden)にローディングすることによって行った。カラムをPBSで平衡化した。タンパク質を流速0.25ml/分で溶出し、1分間のフラクションを収集した。タンパク質の溶出は215nmでモニターした。見かけ上の分子量(各ピークの上に括弧内で示す)が、73kDa(ピーク1)、49kDa(ピーク2)および25kDa(ピーク3)である3つの主なピークがカラムから溶出した。そしてこれらのピークにおける全タンパク質の比を分光光度的に評価したところ、およそ、1:2.1:0.9であった(図10A)。見かけ上の分子量は、既知のタンパク質:ウシ血清アルブミン二量体、ウシ血清アルブミン、卵白アルブミンおよびトリプシンインヒビター(Sigma Aldrich Pty Ltd, Australia)から作成した検量線を用いて判定した。これらのピークに対応するフラクションをプールし、遠心濃縮機を用いて100μlまで濃縮し、そして還元条件下でのSDS−PAGEによって分析し、銀染色した(図10B)。トラック1、2および3は、それぞれピーク1、2および3からのタンパク質に対応する。VEGF−D△N△Cサブユニットの位置は図10Bにおいて左側に示されており、(kDaにおける)分子量マーカーの位置は右側に示されている。
【0085】
VEGF−D△N△Cサブユニット(およそ21kDa)は、ピーク2において最も大量であり、ピーク3においては容易に検出可能であり、そしてピーク1からは検出不可能であった(図10B)。ピーク1における主な種は、M2アフィニティークロマトグラフィーによって精製されたタンパク質のサンプルにおいてしばしば検出される混入物であり、M2抗体またはA2抗血清によるウエスタンブロット分析によっては検出することのできない(データは示さない)、73kDaのタンパク質であった。この73kDaのタンパク質は、VEGF−Dをコードする配列を欠くApex−3プラスミドによってトランスフェクトされた293−EBNA細胞からの上清を用いたコントロールM2アフィニティー精製においても観察された(データは示さない)。サイズ排除クロマトグラフィーから判定された見かけ上の分子量は、ピーク2および3におけるタンパク質はそれぞれVEGF−D△N△C二量体およびVEGF−D△N△C単量体であることを示すものであった。したがって、そのサブユニットが還元条件下または非−還元条件下でのSDS−PAGEにおいて分離する、非−共有結合性の二量体が、VEGF−D△N△Cのアフィニティー−精製された調製物における主な分子種であった。
【0086】
VEGF−D△N△Cの二量体の形態および単量体の形態が、VEGFR−2に結合する能力を、カラムから溶出したフラクションを用いて評価し、VEGFR−2に結合する能力について、国際特許出願PCT/US95/16755に記載のBa/F3細胞バイオアッセイを用いてアッセイした。ピーク3におけるVEGFR−2−結合活性は、ピーク2におけるもののおよそ2%であり、このことは、VEGF−D△N△C非−共有結合性ホモ二量体は単量体よりも生理活性が大きいことを示している。ピーク1におけるVEGFR−2結合活性は、ピーク2におけるもののおよそ1%であり、このことは、おそらくこのピークにおける少量のVEGF−D△N△C非−共有結合性ホモ二量体を反映している。明らかに二量体の形態のVEGF−D△N△Cの方が、単量体の形態のものより、はるかによくVEGFR−2に結合する。
【0087】
例6において示されるデータは、VEGF−Dがタンパク分解性にプロセシングされること、および、タンパク分解性切断の部位が、VEGF−Cにおけるものと位置において同じではないが、類似していることを実証するものである。タンパク分解性プロセシングはおそらくかなりの生物学的な重要性を有するものである。というのは、異なるVEGF−D誘導体は、VEGF受容体を活性化することに関して異なる能力を有しているからである。完全にプロセシングされたVEGF−DはVEGFR−2とVEGFR−3との両方に結合してそれらを活性化する(アーヘン(Achen)他, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1998 95 548-553) 一方、プロセシングされていない形態のVEGF−DはVEGFR−3を活性化するが、VEGFR−2は活性化しない(PCT/US97/14696の図14および図15)。したがって、段階的なタンパク分解性プロセシングは、インビボでVEGF−Dの受容体−結合特異性を調節する方法である可能性がある。
【0088】
サイズ排除クロマトグラフィーはまた、アフィニティー−精製されたVEGF−D△N△Cは主に非−共有結合性の二量体であるが、小部分は単量体であることを実証するものであった。二量体の形態のみがVEGFR−2の細胞外ドメインを含むキメラの受容体を強く活性化することができた。この知見は、細胞表面受容体チロシンキナーゼの活性化が受容体二量体化に関与するとすれば、予想されたものであった。おそらく、二量体のリガンドは1分子あたり2つの受容体結合部位を提供する一方、単量体の形態は1つしか提供しない。したがって、二量体のリガンドは受容体の二量体化を引き起こすことができるが、単量体のリガンドはそれができないのである。
【0089】
293−EBNA細胞によって行われ、単量体および二量体を生じさせる、VEGF−Dのプロセシングについてのスキームを図11に示す。2つの異なる形態のプロセシングされていないVEGF−Dが細胞から分泌される:1つは単量体であり(左側)、もう1つは逆平行の(anti-parallel)ジスルフィド−結合した二量体であってN−末端およびC−末端プロペプチドの間にジスルフィド架橋を有するものである(右側)。矢印は、細胞内の形態から、VHDのN−末端およびC−末端における段階的なタンパク分解性プロセシングの産物へと導くものであり、最後にはVHDの非−共有結合性の二量体および単量体からなるVEGF−Dの成熟した形態が生じる。ここに記載された細胞系からのVEGF−Dの誘導体の分析は、VHDからのC−末端プロペプチドの切断の方が、N−末端プロペプチドの切断よりも効率的におこるということを示唆するものである。簡明さのため、タンパク分解性プロセシングから生じるすべてのありうる誘導体を示してはいない。図11において、N−プロはN−末端プロペプチドを示す;C−プロは、C−末端プロペプチド;VHDは、VEGFホモロジードメイン;灰色の箱は、ドメイン間の非−共有結合性の相互作用;−S−は、サブユニット間のジスルフィド架橋;N−は、ポリペプチドのN−末端;そして、矢印は、タンパク分解性切断部位のおよその位置を表す。
【0090】
例9
VEGF−Dおよび血管透過性 アフィニティー−精製したヒトVEGF−D△N△Cを、Milesアッセイを用いて血管透過性を誘導する能力についてテストした。Milesアッセイ(マイルズ,エイ・エイ(Miles, A. A.)およびマイルズ,イー・エム(Miles, E. M.), J. Physiol., 1952 118 228-257)は、麻酔したモルモットを用いて行った。透過性因子によって誘導される血管外遊出の定量化のために、サンプル注射の領域を切除し、そしてホルムアミド中、42℃で3日間のインキュベーションによってエバンスブルー色素を抽出した。抽出された色素の量を、620nmでのサンプルの吸光度を判断することによって分光光度的に定量化した。VEGF−D△N△Cを用いたのは、ヒトVEGF−CのVHD(VEGF−C△N△C)が血管透過性を誘導することが知られていたためである(ヨウコフ(Joukov)他, EMBO J., 1997 16 3898-3911)。精製したマウスVEGF164をポジティブコントロールとして含めた。予想されたように、マウスVEGF164は血管透過性を強く誘導した。検出可能な血管透過性を誘導した、マウスVEGF164の最も低い濃度は60ng/mlであった。同様に、ヒトVEGF−C△N△Cも血管透過性を誘導したが、検出可能な活性を示す最も低い濃度は250ng/mlであった。対照的に、VEGF−D△N△Cは、1μg/mlという高さのタンパク質濃度においてさえも、活性を示さなかった。これらの結果はヒトVEGF−D△N△Cは、モルモットにおける血管透過性の誘導物質ではないということを示すものである。
【0091】
VEGF−DとVEGF−Cとは、一次構造および受容体−結合特異性における類似性のために、VEGFファミリーのサブファミリーのメンバーであるとみなされている(アーヘン(Achen)他, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1998 95 548-553)。これら2つの分子のプロセシングのメカニズムは似ているが、同じではない。しかし、これら2つの増殖因子は、VEGF−D△N△Cは血管透過性を誘導しないという知見によって例証されるように、生物活性において相違を示す。対照的に、VEGF−C△N△Cは、VEGFほど強力ではないが血管透過性を誘導する(ヨウコフ(Joukov)他, EMBO J., 1997 16 3898-3911)。
【0092】
上述の記載および諸例は、単に本発明を例示するために記載されたものであり、限定されることを意図するものではない。本発明の精神及び本質を組み込んだ開示された実施態様を改変することが当業者になされうるものであり、本発明は請求の範囲およびその均等物の枠内に入るすべての改変を含むものであると広く解釈されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、VEGF−Dおよびその生物学的に活性の誘導体を含む発現ベクター、VEGF−Dおよびその生物学的に活性の誘導体を安定に発現する細胞系、および、これらの発現ベクターおよび宿主細胞を用いてポリペプチドを作る方法を提供し、例えば、メラノーマおよび種々の疾患を治療および軽減する方法に利用可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
VEGF−D、または、VEGF−Dの生物学的活性を有するそのフラグメントまたはアナログを、安定に発現するヒト細胞系。
【請求項2】
前記細胞系によって産生されるVEGF−Dが、エピトープタグに連結している、請求項1に記載の細胞系。
【請求項3】
前記エピトープタグが、FLAG(登録商標)、ヘキサヒスチジン(hexahistidine)、またはI−SPY(商標)である、請求項2に記載の細胞系。
【請求項4】
293−EBNA胎児性腎臓細胞系である、請求項1、請求項2または請求項3に記載のヒト細胞系。
【請求項5】
発現されるVEGF−Dが、VEGF−DFullNFlag、VEGF−DFullCFlag、VEGF−D△N△C、またはVEGF−D△Cである請求項1〜4のいずれか一項に記載の細胞系。
【請求項6】
VEGF−Dのフラグメントが、配列番号1のアミノ酸配列からなるVEGF−Dの部分である請求項1に記載の細胞系。
【請求項7】
VEGF−Dのフラグメントが、FLAG(登録商標)ペプチドに連結した、配列番号1のアミノ酸配列からなるVEGF−Dの部分である請求項1に記載の細胞系。
【請求項8】
哺乳類の発現ベクターに挿入された、配列番号1のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはVEGF−Dの生物学的活性を有するそのフラグメントまたはアナログをコードするヒトDNA配列を含む発現ベクター。
【請求項9】
前記発現ベクターが、Apex−3である請求項8に記載の発現ベクター。
【請求項10】
前記発現ベクターが、pVDApex△N△Cである請求項8または請求項9に記載の発現ベクター。
【請求項11】
アフィニティータグをコードする配列を含む請求項8または請求項9に記載の発現ベクター。
【請求項12】
前記アフィニティータグが、FLAG(登録商標)、ヘキサヒスチジン(hexahistidine)、またはI−SPY(商標)である請求項11に記載の発現ベクター。
【請求項13】
請求項8〜12のいずれか一項に記載のベクターでトランスフォーム(transform)またはトランスフェクト(transfect)された宿主細胞。
【請求項14】
配列番号1のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはVEGF−Dの生物学的活性を有するそのフラグメントまたはアナログを作る方法であって、宿主細胞中で請求項8または請求項9に記載の発現ベクターを発現させる工程、および、宿主細胞から、または、宿主細胞の増殖培地からポリペプチドを単離する工程、を有する配列番号1のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはVEGF−Dの生物学的活性を有するそのフラグメントまたはアナログを作る方法。
【請求項15】
前記発現ベクターが、アフィニティータグをコードする配列を含むものである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記アフィニティータグが、FLAG(登録商標)、ヘキサヒスチジン、またはI−SPY(商標)である請求項15に記載の方法。
【請求項17】
悪性のメラノーマの治療または軽減方法であって、
メラノーマの付近においてVEGF−Dの発現または活性を阻害するために有効な阻害量(inhibitory amount)のVEGF−Dアンタゴニストを投与する工程を含む、悪性のメラノーマの治療または軽減方法。
【請求項18】
前記VEGF−Dアンタゴニストが、アンチセンス核酸またはVEGF−Dをコードする三本鎖DNAである請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記VEGF−Dアンタゴニストが、VEGF−D変異体ポリペプチドである請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記VEGF−Dアンタゴニストが、VEGF−Dに特異的に反応する、抗体またはそのF(ab’)2、F(ab’)若しくはF(ab)フラグメントを含む組成物である請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記抗体が、モノクローナル抗体、F(ab’)2、F(ab’)、F(ab)フラグメントまたはそのキメラ(chimeric)モノクローナル抗体である請求項20に記載の方法。
【請求項22】
VEGF−Dを発現する腫瘍の治療または軽減方法であって、前記腫瘍の付近において有効な阻害量(inhibitory amount)のVEGF−Dアンタゴニストを投与する工程を含む、VEGF−Dを発現する腫瘍の治療または軽減方法。
【請求項23】
VEGF−Dを発現する腫瘍の治療または軽減方法であって、腫瘍阻害活性を有する毒素または薬剤に結合した(conjugated)有効な阻害量(inhibitory amount)の、VEGF−DまたはVEGF−D受容体結合活性(binding activity)に結合する能力のあるそのフラグメントまたはアナログを投与する工程を含む、VEGF−Dを発現する腫瘍の治療または軽減方法。
【請求項24】
皮膚移植の受け入れ(acceptance)および/または治癒を増強する方法であって、血管新生およびリンパ脈管形成(lymphangiogenesis)を刺激するのに有効な量の、VEGF−DまたはVEGF−Dの生物学的活性を有するそのフラグメントまたはアナログを投与する工程を含む、皮膚移植の受け入れおよび/または治癒を増強する方法。
【請求項25】
皮膚に対する外科または外傷の創傷の治癒を刺激する方法であって、血管新生およびリンパ脈管形成(lymphangiogenesis)を刺激するのに有効な量の、VEGF−DまたはVEGF−Dの生物学的活性を有するそのフラグメントまたはアナログを投与する工程を含む、皮膚に対する外科または外傷の創傷の治癒を刺激する方法。
【請求項26】
VEGF−Dの受容体−結合特異性を調節する方法であって、プロセシングされていないVEGF−Dをコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターを発現させる工程、および、発現されたプロセシングされていないVEGF−Dをプロセシングして、タンパク分解性にプロセシングされた形態のVEGF−Dを産生するために、少なくとも1つのタンパク分解量(proteolytic amount)の酵素を供給する工程、を有する、VEGF−Dの受容体−結合特異性を調節する方法。
【請求項27】
VEGF−Dのタンパク分解フラグメントを作成する方法であって、プロセシングされていないVEGF−Dをコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターを発現させる工程、および、発現されたプロセシングされていないVEGF−Dをプロセシングして、タンパク分解性にプロセシングされたVEGF−Dのフラグメントを産生するために、少なくとも1つのタンパク分解量(proteolytic amount)の酵素を供給する工程、を有する、VEGF−Dのタンパク分解フラグメントを作成する方法。
【請求項28】
生物学的サンプルにおいてVEGF−Dを発現する腫瘍を検出する方法であって、前記サンプルをVEGF−Dに対する特異的結合性試薬に接触させる工程、前記特異的結合性試薬のVEGF−Dに対する結合のために時間を与える工程、および前記結合を検出する工程、を有する、生物学的サンプルにおいてVEGF−Dを発現する腫瘍を検出する方法。
【請求項29】
前記特異的結合性試薬が、第1(first)抗体である請求項28に記載の生物学的サンプルにおいてVEGF−Dを発現する腫瘍を検出する方法。
【請求項30】
前記結合を検出可能な標識を備えた第二抗体によって検出する、請求項29に記載の生物学的サンプルにおいてVEGF−Dを発現する腫瘍を検出する方法。
【請求項31】
リンパ浮腫の治療または軽減方法であって、リンパ脈管形成を刺激するのに有効な量の、VEGF−D、または、VEGF−Dの生物学的活性を有するそのフラグメントまたはアナログを投与する工程を含む、リンパ浮腫の治療または軽減方法。
【請求項32】
乾癬の治療または軽減方法であって、有効な阻害量のVEGF−Dアンタゴニストを投与する工程を含む、乾癬の治療または軽減方法。
【請求項33】
強皮症の治療または軽減方法であって、内皮の増殖を刺激するのに有効な量の、VEGF−DまたはVEGF−Dの生物学的活性を有するそのフラグメントまたはアナログを投与する工程を含む、強皮症の治療または軽減方法。
【請求項34】
無汗性外胚葉性異形成の治療または軽減方法であって、血管新生を刺激するのに有効な量の、VEGF−DまたはVEGF−Dの生物学的活性を有するそのフラグメントまたはアナログを投与する工程を含む、無汗性外胚葉性異形成の治療または軽減方法。
【請求項35】
血管透過性を誘導せずに、内皮細胞の増殖、遊走、生存および分化、および、リンパ脈管形成から選択される、VEGF−Dの少なくとも1つの生物活性を刺激する方法であって、生物活性を刺激する量の完全にプロセシングされたVEGF−Dを投与する工程を含む、VEGF−Dの少なくとも1つの生物活性を刺激する方法。
【請求項36】
配列番号1のアミノ酸配列からなるポリペプチド、または、VEGF−Dの生物学的活性を有するそのフラグメントまたはアナログを、安定に発現する哺乳類の細胞系。
【請求項37】
前記細胞系によって産生されるポリペプチドがエピトープタグに連結している、請求項36に記載の哺乳類の細胞系。
【請求項38】
前記エピトープタグが、FLAG(登録商標)、ヘキサヒスチジン、またはI−SPY(商標)である、請求項37に記載の哺乳類の細胞系。
【請求項39】
前記エピトープタグが、FLAG(登録商標)ペプチドである、請求項37または請求項38に記載の哺乳類の細胞系。
【請求項40】
発現するポリペプチドが、VEGF−D△N△Cである、請求項36〜39のいずれか一項に記載の哺乳類の細胞系。
【請求項41】
293−EBNAヒト胎児性腎臓細胞系である、請求項36〜40のいずれか一項に記載の哺乳類の細胞系。
【請求項42】
VEGF−DFullNFlag、VEGF−DFullCFlag、VEGF−D△N△C、またはVEGF−D△Cを安定に発現する哺乳類の細胞系。
【請求項43】
293−EBNAヒト胎児性腎臓細胞系である請求項42に記載の哺乳類の細胞系。
【請求項44】
VEGF−Dアンタゴニストが、VEGF−Dに特異的に反応するキメラ(chimeric)抗体である請求項17に記載の方法。
【請求項1】
VEGF−D、または、VEGF−Dの生物学的活性を有するそのフラグメントまたはアナログを、安定に発現するヒト細胞系。
【請求項2】
前記細胞系によって産生されるVEGF−Dが、エピトープタグに連結している、請求項1に記載の細胞系。
【請求項3】
前記エピトープタグが、FLAG(登録商標)、ヘキサヒスチジン(hexahistidine)、またはI−SPY(商標)である、請求項2に記載の細胞系。
【請求項4】
293−EBNA胎児性腎臓細胞系である、請求項1、請求項2または請求項3に記載のヒト細胞系。
【請求項5】
発現されるVEGF−Dが、VEGF−DFullNFlag、VEGF−DFullCFlag、VEGF−D△N△C、またはVEGF−D△Cである請求項1〜4のいずれか一項に記載の細胞系。
【請求項6】
VEGF−Dのフラグメントが、配列番号1のアミノ酸配列からなるVEGF−Dの部分である請求項1に記載の細胞系。
【請求項7】
VEGF−Dのフラグメントが、FLAG(登録商標)ペプチドに連結した、配列番号1のアミノ酸配列からなるVEGF−Dの部分である請求項1に記載の細胞系。
【請求項8】
哺乳類の発現ベクターに挿入された、配列番号1のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはVEGF−Dの生物学的活性を有するそのフラグメントまたはアナログをコードするヒトDNA配列を含む発現ベクター。
【請求項9】
前記発現ベクターが、Apex−3である請求項8に記載の発現ベクター。
【請求項10】
前記発現ベクターが、pVDApex△N△Cである請求項8または請求項9に記載の発現ベクター。
【請求項11】
アフィニティータグをコードする配列を含む請求項8または請求項9に記載の発現ベクター。
【請求項12】
前記アフィニティータグが、FLAG(登録商標)、ヘキサヒスチジン(hexahistidine)、またはI−SPY(商標)である請求項11に記載の発現ベクター。
【請求項13】
請求項8〜12のいずれか一項に記載のベクターでトランスフォーム(transform)またはトランスフェクト(transfect)された宿主細胞。
【請求項14】
配列番号1のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはVEGF−Dの生物学的活性を有するそのフラグメントまたはアナログを作る方法であって、宿主細胞中で請求項8または請求項9に記載の発現ベクターを発現させる工程、および、宿主細胞から、または、宿主細胞の増殖培地からポリペプチドを単離する工程、を有する配列番号1のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはVEGF−Dの生物学的活性を有するそのフラグメントまたはアナログを作る方法。
【請求項15】
前記発現ベクターが、アフィニティータグをコードする配列を含むものである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記アフィニティータグが、FLAG(登録商標)、ヘキサヒスチジン、またはI−SPY(商標)である請求項15に記載の方法。
【請求項17】
悪性のメラノーマの治療または軽減方法であって、
メラノーマの付近においてVEGF−Dの発現または活性を阻害するために有効な阻害量(inhibitory amount)のVEGF−Dアンタゴニストを投与する工程を含む、悪性のメラノーマの治療または軽減方法。
【請求項18】
前記VEGF−Dアンタゴニストが、アンチセンス核酸またはVEGF−Dをコードする三本鎖DNAである請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記VEGF−Dアンタゴニストが、VEGF−D変異体ポリペプチドである請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記VEGF−Dアンタゴニストが、VEGF−Dに特異的に反応する、抗体またはそのF(ab’)2、F(ab’)若しくはF(ab)フラグメントを含む組成物である請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記抗体が、モノクローナル抗体、F(ab’)2、F(ab’)、F(ab)フラグメントまたはそのキメラ(chimeric)モノクローナル抗体である請求項20に記載の方法。
【請求項22】
VEGF−Dを発現する腫瘍の治療または軽減方法であって、前記腫瘍の付近において有効な阻害量(inhibitory amount)のVEGF−Dアンタゴニストを投与する工程を含む、VEGF−Dを発現する腫瘍の治療または軽減方法。
【請求項23】
VEGF−Dを発現する腫瘍の治療または軽減方法であって、腫瘍阻害活性を有する毒素または薬剤に結合した(conjugated)有効な阻害量(inhibitory amount)の、VEGF−DまたはVEGF−D受容体結合活性(binding activity)に結合する能力のあるそのフラグメントまたはアナログを投与する工程を含む、VEGF−Dを発現する腫瘍の治療または軽減方法。
【請求項24】
皮膚移植の受け入れ(acceptance)および/または治癒を増強する方法であって、血管新生およびリンパ脈管形成(lymphangiogenesis)を刺激するのに有効な量の、VEGF−DまたはVEGF−Dの生物学的活性を有するそのフラグメントまたはアナログを投与する工程を含む、皮膚移植の受け入れおよび/または治癒を増強する方法。
【請求項25】
皮膚に対する外科または外傷の創傷の治癒を刺激する方法であって、血管新生およびリンパ脈管形成(lymphangiogenesis)を刺激するのに有効な量の、VEGF−DまたはVEGF−Dの生物学的活性を有するそのフラグメントまたはアナログを投与する工程を含む、皮膚に対する外科または外傷の創傷の治癒を刺激する方法。
【請求項26】
VEGF−Dの受容体−結合特異性を調節する方法であって、プロセシングされていないVEGF−Dをコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターを発現させる工程、および、発現されたプロセシングされていないVEGF−Dをプロセシングして、タンパク分解性にプロセシングされた形態のVEGF−Dを産生するために、少なくとも1つのタンパク分解量(proteolytic amount)の酵素を供給する工程、を有する、VEGF−Dの受容体−結合特異性を調節する方法。
【請求項27】
VEGF−Dのタンパク分解フラグメントを作成する方法であって、プロセシングされていないVEGF−Dをコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターを発現させる工程、および、発現されたプロセシングされていないVEGF−Dをプロセシングして、タンパク分解性にプロセシングされたVEGF−Dのフラグメントを産生するために、少なくとも1つのタンパク分解量(proteolytic amount)の酵素を供給する工程、を有する、VEGF−Dのタンパク分解フラグメントを作成する方法。
【請求項28】
生物学的サンプルにおいてVEGF−Dを発現する腫瘍を検出する方法であって、前記サンプルをVEGF−Dに対する特異的結合性試薬に接触させる工程、前記特異的結合性試薬のVEGF−Dに対する結合のために時間を与える工程、および前記結合を検出する工程、を有する、生物学的サンプルにおいてVEGF−Dを発現する腫瘍を検出する方法。
【請求項29】
前記特異的結合性試薬が、第1(first)抗体である請求項28に記載の生物学的サンプルにおいてVEGF−Dを発現する腫瘍を検出する方法。
【請求項30】
前記結合を検出可能な標識を備えた第二抗体によって検出する、請求項29に記載の生物学的サンプルにおいてVEGF−Dを発現する腫瘍を検出する方法。
【請求項31】
リンパ浮腫の治療または軽減方法であって、リンパ脈管形成を刺激するのに有効な量の、VEGF−D、または、VEGF−Dの生物学的活性を有するそのフラグメントまたはアナログを投与する工程を含む、リンパ浮腫の治療または軽減方法。
【請求項32】
乾癬の治療または軽減方法であって、有効な阻害量のVEGF−Dアンタゴニストを投与する工程を含む、乾癬の治療または軽減方法。
【請求項33】
強皮症の治療または軽減方法であって、内皮の増殖を刺激するのに有効な量の、VEGF−DまたはVEGF−Dの生物学的活性を有するそのフラグメントまたはアナログを投与する工程を含む、強皮症の治療または軽減方法。
【請求項34】
無汗性外胚葉性異形成の治療または軽減方法であって、血管新生を刺激するのに有効な量の、VEGF−DまたはVEGF−Dの生物学的活性を有するそのフラグメントまたはアナログを投与する工程を含む、無汗性外胚葉性異形成の治療または軽減方法。
【請求項35】
血管透過性を誘導せずに、内皮細胞の増殖、遊走、生存および分化、および、リンパ脈管形成から選択される、VEGF−Dの少なくとも1つの生物活性を刺激する方法であって、生物活性を刺激する量の完全にプロセシングされたVEGF−Dを投与する工程を含む、VEGF−Dの少なくとも1つの生物活性を刺激する方法。
【請求項36】
配列番号1のアミノ酸配列からなるポリペプチド、または、VEGF−Dの生物学的活性を有するそのフラグメントまたはアナログを、安定に発現する哺乳類の細胞系。
【請求項37】
前記細胞系によって産生されるポリペプチドがエピトープタグに連結している、請求項36に記載の哺乳類の細胞系。
【請求項38】
前記エピトープタグが、FLAG(登録商標)、ヘキサヒスチジン、またはI−SPY(商標)である、請求項37に記載の哺乳類の細胞系。
【請求項39】
前記エピトープタグが、FLAG(登録商標)ペプチドである、請求項37または請求項38に記載の哺乳類の細胞系。
【請求項40】
発現するポリペプチドが、VEGF−D△N△Cである、請求項36〜39のいずれか一項に記載の哺乳類の細胞系。
【請求項41】
293−EBNAヒト胎児性腎臓細胞系である、請求項36〜40のいずれか一項に記載の哺乳類の細胞系。
【請求項42】
VEGF−DFullNFlag、VEGF−DFullCFlag、VEGF−D△N△C、またはVEGF−D△Cを安定に発現する哺乳類の細胞系。
【請求項43】
293−EBNAヒト胎児性腎臓細胞系である請求項42に記載の哺乳類の細胞系。
【請求項44】
VEGF−Dアンタゴニストが、VEGF−Dに特異的に反応するキメラ(chimeric)抗体である請求項17に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図9E】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図9E】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【公開番号】特開2009−159972(P2009−159972A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−46292(P2009−46292)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【分割の表示】特願2000−526237(P2000−526237)の分割
【原出願日】平成10年12月23日(1998.12.23)
【出願人】(500025570)ルードヴィッヒ インスティテュート フォー キャンサー リサーチ (16)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【分割の表示】特願2000−526237(P2000−526237)の分割
【原出願日】平成10年12月23日(1998.12.23)
【出願人】(500025570)ルードヴィッヒ インスティテュート フォー キャンサー リサーチ (16)
【Fターム(参考)】
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