説明

血管内皮機能測定装置

【課題】従来の血管内皮機能計測は、血管内皮機能計測の方式が侵襲的であるか非侵襲的であるかに係わらず、被験者に大きな負担や苦痛をかけるばかりでなく、測定技術の熟練や大掛かりな測定環境を必要とした。
【解決手段】血管への阻血圧や阻血時間を、血圧測定や生体インピーダンス測定から算出される脈波伝播速度により制御するとともに、阻血前後の生体インピーダンス値の変化量及び変化率と脈波伝播速度から血管内皮機能を評価し表示や印字や記録を行なう。また、生体インピーダンス測定部と血圧測定及び阻血部を測定部位に装着する簡素な構成をとる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脈波伝播速度および阻血前後の血管拡張反応を測定することにより動脈硬化の度合いを容易に評価可能な血管機能測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、動脈硬化等の血管疾患の指標として、脈波伝播速度又は脈波速度(Pulse Wave Velocity)が一般的に用いられている。脈波伝播速度は心臓から大動脈に血液を送り出す際に派生した血管壁圧が動脈中を移動する際に発生する波動が血管壁を伝わる早さであり、速くなるほど血管が硬くなっていることを意味する。脈波伝播速度は血管上の2点の脈波及びその伝播時間を測定し、この2点間の距離を伝播時間で除すことにより求められる。
【0003】
これまで、脈波伝播速度測定装置としては、1)心音マイクを用いて取得した心音第2音と、脈波センサを用いて取得した股動脈及び頚動脈の脈波との時間差、並びに脈波センサの距離とから測定を行うもの、2)カフを用いて被験者の四肢の2点を軽度圧迫して測定した動脈の脈波から測定を行うもの、3)超音波センサを用いて2点における血管径変動を測定し、変動波形の相互相関をとることにより脈波速度を求めるもの、4)被験者の血管走行に対して心臓側と末梢側に一対の定電流供給用電極を取り付け、その間に2つ以上の複数の測定用電極を定間隔で取り付け、これら測定用電極から得られる生体インピーダンス波形と電極の間隔から波形の電極対間での伝播時間を求めるもの、が知られている。
【0004】
以上のうち、4)の生体インピーダンス波形から脈波伝播速度を求める方式の一例として、下記特許文献1に示す方式が提唱されている。この方式によれば、被検者の負荷が小さく、しかも簡便な構成により脈波伝播速度が測定できうることを示唆している。
【0005】
また、近年、血管内皮機能という血管の内面を覆っている内皮細胞という単層の細胞の機能(血管の拡がりやすさ)を表す指標が動脈硬化等の血管疾患の指標として認識されるようになってきた。内皮細胞は一酸化窒素(NO)をはじめとする様々な物質を産生しており、これらの物質の産生が減少したり分解が促進されたりすると、血管は拡がりにくくなり、各臓器の血流が低下する。内皮細胞による血管拡張反応は高血圧や加齢、糖尿病などの危険因子により障害されることが報告されている。また、血管内皮機能が障害されると、その障害により動脈硬化が促進されることも報告されている。即ち、血管内皮の機能異常自体が動脈硬化の危険因子になることを示すものとの認識が深まってきている。
【0006】
このことより、内皮細胞による血管拡張反応を測定することで、血管内皮細胞の機能的異常を検出し動脈硬化症の早期病変が容易に発見できるものと考えられている。
【0007】
従来の内皮細胞による血管拡張反応の測定方法としては、カテーテル等を用いた侵襲的方法により冠状動脈内にアセチルコリン等を投与し、冠状動脈血管の拡張反応を検討する方法がとられていた。
【0008】
しかし、このような侵襲的方法では測定に多大な労力が必要であり、また被験者にも大きな負担を強いることになる。このため、FMD(血流依存性血管拡張反応、Flow-Mediated Dilation)法と呼ばれる超音波診断装置を用いた非侵襲的方法が提唱され、内皮細胞による血管拡張反応として上腕動脈の血流依存性血管拡張反応を検討する方法も行われてきている。
【0009】
FMD法による非侵襲的方法は、例えば被験者の腕の所定部位に超音波測定端子を位置決めして配置する。次に安静状態での血管状態を検出し、血管径を検出する。その後前記所定部位の血管を一定時間、例えば5分間阻血する。そして阻血解除後再び測定端子を前述の安静時の血管径測定部位と同一位置に配置した後、阻血解除後所定時間間隔、例えば阻血解除後1分後より1分間隔での測定端子配置位置での血管径を検出する。これら血管径測定結果より、血管の拡張割合を測定する。
【0010】
しかしながら、上記方法ではそれほど太いものではない血管の径の拡張割合を求めなければならず、阻血の前後で超音波測定端子を全く同じ位置に配置しなければ測定の精度を確保できなかった。このため、高精度な検出のためには熟練された技術が必要であった。
【0011】
また高価な超音披診断装置を使用し血管の長軸Bモード像を得るのに熱練を要し、また画像解析装置等を別途利用しなければ血管の計測において客観性あるいは再現性を得ることが難しいなど計測値の信頼性や普及性に問題があった。
【0012】
以上のような問題を解決する方式として、下記特許文献2に示す阻血前後の生体インピーダンスの変化量から血管内皮機能を評価指標とする方式が提唱されている。
【0013】
【特許文献1】特開2006−326334号公報
【特許文献2】特開2000−201930号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、前述の各方式においても、改善の余地があると考えられる。
【0015】
、まず、上述の特許文献1による方式では、脈波伝播速度のみは簡便に測定できるもののこの指標のみで動脈硬化等の血管疾患を判断するには十分であるとは言えず、結局は他の方式での検査や測定の結果を併用しての判断となる。結果として、総検査時間は長くなり作業も煩雑となり、被験者にも負荷を増やすこととなる。
【0016】
また、上述の特許文献2による方式では、装着する電極や測定部が多く実際の測定の際はその準備だけで煩雑となっていた。また、検査期間中の被験者は、超音波測定端子の固定に拘束される神経をつかうばかりでなく、阻血の圧力および阻血時間に耐える必要もあった。FMD法では250mmHgの圧力で5分間阻血するのが一般的であるが、250mmHgの圧力による阻血は高血圧者でない限り3分程度でもかなりの痛みを伴う。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであって、被験者への負荷を抑え、簡素な構成でしかも測定技術の熟練がさほど無くても安定した測定環境を提供できうる、動脈硬化等の血管疾患の指標を評価できる血管機能測定装置を提供することを目的とする。係る目的を達成する一手段として例えば以下の構成を備える。
【0018】
即ち、被検者の手足における所定距離離間した所定部位に装着された第1の生体電極間に所定の定電流を供給する定電流供給手段と、
前記第1の生体電極の間の所定部位に所定距離離間して複数装着された第2の生体電極間の電圧値から生体インピーダンスを測定するインピーダンス測定手段と、
前記複数装着された第2の生体電極間の前記インピーダンス測定手段からそれぞれ脈波を求める脈波測定手段と、
前記脈波測定手段から脈波伝播速度を算出する脈波伝播速度算出手段と、
前記第2の生体電極が装着された前記被験者の手足に巻回されたカフの内圧を加圧するカフ制御手段と、
前記カフ制御手段を制御して血圧値を測定する血圧値測定手段と、
前記カフ制御手段を制御して一定時間、前記血圧値に所定圧を加算した圧力を与えることで一定時間の間阻血する阻血する阻血制御手段と、
前記阻血の前と前記一定時間の阻血を解除した後のそれぞれにおける前記生体インピーダンス及びその変化量から、前記阻血前後における前記第2の生体電極間における血管径に相当する値の変化量及び変化率を算出すると同時に、前記阻血の前と前記一定時間の阻血を解除した後のそれぞれにおける前記脈波伝播速度の変化量及び変化率を算出し、前記変化量及び変化率を血管内皮機能の評価指標とする評価指標出力手段と
を備えたことを特徴とする血管内皮機能測定装置を提供するものである。
【0019】
そして例えば、前記カフの内側に、所定距離離間した前記第1の生体電極と、前記第1の生体電極間に所定距離離間した前記複数の第2の生体電極の生体電極とが装着されている血管内皮機能測定装置を提供するものである。
【0020】
また例えば、前記阻血制御手段が、前記脈拍数検出手段により求められた脈拍数に応じて前記カフ内圧ないし加圧時間を制御する血管内皮機能測定装置を提供するものである。
【0021】
また例えば、前記阻血制御手段が、前記脈波伝播速度算出手段により求められた脈波伝播速度に応じて前記カフ内圧の加圧時間を制御する血管内皮機能測定装置を提供するものである。
【0022】
また例えば、前記演算制御手段が、前記生体インピーダンスの変化量及び変化率と前記脈波伝播速度の変化量及び変化率を、前記阻血解除後、所定時間毎に複数回測定し、当該複数回の測定結果に基づいて算出した複数の血管内皮機能評価指標を、当該比の時間変化を表示する血管内皮機能測定装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0023】
上述したように本発明の血管内皮機能測定装置では、従来の血管内皮機能計測が有している問題点を解決しようとするものであり、阻血前後の生体インピーダンス値の変化量及び変化率や脈波伝播速度で血管内皮機能の評価を行なうとともに、血圧測定や脈波伝播速度により阻血圧や阻血時間を制御することにより、血管の阻血前後の血管状態を、測定技術の熟練がさほど無くても計測および指標の評価が可能となるものである。
【実施例】
【0024】
以下、図面と共に本発明による血管内皮機能測定装置の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0025】
図1は、本発明に係る発明の実施例である実施例1aおよび実施例1bの血管機能測定装置の基本構成を説明する図、図2は実施例1aにおける被験者に対する検出部の装着状態を説明するための図、図3は実施例1bにおける被験者に対する検出部の装着状態を説明するための図である。
【0026】
図1において、10は実施例1aおよび実施例1b装置の全体の制御を司る演算制御部であり、詳細を後述する阻血前後比較部12と脈波伝播速度算出部13を内蔵している。演算制御部10は、操作部15からの操作で制御可能である。また、演算制御部10は、表示部16,記録部17,保存部18,通信部19,その他を制御可能である。
【0027】
内蔵する阻血前後比較部12は、各種の計測値、計測結果を阻血前後で比較し、診断指標を演算するものであり、例えば阻血前後のインピーダンス変化率の比較などを行うことができる。そして、これら指標より血管機能の評価指標を導出して結果を表示部16に表示したり、記録部17に記録出力したり、保存部18に保存したり、通信部19を介して外部装置と結果を通信することが可能である。
【0028】
また内蔵する脈波伝播速度算出部13は、電圧電極41,42,43によって測定した生体インピーダンス値及び電圧電極間の距離から、脈波伝播速度を求めるものである。そして算出された脈波伝播速度の結果を阻血前後比較部12へ渡すとともに、表示部16に表示したり、記録部17に記録出力したり、保存部18に保存したり、通信部19を介して外部装置と結果を通信することが可能である。
【0029】
20は血圧計測及び阻血制御部であり、血圧測定/阻血用カフ22の加圧、計測制御を行って被験者の例えば阻血前の血圧と脈拍数の測定及び前腕の阻血を行う。
【0030】
血圧計測及び阻血制御部20はまた、通常の血圧測定装置の有する各構成、例えば、カフ内圧を検出する圧力センサ、カフ22のゴム嚢23を加圧する加圧ポンプ、カフ内圧を定速度で減圧して例えば血圧測定などを行うための定速排気弁、阻血解除の場合など急速にカフ内圧を減圧するための急速排気弁、最高血圧値、脈拍数を決定する血圧決定部等を包含する。これらの構成については公知であるため詳細説明を省略する。
【0031】
30は定電流電極31,32間に所定周波数の定電流を供給可能な定電流供給部であり、例えば約60kHzの信号を発振する発振回路と定電流源とを包含している。40は定電流供給部30の供給する定電流電極31,32間に装着される電圧電極41,42,43のインピーダンス値(生体インピーダンス)を検出するインピーダンス変換部である。電圧電極41,42,43には、材質や電気抵抗や皮膚との接触性が安定した素材を用いることが望ましい。
【0032】
電圧電極41,42,43間に定電流電極31,32から微小高周波電流を流すと、それぞれの電極間に存在する組織のインピーダンスに比例した電圧が検出される。上腕や下肢などのように他の臓器などが無い部分では、電圧電極41,42,43間で検出されるインピーダンスは主に心臓から拍出される血液に影響されることになる。この生体インピーダンスの変化を時系列方向で考えたものが、インピーダンス容積脈波となる。
【0033】
また、15は装置の各種設定や計測の開始、終了、中止などを制御する操作部、16は計測結果や診断指標、測定の操作説明などを表示可能な表示部、17は計測結果や診断指標を記録出力可能な記録部、18は計測結果や診断指標を保存する保存部である。19は外部のコンピュータなどの機器に計測結果や診断指標を通信により出力する通信部であり、通信部19を介して保存部18よりも大容量の記憶媒体へ計測結果や診断指標を記録できる。
【0034】
以上の構成を備える実施例1aおよび実施例1bにおいて、被験者への電極やカフの装着方法を図2および図3を参照して説明する。
【0035】
定電流電極31,32を被験者に装着する部位、すなわち被験者の測定部位については、被験者の体中で阻血が可能でかつ血管が最も単純に配置している部位、例えば下肢や上腕に所定距離離間して装着することが望ましい。ここでは、上腕部を測定部位とする場合を例として説明する。
【0036】
図2に示す実施例1aは、上腕部の肩寄りの部分に上腕部に定電流電極31、前腕部寄りに定電流電極32を装着する。また、上腕部に血圧測定/阻血用カフ22を装着し、定電流電極31と血圧測定/阻血用カフ22の間に電圧電極41を、血圧測定/阻血用カフ22と定電流電極32の間に電圧電極42と電圧電極43を装着する例である。
【0037】
なお、測定部位については、前記例で示した腕部に限らず、下肢をはじめとする他の部位を利用してもよい。また、例えば上腕部に血圧測定/阻血用カフ22を装着し、前腕部の上腕寄りに定電流電極31、手首寄りに定電流電極32、更に定電流電極31,32の間に電圧電極41,42,43を装着しても同様の測定が可能である。
【0038】
図2に示す本実施の形態において、インピーダンス測定時には定電流電極31,32に所定周波数の定電流を印加する。
【0039】
そしてこの両方の定電流電極31,32間に、電圧電極41,42,43を装着する。電圧電極41,42の離間距離を所定距離L1の間隔、電圧電極42,43の離間距離を所定距離L2の間隔に、それぞれ位置決めして固定する電圧電極固定治具45を介して装着する。なお、この電極の装着方法は電圧電極固定治具45及び電極41,42,43が離脱しない方法であれば任意の方法を採用できる。
【0040】
電圧電極固定治具35を用いて電圧電極42,43の離間距離を所定距離L2[cm]に位置決めして固定するのは、電圧電極41を基準とした電圧電極42,43での生体インピーダンスの計測データから脈波伝播速度を求めるためである。例えば、電圧電極42で得られた生体インピーダンスの計測データの波形のピークからs1[sec]後に電圧電極43で得られた生体インピーダンスの計測データに波形のピークが現れたときの脈波伝播速度Vpwv1[cm/sec]は
Vpwv1=L2/s1[cm/sec]
となる。
【0041】
また、電圧電極固定治具35を用いて電圧電極41,42の離間距離を所定距離L1に、電圧電極42,43の離間距離を所定距離L2に位置決めして固定するもう一つの理由は、阻血前後での測定結果の相対比較を容易にして正確に微細な変動を検出するためである。これにより、被験者が代わったり計測日時が変わっても、離間距離が一定であるため、定量的な計測結果が得られる。
【0042】
また、図3に示す実施例1bの形態を用いてもよい。図4は図3に示す実施例1bで用いる血圧測定/阻血用カフ22の内側(被験者への装着面側)の構造図である。血圧測定/阻血用カフ22の、カフ巻付け周方向の両辺縁寄りに定電流電極31,32をそれぞれ配し、これらから一定間隔だけ離れた箇所に電圧電極41と電圧電極43をそれぞれ配する。また、電圧電極41,42の離間距離を所定間隔L1、電圧電極42,43の離間距離を所定間隔L2の間隔になるようにそれぞれ配する。定電流電極31,32及び電圧電極41,42,43には、可曲性の素材を用いることが望ましい。この構造をとれば、図3に示すように、血圧測定/阻血用カフ22を測定部位(ここでは上腕部)に装着するだけで測定準備が完了するばかりでなく、電圧電極41,42の間隔がL1、電圧電極42,43の間隔がL2に常に一定であるため、定量的な計測結果が得られる。
【0043】
以上のような本実施の形態例の血管内皮機能測定方法を、図5のフローチャートを参照して以下に説明する。
【0044】
本実施の形態例においては、まず図5の処理S1において、図2または図3に示すように電極およびカフを被験者の所定部位に装着する。装着が終了すると処理S2に移行し、演算制御部10は血圧計測及び阻血制御部20を起動して被験者の血圧測定、特に最高血圧値と脈拍数の測定を行う。
【0045】
この測定結果を保存部18に保存するとともに、表示部16に表示させる。また、必要に応じて通信部19に出力する。
【0046】
なお、医師などによる手動での血圧測定を行うような場合には、処理S2の血圧測定を行った後に、処理S1の電極やカフの装着を行っても良い。
【0047】
続いて処理S3に進み、阻血前の血管状態の計測処理として、所定時間生体インピーダンスの測定を行う。ここでは、インピーダンス変換部40により電圧電極41,42間の生体インピーダンスの計測データを取得する。
【0048】
このデータ取得結果を保存部18に保存し表示部16に時間軸上に描画した脈波インピーダンスグラフを表示させるとともに、脈波伝播速度算出部13で求めた脈波伝播速度も保存部18に保存する。また、必要に応じて通信部19に出力する。
【0049】
次に、処理S4において、演算制御部10は血圧計測及び阻血制御部20を起動して血圧測定/阻血用カフ22を加圧し被験者の上腕部で所定時間阻血する。本実施例では、カフ内圧を処理S2で測定した最高血圧値より約30〜50mmHg程度高い圧力に約3分間維持する。
【0050】
なお、阻血時の被験者への負担軽減のため、阻血に用いる圧力および阻血時間を、例えば処理S2で測定した最高血圧値や脈拍数に応じて調節してもよい。
【0051】
また、十分な阻血が可能であれば、阻血時間および阻血の圧力を一定にしてもよい。この場合、前記処理S2は省略でき、被験者への時間的負担を軽減できる。
【0052】
続いて処理S5において、所定時間経過後(本実施の形態例では約3分後)に演算制御部10が血圧計測及び阻血制御部20を制御して内蔵する不図示の急速開放弁を起動して血圧測定/阻血用カフ22の内圧を急速に減圧して阻血状態を解除する。そして処理S6に進む。
【0053】
処理S6では阻血解除後、所定時間生体インピーダンスの測定を処理S3と同様に、計測データを取得し、データ取得結果を保存部18に保存し表示部16に時間軸上に描画した脈波インピーダンスグラフを表示させるとともに、脈波伝播速度算出部13で求めた脈波伝播速度も保存部18に保存する。また、必要に応じて通信部19に出力する。
【0054】
そして、計測終了後、あるいは計測中に、処理S7において、処理S3での計測データと処理S6での計測データを阻血前後比較部12で演算することによって血管内皮機能の状態を逐一計測し、例えば変化量がより大きい場合には血管内皮機能状態がより良いと判断して血管内皮機能の状態識別の指標として例えば表示部16に表示し、記録部17より記録出力する。また、必要に応じて保存部18に保存したり通信部19に出力したりする。
【0055】
そして処理S8において、所定の時間、あるいは計測回数、あるいは血管内皮機能の評価に十分と思われる計測データが採取できたかどうかの判断を行ない、いずれの条件も満たさない場合は処理S6に戻り、いずれかの条件を満たした場合は処理S9に進む。
【0056】
そして最後に処理S9において、以上の計測、解析結果に基づいた血管内皮機能の評価を必要に応じて行う。
【0057】
上記本実施の形態例の計測が、電圧電極41,42,43間のインピーダンスの変化に基づいて行われるため、血流量の変化計測も容易に行うことができる。
【0058】
以上に説明したように本発明によれば、被験者への負荷を抑え、しかも簡素な構成で測定技術の熟練がさほど無くても安定した測定環境を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明に係る一発明の実施の形態例の血管内皮機能測定装置の構成を説明するための図である。
【図2】本実施の形態例1aの電極およびカフの装着状態を説明するための図である。
【図3】本実施の形態例1bのカフ(図4で図示する)の装着状態を説明するための図である。
【図4】本実施の形態例1bにおけるカフの構造図を説明するための図である。
【図5】本実施の形態例の血管内皮機能測定手順を説明するためのフローチャート図である。
【符号の説明】
【0060】
10・・・・・・・・・演算制御部
12・・・・・・・・・阻血前後比較部
13・・・・・・・・・脈波伝播速度算出部
15・・・・・・・・・操作部
16・・・・・・・・・表示部
17・・・・・・・・・記録部
18・・・・・・・・・保存部
19・・・・・・・・・通信部
20・・・・・・・・・血圧計測及び阻血制御部
22・・・・・・・・・血圧測定/阻血用カフ
23・・・・・・・・・ゴム嚢
30・・・・・・・・・定電流供給部
31,32・・・・・・定電流電極
40・・・・・・・・・インピーダンス変換部
41,42,43・・・電圧電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の手足における所定距離離間した所定部位に装着された第1の生体電極間に所定の定電流を供給する定電流供給手段と、
前記第1の生体電極の間の所定部位に所定距離離間して複数装着された第2の生体電極間の電圧値から生体インピーダンスを測定するインピーダンス測定手段と、
前記複数装着された第2の生体電極間の前記インピーダンス測定手段からそれぞれ脈波を求める脈波測定手段と、
前記脈波測定手段から脈波伝播速度を算出する脈波伝播速度算出手段と、
前記第2の生体電極が装着された前記被験者の手足に巻回されたカフの内圧を加圧するカフ制御手段と、
前記カフ制御手段を制御して血圧値を測定する血圧値測定手段と、
前記カフ制御手段を制御して一定時間、前記血圧値に所定圧を加算した圧力を与えることで一定時間の間阻血する阻血する阻血制御手段と、
前記阻血の前と前記一定時間の阻血を解除した後のそれぞれにおける前記生体インピーダンス及びその変化量から、前記阻血前後における前記第2の生体電極間における血管径に相当する値の変化量及び変化率を算出すると同時に、前記阻血の前と前記一定時間の阻血を解除した後のそれぞれにおける前記脈波伝播速度の変化量及び変化率を算出し、前記変化量及び変化率を血管内皮機能の評価指標とする評価指標出力手段と
を備えたことを特徴とする血管内皮機能測定装置。
【請求項2】
被験者の手足における所定距離離反した所定部位に装着された第1の生体電極間に所定の定電流を供給する定電流供給手段と、
前記第1の生体電極の間の所定部位に所定距離離間して複数装着された第2の生体電極間の電圧値から生体インピーダンスを測定するインピーダンス測定手段と、
前記複数装着された第2の生体電極間の前記インピーダンス測定手段からそれぞれ脈波を求める脈波測定手段と、
前記脈波測定手段から脈波伝播速度を算出する脈波伝播速度算出手段と、
前記第2の生体電極が装着された前記被験者の手足に巻回されたカフの内圧を加圧するカフ制御手段と、
前記カフ制御手段を制御して一定時間、一定圧力を与えることで一定時間の間阻血する阻血制御手段と、
前記阻血の前と前記一定時間の阻血を解除した後のそれぞれにおける前記生体インピーダンス及びその変化量から、前記阻血前後における前記第2の生体電極間における血管径に相当する値の変化量及び変化率を算出すると同時に、前記阻血の前と前記一定時間の阻血を解除した後のそれぞれにおける前記脈波伝播速度の変化量及び変化率を算出し、前記変化量及び変化率を血管内皮機能の評価指標とする評価指標出力手段と
を備えたことを特徴とする血管内皮機能測定装置。
【請求項3】
前記カフの内側に、所定距離離間した前記第1の生体電極と、前記第1の生体電極間に所定距離離間した前記複数の第2の生体電極とが装着されている請求項1または請求項2に記載の血管内皮機能測定装置。
【請求項4】
前記阻血制御手段が、前記脈拍数検出手段により求められた脈拍数に応じて前記カフ内圧の加圧時間を制御する請求項1から請求項3に記載の血管内皮機能測定装置。
【請求項5】
前記阻血制御手段が、前記脈波伝播速度算出手段により求められた脈波伝播速度に応じて前記カフ内圧の加圧時間を制御する請求項1から請求項3に記載の血管内皮機能測定装置。
【請求項6】
前記演算制御手段が、前記生体インピーダンスの変化量及び変化率と前記脈波伝播速度の変化量及び変化率を、前記阻血解除後、所定時間毎に複数回測定し、当該複数回の測定結果に基づいて算出した複数の血管内皮機能評価指標を、当該比の時間変化を表示することを特徴とする請求項1から請求項5に記載の血管内皮機能測定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−388(P2009−388A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−165665(P2007−165665)
【出願日】平成19年6月22日(2007.6.22)
【出願人】(592144939)株式会社パラマ・テック (26)
【Fターム(参考)】