血管形成関連疾患の治療および管理のための材料および方法

【課題】血管形成関連疾患の治療および管理のための材料および方法の提供。
【解決手段】病的血管形成および異常血管新生の部位を治療するのに適した材料および方法が本明細書で開示される。病的血管形成または異常血管新生の部位は、病的血管形成または異常血管新生の領域の表面を、またはそれらの領域の隣接面もしくは近傍の表面を埋入可能な材料と接触させることによって治療されうる。埋入可能な材料は、生体適合性マトリックスおよび細胞を含み、罹患部位を治療するのに効果的な量である。組成物は、屈曲性の平面材料または流動性組成物でありうる。本発明の治療に感受性を持つ病気には、例えば、黄斑変性症、関節リウマチ、乾癬、乾癬性関節炎、全身性炎症疾患、および外科的切除、放射線療法または化学療法による腫瘍の治療が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(関連出願データ)
この本出願は、2006年11月7日に出願された米国仮特許出願第60/857,458号、2006年12月19日に出願された米国仮特許出願第60/875,626号、2007年4月17日に出願された米国仮特許出願第60/923,836号、および2007年4月30日に出願された米国仮特許出願第60/967,029号の、米国特許法第119条(e)の下での利益を請求する。これらの各々の全内容は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(発明の背景)
血管形成は、既存の脈管構造から新たな血管が成長するプロセスであり、固形腫瘍癌の切除をはじめとする創傷および外科的処置に由来する自然治癒プロセスに含まれる。異常血管新生は、病的血管形成とは異なるもので、下記で説明するように、黄斑変性症、関節リウマチ、乾癬、乾癬性関節炎、およびその他の関節炎状態および全身性炎症疾患をはじめとする様々な急性および慢性疾患の状態の発生および持続に含まれる。
【0003】
例えば、加齢性黄斑変性症、角膜血管新生、およびその他の眼の新生血管疾患、例えば増殖性糖尿病網膜症、未熟児網膜症、スティーブンス・ジョンソン症候群、瘢痕性類天疱瘡、角膜同種移植拒絶反応、および感染または外傷による角膜の損傷は、低酸素環境および制御されていない炎症を受けての新血管の異常成長、不適切に制御された漏出性の血管を特徴とする。治療しないまま放置した場合、これらの病気は全ての年齢層における失明の主要な原因である。例えば加齢性黄斑変性症では、異常血管新生は、網膜下出血、中心窩内の視細胞下への液体の蓄積、および網膜の外側の神経細胞の死をもたらす。もしも治療しないまま放置すると、異常な新生血管プロセスは通常、中心窩下の瘢痕形成および失明につながる。
【0004】
滑膜血管新生は、関節リウマチの発病および持続化における重要な初期段階と考えられている。異常血管新生は、炎症性パンヌスの発達に不可欠であり、これがなければ白血球の浸潤は起こりえない。さらに、新たな血管の形成によって栄養素および酸素が増加した炎症細胞集塊へ供給されるようになり、そのようにして滑膜炎の持続化の一因となる。
【0005】
関節リウマチは、免疫系の関節への攻撃を引き起こす慢性の炎症性自己免疫疾患であると伝統的に考えられている。これは、身体に障害を引き起こし、痛みを伴う炎症性の状態であり、疼痛および関節破壊による運動機能の実質的な喪失につながる可能性がある。関節リウマチは全身性疾患であり、しばしば、皮膚、血管、心臓、肺、および筋肉をはじめとする全身の関節外組織を冒す。関節リウマチ患者の約60%は、病気の発症から10年間は働くことができない。
【0006】
血管新生は、乾癬および乾癬性関節炎両者における一次的なイベントであると思われる。爪の病気がない乾癬患者の爪郭の血管形態の異常が観察されるだけでなく、乾癬性関節炎の関節組織において滑膜血管数の増加が観察される。乾癬性関節炎、または関節症性乾癬は炎症性関節炎の一種である。乾癬および乾癬性関節炎は相互に関連する疾患であるものの、乾癬性関節炎は、独自の疫学的、臨床的、および遺伝的特徴を有する特徴的な病態である。この疾患は、慢性の皮膚病態である乾癬に苦しむ人々の約5〜7%を冒す。関節の炎症を引き起こすだけでなく、乾癬性関節炎は、腱炎および指炎の原因となりうる。さらに、乾癬性関節炎患者の80%以上は、爪の陥没を特徴とする乾癬性爪病変を有する、またはもっとひどければ爪自体が失われる。乾癬性関節炎はあらゆる年齢において発現しうる。しかし、平均して乾癬の最初の徴候から約10年後に現れる傾向がある。患者の大多数では、これは30歳〜50歳であるが、小児も冒すことがある。乾癬性関節炎の現在の治療は、関節リウマチのそれと同様である。
【0007】
重要な血管形成関連疾患は癌である。癌は、米国においては2番目に多い死亡原因であり、全死亡数の5分の1以上の原因である。固形腫瘍の外科的切除、ならびに癌細胞を死滅させるための放射線療法、アブレーション、および化学療法をはじめとする癌を治療するための様々な方法が知られているが、癌細胞の局所再発および切除部位または治療部位における局所の損傷または疾患は癌患者の治療において今なお大きな課題となっている。外科的切除は、体の他の部位への転移の徴候を示さない限局性疾患を治療するための最大の機会を意味するものである。残念ながら、外科的切除治療を受けた癌患者の最大で40%に病気の再発が起こる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
血管形成関連病態および疾患ならびに血管新生関連病態および疾患に対する現在の治療は限られている。治療選択は、年齢、健康、および病態の重篤度によって変わる。本発明の目的の1つは、異常血管新生および病的血管形成の部位の治療のための方法および材料を提供することであり、罹患部位または治療部位の治癒を局所的に誘導することが目標である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、細胞および生体適合性マトリックスを有する埋入可能な材料が、異常血管新生部位または病的血管形成部位に局所的に提供された場合、罹患組織または治療組織もしくは間質を治療するために、および/または罹患部位または治療部位における病的血管またはその他の組織の増殖または再増殖を防ぐために、その部位における異常なまたは病的な血管形成、炎症、細胞外マトリックスの分解、および/またはMMP発現および/または活性化を防ぐ、低下させる、または阻害することができるという発見を活用する。本明細書で開示されるように、細胞、好ましくは内皮細胞、内皮細胞様の発現型を有する細胞、上皮細胞、上皮細胞様の発現型を有する細胞、非内皮細胞またはそのアナログを有する埋入可能な材料は、その材料が罹患した構造または治療された構造の表面に、またはその内部に設置された場合、異常血管新生または病的血管形成の部位を防ぐ、治癒させる、治療する、または管理するために使用されうる。この発見によって、これまでに治療選択肢が限られていた病変組織の治療において臨床医が処置を行うことが可能となる。
【0010】
本発明の一態様は、その治療が必要な個体において病的血管形成の部位を治療する方法であり、この方法は、血管新生の領域の表面を、またはそれに隣接するもしくは近傍にある表面を埋入可能な材料と接触させるステップを有し、前述の埋入可能な材料は、生体適合性マトリックスおよび細胞を有し、さらに前述の埋入可能な材料は、前述の個体において病的血管形成の部位を治療するのに効果的な量である。
【0011】
さらなる実施形態によれば、生体適合性マトリックスは、屈曲性の平面材料または流動性組成物である。細胞は、内皮細胞、内皮細胞様細胞、上皮細胞、上皮細胞様細胞、または非内皮細胞でありうる。
【0012】
各種実施形態によれば、埋入可能な材料は、病的血管形成の部位における細胞外マトリックスの分解を調節する、または病的血管形成の部位におけるMMPの発現および/または活性化を調節する。一実施形態によれば、病的血管形成の部位は、腫瘍切除部位である。
【0013】
別の態様において、本発明は、異常血管新生の部位の治療または管理に適した組成物であり、この組成物は、生体適合性マトリックスおよび細胞を有し、前述の組成物は、異常血管新生の部位を治療するまたは管理するのに効果的な量である。
【0014】
さらなる実施形態によれば、生体適合性マトリックスは、屈曲性の平面材料または流動性組成物である。流動性組成物は付着ペプチドをさらに有することができ、細胞は付着ペプチド上にまたは付着ペプチドに生着している。細胞は、内皮細胞、内皮細胞様細胞、上皮細胞、上皮細胞様細胞、または非内皮細胞でありうる。
【0015】
各種実施形態によれば、組成物は、病的血管形成の部位における細胞外マトリックスの分解を調節する、または病的血管形成の部位におけるMMPの発現および/または活性化を調節する。
【0016】
本発明の別の態様は、その治療を必要とする個体において、異常血管新生の部位を治療する方法であり、この方法は、異常血管新生の領域の表面と、またはそれと隣接するまたは近傍の表面と埋入可能な材料を接触させるステップを有し、前述の埋入可能な材料は、生体適合性マトリックスおよび細胞を有し、さらに前述の埋入可能な材料は、前述の個体における異常血管新生の部位を治療するのに効果的な量である。
【0017】
さらなる実施形態によれば、生体適合性マトリックスは、屈曲性の平面材料または流動性組成物である。細胞は、内皮細胞、内皮細胞様細胞、上皮細胞、上皮細胞様細胞、または非内皮細胞でありうる。
【0018】
各種実施形態によれば、埋入可能な材料は、異常血管新生の部位における細胞外マトリックスの分解を調節する、または異常血管新生の部位におけるMMPの発現を調節する。
【0019】
各種実施形態によれば、異常血管新生の部位は、黄斑変性症の部位、関節リウマチの部位、乾癬の部位、乾癬性関節炎の部位、または別の全身性炎症疾患の部位である。
【0020】
別の態様において、本発明は、異常血管新生の部位の治療または管理に適した組成物であり、この組成物は、生体適合性マトリックスおよび細胞を有し、前述の組成物は、異常血管新生の部位を治療するまたは管理するのに効果的な量である。
【0021】
さらなる実施形態によれば、生体適合性マトリックスは、屈曲性の平面材料または流動性組成物である。流動性組成物は付着ペプチドをさらに有することができ、細胞は付着ペプチド上にまたは付着ペプチドに生着している。細胞は、内皮細胞、内皮細胞様細胞、上皮細胞、上皮細胞様細胞、または非内皮細胞でありうる。
【0022】
各種実施形態によれば、組成物は、異常血管新生の部位における細胞外マトリックスの分解を調節する、または異常血管新生の部位におけるMMPの発現および/または活性化を調節する。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
その治療が必要な個体において、病的血管形成の部位を治療する方法であって、該方法は、病的血管形成の部位の表面、またはその部位に隣接するもしくは近傍にある表面に埋入可能な材料を接触させるステップを含み、
該埋入可能な材料は、生体適合性マトリックスおよび細胞を含み、
さらに該埋入可能な材料は、該個体における該病的血管形成の部位を治療するのに効果的な量である、方法。
(項目2)
前記生体適合性マトリックスは、屈曲性の平面状材料である、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記生体適合性マトリックスは、流動性組成物である、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記細胞は、内皮細胞、内皮細胞様細胞、上皮細胞、上皮細胞様細胞、または非内皮細胞である、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記埋入可能な材料は、前記病的血管形成の部位における細胞外マトリックスの分解を調節する、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記埋入可能な材料は、前記病的血管形成の部位におけるMMPの発現を調節する、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記埋入可能な材料は、前記病的血管形成の部位における炎症の兆候を調節する、項目1に記載の方法。
(項目8)
前記病的血管形成の部位は、腫瘍切除または放射線療法の部位である、項目1に記載の方法。
(項目9)
病的血管形成の部位の治療または管理に適した組成物であって、該組成物は、生体適合性マトリックスおよび細胞を含み、
該組成物は該病的血管形成の部位を治療するまたは管理するのに効果的な量である、組成物。
(項目10)
前記生体適合性マトリックスは、屈曲性の平面状材料である、項目9に記載の組成物。
(項目11)
前記生体適合性マトリックスは、流動性組成物である、項目9に記載の組成物。
(項目12)
前記流動性組成物は付着ペプチドをさらに含み、前記細胞は該付着ペプチド上または該付着ペプチド中に生着している、項目11に記載の組成物。
(項目13)
前記細胞は、内皮細胞、内皮細胞様細胞、上皮細胞、上皮細胞様細胞、または非内皮細胞である、項目9に記載の組成物。
(項目14)
前記組成物は、前記病的血管形成の部位における細胞外マトリックスの分解を調節する、項目9に記載の組成物。
(項目15)
前記組成物は、前記病的血管形成の部位におけるMMPの発現を調節する、項目9に記載の組成物。
(項目16)
その治療を必要とする個体において、異常血管新生の部位を治療する方法であって、該方法は、異常血管新生の部位の表面またはその部位に隣接するまたは近傍にある表面に埋入可能な材料を接触させるステップを含み、
該埋入可能な材料は、生体適合性マトリックスおよび細胞を含み、
さらに該埋入可能な材料は、該個体における前記異常血管新生の部位の治療に効果的な量である、方法。
(項目17)
前記細胞は、内皮細胞、内皮細胞様細胞、上皮細胞、上皮細胞様細胞、または非内皮細胞である、項目16に記載の方法。
(項目18)
前記異常血管新生の部位は、黄斑変性症、角膜血管新生、増殖性糖尿病網膜症、未熟児網膜症、スティーブンス・ジョンソン症候群、瘢痕性類天疱瘡、および角膜同種移植拒絶反応からなる群から選択される眼の新血管性疾患の部位である、項目16に記載の方法。
(項目19)
前記異常血管新生の部位は、関節リウマチの部位または滑膜血管新生の部位である、項目16に記載の方法。
(項目20)
前記異常血管新生の部位は、乾癬または乾癬性関節炎の部位である、項目16に記載の方法。
(項目21)
前記異常血管新生の部位は、全身性炎症疾患の部位である、項目16に記載の方法。
(項目22)
異常血管新生の部位の治療または管理に適した組成物であって、
該組成物は、生体適合性マトリックスおよび細胞を含み、
該組成物は該異常血管新生の部位を治療するまたは管理するのに効果的な量である、組成物。
(項目23)
前記生体適合性マトリックスは、屈曲性の平面状材料である、項目22に記載の組成物。
(項目24)
前記生体適合性マトリックスは、流動性組成物である、項目22に記載の組成物。
(項目25)
前記流動性組成物は付着ペプチドをさらに含み、該細胞は該付着ペプチド上または該付着ペプチド中に生着している、項目24の組成物。
(項目26)
前記細胞は、内皮細胞、内皮細胞様細胞、上皮細胞、上皮細胞様細胞、または非内皮細胞である、項目22に記載の組成物。
(項目27)
前記組成物は、前記異常血管新生の部位における細胞外マトリックスの分解を調節する、項目22に記載の組成物。
(項目28)
前記組成物は、前記異常血管新生の部位におけるMMPの発現を調節する、項目22に記載の組成物。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1A】本発明の例示的な実施形態による代表的な細胞増殖曲線である。
【図1B】本発明の例示的な実施形態による代表的な細胞増殖曲線である。
【図2A】本発明の埋入可能な材料による治療を行った、および行わなかったマトリゲルマトリックス中のHUVECによる、in vitro血管形成の写真を示す。
【図2B】馴化培地または埋入可能な材料の投与後の、マトリゲルマトリックス中のHUVECの血管形成または血管密度のレベルのグラフ表示である。
【図3】3日目および1ヶ月目における、埋入可能な材料の治療を受けた対象およびコントロール材料を投与された対象の染色組織切片中の、MMP‐2の発現のグラフ表示である。
【図4】3日目および1ヶ月目における、埋入可能な材料で治療を受けた対象およびコントロール材料を投与された対象の染色組織切片中の、MMP‐9の発現のグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書で説明されるように、本発明は、腫瘍切除の部位を含む病態における病的血管形成の作用を治療し、治癒させ、改善し、管理し、および/または低下させるために、細胞に基づいた治療が使用されうるという発見に基づいている。この細胞に基づいた治療は、罹患部位ならびに周囲組織および間質における、黄斑変性症、関節リウマチ、乾癬および乾癬性関節炎、ならびにその他の関節性および全身性炎症病態はじめとする症状における、異常血管新生の作用を治療し、治癒させ、改善し、管理し、および/または低下させるためにも使用されうる。
【0025】
本明細書で使用されるように、語句、血管形成は、正常な治癒プロセスの際に起こるように、損傷または病気の部位において新たな血管が形成されるまたは増殖するプロセスを意味する。本明細書で使用されるように、語句、病的血管形成は、損傷または病気の部位において異常なおよび/または望ましくない血管が形成されるプロセスを意味する。従って、埋入可能な材料は、病的血管形成を防ぐおよび/または治療するために、病気の発症、外科的手技もしくは処置の前にまたはその際に、あるいは破壊的な処置として好ましくは投与される。
【0026】
本明細書で使用されるように、語句、異常血管新生は、特定の急性および慢性の病気および疾患の発症時に起こるような、血管の病的なまたは異常な発生および増殖の結果を意味する。これは病的血管形成とは異なる。本発明は、血管の異常な内部増殖の恒久的な構築を低下させるまたは防ぐのに有用である。本発明の組成物が、異常な密度の血管を支援しない限局性の環境をもたらすことが意図される。例えば、血管が特定の部位内へと成長してよいとしても、本発明は、最終的に特定の部位に恒久的に存在するものを制限するまたは調節する。従って、埋入可能な材料は、好ましくは、異常血管新生を治療するために、病気もしくは疾患の出現または発症、あるいは外科的手技または処置の後に投与される。しかし、本発明は、破壊的な処置として、および/または病態が悪化するのを防ぐために効果的に使用されうる。
【0027】
以下に示される教示は、本発明の材料および方法を作製し使用するのに十分なガイダンスを提供し、さらに本発明の材料および方法の性能をテスト、測定、およびモニタリングするのに適した基準および対象を確認するのに十分なガイダンスを提供する。
【0028】
黄斑変性症
異常血管新生は、加齢性黄斑変性症、増殖性糖尿病網膜症、および未熟児網膜症の新生血管形態をはじめとする多くの眼の病気で起こる。治療しないまま放置すると、これらの病気は、乳幼児(未熟児網膜症)、労働年齢の成人(増殖性糖尿病網膜症)、および高齢者(加齢性黄斑変性症)における失明の主要な原因となる。血管新生、特に様々な眼の病気に付随して起こるものは、低酸素環境を受けて誘導されることが多い。しかし、これらの病気における異常新血管は不適切に調節され漏出性であり、従って異常新血管は、病気のプロセスを補正または補うよりも、病気の基礎をなす病理に寄与する。
【0029】
滲出型または“湿潤”型の加齢性黄斑変性症では、異常新血管は、網膜下出血、中心窩内の視細胞の下側への液体の蓄積、および網膜の外側の神経細胞の死をもたらす。治療しないまま放置されると、異常新血管プロセスは通常、中心窩下部の瘢痕形成に終わる。未熟児網膜症の未熟児では、網膜血管は未発達で、異常な漏出性新血管が網膜の無血管領域へ成長していく。重篤な未治療の症例では、異常新血管は硝子体内へと成長し、網膜剥離および失明につながる。糖尿病では、網膜組織に対する、過剰なブドウ糖の直接的な効果と、虚血および低酸素が恐らく関わっている間接的な効果は、ともに異常血管新生誘導の原因であると考えられている。従って、これらの眼科病態のそれぞれに関しては、論理的な治療戦略は、本発明の埋入可能な材料を使用して病的血管形成および異常な新血管の形成を調節することである。
【0030】
本発明の埋入可能な材料は、加齢性黄斑変性症、増殖性糖尿病網膜症、未熟児網膜症、角膜血管新生、例えばスティーブンス・ジョンソン症候群、瘢痕性類天疱瘡、角膜同種移植拒絶反応、および感染または外傷による角膜損傷に付随する臨床的後遺症を治療、改善、管理、および/または軽減するために、眼および/または周囲組織および間質に投与されることができ、その部位における異常血管新生を阻害または低下させることができる。
【0031】
関節リウマチ
関節リウマチは、炎症性の侵食性滑膜炎を特徴とする慢性の全身性疾患である。滑膜の初期の変化は、異常血管新生、炎症性細胞浸潤、および付随する滑膜細胞の過形成が特徴であり、炎症性血管組織のパンヌスをもたらす。このパンヌスは、関節軟骨を覆って浸潤し、最終的には関節破壊を引き起こす。異常血管新生は、関節リウマチにおけるパンヌス発達の基本要素と認識されており、滑膜中の局所性の内皮細胞増殖およびのアポトーシスはともにエビデンスである。本発明の埋入可能な材料は、関節リウマチに付随する臨床的後遺症を治療、改善、管理、および/または軽減するために関節リウマチの部位および/または周囲組織および間質に投与されてよく、その部位における異常血管新生を阻害または低下させる。
【0032】
乾癬および乾癬性関節炎
乾癬性関節炎、または関節症性乾癬は炎症性関節炎の一種である。乾癬と乾癬性関節炎は血管新生を特徴とする相互に関連する疾患であるが、乾癬性関節炎は、それ独自の疫学的、臨床的、および遺伝的特徴を持つ特徴的な病態である。この病気は、慢性皮膚病態である乾癬に苦しむ人々の約5〜7%を冒す。関節の炎症を引き起こすだけでなく、乾癬性関節炎は腱炎および指炎の原因となりうる。さらに、乾癬性関節炎患者の80%以上が、爪の陥没が特徴の乾癬性爪病変を有する、またはもっとひどければ爪自体が失われる。爪の病気がない乾癬患者の爪郭の血管形態の異常が観察されるだけでなく、乾癬性関節炎の関節組織における滑膜血管数の増加が観察されている。
【0033】
本発明の埋入可能な材料は、乾癬および乾癬性関節炎に付随する臨床的後遺症を治療、改善、管理、および/または軽減するために乾癬または乾癬性関節炎の部位および/または周囲組織および間質に投与されてよく、その部位における異常血管新生を阻害または低下させる。
【0034】
全身性炎症性病態
関節リウマチ、乾癬、および乾癬性関節炎に加えて、全身性の炎症性病態または自己免疫性病態も含まれ、例えば、全身性硬化症(強皮症)、全身性エリテマトーデス、多発性筋炎/皮膚筋炎、シェーグレン症候群、混合結合組織病、および全身性血管炎がある。これらの全身性炎症性疾患では、白血球が脈管を通って病変組織へ遊走する。これらの炎症性疾患に認められた異常血管新生の増加は、組織への白血球の血管外遊走をさらに持続させ、これが炎症性疾患をさらに進行させる。
【0035】
病的血管形成、および全身性炎症性病態または自己免疫性病態をはじめとする異常血管新生を特徴とする病気の転帰は、新生血管メディエーターと抑制物質の間の均衡または不均衡に依存する。例えば関節リウマチでは、新生血管刺激物質は新生血管抑制物質より過剰に存在する。この均衡をリセットするために、例えば本発明の埋入可能な材料を投与することによって、異常血管新生が抑制される必要がある。本発明の埋入可能な材料は、病的血管形成、全身性炎症性疾患または自己免疫性疾患に付随する臨床的後遺症を治療、改善、管理、および/または軽減するために異常血管新生の部位および/または周囲組織および間質に投与されてよく、その部位の、またはその部位の付近の異常血管新生を阻害または低下させる。
【0036】
腫瘍切除
腫瘍切除は、固形腫瘍を患者から外科的に取り除くことである。腫瘍の大きさとその部位に応じて、各種実施形態によれば、開放性の外科的手技または低侵襲外科的手技、例えば、腹腔鏡下の外科的手技で腫瘍切除が実施される。さらなる実施形態によれば、腫瘍の治療手技には、腫瘍細胞を死滅させるための放射線療法、熱または光アブレーション療法、または化学療法が含まれる。本発明の目的では、切除部位は、腫瘍または腫瘍細胞の治療または除去のための限局性療法の対象となるありとあらゆる部位を含むことが意図される。従って、切除部位は、外科的切除、放射線療法、アブレーション療法、および/または化学療法の対象となる部位を含むがこれらに限定されない。
【0037】
外科的切除の場合は、腫瘍の切除に続いて、元は腫瘍をとり囲んでいた組織がポケットまたは切除部位を作る。放射線、アブレーション、または化学療法の場合、腫瘍細胞は切除部位に一時的に残っている可能性がある。しかし、放射線、アブレーション、および化学療法は、局所腫瘍細胞を死滅させるだけでなく、周囲組織および間質にも損傷を与える。従って、切除部位は、炎症、細胞外マトリックスの分解、病的血管形成、および特定の腫瘍の種類における切除端における腫瘍細胞の再増殖および/または腫瘍細胞の転移をはじめとする各種の臨床的後遺症になりやすい。
【0038】
さらに、腫瘍、従って切除部位は、高度に血管新生が起こっている場合が多い。切除部位への外傷は、病的血管形成、細胞外マトリックスの分解、および切除部位の破壊に付随するその他の臨床的後遺症につながることがある。本発明の埋入可能な材料は、腫瘍切除部位への外傷に付随する臨床的後遺症を治療、改善、管理、および/または軽減するために、切除部位および/または周囲組織および間質に投与されてよく、その部位における病的血管形成を阻害または低下させる。切除部位における病的血管形成は、腫瘍細胞の再増殖および/または転移に必要である。従って、病的血管形成の抑制は、腫瘍の再増殖または転移を阻害および/または制限する。
【0039】
さらに、間質をはじめとする腫瘍の微小環境は、腫瘍の再増殖および転移を制御する上で重要な因子である。間質は、線維芽細胞、筋線維芽細胞、グリア細胞、上皮細胞、単球、マクロファージ、好中球、およびリンパ球を含む免疫細胞、血管内皮細胞および平滑筋細胞をはじめとする各種の細胞を、細胞外マトリックスおよび細胞外分子と一緒に有する。多くの場合、それらが腫瘍細胞に近接しているおよび/またはそれらが互いに相互作用しあうことから、間質の細胞は、腫瘍細胞との接触の際に、または腫瘍細胞と接触した後に、異常な表現型または変化した機能を獲得する。本発明の埋入可能な材料は、間質の破壊および/または異常表現型に付随する臨床的後遺症を治療、改善、管理、および/または軽減するために腫瘍間質および/または周囲組織に投与されうる。
【0040】
本発明の埋入可能な材料を外科的または臨床的治療の部位に、またはその部位に隣接して設置すると、処置に付随する軽度のおよび急性の炎症の軽減のみならず、病的血管形成病態に付随する炎症を軽減、遅延、または阻害するのに効果的である。さらに、埋入可能な材料は、罹患した構造または治療された構造のMMP発現および/または活性化、細胞外マトリックスの分解、および病的血管形成も低下させる。
【0041】
マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)は、細胞外マトリックスタンパク質を分解することによる、損傷後の周囲組織からの損傷部位への細胞の遊走に必要である。活性化筋線維芽細胞はマトリックス分解活性を有し、これはMMPとそれらの内因性阻害物質である組織性マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害物質(TIMP)のネットバランスによって調節される。TIMPは、活性化MMPおよびそれらの不活性前駆体であるプロMMPの両方と結合することができる。Nagase,H.,et al.“Matrix Metalloproteinases”J Biol Chem 274(31):21491‐21494(1999)を参照されたい。MMPのアップレギュレーションとTIMPのダウンレギュレーションは、組織損傷後のネガティブな組織リモデリングと同時に起こる。例えば、MMPの外膜での発現は、AVグラフトモデルにおける血管損傷後に増加し、新生内膜への線維芽細胞の遊走を促進する。Whatling,C.et
al.,“Matrix Management:Assigning Different Roles for MMP‐2 and MMP‐9 in Vascular Remodeling”Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.24:10‐11(2004)およびGalis,Z.S.et al.,“Matrix Metalloproteinases in Vascular Remodeling and Atherogenesis:The Good,the Bad,and the Ugly”Circ.Res.90:251‐262(2002)を参照されたい。
【0042】
本発明の埋入可能な材料は、MMPを阻害するためおよび/またはMMPとそれらの阻害物質TIMPのタンパク質分解バランスを回復させるため、罹患部位または治療部位における異常血管の増殖および/または再増殖を抑制するために、罹患部位または治療部位、間質および/または周囲組織に投与されてよい。異常血管増殖の阻害は、初期の腫瘍または癌幹細胞に供給されうる栄養素の供給を低下させ、腫瘍の増殖、あらゆる残存腫瘍細胞の転移、および/または癌幹細胞の成熟、分化、および/または増殖を防ぐ。本発明の細胞を含有する埋入可能な材料の投与は、コントロール材料の投与と比較して、罹患した構造および治療された構造におけるMMPの発現および病的血管形成を低下させる。
【0043】
病的血管形成は、腫瘍切除後に不注意により残存した腫瘍細胞の増殖を助けるのに必要である。本発明の埋入可能な材料は、切除部位における病的血管形成を阻害して、それによって初期の腫瘍または癌幹細胞への栄養素の供給を阻害し、腫瘍の増殖、あらゆる残存腫瘍細胞の転移、および/または癌幹細胞の成熟、分化、および/または増殖を防ぐために、切除部位、間質、および/または周囲組織および間質に投与されうる。
【0044】
コンフルエントな内皮細胞は、MMPの発現、血管形成、および血管新生を協同して調節する様々な生物学的物質を放出する。生体適合性マトリックス材料内部に播種して、コンフルエンスになるまで培養液中で増殖させた内皮細胞を、治療を必要とする対象に埋入することができ、これはありとあらゆる内皮細胞阻害性化合物を産生する。コンフルエントな内皮細胞を含む本発明の埋入可能な材料は、損傷に対する多様な生物学的反応を標的することができる。対照的に、単独の化学的物質の投与は、単独のイベントにしか応答できない。埋入可能な材料中の内皮細胞は、ヘパラン硫酸プロテオグリカン、TGF‐β、およびTIMP‐2を分泌し、ほぼ全てのTIMPは、堅固な1:1の阻害性複合体をMMPと形成し、それらはそれ自体が血管形成を阻害することも知られている。埋入可能な材料中の内皮細胞は、一酸化窒素(NO)も分泌する。他の研究では、eNOSをトランスフェクトされたラット平滑筋細胞において、NOもMMP活性を低下させ、TIMP分泌を増加させることが示されている。MMP活性の低下とTIMP分泌の増加は、血管形成の阻害と相関する。内皮細胞は、MMP発現および/または活性化、細胞外マトリックスの分解、血管形成および血管新生を協同して減少させ、次いで病的血管形成または異常血管新生の部位を治療、治癒、および/または管理するために、ヘパラン硫酸、TGF‐β、TIMP‐2、およびNOを含む全ての内皮細胞由来化合物を送達することができる。
【0045】
従って、炎症、MMPの発現および/または活性化、および細胞外マトリックスの分解を管理することを含む、病的血管形成、異常血管新生、およびある病態に罹患した部位を臨床的に管理するための、および/またはその病態を取り除くまたは縮小するための治療のための細胞に基づいた治療が開発された。本発明の例示的な実施形態は、本明細書で説明される治療パラダイムと一緒に使用するのに適した生体適合性マトリックスおよび細胞を有する。
【0046】
本明細書で使用されるように、MMP活性に適用されるような語句“阻害”は、MMP酵素(1つ以上)の生物学的活性のレベルの変化を定義することを目的とする。故に、調節は、MMP活性の低下に影響を与える生理学的変化を包含する。阻害は、直接または間接的に生じてよく、あらゆる機構によって、あらゆる生理学的レベル、例えば遺伝子発現のレベルにおいて(例えば、転写、翻訳、および/または翻訳後修飾を含む)、MMP活性のレベルに対して直接または間接的に作用する調節因子をコードする遺伝子の発現のレベルにおいて、または酵素活性のレベル(例えば、アロステリック機構、競合阻害、活性部位の不活性化、フィードバック阻害経路の混乱などによって)において仲介されてよい。故に、MMPの阻害は、転写レベルにおける、1つ以上のMMPをコードする遺伝子(1つ以上)の発現抑制または低発現、および/または翻訳レベルにおける発現の低下を意味してよい。MMP活性に関連する語句“阻害された”および“阻害する”は、これに従って解釈されるものである。
【0047】
本明細書で使用されるように、あらゆる生理学的プロセス(例、組織リモデリング)、病気、状態、病態、療法または治療の文脈においてMMPまたはTIMPに関連して使用されるような語句“仲介された”は、各種プロセス、病気、状態、病態、療法、または治療が、MMPまたはTIMPが生物学的役割を果たすものとなるように、限定的に機能することを目的としている。MMPまたはTIMPによって果たされる生物学的役割は、直接又は間接的なものであってよく、病気、状態、または病態の発現(またはその原因または進行)に必要および/または十分であってよい。
【0048】
本発明の埋入可能な材料は、生体適合性マトリックス上、マトリックス中、および/またはマトリックス内に生着している細胞を有する。生着している、は、本明細書で開示される準備操作の厳しさに細胞が耐えられるように、細胞と細胞および/または細胞とマトリックスの相互作用を介してしっかりと結合していることを意味する。本明細書の他の箇所で説明されるように、埋入可能な材料の操作的な実施形態は、好ましい発現型を有するほぼコンフルエントな、コンフルエントな、またはコンフルエント後の細胞集団を有する。埋入可能な材料の実施形態では準備操作の最中に細胞が剥がれやすい、および/または特定の細胞は他の細胞ほどにはしっかりと結合していないことが理解される。必要なのは、本明細書に記載される機能または表現型の基準を満たす細胞を、埋入可能な材料が有することだけである。
【0049】
本発明の埋入可能な材料は、組織工学の原理に基づいて開発され、上述の臨床的ニーズに対応するための新規なアプローチを示す。本発明の埋入可能な材料は、生体適合性マトリックス上、マトリックス中、および/またはマトリクス内に生着している生存細胞が、生理学的フィードバック制御のもと、生理学的割合の多数の細胞に基づいた生成物を罹患部位に供給できるという点においてユニークである。本明細書の他の箇所で説明されるように、埋入可能な材料と一緒に使用するのに適した細胞は、内皮細胞、内皮様細胞、上皮細胞、上皮様細胞、非内皮細胞、またはこれらの細胞種のいずれかの機能的アナログである。これらの細胞による多数の化合物の局所送達および生理学的に動的な投与は、罹患部位の維持および治癒、部位への血管供給の低下、従って病的細胞の再増殖、病的血管形成、または病的徴候の再発現の原因となるプロセスのより効果的な調節をもたらす。本発明の埋入可能な材料は、罹患部位、間質、または周囲組織と接触すると、恒常性を再構築するように働く。すなわち、本発明の埋入可能な材料は、支持的な生理機能を模倣し、最適なレベルの血管密度の促進および維持を導く環境を提供することができる。
【0050】
本発明の目的では、接触する、は、本明細書の他の箇所で定義されるように、直接的または間接的に内面または外面と相互作用することを意味する。特定の好ましい実施形態の場合は、有効性にとって実際の物理的接触は必要ではない。他の実施形態において、実際の物理的接触が好ましい。本発明を実施するのに必要なのは、罹患した部位または間質を治療するのに効果的な量で、罹患部位または治療部位もしくは間質において、それらに隣接して、またはそれらの近傍に埋入可能な材料をデポジットすることだけである。
【0051】
例えば、内皮細胞は、病的血管形成、異常血管新生、および病的血管形成および異常血管新生の外科的なまたはその他の治療後の急性合併症に付随する有害な生理学的イベントを協同して阻害または軽減できる様々な物質を放出しうる。本明細書で例示されるように、正常な生理機能を再現する組成物および使用法および投与は、罹患したまたは治療された構造の安定化を高めるのに有用である。典型的には、治療は、罹患部位または治療部位に、またはこれらと隣接してまたは近傍に、例えば目の内部、関節内、乾癬病変面、または間質と接している切除手技の際に作られた切除部位の内部間隙内に本発明の埋入可能な材料を設置するステップを含む。デポジットされた場合、またはその他の方法で罹患部位または治療部位と接触する場合、埋入可能な材料の細胞は、その部位、例えばその部位内部の下層の間質細胞に増殖調節性化合物を提供できる。隣接部位に設置された場合、埋入可能な材料の細胞は、周囲組織を透過してその部位へと到達できる多数の調節性化合物を絶え間なく供給することが意図される。
【0052】
本発明の好ましい実施形態による治療は、正常またはほぼ正常な治癒および正常な生理機能を促進しうる。逆に、本発明の好ましい実施形態による治療がない場合は、正常な生理学的治癒は低下し、例えば、MMPの発現および活性化の増加は、有害な臨床的結果、例えば炎症、病的血管形成、異常血管新生、腫瘍再増殖および/または転移をもたらしうる。従って、本明細書で意図されるように、本発明の埋入可能な材料を使用した治療は、治療部位における天然組織の治癒を高める。
【0053】
一実施形態によれば、埋入可能な材料は、罹患部位における黄斑の治癒を助け、促進するために、眼の隣接外面または内側の硝子体内部に適用される。黄斑変性症および黄斑変性症を治療するための外科的処置は、黄斑および眼の部分の細胞、およびその周囲の細胞および組織を破壊し、炎症、異常血管新生、および/または黄斑変性症および黄斑変性症を治療するための外科的処置に起因するその他の臨床的後遺症を含むがこれらに限定されない細胞応答を誘導する可能性がある。治療時における、黄斑変性の部位、間質、または周囲組織への埋入可能な材料の投与は、臨床的後遺症の発生を低下させ、治療部位の治癒を促進することができる。
【0054】
別の実施形態によれば、埋入可能な材料は、罹患部位における罹患した靭帯、腱、または関節包の骨への結合の治癒を助け、促進するために、関節の内部腔または関節の隣接外面に適用される。関節リウマチおよび乾癬性関節炎および/または関節炎構造を治療するための処置は、関節炎部位周囲の細胞および組織を破壊し、炎症、異常血管新生、細胞外マトリックスの分解、および/または関節炎または外科的処置に起因するその他の臨床的後遺症を含むがこれらに限定されない細胞応答を誘導する可能性がある。治療時における、関節炎部位、間質、または周囲組織への埋入可能な材料の投与は、臨床的後遺症の発生を低下させ、治療部位の治癒を促進することができる。
【0055】
さらなる実施形態によれば、罹患部位における罹患した皮膚の治癒を促進するために、乾癬病変の部位の、またはその部位に隣接する皮膚面に埋入可能な材料が適用される。本実施形態によれば、治療期間中の材料の有効性を維持するために、包帯または他の障壁が好ましくは埋入可能な材料上に適用される。乾癬は、乾癬病変部のおよびその隣接部の表皮細胞および皮膚組織層を破壊し、炎症、異常血管新生、細胞外マトリックスの分解、および/またはその他の臨床的後遺症を含むがこれらに限定されない細胞応答を誘導する可能性がある。治療時における、乾癬病変部位、間質、または周囲組織への埋入可能な材料の投与は、臨床的後遺症の発生を低下させ、治療部位の治癒を促進することができる。
【0056】
別の実施形態によれば、切除腔を支持し、切除部位の周囲の組織および切除端部の組織の治癒を促進するために、腫瘍切除後に罹患部位または治療部位に埋入可能な材料が適用される。腫瘍を切除するための外科的処置は、腫瘍切除部位の周囲の細胞および組織を破壊し、炎症、病的血管形成、細胞外マトリックスの分解、および/または外科的切除に起因するその他の臨床的後遺症を含むがこれらに限定されない細胞応答を誘導する可能性がある。切除時の、切除直後の、または切除後しばらく経ってからの切除部位、間質、または周囲組織への埋入可能な材料の投与は、臨床的後遺症の発生を低下させ、切除部位の治癒を促進することができる。
【0057】
一実施形態によれば、埋入可能な材料は、血管組織の制御された増殖および/または移動を促進および/または回復できる。黄斑変性症、関節リウマチおよび乾癬性関節炎、乾癬、ならびに腫瘍は、制御されていない細胞増殖を助けるために、罹患部位における病的血管形成または異常血管新生を誘導および/または促進する。従って、腫瘍部位、従って切除部位は高度に血管化した組織である。血管化した腫瘍の切除は必然的に、切除された腫瘍を支える脈管への外傷および/または損傷につながる。脈管の外傷には、破壊された脈管構造の炎症、血栓、狭窄、および/または線維化が含まれるがこれらに限定されない。破壊された脈管構造と接するまたは隣接する切除部位における埋入可能な材料の投与は、脈管外傷に付随する臨床的後遺症の発生を低下させ、病的血管形成を阻害することができる。
【0058】
本発明のさらなる実施形態によれば、正常な周囲組織を腫瘍細胞から分離するためおよび/または外科的切除の際に除去された腫瘍細胞による不慮のコンタミネーションによる周囲組織および間質または隣接臓器への病気の広がりを防ぐために、埋入可能な材料が腫瘍の除去の前に切除部位に適用される。一実施形態によれば、例えば切除手技用の手術部位を準備するためおよび/または切除手技の最中に起こりうる腫瘍細胞の脱落から周囲組織を保護するために、腫瘍の切除の前に埋入可能な材料が投与される。別の実施形態によれば、例えば切除された腫瘍の付近からの脱落した腫瘍細胞の移動を少なくし、腫瘍細胞の転移の可能性を低下させるため、埋入可能な材料が腫瘍の切除に続いて投与されうる。
【0059】
本発明の各種実施形態によれば、埋入可能な材料は、膀胱、骨、脳、乳房、頚部、大腸、食道、胆嚢、腎臓、喉頭、肝臓、肺、口腔、卵巣、膵臓、前立腺、胃、睾丸、または甲状腺の腫瘍を含むがこれらに限定されない様々な切除腫瘍部位に適用される。
【0060】
本発明の目的では、本発明の埋入可能な材料を使用した治療は、処置時にまたはその後の段階で行われるかどうかに関係なく、罹患した構造または治療された構造に隣接するように、またはその近傍に埋入可能な材料が設置された場合に、全身性炎症性病態および病的血管形成病態ならびに関連処置によく見られる症状および合併症、例えば炎症、凝固、および/または副静脈の増殖が低下するように、有益な恒常性環境を提供すると考えられている。
【0061】
本発明の埋入可能な材料は、数多くの特徴的な段階のいずれかにおいて、治療された構造に提供されうる。全体的な治癒を早めるためだけでなく、治療された部位を臨床的に安定した状態に保つために、最初の外科的処置の最中に、またはその後で埋入可能な材料が提供されうる。最初の治療時だけでなく、それ以降の時点においても埋入可能な材料が使用されうる(例えば、外科手技後の治療部位を維持するために)ことが意図される。後からの投与は、外科的に、または非侵襲的に行われうる。
【0062】
本発明の材料および方法は、上述の条件のいずれか、または多くの他の治療または維持処置と共同で使用されうる。さらに、本発明の材料および方法は、外科的な成果を向上させ、治癒を促進するために手術を必要とするあらゆる処置と共同で使用されうる。本発明の材料および方法は、有効性を高めて治癒を促進するために、これらと、またはその他の手術と一緒に使用されうる。
【0063】
埋入可能な材料
一般的事項:本発明の埋入可能な材料は、生体適合性マトリックス上、マトリックス中、またはマトリックス内に生着している細胞を有する。生着している、は、本明細書で開示される準備操作の厳しさに細胞が耐えられるように、細胞と細胞および/または細胞とマトリックスの相互作用を介してしっかりと結合していることを意味する。本明細書の他の箇所で説明されるように、埋入可能な材料の操作的な実施形態は、好ましい発現型を有するほぼコンフルエントな、コンフルエントな、またはコンフルエント後の細胞集団を有する。埋入可能な材料の実施形態では、準備操作中に細胞が剥がれやすいことおよび/または特定の細胞は他の細胞ほどにはしっかりと結合していないことが理解される。必要なのは、本明細書に記載される機能または表現型の基準を満たす細胞を埋入可能な材料が有することだけである。
【0064】
本発明の埋入可能な材料は組織工学の原理に基づいて開発され、上述の臨床的ニーズに対応するための新規なアプローチを示す。本発明の埋入可能な材料は、生体適合性マトリックス上、中、および/または内に生着している生存細胞が、生理学的フィードバック制御のもと、生理学的割合で多数の細胞に基づいた生成物を切除部位に供給できるという点においてユニークである。本明細書の他の箇所で説明されるように、埋入可能な材料と一緒に使用するのに適した細胞には、内皮細胞、内皮様細胞、上皮細胞、上皮様細胞、非内皮細胞、またはこれらの細胞種のいずれかの機能的アナログが含まれる。生理学的に動的な投与におけるこれらの細胞による多数の化合物の局所送達は、全身性炎症性病態に付随する症状の低下、病的血管形成、機能的な切除構造の維持、切除に付随する臨床的後遺症の低下に関与するプロセスのより効果的な調節をもたらす。
【0065】
本明細書において、表面は、切除端における、またはそのような構造の周囲の組織内にある、眼、関節、皮膚、切除構造の外面、眼、関節、皮膚、または切除構造の内面であってよいことが意図される。本発明の目的では、表面は、罹患したまたは治療された構造における、またはそれらに隣接するあらゆる構成成分である。
【0066】
本発明の埋入可能な材料は、デポジットされた場合、またはその他の方法で罹患部位もしくは治療部位または周囲組織と接触する場合に、恒常性を再構築するように働く。すなわち、本発明の埋入可能な材料は、支持的な生理機能を模倣し、治療の部位の治療または維持を導く環境を提供できる。
【0067】
本発明の目的では、接触する、は、本明細書の他の箇所で定義されるように、直接的または間接的に罹患構造の外面または内面と相互作用することを意味する。特定の好ましい実施形態の場合、有効性に実際の物理的接触は必要ではない。他の実施形態において、実際の物理的接触が好ましい。本発明を実施するのに必要なのは、部位を治療するのに効果的な量で、罹患部位に、その部位に隣接するように、またはその部位の近傍に埋入可能な材料を外側または内側にデポジットすることだけである。
【0068】
内皮細胞は、例えば、全身性炎症性病態、病的血管形成病態、異常血管新生病態、または腫瘍切除に起因する、急性および慢性の合併症に付随する有害な生理学的イベントを協同して阻害または軽減できる様々な物質を放出しうる。本明細書で例示されるように、組成物および正常な生理機能を再現する組成物の使用方法ならびに投与は、そのような病態を治療し維持するのに有用である。典型的には、治療は、罹患部位に、罹患部位に隣接して、または罹患部位の近傍に、例えば、切除された腫瘍によってそれまで占有されていた間隙に、または間質と直接接触する間隙に本発明の埋入可能な材料を設置するステップを含む。罹患部位にデポジットされた場合、またはその他の方法で罹患部位と接触する場合、埋入可能な材料の細胞は調節性の化合物を罹患部位に提供できる。罹患部位と接触している間は、生着している細胞を含む生体適合性マトリックスまたは粒子を有する本発明の埋入可能な材料は、多数の調節性化合物を細胞から絶え間なく供給することが意図される。
【0069】
細胞供給源:本明細書で説明されるように、本発明の埋入可能な材料は細胞を有する。細胞は、同種のもの、異種のもの、または自系のものであってよい。特定の実施形態において、生存細胞の供給源は、適当なドナーから得ることができる。特定のその他の実施形態において、細胞の供給源は、死体から、または細胞バンクから得ることができる。
【0070】
現在好ましい一実施形態において、細胞は内皮細胞である。特に好ましい実施形態において、そのような内皮細胞は、血管組織、限定されないが好ましくは動脈組織から得られる。以下に例示するように、使用に適した血管内皮細胞の一種は、大動脈内皮細胞である。使用に適した血管内皮細胞のもう1つの種類は、臍帯静脈内皮細胞である。そして、使用に適したもう1つの血管内皮細胞の種類は、冠動脈内皮細胞である。使用に適したさらに別の種類の血管内皮細胞は、伏在静脈内皮細胞である。本発明との使用に適したさらに他の種類の血管内皮細胞は、肺動脈内皮細胞および腸骨動脈内皮細胞を含む。
【0071】
現在好ましい別の実施形態において、適当な内皮細胞は、非血管組織から入手できる。非血管組織は、あらゆる解剖学的構造、組織、または臓器から入手できる。非血管組織は、治療の対象となるあらゆる組織の種類から入手できる。非血管性の解剖学的構造には、腎臓系、生殖器系、泌尿生殖器系、消化管系、肺系、呼吸器系、および脳および脊髄の脳室系の構造が含まれる。
【0072】
さらに別の実施形態において、内皮細胞は、内皮前駆細胞または幹細胞から入手できる。さらに別の実施形態において、内皮細胞は、前駆細胞または幹細胞から広く入手できる。他の好ましい実施形態において、細胞は、同種、異種、または自系のものである非内皮細胞であってよく、血管または非血管組織または臓器から入手できる。細胞は、それらの組織起源および/またはそれらの免疫原性に基づいて選択されうる。例示的な非内皮細胞は、上皮細胞、平滑筋細胞、線維芽細胞、幹細胞、内皮前駆細胞、心筋細胞、分泌細胞および線毛細胞を含む。本発明は、遺伝的に組み換えされ、改変され、または操作される、あらゆるこれらの細胞も意図する。
【0073】
さらなる実施形態において、本発明の組成物を調整するために2つ以上の種類の細胞が一緒に培養される。例えば、第1の細胞が生体適合性の埋入可能な材料に導入され、コンフルエントになるまで培養される。第1の細胞種は例えば、分泌細胞、平滑筋細胞、軟骨細胞、線維芽細胞、幹細胞、内皮前駆細胞、平滑筋細胞と線維芽細胞の組み合わせ、その他任意の細胞種、または内皮細胞の成長を誘導する環境を作るのに適した所望の細胞種の組み合わせを含みうる。第1の細胞種がコンフルエンスに達した後、生体適合性マトリックス中、マトリックス上、またはマトリックス内のコンフルエントな第1の細胞種の上に第2の細胞種が播種され、第1の細胞種と第2の細胞種が両方ともコンフルエンスに達するまで培養される。第2の細胞種は例えば、内皮細胞またはその他任意の所望の細胞種もしくは細胞種の組み合わせを含んでよい。第1および第2の細胞種が段階的に、または単一のミクスチャーとして導入されうることが意図される。平滑筋細胞の内皮細胞に対する比率を変化させるように、細胞密度が変更されてよいことも意図される。
【0074】
平滑筋細胞または過剰増殖する傾向がある別の細胞種の過剰な増殖を防ぐために、培養手順を変更することができる。例えば、第1の細胞種がコンフルエンスに達した後、第2の細胞種の導入の前に、第2の細胞種に適した接着因子で培養液をコーティングすることができる。例示的な接着因子は、内皮細胞の接着を高めるためのゼラチンによる培養液のコーティングを含む。別の実施形態によれば、第1の細胞種の増殖を低下させ、所望の第1の細胞種対第2の細胞種の比率を最適化するために、第2の細胞種の培養中に、培養培地にヘパリンが添加されうる。例えば、平滑筋細胞がまず増殖した後に、内皮細胞の平滑筋細胞に対する割合をより大きくするために、平滑筋細胞の増殖を制御する目的でヘパリンが投与されうる。
【0075】
好ましい実施形態において、構造、限定されないが例えば治療部位の大きさおよび/または形状を模倣する構造を作るために、生体適合性の埋入可能な材料にまず平滑筋細胞を播種することによって共同培養液が作製される。平滑筋細胞がコンフルエンスに達したところで、模擬構造を作るために、埋入可能な材料上の培養された平滑筋細胞上に内皮細胞が播種される。
【0076】
本組成物の細胞に必要なのは、1つ以上の好ましい表現型または機能的性質をそれらが示すことだけである。本明細書で既に説明したように、本発明は、好ましいマトリックス(本明細書の別の箇所で説明)と結合した場合、容易に特定可能な表現型を有する細胞は、罹患した構造全般の治療に関連する細胞生理および/または細胞もしくは組織の恒常性を促進、回復、および/または他の方法で調節できるという発見に基づいている。
【0077】
本発明の目的では、本発明の細胞に典型的なそのような好ましく、容易に特定可能な1つの表現型は、下記で説明するin vitroアッセイによって測定されるように、平滑筋細胞の増殖および/または移動を阻害する、またはその他の方法で妨げる能力である。本明細書では、これを阻害性の表現型と呼ぶ。
【0078】
本組成物の細胞によって示される容易に特定可能なその他の表現型の1つは、それらが抗血栓性であること、または血小板の接着および凝集を阻害できるということである。抗血栓活性は、下記で説明するin vitroヘパラン硫酸アッセイおよび/またはin
vitro血小板凝集アッセイを使用して決定されうる。
【0079】
本組成物の細胞によって示される容易に特定可能な別の表現型は、タンパク質分解バランス、MMP‐TIMPバランスを回復する能力、TIMPの発現に対してMMPの発現を低下させる能力、またはMMPの発現に対してTIMPの発現を増加させる能力である。タンパク質分解バランス活性は、下記で説明するin vitro TIMPアッセイおよび/またはin vitro MMPアッセイを使用して決定されうる。
【0080】
本組成物の細胞によって示される容易に特定可能なさらなる表現型は、血管形成を阻害する能力である。血管形成活性は、下記で説明するin vitro マトリゲルアッセイを使用して決定されうる。
【0081】
本発明の典型的な実施的実施形態において、上述の表現型の2つ以上を細胞が示す必要はない。特定の実施形態において、細胞は上述の表現型の2つ以上を示しうる。
【0082】
上述の表現型はそれぞれ、機能内皮細胞、限定されないが例えば血管内皮細胞の特徴を表すが、本発明の目的では、そのような表現型(1つ以上)を示す非内皮細胞は内皮細胞様であると考えられ、故に本発明との使用に適している。内皮細胞様である細胞は、本明細書では内皮細胞の機能的アナログ、または内皮細胞の機能的模倣体とも呼ばれる。従って、一例にすぎないが、本明細書で開示される材料および方法との使用に適した細胞は、内皮細胞様細胞をもたらす幹細胞または前駆細胞、非内皮細胞起源であるものの、本明細書に記載のパラメーターを使用して機能的に内皮細胞のようにふるまう細胞、本明細書に記載のパラメーターを使用して、内皮細胞様の機能性を有するように操作されたまたはその他の方法で改変されたあらゆる起源の細胞も含む。
【0083】
典型的には、コンフルエントな、ほぼコンフルエントな、またはコンフルエント後の集団中に存在し、本明細書の別の箇所で説明するような好ましい生体適合性マトリックスと結合している場合、本発明の細胞は前述の表現型の1つ以上を示す。当業者には理解されるように、コンフルエントな、ほぼコンフルエントな、およびコンフルエント後の細胞集団は様々な技術によって容易に特定可能であり、その中で最も一般的で広く受け入れられているのは、顕微鏡での直接的な検査である。その他のものには、標準的な細胞計数技術、限定されないが例えば、血球計または粒度測定器を使用した表面積当たりの細胞数の評価が含まれる。
【0084】
さらに、本発明の目的では、内皮様細胞には、本明細書に記載のパラメーターによって測定されるように、コンフルエントな、ほぼコンフルエントな、コンフルエント後の内皮細胞を機能的および表現型としてまねるまたは模倣する細胞が含まれるがこれらに限定されない。
【0085】
故に、下記に記載する詳細な説明およびガイダンスを使用すれば、本明細書で開示される埋入可能な材料の実施的な実施形態を、どのように作製し、使用し、テストし、特定するかを当業者は理解するであろう。すなわち、本明細書で与えられる教示は、本発明の埋入可能な材料の作製と使用に必要なもの全てを開示する。さらに、本明細書で与えられる教示は、実施的に等価な細胞含有組成物を特定、作製、使用するのに必要なもの全てを開示する。基本的には、必要なのは、本明細書で開示される方法に従って、罹患部位を治療、管理、調節、および/または改善するために、等価な細胞含有組成物が効果的であるということだけである。当業者には理解されるように、本組成物の等価な実施形態は、本明細書で与えられる教示とともに、ルーチンの実験を用いるだけで特定することができる。
【0086】
特定の好ましい実施形態において、本発明の埋入可能な材料で使用される内皮細胞は、ヒトの死体ドナーの大動脈から分離される。細胞の各ロットは、単独のドナー由来または複数のドナー由来であり、内皮細胞の純度、生物学的機能、細菌、真菌、既知のヒト病原体、およびその他の外来物質の存在について詳しく検査される。細胞は、その後の生体適合性の埋入可能な材料への製剤化用に、後に培養液中で増殖させるため、周知の技術を用いて凍結保存されバンク化される。
【0087】
細胞の調製:上述のように、様々な組織種および細胞種から適当な細胞を入手できる。特定の好ましい実施形態において、埋入可能な材料に使用されるヒト大動脈内皮細胞は、死体ドナーの大動脈から分離される。他の実施形態において、ヒト大動脈内皮細胞の分離に使用されるものと同様の手順で、正常なブタの大動脈からブタ大動脈内皮細胞が分離される。細胞の各ロットは、単独のドナー由来または複数のドナー由来であってよく、内皮細胞の生存能、純度、生物学的機能、マイコプラズマ、細菌、真菌、酵母、既知のヒト病原体、およびその他の外来物質の存在について詳しく検査される。後に培養液中で細胞を増殖させるため、またその後生体適合性の埋入可能な材料中で製剤化するため、周知の技術を用いて、細胞をさらに増殖させ、特徴づけを行い、凍結保存して、3代目から6代目で実用的な細胞バンクを作る。
【0088】
ヒトまたはブタ大動脈内皮細胞は、フラスコ当たりおよそ15mlの内皮細胞成長培地の添加によって予め処理されたT‐75フラスコ内で調製される。ヒト大動脈内皮細胞は、内皮細胞成長培地(EGM‐2、Lonza、スイス、バーゼル)中で調製される。EGM‐2は、EGM‐2 singlequotsが添加された内皮細胞基本培地(EBM‐2、Lonza)からなり、2%FBSを含む。ブタ細胞は、5%FBSおよび50μg/mlゲンタマイシンが添加されたEBM‐2中で調製される。およそ37℃、5%CO/95%大気、湿度90%に維持したインキュベーター内にフラスコを最低30分間静置する。−160℃〜−140℃の冷凍庫から細胞の1本または2本のバイアルを取り出し、およそ37℃で融解する。各バイアルの融解細胞を、好ましくはおよそ3×10個/cmの密度で、1.0×10個を下回らず、7.0×10個を上回らないように2つのT‐75フラスコに播種し、細胞を含むフラスコをインキュベーターに戻す。約8〜24時間後、使用済み培地を除去し、新鮮な培地に交換する。それ以降は、好ましくは細胞がおよそ85〜100%コンフルエンス(60%を下回らず、100%を上回らない)に達するまで、2〜3日ごとに培地を交換する。埋入可能な材料が臨床上の用途を目的とする場合、ヒト大動脈内皮細胞の融解後培養液と本発明の埋入可能な材料の製造には抗生物質を含まない培地のみが使用される。
【0089】
その後、内皮細胞成長培地を除去し、細胞の単層を、10mlのHEPES緩衝食塩水(HEPES)でリンスする。HEPESを除去し、T‐75フラスコの表面から細胞を剥がすために2mlのトリプシンを加える。剥がれたら、3mlのトリプシン中和液(TNS)を加えて酵素反応を停止させる。さらに5mlのHEPESを加え、血球計を使用して細胞の計数を行う。細胞懸濁液を遠心分離し、ヒトの細胞の場合は抗生物質を含まないEGM‐2を使用しておよそ2.0〜1.75×10個/mlの密度になるように、またはブタの細胞の場合は、5%FBSおよび50μg/mlのゲンタマイシンを添加したEBM‐2を使用しておよそ2.0〜1.50×10個/mlの密度になるように調節した。
【0090】
生体適合性マトリックス:本発明によれば、埋入可能な材料は生体適合性マトリックスを有する。このマトリックスは、細胞増殖およびマトリックスへの、マトリックス上への、またはマトリックス内への接着を許容する。マトリックスは、屈曲性で適合性である。マトリックスは、固体、半固体、または多孔性の流動性組成物であってよい。本発明の目的では、流動性組成物は、注射または注射型送達器具、限定されないが例えば、針、シリンジ、またはカテーテルを使用した投与を許容できる組成物を意味する。押し出し、噴出、または放出を用いるその他の送達器具も本明細書で意図される。多孔性マトリックスが好ましい。マトリックスは、屈曲性の平面形状の形態であってもよい。マトリックスは、ゲル、フォーム、懸濁液、粒子、ミクロキャリアー、ミクロカプセル、または繊維性構造の形態であってもよい。好ましい流動性組成物は形状保持性である。現在好ましいマトリックスは、粒子状の形態を有する。生体適合性マトリックスは、粒子および/またはミクロキャリアーを有することができ、この粒子および/またはミクロキャリアーは、ゼラチン、コラーゲン、フィブロネクチン、フィブリン、ラミニン、または付着ペプチドをさらに有することができる。1つの例示的な付着ペプチドは、配列アルギニン‐グリシン‐アスパラギン酸(RGD)のペプチドである。
【0091】
マトリックスは、罹患した構造の外面または内面上に埋入された場合、少なくとも約7〜90日間、好ましくは少なくとも約7〜14日間、より好ましくは少なくとも約14日〜28日間、最も好ましくは少なくとも約28〜90日間、それが生体分解されるまで埋入部位に留まることができる。
【0092】
好ましい1つのマトリックスは、Gelfoam(登録商標)(Pfizer,Inc.、ニューヨーク州、ニューヨーク)であり、吸収性ゼラチンスポンジである(以降、“Gelfoamマトリックス”とする)。好ましい別のマトリックスは、Surgifoam(登録商標)(Johnson&Johnson、ニュージャージー州、ニューブランズウィック)であり、これも吸収性ゼラチンスポンジである。GelfoamおよびSurgifoamマトリックスは、特別に処理された精製ブタ皮膚ゼラチン溶液から作製される、多孔性、屈曲性の外科用スポンジである。
【0093】
別の実施形態によれば、生体適合性マトリックス材料は、修飾マトリックス材料であってよい。マトリックス材料に対する修飾は、細胞がマトリックスと結合している場合に、上述のような細胞の表現型(例、阻害性の表現型)をはじめとする細胞の機能を最適化および/または制御するために選択されてよい。一実施形態によれば、マトリックス材料に対する修飾は、細胞が、細胞外マトリックスの分解を低下させる、病的血管形成を低下させる、異常血管新生を低下させる、TIMP産生を増加させる、炎症を低下させる、ヘパラン硫酸の産生を増加させる、プロスタサイクリンの産生を増加させる、および/またはTGF‐βおよび一酸化窒素(NO)の産生を増加させる能力を高める、接着因子または付着ペプチドによるマトリックスのコーティングを含む。
【0094】
別の実施形態によれば、マトリックスは、Gelfoam以外のマトリックスである。さらなる例示的なマトリックス材料には、例えばフィブリンゲル、アルギン酸、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムミクロキャリアー、コラーゲンがコーティングされたデキストランミクロキャリアー、PLA/PGA、およびpHEMA/MMAコポリマー(それぞれのコポリマーのポリマー比は1〜100%の範囲)が含まれる。一実施形態によれば、合成マトリックス材料、例えばPLA/PGAは、材料の親水性を高めることによってこの材料に細胞が結合する能力を高めるため、NaOHで処理される。好ましい実施形態によれば、これらのさらなるマトリックスは、上記で挙げて説明したように、接着因子または付着ペプチドを含むように修飾される。例示的な接着因子には、例えばゼラチン、コラーゲン、フィブロネクチン、フィブリンゲル、および標準的な水性カルボジイミドケミストリーを利用して共有結合した細胞接着リガンド(例えばRGDを含む)が含まれる。さらなる細胞接着リガンドは、細胞接着認識配列、限定されないが例えばRGDY、REDVY、GRGDF、GPDSGR、GRGDY、およびREDVを有するペプチドを含む。
【0095】
埋入可能な材料の実施形態:先述のように、本発明の埋入可能な材料は、屈曲性の平面状の形態または流動性組成物であってよい。屈曲性の平面状の形態の場合、材料は様々な形状と大きさ、好ましくは、罹患部位または切除部位に、それらの部位に隣接して、または近傍に設置された場合に、罹患した構造または切除された構造の輪郭を作る内面または外面と適合する形状および大きさをとることができる。このような使用に適した好ましい形状の例は、その開示内容全体が参考として本明細書で援用される、2005年12月6日出願の、同一出願人に所有された国際特許出願PCT/US05/43967号(代理人整理番号ELV‐002PCとしても知られている)に開示されている。
【0096】
流動性組成物:本明細書で意図される特定の実施形態において、本発明の埋入可能な材料は、ゲル、フォーム、懸濁液、粒子、ミクロキャリアー、ミクロカプセル、マクロ多孔性ビーズ、またはその他の流動性材料であってよい粒子状の生体適合性マトリックスを有する流動性組成物である。本発明は、注射型送達器具を使用して投与されうるあらゆる流動性組成物を意図する。例えば、下記で説明するように、罹患した構造または切除された構造の内部に進入できる送達器具、または皮内注射型送達器具がこの目的に適している。流動性組成物は、好ましくは形状保持性の組成物である。故に、本明細書で意図されるように流動型の粒子状マトリックス中、マトリックス上、またはマトリックス内に細胞を有する埋入可能な材料は、内径が約18ゲージ〜約26ゲージで、好ましくは約1〜約3mlの流動性組成物中に約100万個の細胞を含む粒子状材料を有する約50mgの流動性組成物を送達できる、あらゆる注射剤送達器具との使用のために作製されてよい。
【0097】
現在好ましい実施形態によれば、流動性組成物は、生体適合性の粒子状マトリックス、例えば、ブタの皮膚ゼラチン由来の製品である、Gelfoam(登録商標)粒子、Gelfoam(登録商標)パウダー、または微粉化Gelfoam(登録商標)(Pfizer Inc.ニューヨーク州、ニューヨーク)(以降、“Gelfoam粒子”と呼ぶ)を有する。別の実施形態によれば、粒子状マトリックスは、Surgifoam(登録商標)(Johnson&Johnson、ニュージャージー州、ニューブランズウィック)粒子であり、これは吸収性ゼラチンパウダーで構成される。別の実施形態によれば、粒子状マトリックスはCytodex‐3(Amersham Biosciences、ニュージャージー州、ピスカタウェイ)ミクロキャリアーであり、これは架橋デキストランのマトリックスと結合した変性コラーゲンで構成される。さらなる実施形態によれば、粒子状マトリックスは、CultiSpher‐G(Percell Biolytica AB、スウェーデン、Astorp)ミクロキャリアーであり、これはブタのゼラチンで構成される。別の実施形態によれば、粒子状マトリックスはマクロ多孔性材料である。一実施形態によれば、マクロ多孔性の粒子状マトリックスはCytoPore(Amersham Biosciences、ニュージャージー州、ピスカタウェイ)ミクロキャリアーであり、これは正に荷電したN,N,‐ジエチルアミノエチル基で置換された架橋セルロースから構成される。
【0098】
他の実施形態によれば、生体適合性の埋入可能な粒子状マトリックスは、修飾生体適合性マトリックスである。修飾には、埋入可能なマトリックス材料に関して上記で述べたものが含まれる。
【0099】
本発明に従って、罹患部位における治癒の進展および/または進行を管理するために使用するのに適した関連流動性組成物は、その開示内容全体が参考として本明細書で援用される、2005年12月6日出願の、同一出願人に所有された国際特許出願PCT/US05/43844号(代理人整理番号ELV‐009PCとしても知られている)に開示されている。
【0100】
埋入可能な材料の作製:細胞播種前に、抗生物質を含まないEGM‐2の添加によって、およそ37℃、5%CO/95%大気において12〜24時間生体適合性マトリックスを再水和化する。次に、再水和用容器から埋入可能な材料を取り出し、個々の組織培養皿に入れる。生体適合性マトリックスは、およそ1.5〜2.0×10個(1.25〜1.66×10個/マトリックスのcm)の好ましい密度で播種され、細胞の付着を促進するために、およそ37℃、5%CO/95%大気、湿度90%に維持されたインキュベーター内に3〜4時間静置する。次に、播種されたマトリックスを、それぞれ0.2μmのフィルターを含むキャップが付けられた容器(Evergreen、カリフォルニア州、ロサンゼルス)にEGM‐2と一緒に入れ、およそ37℃、5%CO/95%大気でインキュベートする。あるいは、播種されたマトリックスの3片を150mL容量の瓶に入れてもよい。それ以降は、細胞がコンフルエンスに達するまで、2日〜3日ごとに培地を交換する。好ましい一実施形態における細胞は好ましくは6代目のものであるが、これより継代数が少ないまたは多い細胞も使用できる。
【0101】
細胞増殖曲線およびコンフルエンス:増殖特性を評価し、コンフルエンスな状態、ほぼコンフルエンスな状態、またはコンフルエンス後の状態が達成されたかどうかを決定するために、埋入可能な材料のサンプルを、3日目または4日目、6日目または7日目、9日目または10日目、および12日目または13日目に、またはその前後に取り出し、細胞数を計測して生存能について評価し、増殖曲線を作成して評価する。ブタ大動脈内皮細胞が埋入されたロットを有する埋入可能な材料の2つの製剤から得た代表的な増殖曲線を図1Aおよび1Bに示す。これらの例では、埋入可能な材料は屈曲性の平面状の形態である。一般に、初期、中間期、および後期の時間点における許容可能な細胞増殖の兆候、例えば初期の時間点における細胞数の増加(図1Aを参照すると、約2日目〜6日目)、これに続くほぼコンフルエントな相(図1Aを参照すると、約6日目〜8日目)、これに続く、比較的一定の細胞数で示されるように、細胞がコンフルエンスな状態に達した後の細胞数の安定期(図1Aを参照すると、約8日目〜10日目)、および細胞がコンフルエント後にある場合の細胞数の維持(図1Aを参照すると、約10日目〜14日目)の観察を当業者は理解するであろう。本発明の目的では、少なくとも72時間の間安定状態にある細胞集団が好ましい。
【0102】
0.5mg/mlのコラゲナーゼを含むCaCl溶液を使用した一定量の埋入可能な材料の完全消化によって、細胞のカウントを行う。消化された埋入可能な材料の体積を測定した後、既知の体積の細胞懸濁液を0.4%トリパンブルーで希釈し(細胞対トリパンブルー4:1)、トリパンブルー排除によって生存能を評価する。生存細胞、死滅細胞、および全細胞を、血球計を使用して計数した。生存細胞数対培養液中に存在した日数をプロットすることで増殖曲線を作成した。コンフルエンスな状態に達したら、細胞を出荷し、埋入した。
【0103】
本発明の目的では、コンフルエンスは、屈曲性の平面状形態の埋入可能な材料(1.0×4.0×0.3cm)中の場合は、少なくとも約4×10個/cmの存在として、流動性組成物中の場合は、好ましくは分注量(50〜70mg)当たり約7×10〜1×10個の全細胞数として定義される。両者とも、細胞の生存度は好ましくは少なくとも約90%であるが、80%を下回らない。12日目または13日目までに細胞がコンフルエントな状態にならなければ培地を交換し、さらにもう1日インキュベーションを継続する。コンフルエンスが達成されるまで、または播種後14日目までこのプロセスを継続する。14日目に細胞がコンフルエントでない場合は、そのロットを廃棄する。もし、工程内チェックを行った後で細胞がコンフルエントであると判定された場合、最後の培地交換を行う。この最後の培地交換は、フェノールレッドも抗生物質も含まないEGM‐2を使用して行う。培地交換の直後に、出荷用に滅菌済みの密栓で試験管に蓋をする。
【0104】
機能性および表現型の評価:本明細書で説明される本発明の目的では、埋入可能な材料は、埋入の前に機能性および表現型の兆候についてさらにテストされる。例えば、培養された内皮細胞によって産生される、ヘパラン硫酸、トランスフォーミング増殖因子β(TGF‐β)、塩基性線維芽細胞成長因子(b‐FGF)、組織性マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害物質(TIMP)、および一酸化窒素(NO)のレベルを確かめるために、培養期間中に馴化培地を採取する。特定の好ましい実施形態において、埋入可能な材料は、全細胞数が少なくとも約2、好ましくは少なくとも約4×10個/埋入可能な材料のcmで、生存細胞の割合が少なくとも約80〜90%、好ましくは≧90%、最も好ましくは少なくとも約90%で、馴化培地中のヘパラン硫酸が少なくとも約0.23〜1.0、好ましくは少なくとも約0.5μg/mL/日で、馴化培地中のTGF‐βが少なくとも約200〜300pg/mL/日、好ましくは少なくとも約300pg/ml/日で、馴化培地中のb‐FGFが約200pg/ml未満、好ましくは約400pg/mlを超えず、馴化培地中のTIMP‐2は少なくとも約5.0〜10.0ng/mL/日、好ましくは少なくとも約8.0ng/mL/日で、馴化培地中のNOが少なくとも約0.5〜3.0μmol/L/日、好ましくは少なくとも約2.0μmol/L/日である場合に、本明細書で説明される目的のために使用されうる。
【0105】
ヘパラン硫酸のレベルは、ルーチンのジメチルメチレンブルー‐コンドロイチナーゼABC消化分光光度分析を使用して定量化されうる。全硫酸化グリコサミノグリカン(GAG)レベルは、コレクションメディアで希釈された既知の量の精製コンドロイチン硫酸を使用して作成された標準カーブと未知のサンプルが比較される、ジメチルメチレンブルー(DMB)色素結合アッセイを使用して決定される。DMB比色試薬を添加する前に、コンドロイチンおよびデルマタン硫酸を消化するために、馴化培地の追加サンプルをコンドロイチナーゼABCと混合する。GAG標準と混合されたDMB色素の極大波長の吸光度において全ての吸光度を測定し、通常は515〜525nm付近である。酵素消化によって算出されたヘパラン硫酸の割合に、馴化培地サンプル中の全硫酸化グリコサミノグリカンの濃度をかけることで、1日当たりのヘパラン硫酸の濃度を計算する。コンドロイチナーゼABCの活性を、精製された100%のコンドロイチン硫酸のサンプルと、精製ヘパラン硫酸とコンドロイチン硫酸の50/50ミクスチャーを消化することによって確認する。精製コンドロイチン硫酸の100%未満が消化される場合は、馴化培地サンプルを適切に補正する。ヘパラン硫酸レベルは、モノクローナル抗体を用いるELISAアッセイを使用して定量化されてもよい。
【0106】
TGF‐β、TIMP、およびb‐FGFのレベルは、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体、好ましくはポリクローナル抗体を用いるELISAアッセイを使用して定量化されうる。コントロールのコレクションメディアも、ELISAアッセイおよびコントロールメディア中に存在するTGF‐β、TIMP、およびb‐FGFレベルについて適切に補正されたサンプルを使用して定量化することができる。
【0107】
一酸化窒素(NO)のレベルは、標準的なGriess Reactionアッセイを使用して定量化されうる。一酸化窒素は一時的で揮発性の性質を有するため、大部分の検出法に適さない。しかし、一酸化窒素の2つの安定な分解産物、硝酸塩(NO)および亜硝酸塩(NO)は、ルーチンの分光法を使用して検出されうる。Griess Reactionアッセイは、硝酸還元酵素の存在下で硝酸塩を亜硝酸塩に酵素的に変換する。亜硝酸塩は、比色分析で着色アゾ色素産物として検出され、約540nmの範囲の可視光を吸収する。系に存在する一酸化窒素のレベルは、全ての硝酸塩を亜硝酸塩に変換し、未知のサンプル中の亜硝酸塩の全濃度を決定した後で、得られた亜硝酸塩の濃度を、亜硝酸塩に変換された既知の量の硝酸塩を使用して作成された標準曲線と比較することによって決定される。
【0108】
先述の好ましい阻害性の表現型は、上記で説明した定量的なヘパラン硫酸、TGF‐β、TIMP、NO、および/またはb‐FGFのアッセイだけでなく、下記の平滑筋細胞増殖の定量的in vitroアッセイおよび血栓の阻害を使用して評価される。本発明の目的では、これらの代替的なin vitroアッセイの1つ以上によって、埋入可能な材料が好ましい阻害性の表現型を示すことが確認されれば、埋入可能な材料は埋入できる状態とする。
【0109】
in vitroでの平滑筋細胞増殖の阻害を評価するため、培養内皮細胞に関連する阻害の強さを決定する。ブタまたはヒト大動脈平滑筋細胞を、24ウェルの組織培養プレート内で平滑筋細胞成長培地(SmGM‐2、Lonza)にまばらに播種する。24時間静置して細胞を接着させる。次に、細胞の増殖が停止するまで、0.2%FBSを含む平滑筋細胞基本培地(SmBM)で48時間〜72時間培地を置換する。コンフルエンス後の内皮細胞培養液から馴化培地を調製し、2×SMC成長培地で1:1に希釈し、培養液に添加する。平滑筋細胞増殖の阻害用の陽性コントロールを各アッセイに含めた。3〜4日後、コールターカウンターを使用して、または色素を加えた後に比色アッセイを使用して、各サンプル中の細胞数を計数する。平滑筋細胞増殖に対する馴化培地の効果を、馴化培地を加える直前のウェルごとの平滑筋細胞の数を、馴化培地への曝露、またはコントロール培地(成長因子を加えた、または加えない標準的な成長培地)への曝露から3〜4日後のそれと比べることによって決定する。馴化培地サンプルに関連する阻害の強さを、陽性コントロールに関連する阻害の強さと比較する。好ましい実施形態によれば、ヘパリンコントロールが阻害できるものの約20%を馴化培地が阻害するならば、埋入可能な材料は阻害性であると考えられる。
【0110】
in vitroでの血栓の阻害を評価するために、培養内皮細胞に関連するヘパラン硫酸のレベルを決定する。ヘパラン硫酸は、抗増殖性および抗血栓性の両特性を有する。上記で詳細を説明した、ルーチンのジメチルメチレンブルー‐コンドロイチナーゼABC消化分光光度アッセイまたはELISAアッセイのいずれかを使用することによって、ヘパラン硫酸の濃度を計算する。馴化培地中のヘパラン硫酸が、少なくとも約0.23〜1.0、好ましくは少なくとも約0.5μg/mL/日である場合に、本明細書で説明される目的のために埋入可能な材料が使用されうる。
【0111】
血栓の阻害を評価するための別の方法は、多血小板血漿または血小板濃縮物(Research Blood Comonents、マサチューセッツ州、ブライトン)に関連するin vitroでの血小板凝集の阻害の強さの決定を伴う。馴化培地をコンフルエント後の内皮細胞培養液から調製し、一定量の血小板濃縮物に添加する。96ウェルのプレートに播種した血小板に、血小板凝集物質(アゴニスト)をコントロールとして添加する。血小板アゴニストは一般に、アラキドン酸塩、ADP、I型コラーゲン、エピネフリン、トロンビン(Sigma‐AldrichCo.,、ミズーリ州、セントルイス)、またはリストセチン(Sigma‐AldrichCo.,、ミズーリ州、セントルイ
ス)を含む。ベースラインの血小板自然凝集を評価するため、さらなる血小板のウェルは、血小板アゴニストまたは馴化培地を含まない。血小板凝集の阻害用の陽性コントロールも各アッセイに含める。例示的な陽性コントロールには、アスピリン、ヘパリン、インドメタシン(Sigma‐AldrichCo.,、ミズーリ州、セントルイス)、アブシキシマブ(ReoPro(登録商標)、Eli Lilly、インディアナ州、インディアナポリス)、チロフィバン(Aggrastat(登録商標)、Merck&Co.,Inc.、ニュージャージー州、ホワイトハウスステーション)、またはエプチフィバチド(Integrilin(登録商標)、Millennium Pharmaceuticals,Inc.,マサチューセッツ州、ケンブリッジ)が含まれる。次に、得られた全てのテスト条件の血小板凝集を、プレートリーダーおよび405nmで読み取った吸光度を使用して測定する。血小板リーダーは、光学的密度をモニタリングすることによって血小板凝集を測定する。血小板が凝集するにつれて、より多くの光が試料を通過できる。血小板リーダーは、血小板が凝集する割合によって変わる、吸光度の結果を報告する。凝集は、アゴニストの添加後6〜12分間の間の最大の凝集として評価される。馴化培地の血小板凝集への効果は、馴化培地を添加する前の最大のアゴニスト凝集を、血小板濃縮物を馴化培地へ、および陽性コントロールへ曝露した後のそれと比較することによって決定される。結果はベースラインの割合として表される。馴化培地サンプルに関連する阻害の強さは、陽性コントロールに関連する阻害の強さと比較される。好ましい実施形態によれば、馴化培地が、コントロールの少なくとも20%、より好ましくはコントロールの少なくとも40%、最も好ましくはコントロールの少なくとも60%だけ血栓を阻害すれば、埋入可能な材料は調節性であると考えられる。
【0112】
in vitroでの血管形成の調節を評価するため、マトリゲルセクションの血管形成密度を評価するためにJava(登録商標)herian等の血管形成マトリゲルプラグアッセイを使用した。Java(登録商標)herian et al.J.Bio.Chem.277:45211−45218(2002)マルチウェルディッシュ(24ウェル)を、Engelbreth‐Holm‐Swarm腫瘍由来のECM製剤(BD
PharMingen)である、250μlのマトリゲルで4℃にてコーティングし、37℃で30〜60分間インキュベートしてプラグを形成させた。ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC、Lonza BioSciences、スイス、バーゼル)を、0.5mLのEGM‐2‐MV培地(Lonza BioSciences)に50,000〜100,000個/mLで播種した。プレーティング時(t=0)または37℃における各種HUVECインキュベーション時間後(t=2、4、8、12、または16時間)のいずれかにおいて、埋入可能な材料のインサートとして、共同培養系中に含まれる埋入可能な材料または埋入可能な材料のサンプルから回収した馴化培地をマトリゲルに適用した。
【0113】
マトリゲル内部で形成された内皮細胞管の密度を、低倍率視野(40×)の3回の手作業のカウントによって定量化した。細胞を含まない生体適合性マトリックス(またはマトリゲルに何も適用しなかったもの)のサンプルを陰性コントロールとして使用した。あらゆる既知の血管新生阻害剤を陽性コントロールとして使用できる(例えば、トロンボスポンジン‐1、エンドスタチン、またはアバスチン)。
【0114】
図2Aは、本発明の埋入可能な材料で処理をした、および処理をしなかったマトリゲル内でのHUVECの血管形成の写真を示す。図2Bは、馴化培地または埋入可能な材料の投与後の血管形成密度のグラフ表示である。図2Aおよび2Bを参照すると、この方法に従うと、埋入可能な材料は、コントロールと比較してマトリゲル内における血管形成の密度の低下をもたらした。この実施形態によれば、埋入可能な材料由来の馴化培地とともにマトリゲル‐HUVECを72時間インキュベートした。馴化培地投与の16時間後および72時間後において、処置されていないマトリゲルサンプル内に著しい血管形成が残っている。一方、埋入可能な材料のサンプルでは、血管形成の密度は著しく低下する。従って、埋入可能な材料は、コントロールに対してマトリゲル内での血管形成を阻害することができる。
【0115】
埋入に使用できる状態になったら、平面状形態の埋入可能な材料は最終産物用の容器に供給され、これらの容器はそれぞれ、好ましくはおよそ5〜8×10また好ましくは少なくとも約4×10個の細胞/cmを有し、およそ45〜60ml中、好ましくは約50mlの内皮細胞成長培地(例えば、フェノールレッドも抗生物質も含まない内皮細胞成長培地(EGM‐2))に含まれる埋入可能な材料の立法センチメートル当たり、少なくとも約90%の生存細胞(例えば、単独の死体ドナー由来のヒト大動脈内皮細胞)を有する、好ましくは1×4×0.3cm(1.2cm)の滅菌済み埋入可能な材料を含む。ブタ大動脈内皮細胞が使用される場合、成長培地は、フェノールレッドを含まないが5%FBSおよび50μgのゲンタマイシンが添加されたEBM‐2である。
【0116】
他の好ましい実施形態において、流動性組成物(例えば、粒子状形態の生体適合性マトリックス)は、例えば、フィルターキャップが付いた密封性組織培養容器または充填済みシリンジをはじめとする最終産物用の容器に供給され、好ましくはこれらの容器はそれぞれ、一定量当たり約45〜60ml、好ましくは約50mlの成長培地に含まれる約7×10〜約1×10個の全内皮細胞を有する50〜60mgの流動性組成物を含む。
【0117】
埋入可能な材料の有効期間:コンフルエントな、ほぼコンフルエントな、またはコンフルエント後の細胞の集団を有する本発明の埋入可能な材料は少なくとも2週間の間、安定した生存条件において室温で維持されうる。好ましくは、そのような埋入可能な材料は、さらなるFBSまたはVEGFを含む、または含まない埋入可能な材料当たり約45〜60ml、より好ましくは約50mlの輸送用培地中に維持される。輸送用培地は、フェノールレッドを含まないEGM‐2培地を有する。最大で約10%のFBSの輸送用培地の量となるように、または約12%のFBSの総濃度となるように、FBSが添加されうる。しかし、埋入の前に埋入可能な材料からFBSを除去しなければならないため、埋入前に必要となるリンスの時間を短縮するために、輸送用培地中に使用されるFBSの量を制限するのが好ましい。VEGFは、最大で約3〜4ng/mLの濃度の輸送培地の量となるように添加されてよい。
【0118】
埋入可能な材料の凍結保存:最終的な融解の際にその臨床的有効性または完全性を低下させることなく保存するおよび/または埋入場所に輸送するために、本発明の埋入可能な材料を凍結保存することができる。好ましくは、埋入可能な材料は、約10%のDMSO、約2〜8%のデキストラン、および約20〜75%のFBSおよび/またはヒト血清を含む、約5mlのCryoStor CS‐10溶液(BioLife Solutions、ニューヨーク州、オスウィーゴ)中で、15ml容量のクライオバイアル(Nalgene(登録商標)、Nalge Nunc Int’l、ニューヨーク州、ロチェスター)中で凍結保存される。クライオバイアルを、冷イソプロパノールのウォーターバスに入れ、−80℃のフリーザーに4時間移し、次いで液体窒素(−150℃〜−165℃)に移す。
【0119】
次に、凍結保存した一定量の埋入可能な材料を室温でゆっくりと約15分間融解し、その後室温のウォーターバス中でさらにおよそ15分間融解する。次に、材料を約200〜250mLの食塩水、乳酸加リンガー溶液、またはEBMで約3回洗浄する。3回のリンス手順は、約5分間室温で行われる。その後、材料を埋入する。
【0120】
融解した材料の生物活性を決定するため、融解およびリンス手順に続いて、約10mlのリカバリー溶液中に凍結保存材料を約48時間静置する。ブタ内皮細胞では、リカバリー溶液は、37℃、5%CO中に置かれた、5%FBSおよび50μg/mlのゲンタマイシンが添加されたEBM‐2であり、ヒト内皮細胞では、リカバリー溶液は、抗生物質を含む、または含まないEGM‐2である。使用および/または保存または輸送用の梱包の前に、少なくともさらに24時間、さらなる融解後調整を行うことができる。
【0121】
埋入の直前に、輸送用または凍結保存用培地をデカンテーションし、埋入可能な材料を約250〜500mlの滅菌食塩水(USP)でリンスする。必要であれば、臨床施設への輸送の間の細胞の生存を維持するため、最終産物中の培地は少量のFBSを含む。FBSは、Title 9 CFR:Animal and Animal Productsに従って、細菌、真菌、および他のウイルス性因子の存在について詳しくテストされている。リンス手順を埋入の直前に行い、これによって移されたFBSの量を、好ましくは0〜60ng/インプラントであるが1〜2μg/インプラントを超えないように減少させる。
【0122】
ヒトの患者当たりの細胞の全負荷量は、好ましくはおよそ1.6〜2.6×10個/kg体重だが、約2×10個を下回らず、約2×10個/kg体重を超えない。
【0123】
埋入可能な材料の投与:流動性組成物に含まれる場合、本発明の埋入可能な材料は、粒子状の生体適合性マトリックスおよび細胞、好ましくは内皮細胞、より好ましくは血管内皮細胞を有し、これらは、約0.8×10個/mgの好ましい密度、約1.5×10個/mgのより好ましい密度、約2×10個/mgの最も好ましい密度で約90%が生存しており、少なくとも約0.23〜1.0、好ましくは少なくとも約0.5μg/mL/日のヘパラン硫酸、少なくとも約200〜300pg/ml/日、好ましくは少なくとも約300pg/ml/日のTGF‐β、約200pg/ml未満で好ましくは約400pg/mlを超えないb‐FGFを含む馴化培地を産生することができ、馴化培地中のTIMP‐2は、少なくとも約5.0〜10.0ng/mL/日、好ましくは少なくとも約8.0ng/mL/日であり、馴化培地中のNOは少なくとも約0.5〜3.0μmol/L/日、好ましくは少なくとも約2.0μmol/L/日であり、前述の阻害性の表現型を示す。
【0124】
全般的な本発明の目的では、埋入可能な粒子状材料の投与は、罹患部位の近傍の部位、罹患部位と隣接する部位、または罹患部位に限局する。埋入可能な材料のデポジット部位は、罹患した構造の内面または外面、または隣接するまたは周囲の組織の部位である。本明細書で意図されるように、限局性のデポジットは、以下のように行われる。
【0125】
特に好ましい実施形態において、流動性組成物は、適当な針、カテーテル、または他の適当な経皮的送達器具を使用して、罹患した構造付近の患者の体内へまず経皮的に投与され、その後、罹患した関節、切除腔またはその他の腔の内面に、罹患した構造の外面に、罹患部位または治療部位に隣接するまたはその周囲の間質または組織内の部位と直接接するようにデポジットされる。あるいは、流動性組成物は、所望の部位への送達を容易にするための確認ステップと組み合わせて、針、カテーテル、またはその他の適当な送達器具を使用して経皮的に送達される。確認ステップは、経皮的送達の前にまたは同時に起こってよい。確認ステップは、2〜3の例を挙げると、理学的検査、超音波、および/またはCTスキャンを使用して行われてよい。確認ステップは任意で行われ、本発明の方法を実施するのに必要ではない。
【0126】
流動性組成物は、罹患した構造に隣接するまたは繋がる管状構造を通って、管腔内投与されてもよい。例えば、組成物は、管状構造内に挿入されうるあらゆる器具によって送達されうる。この場合、そのような管腔内送達器具は、管状構造の管腔壁を横断または貫通して罹患した構造の内面または外面に到達する、横断または貫通器具を備えている。次に、罹患した構造面に、または隣接するもしくは周囲の組織に流動性組成物がデポジットされる。
【0127】
本明細書で意図される横断または貫通器具は、罹患した構造の表面への流動性組成物の送達をその部位を破壊せずに達成するために、例えば、所望の幾何学的形状に配置された単一の送達ポイントまたは複数の送達ポイントを可能にする。複数の送達ポイントは、例えば2〜3の例を挙げると、単一の円、同心円、または直線配列に配置されうる。
【0128】
本発明の好ましい実施形態によれば、貫通器具は、治療部位の近位または遠位のいずれかにある構造の内面を介して挿入される。一部の臨床患者では、治療の部位でのまたは治療の部位の近傍での貫通器具の挿入は、罹患した構造を破壊するかさらなる損傷をもたらす可能性がある。従って、そのような患者では、罹患した構造から離れた、好ましくは目の前の特定の状況に左右される臨床医によって決定される場所で貫通器具を挿入するように注意しなくてはいけない。
【0129】
好ましくは、治療される部位において、またはその部位に隣接するまたは近傍にある場所のいずれかにおいて、罹患した構造の内面または外面に流動性組成物がデポジットされる。組成物は、罹患部位に関連する様々な場所、例えば、その部位において、間質と接するように、部位を囲むように、または部位と隣接するようにデポジットされうる。好ましい実施形態によれば、隣接部位は、罹患部位の約0cm〜2cm以内にある。別の好ましい実施形態によれば、部位は約2cm〜4cm以内にあり、さらに別の好ましい実施形態によれば、部位は約4cm〜6cm以内にある。別の好ましい実施形態では、部位は約6cm〜10cm以内にある。あるいは隣接部位は、治療される部位の近くにある罹患した部位に対してデポジットされた組成物が所望の効果を示すことができる、臨床医によって決定されたその他任意の隣接する場所である。
【0130】
別の実施形態では、流動性組成物は、罹患した構造における、その構造に隣接するまたは近傍にある、外科的に露出された内面または外面に直接送達される。この場合、部位の直接観察によって送達が導かれ誘導される。この場合はさらに、上述のように確認ステップの同時使用によって送達が支援される。この場合もやはり、確認ステップは任意である。
【0131】
本発明の別の実施形態によれば、屈曲性の平面状形態の埋入可能な材料は、罹患した部位の、その部位に隣接する、またはその部位の近傍の外科的に露出された外面または内面もしくは腔に局所的に送達される。1つの例では、少なくとも1片の埋入可能な材料が腔の内側に適用され、材料は、その部位の表面に適合し、接していて、その部位の治療に効果的な量で埋入されてさえいれば十分である。
【0132】
一実施形態によれば、単独で、または任意では外科的腫瘍切除に続いて、切除部位における、またはその部位の近傍にある腫瘍および/または残存癌細胞を照射するために、切除部位に放射線療法が行われる。別の実施形態によれば、単独で、または任意では外科的腫瘍切除に続いて、切除部位における、またはその部位の近傍にある腫瘍および/または残存癌細胞を死滅させるために、患者に化学療法が行われる。これらの実施形態のいずれかによれば、放射線療法および/または化学療法の終了後、埋入可能な材料が切除腔に送達される。この方法によれば、切除腔および/または周囲組織に対する腫瘍切除、放射線療法、および/または化学療法の作用を治療する、改善する、管理する、および/または低下させるために埋入可能な材料が使用される。
【実施例】
【0133】
(実施例1)ブタにおける血管の損傷
この研究は、病的血管形成および異常血管新生を調節するための本発明の材料および方法の使用を例示する。そのような例示のために選択された実験モデルは、外科的処置によって誘発された血管損傷および外傷に続いて起こる血管新生である。さらに、この実施例は、動物試験対象への血管構造に対する処置、例えばAVグラフトの導入に続いて起こる血管新生、血管密度、およびMMPの発現レベルをはじめとする異常血管新生の兆候を低下または調節するために、本発明の好ましい実施形態をテストし使用するための実験プロトコールを提供する。
【0134】
標準的な外科的手技を使用して、頸動脈と頸静脈の間にAVグラフトを作成した。次に、外科的に作成したAVグラフト吻合部のそれぞれに隣接する血管周囲の間隙に埋入可能な材料をデポジットした。1つの例示的な手技の詳細は下記に記載する。前述のように、埋入可能な材料の設置および形状は変化しうる。この研究では、埋入可能な材料は屈曲性の平面状の形態であった。
【0135】
具体的には、この研究には、AVグラフト手術を受ける20匹のブタ試験対象が含まれた。標準的な手術技術に従って、従来のAVグラフト手術手技を実施した。グラフト手術が終了し、グラフト内を通る血流が構築された後で、下記で説明するようにAVグラフト吻合部および周囲に埋入可能な材料を適用した。
【0136】
AVグラフト手術を受ける各試験対象については、試験対象の左総頸動脈と右外頸静脈の間に、内径6mmのPTFEグラフトを1本設置した。6‐0プロレーンでの連続縫合を使用して、グラフトの両端に斜めに端側吻合を作製した。全ての試験対象には手術中にヘパリンを投与し、術後はアスピリンを毎日投与した。
【0137】
大動脈内皮細胞を有する埋入可能な材料を、試験対象のうちの10匹に手術日に投与した。そのようなインプラントを、各試験対象に5つ適用した。2つのインプラントは、2つの吻合部位のそれぞれの周囲に巻きつけた。この状況では、インプラントの中間部が血管とグラフトが出会うポイントに到達するまで、第1の埋入可能な材料片の一端を吻合セグメント下を通過させた。次に、第2の埋入可能な材料片を、第1片のそれと反対の方向に巻きつけ、吻合セグメントの上面に設置し、終端を吻合の下に差し込んだ。次に、縫合ラインの周囲に両端を巻きつけて、インプラントを縫合ライン上の中心に保った。材料を所定の位置に固定するため、端部はわずかに重なっていた。各試験対象の吻合部に始まる近位静脈セグメントの全長に沿って、さらなる1つのインプラントを縦方向に設置した。インプラントは、静脈の周囲を完全に覆ってはいなかった。
【0138】
手術日に、細胞を含まないコントロールインプラントを10匹の試験対象に投与し、吻合部周囲に巻きつけて、グラフトの近位静脈セグメント上に設置した。体重を基準とした全細胞負荷量は、およそ2.5×10個/kgであった。
【0139】
外科的手技:首の両側の胸鎖乳突筋上で8cmの頸部両側切開を行った。これらの切開により、左総頸動脈を分離した後、右外頸静脈を分離した。静脈および動脈のおよそ4〜8cmのセグメントを周囲組織から剥離し、静脈から分かれる全ての枝を3‐0の絹縫合糸で結紮した。内径6mmのPTFEグラフト(Atrium Medical Corp.、ニューハンプシャー州、ハドソン)を、2つの切開部の間の皮下領域内部にくぐらせた。分離した頸静脈をクランプし、10mmの静脈切開を行った。静脈をヘパリン加生理食塩水で洗浄し、6‐0プロレーンでの連続縫合を使用して静脈グラフトの間に斜めの端側吻合を作成した。グラフトの平均長は18.6±0.9cmであった。形成が終わったら、静脈クランプを取り除き、グラフトをヘパリン加生理食塩水でフラッシュして再度クランプした。次に左頸動脈をクランプし、8mmの動脈切開を行った。動脈をヘパリン加生理食塩水でフラッシュし、6‐0プロレーン縫合糸を使用して動脈とグラフトの間に斜めの端側吻合を作成した。血管のクランプを外し、グラフト内の振せんを触診することでグラフト内の血流を確認した。各血管吻合の止血を確認し、ごくまれではあるが吻合部出血の場所には6‐0proleneで結節縫合を追加した。
【0140】
吻合完了後、キンクを防ぐためにPTFE動静脈グラフトの位置を調整した。頸動脈‐グラフト吻合部のすぐ遠位側で、23ゲージのバタフライニードルでPTFE動静脈グラフトを経皮的にカニューレ処置した。設置を確認するため、10ccのシリンジを使用して系内に血液を吸引させた。次に、系を10ccの生理食塩水でフラッシュした。静脈‐グラフト吻合部と静脈流出管を可視化できるように、C‐アーム型X線透視装置を試験動物の頸部に設置した。X線透視を続けながら、10〜15ccのヨード化造影剤(Renograffin、全強度)を注入した。
【0141】
血管造影終了後、湿らせた4インチ×4インチのガーゼスポンジで吻合部を覆った。およそ5分間吻合部を圧迫してから、ガーゼスポンジを取り除き吻合部を調べた。止血が完了していなければ血液の滲出が認められるため、さらに5分間その部位を再び覆った。部位からの出血がひどい場合は、外科医の判断で追加の縫合を行った。止血が完了したら、頸部の創傷を滅菌生理食塩水で満たし、6mmのTransonic フロープローブを使用して、遠位静脈流出部においてフロープローブ解析を行った。必要であれば生理食塩水を除去し、吻合部の水分を可能な限り取り除き、大動脈内皮細胞を有する埋入可能な材料、コントロールインプラントのいずれかで治療した。全ての出血がコントロールされ、グラフト内の流れが確認され、その領域の水分を可能な限り取り除くまでは、いずれのタイプのインプラントでもその部位の治療を行わなかった。完了したら、層状に創傷を閉じ、動物を麻酔から覚醒させた。
【0142】
100U/kgのボーラス注入に加えて35U/kg/時間の持続注入で手術の前にヘパリンを投与し、手術の終わりまで維持した。ACT≧200秒を維持するのに必要であれば、さらなるボーラス用量(100U/kg)を投与した。
【0143】
グラフトの開存。手術直後、手術後3〜7日、それ以降は1週間に1度、カラーフロードップラー超音波およびTransonicフロープローブ(Transonic Systems,Inc.、ニューヨーク州、イサカ)を使用して、アクセスフロー測定でAVグラフトの開存を確認した。血脈についてグラフトをよく観察した。
【0144】
病理手技。ペントバルビタールナトリウムを使用して(65mg/kg、静脈内)動物試験対象に麻酔をかけた。解剖前に、上述のようにシネ血管造影でグラフトの開存を判定した。血管造影終了後、グラフト/吻合部をPBS、次いでホルマリンで灌流した。
【0145】
組織検査。動物試験対象の半数(細胞がグラフトされたインプラントの対象5匹、コントロールインプラントの対象5匹)を、手術の3日後に安楽死させた。残りの動物試験対象(細胞がグラフトされたインプラントの対象5匹、コントロールインプラントの対象5匹)を手術の1ヶ月後に安楽死させた。
【0146】
全ての吻合部および近位静脈部位、および排出リンパ節を含む周囲組織をはじめとする投与部位の肉眼的検査によって定められる、限局性解剖を全ての試験対象に行った。手術1ヶ月後に安楽死させた全ての試験対象について、脳、肺、腎臓、肝臓、心臓、および脾臓をはじめとする主要臓器由来の組織を採取して保存した。体の外表面の肉眼的検査または投与部位および周囲組織の顕微鏡的検査から異常な所見が得られた場合にのみ、これらの臓器を分析するものとした。主要な臓器のさらなる検査の根拠となる異常な所見は、本研究に組み込まれた動物のいずれにも認められなかった。
【0147】
吻合した静脈および動脈のそれぞれの5cmセグメントを含む全てのAVグラフト吻合部および周囲組織を切出し、10%ホルマリン(または等しいもの)で固定し、グリコールメタクリレート(または等しいもの)に包埋した。C形状のステンレス鋼のナイフ(または等しいもの)で薄切した厚さおよそ3μmの切片を使用して、少なくとも3つの領域:静脈グラフト吻合部、グラフト‐動脈吻合部、および静脈流出管から切片を作製した。静脈グラフト吻合部を横断するように、3つの切片を作製した。静脈流出管を通る切片を5つ作成した(従って、流出静脈の1.5cmをカバーする)。グラフト‐動脈吻合部を通る切片を、1mmの間隔で3つ作成した。これらの切片をゼラチンコーティング(または等しいもの)のガラススライドに載せ、ヘマトキシリン&エオジン染色またはVerhoeffのエラスチン染色で染色した。
【0148】
各切片を、血管新生の有無および/または程度について評価した。0から4(0=有意な変化なし、1=ごくわずか、2=軽度、3=中等度、4=高度)のスケールで、各変数にスコアを割り当てた。血管新生所見の代表的な評価基準を下の表1に示す。
【0149】
【表1】

マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)発現に対する血管周囲インプラントの効果を検査するため、静脈組織切片について免疫組織化学的分析を行った。5マイクロメートルのパラフィン切片を薄切し、高pHのTarget Retrieval Solution(Dako USA、カリフォルニア州、カーピンテリア)中で切片を20分間加熱することによって抗原の回復を行った。内因性ペルオキシダーゼ活性を失活させるため、ペルオキシダーゼブロック(Dako USA)で5分間スライドを覆った。マウス抗ヒトMMP‐2一次抗体(1:250希釈、Chemicon International,Inc.、、カリフォルニア州、Ternecula)を室温で45分間アプライし、ウサギ抗ヒトMMP‐9一次抗体(1:250希釈、Chemicon International,Inc.、カリフォルニア州、Ternecula)を室温で60分間アプライした。全てのスライドをマイヤーのヘマトキシリン(Sigma Chemical Co.)で対比染色した。ブタの肝臓を陽性コントロールとして使用し、マウスIgG1またはウサギIgGを陰性コントロールとして使用した。各試料について、切片当たり少なくとも6つの重ならない視野を解析した。MMP陽性染色の定量的評価については、無作為に選択した領域を、オリンパスBX60顕微鏡を使用して画像化した。デジタル画像(倍率200×)をキャプチャし、Image‐Pro Plus6.0ソフトウェア(Media Cybernetics、Silver Spring、メリーランド州)を使用して解析した。各関心領域(例、内膜、中膜、および外膜)をハイライトし、色区分で陽性染色を定量化した。結果は、陽性に染色された領域の割合として表した(mmでの全領域に対するmmでの陽性領域)。
【0150】
動物対象の結果:管状または非管状組織構造の部位、またはそれらに隣接する部位への本発明の埋入可能な材料の設置は、例えば外科的処置後の組織の破壊に続いて起こる、血管新生を軽減するのに効果的である。外科的治療が行われた管状または非管状組織構造の部位、またはそれらに隣接する部位への本発明の埋入可能な材料の投与は、治療された組織構造における異常血管新生を減少させる。さらに、埋入可能な材料は、管状または非管状組織構造のMMP発現および/または活性化を低下させる。
【0151】
血管新生のエビデンスは、両時間点における両グループにおいて観察された。外膜血管新生は、最大のレベルになると、肉芽組織と一致する規則的なパターン(線維芽細胞に直交する血管)を持つ、新たに形成する小血管(毛細血管)の組織内への成長を特徴とし、損傷組織の再構築または通常は血管を含まない材料内への新たな成長のいずれかである。コントロール材料が投与された静脈と比較した場合、埋入可能な材料で治療した静脈において急性および慢性の血管新生はともに減少した(両ケースで1重篤度ポイントの平均差、表2)。
【0152】
【表2】

本発明の埋入可能な材料は、本発明の埋入可能な材料で治療された動物におけるマトリックスメタロプロテイナーゼの発現も低下させた。手術の3日後、および1ヶ月後における、全血管、内膜、中膜、および外膜中のMMP‐2およびMMP‐9陽性細胞の免疫組織化学的解析では、コントロール材料を投与された静脈と比較して、埋入可能な材料で治療された静脈中のMMPの発現の低下が明らかになった。
【0153】
コントロールグループでは、3日目において外膜、中膜、および内膜中に著しいMMP‐2陽性細胞が観察された。MMP‐2陽性細胞は、コントロール材料を投与された動物の組織切片中に、外膜中に11.2±1.0%、中膜中に4.4±0.6%のレベル、および内膜中に2.1±0.2%のレベルで観察された。コントロール材料を投与された動物では、MMP‐2の陽性染色は主に外膜に局在していた。1ヶ月目では、コントロール材料を投与された動物中の染色の量は、外膜で減少(5.7±0.9%)したが、中膜(4.9%±1.0%)および内膜(2.6±0.8%)では増加したままであった。
【0154】
埋入可能な材料で治療されたグループでは、3日目の血管の外膜、中膜、および内膜でMMP‐2発現の低下が観察された。MMP‐2陽性細胞は、埋入可能な材料で治療された動物の組織切片中で、外膜中に6.9±1.2%(P≦0.05)、中膜中に2.3±0.4%(P<0.05)、および内膜中に0.8±0.2%(P<0.05)の割合で観察された。埋入可能な材料で治療された動物において、3日目から1ヶ月目まで、MMP‐2発現に比較的変化はなかった。
【0155】
図3は、3日目および1ヶ月目における、埋入可能な材料で治療された対象およびコントロール材料を投与された対象の染色組織切片中のMMP‐2の発現のグラフ表示である。コントロール材料が投与された静脈と比較して、埋入可能な材料で治療された静脈中のMMP‐2の発現の著しい低下が明らかである。3日目および1ヶ月目において、埋入可能な材料で治療された静脈の内膜、中膜、および外膜にMMP‐2発現の低下が観察された。
【0156】
上記でとりあげたMMP‐2の発現と比較して、MMP‐9発現は、コントロール材料を投与された動物および埋入可能な材料を投与された動物の両方について、両時間点における強度が弱かった。3日目では、コントロールと比較して、埋入可能な材料で治療された静脈の外膜の染色が減少した。1ヶ月目では、コントロールと比較して、治療グループの内膜と外膜にMMP‐9発現の低下が観察された(P≦0.05)。図4は、3日目および1ヶ月目における、埋入可能な材料で処理された対象およびコントロール材料が投与された対象の染色組織切片中のMMP‐9の発現のグラフ表示である。
【0157】
理論に拘束されることなく、本発明の埋入可能な材料は、埋入可能な材料で治療された構造におけるタンパク質分解バランス、すなわちMMPとTIMPのバランスを回復すると考えられる。組織構造は、MMPおよびTIMPを非常に厳しく制御された割合で構成的に分泌する。しかし、組織構造の損傷または病気は、異常血管新生につながるイベントのカスケードを開始するのに十分な、構造中のMMP:TIMP比の逸脱を誘発しうる。埋入可能な材料は、MMPの発現を低下させる、またはTIMPの発現を増加させて、異常血管新生を低下させるまたは治療された構造の正常な血管新生を回復するのに十分なMMPとTIMPのバランスを回復する。
【0158】
(実施例2)ヌードマウスにおける大腸腫瘍の切除
これらの研究は、腫瘍切除術後の病的血管形成、異常血管新生、細胞外マトリックスの分解、およびMMPとTIMPの発現レベルを調節するための、本発明の材料および方法の使用を例示する。さらに、本実施例は、上記の詳細な記述に含まれる教示と組み合わせて読まれた場合、動物対象における固形腫瘍を切除するための処置後の、細胞外マトリックスの分解、病的血管形成、異常血管新生、およびMMPとTIMPの発現レベルの兆候を低下または調節するために、本発明の好ましい実施形態をテストするまたは使用するための実験プロトコールを提供する。
【0159】
この実施例によれば、ヌードマウスの背部の腔内に大腸癌細胞を注入し、腫瘍重量が0.5〜1.0gになるまで成長させる。腫瘍を外科的に切除し、切除腔を外科的に閉鎖する。外科的閉鎖の前に治療グループでは効果的な量の埋入可能な材料を切除腔に投与すること以外、マウスの2つのグループを同じように管理する。病的血管形成、細胞外マトリックスの分解、MMPの発現レベル、および炎症の兆候の低下および/または改善を、腹腔鏡、超音波、MRIで、またはマウスを屠殺し、切除腔を顕微鏡で検査することによって長期間モニタリングする。本発明の埋入可能な材料で治療されたマウスは、コントロールマウスと比べて、病的血管形成、異常血管新生、細胞外マトリックスの分解、MMPの発現レベル、および/または炎症の兆候の低下および/または改善を示すことが予想される。
【0160】
(実施例3)ルイス肺癌マウスにおける肺腫瘍の切除
この実施例によれば、Cell 88:277‐285(1997)でO’Reilly等が報告しているマウスモデルに従って、マウスの背部の腔にルイス肺癌細胞を注入する。癌細胞を、重量0.5〜1.0gの原発腫瘍に成長させる。原発腫瘍を外科的に切除し、切除腔を外科的に閉鎖する。外科的閉鎖の前に治療グループに効果的な量の埋入可能な材料を切除腔に投与すること以外は、マウスの2つのグループを同じように管理する。
【0161】
病的血管形成、異常血管新生、細胞外マトリックスの分解、MMPの発現レベル、および炎症の兆候の低下および/または改善を、腹腔鏡、超音波、MRIで、またはマウスを屠殺し、切除腔を顕微鏡で検査することによって長期間にわたってモニタリングする。さらに、切除された原発腫瘍の部位における癌細胞の再増殖の阻害、および肺への癌細胞転移の阻害を、腹腔鏡、超音波、MRIで、またはマウスを屠殺し、切除腔および肺を顕微鏡で検査することによって長期間にわたってモニタリングする。本発明の埋入可能な材料で治療されたマウスは、コントロールマウスと比べて、病的血管形成、異常血管新生、細胞外マトリックスの分解、MMPの発現レベル、炎症の兆候、切除腔における癌細胞の再増殖、および/または切除端へ、肺へ、もしくは周囲組織への癌細胞の転移の低下および/または改善を示すことが予想される。
【0162】
(実施例4)ヒトにおける腫瘍の切除
腫瘍切除後の切除部位の治療または管理を示すため、固形腫瘍と診断されたヒト患者について研究を行う。固形腫瘍を確認するために患者を検査する。固形腫瘍の切除後に、効果的な量の埋入可能な材料を1つのグループの切除腔に投与すること以外、2つの患者グループを同じように管理する。埋入可能な材料を、切除腔の非癌細胞および/またはそれらの間質の部位に、またはそれに隣接するように適用する。病的血管形成、異常血管新生、細胞外マトリックスの分解、MMPの発現レベル、および炎症の兆候の低下および/または改善を、超音波、MRI、CTスキャン、理学的検査、および患者体内に存在する切除腔の種類に応じて他の関連手技で長期間にわたってモニタリングする。埋入可能な材料で治療された患者は、コントロール患者と比べて、切除腔および周囲組織における病的血管形成、異常血管新生、細胞外マトリックスの分解、MMPの発現レベル、および/または炎症の兆候の低下および/または改善を示すことが予想される。
【0163】
(実施例5)ヒトにおける化学療法および/または放射線療法
腫瘍を消散させるための、腫瘍部位における化学療法および/または放射線療法後の、腫瘍部位の治療または管理を示すために、腫瘍増殖と診断されたヒト患者について研究を行う。化学療法および/または放射線療法での治療に適した腫瘍増殖を確認するために患者を検査する。化学療法および/または放射線療法の実施後に、効果的な量の埋入可能な材料を1つのグループの治療された腫瘍部位に投与すること以外は、2つの患者グループを同じように管理する。
【0164】
病的血管形成、異常血管新生、細胞外マトリックスの分解、MMPの発現レベル、および炎症の兆候の低下および/または改善を、超音波、MRI、CTスキャン、理学的検査、および患者体内に存在する治療部位の種類に応じた他の関連手技で長期間にわたりモニタリングする。埋入可能な材料で治療された患者は、コントロール患者と比べて、治療部位および周囲組織における病的血管形成、異常血管新生、細胞外マトリックスの分解、MMPの発現レベル、および/または炎症の兆候の低下および/または改善を示すことが予想される。
【0165】
(実施例6)マウスにおける黄斑変性症の治療
この実施例によれば、Am.J.Pathology 161:1429‐1437(2002)においてHangai等が報告しているモデルに従って、黄斑変性症の症状を軽減するためおよび/または黄斑変性症の発症を遅らせるための眼の治療または管理を示すために、虚血性網膜血管新生があるマウスについて研究を行う。1つのグループでは、治療された眼または周囲組織に効果的な量の埋入可能な材料を投与すること以外、2つのマウスのグループを同じように管理する。
【0166】
異常または病的血管新生、MMPの発現レベル、および炎症の兆候の低下および/または改善を、腹腔鏡、超音波、MRIで、またはマウスを屠殺し、眼を顕微鏡で検査することによって長期間にわたってモニタリングする。本発明の埋入可能な材料で治療されたマウスは、コントロールマウスと比べて、罹患組織における異常なまたは病的な血管新生、MMPの発現レベル、および炎症の兆候の低下および/または改善を示すことが予想される。
【0167】
(実施例7)マウスにおける関節リウマチ
この実施例によれば、PNAS103:17432‐17437(2006)においてLi等が報告しているモデルに従って、関節リウマチの症状を軽減するためおよび/または関節リウマチの発症を遅らせるための関節の治療または管理を示すために、関節リウマチのマウスについて研究を行う。1つのグループでは、治療された関節または周囲組織に効果的な量の埋入可能な材料を投与すること以外、2つのマウスのグループを同じように管理する。
【0168】
異常なまたは病的な血管新生、MMPの発現レベル、炎症の兆候の低下および/または改善を、腹腔鏡、超音波、MRIで、またはマウスを屠殺し、関節を顕微鏡で検査することによって長期間にわたってモニタリングする。本発明の埋入可能な材料で治療されたマウスは、コントロールマウスと比べて、罹患組織における異常なまたは病的な血管新生、MMPの発現レベル、および炎症の兆候の低下および/または改善を示すことが予想される。
【0169】
(実施例8)ヒトにおける関節リウマチ
関節リウマチの症状を軽減するためおよび/または関節リウマチの発症を遅らせるための罹患関節の治療または管理を示すために、関節リウマチと診断されたヒト患者について研究を行う。治療に適した関節を確認するために患者を検査する。1つのグループでは、治療された関節または周囲組織に効果的な量の埋入可能な材料を投与すること以外、2つの患者グループを同じように管理する。
【0170】
細胞外マトリックスの分解、異常血管新生、MMPの発現レベル、および炎症の兆候の低下および/または改善を、腹腔鏡、超音波、MRIで、またはマウスを屠殺し、関節および周囲組織を顕微鏡で検査することによって長期間にわたってモニタリングする。本発明の埋入可能な材料で治療されたマウスは、コントロールマウスと比べて、罹患関節および/または周囲組織における異常血管新生、細胞外マトリックスの分解、MMPの発現レベル、および炎症の兆候の低下および/または改善を示すことが予想される。
【0171】
(実施例9)マウスにおける乾癬性関節炎
乾癬性関節炎の症状を軽減するためおよび/または乾癬性関節炎の発症を遅らせるための関節の治療または管理を示すために、乾癬性関節炎と診断されたマウスについて研究を行う。1つのグループでは、治療された関節または周囲組織に効果的な量の埋入可能な材料を投与すること以外、2つのマウスのグループを同じように管理する。
【0172】
異常血管新生、細胞外マトリックスの分解、MMPの発現レベル、および炎症の兆候の低下および/または改善を、腹腔鏡、超音波、MRIで、またはマウスを屠殺し、関節および周囲組織を顕微鏡で検査することによって長期間にわたってモニタリングする。本発明の埋入可能な材料で治療されたマウスは、コントロールマウスと比べて、罹患関節および/または周囲組織における異常血管新生、細胞外マトリックスの分解、MMPの発現レベル、および炎症の兆候の低下および/または改善を示すことが予想される。
【0173】
(実施例10)マウスにおける乾癬
乾癬の症状を軽減するためおよび/または乾癬の発症を遅らせるための皮膚の治療または管理を示すために、乾癬と診断されたマウスについて研究を行う。1つのグループでは、治療された乾癬病変または周囲組織に効果的な量の埋入可能な材料を投与すること以外、2つのマウスのグループを同じように管理する。
【0174】
細胞外マトリックスの分解、異常血管新生、MMPの発現レベル、および炎症の兆候の低下および/または改善を、腹腔鏡、超音波、MRIで、またはマウスを屠殺し、皮膚を顕微鏡で検査することによって長期間にわたってモニタリングする。本発明の埋入可能な材料で治療されたマウスは、コントロールマウスと比べて、乾癬病変における異常血管新生、細胞外マトリックスの分解、MMPの発現レベル、および炎症の兆候の低下および/または改善を示すことが予想される。
【0175】
(実施例11)ex vivoラット大動脈輪モデルにおける血管形成
この実施例によれば、Biochem.Biophy.ResearchComm.268:183‐191(2000)においてKruger等が報告しているモデルに従って、埋入可能な材料が血管形成を調節する能力を示すために、ex vivoラット大動脈輪モデルの血管形成について研究を行う。8週〜10週齢の雄のSprague‐Dawleyラットから胸部大動脈を切除し、線維脂肪組織を除去する。大動脈を、1mm長の断面に切断してすすぎ、マトリゲルでコーティングされたウェルに入れる。1つのグループに効果的な量の埋入可能な材料を投与し、1つのグループでは効果的な量の馴化培地を投与し、そして1つのグループではコントロール培地を投与すること以外、ラット大動脈輪切片を同じように管理する。
【0176】
細胞外マトリックスの分解、異常血管新生、MMPの発現レベル、および炎症の兆候の低下および/または改善を、大動脈輪切片を顕微鏡で検査することによって長期間にわたってモニタリングする。本発明の埋入可能な材料で治療されたラット大動脈輪は、コントロールと比べて、異常血管新生、細胞外マトリックスの分解、MMPの発現レベル、および炎症の兆候の低下および/または改善を示すことが予想される。
【0177】
(実施例12)マウスにおける血管形成のマトリゲルプラグアッセイ
この実施例によれば、British J.Cancer 96:1368‐1376(2007)においてChander等が報告しているモデルに従って、埋入可能な材料が血管形成を調節する能力を示すために、血管形成に関するマウスマトリゲルプラグアッセイについて研究を行う。1つのグループではマトリゲルプラグに対して効果的な量の埋入可能な材料を投与すること以外、2つのマウスのグループを同じように管理する。
【0178】
異常なまたは病的な血管形成、MMPの発現レベル、および炎症の兆候の低下および/または改善を、腹腔鏡、超音波、MRIで、またはマトリゲルプラグを抽出し切片を顕微鏡で検査することによって長期間にわたってモニタリングする。本発明の埋入可能な材料で治療されたマトリゲルプラグは、コントロールマウスと比べて、罹患組織における異常なまたは病的な血管形成、MMPの発現レベル、および炎症の兆候の低下および/または改善を示すことが予想される。
【0179】
(実施例13)マウスにおける角膜血管新生の角膜ポケットアッセイ
この実施例によれば、Cancer Cell 6:333‐345(2004)においてCao,R.等が報告しているモデルに従って、埋入可能な材料が血管新生を調節する能力を示すために、角膜血管新生に関するマウス角膜ポケットアッセイについて研究を行う。簡単に言うと、ヒト組み換えbFGFおよびVEGFを含むスクラルファート(Sigma‐Aldrich、ミズーリ州、セントルイス)およびヒドロン[ポリ(2‐HEMA)](Sigma‐Aldrich、ミズーリ州、セントルイス)のペレットを、6〜7週齢のマウスに外科的に作成した各角膜ポケットに埋入する。ペレットは、角膜輪部の血管から1.0〜1.4mmの場所に設置する。埋入後、それぞれの眼に眼用抗生物質軟膏を塗布する。1つのグループでは効果的な量の埋入可能な材料を皮下にまたは腹腔内に投与すること以外、2つのマウスのグループを同じように管理する。
【0180】
血管新生を誘発するために、輪部に平行な回転運動を適用することで両眼の角膜上皮および輪部の上皮を除去する。ペレットの先端からの輪部の血管の長さ(ペレット距離)、輪部からペレットの方向へ、上方に分岐する最も長い血管(血管長)、および眼の周囲にどのくらいの長さで血管が成長したかを測定するために、細隙灯生体顕微鏡によって眼を検査する。
【0181】
異常血管新生の低下および/または改善を、切片を顕微鏡で検査することによって長期間にわたってモニタリングする。本発明の埋入可能な材料で治療されたマウスは、コントロールマウスと比べて、罹患組織における異常血管新生の低下および/または改善を示すことが予想される。
【0182】
本発明は、その精神または基本的な特徴から逸脱することなしに、その他の特定の形態において実施されてよい。従って本発明の実施形態は、限定するものではなく例示するものと見なされ、本発明の範囲はこれまでの記述よりも添付の特許請求の範囲によって示され、従って特許請求の範囲の等価物の意義および範囲に含まれる全ての変更は本発明に包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−48953(P2013−48953A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−270423(P2012−270423)
【出願日】平成24年12月11日(2012.12.11)
【分割の表示】特願2009−535364(P2009−535364)の分割
【原出願日】平成19年11月7日(2007.11.7)
【出願人】(507188913)パーバシス セラピューティクス, インコーポレイテッド (8)
【Fターム(参考)】