説明

血管性頭痛の予防のためのテルミサルタンの使用

本発明は、高血圧症に起因しない血管性頭痛、特に偏頭痛の予防方法であって、そのような治療を必要としている患者へのテルミサルタンの投薬を含む方法に関する。本発明はさらに、血管性頭痛の予防方法であって、テルミサルタンと、偏頭痛予防及び/又は偏頭痛の急性期治療に好適な他の薬剤との組み合せ同時投薬を含む方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高血圧症に起因しない血管性頭痛、特に偏頭痛の予防方法であって、そのような治療を必要としている患者への{4'-[2-n-プロピル-4-メチル-6-(1-メチルベンズイミダゾール-2-イル)ベンズイミダゾール-1-イルメチル]ビフェニル-2-カルボン酸}(テルミサルタン)の投薬を含む方法に関する。本発明はさらに、血管性頭痛の予防方法であって、テルミサルタンと、偏頭痛予防及び/又は偏頭痛の急性期治療に好適な他の薬剤との組み合せ同時投薬を含む方法にも関する。
本発明はさらに、テルミサルタン及び偏頭痛予防に用いられている少なくとも1種の他の薬剤を含む好適な医薬組成物であって、前記疾病の予防における同時、分離又は逐次使用のための組み合せ製剤としての医薬組成物に関する。本発明はさらに、血管性頭痛の予防のための医薬組成物の製造のための、テルミサルタンと、任意成分としての前記他の抗偏頭痛薬との組み合せ使用に関する。
【背景技術】
【0002】
偏頭痛は、最も一般的な神経疾患の1種であり、頭痛及び吐き気の周期的発作、並びに過多の他症状を伴う。世界中ではあるが、約2億4,000万の人々が、毎年推定14億回の偏頭痛発作を有している(Tronvik, E. ら., JAMA, 1, 2003, pp. 65-69)。かなりの進歩がなされているが、偏頭痛の病態生理はまだ理解されていない。それは、悩める人々に一連の治療応答を示す疾患である。一部の患者は生活様式の改善(要因除去)で治癒することができ、大衆薬又は鍼治療、催眠などによって治療することができるが、大部分の患者は偏頭痛の除去及びそれ以上の発作の予防のための処方薬を必要としている。最も治療を必要とする症状は、頭痛及び胃腸症状である。しかし、羞明及びアウラも治療する必要がある。後者はその持続時間が比較的短いが、かなりの不安を生じさせ、治療が必要ともなり得る。
偏頭痛の正確な病原はまだ知られていない。近年、偏頭痛には血管性及び神経性要素の両方が関連しており、おそらく相互に関係しているだろうという合意が持ち上がっている。
現在、偏頭痛及び血管性頭痛の他形態の治療に用いられている一般的な薬剤は、例えば、エルゴタミン、アスピリン及びNSAIDである。急性偏頭痛治療の金基準は、“トリプタン”、例えばスマトリプタン及びゾルミトリプタンである。これらのトリプタンは、それらの血管収縮性特性及びおそらくはそれらの神経ペプチドカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)放出の阻害によって、抗偏頭痛効果を誘発する。
【0003】
偏頭痛を治療するための全く新規の提案は、CGRP拮抗薬の使用である(Doods, H. ら., Br. J. Pharmacol., 129, 2000, pp. 420-423)。そのようなCGRP拮抗薬は、例えば、WO 98/11128号明細書に開示されている。WO 03/015787号明細書には、CGRP拮抗薬、すなわち1-[N2-[3,5-ジブロモ-N-[[4-(3,4-ジヒドロ-2(1H)-オキソチナゾリン-3-イル)-1-ピペリジニル]カルボニル]-D-チロシル]-L-リシル]-4-(4-ピリジニル)-ピペラジン[BIBN4096BS]が開示されており、これは、5-HT1B/1D作用薬又は麦角アルカロイドと組み合わされ、特に偏頭痛の予防及び/又は治療に有用である。
最近では、WO 01/97807号明細書において、アンギオテンシンII(ATII)タイプI受容体拮抗薬が、血管性頭痛症状及び特に偏頭痛に苦しんでいる患者の予防及び/又は治療上の処置のために開示されている。これらの化合物は、レニン-アンギオテンシン系(RAS)を妨げることが知られており、長い間、一般的な血管性疾病、特に動脈性高血圧症及び鬱血性心不全を治療するのに用いられている。
【0004】
Tronvikらは、偏頭痛に苦しむ患者の、アンギオテンシンII(ATII)タイプI受容体拮抗薬(カンデサルタン)に関して、無作為化、二重盲式、プラセボ対照交換試験の結果を開示した。その著者らは、カンデサルタンが良好な耐容性プロフィールを有する有効な偏頭痛予防を提供したと結論づけた(JAMA, 1, 2003, pp. 65-69)。
Hanssonらは、軽度/中度の高血圧症を有する患者のイルベサルタンに関する二重盲式、プラセボ対照試験から得られた結果を発表した。このATIIタイプI受容体拮抗薬の使用は、高血圧症患者に一般に見られる頭痛の発生率における有意な減少と関連しているように思われる(Arch. Intern. Med. 160, 2000, pp. 1654-1658)。
Etminanらは、高血圧症の治療をされた12,110人の患者に関する27の試験のメタ分析データを発表した。その著者らは、頭痛の危険性が、ATII受容体拮抗薬を服用した患者の方が、プラセボを服用した患者よりも約1/3低いという結論に達した(Am. J. Med. 112, 2002, pp. 642-646)。
【発明の開示】
【0005】
ATIIタイプI受容体拮抗薬の群の特別な一員、すなわちテルミサルタンが、血管性頭痛、特に偏頭痛の予防において、そのような治療を必要としている患者に対して高い効力を有し、その既知の血圧減少活性とは独立して、予期しない利点を提供することが見出された。INNテルミサルタン、{4'-[2-n-プロピル-4-メチル-6-(1-メチルベンズイミダゾール-2-イル)ベンズイミダゾール-1-イルメチル]ビフェニル-2-カルボン酸}は、欧州特許第0,502,314B1号明細書及び米国特許第5,591,762号明細書に開示されているように、高血圧症及び他の医学的適応症の治療として開発され、すでに商品名ミカルディス(登録商標)として市場で販売されている。それは、WO 00/43370号明細書、米国特許第6,358,986号明細書及び米国特許第6,410,742号明細書に開示されているように、2種の多形性形態で存在する。テルミサルタン及びその溶媒和物、水和物、及び半水化物のナトリウム塩が、WO 03/037876号明細書に開示されている。
【0006】
本発明の第一の特徴は、高血圧症に起因しない血管性頭痛の状態、特に偏頭痛の予防方法であって、治療上有効量のテルミサルタンを、好ましくは単独で、又は治療上有効量の偏頭痛の予防に好適な他の薬剤と組み合せ、そのような治療を必要としている患者に投薬することを含む方法に関する。
本発明の第二の特徴は、治療上有効量のテルミサルタンを含む、高血圧症に起因しない血管性頭痛の状態を予防するための医薬組成物に関する。さらにそれは、テルミサルタンと治療上有効量の偏頭痛予防に好適な少なくとも1種の他の薬剤との組み合せ医薬組成物であって、同時又は逐次投薬のための組み合せ製剤としての医薬組成物に関する。
本発明の別の実施態様は、高血圧症に起因しない血管性頭痛、好ましくは偏頭痛の予防のための医薬組成物の製造のための、好ましくは単独であるが、偏頭痛予防に好適な少なくとも1種の他の薬剤と組み合せてもよい、テルミサルタンの使用である。
【0007】
本発明の範囲内では、“テルミサルタン”という用語は、{4'-[2-n-プロピル-4-メチル-6-(1-メチルベンズイミダゾール-2-イル)ベンズイミダゾール-1-イルメチル]ビフェニル-2-カルボン酸}の、欧州特許第0,502,314B1号明細書及び米国特許第5,591,762号明細書に開示されているようなカルボン酸としてのその中立形態、又はWO 00/43370号明細書、米国特許第6,358,986号明細書及び米国特許第6,410,742号明細書に開示されているようなその多形性形態の1種、又は限定はしないがナトリウム、カリウム又はアンモニウム塩を含むWO 03/037876号明細書に開示されているような医薬的に許容される塩又はその溶媒和物、水和物、又は半水化物の形態を含む。テルミサルタンの塩が用いられるときは、ナトリウム塩が好ましい。さらに本発明では、“テルミサルタン”という用語が、任意のプロドラッグ、例えば、生体内で薬理学的活性化合物に加水分解されるエステルを含む。
【0008】
本発明の範囲内では、“血管性頭痛”という用語は、高血圧症によらない(すなわち、高血圧症に起因しない)全ての種類の血管性頭痛、例えば偏頭痛、群発性頭痛、外傷後頭痛などを含む。本発明の好ましい実施態様では、こという用語は、偏頭痛の予防及び/又は治療に用いられる。
“偏頭痛”という用語は、The Headache Classification Committee of the International Headache Society, Classification and Diagnostic Criteria for Headache Disorders, Cranial Neuralgias and Facial Pain, Cephalalgia 1988, 8 SUPPL 7, pp.1-96:によって解釈される。それは、しばしば家族性症候群である血管性頭痛の周期的発作であり、通常発症すると側頭性且つ片側性であり、一般に被刺激性、吐き気、嘔吐、便秘又は下痢を、及びしばしば羞明を伴う。発作は、頭蓋動脈の収縮と、通常その結果生じるアウラと呼ばれる前駆感覚性(特に眼球の)症状に先行され、その後に伴う血管拡張によって開始する。
偏頭痛は、腹性、無頭痛性、急性錯乱、脳底動脈、古典的、普通、複雑、電撃性、ハリス、片麻痺性、眼、眼性及び眼筋麻痺性を含む種々の特定のタイプに分割することができる。
“群発性頭痛”という用語は、通常2週間〜3ヶ月続き、少なくとも14日であるが通常は数ヶ月の間欠期によって分離される期間における時間的群発性の発作として最も典型的に定義される。このタイプの群発性頭痛は、“偶発性群発性頭痛”としても知られている。“慢性群発性頭痛”という用語は、1年以上の間に少なくとも14日の間欠期がないことによって特徴づけられる(Textbook of Pain, 3rd ed., p. 504,1994)。
“外傷後頭痛”という用語は、いくらかの頭部外傷によって引き起こされる頭痛であり、“緊張性頭痛”及び“筋性頭痛”は、“筋収縮性”、“心因性”、“緊張性”又は“本態性”として前述されている頭痛の群に属する(Textbook of Pain, 3rd ed., p. 504,1994)。
【0009】
高血圧症に起因しない血管性頭痛、特に偏頭痛の予防方法に関する本発明の第一の特徴に関し、この方法は、そのような治療を必要としている患者への有効量のテルミサルタンの投薬を含む。
テルミサルタンは、経口的、口腔的、非経口的、経鼻的、直腸的又は局所的に投薬されてもよいが、経口投薬が好ましい。非経口投薬は、皮下、静脈内、筋肉内及び胸骨内注射及び注入技術を含んでもよい。
テルミサルタンは、1日当たり1、2又は3度、経口的に10mg(70kgの人を基準にしたもので、0.143mg/kg体重)〜500mg(70kgの人を基準にしたもので、7.143mg/kg体重)及び非経口的に約20mg(70kgの人を基準にしたもので、0.286mg/kg体重)、好ましくは経口的に20mg(70kgの人を基準にしたもので、0.286mg/kg体重)〜100mg(70kgの人を基準にしたもので、1.429mg/kg体重)の1日量で投薬されてもよい。特に好ましいのは、40mg(70kgの人を基準にしたもので、0.571mg/kg体重)〜80mg(70kgの人を基準にしたもので、1.143mg/kg体重)又は特に約80mg(70kgの人を基準にしたもので、1.143mg/kg体重)の経口的な1日量である。
【0010】
任意に、テルミサルタンと偏頭痛予防に好適な他の薬剤とを組み合せて投薬することができる。そのような他の薬剤は、例えば、WO 98/11128号明細書に開示されている1-[N2-[3,5-ジブロモ-N-[[4-(3,4-ジヒドロ-2(1H)-オキソチナゾリン-3-イル)-1-ピペリジニル]カルボニル]-D-チロシル]-L-リシル]-4-(4-ピリジニル)-ピペラジン[BIBN4096BS]、
【化1】

及び1-[4-アミノ-3,5-ジブロモ-N-[[4-(2,3,4,5-テトラヒドロ-2(1H)-オキソ-1,3-ベンゾジアゼピン-3-イル)-1-ピペリジニル]カルボニル]-D-フェニルアラニル]-4-(1-ピペリジニル)-ピペリジン[BIBN4107BS]、
【化2】

などのCGRP拮抗薬、ACE-阻害剤(例えば、キナプリル、カプトプリル、エナラプリル、ラミプリル、ベナゼプリル、フォシノプリル、又はリシノプリル)、カルシウムチャネル拮抗薬(例えば、アムロジピン、ベラパミル、ジルチアゼパム、ニモジピン、フルナリジン、ドタリジン、ロメリジンHCl(iomerizine HCl)など)、ベータブロッカー(例えば、アテノロール、メトロポロール、ナドロール、プロパノロール又はチモロール)、アルファ2-作用薬(例えば、チザニジン)、セロトニン作動性拮抗薬(例えば、シプロヘプタジン、ピゾチフェン又はメチルセルジド)、抗痙攣薬(例えば、ジバルプロエックスナトリウム、ガバペンチン、トピラメート、チアガビン、レベチラセタム、ゾニサミド、ラモトリジン又はバルプロエート)、抗癲癇薬(例えば、トピラメート)、抗鬱薬(例えば、アミトリプチリン又はノルトリプチリンなどの三環系、選択的セロトニン再取り込み阻害薬、フェネルジン(pheneizine)などのモノアミンオキシダーゼ阻害薬又はクエンチアピンなどの他の向精神薬)、5-HT1B-1F-作用薬(例えば、アルモトリプタン、アビトリプタン、エレトリプタン、フロバトリプタン、ナラトリプタン、リザトリプタン、スマトリプタン、ゾルミトリプタン)、又は他のATIIタイプI受容体拮抗薬(例えば、カンデサルタン、カンデサルタンシレキセチル、エプロサルタン、イルベサルタン、ロサルタン、オルメサルタン、オルメサルタンメドキソミル、及びバルサルタン)又はその対応する医薬的に許容される塩である。偏頭痛予防に好適な他の薬剤は、例えばマグネシウムリシネート、リボフラビン、ボツリヌス毒素A、モンテルカスト(抗炎症性ロイコトリエン阻害薬)、ペタシテス(ペタシテス交配種植物からのロイコトリエン生合成阻害薬)、及びナプロキセンである。
【0011】
血管性頭痛の予防のためにテルミサルタンと組み合わされる好ましい化合物は、アルモトリプタン、アビトリプタン、エレトリプタン、フロバトリプタン、ナラトリプタン、リザトリプタン、スマトリプタン、ゾルミトリプタンなどのトリプタン、好ましくはスマトリプタン又はゾルミトリプタン、及びCGRP拮抗薬、好ましくはWO 98/11128号明細書に開示されているようなBIBN4096BS(80頁、No.154)及びBIBN4107BS(89頁、No.231)又はそれらの医薬的に許容される塩である。これらの化合物の合成は、WO 98/11128号明細書において、BIBN4096BSが332頁、例6、No.154に、及びBIBN4107BSが323頁、例4、No.231に開示されている。
粉末吸入に好適なBIBN4096BSの製剤が、独国特許出願第10,207,026A1号明細書に開示されており、同じく粉末吸入に好適な塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、臭化水素酸塩、炭酸塩、メタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、硝酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、乳酸塩、コハク酸塩、グルコン酸塩、酢酸塩、ギ酸塩、プロピオン酸塩、カプロン酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、マンデル酸塩及びヒドロキシコハク酸塩などのその塩が、独国特許出願第10,206,770A1号明細書に開示されている。
【0012】
偏頭痛発作の急性期では、テルミサルタンを偏頭痛の急性期治療に用いられている薬剤と組み合せて投薬することもでき、そのような薬剤には、NSAIDなどの抗炎症薬、cox-2阻害薬、リスリドなどのドーパミン作用薬、ジメンヒドリネートなどの制吐剤、チモロール又はプロパノロールなどのβ-ブロッカー、ブクリジン又はジメンヒドリネートなどの抗ヒスタミン薬、エルゴタミン及びジヒドロエルゴタミンなどの麦角アルカロイド、アセトアミノフェン、ジクロフェナクプロピフェナゾンなどの鎮痛薬、アセチルサリチル酸、ナプロキセン又はイブプロフェンなどの非ステロイド系消炎薬がある。偏頭痛発作の急性期に投薬されてもよいさらなる薬剤は、カフェイン、イプラゾクロム(iprazochrom)、イソメテプテン、メトクロプラミド、パンガミン酸又はそれらの医薬的に許容される塩を含む。
単独で、又は1種以上の上記薬剤と組み合せて投薬されるテルミサルタンは、経口的、口腔的、非経口的、経鼻的、直腸的又は局所的に投薬することができるが、経口投薬が好ましい。非経口投薬は、皮下、静脈内、筋肉内及び胸骨内注射及び注入技術を含んでもよい。
【0013】
1種以上の上記薬剤と組み合せたテルミサルタンは、1日当たり1、2又は3度、経口的に10mg(又は70kgの人を基準にしたもので、0.143mg/kg体重)〜500mg(70kgの人を基準にしたもので、7.143mg/kg体重)及び非経口的に約20mg(70kgの人を基準にしたもので、0.286mg/kg体重)、好ましくは経口的に20mg(70kgの人を基準にしたもので、0.286mg/kg体重)〜100mg(70kgの人を基準にしたもので、1.429mg/kg体重)の1日量で投薬されてもよい。特に好ましいのは、40mg(70kgの人を基準にしたもので、0.571mg/kg体重)〜80mg(70kgの人を基準にしたもので、1.143mg/kg体重)又は特に約80mg(70kgの人を基準にしたもので、1.143mg/kg体重)の経口的な1日量である。
テルミサルタンをトリプタン又はその生理学的に許容される塩と組み合せて投薬する場合は、トリプタンを静脈内又は皮下経路によって0.0001〜1.0mg/kg体重の投薬量、又は経口、直腸、経鼻又は吸入経路によって0.0005〜10mg/kg体重の投薬量で、1日当たり1、2又は3度投薬することができる。
テルミサルタンをスマトリプタン又はその生理学的に許容される塩と共に投薬する場合は、スマトリプタンを経口経路によって0.03〜1.43mg/kg体重の投薬量を1日当たり1、2又は3度、又は静脈内又は皮下経路によって0.002〜0.09mg/kg体重の投薬量を1日当たり1又は2度、又は直腸経路によって0.007〜0.36mg/kg体重の投薬量を1日当たり1又は2度、又は経鼻経路によって0.006〜0.29mg/kg体重の投薬量を1日当たり1又は2度投薬してもよい。
テルミサルタンを、ゾルミトリプタン又はその生理学的に許容される塩と共に同時投薬する場合は、後者を、経口経路によって0.0007〜0.036mg/kg体重の投薬量を1日当たり1又は2度投薬してもよい。
【0014】
テルミサルタンを、BIBN4096BS又はBIBN4107BS又はその生理学的に許容される塩などのCGRP拮抗薬と組み合せて投薬する場合は、CGRP拮抗薬、好ましくはBIBN4096BS又はBIBN4107BSを、静脈内又は皮下経路によって0.0001〜3mg/kg体重の投薬量、又は経口、経鼻又は吸入経路によって0.1〜20mg/kg体重の投薬量を、1日当たり1、2又は3度投薬してもよい。BIBN4096BSは経鼻又は吸入経路が好ましく、BIBN4107BSは経口投薬が好ましい。
テルミサルタンを、偏頭痛の予防及び/又は急性期治療に好適な他の薬剤と組み合せて用いる場合は、組み合せ偏頭痛薬の投薬量は、経口的、口腔的、非経口的、経鼻的、直腸的又は局所的経路によって通常推奨される最も低い投薬量の約1/100から通常推奨される投薬量の1/1まで、好ましくは1/50〜1/6及びさらに好ましくは1/20〜1/10である。組み合せ偏頭痛薬の通常推奨される投薬量は、Rote Liste(登録商標)2003, Editio Cantor Verlag, Aulendorf又はPhysicians′Desk Reference 2003, 57. Ed.に開示されている投薬量であると理解されるべきである。
【0015】
本方法が、テルミサルタン及び別の薬剤の同時投薬を含む場合は、テルミサルタン及び他の抗偏頭痛薬の両方を含む医薬組成物を投薬するか、又は1種が有効成分としてテルミサルタンを含み、もう1種が同時又は適時に転換される有効成分として他の抗偏頭痛薬を含む2種の医薬組成物を投薬するのが可能である。“同時又は適時に転換される”という言いまわしによって、本発明の目的のためのテルミサルタン含有及び他の抗偏頭痛薬含有医薬組成物の投薬は、両方の医薬組成物が、それを必要としている患者に対して、同時又は1日以内の時間間隔で投薬されるが、テルミサルタン含有医薬組成物及び抗偏頭痛薬含有医薬組成物が24時間以上の間隔で投薬されたとしても、ある場合では、より優れた効果を有することも可能になり得ると理解される。この組成物がある時間間隔で投薬される場合は、テルミサルタンを含む組成物を、他の抗偏頭痛薬の投薬前又は後に投薬することができる。
【0016】
本発明の第二の目的に関し、医薬組成物は、高血圧症に起因しない血管性頭痛、特に偏頭痛の予防のために提供される。これらの組成物は、治療上有効量のテルミサルタンを、偏頭痛の予防に好適な少なくとも1種の他の薬剤、好ましくは、トリプタン又はCGRP拮抗薬又はそれらの医薬的に許容される塩と任意に組み合せ、同時又は逐次投薬のための組み合せ製剤として含む。
【0017】
テルミサルタン及び他の活性化合物は、種々様々な異なる投薬形態で経口投薬することができる、すなわち、それらは、種々の医薬的に許容される不活性キャリアと共に、錠剤、カプセル、菱形錠剤、トローチ、飴玉、粉末、スプレー、水性懸濁液、エリキシル、シロップなどの形態で調剤されてもよい。そのようなキャリアは、固形物希釈剤又は充填剤、滅菌水性媒体及び種々の無毒性有機溶媒を含む。さらに、そのような経口医薬製剤は、そのような目的のために一般に用いられているタイプの種々の薬剤によって、適当に加糖する及び/又は風味を添えることができる。一般に、本発明の化合物は、そのような経口投薬形態において、全組成の約0.5質量%〜約90質量%の範囲の濃度レベルで、所望の単位投薬量を提供するのに十分な量で存在する。本発明の化合物のための他の好適な投薬形態は、当業者によく知られている制御放出製剤及び装置を含む。
【0018】
経口投薬のために、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム及びリン酸カルシウムなどの種々の賦形剤を含む錠剤を、スターチ、好ましくはポテト又はタピオカスターチ、アルギン酸及びある種の複合ケイ酸塩などの種々の崩壊剤、及びポリビニルピロリドン、スクロース、ゼラチン及びアカシアなどの結合剤と共に用いてもよい。さらに、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム及びタルクなどの潤滑剤又は類似タイプの組成物を、ラクトース又は乳糖並びに高分子量ポリエチレングリコールを含む軟質及び硬質充填ゼラチンカプセルにおける充填剤として用いてもよい。水性懸濁液及び/又はエリキシルが経口投薬として望ましいときは、その中の必須有効成分が、種々の甘味料又は香味料、着色料又は染料及び、必要ならば、乳化剤及び/又は水、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン及びそれらの種々の類似する組み合せと組み合されてもよい。
【0019】
非経口投薬のために、ゴマ油又はピーナッツ油、又は水性プロピレングリコールの化合物の溶液が、対応する医薬的に許容される塩の滅菌水溶液と同様に用いられてもよい。そのような水溶液は、必要に応じて適当に緩衝され、且つその液体希釈剤は、十分な生理食塩水又はグルコースで等張性にされているべきである。これらの特別な水溶液は、静脈内、筋肉内及び皮下注射用途に特に好適である。これに関して、用いられる滅菌水性媒体は、当業者によく知られている標準の技術によって容易に得られる。例えば、蒸留水が液体希釈剤として通常用いられ、最終調製物が、焼結ガラス濾過器又は珪藻土又は素焼磁器濾過器などの好適な細菌濾過器に通される。このタイプの好ましい濾過器は、ベルケフェルト、シャンベルラン及びアスベストディスク-金属サイツ濾過器を含み、その液体は吸引ポンプによって滅菌容器内に吸引される。必要な工程を、これらの注射可能溶液の調製中に渡って行い、最終生成物が滅菌状態で得られることを保証すべきである。
【0020】
経皮的投薬のために、特定化合物の投薬形態は、例えば、そのための溶液、ローション、軟膏、クリーム、ゲル、座薬、律速持続放出製剤及び装置を含んでもよい。そのような投薬形態は、特定化合物を含み、且つエタノール、水、浸透賦活剤及びゲル製造材料、鉱油、乳化剤、ベンジルアルコールなどの不活性キャリアを含んでいてもよい。
本発明の医薬組成物は、経口投薬される場合、3〜500mg、好ましくは6〜100mg、さらに好ましくは10〜80mgのテルミサルタンの単回投薬単位を含んでいてもよい。特に好ましいのは、経口投薬のための40〜80mgのテルミサルタンの単回投薬単位である。非経口投薬では、医薬組成物が、6〜20mgの単回投薬単位を含んでいてもよい。
【0021】
テルミサルタンが、偏頭痛の治療及び/又は予防に用いられている他の薬剤と組み合されて用いられる場合は、本発明の医薬組成物が、経口、口腔、非経口、経鼻、直腸又は局所投薬のための組み合せ偏頭痛薬の、通常推奨される最も低い投薬量の1/300から、通常推奨される投薬量の1/1まで、好ましくは1/150〜1/6及びさらに好ましくは1/60〜1/10の単回投薬単位を含んでいてもよい。組み合せ偏頭痛薬の通常推奨される投薬量は、Rote Liste(登録商標)2003, Editio Cantor Verlag, Aulendorf又はPhysicians′Desk Reference 2003, 57. Ed.に開示されている投薬量であると理解されるべきである。
例えば、本発明の医薬組成物は、
40〜80mgのテルミサルタンの単回投薬単位、及び
0.1〜10mgのBIBN4096BSの単回投薬単位、又は
0.1〜10mgのBIBN4107BSの単回投薬単位、又は
1〜100mgのスマトリプタンの単回投薬単位、又は
0.1〜2.5mgのゾルミトリプタンの単回投薬単位、
を含んでいてもよい。
上記及び下記の活性化合物の生理学的に許容される塩の全ての投与又は投薬単位は、その活性化合物自体の投与量又は投薬量として理解されるべきである。
【0022】
さらに、テルミサルタンが、偏頭痛の治療及び/又は予防に用いられている別の薬剤又はその生理学的に許容される塩と組み合されて用いられる場合は、本発明の医薬組成物は、
(a)治療上有効量のテルミサルタン又はその生理学的に許容される塩を含む医薬組成物及び1種以上の医薬的に許容される希釈剤及び/又はキャリアを含む第一の包含;及び
(b)偏頭痛の予防に用いられている別の薬剤又はその生理学的に許容される塩及び1種以上の医薬的に許容される希釈剤及び/又はキャリアを含む第二の包含、
を含むキットの部分キットでもよい。
好ましい部分キットは、第二の包含に、アルモトリプタン、アビトリプタン、エレトリプタン、フロバトリプタン、ナラトリプタン、リザトリプタン、スマトリプタン、ゾルミトリプタン、又はCGRP拮抗薬を含む。
さらに好ましくは、部分キットが、第二の包含に、スマトリプタン、ゾルミトリプタン、BIBN4096BS又はBIBN4107BSを含む。
【0023】
第三の目的に関して、本発明は、高血圧症に起因しない血管性頭痛、特に偏頭痛の予防のための医薬組成物の製造のためのテルミサルタンの使用を提供する。
すでに述べたように、テルミサルタンは、カルボン酸としてのその中立の形態、又はそのその多形性形態の1種、又は限定はしないがナトリウム、カリウム又はアンモニウム塩を含む医薬的に許容される塩又はその溶媒和物、水和物、又は半水化物の形態で用いることができる。さらに、テルミサルタンを、プロドラッグ、例えば、生体内で薬理学的活性化合物に加水分解されるエステルとして投薬することができる。
テルミサルタンは、例えば商品名ミカルディス(登録商標)で販売されている医薬製剤又は例えば欧州特許第0,502,314B1号明細書、又はWO 03/037876号明細書に開示されているような製剤を用いるか又は、例えば、以下の医薬製剤の1種:
20、40又は80mgの有効成分を含む錠剤、
20、40又は80mgの有効成分を含むカプセル、
を用いて投薬することができる。
【0024】
さらに、テルミサルタンを、高血圧症に起因しない血管性頭痛、特に偏頭痛の予防のための医薬組成物の製造のために、偏頭痛の予防に用いられている別の薬剤、好ましくはトリプタン又はCGRP拮抗薬又はその生理学的に許容される塩と組み合せて用いてもよい。これらの薬剤及びそれらの好ましい実施態様並びに医薬組成物は、本発明の第一及び第二の特徴において上述されている。本発明の全ての特徴に関して最も好ましいのは、テルミサルタンと、より好ましいスマトリプタン、ゾルミトリプタン、BIBN4096BS又はBIBN4107BSとの組み合せ、又はそれらの生理学的に許容される塩の組み合せである。
上記の偏頭痛の治療又は予防に用いられているいくつかの薬剤は、すでに市場に出ているもの、例えば、商品名アスピリン(登録商標)で販売されているアセチルサリチル酸、商品名イミグラン(登録商標)で販売されているスマトリプタン、商品名アスコトップ(ascotop)(登録商標)で販売されているゾルミトリプタン、商品名アプロベル(登録商標)のイルベサルタン、商品名アタカンド(登録商標)のカンデサルタンシレキセチル、商品名ディオバン(登録商標)のバルサルタン、商品名ディバスカン(Divascan)(登録商標)のイプラゾクロム(iprazochrom)、商品名トパマックス(登録商標)のトピラメート及び商品名ジヒタミン(Dihytamin)(登録商標)のジヒドロエルゴタミン及びその医薬的に許容される塩である。アセチルサリチル酸、アセトアミノフェン及びカフェインの組み合せは、商品名ソマピリン(Thomapyrin)(登録商標)で販売されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高血圧症に起因しない血管性頭痛の予防方法であって、そのような治療を必要としている患者への治療上有効量のテルミサルタンの投薬を含む、方法。
【請求項2】
治療上有効量のテルミサルタン及び治療上有効量の偏頭痛の予防に好適な少なくとも1種の他の薬剤を、そのような治療を必要としている人に同時投薬することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
他の薬剤が、CGRP拮抗薬又はその生理学的に許容される塩である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
CGRP拮抗薬又はその生理学的に許容される塩が、静脈内又は皮下経路によって0.0001〜3mg/kg体重の投薬量、又は経口、経鼻又は吸入経路によって0.1〜20mg/kg体重の投薬量で、1日当たり1、2又は3度投薬される、請求項3記載の方法。
【請求項5】
CGRP拮抗薬が、BIBN4096BS又はBIBN4107BS又はその生理学的に許容される塩である、請求項3又は4記載の方法。
【請求項6】
他の薬剤が、アルモトリプタン、アビトリプタン、エレトリプタン、フロバトリプタン、ナラトリプタン、リザトリプタン、スマトリプタン、ゾルミトリプタン又はその生理学的に許容される塩からなる群から選択されるトリプタンである、請求項2記載の方法。
【請求項7】
トリプタンが、静脈内又は皮下経路によって0.0001〜1.0mg/kg体重の投薬量、又は経口、直腸、経鼻又は吸入経路によって0.0005〜10mg/kg体重の投薬量で、1日当たり1、2又は3度投薬される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
テルミサルタンが、経口経路によって0.143〜7.143mg/kg体重の投薬量、好ましくは0.286〜1.429mg/kg体重の投薬量、最も好ましくは0.571〜1.142mg/kg体重の投薬量、又は非経口経路によって約0.286mg/kg体重の投薬量で、1日当たり1、2又は3度投薬される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
血管性頭痛が、偏頭痛である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
血管性頭痛の予防のための医薬組成物であって、当該医薬組成物が、治療上有効量のテルミサルタン及び偏頭痛の治療及び/又は予防に用いられている少なくとも1種の他の薬剤を、同時又は逐次投薬のための組み合せ製剤として含む、医薬組成物。
【請求項11】
他の薬剤が、CGRP拮抗薬又はその生理学的に許容される塩である、請求項10記載の医薬組成物。
【請求項12】
CGRP拮抗薬が、BIBN4096BS又はBIBN4107BS又はその生理学的に許容される塩である、請求項11記載の医薬組成物。
【請求項13】
他の薬剤が、アルモトリプタン、アビトリプタン、エレトリプタン、フロバトリプタン、ナラトリプタン、リザトリプタン、スマトリプタン、ゾルミトリプタン又はその生理学的に許容される塩からなる群から選択されるトリプタンである、請求項10記載の医薬組成物。
【請求項14】
テルミサルタンの10〜500mg、好ましくは20〜100mg、最も好ましくは40〜80mgの経口単回投薬単位を含む、請求項10〜13のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
血管性頭痛の予防のための部分キットであって、
(a)治療上有効量のテルミサルタンを含む医薬組成物及び1種以上の医薬的に許容される希釈剤及び/又はキャリアを含む第一の包含;及び
(b)偏頭痛の治療及び/又は予防に用いられている少なくとも1種の他の薬剤又はその生理学的に許容される塩を含む医薬組成物及び1種以上の医薬的に許容される希釈剤及び/又はキャリアを含む第二の包含、
を含む、部分キット。
【請求項16】
第二の包含に含まれる薬剤が、CGRP拮抗薬又はその生理学的に許容される塩である、請求項15記載の部分キット。
【請求項17】
CGRP拮抗薬が、BIBN4096BS又はBIBN4107BS又はその生理学的に許容される塩である、請求項16記載の部分キット。
【請求項18】
第二の包含に含まれる薬剤が、アルモトリプタン、アビトリプタン、エレトリプタン、フロバトリプタン、ナラトリプタン、リザトリプタン、スマトリプタン、ゾルミトリプタン又はその生理学的に許容される塩からなる群から選択されるトリプタンである、請求項15記載の部分キット。
【請求項19】
高血圧症に起因しない血管性頭痛の予防のための医薬組成物の製造のための、テルミサルタンの使用。
【請求項20】
血管性頭痛が、偏頭痛である、請求項19記載の使用。
【請求項21】
高血圧症に起因しない血管性頭痛の予防のための医薬組成物の製造のための、テルミサルタンと、偏頭痛の治療及び/又は予防に好適な少なくとも1種の他の薬剤又はその生理学的に許容される塩との、組み合せ使用。
【請求項22】
他の薬剤が、CGRP拮抗薬又はその生理学的に許容される塩である、請求項21記載の使用。
【請求項23】
CGRP拮抗薬が、BIBN4096BS又はBIBN4107BS又はその生理学的に許容される塩である、請求項22記載の使用。
【請求項24】
他の薬剤が、アルモトリプタン、アビトリプタン、エレトリプタン、フロバトリプタン、ナラトリプタン、リザトリプタン、スマトリプタン、ゾルミトリプタン又はその生理学的に許容される塩からなる群から選択されるトリプタンである、請求項21記載の使用。
【請求項25】
血管性頭痛が、偏頭痛である、請求項19〜24のいずれか1項に記載の使用。
【請求項26】
請求項10〜18のいずれか1項に記載の医薬組成物又は部分キットの製造のための、テルミサルタンの使用。

【公表番号】特表2007−504193(P2007−504193A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525094(P2006−525094)
【出願日】平成16年9月1日(2004.9.1)
【国際出願番号】PCT/EP2004/009709
【国際公開番号】WO2005/023250
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(503385923)ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (976)
【Fターム(参考)】