説明

血糖コントロール用組成物

【課題】薬剤、機能性食品として有効な組成物をもって生活習慣病の中核を占める糖尿病、高血圧症の進行を安全に抑制すること。
【解決手段】血糖コントロール用組成物、血圧コントロール用組成物は、松かさから抽出されるリグニンを含有し、更には、グルコン酸亜鉛を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血糖コントロール用組成物に関し、特に、血糖、血圧の上昇を抑制し、糖尿病、高血圧症に関する疾患の予防、治療に適した組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、欧米先進国を中心として、糖尿病や高血圧症などの生活習慣病が蔓延しつつある。このことは、日本国も例外ではなく、欧米化に伴う簡易食等に含まれる食品添加物含有食品(惣菜、冷凍調理品やファーストフード食など)の普及による食環境の変化(悪化)、大気や水の汚染、社会ストレスによる喫煙など地球環境の悪化などによるヒト体内への活性酸素被曝を原因した糖尿病や高血圧症などが増加し続けている。
【0003】
その結果として、悪性腫瘍、脳や心臓の循環器障害が死亡原因となる事例が近年急増している。一方では、地球人口の増加による慢性的な食糧不足が進行していることも、水・空気を含めた食環境の悪化に拍車をかけているという現実がある。
【0004】
血流停滞の改善を促し、生活習慣病への移行を予防することに有効な機能性食品として、松かさ、松樹皮および松葉からの抽出物を含有する機能性食品が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−161077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、最新の医学進歩をもってしても、糖尿病や高血圧症などの生活習慣病群やアレルギ疾患(現代病)群に適応される医薬品は、ほとんどが病因を治療する原因療法ではなく、症状を緩和する対症療法薬で、病因を取り除くものではないうえに、副作用を有し、長期間に亘る服用にはリスクを負わざるを得ないのが現実である。
【0007】
本発明が解決しょうとする課題は、薬剤、機能性食品として有効な組成物をもって生活習慣病の中核を占める糖尿病、高血圧症の進行を安全に抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による血糖コントロール用組成物は、松かさから抽出されるリグニンを含有し、更には、グルコン酸亜鉛を含有する。
【0009】
本発明による血糖コントロール用組成物は、好ましくは、前記松かさが、マツ科に属するゴヨウマツ、或いはチョウセンゴヨウに由来するものである。
【0010】
本発明による血糖コントロール用組成物は、好ましくは、前記リグニンは、松かさの粉砕物を熱水抽出後にエタノール抽出し、松かさの残渣を除去した抽出物を減圧乾燥・高温殺菌した粉末物である。
【0011】
本発明による血圧コントロール用組成物は、松かさから抽出されるリグニンを含有し、更には、グルコン酸亜鉛を含有する。
【0012】
本発明による血圧コントロール用組成物は、好ましくは、前記松かさが、マツ科に属するゴヨウマツ或いはチョウセンゴヨウに由来するものである。
【0013】
本発明による血圧コントロール用組成物は、好ましくは、前記リグニンは、松かさの粉砕物を熱水抽出後にエタノール抽出し、松かさの残渣を除去した抽出物を減圧乾燥・高温殺菌した粉末物である。
【発明の効果】
【0014】
本発明による血糖コントロール用組成物、血圧コントロール用組成物は、有効成分として、松かさから抽出されるリグニンを含有しており、血糖の上昇、血圧の上昇を抑制する薬理作用がある。これにより、本発明による血糖コントロール用組成物、血圧コントロール用組成物は、急増する生活習慣病の元凶ともいえる糖尿病、高血圧症の予防、改善を促し、健全な身体に保つ上に、大きな効果を奏する。
【0015】
本発明による血糖コントロール用組成物、血圧コントロール用組成物は、更には、グルコン酸亜鉛を併用することにより、松かさから抽出されるリグニンとグルコン酸亜鉛との
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】血糖値の試験結果を示すグラフ。
【図2】血圧値の試験結果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明による血糖コントロール用組成物、血圧コントロール用組成物の実施形態を説明する。
【0018】
一つの実施形態による血糖コントロール用組成物、血圧コントロール用組成物は、松かさから抽出されるリグニン(Lignin)を含有するものである。
【0019】
もう一つの実施形態による血糖コントロール用組成物、血圧コントロール用組成物は、松かさから抽出されるリグニンを含有する組成物とグルコン酸亜鉛とを含有するものである。
【0020】
リグニンを含有する組成物は、自然植物界に広く分布する化合物であり、植物から熱水またはエタノールにより容易に抽出することができる。
【0021】
亜鉛は、金属(イオン)であり、一般的に用いられる硫酸亜鉛等の無機亜鉛化合物は体内への吸収が悪く、吸収量を高めるために多量に摂取すると、とくに腎臓への負担が大きく(腎)毒性を示すことがある。
【0022】
このことに対して、本実施例に用いるグルコン酸亜鉛は、有機亜鉛化合物であり、体内に摂取した場合でも比較的安全性が高いことが知られており、米国ではサプリメント類、あめ類または飲料等として用いられている。日本でも過去には、乳幼児の粉ミルクにのみ必須ミネラルとして、その安全性から混入が認められており、現在では食品添加物(1日あたりの摂取量の制限は亜鉛量として15mgまで)として使用されている。
【0023】
松かさから抽出されたリグニンは、松かさの粉砕物を熱水による抽出処理後に、エタノールによる抽出処理を行い、松かさの残渣を除去した抽出物を減圧乾燥・高温殺菌して得られる粉末をイオン吸着カラムで分画精製されたものであり、これは、P−クマリールアルコール、コニフェリールアルコール、シナフィールアルコール類が15個結合した低分子型リグニンである。
【0024】
低分子型リグニンは、リグニンを多く含み、熱水抽出処理、エタノール抽出処理といった容易な抽出法で組成物として得られる。低分子型リグニンを抽出する松かさは、高い収率を得るうえで、マツ科に属するゴヨウマツ(Pinus parviflora Sieb.&Zucc)、或いはチョウセンゴヨウ(Pinus koraiensis Sieb.&Zucc)に由来する松かさがよい。
【0025】
リグニンを含有する組成物は、松かさの粉砕物を熱水抽出後にエタノール抽出し、松果の残渣を除去した抽出物を減圧乾燥・高温殺菌したものであり、粉末物として存在する。
【0026】
松かさからリグニンを抽出・精製する方法は公知の方法を適用し得る。リグニン抽出・精製の実例を、以下に説明する。
【0027】
70kgのチョウセンゴヨウ(Pinus koraiensis Sieb.&Zucc)の松かさを、熱水抽出処理として、42リットルの100℃の沸騰水によって2時間煮沸し、その後、60℃で4時間に亘って減圧濃縮を行った。
【0028】
この熱水抽出処理による抽出物に、124リットルのエタノールを加え、24時間静置し、エタノール抽出処理を行った。
【0029】
その後、松かさの残渣を取り除き、減圧濃縮したエキスを80℃の炉で12時間に亘って静置し、高温殺菌を行った。
【0030】
その後、得られたエキスを、スプレードライ装置にて噴霧乾燥して粉末を得る。得られた粉末を80メッシュのふるいによってふるいがけし、粉末粒子の大きさを整えた。これにより、松かさから抽出された低分子型リグニンを含む粉末物として、1kgの粉末物を得ることができた。
【0031】
本発明においては、薬剤または食品に、上述のリグニンを含有する組成物を添加することにより、血糖または血圧の上昇を抑制する薬剤または機能性食品とすることができる。これら薬剤、機能性食品は、糖尿病及びその予備軍等と、本態性高血圧症並びに腎性高血圧症の二次高血圧症及び境界型高血圧症等からなる群から選択される血糖または血圧の上昇する疾患などの予防、改善、あるいは治療に用いることができる。
【0032】
本発明による薬剤を医薬品として用いる際には、予防や治療に有効な量の松かさから抽出されるリグニンを含有する組成物とグルコン酸亜鉛とを含有する複合物が、製薬学的に許容できる担体または希釈剤と共に製剤化されるとよい。その他にも、結合剤、吸収促進剤、滑沢剤、乳化剤、界面活性剤、酸化防止剤、着色剤、防腐剤、香料、甘味料などを添加してもよい。
【0033】
このような医薬製剤において、有効成分である松かさから抽出されるリグニンを含有する組成物とグルコン酸亜鉛とを含有する複合物の担体成分に対する配合割合は、1〜50重量%の範囲であり、特に、3〜10重量%の範囲が好ましい。
【0034】
また、グルコン酸亜鉛の配合量は、薬剤担体成分の全体に対する配合割合が、約0.25mg/kgBW〜0.50mg/kgBWの範囲であり、かつ、該グルコン酸亜鉛の1日あたりの摂取量が亜鉛量として15mg/日を超えないように配合させるのがよい。
【0035】
医薬製剤として用いる場合における剤形としては、例えば、顆粒剤、細粒剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、噴霧剤、液剤、懸濁液剤、軟膏剤、ゲル剤、ペースト剤、クリーム剤などを挙げることができ、その投与経路としては、経口、静脈内、筋肉内、皮下、関節腔など種々の投与経路を挙げることができる。また、有効成分の投与量及び投与期間は、病状、年齢、性別、投与経路などに応じて変更することができる。
【0036】
松かさから抽出されるリグニンを含有する組成物は、機能性食品に添加してもよい。この機能性食品は、ビタミン類、ミネラル類、ハーブ類その他の栄養素類と食品等を1種類以上含む天然物からなる食品またはその加工食品のことで、例えば、菓子類または清涼飲料等の飲食品を含む。
【0037】
次に、本発明による松かさから抽出されるリグニンを含有する組成物とグルコン酸亜鉛とを含有する血糖コントロール用組成物による薬剤の血糖上昇を抑制する効果の検証結果について説明する。
(実施例1)
【0038】
7週齢、雌性の自然発症高血糖(KKAy)マウスに対し、予備飼育期間中は固形飼料と殺菌水道水を自由に摂取させて血糖値及び体重、摂餌量等の状態観察を行い、1週間目に無作為に、1群10匹、3群(対照群、投与群1、投与群2)に群分けした。
【0039】
対照群には、溶剤(0.3%CMC;カルボキシメチルセルロース懸濁液)のみを投与した。
【0040】
投与群1には、松かさから抽出されるリグニンを含有する組成物を溶剤の0.3%CMC懸濁液で調製したものを投与した。
【0041】
投与群2には、松かさから抽出されるリグニンを含有する組成物を溶剤の0.3%CMC懸濁液で調製したものに、グルコン酸亜鉛2.3mg/kgBW添加したものを投与した。
【0042】
これらの投与は、それぞれ1日1回、連続28日間200mg/kgBWを強制経口投与し、1週間毎に空腹時血糖測定及び状態観察を実施した。血液は眼高静脈叢から採血し、血清を分取した。被験物質は200mg/kgBW相当量とした。試験結果は、平均値±標準偏差で表し、有意差検定はStudent’s−tを用いた。その結果(空腹時血糖値)を図1に示す。
【0043】
対照群(×印)では、血糖値が投与前の141.39mg/dL(平均値)から順次上昇し、最終投与の28日目で最大値228.93mg/dL(平均値)と高血糖を示した。
【0044】
この対照群に対して、投与群1(■印)では、投与前の140.10mg/dL(平均値)が徐々に抑制し、21日目以降から有意な血糖値の上昇抑制がみられた。血糖値は、それぞれ、200.46mg/dL(平均値)(p<0.05)、210.99mg/dL(平均値)(p<0.01)。
【0045】
投与群2(●印)では、投与前の139.93mg/dL(平均値)が徐々に抑制し、21日目以降から有意な血糖値の上昇抑制がみられた。血糖値は、それぞれ、191.97mg/dL(平均値)(p<0.01)、197.06 mg/dL(平均値)(p<0.01)で、投与群1よりも強い血糖値の上昇抑制効果がみられた。
【0046】
以上により、被験物質の松かさから抽出されるリグニンを含有させてなる組成物と該組成物に2.3mg/kgBW相当量グルコン酸亜鉛を添加した複合物には、自然発症高血糖(KKAy)マウスの血糖上昇に対する抑制効果のあることが実証された。また、その血糖抑制効果はグルコン酸亜鉛の添加によってより増強された。
【0047】
次に、本発明による松かさから抽出されるリグニンを含有する組成物とグルコン酸亜鉛とを含有する血圧コントロール用組成物による薬剤の血圧上昇を抑制する効果の検証結果について説明する。
(実施例2)
【0048】
8週齢、雄性の自然発症高血圧(SHRSP)ラットに対し、予備飼育期間中は固形飼料と殺菌水道水を自由に摂取させて収縮期(最高)血圧及び体重、摂餌量等の状態観察を行い、1週間目に無作為に、1群10匹、3群(対照群、投与群1、投与群2)に群分けした。
【0049】
対照群には、溶剤(0.3%CMC;カルボキシメチルセルロース懸濁液)のみを投与した。
【0050】
投与群1には、松かさから抽出されるリグニンを含有する組成物を溶剤の0.3%CMC懸濁液で調製したものを投与した。
【0051】
投与群2には、松かさから抽出されるリグニンを含有する組成物を溶剤の0.3%CMC懸濁液で調製したものに、グルコン酸亜鉛2.3mg/kgBW添加したものを投与した。
【0052】
これらの投与は、それぞれ1日1回、連続30日間強制経口投与し、5日毎(0、10、15、20、25、30日)に、ラットを38±1℃に保温したホルダに保定したtail・cuff法によって収縮期血圧測定及び状態観察を実施した。被験物質は200mg/kgBW相当量を投与した。試験結果は平均値±標準偏差で表し、有意差検定はStudent’s−tを用いた。その結果(収縮期血圧)を図2に示す。
【0053】
対照群(×印)では、収縮期血圧が投与前の137.40mmHg(平均値)から順次上昇し、最終投与の30日目で最大値195.49mmHg(平均値)と高血圧を示した。
【0054】
この対照群に対して、投与群1(■印)では、投与前の収縮期血圧135.48mmHg(平均値)が徐々に抑制し、20日目以降から有意な血圧の上昇抑制がみられた。収縮期血圧は、それぞれ、165.76mmHg(平均値)(p<0.01)、172.62mmHg(平均値)(p<0.01)、178.06mmHg(平均値)(p<0.01)。
【0055】
投与群2(●印)では、投与前の収縮期血圧136.45mmHg(平均値)が徐々に抑制し、15日目以降から有意な血圧の上昇抑制がみられた。収縮期血圧は、それぞれ、155.00 mmHg(平均値)(p<0.01)、161.22 mmHg(平均値)(p<0.01)、166.25 mmHg(平均値)(p<0.01)、169.80mmHg(p<0.01)と、投与群1よりも強い上昇抑制がみられた。
【0056】
以上により、被験物質の松かさから抽出されるリグニンを含有させてなる組成物と該組成物に2.3mg/kgBW相当量グルコン酸亜鉛を添加した複合物には、自然発症高血圧(SPHSP)ラットの収縮期血圧上昇に対する抑制効果のあることが実証された。また、その抑制効果はグルコン酸亜鉛の添加によってより増強された。
【0057】
このように、本発明による血糖または血圧の上昇を抑制する効果と該組成物に2.3mg/kgBW相当量グルコン酸亜鉛を添加した複合物には、血糖または血圧の上昇を抑制する効果のあることが実証された。また、血糖または血圧の上昇を抑制する効果は、グルコン酸亜鉛を添加することで相乗的に強化されることがわかった。
【0058】
従って、本発明により糖尿病及び高血圧症に関連する疾患の予防、疾患の進行を副作用を伴わずに改善することが期待できる。また、グルコン酸亜鉛を添加することで、その効果が相乗的に高められることから、松かさから抽出されるリグニンを含有させてなる組成物を単独で用いるよりも、グルコン酸亜鉛を添加することで、より効果的な血糖または血圧の上昇を抑制する効果が得られることがわかった。また、これらの該組成物とグルコン酸亜鉛とは、いずれも経口摂取による安全性が高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
松かさから抽出されるリグニンを含有する血糖コントロール用組成物。
【請求項2】
更に、グルコン酸亜鉛を含有する請求項1に記載の血糖コントロール用組成物。
【請求項3】
前記松かさが、マツ科に属するゴヨウマツ或いはチョウセンゴヨウに由来するものである請求項1または2に記載の血糖コントロール用組成物。
【請求項4】
前記リグニンは、松かさの粉砕物を熱水抽出後にエタノール抽出し、松かさの残渣を除去した抽出物を減圧乾燥・高温殺菌した粉末物である請求項1から3の何れか一項に記載の血糖コントロール用組成物。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項に記載の血糖コントロール用組成物を含む薬剤。
【請求項6】
請求項1から4の何れか一項に記載の血糖コントロール用組成物を含む機能性食品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−12021(P2011−12021A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−157796(P2009−157796)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(505358945)株式会社ファーストビジョン (3)
【Fターム(参考)】