血糖測定装置および血糖測定方法
【課題】血糖値を精度よく測定することができる血糖測定装置および血糖測定方法を提供する。
【解決手段】反応により生成された色素に特異の少なくとも一つの吸収波長の第2光λ2と、血液検体中のヘモグロビンに特異の少なくとも一つの吸収波長の第1光λ1とを試験紙に対して照射する発光素子25と、発光素子25によって照射された光の反射光を受光する受光素子26と、受光素子26の受光強度に基づいて、ヘモグロビンの吸収波長の光の反射率R1と、色素の吸収波長の光の反射率R2とを算出するCPU41と、血糖値ごとの、ヘマトクリット値(Ht)と反射率R1との関係を示す第1検量線群と、複数のヘマトクリット値(Ht)ごとの、血糖値(G)と反射率R2との関係を示す第2検量線群とを記憶している記憶部42と、CPU41で算出した反射率R1および反射率R2を、第1検量線群および前記第2検量線群に代入して、血糖値(G)を算出する。
【解決手段】反応により生成された色素に特異の少なくとも一つの吸収波長の第2光λ2と、血液検体中のヘモグロビンに特異の少なくとも一つの吸収波長の第1光λ1とを試験紙に対して照射する発光素子25と、発光素子25によって照射された光の反射光を受光する受光素子26と、受光素子26の受光強度に基づいて、ヘモグロビンの吸収波長の光の反射率R1と、色素の吸収波長の光の反射率R2とを算出するCPU41と、血糖値ごとの、ヘマトクリット値(Ht)と反射率R1との関係を示す第1検量線群と、複数のヘマトクリット値(Ht)ごとの、血糖値(G)と反射率R2との関係を示す第2検量線群とを記憶している記憶部42と、CPU41で算出した反射率R1および反射率R2を、第1検量線群および前記第2検量線群に代入して、血糖値(G)を算出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血糖測定装置および血糖測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病の予防および治療には、血糖値を把握することが重要である。
【0003】
採血した血液から血糖値を光学的に測定する技術としては、下記の特許文献1に示すようなグルコース濃度の定量方法が知られている。特許文献1に開示されている定量方法は、発色組成物を含有してなる多層分析素子を用いて、500〜590nmの範囲内で定められた一の波長の光を用いて赤血球の色素の赤色濃度を測定する一方で、500nmよりも短波長側領域または590nmよりも長波長側領域の範囲内で定められた一の波長の光を用いて血液検体の呈色濃度を測定するものである。このような構成の定量方法によれば、呈色濃度から得られるグルコース値を、赤色濃度から得られるヘマトクリット値を用いて補正しつつ、グルコース濃度を定量することができる。
【特許文献1】特開2000−262298号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記定量方法では、500〜590nmの範囲内で定められた一の波長の光を用いて得られるヘマトクリット値の測定精度が不十分であるために、グルコース濃度を正確に定量することができないという問題がある。
【0005】
本発明は、上述した問題を解決するためになされたものである。したがって、本発明の目的は、血糖値を精度よく測定することができる血糖測定装置および血糖測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の血糖測定装置は、血液検体中のグルコースと反応する発色試薬を含む試験紙を用いて血糖値を測定する血糖測定装置であって、血液検体中のヘモグロビンに特異の少なくとも一つの吸収波長の光と、前記反応により生成された色素に特異の少なくとも一つの吸収波長の光とを前記試験紙に対して照射する少なくとも一つの発光素子と、前記発光素子によって照射された光の反射光を受光する少なくとも一つの受光素子と、前記受光素子の受光強度に基づいて、前記ヘモグロビンの吸収波長の光の反射率R1と、前記色素の吸収波長の光の反射率R2とを算出する反射率算出部と、血糖値ごとの、ヘマトクリット値と反射率R1との関係を示す第1検量線群と、ヘマトクリット値ごとの、血糖値と反射率R2との関係を示す第2検量線群とを記憶している記憶部と、前記反射率算出部で算出した反射率R1および反射率R2を前記第1検量線群および前記第2検量線群に代入して前記血糖値を算出するか、または、前記反射率算出部で算出した反射率R1および反射率R2を前記第1検量線群および前記第2検量線群に代入してヘマトクリット値を求め該ヘマトクリット値を用いて血糖値を算出する血糖値算出部と、を有する。
【0007】
本発明の血糖測定方法は、血液検体中のグルコースと反応する発色試薬を含む試験紙を用いて血糖値を測定する方法であって、血液検体中のヘモグロビンに特異の少なくとも一つの吸収波長の光と、前記反応により生成された色素に特異の少なくとも一つの吸収波長の光とを前記試験紙に対して照射する工程と、前記照射された光の反射光を受光する工程と、前記光の受光強度に基づいて、前記ヘモグロビンの吸収波長の光の反射率R1と、前記色素の吸収波長の光の反射率R2とを算出する工程と、血糖値ごとのヘマトクリット値と反射率R1との関係を示す第1検量線群と、ヘマトクリット値ごとの血糖値と反射率R2との関係を示す第2検量線群とに、算出した前記反射率R1および反射率R2を代入して、血糖値を算出するか、または、ヘマトクリット値を算出し該ヘマトクリット値を用いて血糖値を算出する工程と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の血糖測定装置によれば、2つの波長の光の反射率を、予め記憶している第1検量線群と第2検量線群とに代入して血糖値を算出するので、1つの波長の光の反射率に基づいて血糖値を算出する場合に比べて、正確に血糖値を測定できる。
【0009】
本発明の血糖測定方法によれば、2つの波長の光の反射率を、予め記憶している第1検量線群と第2検量線群とに代入して血糖値を算出するので、1つの波長の光の反射率に基づいて血糖値を算出する場合に比べて、正確に血糖値を測定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施の形態における血糖測定装置の概略構成を示す斜視図であり、図2は、図1に示す血糖測定装置の部分断面図である。
【0012】
図1に示すとおり、本実施の形態の血糖測定装置10は、測定装置本体部20と、測定装置本体部20に装着されるチップ30とから構成される。以下、チップ30および測定装置本体部20の順に説明する。
【0013】
(チップ)
チップ30は、血液検体を保持するものである。図1および図2に示すとおり、チップ30は、細管部31aが備えられたホルダ31と、ホルダ31内部に固定された試験紙32と、を備える。
【0014】
細管部31aは、毛細管現象により先端開口部から血液検体をホルダ31内部に導入する。細管部31aを通じて導入される血液検体は、ホルダ31内部の試験紙32に吸収される。試験紙32は、シート状の多孔質基材から構成されており、試験紙32には、グルコースと反応して呈色反応を示す発色試薬が含浸されている。このような構成によれば、細管部31aを通じてホルダ31内部に導入される血液検体は、発色試薬が含浸された試験紙32において呈色反応を起こす。
【0015】
試験紙32の材料としては、ポリエステル類、ポリアミド類、ポリオレフィン類、ポリスルホン類、またはセルロース類が挙げられる。また、発色試薬としては、たとえば、グルコースオキシダーゼ(GOD)、ペルオキシダーゼ(POD)、4−アミノアンチピリン、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−m−トルイジン・ナトリウム(TOOS)が挙げられる。
【0016】
(測定装置本体部)
測定装置本体部20は、チップ30に保持される血液検体の血糖値を測定するものである。図1に示すとおり、本実施の形態の測定装置本体部20は、波長の異なる2つの光を血液検体に照射して反射光の強度を測定する測光部21と、測光部21を制御するとともに測光部21で取得される測光値データに対して種々の演算を実行する制御部(不図示)と、を有する。測光部21は、外装ケース22の先端部に設けられている。制御部は、外装ケース22内部に電源などとともに収容されている。制御部についての詳細な説明は後述する。外装ケース22表面には、血糖値の測定結果などを表示する表示部23および各種スイッチ24が設けられている。
【0017】
図2に示すとおり、本実施の形態の測光部21は、波長の異なる2つの光λ1、λ2を発光する発光素子25と、2つの光λ1、λ2の反射光を受光する受光素子26と、を備える。発光素子25および受光素子26は、ホルダ27に収容されている。
【0018】
発光素子25は、ヘモグロビンに特異の少なくとも一つの吸収波長(たとえば、545nm)の光(以下、第1光と称する)λ1と、血液検体の呈色反応の結果生じる色素に特異の少なくとも一つの吸収波長(たとえば、630nm)の光(以下、第2光と称する)λ2を照射する。本実施の形態の発光素子25は、2波長型の発光ダイオードであって、制御部により制御され、ヘモグロビンに特異の吸収波長の第1光λ1または色素に特異の吸収波長の第2光λ2を照射する。本実施の形態の発光素子25から照射される第1および第2光λ1、λ2はパルス光であって、その周期が0.5〜3.0msec程度、1パルスの発光時間が0.05〜0.3msec程度に設定される。発光素子25から照射される第1および第2光λ1、λ2は、試験紙32で反射される。なお、本実施の形態では第1および第2発光手段として、2波長型の発光ダイオードを用いているが、1波長型の発光ダイオードを2つ設けてもよい。
【0019】
受光素子26は、試験紙32で反射された第1および第2光λ1、λ2を受光して、血液検体の吸光度、すなわち、血液検体の第1および第2光λ1、λ2の反射率を測定するものである。
【0020】
本実施の形態の受光素子26は、フォトダイオードであって、試験紙32で反射される第1光λ1と、第2光λ2とを受光して、これらの強度を測光値データとして出力する。
【0021】
図3は、図1に示す血糖測定装置の概略構成を示すブロック図である。
【0022】
上述したとおり、本実施の形態の血糖測定装置10は、測光部21および制御部40を有する。測光部21の発光素子25は、制御部40により発光を制御され、測光部21の受光素子26からの測光値データは、A/D変換器28を介して、制御部40に入力される。制御部40は、外装ケース22表面の表示部23および各種スイッチ24に対応する入力部29と電気的に接続されている。
【0023】
図3に示すとおり、本実施の形態の制御部40は、CPU41および記憶部42を備える。記憶部42は、CPU41と電気的に接続されている。
【0024】
CPU41は、波長の異なる2つの光λ1、λ2に対する測光値データに対して種々の演算を実行するものである。本実施の形態のCPU41は、受光素子26の測光値データから、波長の異なる2つの光λ1、λ2に対する血液検体の反射率R1、R2を算出する。CPU41は、反射率算出部および血糖値算出部として機能する。
【0025】
ここで、CPU41は、反射率算出部として、受光素子26の受光強度に基づいて、ヘモグロビンに特異の吸収波長の光の反射率R1と、色素に特異の吸収波長の光の反射率R2とを算出する。また、CPU41は、血糖値算出部として、反射率算出部で算出した反射率R1および反射率R2を、後述する第1検量線群および第2検量線群に代入して、血糖値を算出する。CPU41の具体的な処理については、後述する。
【0026】
記憶部42は、第1検量線群および第2検量線群を記憶している。第1検量線群は、血糖値ごとの、ヘマトクリット値と反射率R1との関係式であり、第2検量線群は、ヘマトクリット値ごとの、血糖値と反射率R2との関係式である。第1検量線群および第2検量線群は、それぞれの関係式の係数の群(第1係数群、第2係数群)として記憶されていてもよい。その他に、記憶部42は血糖値算出プログラムが格納されている。
【0027】
以上のとおり構成される本実施の形態の血糖測定装置10では、ヘモグロビンに特異の吸収波長を有する第1光λ1が照射され、血液検体からの第1光λ1の反射率R1が測定される。次に、血液検体の呈色反応により生じた色素に特異の吸収波長を有する第2光λ2が照射され、血液検体からの第2光λ2の反射率R2が測定される。次に、測定された2つの反射率R1、R2を用いて、血液検体の血糖値が算出される。以下、図4〜図7を参照しつつ、CPU41による血糖値測定の流れについて説明する。
【0028】
図4は、図1に示す血糖測定装置における成分測定処理を説明するためのフローチャートである。
【0029】
本実施の形態における血糖値測定処理では、まず、血液点着前に、ヘモグロビンに特異の吸収波長の第1光λ1の基準値および色素に特異の吸収波長の第2光λ2の基準値を測定するために、第1光λ1および第2光λ2は、交互に時分割で発光され、試験紙32に照射される。試験紙32に血液検体が吸収され、呈色反応が発生したことを検知するために、色素の吸収波長の第2光λ2が使用される。呈色が検知された後、一旦第2光λ2が止められ第1光λ1のみが使用される(ステップS101)。なお、本実施の形態の血糖値測定装置10では、血液検体が試験紙32の一方の面側から試験紙32に吸収される一方で、第1光λ1および第2光λ2は試験紙32の他方の面側から試験紙32に照射される。
【0030】
第1光λ1は、試験紙32で反射して、受光素子26に受光される(ステップS102)。受光された第1光λ1は、血液検体中のヘモグロビンの吸光作用により、光強度が低減している。この強度信号は、一旦、記憶部42に記憶される。
【0031】
CPU41は、受光された第1光λ1の強度信号の反射率R1を算出する(ステップS103)。ここで、反射率R1は、血液を保持しない試験紙32に第1光λ1を投射して反射させたときの反射光の強度信号に対する、ステップS102で受光された第1光λ1の強度信号の割合である。血液を保持しない状態の試験紙32に第1光λ1を投射したときの反射光の強度信号は、予め測定されており、記憶部42に記憶されている。
【0032】
次に、ヘモグロビンの吸収波長の第1光λ1に代わって、血液検体の呈色反応により生じた色素の吸収波長の第2光λ2が照射される(ステップS104)。本実施の形態では、2波長型の発光素子25が、ヘモグロビンに特異の吸収波長の第1光λ1に代えて、色素に特異の吸収波長の第2光λ2を発光する。第2光λ2は、試験紙32で反射して、受光素子26に受光される(ステップS105)。受光された第2光λ2は、血液検体中の色素の吸光作用により、光強度が低減している。この強度信号は、一旦、記憶部42に格納される。
【0033】
CPU41は、受光された第2光λ2の強度信号の反射率R2を算出する(ステップS106)。ここで、反射率R2は、血液を保持しない試験紙32に第2光λ2を投射して反射させたときの反射光の強度信号に対する、ステップS105で受光された第2光λ2の強度信号の割合である。血液を保持しない状態の試験紙32に第2光λ2を投射したときの反射光の強度信号は、予め測定されており、記憶部42に記憶されている。
【0034】
CPU41は、算出した反射率R1およびR2を用いて、血糖値を算出する(ステップS107)。
【0035】
ステップS107の血糖値算出の詳細な流れについて説明する。ここで、血糖値算出には、事前準備として、上述の第1検量線群(第1係数群)および第2検量線群(第2係数群)を算出して、記憶部42に予め格納しておく必要がある。したがって、以下では、まず、事前準備として、第1検量線群および第2検量線群を用意する工程について説明する。続けて、実際に第1および第2検量線群を用いて、血糖値を算出するまでの工程を説明する。
【0036】
(事前準備)
図5は、ヘマトクリット値(Ht)を固定したときの、血糖値(G)と変数x、yとのデータセットを格納するデータテーブルである。
【0037】
事前準備としては、図5に示すデータテーブルにデータを蓄積し、蓄積したデータを解析することによって、血糖値と変数yとの相関関係を示す第2検量線群を作成する。データの蓄積について説明する前に、まず、データテーブルの構造について説明する。
【0038】
(事前準備−データ蓄積)
図5において、「Ht」はヘマトクリット値を示し、右側の添え字h(1〜m)により、ヘマトクリット値の数値的違いが示される。ヘマトクリット値とは、血液中に占める血球の容積の割合を示す数値であり、ヘモグロビン量に相関する。「G」は血糖値を示し、右側の添え字g(1〜n)により、血糖値の数値的違いが示される。「x」は、第1光λ1の反射率R1に対応する変数であり、「y」は、第2光λ2の反射率R2に対応する変数である。x、yは、それぞれ、たとえば、1/R1、1/R2やその対数を取ったもの、(1−R1)/2R1、(1−R2)/2R2など、後述の演算における近似を容易にするために変換された数値である。この変数変換については、一般的なので説明を省略する。
【0039】
このように、図5では、Ht1〜Htmのm個のヘマトクリット値について、それぞれn個の血糖値(G)、x、yのデータセットが格納可能である。すなわち、x、yについては、m×n個のデータセットが格納可能である。
【0040】
図5のデータテーブルに格納されるデータセットは、血糖値(G)とヘマトクリット値(Ht)とが既知の血液サンプルを用いた実験により完成される。上述の血糖測定装置10により、血液サンプルの反射率R1、R2を測定することによって、x、yが得られ、データセットとしてデータテーブルに蓄積される。
【0041】
(事前準備−検量線群の作成)
完成されたデータテーブルが、行ごとに取り出され、各ヘマトクリット値(Ht)でのデータ系列(Gg、yg)h (g=1、2…n h=1、2…m)が抽出される。
【0042】
このデータ系列から、血糖値(G)を変数(y)で表す適当な関数に近似される。関数としては、yの多項式やスプライン関数が用いられる。yの多項式を適用する場合、Htの数だけ、すなわち、m個の関係式が作成される。
【0043】
【数1】
【0044】
上記式(1)において、hG(y)は、図5のh番目のヘマトクリット値(Ht)のときの関数であることを意味する。nGは、多項式の次数を意味し、nG≦n−1を満たす必要がある。hbjは、図5のh番目のヘマトクリット値(Ht)のときの関係式のうち、j次項の係数を意味する。
【0045】
係数hbjは、最小自乗法で求めることができ、最小にする関数Jは相対誤差を小さくする意味で重みを設け、次式(2)のように定義することで、低血糖側の相対誤差を小さくできる場合もある。
【0046】
【数2】
【0047】
以上より、ヘマトクリット値(Ht)ごとに変数(y)で血糖値(G)を近似する係数群hbj (j=0、1…nG)(h=1、2…m)が決まる。この係数群を、以下では、第2係数群と呼ぶ。スプライン関数を用いる場合でも、同様に係数群が得られる。
【0048】
変数(y)で血糖値(G)を近似する関係式の群、すなわち、第2検量線群は、次のようになる。
【0049】
【数3】
【0050】
図6は、ヘマトクリット値(Ht)ごとに変数(y)で血糖値(G)を近似する関係式を示す概略図である。
【0051】
h=1、2…m番目のヘマトクリット値(Ht)ごとに、変数(y)の関数Gを図示すると、図6に示すようになる。図中、h=3までしか示していないが、m番目までの全ての関数が、(y、Ht、G)空間に含まれる。
【0052】
次に、上記と同様の手順で、血糖値(G)ごとに変数(x)でヘマトクリット値(Ht)を近似する関係式を決定する。そのため、まず、図5のデータテーブルが、列ごとに取り出され、各血糖値(G)でのデータ系列(Hth、xh)g (h=1、2…m g=1、2…n)が抽出される。
【0053】
このデータ系列から、ヘマトクリット値(Ht)を変数(x)で表す適当な関数に近似される。xの多項式を適用する場合、Gの数だけ、すなわち、n個の関係式が作成される。
【0054】
【数4】
【0055】
上記式(4)において、gHt(x)は、図5のg番目の血糖値(G)のときの関数であることを意味する。nHtは、多項式の次数を意味し、nHt≦m−1を満たす。gajは、図5のg番目の血糖値(G)のときの関係式のうち、j次項の係数を意味する。
【0056】
係数gajは、上記とhbj同様に、最小自乗法等で求めることができる。
【0057】
以上より、血糖値(G)ごとに変数(x)でヘマトクリット値(Ht)を近似する係数群gaj (j=0、1…nHt)(g=1、2…n)が決まる。この係数群gajを、以下では、第1係数群と呼ぶ。スプライン関数を用いる場合でも、同様に係数群が得られる。
【0058】
変数(x)でヘマトクリット値(Ht)を近似する関係式の群、すなわち第1検量線群は、次のようになる。
【0059】
【数5】
【0060】
図7は、血糖値(G)ごとに変数(x)でヘマトクリット値(Ht)を近似する関係式を示す概略図である。
【0061】
g=1、2…n番目の血糖値(G)ごとに、変数(y)の関数Htを図示すると、図7示すようになる。図中、g=3までしか示していないが、実際には、n番目までの全ての関数が、(x、G、Ht)空間に含まれる。図6および図7に示されるように、それぞれの空間には、変数が3つずつ含まれることになる。
【0062】
なお、上記事前準備において、実際の実験手順を考慮すると、異なったヘマトクリット値(Ht)において、血糖値(G)を揃えることは困難な場合がある。この場合、血糖値(G)を変数(x)の多項式で近似した式、たとえば、次のような式(6)を作成する。
【0063】
【数6】
【0064】
この式から、各ヘマトクリット値(Ht)で血糖値(G)が揃ったデータxを生成できる。このようにして、血糖値(G)ごとに変数(x)でヘマトクリット値(Ht)を近似する第1係数群gaj (j=0、1…nHt)(h=1、2…m)を得てもよい。
【0065】
このように、予め準備された第1係数群および第2係数群は、上記式(1)、(4)と共に記憶部42に格納されて、事前準備が完了する。
【0066】
(血糖値算出)
図8は、血糖値算出工程の流れを示すフローチャートである。図9は、図7に示す空間をx=x*の平面で切り取る様子を示す図、図10は、図6に示す空間をy=y*の平面で切り取る様子を示す図である。
【0067】
まず、CPU41は、図4のステップS103およびS106で測定された反射率R1、R2を変換して、x*、y*とする(ステップS201)。x*、y*は、上記の「事前準備−データ蓄積」で反射率R1、R2を変換したときと同様に変換して得られる。
【0068】
続けて、CPU41は、得られたx*を、上記式(5)に代入する(ステップS202)。これにより、第1検量線群が示される系、すなわち、係数群1で表される系は、図9に示されるように、x=x*の(Ht、G)平面で切り取られる。
【0069】
CPU41は、この(Ht、G)平面と、第1検量線群との交点列に基づいて、血糖値(G)を変数とする補間関数Ht=g(G)を定義する(ステップS203)。補間関数は、図9中、x=x*の(Ht、G)平面上に示される曲線である。補間関数は、たとえば、ニュートンの多項式、ラグランジュの多項式が適しているが、点列から簡便に定義できる関数の形式であればよい。ラグランジュの多項式を適用する場合、補間関数は次のように示される。
【0070】
【数7】
【0071】
ここで、mgは、大きい程よいのではなく、補間関数が振動しない程度に抑える。
【0072】
CPU41は、得られたy*を、上記式(3)に代入する(ステップS204)。第2検量線群が示される系、すなわち、係数群2で表される系は、図10示されるように、y=y*の(G、Ht)平面で切り取られる。
【0073】
CPU41は、この(G、Ht)平面と、第2検量線群との交点列に基づいて、ヘマトクリット値(Ht)を変数とする補間関数G=h(Ht)を定義する(ステップS205)。補間関数は、図10中、y=y*の(G、Ht)平面上に示される曲線である。補間関数は、たとえば、ラグランジュの多項式を適用する場合、次のように示される。
【0074】
【数8】
【0075】
ここで、mhは、大きい程よいのではなく、補間関数が振動しない程度に抑える。式(8)において、たとえば、h=1のときのヘマトクリット値(Ht)=20%、h=2のときのヘマトクリット値(Ht)=40%、H=3のときのヘマトクリット値(Ht)=60%とする。この場合、ヘマトクリット値(Ht)=(20、40、60)が等間隔に与えられるので、これらを(−1、0、1)とノーマライズすることで、演算を簡易化できる。
【0076】
以上のように、x=x*、y=y*を代入することによって、変数がヘマトクリット値(Ht)と、血糖値(G)だけの式が2つ定義されることとなる。
【0077】
CPU41は、上記式(7)および式(8)を連立して解く(ステップS206)。これは、図9のx=x*の(Ht、G)平面上に示される曲線と、図10のy=y*の(G、Ht)平面上に示される曲線との交点を求めることを意味する。
【0078】
CPU41は、連立方程式を変形して陽の形で解が得られない場合、挟み込み法、ニュートン法などの広く知られた非線型方程式の数値解放を用いて解を得ることができる。たとえば、次のような逐次解法を適用できる。
【0079】
k番目のGの推定値G(k)に対して、式(7)によりHtを求める。
【0080】
【数9】
【0081】
これを、式(8)に代入して求めた計算値Gと推定値G(k)の誤差Yを求める。
【0082】
【数10】
【0083】
【数11】
【0084】
【数12】
【0085】
【数13】
【0086】
k=0、1にあたるG(0)とG(1)は予め決めておく。これには、式(7)が負にならない範囲で、たとえば、G(0)=40mg/dl、G(1)=300mg/dlとしておけばよい。
【0087】
(実施例)
次に、上記血糖測定方法の実施例について説明する。
【0088】
<1.変数x、yの測定>
図11は、血糖値が既知の血液を測定して得られた変数x、yを示す図である。
【0089】
まず、ヘマトクリット値(Ht)と血糖値(G)が既知の血液を用意して、血糖測定装置10により測定した。このとき、第1光λ1は、波長を545nmとし、呈色開始から5秒後の反射光量の測定に用いた。第2光λ2は、波長を630nmとし、呈色開始から10秒後の反射光量の測定に用いた。得られた第1および第2光λ1、λ2の反射率R1、R2は、それぞれ、x=256/R1、y=256/R2に代入して、変換された。既知のヘマトクリット値(Ht)および血糖値(G)について、測定された変数(x)、(y)は、図11に示す通りである。
【0090】
<2.第1および第2係数群の決定>
図12は、ヘマトクリット値(Ht)と変数(x)との関係を示すグラフ、図13は、第1係数群を示す図、図14は、血糖値(G)と変数(y)との関係を示すグラフ、図15は、第2係数群を示す図である。
【0091】
式(1)および式(4)において、nG=nHt=2とした。そして、上述の方法により血糖値(G)がG=45、100、400mg/dlのときの、それぞれのヘマトクリット値(Ht)と変数(x)との関係式(第1検量線群)を求めた。求められた関係式は、図12に示すとおりである。この関係式の第1係数群gaj (j=0、1、2)(g=45、100、400)も同時に求まる。求められた第1係数群は、図13に示す通りである。
【0092】
ヘマトクリット値(Ht)がHt=20、40、60%のときの、それぞれの血糖値(G)と変数(y)との関係式を求めた。求められた関係式(第2検量線群)は、図14に示す通りである。この関係式の第2係数群hbj (j=0、1、2)(h=20、40、60)も同時に求まる。求められた第2係数群は、図15に示す通りである。
【0093】
<3.血糖値およびヘマトクリット値の算出>
図16は、検量結果を示す図である。
【0094】
血糖値およびヘマトクリット値が未知だと仮定して、図11に示す変数x、y、および図13、図15にそれぞれ示す第1係数群および第2係数群を用いて、血糖値およびヘマトクリット値を算出した。具体的には、図11のx、yの値を、それぞれ、第1係数群、第2係数群の関係式に代入し、変数が血糖値(G)とヘマトクリット値(Ht)だけになる関係式を作り、式(7)〜(13)にしたがって、血糖値(G)を算出した。ここで、式(13)の収束判定では、εG=εY=10−4とした。連立方程式を解く繰り返し回数は3〜7回であった。算出結果は、図16に示す通りである。
【0095】
<4.評価>
図16では、「サンプル」の列に既知のヘマトクリット値(Ht)と血糖値(G)との値を示す。「Gの計算値」の列には、血糖値(G)およびヘマトクリット値(Ht)を未知と仮定して、血糖値(G)を算出した結果を示す。「G(参考値)」の列には、血糖値(G)は未知だが、ヘマトクリット値(Ht)が既知と仮定して、血糖値(G)を算出した結果を示す。ここでの血糖値(G)の算出では、図14において、該当するヘマトクリット値(Ht)の関係式を選び、変数(y)を代入した。これにより、連立方程式を解かずに、血糖値(G)を特定した。「Htの計算値」の列には、算出したヘマトクリット値(Ht)と、実際の値との誤差とを示す。
【0096】
「Gの計算値」の列の「相対誤差」の列は、「G(参考値)」の値との相対誤差を示す。ここで、あえて、算出した血糖値(G)の値を、ヘマトクリット値(Ht)だけが既知と仮定して算出した血糖値(G)の値と比較して、相対誤差を出しているのは、次の理由による。すなわち、血糖測定装置10自身にも誤差があるので、測定値x、yを用いて計算した値同士を比較することによって、装置誤差分を低減して、測定方法の精度を評価できるからである。既知の血糖値(G)の値と比較した場合、装置誤差の分まで、測定方法の誤差として数値に表れてしまう。
【0097】
以上のように測定した結果、ヘマトクリット値(Ht)および血糖値(G)の両者が未知とした計算値は、ヘマトクリット値(Ht)を既知とした計算値との相対誤差が平均0.2%であった。最大誤差では、0.8%であった。また、ヘマトクリット値(Ht)の誤差は、平均0.7%、最大で2.0%であった。
【0098】
(比較例)
図17は、比較例で用いる多項式の係数を示す図、図18は、比較例における血糖値(G)の算出結果を示す図である。
【0099】
比較例では、上記実施例と同様に、ヘマトクリット値(Ht)および血糖値(G)が既知の血液を、血糖測定装置10により測定し、反射率R1、R2から変数x、yを算出した。その後は、実施例とは異なり、変数x、yを用いて曲面近似により、血糖値(G)を求めた。血糖値(G)を変数x、yの多項式により近似する関係式は、次の通りである。
【0100】
【数14】
【0101】
次数は、比較のために、実施例と同様の2次式とした。
【0102】
最小自乗法により求められた係数eは、図17に示す通りである。求めた係数を用いて算出した血糖値(G)は、図18に示す通りである。実際の血液で算出した血糖値(G)の相対誤差は、平均で2.6%であり、最大誤差が8.6%であった。
【0103】
(考察)
図19は、実施例におけるxy平面での血糖値(G)の近似式と、測定値(x、y)をプロットした様子を示す図であり、図20は、比較例におけるxy平面での血糖値(G)の近似式と、測定値(x、y)をプロットした様子を示す図である。
【0104】
上記実施例と比較例とを比較する。実施例では、血糖値(G)の誤差は、平均0.2%、最大0.8%であった。これに対し、比較例では、血糖値(G)の誤差は、平均2.6%、最大8.6%であった。このことから、誤差は、比較例の方が1桁も悪いことがわかる。
【0105】
また、図19を参照すると、実施例では、各測定値(x、y)は、近似式とほぼ一致していることがわかる。一方、図20を参照すると、比較例では、特に高血糖値の場合に、測定値(x、y)は、近似式から逸脱していることがわかる。この点においても、実施例の方が、より正確に血糖値(G)を算出できるといえる。なお、図19、20において、403と示すプロットは、血糖値(G)=402、403、404mg/dlのときのx、y値をプロットしたものである。
【0106】
以上の実施例と比較例との比較から、実施例の計算方法を用いた方が血糖値をより正確に得られることがわかる。すなわち、実施例のように、最初に4つの変数(血糖値(G)、ヘマトクリット値(Ht)、x、y)を設定し、第1および第2検量線群(第1および第2係数群)を求めるときに、3つの変数(Ht、G、yまたはG、Ht、x)とし、さらに、第1および第2検量線群にx、yを代入することによって、2つの変数(Ht、G)の連立方程式として、血糖値(G)を算出することによって、正確な血糖値(G)が得られることがわかる。
【0107】
(効果)
以上のように、本実施形態の血糖測定装置およびその方法によれば、2つの波長の光λ1、λ2の反射率R1、R2を、予め記憶部42に記憶している第1検量線群と第2検量線群とに代入して血糖値(G)を算出するので、1つの波長の光の反射率に基づいて血糖値(G)を算出する場合に比べて、正確に血糖値を測定できる。
【0108】
加えて、比較例との比較からもわかるように、2つの波長の光の反射率を用いて曲面として近似する場合に比べても、より正確に血糖値を測定できる。
【0109】
また、血糖測定装置10は、表示部23を有するので、測定した血糖値をその場で見ることができる。
【0110】
なお、本実施の形態では、2つの変数(Ht、G)からなる2つの方程式を連立することによって、血糖値の算出と同時にヘマトクリット値も算出できる。すなわち、CPU41は、記憶部42に記憶された第1検量線群および第2検量線群を用いて、血液検体のヘマトクリット値を算出できる。ここで、算出されたヘマトクリット値を用いて、従来から用いられているヘマトクリット補正方法、たとえば、テーブル方式などによる補正方法により、血糖値を算出してもよい。言い換えると、本実施の形態で用いられた方法でヘマトクリット値を精度よく算出し、該ヘマトクリット値を他の血糖値算出方法に適用して血糖値を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】本発明の一実施の形態における血糖測定装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示す血糖測定装置の部分断面図である。
【図3】図1に示す血糖測定装置の概略構成を示すブロック図である。
【図4】図1に示す血糖測定装置における成分測定処理を説明するためのフローチャートである。
【図5】ヘマトクリット値(Ht)を固定したときの、血糖値(G)と変数x、yとのデータセットを格納するデータテーブルである。
【図6】ヘマトクリット値(Ht)ごとに変数(y)で血糖値(G)を近似する関係式を示す概略図である。
【図7】血糖値(G)ごとに変数(x)でヘマトクリット値(Ht)を近似する関係式を示す概略図である。
【図8】血糖値算出工程の流れを示すフローチャートである。
【図9】図7に示す空間をx=x*の平面で切り取る様子を示す図である。
【図10】図6に示す空間をy=y*の平面で切り取る様子を示す図である。
【図11】血糖値が既知の血液を測定して得られた変数x、yを示す図である。
【図12】ヘマトクリット値(Ht)と変数(x)との関係を示すグラフである。
【図13】第1係数群を示す図である。
【図14】血糖値(G)と変数(y)との関係を示すグラフである。
【図15】第2係数群を示す図である。
【図16】検量結果を示す図である。
【図17】比較例で用いる多項式の係数を示す図である。
【図18】比較例における血糖値(G)の算出結果を示す図である。
【図19】実施例におけるxy平面での血糖値(G)の近似式と、測定値(x、y)をプロットした様子を示す図である。
【図20】比較例におけるxy平面での血糖値(G)の近似式と、測定値(x、y)をプロットした様子を示す図である。
【符号の説明】
【0112】
10 血糖測定装置、
20 測定装置本体部、
21 測光部、
22 外装ケース、
23 表示部、
24 各種スイッチ、
25 発光素子、
26 受光素子、
27 ホルダ、
28 変換器、
29 入力部、
30 チップ、
31 ホルダ、
31a 細管部、
32 試験紙、
40 制御部、
41 CPU、
42 記憶部、
G 血糖値、
Ht ヘマトクリット値、
R1、R2 反射率、
x、y 変数、
λ1 第1光、
λ2 第2光、
gaj 第1係数、
hbj 第2係数。
【技術分野】
【0001】
本発明は、血糖測定装置および血糖測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病の予防および治療には、血糖値を把握することが重要である。
【0003】
採血した血液から血糖値を光学的に測定する技術としては、下記の特許文献1に示すようなグルコース濃度の定量方法が知られている。特許文献1に開示されている定量方法は、発色組成物を含有してなる多層分析素子を用いて、500〜590nmの範囲内で定められた一の波長の光を用いて赤血球の色素の赤色濃度を測定する一方で、500nmよりも短波長側領域または590nmよりも長波長側領域の範囲内で定められた一の波長の光を用いて血液検体の呈色濃度を測定するものである。このような構成の定量方法によれば、呈色濃度から得られるグルコース値を、赤色濃度から得られるヘマトクリット値を用いて補正しつつ、グルコース濃度を定量することができる。
【特許文献1】特開2000−262298号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記定量方法では、500〜590nmの範囲内で定められた一の波長の光を用いて得られるヘマトクリット値の測定精度が不十分であるために、グルコース濃度を正確に定量することができないという問題がある。
【0005】
本発明は、上述した問題を解決するためになされたものである。したがって、本発明の目的は、血糖値を精度よく測定することができる血糖測定装置および血糖測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の血糖測定装置は、血液検体中のグルコースと反応する発色試薬を含む試験紙を用いて血糖値を測定する血糖測定装置であって、血液検体中のヘモグロビンに特異の少なくとも一つの吸収波長の光と、前記反応により生成された色素に特異の少なくとも一つの吸収波長の光とを前記試験紙に対して照射する少なくとも一つの発光素子と、前記発光素子によって照射された光の反射光を受光する少なくとも一つの受光素子と、前記受光素子の受光強度に基づいて、前記ヘモグロビンの吸収波長の光の反射率R1と、前記色素の吸収波長の光の反射率R2とを算出する反射率算出部と、血糖値ごとの、ヘマトクリット値と反射率R1との関係を示す第1検量線群と、ヘマトクリット値ごとの、血糖値と反射率R2との関係を示す第2検量線群とを記憶している記憶部と、前記反射率算出部で算出した反射率R1および反射率R2を前記第1検量線群および前記第2検量線群に代入して前記血糖値を算出するか、または、前記反射率算出部で算出した反射率R1および反射率R2を前記第1検量線群および前記第2検量線群に代入してヘマトクリット値を求め該ヘマトクリット値を用いて血糖値を算出する血糖値算出部と、を有する。
【0007】
本発明の血糖測定方法は、血液検体中のグルコースと反応する発色試薬を含む試験紙を用いて血糖値を測定する方法であって、血液検体中のヘモグロビンに特異の少なくとも一つの吸収波長の光と、前記反応により生成された色素に特異の少なくとも一つの吸収波長の光とを前記試験紙に対して照射する工程と、前記照射された光の反射光を受光する工程と、前記光の受光強度に基づいて、前記ヘモグロビンの吸収波長の光の反射率R1と、前記色素の吸収波長の光の反射率R2とを算出する工程と、血糖値ごとのヘマトクリット値と反射率R1との関係を示す第1検量線群と、ヘマトクリット値ごとの血糖値と反射率R2との関係を示す第2検量線群とに、算出した前記反射率R1および反射率R2を代入して、血糖値を算出するか、または、ヘマトクリット値を算出し該ヘマトクリット値を用いて血糖値を算出する工程と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の血糖測定装置によれば、2つの波長の光の反射率を、予め記憶している第1検量線群と第2検量線群とに代入して血糖値を算出するので、1つの波長の光の反射率に基づいて血糖値を算出する場合に比べて、正確に血糖値を測定できる。
【0009】
本発明の血糖測定方法によれば、2つの波長の光の反射率を、予め記憶している第1検量線群と第2検量線群とに代入して血糖値を算出するので、1つの波長の光の反射率に基づいて血糖値を算出する場合に比べて、正確に血糖値を測定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施の形態における血糖測定装置の概略構成を示す斜視図であり、図2は、図1に示す血糖測定装置の部分断面図である。
【0012】
図1に示すとおり、本実施の形態の血糖測定装置10は、測定装置本体部20と、測定装置本体部20に装着されるチップ30とから構成される。以下、チップ30および測定装置本体部20の順に説明する。
【0013】
(チップ)
チップ30は、血液検体を保持するものである。図1および図2に示すとおり、チップ30は、細管部31aが備えられたホルダ31と、ホルダ31内部に固定された試験紙32と、を備える。
【0014】
細管部31aは、毛細管現象により先端開口部から血液検体をホルダ31内部に導入する。細管部31aを通じて導入される血液検体は、ホルダ31内部の試験紙32に吸収される。試験紙32は、シート状の多孔質基材から構成されており、試験紙32には、グルコースと反応して呈色反応を示す発色試薬が含浸されている。このような構成によれば、細管部31aを通じてホルダ31内部に導入される血液検体は、発色試薬が含浸された試験紙32において呈色反応を起こす。
【0015】
試験紙32の材料としては、ポリエステル類、ポリアミド類、ポリオレフィン類、ポリスルホン類、またはセルロース類が挙げられる。また、発色試薬としては、たとえば、グルコースオキシダーゼ(GOD)、ペルオキシダーゼ(POD)、4−アミノアンチピリン、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−m−トルイジン・ナトリウム(TOOS)が挙げられる。
【0016】
(測定装置本体部)
測定装置本体部20は、チップ30に保持される血液検体の血糖値を測定するものである。図1に示すとおり、本実施の形態の測定装置本体部20は、波長の異なる2つの光を血液検体に照射して反射光の強度を測定する測光部21と、測光部21を制御するとともに測光部21で取得される測光値データに対して種々の演算を実行する制御部(不図示)と、を有する。測光部21は、外装ケース22の先端部に設けられている。制御部は、外装ケース22内部に電源などとともに収容されている。制御部についての詳細な説明は後述する。外装ケース22表面には、血糖値の測定結果などを表示する表示部23および各種スイッチ24が設けられている。
【0017】
図2に示すとおり、本実施の形態の測光部21は、波長の異なる2つの光λ1、λ2を発光する発光素子25と、2つの光λ1、λ2の反射光を受光する受光素子26と、を備える。発光素子25および受光素子26は、ホルダ27に収容されている。
【0018】
発光素子25は、ヘモグロビンに特異の少なくとも一つの吸収波長(たとえば、545nm)の光(以下、第1光と称する)λ1と、血液検体の呈色反応の結果生じる色素に特異の少なくとも一つの吸収波長(たとえば、630nm)の光(以下、第2光と称する)λ2を照射する。本実施の形態の発光素子25は、2波長型の発光ダイオードであって、制御部により制御され、ヘモグロビンに特異の吸収波長の第1光λ1または色素に特異の吸収波長の第2光λ2を照射する。本実施の形態の発光素子25から照射される第1および第2光λ1、λ2はパルス光であって、その周期が0.5〜3.0msec程度、1パルスの発光時間が0.05〜0.3msec程度に設定される。発光素子25から照射される第1および第2光λ1、λ2は、試験紙32で反射される。なお、本実施の形態では第1および第2発光手段として、2波長型の発光ダイオードを用いているが、1波長型の発光ダイオードを2つ設けてもよい。
【0019】
受光素子26は、試験紙32で反射された第1および第2光λ1、λ2を受光して、血液検体の吸光度、すなわち、血液検体の第1および第2光λ1、λ2の反射率を測定するものである。
【0020】
本実施の形態の受光素子26は、フォトダイオードであって、試験紙32で反射される第1光λ1と、第2光λ2とを受光して、これらの強度を測光値データとして出力する。
【0021】
図3は、図1に示す血糖測定装置の概略構成を示すブロック図である。
【0022】
上述したとおり、本実施の形態の血糖測定装置10は、測光部21および制御部40を有する。測光部21の発光素子25は、制御部40により発光を制御され、測光部21の受光素子26からの測光値データは、A/D変換器28を介して、制御部40に入力される。制御部40は、外装ケース22表面の表示部23および各種スイッチ24に対応する入力部29と電気的に接続されている。
【0023】
図3に示すとおり、本実施の形態の制御部40は、CPU41および記憶部42を備える。記憶部42は、CPU41と電気的に接続されている。
【0024】
CPU41は、波長の異なる2つの光λ1、λ2に対する測光値データに対して種々の演算を実行するものである。本実施の形態のCPU41は、受光素子26の測光値データから、波長の異なる2つの光λ1、λ2に対する血液検体の反射率R1、R2を算出する。CPU41は、反射率算出部および血糖値算出部として機能する。
【0025】
ここで、CPU41は、反射率算出部として、受光素子26の受光強度に基づいて、ヘモグロビンに特異の吸収波長の光の反射率R1と、色素に特異の吸収波長の光の反射率R2とを算出する。また、CPU41は、血糖値算出部として、反射率算出部で算出した反射率R1および反射率R2を、後述する第1検量線群および第2検量線群に代入して、血糖値を算出する。CPU41の具体的な処理については、後述する。
【0026】
記憶部42は、第1検量線群および第2検量線群を記憶している。第1検量線群は、血糖値ごとの、ヘマトクリット値と反射率R1との関係式であり、第2検量線群は、ヘマトクリット値ごとの、血糖値と反射率R2との関係式である。第1検量線群および第2検量線群は、それぞれの関係式の係数の群(第1係数群、第2係数群)として記憶されていてもよい。その他に、記憶部42は血糖値算出プログラムが格納されている。
【0027】
以上のとおり構成される本実施の形態の血糖測定装置10では、ヘモグロビンに特異の吸収波長を有する第1光λ1が照射され、血液検体からの第1光λ1の反射率R1が測定される。次に、血液検体の呈色反応により生じた色素に特異の吸収波長を有する第2光λ2が照射され、血液検体からの第2光λ2の反射率R2が測定される。次に、測定された2つの反射率R1、R2を用いて、血液検体の血糖値が算出される。以下、図4〜図7を参照しつつ、CPU41による血糖値測定の流れについて説明する。
【0028】
図4は、図1に示す血糖測定装置における成分測定処理を説明するためのフローチャートである。
【0029】
本実施の形態における血糖値測定処理では、まず、血液点着前に、ヘモグロビンに特異の吸収波長の第1光λ1の基準値および色素に特異の吸収波長の第2光λ2の基準値を測定するために、第1光λ1および第2光λ2は、交互に時分割で発光され、試験紙32に照射される。試験紙32に血液検体が吸収され、呈色反応が発生したことを検知するために、色素の吸収波長の第2光λ2が使用される。呈色が検知された後、一旦第2光λ2が止められ第1光λ1のみが使用される(ステップS101)。なお、本実施の形態の血糖値測定装置10では、血液検体が試験紙32の一方の面側から試験紙32に吸収される一方で、第1光λ1および第2光λ2は試験紙32の他方の面側から試験紙32に照射される。
【0030】
第1光λ1は、試験紙32で反射して、受光素子26に受光される(ステップS102)。受光された第1光λ1は、血液検体中のヘモグロビンの吸光作用により、光強度が低減している。この強度信号は、一旦、記憶部42に記憶される。
【0031】
CPU41は、受光された第1光λ1の強度信号の反射率R1を算出する(ステップS103)。ここで、反射率R1は、血液を保持しない試験紙32に第1光λ1を投射して反射させたときの反射光の強度信号に対する、ステップS102で受光された第1光λ1の強度信号の割合である。血液を保持しない状態の試験紙32に第1光λ1を投射したときの反射光の強度信号は、予め測定されており、記憶部42に記憶されている。
【0032】
次に、ヘモグロビンの吸収波長の第1光λ1に代わって、血液検体の呈色反応により生じた色素の吸収波長の第2光λ2が照射される(ステップS104)。本実施の形態では、2波長型の発光素子25が、ヘモグロビンに特異の吸収波長の第1光λ1に代えて、色素に特異の吸収波長の第2光λ2を発光する。第2光λ2は、試験紙32で反射して、受光素子26に受光される(ステップS105)。受光された第2光λ2は、血液検体中の色素の吸光作用により、光強度が低減している。この強度信号は、一旦、記憶部42に格納される。
【0033】
CPU41は、受光された第2光λ2の強度信号の反射率R2を算出する(ステップS106)。ここで、反射率R2は、血液を保持しない試験紙32に第2光λ2を投射して反射させたときの反射光の強度信号に対する、ステップS105で受光された第2光λ2の強度信号の割合である。血液を保持しない状態の試験紙32に第2光λ2を投射したときの反射光の強度信号は、予め測定されており、記憶部42に記憶されている。
【0034】
CPU41は、算出した反射率R1およびR2を用いて、血糖値を算出する(ステップS107)。
【0035】
ステップS107の血糖値算出の詳細な流れについて説明する。ここで、血糖値算出には、事前準備として、上述の第1検量線群(第1係数群)および第2検量線群(第2係数群)を算出して、記憶部42に予め格納しておく必要がある。したがって、以下では、まず、事前準備として、第1検量線群および第2検量線群を用意する工程について説明する。続けて、実際に第1および第2検量線群を用いて、血糖値を算出するまでの工程を説明する。
【0036】
(事前準備)
図5は、ヘマトクリット値(Ht)を固定したときの、血糖値(G)と変数x、yとのデータセットを格納するデータテーブルである。
【0037】
事前準備としては、図5に示すデータテーブルにデータを蓄積し、蓄積したデータを解析することによって、血糖値と変数yとの相関関係を示す第2検量線群を作成する。データの蓄積について説明する前に、まず、データテーブルの構造について説明する。
【0038】
(事前準備−データ蓄積)
図5において、「Ht」はヘマトクリット値を示し、右側の添え字h(1〜m)により、ヘマトクリット値の数値的違いが示される。ヘマトクリット値とは、血液中に占める血球の容積の割合を示す数値であり、ヘモグロビン量に相関する。「G」は血糖値を示し、右側の添え字g(1〜n)により、血糖値の数値的違いが示される。「x」は、第1光λ1の反射率R1に対応する変数であり、「y」は、第2光λ2の反射率R2に対応する変数である。x、yは、それぞれ、たとえば、1/R1、1/R2やその対数を取ったもの、(1−R1)/2R1、(1−R2)/2R2など、後述の演算における近似を容易にするために変換された数値である。この変数変換については、一般的なので説明を省略する。
【0039】
このように、図5では、Ht1〜Htmのm個のヘマトクリット値について、それぞれn個の血糖値(G)、x、yのデータセットが格納可能である。すなわち、x、yについては、m×n個のデータセットが格納可能である。
【0040】
図5のデータテーブルに格納されるデータセットは、血糖値(G)とヘマトクリット値(Ht)とが既知の血液サンプルを用いた実験により完成される。上述の血糖測定装置10により、血液サンプルの反射率R1、R2を測定することによって、x、yが得られ、データセットとしてデータテーブルに蓄積される。
【0041】
(事前準備−検量線群の作成)
完成されたデータテーブルが、行ごとに取り出され、各ヘマトクリット値(Ht)でのデータ系列(Gg、yg)h (g=1、2…n h=1、2…m)が抽出される。
【0042】
このデータ系列から、血糖値(G)を変数(y)で表す適当な関数に近似される。関数としては、yの多項式やスプライン関数が用いられる。yの多項式を適用する場合、Htの数だけ、すなわち、m個の関係式が作成される。
【0043】
【数1】
【0044】
上記式(1)において、hG(y)は、図5のh番目のヘマトクリット値(Ht)のときの関数であることを意味する。nGは、多項式の次数を意味し、nG≦n−1を満たす必要がある。hbjは、図5のh番目のヘマトクリット値(Ht)のときの関係式のうち、j次項の係数を意味する。
【0045】
係数hbjは、最小自乗法で求めることができ、最小にする関数Jは相対誤差を小さくする意味で重みを設け、次式(2)のように定義することで、低血糖側の相対誤差を小さくできる場合もある。
【0046】
【数2】
【0047】
以上より、ヘマトクリット値(Ht)ごとに変数(y)で血糖値(G)を近似する係数群hbj (j=0、1…nG)(h=1、2…m)が決まる。この係数群を、以下では、第2係数群と呼ぶ。スプライン関数を用いる場合でも、同様に係数群が得られる。
【0048】
変数(y)で血糖値(G)を近似する関係式の群、すなわち、第2検量線群は、次のようになる。
【0049】
【数3】
【0050】
図6は、ヘマトクリット値(Ht)ごとに変数(y)で血糖値(G)を近似する関係式を示す概略図である。
【0051】
h=1、2…m番目のヘマトクリット値(Ht)ごとに、変数(y)の関数Gを図示すると、図6に示すようになる。図中、h=3までしか示していないが、m番目までの全ての関数が、(y、Ht、G)空間に含まれる。
【0052】
次に、上記と同様の手順で、血糖値(G)ごとに変数(x)でヘマトクリット値(Ht)を近似する関係式を決定する。そのため、まず、図5のデータテーブルが、列ごとに取り出され、各血糖値(G)でのデータ系列(Hth、xh)g (h=1、2…m g=1、2…n)が抽出される。
【0053】
このデータ系列から、ヘマトクリット値(Ht)を変数(x)で表す適当な関数に近似される。xの多項式を適用する場合、Gの数だけ、すなわち、n個の関係式が作成される。
【0054】
【数4】
【0055】
上記式(4)において、gHt(x)は、図5のg番目の血糖値(G)のときの関数であることを意味する。nHtは、多項式の次数を意味し、nHt≦m−1を満たす。gajは、図5のg番目の血糖値(G)のときの関係式のうち、j次項の係数を意味する。
【0056】
係数gajは、上記とhbj同様に、最小自乗法等で求めることができる。
【0057】
以上より、血糖値(G)ごとに変数(x)でヘマトクリット値(Ht)を近似する係数群gaj (j=0、1…nHt)(g=1、2…n)が決まる。この係数群gajを、以下では、第1係数群と呼ぶ。スプライン関数を用いる場合でも、同様に係数群が得られる。
【0058】
変数(x)でヘマトクリット値(Ht)を近似する関係式の群、すなわち第1検量線群は、次のようになる。
【0059】
【数5】
【0060】
図7は、血糖値(G)ごとに変数(x)でヘマトクリット値(Ht)を近似する関係式を示す概略図である。
【0061】
g=1、2…n番目の血糖値(G)ごとに、変数(y)の関数Htを図示すると、図7示すようになる。図中、g=3までしか示していないが、実際には、n番目までの全ての関数が、(x、G、Ht)空間に含まれる。図6および図7に示されるように、それぞれの空間には、変数が3つずつ含まれることになる。
【0062】
なお、上記事前準備において、実際の実験手順を考慮すると、異なったヘマトクリット値(Ht)において、血糖値(G)を揃えることは困難な場合がある。この場合、血糖値(G)を変数(x)の多項式で近似した式、たとえば、次のような式(6)を作成する。
【0063】
【数6】
【0064】
この式から、各ヘマトクリット値(Ht)で血糖値(G)が揃ったデータxを生成できる。このようにして、血糖値(G)ごとに変数(x)でヘマトクリット値(Ht)を近似する第1係数群gaj (j=0、1…nHt)(h=1、2…m)を得てもよい。
【0065】
このように、予め準備された第1係数群および第2係数群は、上記式(1)、(4)と共に記憶部42に格納されて、事前準備が完了する。
【0066】
(血糖値算出)
図8は、血糖値算出工程の流れを示すフローチャートである。図9は、図7に示す空間をx=x*の平面で切り取る様子を示す図、図10は、図6に示す空間をy=y*の平面で切り取る様子を示す図である。
【0067】
まず、CPU41は、図4のステップS103およびS106で測定された反射率R1、R2を変換して、x*、y*とする(ステップS201)。x*、y*は、上記の「事前準備−データ蓄積」で反射率R1、R2を変換したときと同様に変換して得られる。
【0068】
続けて、CPU41は、得られたx*を、上記式(5)に代入する(ステップS202)。これにより、第1検量線群が示される系、すなわち、係数群1で表される系は、図9に示されるように、x=x*の(Ht、G)平面で切り取られる。
【0069】
CPU41は、この(Ht、G)平面と、第1検量線群との交点列に基づいて、血糖値(G)を変数とする補間関数Ht=g(G)を定義する(ステップS203)。補間関数は、図9中、x=x*の(Ht、G)平面上に示される曲線である。補間関数は、たとえば、ニュートンの多項式、ラグランジュの多項式が適しているが、点列から簡便に定義できる関数の形式であればよい。ラグランジュの多項式を適用する場合、補間関数は次のように示される。
【0070】
【数7】
【0071】
ここで、mgは、大きい程よいのではなく、補間関数が振動しない程度に抑える。
【0072】
CPU41は、得られたy*を、上記式(3)に代入する(ステップS204)。第2検量線群が示される系、すなわち、係数群2で表される系は、図10示されるように、y=y*の(G、Ht)平面で切り取られる。
【0073】
CPU41は、この(G、Ht)平面と、第2検量線群との交点列に基づいて、ヘマトクリット値(Ht)を変数とする補間関数G=h(Ht)を定義する(ステップS205)。補間関数は、図10中、y=y*の(G、Ht)平面上に示される曲線である。補間関数は、たとえば、ラグランジュの多項式を適用する場合、次のように示される。
【0074】
【数8】
【0075】
ここで、mhは、大きい程よいのではなく、補間関数が振動しない程度に抑える。式(8)において、たとえば、h=1のときのヘマトクリット値(Ht)=20%、h=2のときのヘマトクリット値(Ht)=40%、H=3のときのヘマトクリット値(Ht)=60%とする。この場合、ヘマトクリット値(Ht)=(20、40、60)が等間隔に与えられるので、これらを(−1、0、1)とノーマライズすることで、演算を簡易化できる。
【0076】
以上のように、x=x*、y=y*を代入することによって、変数がヘマトクリット値(Ht)と、血糖値(G)だけの式が2つ定義されることとなる。
【0077】
CPU41は、上記式(7)および式(8)を連立して解く(ステップS206)。これは、図9のx=x*の(Ht、G)平面上に示される曲線と、図10のy=y*の(G、Ht)平面上に示される曲線との交点を求めることを意味する。
【0078】
CPU41は、連立方程式を変形して陽の形で解が得られない場合、挟み込み法、ニュートン法などの広く知られた非線型方程式の数値解放を用いて解を得ることができる。たとえば、次のような逐次解法を適用できる。
【0079】
k番目のGの推定値G(k)に対して、式(7)によりHtを求める。
【0080】
【数9】
【0081】
これを、式(8)に代入して求めた計算値Gと推定値G(k)の誤差Yを求める。
【0082】
【数10】
【0083】
【数11】
【0084】
【数12】
【0085】
【数13】
【0086】
k=0、1にあたるG(0)とG(1)は予め決めておく。これには、式(7)が負にならない範囲で、たとえば、G(0)=40mg/dl、G(1)=300mg/dlとしておけばよい。
【0087】
(実施例)
次に、上記血糖測定方法の実施例について説明する。
【0088】
<1.変数x、yの測定>
図11は、血糖値が既知の血液を測定して得られた変数x、yを示す図である。
【0089】
まず、ヘマトクリット値(Ht)と血糖値(G)が既知の血液を用意して、血糖測定装置10により測定した。このとき、第1光λ1は、波長を545nmとし、呈色開始から5秒後の反射光量の測定に用いた。第2光λ2は、波長を630nmとし、呈色開始から10秒後の反射光量の測定に用いた。得られた第1および第2光λ1、λ2の反射率R1、R2は、それぞれ、x=256/R1、y=256/R2に代入して、変換された。既知のヘマトクリット値(Ht)および血糖値(G)について、測定された変数(x)、(y)は、図11に示す通りである。
【0090】
<2.第1および第2係数群の決定>
図12は、ヘマトクリット値(Ht)と変数(x)との関係を示すグラフ、図13は、第1係数群を示す図、図14は、血糖値(G)と変数(y)との関係を示すグラフ、図15は、第2係数群を示す図である。
【0091】
式(1)および式(4)において、nG=nHt=2とした。そして、上述の方法により血糖値(G)がG=45、100、400mg/dlのときの、それぞれのヘマトクリット値(Ht)と変数(x)との関係式(第1検量線群)を求めた。求められた関係式は、図12に示すとおりである。この関係式の第1係数群gaj (j=0、1、2)(g=45、100、400)も同時に求まる。求められた第1係数群は、図13に示す通りである。
【0092】
ヘマトクリット値(Ht)がHt=20、40、60%のときの、それぞれの血糖値(G)と変数(y)との関係式を求めた。求められた関係式(第2検量線群)は、図14に示す通りである。この関係式の第2係数群hbj (j=0、1、2)(h=20、40、60)も同時に求まる。求められた第2係数群は、図15に示す通りである。
【0093】
<3.血糖値およびヘマトクリット値の算出>
図16は、検量結果を示す図である。
【0094】
血糖値およびヘマトクリット値が未知だと仮定して、図11に示す変数x、y、および図13、図15にそれぞれ示す第1係数群および第2係数群を用いて、血糖値およびヘマトクリット値を算出した。具体的には、図11のx、yの値を、それぞれ、第1係数群、第2係数群の関係式に代入し、変数が血糖値(G)とヘマトクリット値(Ht)だけになる関係式を作り、式(7)〜(13)にしたがって、血糖値(G)を算出した。ここで、式(13)の収束判定では、εG=εY=10−4とした。連立方程式を解く繰り返し回数は3〜7回であった。算出結果は、図16に示す通りである。
【0095】
<4.評価>
図16では、「サンプル」の列に既知のヘマトクリット値(Ht)と血糖値(G)との値を示す。「Gの計算値」の列には、血糖値(G)およびヘマトクリット値(Ht)を未知と仮定して、血糖値(G)を算出した結果を示す。「G(参考値)」の列には、血糖値(G)は未知だが、ヘマトクリット値(Ht)が既知と仮定して、血糖値(G)を算出した結果を示す。ここでの血糖値(G)の算出では、図14において、該当するヘマトクリット値(Ht)の関係式を選び、変数(y)を代入した。これにより、連立方程式を解かずに、血糖値(G)を特定した。「Htの計算値」の列には、算出したヘマトクリット値(Ht)と、実際の値との誤差とを示す。
【0096】
「Gの計算値」の列の「相対誤差」の列は、「G(参考値)」の値との相対誤差を示す。ここで、あえて、算出した血糖値(G)の値を、ヘマトクリット値(Ht)だけが既知と仮定して算出した血糖値(G)の値と比較して、相対誤差を出しているのは、次の理由による。すなわち、血糖測定装置10自身にも誤差があるので、測定値x、yを用いて計算した値同士を比較することによって、装置誤差分を低減して、測定方法の精度を評価できるからである。既知の血糖値(G)の値と比較した場合、装置誤差の分まで、測定方法の誤差として数値に表れてしまう。
【0097】
以上のように測定した結果、ヘマトクリット値(Ht)および血糖値(G)の両者が未知とした計算値は、ヘマトクリット値(Ht)を既知とした計算値との相対誤差が平均0.2%であった。最大誤差では、0.8%であった。また、ヘマトクリット値(Ht)の誤差は、平均0.7%、最大で2.0%であった。
【0098】
(比較例)
図17は、比較例で用いる多項式の係数を示す図、図18は、比較例における血糖値(G)の算出結果を示す図である。
【0099】
比較例では、上記実施例と同様に、ヘマトクリット値(Ht)および血糖値(G)が既知の血液を、血糖測定装置10により測定し、反射率R1、R2から変数x、yを算出した。その後は、実施例とは異なり、変数x、yを用いて曲面近似により、血糖値(G)を求めた。血糖値(G)を変数x、yの多項式により近似する関係式は、次の通りである。
【0100】
【数14】
【0101】
次数は、比較のために、実施例と同様の2次式とした。
【0102】
最小自乗法により求められた係数eは、図17に示す通りである。求めた係数を用いて算出した血糖値(G)は、図18に示す通りである。実際の血液で算出した血糖値(G)の相対誤差は、平均で2.6%であり、最大誤差が8.6%であった。
【0103】
(考察)
図19は、実施例におけるxy平面での血糖値(G)の近似式と、測定値(x、y)をプロットした様子を示す図であり、図20は、比較例におけるxy平面での血糖値(G)の近似式と、測定値(x、y)をプロットした様子を示す図である。
【0104】
上記実施例と比較例とを比較する。実施例では、血糖値(G)の誤差は、平均0.2%、最大0.8%であった。これに対し、比較例では、血糖値(G)の誤差は、平均2.6%、最大8.6%であった。このことから、誤差は、比較例の方が1桁も悪いことがわかる。
【0105】
また、図19を参照すると、実施例では、各測定値(x、y)は、近似式とほぼ一致していることがわかる。一方、図20を参照すると、比較例では、特に高血糖値の場合に、測定値(x、y)は、近似式から逸脱していることがわかる。この点においても、実施例の方が、より正確に血糖値(G)を算出できるといえる。なお、図19、20において、403と示すプロットは、血糖値(G)=402、403、404mg/dlのときのx、y値をプロットしたものである。
【0106】
以上の実施例と比較例との比較から、実施例の計算方法を用いた方が血糖値をより正確に得られることがわかる。すなわち、実施例のように、最初に4つの変数(血糖値(G)、ヘマトクリット値(Ht)、x、y)を設定し、第1および第2検量線群(第1および第2係数群)を求めるときに、3つの変数(Ht、G、yまたはG、Ht、x)とし、さらに、第1および第2検量線群にx、yを代入することによって、2つの変数(Ht、G)の連立方程式として、血糖値(G)を算出することによって、正確な血糖値(G)が得られることがわかる。
【0107】
(効果)
以上のように、本実施形態の血糖測定装置およびその方法によれば、2つの波長の光λ1、λ2の反射率R1、R2を、予め記憶部42に記憶している第1検量線群と第2検量線群とに代入して血糖値(G)を算出するので、1つの波長の光の反射率に基づいて血糖値(G)を算出する場合に比べて、正確に血糖値を測定できる。
【0108】
加えて、比較例との比較からもわかるように、2つの波長の光の反射率を用いて曲面として近似する場合に比べても、より正確に血糖値を測定できる。
【0109】
また、血糖測定装置10は、表示部23を有するので、測定した血糖値をその場で見ることができる。
【0110】
なお、本実施の形態では、2つの変数(Ht、G)からなる2つの方程式を連立することによって、血糖値の算出と同時にヘマトクリット値も算出できる。すなわち、CPU41は、記憶部42に記憶された第1検量線群および第2検量線群を用いて、血液検体のヘマトクリット値を算出できる。ここで、算出されたヘマトクリット値を用いて、従来から用いられているヘマトクリット補正方法、たとえば、テーブル方式などによる補正方法により、血糖値を算出してもよい。言い換えると、本実施の形態で用いられた方法でヘマトクリット値を精度よく算出し、該ヘマトクリット値を他の血糖値算出方法に適用して血糖値を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】本発明の一実施の形態における血糖測定装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示す血糖測定装置の部分断面図である。
【図3】図1に示す血糖測定装置の概略構成を示すブロック図である。
【図4】図1に示す血糖測定装置における成分測定処理を説明するためのフローチャートである。
【図5】ヘマトクリット値(Ht)を固定したときの、血糖値(G)と変数x、yとのデータセットを格納するデータテーブルである。
【図6】ヘマトクリット値(Ht)ごとに変数(y)で血糖値(G)を近似する関係式を示す概略図である。
【図7】血糖値(G)ごとに変数(x)でヘマトクリット値(Ht)を近似する関係式を示す概略図である。
【図8】血糖値算出工程の流れを示すフローチャートである。
【図9】図7に示す空間をx=x*の平面で切り取る様子を示す図である。
【図10】図6に示す空間をy=y*の平面で切り取る様子を示す図である。
【図11】血糖値が既知の血液を測定して得られた変数x、yを示す図である。
【図12】ヘマトクリット値(Ht)と変数(x)との関係を示すグラフである。
【図13】第1係数群を示す図である。
【図14】血糖値(G)と変数(y)との関係を示すグラフである。
【図15】第2係数群を示す図である。
【図16】検量結果を示す図である。
【図17】比較例で用いる多項式の係数を示す図である。
【図18】比較例における血糖値(G)の算出結果を示す図である。
【図19】実施例におけるxy平面での血糖値(G)の近似式と、測定値(x、y)をプロットした様子を示す図である。
【図20】比較例におけるxy平面での血糖値(G)の近似式と、測定値(x、y)をプロットした様子を示す図である。
【符号の説明】
【0112】
10 血糖測定装置、
20 測定装置本体部、
21 測光部、
22 外装ケース、
23 表示部、
24 各種スイッチ、
25 発光素子、
26 受光素子、
27 ホルダ、
28 変換器、
29 入力部、
30 チップ、
31 ホルダ、
31a 細管部、
32 試験紙、
40 制御部、
41 CPU、
42 記憶部、
G 血糖値、
Ht ヘマトクリット値、
R1、R2 反射率、
x、y 変数、
λ1 第1光、
λ2 第2光、
gaj 第1係数、
hbj 第2係数。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液検体中のグルコースと反応する発色試薬を含む試験紙を用いて血糖値を測定する血糖測定装置であって、
血液検体中のヘモグロビンに特異の少なくとも一つの吸収波長の光と、前記反応により生成された色素に特異の少なくとも一つの吸収波長の光とを前記試験紙に対して照射する少なくとも一つの発光素子と、
前記発光素子によって照射された光の反射光を受光する少なくとも一つの受光素子と、
前記受光素子の受光強度に基づいて、前記ヘモグロビンの吸収波長の光の反射率R1と、前記色素の吸収波長の光の反射率R2とを算出する反射率算出部と、
血糖値ごとの、ヘマトクリット値と反射率R1との関係を示す第1検量線群と、ヘマトクリット値ごとの、血糖値と反射率R2との関係を示す第2検量線群とを記憶している記憶部と、
前記反射率算出部で算出した反射率R1および反射率R2を前記第1検量線群および前記第2検量線群に代入して前記血糖値を算出するか、または、前記反射率算出部で算出した反射率R1および反射率R2を前記第1検量線群および前記第2検量線群に代入してヘマトクリット値を求め該ヘマトクリット値を用いて血糖値を算出する血糖値算出部と、
を有する血糖測定装置。
【請求項2】
前記血糖値算出部は、前記第1検量線群に前記反射率R1を代入して得られた前記血糖値と前記ヘマトクリット値との関係式と、前記第2検量線群に前記反射率R2を代入して得られた前記前記血糖値と前記ヘマトクリット値との関係式とを連立して、血糖値を算出する請求項1記載の血糖測定装置。
【請求項3】
前記記憶部は、前記ヘマトクリット値を反射率R1で表す式の第1係数群として、前記第1検量線群を記憶し、前記血糖値を反射率R2で表す式の第2係数群として、前記第2検量線群を記憶する請求項1または2に記載の血糖測定装置。
【請求項4】
算出した前記血糖値を表示する表示部をさらに有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の血糖測定装置。
【請求項5】
血液検体中のグルコースと反応する発色試薬を含む試験紙を用いて血糖値を測定する方法であって、
血液検体中のヘモグロビンに特異の少なくとも一つの吸収波長の光と、前記反応により生成された色素に特異の少なくとも一つの吸収波長の光とを前記試験紙に対して照射する工程と、
前記照射された光の反射光を受光する工程と、
前記光の受光強度に基づいて、前記ヘモグロビンの吸収波長の光の反射率R1と、前記色素の吸収波長の光の反射率R2とを算出する工程と、
血糖値ごとのヘマトクリット値と反射率R1との関係を示す第1検量線群と、ヘマトクリット値ごとの血糖値と反射率R2との関係を示す第2検量線群とに、算出した前記反射率R1および反射率R2を代入して、血糖値を算出するか、または、ヘマトクリット値を算出し該ヘマトクリット値を用いて血糖値を算出する工程と、
を有する血糖測定方法。
【請求項6】
前記血糖値を算出する工程は、前記第1検量線群に前記反射率R1を代入して得られた前記血糖値と前記ヘマトクリット値との関係式と、前記第2検量線群に前記反射率R2を代入して得られた前記前記血糖値と前記ヘマトクリット値との関係式とを連立して、血糖値を算出する請求項5記載の血糖測定方法。
【請求項7】
算出した血糖値を表示する工程をさらに有する請求項5または6に記載の血糖測定方法。
【請求項1】
血液検体中のグルコースと反応する発色試薬を含む試験紙を用いて血糖値を測定する血糖測定装置であって、
血液検体中のヘモグロビンに特異の少なくとも一つの吸収波長の光と、前記反応により生成された色素に特異の少なくとも一つの吸収波長の光とを前記試験紙に対して照射する少なくとも一つの発光素子と、
前記発光素子によって照射された光の反射光を受光する少なくとも一つの受光素子と、
前記受光素子の受光強度に基づいて、前記ヘモグロビンの吸収波長の光の反射率R1と、前記色素の吸収波長の光の反射率R2とを算出する反射率算出部と、
血糖値ごとの、ヘマトクリット値と反射率R1との関係を示す第1検量線群と、ヘマトクリット値ごとの、血糖値と反射率R2との関係を示す第2検量線群とを記憶している記憶部と、
前記反射率算出部で算出した反射率R1および反射率R2を前記第1検量線群および前記第2検量線群に代入して前記血糖値を算出するか、または、前記反射率算出部で算出した反射率R1および反射率R2を前記第1検量線群および前記第2検量線群に代入してヘマトクリット値を求め該ヘマトクリット値を用いて血糖値を算出する血糖値算出部と、
を有する血糖測定装置。
【請求項2】
前記血糖値算出部は、前記第1検量線群に前記反射率R1を代入して得られた前記血糖値と前記ヘマトクリット値との関係式と、前記第2検量線群に前記反射率R2を代入して得られた前記前記血糖値と前記ヘマトクリット値との関係式とを連立して、血糖値を算出する請求項1記載の血糖測定装置。
【請求項3】
前記記憶部は、前記ヘマトクリット値を反射率R1で表す式の第1係数群として、前記第1検量線群を記憶し、前記血糖値を反射率R2で表す式の第2係数群として、前記第2検量線群を記憶する請求項1または2に記載の血糖測定装置。
【請求項4】
算出した前記血糖値を表示する表示部をさらに有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の血糖測定装置。
【請求項5】
血液検体中のグルコースと反応する発色試薬を含む試験紙を用いて血糖値を測定する方法であって、
血液検体中のヘモグロビンに特異の少なくとも一つの吸収波長の光と、前記反応により生成された色素に特異の少なくとも一つの吸収波長の光とを前記試験紙に対して照射する工程と、
前記照射された光の反射光を受光する工程と、
前記光の受光強度に基づいて、前記ヘモグロビンの吸収波長の光の反射率R1と、前記色素の吸収波長の光の反射率R2とを算出する工程と、
血糖値ごとのヘマトクリット値と反射率R1との関係を示す第1検量線群と、ヘマトクリット値ごとの血糖値と反射率R2との関係を示す第2検量線群とに、算出した前記反射率R1および反射率R2を代入して、血糖値を算出するか、または、ヘマトクリット値を算出し該ヘマトクリット値を用いて血糖値を算出する工程と、
を有する血糖測定方法。
【請求項6】
前記血糖値を算出する工程は、前記第1検量線群に前記反射率R1を代入して得られた前記血糖値と前記ヘマトクリット値との関係式と、前記第2検量線群に前記反射率R2を代入して得られた前記前記血糖値と前記ヘマトクリット値との関係式とを連立して、血糖値を算出する請求項5記載の血糖測定方法。
【請求項7】
算出した血糖値を表示する工程をさらに有する請求項5または6に記載の血糖測定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
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【図15】
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【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2009−233253(P2009−233253A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−85931(P2008−85931)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
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