説明

術具及びその術具を有する手術支援システム

【課題】より正確に術具の寿命をコントロール可能な術具及びその術具を有する手術支援システムを提供すること。
【解決手段】術具先端部200の内部に、術具先端部200が位置決めアーム部100に装着されたときに通電されるタイマ201を設ける。このタイマ201は、位置決めアーム部100によって通電されたときに術具先端部200の使用時間又は動作回数をカウントする。タイマ201のカウントの結果、術具先端部200が寿命に達した場合にはロック機構201aが動作して術具の動作がロックされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、術具及びその術具を有する手術支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療施設の省人化を図るため、ロボットによる医療処置の研究が行われている。特に、外科分野では、多自由度アームを有する多自由度マニピュレータによって患者の処置をする医療用マニピュレータシステム(手術支援システム)についての各種の提案がなされている。このような医療用マニピュレータシステムにおいては、アームの先端にグリッパ(把持器)や鉗子等の各種の術具が装着される。従来、これらの術具は使い捨てられるものであったが、近年では滅菌等の処理を施すことによって同一の術具を複数回装着して使用できるようになっている。しかしながら、このような術具は、複数回の使用によって劣化するものであり、この劣化によって使用時に不具合が生じる可能性がある。このような不具合を生じさせないためには、アームの先端に装着される術具の使用限界(寿命)を正しく把握して使用する必要がある。
【0003】
このような寿命の範囲内で術具を使用するための技術に関して例えば特許文献1の技術が提案されている。特許文献1においては、術具内に電池を内蔵させておき、術具がアームに装着されている間は、内蔵電池が放電するように構成している。このような構成において、特許文献1では、内蔵電池の起電力を計測することにより、術具がアームに装着されている時間を術具の寿命として計測し、内蔵電池の起電力が所定値以下となった場合には、術具の交換を促すための警報を発するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−107189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1のような内蔵電池の起電力を計測する場合には、内蔵電池が自然放電等すること等によって、実際の装着時間と内蔵電池の起電力とが必ずしも対応しない可能性がある。術具の実際の装着時間が内蔵電池の起電力と対応しなくなると、本来の術具の寿命よりも早いタイミングで警報が発せられる。このため、効率の良い交換が行えなくなる可能性がある。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、より正確に術具の寿命をコントロール可能な術具及びその術具を有する手術支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の態様の術具は、術具であって、前記術具の内部に設けられ、前記術具の使用又は動作されたときに連動して術具の使用時間又は動作量を取得可能な使用状況計測部を有することを特徴とする。
【0008】
また、上記の目的を達成するために、本発明の第2の態様の手術支援システムは、第1の態様に記載の術具と、前記術具が取り付けられるアーム部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、より正確に術具の寿命をコントロール可能な術具及びその術具を有する手術支援システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の各実施形態に係る手術支援システムの一例としてのマスタスレーブマニピュレータの全体構成を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るスレーブアームの構成を示す図である。
【図3】タイマの動作を示したフローチャートである。
【図4】ロック機構の動作の例を示した図である。
【図5】マニピュレータ制御部の動作を示したフローチャートである。
【図6】本発明の第2の実施形態に係るスレーブアームの構成を示す図である。
【図7】カウンタICの動作を示したフローチャートである。
【図8】位置決めアーム部の駆動機構が直動機構を有する場合の第2の実施形態の構成の適用例を示す図である。
【図9】先端可動部が複数の可動部で構成されている場合の第1の実施形態の構成の適用例を示す図である。
【図10】術具が位置決めアーム部に装着されたことを機械的に検出して術具の動作をロックさせる変形例の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
[第1の実施形態]
図1は、本発明の各実施形態に係る手術支援システムの一例としてのマスタスレーブマニピュレータの全体構成を示す図である。図1に示すように、本実施形態に係るマスタスレーブマニピュレータは、遠隔操作装置10と、制御装置20と、スレーブマニピュレータ30と、を有している。
【0012】
遠隔操作装置10は、本マスタスレーブマニピュレータにおけるマスタとして機能するものであって、操作部11と、表示部12と、を有している。
操作部11は、例えば複数の駆動軸やグリッパー部を有している。操作者1が、操作部11を操作することにより、操作部11を構成する各駆動軸が駆動される。各駆動軸の駆動量は、各駆動軸に設けられた図示しない位置検出器(例えばエンコーダ)によって検出され、各位置検出器の検出信号が、スレーブマニピュレータ30のスレーブアーム31の手先の位置・姿勢を指令するための、操作部11の操作情報を示す信号(操作信号)として制御装置20に出力される。
【0013】
表示部12は、例えば液晶ディスプレイから構成され、制御装置20から入力された画像信号に基づいて画像を表示する。後述するが、制御装置20から入力される画像信号は、スレーブアーム31に取り付けられた電子カメラ(電子内視鏡)を介して得られた画像信号を、制御装置20において処理したものである。このような画像信号に基づく画像を、表示部12に表示させることにより、遠隔操作装置10の操作者1は、遠隔操作装置10から離れた場所に配置されたスレーブマニピュレータ30の手先の画像を確認することが可能である。
【0014】
制御装置20は、マスタ制御部21と、マニピュレータ制御部22と、画像処理部23と、を有している。
マスタ制御部21は、遠隔操作装置10からの操作信号に従って、スレーブアーム31の手先の位置・姿勢の指令値を算出し、この位置・姿勢の指令値を、後述する駆動量検出部において検出された検出値とともにマニピュレータ制御部22に出力する。
【0015】
マニピュレータ制御部22は、遠隔操作装置10からの位置・姿勢の指令値を受けて、スレーブアーム31の手先の位置・姿勢を指令値に一致させるために必要なスレーブアーム31の各関節の目標の駆動量を、例えば逆運動学計算によって算出する。
画像処理部23は、スレーブアーム31の先端に設けられた電子カメラ(電子内視鏡等)から得られた画像信号を処理し、表示部12の表示用の画像信号を生成して表示部12に出力する。
【0016】
スレーブマニピュレータ30は、スレーブアーム31を有している。スレーブアーム31は、位置決めアーム部と、術具とを有している。位置決めアーム部は、複数の関節を有し、マニピュレータ制御部22からの制御信号に従って各関節が駆動されるように構成されている。術具は、術具先端部と術具先端部を駆動するための駆動部とを有し、術具先端部は位置決めアーム部の先端に装着され、駆動部は位置決めアーム部に設けられている。術具としては、例えば把持器(グリッパー)が用いられる。また、先端にカメラ(電子内視鏡)等を取り付けても良い。
【0017】
図2を参照して、本実施形態に係るスレーブアーム31についてさらに説明する。図2(a)、図2(b)に示すように、スレーブアーム31は、位置決めアーム部100と、術具先端部200とを有している。
位置決めアーム部100の先端には、術具先端部200を装着するための着脱部が形成されている。この着脱部には、術具先端部200を駆動するための駆動部である駆動機構101と、術具先端部200内に設けられているタイマ201に電力を供給するための電力供給部111とが設けられている。
【0018】
駆動機構101は、動力部102と、動力伝達部103と、駆動量検出部104とを有している。動力部102は、術具先端部200を駆動するための動力を発生する機構であって、例えばモータ等から構成されている。動力部102は、マニピュレータ制御部22からの制御信号に従って術具先端部200を駆動するための動力を発生する。動力伝達部103は、例えばモータ等によって発生した動力を術具先端部200に伝達するための機構である。なお、図2に示す動力伝達部103は、動力部102で発生した回転動力を、ギヤとベルトとを用いて術具先端部200に伝達する機構を例示している。図2で示した動力部102、動力伝達部103の構成は一例であって適宜変更可能である。駆動量検出部104は、例えばエンコーダから構成され、動力部102の駆動量(図2の例では回転量)を電気信号として検出する。
【0019】
電力供給部111は、位置決めアーム部100に術具先端部200が装着された際に、術具先端部200内のタイマ201と導電接続される。この接続は、例えばコネクタ接続によって行われる。このような構成の電力供給部111は、タイマ201を駆動するための電力を供給する。
【0020】
術具先端部200は、タイマ201と、動力伝達部202と、先端可動部203とを有している。
使用状況計測部の一例としてのタイマ201は、電力供給部111からの電力供給を受けてカウントダウン動作するタイマである。このタイマ201がカウントする時間は、術具先端部200の使用可能時間(寿命)に対応している。なお、タイマ201は、ぜんまい等の機械機構によってカウントを行うアナログ式のタイマであっても良いし、デジタルカウンタのようなデジタル式のタイマであっても良い。また、図2に示すように、本実施形態のタイマ201には、ロック機構201aが設けられている。ロック機構201aは、タイマ201のカウントが「0」、即ち術具先端部200の寿命がなくなったときに作動して動力伝達部202の動作をロックする。ロック機構201aは、係止部材等を用いて機械的に動力伝達部202の動作をロックするものであっても良いし、リレー等を用いて電気的に動力伝達部202の動作をロックするものであっても良い。例えば、図4は、動力部の動作を機械的にロックする例を示している。
【0021】
動力伝達部202は、術具先端部200が位置決めアーム部100の先端部に装着された際に、位置決めアーム部100の動力伝達部103と当接するように構成されている。このような構成の動力伝達部202は、動力伝達部103の動作に連動して動作し、術具先端部200の先端可動部203を動作させる。なお、図2に示す動力伝達部202は、動力伝達部103のギヤの回転に伴って動作するラックアンドピニオン機構によって先端可動部203を動作させる例を示している。ここで、図2の例では、ピニオンギヤは、全周に渡って歯を形成しておらず、先端可動部203の可動範囲に対応した部分に歯を形成した例を示している。
【0022】
先端可動部203は、術具先端部200の先端に設けられ、動力伝達部202の動作に連動して動作する。なお、図2は、先端可動部203として、動力伝達部202を構成するラックの前後動に連動して開閉動作する把持器(グリッパー)が設けられている例を示している。
【0023】
以上のような構成において、図2(a)に示すように、位置決めアーム部100と術具先端部200とが分離状態の場合には、動力伝達部103のギヤと動力伝達部202のピニオンギヤとが噛み合っていないので、先端可動部203は動作しない。また、電力供給部111からのタイマ201への電力供給もなされないため、タイマ201も動作しない。
【0024】
一方、図2(b)に示すように、位置決めアーム部100に術具先端部200が装着された場合には、動力伝達部103のギヤと動力伝達部202のピニオンギヤとが噛み合い、動力部102で発生した動力に従って先端可動部203が動作する。例えば、図2(b)に示す例において、動力部102を構成するモータがA方向に回転した場合、この回転に伴って動力伝達部202のピニオンギヤがB方向に回転する。このピニオンギヤのB方向の回転に従って、動力伝達部202のラックが先端可動部203を牽引するようにしてC方向に移動する。これにより、先端可動部203がD方向に示すように閉動作する。また、動力部102を構成するモータが逆方向に回転した場合には、先端可動部203が開動作する。
【0025】
さらに、図2(b)に示すように、術具を使用すべく位置決めアーム部100に術具先端部200が装着された場合には、電力供給部111によってタイマ201が通電し、タイマ201がカウントダウン動作を開始する。図3は、タイマ201の動作を示したフローチャートである。なお、図3の動作は電力供給部111によってタイマ201が通電している間は実行される。即ち、電力供給部111からタイマ201への電力供給が中断された場合、図3の動作は終了される。
【0026】
初期値として、カウントcntに、規定の使用回数が設定されている。まず、タイマ201のカウントcntが0を超えているか否かが判定される(ステップS1)。ステップS1において、カウントcntが0を超えている場合、即ち術具先端部200の寿命がまだ残っている場合には、所定期間が経過したか否かが判定される(ステップS2)。S2において、所定期間が経過した場合には、カウントcntがデクリメント(カウントダウン)される(ステップS3)。その後、処理がステップS1に戻る。即ち、カウントcntが0になるまではカウントダウン動作が継続される。
【0027】
また、ステップS1において、カウントcntが0となった場合、即ち術具先端部200の寿命が残っていない場合には、例えば図4に示すようにして、ロック機構201aにより術具先端部200の動作がロックされる(ステップS4)。
ここで、図3で示した動作にはカウントcntが0を超えているか否かの判定が含まれている。ぜんまい等の機械機構によってカウントを行うアナログ式のタイマの場合にはこのような判定は行われずにカウントcntが0となったときにステップS4のロック動作が行われる。
図5は、マニピュレータ制御部22の動作を示したフローチャートである。マニピュレータ制御部22は、操作者1による操作部11の操作に従った指令値がマスタ制御部21から入力されたか否かを判定している(ステップS11)。ステップS11の判定において、指令値が入力されていない場合に、マニピュレータ制御部22は、指令値が入力されるまで、ステップS11の判定を行いつつ待機する。ステップS11の判定において、指令値が入力された場合に、マニピュレータ制御部22は、入力された指定値に従って位置決めアーム部100の各関節を駆動するための動力部102の目標の駆動量を、例えば逆運動学計算によって算出する(ステップS12)。なお、逆運動学計算については、例えば解析的な手法等の従来周知の各種の手法を用いることができる。ここでは、その詳細についての説明は省略する。
【0028】
駆動量の算出後、マニピュレータ制御部22は、算出した駆動量と駆動量検出部104との差が規定値以下であるか否かを判定する(ステップS13)。図4で示したように、術具先端部200の寿命が残っていない場合には、ロック機構201aが作動して術具先端部200の動作がロックされる。この場合、動力部102の動作も停止される。したがって、駆動量検出部104の検出値は変化しない。これに対し、ステップS12において算出される動力部102の駆動量は、操作者1の操作部11の操作によって時々刻々に変化するものである。このため、動力部102の駆動量と駆動量検出部104の検出値との差を取ることで、動力部102の動作が停止されているか、即ち術具先端部200の寿命が残っているか否かを判定することが可能である。
【0029】
ステップS13の判定において、算出した目標の駆動量と駆動量検出部104の検出値との差が規定値以下である場合には、マニピュレータ制御部22で算出した駆動量に追従して動力部102が動作している、即ち術具先端部200の寿命が残っていることを意味する。この場合に、マニピュレータ制御部22は、算出した目標の駆動量を位置決めアーム部100の動力部102に入力して術具先端部200を動作させる(ステップS14)。一方、算出した駆動量と駆動量検出部104の検出値との差が規定値を越えている場合には、術具先端部200の動作がロックされている、即ち術具先端部200の寿命が残っていないことを意味する。この場合に、マニピュレータ制御部22は、術具先端部200の交換を促す警告表示を表示部12に表示させるよう、画像処理部23に指示を送る(ステップS15)。その後、マニピュレータ制御部22は図5の動作を終了させる。なお、ここでは、警告表示の例を示したが、術具先端部200の交換を促すための手法は警告表示に限るものではない。
【0030】
以上説明したように、第1の実施形態によれば、術具先端部200にタイマ201を内蔵させ、術具先端部200が位置決めアーム部100に装着されてタイマ201が通電されている間、タイマ201のカウントダウン動作を行い、このカウントが0となったときに術具先端部200の動作をロックするようにしている。このため、術具先端部200が位置決めアーム部100に装着されている時間を術具先端部200の寿命として術具先端部200内で正確に計測し、術具先端部200の寿命が到来した際には即時に術具先端部200の動作をロックすることが可能である。
【0031】
また、マニピュレータ制御部22は、駆動量検出部104からの検出値によって術具先端部200の寿命が残っているか否かを判定し、この判定結果に応じて操作者1に術具先端部200の交換を促す警告を行うことが可能である。このため、術具先端部200とマニピュレータ制御部22とについては導電接続する必要がない。
【0032】
ここで、上述の例では、タイマ201が通電されている間は、タイマ201をカウントダウン動作させるようにしている。これに対し、術具先端部200が位置決めアーム部100に装着されたときにタイマ201のカウントダウン動作を行うようにしても良い。この場合、術具先端部200が位置決めアーム部100に装着された回数を術具先端部200の寿命として計測可能となる。
【0033】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。上述の第1の実施形態は、術具先端部200が位置決めアーム部100に装着されている時間を術具先端部200の寿命として計測するようにしている。これに対し、第2の実施形態は、術具先端部200が実際に使用された(動作した)回数又は時間を術具先端部200の寿命として計測する例である。
【0034】
図6は、本発明の第2の実施形態におけるスレーブアーム31の構成を示す図である。図6に示すスレーブアーム31も、位置決めアーム部100と、術具先端部200とを有している。以下、図6における図2と同様の構成については、図2と同様の参照符号を付すことで説明を省略する。
【0035】
図6における電力供給部111は、位置決めアーム部100に術具先端部200が装着された際に、術具先端部200内のカウンタIC201と導電接続される。このような構成の電力供給部111は、カウンタIC201を駆動するための電力を供給する。図6に示すように、本実施形態の電力供給部111は、カウンタIC201を駆動するための電力を供給するための端子(V、Gnd)に加えて、カウンタIC201からの術具交換要求信号を受け取るための端子(signal)が設けられている。術具交換要求信号については後述する。
【0036】
第2の実施形態の動力伝達部202は、図2に示した第1の実施形態の動力伝達部202と同様、ラックアンドピニオン機構によって先端可動部203を動作させるものを例示している。これに加え、第2の実施形態においては、動力伝達部202を構成するピニオンギヤの歯が形成されていない部分に突出部2021を形成している。さらに、この突出部2021の近傍に、スイッチ(SW)201bを設けている。このSW201bは、動力伝達部202を構成するピニオンギヤの回転動作により、ピニオンギヤに形成された突出部2021が接触して押し下げられることでオンされる。また、SW201bは、動力伝達部202を構成するピニオンギヤの回転動作により、ピニオンギヤに形成された突出部2021の接触が解除されることでオフされる。SW201bがオンとなると、SW201bがオンされた旨を示すカウント信号がSW201bからカウンタIC201に入力される。
【0037】
使用状況計測部の一例としてのカウンタIC201は、SW201bの押し下げられた回数を、カウント信号を計数することによって計測する等の処理を行うIC回路である。このようにして、カウント信号を計数することによって、動力伝達部202の動作回数、即ち術具先端部200の実際の使用回数を計測することが可能である。また、カウンタIC201は、カウント信号の数が規定値となった場合に、術具先端部200の動作をロックするための処理も行う。この処理としては、例えば、動力伝達部103のギヤと動力伝達部202のピニオンギヤとの噛み合わせを解除すべく、強制的にピニオンギヤを駆動させることによって、ピニオンギヤの歯の形成されていない部分を動力伝達部202のギヤと対向させるようにする等の処理が考えられる。つまり、この処理がロックする機構に相当する。
【0038】
図7は、カウンタIC201の動作を示したフローチャートである。なお、第1の実施形態と同様、図7の動作は電力供給部111によってカウンタIC201が通電している間は実行される。即ち、電力供給部111からカウンタIC201への電力供給が中断された場合、図7の動作は終了される。
【0039】
まず、カウンタIC201は、カウント信号の有無により、SW201bが押し下げられたか否かを判定する(ステップS21)。ステップS21において、SW201bが押し下げられた場合に、カウンタIC201は、カウントSW_cntをインクリメント(カウントアップ)する(ステップS22)。一方、ステップS21において、SW201bが押し下げられていない場合に、カウンタIC201はカウントアップを行わない。
【0040】
次に、カウンタIC201は、カウントSW_cntをカウンタIC内のメモリに記憶されている規定値と比較し、この比較の結果、カウントSW_cntが規定値以下か否かを判定する(ステップS23)。なお、この規定値は、術具先端部200の寿命に対応した回数である。ステップS23において、SW_cntが規定値を超えている場合、即ちSW201bが押し下げられた回数が規定値を越えている場合には、動力伝達部202の動作回数も規定値を越えていることになる。この場合には、術具先端部200の寿命が残っていないとして、カウンタIC201は、カウンタIC201内のレジスタに保持されている術具使用終了フラグの状態をオン状態とする(ステップS24)。一方、ステップS23において、SW_cntが規定値以下である場合には、術具先端部200の寿命が残っていないとして、カウンタIC201は、カウンタIC201内のレジスタに保持されている術具使用終了フラグの状態をオフ状態のままとする。
【0041】
次に、カウンタIC201は、術具使用終了フラグがオン状態であるか否かを判定する(ステップS25)。ステップS25において、術具使用終了フラグがオフ状態である、即ち術具の寿命がまだ残っている場合には、処理がステップS21に戻る。即ち、術具使用終了フラグがオフ状態の間は、ステップS21〜S25の動作が繰り返される。また、ステップS25において、術具使用終了フラグがオン状態である、即ち術具の寿命が残っていない場合に、カウンタIC201は、強制的にピニオンギヤを作動させる等の手法を用いて術具先端部200の動作をロックする(ステップS26)。そして、カウンタIC201は、術具交換要求信号を電力供給部111に出力する(ステップS27)。その後、カウンタIC201は図7の動作を終了させる。
【0042】
電力供給部111に入力された術具交換要求信号は、読み取り部の一例として機能を有するマニピュレータ制御部22に入力される。マニピュレータ制御部22は、術具交換要求信号を受けた場合に、図5のステップS15の処理と同様にして、術具先端部200の交換を促す警告表示を表示部12に表示させるよう、画像処理部23に指示を送る。
【0043】
以上説明したように、第2の実施形態によれば、術具先端部200が実際に動作した回数を計測している。このため、第1の実施形態に比べて、さらに正確に術具先端部200の寿命を計測し、術具先端部200の寿命が到来した際には即時に術具先端部200の動作をロックすることが可能である。
【0044】
ここで、上述の例では、動作量として術具先端部200が実際に動作した回数を計測するようにしている。これに対し、動作量として術具先端部200の動作時間を計測するようにしても良い。
また、上述の例では、カウンタIC201によって計測を行うようにしているが、第1の実施形態と同様に、機械式のカウンタを用いて計測を行うようにしても良い。
【0045】
以上実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形や応用が可能なことは勿論である。
例えば、上述した第1及び第2の実施形態では、位置決めアーム部100の駆動機構が回転動力によって術具先端部200を駆動する例を示している。しかしながら、位置決めアーム部100内部の構成は特に限定されるものではなく、例えば、位置決めアーム部100の駆動機構が直動動力によって術具先端部200を駆動するものであっても良い。図8は、位置決めアーム部100の駆動機構が直動機構を有する場合の第2の実施形態の構成の適用例である。図8に示す駆動機構1011は、ラックアンドピニオンあるいはボールねじ等を有して構成され、動力部を構成するモータの回転動力を直動運動に変換する。このような直動運動に従って、術具先端部200の動力伝達部202を構成するロッド2022も直動運動する。ロッド2022には第2の実施形態で説明したのと同様の突出部2022aが設けられており、また、突出部2022aの近傍には第2の実施形態で説明したのと同様のSW201b及びカウンタIC201が設けられている。このような構成において、ロッド2022の直動運動により、突出部2022aがSW201bに接触する毎にSW201bがオンすることでカウンタIC201によるカウントアップ動作が行われる。このようにして、第2の実施形態と同様に寿命の計測を行うことが可能である。ここで、図8は、位置決めアーム部100の駆動機構が直動機構を有する場合の第2の実施形態の構成の適用例を示しているが、第1の実施形態の構成を適用するようにしても良い。
【0046】
また、上述した第1及び第2の実施形態では、術具先端部200の先端可動部203が1つの可動部(開閉部)で構成されている例を示している。これに対し、図9のように、術具先端部200の先端可動部が複数の可動部で構成されている場合にも上述した各実施形態の構成を適用することも可能である。図9は、先端可動部が、開閉部203aと、関節部203bとを有している。そして、これら開閉部203a、関節部203bがそれぞれ別の動力伝達部202a、202bによって、それぞれの駆動機構101a、101bを介して駆動される。例えば、図9の例では、動力伝達部202aがプーリを用いたワイヤの押し引き動作によって開閉部203aを駆動する例を示し、動力伝達部202bが第1及び第2の実施形態と略同様の構成を有する回転動力の伝達機構によって関節部203bを駆動する例を示している。
【0047】
さらに、図9においては、動力伝達部202bの近傍に第1の実施形態で説明したのと同様の構成を有するタイマ201が設けられている。このタイマ201は、第1の実施形態で説明したのと同様に、術具先端部200が位置決めアーム部100に装着されている間、カウントダウン動作するものであり、カウントが0になった時点で術具先端部200の動作をロックする。このようにして、第1の実施形態と同様の寿命の計測を行うことが可能である。なお、図9は、関節部203bの動作をロック機構201aにてロックするものであるが、開閉部203aの動作をロックするようにしても良いし、開閉部203aと関節部203bの両方の動作をロックするようにしても良い。また、図9は、第1の実施形態の構成の適用例を示しているが、第2の実施形態の構成を適用するようにしても良い。
また、術具先端部200と位置決めアーム部100との間に駆動力を伝達可能なアダプタを介しても良い。
さらに、上述した各実施形態では、術具先端部200が位置決めアーム部100に着脱される位置を、先端を例にとって説明したが、特に先端に限るものではなく、術具先端部200が着脱される位置であれば、どの位置でも良い。
また、上述した各実施形態では、術具先端部200が位置決めアーム部100によって通電された際に術具先端部200の寿命のカウントを行うようにしている。これに対し、位置決めアーム部100の装着を機械的に検出しつつ、術具先端部200の寿命がきたときに術具先端部200の動作を自動的にロックさせるようにしても良い。図10は、このような変形例の構成を示した図である。動作については、上述した図5のフローチャートにおける動作と同じのため、その説明は省略する。なお、図10は、位置決めアーム部100の駆動機構が直動機構の例を示しているが、駆動機構は必ずしも直動機構とする必要はない。
図10に示す駆動機構1011の動力伝達部103は、ラックアンドピニオンあるいはボールねじ等を有して構成され、動力部102を構成するモータの回転動力を直動運動に変換する。この動力伝達部103の先端には係合突起103aが形成されている。この係合突起103aは、位置決めアーム部100に術具先端部200が装着された際に、図10(b)に示すようにして術具先端部200のロッド2022と係合するように構成されている。このような構成により、動力伝達部103の直動運動に応じてロッド2022も直動運動する。
また、図10に示すように、位置決めアーム部100の術具先端部200との対向面には押圧突起100aが形成されている。この押圧突起100aは、位置決めアーム部100に術具先端部200が装着された際に、図10(b)に示すようにして術具先端部200の可動部2023aと当接して可動部2023aを回動可能とするように構成されている。
つまり、図10(a)に示すように、可動部2023aが術具先端部200の位置決めアーム部100との対向面からぜんまい式ギヤ2023の下方にかけて形成されている。この可動部2023aは、位置決めアーム部100に術具先端部200が装着されていない場合には、図10(a)に示すようにしてぜんまい式ギヤ2023を係止している。一方、位置決めアーム部100に術具先端部200が装着された際には、可動部2023aは、図10(b)に示すようにして回動してぜんまい式ギヤの係止を解除する。また、可動部2023aの下方にはばね2023bが設けられている。このばね2023bは、位置決めアーム部100から術具先端部200が外された場合に、可動部2023aを図10(a)の状態に復帰させるために設けられている。
ただし、ぜんまい式ギヤ2023は、可動部2023aによる係止が解除されても、図示されていない突起により、ぜんまいバネによる回転力は開放されず、図上反時計まわりには回転可能だが、時計回りには回転しないように保持されており、反時計まわりに回転することで、ぜんまいバネに力が蓄えられる構造になっている。
また、術具先端部200のロッド2022には、突起2022bが形成されている。この突起2022bは、ロッド2022が図面左方向に動いた場合にのみぜんまい式ギヤ2023と噛み合い、ロッド2022が図面右方向に動いた場合にはぜんまい式ギヤ2023と噛み合わないように構成されている。なお、ロッド2022は、図10では省略しているが、図8のロッド2022や図9のように術具先端の開閉部や関節などを駆動する駆動ロッドである。
図10に示すような構成において、位置決めアーム部100に術具先端部200が装着されると、可動部2023aが回動してぜんまいギヤ2023が可動な状態となる。この状態でロッド2022が直動運動すると、ぜんまいギヤ2023が回転してぜんまいに力が蓄えられる。したがって、術具先端部200が動くほど、ぜんまいに力が蓄えられる。これにより、術具先端部200の動作回数が規定回数を超え、ぜんまいに蓄えられた力が駆動部102の駆動力を上回った時点で、それ以上術具先端部200が駆動できなくなる(術具先端部200の動作がロックされる)。この時点が術具先端部200の寿命となる。ぜんまいバネの強さを変えることで、術具毎に使用時間を設定することができる。このような構成を用いても第1の実施形態と同様の効果を得ることが可能である。
つまり、術具に電力を供給しなくても術具の実際の使用時間を計測し、設定した使用時間に達したら術具を動かなくなるようにすることが可能であり、術具の総動作量をIC等を用いずに保持可能である。
上記各実施形態(変形例を含む)では、術具として術具先端部200を駆動するための駆動機構101、1011、101a、101bを術具先端部200が着脱される位置決めアーム部100に設けたものを例にとって説明したが、次に示す術具であっても良い。
術具が、術具先端部200と、術具先端部200を操作するための操作部とを有し、術具先端部200は操作部に着脱自在となっており、駆動部としての駆動機構101、1011、101a、101bを位置決めアーム部100ではなく、操作部に設けたもの。
また、術具が、術具先端部200と前記操作部とが一体となったものであっても良い。
上記各術具において、駆動部としての駆動機構が、上記したような電気的な機構でなく、機械的な機構からなっていても良い。
また、上記各実施形態(変形例を含む)では、手術支援システムとして、術具先端部200と、術具先端部200が着脱される位置決めアーム部100とを有するものを例にとって説明したが、これに限るものではなく、上記した術具先端部200と駆動機構101、1011、101a、101bが設けられた操作部とが一体となった術具を、駆動部のない位置決めアーム部100に取り付ける手術支援システムであっても良い。
【0048】
さらに、上記した実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件の適当な組合せにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、上述したような課題を解決でき、上述したような効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成も発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0049】
10…遠隔操作装置、11…操作部、12…表示部、20…制御装置、21…マスタ制御部、22…マニピュレータ制御部、23…画像処理部、30…スレーブマニピュレータ、31…スレーブアーム、100…アーム部、101…駆動機構、102…動力部、103…動力伝達部、104…駆動量検出部、111…電力供給部、200…術具先端部、201…タイマ(カウンタIC)、201a…ロック機構、201b…スイッチ(SW)、202…動力伝達部、2021,2022a…突出部、203…先端可動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
術具であって、
前記術具の内部に設けられ、前記術具の使用又は動作されたときに連動して術具の使用時間又は動作量を取得可能な使用状況計測部を有することを特徴とする術具。
【請求項2】
前記術具は、開閉部又は関節部を有し、
前記使用状況計測部が取得する使用時間又は動作量として、前記開閉部又は前記関節部の動きとすることを特徴とする請求項1に記載の術具。
【請求項3】
前記使用状況計測部が取得する前記使用時間又は前記動作量が規定値を越えたときに、前記術具の動作をロックする機構を具備することを特徴とする請求項1又は2に記載の術具。
【請求項4】
前記術具は、術具先端部とこの術具先端部を駆動するための駆動部とを有し、
前記術具先端部と前記駆動部とは着脱自在で、
前記使用状況計測部は、前記術具先端部の内部に設けられ、前記駆動部と独立で前記使用時間又は前記動作量が保存されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の術具。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の術具と、
前記術具が取り付けられるアーム部と、を有することを特徴とする手術支援システム。
【請求項6】
請求項4に記載の術具先端部と、
前記術具先端部が着脱され、請求項4に記載の駆動部が設けられたアーム部と、を有することを特徴とする手術支援システム。
【請求項7】
前記駆動部は、前記術具を駆動するための動力を発生する動力部を有し、
前記動力部の目標の駆動量を算出し、該算出した目標の駆動量に従って前記動力部を駆動させる制御部と、
前記動力部の実際の駆動量を検出する駆動量検出部と、をさらに有し、
前記制御部は、前記算出した目標の駆動量と前記動力部の実際の駆動量との差から、前記術具の動作がロックされているか否かを判定し、該判定の結果、前記術具の動作がロックされている場合には、前記術具の交換を促す旨の警告をすることを特徴とする請求項6に記載の手術支援システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−115553(P2012−115553A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269301(P2010−269301)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】