説明

衛星受信装置

【課題】精度良く、かつ、より早期に現在位置を特定できるようにする。
【解決手段】信号処理部13が現在位置を特定するために必要な衛星データを収集したか否かを判定し(S104)、装置が起動してから、信号処理部13が現在位置を特定するために必要な衛星データを収集したと判定されるまで、ファン制御部40に冷却用ファン40aの駆動を停止させる(S100)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GPS衛星から受信した信号に基づいて現在位置を特定する衛星受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、GPS衛星から送信される信号を受信して現在位置を算出する衛星受信装置が種々提案されている。
【0003】
このような衛星受信装置は、温度検出素子を内蔵した温度補償型水晶発振器(TCXO)を有し、該温度補償型水晶発振器によって生成されたクロックを用いてGPS衛星から受信した受信信号を中間周波数帯の中間周波数信号に周波数変換するRF部と、RF部によって周波数変換された中間周波数信号を復調し、受信信号に含まれる衛星データを収集して現在位置を特定する測位処理を行う信号処理部を備えた構成となっている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−51237号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したような衛星受信装置には、RF部や信号処理部が配置された筐体の内部の温度上昇を抑えるための冷却用ファンを備えたものがある。
【0005】
本発明者は、このような冷却用ファンを備えた衛星受信装置において、冷却ファンによって筐体内に空気流れが生じたときに、RF部のTCXOの発振周波数のばらつきが大きくなるといった現象を見いだした。
【0006】
図6に、冷却用ファンが動作中の場合と冷却用ファンが停止中の場合のTCXOの発振周波数に対する変動量の測定データを示す。なお、横軸は経過時間である、図に示すように、冷却用ファンが駆動中の場合、冷却用ファンが停止中の場合と比較して、TCXOの発振周波数のばらつきが大きくなることを確認するこができる。
【0007】
このようにTCXOの発振周波数のばらつきが大きくなると、精度良く現在位置を算出することが困難となる。例えば、衛星受信装置をナビゲーション装置の位置情報検出装置に適用した場合、ナビゲーション装置の起動時に、現在位置から大きく離れた位置に自車位置マークが表示されてしまうといった現象が生じる。
【0008】
上記した冷却ファンによって筐体内に空気流れが生じたときに、TCXOの発振周波数のばらつきが大きくなるといった現象は、TCXOの構造によるものと考えられる。
【0009】
衛星受信装置に搭載されたTCXOの概略断面構成を図7に示す。なお、図に示すTCXOは、市販されている一般的な構造のものである。TCXOの内部は、ICや温度検出素子(図示せず)が配置された空間と、水晶片が配置された空間の2つに分かれた構造となっている。TCXOの発振周波数のばらつきは、冷却ファンの風量変化によって生じる2つの空間の温度分布のばらつきによるものと考えられる。
【0010】
従来の衛星受信装置は、比較的長時間サンプリングして平均化処理を実施することで、TCXOの発振周波数のばらつきが多少大きくても、ある程度、現在位置の精度が確保されるようになっていた。
【0011】
しかしながら、このようにサンプリングして平均化処理を実施する場合、現在位置を特定するまでに時間を要するといった問題がある。
【0012】
本発明は上記問題に鑑みたもので、精度良く、かつ、より早期に現在位置を特定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の特徴は、温度検出素子を内蔵した温度補償型水晶発振器を有し、該温度補償型水晶発振器によって生成されたクロックを用いてGPS衛星から受信した受信信号を中間周波数帯の中間周波数信号に周波数変換するRF部と、RF部によって周波数変換された中間周波数信号を復調し、受信信号に含まれる衛星データを収集して現在位置を特定する測位処理を行う信号処理部と、RF部および信号処理部が配置された筐体内を冷却するための冷却用ファンを駆動するファン制御部と、を備えた衛星受信装置であって、信号処理部が現在位置を特定するために必要な衛星データを収集したか否かを判定する情報収集判定手段と、装置が起動してから、情報収集判定手段によって信号処理部が現在位置を特定するために必要な衛星データを収集したと判定されるまで、ファン制御部に冷却用ファンの駆動を停止させる第1の冷却用ファン停止手段と、を備えたことである。
【0014】
このような構成では、装置が起動してから、信号処理部が現在位置を特定するために必要な衛星データを収集したと判定されるまで、冷却用ファンの駆動が停止され、温度補償型水晶発振器の発振周波数ばらつきが低減するので、従来の衛星受信装置のように長時間サンプリングして平均化処理を実施することなく、精度良く、かつ、より早期に現在位置を特定することができる。
【0015】
本発明の第2の特徴は、温度検出素子を内蔵した温度補償型水晶発振器を有し、該温度補償型水晶発振器によって生成されたクロックを用いてGPS衛星から受信した受信信号を中間周波数帯の中間周波数信号に周波数変換するRF部と、
RF部によって周波数変換された中間周波数信号を復調し、受信信号に含まれる衛星データを収集して現在位置を特定する測位処理を行う信号処理部と、RF部および信号処理部が配置された筐体内を冷却するための冷却用ファンを駆動するファン制御部と、を備えた衛星受信装置であって、信号処理部が現在位置を特定するために必要な衛星データを収集したか否かを判定する情報収集判定手段と、信号処理部により現在位置を特定するために必要な衛星データが収集されない状態が予め定められた期間以上継続したか否かを判定する期間判定手段と、期間判定手段によって信号処理部により現在位置を特定するために必要な衛星データが収集されない状態が予め定められた期間以上継続したと判定された場合、情報収集判定手段によって信号処理部が現在位置を特定するために必要な衛星データを収集したと判定されるまで、ファン制御部に冷却用ファンの駆動を停止させる第2の冷却用ファン停止手段と、を備えたことである。
【0016】
このような構成では、信号処理部により現在位置を特定するために必要な衛星データが収集されない状態が予め定められた期間以上継続したと判定された場合、信号処理部が現在位置を特定するために必要な衛星データを収集したと判定されるまで、冷却用ファンの駆動が停止され、温度補償型水晶発振器の発振周波数ばらつきが低減するので、従来の衛星受信装置のように長時間サンプリングして平均化処理を実施することなく、精度良く、かつ、より早期に現在位置を特定することができる。例えば、車両が長いトンネルを通過して、現在位置を特定するために必要な衛星データが収集されない状態が予め定められた期間以上継続した後、衛星データに基づいて現在位置を特定する測位処理を実施する場合、精度良く、かつ、より早期に現在位置を特定することが可能である。
【0017】
本発明の第3の特徴は、温度検出素子を内蔵した温度補償型水晶発振器を有し、該温度補償型水晶発振器によって生成されたクロックを用いてGPS衛星から受信した受信信号を中間周波数帯の中間周波数信号に周波数変換するRF部と、RF部によって周波数変換された中間周波数信号を復調し、受信信号に含まれる衛星データを収集して現在位置を特定する測位処理を行う信号処理部と、RF部および信号処理部が配置された筐体内を冷却するための冷却用ファンを駆動するファン制御部と、を備えた衛星受信装置であって、信号処理部が現在位置を特定するために必要な衛星データを収集したか否かを判定する情報収集判定手段と、自車の方位変化量および移動距離を検出する位置情報検出手段と、位置情報検出手段によって検出された自車の方位変化量および移動距離に基づき推測航法を用いて現在位置を特定する現在位置特定手段と、地図データを入力する地図データ入力手段と、現在位置特定手段によって特定された現在位置と地図データ入力手段を介して入力された地図データに基づいてGPS衛星からの受信信号の受信が不可能な場所から可能な場所へ自車が移動したか否かを判定する受信位置判定手段と、受信位置判定手段によってGPS衛星からの受信信号の受信が不可能な場所から可能な場所へ自車が移動したと判定された場合、情報収集判定手段によって信号処理部が現在位置を特定するために必要な衛星データを収集したと判定されるまで、ファン制御部に冷却用ファンの駆動を停止させる第3の冷却用ファン停止手段と、を備えたことである。
【0018】
このような構成では、GPS衛星からの受信信号の受信が不可能な場所から可能な場所へ自車が移動したと判定された場合、信号処理部が現在位置を特定するために必要な衛星データを収集したと判定されるまで、冷却用ファンの駆動が停止され、温度補償型水晶発振器の発振周波数ばらつきが低減するので、従来の衛星受信装置のように長時間サンプリングして平均化処理を実施することなく、精度良く、かつ、より早期に現在位置を特定することができる。例えば、自車がGPS衛星からの受信信号の受信が不可能な地下駐車場を出た後、衛星データに基づいて現在位置を特定する測位処理を実施する場合、精度良く、かつ、より早期に現在位置を特定することが可能である。
【0019】
本発明の第4の特徴は、筐体内の温度を検出して筐体内の温度が予め定められた規格値以上であるか否かを判定する温度判定手段と、情報収集判定手段によって信号処理部が現在位置を特定するために必要な衛星データを収集したと判定され、かつ、温度判定手段によって筐体内の温度が予め定められた規格値以上であると判定された場合、ファン制御部に冷却用ファンを駆動させる冷却用ファン駆動手段と、を備えたことである。
【0020】
このような構成では、信号処理部が現在位置を特定するために必要な衛星データを収集したと判定され、かつ、温度判定手段によって筐体内の温度が予め定められた規格値以上であると判定された場合、冷却用ファンが駆動する。すなわち、筐体内の温度が予め定められた規格値未満の場合、冷却用ファンは停止するので、無駄な電力を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る衛星受信装置の構成を図1に示す。本衛星受信装置1は、GPS衛星から受信した受信信号に基づいて現在位置を特定するGPS受信装置10、筐体内の温度が予め定められた規格値以上か否かを判定する温度判定部20、地図データを入力する地図データ入力器30、筐体内を冷却するための冷却用ファン40aを駆動するファン制御部60、表示装置50および制御部60を備えている。
【0022】
GPS受信装置10は、GPS衛星からの電波を受信するGPSアンテナ11、GPSアンテナ11を介してGPS衛星から受信した受信信号を中間周波数帯の中間周波数信号に周波数変換するRF部12と、このRF部12からの中間周波数信号を復調し、受信信号に含まれる衛星データを収集して現在位置を特定するGPS測位処理を行う信号処理部13を備えている。
【0023】
なお、GPSアンテナ11は筐体の外部に配置され、RF部12と信号処理部13は筐体内に配置され、GPSアンテナ11とRF部12との間はケーブルを介して接続されている。
【0024】
RF部12は、温度補償を行うための温度検出素子を内蔵した温度補償型水晶発振器(TCXO)と、この温度補償型水晶発振器によって生成された基準クロックを基準として局部発振信号を出力するPLL回路と、このPLL回路から出力される局部発振信号を用いてGPSアンテナ11からのRF周波数帯の受信信号をIF周波数帯の中間周波数信号に変換する周波数変換回路(いずれも図示せず)を備えている。
【0025】
また、信号処理部13は、RF部12からの中間周波数信号に含まれる拡散符号の位相を検出して拡散符号の位相同期を取り、スペクトラム逆拡散により受信信号を復調してGPS衛星からの衛星データを取得し、現在位置の測位演算を行うGPS測位処理を行う。なお、信号処理部13は、3個以上のGPS衛星からの衛星データを収集して各衛星の位置を確定し、現在位置と各衛星間の距離を算出することにより現在位置を特定することができる。
【0026】
温度判定部20は、温度に応じて抵抗値が変化するサーミスタ(図示せず)を用いて筐体内の温度を検出して、コンパレータを用いて検出した筐体内の温度が予め定められた規格値以上か規格値未満かを判定し、規格値以上か規格値未満かを示す信号を制御部60へ出力する。
【0027】
地図データ入力器30は、地図データが記憶された記憶媒体から地図データを入力するためのものである。
【0028】
ファン制御部40は、制御部60からファン電源のオンを指示する信号が入力されると冷却用ファン40aへの電源供給を開始し、ファン電源のオンを指示する信号が入力されると冷却用ファン40aへの電源供給を停止する。
【0029】
表示装置50は、液晶等の表示部を有し、制御部60から入力される映像信号に応じた映像を表示部に表示する。
【0030】
制御部60は、CPU、メモリ、I/O等を備えたコンピュータとして構成されており、CPUはメモリに記憶されたプログラムに従って各種処理を実施する。
【0031】
制御部60の処理としては、GPS受信装置10によって特定された現在位置に基づいて地図データ入力器30から現在位置周辺の地図データを取得して、現在位置周辺の地図上に現在位置マークを重ねて表示させる地図表示処理、温度判定部20から入力される信号に基づいて冷却用ファン40aを制御する冷却ファン制御処理等がある。
【0032】
次に、図2に従って、制御部60の冷却ファン制御処理について説明する。イグニッションスイッチがオンすると、本衛星受信装置1は起動状態となり、制御部60は、図2に示す処理を開始する。
【0033】
まず、冷却用ファン40aの電源をオフする(S100)。具体的には、ファン制御部40にファン電源のオフを指示する信号を出力して、冷却用ファン40aへの電源の供給を停止させる。したがって、冷却用ファン40aは停止した状態となる。
【0034】
次に、本体温度が規格値以上か否かを判定する(S102)。具体的には、温度判定部20から入力される信号に基づいて筐体内の温度が予め定められた規格値以上であるか否かを判定する。
【0035】
ここで、筐体内の温度が予め定められた規格値未満の場合、S102の判定はNOとなり、S100へ戻る。
【0036】
また、筐体内の温度が予め定められた規格値以上の場合、S100の判定はYESとなり、次に、信号処理部13が現在位置を特定するために必要な衛星データを収集したか否かを判定する(S104)。具体的には、信号処理部13が3個以上のGPS衛星から衛星データの収集を完了し、収集した衛星データを用いて現在位置を特定したか否かを判定する。
【0037】
信号処理部13が3個以上のGPS衛星から衛星データの収集を完了していない場合、S104の判定はNOとなり、S100へ戻る。したがって、冷却用ファン40aは停止し、RF部12に内蔵された温度補償型水晶発振器の発振周波数のばらつきが低減した状態が継続する。
【0038】
したがって、RF部12に内蔵された温度補償型水晶発振器の発振周波数が安定した状態で、信号処理部13により受信信号に含まれる衛星データを収集して現在位置を特定する測位処理が行われる。
【0039】
そして、信号処理部13が3個以上のGPS衛星から衛星データの収集を完了すると、S104の判定はYESとなり、次に、冷却用ファン40aの電源をオンする(S106)。具体的には、ファン制御部40にファン電源のオンを指示する信号を出力して、冷却用ファン40aへの電源供給を開始させる。これにより、冷却用ファン40aは駆動状態となる。
【0040】
次に、S102と同様に、温度判定部20から入力される信号に基づいて本体温度が規格値以上か否かを判定する(S108)。
【0041】
ここで、筐体内の温度が予め定められた規格値以上の場合、S108の判定はYESとなり、S106へ戻り、冷却用ファン40aは駆動状態のままとなる。
【0042】
また、筐体内の温度が予め定められた規格値未満になると、S108の判定はNOとなり、S100へ戻り、冷却用ファン40aは停止した状態となる。
【0043】
上記した構成によれば、装置が起動してから、信号処理部が現在位置を特定するために必要な衛星データを収集したと判定されるまで、冷却用ファンの駆動が停止され、温度補償型水晶発振器の発振周波数ばらつきが低減するので、従来の衛星受信装置のように長時間サンプリングして平均化処理を実施することなく、精度良く、かつ、より早期に現在位置を特定することができる。
【0044】
また、信号処理部が現在位置を特定するために必要な衛星データを収集したと判定され、かつ、温度判定手段によって筐体内の温度が予め定められた規格値以上であると判定された場合、冷却用ファンが駆動する。すなわち、筐体内の温度が予め定められた規格値未満の場合、冷却用ファンは停止するので、無駄な電力を抑制することができる。
【0045】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係る衛星受信装置の構成は、図1に示した第1実施形態と同じである。上記第1実施形態では、装置が起動してから、信号処理部が現在位置を特定するために必要な衛星データを収集したと判定されるまで、冷却用ファンの駆動を停止する例を示したが、本実施形態では、信号処理部により現在位置を特定するために必要な衛星データが収集されない状態が予め定められた期間以上継続したことを判定した場合、信号処理部が現在位置を特定するために必要な衛星データを収集したと判定されるまで、冷却用ファンの駆動を停止させる処理を行う。
【0046】
図3に、本実施形態における制御部60の冷却ファン制御処理のフローチャートを示す。イグニッションスイッチがオンすると、本衛星受信装置1は起動状態となり、制御部60は、図3に示す処理を開始する。
【0047】
まず、冷却用ファン40aの電源をオフし(S200)、次に、本体温度が規格値以上か否かを判定する(S202)。具体的には、温度判定部20から入力される信号に基づいて筐体内の温度が予め定められた規格値以上であるか否かを判定する。
【0048】
ここで、本体温度が規格値未満の場合、S202の判定はNOとなり、S200へ戻る。
【0049】
また、筐体内の温度が予め定められた規格値以上の場合、S100の判定はYESとなり、次に、冷却用ファン40aの電源をオンする(S204)。具体的には、ファン制御部40にファン電源のオンを指示する信号を出力して、冷却用ファン40aへの電源供給を開始させる。これにより、冷却用ファン40aは駆動状態となる。
【0050】
次に、GPS衛星からの受信信号が長期間遮断された後復帰したか否かを判定する(S206)。具体的には、信号処理部13により現在位置を特定するために必要な衛星データが収集されない状態が予め定められた期間以上継続した後、現在位置を特定するために必要な衛星データが収集されたか否かを判定する。
【0051】
現在位置を特定するために必要な衛星データが収集されている場合、S206の判定はNOとなり、S202へ戻る。従って、冷却用ファン40aは駆動状態のままとなる。
【0052】
また、例えば、車両が長いトンネルを通過して、現在位置を特定するために必要な衛星データが収集されない状態が予め定められた期間以上継続した後、現在位置を特定するために必要な衛星データが収集された場合、S206の判定はYESとなり、次に、冷却用ファン40aの電源をオフする(S208)。具体的には、ファン制御部40にファン電源のオフを指示する信号を出力して、冷却用ファン40aへの電源の供給を停止させる。これにより、冷却用ファン40aは停止した状態となり、RF部12に内蔵された温度補償型水晶発振器の発振周波数のばらつきは低減する。
【0053】
したがって、RF部12に内蔵された温度補償型水晶発振器の発振周波数が安定した状態で、信号処理部13により受信信号に含まれる衛星データを収集して現在位置を特定する測位処理が行われる。
【0054】
次に、信号処理部13が現在位置を特定するために必要な衛星データを収集したか否かを判定する(S210)。
【0055】
信号処理部13が3個以上のGPS衛星から衛星データの収集を完了していない場合、S210の判定はNOとなり、S208へ戻る。したがって、冷却用ファン40aは停止状態のままとなる。
【0056】
したがって、RF部12に内蔵された温度補償型水晶発振器の発振周波数が安定した状態で、信号処理部13により受信信号に含まれる衛星データを収集して現在位置を特定する測位処理が行われる。
【0057】
また、信号処理部13が3個以上のGPS衛星から衛星データの収集を完了すると、S210の判定はYESとなり、次に、冷却用ファン40aの電源をオンする(S212)。具体的には、ファン制御部40にファン電源のオンを指示する信号を出力して、冷却用ファン40aへの電源供給を開始させる。これにより、冷却用ファン40aは駆動状態となる。
【0058】
次に、温度判定部20から入力される信号に基づいて本体温度が規格値以上か否かを判定する(S214)。
【0059】
ここで、筐体内の温度が予め定められた規格値以上の場合、S108の判定はYESとなり、S106へ戻り、冷却用ファン40aは駆動状態のままとなり、冷却用ファン40aにより筐体内は冷却される。
【0060】
また、筐体内の温度が予め定められた規格値未満になると、S108の判定はNOとなり、S100へ戻り、冷却用ファン40aは停止した状態となる。
【0061】
上記した構成によれば、信号処理部により現在位置を特定するために必要な衛星データが収集されない状態が予め定められた期間以上継続したか否かを判定し、信号処理部により現在位置を特定するために必要な衛星データが収集されない状態が予め定められた期間以上継続したと判定された場合、信号処理部が現在位置を特定するために必要な衛星データを収集したと判定されるまで、冷却用ファンの駆動が停止され、温度補償型水晶発振器の発振周波数ばらつきが低減するので、従来の衛星受信装置のように長時間サンプリングして平均化処理を実施することなく、精度良く、かつ、より早期に現在位置を特定することができる。
【0062】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態に係る衛星受信装置の構成を図4に示す。本実施形態における衛星受信装置1の構成は、図1に示した第1実施形態の構成と比較して、位置情報検出器70を備えた点が異なる。以下、上記実施形態と同一部分には、同一符号を付して説明を省略し、上記実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0063】
位置情報検出器70は、車両の方位変化量を検出するジャイロセンサ71と車両の移動距離を検出する距離センサ72によって構成されている。
【0064】
本実施形態における制御部60は、ジャイロセンサ71から入力される方位変化量と距離センサ72から入力される車両の移動距離に基づき推測航法を用いて現在位置を特定する現在位置特定処理を行う。この現在位置特定処理により特定された現在位置は、制御部60の内部に設けられた不揮発性記憶媒体に記憶される。
【0065】
図5に、本実施形態における制御部60の冷却ファン制御処理のフローチャートを示す。図3に示した第2実施形態の冷却ファン制御処理では、S206にてGPS衛星からの受信信号が長期間遮断された後復帰したか否かを判定するようになっているが、本実施形態では、S206に代えて自車がGPS衛星からの受信信号の受信が不可能な地下駐車場を出たか否かを判定する点が異なる。
【0066】
S204にて冷却用ファン40aの電源をオンした後、自車が地下駐車場を出たか否かを判定する(S306)。具体的には、現在位置特定処理により推測航法を用いて特定された現在位置と地図データ入力器30を介して入力された地図データに基づいて自車がGPS衛星からの受信信号の受信が不可能な地下中駐車場から出たか否かを判定する。
【0067】
自車が地下駐車場内に位置する場合、S306の判定はNOとなり、S202へ戻る。
【0068】
また、自車が地下駐車場から出ると、S306の判定はYESとなり、次に、冷却用ファン40aの電源をオフする(S208)。したがって、冷却用ファン40aは停止状態となり、RF部12に内蔵された温度補償型水晶発振器の発振周波数のばらつきは低減した状態となる。
【0069】
したがって、RF部12に内蔵された温度補償型水晶発振器の発振周波数が安定した状態で、信号処理部13により受信信号に含まれる衛星データを収集して現在位置を特定する測位処理が行われる。
【0070】
次に、信号処理部13が現在位置を特定するために必要な衛星データを収集したか否かを判定し(S210)、信号処理部13が3個以上のGPS衛星から衛星データの収集を完了していない場合、S210の判定はNOとなり、S208へ戻る。
【0071】
また、信号処理部13が3個以上のGPS衛星から衛星データの収集を完了すると、S210の判定はYESとなり、S212へと進む。
【0072】
なお、S306にて自車がGPS衛星からの受信信号の受信が不可能な地下駐車場を出たか否かを判定する例を示したが、地下駐車場に限定されるものではなく、例えば、GPS衛星からの受信信号の受信が不可能な場所として、トンネル、地下道、立体駐車場などを定めておき、自車がGPS衛星からの受信信号の受信が不可能な場所を出たか否かを判定するようにしてもよい。
【0073】
上記した構成によれば、GPS衛星からの受信信号の受信が不可能な場所から可能な場所へ自車が移動したか否かを判定し、GPS衛星からの受信信号の受信が不可能な場所から可能な場所へ自車が移動したと判定された場合、信号処理部が現在位置を特定するために必要な衛星データを収集したと判定されるまで、冷却用ファンの駆動が停止され、温度補償型水晶発振器の発振周波数ばらつきが低減するので、従来の衛星受信装置のように長時間サンプリングして平均化処理を実施することなく、精度良く、かつ、より早期に現在位置を特定することができる。
【0074】
(その他の実施形態)
上記実施形態では、筐体内の温度を検出して筐体内の温度が予め定められた規格値以上であるか否かを判定する温度判定部20を備え、温度判定部20により筐体内の温度が予め定められた規格値未満であると判定された場合に冷却用ファンを停止させる例を示したが、必ずしも温度判定部20を設け、筐体内の温度が予め定められた規格値未満となった場合に冷却用ファンを停止させる必要はない。
【0075】
また、上記実施形態では、筐体内の温度を検出するサーミスタと筐体内の温度が予め定められた規格値以上か規格値未満かを判定するコンパレータにより温度判定部20を構成した例を示したが、このような構成に限定されるものではなく、例えば、温度に応じて抵抗値が変化するサーミスタと、このサーミスタから出力される信号をデジタル信号に変換してデジタル信号処理によって筐体内の温度が予め定められた規格値以上か規格値未満かを判定する構成としてもよい。
【0076】
なお、上記実施形態における構成と特許請求の範囲の構成との対応関係について説明すると、S104、S210が情報収集判定手段に相当し、S104、S100が第1の冷却用ファン停止手段に相当し、S206が期間判定手段に相当し、S210、S208が第2の冷却用ファン停止手段に相当し、位置情報検出器70が位置情報検出手段に相当し、位置情報検出器70から入力される情報に基づき推測航法を用いて現在位置を特定する現在位置特定処理が現在位置特定手段に相当し、地図データ入力器30が地図データ入力手段に相当し、S306が受信位置判定手段に相当し、S210、S208が第3の冷却用ファン停止手段に相当し、温度判定部20が温度判定手段に相当し、S108とS106、S212とS214が冷却用ファン駆動手段に相当する。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の第1実施形態に係る衛星受信装置の構成を示す図である。
【図2】第1実施形態に係る制御部の冷却ファン制御処理を示すフローチャートである。
【図3】第2実施形態に係る制御部の冷却ファン制御処理を示すフローチャートである。
【図4】本発明の第4実施形態に係る衛星受信装置の構成を示す図である。
【図5】第3実施形態に係る制御部の冷却ファン制御処理を示すフローチャートである。
【図6】冷却用ファンが動作中の場合と冷却用ファンが停止中の場合のTCXOの発振周波数の変動量の測定データを示す図である。
【図7】TCXOの概略断面構成を示す図である。
【符号の説明】
【0078】
1…衛星受信装置、10…GPS受信装置、11…GPSアンテナ、12…RF部、
13…信号処理部、20…温度判定部、30…地図データ入力器、
40…ファン制御部、40a…冷却用ファン、50…表示装置、60…制御部、
70……位置情報検出器、71…ジャイロスコープ、72…距離センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度検出素子を内蔵した温度補償型水晶発振器を有し、該温度補償型水晶発振器によって生成されたクロックを用いてGPS衛星から受信した受信信号を中間周波数帯の中間周波数信号に周波数変換するRF部と、
前記RF部によって周波数変換された前記中間周波数信号を復調し、前記受信信号に含まれる衛星データを収集して現在位置を特定する測位処理を行う信号処理部と、
前記RF部および前記信号処理部が配置された筐体内を冷却するための冷却用ファンを駆動するファン制御部と、を備えた衛星受信装置であって、
前記信号処理部が現在位置を特定するために必要な前記衛星データを収集したか否かを判定する情報収集判定手段と、
装置が起動してから、前記情報収集判定手段によって前記信号処理部が現在位置を特定するために必要な前記衛星データを収集したと判定されるまで、前記ファン制御部に前記冷却用ファンの駆動を停止させる第1の冷却用ファン停止手段と、を備えたことを特徴とする衛星受信装置。
【請求項2】
温度検出素子を内蔵した温度補償型水晶発振器を有し、該温度補償型水晶発振器によって生成されたクロックを用いてGPS衛星から受信した受信信号を中間周波数帯の中間周波数信号に周波数変換するRF部と、
前記RF部によって周波数変換された前記中間周波数信号を復調し、前記受信信号に含まれる衛星データを収集して現在位置を特定する測位処理を行う信号処理部と、
前記RF部および前記信号処理部が配置された筐体内を冷却するための冷却用ファンを駆動するファン制御部と、を備えた衛星受信装置であって、
前記信号処理部が現在位置を特定するために必要な前記衛星データを収集したか否かを判定する情報収集判定手段と、
前記信号処理部により現在位置を特定するために必要な前記衛星データが収集されない状態が予め定められた期間以上継続したか否かを判定する期間判定手段と、
前記期間判定手段によって前記信号処理部により現在位置を特定するために必要な前記衛星データが収集されない状態が予め定められた期間以上継続したと判定された場合、前記情報収集判定手段によって前記信号処理部が現在位置を特定するために必要な前記衛星データを収集したと判定されるまで、前記ファン制御部に前記冷却用ファンの駆動を停止させる第2の冷却用ファン停止手段と、を備えたことを特徴とする衛星受信装置。
【請求項3】
温度検出素子を内蔵した温度補償型水晶発振器を有し、該温度補償型水晶発振器によって生成されたクロックを用いてGPS衛星から受信した受信信号を中間周波数帯の中間周波数信号に周波数変換するRF部と、
前記RF部によって周波数変換された前記中間周波数信号を復調し、前記受信信号に含まれる衛星データを収集して現在位置を特定する測位処理を行う信号処理部と、
前記RF部および前記信号処理部が配置された筐体内を冷却するための冷却用ファンを駆動するファン制御部と、を備えた衛星受信装置であって、
前記信号処理部が現在位置を特定するために必要な前記衛星データを収集したか否かを判定する情報収集判定手段と、
自車の方位変化量および移動距離を検出する位置情報検出手段と、
前記位置情報検出手段によって検出された自車の方位変化量および移動距離に基づき推測航法を用いて現在位置を特定する現在位置特定手段と、
地図データを入力する地図データ入力手段と、
前記現在位置特定手段によって特定された現在位置と前記地図データ入力手段を介して入力された地図データに基づいて前記GPS衛星からの受信信号の受信が不可能な場所から可能な場所へ自車が移動したか否かを判定する受信位置判定手段と、
前記受信位置判定手段によって前記GPS衛星からの受信信号の受信が不可能な場所から可能な場所へ自車が移動したと判定された場合、前記情報収集判定手段によって前記信号処理部が現在位置を特定するために必要な前記衛星データを収集したと判定されるまで、前記ファン制御部に前記冷却用ファンの駆動を停止させる第3の冷却用ファン停止手段と、を備えたことを特徴とする衛星受信装置。
【請求項4】
前記筐体内の温度を検出して前記筐体内の温度が予め定められた規格値以上であるか否かを判定する温度判定手段と、
前記情報収集判定手段によって前記信号処理部が現在位置を特定するために必要な前記衛星データを収集したと判定され、かつ、前記温度判定手段によって前記筐体内の温度が予め定められた規格値以上であると判定された場合、前記ファン制御部に前記冷却用ファンを駆動させる冷却用ファン駆動手段と、を備えたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の衛星受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−209117(P2008−209117A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−43365(P2007−43365)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】