説明

衛星送信端末および衛星送信方法

【課題】SSO衛星との通信時間を確保しつつ、小型軽量化および低消費電力化を図る。
【解決手段】衛星送信端末110は、GPS衛星(航法衛星)102から送信されるGPS信号(衛星信号)を受信する衛星信号受信部162aと、受信されたGPS信号を復号して地方時を導出する衛星信号復号部162bと、降交点通過地方時または昇交点通過地方時と、衛星通過ウインドウ幅とに基づいて、SSO衛星へのデータの送信を開始する時刻である開始時刻と、SSO衛星へのデータの送信を終了する時刻である終了時刻とを導出する時刻導出部172と、電源の供給を受けている間、SSO衛星104にデータを送信する送信部154と、導出された地方時が、開始時刻から終了時刻までに含まれている間、送信部154への電源の供給を行う電源供給部160とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽同期準回帰軌道を周回する衛星にデータを送信する衛星送信端末およびこれを用いた衛星送信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、送信端末が、GPS衛星を利用して現在位置を導出し、導出した現在位置を示す位置情報を、無線通信を介して、データを集約するデータ集約装置に直接送信する通信システムが普及している(例えば、特許文献1)。しかし、このような通信システムでは、送信端末とデータ集約装置との距離が長すぎると、送信端末から送信された電波がデータ集約装置まで届かず、データ集約装置が位置情報を取得できないという事態が生じるため、データ集約装置を中心とした、ある程度の狭い範囲内でしか、送信端末を利用できなかった。
【0003】
また、従来より人工衛星を中継器として利用する通信システムが利用されている。例えば、中継器として利用する人工衛星として、太陽同期準回帰軌道(SSO:Sun-synchronous Sub-recurrent Orbit)を周回する人工衛星(以下、単にSSO衛星と称する)を利用した通信システムが提案されている。このようなSSO衛星を利用した通信システムは、アニマルトラッキングや、海洋観測等に利用されている。
【0004】
例えば、アニマルトラッキングに利用する場合、衛星送信端末を、鳥類や哺乳類といった動物に装着する。衛星送信端末は、SSO衛星とは別体のGPS(Global Positioning System)衛星から送信されるGPS信号を受信し、受信したGPS信号から現在位置を導出して、この導出した現在位置を示す位置情報と、他の衛星送信端末と自体とを識別するための識別子とをSSO衛星に送信する。SSO衛星は、衛星送信端末から送信された位置情報および識別子を、地球上の任意の機関、例えば、動物保護センタや研究機関等にあるデータ集約装置に送信する。
【0005】
また、例えば、海洋観測に利用する場合、衛星送信端末を海洋観測用のブイに装着し、衛星送信端末は、位置情報や識別子、海洋観測用のブイによって測定された温度、湿度、気圧、波高等を示す測定情報を、SSO衛星を中継して、例えば、気象庁等の地球上の任意の機関にあるデータ集約装置に送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平08−180286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記衛星送信端末は、例えば、1時間ごとといった所定時間間隔で航法衛星からの信号、例えばGPS(Global Positioning System)衛星のGPS信号を受信し、受信したGPS信号に基づいて生成した位置情報や、識別子、測定情報等のデータを、1分ごとといった所定時間間隔でSSO衛星にバースト送信する。ここで、衛星送信端末が1のSSO衛星と通信を行うことができるタイミングは、1日のうち、例えば15分×数回(回数は、緯度によって異なり、例えば、赤道付近では5〜6回)に限られる。このように15分といった限られた時間に正確にSSO衛星と通信を行うためには、SSO衛星が送信する、SSO衛星自体の軌道に関する情報が含まれる信号(以下、単に軌道信号と称する)を受信し、その軌道信号に応じて通信を行うタイミングを調整する。
【0008】
しかし、小型軽量を目的とした場合、SSO衛星が送信する軌道信号を受信するための受信装置を、意図的に搭載しない。このように受信装置を搭載しない場合、衛星送信端末は、SSO衛星から送信される軌道信号を受信することができないため、SSO衛星と通信ができるタイミングを厳密に把握することができない。したがって、衛星送信端末は、SSO衛星の軌道に拘わらず、SSO衛星に確実に位置情報や、識別子、測定情報等のデータを伝達するため、通信時間を最大限確保すべく、24時間連続してデータを送信している。この場合、SSO衛星と通信が確実にできない時間帯であっても、連続してデータを送信し続け、データ送信にかかる不要な電力を消費していた。
【0009】
そこで、本発明は、このような課題に鑑み、SSO衛星との通信時間を確保しつつ、低消費電力化を図ることが可能な、衛星送信端末および衛星送信方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の衛星送信端末は、航法衛星から送信される衛星信号を受信する衛星信号受信部と、受信された衛星信号を復号して経度と緯度と地方時とを導出する衛星信号復号部と、太陽同期準回帰軌道を周回するSSO衛星と地球の中心との結線が赤道を北から南に通過したときの通過した点の経度における地方時によって示される降交点通過地方時、または、SSO衛星と地球の中心との結線が赤道を南から北に通過したときの通過した点の経度における地方時によって示される昇交点通過地方時と、地球の自転に基づく制限によりSSO衛星と通信できない期間を除いた期間である衛星通過ウインドウ幅とに基づいて、SSO衛星へのデータの送信を開始する時刻である開始時刻と、SSO衛星へのデータの送信を終了する時刻である終了時刻とを導出する時刻導出部と、電源の供給を受けている間、SSO衛星にデータを送信する送信部と、導出された地方時が、開始時刻から終了時刻までに含まれている間、送信部への電源の供給を行う電源供給部とを備えることを特徴とする。
【0011】
導出された緯度に基づいて衛星通過ウインドウ幅を算出するウインドウ幅算出部をさらに備えてもよい。
【0012】
上記衛星送信端末は、緯度と衛星通過ウインドウ幅とが関連付けられたウインドウ幅テーブルを予め保持するメモリをさらに備え、ウインドウ幅算出部は、ウインドウ幅テーブルを参照して、導出された緯度から衛星通過ウインドウ幅を算出してもよい。
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の、電源の供給を受けている間、太陽同期準回帰軌道を周回するSSO衛星にデータを送信する送信部を備える衛星送信端末を用いた衛星送信方法は、航法衛星から送信される衛星信号を受信し、受信した衛星信号を復号して経度と緯度と地方時とを導出し、SSO衛星と地球の中心との結線が赤道を北から南に通過したときの通過した点の経度における地方時によって示される降交点通過地方時、または、SSO衛星と地球の中心との結線が赤道を南から北に通過したときの通過した点の経度における地方時によって示される昇交点通過地方時と、地球の自転に基づく制限によりSSO衛星と通信できない期間を除いた期間である衛星通過ウインドウ幅とに基づいて、SSO衛星へのデータの送信を開始する時刻である開始時刻と、SSO衛星へのデータの送信を終了する時刻である終了時刻とを導出し、導出した地方時が、開始時刻から終了時刻までに含まれている間、送信部への電源の供給を行うことを特徴とする。
【0014】
上述した衛星送信端末の技術的思想に基づく構成要素やその説明は、当該衛星送信方法にも適用可能である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、SSO衛星との通信時間を確保しつつ、低消費電力化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】衛星通信システムの接続関係を説明するための説明図である。
【図2】従来の衛星送信端末の通信動作を説明するための説明図である。
【図3】衛星送信端末の概略的な機能を示した機能ブロック図である。
【図4】衛星送信端末のデータ(位置情報と識別子)の送信相手であるSSO衛星の軌道を説明するための説明図である。
【図5】SSO衛星が衛星送信端末と通信できる相対的な位置関係を説明するための説明図である。
【図6】衛星通過ウインドウ幅を説明するための説明図である。
【図7】衛星送信端末がSSO衛星を電波見通し可能な範囲を説明するための説明図である。
【図8】衛星送信端末がSSO衛星を電波見通し可能な範囲を説明するための説明図である。
【図9】経線LT1Eと経線LT1Wとの算出方法を説明するための説明図である。
【図10】ウインドウ幅テーブルを説明するための説明図である。
【図11】衛星送信方法の具体的な処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0018】
(衛星通信システム100)
図1は、衛星通信システム100の接続関係を説明するための説明図である。図1に示すように、衛星通信システム100は、衛星送信端末110(図1中、110a、110bで示す)と、航法衛星、例えばGPS衛星102(図1中、GPS衛星102a、102b、102cで示す)と、SSO衛星104と、データ集約装置106とを含んで構成される。
【0019】
本実施形態にかかる衛星送信端末110は、例えば、アニマルトラッキングに利用され、鳥類や哺乳類といった動物に装着される。衛星送信端末110aは、3以上のGPS衛星102から送信される衛星信号(以下、GPS信号と称する)を受信して、衛星送信端末110aの現在位置を導出し、導出した現在位置を示す位置情報を生成する。そして、衛星送信端末110aは、生成した位置情報と、自体である衛星送信端末110aを他の衛星送信端末110bと識別するための識別子とを、SSO衛星104に送信する。
【0020】
衛星送信端末110から送信された位置情報および識別子を受信したSSO衛星104は、地球上の任意の機関、例えば、動物保護センタや研究機関等にある、データ集約装置106に位置情報および識別子を送信する。
【0021】
図2は、従来の衛星送信端末の通信動作を説明するための説明図である。図2中、衛星送信端末の位置から1のSSO衛星104を電波見通し可能な(SSO衛星104と通信ができる)タイミングを黒で塗りつぶした棒線で、GPS信号を受信するタイミングを白抜きの棒線で示す。図2に示すように、衛星送信端末が1のSSO衛星104を電波見通し可能なタイミング、すなわち衛星送信端末が1のSSO衛星104と通信を行うことができるタイミングは、1日のうち、例えば、15分×数回(回数は、緯度によって異なり、例えば、赤道付近では5〜6回)に限られる。
【0022】
そこで、従来の衛星送信端末は、SSO衛星104から送信される軌道信号を受信するための受信装置を備えることで、受信した軌道信号から、SSO衛星104と通信を行うことのできるタイミングを導出し、導出したタイミングに位置情報や識別子といったデータを送信していた。
【0023】
しかし、従来の衛星送信端末は、SSO衛星104が送信する軌道信号を受信するための受信装置が必要となり、その分体積が増加してしまう。また、受信装置は受信状態を維持しなければならないので電力消費も大きくなる。このため、小型・軽量化が要求され、電池を電源とする、動物に装着させる衛星送信端末に受信装置を設けるのは困難である。
【0024】
このような動物に装着させる衛星送信端末には、小型・軽量化を目的として、受信装置を設けない構成を用いる。受信装置を設けない構成では、SSO衛星104と通信を行うことができるタイミングを把握する術がないため、SSO衛星104の軌道に拘わらず、SSO衛星104に確実に位置情報や識別子等のデータを伝達するため、通信時間を最大限確保すべく、24時間連続して送信することとなる。この場合、SSO衛星104と確実に通信ができない時間帯であっても、連続的にデータ送信し続け、データ送信にかかる不要な電力消費が生じる結果となっていた。
【0025】
そこで、本実施形態の衛星送信端末110は、アニマルトラッキングや海洋観測等に利用するため、SSO衛星104との通信時間を確保しつつ、低消費電力化を図ることを目的とする。以下、衛星送信端末110の具体的な構成について詳述し、続いて衛星送信端末110を用いた衛星送信方法について説明する。
【0026】
(衛星送信端末110)
図3は、衛星送信端末110の概略的な機能を示した機能ブロック図である。図3に示すように、衛星送信端末110は、航法衛星ユニット150と、RTC部152と、送信部154と、メモリ156と、中央制御部158と、電源供給部160とを含んで構成される。図3中、電力の流れを実線の矢印で示し、データの流れを破線の矢印で示す。
【0027】
航法衛星ユニット150は、衛星信号受信部162aと、衛星信号復号部162bとを含んで構成される。衛星信号受信部162aは、GPS衛星(航法衛星)102から送信されるGPS信号(衛星信号)を受信する。本実施形態において、衛星信号受信部162aは、所定時間間隔(例えば、1時間ごとや、30分ごと、15分ごと等)で、GPS信号を受信する。衛星信号復号部162bは、受信されたGPS信号を復号して、自体(衛星送信端末110)の位置の緯度および経度を取得し、その緯度および経度(現在位置)を示す情報である位置情報を生成して送信部154に出力する。
【0028】
また、本実施形態において衛星信号復号部162bは、受信されたGPS信号を復号して、世界協定時(UTC:Universal Time, Coordinated)を取得し、既に取得されている経度と合わせて自体の位置(経度)の地方時を導出する。具体的に、衛星信号復号部162bは、まず取得した自体の経度を利用して、世界協定時と自体の地方時の差分を、以下の式(1)、(2)を利用して導出する。
世界協定時と地方時の差分の「時」=INT(経度/15度) …式(1)
世界協定時と地方時の差分の「分」=[(経度/15度)−{INT(経度/15度)}]×60 …式(2)
ここで、INT(経度/15度)は、(経度/15度)の整数部分(小数点以下は切り捨てる)という意味である。したがって、衛星信号復号部162bは、取得した経度が例えば142.5度ある場合、世界協定時と地方時の差分は、9時間30分となる。
【0029】
次に、衛星信号復号部162bは、上記式(1)、(2)で導出した、世界協定時と地方時の差分に、取得した世界協定時を加算または減算して、地方時を導出する。例えば、取得した経度が東経であり、世界協定時が1時00分である場合、上記世界協定時と地方時の差分である9時間30分を加算した時刻10時30分が地方時となる。また、取得した経度が西経であり、世界協定時が1時00分である場合、上記世界協定時と地方時の差分である9時間30分を減算した時刻15時30分が地方時となる。本実施形態において、このようにして導出した値を地方時として定義する。以下、衛星信号復号部162bが取得した経度が東経である場合を例に挙げて説明する。
【0030】
RTC(Real Time Clock)部152は、RTC回路で構成され、衛星送信端末110自体の時計としての役割を担う。RTC部152は、後述する中央制御部158によって、所定時間間隔で(例えば、1時間ごとに)、衛星信号復号部162bが導出した地方時に校正される。ここでは、衛星送信端末110が動物等の移動を伴うものに装着された場合、東西方向の移動により世界協定時とRTC部152自体が示す地方時の差分が変化して実際の地方時とRTC部152が示す地方時に差が生じるため、RTC部152の校正が必要となる。
【0031】
具体的に説明すると、衛星送信端末110の地球上の絶対位置(特に経度)が変化せず、すなわち衛星送信端末110がGPS信号を受信してから東西方向に移動していなければ、RTC部152が示す地方時と実際の地方時は一致する。しかし、衛星送信端末110が、東西方向に移動すると実際の地方時が変化する。例えば、緯度が60度の位置で、衛星送信端末110が東西方向に時速50kmで移動した場合の時間あたりの経度変化を時間換算すると、50(km)/[40000(km)/24(時間)/{1/sin(90−60)}]×60(分)=3.6(分)である。したがって、この場合、衛星送信端末110が任意の経度の位置で地方時を導出し、1時間後に東西方向に50km離隔した経度の位置でGPS信号から地方時を取得すると、RTC部152が示す地方時とGPS信号から取得した実際の地方時とが4分程度の誤差を有することとなる。このような誤差が累積してしまうのを回避するために、定期的にRTC部152の校正をする。後述する電源供給部160による送信部154への電源供給を行う時間は6時間以上といった長い時間なので、このような4分程度の誤差であれば本実施形態の通信動作に影響を及ぼすことはない。
【0032】
送信部154は、後述する電源供給部160から電源の供給を受けている間、SSO衛星104にデータ(衛星信号復号部162bから出力された位置情報や、自体を識別する識別子)を送信する。本実施形態において、送信部154は、所定時間間隔(例えば、1分ごと)で所定時間(例えば、1秒間)、すなわち間欠的にバースト送信を行う。
【0033】
なお、海洋観測に利用するために、海洋観測用のブイに衛星送信端末110を装着する場合、衛星送信端末110は、気温、水温、気圧、波高等の測定値を取得し、送信部154は、位置情報と共に、または位置情報に代えて、測定値を示す情報をSSO衛星104に送信する。この場合、衛星送信端末110が、気温、水温、気圧、波高等の測定を行う測定センサを備えてもよいし、ブイが測定センサを備えてもよい。ブイが測定センサを備える場合、衛星送信端末110は、ブイの測定センサから測定値を取得する。
【0034】
メモリ156は、ROM(Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable ROM)、不揮発性RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ、HDD等、データを記憶可能な不揮発性の記憶媒体で構成される。
【0035】
中央制御部158は、中央処理装置(CPU)や信号処理装置(DSP:Digital Signal Processor)、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を含む半導体集積回路を用いることができ、中央制御部158は、衛星送信端末110全体を管理および制御する。
【0036】
また、本実施形態において、中央制御部158は、ウインドウ幅算出部170、時刻導出部172としても機能する。
【0037】
ウインドウ幅算出部170は、衛星信号復号部162bが導出した緯度に基づいて衛星通過ウインドウ幅を算出する。ここで、衛星通過ウインドウ幅は、地球の自転に基づく制限によるSSO衛星104と通信できない期間を除いた期間である。以下に、ウインドウ幅算出部170が衛星通過ウインドウ幅を算出する具体的な算出方法について説明する。
【0038】
図4は、衛星送信端末110のデータ(位置情報と識別子)の送信相手であるSSO衛星104の軌道を説明するための説明図である。特に図4(a)は、SSO衛星104の軌道面108aと、太陽120との関係を説明するための説明図であり、図4(b)は、地球に対するSSO衛星104の軌道108bを説明するための説明図である。
【0039】
SSO衛星104は、太陽同期準回帰軌道(Sun-synchronous Sub-recurrent Orbit)を周回する。太陽同期準回帰軌道は、例えば、100分程度の周期で周回する極軌道の一種である。図4(a)に示すように、太陽同期準回帰軌道は、軌道が含まれる仮想的な平面である軌道面108aと、太陽120と地球122を結ぶ結線の為す角度Ωが年間を通じて略一定となる軌道である。
【0040】
したがって、図4(b)に示す、SSO衛星104と地球122の中心点Oとの結線Rが、赤道を北から南に通過した場合の通過した点の経度における地方時である降交点通過地方時は、地球122上のどの位置(経度)にいても同一の地方時となり、結線Rが赤道を南から北に通過した場合の通過した点の経度における地方時である昇交点通過地方時も、地球122上のどの位置(経度)にいても同一の地方時となる。降交点通過地方時と昇交点通過地方時とは、12時間の差がある。降交点通過地方時および昇交点通過地方時は、SSO衛星104ごとに予め定められている。
【0041】
図5は、SSO衛星104が衛星送信端末110と通信できる相対的な位置関係を説明するための説明図である。SSO衛星104は、地球122上の所定の範囲(以下、衛星電波見通範囲と称する)内にある衛星送信端末110から送信されたデータのみを受信できる。換言すれば、衛星送信端末110は、衛星電波見通範囲内に位置する場合のみ、SSO衛星104と通信を行うことができる。
【0042】
例えば、図5に示すように、SSO衛星104が赤道付近を図5の奥から手前に周回しているとし、地球122の自転に応じて、衛星送信端末110がT0からT4まで動くとする(衛星送信端末110は、地球122の自転に応じた移動以外はしないとする、すなわち、衛星送信端末110は地球122上から見て静止しているとする)。つまり、T0、T1、T2、T3、T4はそれぞれ、衛星送信端末110の各位置での地方時を示す。
【0043】
衛星送信端末110がSSO衛星104の衛星電波見通範囲164(図5中、ハッチングで示す)内のT1、T2、T3に位置するときには、衛星送信端末110が送信したデータをSSO衛星104は受信できるが、衛星電波見通範囲164外のT0、T4に位置するときには、衛星送信端末110が送信したデータをSSO衛星104は受信できない。すなわち、衛星送信端末110が送信したデータは、降交点通過地方時または昇交点通過地方時の前後数時間の時間帯にのみ、SSO衛星104に受信され得る。
【0044】
そこで、ウインドウ幅算出部170は、上述したSSO衛星104と衛星送信端末110との相対的な位置関係を利用して、地球122の自転に基づく制限によるSSO衛星104と通信できない期間を除いた期間である衛星通過ウインドウ幅を導出する。
【0045】
図6は、衛星通過ウインドウ幅を説明するための説明図である。図6中、衛星送信端末110の位置から1のSSO衛星104を電波見通し可能な(SSO衛星104と通信ができる)タイミングを黒で塗りつぶした棒線で、衛星通過ウインドウ幅をハッチングで塗りつぶした四角で示す。
【0046】
上述したように、衛星通過ウインドウ幅は、SSO衛星104と確実に通信できない期間180(図6中、白抜きの四角で示す)を除いた期間である。ここで、SSO衛星104と確実に通信できない期間180は、地球の自転により、自体の位置がSSO衛星104の軌道と垂直方向に離れ、SSO衛星104が軌道上のいずれの位置にいたとしても電波見通しが不可能となる期間をいう。これに対し、衛星通過ウインドウ幅の間、衛星送信端末110は、SSO衛星104の軌道上の位置によってはSSO衛星104と通信できるので、その間は、SSO衛星104と通信できる可能性があるということになる。
【0047】
図7および図8は、衛星送信端末110がSSO衛星104を電波見通し可能な範囲を説明するための説明図である。図7に示すように、SSO衛星104は、高度(海水面からの高さ)hの軌道108bを周回しているとし、地球122上の任意の位置F2から仰角θ(度)で電波見通し可能な、F2の真上を高度hで通過するSSO衛星104の軌道108b上の位置をS1、S3とし、位置S1と地球の中心点Oを結ぶ結線と地表面との交点(フットポイント)をF1、位置S3と中心点Oを結ぶ結線と地表面の交点をF3とする。また、位置F1、中心点O、位置F2の為す角αとすると、位置F2から高度hの高さにあるSSO衛星104が仰角θ以上で電波見通し可能な地表面上の範囲(以下、単に装置電波見通範囲と称する)は、中心点Oと位置F2との結線を回転軸とし、角αで中心点Oと位置F1との結線を回転させた場合の地表面上の円T1(図8参照)で表すことができる。なお、位置F1、F3は、円T1の円周と位置F2を通過する経線との交点となる。
【0048】
地球は、球形状であるため、装置電波見通範囲が等しいと、装置電波見通範囲の境界に位置する経線同士の幅は、低緯度よりも高緯度の方が広くなる。図8を用いて具体的に説明する。図8において、円T1の円周上の経線をLT1W、LT1Eで示し、円T1よりも高緯度の円T2の円周上の経線をLT2W、LT2Eで示す。そうすると、図8に示すように、装置電波見通範囲に入る経線の幅は、円T1よりも高緯度にある円T2の方が広い。
【0049】
また、経度は地方時に対応するものであり、地球は24時間で1回自転するため、経度が15度異なると、地方時に換算して1時間異なることとなる。
【0050】
衛星通過ウインドウ幅は、このようにして求められた装置電波見通範囲の境界の経度差から以下の式(3)で導出することができる。ここでは、例として、装置電波見通範囲を円T1とした場合を挙げる。ここでも、経度が東経の場合を例に挙げて説明する。
衛星通過ウインドウ幅=経度差/15
=(LT1E−LT1W) …式(3)
【0051】
すなわち、衛星通過ウインドウ幅は、円T1の円周と接する2つの経線LT1Eと経線LT1Wとの幅である。したがって、ウインドウ幅算出部170は、経線LT1Eと経線LT1Wを求めれば、衛星通過ウインドウ幅を算出することができる。なお、経度が西経である場合、衛星通過ウインドウ幅=(LT1W−LT1E)となる。
【0052】
図9は、経線LT1Eと経線LT1Wとの算出方法を説明するための説明図である。図9において、角Aは、経線LT1Eと経線LT1Wとが為す角を2等分する角であるとすると、角Aは以下の式(4)から(8)を用いて算出することができる。ここでLatは、衛星送信端末110がある位置F2の緯度を示し、αは、図7の角αを示す。また、位置F1、中心点O、円T1と経線LT1Wの交点Qが為す角をx、北極点P、中心点O、位置F1が為す角をy、北極点P、中心点O、交点Qが為す角をzで示す。
sin(A)=sin(x)/sin(y) …式(4)
sin(y)=sin(90−Lat) …式(5)
sin(x)=sin(α) …式(6)
sin(A)=sin(α)/sin(90−Lat) …式(7)
A=arcsin{sin(α)/sin(90−Lat)} …式(8)
次に、ウインドウ幅算出部170は、以下の式(9)から(14)を用いて、図7に示すαを算出する。ここで、位置F2と位置S1との結線をa、位置S2と中心点Oとの結線をb、位置S1と中心点Oとの結線をc、地球の半径をrとすると、余弦定理から、
c/sin(γ)=b/sin(β)=a/sin(α) …式(9)
である。ここで、c=r+h、γ=θ+90、b=rであるため、これらを式(9)に代入すると、
(r+h)/sin(θ+90)=r/sin(β) …式(10)
(r+h)×sin(β)=r×sin(θ+90) …式(11)
sin(β)={r/(r+h)}×sin(θ+90) …式(12)
β=arcsin[{r/(r+h)}×sin(θ+90)] …式(13)
となる。ここで、α=180−γ−βであるため、
α=180−90−θ−arcsin[{r/(r+h)}×sin(θ+90)]
=90−θ−arcsin[{r/(r+h)}×sin(θ+90)]…式(14)
となる。
【0053】
ここで、ウインドウ幅算出部170は、式(14)に、地球の半径rを6371km、SSO衛星104の高度hを850km、仰角θを6°を代入して、角αを算出し、算出した角αと、衛星送信端末110がある位置F2の緯度Latを式(8)に代入して角Aを算出し、角Aを2倍して、式(3)に代入し、衛星通過ウインドウ幅を算出する。
【0054】
こうしてウインドウ幅算出部170は、衛星信号復号部162bが、緯度を取得すると、衛星送信端末110の現在の緯度に基づいて衛星通過ウインドウ幅を算出する。そしてウインドウ幅算出部170は、算出した衛星通過ウインドウ幅を時刻導出部172に出力する。
【0055】
時刻導出部172は、降交点通過地方時または昇交点通過地方時と、ウインドウ幅算出部170が算出した衛星通過ウインドウ幅とに基づいて、送信部154がSSO衛星104へデータの送信を開始する時刻である開始時刻と、送信部154がSSO衛星104へデータの送信を終了する時刻である終了時刻とを導出する。
【0056】
具体的に、時刻導出部172は、降交点通過地方時または昇交点通過地方時を中心とし、衛星通過ウインドウ幅の半分の時間前の時刻を開始時刻とし、衛星通過ウインドウ幅の半分の時間経過後の時刻を終了時刻として導出する。例えば、降交点通過地方時が10:30であり、衛星通過ウインドウ幅が3時間である場合、時刻導出部172は、開始時刻を9:00、終了時刻を12:00と導出する。
【0057】
上述したように、太陽同期回帰軌道を周回するSSO衛星104は、降交点通過地方時および昇交点通過地方時が、SSO衛星104ごとに予め定まっている。時刻導出部172は、予め定まっている降交点通過地方時と昇交点通過地方時と、ウインドウ幅算出部170が算出した衛星通過ウインドウ幅とで、地球の自転に基づく制限によりSSO衛星104と衛星送信端末110が通信できない時間を除いた時間、すなわち衛星送信端末110からSSO衛星104を電波見通し可能な開始時刻と終了時刻を導出することができる。したがって、この開始時刻から終了時刻までは、SSO衛星104へデータの送信ができる可能性がある時間である。
【0058】
電源供給部160は、RTC部152が示す地方時が、時刻導出部172が導出した開始時刻から終了時刻までに含まれている間、送信部154への電源の供給を行う。すなわち、送信部154は、衛星送信端末110の現在位置の地方時(RTC部152が示す地方時)が、時刻導出部172が導出した開始時刻から終了時刻までに含まれている間のみSSO衛星104にデータを送信することとなる。
【0059】
電源供給部160は、衛星送信端末110の現在位置の地方時が、時刻導出部172が導出した開始時刻から終了時刻までに含まれている間のみ、送信部154への電源の供給を行う。したがって、送信部154は、降交点通過地方時または昇交点通過地方時を中心とした、衛星通過ウインドウ幅のみSSO衛星104にデータを送信する。
【0060】
つまり、電源供給部160は、開始時刻から終了時刻まで以外の時間、すなわち、地球の自転による制限の関係で、データを送信してもSSO衛星104が受信することができない時間、送信部154への電源の供給をOFFにすることで無駄な電力消費を削減することができる。
【0061】
以上、説明したように、衛星送信端末110は、従来の受信装置を備えた衛星送信端末(以下、単に、受信機能付き端末と称する)および従来の24時間連続して送信し続ける衛星送信端末(以下、単に、連続送信端末と称する)と比較して、消費電力を大幅に削減することができる。例えば、受信機能付き端末は受信装置が消費する電力が大きいため、受信機能付き端末と比較して、衛星送信端末110は、消費電力を大幅に削減することができる。
【0062】
例えば、受信装置が消費する電力が0.8W/hであり、送信部が消費する電力が0.08W/hであるとする。この場合、受信機能付き端末は、SSO衛星104と通信を行う時間(例えば15分×6回)、受信装置および送信部に電源を供給するので、消費電力の総計は、{(0.8W/h×15分)+(0.08W/h×15分)}×6回=1.32Wとなる。一方、衛星送信端末110は、衛星通過ウインドウ幅(3時間×2回)の間のみ、送信部154に電力を供給しているため、消費電力の総計は、0.08W/h×6時間=0.48Wとなり、受信機能付き端末と比較して消費電力を約1/3に削減することができる。また、連続送信端末は24時間連続して送信部に電源を供給しているのに対し、衛星送信端末110は、衛星通過ウインドウ幅分のみ送信部154に電源を供給しているので、例えば、衛星通過ウインドウ幅が3時間である場合(降交点通過地方時を中心とする場合と昇交点通過地方時を中心とする場合とで合計6時間)、連続送信端末と比較して、約1/4に消費電力を削減することができる。
【0063】
また、装置自体の体積(大きさ)に関して、衛星送信端末110は、連続送信端末とは同等であるが、受信機能付き端末と比較して極めて小さく形成することができる。
【0064】
さらに、装置の信頼性に関して、受信機能付き端末は、受信装置の不具合等でSSO衛星104の軌道の計算に誤差が生じ、通信可能時間と送信時間が仮に10分ずれた場合、データを送信する時間が極端に短くなってしまい正常な通信が実行されないおそれもあるが、衛星送信端末110は、送信時間が10分ずれたとしても、それ以外の衛星通過ウインドウ幅内で十分通信が実行され、SSO衛星104にデータを確実に送信することができる。したがって、衛星送信端末110は、信頼性に関し、連続送信端末とは同等であるが、受信機能付き端末より高い。
【0065】
また、ここでは、ウインドウ幅算出部170が衛星通過ウインドウ幅を算出する構成について説明したが、衛星送信端末110のメモリ156に、緯度と衛星通過ウインドウ幅とが関連付けられたウインドウ幅テーブルを予め保持させておき、ウインドウ幅算出部170は、ウインドウ幅テーブルを参照して、衛星信号復号部162bが導出した緯度から衛星通過ウインドウ幅を算出するとしてもよい。
【0066】
図10は、ウインドウ幅テーブル190を説明するための説明図であり、特に図10(a)は、緯度と、実際に算出した衛星通過ウインドウ幅との関係を説明する説明図であり、図10(b)は、ウインドウ幅テーブル190を示す図であり、図10(c)は、ウインドウ幅テーブル190と算出した衛星通過ウインドウ幅との対応関係を説明するための説明図である。
【0067】
図10(a)に示すように、衛星通過ウインドウ幅は、緯度が高くなるに従って、長くなることが分かる。そして、緯度が90−α(αは、図7における装置見通範囲を示す角αの数値部分)以上になると、装置電波見通範囲内に極点(北極点、南極点)が入るため、衛星通過ウインドウ幅は24時間となる。
【0068】
そして図10(b)に示すように、ウインドウ幅テーブル190では、各緯度に対応して、算出された衛星通過ウインドウ幅が一意に決定されるように、緯度と衛星通過ウインドウ幅とが関連付けられている。例えば、図10(b)に示すように、ウインドウ幅テーブル190は、緯度が0度以上15未満である場合、衛星通過ウインドウ幅は3時間、15度以上30度未満である場合3.5時間、30度以上40度未満である場合4時間、40度以上45度未満である場合4.5時間、45度以上50度未満である場合5時間、50度以上55度未満である場合5.5時間、55度以上60度未満である場合7時間、60度以上である場合24時間というように、緯度と衛星通過ウインドウ幅を関連付けている。このような図10(b)に示したウインドウ幅テーブル190は、図10(a)に示した、緯度と、算出した衛星通過ウインドウ幅との関係を用いて、段階的にテーブル化したものである。
【0069】
衛星送信端末110は、データを送信するSSO衛星104が複数ある場合であっても、それらが周回する軌道の地表面からの高さhが等しい場合には、1のウインドウ幅テーブル190をメモリ156に保持させておけば足りるが、SSO衛星104ごとに周回する軌道の地表面からの高さhが異なる場合、SSO衛星104の数だけウインドウ幅テーブル190をメモリ156に保持させておく。
【0070】
衛星送信端末110のメモリ156がウインドウ幅テーブル190を予め保持する場合、衛星信号復号部162bが、緯度を取得すると、ウインドウ幅算出部170は、メモリ156に保持されたウインドウ幅テーブル190を参照し、衛星送信端末110の現在の緯度に基づいて衛星通過ウインドウ幅を算出する。そしてウインドウ幅算出部170は、算出した衛星通過ウインドウ幅を時刻導出部172に出力する。
【0071】
このように、衛星送信端末110のメモリ156が予めウインドウ幅テーブル190を保持しておく構成により、衛星送信端末110は、緯度と衛星通過ウインドウ幅とを関連付けたウインドウ幅テーブル190を参照するだけといった簡単な処理で、SSO衛星104との送信時間を導出するため、処理負荷を低減させることができ、信頼性を向上させることが可能となる。
【0072】
以上説明したように、本実施形態にかかる衛星送信端末110は、連続送信端末と同等の体積で、連続送信端末や受信機能付き端末よりも大幅に消費電力を削減することができ、アニマルトラッキングや海洋観測等の電池を電源とするため電力供給に制限のある用途にも好適に利用することが可能となる。
【0073】
(衛星送信方法)
また、上述した衛星送信端末110を用いた衛星送信方法も提供される。図11は、衛星送信方法の具体的な処理を説明するためのフローチャートである。
【0074】
図11に示すように、中央制御部158は、RTC部152を参照して前回GPS信号(衛星信号)を受信したときから所定時間(例えば、1時間)が経過したか否かを判定し(S200)、所定時間が経過していれば(S200におけるYES)、その旨を衛星信号受信部162aに出力する。そして、衛星信号受信部162aはGPS信号を受信し(S202)、衛星信号復号部162bは、受信ステップS202で受信したGPS信号を復号して、緯度、経度、世界協定時を取得する(S204)。そして衛星信号復号部162bは、取得した経度と世界協定時から、衛星送信端末110が現在位置する地点(衛星信号受信部162aがGPS信号を受信した地点)の地方時を導出し(S206)、中央制御部158は、この地方時でRTC部152を校正する(S208)。
【0075】
続いて、電源供給部160は、RTC部152から現在の地方時を取得し(S210)、ウインドウ幅算出部170は、現在位置取得ステップS204で取得した緯度から衛星通過ウインドウ幅を算出する(S212)。時刻導出部172は、降交点通過地方時または昇交点通過地方時を中心とし、衛星通過ウインドウ幅の半分の時間経過前の時刻を開始時刻とし、衛星通過ウインドウ幅の半分の時間経過後の時刻を終了時刻として導出する(S214)。
【0076】
次に、電源供給部160は、地方時取得ステップS210で取得した地方時が、開始終了時刻導出ステップS214で導出した開始時刻から終了時刻までの間に含まれるか否かを判定する(S216)。地方時が開始時刻から終了時刻までの間に含まれる場合(S216におけるYES)、電源供給部160は、現在、送信部154に電源を供給しているか否かを判定し(S218)、電源を供給していなければ(S218におけるNO)、送信部154への電源の供給を開始する(S220)。
【0077】
電源供給ステップS220で電源を供給された送信部154は、現在位置取得ステップS204で取得した現在位置(緯度、経度)を示す位置情報や識別子等を含むデータを所定時間間隔でバースト送信する(S222)。なお、送信部154は、所定時間間隔(例えば、1分ごと)で間欠的にデータをバースト送信しているが、ここでは説明の便宜上省略する。
【0078】
一方、地方時判定ステップS216において、地方時が開始時刻から終了時刻までの間に含まれないと判定された場合(S216におけるNO)、電源供給部160は、現在、送信部154に電源を供給しているか否かを判定し(S224)、電源を供給していれば(S224におけるYES)、送信部154への電源の供給を停止する(S226)。
【0079】
以上説明したように、本実施形態にかかる衛星送信端末110を用いた衛星送信方法においても、アニマルトラッキングや海洋観測等に利用するため、SSO衛星104との通信時間を確保しつつ、小型軽量化および低消費電力化を図ることが可能となる。
【0080】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0081】
例えば、上述した実施形態では、ウインドウ幅算出部170は、緯度に応じて衛星通過ウインドウ幅が異なるウインドウ幅テーブルを参照する構成について説明したが、どの緯度であっても衛星通過ウインドウ幅を固定値(例えば3時間)としてもよい。上述したように、緯度が高くなるほど、衛星通過ウインドウ幅は長くなる(緯度0度では、3.02時間であるが、緯度60度では、6.72時間)。例えばSSO衛星104の周期が100分である場合、衛星通過ウインドウ幅を3時間に固定したとしても、高緯度の位置で、衛星通過ウインドウ幅内に1〜2回、衛星送信端末110はSSO衛星104と通信を行うことができる。
【0082】
したがって、衛星通過ウインドウ幅を固定値とすることで、衛星送信端末110の処理負荷を軽減できるだけでなく、送信部154が消費する電力のさらなる削減を実現することも可能となる。また、海洋観測用に固定的に設置されたブイに衛星送信端末110を装着する場合、緯度はほとんど変化しないため、衛星通過ウインドウ幅を固定値としてもよい。
【0083】
また、上述した実施形態では、衛星送信端末110の送信相手として太陽同期準回帰軌道を周回するSSO衛星104を挙げたが、送信相手が太陽同期軌道を周回する衛星であっても、衛星送信端末110は、消費電力を削減しつつ、データを送信することが可能となる。
【0084】
なお、本明細書の衛星送信方法の各工程は、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はなく、並列的あるいはサブルーチンによる処理を含んでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、太陽同期準回帰軌道を周回する衛星にデータを送信する衛星送信端末およびこれを用いた衛星送信方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0086】
104 …SSO衛星
110 …衛星送信端末
150 …航法衛星ユニット
152 …RTC部
154 …送信部
156 …メモリ
158 …中央制御部
160 …電源供給部
162a …衛星信号受信部
162b …衛星信号復号部
164 …衛星電波見通範囲
170 …ウインドウ幅算出部
172 …時刻導出部
190 …ウインドウ幅テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
航法衛星から送信される衛星信号を受信する衛星信号受信部と、
受信された前記衛星信号を復号して経度と緯度と地方時とを導出する衛星信号復号部と、
太陽同期準回帰軌道を周回するSSO衛星と地球の中心との結線が赤道を北から南に通過したときの通過した点の経度における地方時によって示される降交点通過地方時、または、前記SSO衛星と地球の中心との結線が赤道を南から北に通過したときの通過した点の経度における地方時によって示される昇交点通過地方時と、地球の自転に基づく制限により前記SSO衛星と通信できない期間を除いた期間である衛星通過ウインドウ幅とに基づいて、前記SSO衛星へのデータの送信を開始する時刻である開始時刻と、前記SSO衛星へのデータの送信を終了する時刻である終了時刻とを導出する時刻導出部と、
電源の供給を受けている間、前記SSO衛星にデータを送信する送信部と、
導出された前記地方時が、前記開始時刻から前記終了時刻までに含まれている間、前記送信部への電源の供給を行う電源供給部と
を備えることを特徴とする衛星送信端末。
【請求項2】
導出された前記緯度に基づいて前記衛星通過ウインドウ幅を算出するウインドウ幅算出部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の衛星送信端末。
【請求項3】
緯度と前記衛星通過ウインドウ幅とが関連付けられたウインドウ幅テーブルを予め保持するメモリをさらに備え、
前記ウインドウ幅算出部は、前記ウインドウ幅テーブルを参照して、前記導出された緯度から前記衛星通過ウインドウ幅を算出することを特徴とする請求項2に記載の衛星送信端末。
【請求項4】
電源の供給を受けている間、太陽同期準回帰軌道を周回するSSO衛星にデータを送信する送信部を備える衛星送信端末を用いた衛星送信方法であって、
航法衛星から送信される衛星信号を受信し、
受信した前記衛星信号を復号して経度と緯度と地方時とを導出し、
前記SSO衛星と地球の中心との結線が赤道を北から南に通過したときの通過した点の経度における地方時によって示される降交点通過地方時、または、前記SSO衛星と地球の中心との結線が赤道を南から北に通過したときの通過した点の経度における地方時によって示される昇交点通過地方時と、地球の自転に基づく制限により前記SSO衛星と通信できない期間を除いた期間である衛星通過ウインドウ幅とに基づいて、前記SSO衛星へのデータの送信を開始する時刻である開始時刻と、前記SSO衛星へのデータの送信を終了する時刻である終了時刻とを導出し、
導出した前記地方時が、前記開始時刻から前記終了時刻までに含まれている間、前記送信部への電源の供給を行うことを特徴とする衛星送信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−74924(P2012−74924A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218102(P2010−218102)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】