説明

衣付食品及びその製造方法

【課題】三枚下ろしされた中落肉付きの魚の中骨を中種に採用した、新たな食感を有し、カルシウム強化食品として有用な、衣材として少なくともバッターを用いた衣付食品、冷凍衣付食品及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の衣付食品は、魚の少なくとも頭部、尾部及び背鰭が除去され、三枚下ろしされた中落肉付きの中骨を、複数枚重ねて中種にした、衣材として少なくともバッターを有する衣付食品であって、前記複数枚重ねた中骨が、少なくとも加圧蒸煮によって、その形態を保持した状態で食可能に軟らかく加熱処理されており、前記各中骨の少なくとも重ね合わせた接触箇所に接着性食成分が介在したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三枚下ろしされた中落肉付きの魚の中骨を複数枚重ねて、予め食可能に軟らかく加圧蒸煮された該中骨を中種とした、新たな食感を有し、カルシウム強化食品として有用な、衣材として少なくともバッターを有する衣付食品及び該衣付食品を工業的にも効率良く製造することが可能な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
魚の骨を食するように調理した加工食品は、カルシウム強化食品等として従来から知られており、その骨の食感も魚肉とは異なり、独特な食感が得られている。このような加工食品としては、例えば、魚の中骨入り缶詰、骨付き魚のから揚げ、魚の骨を油ちょう等した骨せんべいが知られている。
魚の中骨入り缶詰は、通常、ぶつ切りされた中骨付き魚肉を、缶詰に密封した後、骨まで食することが可能になるまで軟らかく加圧加熱等して製造されている。このような魚肉と共に密封された容器内で加圧加熱された中骨は、水分を多く含み、非常に脆いため、中骨を缶詰から取り出す際には、非常に崩れ易く、その形態を略保持した状態で衣付食品の中種として用いることは困難である。
骨付き魚のから揚げや骨せんべいは、高温で油ちょう又は焼成されるため、骨自体の水分量が少なく、硬くて脆い食感が得られる。
従来より、カルシウムの補給等のために魚の骨を利用した食品は様々開発されており、今後も、新たな食感や風味を有する魚の骨を利用した加工食品の開発が望まれている。
しかし、三枚下ろしされた中落肉付きの魚の中骨を複数枚重ねて、予め食可能に軟らかく加圧蒸煮された該中骨を中種とした衣付食品については知られていない。
【0003】
ところで、従来、魚類の加工食品の製造方法として、特許文献1及び2には、魚類の表皮と身肉の形態が保持し易く、骨の状態も軟らかく食べ易くできる方法として、加熱媒体として水蒸気を用いた減圧加熱工程と加圧加熱工程とを組み合わせた方法が提案されている。
しかし、この方法で得られる魚類加工品は、魚類の表皮と身肉を含むものであって、三枚下ろしされた中落肉付きの魚の中骨を中種に用いる衣付食品とは、食感及び風味が大きく異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3781946号明細書
【特許文献2】国際公開第2006/025102号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、三枚下ろしされた中落肉付きの魚の中骨を中種に採用した、新たな食感を有し、カルシウム強化食品として有用な、衣材として少なくともバッターを用いた衣付食品及び冷凍衣付食品を提供することにある。
本発明の別の課題は、上記衣付食品及び冷凍衣付食品を、工業的にも効率良く製造することが可能な衣付食品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、三枚下ろしされた中落肉付きの魚の中骨を複数枚重ねることにより、中骨の保型性に安定感を出すことができ、該中骨自体を、予め加圧蒸煮することで、中骨が魚肉と密閉容器内で加圧加熱される缶詰の中骨のような脆さが緩和でき、その形態を略保持した状態で衣付食品の中種として十分採用できること、また、魚肉がほとんど付いていないにもかかわらず中種としてのボリューム感が出せること、並びに使用する骨量を多くでき、カルシウム強化食品として有用であること、更には、新たな食感及び風味が得られることを見い出した。更にまた、上記中骨を複数枚重ねた少なくとも接触面に接着性食成分を介在させることにより、製造時における加圧蒸煮や減圧蒸煮時等における中骨同士の剥がれや破裂等が抑制でき、工業的にも効率よく製造しうることを見い出し、本発明を完成した。
【0007】
本発明によれば、魚の少なくとも頭部、尾部及び背鰭が除去され、三枚下ろしされた中落肉付きの中骨を、複数枚重ねて中種にした、衣材として少なくともバッターを有する衣付食品であって、前記複数枚重ねた中骨が、少なくとも加圧蒸煮によって、その形態を保持した状態で食可能に軟らかく加熱処理されており、前記各中骨の少なくとも重ね合わせた接触箇所に接着性食成分が介在した、衣が加熱調理前の衣付食品が提供される。
また本発明によれば、上記衣付食品を凍結した、冷凍衣付食品が提供される。
更に本発明によれば、上記衣付食品又は冷凍衣付食品を、加熱調理した衣付食品が提供される。
更にまた本発明によれば、魚の少なくとも頭部、尾部及び背鰭が除去され、三枚下ろしされた中落肉付きの中骨を準備する工程(a)と、工程(a)で準備した中骨を複数枚重ねるにあたり、各中骨の少なくとも重ね合わせて接触させる箇所に接着性食成分の原料成分を存在させて重ね合わせる工程(b)と、重ね合わせた中骨を、食可能に軟らかくするために、少なくとも加圧蒸煮する工程(c)と、工程(c)で得られた重ね合わせた中骨に、衣材として少なくともバッターを付着させる工程(d)とを含む衣付食品の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の衣付食品は、三枚下ろしされた中落肉付きの中骨を、複数枚重ねて中種にし、該中骨を少なくとも加圧蒸煮によって、食可能に軟らかく加熱処理されており、前記各中骨の少なくとも重ね合わせた接触箇所に接着性食成分が介在しているので、中種が一体的であり、新たな食感を有し、カルシウム強化食品として有用である。
本発明の衣付食品の製造方法は、上記工程(a)〜(d)を含み、特に、工程(b)及び工程(c)を含むので、中骨の保型性に安定感を出すことができ、製造時における加圧蒸煮や減圧蒸煮時等における中骨同士の剥がれや破裂等が抑制でき、工業的にも効率良く上記衣付食品を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明の衣付食品は、中種として、魚の少なくとも頭部、尾部及び背鰭が除去され、三枚下ろしされた中落肉付きの中骨を複数枚重ねたものを使用する。
魚は、生魚、生魚や、予め内臓、鱗等を除去した前処理した魚を凍結解凍したものを用いることができ、その種類としては、例えば、アジ、サケ、サバ、サンマ、ウナギ、タラが挙げられる。
三枚下ろしされた中落肉付きの中骨は、基本的に魚1匹分の中骨の少なくとも背骨部分の形態を保持したものを1枚として使用する他、衣付食品の種類や、魚の大きさ等に応じて、魚1匹分の中骨を複数、例えば2〜4程度に分割したものを1枚として使用することもできる。該分割したものの1枚の大きさは適宜選択できるが、中骨を用いた新たな食感を得るために、また、中種としての一体感を出すために、分割した中骨の背骨の長さが3〜10cm程度とすることが好ましい。
【0010】
中骨に付着している中落肉の量は特に限定されず、通常の三枚下ろしされた際に残る量程度で良い。中落肉を全て除去すると、中骨を重ねた際に、各中骨を接着させることが困難となって、工業的に中種として使用することが煩雑化する。また、中落肉は、他の魚肉部分よりも通常旨み成分が多く、得られる衣付食品の風味及び食感を良好にする。
【0011】
前記中落肉付きの中骨は、通常2〜5枚、好ましくは2〜4枚程度重ねて中種として使用できる。重ね方は特に限定されず、衣付食品の種類に応じて適宜選択することができ、また、重なる箇所が全体に及ばなくても、中種として一体感があれば部分的に重なっていても良い。例えば、中骨の方向を同一方向に重ねても、頭部側と尾部側を交互に逆にして重ねても良い。また、最下段として同一平面状に中落肉付きの中骨を2枚並べ、その2枚の両方に重なるようにその上に1枚重ねることもできる。更に、魚1匹分の中骨と、上記分割した中骨を組み合わせて重ねても、また、種類の異なる魚の中骨を重ねても良い。
前記中落肉付きの中骨を重ねずに1枚とする場合には、加圧蒸煮によって、食可能に軟らかく加熱処理した際の保型性に問題が生じ、歩留りが悪くなり、工業的生産に不向きである。更に、本発明のように、衣材として少なくともバッターを用いる衣付食品の場合、中骨が1枚であると、中種の存在感が極端に低下し、良好な食感及び風味が得られ難い。
【0012】
本発明の衣付食品においては、前記中落肉付きの中骨の少なくとも重ね合わせた接触箇所に接着性食成分を介在させる。
該接着性食成分とは、各中落肉付きの中骨同士の接着性を、少なくとも加圧蒸煮によって、食可能に軟らかく加熱処理することにより、補強し得る食成分であれば良い。
接着性食成分は、上記加圧蒸煮等の加熱処理により、硬化、高分子化等するため、該加熱処理前とはその形態が通常異なる。加熱処理前の接着性食成分の原料成分の形態としては、例えば、粉状、液状等の流動状、フィルム状等の固形状が挙げられる。加熱処理前の接着性食成分の原料成分としては、例えば、小麦粉、コーンフラワー、米粉等の穀粉類、澱粉類、粉末卵白や粉末大豆蛋白等の粉末状蛋白又はこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
これら接着性食成分は、前記中落肉付きの中骨の少なくとも重ね合わせた接触箇所に介在されていれば良く、各中骨表面全体に存在させることもできる。
【0013】
本発明の衣付食品においては中種として、前記複数枚重ねた中落肉付きの中骨を、後述する衣材を付ける前に、予め、少なくとも加圧蒸煮によって、食可能に軟らかく加熱処理されたものを用いる。このような前記中骨のみの加圧蒸煮により、中骨入り魚類の缶詰とは異なり、中骨、特に背骨の形態を維持し、保型性も安定感良いものとすることができる。具体的な加熱処理条件については、骨の種類、中骨の重ねる枚数や状態、中種自体の大きさや形態に応じて、公知の方法により容易に決定することができるが、後述する本発明の製造方法において、そのより具体例を詳述する。
【0014】
本発明の衣付食品としては、例えば、パン粉付きフライ食品、フリッター、天ぷら等の衣材として少なくともバッターを用いた衣付食品が挙げられる。
衣材として用いるバッターは、公知のバッターから、その衣材食品の種類に応じて適宜選択することができる。また、衣付食品の種類に応じて、バッター以外の衣材も適宜選択することができる。
本発明の衣付食品は、本発明に用いる上述の中種を、バッターを含む所望の衣材により被覆したものである。
【0015】
本発明の衣付食品は、凍結して冷凍衣付食品とすることもでき、また、その種類に応じて、油ちょう処理、焼成処理、電子レンジ加熱処理、オーブン加熱処理等の加熱調理により、加熱調理後の衣付食品とすることができる。
【0016】
本発明の上述の衣付食品は、上述の複数枚重ねた中落肉付きの中骨を中種として用い、且つ衣材として少なくともバッターを用いたものであれば、その製造方法は、公知の各種衣付食品の製造方法に準じて製造することができる。しかし、効率良く、且つ工業的にも歩留り良く製造する方法としては、以下に説明する本発明の製造方法が好ましく挙げられる。
【0017】
本発明の製造方法は、魚の少なくとも頭部、尾部及び背鰭が除去され、三枚下ろしされた中落肉付きの中骨を準備する工程(a)を含む。
工程(a)において、魚の頭部、尾部及び背鰭の除去、並びに三枚下ろしの順序や方法は特に限定されず、通常の魚を三枚下ろして、中落肉付きの状態の中骨が得られる方法であれば良く、中骨に背鰭以外の他の鰭等が残っている場合には除去した方が好ましい。該中骨は、上述のとおり、魚1匹を1枚としても良いし、分割したものであっても良い。
中落肉は、上述のとおり、通常魚を三枚下ろしした際に残存する両程度で良く、魚の種類によっても異なるが、1枚の中骨全量に対して40〜60質量%程度が通常である。
工程(a)で準備する三枚下ろしされた中落肉付きの中骨は、三枚下ろし後に、臭みの除去や保存性を確保するために、冷水で洗浄し、例えば、血液や血糊等を除去することが好ましく、更には、3〜5%程度の食塩水に、10〜30分程度浸漬することが好ましい。
【0018】
本発明の製造方法は、工程(a)で準備した中骨を複数枚重ねるにあたり、各中骨の少なくとも重ね合わせて接触させる箇所に接着性食成分の原料成分を付着させて重ね合わせる工程(b)を含む。
接着性食成分の原料成分は、前述のものが挙げられる。上記中骨同士を重ねて接触させる箇所等の所望の箇所に接着性食成分の原料成分を存在させるには、該接着性食成分の原料成分の形態が粉状の場合、各中骨の所望の箇所に打粉する方法で、該接着性食成分の原料成分の形態が液状等の流動状の場合、各中骨の所望の箇所に塗布、噴霧、もしくは浸漬する方法で、該接着性食成分の原料成分の形態がフィルム状等の固形状の場合には、各中骨の所望の箇所に載置、貼り付け等で付着させ、これら中骨を上述した所望の方法で重ね合わせることにより行うことができる。これらの中でも、液状等では、原料成分がダマになり易いので、接着性をより均等に付与しやすい打粉する方法が好ましい。該原料成分を存在させる量は、その種類に応じて、所望の接着補強効果が得られるように適宜選択して行うことができる。
【0019】
本発明の製造方法は、重ね合わせた中骨を、その形態を保持した状態で食可能に軟らかくするために、少なくとも加圧蒸煮する工程(c)を含む。
工程(c)において、重ね合わせた中骨を、その形態を保持した状態で食可能に軟らかくするとは、後述する衣材で被覆する際に、重ね合わせた中骨の少なくとも背骨を分割させること無くその形態を略保持して該被覆を行うことが可能であって、且つ該中骨をそのまま食した際に、生の中骨とは異なり、違和感無く、咀嚼し得る程度に軟らかい状態を意味する。このような状態は、例えば、公知の、魚類の中骨入り缶詰における中骨より、保型性の安定感が出る程度に水分量が少なく、咀嚼した際に、該缶詰の中骨よりも若干硬い感覚を呈する状態である。
【0020】
工程(c)における加圧蒸煮は、公知の圧力制御可能な蒸煮加熱装置を用いて行うことができる。加圧は、大気圧を超える圧力であって、通常相対気圧として0.10〜0.20MPa程度で行うことができ、温度は通常100〜120℃の範囲で行うことができる。加圧蒸煮の時間は、重ね合わせた中骨の形態、大きさ、容量により適宜選択できるが、通常15〜40分間程度である。
工程(c)の加圧蒸煮は、中骨の水分量を減じて、その保型性を安定させるために、重ね合わせた中骨に加熱媒体である水蒸気が直接接触するように行うことが好ましい。この際、工程(b)における接着性食成分の原料成分を、中骨表面の全体に存在させておくと、中骨の重ねた箇所の接着補強効果に加えて、中種全表面に被膜が形成され、保型性の安定感が更に増強され、一体感が更に改善される。
【0021】
本発明の製造方法においては、上記工程(c)の前に、重ね合わせた中骨を減圧蒸煮する工程(c1)を行うこともできる。
工程(c1)を行うことにより、例えば、重ね合わせた中骨の接着性を更に補強する効果等が得られる。
工程(c1)における減圧蒸煮は、公知の圧力制御可能な蒸煮加熱装置を用いて行うことができ、好ましくは工程(c)に用いる装置と同一の装置用いることにより、重ね合わせた中骨を移動せずに行うことができる。減圧は、大気圧より低い圧力であって、その下限値は通常−0.1MPa程度、好ましくは−0.05MPa程度であり、温度は通常50〜100℃の範囲で行うことができる。減圧蒸煮の時間は、重ね合わせた中骨の形態、大きさ、容量により適宜選択できるが、通常10〜30分間程度である。
工程(c1)の減圧蒸煮においても、その保型性を安定させるために、重ね合わせた中骨に加熱媒体である水蒸気が直接接触するように行うことが好ましい。
【0022】
本発明の製造方法では、上記工程(c)の後に、加圧加熱の温度以下で加圧した圧力を大気圧に減圧する減圧冷却を通常行うことができる。
また、該減圧冷却の後には、次の工程(d)を行う前に、得られた中種である重ね合わせた中骨を、芯温が20〜25℃程度の室温程度になるように室温放冷もしくは20℃未満の温度、例えば、2〜6℃程度のクール温程度に強制冷却することができる。
【0023】
本発明の製造方法は、工程(c)で得られた重ね合わせた中骨に、衣材として少なくともバッターを付着させる工程(d)を含み、この工程(d)により、本発明の衣が加熱調理前の衣付食品を得ることができる。
工程(d)は、公知の衣材としてバッターを含む衣付食品を製造する際に、中種に衣材を付着させる方法と同様に行うことができる。この際、衣材としては、上述のとおり、衣付食品の種類に応じて公知の衣材を使用して行うことができる。
【0024】
本発明の製造方法は、工程(d)で得られた衣付食品を凍結する工程(e)を含むことができる。この工程(e)は、通常、−18〜−40℃で凍結することにより行うことができ、冷凍衣付食品を得ることができる。
【0025】
本発明の製造方法は、衣材を加熱調理する工程(f)を含むことができる。
工程(f)の加熱調理は、衣材の種類に応じて適宜選択することができ、例えば、油ちょう処理、焼成処理、電子レンジ加熱処理、オーブン加熱処理が挙げられる。
このような加熱調理により、衣付食品の惣菜品等を得ることができる。
【0026】
本発明の衣付食品及び本発明の製造方法により得られる衣付食品としては、例えば、アジフライや天ぷら等の魚フライ様食品が挙げられる。
【実施例】
【0027】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明するが本発明はこれらに限定されない。
実施例1
全長約18cmの生のマアジの内臓を除去し、3枚下ろしにした後、頭部、尾部及び鰭を除去し、中落肉が付着した状態の中骨を得た。得られた中骨を、冷水で洗浄して血及び血糊を除去し、水温15℃以下の4%の食塩水に10分間浸漬した。
次いで、浸漬した中骨を取り出し、表面の水分を水切りにより除去した。次に、得られた中骨の両面に、粉末卵白5質量部及び小麦粉95質量部からなる打粉を行い、中骨100質量部あたり、10〜13質量部の打粉を付着させた。
得られた打粉付き中骨を2枚平置きで重ねたものを12組、圧力制御可能な蒸煮加熱装置(日金加工株式会社製、ステリエース PRS-10-IVCC)の加熱板に載置した。
続いて、表1に示す条件で減圧加熱、加圧加熱及び減圧冷却を行った。得られた中骨を室温で放冷し、衣付食品用の中種を調製した。得られた中種について以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0028】
<中種の原料骨の接着性評価>
中種の原料骨の接着程度を5段階に分けて評価し、しっかり接着しているものを5点、ほとんど接着していないものを1点とし、5段階評価した。3点以上のものが接着性評価が良好であるとした。表1の数値は12組の平均値である。
<減圧冷却後の中種の破裂評価>
中種の破裂評価を5段階で評価し、3点以上を合格とした。5点:破裂していない、4点:破裂している部分がかなり少ない、3点:破裂している部分がある、2点:破裂している部分が多い、1点:かなりの部分が破裂している。表1の数値は12組の平均値である。
<中種の風味や旨み評価>
○:得られた中骨を試食し、アジらしい風味や旨みが十分に感じられた。△:アジらしい風味や旨みがあまり感じられなかった。×:アジらしい風味や旨みが殆ど感じられなかった。
【0029】
次に、上記で得られた中種の表面に、市販のバッター粉20質量部を水80質量部に分散させたバッターを付け、更に市販のセミドライパン粉を付けてアジフライ様衣付食品を調製した。得られた衣付食品を、−35℃で24時間凍結した後、170〜180℃の油で揚げて試食し、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0030】
<バッター付け時の中種の保型性評価>
○:バッター付け時にほとんど崩れることが無かった。△:バッター付け時に若干崩れる部分はあったが全体の形態は略保たれていた。×:中骨同士の剥がれや、分離又は折れが生じ、その形態維持が困難であった。
<食感評価>
○:中骨の存在感があまり突出していない、アジフライに類似したバランスの良い食感であった。△:中骨の存在感が突出し、また中骨以外の部分も崩れ易い、バランスの悪い食感であった。×:中骨のみが感じられる、アジフライとは全く異なる食感であった。
【0031】
実施例2、比較例1〜8
表1に示す条件に変えた以外は、実施例1に準じて、中種を調製し、更に、アジフライ様衣付食品を調製し、実施例1と同様に各評価を行った。結果を表1に示す。
尚、表1中の「骨のみ」は、実施例1と同様に調製した中落肉付き中骨から中落肉をこそげ落とし、骨のみを使用したことを示す。また、比較例7は、実施例1と同様に調製した中落肉付き中骨1枚のみを中種の材料に用いた例であり、比較例8は、実施例1と同様に調製した中落肉付き中骨から中落肉をこそげ落とした骨のみ1枚のみを中種の材料に用いた例である。
【0032】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚の少なくとも頭部、尾部及び背鰭が除去され、三枚下ろしされた中落肉付きの中骨を、複数枚重ねて中種にした、衣材として少なくともバッターを有する衣付食品であって、
前記複数枚重ねた中骨が、少なくとも加圧蒸煮によって、その形態を保持した状態で食可能に軟らかく加熱処理されており、前記各中骨の少なくとも重ね合わせた接触箇所に接着性食成分が介在した、衣が加熱調理前の衣付食品。
【請求項2】
前記中骨として、複数に分割された中骨を含む請求項1記載の衣付食品。
【請求項3】
魚が、アジ、サケ、サバ、サンマ、ウナギ又はタラである請求項1又は2記載の衣付食品。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の衣付食品を凍結した、冷凍衣付食品。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の衣付食品を、加熱調理した衣付食品。
【請求項6】
魚の少なくとも頭部、尾部及び背鰭が除去され、三枚下ろしされた中落肉付きの中骨を準備する工程(a)と、
工程(a)で準備した中骨を複数枚重ねるにあたり、各中骨の少なくとも重ね合わせて接触させる箇所に接着性食成分の原料成分を存在させて重ね合わせる工程(b)と、
重ね合わせた中骨を、その形態を保持した状態で食可能に軟らかくするために、少なくとも加圧蒸煮する工程(c)と、
工程(c)で得られた重ね合わせた中骨に、衣材として少なくともバッターを付着させる工程(d)とを含む衣付食品の製造方法。
【請求項7】
工程(c)の加熱蒸煮前に、重ね合わせた中骨を減圧蒸煮する工程(c1)を含む請求項6記載の製造方法。
【請求項8】
工程(d)で得られた衣付食品を凍結する工程(e)を含む請求項6又は7記載の製造方法。
【請求項9】
衣材を加熱調理する工程(f)を含む請求項6〜8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
前記中骨として、複数に分割された中骨を含む請求項6〜9のいずれかに記載の製造方法。
【請求項11】
魚が、アジ、サケ、サバ、サンマ、ウナギ又はタラである請求項6〜10のいずれかに記載の製造方法。

【公開番号】特開2011−115047(P2011−115047A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−272597(P2009−272597)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(505126610)株式会社ニチレイフーズ (71)
【Fターム(参考)】