説明

衣料用洗浄剤組成物

【課題】悪臭抑制効果の高い衣料用洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】(a)一般式(I)で表されるポリグリセリルモノエーテルと、(b)プロテアーゼとを含有する衣料用洗浄剤組成物。
R−O−(C362n−H (I)
(式中、Rは炭素数6〜22の炭化水素基を、nは整数を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣料用洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、洗濯物を乾燥させる際や洗濯後の長期保管等、様々な状況によって悪臭が発生するという問題があった。特に、近年、生活環境の変化により、衣類等の洗濯物の乾燥を室内で行ったり、乾燥機を用いたりするようになっているが、このような場合、特に悪臭が発生しやすかった。また、近年、加齢臭等の体臭に対する意識も高まっている。
【0003】
洗濯後の悪臭の主な発生原因としては、洗濯後の衣類に、洗濯によって除去しきれなかった汚れが微量に残留しており、これらが雑菌の作用によって分解されて発生する場合や、衣類に残留している汚れのうち、皮脂等に含まれている不飽和化合物が、自己酸化、あるいは乾燥機等の使用による高温加熱によって酸化し、分解されて発生すること等が考えられる。
【0004】
一般に悪臭の消臭は香料を用いてのマスキングや相殺による感覚消臭、中和、付加、あるいは酸化還元による化学的消臭、吸着等による物理消臭、殺菌や酵素作用による生物的消臭等に分類され、通常の場合、マスキング香料、酸化剤/還元剤あるいは殺菌剤などが併用されている。
【0005】
特許文献1等には漂白剤を用いた試みが開示されている。また、特許文献2、3等には特定の酵素を用いた試みが開示されている。また、特許文献4等には抗菌作用を有する物質と抗酸化作用を有する物質を用いた試みが開示されている。また、特許文献5等には非イオン性界面活性剤と特定の第4級窒素含有ポリマーを用いた試みが開示されている。しかし、何れの場合も様々な取り扱い条件で十分な効果が得られるわけではない。
【特許文献1】特開2007−197712号公報
【特許文献2】特開2003−119663号公報
【特許文献3】特開2003−129088号公報
【特許文献4】特開2004−204085号公報
【特許文献5】特開2002−60787号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、悪臭抑制効果の高い、更に洗濯後の乾燥条件や保管条件に関わらず悪臭抑制効果の高い、衣料等の繊維製品の洗濯時に用いる衣料用洗浄剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記(a)成分及び(b)成分を含有する衣料用洗浄剤組成物に関する。
(a)成分:一般式(I)で表されるポリグリセリルモノエーテル
R−O−(C362n−H (I)
(式中、Rは炭素数6〜22の炭化水素基を、nはグリセリンの縮合度であり、整数を示す。)
(b)成分:プロテアーゼ
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、衣料等の繊維製品の洗濯時に用いる悪臭抑制効果の高い衣料用洗浄剤組成物が得られる。本発明の洗浄剤組成物で洗濯された衣料は、洗濯後の乾燥条件や保管条件に関わらず悪臭が抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
<(a)成分>
本発明の(a)成分は、一般式(I)で示されるグリセリン又はその縮合物であるポリグリセリン中の水酸基の水素原子の一つが、炭素数6〜22の炭化水素基で置換させてエーテル結合を形成したグリセリルモノエーテル及び/又はポリグリセリルモノエーテルである。
【0010】
(a)成分中、Rが炭素数12及び又は炭素数14のアルキル基であって、且つグリセリンの縮合度nが3〜5であるポリグリセリルモノエーテルの合計の比率は40質量%以上であることが低温溶解性、悪臭抑制効果の観点から好ましく、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上、最も好ましくは80質量%以上である。また、低温での洗浄性能の観点から上限は、99質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であり、更に90質量%以下、特に85質量%以下であることが好ましい。(a)成分は、一般式(I)中のグリセリンの縮合度nが異なる複数の化合物を含み、nの異なる化合物を2種以上、特に3種以上を含むことが低温での洗浄性能の観点から好ましい。(a)成分中、Rが炭素数12及び又は炭素数14のアルキル基であって、且つグリセリンの縮合度nが3〜5のものが最も高い洗浄性能を示す。しかしこの範囲であってもグリセリンの縮合度nが単一のもののみからなる場合、結晶化しやすいため、特に低温で水への溶解性が劣り、その結果、洗浄力は低下する傾向を示す場合がある。一方、(a)成分がグリセリンの縮合度nの異なる複数の化合物を含む場合、結晶化が抑制されるため低温でも高い溶解性を示し、その結果良好な洗浄性能が得られる場合が認められる。従って、(a)成分中のグリセリンの縮合度nが3〜5であるもののうち、2種以上、更に3種全部(n=3、4、5)を含むことが、より好ましい。更に、(a)成分中の、Rが炭素数12及び又は炭素数14のアルキル基であって、且つグリセリンの縮合度nが3〜5であるポリグリセリルモノエーテルの合計の比率を99質量%以下とした場合には、低温での溶解性が著しく向上し、その結果洗浄性能が大きく向上する効果が得られる。一般にこの含有量が低いほど低温での溶解性は向上するが、同時に常温での洗浄性能が低下する傾向にあるため、適度なバランスが求められる。
【0011】
本発明の(a)成分は、(a)成分中の一般式(I)中のRが炭素数12のアルキル基でグリセリンの縮合度nが3〜5である化合物(a−1)と、一般式(I)中のRが炭素数14のアルキル基でグリセリンの縮合度nが3〜5である化合物(a−2)の合計の比率が、一般式(I)中のグリセリンの縮合度nが1〜7である化合物の合計量に対して、40質量%以上であることが好ましく、これら化合物(a−1)及び化合物(a−2)から選ばれるnの異なる複数の化合物、特にn=3、4、5の3種の化合物を含有することが悪臭抑制効果の観点から好ましい。
【0012】
(a)成分中、一般式(I)の縮合度n=3〜5の化合物は、20質量%以上含まれることが好ましい。
【0013】
洗浄力、悪臭抑制効果の観点から、(a)成分の原料であるグリセリンの縮合度nは4が最も好ましく、縮合度が1から7であるグリセリルエーテル中、グリセリンの縮合度nが4であるグリセリルモノエーテルの合計の比率が10質量%以上、更に15質量%以上、より更に20質量%以上、特に30質量%以上であることが好ましい。
【0014】
また、(a)成分中、グリセリンの縮合度nが1又は2であるグリセリルモノエーテル等の比率は合計で50質量%未満、更に35質量%以下であることが悪臭抑制効果の観点から好ましい。更に、成分(a)中、グリセリンの縮合度nが1であるグリセリルモノエーテルの含有量が30質量%未満、更に20質量%以下であることが好ましい。
【0015】
一般式(I)中のRは、直鎖、分岐鎖、飽和、不飽和の何れでも良く、炭素数6〜22、更に12〜14、特に12のアルキル基が好ましい。(a)成分は、一般式(I)でグリセリンの縮合度nが1〜7である化合物の合計中、一般式(I)中のRが炭素数12〜14、特に炭素数12及び14のアルキル基である化合物の比率が合計で、40質量%以上が好ましく、より好ましくは70質量%以上、更に90質量%以上、最も好ましくは95%以上である。
【0016】
一般式(I)中の縮合するグリセリン部分が(C362nと標記されている。しかし、これは直鎖型のみを表すものではなく、分岐型、及び直鎖型と分岐型とのランダムな混合を含むものである。表現の便宜上この様に表現したものであることを付言する。
【0017】
(a)成分を構成するグリセリンの縮合度の質量割合〔(a)成分中の質量割合〕は、ガスクロマトグラフィー(GC)法のエリア%から求めることが出来る。
【0018】
本発明の(a)成分は、例えば、炭素数6〜22のアルコールに所定量の2,3−エポキシ−1−プロパノール(グリシドール)をアルカリ触媒の存在下で反応させることで得られる。また、特開2000−160190号公報の段落0007〜0011に記載されたような方法で製造することもできる。
【0019】
(a)成分におけるグリセリンの結合様式は、直線型(グリセリンが1,3位で結合するもの)、分岐型(1,2位でグリセリンが結合するもの、1,2位で結合するグリセリン(2位の方)の1,3位に更にグリセリンが結合するもの等)があるが、いずれでもよい。
【0020】
一般に、(a)成分のようなグリセリルモノエーテルは、縮合度の異なる化合物の混合物として得られるが、本発明では、洗浄力、悪臭抑制効果の観点から、グリセリンの縮合度が3〜5の化合物が所定比率にあるものを用いることが好適であるため、必要に応じて反応物を蒸留等により精製してこの範囲の縮合度の化合物を得ることが出来る。
【0021】
本発明の組成物中、溶解性、洗浄性能、悪臭抑制効果の観点より(a)成分の含有量は1〜50質量%が好ましく、2〜40質量%がより好ましく、3〜35質量%が更に好ましく、5〜30質量%が特に好ましく、10〜25質量%が最も好ましい。
【0022】
(a)成分は、非イオン性界面活性剤であり、悪臭抑制効果の観点より、洗浄剤組成物中の非イオン性界面活性剤中、(a)成分の割合が60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましく、90質量%以上が特に好ましい。
【0023】
洗浄性能、悪臭抑制効果の観点より、洗浄剤組成物中の界面活性剤中、(a)成分の割合が40質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、60質量%以上が更に好ましく、70質量%以上が特に好ましい。
【0024】
<(b)成分>
本発明の(b)成分はプロテアーゼであるが、悪臭抑制効果の観点より好ましくは後述する平均疎水性値(Average of hydrophobicity)が0.1以下の酵素であることが好ましい。平均疎水性値が0.1以下の酵素としては、特に限定されるものではないが、Bacillus halodurans、Bacillus clausiiに由来するズブチリシンプロテアーゼ(例えば花王から入手できるKAP、ノボザイムズ社から入手できるサビナーゼ、エバラーゼ、エスペラーゼ、及びジェネンコア社から入手できるマクサカルなど)、及び1つ又はいくつかのアミノ酸の置換、欠失又は付加により、これらポリペプチドから誘導された変異体酵素が挙げられる。
【0025】
ここで本発明の(b)成分の平均疎水性値は、ソフトウェア/システム[SOSUI](インターネット<URL:http://bp.nuap.nagoya-u.ac.jp/sosui/>)を用いて計算できる。ここで定義する平均疎水性値は、酵素蛋白全体の平均疎水性値を意味する。疎水性値の定義によれば、この値が大きい蛋白質ほど疎水性が高く、逆にこの値が小さい蛋白質ほど疎水性が高くなる。
【0026】
また、本発明の衣料用洗浄剤組成物は(b)成分を、酵素の純蛋白として0.001〜50質量%、好ましくは0.01〜10質量%、特に好ましくは0.1〜3質量%を含有する。ここで(b)成分の純蛋白量はローリーらの方法(Lowry, O.H.et.al., J. Biol. Chem., 193, 265 (1951))に準じ、牛血清アルブミン (Bovine Serum Albumin、SIGMA社製、製品番号A−7030)に換算して表わした。
【0027】
(b)成分は、(1)酵素蛋白質を含む液体、(2)酵素蛋白質の乾燥物、及び(3)酵素蛋白質を含む粒子、等の形態で本発明の衣料用洗浄剤組成物に配合することができる。
【0028】
例えば(1)の酵素蛋白質を含む液体の場合、酵素生産菌を一般の培養方法にて増殖した培養液や、市販されている酵素製剤をイオン交換水や塩化カルシウム水溶液に溶解したもの、またはそれを公知の精製手段により酵素蛋白質の純度を高めたものが使用できる。またこれをポリマーや界面活性剤によりカプセル化したものも使用できる。
【0029】
更に酵素蛋白質を含む液体を凍結乾燥し結晶化することにより(2)の乾燥物が得られる。また、酵素蛋白質を含む液体に賦形化剤を溶解し、噴霧乾燥や公知の方法による顆粒化、またカプセル化することで(3)の酵素蛋白質を含む粒子を調製することができる。
【0030】
本発明の衣料用洗浄剤組成物に(b)成分を液体の状態や、液体をカプセル化した状態で配合する場合には、ギ酸塩、酢酸塩、ポリオール、ホウ素化合物、カルシウム化合物、プロピオン酸またはプロピオン酸塩等を含めた従来の酵素安定化剤を配合してもよい。またエチレンジアミン四酢酸(EDTA)やクエン酸といった金属封鎖剤も本目的のために使用することができる。
【0031】
<(c)成分>
本発明の衣料用洗浄剤組成物は、(b)成分の作用を増強して、繊維製品に付着した汚れをより除去しやすくするために(c)成分として酵素増強剤を配合することが好ましい。(c)成分としては、アルカリ剤(c−1)〔以下、(c−1)成分という〕や金属封鎖剤(c−2)〔以下、(c−2)成分という〕が挙げられる。
【0032】
(c−1)成分としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、セスキ炭酸ナトリウム等の炭酸塩、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム等の珪酸塩類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類等が挙げられる。アルカリ剤は目的とする汚れや(b)成分の種類によって使い分けることが望ましい。また(b)成分の至適pHに合わせて、上記のアルカリ剤の配合量を調節したり、pH調整剤を併用することで所望のpHに調節することが好ましい。
【0033】
(c−2)成分としては、(I)フィチン酸等のリン酸系化合物又はその塩類、(II)エタン−1,1−ジホスホン酸、エタン−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸及びその誘導体、エタンヒドロキシ−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1,2−ジカルボキシ−1,2−ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸等のホスホン酸又はその塩類、(III)2−ホスホノブタン−1,2−ジカルボン酸、1−ホスホノブタン−2,3,4−トリカルボン酸、α−メチルホスホノコハク酸等のホスホノカルボン酸又はその塩類、(IV)アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン等のアミノ酸又はその塩類、(V)ニトリロ三酢酸、イミノ二酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、トリエチレンテトラアミン六酢酸、ジエンコル酸等のアミノポリ酢酸又はその塩類、(VI)ジグリコール酸、オキシジコハク酸、カルボキシメチルオキシコハク酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、リンゴ酸、オキシジコハク酸、グルコン酸、カルボキシメチルコハク酸、カルボキメチル酒石酸等の有機酸又はその塩類、(VII)アミノポリ(メチレンホスホン酸)もしくはその塩類、又はポリエチレンポリアミンポリ(メチレンホスホン酸)もしくはその塩類、(VIII)アルミノ珪酸塩、(IX)有機カルボン酸(塩)ポリマー等が挙げられる。
【0034】
本発明の衣料用洗浄剤組成物の0.1質量%水溶液のpH(20℃)は、洗浄性能、悪臭抑制効果の観点から6〜11.5が好ましく、7〜11がより好ましく、8〜10.9が更に好ましく、9〜10.8が特に好ましい。上記の金属封鎖剤を配合することで、本発明の衣料用洗浄剤組成物のpHあるいは前記水溶液のpHが酸性側に変動する場合は、アルカリ剤を併用して上記pH範囲に調整することが好ましい。
【0035】
本発明の衣料用洗浄剤組成物は、(c)成分を、洗浄性能、悪臭抑制効果の観点から1〜80質量%、好ましくは3〜70質量%、特に好ましくは5〜60質量%含有することが望ましい。
【0036】
本発明の衣料用洗浄剤組成物は、(c−1)成分を、洗浄性能、悪臭抑制効果の観点から、1〜60質量%、好ましくは2〜50質量%、特に好ましくは3〜40質量%含有することが望ましい。
【0037】
本発明の衣料用洗浄剤組成物は、(c−1)成分を、洗浄性能、悪臭抑制効果の観点から1〜60質量%、好ましくは2〜50質量%、特に好ましくは3〜40質量%含有することが望ましい。
【0038】
<その他成分>
本発明の組成物には、(a)成分以外の界面活性剤を用いることができる。界面活性剤としては、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤の1種または2種以上の組み合わせを挙げることができるが、好ましくは陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤である。
【0039】
陰イオン性界面活性剤としては、炭素数10〜18のアルコールの硫酸エステル塩、炭素数8〜20のアルコールのアルコキシル化物の硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸塩、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩又は脂肪酸塩、アルキル硫酸塩が好ましい。本発明では特に、アルキル鎖の炭素数が10〜14の、より好ましくは12〜14の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩が好ましく、対イオンとしては、アルカリ金属塩やアミン類が好ましく、特にナトリウム及び/又はカリウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンが好ましい。
【0040】
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキル(炭素数8〜20)エーテル、アルキルポリグリコシド、ポリオキシアルキレンアルキル(炭素数8〜20)フェニルエーテル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸(炭素数8〜22)エステル、ポリオキシアルキレングリコール脂肪酸(炭素数8〜22)エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーが好ましい。特に、非イオン性界面活性剤としては、炭素数10〜18のアルコールにエチレンオキシドやプロピレンオキシド等のアルキレンオキシドを平均で4〜20モル付加したポリオキシアルキレンアルキルエーテルが好ましい。非イオン性界面活性剤は、HLB値(グリフィン法で算出)が10.5〜15.0、更に11.0〜14.5のものが好ましい。
【0041】
陰イオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤は単独で用いることもできるが、好ましくは、混合して用いるのが良い。また、両性界面活性剤や陽イオン性界面活性剤を目的に合わせ併用することも出来る。
【0042】
本発明の組成物中の(a)成分を含めた界面活性剤の含有量は、洗浄性能、悪臭抑制効果の観点から、10〜50質量%が好ましく、12〜45質量%がより好ましく、14〜40質量%がより更に好ましく、16〜35質量%が更に好ましく、18〜30質量%が特に好ましい。また、本発明の組成物中の(a)成分を含めた非イオン性界面活性剤の含有量は、2〜50質量%が好ましく、より好ましくは8〜25質量%である。
【0043】
本発明の組成物は、(b)成分の安定性の観点から、酵素安定化剤を含有することが好ましい。酵素安定化剤としては、ホウ素化合物、カルシウムイオン源(カルシウムイオン供給化合物)、ビヒドロキシ化合物が挙げられる。ホウ素化合物としてはホウ砂、ホウ酸、ホウ酸ナトリウムが、カルシウムイオン源としては塩化カルシウム、酢酸カルシウムが、ビヒドロキシ化合物としてはグリセリン、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ドデカンジオール、グルコース、ソルビトール、マルトースが好適例として挙げられる。中でも特に、塩化カルシウムが経済性の点で優れている。本発明の組成物中、酵素安定化剤の含有量は0.01〜3質量%が好ましく、0.01〜2質量%がより好ましく、0.01〜0.5質量%が更に好ましい。
【0044】
本発明の組成物は、一般には水道水に溶解して用いられる。水道水中には活性塩素が通常0.5〜1ppm程度含有されており、この活性塩素は(b)成分の活性を阻害する作用を有しているため、水道水中の活性塩素を還元するあるいはトラップすることが悪臭抑制効果の観点から好ましい。活性塩素を還元するものとしては、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、過炭酸塩、過ホウ酸塩等が挙げられる。活性塩素をトラップするものとしては、硫酸アンモニウム塩等のアンモニウム塩が挙げられる。これらの活性塩素を還元するあるいはトラップする化合物の含有量は組成物中0.1〜10質量%が好ましく、0.2〜5質量%がより好ましい。
【0045】
本発明の組成物には、衣料用洗剤の分野で公知のビルダー、漂白剤(過炭酸塩、過ホウ酸塩、漂白活性化剤等)、再汚染防止剤(カルボキシメチルセルロース等)、柔軟化剤、抑泡剤(シリコーン等)、蛍光増白剤、香料、(b)成分以外の酵素(セルラーゼ、ペクチナーゼ、アミラーゼ、リパーゼ等)等の添加剤を含有させることができる。
【0046】
本発明の組成物は、液体、ペースト、粉末、錠剤、バー等の形状にできる。
【実施例】
【0047】
<グリセリルモノエーテル(1)の合成方法>
ラウリルアルコール93.2g(0.50mol)、ランタントリフラート2.94g(0.0050mol)を300mL四つ口フラスコに入れ、窒素気流下、撹拌しながら90℃まで昇温した。次に、その温度を保持しながらグリシドール148.16g(2.0mol)を24時間で滴下し、そのまま2時間撹拌を続け、反応生成物251.5gを得た。得られた反応生成物をガスクロマトグラフィーによって分析した結果、グリシドール転化率99.9%以上、ラウリルアルコール6.0質量%、ポリグリセリンの含有量は2.2質量%であった。また得られたラウリルポリグリセリルエーテルのうち、グリセリンの縮合度nが3〜5のものの割合は、nが1〜7のものの合計に対して43.3質量%であった。またn=1〜7のラウリルポリグリセリルエーテルの含有率は60.2質量%、8モル以上の縮合度のものは31.6質量%であった。よって、該生成物〔グリセリルモノエーテル(1)〕は、グリセリンの縮合度nが異なる複数の化合物を確認し、nが3〜5に関してはいずれのものも含まれていた。
【0048】
表1、3に示すような組成1〜12の洗浄剤組成物を得た。これらの組成物について、下記の方法で臭い抑制試験を行った。尚、組成7から12は原液のpH(20℃)をNaOHで10に調整した。
【0049】
プロテアーゼ:花王(株)製、KAPを用いた。表には純蛋白量に換算した値を記載した。平均疎水性値;−0.0353
AS:花王(株)製エマール0を用いた。
エトキシレートノニオン:アルキル鎖長が炭素数12で、EO平均付加モル数6の花王(株)製エマルゲン108を用いた。
ゼオライト:平均粒径3μmのA型ゼオライト、ゼオビルダー(株)製を用いた。
炭酸ナトリウム(デンス灰):セントラル硝子(株)製を用いた。
硫酸ナトリウム:四国化成(株)製の無水ボウ硝を用いた。
亜硫酸ナトリウム:高杉製薬(株)製を用いた。
モノエタノールアミン:三井化学(株)製を用いた。
ホスホン酸系キレート剤:ソルーシア・ジャパン(株)製、ディクエスト2010を用いた。
【0050】
<臭い抑制試験>
20歳から40歳の男性10名が15時間着用した肌着(グンゼYG)を半裁し、表1又は2の洗浄剤組成物で洗濯を行った。洗濯はハイアール社製全自動洗濯機JW−Z20Aを用い、洗剤量10g、普通コース、水位中(水道水15L、20℃)で行った。温度25℃、湿度65%rhの条件で12時間乾燥を行った後、パネラー3名で1対ごとに臭い強度を比較し、試験組成物(組成1〜5又は組成7〜11)で洗濯した場合の臭い強度が、対照組成物(組成6又は組成12)の場合よりも匂わない場合は+1点、同等の場合は0点、対照組成物の方が匂わない場合は−1点とし、3名×10枚の合計点数で臭い評価を行った。すなわち数字が大きいほど、臭い抑制性能が高いことを示す。25点以上を◎、15点以上25点未満を◎〜○、10点以上15点未満を○、5点以上10点未満を△、5点未満を×で表した。結果を表2、4に示す。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

【0053】
【表3】

【0054】
【表4】

【0055】
<洗浄力評価>
いずれの実施例や比較例もJISK3362(標準洗剤を用いた洗濯洗浄試験)の結果、標準洗剤より洗浄力が上回ることを確認した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)成分及び(b)成分を含有する衣料用洗浄剤組成物。
(a)成分:一般式(I)で表されるポリグリセリルモノエーテル
R−O−(C362n−H (I)
(式中、Rは炭素数6〜22の炭化水素基を、nはグリセリンの縮合度であり、整数を示す。)
(b)成分:プロテアーゼ
【請求項2】
(a)成分中、Rが炭素数12及び又は炭素数14のアルキル基であって且つグリセリンの縮合度nが3〜5である化合物の比率が、一般式(I)中のグリセリンの縮合度nが1〜7である化合物の合計量に対して、40質量%以上である請求項1記載の衣料用洗浄剤組成物。
【請求項3】
(b)成分が、平均疎水性値0.1以下のプロテアーゼである請求項1又は2何れか記載の衣料用洗浄剤組成物。
【請求項4】
更に、(c)酵素増強剤〔以下、(c)成分という〕を含有する請求項1〜3何れか記載の衣料用洗浄剤組成物。
【請求項5】
(a)成分を1〜50質量%、(b)成分を酵素の純蛋白として0.001〜5質量%、(c)成分を1〜80質量%含有する請求項4記載の衣料用洗浄剤組成物。
【請求項6】
非イオン性界面活性剤中(a)成分が60質量%以上である請求項1〜5何れか記載の衣料用洗浄剤組成物。
【請求項7】
界面活性剤中(a)成分が40質量%以上である請求項1〜6何れか記載の衣料用洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2009−161596(P2009−161596A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−339819(P2007−339819)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】