説明

衣料用液体洗浄剤組成物

【課題】高濃度の界面活性剤を含有し、洗浄力及び保存安定性に優れ、水で希釈する際のゲル化形成等による溶解性の低下のない衣料用液体洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】(a)炭素数8〜22の炭化水素基を1つ有し、アルキレンオキシ基の平均付加モル数が16〜35(但し14モル以上はエチレンオキシ基である)であるポリオキシアルキレンアルキル(又はアルケニル)エーテル型非イオン界面活性剤、(b)炭素数8〜22の炭化水素基を有し、少なくとも炭素数3及び/又は4のアルキレンオキシ基を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、(c)水混和性有機溶剤を、それぞれ特定比率で含有する衣料用液体洗浄剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は洗浄性能と安定性、及び水への溶解性に優れた、衣料用液体洗浄剤組成物に関し、更には、水に希釈して使用するための衣料用の液体洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、世界規模的なエネルギー問題、二酸化炭素排出問題、渇水化問題などが深刻化しており、環境に対する意識が高まってきている。このような中、衣料用及び住居用等の液体洗浄剤においても環境に対し負荷の少ない洗浄剤の登場が渇望されている。従来の洗浄剤より洗浄成分濃度が高い、いわゆる濃縮タイプの洗浄剤と基材の天然化率を高めることが考えられる。濃縮タイプの洗浄剤は、洗浄剤自身のサイズを小さくし、容器樹脂量の削減、輸送費の削減、使用後のゴミの削減等、環境に対する負荷を低減させるのに非常に有効であると考えられる。また界面活性剤の基材の天然化率を高めることにより、化石燃料への依存が低減するとともに、よりカーボンニュートラルに近づいた洗浄剤を得ることができる。
【0003】
しかしながら、通常の液体洗浄剤において、洗浄成分である界面活性剤濃度を増加させると増粘やゲル化が起こり、著しく使用性を損ねたり、低温保管時に固化してしまうという課題があった。一般的に低粘度、かつ低温での保存安定性に優れた組成物を得る方法としては、溶剤や可溶化剤等を多量に配合することが有効であると考えられている。
【0004】
特許文献1には、高級アルコールにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドを付加した非イオン界面活性剤と特定の溶剤を配合した濃縮タイプの液体洗浄剤組成物が記載されている。付加反応後、エチレンオキサイドはエチレンオキシ基(以下、一般式としてEOと表示したり、EO基と表現する場合もある。)になり、プロピレンオキサイドはプロピレンオキシ基(以下、一般式としてPOと表示したり、PO基と表現する場合もある。)となる。本文及び実施例において好ましい非イオン界面活性剤として、エチレンオキサイドを付加した後、プロピレンオキサイドを付加した、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイドのブロックタイプの非イオン界面活性剤が記載されている。
【0005】
特許文献2には、RO−(EO)x−(PO)y−(EO)x’−Hで表され、(EO)x、(PO)y、(EO)x’がこの順にブロック結合している非イオン界面活性剤(以下、このタイプの非イオン界面活性剤を便宜的にR−EPEノニオンと表記する。)を含有する界面活性剤組成物が、高濃度で取り扱い性がよいことが開示されており、更に特許文献2には該界面活性剤を含有する液体洗浄剤組成物が開示されている。
【0006】
特許文献3には、同様にR−EPEノニオンと陰イオン界面活性剤を99/1〜10/90の割合で含有する高濃度で取り扱い性のよい界面活性剤組成物と該界面活性剤を含有する液体洗浄剤組成物が開示されている。また衣料用洗浄剤としての用途も記載されている。
【0007】
特許文献4には、R−EPEノニオンと溶剤を含有する界面活性剤組成物とそれを用いた液体洗浄剤組成物が開示されており、衣料用洗浄剤としての用途も記載されている。
【0008】
特許文献5には、R−EPEノニオンを10〜50質量%で含有する安定性に優れた衣料用洗剤が開示されている。
【0009】
特許文献6及び特許文献7には、R−EPEノニオン、陰イオン界面活性剤及びその他の成分を含有する液体洗浄剤が開示されている。
【0010】
また特許文献8にはプロピレンオキシ基及びエチレンオキシ基を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩の界面活性剤を含有する洗浄剤組成物が記載されており、該界面活性剤を含有する濯ぎ性に優れたヘビー洗剤又はライト洗剤が示唆されている。特許文献9及び特許文献10には天然化率を高めるためにプロピレンオキシ基及びエチレンオキシ基を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩の界面活性剤が開示されており、特に特許文献10には、主に食器用途ではあるが、プロピレンオキシ基及びエチレンオキシ基を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩の界面活性剤と非イオン界面活性剤を含有する洗浄剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平8−157867号公報
【特許文献2】国際公開第1998/024864号パンフレット
【特許文献3】国際公開第1998/024865号パンフレット
【特許文献4】国際公開第1998/024867号パンフレット
【特許文献5】特開平10−195499号公報
【特許文献6】特開平11−310800号公報
【特許文献7】特開平11−315299号公報
【特許文献8】特開昭55−84399号公報
【特許文献9】特開2009−35726号公報
【特許文献10】特開2009−185252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
水を含有する液体洗浄剤において、洗浄成分である界面活性剤濃度を増加させると増粘やゲル化(固化も含む)が起こり、著しく使用性を損ねてしまうという課題があり、このような界面活性剤高濃度系の課題に対して、溶剤や可溶化剤等を多量に配合し低粘度組成物を得る方法が考えられる。
【0013】
しかしながら、我々は、溶剤や可溶化剤等により低粘度化した洗浄剤であっても、洗浄剤の使用時に、洗浄剤が水、特に冷水で希釈されていくと、希釈された洗浄剤は液晶を形成し溶解性不良を起こすことや、また界面活性剤濃度が高まってくると、低温保管時に洗浄剤が結晶の形成等により固化し易くなることなど、溶解性や安定性に課題があること、また室内(20℃程度)では一見流動性のある液状を示すが、室外やそれに近い環境下など、より低温で保存した場合に洗浄剤自体が固化する課題があることを見出した。前者の課題は、洗剤投入口に洗剤を残留させる原因にもなり、或いは直接洗濯機に投入する場合は、洗濯物の間での溶解性不順の原因になる恐れがある。後者の問題は、使用勝手を妨げることになる。
【0014】
液体洗浄剤としての本質的な性能である洗浄力を向上させるとともに、こうした課題を解決することが要望されるが、特許文献1〜10には、このような観点から最適化された界面活性剤の構造や組み合わせなどを示唆する記載は存在しない。例えば、特許文献1では、洗浄力の向上と界面活性剤との関連については言及されていない。また特許文献1では低温溶解性について言及されているものの、その評価手段によると、多量の水に液体洗浄剤を添加し、攪拌することで溶解性を評価しており、攪拌条件については記載がなく、十分な検討がされているとは言い難く、実際に開示された組成物は低温溶解性において十分とはいえない。また特許文献4〜7は、R−EPEノニオンを用いるものであり、高濃度で安定な界面活性剤組成物を開示しているが、これら先行技術に具体的に実施例で示されたエチレンオキシ基の平均付加モル数は小さく、界面活性剤を高濃度で配合した、液体洗浄剤組成物とその効果について具体的に開示するものではない。
【0015】
一方、特許文献8〜10にはプロピレンオキシ基(PO基)とエチレンオキシ基(EO基)を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩を洗浄剤に用いる事が記載された先行技術が開示されている。特許文献8は、また界面活性剤の高濃度化について考慮するものではない。特許文献9の開示内容は、特徴的な界面活性剤の性質にとどまるものである。また特許文献10はポリオキシエチレンアルキルエーテルとの併用が示唆されているが、主に食器用途であり、安定性に関する記載はあるが、希釈時のゲル化との関連でポリオキシエチレンアルキルエーテルのエチレンオキサイドの付加モル数などを考慮するものではない。
【0016】
本発明の課題は、衣料用の液体洗浄剤組成物において、洗浄力及び低温保存安定性に優れ、水で組成物を希釈する際のゲル化形成等による溶解性の低下のない衣料用液体洗浄剤組成物を提供することである。ここで衣料用とは、家庭用或いは業務用として、水で洗浄することができる衣類、タオル、シーツなどの洗濯対象となる繊維製品用であることを指す。かつてはドライクリーニング対象であった繊維製品も最近は水洗いできるようになっており、当然これらも含まれる。またその対象となる汚れは人間の生命活動において外的或いは内的に付着するものであり、具体的には泥、チリ、カーボン、食品、油などの他に、皮脂、塩類などを挙げることができる。これらは混ざって付着する場合もある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、下記(a)〜(c)成分を含有する衣料用液体洗浄剤組成物であって、(a)成分と(b)成分の含有量の合計が(a)+(b)=30〜90質量%であり、(a)成分と(b)成分の質量比が(a)/(b)=25/75〜95/5である、衣料用液体洗浄剤組成物に関する。
(a)成分:下記一般式(1)で表される非イオン界面活性剤
1O−(A1O)mH (1)
〔式中、R1は炭素数8〜22の炭化水素基を示し、A1Oは炭素数2〜5のアルキレンオキシ基を示し、mは平均付加モル数を示し、16〜35の数である。A1Oはエチレンオキシ基を平均14モル以上含む。但し、A1Oがすべてエチレンオキシ基の場合は、mは18以上の数である。〕
(b)成分:下記一般式(2)で表される陰イオン界面活性剤
2O−(A2O)p−(EO)q−SO3M (2)
〔式中、R2は炭素数8〜22の炭化水素基を示し、A2Oは炭素数3及び/又は4のアルキレンオキシ基、EOはエチレンオキシ基を示し、p及びqは平均付加モル数を示し、pは0.1〜5の数、qは0〜10の数である。Mは陽イオンである。〕
(c)成分:水混和性有機溶剤 5〜40質量%
【発明の効果】
【0018】
本発明の衣料用液体洗浄剤組成物は、安定性、特に低温での保存安定性に優れ、溶解性、特に冷水に対する溶解性に優れ、また洗浄性能にも優れるものである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<(a)成分>
本発明で用いられる(a)成分の非イオン界面活性剤は、下記一般式(1)で表される。
1O−(A1O)mH (1)
〔式中、R1は炭素数8〜22の炭化水素基を示し、A1Oは炭素数2〜5のアルキレンオキシ基を示し、mは平均付加モル数を示し、16〜35の数である。A1Oはエチレンオキシ基を平均14モル以上含む。但し、A1Oがすべてエチレンオキシ基の場合は、mは18以上の数である。〕
【0020】
(a)成分の一般式(1)中、R1は炭素数8〜22の炭化水素基であり、炭素数10〜16、更に10〜14の炭化水素基が好ましい。また、R1は洗浄力の点から直鎖の炭化水素基が好ましい。また、R1の炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基が好ましく、アルキル基がより好ましい。R1は、直鎖又は分岐鎖の基が好ましく、直鎖の基がより好ましい。よって、R1は、炭素数8〜22の直鎖アルキル基が好ましい。またR1−Oに結合するR1の炭素原子は第1級炭素原子が好ましい。アルキレンオキサイドを反応させる前のアルコールが天然油脂由来の脂肪族アルコールの場合は、得られた(a)成分は、一般に前記した直鎖アルキル基であり且つ前記した第1級炭素原子を含むアルキル基を有する。天然油脂由来のアルコールの利用は、カーボンニュートラルの視点からも好ましい。
【0021】
一般式(1)の化合物を得る方法は、特に限定されるものではないが、炭素数8〜22のアルコールに、炭素数2〜5のアルキレンオキサイドを付加反応することによって得ることができる。なお本発明では前記アルキレンオキサイドとしてエチレンオキサイドを必ず使用する。
【0022】
ここで、炭素数2〜5のアルキレンオキサイドの平均付加モル数mは、16〜35である。mが16以上であれば、水で希釈する際に液晶を形成して溶解性を低下させることを抑制できる。また、mが35以下であれば、組成物の安定性が良好となる。mは、17以上が好ましく、18以上がより好ましく、18を超えることが最も好ましい。また30以下が好ましく、更に25以下がより好ましい。また、一般式(1)の化合物はA1Oとして、炭素数2のアルキレンオキシ基であるエチレンオキシ基を平均14モル以上、好ましくは平均15モル以上、より好ましくは平均16モル以上、最も好ましくは18以上含む。A1Oのすべてがエチレンオキシ基であってもよく、その場合のmは18以上である。EO以外のA1Oはプロピレンオキシ基(オキシプロパン−1,2−ジイル基という場合もある。)であることが好ましい。一般に、mは(a)成分製造時のR1OHで示されるアルコールに対する炭素数2〜5のアルキレンオキサイドの反応割合であってもよい。なおA1Oとして炭素数3〜5のアルキレンオキシ基を有する化合物は、すべてがエチレンオキシ基の場合よりも高濃度化に優れ、安定性を保ち易い。
【0023】
(a)成分は、洗浄力の観点から(a)成分を構成している個々の化合物のうち、A1O基の付加モル数が0〜5である化合物の割合が、(a)成分を構成している全化合物中の0〜6モル%であり、且つA1O基の付加モル数が50以上(測定条件などから好ましくは70以下)である化合物の割合が(a)成分を構成している全化合物の0〜5モル%であることが好ましい。
【0024】
また、溶解性、低温安定性の観点から、(a)成分はA1Oとしてプロピレンオキシ基を有することが好ましく、更に(a)成分が下記一般式(1−1)で表される化合物であることが好ましい。
1O−[(C24O)m1/(A1'O)m2]H (1−1)
〔式中、R1は前記と同じ意味であり、A1'Oは炭素数3〜5のアルキレンオキシ基である。m1、m2は平均付加モル数であり、m1は15〜30の数であり、m2は1〜5の数である。“/”はC24O基及びA1'O基が、ランダム又はブロックのいずれに結合したものであってもよいことを示す。〕
【0025】
一般式(1−1)の化合物は、炭素数8〜22のアルコールに、エチレンオキサイドと炭素数3〜5のアルキレンオキサイドとをランダム又はブロック的に付加反応することによって得ることができる。
【0026】
また、一般式(1−1)中のm1はEOであるエチレンオキシ基の平均付加モル数であり、保存安定性、溶解性、及び洗浄性能の点から下限値は15以上、好ましくは16以上、より好ましくは18以上であり、上限値は30以下、好ましくは27以下、より好ましくは24以下である。m2は炭素数3〜5のアルキレンオキシ基の平均付加モル数であり、洗浄性能の点から下限値は1以上、好ましくは2以上であり、上限値は5以下、好ましくは4以下、より好ましくは3以下である。なお、前記一般式(1)との関係においてm=m1+m2である。
【0027】
一般式(1−1)中のA1'Oである炭素数3〜5のアルキレンオキシ基は、炭素数3〜5アルキレンオキサイドを付加反応させることによって得られるものであり、付加反応により結合した部分はメチル分岐、エチル分岐又はプロピル分岐した構造を有するものが好ましい。更には炭素数3のアルキレンオキシ基及び/又は炭素数4のアルキレンオキシ基が好ましく、具体的にはトリメチレンオキシ基、オキシプロパン−1,2−ジイル基、オキシブタン−1,2−ジイル基、オキシブタン−1,3−ジイル基、オキシブタン−2,3−ジイル基、オキシテトラメチレン基を挙げることができる。特にはA1'Oは、オキシプロパン−1,2−ジイル基(以下、本発明ではオキシプロパン−1,2−ジイル基をプロピレンオキシ基又はPO基とする場合もある。)が好ましい。
【0028】
本発明では特に、エチレンオキシ基の平均付加モル数m1が15〜27、更には16〜24、特には18〜22であって、且つPOであるプロピレンオキシ基の平均付加モル数m2が1〜4、更には2〜4、特には2〜3である化合物を用いることが、低温保存安定性、冷水溶解性、洗浄性能に優れた液体洗浄剤組成物を得られることから最も好ましい。
【0029】
一般式(1−1)において“/”は、本発明の(a)成分のC24O基であるエチレンオキシ基(以下、EOと表記する場合がある)及びA1'O基の関係がランダム結合でもブロック結合でもいずれであってもよいことを意味している。またA1'Oは複数のブロック体として分かれていてもよい。
【0030】
一般式(1−1)で表される化合物としては、下記一般式(1−1−1)〜(1−1−6)で表される化合物が挙げられる。
1O−(A1'O)m2−(EO)m1H (1−1−1)
1O−(EO)m1−(A1'O)m2H (1−1−2)
1O−[(EO)m11・(A1'O)m2]−(EO)m12H (1−1−3)
1O−(EO)m11−[(A1'O)m2・(EO)m12]H (1−1−4)
1O−(EO)m11−(A1'O)m2−(EO)m12H (1−1−5)
1O−(EO)m11−[(A1'O)m2・(EO)m13]−(EO)m12H (1−1−6)
〔式中、R1、m1、m2、EO、A1'Oは前記の意味であり、m11及びm12、m13は平均付加モル数であり、それぞれ、0ではない数であって、m11+m12+m13+m2=16〜35、m1=m11+m12+m13である。“・”はランダム結合であることを示す。〕
【0031】
一般式(1−1−1)〜(1−1−6)で示される化合物は、R1OHに対するアルキレンオキサイドの反応割合及び反応順序を考慮することで調製することができる。一般式(1−1−1)〜(1−1−6)において、各アルキレンオキシ基の平均付加モル数は、反応時のR1OHに対して用いた各アルキレンオキシドのモル数であってもよく、或いは得られた化合物のアルキレンオキシ基の平均付加モル数のいずれの場合であってもよい。なお、m11及びm12は独立して1〜20が好ましく、更には、m11は3〜20及びm12は1〜15がより好ましく、特にはm11は4〜15、m12は3〜15が好ましい。またm13は0.1〜10が好ましい。m11、m12及びm13の範囲は、一般式(1−1)のm1やm2の各範囲条件ないし好適な各範囲条件に従属するものとする。また、一般式(1)との関係では、m=m1+m2=m11+m12+m13+m2である。
【0032】
一般式(1−1)中のR1−O−の酸素原子に結合するR1の炭素原子が第1炭素原子であるものは、第2炭素原子による化合物よりも洗浄力に優れることから好ましい。前記したように天然油脂由来のアルコールのものを用いることができ、この場合、R1は直鎖アルキル基となり、第1炭素原子を有するものである。また天然油脂由来であることから、該アルキル基の炭素数が実質的に偶数のものから構成されていてもよい。保存安定性の点から、前記一般式(1−1−2)、(1−1−4)、(1−1−5)又は(1−1−6)の化合物が好ましく、このなかでも一般式(1−1−5)又は(1−1−6)がより好ましく、(1−1−5)が最も好ましい。特に、R1−O−に結合する炭素数2〜5のアルキレンオキシ基がエチレンオキシ基である化合物の割合が、(a)成分を構成している化合物中の75モル%以上、更に80モル%以上(上限は100モル%以下)であることが最も好ましい。このような化合物は、脂肪族アルコールに最初にエチレンオキサイドを付加させた後、未反応のアルコールを除去するか、或いは最初にエチレンオキサイドを6モル以上、特には8モル以上付加させることで得ることができる。また、前記一般式(1−1−2)のm1又は前記一般式(1−1−4)もしくは一般式(1−1−5)もしくは一般式(1−1−6)のm11で示される平均付加モル数が、6以上、特には8以上の化合物も好適である。
【0033】
安定性をさらに高める上で、一般式(1−1)中に末端が−EO−Hの構造を有する化合物が70モル%以上、更に80モル%以上(上限は100モル%以下)であることが好ましい。この数値以上であると、低温での安定性に優れるようになる。このような化合物は、一般式(1−1)を製造する上で、A1'Oの元となる炭素数3〜5のアルキレンオキサイド、好ましくはプロピレンオキサイドの付加反応工程を終えてから、最後にエチレンオキサイドだけを6モル以上、特には8モル以上付加させることで得ることができる。また、前記一般式(1−1−3)又は一般式(1−1−5)又は一般式(1−1−6)のm12で示される平均付加モル数が6以上、特には8以上の化合物も好適である。
【0034】
本発明では、一般式(1−1)において、R1が、酸素原子と結合する第1炭素原子を有する直鎖のアルキル基であって、前記R1−O−EO−や−EO−Hのモル%の条件を満たす化合物が最も好ましい。本発明において、R1−O−EO−や−EO−Hの割合はC13−NMRを用いた定量測定で求めることができる。
【0035】
本発明の(a)成分は、例えば、R1OHに対して、一般式(1−1−1)〜(1−1−6)の構造に従って炭素数3〜5のアルキレンオキサイドとエチレンオキサイドとを反応させることで得られる。目的とする構造から、配合順序や条件を検討し、ブロックないしランダムに付加反応させてもよい。また、R1OH、1モル当りに対する炭素数3〜5のアルキレンオキサイドとエチレンオキサイドの反応割合は、前記一般式(1)のmの範囲、すなわち16〜35であって、好ましい数値もmの範囲と同じであり、更に構造別の化合物は、m=m1+m2=m11+m12+m13+m2、m1=m11+m12+m13の条件や前記記載の好ましい範囲をもってくることができる。換言すれば、該脂肪族アルコールに付加させる炭素数3〜5のアルキレンオキサイドとエチレンオキサイドの反応割合は、m、m1及びm2、m11、m12、m13の数値範囲内であればよい。
【0036】
一般的に、前記R1OHの1モルに付加反応させた各々のエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドの割合と、前記各々の一般式で示されるアルキレンオキシ基の平均付加モル数は実質的に同一になるが、製法によっては、本発明では異なっていてもよい。
【0037】
本発明の(a)成分として最も好ましい化合物は、一般式(1−1−5)又は(1−1−6)の構造であり、特には一般式(a−1−5)の構造である。更に、一般式(1−1−5)において、m11/(m11+m12)は0.2〜0.8が好ましい。
【0038】
前記m11、m12、m13及びm2の範囲を更に絞り込んだ最適な製造条件として、下記、工程A〜工程Dを有する製造方法が挙げられる。
工程A:R1OH1モル当りに対して、エチレンオキサイドを4モル〜14モル、好ましくは8〜12モル(数値範囲は前記、式中のm11として規定されてもよい)の割合で付加反応させる。
工程B:次にプロピレンオキサイドを1〜3モル、好ましくは2〜3モル(数値範囲は前記式中のm2として規定されてもよい)及びエチレンオキサイドを0〜4モル(数値範囲は前記式中のm13として規定されてもよい)をランダムないしブロック付加反応させる。特に好ましくはプロピレンオキサイドだけを2〜3モル(数値範囲は前記式中のm2として規定されてもよい)付加反応させる。
工程C:その後再びエチレンオキサイドを4〜14モル、好ましくは8〜12モル(数値範囲は前記式中のm12として規定されてもよい)付加反応させる。
工程D:反応に用いた触媒のための処理を行う。例えばアルカリ触媒を用いた場合は酸で中和するか、固体触媒の場合は、ろ過などを行う。
【0039】
本発明では(a)成分及び後述する(b)成分には、微量の未反応アルコール、反応触媒(例えば水酸化カリウム、金属化合物)とその中和のための剤(例えば、酢酸や乳酸)、及び反応系内の水の存在によって形成されるエチレンオキシ基と炭素数3又は4のアルキレンオキシ基を有するポリアルキレングリコール、更に(b)については硫酸化物が混入してくることがあるが、臭いなどの問題、経済性や安全性を考慮した製造上の制限及びその他の諸事情により、本発明に影響を与えない限り存在してもよい。
【0040】
本発明のm、m1及びm2等は、NMRや液体クロマトグラフ分析により求めることができ、アルキレンオキシ基が短い、例えばアルキル基が直鎖一級アルコールの1モル当りにエチレンオキサイドを8モル未満の割合で付加反応させて得られるような化合物の場合は、ガスクロマトグラフ分析を用いてもよい。或いは本発明では、m、m1及びm2等は、R1O−Hの1モル当りに反応させた炭素数3〜5のアルキレンオキサイド及びエチレンオキサイドの割合であってよい。
【0041】
本発明の衣料用液体洗浄剤組成物において、(a)成分の含有量は、洗浄性能の観点から15〜75質量%が好ましく、25〜60質量%がより好ましく、35〜50質量%が特に好ましい。また、(a)成分が、一般式(1)中のA1Oがすべてエチレンオキシ基の非イオン界面活性剤である場合、又は一般式(1−1−1)の非イオン界面活性剤である場合は、低温での安定性と冷水での希釈時の溶解性の観点から、組成物中の含有量は40質量%以下であることが好ましい。更に、(a)成分が、一般式(1−1−2)の非イオン界面活性剤である場合は、同様に低温での安定性と冷水での希釈時の溶解性の観点から、組成物中の含有量50質量%以下であることが好ましい。
【0042】
<(b)成分>
前記したように(a)成分は水希釈による液晶形成を抑制する性質の基材が用いられるが、一方でオキシエチレン基の増加は水への親和性を高めることから、汚れや固体界面へのインタラクションを低下させるため、洗浄力の低下が懸念される。(b)成分は洗浄力の問題を解決する上、液体洗浄剤組成物の液晶ないし結晶化領域を更に小さくすることを可能にする。
【0043】
本発明で用いられる(b)成分の陰イオン界面活性剤は、下記一般式(2)で表される硫酸エステル塩である。
2O−(A2O)p−(EO)q−SO3M (2)
〔式中、R2は炭素数8〜22の炭化水素基を示し、A2Oは炭素数3及び/又は4のアルキレンオキシ基、EOはエチレンオキシ基を示し、p及びqは平均付加モル数を示し、pは0.1〜5の数、qは0〜10の数である。Mは陽イオンである。〕
【0044】
一般式(2)中のR2である炭化水素基としては、好ましくは炭素数8〜16、より好ましくは炭素数10〜14、特に好ましくは炭素数12〜14のアルキル基である。更に、起泡力、乳化力等の性能面やカーボンニュートラルという環境面から、天然油脂原料由来の直鎖アルキル基であることが好ましい。従って、R2−Oに結合するR2の炭素原子は第1級炭素原子が好ましい。前記したように(a)成分の非イオン界面活性剤もまた、天然油脂由来の化合物が好ましく、(a)成分のR1及び(b)成分のR2は、それぞれ、天然系油脂から誘導されたものを用いることができる。その場合、該アルキル基の炭素数が実質的に偶数のものから構成されていてもよい。
【0045】
一般式(2)中のA2Oである炭素数3のアルキレンオキシ基及び/又は炭素数4のアルキレンオキシ基としては、オキシトリメチレン基、オキシプロパン−1,2−ジイル基、オキシブタン−1,2−ジイル基、オキシブタン−1,3−ジイル基、オキシブタン−2,3−ジイル基、オキシテトラメチレン基、及びこれらの2種以上の組合せが挙げられる。これらの中では、オキシプロパン−1,2−ジイル基〔(a)成分で説明したように、本発明ではオキシプロパン−1,2−ジイル基をプロピレンオキシ基又はPO基とする場合もある。〕、オキシブタン−1,2−ジイル基(以下、本発明では、これをオキシブチレン基又はBO基とする場合もある。)がより好ましく、特にはオキシプロパン−1,2−ジイル基(プロピレンオキシ基)が最も好ましい。
【0046】
一般式(2)中のpは、A2Oの平均付加モル数であり、0.1〜5の数であるが、洗浄性能の向上の観点から、好ましくは0.2〜4であり、より好ましくは0.4〜3、最も好ましくは1〜3である。
【0047】
一般式(2)中のqは、EOの平均付加モル数であり、0〜10の数であり、柔軟化性能向上等の観点から、好ましくは0〜6の数であり、より好ましくはは0〜3の数である。
【0048】
また、一般式(2)中のMは、塩を形成する陽イオン基であり、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン、及びアルカノールアンモニウムイオン等が挙げられる。
【0049】
アルカリ金属イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン等が挙げられ、アルカリ土類金属イオンとしては、カルシウムイオン等が挙げられ、アルカノールアンモニウムイオンとしては、モノエタノールアンモニウムイオン、トリエタノールアンモニウムイオン等が挙げられる。これらの中では、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオン又はモノエタノールアンモニウムイオンが好ましく、モノエタノールアンモニウムイオンが特に好ましい。
【0050】
一般式(2)で表される陰イオン界面活性剤の製法は特に限定されない。例えば、炭素数8〜22の炭化水素基を有するアルコール、好ましくは炭素数10〜14の直鎖1級の脂肪族飽和アルコール1モルに、炭素数3及び/又は4のアルキレンオキサイド、好ましくはプロピレンオキサイドを0.1〜5モル、好ましくは0.2〜4モル、より好ましくは0.4〜3モル、最も好ましくは1〜3モル付加させ、(ポリ)オキシアルキレンアルキルエーテル(アルキレンオキシ基の炭素数は3及び/又は4、好ましくはプロピレンオキシ基)と未反応のアルコールから実質的になる混合物を得、次いでエチレンオキサイドを0〜10モル、好ましくは0〜5モル、より好ましくは1〜8モル、最も好ましくは1.5〜5モル付加させ、(ポリ)オキシアルキレン[但し、アルキレンオキシ基の炭素数は炭素数3及び/又は4、好ましくはオキシプロピレン基](ポリ)オキシエチレンアルキルエーテルを含む混合物、或いは、(ポリ)オキシアルキレン[但し、アルキレンオキシ基の炭素数は炭素数3及び/又は4、好ましくはオキシプロピレン基]アルキルエーテル(エチレンオキサイドを付加させない場合)を含む混合物を得た後、該混合物を硫酸化し、中和することでアルキレンオキシ基やエチレンオキシ基を有するポリエーテル硫酸エステル塩の混合物を得ることができる。
【0051】
陰イオン界面活性剤(b)は、下記一般式(2−1)〜(2−4)で表される硫酸エステル塩の混合物である。
2O−SO3M (2−1)
2O−(A2O)x−SO3M (2−2)
2O−(EO)y−SO3M (2−3)
2O−(A2O)z−(EO)z'−SO3M (2−4)
【0052】
なお、一般式(2−1)〜(2−4)中のx、y、z、z’は、それぞれ1以上の整数であり、x及びzは10以下の整数、y及びz‘は20以下の整数である。R2及びMは、一般式(2)におけるR2及びMと同じである。q=0の場合、得られる化合物は式(2−1)及び式(2−2)となる。
【0053】
本発明の衣料用液体洗浄剤組成物では、洗浄力の観点から、(a)成分と(b)成分の含有量の合計が(a)+(b)=30〜90質量%であり、40〜80質量%が好ましく、50〜70質量%が特に好ましい。また、(a)成分が、一般式(1)中のA1Oがすべてエチレンオキシ基の非イオン界面活性剤である場合、又は一般式(1−1−1)の非イオン界面活性剤である場合は、低温での安定性及び冷水での希釈時の溶解性の観点から(a)+(b)の上限値は55質量%以下が好ましい。また、(a)成分が、一般式(1−1−2)の非イオン界面活性剤である場合は、同様に低温での安定性と冷水での希釈時の溶解性の観点から(a)+(b)の上限値は65質量%以下であることがより好ましい。なお(b)成分の陰イオン界面活性剤は、塩の分子量によって、その質量が異なることから、本発明では塩ではなく、酸型すなわち対イオンを水素原子イオンと仮定した時の質量を(b)成分の質量とする。
【0054】
また、本発明の衣料用液体洗浄剤組成物では、洗浄性能、溶解性、安定性の観点から(a)成分と(b)成分の質量比は、(a)/(b)=25/75〜95/5であり、25/75〜90/10が好ましく、50/50〜80/20が更に好ましく、60/40〜80/20が特に好ましい。洗浄力の点から、該質量比における(a)成分の割合が下限値以上であり溶解性及び安定性の観点から上限値以下である。(a)成分は(b)成分を併用することで、組成物の洗浄力を高め、更に液晶形成を抑制することで溶解性を高めることが可能となる。
【0055】
<(c)成分>
本発明の衣料用液体洗浄剤組成物は、安定性、溶解性向上の点で、(c)水混和性有機溶剤を5〜40質量%含有する。本発明でいう水混和性有機溶剤とは、25℃のイオン交換水1Lに50g以上溶解するもの、すなわち、溶解の程度が50g/L以上である溶剤を指す。
【0056】
(c)成分の含有量は、安定性、溶解性の点から、組成物中、5〜40質量%であり、10〜35質量%が好ましく、10〜25質量%が特に好ましい。また、安定性、溶解性の観点から、(a)成分及び(b)成分の合計と(c)成分との質量比〔(a)+(b)〕/(c)は90/10〜65/35が好ましく、85/15〜70/30がより好ましく、80/20〜70/30が更に好ましい。
【0057】
(c)成分としては、洗浄性能、安定性、溶解性の点で、水酸基及び/又はエーテル基を有する水混和性有機溶剤が好ましい。
【0058】
水混和性有機溶剤としては、(c1)エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールなどのアルカノール類、(c2)エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコールなどの炭素数2〜6のアルキレングリコール類やグリセリン、(c3)ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール又は重量平均分子量400〜4000のポリエチレングリコールもしくはポリプロピレングリコールなどの炭素数2〜4のアルキレングリコール単位からなるポリアルキレングリコール類、(c4)ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、又は1−エトキシ−2−プロパノールなどの炭素数2〜4のアルキレングリコール単位の(ポリ)アルキレングリコールと炭素数1〜5のアルカノールからなる(ポリ)アルキレングリコール(モノ又はジ)アルキルエーテル、(c5)1−メチルグリセリンエーテル、2−メチルグリセリンエーテル、1,3−ジメチルグリセリンエーテル、1−エチルグリセリンエーテル、1,3−ジエチルグリセリンエーテル、トリエチルグリセリンエーテル、1−ペンチルグリセリルエーテル、2−ペンチルグリセリルエーテル、1−オクチルグリセリルエーテル、2−エチルヘキシルグリセリルエーテルなどの炭素数1〜8のアルキルを有するアルキルグリセリルエーテル類、(c6)2−フェノキシエタノール、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル、平均分子量約480のポリエチレングリコールモノフェニルエーテル、2−ベンジルオキシエタノール、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル等の炭素数2〜3のアルキレングリコール単位を有する(ポリ)アルキレングリコールの芳香族エーテル類、が挙げられる。
【0059】
(c)成分は、組成物の粘度調整剤、ゲル化抑制剤として有効であり、上記の(c1)〜(c6)の分類から選ばれる1種以上を使用する。上記の(c1)アルカノール類、(c2)グリコール類、(c4)アルキルエーテル類、及び(c6)芳香族エーテル類から選ばれる溶剤を用いることが好ましく、より具体的にはエタノール、プロピレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、2−フェノキシエタノール、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル及びトリエチレングリコールモノフェニルエーテルから選ばれる溶剤を1種以上、特には2種以上を併用することで効果的に組成物の粘度調整、ゲル化抑制を達成できることから更に好ましい。本発明では、特にプロピレングリコール及び/又はジエチレングリコールモノブチルエーテルを好ましい例としてあげることができる。
【0060】
<(d)成分>
本発明の衣料用液体洗浄剤組成物は、安定性、溶解性向上の点で、(d)成分として、水を5〜40質量%、更に10〜30質量%含有することが好ましい。水は脱イオン水(イオン交換水とも言う場合もある)などの組成に影響しないものを用いることが好ましい。
【0061】
<その他の成分>
〔(e)成分〕
本発明の衣料用液体洗浄剤組成物は、(a)成分及び(b)成分以外の界面活性剤〔以下、(e)成分という〕を本発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。(e)成分としては、下記の(e1)〜(e4)が挙げられる。
(e1)(a)成分に該当しない非イオン界面活性剤。
例えば、下記(e1−1)及び(e1−2)が挙げられる。
(e1−1)次の一般式で表されるアルキル多糖界面活性剤。
1e−(OR2eXY
〔式中、R1eは直鎖又は分岐鎖の炭素数8〜18のアルキル基又はアルケニル基、R2eは炭素数2〜4のアルキレン基、Gは炭素数5又は6の還元糖に由来する残基、Xは平均値0〜6の数、Yは平均値1〜10の数を示す。〕
(e1−2)脂肪酸アルカノールアミド、ポリヒドロキシ脂肪酸アミド。
【0062】
(e2)(b)成分に該当しない陰イオン界面活性剤、特には、炭素数8〜22のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪酸塩、アルカンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩及びポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩。ここで塩は(b)成分のMと同じものであってもよい。
【0063】
(e3)陽イオン界面活性剤。
例えば、長鎖アルキル基を有する1級〜3級のアミン(但し後述のアルカノールアミンを除く)であって、好ましくは途中にエーテル結合、エステル結合又はアミド結合を有してもよい炭素数8〜22のアルキル基を1つ又は2つ有し、残りが水素原子又は炭素数4以下のヒドロキシ基を有してもよいアルキル基である陽イオン界面活性剤を挙げることができる。本発明では、炭素数8〜22の長鎖アルキル基を1つ有する第4級アンモニウム型界面活性剤、炭素数8〜22の長鎖アルキル基を1つ有する3級アミンが好ましい。
【0064】
(e4)両性界面活性剤
例えば、炭素数10〜18のアルキル基を有するスルホベタイン又はカルボベタインを挙げることができる。
【0065】
(e)成分の含有量は、本発明の衣料用液体洗浄剤組成物中、好ましくは0.5〜15質量%、より好ましくは0.5〜10質量%である。なお、(e)成分のうち非イオン界面活性剤(e1)及び陰イオン界面活性剤(e2)は、前記(a)成分及び(b)成分と合わせて、〔(a)+(e1)〕/〔(b)+(e2)〕として、前記(a)/(b)の質量比の範囲内に入ることが好ましい。また第4級アンモニウム塩については、対陰イオンを除いた質量を該第4級アンモニウム塩の質量とし、3級アミンについては、窒素原子に結合する基のうち、有機基以外を水素原子に置換した構造の質量を該3級アミンの質量とする。
【0066】
(e)成分の界面活性剤のアルキル基は天然油脂由来のものであること好ましく、直鎖飽和アルキル基であることがより好ましい。(e)成分としては脂肪酸塩、更に炭素数8〜22の脂肪酸塩が好ましい。
【0067】
〔(f)アルカリ剤〕
本発明の衣料用液体洗浄剤組成物には、アルカリ剤〔以下、(f)成分という〕を配合することが好ましい。アルカリ剤は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩などの他に、窒素原子に結合する基のうち、1〜3つが炭素数2〜4のアルカノール基であり、残りが炭素数1〜4のアルキル基又は水素原子であるアルカノールアミンをあげることができる。このうちアルカノール基はヒドロキシアルキル基、更にヒドロキシエチル基であるものが好ましい。アルカノール基以外は水素原子、又はメチル基が好ましく、特に水素原子が好ましい。アルカノールアミンとしては、2−アミノエタノール、N−メチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−ブチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、イソプロパノールアミン混合物(モノ、ジ、トリの混合物)等のアルカノールアミン類が挙げられる。本発明ではモノエタノールアミン、トリエタノールアミンがより好ましく、モノエタノールアミンが最も好ましい。
【0068】
(f)成分は後述するpH調整剤として用いることができる。また前記した(b)成分の対塩として配合してもよい。
【0069】
本発明の衣料用液体洗浄剤組成物は、(f)成分を、好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.5〜8質量%含有する。なかでも、(f)成分としてアルカノールアミンを、好ましくは0.5〜8質量%、より好ましくは1〜7質量%、更に好ましくは3〜6質量%含有する。
【0070】
以下、更に本発明に使用できるその他の成分を示す
〔(g)成分〕
本発明の衣料用液体洗浄剤組成物は、キレート剤〔以下、(g)成分という〕を含有することができる。(g)成分のキレート剤は、液体洗浄剤に用いられる公知のものを用いることができ、例えば、
ニトリロ三酢酸、イミノ二酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、トリエチレンテトラアミン六酢酸、ジエンコル酸等のアミノポリ酢酸又はこれらの塩、
ジグリコール酸、オキシジコハク酸、カルボキシメチルオキシコハク酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、リンゴ酸、オキシジコハク酸、グルコン酸、カルボキシメチルコハク酸、カルボキシメチル酒石酸等の有機酸又はこれらの塩、
アミノトリ(メチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、これらのアルカリ金属または低級アミン塩等が挙げられる。本発明では前記(b)成分であげたアルカノールアミンを塩とすることが好ましく、酸で配合し系中でアルカリ剤で中和した塩であってもよい。
【0071】
(g)成分の組成物中の配合割合は、酸型とみなした場合に0.1〜5質量%であり、好ましくは0.1〜4質量%、より好ましくは0.1〜3質量%である。
【0072】
〔その他の成分〕
更に本発明の衣料用液体洗浄剤組成物には、次の(i)〜(xii)に示す成分を本発明の効果を損なわない程度で配合することができる。
(i)ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、カルボキシメチルセルロース、重量平均分子量5000以上のポリエチレングリコール、無水マレイン酸−ジイソブチレン共重合体、無水マレイン酸−メチルビニルエーテル共重合体、無水マレイン酸−酢酸ビニル共重合体、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、及び特開昭59−62614号公報の請求項1〜21(1頁3欄5行〜3頁4欄14行)記載のポリマーなどの再汚染防止剤及び分散剤
(ii)ポリビニルピロリドン等の色移り防止剤
(iii)過酸化水素、過炭酸ナトリウムまたは過硼酸ナトリウム等の漂白剤
(iv)テトラアセチルエチレンジアミン、特開平6−316700号の一般式(I−2)〜(I−7)で表される漂白活性化剤等の漂白活性化剤
(v)セルラーゼ、アミラーゼ、ペクチナーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ等の酵素
(vi)ホウ素化合物、カルシウムイオン源(カルシウムイオン供給化合物)、ビヒドロキシ化合物、蟻酸等の酵素安定化剤
(vii)蛍光染料、例えばチノパールCBS(商品名、チバスペシャリティケミカルズ製)やホワイテックスSA(商品名、住友化学社製)として市販されている蛍光染料
(viii)ブチルヒドロキシトルエン、ジスチレン化クレゾール、亜硫酸ナトリウム及び亜硫酸水素ナトリウム等の酸化防止剤
(ix)パラトルエンスルホン酸、クメンスルホン酸、メタキシレンスルホン酸、安息香酸塩(防腐剤としての効果もある)などの可溶化剤
(x)平均分子量約200のポリエチレングリコール、平均分子量約400のポリエチレングリコール、平均分子量約2000のポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール系ゲル化防止重合体
(xi)オクタン、デカン、ドデカン、トリデカンなどのパラフィン類、デセン、ドデセンなどのオレフィン類、塩化メチレン、1,1,1−トリクロロエタンなどのハロゲン化アルキル類、D−リモネンなどのテルペン類などの水非混和性有機溶剤。
(xii)その他、色素、香料、抗菌防腐剤、シリコーン等の消泡剤
【0073】
以下に本発明の衣料用液体洗浄剤組成物中、前記任意成分を配合する場合の指標としての濃度を示すが、本効果を損なわない程度に適宜調整され、配合に適さない場合は除外される。(i)の再汚染防止剤及び分散剤の含有量は0.01〜10質量%が好ましい。(ii)の色移り防止剤の含有量は0.01〜10質量%が好ましい。(iii)の漂白剤の含有量は0.01〜10質量%が好ましい。(vi)の漂白活性化剤の含有量は0.01〜10質量%が好ましい。(v)の酵素の含有量は0.001〜2質量%が好ましい。(vi)の酵素安定化剤の含有量は0.001〜2質量%が好ましい。(vii)の蛍光染料の含有量は0.001〜1質量%が好ましい。(viii)の酸化防止剤の含有量は0.01〜2質量%が好ましい。(ix)の可溶化剤は0.1〜2質量%が好ましい。(x)のポリアルキレングリコール系ゲル化防止重合体は0.01〜2%が好ましい。(xi)の水非混和性有機溶剤は0.001〜2質量%が好ましい。(xii)のその他の成分は例えば公知の濃度で配合することができる。
【0074】
なお、上記任意成分のうち(ix)、(x)、(xi)は液体洗浄剤組成物の安定性に影響を及ぼすのでその配合には特に注意を要する。
【0075】
本発明の衣料用液体洗浄剤組成物のpHはJIS K3362:1998の項目8.3に記載の方法で測定し、その際温度は記載の20℃で測定する。優れた洗浄性能を得る点で、6〜11、特には8〜10が好ましい。
【0076】
本発明の衣料用液体洗浄剤組成物の20℃における粘度は、取り扱いの容易さの点で10〜500mPa・sが好ましく、50〜400mPa・sがより好ましく、100〜300mPa・sが更に好ましい。(c)成分や可溶化剤によりこのような範囲になるように調整することが好ましい。
【0077】
また本発明の衣料用液体洗浄剤組成物は、水による希釈時に、ゲル化や高粘度化が起こらない組成物である。ここでゲル化とは、流動性が無くなるか、或いは下記のB型粘度計による粘度測定において、実質的に測定できない状態のものをいうものとする。具体的には、温度が5〜40℃にある衣料用液体洗浄剤組成物を、10℃の水、好ましくは5℃の水で0倍を超え100倍の範囲で希釈した希釈物が何れもゲル化しないことが好ましい。
【0078】
液体洗浄剤組成物が水で希釈されていく際にゲル化ないし高粘度化することによる溶解性への影響は、液体洗浄剤組成物をイオン交換水で0を超え20倍の範囲で希釈値を違えた複数のサンプルの液状性から判断することができる。具体的には、25℃の液体洗浄剤組成物と25℃のイオン交換水とを、〔(衣料用液体洗浄剤組成物の質量)/(衣料用液体洗浄剤組成物の質量+イオン交換水の質量〕×100=5〜95質量%となるように、5質量%刻みで混合した計19サンプルを調製し、該サンプルを10℃で1日保管した後のサンプルの液状性から判断することができる。この条件での評価において、すべてのサンプルが流動性に優れる性質を有するものは、10℃で保管後のすべてのサンプルの10℃における粘度が1500mPa・s未満であることに相当すると判断できる。更には、同様にして得られた19サンプルを5℃で1日保管した後に、すべてのサンプルが流動性に優れること、すなわち5℃で保管後のすべてのサンプルの5℃における粘度もまた1500mPa・s未満であることが好ましい。本発明の衣料用液体洗浄剤組成物は、前記希釈サンプル条件での10℃、更には5℃での流動性に優れるものである。なお、上記例では、希釈混合前の衣料用液体洗浄剤組成物とイオン交換水の温度は、いずれも25℃のものを用いたが、希釈混合前の各温度がそれ以外の温度(例えば15〜30℃から選択される温度)のものを用いても、同様な結果を得ることができる。なお、10℃の水で希釈されて行く際に、ゲル化の問題を生じるような液体洗浄剤組成物は、前記条件で希釈されたサンプル群のうち少なくとも1つのサンプルの10℃における流動性が乏しい又は流動性が実質的に無い状態であり、それは10℃での粘度が1500mPa・s以上、特には2000mPa・s以上に相当するか、或いは粘度測定できない状態に相当する。
【0079】
本発明において粘度はB型粘度計により測定する。ローターは粘度に合ったものを選択する。回転数60r/minで回転し、回転開始から60秒後の粘度を液体洗浄剤組成物又は希釈液の粘度とする。粘度の測定温度(液温)は、それぞれの目的に合わせて選定する。
【0080】
本発明の液体洗浄剤組成物は衣料用であり、水洗い用の組成物である。前記の通り、衣料とは、衣類、タオル、シーツなどの、水を主たる洗浄媒体とした洗濯の対象となる繊維製品を指す。
【実施例】
【0081】
表1に示す各成分を混合して、実施例及び比較例の組成物を得た。得られた各組成物を用い、下記の各評価を行った。結果を表1に示す。
【0082】
(1)洗浄力評価
(1−1)衿片の調製方法
衿汚れ試験布として、3日間着用した綿/ポリエステル混紡ワイシャツの衿部分を裁断し収集したもののうち汚れの程度が同じものを選別した。選別された衿汚れ試験布を半裁し、30cm×30cmの綿布に1枚ずつ縫い付け(以後、衿片と呼ぶ)、これを表1の実験1つあたり6セット(全12枚)用意した。半裁した一方の6枚を実施例で示された洗剤に用い、他方の6枚を洗浄力判定用指標洗剤に用いた。
【0083】
(1−2)洗浄水調製方法
洗浄に用いる水は、硬度成分としてカルシウム/マグネシウム=8/2にするために、塩化カルシウム・2水和物25.14g及び塩化マグネシウム・6水和物8.70gを2966.13gのイオン交換水で溶解することによって得られた400゜DH硬水を用い、洗浄力試験使用時にイオン交換水によって希釈し4゜DHに調整して用いた。
【0084】
(1−3)判定方法
洗浄試験には、洗濯機(NA−FV8001;Panasonic社)を用い、上記方法により調製した水を用いた。洗浄力の判定は、10人のパネラー(30代男性)によって行われた。表1の液体洗浄剤組成物(評価洗剤)で洗浄処理された衿片6枚と、洗剤をJIS K 3362:1998記載の指標洗剤に代えた以外は同様にして洗浄処理された衿片6枚との洗浄の程度を目視で判断した。対となる衿片のどちらが洗浄力に優れているかを判断し、評価洗剤を用いた方が洗浄力に優れている場合を「+1」点、指標洗剤を用いた方が洗浄力に優れている場合を「−1」点とする(パネラー一人あたりの評価点の合計は「+6」〜「−6」の範囲となる)。1つの評価洗剤につきパネラー10人が評価し、パネラー10人の評価点の平均点で洗浄力を評価した。
【0085】
(2)保存安定性評価
50mLのサンプルビン(No.6広口規格ビン、ガラス製、直径40mm、高さ80mmの円筒形)に、液体洗浄剤組成物を40mL充填し、蓋をした後、5℃の恒温室で20日間静置した。組成物の安定性は、目視で外観を観察し、下記の基準で判定した。
○;液晶、結晶を形成していない均一液体相であり、液安定性に優れる。
×;液晶形成、又は結晶形成、又は分離、又は析出が認められる。
【0086】
(3)溶解性のモデル評価
25℃(室温)に恒温化された液体洗浄剤組成物とイオン交換水を、〔(液体洗浄剤組成物の質量)/(液体洗浄剤組成物の質量+イオン交換水の質量〕×100=5〜95質量%となるように、5質量%刻みで混合した計19サンプルを準備し、10℃の恒温室で1日間静置した後、このサンプルの10℃における粘度を以下の条件で測定し、以下の基準で判定した。これは10℃の水に対する溶解性モデル試験である。また10℃の結果が「○」であったサンプルについては、更に同様にして5℃での溶解性モデル試験(粘度の測定は5℃)を行った。
○;すべてのサンプルが流動性に優れる。
×:サンプルの中に流動性に乏しい又は実質的に流動性が無いものが1つ以上ある。
【0087】
【表1】

【0088】
表に記載された各成分について下記に説明する。なお、表中では、(a’−1)〜(a’−3)も(a)成分とみなして、また、(b’−1)も(b)成分とみなして、構造や量比を示した。
【0089】
(a)成分
(a−1):ヤシ油由来の炭素数10〜14の1級直鎖アルコール1モル当りにエチレンオキサイドを18モル、プロピレンオキサイドを2モルの順にブロック付加反応させたもの。〔一般式(1−1−2)において、R1が炭素数10〜14の1級直鎖のアルキル基であり、A1'Oがオキシプロピレン基であり、m1が平均18、m2が平均2の化合物、R1−O−EOの化合物は90モル%以上であった。〕
(a−2):ヤシ油由来の炭素数10〜14の1級直鎖アルコール1モル当りにエチレンオキサイドを8モル、プロピレンオキサイドを2モル、エチレンオキサイドを8モルの順にブロック付加反応させたもの。〔一般式(1−1−5)において、R1が炭素数10〜14の直鎖のアルキル基であり、A1'Oがオキシプロピレン基であり、m11が平均8、m2が平均2及びm12が平均8の化合物、このうちR1−O−EOの化合物は80モル%以上であって、−EO−Hの化合物は、90モル%以上であった。〕
(a−3):ヤシ油由来の炭素数10〜14の1級直鎖アルコール1モル当りにエチレンオキサイドを9モル、プロピレンオキサイドを1モル、エチレンオキサイドを9モルの順にブロック付加反応させたもの。〔一般式(1−1−5)において、R1が炭素数10〜14の直鎖のアルキル基であり、A1'Oがオキシプロピレン基であり、m11が平均9、m2が平均1及びm12が平均9の化合物、このうちR1−O−EOの化合物は85モル%以上であって、−EO−Hの化合物は、90モル%以上であった。〕
(a−4):ヤシ油由来の炭素数10〜14の1級直鎖アルコール1モル当りにエチレンオキサイドを9モル、プロピレンオキサイドを2モル、エチレンオキサイドを9モルの順にブロック付加反応させたもの。〔一般式(1−1−5)において、R1が炭素数10〜14の直鎖のアルキル基であり、A1'Oがオキシプロピレン基であり、m11が平均9、m2が平均2及びm12が平均9の化合物、このうちR1−O−EOの化合物は85モル%以上であって、−EO−Hの化合物は、90モル%以上であった。〕
(a−5):ヤシ油由来の炭素数10〜14の1級直鎖アルコール1モル当りにエチレンオキサイドを10モル、プロピレンオキサイドを平均2モル、エチレンオキサイドを10モルの順にブロック付加させたもの。〔一般式(1−1−5)において、R1が炭素数10〜14の1級直鎖のアルキル基であり、A1'Oがオキシプロピレン基であり、m11が平均10、m2が平均2及びm12が平均10の化合物。このうちR1−O−EOの化合物は90モル%以上であって、−EO−Hの化合物は、95モル%以上であった。〕
(a−6):ヤシ油由来の炭素数10〜14の1級直鎖アルコール1モル当りにエチレンオキサイドを25モル付加反応させたもの。〔一般式(1)において、R1が炭素数10〜14の1級直鎖のアルキル基であり、A1Oがエチレンオキシ基であり、mが平均25の化合物。〕
【0090】
(a’−1):ヤシ油由来の炭素数10〜14の1級直鎖アルコールにエチレンオキサイドを平均10モル付加させたもの
(a’−2):ヤシ油由来の炭素数10〜14の1級直鎖アルコールにエチレンオキサイドを平均50モル付加させたもの
(a’−3):ヤシ油由来の炭素数10〜14の1級直鎖アルコールにエチレンオキサイドを5モル、プロピレンオキサイドを2モル、エチレンオキサイドを5モルの順にブロック付加反応させたもの。〔一般式(1−1−5)において、R1が炭素数10〜14の1級直鎖のアルキル基であり、A1'Oがオキシプロピレン基であり、m11が平均5、m2が平均2及びm12が平均5の化合物。このうちR1−O−EOの化合物は80モル%以上であって、−EO−Hの化合物は、85モル%以上であった。〕
【0091】
(b)成分
(b−1):下記製造法(b1)により製造された陰イオン界面活性剤〔表中の濃度は酸型の濃度とし、対塩のモノエタノールアミンは(f)成分に合計した。〕
<製造法(b1)>
天然油脂由来の炭素数12の直鎖一級アルコール〔花王株式会社製、商品名:カルコール2098〕2340g及びKOH3.5gを攪拌装置、温度制御装置、自動導入装置を備えたオートクレーブに仕込み、110℃、1.3kPaにて30分間脱水を行った。脱水後窒素置換を行い、120℃まで昇温した後、プロパン−1,2−ジイルオキサイド(以下「PO」という)1460gを仕込んだ。120℃にて付加反応・熟成を行った後、80℃まで冷却し、4.0kPaで未反応のPOを除去した後、酢酸3.8gをオートクレーブ内に加え、80℃で30分間攪拌した後、抜き出しを行い、POの平均付加モル数が2.0であるアルコキシレートを得た。
【0092】
得られたアルコキシレートを、SO3ガスを用いて下降薄膜式反応器により硫酸化した。得られた硫酸化物をモノエタノールアミンにて中和し、ポリオキシプロパン−1,2−ジイルアルキルエーテル硫酸エステル塩〔(b−1)〕を含む組成物を得た。
【0093】
得られた(b−1)は一般式(2)において、R2が直鎖1級アルキル基であり、A2Oがプロピレンオキシ基であり、pが平均2.0、qが0の化合物である。また、ガスクロマトグラフ分析及びNMR分析の結果、得られた組成物には、一般式(2’)で示される化合物が98質量%、一般式(2−1)の化合物が2質量%含まれていた。
【0094】
(b−2):下記製造法(b2)により製造された陰イオン界面活性剤〔表中の濃度は酸型の濃度とし、対塩のモノエタノールアミンは(f)成分に合計した。〕
<製造法(b2)>
製造法(b1)と同様にして天然油脂由来の炭素数12の直鎖一級アルコール(商品名:カルコール2098)の脱水を行った。脱水後窒素置換を行い、120℃まで昇温した後、POを730g仕込んだ。120℃にて付加反応・熟成を行った後、145℃に昇温し、エチレンオキサイド(以下「EO」という)を1107g仕込んだ。145℃にて付加反応・熟成を行った後、80℃まで冷却し、4.0kPaで未反応のEOを除去した。未反応EO除去後、3.8gの酢酸をオートクレーブ内に加え、80℃で30分間攪拌した後、抜き出しを行い、平均PO付加モル数pが1.0、平均EO付加モル数qが2.0であるアルコキシレートを得た。
【0095】
得られたアルコキシレートを製造法(b1)と同様に硫酸化した後、中和し、アルキルエーテル硫酸エステル塩〔(b−2)〕を含む組成物を得た。
【0096】
ガスクロマトグラフ分析及びNMR分析の結果、得られた(b−2)は一般式(2)において、R2が炭素数12の直鎖1級アルキル基であり、A2Oがプロピレンオキシ基であり、pが平均1.0、qが平均2.0の化合物である。また、ガスクロマトグラフ分析及びNMR分析の結果、得られた組成物には、一般式(2’)で示される化合物が80質量%、一般式(2−1)の化合物が4質量%、一般式(2−3)の化合物が16質量%含まれていた。
【0097】
(b’−1):下記製造法(b’1)により製造された陰イオン界面活性剤
<製造法(b’1)>
原料アルコールは、1−デセン及び1−ドデセンの混合物〔1−デセン/1−ドデセン=50/50(質量比)〕をヒドロホルミル化して得られたアルコールである。このアルコールに(b−1)と同様にして、エチレンオキサイドを平均1モル付加させた後、三酸化イオウにより硫酸化し、水酸化ナトリウムで中和して、ポリオキシエタン−1,2−ジイルアルキルエーテル硫酸エステル塩〔(b’−1)〕を含む組成物を得た。ガスクロマトグラフ分析及びNMR分析の結果、得られた(b’−1)は、一般式(2)の範囲外となる、p=0、q=1.0の化合物であった。また、また、ガスクロマトグラフ分析及びNMR分析の結果、得られた組成物には、一般式(2’)の化合物が0質量%、一般式(2−1)の化合物が40質量%、一般式(2−3)の化合物が60質量%含まれていた。
【0098】
(c)成分
(c−1):ジエチレングリコールモノブチルエーテル
(c−2):プロピレングリコール
【0099】
(e)成分
(e1−1):炭素数12〜14の2級アルコールにエチレンオキサイドを平均3モル付加させたもの〔ソフタノール30(商品名)、株式会社日本触媒製〕
(e2−1):炭素数10〜14の直鎖アルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸(e2−2):ルナックL−55(商品名)(ヤシ油系脂肪酸;花王株式会社製)
(f)成分
(f−1):モノエタノールアミン((b)成分や(e2)成分の対イオンとしての濃度を含む)
【0100】
<その他成分>
ポリマー(1):特開平10−60476号公報の段落0020の合成例1の方法で合成した高分子化合物。
蛍光染料:チノパールCBS−X(商品名)(チバスペシャリティケミカルズ製)
酵素:エバラーゼ16.0L−EX(商品名)(プロテアーゼ、ノボザイム社製)
色素(1):緑色202号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)〜(c)成分を含有する衣料用液体洗浄剤組成物であって、(a)成分と(b)成分の含有量の合計が(a)+(b)=30〜90質量%であり、(a)成分と(b)成分の質量比が(a)/(b)=25/75〜95/5である、衣料用液体洗浄剤組成物。
(a)成分:下記一般式(1)で表される非イオン界面活性剤
1O−(A1O)mH (1)
〔式中、R1は炭素数8〜22の炭化水素基を示し、A1Oは炭素数2〜5のアルキレンオキシ基を示し、mは平均付加モル数を示し、16〜35の数である。A1Oはエチレンオキシ基を平均14モル以上含む。但し、A1Oがすべてエチレンオキシ基の場合は、mは18以上の数である。〕
(b)成分:下記一般式(2)で表される陰イオン界面活性剤
2O−(A2O)p−(EO)q−SO3M (2)
〔式中、R2は炭素数8〜22の炭化水素基を示し、A2Oは炭素数3及び/又は4のアルキレンオキシ基、EOはエチレンオキシ基を示し、p及びqは平均付加モル数を示し、pは0.1〜5の数、qは0〜10の数である。Mは陽イオンである。〕
(c)成分:水混和性有機溶剤 5〜40質量%
【請求項2】
(a)成分がA1Oとしてプロピレンオキシ基を含む、請求項1記載の衣料用液体洗浄剤組成物。
【請求項3】
更に、窒素原子に結合する基のうち、1〜3つが炭素数2〜4のアルカノール基であり、残りが炭素数1〜4のアルキル基又は水素原子であるアルカノールアミンを0.01〜10質量%含有する、請求項1又は2記載の衣料用液体洗浄剤組成物。
【請求項4】
(a)成分と(b)成分の質量比が(a)/(b)=25/75〜90/10である、請求項1〜3の何れかに記載の衣料用液体洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2011−208130(P2011−208130A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51038(P2011−51038)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】