説明

衣料

【課題】 編地の所定部位に隆起部分の隆起高さを十分確保できる領域を配置し、この領域の隆起部分との接触で身体にマッサージ効果の高い刺激を加えることができ、且つ編地各部に伸縮力に伴う適切な締付け力を発生させて身体の着用部位各部に強力な補整効果を与えられる衣料を提供する。
【解決手段】 筒状編地がベース生地部14とフロート編による凹凸部12、13とから形成され、凹凸部12、13の原糸をベース生地部14のそれより太くし、凹凸部12、13をなす編組織の柔軟性をベース生地部14より低下させて硬質な編組織とすることから、身体に接する凸部分が変形しにくく、原糸を太くした分の隆起度合増大分と合わせて凸部分の隆起高さを十分確保でき、凸部分から皮膚に対する刺激を確実に与えられ、身体の装着部位に対するマッサージ作用を著しく強化できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、丸編で編成された筒状編地から得られ、身体にフィットした着用状態となる衣料に関する。この衣料には、例えば、シャツやショーツ等の下着類、ブラジャーやガードル等のファンデーション、ソックスやパンティストッキング・タイツ等の靴下類、腹巻、及び、サポータといった、直接身に着けるものが含まれる。
【背景技術】
【0002】
ソックスやパンティストッキング等の靴下類をはじめとして、ガードル等のファンデーションや下着、サポータ等、身に着けた状態における身体表面へのフィット性を要求される衣料は、丸編によりまず筒状編地として編成され、必要に応じて一部を切断縫製加工されて、製品として仕上げられるものが近年では一般的になりつつある。筒状編地から得られた衣料は、周方向に切れ目なく伸縮性を持つことができ、それぞれ対応する身体各部にぴったりと装着される状態を容易に実現可能となっている。こうした筒状編地の加工製品における機能付加としては、プレーン編、タック編などの編組織や部分的な度目の粗密変化等を与えて所定箇所に他の部分より大きな押圧力や締付け力を発生させ、体型補整等の機能を与えることが従来から広く行われていたが、これらにとどまらず、肌に接する生地内面に凹凸を生じさせ、肌と凸部との接触により肌にマッサージ効果を与えるものが近年提案されている。こうした従来の衣料の一例として、特許第3207808号公報に記載されるものがある。
【0003】
この従来の衣料は、内面にタック編からなる多数条の波形の隆起部を編成配設したガードルであり、着用するとその内面に設けた波形の隆起部が身体を動かすたびに肌を適度に押圧刺激してマッサージ作用を生じさせるものとなっている。
また、従来の他の衣料として、編地の身体に面する内面所定部位に、編組織の異なる凸部と凹部が互違いに編成されるものが、特許第3209738号公報に記載されている。
【0004】
この従来の他の衣料は、内面部の身体にフィットする部分の所定部位に編組織の異なる凸部と凹部が互違いに編成され、且つ各凹部は交互に深い凹部と浅い凹部に編成されてなる構成である。この衣料では、着用時に身体が動くたびに内面部の凸部と凹部が肌に刺激を与える他、凸部と深い凹部又は浅い凹部とにより贅肉や皮下脂肪が挟まれ、こうした挟着作用が身体を動かす度に繰返されることとなり、優れたマッサージ効果が得られると共に、贅肉や皮下脂肪の減少も促せるという効果も奏する。
【特許文献1】特許第3207808号公報
【特許文献2】特許第3209738号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の筒状編地からなる衣料は以上のように構成されており、前記特許文献1に記載される従来前者のタック編からなる隆起部は、波形に連続して伸縮変形可能に形成されているため、着用者の身体の動きにより引張られると、隆起部が過剰に伸長されて変形し、隆起高さが低くなってしまうことがあり、また、前記特許文献2に記載される従来後者における凸部は、平編領域と浮き編領域とが交互に並んだ編組織で構成されており、浮き編領域のループによって編組織の複数段分を1段に引張った状態が保持されてあまり変形しない状態となっているものの、編組織の構造上、凸部の隆起高さが十分得られず、従来のいずれの場合も、隆起した部分によるマッサージ作用を発揮させられない場合が多いという課題を有していた。
【0006】
本発明は前記課題を解消するためになされたもので、編地の所定部位に隆起部分の隆起高さを十分確保できる領域を配置し、この領域の隆起部分との接触で身体にマッサージ効果の高い刺激を加えることができ、且つ編地各部に伸縮力に伴う適切な締付け力を発生させて身体の着用部位各部に強力な補整効果を与えられる衣料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る衣料は、全体を丸編で編成される筒状編地をそのまま又は一部切断、縫製加工して得られる衣料において、前記編地が、略平坦なベース生地部と、フロート編組織で形成されて少なくとも身体に面する内面側に凸部分を有する凹凸部とを備え、前記ベース生地部をなす原糸に対し、前記凹凸部の少なくともミスループ糸をなす原糸が、2倍ないし5倍の太さ及び/又は硬さの糸とされるものである。
【0008】
このように本発明においては、筒状編地がベース生地部とフロート編による凹凸部とから形成され、凹凸部の原糸をベース生地部のそれより太くし、凹凸部をなす編組織の柔軟性をベース生地部より低下させて硬質な編組織とすることにより、身体に接する凸部分が変形しにくく、原糸を太くした分の隆起度合増大分と合わせて凸部分の隆起高さを十分確保でき、凸部分から皮膚に対する刺激を確実に与えられ、身体の装着部位に対するマッサージ作用を著しく強化できる。また、編地上の凹凸形状が崩れにくく、凸部間に挟まれた凹部の隙間も確保されることから、通気性を確保でき、快適な着用感が得られる。
【0009】
また、本発明に係る衣料は必要に応じて、前記凹凸部が、少なくとも一部に添え糸を伴って編成されるものである。
このように本発明においては、筒状編地のうち凹凸部について添え糸を用いながら編成し、凹凸部をなす編組織をさらに硬質とし、且つ添え糸を加えた分、編組織自体を大きく密にすることにより、凹凸部における身体側への凸部分をより高く隆起させることができると共に、伸縮を防いで凸部分の変形を抑えられ、身体に対する凸部分の押圧性能を確保してマッサージ効果を高められる。また、添え糸を用いた部分で外面のデザインに変化を与えられ、美感を向上させられる。
【0010】
また、本発明に係る衣料は必要に応じて、前記添え糸が、前記ベース生地部の原糸より伸縮性に乏しく且つ太い糸とされるものである。
このように本発明においては、凹凸部への添え糸が伸縮性に劣る太い糸とされ、凹凸部全体で編組織をより一層密で硬質なものとすることにより、凸部分をより大きくすることができると共に、伸縮を防止して凸部分の変形を確実に抑え、身体に対する押圧機能を常時確保して着用部位に強い刺激を与えられることとなり、マッサージ効果をより一層高めて快適な着用感を得られる。
【0011】
また、本発明に係る衣料は必要に応じて、前記凹凸部のうち、少なくとも身体に面する内面側で前記凸部分間の凹部分をなす各部位の外面に、伸縮性に乏しい合成樹脂材層を一体に被覆するものである。
このように本発明においては、凹凸部のうち、身体に面する内面側で凹部分となる部位の外側に合成樹脂材層を被覆配設し、内面側における凹部分の伸縮を防止して凸部分間の間隔を維持することにより、凸部分からの身体に対する押圧刺激付与状態を常に一定に維持してマッサージ効果を確保できる。さらに、外側に現れた合成樹脂材層が滑り止めの役割を果すこととなり、靴下の足裏部とする場合に歩行時の滑りを防いで安全性を高められる。
【0012】
また、本発明に係る衣料は必要に応じて、前記凹凸部のうち、少なくとも身体に面する内面側で前記凸部分間の凹部分をなす各部位を、加熱によって互いに融着する性質の繊維を原糸の少なくとも一部に用いて編成し、編成後前記繊維を加熱して一体化させるものである。
このように本発明においては、凹凸部のうち、身体に面する内面側で凹部分となる部位の一部に熱融着性繊維を用いて編成し、編成後の加熱で編組織を一体化し、硬く伸縮しにくい凹部分を得、凸部分間の間隔を維持することにより、凸部分からの身体に対する押圧刺激付与状態を常に一定に維持してマッサージ効果を確保できる。さらに、融着して硬く一体化した凹部分の外面が滑り止めの役割を果すこととなり、靴下の足裏部とする場合に歩行時に滑りを防いで安全性を高められる。
【0013】
また、本発明に係る衣料は必要に応じて、前記編地が、当接する身体の部位に対応させた複数の領域を設定され、当該各領域ごとに前記凹凸部における内方への凸部分の配置状態及び/又は前記ベース生地部の編組織構造を異ならせて編成されるものである。
このように本発明においては、編地が凹凸部やベース生地部の構造が異なる複数の領域に分けて編成されてなり、着用者の身体各部位に対応した伸縮性を与えられて着用部位へのフィット状態を確保することにより、身体の着用部位に対しむらなく優れたフィット感を与えられることとなり、凹凸部による優れた身体へのマッサージ性を備えつつ、十分な締付け力を発生させられ、体型補整効果を発揮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(本発明の第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態を図1ないし図4に基づいて説明する。本実施の形態では、ガードルの例を説明する。図1は本実施の形態に係る衣料の正面図及び右側面図、図2は本実施の形態に係る衣料における凹凸部の内面概略図及び断面図、図3は本実施の形態に係る衣料における凹凸部の編組織概略構成図、図4は本実施の形態に係る衣料における凹凸部の凸部分構造説明図である。
【0015】
前記各図において本実施形態に係る衣料1は、丸編により腹部を覆う前身頃及び臀部を覆う後身頃を一体編成された筒編地からなるガードル本体10と、このガードル本体10の一方の開口部中央に縫着される股部16とを備え、ガードルとされてなる構成である。ガードルとしての形状は、腰部全体を覆って下腹部や臀部の引締め効果を与えられる公知の形状及び構造であり、詳細な説明を省略する。
【0016】
前記ガードル本体10は、各開口部の端から所定範囲を伸縮性に優れフィットしやすいリブ編部11として編成される一方、着用の際身体前側に位置させる前身頃の略中央部分を凹凸部12とされ、この凹凸部12が腹部被覆部分とされると共に、これと対向する後身頃のうち臀部下側に沿う一部についても凹凸部13とされ、これ以外の部分を伸縮性に優れるベース生地部14とされてなる構成である。このガードル本体10の股下部分は、当初の筒編地の一方の開口縁部を前後身頃の中央部分で一部切断され、切断部分同士を縫製されると共に別体の股部16を縫着一体化されて、両脚の通る二つの筒状開口部分以外閉じた状態とされる構成である。
【0017】
前記ベース生地部14は、伸縮性のある編地とされ、プレーン編、スパイラル編、フロート編、タック編、又はパイル編等で編成されてなる構成である。このベース生地部14は、ナイロンを50%ないし90%、ポリウレタンを10%ないし50%の割合とされ、且つ太さを60ないし40デシテックスとされる混紡原糸により、伸縮性のある編地とされて編成されるものであり、強さと通気性を兼ね備えた生地となっている。股部16もこのガードル本体10と同じ素材で且つベース生地部14と同様に形成される。また、股部16は吸湿性を向上させるために綿などの天然繊維を加えて構成することもできる。
【0018】
前記凹凸部12、13はフロート編で編成され、着用状態で身体に面する内面側に、多数の隆起した凸部分15が畝状に連なった状態で複数列配置された編組織となっている。(このうち、凹凸部12の編組織は、他方の凹凸部13の編組織より凸部分15同士の間隔を大きくして編成される。)
この凹凸部12、13は、ベース生地部14と同じ繊維製ながらより太い原糸及びベース生地部14の原糸より伸縮性に乏しく且つ太い合成繊維製の添え糸17とを用いて編成されており、伸縮性に乏しい編組織とされてベース生地部14より厚くかさ高としており、ガードル本体10が身体の運動に伴って動く中、凹凸部12、13は身体の曲げ伸しに対応した屈曲変化以外の動きには追従せずに腹部前面や臀部下側に配置された着用当初状態での位置を保ち、凸部分15の形状や凸部分15同士の間隔もほとんど変化しない仕組みである。この凹凸部12、13の原糸の太さは、150ないし600デシテックスとされ、ベース生地部14の2〜5倍となっている。
【0019】
次に、前記構成に基づく本実施形態の衣料の使用状態について説明する。使用者は衣料1に脚を通し、上側のリブ編部12を腹部上側まで引上げ、前身頃の凹凸部12を腹部前側に、また、後身頃の凹凸部13をちょうど臀部下側に位置させ、各部を身体の表面にぴったり合わせれば、完全な着用状態となる。
【0020】
衣料1の大部分を占めるベース生地部14は十分な伸縮性を有しており、腹部及び臀部を確実に覆ってサポートできる。さらに、上下のリブ編部12が適度な締付け力で身体に密着し、着用部位からのずれを防ぐ。
【0021】
この着用状態では、衣料1の大部分を占めるベース生地部14がその十分な伸縮性に基づいて身体の着用部分にフィットして密着する一方、このベース生地部14の締付け力により、前身頃の略中央部分に配設された凹凸部12が、着用者の腹部前面から左右側部に沿って前方から強く密着した状態となると共に、後身頃下部の凹凸部13がちょうど臀部下側に沿って強く密着し、両脇から中央にかけて臀部の下がりを押しとどめる状態となる。
【0022】
こうして着用状態で凹凸部12、13が腹部や臀部を適度に締付けて補整効果を与えることに加え、これら凹凸部12、13内面の多数の凸部分15が身体の動きに伴って密着状態の皮膚に対し押圧や摩擦等の刺激を加えることとなり、これら凸部分の刺激によるマッサージ効果で、着用部位の血行を良くして使用者に快適感を与えられる。そして、凹凸部12、13は、着用者の身体を大きく動かす運動を経た場合でも、腹部や臀部に対し大きくずれることはなく、マッサージ性能を維持できると共に、着用感を変化させない。
【0023】
このように本実施の形態に係る衣料においては、ガードルをなす筒状編地がベース生地部14とフロート編による凹凸部12、13とから形成され、凹凸部12、13の原糸をベース生地部14のそれより太くし、且つ添え糸17を用いながら凹凸部12、13を編成して、凹凸部12、13をなす編組織の柔軟性をベース生地部14より低下させて硬質な編組織とすることから、身体に接する凸部分15が変形しにくく、原糸を太くし且つ添え糸を加えた分の隆起度合増大分と合わせて凸部分15の隆起高さを十分確保でき、凸部分15から皮膚に対する刺激を確実に与えられ、腹部や臀部に対するマッサージ作用を著しく強化できる。
【0024】
なお、前記実施の形態に係る衣料においては、凹凸部12、13を添え糸編で編成する構成としているが、これに限らず、原糸に十分太い糸を用いれば添え糸17を用いずに編成する構成とすることもできる。また、凹凸部12、13の編組織の一部に、硬化する合成樹脂材を含浸させて合成樹脂材層を形成したり、熱融着性を有する繊維を用いて編成後加熱一体化したりして、凹凸部12、13をより硬くして凸部分15の間隔を変化させない構成とすることもでき、身体の動きで凹凸部12、13に伸縮力が加わっても、皮膚に与える刺激を一定に維持して常に均等なマッサージ効果を生じさせられる。
【0025】
また、前記実施の形態に係る衣料においては、凹凸部12、13やベース生地部14をそれぞれ同じ一つの編組織として編成する構成としているが、これに限らず、各部をさらに複数の領域に分け、それぞれ編組織構造を変えて伸縮性能を異ならせた編組織とし、領域ごとに着用者の身体各部位に対応した伸縮性を与える構成とすることもでき、身体の着用部位に対しむらなく優れたフィット感を与えられることとなり、凹凸部12、13による優れた身体へのマッサージ性を備えつつ、十分な締付け力を発生させられ、体型補整効果を発揮できる。さらに、ベース生地部14にも伸縮性を損わない範囲で、身体に面する内面側に一部突出する凸部分を配置し、軽いマッサージ機能を付与する構成とすることもできる。
【0026】
このように衣服の複数の部位を編組織構造を異ならせたガードルの例を図5に示す。同図においてガードルの各部位に記入される編組織構造を3つのアルファベット及び数字の組合せから成る3文字で表現し、この3文字のうち先頭のアルファベットが内面側に突出する凸部分の高さ(A>B>C)を示し、中間の数字が前記凸部分相互間の間隔(1<2<3)を示し、末尾のアルファベットが編組織の横方向への引張り強度(D>E>F>G)を示す。
【0027】
前記図5に示すガードルは、前側中央部分及び臀部下方部分に凸部分の高さが最も高く且つ間隔が最も狭い編組織構造A1D形成されると共に編組織の横方向への引張り強度を最も強く形成される。この編組織構造A1Dに隣接する領域には、編組織構造B2D又はB2Fで形成され、編組織構造A1Dより凸部分の高さが若干低く、凸部分の相互間の間隔が若干拡く且つ横方向への引張り強度が若干弱く形成される。また、前記編組織構造B2D又はB2Fに隣接する領域には、さらに凸部分の高さが若干低く、凸部分相互間の間隔が拡く且つ横方向への引張り強度が弱い編組織構造C2F及び、凸部分の高さがさらにまた若干低く、凸部分相互間の間隔が拡く且つ横方向への引張り強度が弱いC3Gで形成される。
【0028】
このように凸部分の高さが最も高い部分A1Dから順次低く、また凸部分の相互間の間隔が最も狭い部分A1Dから順次拡く、また、横方向への引張り強度が最も強い部分A1Dから順次弱くなるように形成しているので、違和感のない自然な締め付けが可能となり、且つ凸部分による被着者の皮膚に対するマッサージ作用を効果的に実行できることとなる。
【0029】
(本発明の第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態を図6に基づいて説明する。本実施の形態では、いわゆるブラトップ、ハーフトップと称される女性用衣類の例を説明する。図6は本実施の形態に係る衣料の斜視図である。
前記各図において本実施形態に係る衣料2は、丸編により胸部を覆う前身頃20a及び後身頃20bを一体編成された筒編地からなり、一方の開口部を縫製加工されて肩ひも状とされてブラトップ・ハーフトップ形状とされてなる構成である。ブラトップ・ハーフトップとしての形状は、胸部を覆う公知の形状及び構造であり、詳細な説明を省略する。
【0030】
前記衣料2は、一方の開口部の端から所定範囲を伸縮性に優れフィットしやすいリブ編部21として編成される一方、着用の際身体前側に位置させる前身頃20aのちょうど乳房を収めるカップ部の脇から下側に沿う部位を凹凸部22とされ、これ以外の部分を伸縮性に優れるベース生地部23とされてなる構成である。この衣料2の肩ひも部分は、当初の筒編地の他方の開口縁部を前後身頃の所定部分で一部延伸させて編成し、この延伸部分の端部同士を縫着一体化して、肩ひも状とされる構成である。
【0031】
前記ベース生地部23は、前記第1の実施形態同様、伸縮性のある編地とされ、プレーン編、スパイラル編、フロート編、タック編、又はパイル編等で編成されてなる構成であり、詳細な説明を省略する。
前記凹凸部22は、前記第1の実施形態同様、フロート編で編成され、着用状態で身体に面する内面側に、多数の隆起した凸部分が畝状に連なった状態で複数列配置された編組織となっており、詳細な説明を省略する。
【0032】
次に、前記構成に基づく本実施形態の衣料の使用状態について説明する。使用者は衣料2にリブ編部21側開口から頭、腕を通し、リブ編部21を腹部上側まで引下ろし、前身頃20aの凹凸部22を乳房下側に位置させ、各部を身体の表面にぴったり合わせれば、完全な着用状態となる。衣料2の大部分を占めるベース生地部23は十分な伸縮性を有しており、胸部を確実に覆ってサポートできる。さらに、リブ編部21が適度な締付け力で身体に密着し、着用部位からのずれを防ぐ。
【0033】
この着用状態では、ベース生地部23がその伸縮性に基づいて身体の着用部分にフィットして密着する一方、このベース生地部23の締付け力により、前身頃20aの下部に配設された凹凸部22が、使用者の乳房下側前面から左右側部に沿って下方から強く密着し、両脇から中央にかけて乳房を下から支える状態となる。
【0034】
こうして着用状態で凹凸部22が胸部を適度に締付けて補整効果を与えることに加え、これら凹凸部22内面の多数の凸部分が身体の動きに伴って密着状態の皮膚に対し押圧や摩擦等の刺激を加えることとなり、これら凸部分の刺激によるマッサージ効果で、着用部位の血行を良くして使用者に快適感を与えられる。そして、凹凸部22は、使用者の身体を大きく動かす運動を経た場合でも胸部に対し大きくずれることはなく、マッサージ性能を維持できると共に、着用感を変化させない。
【0035】
このように本実施の形態に係る衣料においては、ブラトップ等をなす筒状編地がベース生地部23とフロート編による凹凸部22とから形成され、凹凸部22をなす編組織の柔軟性をベース生地部23より低下させて硬質な編組織とすることから、身体に接する凸部分が変形しにくく、凸部分の隆起高さを十分確保でき、凸部分から皮膚に対する刺激を確実に与えられ、胸部に対するマッサージ作用を著しく強化できる。また、編地上の凹凸形状が崩れにくく、凸部分間に挟まれた凹部分の隙間も確保されることから、通気性を確保でき、快適な着用感が得られる。
【0036】
(本発明の第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態を図7及び図8に基づいて説明する。本実施の形態では、靴下の例を説明する。図7は本実施の形態に係る衣料の非着用状態側面図及び着用状態斜視図、図8は本実施の形態に係る衣料の凹凸部断面図及び着用状態底面図である。
前記各図において本実施形態に係る衣料3は、丸編により編成された筒編地のうち足装着状態で踵及び爪先に対応する部分を縫製加工して靴下形状とされてなる構成である。靴下としての形状は、足から脛部に至る部位を覆う公知の形状及び構造であり、詳細な説明を省略する。
【0037】
前記衣料3は、一方の開口部の端から所定範囲を伸縮性に優れフィットしやすいリブ編部31として編成される一方、着用の際足下側に位置する部分を凹凸部32とされ、これ以外の部分を伸縮性に優れるベース生地部33とされてなる構成である。靴下としての爪先対応部分は、公知の靴下同様、当初の筒編地の他方の開口縁部を縫着して形成され、また、踵対応部分も、公知の靴下同様、筒編地の中間部分を縫製等一部加工して形成される構成である。
【0038】
前記ベース生地部33は、前記第1の実施形態同様、伸縮性のある編地とされ、プレーン編、スパイラル編、フロート編、タック編、又はパイル編等で編成されてなる構成であり、詳細な説明を省略する。
【0039】
前記凹凸部32は、前記第1の実施形態同様、フロート編で編成され、装着状態で足裏に面する内面側に、多数の隆起した凸部分34が畝状に連なった状態で複数列配置された編組織となっている。この凹凸部32における凸部分34の間の凹部分35外面には、伸縮性に乏しい合成樹脂材が、この樹脂材の流動性材料を含浸させて硬化させる工程を経て一体に被覆され、合成樹脂材層36とされて凹凸部32をベース生地部33に比べ伸縮しにくくしており、靴下本体30が足の運動に伴って動く中、凹凸部32は足裏の曲げ伸しに対応した屈曲変化以外の動きには追従せずに足下側に配置された着用当初状態での位置を保ち、凸部分34の形状や凸部分34同士の間隔もほとんど変化しない仕組みである。
【0040】
次に、前記構成に基づく本実施形態の衣料の使用状態について説明する。使用者は衣料3に足を通し、上側のリブ編部31を脛部上側まで引上げ、凹凸部32を足裏に位置させ、各部を足表面にぴったり合わせれば、完全な装着状態となる。この衣料3の大部分を占めるベース生地部33は十分な伸縮性を有しており、脛部から下を確実に覆ってサポートできる。さらに、リブ編部31が適度な締付け力で脚に密着し、装着部位からのずれを防ぐ。
【0041】
この装着状態では、ベース生地部33がその伸縮性に基づいて足の装着部分にフィットして密着する一方、このベース生地部33の締付け力により、凹凸部32も足裏に強く密着した状態となる。そして、凹凸部32内面の多数の凸部分34が足の動きに伴って密着状態の皮膚に対し押圧や摩擦等の刺激を加えることとなり、これら凸部分34の刺激によるマッサージ効果で、足裏の血行を良くして使用者に快適感を与えられる。
【0042】
この凹凸部32は、使用者の足を動かす運動を経た場合でも、足下側から大きくずれることはなく、また、合成樹脂材層36を被覆配設して凹部分35の伸縮を防止し、凸部分34間の間隔を維持していることから、凸部分34からの身体に対する押圧刺激付与状態を常に一定に保て、マッサージ効果に変化は生じない。さらに、外側に一定間隔で複数現れた合成樹脂材層36が足の着地する面に対して滑り止めの役割を果せることとなり、靴下履き歩行時の滑りを防いで靴下としての安全性を高められる。
【0043】
このように本実施の形態に係る衣料においては、靴下をなす筒状編地がベース生地部33とフロート編による凹凸部32とから形成され、凹凸部32をなす編組織の柔軟性をベース生地部33より低下させて硬質な編組織とすることから、身体に接する凸部分34が変形しにくく、凸部分34の隆起高さを十分確保でき、凸部分34から皮膚に対する刺激を確実に与えられ、足裏に対するマッサージ作用を著しく強化できる。
【0044】
また、前記実施の形態に係る衣料においては、凹凸部32の一部に硬化する合成樹脂材を含浸させて合成樹脂材層36を形成する構成としているが、この他、筒編地のうち凹凸部に添え糸を用いて編成したり、熱融着性を有する繊維を用いて編成後一部加熱一体化したりして、凹凸をより硬くする構成とすることもでき、前記実施形態同様、皮膚に与える刺激を一定状態に維持してマッサージ効果を常に確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る衣料の正面図及び右側面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る衣料における凹凸部の内面概略図及び断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る衣料における凹凸部の編組織概略構成図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る衣料における凹凸部の凸部分構造説明図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る衣料に複数種類の編組織構造とした場合の正面図及び背面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る衣料の斜視図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係る衣料の非着用状態側面図及び着用状態斜視図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る衣料の凹凸部断面図及び着用状態底面図である。
【符号の説明】
【0046】
1、2、3 衣料
10 ガードル本体
11 リブ編部
12、13 凹凸部
14 ベース生地部
15 凸部分
16 股部
17 添え糸
21 リブ編部
22 凹凸部
23 ベース生地部
31 リブ編部
32 凹凸部
33 ベース生地部
34 凸部分
35 凹部分
36 合成樹脂材層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体を丸編で編成される筒状編地をそのまま又は一部切断、縫製加工して得られる衣料において、
前記編地が、略平坦なベース生地部と、フロート編組織で形成されて少なくとも身体に面する内面側に凸部分を有する凹凸部とを備え、
前記ベース生地部をなす原糸に対し、前記凹凸部の少なくともミスループ糸をなす原糸が、2倍ないし5倍の太さ及び/又は硬さの糸とされることを
特徴とする衣料。
【請求項2】
前記請求項1に記載の衣料において、
前記凹凸部が、少なくとも一部に添え糸を伴って編成されることを
特徴とする衣料。
【請求項3】
前記請求項2に記載の衣料において、
前記添え糸が、前記ベース生地部の原糸より伸縮性に乏しく且つ太い糸とされることを
特徴とする衣料。
【請求項4】
前記請求項1ないし3のいずれかに記載の衣料において、
前記凹凸部のうち、少なくとも身体に面する内面側で前記凸部分間の凹部分をなす各部位の外面に、伸縮性に乏しい合成樹脂材層を一体に被覆することを
特徴とする衣料。
【請求項5】
前記請求項1ないし3のいずれかに記載の衣料において、
前記凹凸部のうち、少なくとも身体に面する内面側で前記凸部分間の凹部分をなす各部位を、加熱によって互いに融着する性質の繊維を原糸の少なくとも一部に用いて編成し、編成後前記繊維を加熱して一体化させることを
特徴とする衣料。
【請求項6】
前記請求項1ないし5のいずれかに記載の衣料において、
前記編地が、当接する身体の部位に対応させた複数の領域を設定され、当該各領域ごとに前記凹凸部における内方への凸部分の配置状態及び/又は前記ベース生地部の編組織構造を異ならせて編成されることを
特徴とする衣料。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−28648(P2006−28648A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−204693(P2004−204693)
【出願日】平成16年7月12日(2004.7.12)
【出願人】(593065110)イイダ靴下株式会社 (22)
【出願人】(500294888)株式会社 アドヴァンシング (26)
【Fターム(参考)】