説明

衣類乾燥機用芳香性製品

【課題】
乾燥機あるいは乾燥機付き洗濯機に衣類とともに投入して衣類に好ましい芳香を繰り返し、付与することのできる衣類乾燥機用芳香性製品を提供すること。
【解決手段】
香料、溶剤を混合し、これをガス透過性フィルムの容器に充填、密封し、これを単独あるいはその外側に保護の目的で外部容器を設けた芳香具として乾燥機に衣類とともに投入することにより、衣類に芳香を容易に付与するとともに、数回〜十数回、繰り返し使用ができ、経済的である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣類乾燥機で衣類を加熱乾燥する際に、衣類とともに衣類乾燥機に投入して衣類に芳香を積極的に付与することのできる衣類乾燥機用芳香性製品に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の日本では体臭、タバコ臭、その他の生活臭といった「好ましくない臭い」が敬遠される傾向がますます強くなり、消臭、抗菌などを目的として消臭スプレー、抗菌・除菌グッズの利用が盛んである。一方で「好ましい匂い」を生活に積極的に取り入れ、生活を豊かにしようとする傾向は香水、コロンなどのフレグランス製品、室内芳香剤、アロマテラピーなどこちらも拡がりを見せている。
【0003】
こうした傾向は衣類の洗濯においても見られ、洗濯用洗剤、漂白剤、洗濯機の機能の強化により、汚れ、臭気をなるべく除去しようとする試みが継続して行われている。しかしながら、強度の異なるさまざまな種類の臭気の除去は時として難しく、残留する臭気が嫌われるケースもある。また、最近では一人暮らしの生活を営む人口が増えつつあり、その際、外出時は「室内干し」と呼ばれる室内での洗濯衣類の乾燥が一般的となっている。「室内干し」は「外干し」に比べ、周囲の湿度が高く、日光照射もほとんど無いので微生物が付着し、「室内干し」特有の臭気を生ずることが多い。こうした臭気を改善する方法として抗菌効果のある成分を添加したり、洗濯機の機能に抗菌効果を与える改善も行われている。一方、こうした臭気をマスキングするか、積極的に芳香を付与して洗濯後の芳香を楽しむ目的で洗剤、柔軟剤に香料を賦香することも普通に行われている。あるいは同様の目的で乾燥機そのものに衣類に香料を付与する装置を配備した提案もあるが、好ましい香気の強さをコントロールすることが容易でなく、特別な装置が必要であり、良い方法とはいえない(特許文献1、2および3)。また、香料の残香性を改善する方法がいくつか提案されている。例えば、包接能を有する化合物に香料を包接させ、粉末洗剤に混合し香料の安定化を図ろうとする提案(特許文献4、5、6および7)。あるいは、25℃での蒸気圧が0.13〜133Paを超える成分と0.13Pa未満の成分の重量比が10/90〜90/10となる香料混合物を吸油担体および熱可塑性を有する水溶性バインダーで特定嵩密度の香り粒子とする提案(特許文献8)、また、別の提案として1種または2種以上の乳化作用を有する物質で乳化した香料に解乳化作用を有する物質を共存させ、保存安定性の悪い香気成分が洗濯以前に揮散することを抑制する提案(特許文献9)、あるいは沸点が少なくとも約250℃およびClogPが少なくとも約3を有する成分、cis−ジャスモン、酢酸ジメチルベンジルカルビニル、エチルバニリンなど23成分およびそれらの混合物からなる群から選ばれる、耐久性香料成分を少なくとも約70%含む耐久性香料組成物および界面活性剤を含有する洗浄組成物の提案(特許文献10)、あるいは香料成分を反応性の高い成分と反応させ前香料成分として洗剤に配合し、布地表面に持続性のある臭気特性を付与する提案(特許文献11および12)がある。
【0004】
しかしながら、上記改善を行っても最近は全自動洗濯機による洗濯が主流であり、洗浄、脱水後、高温での乾燥を行うことが多く、洗濯時にせっかく衣類に付与された好ましい香気のほとんどが乾燥時に揮散し散逸することになるか、使用する香料成分に制限があり、好ましい香気あるいは香気のバリエーションを得ることができないという欠点を有している。また、乾燥時に芳香を付与する提案として、芳香成分を有するポプリを芳香袋に封入し、それを開閉機構を有するネット状の外袋で覆った乾燥機用の芳香具(特許文献13)があるが、香気の付与も十分でなく、香料成分を調合により自由に組み合わせて洗剤に好ましい香気を付与する方法には使用できない。
【0005】
【特許文献1】特開平5−161795号公報
【特許文献2】特開平7−68094号公報
【特許文献3】特表2005−527338号公報
【特許文献4】特許第2506887号公報
【特許文献5】特許第2617504号公報
【特許文献6】特許第2617507号公報
【特許文献7】特許第2749580号公報
【特許文献8】特開2004−250575号公報
【特許文献9】特開2005−8879号公報
【特許文献10】特表平11−504976号公報
【特許文献11】特表2004−532329号公報
【特許文献12】特表2003−519721号公報
【特許文献13】特開2002−95894号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、乾燥機あるいは乾燥機付き洗濯機に衣類とともに投入して衣類に好ましい芳香を繰り返し、付与することのできる衣類乾燥機用芳香性製品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、今回、驚くべきことに、(a)香料及び(b)溶剤からなる揮散性物質を含有する芳香組成物を、その一部あるいは全面を多層に積層したガス透過性フィルムの揮散面とする容器に充填することにより、25℃では実質的に香気放出がなく、加熱乾燥時に洗濯物に適度な芳香を付与でき、繰り返し使用できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
かくして、本発明は、(a)香料及び(b)溶剤からなる揮散性物質を含有する芳香組成物を、その一部あるいは全面をガス透過性フィルムの揮散面とする容器に充填してなる、25℃では実質的に香気放出がなく、加熱乾燥時に洗濯物に芳香を付与することを特徴とする衣類乾燥機用芳香性製品を提供するものである。
【0009】
本発明は、また、(b)溶剤がベンジルアルコール、ゲラニオール、3−メチル−3−メトキシブタノール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジアセテートおよびイソプロピルミリステートから選ばれる1種又は2種以上である前記の洗濯乾燥機用芳香性製品を提供するものである。
【0010】
本発明は、さらに、(a)香料及び(b)溶剤の割合が5/95〜95/5の範囲内である前記の洗濯乾燥機用芳香性製品を提供するものである。
【0011】
本発明は、さらに、ガス透過性フィルムがポリエチレン樹脂の単層フィルム、ポリプロピレン樹脂の単層フィルムおよび第1層がポリエチレン樹脂またはポリプロピレン樹脂であり、第2層がエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂であり、第3層がポリエチレン樹脂またはポリプロピレン樹脂である3層の積層フィルムから選択されるフィルムである前記に記載の洗濯乾燥機用芳香性製品を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、乾燥機に衣類とともに投入することにより衣類に好ましい芳香を効率的に付与することができる。また、乾燥機付き洗濯機の洗濯時に投与する場合でも洗浄時には香気の揮散がなく、乾燥時に香気が揮散し好ましい芳香を効率的に付与することができるという優れた特性を有する。また、香料の乾燥温度80℃付近でも香気の放出は緩慢で、使用するガス透過性フィルムの種類、厚さ等の選択により目的とする期間、繰り返し、使用することが出来るという優れた利点を有する。
【0013】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明の洗濯乾燥機用芳香性製品に含有される香料としては、例えば、レモン油、オレンジ油、ベルガモット油、イランイラン油、パチュリ油、シトロネラ油、レモングラス油、ボアドローズ油、チョウジ油、ユーカリ油、セダー油、ラベンダー油、ビャクダン油、ベチバー油、ゼラニウム油、ラブダナム油、ペパーミント油、ローズ油、ジャスミン油、リッツアキュベバ油などの天然源植物性精油、これらより分離されたゲラニオール、シトロネロール、オイゲノールなどの単離香料類;ムスク、シベット、アンバーグリス、カストリウムなどの天然源動物性香料類;フェニルエチルアルコール、ジヒドロミルセノール、ベンジルアセテート、バニリン、シンナミックアルデヒド、ヘリオトロピン、アニスアルコール、アニスアルデヒド、イオノン、シス−3−ヘキセノール、ベンジルアルコール、アミルシンナミックアルコール、ジメチルベンジルカルビニルアセテート、シンナミルアセテート、イソアミルサリシレート、メチルジヒドロジャスモネート、α−ピペロニルプロパナール、ゲラニルニトリル、シトロネリルニトリル、ヘキシルシンナミックアルデヒド、リリアール、シクラメンアルデヒド、γ−ウンデカラクトン、ベロネート、アンブロキサン、ガラクソライドなどの合成香料をあげることができる。その他香料化学総覧,1,2,3[奥田治著 廣川書店出版]、Perfume and flavor Chemicals,1,2[Steffen Arctander著]、”合成香料 化学と商品知識”[印藤元一著 化学工業日報社出版]、周知・慣用技術集(香料)第3部香粧品用香料、香料の事典[荒井綜一、小林彰夫、矢島泉、川崎通昭 朝倉書店]などに記載の天然香料、香料化合物を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0014】
本発明の衣類乾燥機用芳香性製品において使用する溶剤は本発明で使用するガス透過性フィルムと組み合わせた場合に、25℃で実質的に透過性がなく、加熱時適度な透過性があり、香料を一定時間揮散出来るものならば何でも良いが、ベンジルアルコール、ゲラニオール、3−メチル−3−メトキシブタノール(以下MMBと略す)、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(以下DEGMと略す)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(以下DEGEと略す)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(以下DPGMと略す)、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(以下TPGMと略す)、プロピレングリコールジアセテート(以下PDGAと略す)、イソプロピルミリステート(以下IPMと略す)はほとんどの香料と非常に高い相溶性を有するとともに本発明で使用するガス透過性フィルムに対し、25℃付近では透過性がほとんどなく、80℃付近での透過速度が適度であり、香料の劣化を抑え、香気のバランスを崩すことなく、一定時間、香気の透過が行えるため好ましい。また、溶剤および香料の混合物の減少は芳香具の残量が外側から目視できるという利点もある。これら溶剤は市販品として入手できる品質であればどんなものでもよく特に限定されない。室内芳香剤によく使用される溶剤であるイソパラフィンなどの炭化水素系溶剤はガス透過性フィルムを25℃付近でも非常によく透過するため、衣類乾燥機用芳香性製品には適さない。香料は通常、複雑な化合物の混合物として使用されることが多く、成分によっては25℃でガス揮散性フィルムを透過するものもあるが、上記の溶剤に溶解する場合にはほとんど透過することはない。
【0015】
本発明の衣類乾燥機用芳香性製品に使用する香料および溶剤の割合は5/95〜95/5の範囲内であれば良いが好ましくは10/90〜90/10の範囲内を挙げることができる。
【0016】
本発明の衣類乾燥機用芳香性製品において使用するガス透過性フィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム(以下、PEと略す)、ポリプロピレンフィルム(以下、PPと略す)等のオレフィン系樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETと略す)、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂フィルム(以下、EVAと略す)、ポリビニルアルコールフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、熱可塑性ポリウレタンフィルム、ポリメチルペンテンフィルムおよび、これらの共押出しフィルム、接着用樹脂を介したドライラミネーションまたはサンドラミネーションで貼り合わせた多層フィルムなどを挙げることができるが、上記の香料あるいは溶剤に対し、変形、溶解、剥がれなどのない、すなわち溶剤耐性があり、25℃では本発明の香料および溶剤を実質的に透過せず、加熱時にはこれらを香気が十分感じられる程度に透過し、一定時間、その透過が継続するガス透過性のある単独フィルムまたは積層フィルムならば何でもよい。また、香料、溶剤およびガス透過性フィルムの組み合わせにより、目的とする洗濯乾燥機用芳香性製品の使用回数や、香気の強さを調整することが可能であるが、使用するガス透過性フィルムに対する透過性が異なる2種以上の溶剤を組み合わせることにより、香料をバランスよく揮散させることができる。ポリエチレン樹脂の単層フィルム(PE)、ポリプロピレン樹脂の単層フィルム(PP)および第1層がポリエチレン樹脂またはポリプロピレン樹脂であり、第2層がエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂であり、第3層がポリエチレン樹脂またはポリプロピレン樹脂である3層の積層フィルム(以下、第1層と第3層がポリエチレン樹脂であり、第2層がエチレン−酢酸ビニル共重合体であるものをPE/EVA/PEと略し、第1層と第3層がポリプロピレン樹脂であり、第2層がエチレン−酢酸ビニル共重合体であるものをPP/EVA/PPなどと略す)は香料に対して良好な耐性があり、層の厚さを調整することにより香料の揮散放出速度を幅広く調整できるため、好ましい。特にPE/EVA/PEまたはPP/EVA/PPがさらに好ましい。
【0017】
本発明の衣類乾燥機用芳香性製品においてその一部あるいは全面をガス透過性フィルムの揮散面とする容器とは、例えば前記のガス透過性フィルムを矩形に裁断したもの2枚をその4辺のうちの3辺を接着し、開口部から香料組成物を充填した後、残る1辺を接着したもの、あるいはその1枚をガスバリアー性フィルムとしたもの、樹脂性容器に香料組成物を充填後、その開口部にガス透過性フィルムを接着し、密封したものなどを挙げることができるがこれらに限定されるものではない。また、洗濯機に投入し、衣類とともに洗浄あるいは乾燥中に機械的に受ける衝撃から前記容器を保護する目的で、前記容器の外側に球状あるいはその他の形状の比較的剛性のある外装容器を設けるとよい。外装容器は、例えば、プラスチック製の網目状のボールを挙げることができるが、内部に格納する内装容器の香気成分が自由に揮散でき、内装容器を保護し、洗浄あるいは乾燥により、外装容器自身が変形、溶解などの変化を受けない程度のものであればよく、着脱可能で、繰り返し使用できるものが望ましい。
【0018】
さらに、本発明の衣類乾燥機用芳香性製品には、例えば、脱臭剤、防虫剤、抗菌剤、布用柔軟剤(界面活性剤、有機シリコーン、脂肪酸エステル、脂肪酸、脂肪族アルコール等)、色素および抗酸化剤などの芳香製品に使用可能な成分を適宜配合することができる。
【0019】
本発明の一実施態様を例示すれば次のとおりである:香料、ヘキシレングリコール、ベンジルアルコールを混合し、これをPE/EVA/PEの3層フィルムの矩形の袋に充填し、密封した容器を保護ネットで挟んだ上、半球型の網目状プラスチック容器2つを合わせた中に格納した。このようにして得られる芳香具を乾燥機に衣類とともに投入し、通常の条件で乾燥を行うことにより、衣類に好ましい芳香を容易に付与することができ、洗濯後の芳香を楽しむことが出来る。また、上記芳香具は数回〜数十回、繰り返し使用ができ、経済的である。
【実施例】
【0020】
以下、実施例及び比較例を示して、本発明をより効果的に説明するが、これらは単なる例示であって、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【0021】
実施例1
揮散試験用芳香液の調製
揮散試験に使用する芳香液は下記の組成で各成分を混合、溶解することにより芳香液Aを調整した。
【0022】
芳香液A
香料No.9058 20
ヘキシレングリコール 60
ベンジルアルコール 20
合 計 100(重量%)
(注)香料No.9058(フローラルブーケ調香料組成物:長谷川香料社製)
揮散試験
実施例1で調製した芳香液Aの2gをPE/EVA/PEであるエコロフィン ピュアトーメ(オカモト株式会社製、登録商標、厚さ0.1mm)製の小袋(5cm×6cm)に充填し、密封した。これを楕円形の2枚の保護ネットで挟み、さらに壁面に網目状の通気孔を有する半球状プラスチック容器2つを合わせた球状中空体の中に格納し、球体を密着させた。こうして得られた球体の芳香具を25℃および80℃に設定した別々の強制排気式恒温器HISPEC HT210S(楠本化成製)に格納し、48時間まで芳香具全体の重量を測定することにより、芳香液のフィルム透過揮散量を算出した。
【0023】
図1は透過揮散量の経時変化を表したグラフである。25℃の強制排気式恒温器に格納した芳香具は8時間〜48時間経過後も全く、重量変化がなく、芳香液中の成分がフィルムを透過揮散することはなかった。一方、80℃の強制排気式恒温器に格納した芳香具は時間の経過とともに透過揮散が進行し、48時間後に芳香液の約98%が揮散した。通常、乾燥機による1回の乾燥は最大10時間程度と考えると、その範囲で上記芳香具は数回〜十数回繰り返し使用できることが確認された。
【0024】
実施例2
溶剤のPE/EVA/PEに対する透過性の確認
表1に示した16種類の溶剤または香料各2gをPE/EVA/PEであるエコロフィン ピュアトーメ製の小袋(5cm×6cm)に別々に充填し、密封した。こうして得られた芳香具を25℃および80℃に設定した別々の強制排気式恒温器に格納し、前者は72時間、後者は24時間まで芳香具全体の重量を測定することにより、溶剤または香料のフィルム透過揮散量を算出した。
16種類の溶剤または香料の透過揮散量の経時変化を示したのが表1である。
【0025】
【表1】

【0026】
PE/EVA/PEをガス透過フィルムとして使用した場合には、16種類の溶剤のうち、炭化水素系のIP−2028(出光興産社製)、リナロール、ターピネオールおよびエステル系のベンジルアセテートは25℃において24時間あるいは46時間経過後、透過揮散が確認された。さらに、80℃では上記の溶剤は3時間後に約半量〜全量が透過揮散し、特にIP−2028、ベンジルアセテートは透過揮散の度合いが大きかった。したがって、これら4種の溶剤は、使用前でも透過揮散が起こると共に80℃の透過速度が大きすぎて本発明の芳香具への使用には適さないと判断された。残りの12種類の溶剤は全て25℃では72時間までの試験で透過揮散が見られず、80℃では全ての溶剤の透過揮散が見られたが、EGおよびBGは揮散速度が小さすぎて、香料の透過揮散のための溶剤としては適さないと判断した。残り10種の溶剤は透過揮散速度が好ましい範囲にあり、香料と混合し、本発明の芳香具として繰り返し使用する場合にも適すると判断した。香料No.9058はそれ自身では25℃でも透過揮散することが確認されたが実施例7により、溶剤と混合した場合には25℃でも溶出がないことが確認された。
【0027】
実施例3
溶剤のPP/EVA/PP透過性の確認
PE/EVA/PE(厚さ0.1mm)をPP/EVA/PPであるエコロフィン スーパートーメ(オカモト株式会社製、登録商標、厚さ0.1mm)に代えるほかは実施例2と同様にして溶剤または香料のフィルム透過揮散量を算出した。
16種類の溶剤または香料の透過揮散量の経時変化を示したのが表2である。
【0028】
【表2】

【0029】
PP/EVA/PPをガス透過フィルムとして使用した場合も実施例3とほぼ同様な結果が得られた。したがって、16種類の溶剤のうち、炭化水素系のIP−2028、リナロール、ターピネオールおよびエステル系のベンジルアセテートは使用に適さないと判断された。残りの12種類の溶剤は全て25℃では72時間までの試験で透過揮散が見られず、80℃ではいずれの溶剤も透過揮散が見られたがEGおよびBGは揮散速度は小さすぎて、香料の透過揮散のための溶剤としては適さないと判断した。残り10種の溶剤は透過揮散速度が好ましい範囲にあり、繰り返し使用に適すると判断した。
【0030】
実施例4
溶剤のPEフィルム透過性の確認
PE/EVA/PE(厚さ0.1mm)を市販PE(厚さ0.1mm)に代えるほかは実施例2と同様にして溶剤または香料のフィルム透過揮散量を算出した。
16種類の溶剤または香料の透過揮散量の経時変化を示したのが表3である。
【0031】
【表3】

【0032】
PEをガス透過フィルムとして使用した場合も実施例2.3とほぼ同様な結果が得られた。したがって、16種類の溶剤のうち、炭化水素系のIP−2028、リナロール、ターピネオールおよびエステル系のベンジルアセテートは使用に適さないと判断された。残りの12種類の溶剤は全て25℃では72時間までの試験で透過揮散が見られず、80℃ではいずれの溶剤も透過揮散が見られたがEGおよびBGは揮散速度は小さすぎて、香料の透過揮散のための溶剤としては適さないと判断した。残り10種の溶剤は透過揮散速度が好ましい範囲にあり、繰り返し使用に適すると判断した。
【0033】
実施例5
溶剤のPPに対する透過性の確認
PE/EVA/PE(厚さ0.1mm)を市販PP(厚さ0.1mm)に代えるほかは実施例2と同様にして溶剤または香料のフィルム透過揮散量を算出した。
16種類の溶剤または香料の透過揮散量の経時変化を示したのが表4である。
【0034】
【表4】

【0035】
PPをガス透過フィルムとして使用した場合には、16種類の溶剤のうち、炭化水素系のIP−2028およびエステル系のベンジルアセテートは25℃において24時間経過後、透過揮散が確認された。一方、リナロールおよびターピネオールは25℃では透過揮散が見られなかった。しかしながら、80℃では上記の4種の溶剤は3時間〜6時間後にほぼ全量以上が透過起揮散した。したがって、これら4種の溶剤は、使用前での透過揮散が起こると共に80℃の透過速度が大きすぎて本発明の芳香具への使用には適さないと判断された。残りの12種類の溶剤は全て25℃では72時間までの試験で透過揮散が見られず、80℃ではいずれの溶剤も透過揮散が見られたが、EGおよびBGは揮散速度は小さすぎて、香料の透過揮散のための溶剤としては適さないと判断した。残り10種の溶剤は透過揮散速度が好ましい範囲にあり、繰り返し使用に適すると判断した。
【0036】
実施例6
溶剤のEVAに対する透過性の確認
PE/EVA/PE(厚さ0.1mm)を市販EVA(厚さ0.1mm)に代えるほかは実施例2と同様にして溶剤または香料のフィルム透過揮散量を算出した。
16種類の溶剤または香料の透過揮散量の経時変化を示したのが表5である。
【0037】
【表5】

【0038】
EVAをガス透過フィルムとして使用した場合には、16種類の溶剤のうち、IP−2028、リナロール、ターピネオール、ベンジルアセテート、DPGM、PGDA、MMB、ゲラニオール、ベンジルアルコールは25℃において24時間経過後、透過揮散が確認された。さらに、80℃では上記の溶剤は3時間〜6時間後に約半量〜全量が透過揮散し、したがって、これら9種の溶剤は、使用前に透過揮散が起こるとともに80℃での揮散速度が速すぎて使用に適さないと判断された。残りの7種類の溶剤は全て25℃では72時間までの試験で透過揮散が見られなかった。一方、80℃ではいずれの溶剤も透過揮散が見られ、実施例3〜6と比べると透過揮散速度が速く、EVA単独ではフィルムをさらに厚くするか、他の樹脂とともに積層フィルムとする必要があると判断した。
【0039】
実施例7
5種のガス揮散性フィルムの透過揮散性の比較(溶剤はヘキシレングリコール、ベンジルアルコールの混合物を使用)
芳香液Aを2g使用し、実施例2〜6で使用した5種のガス揮散性フィルムを使用するほかは実施例2と同様にして芳香液Aのフィルム透過揮散量を算出した。
芳香液の透過揮散量の経時変化を示したのが表6である。
【0040】
【表6】

【0041】
芳香液Aの溶剤としてヘキシレングリコール60%、ベンジルアルコール20%の混合物を使用した場合、EVA(0.1mm)では25℃、24時間経過後、芳香液Aの透過揮散が確認され、使用に適さないことが判明し、フィルムをさらに厚くするか、他のフィルムと共に積層フィルムとする必要がある。他の4種のフィルムは25℃では72時間までの試験で透過揮散が見られず、80℃ではいずれも透過揮散が好ましい範囲にあり、香料と混合し、本発明の芳香具として繰り返し使用する場合にも適すると判断した。
【0042】
比較例1
5種のガス揮散性フィルムの透過揮散性の比較(溶剤はIP−2028使用)
芳香液として下記芳香液Bの2gを使用するほかは実施例7と同様にして芳香液Bのフィルム透過揮散量を算出した。
【0043】
芳香液B
香料No.9058 20
IP−2028 80
合 計 100(重量%)
芳香液の透過揮散量の経時変化を示したのが表7である。
【0044】
【表7】

【0045】
芳香液Bに溶剤としてIP−2028(イソパラフィン系溶剤)を使用した場合には5種のフィルムのいずれも25℃、24時間経過後、芳香液の透過揮散が確認され、この組み合わせは使用に適さないことが判明した。
【0046】
実施例8
市販ドラム式洗濯乾燥機を用いた実用試験
市販の綿仕様フェイスタオル6枚(約500g)を用意し、家庭用市販ドラム式洗濯乾燥機NA−V62(松下電器社製)による実用試験を行った。洗濯工程、すなわち洗浄、すすぎ、脱水工程が約50分間、乾燥が約3時間を1サイクルとし、市販の洗濯用洗剤Aを25g、柔軟剤Aを7gおよび芳香具を1サイクルごとに洗浄工程開始時に投入して実用試験を行った。芳香具は実施例1で使用した芳香液Aの2gを市販PET(厚さ0.1mm)で出来た4cm×5cmの内装容器1に充填し、これをエコロフィン ピュアトーメ(オカモト株式会社製、登録商標、厚さ0.1mm)製の5cm×7cmの内装容器2中に密封し、さらに楕円形の2枚のネットで挟んだ。こうして得られた芳香具を、さらに壁面に網目状の通気孔を有する半球状プラスチック容器2つを合わせた球状中空体の中に収め、球体を密着させた。使用時にはガスバリアー性のあるPETフィルムの内装容器1を外部から押しつぶし、芳香液を浸出させ内装容器2を通じて外部に透過揮散できるようにしてから洗濯機に投入し、実験を開始した。
【0047】
上記の洗濯および乾燥の工程を15回繰り返し、1サイクル終了毎に芳香具内のフィルム製容器を取り出し、重量を測定の上、芳香液の揮散量を算出した。
【0048】
図2は洗濯乾燥時間と透過揮散量の関係を示すグラフである。計15回の試験により45時間までの実用試験を行ったが、グラフに見られるように透過揮散量は1回目、2回目はそれ以降に比べて揮散量がやや多いものの3回目以降はほぼ揮散量が一定の範囲に収まる形で、直線に近い安定したカーブを描いており、繰り返し使用する際、香気の付与が安定して行えることが確認された。
洗濯時の洗濯槽および乾燥後の乾燥槽から立ち上がる香気を確認し、洗濯乾燥後のフェイスタオルの香気強度を官能評価により判定した。
【0049】
【表8】

【0050】
表8に示したように洗剤、柔軟剤のみを使用し、芳香具による香気付与を行わない場合の評価結果2.5と比べて、芳香具を使用した1回目から15回目までの実用試験を行ったタオルは評価結果が4であり、十分、目的とする香気強度が付与されるとともに1回〜15回まで香気の質も変化がなく、安定した結果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】PE/EVA/PEを使用した場合の25℃、80℃における芳香液の透過揮散量の経時変化を表している。
【図2】実用試験による芳香液の透過揮散量の経時変化を表している。
【図3】球状の芳香具の概観を表わしている。
【図4】芳香液を充填したPE/EVA/PE製容器が保護ネットに挟まれたものである。
【図5】内装容器(PET、厚さ0.1mm、4cm×5cm)を外装容器(PE/EVA/PE、厚さ0.1mm、5cm×7cm)内に密閉したものである。
【符号の説明】
【0052】
1 外装容器である半球状プラスチック容器
2 芳香液を充填した内装容器を保護ネットで挟んだもの
3 芳香液を充填したPE/EVA/PE製の内装容器
4 内装容器を挟む保護ネット
5 内装容器2(PE/EVA/PE、厚さ0.1mm、5cm×7cm)
6 芳香液を充填した内装容器1(PET、厚さ0.1mm、4cm×5cm)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)香料及び(b)溶剤からなる揮散性物質を含有する芳香組成物を、その一部あるいは全面をガス透過性フィルムの揮散面とする容器に充填してなる、25℃では実質的に香気放出がなく、加熱乾燥時に洗濯物に芳香を付与することを特徴とする衣類乾燥機用芳香性製品。
【請求項2】
(b)溶剤がベンジルアルコール、ゲラニオール、3−メチル−3−メトキシブタノール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジアセテートおよびイソプロピルミリステートから選ばれる1種又は2種以上である請求項1に記載の洗濯乾燥機用芳香性製品。
【請求項3】
(a)香料及び(b)溶剤の割合が5/95〜95/5の範囲内である請求項1または2のいずれかに記載の洗濯乾燥機用芳香性製品。
【請求項4】
ガス透過性フィルムがポリエチレン樹脂の単層フィルム、ポリプロピレン樹脂の単層フィルムおよび第1層がポリエチレン樹脂またはポリプロピレン樹脂であり、第2層がエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂であり、第3層がポリエチレン樹脂またはポリプロピレン樹脂である3層の積層フィルムから選択されるフィルムである請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の洗濯乾燥機用芳香性製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−127689(P2008−127689A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−310710(P2006−310710)
【出願日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(000214537)長谷川香料株式会社 (176)
【Fターム(参考)】