説明

表示システム、及び、表示システムの制御方法

【課題】複数の表示ユニットを並べて一つの大型の画面を構成する場合に、表示ユニットの劣化や故障を速やかに発見し、容易に対応できるようにする。
【解決手段】マスタパネルユニット2及びパネルユニット3を並べて構成される表示装置10を備えた表示システム1において、各々のマスタパネルユニット2及びパネルユニット3において自己の消費電流を検出し、検出した消費電流に基づいて、自己の異常を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の表示ユニットを並べて構成される表示システム、及び、表示システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の表示ユニットを並べて一つの大型の画面を構成する手法が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、複数の画像表示部を並べて配設することで、大型の画面として機能するマルチディスプレイシステム装置を構成する場合に、各々の画像表示部に対し、表示データをそれぞれ入力するものが開示されている。このように複数の表示装置を並べて全体として一つの画面のように表示をさせることは、一般に、タイリング表示と呼ばれる。
【特許文献1】特開2001−275137号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、タイリング表示中に一部の表示ユニットに故障や劣化が生じると、色合いや輝度が他の表示装置と合わなくなって見た目に著しい違和感を生じたり、画像の一部が表示されなくなったりする。このため、タイリング表示をしている各表示ユニットの劣化や故障を速やかに検出することが求められるが、好適な手法はなかった。
そこで、本発明は、複数の表示ユニットを並べて一つの大型の画面を構成する場合に、表示ユニットの劣化や故障を速やかに発見し、容易に対応できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため、本発明は、表示パネルを有する複数の表示ユニットを並べて構成される表示装置を備えた表示システムにおいて、前記表示ユニットは、自己の消費電流を検出する電流検出部と、前記電流検出部により検出された消費電流に基づいて異常を検出する異常検出部と、前記異常検出部により自己の異常が検出された場合に、前記表示パネルにおける表示状態を変化させる表示調整部と、を備えること、を特徴とする表示システムを提供する。
この構成によれば、表示装置を構成する表示ユニットにおける故障や劣化等の異常を、その表示ユニットの消費電流に基づいて表示ユニット自体が検出し、この異常に応じて表示ユニット自体が表示状態を変化させる。このため、表示ユニット自体が、外部の装置に依存することなく、異常を検出するとともに異常に対応する処理を行うことができる。従って、表示装置を構成する表示ユニットの異常が生じた場合に、個々の表示ユニットが迅速に対応し、外部の装置を用いた特別な対応をしなくても表示装置の表示状態を良好に保つことができる。
【0005】
上記構成において、前記表示ユニットは、前記異常検出部により異常が検出された場合に、自己の異常を示す情報を送信する送信部を備え、前記表示装置は、前記表示ユニットから送信された異常を示す情報を受信して、前記表示ユニットに対して表示状態の変更の指示を送信する表示制御部を備え、前記表示パネルが備える前記表示調整部は、前記表示制御部から送信された指示に従って、前記表示パネルにおける表示状態を変化させるものとしてもよい。
この場合、表示ユニットが自己の異常を検出した場合に、異常を示す情報が表示制御部へ送信され、表示制御部において異常に対する対応を決定し、これを指示すると、表示ユニットが指示に従って表示パネルにおける表示状態を変化させる。このため、表示ユニット自体が、外部の装置に依存することなく、異常を検出するとともに異常に対応する処理を行うことができる。さらに、異常に対してどのように対応するかを表示制御部が決定できるので、例えば、複数の表示ユニットを協働させる等の複雑な対応処理を実行できる。これにより、異常の発生を速やかに検出して容易に対応することができ、かつ、異常に対して複雑できめ細かい対応を行うことができる。
【0006】
上記構成において、前記表示調整部は、前記表示パネルに流れる電流を増大又は減少させることにより、前記表示パネルの輝度を増大又は低下させるものとしてもよい。
この場合、表示ユニットの輝度が低下又は増大する異常が検出された場合に、表示パネルの輝度を変化させて異常を補償することができ、表示装置における表示ムラの原因となる輝度の異常を速やかに検出して解消し、良好な表示状態を保つことができる。
【0007】
また、上記課題を解決するため、本発明は、表示パネルを有する複数の表示ユニットを並べて構成される表示装置を備えた表示システムにおいて、前記表示ユニットは、消費電流を検出する電流検出部と、前記電流検出部により検出された消費電流に基づいて異常を検出する異常検出部と、前記異常検出部により自己の異常が検出された場合に、自己の異常を示す情報を送信する送信部と、を備え、前記表示装置は、前記表示ユニットから送信された異常を示す情報を受信して、前記表示装置の表示状態を変化させる表示制御部を備えること、を特徴とする表示システムを提供する。
この構成によれば、表示装置を構成する各々の表示ユニットが自己の異常を検出し、異常を検出した場合は異常を示す情報を送信し、この情報に応じて表示制御部が表示装置の表示状態を変化させる。このため、表示ユニットの異常を表示ユニット自体が速やかに検出できる。また、表示制御部において、表示装置を構成する各々の表示ユニットの異常に関する情報を受信して、対応することが可能になるため、個々の表示ユニットの状態を確実に管理できる。さらに、表示制御部によって、複数の表示ユニットの表示状態を変化させることで、表示ユニットの異常に対して、複雑で効果的な対応を行うこともできる。
【0008】
上記構成において、前記表示制御部は、前記表示装置において前記異常検出部によって検出された前記表示ユニットを識別するための識別表示を行わせるものとしてもよい。
この場合、表示装置を構成する複数の表示ユニットの中で異常を生じた表示ユニットがどれであるかを明確に視認できるので、表示ユニットの状態確認に加え、修理や交換等の作業を容易に行うことができる。
【0009】
上記構成において、前記表示制御部は、前記表示装置により前記識別表示を行わせる際に、自己の異常を示す情報を送信した前記表示ユニット自体、又は、その前記表示ユニットの周囲に位置する前記表示ユニットにおける表示状態を制御して、前記異常検出部によって検出された前記表示ユニットを識別可能にするものとしてもよい。
この場合、異常を生じた表示ユニット、又は、この表示ユニットの周囲に位置する表示ユニットの表示状態により、異常を生じた表示ユニットがどれであるかを識別できるので、表示ユニットの状態確認および修理や交換等の作業を容易に行うことができる。
【0010】
上記構成において、前記表示制御部は、前記異常検出部により検出された前記表示ユニットに表示される画像を補正することにより、前記表示パネルの輝度を増大又は低下させるものとしてもよい。
この場合、表示ユニットに表示される画像を補正することにより、表示パネルの輝度自体を調整する構成を用いることなく、表示パネルの輝度の異常を補償して、表示ムラの原因となる表示パネルの輝度の異常を解消できる。
【0011】
また、本発明は、複数の表示ユニットを並べて構成される表示装置を備えた表示システムを制御するための制御方法であって、各々の前記表示ユニットにおいて、消費電流を検出し、検出した消費電流に基づいて異常を検出し、異常があった場合に、自己の異常を示す情報を送信し、前記表示ユニットから送信された異常を示す情報に基づいて、前記表示装置の表示状態を変化させること、を特徴とする表示システムの制御方法を提供する。
この方法によれば、表示装置を構成する各々の表示ユニットが自己の異常を検出し、異常を検出した場合は異常を示す情報を送信し、この情報に応じて表示制御部が表示装置の表示状態を変化させる。このため、表示ユニットの異常を表示ユニット自体が速やかに検出できる。また、表示制御部において、表示装置を構成する各々の表示ユニットの異常に関する情報を受信して、対応することが可能になるため、個々の表示ユニットの状態を確実に管理できる。さらに、表示制御部によって、複数の表示ユニットの表示状態を変化させることで、表示ユニットの異常に対して、複雑で効果的な対応を行うこともできる。
【0012】
この制御方法を実現する制御プログラムは、フレキシブルディスクやハードディスク装置等の磁気的記録媒体、MO等の光磁気記録媒体、CD−R、CD−RW、DVD±R、DVD±RW、DVD−RAM等の光学式記録媒体、半導体記憶デバイスを用いた記憶装置等の各種記録媒体に、コンピュータによって読み取り可能な形式で記録された形態としてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、表示装置を構成する各々の表示ユニットが消費電流に基づいて自己の異常を速やかに検出することができ、この異常に対して容易に対応できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明を適用した実施形態に係る表示システム1の概略構成を示す図である。
表示システム1は、表示ユニットとしてのマスタパネルユニット2及びパネルユニット3をつなげて構成され、一つの表示画面として機能する表示装置10と、通信線11を介して表示装置10に接続されたホストコンピュータ4とを含んで構成される。
表示装置10は、少なくとも一つのマスタパネルユニット2と、1以上のパネルユニット3とを連結して構成され、本実施形態では、一つのマスタパネルユニット2と8つのパネルユニット3とを縦3列×横3列に並べて連結し、矩形の表示装置10を構成する場合を例に挙げる。
【0015】
図2は、マスタパネルユニット2及びパネルユニット3の構成を示す外観図であり、図2(A)はマスタパネルユニット2の構成を示し、図2(B)はパネルユニット3の構成を示し、図2(C)はマスタパネルユニット2とパネルユニット3との連結部分の構成を示す。
図2(A)に示すように、マスタパネルユニット2は、矩形の表示パネル27を、この表示パネル27とほぼ同サイズの矩形の筐体28に収めたものであり、マスタパネルユニット2の表面は、ほぼ全体が表示パネル27で覆われる。また、パネルユニット3は、図2(B)に示すように、矩形の表示パネル37を、表示パネル37とほぼ同サイズの矩形の筐体38に収めたものであり、パネルユニット3の表面は、ほぼ全体が表示パネル37で覆われる。筐体28と筐体38の外形形状及びサイズは揃えられているので、マスタパネルユニット2とパネルユニット3とを縦横方向に並べて連結できる。
【0016】
また、図2(A)〜(B)に示すように、マスタパネルユニット2は、それぞれ上下左右の各辺の方向を向けて配設された4つのインタフェース26を備えている。パネルユニット3も同様に、それぞれ上下左右の各辺の方向を向けて配設された4つのインタフェース35(接続部)を備えている。マスタパネルユニット2とパネルユニット3とが隣り合う場合は、インタフェース26とインタフェース35とが接続され、パネルユニット3どうしが隣り合う場合はインタフェース35どうしが接続される。
インタフェース26及びインタフェース35の具体的な構成としては、例えば図2(C)に拡大して示すように、凹部と凸部とが並ぶコネクタを備え、対向するコネクタを噛み合わせることで後述するデータバス等が相互に接続される構成が挙げられる。図2(C)の例ではインタフェース26、35が備えるコネクタは同一形状であり、その向きに対して右側に凹部、左側に凸部が位置するよう配設されているので、向かい合うコネクタどうしの凹部と凸部とが常に対向する。図2(C)にはインタフェース26、35を接続する例を示したが、インタフェース35どうしを接続する場合も全く同様である。
【0017】
表示パネル27、37としては、例えば、有機EL(Electro Luminescence)パネルが挙げられる。有機ELパネルはバックライト等を必要としないため薄型化が可能であり、壁面に貼り付けるように設置する用途には特に好適である。なお、マスタパネルユニット2及びパネルユニット3に、液晶表示パネル、プラズマディスプレイパネル、FED(Field Emission Display)パネル(SED:Surface-conduction Electron-emitter Displayパネルを含む)、LED(発光ダイオード)ディスプレイ等の各種のフラットパネルディスプレイや、電子ペーパー等を用いることも可能であり、CRT(Cathode Ray Tube)を用いることも不可能ではない。
【0018】
また、マスタパネルユニット2は、図2(A)に示すように、四隅にそれぞれホスト接続用インタフェース25を備えている。ホスト接続用インタフェース25は、図1に示すように通信線11を介してホストコンピュータ4に接続されるインタフェースである。マスタパネルユニット2は4個のホスト接続用インタフェース25を備えているが、いずれか一つのホスト接続用インタフェース25がホストコンピュータ4に接続されればよいので、表示装置10の設置状態に応じて最も通信線11を接続しやすいホスト接続用インタフェース25を選択できるようになっている。
通信線11は、例えばIEEE標準802.3、IEEE802.11等により規定される有線又は無線の通信回線であり、この通信線11を用いて、ホストコンピュータ4とマスタパネルユニット2とは有線LAN(または無線LAN)を構成する。
【0019】
図3は、マスタパネルユニット2及びホストコンピュータ4の構成を示す機能ブロック図である。また、図4はパネルユニット3の構成を示す図であり、図4(A)はパネルユニット3の機能ブロック図、図4(B)はインタフェース35の構成図である。
図3に示すように、マスタパネルユニット2が備える4つのインタフェース26は、それぞれ設置方向が指定され、上方向インタフェース26A、右方向インタフェース26B、下方向インタフェース26C、及び左方向インタフェース26Dとなっている。マスタパネルユニット2は、上方向インタフェース26Aが上、右方向インタフェース26Bが右、下方向インタフェース26Cが下、左方向インタフェース26Dが左になるよう設置する必要があり、例えばマスタパネルユニット2の裏面には、施工業者等が設置方向を確認できるように、設置方向を示す文字や記号が付されている。
また、図4に示すように、パネルユニット3が備える4つのインタフェース35は、パネルユニット3の4辺に対応する方向を向いて配設され、それぞれ、A方向インタフェース35A、B方向インタフェース35B、C方向インタフェース35C、及びD方向インタフェース35Dとなっている。これら4つのインタフェース35の設置時における方向は任意である。つまり、A〜Dの方向が実際にどの方向を向くかは任意であり、例えば、図4とは逆にA方向インタフェース35Aが下を向くようにパネルユニット3を設置してもよい。
【0020】
マスタパネルユニット2は、表示パネル27における表示処理とともに表示装置10全体の制御を行う制御部20を備えている。制御部20は、CPU21と、CPU21により実行される各種制御プログラム及びこれら制御プログラムに係るデータを記憶したROM22と、CPU21により実行されるプログラム及び処理されるデータ等を一時的に格納するRAM23と、CPU21の処理により生成されたデータ等を不揮発的に記憶する不揮発性メモリ24とを備える。
制御部20は、上方向インタフェース26A、右方向インタフェース26B、下方向インタフェース26C及び左方向インタフェース26Dに個別に接続され、これら4つのインタフェース26を区別して、個々のインタフェース26に対して情報を入出力する。また、制御部20には、マスタパネルユニット2の四隅に配設された4つのホスト接続用インタフェース25が接続されている。さらに、CPU21は4つのホスト接続用インタフェース25に接続され、これらホスト接続用インタフェース25を介してホストコンピュータ4との間で制御情報や画像データ等を送受信する。
不揮発性メモリ24には、マスタパネルユニット2に特有の識別情報としてのIDが記憶されている。本実施形態では、一例として、マスタパネルユニット2に16進数のID(=FF)が付与されており、CPU21は、インタフェース26に接続されたパネルユニット3や、ホスト接続用インタフェース25に接続されたホストコンピュータ4に対し、不揮発性メモリ24に記憶しているID(=FF)を出力する。
また、制御部20は、マスタパネルユニット2が消費する消費電流を検出して、検出した電流量をCPU21に出力する電流検出部60と、CPU21の制御に従って表示パネル27に流れる電流を調整する表示調整部としての電流調整回路65とを備えている。これら電流検出部60及び電流調整回路65の詳細な構成については後述する。
【0021】
パネルユニット3は、図4(A)に示すように、表示パネル37における表示処理等を行う制御部30を備えている。制御部30は、CPU31と、CPU31により実行される各種制御プログラム及びこれら制御プログラムに係るデータを記憶したROM32と、CPU31により実行されるプログラム及び処理されるデータ等を一時的に格納するRAM33と、CPU31の処理により生成されたデータ等を不揮発的に記憶する不揮発性メモリ34とを備える。
制御部30は、A方向インタフェース35A、B方向インタフェース35B、C方向インタフェース35C、及びD方向インタフェース35Dに個別に接続され、これら4つのインタフェース35を区別して、個々のインタフェース35に対して信号の送受信等を行える。
また、不揮発性メモリ34は、後述する処理において、パネルユニット3に対して付与された固有の識別情報としてのIDを記憶する。一つの表示装置10を構成する各パネルユニット3には、それぞれ異なるIDが付与され、CPU31は、必要に応じて、インタフェース35に接続されたマスタパネルユニット2や他のパネルユニット3に、不揮発性メモリ34に記憶しているIDを出力する。
さらに、制御部30は、パネルユニット3が消費する電流を検出して、検出した電流量をCPU31に出力する電流検出部60と、CPU31の制御に従って表示パネル37に流れる電流を調整する電流調整回路65とを備えている。これら電流検出部60及び電流調整回路65の詳細な構成については後述する。
【0022】
図4(B)には、表示装置10における全てのインタフェース26、35に共通する構成を示す。この図4(B)に示すように、インタフェース26、35は、2本の電源供給ライン(Vcc)に加え、制御情報通信用バスと、マスタパネルユニット2及びパネルユニット3により表示するための画像データを送信するための画像配信用バスを有する。制御情報通信用バスは、マスタパネルユニット2とパネルユニット3との間、及び、パネルユニット3同士の間で、設定等に関する制御情報を送受信するためのデータ線(data)、及び、同期用のクロック信号線(CLK)により構成される。また、画像配信用バスは、マスタパネルユニット2及びパネルユニット3において表示すべき画像の画像データを送受信するためのデータ線(D+、D−)、及び、同期用のクロック信号線(CLK)により構成される。なお、インタフェース26、35の電源ライン、データ線及びクロック信号線の間には適宜接地線(GND)が配置される。
制御部20は、各インタフェース26の制御情報通信用バスを介した制御情報の入出力、及び、画像配信用バスを介した画像データの入出力を行う。同様に、制御部30は、各インタフェース35の制御情報通信用バスを介した制御情報の入出力、及び、画像配信用バスを介した画像データの入出力を行う。
【0023】
図5は、電流検出部60及び電流調整回路65の構成を示す図であり、図5(A)は電流検出部60の構成を示し、図5(B)は電流調整回路65の構成を示す。
この電流検出部60及び電流調整回路65は、マスタパネルユニット2及びパネルユニット3の両方に配設され、その構成及び機能は共通である。
図5(A)に示す電流検出部60は、入力される電流量を測定する電流測定回路61と、電流測定回路61における測定値をデジタルデータとして出力するA/Dコンバータ63とを備えている。電流測定回路61は供給される電流量の総和を測定し、測定値をA/Dコンバータ63へ出力する。ここで、電流測定回路61はアナログ電圧値として測定値を出力するので、電流測定回路61の出力端とA/Dコンバータ63の入力端との間にはダイオード62が介設されている。A/Dコンバータ63は、電流測定回路61が出力したアナログ電圧値としての測定値を量子化して、デジタルデータとして出力する。
制御部20に配設された電流検出部60では、電流測定回路61は、図4(B)に示すように4つのインタフェース26が各々備える2本の電源供給ライン(Vcc)からマスタパネルユニット2に供給される電流量の総和を測定し、この測定値はA/Dコンバータ63によりデジタルデータに変換されてCPU21に出力される。また、制御部30に配設された電流検出部60では、電流測定回路61により、4つのインタフェース35が各々備える2本の電源供給ライン(Vcc)からパネルユニット3へ供給される電流量の総和が測定され、この測定値がA/Dコンバータ63によりデジタルデータに変換されてCPU31に出力される。
【0024】
また、図5(B)に示す電流調整回路65には、表示パネル27が備える表示体27A又は表示パネル37が備える表示体37Aへ供給される電流が、図中矢印のように入力される。電流調整回路65は、CPU21又はCPU31の制御により抵抗値が変化する可変抵抗として機能し、表示体27A、37Aへ供給する電流を適宜制限する。この電流調整回路65により、例えば、あるパネルユニット3において、表示パネル37の表示体37Aの消費電流を通常時よりも多くして、表示パネル37の輝度を高めることができる。
ここで、表示体27A、37Aとは、電流を消費して表示パネル27、37における表示を実現する素子又は構成を指し、例えば、表示パネル27、37が有機ELパネルで構成される場合は、有機材料で構成される個々の表示素子を指す。
【0025】
一方、図3に示すように、ホストコンピュータ4は、CPU41、CPU41により実行される各種制御プログラム及びこれら制御プログラムに係るデータを記憶したROM42、CPU41により実行されるプログラム及び処理されるデータ等を一時的に格納するRAM43、CPU41の処理により生成されたデータ等を記憶する記憶部44、ユーザやオペレータによる入力操作を受け付ける入力部45、入力部45により入力された内容やCPU41による処理結果等を表示する表示部46、通信線11を介してマスタパネルユニット2との間で各種情報や制御情報等を送受信する通信インタフェース47を備え、これらの各部はバス48を介して相互に接続されている。
【0026】
ホストコンピュータ4が備える記憶部44は、磁気的、光学的記録媒体、或いは半導体記憶素子を用いて構成される記憶装置であり、初期設定プログラム44A、パネル配置情報44B、画像データ分割表示プログラム44C、及び、データ配信プログラム44Dを含む各種プログラムやデータを記憶する。
初期設定プログラム44Aは、マスタパネルユニット2及びパネルユニット3をつなげて表示装置10を新規に設置した場合や、表示装置10の構成を変更した場合等に、表示装置10におけるマスタパネルユニット2及びパネルユニット3の配置状態を検出するために実行されるプログラムである。
初期設定プログラム44AがCPU41により実行されると、ホストコンピュータ4とマスタパネルユニット2及びパネルユニット3の機能により、表示装置10におけるパネルユニット3の各々に固有のIDが付与され、パネル配置情報44Bが生成される。
また、画像データ分割表示プログラム44Cは、一つの画像を表示装置10の構成に合わせて分割し、マスタパネルユニット2及び各パネルユニット3に表示する画像データを生成するために実行されるプログラムであり、データ配信プログラム44Dは、画像データや制御情報等をマスタパネルユニット2及びパネルユニット3に個別に送信するために実行されるプログラムである。
【0027】
例えば図6に示すように、パネル配置情報44Bは、表示装置10におけるマスタパネルユニット2及びパネルユニット3の位置と、各々のマスタパネルユニット2及びパネルユニット3のIDとを対応づける情報である。また、パネル配置情報44Bには、表示装置10の構成に、表示装置10の上下左右の方向を対応づける情報も含まれている。このため、図6に例示するパネル配置情報44Bから、マスタパネルユニット2が表示装置10の下端に配置され、マスタパネルユニット2の左右にパネルユニット3が配置され、その上に2列のパネルユニット3が配置されて、全体として縦3列×横3列に並ぶ9個のパネルユニットで表示装置10が構成されていることが示される。
【0028】
図7は、表示装置10に画像を表示する処理を説明する図であり、図7(A)は表示装置10に画像を表示した状態を示し、図7(B)は表示用の画像データの送信状態を模式的に示す図である。
表示装置10において表示する画像の画像データは、ホストコンピュータ4が有するCPU41の処理により、マスタパネルユニット2及びパネルユニット3毎に生成される。例えば図7(A)に示すように、ホストコンピュータ4は、表示用の画像Pを、表示装置10を構成するパネルユニットの数に合わせて、例えば9個の部分に分割し、分割した部分毎に表示用の画像データを生成して送信する。これにより、分割された画像が各々のマスタパネルユニット2及びパネルユニット3により表示され、表示装置10全体を使って一つの画像Pが表示される。各画像データには、その画像データを表示するパネルユニットのIDが付加されている。
【0029】
ここで、マスタパネルユニット2及びパネルユニット3が実行する転送機能について説明する。表示装置10において、ホストコンピュータ4はマスタパネルユニット2にのみ接続されているので、マスタパネルユニット2から各パネルユニット3へ画像データを送信したり、パネルユニット3からホストコンピュータ4へ制御情報を送信したりする場合、制御情報や画像データ等を、マスタパネルユニット2やパネルユニット3によって中継(転送)する必要がある。そこで、マスタパネルユニット2及びパネルユニット3は、制御情報や画像データ等を転送する機能を備えている。
マスタパネルユニット2は、ホストコンピュータ4から通信線11を介して制御情報や画像データ等を受信した場合、受信した制御情報や画像データ等に宛先として付加されたIDを参照する。そして、宛先のIDが自己のIDであれば、この制御情報や画像データをRAM23に一時的に格納し、CPU21によって処理を行い、例えば、受信した画像データに基づく描画処理を実行して表示パネルに画像を表示する。
【0030】
一方、通信線11を介して受信した制御情報や画像データ等に宛先として付加されたIDが自己のIDでない場合、マスタパネルユニット2は、パネルユニット3が接続されている全てのインタフェース26から、上記の制御情報や画像データ等を出力する。
なお、マスタパネルユニット2が、パネルユニット3に付与されているIDと、そのIDを有するパネルユニット3がどのインタフェース26の側に接続されているかを対応づける情報を有しており、パネルユニット3に転送すべき制御情報や画像データ等を受信した場合に、その制御情報や画像データ等を、どのインタフェース26から出力すべきかを特定できるようにしてもよい。
【0031】
パネルユニット3は、いずれかのインタフェース35から入力された制御情報や画像データ等を転送する機能を有する。パネルユニット3は、4つのインタフェース35のうち、マスタパネルユニット2に直接又は他のパネルユニット3を介して接続されたインタフェース35と、次のIDを有するパネルユニット3に接続されたインタフェース35とを特定する情報を、不揮発性メモリ24に記憶している。
いずれかのインタフェース35から制御情報や画像データ等が入力された場合、パネルユニット3は、その宛先のIDを判別する。そして、このIDがマスタパネルユニット2に特有のID(例えば、16進数のFF)であれば、入力された制御情報や画像データ等を、マスタパネルユニット2に接続されたインタフェース35から出力する。
また、宛先のIDが自己以外のパネルユニット3のIDであった場合、パネルユニット3は、入力された制御情報や画像データ等を、次のIDを有するパネルユニット3に接続されたインタフェース35から出力する。入力された制御情報や画像データ等の宛先のIDが自己のIDと一致した場合、パネルユニット3は、入力された制御情報や画像データ等をRAM33に格納して、CPU31によって処理する。
【0032】
このようにして、ホストコンピュータ4からパネルユニット3へ宛てて送信された制御情報や画像データ等は、図7(B)に示すように、マスタパネルユニット2からパネルユニット3へ転送され、IDの順に各々のパネルユニット3により転送され、宛先のパネルユニット3へ届く。また、パネルユニット3からホストコンピュータ4又はマスタパネルユニット2へ宛てて送信された制御情報等は、IDの順とは逆の順で各々のパネルユニット3により転送され、マスタパネルユニット2により受信される。
なお、例えば図7(B)のパネルユニット3(ID=05)は、次のIDを有するパネルユニット3に接続されていない。このようなパネルユニット3は、初期設定動作時に転送先がないことが設定され、自己のIDとは異なる宛先が付加された制御情報や画像データは、転送せず全て破棄する。
【0033】
このように、表示装置10においては、マスタパネルユニット2及びパネルユニット3の間で制御情報や画像データを転送することで、ホストコンピュータ4とマスタパネルユニット2及びパネルユニット3が、個々に画像データや制御情報を送受信できる。
ところで、表示装置10を構成するマスタパネルユニット2及びパネルユニット3は、いずれも電流検出部60を内蔵しており、自己が消費する電流を検出できる。そして、マスタパネルユニット2及びパネルユニット3は、電流検出部60により検出した消費電流に基づいて、自己に故障や劣化が生じているか否かを判定する機能を有する。
ここで、マスタパネルユニット2及びパネルユニット3の劣化とは、表示パネル27、37の表示状態が通常時から変化しており、修正を要する状態を指し、故障とは修正できない程度の変化を生じた状態を指す。
以下、劣化・故障を検出する機能について詳細に説明する。
【0034】
図8は、故障診断用の消費電流値参照テーブル60Aの構成例を示す図である。
この図8に例示する消費電流値参照テーブル60Aには、表示パネル27、37に表示される消費電流測定用のテストパターン毎に、表示用の画像データの内容、テストパターン表示時の標準的な電流値を示す標準電流値、及び、故障を判定する基準となる電流値を示す故障基準値が対応づけて設定されている。この消費電流値参照テーブル60Aを用いて故障の有無を判定する場合、例えば、テストパターン用の画像データに基づいて、表示パネル27、37にテストパターンを表示させ、この表示中の電流値を測定し、測定値を故障基準値と比較すればよい。
消費電流値参照テーブル60Aは、制御部20が有するROM22、及び、制御部30が有するROM32に格納され、CPU21、31により参照可能となっている。
【0035】
例えば、マスタパネルユニット2において表示パネル27の故障診断を行う場合、CPU21は、消費電流値参照テーブル60Aに設定されたテストパターンとして、画像データ(R,G,B)=(255,255,255)に従って表示パネル27全体に白を表示させ、このときの電流量を電流検出部60により測定させる。そして、CPU21は、測定された電流値が消費電流値参照テーブル60Aの故障基準値(1200mA(ミリアンペア)以上、800mA以下)に該当するか否かを判別することにより、自己が故障しているか否かを判定する。同様に、CPU21は、表示パネル27の全面に赤、緑、青、黒をそれぞれ表示する各テストパターンの表示を行わせて、その表示中の電流値を電流検出部60によって測定させ、消費電流値参照テーブル60Aの故障基準値と比較対照することで故障の有無を判定する。
【0036】
有機ELパネル、液晶パネル、プラズマディスプレイパネル等の各種表示パネルは、フルカラー表示を行うため、赤、青、緑の3原色に対応する表示体を制御して画像を表示する。そこで、表示パネル27、37の全面を赤、青、緑、白にした状態で電流検出部60により消費電流を測定すると、赤の表示体だけ発色させた状態、青の表示体だけ発色させた状態、緑の表示体だけ発色させた状態、全ての表示体を発色させた状態の各々の消費電流を測定することになる。
このため、消費電流値参照テーブル60Aのテストパターンを用いれば、表示体の色毎の消費電流をもとに劣化や故障を確実に判定できる。
また、マスタパネルユニット2又はパネルユニット3の内部回路において短絡型(ショート等)の故障が発生した場合には、表示用に必要な電流量を超えて消費電流が増大することがある。この故障は、通常時に最も消費電流が低くなる状態、すなわち表示パネル27、37の全面に黒を表示した状態における消費電流が通常状態よりも大きいかどうかをもとに、検出できる。つまり、消費電流値参照テーブル60Aに設定された全画面を黒とするテストパターンを表示し、電流検出部60によって消費電流を測定し、この消費電流が故障基準値(100mA以上)に該当するか否かを判定することで、短絡型の異常を検出できる。
【0037】
また、例えば有機ELパネルのように電流駆動型発光素子を表示体として用いる場合には、消費電流と画面の輝度との間に比例関係が存在する。例えば、赤の表示体(発光素子)の劣化により、赤の表示体の輝度が本来の輝度に達しなくなっている場合、全面に赤を表示した状態の消費電流が通常より低くなる。
従って、表示体の色毎の消費電流および白表示時の消費電流と、消費電流値参照テーブル60Aに定められた標準電流値とを比較することで、表示体の色毎の輝度低下及び全体的な輝度の低下を検出することが可能となる。
具体的には、全画面を赤とするテストパターンを表示している間の消費電流の測定値と、標準電流値とを比較し、測定値が標準電流値より大きければ、通常の好ましい状態よりも輝度が増大していると判定し、測定値が標準電流値より大きければ、通常の好ましい状態よりも輝度が低下していると判定する。この輝度の増大または低下が生じた場合は、制御部20、30が備える電流調整回路65において、表示パネル27、37に流れる電流を減少または増大させることで、劣化により生じた輝度変化を補償するように、表示パネル27、37の輝度を意図的に低下または増大させればよい。
【0038】
図9は、表示システム1における異常検出処理を示すフローチャートである。この図9に示す劣化・故障検出処理は、ホストコンピュータ4がマスタパネルユニット2に対して指示を行うことで、開始される。なお、この異常検出処理の実行時、マスタパネルユニット2及びパネルユニット3のCPU21、31は、異常検出部および送信部として機能する。
【0039】
異常検出処理では、まず、ホストコンピュータ4からマスタパネルユニット2に対して異常検出の開始が指示され、この指示に従ってマスタパネルユニット2から全てのパネルユニット3に対して異常検出の開始が指示される(ステップS11)。この指示に従い、マスタパネルユニット2及び全てのパネルユニット3において、CPU21、31が消費電流値参照テーブル60Aを読み出して、設定されたテストパターンを表示パネル27、37に表示させるとともに、表示中の消費電流を電流検出部60によって測定する(ステップS12)。
続いて、マスタパネルユニット2及びパネルユニット3が有するCPU21、31は、それぞれ、電流検出部60により測定されたテストパターン毎の測定値を、消費電流値参照テーブル60Aの故障基準値と比較し(ステップS13)、いずれかのテストパターンの測定値が故障基準値に該当しているか否かを判定する(ステップS14)。
【0040】
ここで、測定値が故障基準値に該当する場合(ステップS14;Yes)、CPU21、31は故障が発生したものと判定する(ステップS15)。ここで、パネルユニット3においてCPU31が故障発生と判定した場合は、マスタパネルユニット2に対して故障発生を示す制御情報を送信する(ステップS16)。この場合、マスタパネルユニット2は、パネルユニット3から送信された制御情報を受信して、故障したパネルユニット3のIDを含む情報をRAM23に一時的に記憶する。
また、マスタパネルユニット2においてCPU21が故障発生と判定した場合は、自己が故障したことを示す情報を生成して、RAM23に記憶する。
その後、表示システム1の動作はステップS20へ移行する。
【0041】
一方、各テストパターン表示時における電流検出部60の測定値が、故障基準値に該当しない場合(ステップS14;No)、CPU21、31は、電流検出部60の測定値と、消費電流値参照テーブル60Aの標準電流値とを比較して、劣化の程度を判定する(ステップS17)。この劣化の程度とは、例えば、上述した輝度の増大または低下である。
そして、CPU21、31は、劣化の程度をもとに、劣化の影響を補償する補正が必要か否かを判定し(ステップS18)、補正が必要ないと判定した場合は、ステップS20へ移行する。
一方、補正が必要であると判定した場合(ステップS18;Yes)、劣化を示す制御情報をマスタパネルユニット2へ送信する(ステップS19)。この場合、マスタパネルユニット2は、パネルユニット3から送信された制御情報を受信して、劣化したパネルユニット3のIDを含む情報をRAM23に一時的に記憶する。また、マスタパネルユニット2においてCPU21が、補正が必要であると判定した場合は、自己が劣化したことを示す情報を生成して、RAM23に記憶する。
その後、表示システム1の動作はステップS20へ移行する。
【0042】
ステップS20では、マスタパネルユニット2のCPU21が、劣化したマスタパネルユニット2又はパネルユニット3のID、及び、故障したマスタパネルユニット2又はパネルユニット3のIDを含む情報をホストコンピュータ4へ送信する。
この情報を受信したホストコンピュータ4は、故障したマスタパネルユニット2又はパネルユニット3のIDを記憶するとともに、劣化したマスタパネルユニット2又はパネルユニット3に対応して行うべき処理を決定する(ステップS21)。
そして、ホストコンピュータ4は、決定した処理を実行するために必要な指示を含む制御情報を、マスタパネルユニット2及びパネルユニット3に対して送信し(ステップS18)、本処理を終了する。
【0043】
ここで、ステップS21(図9)でホストコンピュータ4が決定する対応処理は、例えば、以下の(1)〜(3)の処理である。
(1)特定のマスタパネルユニット2又はパネルユニット3において、全面に白を表示した場合の消費電流が他のマスタパネルユニット2及びパネルユニット3より低い場合は、そのマスタパネルユニット2又はパネルユニット3において、電流調整回路65によって消費電流を上昇させる。
(2)特定のマスタパネルユニット2又はパネルユニット3において、全面に白を表示した場合の消費電流が他のマスタパネルユニット2及びパネルユニット3より低い場合は、それ以外のマスタパネルユニット2及びパネルユニット3において、電流調整回路65によって消費電流を減少させる。
(3)特定のマスタパネルユニット2又はパネルユニット3において、全面に赤、青、緑のいずれかを表示した場合の消費電流が他のマスタパネルユニット2及びパネルユニット3より低い場合は、そのマスタパネルユニット2又はパネルユニット3に対して出力する画像データを補正する。全面赤表示時の消費電流が低い場合は、画像データを、赤成分の輝度が向上するよう補正する。同様に、全面青表示時の消費電流が低い場合は、青成分の輝度が向上するよう画像データを補正し、全面緑表示時の消費電流が低い場合は、緑成分の輝度が向上するよう画像データを補正する。具体的には、画像データのRGB成分の値そのものを変化させてもよいし、ガンマ値を調整してもよい。
【0044】
上記の(1)〜(3)の処理のうち、(1)及び(2)は、ホストコンピュータ4からマスタパネルユニット2又はパネルユニット3へ制御情報を送信し、そのマスタパネルユニット2又はパネルユニット3において、CPU21、31の制御のもとに電流調整回路65を調整すれば、容易に実現できる。また、(3)の処理を実行する場合は、ホストコンピュータ4から該当するマスタパネルユニット2又はパネルユニット3へ送信する画像データを、ホストコンピュータ4において補正すればよい。
(1)及び(2)の処理では、表示パネル27、37の輝度変化と消費電流の変化との対応(比例関係)を示すデータがホストコンピュータ4に設定され、このデータに基づいて、ホストコンピュータ4がマスタパネルユニット2及びパネルユニット3に制御情報を送信すればよい。
また、表示パネル27、37の表示体27A、37Aに電力を供給する回路が表示色毎に設けられており、電流調整回路65が、表示色毎の供給電流を調整できる構成となっている場合には、ホストコンピュータ4からマスタパネルユニット2及びパネルユニット3へ送信する制御情報により、色毎に電流を調整するよう指示することが好ましい。
【0045】
同様に、(3)の処理では、表示パネル27、37の輝度変化と画像データ(RGB別の輝度データ又はガンマ値)の変化との対応を示すデータがホストコンピュータ4に設定され、このデータに基づいて、ホストコンピュータ4がマスタパネルユニット2又はパネルユニット3に制御情報を送信すればよい。さらに、上記(3)の処理において、劣化したマスタパネルユニット2又はパネルユニット3を除き、全てのマスタパネルユニット2及びパネルユニット3に出力される画像データを補正してもよい。この場合も、表示装置10における表示状態のムラを防止できる。
【0046】
このように、表示装置10において、いずれかのマスタパネルユニット2又はパネルユニット3が劣化して、輝度の低下等が生じた場合は、輝度が低下したマスタパネルユニット2又はパネルユニット3の輝度を向上させ、或いは、他のマスタパネルユニット2及びパネルユニット3の輝度を低下させることで、表示装置10全体の表示状態のばらつきを解消し、均質で良好な表示を行える。
図9に示す故障検出処理は、ホストコンピュータ4からマスタパネルユニット2及びパネルユニット3に制御情報を送信することによって開始されてもよいが、例えば、1日に1回、予め設定された時刻にマスタパネルユニット2及びパネルユニット3が自律的に故障検出処理を開始してもよいし、表示装置10の起動時に故障検出処理が開始されるものであってもよい。
【0047】
表示装置10を構成するマスタパネルユニット2又はパネルユニット3が故障した場合、ホストコンピュータ4の制御により、表示装置10において、マスタパネルユニット2又はパネルユニット3の修理や交換の作業が容易になるよう故障識別用表示が行われる。
図10(A)〜(C)は、故障識別用表示の例を示す図である。これら図10(A)〜(C)に示す故障識別用表示は、通常動作時には表示されない。例えばホストコンピュータ4の入力部45により、メンテナンス用モードへの移行を指示する入力が行われた場合に、表示装置10の表示が通常表示から故障識別用表示に切り換えられる。
【0048】
図10(A)〜(C)の例は、いずれも、表示装置10の中央のパネルユニット3が故障している場合の例である。これら図10(A)〜(C)に示す故障識別用表示を表示装置10に行わせるホストコンピュータ4は、表示制御部として機能する。
図10(A)の例では、表示装置10において画像P(図7(A))を表示している状態のまま、故障しているパネルユニット3の周囲(上下左右)のパネルユニット3に、故障しているパネルユニット3の方を向く矢印がスーパーインポーズ表示される。図10(B)の例では、画像Pを表示した状態で、故障しているパネルユニット3における画像の表示を停止し、画面の全面に×印を表示している。図10(C)の例では、画像Pを表示した状態で、故障しているパネルユニット3における画像の表示をオフにしている。このうち図10(B)の例は、故障しているパネルユニット3が、×印を表示できる程度の性能を維持している場合に限られるが、いずれの場合も、表示装置10の中で故障しているパネルユニット3がどれか、極めて明瞭に確認できる。従って、例えば表示装置10のメンテナンス時に、故障したパネルユニット3を交換する作業等を容易に行える。
【0049】
なお、メンテナンスモードにおいて、故障したマスタパネルユニット2及びパネルユニット3だけでなく、図9に示す処理で劣化したと判別されたマスタパネルユニット2及びパネルユニット3についても、図10(A)〜(C)に示す故障識別用表示をしてもよい。この場合、劣化したマスタパネルユニット2及びパネルユニット3を交換する作業が楽になるという利点がある。また、劣化したマスタパネルユニット2又はパネルユニット3について、上述した(1)〜(3)の対応処理によって見かけ上の問題が解消されている場合には、どのマスタパネルユニット2又はパネルユニット3が劣化しているかを目視で判別することは困難である。このような場合に故障識別用表示を行えば、劣化したマスタパネルユニット2又はパネルユニット3がどこか、速やかに確認できる。
【0050】
以上のように、本発明を適用した実施形態に係る表示システム1によれば、表示装置10を構成するマスタパネルユニット2及びパネルユニット3における故障や劣化等の異常を、各々のマスタパネルユニット2及びパネルユニット3の消費電流に基づいて、マスタパネルユニット2及びパネルユニット3自己が検出し、この異常に応じてマスタパネルユニット2及びパネルユニット3自体が、表示パネル27、37の輝度を電流調整回路65によって変化させる。このため、表示装置10を構成するマスタパネルユニット2及びパネルユニット3が、外部の装置に依存することなく、異常を検出するとともに異常に対応する処理を行うことができる。従って、表示装置10の異常が生じた場合に、個々のマスタパネルユニット2及びパネルユニット3が迅速に異常を検出して対応するので、特別な対応をしなくても表示装置10の表示状態を良好に保つことができる。
【0051】
また、マスタパネルユニット2及びパネルユニット3は、異常を検出した場合に、自己の異常を示す制御情報をマスタパネルユニット2へ送信し、マスタパネルユニット2が、異常が発生したマスタパネルユニット2又はパネルユニット3のIDを含む情報をホストコンピュータ4へ送信する。そして、ホストコンピュータ4が対応処理を決定し、上記の(1)〜(3)のような対応処理を行う。これにより、異常に対してどのように対応するかをホストコンピュータ4が決定できるので、マスタパネルユニット2及びパネルユニット3のうち複数を協働させる等の複雑な対応処理を実行でき、(3)のように画像を補整したり、図10(A)〜(C)に示す表示を行う等の対応を行ったりできる。これにより、異常の発生を速やかに検出して容易に対応することができ、かつ、異常に対してきめ細かい対応を行うことができる。さらに、ホストコンピュータ4において、表示装置10を構成する各々のマスタパネルユニット2及びパネルユニット3の状態を確実に管理できる。
【0052】
特に、図10(A)〜(C)に示す表示を行う場合には、表示装置10を構成する複数のマスタパネルユニット2及びパネルユニット3の中で異常を生じたユニットがどれであるかを明確に視認できるので、マスタパネルユニット2及びパネルユニット3の状態確認に加え、修理や交換等の作業を容易に行うことができる。
さらに、上記(3)の処理のように、マスタパネルユニット2又はパネルユニット3の画像データを補正することにより、表示パネルの輝度を増大又は低下させれば、輝度自体を調整する構成を用いることなく、表示装置10の表示ムラの原因となる輝度の異常を速やかに補償できる。
【0053】
また、マスタパネルユニット2及びパネルユニット3は、電流調整回路65を内蔵し、表示パネル27、37の輝度が低下又は増大する異常が検出された場合に、電流調整回路65によって輝度を変化させて異常を補償する。これにより、表示装置10における表示ムラの原因となる輝度の異常を速やかに検出して解消し、良好な表示状態を保つことができる。
【0054】
さらに、表示システム1においては、表示装置10を構成する各々のマスタパネルユニット2及びパネルユニット3が自己の異常を検出し、異常を検出した場合は自己の異常を示す情報を、マスタパネルユニット2を経由してホストコンピュータ4へ送信し、この情報に応じてホストコンピュータ4が表示装置10の表示状態を変化させる。これにより、このため、表示ユニットの異常を表示ユニット自体が速やかに検出できる。さらに、表示制御部によって、複数の表示ユニットの表示状態を変化させることで、表示ユニットの異常に対して、複雑で効果的な対応を行うこともできる。
【0055】
なお、上記実施形態では、図9に示す異常検出処理において、パネルユニット3が自己の異常を検出した場合に、パネルユニット3からマスタパネルユニット2へ異常を示す情報を送信し、マスタパネルユニット2からホストコンピュータ4へ、異常を検出した全てのマスタパネルユニット2又はパネルユニット3のIDを含む情報を送信するものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各々のマスタパネルユニット2及びパネルユニット3の全てが、異常を検出した場合に、ホストコンピュータ4に対して直接制御情報を送信してもよい。
また、上記実施形態では、4個のインタフェース26を有するマスタパネルユニット2、及び、4個のインタフェース35を有するパネルユニット3を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、マスタパネルユニット2を表示装置10の隅に配置することにすれば、マスタパネルユニット2は少なくとも2個のインタフェース26を有するものであればよい。また、マスタパネルユニット2を表示装置10の上下左右の縁(端)に配置する場合は、マスタパネルユニット2は3個のインタフェース26を有するものであればよい。パネルユニット3についても同様に、隅部に配置される場合は2個のインタフェース35を備えていればよく、上下左右の縁に配置される場合は3個のインタフェース35を備えていればよい。
さらに、表示装置10を構成するマスタパネルユニット2及びパネルユニット3の数は任意であり、複数のマスタパネルユニット2が一つの表示装置10を構成する場合には、いずれかのマスタパネルユニット2がパネルユニット3と同様に動作するようにしてもよいし、他のパネルユニット3をマスタパネルユニット2と同数のグループに分割して、グループ毎に上述した処理を実行してもよい。その他、上記実施形態で説明した表示システム1の細部構成についても、任意に変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施形態に係る表示システムの構成を示す図である。
【図2】マスタパネルユニット及びパネルユニットの構成を示す外観図である。
【図3】マスタパネルユニット及びホストコンピュータの機能ブロック図である。
【図4】パネルユニットの機能ブロック図及びインタフェースの構成図である。
【図5】消費電流検出部及び電流調整回路の構成図である。
【図6】ホストコンピュータが有するパネル配置情報の構成例を示す図である。
【図7】表示パネルに画像を表示する処理を説明する図である。
【図8】消費電流値参照テーブルの構成例を示す図である。
【図9】異常検出処理を示すフローチャートである。
【図10】故障識別用表示の例を示す図である。
【符号の説明】
【0057】
1、1A…表示システム、2…マスタパネルユニット(表示ユニット)、3…パネルユニット(表示ユニット)、4…ホストコンピュータ(表示制御部)、5、6…ベース部、10…表示装置、11…通信線、20…制御部、21、31…CPU(異常検出部、送信部)、24、34…不揮発性メモリ、25…ホスト接続用インタフェース、26、35…インタフェース、27、37…表示パネル、27A、37A…表示体、28、30…制御部、38…筐体、41…CPU、44…記憶部、60…電流検出部、60A…消費電流値参照テーブル、65…電流調整回路(表示調整部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示パネルを有する複数の表示ユニットを並べて構成される表示装置を備えた表示システムにおいて、
前記表示ユニットは、
自己の消費電流を検出する電流検出部と、
前記電流検出部により検出された消費電流に基づいて異常を検出する異常検出部と、
前記異常検出部により自己の異常が検出された場合に、前記表示パネルにおける表示状態を変化させる表示調整部と、を備えること、
を特徴とする表示システム。
【請求項2】
前記表示ユニットは、前記異常検出部により異常が検出された場合に、自己の異常を示す情報を送信する送信部を備え、
前記表示ユニットから送信された異常を示す情報を受信して、前記表示ユニットに対して表示状態の変更の指示を送信する表示制御部を備え、
前記表示パネルが備える前記表示調整部は、前記表示制御部から送信された指示に従って、前記表示パネルにおける表示状態を変化させること、
を特徴とする請求項1記載の表示システム。
【請求項3】
前記表示調整部は、前記表示パネルに流れる電流を増大又は減少させることにより、前記表示パネルの輝度を増大又は低下させること、
を特徴とする請求項1または2記載の表示システム。
【請求項4】
表示パネルを有する複数の表示ユニットを並べて構成される表示装置を備えた表示システムにおいて、
前記表示ユニットは、
消費電流を検出する電流検出部と、
前記電流検出部により検出された消費電流に基づいて異常を検出する異常検出部と、
前記異常検出部により自己の異常が検出された場合に、自己の異常を示す情報を送信する送信部と、を備え、
前記表示装置は、前記表示ユニットから送信された異常を示す情報を受信して、前記表示装置の表示状態を変化させる表示制御部を備えること、
を特徴とする表示システム。
【請求項5】
前記表示制御部は、前記表示装置において前記異常検出部によって検出された前記表示ユニットを識別するための識別表示を行わせること、
を特徴とする請求項4記載の表示システム。
【請求項6】
前記表示制御部は、前記表示装置により前記識別表示を行わせる際に、自己の異常を示す情報を送信した前記表示ユニット自体、又は、その前記表示ユニットの周囲に位置する前記表示ユニットにおける表示状態を制御して、前記異常検出部によって検出された前記表示ユニットを識別可能にすること、
を特徴とする請求項5記載の表示システム。
【請求項7】
前記表示制御部は、前記異常検出部により検出された前記表示ユニットに表示される画像を補正することにより、前記表示パネルの輝度を増大又は低下させること、
を特徴とする請求項4記載の表示システム。
【請求項8】
複数の表示ユニットを並べて構成される表示装置を備えた表示システムを制御するための制御方法であって、
各々の前記表示ユニットに、消費電流を検出し、検出した消費電流に基づいて異常を検出し、異常があった場合に、自己の異常を示す情報を送信し、
前記表示ユニットから送信された異常を示す情報に基づいて、前記表示装置の表示状態を変化させること、
を特徴とする表示システムの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−98581(P2009−98581A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−272590(P2007−272590)
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】