説明

表示パネルの端子洗浄装置

【課題】 表示パネルの端子部をスチーム洗浄するにあたって、噴射する蒸気の帯電量を減らして、端子部に対する帯電量を削減する。
【解決手段】 蒸気発生手段10と、ホース20を介して蒸気発生手段10に接続されるノズル30とを含み、ノズル30より表示パネル1の端子部2に向けて蒸気を吹き付け、端子部2に形成されているリード端子を洗浄する表示パネルの端子洗浄装置において、ホース20およびノズル30を含む蒸気供給経路の少なくとも一部分に、接地された導電性部材を蒸気供給経路内の蒸気と接触可能に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示パネルの端子部に形成されているリード端子を洗浄する表示パネルの端子洗浄装置に関し、さらに詳しく言えば、蒸気(スチーム)による表示パネルの端子洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示パネルや有機ELパネルなどの表示パネルには、そのパネル内の表示電極に電気的に連なるリード端子が形成された端子部が設けられており、その端子部にフレキシブル基板などからなる外部制御基板が接続され、また、機種によっては外部制御基板を接続する前の工程で端子部上に表示駆動用のICチップが実装されることがある。
【0003】
外部制御基板が接続されるまでの間、表示パネルは例えば偏光膜貼着工程や点灯検査工程などの各工程に流されるため、その間にリード端子に異物が付着することがある。その異物としては、液晶の残滓や油脂類,細かなゴミや繊維物などのほかに、汗や唾液,皮膚などの人体分泌物がある。
【0004】
これらの異物は、リード端子の電極腐蝕や接続不良の原因となるため、外部制御基板を接続するに先立って洗浄により除去する必要がある。通常、洗浄工程は点灯検査工程後に用意されているため、洗浄は表示部に偏光膜が貼着された状態で行われる。
【0005】
端子の洗浄方法には、大別してドライ洗浄とウエット洗浄とがある。このうち、ドライ洗浄は、通常、紫外線やプラズマを照射することにより行われる。これによれば、非接触であるため電極に傷を付けることなく、上記した残渣や人体分泌物などを比較的容易に除去することができる。
【0006】
しかしながら、紫外線洗浄について言えば、特に端子部の切り出し面の側の隙間に入り込んでいる液晶の残渣を除去する場合、その部分に照射される紫外線の一部が表示部側に回り込み、これにより偏光膜が変色(変質)してしまうという問題がある。
【0007】
また、プラズマ洗浄について言えば、リード端子の電極表面にプラズマを照射すると、安定な保護皮膜として機能している金属酸化膜までも除去され、かえって腐蝕を加速させてしまうという問題がある。さらに言えば、紫外線、プラズマのいずれのドライ洗浄によるにしても、その設備に高いコストがかかる。
【0008】
これに対して、ウエット洗浄では洗浄液が用いられるが、表示パネルには樹脂フィルムの一つとして偏光膜が貼着されているため、浸漬洗浄することができない。そのため、ウエット洗浄では有機溶剤を含ませた布や綿棒などで端子部の接続リード端子を拭くようにしているが、電極を擦る作業であるため電極を傷つけるおそれがある。
【0009】
そればかりでなく、端子部の切り出し面側の隙間に入り込んでいる液晶の残渣や、人体分泌物でとりわけ乾燥してしまっている汗や唾液は、有機溶剤を含ませた布や綿棒などで拭くだけでは十分に除去することができないという問題がある。
【0010】
そこで、例えば特許文献1による発明では、表示パネルの端子部に高温の蒸気(スチーム)を噴射させて端子部を洗浄することが提案されている。このスチーム洗浄によれば、高温の蒸気により端子部に付着している異物が浮き上がり、蒸気の噴射圧により端子部上から洗い流されるため、端子部のリード端子を痛めたり金属酸化皮膜を破壊することなく、人体分泌物を含めた異物を除去することができる。
【0011】
【特許文献1】特開2004−258368号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記したスチーム洗浄によると、例えばボイラなどの蒸気発生手段から供給される蒸気が配管やノズル内を流れる際に、その管内壁面と接触することにより帯電する。また、蒸気の液滴同士の接触により帯電することもある。
【0013】
使用する水が、例えば各種のイオンを含む一般の水道水のように導電性がよければ、蒸気が噴射されるまでの過程で放電が起こり帯電し難くなるが、通常、表示パネルの端子洗浄には、純水もしくは超純水が用いられるため、導電性が悪く帯電したままの状態で噴射されることになる。
【0014】
そうすると、蒸気から表示パネルの端子部に電荷が移動して端子部が帯電し、その帯電量によっては表示電極などが静電破壊することがある。ちなみに、TFT(薄膜トランジスタ)パネルでは、表面電位が0.2kVになると静電破壊が起こるといわれている。また、静電気はITOなどよりなるリード端子の電蝕発生要因としてもあげられている。
【0015】
したがって、本発明の課題は、表示パネルの端子部をスチーム洗浄するにあたって、噴射する蒸気の帯電量を減らして、端子部に対する帯電量を削減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、蒸気発生手段と、ホースを介して上記蒸気発生手段に接続されるノズルとを含み、上記ノズルより表示パネルの端子部に向けて蒸気を吹き付けて、上記端子部に形成されているリード端子を洗浄する表示パネルの端子洗浄装置において、上記ホースおよび上記ノズルを含む蒸気供給経路の少なくとも一部分に、接地された導電性部材が上記蒸気供給経路内の蒸気と接触可能に設けられていることを特徴としている。
【0017】
請求項2に記載の発明は、上記請求項1において、上記接地された導電性部材が、金属製の接地されたノズルよりなることを特徴としている。
【0018】
請求項3に記載の発明は、上記請求項1または2において、上記接地された導電性部材に、螺旋状もしくはジグザグ状に折り曲げられた金属パイプが含まれることを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載の発明によれば、蒸気発生手段からノズル先端に至るまでのホースおよびノズルを含む蒸気供給経路の少なくとも一部分に、接地された導電性部材が蒸気供給経路内の蒸気と接触可能に設けられているため、蒸気が導電性部材に接触することにより、蒸気に帯電している電荷の一部が接地(アース)に流れる。したがって、噴射する蒸気の帯電量を減らして、端子部に対する帯電量を削減することができる。
【0020】
接地された導電性部材として、金属製の接地されたノズルを用いる請求項2に記載の発明によれば、金属製のノズルに接地端子を設けるという、きわめて簡単な構成により本発明を実現することができる。
【0021】
接地された導電性部材に螺旋状もしくはジグザグ状に折り曲げられた金属パイプを含ませるようにした請求項3に記載の発明によれば、蒸気が導電性部材に接触しやすくなり、除電効率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に、図1により本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。図1は本発明による表示パネルの端子洗浄装置を示す模式図である。
【0023】
この表示パネルの端子洗浄装置は、蒸気発生手段10と、ホース20を介して蒸気発生手段10に接続されるノズル30とを含み、ノズル30から表示パネル1の端子部2に向けて蒸気を吹き付けて端子部2を洗浄する。
【0024】
この例において、表示パネル1は、一対の透明電極基板1a,1b間に図示しない液晶物質を封入してなる液晶表示パネルで、端子部2はその一方の透明電極基板1aに連設されているが、これ以外の例えば有機ELパネルやプラズマディスプレイであってもよい。
【0025】
蒸気発生手段10には、例えば電気ヒータを備えたボイラを用いることができる。使用する水は、純水もしくは超純水が好ましい。蒸気の温度は、50〜250℃の範囲内で適宜設定されてよいが、端子部2に付着している異物に人体分泌物(乾燥しきっている汗や唾液など)が含まれている場合には、100〜250℃とするのが効果的である。
【0026】
蒸気発生手段10とノズル30とを接続するホース20には、ノズル30を容易に動かすことができるようにするため、可撓性で耐熱性を有する樹脂ホースが好ましく採用される。ホース20とノズル30は継ぎ手管21を介して接続される。
【0027】
ノズル30は金属製であって、蒸気に帯電している電荷を接地(アース)に流すための接地端子31を備える。図示しないが、接地端子31はリード線に例えばワニ口クリップを取り付けたものであってよく、そのワニ口クリップを接地棒もしくは当該装置のグランドなどに噛ませることにより接地される。場合によっては、接地端子31に地中に設置される接地棒を含ませてもよい。
【0028】
ノズル30が金属製で接地されているため、そのノズル内壁と接触した蒸気の帯電電荷(静電気)は接地に流れて除電される。ノズル30は、直接的に継ぎ手管21に接続されてもよいが、蒸気の多くができるだけノズル内壁と接触するようにするため、図示のように、ノズル30の一部に螺旋状にした金属パイプ32を含ませることが好ましい。
【0029】
変形例として、ノズル30に含まれる上記金属パイプ32を螺旋状ではなく、ジグザグ状としてもよい。また、継ぎ手管21も金属製とすることが好ましい。さらには、ホース20の管内に接地された集電電極板を配置してもよい。また、ホース20の途中に接地された継ぎ手管(接続ニップル)を入れるようにしてもよい。
【0030】
このようにして、本発明によれば、蒸気に帯電している静電気の多くを除電することができる。なお、蒸気が端子部2に吹き付けられる際の接触帯電および/または摩擦帯電によっても端子部2に帯電(静電気)が発生するが、本発明のようにあらかじめ除電処理した蒸気を吹き付ける場合と、除電処理をしないでそのまま蒸気を吹き付ける場合とでは、端子部2に発生する帯電量が異なり、本発明によれば、端子部2の帯電量を大幅に削減することができる。
【実施例】
【0031】
ノズルとして、内径5mmの金属パイプを直径15cmの円を描くように2ターン螺旋状に巻回した金属パイプ(図1参照)の先端を蒸気噴射ノズルとし、接地端子にて接地に接続した本発明の実施例1と、同一形状であるが接地しない比較例1とを用意し、各ノズルにより蒸気風量を変えて、表示パネルの端子部に蒸気を吹き付けて端子部の帯電量を測定した結果を図2のグラフに示す。なお、各ノズルの蒸気噴射量は風量計にて測定して同じ風量となるように調整した。また、端子部に発生した静電気は表面電位計により測定した。
【0032】
図2は、横軸を風量(m/s),縦軸を表面電位(kV)としたグラフで、鎖線が本発明の実施例1によるもので、実線が比較例1によるものである。先にも説明したように、TFTパネルでは表面電位が0.2kVになると静電破壊が起こるため、スチーム洗浄工程では表面電位が0.2kV未満となるように管理している。
【0033】
図2から読み取ると、表面電位を0.2kV未満とするには、比較例(従来例)1では、風量を約6.5m/s以下に落とさなければならず、これに伴って洗浄力が低下する。これに対して、本発明の実施例1によると、風量を約7.5m/sまで上げても、表面電位を0.2kV未満に維持でき、高い洗浄力が得られる。
【0034】
本発明によれば、各風量の全体(1.5〜8.0m/s)をとおして従来例よりも帯電量を削減でき、これによりITO端子の電蝕を減らすことができる。また、帯電量を削減できる分、静電吸着による異物の再付着を減らすことができる。また、洗浄効果が向上することにより、端子部に対する外部基板の接続性も良好となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明による表示パネルの端子洗浄装置を示す模式図。
【図2】本発明による実施例と比較例の蒸気風量対表面電位の関係を示すグラフ。
【符号の説明】
【0036】
1 表示パネル
2 端子部
10 蒸気発生手段
20 ホース
21 継ぎ手管
30 ノズル
31 接地端子
32 金属パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気発生手段と、ホースを介して上記蒸気発生手段に接続されるノズルとを含み、上記ノズルより表示パネルの端子部に向けて蒸気を吹き付けて、上記端子部に形成されているリード端子を洗浄する表示パネルの端子洗浄装置において、
上記ホースおよび上記ノズルを含む蒸気供給経路の少なくとも一部分に、接地された導電性部材が上記蒸気供給経路内の蒸気と接触可能に設けられていることを特徴とする表示パネルの端子洗浄装置。
【請求項2】
上記接地された導電性部材が、金属製の接地されたノズルよりなることを特徴とする請求項1に記載の表示パネルの端子洗浄装置。
【請求項3】
上記接地された導電性部材に、螺旋状もしくはジグザグ状に折り曲げられた金属パイプが含まれることを特徴とする請求項1または2に記載の表示パネルの端子洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−11031(P2007−11031A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−192284(P2005−192284)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(000103747)オプトレックス株式会社 (843)
【Fターム(参考)】