説明

表示パネルの製造方法およびパネル体の製造方法

【課題】表示パネルやパネル体の基板の強度を上げることができる表示パネルの製造方法およびパネル体の製造方法を提供する。
【解決手段】下側基板および上側基板からなる表示パネルにおける端子部にポリイミドテープを貼り付けた後(ステップS51)、表示パネル全体をエッチング槽に浸す(ステップS52)。そして、所定時間が経過すると、表示パネルをエッチング槽のエッチング液から引き上げ、エッチング液を除去する(ステップS53)。その後、端子部からポリイミドテープを剥離する(ステップS54)。このような工程によれば、金属の配線を腐食させることなく、下側基板および上側基板における全てのエッジを一時にソフトエッチングすることができ、作業効率が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示パネルなどの表示パネルの製造方法、および電極付きガラスパネルなどのパネル体の製造方法に関し、特に、表示パネルやパネル体の基板の強度を改善することができる表示パネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示パネルなどの平面型表示パネルは、薄型、軽量、低消費電力であるという特徴を有する。そのような特長を生かして、携帯電話機を始めとする小型軽量の端末機器に広く採用されている。小型軽量の端末機器に搭載される表示パネルは、携帯性をより向上させたいという要求やデザイン上の要求等から、さらなる薄型化が要請されている。また、液晶表示パネルに装備されているパネルヒータ等の電気配線(電極)付パネル体においても同様な薄型化が要請されている。液晶表示パネルを典型例として説明すると、液晶表示パネルの構造は、2枚のガラス基板等の基板の間に液晶材料等が注入された構造であるが、液晶表示パネルを薄型にするために、基板の厚さは、例えば研磨によって薄くされる(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
液晶表示パネルを製造する場合には、大サイズの基板(複数の表示パネルとなる部分を含む基板)を切断することによって、複数の液晶表示パネルを得るようにすることが多い(例えば、特許文献1参照。)。ガラス基板を切断する方法として、例えば、ホイールカッタ等で切断箇所に切れ目(スクライブライン)を形成するスクライブ工程と、スクライブラインに沿って割断するブレーク工程とからなるスクライブ法がある(例えば、特許文献2参照。)。その他、レーザ光で切断箇所にスクライブラインを形成した後に割断するスクライブ法や、レーザ光でガラス基板を切断する方法や、水圧でガラス基板を切断するウォータージェット法などがある。
【0004】
図15は、特許文献2に記載されているガラス基板の切断面(斜線部分)を示す説明図である。特許文献2に記載されているように、ホイールカッタ60によってスクライブライン20を形成していくときに、スクライブライン20の下部にリブマーク(Rib Mark)21と呼ばれる割れ目が形成される。リブマーク21は、スクライブライン20から、スクライブライン20の進行方向に対して後方下に垂れ下がるように形成される。また、特許文献2には、リブマーク21とともに、円弧状のウォルナーライン(Wallner Line)22と呼ばれる刻印が形成されることも記載されている。そして、特許文献2に記載されている発明では、基板の切断面において、ウォルナーライン22を低減できるが、リブマーク21の形成を防止することはできない。なお、図15において、一つのリブマーク21および一つのウォルナーライン22にのみ符号が付されているが、多数のリブマーク21およびウォルナーライン22が形成される。
【0005】
グリフィス(Griffith)の理論によれば、ガラス等の材料に割れ目(切れ目、傷)が生じた場合に、割れ目の深さを2c、材料のヤング率をE、表面エネルギをγとすると、破壊強度σは、(1)式のように表される(例えば、非特許文献1参照)。
σ=√(γE/c) ・・・(1)
【0006】
【特許文献1】特開2005−77945号公報(段落0017−0022)
【特許文献2】特開2000−119031号公報(段落0002)
【非特許文献1】「岩波 理化学事典」(第5版)岩波書店、1998年2月20日、p.381
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非特許文献1には、割れ目の形状などにもとづいて(1)式を変形しうることが記載されているが、例えば、破壊強度σを(2)式のように表すことができる。(2)式において、KICは破壊靭性値、aは割れ目の長さ、Yは割れ目の形状にもとづく係数である。
【0008】
σ=(1/Y)(KIC/√a) ・・・(2)
【0009】
(2)式において、割れ目の長さaが大きいほど、破壊強度σの値は小さくなる。また、Yの値は、割れ目の断面形状が鋭角的であるほど大きい。
【0010】
図16(A)は、リブマーク21が形成されたガラス基板の断面Dの一部を模式的に示す説明図である。図16(B)は、ガラス基板の背面側から見た斜視図である。図16に示すように、リブマーク21の断面形状は鋭角的(略三角形)である。よって、(2)式より、破壊強度σの値は小さくなる。つまり、破壊し始める応力の値が小さくなる。すなわち、表示パネルの基板の強度が低下するという課題がある。
【0011】
本発明は、上記のような課題を解決するための発明であって、表示パネルやパネル体の基板の強度を上げることができる表示パネルの製造方法およびパネル体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による表示パネルの製造方法は、大サイズの基板を切断することによって複数の表示パネルを得る表示パネルの製造方法であって、大サイズの基板を切断して表示パネルを作製し、表示パネルの切断面をソフトエッチングすることを特徴とする。
【0013】
表示パネルのそれぞれの切断面を含む部分を個別にエッチング液に接触させるようにしてもよい。
【0014】
製造方法は、上側基板と下側基板とが積層され、端面を有する略矩形板状の表示パネルの製造方法であって、略矩形板の四端面のうちの各端面を個別にエッチング液に接触させるようにしてもよい。
【0015】
製造方法は、上側基板と下側基板とが積層された構造であり、上側基板と下側基板とのうちの一方には、他方の基板が積層されない領域があり、その領域には、電気信号を伝達するための配線が形成されている表示パネルの製造方法であって、少なくとも配線が形成されている領域に保護膜を形成した後、表示パネル全体をエッチング液に浸すようにしてもよい。
【0016】
本発明によるパネル体の製造方法は、大サイズのガラス基板を切断することによって複数のパネル体を得るパネル体の製造方法であって、大サイズのガラス基板を切断してパネル体を作製し、パネル体の切断面をソフトエッチングすることを特徴とする。
【0017】
パネル体のそれぞれの切断面を含む部分を個別にエッチング液に接触させるようにしてもよい。
【0018】
製造方法は、パネル体が表面に電気配線が形成されたパネル体であり、少なくとも電気配線が形成されている領域に保護膜を形成した後、パネル体の全体をエッチング液に浸すようにしてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、表示パネルやパネル体の切断面または表示パネルやパネル体の全体をソフトエッチングすることによって、切断面に形成されているリブマーク等の傷の断面形状の鋭角性が弱まって、破壊強度が高くなる。すなわち、表示パネルやパネル体の基板の強度を高くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、液晶表示パネルなどの表示パネルを典型例として、図面を参照して説明する。
図1は、本発明による表示パネルの製造方法を示すフローチャートである。図2は、大サイズの基板である貼り合わせ基板400の一例を示す平面図である。ここでは、表示パネルとして、TFT(Thin Film Transistor )型液晶表示パネルを例にする。貼り合わせ基板400は、ガラス基板によるアレイ基板とガラス基板による対向基板とが一体化されたものである。一体化とは、例えば、接着剤で貼り合わされていることであるが、一般に、アレイ基板と対向基板とは直に接している訳ではない。
【0021】
貼り合わせ基板400から、それぞれが表示部(図1において破線で示す。)を有する複数の表示パネルが得られる。アレイ基板には、それぞれの表示部の信号ライン、走査ライン、TFT、画素電極等が形成されている。対向基板には、それぞれの表示部毎のコモン電極等が形成されている。
【0022】
アレイ基板と対向基板とは、シール材によって貼り合わせられている。ここでは、研磨前のアレイ基板の厚さおよび対向基板の厚さは、それぞれ、0.4mmであるとする。アレイ基板および対向基板が研磨装置による機械的研磨によって薄型化された後、貼り合わせ基板400が切断される。そして、切断後のそれぞれに対してシール材に設けられている注入口から液晶材料が注入されて液晶層が形成される。なお、切断前に、液晶滴下法(ODF(One Drop Fill ))により液晶層を形成してもよい。
【0023】
図3は、表示パネルの製造方法、特に表示パネルのエッチング方法を説明するための説明図である。図3(A)に示すように、貼り合わせ基板を切断することによって得られた表示パネル100は、アレイ基板が切断されて得られた下側基板200と対向基板が切断されて得られた上側基板300とが貼り合わせられた構造になっている。この実施の形態では、下側基板200には、上側基板300と対向しない領域(露出している領域,配線が設けられている領域)201があり、領域201には、MPU(Micro Processing Unit )等からの信号を伝達するためのフレキシブル基板(フレキシブルケーブル)を接続したり、駆動用ICを搭載したり、表示部に至る信号線と駆動用ICとを接続したりするための配線パターンすなわち電気信号を伝達するための配線が設けられている。なお、図3(A)には、駆動用ICがまだ実装されていない状態が示されている。
【0024】
図1のフローチャートを参照して本発明による表示パネルの製造方法の工程を説明する。まず、アレイ基板および対向基板に電極等を形成する(ステップS1)。すなわち、アレイ基板に、信号ライン、走査ライン、TFT、画素電極等を形成する。さらに、配向膜などを積層する。また、対向基板にコモン電極等を形成する。さらに、配向膜などを積層する。
【0025】
そして、各表示部を区画するように配されたシール材および基板間の周辺部分に配された周辺シール材で、アレイ基板と対向基板とを貼り合わせ、貼り合わせ基板400を形成する(ステップS2)。ソフトエッチング前に液晶材料の注入を行うことが望ましい。ソフトエッチング後に液晶注入を行うと表示パネルの切断面に新たなクラックが発生することがあるからである。液晶層の形成方法として液晶滴下法を用いる場合には、両基板の貼り合わせと同時に液晶注入を行う。また、液晶層の形成方法として真空注入法を用いる場合には、シール材に液晶材料を注入するための注入口を設け、基板切断後に液晶材料を注入して液晶層を形成する。
【0026】
次いで、貼り合わせ基板400を研磨装置にセットする。ここでは、両面研磨装置を用いることにする。よって、貼り合わせ基板400を両面研磨装置の上定盤と下定盤との間に挟む。そして、研磨装置に、上定盤による研磨量として0.3mmを設定し、下定盤による研磨量として0.3mmを設定し、研磨装置を作動させる(ステップS3)。研磨前の貼り合わせ基板400の厚さは0.8mmであるから、研磨後には、貼り合わせ基板400の厚さは0.2mmになる。なお、アレイ基板と対向基板との間には空隙が存在するが、その間隔は基板の厚さに比べて極めて小さい。また、ここでは、薄型の表示パネルを作製することを想定しているが、表示パネルの厚さが、アレイ基板(未研磨状態の基板)の厚さと対向基板(未研磨状態の基板)の厚さとの和の程度でよい場合には、ステップS3の工程は不要である。
【0027】
次に、貼り合わせ基板400を切断する(ステップS4)。ここでは、ホイールカッタでスクライブラインを形成するスクライブ工程と、スクライブラインに沿って割断するブレーク工程とからなるスクライブ法を使用することにする。よって、スクライブラインの下部にリブマークが形成される。
【0028】
リブマークが形成される箇所は、図3(A)に示す切断面P,Q,R,S,T,Uである。すなわち、略矩形形状の板の端面(板状の六面体における広面積の2面以外の4面)である。略矩形形状は完全に矩形の形状であってもよいが、ここでは、製造誤差等を考慮して略矩形形状と表現する。特に、切断面P,Q,R,S,T,Uにおいてスクライブラインに近い側である(図15参照)。なお、図3(A)において紙面背面側に位置する下側基板200および上側基板300の各切断面にもリブマークが形成されている。また、切断面R,Sは同一平面上にあり、切断面T,Uは同一平面上にあり、紙面背面側に位置する各切断面は同一平面上にある。すなわち、切断面R,Sについてのスクライブラインは、表示パネル100の表面に直交する同一面上に位置し、切断面R,Sについてのスクライブラインは、表示パネル100の表面に直交する同一面上に位置し、紙面背面側に位置する各切断面についてのスクライブラインは、表示パネル100の表面に直交する同一面上に位置する。しかし、切断面Pと切断面Qについてのスクライブラインはずれている。
【0029】
この実施の形態では、各切断面をソフトエッチングする。すなわち、下側基板200および上側基板300における強度が低下しやすいエッジ(稜および端面)をソフトエッチングする。ソフトエッチングを行うときに、例えば、ふっ酸(ふっ化水素:HF)、硫酸や硝酸などの強酸、もしくは苛性ソーダ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの強アルカリ、またはその化合物を含む水溶液等のエッチング液に、各切断面を接触させる。図3(B)には、切断面T,Uがソフトエッチングされる様子が模式的に示されている。すなわち、エッチング液51が入っているエッチング槽50に、切断面T,Uを含む表示パネル100の一部を浸す。
【0030】
図3(C)には、切断面R,Sがソフトエッチングされる様子が模式的に示されている。この場合にも、切断面R,Sを含む表示パネル100の一部がエッチング液51に浸される。しかし、切断面R,Sを含む表示パネル100の一部がエッチング液51に浸される場合、配線パターンが設けられている領域201の一部もエッチング液51に浸される。領域201には、表示部から延びるITOなどの透明電極や金属配線などが存在する。それらが、エッチング液51によって劣化する可能性もある。
【0031】
そこで、切断面R,Sを含む表示パネル100の一部をエッチング液51に浸す場合には、領域201の上に保護層を形成する。例えば、エッチング液51によってエッチングされない材質(例えば、シリコンや合成樹脂)のシートを保護層として領域201の上に貼り付ける。図3(A)で紙面背面側に位置する各切断面をソフトエッチングするとき、切断面Pをソフトエッチングするとき、および切断面Qをソフトエッチングするときも同様である。保護層で保護された領域201がエッチング液51に浸される工程が終了すると、保護層は除去される。なお、エッチングされる量、保護する配線の種類、および配線の形成位置等により、保護層を形成しなくてもよいこともある。
【0032】
各切断面のソフトエッチングが完了すると、表示パネル100を洗浄する(ステップS6)。例えば、純水を表示パネル100に吹き付け、表示パネル100から純水を流下させる。
【0033】
そして、下側基板200の表面側(上側基板300に対向する面と反対側)に偏光板を貼り付け、上側基板300の表面側(下側基板200に対向する面と反対側)に偏光板を貼り付ける(ステップS7)
【0034】
なお、上記の説明では、表示パネル100の四辺に位置する各切断面のそれぞれを、個別に、または二つの切断面を同時にソフトエッチングしたが、領域201を保護層で保護した後、図4に示すように、表示パネル100全体をエッチング液51に浸すようにしてもよい。その場合には、表示パネル100における全ての切断面が一時にソフトエッチングされる。
【0035】
図5(A)は、この実施の形態の表示パネルの製造方法によって作製された表示パネル100の断面(斜線部分)D(切断面P,Q,R,S,T,Uのそれぞれに相当する。)の一部を模式的に示す説明図である。図5(B)は、ガラス基板の背面側から見た斜視図である。図5に示すように、リブマーク21の断面形状は曲線状である。よって、(2)式より、破壊強度σの値は、図16に示されたような断面形状が鋭角的である場合に比べて、大きくなる。つまり、ガラス基板が破壊し始めるときの応力の値が大きくなる。すなわち、表示パネルの基板の強度が高くなる。
【0036】
また、この実施の形態では、表示パネル100における全ての切断面をソフトエッチングしたが、一部の切断面のみをソフトエッチングするようにしてもよい。例えば、切断面T,Uのみをソフトエッチングする。その場合には、他の切断面のリブマークは曲線状にならないが、切断面T,Uのリブマークは曲線状になってその部分の強度が上がり、いずれの切断面もソフトエッチングしない場合に比べて、表示パネル100全体としての強度は高くなる。また、切断面T,Uのみをソフトエッチングする場合には、領域201に保護層を設ける必要はなく、工程が簡略化される。
【0037】
なお、エッチング液51におけるふっ酸の濃度に特に制限はないが、10重量%程度のふっ酸またはその化合物を含む水溶液であることが好ましい。濃度が低い場合にはエッチングを完了するのに時間がかかり、濃度が高すぎると、エッチング速度が速くなってエッチング量を所望の程度にするための制御が難しくなる。また、エッチング液51の温度は、室温(例えば、22℃)程度でよい。温度が低い場合にはエッチングを完了するのに時間がかかり、温度が高すぎると、エッチング速度が速くなってエッチング量を所望の程度にするための制御が難しくなる。
【0038】
また、エッチングを開始してから完了するまでの時間(エッチング時間)は、90秒程度が好ましい。それよりも短いとリブマークの形状変化(鋭角的から曲線状への)の程度が少なく、エッチング時間が長いと、エッチングむらが生じ、また、表示パネル100全体をエッチング液51に浸す場合には表面に凹凸が生ずる可能性がある。
【0039】
また、この実施の形態では、表示パネル100の厚さとして0.2mmを例示したが、それよりも薄い表示パネル100であっても、本発明を適用可能であり、また、それよりも厚い例えば0.4mm程度以上の表示パネル100であっても、本発明を適用可能である。
【0040】
また、上記の説明では、リブマークの影響(強度を低下させること)を低減することによって表示パネル100の強度を高める場合について説明したが、本発明によれば、切断面におけるリブマーク以外の傷の断面形状も鋭角的から曲線状に変化する。すなわち、リブマーク以外の傷の影響も低減される。例えば、レーザ光で切断箇所にスクライブラインを形成した後に割断するスクライブ法や、レーザ光でガラス基板を切断する方法や、水圧でガラス基板を切断するウォータージェット法などで貼り合わせ基板400を切断した場合には、ホイールカッタでスクライブラインを形成した後に割断する場合に比べて、リブマーク等が生じにくい。
【0041】
しかし、それらの方法を使用した場合でも、何らかの理由で上記のステップS5の工程の前に切断面に傷が付く可能性がある。例えば、ガラス基板はカセットに収納された状態で移動したり、カセットから出し入れされる。その際に、カセットと接触することで傷が生ずることがある。そのような傷についても、ソフトエッチングによって断面形状が鋭角的から曲線状に変化するので、その傷による強度への影響を低減できる。
【0042】
さらに、図4に示すように、表示パネル100全体をエッチング液51に浸す場合には、表示パネル100の切断面だけでなく、表示パネル100の表面(切断面以外の面)に生じた傷の断面形状も、ソフトエッチングによって鋭角的から曲線状に変化する。よって、その傷による強度への影響(強度を低下させること)を低減できる。
【0043】
上記のように、表示パネル100全体をエッチング液51に浸す場合には、領域201を保護層で保護することが好ましい。図6は、その理由を説明するための説明図である。図6の左側には、エッチング液51が入っているエッチング槽50に、表示パネル100全体が浸されている様子が示されているが、領域201には、保護層は設けられていない。その状態で、数10秒のソフトエッチングを行うと、金属配線71,72,73に腐食が生ずることが確認された。図6において、金属配線71,72,73上の曲線は腐食を示す。
【0044】
そこで、領域201を保護層で保護する。図7は、領域201に保護層としてのポリイミドテープ81を貼り付けてソフトエッチングする場合のエッチング工程を示すフローチャートである。図8(A)は、領域201にポリイミドテープ81が貼り付けられた状態でエッチング液51が入っているエッチング槽50に、表示パネル100全体が浸されている様子が示されている。
【0045】
なお、図8(B)の上段に示すように、黒色の矩形で示す配線が領域201全体に設けられていない場合には、図8(B)の中段に示すように、端子部70のみにポリイミドテープ81を貼り付ければよい。端子部70とは、領域201における全ての配線を包含するような、例えば矩形領域を意味する。すなわち、端子部70は、配線が形成されている領域である。なお、全ての配線が矩形領域に納まらない場合には、端子部70の形状は、矩形ではなく、全ての配線を包含するような形状である。また、作業の容易等を考慮して、配線が領域201全体に設けられていない場合であっても、図8(B)の下段に示すように、領域201全体にポリイミドテープ81を貼り付けてもよい。
【0046】
図7に示すように、端子部70にポリイミドテープ81を貼り付けた後(ステップS51)、表示パネル100全体をエッチング槽50に浸す(ステップS52)。そして、所定時間が経過すると、表示パネル100をエッチング槽50のエッチング液51から引き上げ、エッチング液を除去する(ステップS53)。なお、ステップS53の工程は、図1に示されたステップS6の工程に相当する。その後、端子部70からポリイミドテープ81を剥離する(ステップS54)。
【0047】
図7に示されたエッチング工程を実施することによって、金属の配線を腐食させることなく、下側基板200および上側基板300における全てのエッジを一時にソフトエッチングすることができ、作業効率が向上する。
【0048】
図9は、領域201に保護層としての耐酸性レジスト82を塗布してソフトエッチングする場合のエッチング工程を示すフローチャートである。図10(A)は、領域201に耐酸性レジスト82が塗布された状態でエッチング液51が入っているエッチング槽50に、表示パネル100全体が浸されている様子が示されている。なお、この場合には、エッチング液51として、ふっ酸などの酸性物質を含む水溶液を使用する。
【0049】
また、この場合も、図10(B)の上段に示すように、配線が領域201全体に設けられていない場合には、図10(B)の中段に示すように、端子部70のみに耐酸性レジスト82を塗布すればよい。ただし、作業の容易等を考慮して、配線が領域201全体に設けられていない場合であっても、図10(B)の下段に示すように、領域201全体に耐酸性レジスト82を塗布してもよい。
【0050】
図9に示すように、端子部70に耐酸性レジスト82を塗布しけた後(ステップS55)、表示パネル100全体をエッチング槽50に浸す(ステップS56)。そして、所定時間が経過すると、表示パネル100をエッチング槽50のエッチング液51から引き上げ、エッチング液を除去する(ステップS57)。なお、ステップS57の工程は、図1に示されたステップS6の工程に相当する。その後、例えば端子部70を除去液としてのアルカリ性溶液に浸して、端子部70から耐酸性レジスト82を除去する(ステップS58)。
【0051】
図9に示されたエッチング工程を実施することによって、金属の配線を腐食させることなく、下側基板200および上側基板300における全てのエッジを一時にソフトエッチングすることができ、作業効率が向上する。
【0052】
なお、上記の実施の形態では、表示パネル100としてTFT型表示パネルを例にしたが、表示パネルがSTN(Super Twisted Nematic )型やTN型などのパッシブマトリクス駆動の表示パネルであっても本発明を適用できる。表示パネル100がSTN型表示パネルである場合には、下側基板200は、例えば走査電極等が配されたコモン基板であり、上側基板300は、例えば信号電極等が配されたセグメント基板である。また、他の平面型表示パネル、例えば、有機EL(Electroluminescence ) 表示パネル等の自発光型表示パネルにも本発明を適用できる。例えば、表示パネル100が有機EL表示パネルである場合には、下側基板200は、例えば電極や有機EL素子が積層された基板であり、上側基板300は、例えば保護用の基板である。また、ガラス基板にITOなどで透明電極パターンが形成されたパネルヒータ、ガラス基板に電気配線が形成された電極付きパネル体などにも本発明を適用できる。
【実施例】
【0053】
図11は、表示パネル100を一辺ずつエッチング液51に浸してソフトエッチングする場合の具体例を示す説明図である。なお、表示パネル100の一辺とは、表示パネル100の最も広い面を眺めた場合に視認される四辺のうちの一つを意味する。なお、一辺ずつエッチング液51に浸すということを三次元的に表現すると、一端面(上側基板300の端面と下側基板200の端面との双方を含む場合と、下側基板200の端面のみの場合がある。)および端面の稜をエッチング液51に浸すということである。また、一辺をエッチング液51に浸すということは、端面および稜を含む部分をエッチング液51に接触させるということである。端面および稜を含む部分とは、具体的には、端面から、エッチング液51の液高よりも小さい距離だけ離れた箇所までの部分である。
【0054】
図11(A),(B)に示すように、エッチング槽50に浅く収容されたエッチング液51に表示パネル100を浸す。エッチング槽50におけるエッチング液51の液高は、例えば0.05mm〜0.2mm程度(表示パネル100の厚さが0.4mmである場合には、その1/2程度以下)である。なお、この場合には、領域201のそれぞれの辺から端子部70の最外部までの距離は、液高よりも大きい。換言すれば、領域201のそれぞれの辺から端子部70の最外部までの距離よりも、液高を小さくする。
【0055】
液高を、領域201のそれぞれの辺から端子部70の最外部までの距離よりも小さくすることができない場合には、端子部70に保護膜を形成すればよい。なお、図11(A),(B)のそれぞれには表示パネル100の各一辺がエッチング液51に浸されている様子が示されているが、残りの二辺も、同様にエッチング液51に浸されてソフトエッチングされる。
【0056】
図12(A)は、表示パネル100を一辺ずつソフトエッチングする場合の他の具体例を示す説明図である。この例では、表示パネル100の各辺(図12の表記では、表示パネル100の各端面)を、エッチング液を浸み込ませたスポンジ53に接触させる。なお、図12(A)には表示パネル100の一辺がスポンジ53に接触している様子が示されているが、残りの三辺も、同様にスポンジ53に接触されてソフトエッチングされる。
【0057】
また、この例では、端子部70に保護膜を形成しないと、上側基板300における端子部70に近い端面および稜をソフトエッチングできない。そこで、上側基板300における端子部70に近い端面の一部および稜については、エッチング液を浸み込ませた布状物54に接触させてソフトエッチングを行う。なお、図11に示された例でも、端子部70に保護膜を形成しないと、上側基板300における端子部70に近い端面をソフトエッチングできない。よって、その場合にも、エッチング液を浸み込ませた布状物54に接触させてソフトエッチングを行うとよい。
【0058】
図11および図12に示された例でも、端子部70をエッチング液51に浸したりスポンジ53に接触させることなくソフトエッチングを行うことができる。すなわち、領域201における配線を腐食させることなく、ソフトエッチングを行うことができる。
【0059】
上記の実施の形態および実施例の製造方法で作製された表示パネル100に対して、図13に示すような四点曲げ試験を行って、表示パネル100が破壊されるときの荷重(応力)を測定した。なお、全ての切断面に対してソフトエッチングを行った。エッチング液51として10重量%のふっ酸を含む水溶液を用い、エッチング時間を90秒とした。また、比較例として、ソフトエッチングを行わない場合の表示パネル100が破壊されるときの応力を測定した。測定結果を下表に示す。
【0060】
【表1】

【0061】
また、比較例と実施例のそれぞれについて、平均値をグラフで表したものを図14に示す。表1および図14に示すように、比較例に比べて、実施例の場合の強度は2倍近くになっている。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、液晶表示パネルや有機ELパネルなどの平面型表示パネルの基板の強度の低下を防止するために好適に適用される。また、本発明は、ガラス基板にITOなどで透明電極パターンが形成されたパネルヒータ、ガラス基板に電気配線が形成された電極付きパネル体などのガラス基板強度の低下を防止するために好適に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明による表示パネルの製造方法を示すフローチャート。
【図2】貼り合わせ基板の一例を示す平面図。
【図3】表示パネルのエッチング方法を説明するための説明図。
【図4】表示パネルのエッチング方法を説明するための説明図。
【図5】表示パネルの断面Pの一部を模式的に示す説明図および基板の背面側から見た斜視図。
【図6】表示パネル全体をエッチング液に浸す場合には配線が設けられている領域を保護層で保護すること必要性を説明するための説明図。
【図7】配線が設けられている領域にポリイミドテープを貼り付けてソフトエッチングする場合のエッチング工程を示すフローチャート。
【図8】ポリイミドテープを貼り付けてソフトエッチングする工程を説明するための説明図。
【図9】配線が設けられている領域に耐酸性レジストを塗布してソフトエッチングする場合のエッチング工程を示すフローチャート。
【図10】耐酸性レジストを塗布してソフトエッチングする工程を説明するための説明図。
【図11】表示パネルを一辺ずつエッチング液に浸してソフトエッチングする場合の具体例を示す説明図。
【図12】表示パネルを一辺ずつソフトエッチングする場合の他の具体例を示す説明図。
【図13】四点曲げ試験を説明するための説明図。
【図14】比較例と実施例のそれぞれの平均値を示す説明図。
【図15】ガラス基板の切断面を示す説明図。
【図16】リブマークが形成されたガラス基板の断面Dの一部を模式的に示す説明図および斜視図。
【符号の説明】
【0064】
20 スクライブライン
21 リブマーク
50 エッチング槽
51 エッチング液
53 スポンジ
54 布状物
60 ホイールカッタ
70 端子部
71,72,73 配線
81 ポリイミドテープ
82 耐酸性レジスト
100 表示パネル
200 下側基板
201 領域(露出している領域,配線が設けられている領域)
300 上側基板
400 貼り合わせ基板(大サイズの基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大サイズの基板を切断することによって複数の表示パネルを得る表示パネルの製造方法において、
大サイズの基板を切断して表示パネルを作製し、
前記表示パネルの切断面をソフトエッチングする
ことを特徴とする表示パネルの製造方法。
【請求項2】
表示パネルのそれぞれの切断面を含む部分を個別にエッチング液に接触させる
請求項1記載の表示パネルの製造方法。
【請求項3】
上側基板と下側基板とが積層され、端面を有する略矩形板状の表示パネルの製造方法であって、
略矩形板の四端面のうちの各端面を個別にエッチング液に接触させる
請求項2記載の表示パネルの製造方法。
【請求項4】
上側基板と下側基板とが積層された構造であり、上側基板と下側基板とのうちの一方には、他方の基板が積層されない領域があり、前記領域には、電気信号を伝達するための配線が形成されている表示パネルの製造方法であって、
少なくとも前記配線が形成されている領域に保護膜を形成した後、表示パネル全体をエッチング液に浸す
請求項1記載の表示パネルの製造方法。
【請求項5】
大サイズのガラス基板を切断することによって複数のパネル体を得るパネル体の製造方法において、
大サイズのガラス基板を切断してパネル体を作製し、
前記パネル体の切断面をソフトエッチングする
ことを特徴とするパネル体の製造方法。
【請求項6】
パネル体のそれぞれの切断面を含む部分を個別にエッチング液に接触させる
請求項5記載のパネル体の製造方法。
【請求項7】
パネル体が表面に電気配線が形成されたパネル体であり、少なくとも前記電気配線が形成されている領域に保護膜を形成した後、パネル体の全体をエッチング液に浸す
請求項5記載のパネル体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−9356(P2008−9356A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−294637(P2006−294637)
【出願日】平成18年10月30日(2006.10.30)
【出願人】(000103747)オプトレックス株式会社 (843)
【Fターム(参考)】