説明

表示パネル基板の異物除去方法およびその装置

【課題】表示パネル基板の幅よりも長い軸長を有する粘着ローラにより、表示パネル基板に付着している異物を除去する際の粘着ローラの偏摩耗を防止する。
【解決手段】粘着ローラ2により表示パネル基板Pの表面を清掃するにあたって、表示パネル基板Pの一端側の原点位置PY1で粘着ローラ2を表示パネル基板Pに所定の圧力で押し付け他端PY2側に向けて移動させたのち、粘着ローラ2を表示パネル基板上Pから上昇させて原点位置PY1に戻し、再度粘着ローラ2を表示パネル基板Pに押し付ける前に、粘着ローラ2を軸方向に所定距離ΔXだけ移動させて粘着ローラ2の清掃に供される粘着面をずらす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶パネルなどの表示パネル基板に付着している異物を粘着ローラにより取り除く表示パネル基板の異物除去方法およびその装置に関し、さらに詳しく言えば、粘着ローラの偏摩耗を防止する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶パネルは、一方の面に透明電極が形成された2枚の電極基板をそれらの間にシール材を挟んで透明電極同士を対向させて貼り合わせ、その空セル内に液晶を封入することにより構成されるが、これに至るまでには、例えば配向膜の形成やラビング処理などの各工程が実施される。また、例えばTN型やSTN型の液晶パネルの場合には、その表面に偏光板を貼り付ける工程が加わる。
【0003】
このような液晶パネルの製造工程では、ガラス基板の表面に配線や電極などを形成する前処理として、配線や電極間が短絡したり、配線や電極が電触しないように、ガラス基板の表面に付着した埃や塵などの異物を除去する必要がある。なお、この種の異物には人体から分泌される皮脂なども含まれることがある。
【0004】
また、ラビング処理を施した後のガラス基板の表面には、その処理時に発生する静電気より塵埃が多数付着しており、ラビング処理後には、ガラス基板の表面に付着した塵埃などを除去する必要もある。
【0005】
さらに、液晶パネルが組み立てられた後にも、液晶パネルの表面には塵や埃それに皮脂などの異物が付着しているため、液晶パネルに偏光板を貼付する前にも、偏光板の光学特性を損なうことのないよう、液晶パネルの表面に付着した異物を除去する必要がある。
【0006】
本明細書では、ガラス基板(電極基板)の状態と、液晶パネル,有機ELパネルおよびプラズマディスプレイパネルなどの表示パネルとされた状態とを含めて表示パネル基板というが、このように表示パネル基板に付着した異物の除去方法としては、例えばオゾン水などに基板を浸漬させて洗浄するウェット処理法,紫外線(UV)を放射して有機物を分解除去するドライ処理法,粘着テープや粘着ローラを用いて異物を除去する粘着処理法などが知られている。特許文献1には、粘着処理法のうちの粘着テープによる処理法の一例が開示されおり、また、特許文献2には、粘着ローラによる処理法の一例が開示されている。
【0007】
上記異物の除去方法のうち、オゾン水などにより表示パネル基板を洗浄する方法では、基板表面に付着した有機物が十分に分解されるための反応時間を長く必要とするばかりでなく、洗浄処理後に行う乾燥時間が必要であり生産性の面で問題がある。
【0008】
また、紫外線によるドライ洗浄を行う方法では、水分除去などの乾燥が必要でない分、時間を短縮することができるが、紫外線光源の発熱により表示パネル基板がうねるのを防止するため、紫外線光源と基板表面との間隔を大きくとる必要があり、そうすると基板表面における紫外線強度が低下し、十分な洗浄効果が得られないといった問題がある。
【0009】
これに対して、粘着処理法は、オゾン水を用いたウェット処理法に比べて処理効率が高く、また、紫外線によるドライ洗浄に比べて塵埃などの除去効率が高いという利点がある。さらに、粘着処理法は、ウェット処理法やドライ処理法などに比べて大がかりな設備を必要とせず、コストの点でも有利である。
【0010】
図4および図5により、粘着処理法のうちの粘着ローラによる処理法の従来例について説明する。図4は従来の表示パネル基板の異物除去装置を示す模式的な正面図、図5はその平面図である。なお、ここでの説明では、表示パネル基板を偏光板が貼着される前の液晶パネルとしている。
【0011】
これらの図に示すように、この異物除去装置は、液晶パネルPが載置されるワークテーブル1と、液晶パネルPの表面上を回転移動して液晶パネルPの表面に付着した塵埃などの異物を除去する粘着ローラ2とを備えている。
【0012】
ワークテーブル1のテーブル面11には、液晶パネルPの隣接する2つの側面P1,P2と当接する第1および第2のストッパー12,13が突設されている。この例において、第1ストッパー12は、液晶パネルPの長辺側の側面P1と面接触可能な角柱板からなるのに対し、第2ストッパー13は、液晶パネルPの短辺側の側面P2と線接触可能な円柱体であり、これら2つのストッパー12,13により、液晶パネルPをワークテーブル1の所定位置に位置決めするようにしている。
【0013】
なお、図示はしていないが、ワークテーブル1には負圧吸着手段が設けられており、これにより、液晶パネルPを第1および第2のストッパー12,13で位置決めした後、テーブル面11上に確実に固定するようにしている。
【0014】
粘着ローラ2は、図6(a)に示すように、シリコーンゴムなどの弾性材料からなるロール体21の表面に粘着面22が形成された円筒体からなり、図示しない可動フレームに支持されて、図5に示すテーブル面11の長さ方向11aに沿って回転移動する。
【0015】
汎用性を持たせてサイズの異なる液晶パネルPに対応可能とするため、テーブル面11は処理する液晶パネルPのもっとも大きなサイズよりも大きな面積を有し、また、粘着ローラ2はその軸長がテーブル面11の幅方向11bの長さとほぼ同じに形成され、これにより、ワークテーブル1上に載置される各種の液晶パネルPの外形寸法に対応できるようにしている。
【0016】
なお、上記したように、粘着ローラ2は図示しない可動フレームによりテーブル面11と平行となるように支持されており、例えばシリンダなどの駆動手段にてワークテーブル1のテーブル面11に対する垂直方向・水平方向の移動が可能となっている。
【0017】
この異物除去装置によれば、液晶パネルPをテーブル面11に位置決め固定した後、上記可動フレームを介して粘着ローラ2を液晶パネルPの一端側から他端側に向けて転動させることにより、液晶パネルPの表面に付着している異物を粘着ローラ2の粘着面22によって除去することができる。
【0018】
【特許文献1】特開平10−197853号公報
【特許文献2】特開2002−45810号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
ところで、上記した粘着ローラ2による異物除去装置では、液晶パネルPに付着している異物を確実に除去するには、粘着ローラ2を十分な押圧力で液晶パネルPの表面に押し付ける必要がある。
【0020】
しかしながら、上述したように、汎用性を考慮してサイズの異なる各種の液晶パネルPに対応可能とするため、テーブル面11の面積を処理する液晶パネルPのもっとも大きなサイズよりも大きなものとし、また、粘着ローラ2をテーブル面11の幅方向11bの長さとほぼ同じとしている。
【0021】
そのため、小さなサイズの液晶パネルPの異物を除去するときは、図4に示すように、粘着ローラ2の粘着面22には、液晶パネルPに接触する部分と接触しない部分とが生じることになるが、粘着ローラ2はショア硬度が40度前後で柔らかいものであるのに対し、液晶パネルPは通常では硬質のガラス材からなる。
【0022】
したがって、粘着ローラ2を液晶パネルPの表面に対して異物を除去するのに十分な押圧力をもって転動させると、液晶パネルPの特にエッジに接触する部分の粘着面に大きな負荷がかかり、図4に示すように、その部分が押し込まれた状態で粘着ローラ2が転動することになる。
【0023】
このように、粘着ローラ2の一部分が液晶パネルPの表面側に押し込まれた状態で転動することから、何度も使用するうちに接触頻度の多い部分が変形し、図6(b)に誇張して示すように、粘着ローラ2が部分的に鼓状に偏摩耗(一部分の変形消耗)してしまうことがある。
【0024】
このような偏摩耗が発生すると、特に処理する液晶パネルPが小判サイズから大判サイズのものに機種変更された場合、粘着ローラ2と液晶パネルPとの間に隙間が生じ、その隙間部分で異物残りが生ずることがある。
【0025】
また、粘着ローラ2が削られることにより発生する削りカスが、液晶パネルPの表面やテーブル面11上に付着してしまうこともある。さらには、粘着ローラ2の平行度にも徐々に狂いが生じることにより、被清掃面に対する押圧力が均一ではなくなり、異物除去にむらが出てしまうこともある。
【0026】
したがって、本発明の課題は、表示パネル基板の付着している異物を粘着ローラにより除去するにあたって、粘着ローラが表示パネル基板の幅よりも大きく、したがって粘着ローラの一部分にて表示パネル基板に付着している異物を除去する場合においても、粘着ローラの偏摩耗を確実に防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明には、方法の発明と装置の発明とが含まれ、上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明(方法の発明)は、ワークとしての表示パネル基板が所定位置に位置決めされた状態で載置されるワークテーブルと、上記表示パネル基板に所定の圧力で押し付けられた状態で移動して上記表示パネル基板の表面に付着している異物を除去する粘着ローラとを含み、上記粘着ローラの軸長Lが、上記粘着ローラの移動方向と直交する方向の上記表示パネル基板の幅Wよりも大きく、上記粘着ローラの移動により、上記表示パネル基板の表面を清掃する表示パネル基板の異物除去方法において、上記表示パネル基板の一端側の原点位置で上記粘着ローラを上記表示パネル基板に所定の圧力で押し付け他端側に向けて移動させたのち、上記表示パネル基板の他端側で上記粘着ローラを上記表示パネル基板上から上昇させて上記原点位置に戻し、再度上記粘着ローラを上記表示パネル基板に押し付ける前に、上記粘着ローラを軸方向に所定距離ΔXだけ移動させて、上記粘着ローラの清掃に供される粘着面をずらすことを特徴としている。
【0028】
また、上記課題を解決するため、請求項2に記載の発明(装置の発明)は、ワークとしての表示パネル基板が所定位置に位置決めされた状態で載置されるワークテーブルと、上記表示パネル基板に所定の圧力で押し付けられた状態で移動して上記表示パネル基板の表面に付着している異物を除去する粘着ローラとを含み、上記粘着ローラの軸長Lが、上記粘着ローラの移動方向と直交する方向の上記表示パネル基板の幅Wよりも大きく、上記粘着ローラの移動により、上記表示パネル基板の表面が清掃される表示パネル基板の異物除去装置において、上記表示パネル基板の一端側の原点位置で上記粘着ローラを上記表示パネル基板に所定の圧力で押し付け他端側に向けて移動させる清掃工程,上記表示パネル基板の他端側で上記粘着ローラを上記表示パネル基板上から上昇させる上昇工程,上記上昇工程後に上記粘着ローラを上記原点位置に戻す後退工程の各工程をこの順序で実行する上記粘着ローラの往復移動手段と、上記清掃工程に入る前に上記粘着ローラを軸方向に所定距離ΔXだけ移動させ、少なくとも上記清掃工程中上記粘着ローラを移動後の位置に保持する上記粘着ローラの軸方向移動手段とを備えていることを特徴としている。
【0029】
請求項3に記載の発明は、上記請求項2において、(上記粘着ローラの軸長L−上記表示パネル基板の幅W)/Nなる式(Nは整数)により、上記所定距離ΔXが求められることを特徴としている。
【0030】
請求項4に記載の発明は、上記請求項2または3において、上記粘着ローラの往復移動手段には、上記粘着ローラを回転可能に支持する可動フレームを往復させる往復機構と、上記往復機構を介して上記可動フレームを上昇・下降させる昇降機構とが含まれ、上記粘着ローラの軸方向移動手段は、上記昇降機構および上記往復機構を介して上記可動フレームを上記粘着ローラの軸方向に移動させることを特徴としている。
【0031】
請求項5に記載の発明は、上記請求項2ないし4のいずれか1項において、上記粘着ローラの軸方向移動手段として、ステッピングモータにより駆動される送りねじ軸が用いられることを特徴としている。
【発明の効果】
【0032】
請求項1および請求項2に記載の発明によれば、ワークとしての表示パネル基板が所定位置に位置決めされた状態で載置されるワークテーブルと、上記表示パネル基板に所定の圧力で押し付けられた状態で移動して上記表示パネル基板の表面に付着している異物を除去する粘着ローラとを含み、上記粘着ローラの軸長Lが、上記粘着ローラの移動方向と直交する方向の上記表示パネル基板の幅Wよりも大きく、上記粘着ローラの移動により、上記表示パネル基板の表面を清掃するにあたって、上記表示パネル基板の一端側の原点位置で上記粘着ローラを上記表示パネル基板に所定の圧力で押し付け他端側に向けて移動させたのち、上記表示パネル基板の他端側で上記粘着ローラを上記表示パネル基板上から上昇させて上記原点位置に戻し、再度上記粘着ローラを上記表示パネル基板に押し付ける前に、上記粘着ローラを軸方向に所定距離ΔXだけ移動させて、上記粘着ローラの清掃に供される粘着面をずらすようにしたことにより、粘着ローラの同一箇所の一部分のみが繰り返して使用されることがないため、粘着ローラの偏摩耗(一部分の変形消耗)を防止することができる。したがって、粘着ローラの削りカスなどによる異物の再付着や、粘着ローラのテーブル面に対する平行度の狂いによる異物除去むらなどもほとんど発生することがない。また、粘着ローラの使用寿命が延ばされるため、コストダウンにもなる。
【0033】
請求項3に記載の発明によれば、(上記粘着ローラの軸長L−上記表示パネル基板の幅W)/Nなる式(Nは整数)にて粘着ローラの軸方向の移動距離ΔXを求めるようにしたことにより、表示パネル基板に対する粘着ローラの接触度合いがほぼ平均化され、粘着ローラの偏摩耗をより効果的に防止することができる。
【0034】
請求項4に記載の発明によれば、上記粘着ローラの往復移動手段には、上記粘着ローラを回転可能に支持する可動フレームを往復させる往復機構と、上記往復機構を介して上記可動フレームを上昇・下降させる昇降機構とが含まれ、上記粘着ローラの軸方向移動手段にて上記昇降機構および上記往復機構を介して上記可動フレームを上記粘着ローラの軸方向に移動させるようにしたことにより、粘着ローラのサイクリック的な往復移動系と、粘着ローラの軸方向移動系とを個別的に制御することができる。
【0035】
請求項5に記載の発明によれば、上記粘着ローラの軸方向移動手段として、ステッピングモータにより駆動される送りねじ軸を用いることにより、粘着ローラの軸方向移動距離ΔXを高精度に制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
次に、図1ないし図3により、本発明の実施形態について説明する。図1は本発明による異物除去方法を説明するための模式的な平面図,図2は本発明による異物除去装置を示す一部に断面を含む模式的な正面図,図3は図2の模式的な左側面図である。なお、この実施形態の説明において、先に説明した従来例と変更を要しない構成要素には同じ参照符号を付している。
【0037】
まず、図1を参照して本発明の異物除去方法について説明する。本発明においても、先に説明した従来例と同じく、ワーク(被清掃物)である表示パネル基板が載置されるワークテーブル1と、ワークテーブル1上で表示パネル基板に付着している塵埃などの異物を除去する粘着ローラ2とを用いる。この例において、被清掃物である表示パネル基板を液晶パネルPとしている。
【0038】
ワークテーブル1のテーブル面11は、サイズの異なる液晶パネルPにも対応できるようにするため、すなわち汎用性を持たせるため、清掃が予定される最大サイズの液晶パネルPよりも大きな面積を有していることが好ましい。
【0039】
テーブル面11には、液晶パネルPの位置決め手段として、液晶パネルPの隣接する2つの側面P1,P2に当接するように突設された第1および第2のストッパー12,13が設けられている。この場合、小判サイズから大判サイズの液晶パネルPまでを載置可能とするため、第1および第2のストッパー12,13は、テーブル面11の片隅(この例では、図1の右上隅)に配置される。
【0040】
第1のストッパー12は液晶パネルPの長辺側の側面P1と面接触するように突設された角柱板で、第2のストッパー13は液晶パネルPの短辺側の側面P2と接触するように突設された円柱体であってよく、液晶パネルPをこれらのストッパー12,13に突き当てることにより、その位置決めを行うことができる。
【0041】
また、ワークテーブル1には、図示しない負圧吸着手段が備えられており、第1および第2のストッパー12,13により液晶パネルPを位置決めした後に、その負圧吸着手段により液晶パネルPを確実に固定することができる。
【0042】
粘着ローラ2には、先の図6(a)に示したように、シリコーンゴムなどの弾性材料からなるロール体21の表面に粘着面22が形成された円筒体が用いられてよい。粘着ローラ2は、後述する可動フレームに支持されて液晶パネルPの長辺側の側面P1の延在方向(矢印Yで示す図1において上下方向)に沿って移動する。なお、粘着ローラ2の移動方向Yと直交する粘着ローラ2の軸方向(図1において左右方向)をXとする。
【0043】
ここで、粘着ローラ2の軸方向の長さ(軸長)をLとし、液晶パネルPの短辺側の側面P2の幅をWとすると、粘着ローラ2は液晶パネルPの幅Wよりも大きい軸長Lを有している(W<L)。なお、ワークテーブル1の第1のストッパー12と対向する側面を1aとして、粘着ローラ2の軸長Lは、第1のストッパー12とワークテーブル1の上記側面1aとの間の距離に等しいことが好ましい。
【0044】
液晶パネルPを清掃するにあたって、粘着ローラ2は、液晶パネルPの一端PY1側で下降し、液晶パネルPに所定の圧力で押し付けられて液晶パネルPの他端PY2側に向けて転がりながら移動し、他端PY2側に至ると液晶パネルPから上昇し一端PY1側に後退する一連のサイクリック的な動作を液晶パネルPごとに繰り返すが、本発明では、次のようにして同じサイズの液晶パネルPで粘着ローラ2の同一の一部分が繰り返し使用されることによる偏摩耗(一部分の変形消耗)を防止するようにしている。
【0045】
すなわち、液晶パネルPを清掃するごとに、粘着ローラ2を軸方向Xに所定距離ΔXだけ移動して、粘着ローラ2の粘着面を満遍なく使用する。粘着ローラ2の軸方向移動距離ΔXは任意に決められてよいが、次式の
(粘着ローラ2の軸長L−液晶パネルPの幅W)/N
なる式(Nは整数)により、求められることが好ましい。以下に説明する例ではNを4としている。
【0046】
説明の便宜上、液晶パネルPの一端PY1を粘着ローラ2の移動方向Yにおける原点位置PY1とし、第1のストッパー12により規制される液晶パネルPの長辺側の側面P1を粘着ローラ2の軸方向における原点位置PX1とする。
【0047】
なお、1枚の液晶パネルPに対して清掃(異物除去)が2回行われてもよいが、ここでは1枚の液晶パネルPに対して1回だけ清掃が行われ、清掃済みの液晶パネルPは取り去られ、新たな未清掃の液晶パネルPがワークテーブル1上にセットされるものとする。
【0048】
まず、1枚目の液晶パネルPについては、(A)のように、粘着ローラ2の一端を軸方向の原点位置PX1に合わせて清掃を行う。清掃後、粘着ローラ2が移動方向Yの原点位置PY1に戻され、2枚目の液晶パネルPを清掃する場合には、(B)のように、粘着ローラ2を上記距離ΔXだけ右方向に移動させる。同様に、3枚目,4枚目,5枚目の各液晶パネルPを清掃するごとに、(C)→(D)→(E)のように、粘着ローラ2を順次上記距離ΔXだけ右方向に移動させる。
【0049】
この例では、5枚目の液晶パネルPを清掃するときの(E)の状態が粘着ローラ2の最右端位置であるため、6枚目〜10枚目の各液晶パネルPについては、それらの清掃ごとに(E)→(D)→(C)→(B)→(A)のように、今度は粘着ローラ2を順次上記距離ΔXだけ左方向に移動させる。
【0050】
なお、最右端位置の(E)の状態から軸方向Xの原点位置PX1である(A)の状態に一気に戻し、その後上記と同様に(A)→(B)→(C)→(D)→(E)と移動させてもよい。
【0051】
いずれにしても、本発明によれば、液晶パネルPの清掃ごとに、粘着ローラ2を軸方向Xに好ましくは上記移動距離ΔXずつ移動させることにより、液晶パネルPに対する粘着ローラ2の接触度合いがほぼ平均化され、粘着ローラ2の偏摩耗を効果的に防止することができる。
【0052】
次に、図2,図3により、本発明の異物除去装置について説明する。この異物除去装置は、ワークテーブル1のテーブル面11と平行に延びる可動フレーム110を備え、可動フレーム110の一端側(図3で左端側)に粘着ローラ2が支持される。この例では、粘着ローラ2のほかに粘着ローラ2よりも強粘着の転写ローラ3を備える。
【0053】
転写ローラ3は、可動フレーム110の粘着ローラ軸支部分から上方に延びる支持アーム111に粘着ローラ2と接するように支持されており、粘着ローラ2に付着した異物は転写ローラ3側に移される。なお、粘着ローラ2および転写ローラ3の回転方式は、モータによる駆動方式でなくフリー回転方式である。
【0054】
図3に示すように、可動フレーム110は、水平方向支持体120によりワークテーブル1のテーブル面11に対し平行(水平)に支持された状態で往復的に駆動される。水平方向支持体120は、可動フレーム110が挿通される例えば筒体から構成されてよい。
【0055】
この例においては、可動フレーム110を往復的に駆動するため、水平方向支持体120には、支持アーム121を介して図示しないモータにより駆動されるピニオン歯車122が設けられ、可動フレーム110の他端側(図3で右端側)には、ピニオン歯車122とかみ合うラック112が形成される。
【0056】
水平方向支持体120は、垂直方向支持体130により垂直方向に駆動される。垂直方向支持体130は、例えばエアシリンダもしくは油圧シリンダなどのシリンダ室131を有し、水平方向支持体120は、シリンダ室131に嵌合するピストンロッド123を備える。これにより、水平方向支持体120は、可動フレーム110を水平に支持した状態で、垂直方向支持体130により垂直方向に駆動される。
【0057】
また、この異物除去装置は、ワークテーブル1の脇で粘着ローラ2の軸方向Xに沿って水平に配置されたガイドレール140を備え、このガイドレール140の摺動筒141に垂直方向支持体130が支持される。
【0058】
また、この異物除去装置は、ガイドレール140と平行に配置される例えばボールネジからなる送りねじ軸151を備える。この送りねじ軸151は、カップリング153を介してステッピングモータ150と連結される。送りねじ軸151の従動体152にガイドレール140の摺動筒141が一体的に連結される。
【0059】
これにより、可動フレーム110に支持されている粘着ローラ2は、水平方向支持体120のピニオン歯車122とラック112によりワークテーブル1のテーブル面11に対し平行である水平方向に往復的に駆動され、垂直方向支持体130により垂直方向(上下方向)に駆動されるとともに、ステッピングモータ150の送りねじ軸151により粘着ローラ2の軸方向Xに沿って移動可能である。
【0060】
したがって、上記ピニオン歯車122,上記垂直方向支持体130および上記ステッピングモータ150を所定のシーケンス制御に基づいて適宜駆動することにより、図1に示したように、清掃に供される各液晶表示パネルPごとに粘着ローラ2をその軸方向Xに所定距離ΔXだけ移動させることができる。
【0061】
なお、上記実施形態の説明では、粘着ローラ2が移動方向Yの原点位置PY1に戻された時点で、粘着ローラ2をその軸方向Xに沿って所定距離ΔXだけ移動させるようにしているが、例えば粘着ローラ2を液晶パネルPの他端PY2側で上昇させる時点から移動方向Yの原点位置PY1に戻されるまでの間で、粘着ローラ2をその軸方向Xに沿って所定距離ΔXだけ移動させるようにしてもよい。
【0062】
また、ステッピングモータ150は、入力パルス数により回転角、すなわち送りねじ軸151の従動体152の移動距離を高精度に制御可能なモータであるため、図示しない操作卓で、ステッピングモータ150に対する入力パルス数や、粘着ローラ2の軸長Lおよび液晶パネルPの幅W、それに除数としての上記整数Nを入力することにより、図1で説明した異物除去方法を自動化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明による異物除去方法を説明するための模式的な平面図。
【図2】本発明による異物除去装置を示す一部に断面を含む模式的な正面図。
【図3】図2の模式的な左側面図。
【図4】従来の表示パネル基板の異物除去装置の一例を示す模式的な正面図。
【図5】上記従来の表示パネル基板の異物除去装置を示す模式的な平面図。
【図6】(a)異物除去装置に用いられる粘着ローラ示す模式的な斜視図,(b)偏摩耗した粘着ローラ示す模式的な斜視図。
【符号の説明】
【0064】
1 ワークテーブル
11 テーブル面
12,13 ストッパー
2 粘着ローラ
21 ロール体
22 粘着面
3 転写ローラ
110 可動フレーム
112 ラック
120 水平方向支持体
122 ピニオン歯車
123 ピストンロッド
130 垂直方向支持体
131 シリンダ室
140 ガイドレール
141 摺動筒
150 ステッピングモータ
151 送りねじ軸
152 従動体
P 液晶パネル(表示パネル基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークとしての表示パネル基板が所定位置に位置決めされた状態で載置されるワークテーブルと、上記表示パネル基板に所定の圧力で押し付けられた状態で移動して上記表示パネル基板の表面に付着している異物を除去する粘着ローラとを含み、上記粘着ローラの軸長Lが、上記粘着ローラの移動方向と直交する方向の上記表示パネル基板の幅Wよりも大きく、上記粘着ローラの移動により、上記表示パネル基板の表面を清掃する表示パネル基板の異物除去方法において、
上記表示パネル基板の一端側の原点位置で上記粘着ローラを上記表示パネル基板に所定の圧力で押し付け他端側に向けて移動させたのち、上記表示パネル基板の他端側で上記粘着ローラを上記表示パネル基板上から上昇させて上記原点位置に戻し、再度上記粘着ローラを上記表示パネル基板に押し付ける前に、上記粘着ローラを軸方向に所定距離ΔXだけ移動させて、上記粘着ローラの清掃に供される粘着面をずらすことを特徴とする表示パネル基板の異物除去方法。
【請求項2】
ワークとしての表示パネル基板が所定位置に位置決めされた状態で載置されるワークテーブルと、上記表示パネル基板に所定の圧力で押し付けられた状態で移動して上記表示パネル基板の表面に付着している異物を除去する粘着ローラとを含み、上記粘着ローラの軸長Lが、上記粘着ローラの移動方向と直交する方向の上記表示パネル基板の幅Wよりも大きく、上記粘着ローラの移動により、上記表示パネル基板の表面が清掃される表示パネル基板の異物除去装置において、
上記表示パネル基板の一端側の原点位置で上記粘着ローラを上記表示パネル基板に所定の圧力で押し付け他端側に向けて移動させる清掃工程,上記表示パネル基板の他端側で上記粘着ローラを上記表示パネル基板上から上昇させる上昇工程,上記上昇工程後に上記粘着ローラを上記原点位置に戻す後退工程の各工程をこの順序で実行する上記粘着ローラの往復移動手段と、
上記清掃工程に入る前に上記粘着ローラを軸方向に所定距離ΔXだけ移動させ、少なくとも上記清掃工程中上記粘着ローラを移動後の位置に保持する上記粘着ローラの軸方向移動手段とを備えていることを特徴とする表示パネル基板の異物除去装置。
【請求項3】
(上記粘着ローラの軸長L−上記表示パネル基板の幅W)/Nなる式(Nは整数)により、上記所定距離ΔXが求められることを特徴とする請求項2に記載の表示パネル基板の異物除去装置。
【請求項4】
上記粘着ローラの往復移動手段には、上記粘着ローラを回転可能に支持する可動フレームを往復させる往復機構と、上記往復機構を介して上記可動フレームを上昇・下降させる昇降機構とが含まれ、上記粘着ローラの軸方向移動手段は、上記昇降機構および上記往復機構を介して上記可動フレームを上記粘着ローラの軸方向に移動させることを特徴とする請求項2または3に記載の表示パネル基板の異物除去装置。
【請求項5】
上記粘着ローラの軸方向移動手段として、ステッピングモータにより駆動される送りねじ軸が用いられることを特徴とする請求項2ないし4のいずれか1項に記載の表示パネル基板の異物除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−322633(P2007−322633A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−151528(P2006−151528)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(000103747)オプトレックス株式会社 (843)
【Fターム(参考)】