説明

表示パネル検査治具

【課題】表示パネルに光を照射して異物検査を行なうための表示パネル検査治具において、表示パネルの載せ替え作業がしやすく、なおかつ、光漏れを抑えることができるようにする。
【解決手段】表示パネル検査治具103は、表示パネル1に下方から光を照射するための開口部2と、表示パネル1を載せるための平坦な上面5において開口部2の外周を取り囲むように延在し、表示パネル1の下面のうち外周縁部に沿った枠状の領域に前記上面を当接させて下方から支えるための支持領域11と、開口部2の外周に近接した位置で支持領域11に隣接するように上面5に設けられた曲面状に凹んだ取出し用凹部9とを有する。取出し用凹部9は、表示パネル1が載置されたときに表示パネル1が覆う領域に対して支持領域11を分断しない程度に開口部2寄りに部分的に入り込んで配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示パネルなどの表示パネルを検査する際に表示パネルを支持しておくための治具、すなわち、表示パネル検査治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示パネルなどの表示パネルの製造現場においては、作製した表示パネルの検査が行なわれる。その際には表示領域に異常がないか、たとえば異物が混入していないかなどを調べるために、表示領域のほぼ全域に照射されるように光を当てて光の透過状況を確認することが行なわれる場合がある。そのような検査に関する技術の一例として、表示パネル内の異物の有無を検査するために表示パネルの全面に光を照射して透過状況を確認する検査装置および検査方法が、特開2004−77261号公報(特許文献1)に記載されている。
【特許文献1】特開2004−77261号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
表示パネルの検査のために表示領域のほぼ全域に光を照射する際、表示パネルを支持する治具としては、表示パネルの表示領域の形状に対応する開口部を有する治具が用いられる。検査のためには、治具の開口部を覆うように表示パネルを載せ、下方から光を照射して上方から光の透過状況を確認する。この治具に対する表示パネルの載せ替え作業は手作業で行なう場合があり、表示パネルの取り出しがしやすいことが求められる。ただし、上方において透過光を取得しようとするとき、光源から発せられた光のうち表示パネルを透過せずに表示パネルより上側に到達する光、すなわち光漏れがあると検査精度が落ちるので、治具の構成としては、なるべく光漏れを起こさないことも求められる。
【0004】
そこで、本発明は、検査のための表示パネルの載せ替え作業がしやすく、なおかつ、光漏れを抑えることができる表示パネル検査治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明に基づく表示パネル検査治具は、検査対象となる表示パネルを載せるための平坦な上面を有し、遮光性材料で形成された台部材を備え、前記台部材は、前記表示パネルに下方から光を照射するために前記上面において貫通した開口部と、前記開口部から下方にいくにつれて広くなっているテーパ面と、前記上面において前記開口部の外周を取り囲むように延在し、前記表示パネルの下面のうち外周縁部に沿った枠状の領域に前記上面を当接させて下方から支えるための支持領域と、前記開口部の外周に近接した位置で前記支持領域に隣接するように前記上面に設けられた曲面状に凹んだ取出し用凹部とを有し、前記取出し用凹部は、前記表示パネルが載置されたときに前記表示パネルが覆う領域に対して前記支持領域を分断しない程度でかつ前記テーパ面に連通しない程度に前記開口部寄りに部分的に入り込んで配置されている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、取出し用凹部に指を入れて表示パネルの外縁部を保持することによって容易に表示パネルを持ち上げることができる。しかも、開口部の外周において台部材が途切れる箇所はないので、光漏れを防ぐことができ、しかも、取出し用凹部は上面から掘り下げることによって形成することができるので、段差ができることもなく、追加部品も必要なく、安価で容易に作製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
発明者らは、まず、図1、図2に示すような構造の表示パネル検査治具としての治具101を検討した。図2は図1におけるII−II線に関する矢視断面図である。この治具101は、上面5を有し、表示パネル1の形状に合わせた略長方形の開口部2を有し、下方から光3を照射する仕組みとなっている。開口部2の下側は下方にいくにつれて広がるテーパ面4となっている。この治具101では、載置した表示パネル1を取り出しやすいように、開口部2の長辺の途中において上面5から掘り下げるようにしてそれぞれ切欠き部6が設けられている。検査が終わるなどして表示パネル1を取り出そうとする際には、この切欠き部6に指を入れて表示パネル1の外縁部を保持することによって表示パネル1を持ち上げることができる。
【0008】
しかし、この治具101では、切欠き部6は治具101を上から見たときに長辺の中の一定幅を占めるような区間(図1参照)に渡って、上面5から一定深さで削り取った形(図2参照)となっていたため、そのため、切欠き部6においてはテーパ面4の一部が欠落し、その空間を通ることで光3の一部が光漏れ7となってしまい、検査精度を劣化させてしまうという問題があった。
【0009】
そこで、発明者らは次に、図3、図4に示すような治具102を検討した。図4は図3におけるIV−IV線に関する矢視断面図である。治具102は、治具101に遮光プレート8を追加したものである。切欠き部6によって開口した領域を下側から塞ぐように遮光プレート8をそれぞれ貼り付けることによって、切欠き部6の内部を光が通り抜けて光漏れとなることは防止できるが、遮光プレート8は別部材として取り付けられているものであるので、部位Z1において上面5と遮光プレート8の上端とが一致しないことがあり得る。部位Z1において、もし遮光プレート8の上端が上面5より低くなっていると光漏れが発生するし、上面5より高くなっていると、表示パネル1を載置したときに不安定となる。また、このような段差があることによって表示パネルや作業者の指先が引っかかったり、表示パネルが欠けたりすることもある。このような光漏れや段差発生を避けるためには、部位Z1で高さを精密に一致させる必要があるが、そのように遮光プレート8を作製するためには高精度な加工が必要となってしまう。また、部位Z2においても、治具102の母材と遮光プレート8の下部との形状同士がぴったり合うことが求められ、複雑な加工が必要となってしまう。
【0010】
そこで、これらの治具101,102における問題点への考察を踏まえて、発明者らは次に説明する治具103に関する発明に到達した。
【0011】
(実施の形態1)
(構成)
図5、図6を参照して、本発明に基づく実施の形態1における表示パネル検査治具としての治具103について説明する。図6は図5におけるVI−VI線に関する矢視断面図である。この治具103は、検査対象となる表示パネル1を載せるための平坦な上面5を有し、遮光性材料で形成された台部材10を備える。台部材10は、表示パネル1に下方から光3を照射するために上面5において貫通した開口部2と、開口部2から下方にいくにつれて広くなっているテーパ面4と、上面5において開口部2の外周を取り囲むように延在し、表示パネル1の下面のうち外周縁部に沿った枠状の領域に上面5を当接させて下方から支えるための支持領域11と、開口部2の外周に近接した位置で支持領域11に隣接するように上面5に設けられた曲面状に凹んだ取出し用凹部9とを有する。取出し用凹部9は、表示パネル1が載置されたときに表示パネル1が覆う領域に対して支持領域11を分断しない程度でかつテーパ面4に連通しない程度に開口部2寄りに部分的に入り込んで配置されている。図5におけるZ3部を拡大したところを図7に示す。支持領域11が一定幅で上下方向に帯状に延在しているところに、取出し用凹部9の外形線9aが入り込んでいるが、この外形線9aは、支持領域11の内側の外形線すなわち開口部2の外形線に到達することはなく、外形線9aが最も深く進入する部位12においても外形線9aは開口部2からは距離Gだけ離隔している。ただし、距離Gは支持領域11の幅Wよりは小さくなっている。すなわち、取出し用凹部9の外形線9aは確実に支持領域11の中にまで進入している。
【0012】
なお、表示パネル1は液晶表示パネルであってもよく、他の方式の表示パネルであってもよい。台部材10の材料は、アルミニウムなどの金属であってよいが、樹脂であってもよい。いずれの場合であっても、台部材10として使用するときに遮光性、耐食性、加工しやすさ、耐久性、硬度が十分あることが求められる。
【0013】
(作用・効果)
本実施の形態における治具103においては、検査が終わるなどして表示パネル1を取り出そうとする際には、取出し用凹部9に指を入れて表示パネル1の外縁部を保持することによって表示パネル1を持ち上げることができる。取出し用凹部9の内側からであれば、わずかに露出している表示パネル1の下面に爪をひっかけることも可能であるので、容易に表示パネル1を引き上げることができる。
【0014】
本実施の形態では、開口部2の辺に切欠き部を設けるのではなく、上述したような取出し用凹部9を設けることとし、この中では最も肉薄となる箇所である部位12においても距離Gに対応する一定量の肉厚が確保されているので、開口部2の外形線が途切れることはなく、したがってテーパ面4が欠落することもない。その結果、光漏れは防ぐことができる。しかも、取出し用凹部9は台部材10の上面5に対して除去加工を行なうことによって形成されるので、表示パネル1に当接する支持領域11の面はすべて元々からの台部材10の上面5とすることができ、高さ方向に段差ができることもなく、安定して表示パネル1を載せることができる。本実施の形態では、追加部品もなく、従来からある台部材を加工するだけでよいので、治具のコストを抑えることができる。
【0015】
また、最も薄くなる箇所すなわち取出し用凹部9の外形線9aが開口部2に最接近する部分は部位12の1点だけとなるので、強度的にも強くすることができる。
【0016】
取出し用凹部9は市販のボールエンドミルによって加工することができるので、加工が容易である。ただし、加工の際にはテーパ面4まで到達しない程度の深さに掘ることとする。
【0017】
なお、本実施の形態では、長方形の開口部2の長辺の途中にそれぞれ対応する位置に取出し用凹部9を設けることとしたが、取出し用凹部9を設ける位置はこれに限られない。短辺の途中に対応する位置に取出し用凹部9を設けることとしてもある程度の効果は得られる。また、表示パネルが長方形以外の形状であった場合には開口部の形状自体が長方形以外の形状であることも考えられるが、その場合も適当に選択した辺の途中に対応する位置に取出し用凹部を設けることとしてもある程度の効果は得られる。もっとも、いずれにせよ、取出し用凹部9は、開口部2を挟んで互いに対向する関係にある2ヶ所にそれぞれ設けられていることが好ましい。このようになっていれば、表示パネルを持ち上げようとするときに、表示パネルを対向する2辺において挟むように持つことができ、取出し作業がしやすいからである。
【0018】
なお、取出し用凹部9は、球面状であることが好ましい。そのようになっていればテーパ面4と干渉がないかどうかの検証がしやすく、設計が容易だからである。また、取出し用凹部9の内部に異物が付着したときの除去も容易となる。ここでいう「球面状」とは球面の一部をなす形状の曲面という意味である。取出し用凹部9は、球面状であることが好ましいが、球面状である代わりに楕円球面状であったり、長円状に曲面で掘り下げた形状であってもよい。
【0019】
なお、本発明に基づく表示パネル検査治具によって行なう検査は、異物混入に対する検査に限らず、傷、打痕などの外観検査であってもよく、また、電気的信号を与えて表示領域の画素を動作させて行なう点欠陥、線欠陥、表示ムラなどに関する検査であってもよい。いずれの検査であっても、治具に設置した表示パネルに下方から何らかの光を照射して行なう検査であればよく、本発明に基づく表示パネル検査治具は、これらの様々な検査において利用可能である。
【0020】
なお、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に至る前に発明者らが検討した第1の表示パネル検査治具の部分平面図である。
【図2】図1におけるII−II線に関する矢視断面図である。
【図3】本発明に至る前に発明者らが検討した第2の表示パネル検査治具の部分平面図である。
【図4】図3におけるIV−IV線に関する矢視断面図である。
【図5】本発明に基づく実施の形態1における表示パネル検査治具の部分平面図である。
【図6】図5におけるVI−VI線に関する矢視断面図である。
【図7】図5におけるZ3部の拡大説明図である。
【符号の説明】
【0022】
1 表示パネル、2 開口部、3 光、4 テーパ面、5 上面、6 切欠き部、7 光漏れ、8 遮光プレート、9 取出し用凹部、9a 外形線、10 台部材、11 支持領域、12 部位、101,102,103 治具。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象となる表示パネルを載せるための平坦な上面を有し、遮光性材料で形成された台部材を備え、
前記台部材は、前記表示パネルに下方から光を照射するために前記上面において貫通した開口部と、前記開口部から下方にいくにつれて広くなっているテーパ面と、前記上面において前記開口部の外周を取り囲むように延在し、前記表示パネルの下面のうち外周縁部に沿った枠状の領域に前記上面を当接させて下方から支えるための支持領域と、前記開口部の外周に近接した位置で前記支持領域に隣接するように前記上面に設けられた曲面状に凹んだ取出し用凹部とを有し、
前記取出し用凹部は、前記表示パネルが載置されたときに前記表示パネルが覆う領域に対して前記支持領域を分断しない程度でかつ前記テーパ面に連通しない程度に前記開口部寄りに部分的に入り込んで配置されている、表示パネル検査治具。
【請求項2】
前記取出し用凹部は、前記開口部を挟んで互いに対向する関係にある2ヶ所にそれぞれ設けられている、請求項1に記載の表示パネル検査治具。
【請求項3】
前記取出し用凹部は、球面状である、請求項1または2に記載の表示パネル検査治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−103660(P2009−103660A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−277866(P2007−277866)
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】