説明

表示強度推定方法、表示装置及びコンピュータプロクグラム

【課題】表示パネルの周辺部で測定した輝度等の表示強度から、中央部の表示強度を推定することができる表示強度推定方法、表示装置及びコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】光センサ4aにて表示面の周辺部の表示強度を測定し、外部光センサ30にて表示面の中央部の表示強度を測定し、これらの測定値の関連値を表示強度関連データ21aとして予め記憶し、表示装置1に内蔵した温度センサ4bにて表示面の周辺部の温度を測定し、表示パネル3の背面に設けた温度センサ6aにて表示面の中央部の温度を測定し、これらの測定値を予め記憶しておく。キャリブレーション処理等を行う際には、光センサ4aにて表示面の周辺部の表示強度を測定し、表示強度関連データ21aを参照して中央部の表示強度を推定する。更に温度センサ4b、6aによる測定温度に基づき、表示効率温度特性データ21bから表示効率の変動率を求め、推定表示強度を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリブレーション又は表示特性のチェック等のために表示装置の表示面の輝度又は色度等の表示強度を推定する表示強度推定方法、表示装置及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置の輝度又は色度等の表示強度は、その使用に伴って経年変化する。高い表示品質が要求される印刷現場や医療現場においては、出荷後にユーザ側で表示強度を測定するセンサを用い、表示強度が理想値を維持しているかを検査し、理想値が維持されていない場合は表示強度が理想値となるよう表示装置を校正する、いわゆるキャリブレーション(Calibration)作業が行われている。表示装置としては、現在一般的に用いられている液晶表示装置ばかりでなく、PDP(Plasma Display Panel)表示装置、OLED(Organic light−Emitting Diode)表示装置、CRT(Cathode Ray Tube)表示装置等、駆動方式の異なるものも含まれる。
【0003】
特許文献1においては、液晶表示部に対向して設けられた測光部にて画質データを測定し、予め定めた理想的な登録画質データを記憶しておき、測定した画質データと登録画質データとの差分データを抽出して、差分データが所定の値以下となるように液晶表示部を制御する自己調整型表示システムが提案されている。この自己調整型表示システムでは、人手を介することなく測光することができるため、ネットワークを介した遠隔操作により又は必要時に自動的に起動してキャリブレーションを行うことができるという利点がある。
【0004】
しかしながら、測光部を液晶表示装置のベゼルに収容する構成とした場合、測光部により測光できる範囲は液晶の表示面の周辺部のみである。表示パネルは表示面の周辺部ほど輝度ムラ又は色ムラ等が発生しやすいため、表示面の周辺部での測光結果を基にキャリブレーションを行う場合には、最適な階調特性で表示を行うことができない恐れがある。特許文献1は、表示装置の表示面の周辺部にてセンサで取得した輝度等の表示強度から、表示面の中央部での表示強度を推定する技術を提案しており、以下にこの技術を簡単に説明する。図14は、従来の表示パネルの表示面の周辺部の表示強度から中央部の表示強度を推定する一の方法を説明するための模式図である。図において101は表示装置であり、表示装置101の上部には表示パネルの表示面の周辺部の輝度を自動的に測定することができる光センサ102が搭載されている。また、表示面の中央部の輝度をユーザが手動で測定するための外部光センサ103を備えており、光センサ102の測定値YRと外部光センサ103の測定値YSとの相対比を相対比算出部100が以下の式に基づいて算出することにより、図示のような相対比LUT(Look up Table)を作成する、いわゆるコレレーション(Correlation)作業が行われる。

(相対比)=(光センサの測定値)/(外部光センサの測定値)
【0005】
一例として図示した相対比LUTは、表示装置101が256階調で表示を行うことができる場合のものである。この相対比LUTを作成するためには、表示装置101の表示面の表示を1階調ずつ256段階で切り替えて表示し、各階調で光センサ102及び外部光センサ103による測定を行ってもよいし、図示するように特定の測定階調のみ測定を行うようにしてもよい。表示装置101のキャリブレーションを行う場合には、光センサ102のみの測定を行って表示面の周辺部の測定値を取得し、相対比LUTを参照することによって、表示面の中央部の推定測定値を算出し、算出した中央部の推定測定値を基にキャリブレーションを行うことができる。
【特許文献1】特許第4393433号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
画像を表示する表示面を構成する物質(液晶表示装置であれば液晶材やバックライトで用いられる蛍光管等)には温度による特性変化があることが知られている。図15は液晶材の温度による特性変化に起因する発光効率の変化を示した温度特性図である。X軸は表示面の周囲温度を示し、Y軸は表示面の発光効率、つまりバックライトの光量が同一であって液晶材への駆動電圧が同一である時に表示面に透過する光量を示す。図14によれば発光効率は35℃付近でピークとなり、35℃より温度が低下するに従い発光効率は悪化し、同様に35℃より温度が上昇するに従っても発光効率は悪化することが示されている。
【0007】
表示面の温度は、表示画像の内容や表示時間によって変動する。また、表示面の温度分布は一様ではなく、回路基板の配置や筐体形状によってばらつき、更にその分布は時間とともに変化する。温度分布のばらつきは表示面の輝度値のばらつき、いわゆる輝度ムラを生じることになる。また、相対比LUTの作成後、表示装置を別の環境へ移設したり、季節が変化したりすれば当然室温は変化し、相対比LUTの作成時とは異なる輝度ムラがキャリブレーション時に生じる恐れもある。上述のように、予め相対比LUTを取得して記憶しておくことによって、光センサ102の測定値から表示面の中央部の推定測定値を精度よく推定することができるが、相対比LUTを作成した時点と中央部の測定値を推定する時点で表示面の温度及びその分布が変動した場合、最適な相対比が異なってくるため、表示面の中央部の測定値を精度よく推定することができないという問題がある。
【0008】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、複数の表示領域について表示強度を予め測定し、測定した複数の表示領域の表示強度を関連づけた関連値を記憶しておき、更に表示強度を記憶する時点の表示面の温度についても記憶しておき、表示面の表示強度を測定して、記憶しておいた表示強度の関連値を基に対応する他の表示領域の表示強度を推定し、更に他の表示領域の表示強度を推定する時点の表示面の温度を測定し、予め記憶した表示面の温度並びに測定した表示面の温度との比較から推定した他の表示領域の表示強度を補正する表示強度推定方法及びコンピュータプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1発明に係る表示強度推定方法は、表示パネルと、前記表示パネルの表示面の表示強度を測定する表示強度測定手段と、温度を測定する温度測定手段とを備えた表示装置に対し、前記表示強度測定手段に対面しない表示領域の表示強度を推定する表示強度推定方法において、前記表示強度測定手段に対面する表示領域の表示効率と、前記表示強度測定手段に対面しない表示領域の表示効率とを、異なる温度毎に前記表示面の表示領域の表示効率群としてを予め記憶しておき、前記表示強度測定手段に対面する表示領域の表示強度と、前記表示強度測定手段に対面しない表示領域の表示強度とを関連づける関連値を予め記憶しておくとともに、前記関連値を記憶したときの前記表示面の任意の表示領域の温度を予め測定しておくコレレーションステップと、前記コレレーションステップの後、前記温度測定手段で前記表示面の任意の表示領域の温度を測定し、前記表示強度測定手段で前記表示強度測定手段に対面する表示領域の表示強度を測定し、前記測定した表示強度測定手段に対面する表示領域の表示強度及び前記予め記憶した関連値に基づいて、前記表示強度測定手段の対面しない表示領域の表示強度を推定し、前記コレレーションステップ時に予め記憶した任意の表示領域の温度に対応する第1の表示効率を前記予め記憶した表示効率群から求め、前記測定した任意の表示領域の温度に対応する第2の表示効率を前記予め記憶した表示効率群から求め、これら第1、第2の表示効率の比較から変化率を求め、求めた変化率に基づき前記推定された前記表示強度測定手段に対面しない表示領域の表示強度を補正するキャリブレーションステップを備えることを特徴とする。
【0010】
また、第2発明に係る表示強度推定方法は、表示パネルと、前記表示パネルの表示面の表示強度を測定する表示強度測定手段と、温度を測定する温度測定手段とを備えた表示装置に対し、前記表示強度測定手段に対面しない表示領域の表示強度を推定する表示強度推定方法において、前記表示強度測定手段に対面する表示領域の表示効率と、前記表示強度測定手段に対面しない表示領域の表示効率とを、異なる温度毎に前記表示面の表示領域の表示効率群としてを予め記憶しておき、前記表示強度測定手段に対面する表示領域の表示強度と、前記表示強度測定手段の対面しない表示領域の表示強度とを関連づける関連値を予め記憶しておくとともに、前記関連値を記憶したときの前記表示面の任意の表示領域の温度を予め測定し、前記記憶した表示効率群からその温度に対応する第1の表示効率を取得し、これを記憶しておくコレレーションステップと、前記コレレーションステップの後、前記温度測定手段で前記表示面の任意の表示領域の温度を測定し、前記表示強度測定手段で前記表示強度測定手段に対面する表示領域の表示強度を測定し、前記測定した前記表示強度測定手段に対面する表示領域の表示強度及び前記予め記憶した関連値に基づいて、前記表示強度測定手段に対面しない表示領域の表示強度を推定し、前記コレレーションステップ時に予め記憶した任意の表示領域の温度に対応する第1の表示効率を取得し、前記測定した任意の表示領域の温度に対応する第2の表示効率を前記予め記憶した表示効率群から求め、これら第1、第2の表示効率の比較から変化率を求め、求めた変化率に基づき前記推定された前記表示強度測定手段に対面しない表示領域の表示強度を補正するキャリブレーションステップを備えることを特徴とする。
【0011】
また、第3発明に係る表示強度推定方法は、前記表示面のいずれかの表示領域の温度のいずれかの表示領域の温度を測定し、測定した表示領域の温度から他の表示領域の温度を推定することを特徴とする。
【0012】
また、第4発明に係る表示装置は、表示パネルと、前記表示面の表示領域の表示強度を測定する表示強度測定手段と、温度を測定する温度測定手段とを備える表示装置において、前記表示強度測定手段が対面する表示領域の表示強度と、前記表示強度測定手段が対面しない表示領域の表示強度とを関連づける関連値を予め測定しておき、この関連値と、前記表示強度測定手段で測定した前記表示強度測定手段が対面する表示領域の表示強度とに基づき、前記表示強度測定手段が対面しない表示領域の表示強度を推定するとき、前記表示面の任意の表示領域の温度を前記温度測定手段で測定することを特徴とする。
【0013】
また、第5発明に係るコンピュータプログラムは、表示パネルと、前記表示パネルの表示面の表示強度を測定する表示強度測定手段と、温度を測定する温度測定手段とを備える表示装置に接続されたコンピュータにインストールされ、前記コンピュータに前記表示装置表示強度測定手段に対面しない表示領域の表示強度を推定させるコンピュータプログラムにおいて、前記コンピュータに、前記表示強度測定手段に対面する表示領域の表示効率と、前記表示強度測定手段に対面しない表示領域の表示効率とを、異なる温度毎に前記表示面の表示領域の表示効率群としてを予め記憶させておき、前記表示面の前記表示強度測定手段に対面する表示領域の表示強度と、前記表示強度測定手段に対面しない表示領域の表示強度とを関連づける関連値を予め記憶させるとともに、前記関連値を予め記憶させる時点の前記表示面の任意の表示領域の温度を予め記憶させておくコレレーションステップと、前記コレレーションステップの後、前記温度測定手段で前記表示面の任意の表示領域の温度を測定させ、前記表示強度測定手段で前記表示強度測定手段に対面する表示領域の表示強度を測定させ、前記測定した前記表示強度測定手段に対面する表示領域の表示強度及び前記予め記憶した関連値に基づいて、前記表示強度測定手段に対面しない表示領域の表示強度を推定させ、前記コレレーションステップ時に予め記憶した任意の表示領域の温度に対応する第1の表示効率を前記予め記憶した表示効率群から求めさせ、前記測定した任意の表示領域の温度に対応する第2の表示効率を前記予め記憶した表示効率群から求めさせ、これら第1、第2の表示効率の比較から変化率を求めさせ、求めた変化率に基づき前記推定させた前記表示強度測定手段に対面しない表示領域の表示強度を補正させるキャリブレーションステップを実行させることを特徴とする。
【0014】
第1発明、第2発明、第4発明及び第5発明による場合は、表示面の表示領域における表示効率の温度特性を予め記憶しておくとともに、表示装置の表示面の中央部又は周辺部等異なる表示領域の輝度又は色度等の表示強度を予め測定し、測定したそれぞれの表示強度又は表示強度同士の相対比等の関連付けを関連値としてメモリ又はハードディスク等に記憶しておく。同時に任意の表示領域の温度についても測定し、測定したそれぞれの温度又は温度に追従する表示効率等の表示特性をメモリ又はハードディスク等に記憶しておく。以上は後述するキャリブレーションステップの事前に行われるコレレーションステップとなる。前記コレレーションステップが終了していることを前提に実行されるキャリブレーションステップにおいては、まず、コレレーションステップにおいて予め関連値を記憶した表示領域、例えば表示面周辺部のみの表示強度を測定して、予め記憶した関連値を基に他の表示領域、例えば表示面中央部の表示強度を推定する。次に任意の表示領域の温度を測定し、測定した温度に対応する表示効率を予め記憶した表示効率の温度特性から取得する。コレレーションステップからキャリブレーションステップまでの時間経過でどれだけ表示効率が変化したかを表示領域ごとに求め、その変化率を用いて推定した表示強度を補正する。
【0015】
また、第3発明による場合は、表示面いずれかの表示領域、例えば表示面の中央部及び周辺部等異なる表示領域のうちいずれかの表示領域の温度を測定し、他方の表示領域については測定した温度から推定する。
【発明の効果】
【0016】
第1発明、第2発明、第4発明及び第5発明にあっては、従来のように測定した表示強度のみで推定するのではなく、表示強度を測定する時点(コレレーションステップ及びキャリブレーションステップ)の表示領域の温度を各領域で測定し、測定した温度に基づき推定表示強度を補正するため、キャリブレーションの際に表示面の温度特性に依存することなく表示強度の推定が可能となる。よって、キャリブレーションの際に表示強度を測定する表示領域と表示強度を推定する表示領域での温度差が大きい場合であっても、精度よく表示強度を推定することが可能となる。更には、関連値を予め記憶した後、別の環境への表示装置の移設や、季節の変化により室温に変動があった場合でも、精度よく表示強度を推定することが可能となる。
【0017】
また、第3発明にあっては、表示領域ごとに温度測定手段を設ける必要がなくなり、部品コスト及び製造コスト等を削減でき、安価な装置で表示強度推定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る表示装置の外観を示す模式的斜視図である。
【図2】本発明に係る表示強度推定方法を実行するための装置の構成を示す模式的断面図である。
【図3】本発明に係る表示強度推定方法を実行するための装置の構成を示す回路ブロック図である。
【図4】表示強度関連データの一例を示す模式図である。
【図5】表示効率温度特性データを示した模式図である。
【図6】表示効率温度特性データをグラフとして示した模式図である。
【図7】表示強度関連データを作成又は更新する処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】キャリブレーション処理の手順を示すフローチャートである。
【図9】LUTの更新処理の手順を示すフローチャートである。
【図10】本実施の形態の変形例に係る表示強度関連データの一例を示す模式図である。
【図11】本発明に係る表示強度推定方法を実行するための装置の構成を示すブロック図である。
【図12】温度関連データの一例を示す模式図である。
【図13】表示効率温度特性データを示した模式図である。
【図14】表示パネルの表示面の周辺部の表示強度から中央部の表示強度を推定する一の方法を説明するための模式図である。
【図15】表示パネルにおける表示効率の温度特性を説明するための模式図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
1. 第1の実施形態
以下、本発明の実施形態を示す図面に基づき具体的に説明する。
1−1.機構
図1は、本発明に係る表示装置の外観を示す模式的斜視図である。図において、1は表示装置であり、略矩形の板状をなす本体部分の正面に設けられた表示パネルによる表示面2で画像を表示する。表示装置1の本体部分は、背面に設けられたスタンドによって机上又は床上等に表示面2が略垂直となるように支持されており、また、表示装置1の本体部分の上側には、表示面2の周辺部の輝度及び色度等の表示強度と周囲温度とを測定するセンサ部4が内蔵して取り付けられている。
【0020】
図2は、図1に示した表示装置1のA−A’線における断面図である。同図において、表示面2を有する表示パネル3は、図示する矢印方向に画像を表示し、表示面2の一部と表示パネル3の背面を覆う筐体5とで支持されている。表示パネル3の上部の網掛け領域は、表示パネル3を補強する枠材にあたり、この領域では画像は表示されない。センサ部4は、本発明の表示強度測定手段に相当する光センサ4aと本発明の温度測定手段に相当する温度センサ4bとから構成され、少なくとも光センサ4aは表示面2のうち筐体5に覆われる部分に対面するように設置される。光センサ4aは対面する表示面2の輝度及び色度等の表示強度を測定し、温度センサ4bは付近の周囲温度を測定する。光センサ4a及び温度センサ4bは回路基板4c上に設けられ、測定情報は信号線4dを介して後述するMPU(Micro−Processing Unit)7へ送られる。また、センサ部4に対面する表示面2の一部は、測定ノイズとなる外光を遮断するために筐体5に覆われることになるが、この構成により、センサ部4を稼働させるための機構材が不要となるばかりでなく、センサ部4が表示面2に表示される画像を隠してユーザの視認性を阻害することが解消される。図2では、光センサ4a及び温度センサ4bは同一回路基板上に設けられているが、これに限定されるものではなく、光センサ4aが対面する表示領域の温度に近似する温度を測定することが可能な位置に温度センサ4bを設置すればよい。
【0021】
表示パネル3の背面のほぼ中央には温度センサ6aを備えた回路基板6bが設けられ、測定情報は信号線6cを介して後述するMPU7へ送られる。ユーザの視認性を考慮して、温度センサ6a及び回路基板6bは表示パネル3の背面に設けてあるが、透明材等ユーザの視認性を阻害しない構成の温度センサ6a及び回路基板6bであれば表示面2に設けるようにしてもよい。
【0022】
1−2.回路ブロック
図3は、本発明に係る表示強度推定方法を実行するための装置の構成を示す回路ブロック図である。本発明に係る表示強度推定方法は、上述の表示装置1、光センサ4a、温度センサ4b及び温度センサ6aと、手動で表示面2の中央部の表示強度を測定するための外部光センサ30と、これら装置を制御するパーソナルコンピュータのような情報処理機器20とを用いて行うことができる。
【0023】
表示装置1は、表示パネル3、MPU7、画像信号入力部9、データ通信部10、駆動回路8等を備えている。表示装置1の画像信号入力部9は、情報処理機器20にケーブルを介して接続される接続端子を有しており、入力強度にあたる画像信号を情報処理機器20から取得し、表示装置1はこの画像信号に基づいて表示パネル3の表示面2に画像を表示する。なお、画像信号入力部9に入力される画像信号は、アナログ又はデジタルのいずれの信号形式であってもよい。また、表示装置1のデータ通信部10は、情報処理機器20にUSB(Universal Serial Bus)等のケーブルを介して接続される接続端子を有しており、情報処理機器20から入力される測定命令等のデータを取得するとともに、情報処理機器20へ測定値等のデータを出力する。
【0024】
MPU7は、バスを介して表示装置1内の各部に接続し、これらの動作を制御することによって、画像の表示等の種々の処理を実行する。駆動回路8は、MPU7に制御されて、画像信号入力部9に入力された画像信号に基づいて表示パネル3を駆動する。表示装置1に取り付けられるセンサ部4は、光センサ4a、温度センサ4b等を備える。光センサ4aは、フォトトランジスタ等の受光素子及びA/D変換回路等を有するものであり、表示パネル3の表示面2の周辺部の輝度又は色度等の表示強度に応じて受光素子が出力する電圧をA/D変換回路によりデジタルの電気信号に変換して出力する。また、温度センサ4bは、サーミスタ等の半導体素子及びA/D変換回路等を有するものであり、光センサ4a周辺あるいは光センサ4aが対面する表示面2の周辺温度に応じて半導体素子が出力する電圧をA/D変換回路によりデジタルの電気信号に変換して出力する。
【0025】
外部光センサ30は、センサ部4の光センサ4aと同様に表示面2の輝度又は色度等の表示強度を測定するものである。ただし、光センサ4aのように常に表示装置1に取り付けられるのではなく、測定を行う場合にのみ表示面2の略中央に固定して使用されるものであり、表示装置1の製造時に、又はユーザが定期的に、表示面2の中央部の表示強度と周辺部の表示強度との相対比等の関係情報を取得する場合に付加的に使用される。外部光センサ30は、使用時にのみ情報処理機器20のデータ通信部24に接続され、外部光センサ30が測定した表示強度はデジタルのデータとして情報処理機器20へ与えられる。
【0026】
情報処理機器20は、記憶部21、CPU(Central Processing Unit)22、画像信号出力部23、及びデータ通信部24等を備えている。情報処理機器20の画像信号出力部23は、表示装置1にケーブルを介して接続される接続端子を有しており、表示装置1へ入力強度にあたる画像信号を出力する。また、情報処理機器20のデータ通信部24は、表示装置1にUSB等のケーブルを介して接続される接続端子を有しており、表示装置1とデータの送受信を行う。CPU22は、バスを介して情報処理機器20内の各部に接続しており、各部の動作を制御する。
【0027】
記憶部21は、オペレーティングシステム、アプリケーションプログラム及び制御プログラム等の各種のプログラムと、これらのプログラムで利用されるデータ又はこれらのプログラムが生成したデータ等とを記憶する。本実施の形態においては、更に、記憶部21には、表示強度関連データ21a、表示効率温度特性データ21b、温度データ21c、及びキャリブレーション処理のためのキャリブレーションプログラム21d等が記憶されている。なお、表示強度関連データ21aは、本発明の関連値に相当するデータであり、表示効率温度特性データ21bは本発明の表示効率群に相当するデータである。
【0028】
表示装置1の継続的な使用により表示パネル3に経年変化が生じ、表示パネル3の表示特性に若干の変化が生じた場合、予め設定された方法で駆動回路8を駆動しても理想的な表示強度で画像を表示できない場合がある。このため、変化した表示パネル3の表示強度に合わせて駆動回路8を更新するキャリブレーション処理を行う必要がある。キャリブレーション処理では、光センサ4aを用いて表示装置1の表示面2の表示強度を測定し、理想的な表示強度となるよう駆動回路8を更新する。なお、キャリブレーション処理は、表示面2の中央部の表示強度を基に行うことが好ましいが、光センサ4aは表示面2の周辺部の表示強度しか測定することができない。そこで、記憶部21には、表示面2の中央部の表示強度と周辺部の表示強度とが対応付けて記憶された表示強度関連データ21aが関連値として記憶されており、キャリブレーション処理は、表示強度関連データ21aを基に、光センサ4aが測定した表示面2の周辺部の表示強度から中央部の表示強度を取得又は算出し、中央部の表示強度を基に行われるようにしてある。
【0029】
図4は、表示強度関連データ21aの一例を示す模式図である。表示強度関連データ21aは、光センサ4aが測定した表示面2の周辺部の表示強度と、外部光センサ30が測定した表示面2の中央部の表示強度とを関連づけた関連値とを記憶したテーブルである。表示装置1と外部光センサ30とを組にして製造及び販売等される場合には、表示強度関連データ21aは、開発工程又は製造工程にて光センサ4a及び外部光センサ30による測定値を周囲温度と関連づけて予め作成すればよい。開発工程又は製造工程にて表示強度関連データ21aを作成した場合には、作成した表示強度関連データ21aをCD−ROM等の記録媒体に記録して提供してもよく、あるいは図示しない表示装置1内の記憶領域に記憶するようにしてもよい。また、ユーザが光センサ4a及び外部光センサ30を利用して、表示強度関連データ21aを更新することも可能である。
【0030】
表示強度関連データ21aには、表示面2の中央部の表示強度と周辺部の表示強度とが三刺激値(X、Y、Z値)として記憶されている。図4に示す表示強度関連データ21aでは、光センサ4aが測定した表示強度の三刺激値をXSn、YSn、ZSn(n=0〜8)とし、外部光センサ30が測定した表示強度の三刺激値をXRn、YRn、ZRn(n=0〜8)として記載してある。表示パネル3が256階調の表示を行う場合、表示強度関連データ21aには、図示のように9段階程度に離散的に測定を行った結果が対応付けて記憶されており、一の測定階調レベル毎に、各X、Y、Z値についての光センサ4aの測定値(XSn、YSn、ZSn)に、外部光センサ30の測定値に対する光センサ4aの測定値の比(XRn/XSn、YRn/YSn、ZRn/ZSn)が対応付けて記憶されている。なお、実際に記憶部21に記憶する表示強度関連データ21aには、図4に示した測定階調レベルの項目は含まれていなくてもよい。また、光センサ4aの測定値(XSn、YSn、ZSn)に対応付けて外部光センサ30の測定値に対する光センサ4aの測定値の比(XRn/XSn、YRn/YSn、ZRn/ZSn)を記憶する構成としたが、これに限らず、光センサ4aの測定値(XSn、YSn、ZSn)に対して単に外部光センサ30の測定値(XRn、YRn、ZRn)を対応付けて記憶する構成としてもよい。
【0031】
キャリブレーションプログラム21dを用いてキャリブレーション処理を行う場合には、光センサ4aにて表示面2の周辺部の表示強度を測定し、測定した表示強度を三刺激値(XSn、YSn、ZSn)に変換して、表示強度関連データ21aを参照することにより、中央部の表示強度の三刺激値(XRn、YRn、ZRn)を取得することができる。このとき、光センサ4aにて測定した表示強度に係る三刺激値が、表示強度関連データ21aに含まれておらず、直接的に中央部の表示強度の三刺激値を取得することができない場合には、表示強度関連データ21aに記憶された値を基に線形補間処理を行って、中央部の表示強度の三刺激値を取得する。
【0032】
更に記憶部21には、表示面2の中央部と周辺部のそれぞれについて表示効率の温度特性が記憶された表示効率温度特性データ21bが図5に図示するように記憶されている。図6は、表示効率温度特性データ21bをグラフ化した模式図である。記憶部21には、図5に図示するように表示面2の中央部と周辺部の表示効率を温度毎に記憶してもよいし、図6の模式図に近似した算出式を記憶してもよい。また記憶部21には、表示強度関連データ21a作成時の表示面2の中央部と周辺部の温度を温度データ21cとして記憶してある。キャリブレーション処理を行う場合には、表示面2の中央部と周辺部の各温度を温度センサ4b、温度センサ6aで測定し、表示効率温度特性データ21bと温度データ21cとから表示効率がどれだけ変動したかを求め、前記取得した中央部の表示強度の三刺激値を求めた変動率で補正することで、精度よく中央部の表示強度の三刺激値を推定する。
【0033】
表示強度の補正について詳しく説明する。記憶部21に温度データ21cとして記憶される中央部温度Tc0及び周辺部温度Ta0(図6中○)は、表示強度関連データ21a作成時に温度センサ4b及び温度センサ6aそれぞれで測定された温度である。キャリブレーション処理時には再度、温度センサ4b及び温度センサ6aそれぞれで中央部温度Tc1及び周辺部温度Ta1(図6中■)を測定する。次に、表示効率温度特性データ21bを用いて、中央部温度Tc0、Tc1及び周辺部温度Ta0、Ta1それぞれの表示効率Ec(Tc0)、Ec(Tc1)、Ea(Ta0)、Ea(Ta1)を取得する。そして、表示強度関連データ21a作成時からキャリブレーション処理時で表示効率がどれだけ変動したかを次式により求める。なお、表示効率Ec(Tc0)、Ea(Ta0)、は本発明の第1の表示効率に相当し、表示効率Ec(Tc1)、Ea(Ta1)は本発明の第2の表示効率に相当する。

中央部の表示効率変動率Rc=Ec(Tc1)/Ec(Tc0)・・・・・・・(式1)

周辺部の表示効率変動率Ra=Ea(Ta1)/Ea(Ta0)・・・・・・・(式2)

更に中央部と周辺部の変動率の比率を次式で求める。

表示効率変動率比Rac=Rc/Ra・・・・・・・(式3)

変動率比Racを取得した中央部の表示強度の三刺激値に乗算することで、温度を加味した補正が行われる。
【0034】
1−3.表示強度関連データ21aの作成又は更新処理(コレレーションステップの実行)
図7は、本発明のコレレーションステップに相当する表示強度関連データ21aを作成又は更新する処理の手順を示すフローチャートである。表示強度関連データ21aを作成又は更新する処理は、キャリブレーション処理より前に行われるものであり、情報処理機器20への操作によりこの処理を実行する命令が与えられた場合には、まず、表示装置1の表示面2の中央に外部光センサ30の取り付けを要求するメッセージを表示する(ステップS1)。このとき、メッセージと共に表示面2の中央に外部光センサ30の取り付け位置を示す図形又は記号等を表示することが好ましい。その後、表示面2の中央に外部光センサ30が取り付けられて、例えば取り付け完了を通知する操作がなされたか否かを調べることによって、外部光センサ30の取り付けが完了したか否かを調べ(ステップS2)、取り付けが完了していない場合には(S2:NO)、ステップS1へ戻ってメッセージの表示を継続して行い、取り付けが完了するまで待機する。
【0035】
表示面2中央への外部光センサ30の取り付けが完了した場合(S2:YES)、入力強度である階調レベルを予め定められた測定階調レベルの一つに設定する(ステップS3)。例えば、図4に示した表示強度関連データ21aの場合には、9段階で測定階調レベルを変化させる必要があり、ステップS3にてこの9段階の測定階調レベルのうちの一の測定階調レベルとなるように設定を行う。
【0036】
次いで、光センサ4aにて表示面2の周辺部の表示強度を測定して、測定値を取得し(ステップS4)、取得したR、G、B値の測定値をX、Y、Z値の三刺激値に変換する(ステップS5)。また、外部光センサ30にて表示面2の中央部の表示強度を測定して、測定値を取得し(ステップS6)、取得したR、G、B値の測定値をX、Y、Z値の三刺激値に変換する(ステップS7)。RGB値から三刺激値への変換は従前の方式をもって行われる。
【0037】
次いで、外部光センサ30の測定値XRn、YRn、ZRnに対する光センサ4aの測定値XSn、YSn、ZSnの比XRn/XSn、YRn/YSn、ZRn/ZSn、即ち相対比を算出して(ステップS8)、記憶部21に表示強度関連データ21aとして記憶する(ステップS9)。相対比の記憶を全ての測定階調レベルについて終了したか否かを調べ(ステップS10)、終了していない場合には(S10:NO)、ステップS3へ戻り、未処理の測定階調レベルについてステップS4〜S9の処理を繰り返し行う。全ての測定階調レベルについて処理が終了した場合(S10:YES)、温度センサ6aにて中央部の温度Tc0を、温度センサ4bにて周辺部の温度Ta0をそれぞれ測定して(ステップS11)、記憶部21に温度データ21cとして記憶する(ステップS12)。その後、表示パネル3の表示を元に戻す処理及び外部光センサ30の取り外しを促すメッセージを表示する処理等を含む終了処理を行って(ステップS13)、処理を終了する。
【0038】
以上の手順により、表示強度関連データ21aの作成又は更新時の表示面2の中央部と周辺部の温度を記憶することができ、キャリブレーション処理を行う際に表示強度関連データ21a及び温度データ21cを用いることによって、光センサ4aが測定した表示面2の周辺の表示強度から中央部の表示強度を推定することができる。なお、コレレーションステップは、ユーザが表示装置を購入した時のみ、あるいは1年おきのように長い間隔で実行すればよい。
【0039】
1−4.キャリブレーション処理(キャリブレーションステップの実行)
図8は、本発明のキャリブレーションステップに相当するキャリブレーション処理の手順を示すフローチャートである。なお、キャリブレーションステップは、前述のコレレーションステップの実行が完了していることが必須で、1日おき、あるいは表示装置の使用の都度のようにコレレーションステップより短い間隔で実行される。キャリブレーション処理では、まず、画像表示のための入力強度にあたる階調レベルを0に設定する(ステップS21)。次いで、光センサ4aにて表示面2の周辺部の表示強度を測定して、測定値を取得し(ステップS22)、測定したR、G、B値の測定値をX、Y、Z値の三刺激値に変換する(ステップS23)。
【0040】
次いで、ステップS23にて得られた三刺激値が、記憶部21中の表示強度関連データ21aに記憶された値に含まれているか否かを調べ(ステップS24)、含まれている場合には(S24:YES)、表示強度関連データ21aから対応する中央部の表示強度を取得し(ステップS26)、含まれていない場合には(S24:NO)、線形補間処理を行って(ステップS25)、中央部の表示強度を算出する。
【0041】
ステップS26の後、温度センサ6aにて中央部の温度Tc1を、温度センサ4bにて周辺部の温度Ta1をそれぞれ測定して(ステップS27)、表示効率温度特性データ21bから温度Tc1、Ta1に対応する表示効率Ec1、Ea1を取得するとともに、温度データ21cとして記憶された温度Tc0、Ta0に対応する表示効率Ec0、Ea0も併せて取得する(ステップS28)。更に前述の方法で表示効率の変動率比Racを求め、ステップS26で取得した表示強度を補正する(ステップS29)。
【0042】
ステップS29にて補正した表示強度はX、Y、Z値の三刺激値であるので、これをR、G、B値の表示強度に変換し(ステップS30)、R、G、B値に変換した中央部の表示強度を後述の駆動回路8の更新処理に利用するため記憶部21に一時的に記憶する(ステップS31)。その後、表示パネル3が表示可能な全ての階調レベルについて表示面2の中央部の表示強度の取得を終了したか否かを調べ(ステップS32)、全ての階調レベルについて終了していない場合には(S32:NO)、階調レベルを1段階増す等の変更を行って(ステップS33)、ステップS22へ戻り、全ての階調レベルについてステップS22〜S31の処理を繰り返し行う。
【0043】
全ての階調レベルについて表示面2の中央部の表示強度の取得を終了した場合(S32:YES)、ステップS31にて、記憶部21に記憶した全階調レベルについての表示面2の中央部の表示強度を基に、理想とする表示強度で駆動するよう駆動回路8の更新処理を行う(ステップS34)。ステップS34にて駆動回路8の更新処理が終了した後、表示パネル3の表示を元に戻す処理等を含む終了処理を行って(ステップS35)、キャリブレーション処理を終了する。
【0044】
駆動回路8の更新処理として、例えば駆動回路8に設けられた階調レベル変換のためのLUTを更新する方法がある。図9は、駆動回路8に設けられたLUTの更新処理の手順を示すフローチャートであり、図8のフローチャートのステップS34にて行う処理である。階調レベルkに対する理想的な表示強度をXTkとし(k=0〜255)、ステップS31にて記憶した表示面2の中央部の表示強度について、階調レベルjに対して取得した表示強度をXTjとする(j=0〜255)。
【0045】
駆動回路8に設けられたLUTの更新処理では、まず、理想的な表示強度XTkと取得した表示強度XTjとの差分(XTk−XTj)を全ての組み合わせについて算出し(ステップS41)、この差分の絶対値|XTk−XTj|が最小となる階調レベルk及びjの組み合わせを抽出する(ステップS42)。抽出結果から、階調レベルkをテーブルの入力とし、対応する階調レベルjをテーブルの出力としてLUTに記憶し(ステップS43)、更新処理を終了する。
【0046】
以上の構成の表示装置1及び情報処理機器20を用いた表示強度推定方法においては、情報処理機器20の記憶部21に、表示強度関連データ21aとして、表示面2の周辺部の表示強度と表示面2の中央部の表示強度とを対応付けて記憶しておき、キャリブレーション等の処理を行う際には、表示面2の周辺部の表示強度を測定して、表示強度関連データ21aから表示面2の中央部の表示強度を取得又は算出することによって、光センサ4aの測定値から精度のよいキャリブレーション等の処理を行うことができるため、これらの処理の自動化が容易に実現可能となる。
【0047】
以上の構成の表示装置1及び情報処理機器20を用いた表示強度推定方法においては、情報処理機器20の記憶部21に温度データ21cとして、表示面2の周辺部の温度と表示面2の中央部の温度を記憶しておき、キャリブレーション等の処理を行う際には、表示面2の周辺部の温度と表示面2の中央部の温度を測定して、表示強度関連データ21aから取得又は算出した表示面2の中央部の表示強度を温度データ21cと表示効率温度特性データ21bとに基づいて補正するため、例えば筐体5に覆われ温度上昇が著しい箇所の表示強度を測定する場合であっても、温度に依存することなく表示面2の中央部の表示強度を精度よく推定することが可能となる。
【0048】
なお、本実施の形態においては、表示面2の中央部の表示強度の取得及び算出をキャリブレーション処理のために行う構成としたが、これに限るものではなく、表示装置1の表示特性のチェック等の他の目的のために行う構成としてもよい。また、光センサ4aを表示装置1に内蔵する構成としたが、これに限るものではなく、光センサ4aを表示装置1とは別の装置とし、光センサ4aを表示装置1に取り付けて測定を行う構成としてもよい。また、キャリブレーション処理及び表示強度関連データ21aの更新処理等を情報処理機器20が行う構成としたが、これに限るものではなく、表示装置1がこれらの処理を行う構成としてもよい。また、表示パネル3の背面の中央部に設けた温度センサ6aの測定値を表示面2の中央部の温度とみなして処理する構成としたが、表示パネル3の背面と表示面2とで著しく温度差が生じる場合は温度差を解消する補正を適宜行うようにしてもよい。表示装置内の温度を冷却する目的で冷却用ファンを設ける場合があり、冷却用ファンの稼働状況によっては前記温度差が著しく生じる可能性がある。このような表示装置においては、回転数等冷却用ファンの稼働状況に基づいて補正量を算出し、表示パネル3の背面と表示面2の温度差を解消するようにしてもよい。
【0049】
1−5.変形例
図10は、本実施の形態の変形例に係る表示強度関連データ21aを示す模式図である。変形例に係る表示強度関連データ21aは、測定階調レベルと、光センサ4aが測定した表示面2の周辺部の表示強度と外部光センサ30が測定した表示面2の中央部の表示強度との相対比とが対応付けられて関連値として記憶されたテーブルであり、光センサ4aが測定した表示強度、例えば輝度値をYSn(n=0〜8)とし、外部光センサ30が測定した輝度値をYRn(n=0〜8)として記載してある。一の測定階調レベル毎に、外部光センサ30の測定値に対する光センサ4aの測定値の比YRn/YSnが対応付けて記憶されている。
【0050】
キャリブレーションプログラム21dを用いてキャリブレーション処理を行う場合には、まず光センサ4aにて表示面2の周辺部の輝度値を測定する際の測定階調レベルに対応づけられた相対比を表示強度関連データ21aから取得し、光センサ4aにて測定した表示面2の周辺部の表示強度に取得した相対比を乗算することで、中央部の輝度値を推定することができる。
【0051】
表示面の周辺部で発生する輝度ムラ又は色ムラの傾向は入力強度に応じて変化することが、発明者の実験で確認されている。変形例によれば、表示面の中央部の表示強度と表示面の周辺部の表示強度との相対比を入力強度で取得するようにしてあるため、より精度よく表示面の中央部の表示強度を推定することが可能となる。
【0052】
2.第2の実施形態
図11は、本実施の形態の別の実施例に係る表示強度推定方法を実行するための装置の構成を示すブロック図である。なお、図11において実施例1と共通する部分には図3と同じ符号を用いた。図11と図3との相違は、表示面2の中央部の温度を測定する温度センサ6aを削除し、温度関連データ11を表示装置1内に設けた点にある。
【0053】
2−1.構成
図12は、温度関連データ11の一例を示す模式図である。温度関連データ11は、温度センサ4bが測定した表示面2の周辺部の温度と、別の温度センサが測定した表示パネル3背面の中央部の温度とが対応付けて記憶されたテーブルであり、この測定を予め開発工程又は製造工程にて行って作成すればよい。開発工程又は製造工程にて温度関連データ11を作成した場合には、作成した温度関連データ11をCD−ROM等の記録媒体に記録して提供するようにしてもよい。
【0054】
図7に示した表示強度関連データ21aを作成又は更新する処理の手順を示すフローチャートにおいて、ステップS11で温度センサの測定値を取得し、ステップS12で記憶部21に温度データ21cとして記憶しているが、本実施例においては、温度センサ4bにて周辺部の温度を測定し、測定した周辺部の温度に対応する中央部の温度を温度関連データ11から取得し、記憶部21に測定した周辺部の温度と取得した中央部の温度とを温度データ21cとして記憶する。更に、図8に示したキャリブレーション処理の手順を示すフローチャートにおいて、ステップS27で温度センサの測定値を取得し、ステップS28で対応する表示効率を表示効率温度特性データ21bから取得しているが、本実施例においては、温度センサ4bにて周辺部の温度を測定し、測定した周辺部の温度に対応する中央部の温度を温度関連データ11から取得し、測定した周辺部の温度と取得した中央部の温度とに対応する表示効率を表示効率温度特性データ21bから取得する。
【0055】
このように、温度関連データ11を表示装置1内に設けることで、表示面2の中央部の温度を測定するための温度センサ6aが不要となり、本発明のための回路構成を最小限に抑えることが可能となる。本実施例では表示面2の周辺部の温度を測定し、その測定温度から表示面2の中央部の温度を取得するようにしたが、これに限るものではなく、表示面2の中央部の温度を測定し、その測定温度から表示面2の周辺部の温度を取得するようにしてもよいし、表示面2の中央部でも周辺部でもない箇所の温度を測定し、その測定温度から表示面2の中央部及び周辺部の温度を取得するようにしてもよい。
【0056】
3.第3の実施形態
図13は、本実施の形態の別の実施例に係る表示強度推定方法を実行するための表示効率データを示す模式図である。なお、前記実施例では図5に示す表示効率データを用いたが、これとの相違は、表示面2の中央部及び周辺部の表示効率を温度毎に記憶することに加え、表示面の姿勢情報を記憶した点にある。
【0057】
3−1.構成
表示装置には表示面を90°角に変位自在であって、表示面の長手方向が水平となるランドスケープ表示と、表示面の長手方向が垂直となるポートレート表示で利用可能なものがある。特に医療現場においては縦長のX線画像を表示する頻度が高いことから、ポートレート表示での利用が大部分を占めている。しかしながら、表示面の姿勢を変えることで表示パネルの構成材の重力方向への偏りが変化し、その表示効率も変化すると言う問題が生じる。問題の具体例を表示パネルが液晶パネルであって、バックライトがCCFL管(Cold Cathode Fluorescent Lamp)の場合について説明する。CCFL管の設置方法には、表示パネル背面に複数個配置する直下型配置と、表示パネルの背面かつ周囲に1個以上配置するエッジ型配置があるが、いずれも表示面の長手方向に沿って配置されることが多い。CCFL管内部には発光物質として不揮発性ガスと水銀が封入されており、ランドスケープ表示であればCCFL管には均等に重力が加わるため封入された発光物質も一様に分布するが、ポートレート表示になると発光物質分布に偏りが生じ、その結果CCFL管の上下で発光効率が異なってくることになる。
【0058】
図13は、本実施形態における表示効率温度特性データの一例を示す模式図であり、中央部及び周辺部のそれぞれについて、表示効率の温度特性を表示面の姿勢情報と併せて記憶してある。表示効率温度特性データの作成は、開発段階あるいは製造工程にて表示装置をランドスケープ表示、ポートレート表示の双方に切り替えて、各表示領域の表示効率を周囲温度毎に予め作成すればよい。記憶部21には、図13に図示するように温度毎の表示効率を各表示姿勢について記憶してもよいし、図13から導出される近似式を記憶してもよい。
【0059】
図8に示したキャリブレーション処理を示すフローチャートにおいては、ステップS28で温度センサの測定値に対応する表示効率を表示効率温度特性データから取得しているが、本実施例においては温度センサの測定値を取得するのに併せて表示面の姿勢も取得し、測定温度及び表示面姿勢に対応する表示効率を表示効率温度特性データから取得する。表示面の姿勢情報は、表示装置に重力センサのような姿勢検知のためのセンサを内蔵し自動取得するようにしてもよいし、表示装置が備えるOSD(On Screen Display)やキャリブレーションプログラム等を介してユーザの手動で取得するようにしてもよい。
【0060】
このように、表示面の姿勢毎に表示効率温度特性データを設けることで、表示面の姿勢に依存することなく表示面の中央部の表示強度を精度よく推定することが可能となる。本実施例ではランドスケープ表示及びポートレート表示の表示装置の2つの姿勢における表示効率温度特性データを記憶するようにしたが、これに限るものではなく、チルト等他の姿勢における表示効率温度特性データを記憶するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 表示装置
2 表示面
3 表示パネル
4 センサ部
4a 光センサ(表示強度測定手段)
4b 温度センサ(温度測定手段)
4c 回路基板
4d 信号線
5 筐体
6a 温度センサ(温度測定手段)
6b 回路基板
6c 信号線
7 MPU
8 駆動回路
9 画像信号入力部
10 データ通信部
11 温度関連データ
20 情報処理機器(コンピュータ)
21 記憶部
21a 表示強度関連データ(関連値)
21b 表示効率温度特性データ(表示効率群)
21c 温度データ
21d キャリブレーションプログラム
22 CPU
23 画像信号出力部
24 データ通信部
30 外部光センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示パネルと、前記表示パネルの表示面の表示強度を測定する表示強度測定手段と、温度を測定する温度測定手段とを備えた表示装置に対し、前記表示強度測定手段に対面しない表示領域の表示強度を推定する表示強度推定方法において、
前記表示強度測定手段に対面する表示領域の表示効率と、前記表示強度測定手段に対面しない表示領域の表示効率とを、異なる温度毎に前記表示面の表示領域の表示効率群としてを予め記憶しておき、前記表示強度測定手段に対面する表示領域の表示強度と、前記表示強度測定手段に対面しない表示領域の表示強度とを関連づける関連値を予め記憶しておくとともに、前記関連値を記憶したときの前記表示面の任意の表示領域の温度を予め測定しておくコレレーションステップと、
前記コレレーションステップの後、前記温度測定手段で前記表示面の任意の表示領域の温度を測定し、前記表示強度測定手段で前記表示強度測定手段に対面する表示領域の表示強度を測定し、前記測定した表示強度測定手段に対面する表示領域の表示強度及び前記予め記憶した関連値に基づいて、前記表示強度測定手段の対面しない表示領域の表示強度を推定し、前記コレレーションステップ時に予め記憶した任意の表示領域の温度に対応する第1の表示効率を前記予め記憶した表示効率群から求め、前記測定した任意の表示領域の温度に対応する第2の表示効率を前記予め記憶した表示効率群から求め、これら第1、第2の表示効率の比較から変化率を求め、求めた変化率に基づき前記推定された前記表示強度測定手段に対面しない表示領域の表示強度を補正するキャリブレーションステップを備えることを特徴とする表示強度推定方法。
【請求項2】
表示パネルと、前記表示パネルの表示面の表示強度を測定する表示強度測定手段と、温度を測定する温度測定手段とを備えた表示装置に対し、前記表示強度測定手段に対面しない表示領域の表示強度を推定する表示強度推定方法において、
前記表示強度測定手段に対面する表示領域の表示効率と、前記表示強度測定手段に対面しない表示領域の表示効率とを、異なる温度毎に前記表示面の表示領域の表示効率群としてを予め記憶しておき、前記表示強度測定手段に対面する表示領域の表示強度と、前記表示強度測定手段の対面しない表示領域の表示強度とを関連づける関連値を予め記憶しておくとともに、前記関連値を記憶したときの前記表示面の任意の表示領域の温度を予め測定し、前記記憶した表示効率群からその温度に対応する第1の表示効率を取得し、これを記憶しておくコレレーションステップと、
前記コレレーションステップの後、前記温度測定手段で前記表示面の任意の表示領域の温度を測定し、前記表示強度測定手段で前記表示強度測定手段に対面する表示領域の表示強度を測定し、前記測定した前記表示強度測定手段に対面する表示領域の表示強度及び前記予め記憶した関連値に基づいて、前記表示強度測定手段に対面しない表示領域の表示強度を推定し、前記コレレーションステップ時に予め記憶した任意の表示領域の温度に対応する第1の表示効率を取得し、前記測定した任意の表示領域の温度に対応する第2の表示効率を前記予め記憶した表示効率群から求め、これら第1、第2の表示効率の比較から変化率を求め、求めた変化率に基づき前記推定された前記表示強度測定手段に対面しない表示領域の表示強度を補正するキャリブレーションステップを備えることを特徴とする表示強度推定方法。
【請求項3】
前記表示面のいずれかの表示領域の温度を測定し、測定した表示領域の温度から他の表示領域の温度を推定することを特徴とする請求項1に記載の表示強度推定方法。
【請求項4】
表示パネルと、前記表示面の表示領域の表示強度を測定する表示強度測定手段と、温度を測定する温度測定手段とを備える表示装置において、
前記表示強度測定手段が対面する表示領域の表示強度と、前記表示強度測定手段が対面しない表示領域の表示強度とを関連づける関連値を予め測定しておき、この関連値と、前記表示強度測定手段で測定した前記表示強度測定手段が対面する表示領域の表示強度とに基づき、前記表示強度測定手段が対面しない表示領域の表示強度を推定するとき、前記表示面の任意の表示領域の温度を前記温度測定手段で測定することを特徴とする表示装置。
【請求項5】
表示パネルと、前記表示パネルの表示面の表示強度を測定する表示強度測定手段と、温度を測定する温度測定手段とを備える表示装置に接続されたコンピュータにインストールされ、前記コンピュータに前記表示装置表示強度測定手段に対面しない表示領域の表示強度を推定させるコンピュータプログラムにおいて、
前記コンピュータに、前記表示強度測定手段に対面する表示領域の表示効率と、前記表示強度測定手段に対面しない表示領域の表示効率とを、異なる温度毎に前記表示面の表示領域の表示効率群としてを予め記憶させておき、前記表示面の前記表示強度測定手段に対面する表示領域の表示強度と、前記表示強度測定手段に対面しない表示領域の表示強度とを関連づける関連値を予め記憶させるとともに、前記関連値を予め記憶させる時点の前記表示面の任意の表示領域の温度を予め記憶させておくコレレーションステップと、
前記コレレーションステップの後、前記温度測定手段で前記表示面の任意の表示領域の温度を測定させ、前記表示強度測定手段で前記表示強度測定手段に対面する表示領域の表示強度を測定させ、前記測定した前記表示強度測定手段に対面する表示領域の表示強度及び前記予め記憶した関連値に基づいて、前記表示強度測定手段に対面しない表示領域の表示強度を推定させ、前記コレレーションステップ時に予め記憶した任意の表示領域の温度に対応する第1の表示効率を前記予め記憶した表示効率群から求めさせ、前記測定した任意の表示領域の温度に対応する第2の表示効率を前記予め記憶した表示効率群から求めさせ、これら第1、第2の表示効率の比較から変化率を求めさせ、求めた変化率に基づき前記推定させた前記表示強度測定手段に対面しない表示領域の表示強度を補正させるキャリブレーションステップを実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2012−128124(P2012−128124A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278701(P2010−278701)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(391010116)株式会社ナナオ (160)
【Fターム(参考)】