説明

表示素子およびその製造方法

【課題】製造コストの増加を抑制しつつ侵入物から保護できる液晶パネルを提供する。
【解決手段】大判基板を互いに対向して貼り合わせた中間体の大判基板を所定位置で割断することにより個々の液晶パネル12を切り出す。切り出した液晶パネル12の絶縁基板25,41の端部の一部を互いに溶着して溶着部49を形成する。絶縁基板25,41の端部を別途シールするための材料を付与する工程が必要なく、製造コストの増加を抑制しつつ各機能層39,51および液晶層18などを、水分やガスなどの侵入物から保護できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに対向配置された基板の少なくともいずれか一方に画像を表示させるための機能層を形成した表示素子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の表示素子は、表示素子としての液晶表示素子である液晶パネルは、アレイ基板と対向基板との間に光変調層である液晶層を介在して形成されている。
【0003】
このような液晶パネルは、薄膜トランジスタ、画素電極および各種配線などを形成した大判基板と、共通電極などを形成した対向基板とを、液晶層を介在させて互いに対向配置させて貼り合わせて中間体すなわち中間パネルとし、この中間パネルからそれぞれ割断することで製造される。
【0004】
このように製造した液晶パネルの場合、各基板の切断面である端部は、切り出したままの状態となっている場合がある。このような場合、各基板を構成する複数の機能層の端面がむき出しになり、空気中などからの水分、不純物、あるいはガスなどの侵入物の侵入により、液晶パネルの内部に位置する薄膜トランジスタなどに動作不良などの不具合が生じるおそれがある。
【0005】
そこで、各基板の端部を保護するために、バリア性を有する材料を塗布したり、貼り付けたりすることにより、液晶パネルの端部をシールする構成が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2007−3671号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の表示素子では、液晶パネルの端部をシールするための材料を付与する工程が追加されるため、製造コストの増加が避けられないという問題点を有している。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、製造コストの増加を抑制しつつ侵入物から保護できる表示素子およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、互いに対向配置された対をなす基板と、これら基板の少なくともいずれか一方に形成され画像を表示させるための機能層とを具備し、前記基板の端部の少なくとも一部が互いに溶着された溶着部となっているものである。
【0009】
そして、基板の端部の少なくとも一部を互いに溶着した溶着部とする。
【0010】
また、本発明は、互いに対向配置された対をなす基板と、これら基板の少なくともいずれか一方に形成され画像を表示させるための機能層とを具備した表示素子の製造方法であって、前記機能層を形成した対をなす大判基板を互いに対向して貼り合わせて中間体を形成する貼り合わせ工程と、前記中間体の大判基板を所定位置で割断することにより個々の前記表示素子を切り出す切り出し工程と、この切り出された表示素子の前記基板の端部の少なくとも一部を互いに溶着して溶着部を形成する溶着工程とを具備したものである。
【0011】
そして、大判基板を互いに対向して貼り合わせた中間体の大判基板を所定位置で割断することにより個々の表示素子を切り出し、この切り出した表示素子の基板の端部の少なくとも一部を互いに溶着して溶着部を形成する。
【0012】
さらに、本発明は、互いに対向配置された対をなす基板と、これら基板の少なくともいずれか一方に形成され画像を表示させるための機能層とを具備した表示素子の製造方法であって、前記機能層を形成した対をなす大判基板を互いに対向して貼り合わせて中間体を形成する貼り合わせ工程と、前記中間体の大判基板を所定位置で溶融割断して個々の前記表示素子を切り出すことで前記各表示素子の前記基板の端部の一部を互いに溶着させた溶着部とする溶着切り出し工程とを具備したものである。
【0013】
そして、大判基板を互いに対向して貼り合わせた中間体の大判基板を所定位置で溶融割断して個々の表示素子を切り出すことで、表示素子の基板の端部の少なくとも一部を互いに溶着した溶着部とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、基板の端部を別途シールするための材料を付与する工程が必要なく、製造コストの増加を抑制しつつ侵入物から保護できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の第1の実施の形態の構成を、図面を参照して説明する。
【0016】
図1および図2において、12は表示素子としての液晶表示素子である液晶パネルを示し、この液晶パネル12は、図示しない面状光源装置としてのバックライトから照射された白色の面状光を変調透過させる、アクティブマトリクス型の透過型カラー液晶パネルである。
【0017】
そして、液晶パネル12は、第1基板であるアレイ基板15と第2基板である対向基板16とを互いに対向配置して接着部であるシール部17で貼り合わせ、アレイ基板15と対向基板16との間に光変調層としての液晶層18を介在させ、かつ、アレイ基板15と対向基板16とのそれぞれの外側面に図示しない偏光板をそれぞれ貼り付けて形成され、四角形状の表示領域21と、この表示領域21の外方に位置する非表示領域である枠状の周辺領域22とを有している。
【0018】
アレイ基板15は、絶縁性および可視光領域で透光性を有する基板としての透明基板すなわちアレイ基板本体である絶縁基板25の液晶層18側の主面上に、表示領域21に対応する位置にて複数の配線としての走査線31および複数の配線としての信号線32が格子状(交差状)に形成されている。また、走査線31と信号線32との交差位置には、それぞれスイッチング素子としての薄膜トランジスタ(TFT)33が形成されており、さらに、走査線31と信号線32とに囲まれた四角形状の各領域には、ITOなどの可視光領域で透光性を有する透明導電部材により形成され画素である副画素34を構成する略四角形状の画素電極35が形成され、これら画素電極35上には、図示しない配向膜が形成されている。すなわち、画素電極35は、表示領域21内にてマトリクス状に配置されている。そして、薄膜トランジスタ33のゲート電極が走査線31と接続され、ソース電極が信号線32と接続され、ドレイン電極が画素電極35と接続されており、走査線駆動回路であるゲートドライバ36からの信号が走査線31を介してゲート電極に印加されることで薄膜トランジスタ33がスイッチング制御され、信号線駆動回路であるソースドライバ37から信号線32を介して入力された信号に対応して画素電極35に電圧を印加して駆動することで、薄膜トランジスタ33が副画素34をそれぞれ独立してオン(ON)/オフ(OFF)可能となっている。
【0019】
絶縁基板25は、第1大判基板としての第1透明基板である大判基板38(図3)から切り出されるものである。
【0020】
薄膜トランジスタ33は、無機膜、あるいは有機膜などにより形成された活性層、絶縁膜および各種電極などをそれぞれ積層して構成されている。そして、走査線31、信号線32、薄膜トランジスタ33、画素電極35および配向膜などは、製造時に、上記大判基板38上に通常の製造プロセスによって形成される。なお、以下、走査線31、信号線32、薄膜トランジスタ33、画素電極35および配向膜などを含むアレイ基板15側の画像表示用の機能層を、まとめて機能層としてのアレイ側機能層39というものとする。
【0021】
一方、対向基板16は、絶縁性および可視光領域で透光性を有する基板としての透明基板すなわち対向基板本体である絶縁基板41の液晶層18側の主面上に、表示領域21に対応する位置にてカラーフィルタ層42が形成されているとともに、このカラーフィルタ層42を覆って共通電極である対向電極44が形成され、この対向電極44上には、図示しない配向膜が形成されている。
【0022】
絶縁基板41は、第2大判基板としての第2透明基板である大判基板47(図3)から切り出されるものである。そして、この絶縁基板41は、アレイ基板15側の絶縁基板25と、液晶パネル12の端部において溶着部49により溶着されている。
【0023】
カラーフィルタ層42は、例えば合成樹脂などにより、赤、緑および青のそれぞれに対応する着色部42r,42g,42bが信号線32方向すなわち垂直(V)方向に沿ってストライプ状に形成された縦ストライプタイプのものであり、各着色部42r,42g,42bがそれぞれ垂直(V)方向に沿って連続して配置され、走査線31方向すなわち水平(H)方向に着色部42r,42g,42bが順次繰り返して配置されている。本実施の形態では、これら白色を構成可能な3原色の着色部42r,42g,42bにより、対応する画素電極35が3つで1つの画素をなしている。
【0024】
さらに、カラーフィルタ層42、対向電極44および配向膜などは、製造時に、上記大判基板47上に通常の製造プロセスによって形成される。なお、以下、これらカラーフィルタ層42、対向電極44および配向膜などを含む機能層を、まとめて機能層としての対向側機能層51というものとする。
【0025】
そして、溶着部49は、各機能層39,51や、各基板15,16の保護膜、導電膜、液晶層18などに、外部から水分、イオンあるいはガスなどの侵入物が侵入することを防止するためのもので、互いに貼り合わせた大判基板38,47を、割断装置DMによって割断した後、溶着装置MMによって溶着することで形成され、その製造上、液晶パネル12の水平(H)方向両側の側部溶着部49a,49aと、液晶パネル12の垂直(V)方向一端の端部溶着部49bとにより構成されている。
【0026】
割断装置DMは、例えばレーザスクライブ装置、ダイヤモンドカッタによるスクライブ装置、あるいはケミカルスクライブ装置などが用いられる。
【0027】
溶着装置MMは、例えばレーザ溶着装置、あるいは熱溶着装置が用いられる。したがって、絶縁基板25,41としては、溶着装置MMに使用するレーザのエネルギー、あるいは熱により容易に溶融する物性値を有するものが好ましく、例えば200℃前後の融点あるいはガラス転移点を有するポリマフィルムなどが好適に用いられる。このポリマフィルムの構成材料は、無機、有機あるいはそれらの複合(コンポジット)材でもよい。また、絶縁基板25,41は、異なる種類や物性値を有するものを組み合わせてもよいが、密閉性を高めるために、同一の材料とすることが好ましい。
【0028】
シール部17は、例えば光(紫外線)硬化樹脂などにより形成されている。
【0029】
液晶層18は、所定の液晶材料により形成され、薄膜トランジスタ33により画素電極35と対向電極44との間に、ソースドライバ37から信号線32に入力された信号に対応して印加された電圧に応じて光を変調透過させるものである。
【0030】
次に、上記第1の実施の形態の作用を説明する。
【0031】
液晶パネル12の製造の際には、図3および図4に示すように、まず、通常の成膜工程およびパターニング工程などを繰り返して製造した大判基板38,47を、各液晶パネル12に対応するシール部17および大判基板38,47全体の周囲を貼り合わせる仮シール部53によって貼り合わせて中間体54を形成し(貼り合わせ工程)、この中間体54に液晶材料を注入して液晶層18を形成する(液晶層形成工程)。なお、液晶材料は、中間体54の大判基板38,47間に注入するだけでなく、例えば大判基板38,47を貼り合わせる貼り合わせ工程の際に滴下しておいてもよい。この場合、液晶層18を形成する工程は、貼り合わせ工程に含まれることとなり、中間体54は、液晶層18を含む。
【0032】
次いで、図5および図6に示すように、中間体54を割断装置DMにより垂直(V)方向に沿って短冊状に割断した後、さらに水平(H)方向に割断し、周辺領域22に対応する位置の大判基板47を除去するなど、個々の液晶パネル12に割断する(切り出し工程)。
【0033】
この後、図7に示すように、切り出された液晶パネル12の絶縁基板25,41の端部を互いに溶着して図1に示すように溶着部49を形成し(溶着工程)、偏光板をアレイ基板15と対向基板16とにそれぞれ貼り付ける(貼り付け工程)。
【0034】
完成した液晶パネル12では、外部機器などから入力された画像信号に対応して、ソースドライバ37から信号線32に信号が入力される。
【0035】
薄膜トランジスタ33は、ゲートドライバ36から走査線31に入力された信号により順次走査され、ソースドライバ37から信号線32に入力された信号に応じて画素電極35と対向電極44との間に電圧を印加する。
【0036】
この結果、各副画素34において、液晶層18の液晶分子が電極35,44間の電圧に応じて配向制御され、各副画素34での光の透過量が設定される。
【0037】
そして、バックライトから照射された光は、副画素34,34間では走査線31および信号線32により遮光されるとともに、これら各副画素34内では、各副画素34で設定された透過量に応じて透過され、カラーフィルタ層42の着色部42r,42g,42bを透過して出射し、画像が表示される。
【0038】
上述したように、上記第1の実施の形態によれば、大判基板38,47を互いに対向して貼り合わせた中間体54の大判基板38,47を所定位置で割断することにより個々の液晶パネル12を切り出し、この切り出した液晶パネル12の絶縁基板25,41の最も外側に位置する端部の一部を溶融させて互いに溶着して溶着部49を形成することにより、バリア性を有する材料を塗布したり貼り付けたりして液晶パネルの端部をシールする従来の場合と比較して、絶縁基板25,41の端部を別途シールするための材料を新たに付与する工程が必要なく、製造コストの増加を抑制しつつ液晶パネル12の各機能層39,51および液晶層18などを侵入物から保護できる。
【0039】
形成された溶着部49は、絶縁基板25,41の材料そのものの溶着により形成されているので、絶縁基板25,41の端部を均一に接合でき、密閉性を向上でき、絶縁基板の切断面の積層構造がむき出しになった場合と比較して、高いガスバリア性、低透湿性に優れる。
【0040】
なお、上記第1の実施の形態において、絶縁基板25,41としては、例えばガラスなどを用いてもよい。
【0041】
次に、第2の実施の形態を図8および図9を参照して説明する。なお、上記第1の実施の形態と同様の構成および作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0042】
この第2の実施の形態は、上記第1の実施の形態において、溶着部49を、各液晶パネル12の割断時に同時に形成するものである。
【0043】
すなわち、上記第1の実施の形態の切り出し工程および溶着工程に代えて、図9に示すように、エネルギーを出力して溶融割断するレーザスクライブ装置などの溶融割断装置MDMにより中間体54を所定位置で溶融割断して個々の液晶パネル12を切り出すことで、図8に示すように、各絶縁基板25,41の端部を互いに溶着させた溶着部49とする溶着切り出し工程を行う。
【0044】
この結果、バリア性を有する材料を塗布したり貼り付けたりして液晶パネルの端部をシールする従来の場合と比較して、絶縁基板25,41の端部を別途シールするための材料を新たに付与する工程が必要なく、製造コストの増加を抑制しつつ液晶パネル12の各機能層39,51および液晶層18などを侵入物から保護できる。
【0045】
しかも、割断と同時に溶着部49を形成できるので、割断後の追加工を省略することができ、製造プロセスを短縮できる。
【0046】
なお、上記各実施の形態において、表示素子としては、液晶パネル12だけでなく、例えば有機EL表示素子、あるいは帯電粒子を用いた表示素子など、任意のものに適用できる。
【0047】
また、機能層は、基板のいずれか一方に少なくとも形成されていればよい。
【0048】
さらに、絶縁基板25,41の材料は、透過型の液晶パネルの場合、透過率などの光学特性も重要となるが、反射型あるいは有機EL表示素子などの自発光型の表示素子に適用する場合には、この限りではない。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の第1の実施の形態の表示素子の要部を示す縦断面図である。
【図2】同上表示素子を示す説明斜視図である。
【図3】同上表示素子の製造方法の貼り合わせ工程を示す説明断面図である。
【図4】同上表示素子の製造方法の貼り合わせ工程を示す平面図である。
【図5】同上表示素子の製造方法の切り出し工程を示す説明断面図である。
【図6】同上表示素子の製造方法の切り出し工程を示す平面図である。
【図7】同上表示素子の製造方法の溶着工程を示す説明断面図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態の表示素子の要部を示す縦断面図である。
【図9】同上表示素子の製造方法の溶着切り出し工程を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0050】
12 表示素子としての液晶パネル
25,41 基板としての絶縁基板
38,47 大判基板
39 機能層としてのアレイ側機能層
49 溶着部
51 機能層としての対向側機能層
54 中間体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向配置された対をなす基板と、
これら基板の少なくともいずれか一方に形成され画像を表示させるための機能層とを具備し、
前記基板の端部の少なくとも一部が互いに溶着された溶着部となっている
ことを特徴とする表示素子。
【請求項2】
互いに対向配置された対をなす基板と、これら基板の少なくともいずれか一方に形成され画像を表示させるための機能層とを具備した表示素子の製造方法であって、
前記機能層を形成した対をなす大判基板を互いに対向して貼り合わせて中間体を形成する貼り合わせ工程と、
前記中間体の大判基板を所定位置で割断することにより個々の前記表示素子を切り出す切り出し工程と、
この切り出された表示素子の前記基板の端部の少なくとも一部を互いに溶着して溶着部を形成する溶着工程と
を具備したことを特徴とする表示素子の製造方法。
【請求項3】
互いに対向配置された対をなす基板と、これら基板の少なくともいずれか一方に形成され画像を表示させるための機能層とを具備した表示素子の製造方法であって、
前記機能層を形成した対をなす大判基板を互いに対向して貼り合わせて中間体を形成する貼り合わせ工程と、
前記中間体の大判基板を所定位置で溶融割断して個々の前記表示素子を切り出すことで前記各表示素子の前記基板の端部の一部を互いに溶着させた溶着部とする溶着切り出し工程と
を具備したことを特徴とする表示素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−60993(P2010−60993A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−228201(P2008−228201)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(302020207)東芝モバイルディスプレイ株式会社 (2,170)
【Fターム(参考)】