説明

表示装置、表示装置用フィルム及び表示システム

【課題】透過型プロジェクターや自発光型表示装置において、簡易な構成によりレーザーポインターによるポインターマークを視認性良く表示画像上に表示する。
【解決手段】400nm以上の長波長で且つ青色画素の発光スペクトルの最大ピーク波長よりも短波長の光を吸収して可視光を発光し、且つ、青色画素の発光スペクトルの最大ピーク波長以上の長波長の可視光域における最大モル吸光係数が4000L/(mol・cm)以下である発光材料をバインダー物質に分散させてなる発光膜1を表示面の外側に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザーポインターの指示位置の視認性が高い表示装置、これに用いる表示装置用発光フィルム、及び該表示装置を用いた表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
プレゼンテーションの際には、聴衆の注意を促すために指示具が用いられる事が多いが、近年、大型スクリーンを利用した投写型プロジェクターによるプレゼンテーションが多くなり、指示具としてレーザーポインターが利用されるようになってきた。レーザーポインターは、レーザー光のスクリーン面での散乱を利用して指示位置(ポインターマーク)を聴衆に認識させている。
【0003】
一方、最近では、大型の透過型スクリーンに投写した画像を背後から観察するプロジェクター(以下、「透過型プロジェクター」と記す。)や大型の自発光型表示装置が用いられる事が多くなった。しかしながら、これらの表示装置では、スクリーンや表示側の透明基板が、透過性が高いことや表示画像の視認性の向上のために反射防止領域を有していることから、レーザーポインターから出射した光の散乱が弱く、指示位置がわかりづらいという問題がある。
【0004】
特許文献1には、レーザーポインターを使用するための映像投写装置が開示されている。係る装置は、レーザーポインターからの出射光をカメラで検出し、その画像処理を行う事によりレーザー光の位置を特定し、スクリーン上の映像にポインターマークを表示するように構成されている。よって、係る構成を透過型プロジェクターや自発光型表示装置に応用すれば、ポインターマークを表示画像上に視認性良く表示することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2−170193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された表示装置は、検出器としてのカメラが必要になるため、当該技術を透過型プロジェクターや自発光型表示装置に応用した場合、構成が複雑で高価になるという問題があった。
【0007】
本発明の課題は、透過型プロジェクターや自発光型表示装置であっても、簡易な構成によりレーザーポインターによるポインターマークを視認性良く表示画像上に表示することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1は、青、緑、赤の各画素を有する表示装置であって、
表示面の外側に、400nm以上の長波長で且つ青色画素の発光スペクトルの最大ピーク波長よりも短波長の光を吸収して可視光を発光し、且つ、青色画素の発光スペクトルの最大ピーク波長以上の長波長の可視光域における最大モル吸光係数が4000L/(mol・cm)以下である発光材料を含む発光膜を具備したことを特徴とする。
【0009】
本発明の第2は、青、緑、赤の各画素を有する表示装置に具備される発光フィルムであって、
400nm以上の長波長で且つ青色画素の発光スペクトルの最大ピーク波長より短波長の光を吸収して可視光を発光し、且つ、青色画素の発光スペクトルの最大ピーク波長以上の長波長の可視光域における最大モル吸光係数が4000L/(mol・cm)以下である発光材料を含むことを特徴とする。
【0010】
本発明の第3は、上記本発明の表示装置と、前記青色画素の発光スペクトルの最大ピーク波長より短波長の光を発するレーザーポインターと、を有することを特徴とする表示システムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る発光膜は、レーザーポインターの出射光を吸収して可視光を発光することから、係るフィルムを具備した本発明の表示装置においては、表示画像に影響を及ぼすことなく、視認性の良いポインターマークを表示画像上に表示することができる。よって、レーザーポインターのポインターマークが視認しづらかった透過型プロジェクターや自発光型の表示装置においても、レーザーポインターを有効に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の表示装置の一実施形態の構成を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、表示装置の表示面の外側に、表示装置が発する可視光を吸収せず、レーザーポインターの出射光を吸収して可視光を発光する発光膜を有することに特徴を有する。係る発光膜は、表示装置の表示面を観察する自発光型の表示装置においては、表示面の外側に、透過型プロジェクターにおいては、該透過型スクリーンの観察側に配置される。本発明の表示装置用発光フィルムは、係る発光膜の好ましい一形態であり、表示面或いはスクリーンに接着剤等によって貼付するなどの方法により直接積層して用いることができる。また、本発明の表示システムは、本発明の表示装置と、青色画素の発光スペクトルの最大ピーク波長より短波長の光を発するレーザーポインターを有する。
【0014】
尚、本発明は上記のように透過型プロジェクターや自発光型表示装置に好ましく適用されるが、これらの装置に限定されるものではなく、従来の投写型プロジェクター等においても好ましく適用される。
【0015】
図1は、自発光型表示装置の一例である有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置に本発明を適用した場合の構成例を示す断面模式図である。図中、1は発光膜、2は透明基板、3は隔壁、4は陽極、5,6,7はR(赤),G(緑),B(青)の各画素の有機化合物層、8は電子注入層、9は陰極、10は乾燥剤、11は封止用ガラスキャップである。有機化合物層5,6,7は、例えば、陽極4側から正孔輸送層、発光層、電子輸送層を積層してなる。本例は、陽極4側から光取り出しを行う形態であり、通常、基板2の外側表面が表示面となる。よって、該基板2の外側に本発明の発光膜1を配置することで、該基板2側に表示された画像上において、レーザーポインターによるポインターマークを視認性良く表示することができる。以下、本発明の発光フィルム及び表示装置について詳細に説明する。
【0016】
レーザーポインターは、日本国内では、経済産業省関係特定製品の技術上の基準等に関する省令により、日本工業規格C6802(1998)レーザー製品の安全基準3.15クラス1レーザー製品又は3.16クラス2レーザー製品であることと定められている。この日本工業規格C6802は国際規格IEC60825−1に準拠している。また、レーザーポインターは、アメリカ合衆国やヨーロッパ連合諸国においても日本国内と同様の制限がなされている。日本工業規格C6802によると、レーザーポインターとして利用できる波長は400nm乃至700nmである。
【0017】
本発明の表示装置は、R,G,Bの各画素を備えている。国際照明委員会(CIE)が1931年に定めたCIE 1931 color spaceでは、原色としての青色の波長を435.8nmとしている。一般に、最も短波長である青色画素は430nm乃至460nmで発光するスペクトルの最大ピークを有しており、その最大ピーク波長より短波長では発光強度は小さいか、非発光である。
【0018】
従って、レーザーポインターの出射光と表示装置が発する可視光を波長領域で区別するためには、レーザーポインターの出射光の波長領域を400nm以上の長波長で且つ青色画素のピーク波長より短波長にする必要がある。レーザーポインターの出射光と表示装置が発する可視光を波長領域で区別する理由は、表示装置が発する可視光では発光膜の発光を誘起せず、レーザーポインターの出射光でのみ選択的に発光膜の発光を誘起することを可能にするためである。よって、好ましくは、405nmの青色半導体レーザーを用いたレーザーポインターが挙げられる。
【0019】
一方、一般に、光の物質の吸収には強い吸収を示す遷移と弱い吸収を示す遷移がある。物質の光の吸収の程度を表す指標として、一般にモル吸光係数が用いられる。一般に、有機化合物のππ*遷移は許容遷移で遷移確率も大きく、強い光の吸収を示す。ππ*遷移を示す代表的で且つ最も単純な化合物であるベンゼンでは、ππ*遷移に起因する3つの強い光の吸収を示す。それぞれの光の吸収スペクトルのピークのモル吸光係数は47000L/(mol・cm)、7000L/(mol・cm)及び260L/(mol・cm)である。これらの中で47000L/(mol・cm)及び7000L/(mol・cm)というモル吸光係数は、光を効率よく吸収する強い吸収と呼ばれる範囲に入っている。従って、レーザーポインターの光を効率よく吸収するためには、モル吸光係数が7000L/(mol・cm)以上必要である。
【0020】
また、有機金属錯体の中には上記のππ*遷移だけでなく、金属−配位子電荷移動(MLCT)遷移由来の吸収を示すものがある。特に、重金属を含む有機錯体の場合は、重原子効果のため蛍光の発光強度が弱いかほとんど発光せず、常温付近でりん光が発光する。そして、このMLCT遷移による光の吸収波長が、配位子のππ*遷移による強い吸収スペクトルのピーク波長とりん光の発光スペクトルの最大ピーク波長の間に位置する。特に、基底状態からMLCT状態の三重項状態(3MLCT)への遷移はスピン禁制のために弱い吸収しか示さない。
【0021】
例えば、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(III)(Ir(ppy)3)は、最も強い3MLCT遷移を示す化合物の1つである。3MLCT遷移由来の吸収は460nm付近にピークを持ち、そのモル吸光係数は4000L/(mol・cm)である。また、Ir(ppy)3は512nmにスペクトルピークを持つ緑色のりん光を発光する。
【0022】
表示装置の前面に、可視域に吸収する物質が存在しても、その吸収の程度が小さければ表示装置の色合い調整により補正可能である。また、物質の吸収の程度が小さければ、表示装置が発する光を吸収することによる発光も小さい。
【0023】
よって、本発明の発光膜は、レーザーポインターの出射光でのみ選択的に発光させることにより、表示画像の視認性を落とすことなく、ポインターマークの視認性を高めるために、以下の条件を満たしている。
(1)青色画素の最大ピーク波長以上の長波長の可視光域では実質的に吸収がない。
(2)400nm以上の長波長で且つ青色画素の発光スペクトルのピーク波長より短波長の光を吸収し、該吸収によって可視光を発光する。
【0024】
本発明の発光フィルムは、上記条件を満たすべく、以下の特性を有する発光材料を含んでいる。
〈1〉青色画素のピーク波長以上の長波長の可視光域における最大モル吸光係数が4000L/(mol・cm)以下である。
〈2〉400nm以上の長波長で且つ青色画素の発光スペクトルの最大ピーク波長より短波長の光を吸収し、該吸収によって可視光を発光する。
【0025】
本発明において用いられる発光材料としては、上記〈1〉、〈2〉の特性を有する化合物を1種用いればよいが、〈1〉の特性を備えた上で、〈2〉については2種の化合物を組み合わせて用いることも可能である。即ち、400nm以上の長波長で且つ青色画素の発光スペクトルの最大ピーク波長より短波長の帯域における吸収が大である第1の化合物と、第1の化合物が吸収した吸光エネルギーを受け取って可視光を発光する第2の化合物とを併用する。この時、第1の化合物の、400nm以上の長波長で且つ青色画素の発光スペクトルの最大ピーク波長より短波長の帯域における最大モル吸光係数は7000L/(mol・cm)以上が好ましい。また、第2の化合物は、エネルギー移動の見地から第1の化合物の吸収の最長ピーク波長よりも長波長の可視光を発光する。また、第1の化合物から第2の化合物へのエネルギー移動が効率よく起こる事が重要である。エネルギー移動の機構として、デクスター機構とフェルスター機構が知られている。それらのエネルギー移動機構によれば、必ずしも第1の化合物が発光物質である必要はないが、発光するほうが好ましい。また、第1の化合物の発光スペクトルと第2の化合物の吸収スペクトルの重なりが大きいほうが好ましい。また、スペクトルが重なる領域における第2の化合物のモル吸光係数が大きいほうが好ましい。
【0026】
発光材料の具体例としては、例えば、アクリドンやビス(2−フェニルピリジン)イリジウム(III)アセチルアセトナート((ppy)2Ir(acac))が挙げられる。アクリドンは417nmより長波長領域には吸収が無く且つ420nm及び440nmをピーク波長に持つ強い青色発光を示す。一方、(ppy)2Ir(acac)は、460nmに3MLCT遷移による吸収ピークを持ち、そのモル吸光係数は3500L/(mol・cm)である。また、400nmより長波長領域での最大モル吸光係数が4000L/(mol・cm)であり、520nmをピークとする強い緑色発光を示す。よって、上記に挙げた発光材料は1種で発光材料として使用することが可能である。
【0027】
一般に、アクリドンのような蛍光材料は吸収ピークと発光ピークが近接しており、上記レーザーポインターの波長領域での光照射では比視感度が低い青色領域の発光しか得られない。比視感度が最大である波長は、明所では555nm、暗所では510nmの緑色領域である。よって、520nmに強い発光を示す(ppy)2Ir(acac)の方が視認性がよい。
【0028】
アクリドンの400nmより長波長での最大モル吸光係数は8990L/(mol・cm)であり、417nmより長波長領域には吸収が無い。上記したように、(ppy)2Ir(acac)は、400nm以上でのモル吸光係数が低いものの、発光した可視光の視認性はアクリドンよりも高い。よって、第1の化合物としてアクリドンを、第2の化合物として(ppy)2Ir(acac)を用いることで、両者の特性が相俟って、より視認性の良いポイントマークを表示することができる。尚、(ppy)2Ir(acac)と同じ効果を示す化合物として、Ir(ppy)3などの有機EL材料をはじめとする有機金属錯体が挙げられるが、これらに限定するものではない。尚、(ppy)2Ir(acac)とアクリドンとを併用する場合、(ppy)2Ir(acac)はアクリドン100質量部に対して0.1乃至30質量部用いることが好ましい。
【0029】
本発明の発光膜は、上記発光材料単体で構成されても良いし、発光材料をバインダー物質中にドープすることで構成されても良い。係るバインダー物質としては、表示装置が発する可視光の透過性が高いポリエチレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、ガラスなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。発光材料は視認性の見地から、表示装置の青色画素の発光スペクトルの最大ピーク波長以上の長波長の可視光域における吸光度が0.05以下であることが好ましい。また、特に発光材料として2種の化合物を用いる場合、発光膜の吸光度が同じ条件であっても、発光膜が厚くなると2種の分子間距離が大きくなりエネルギー移動効率が低下するため、発光膜の厚さとしては0.1乃至100μmが好ましい。
【0030】
本発明の発光膜の形成方法としては特に限定されない。例えば、バインダー物質と発光材料とをクロロホルム等の溶媒に溶解或いは分散させた溶液を用意し、スリットコーターで表示面やスクリーン上に塗布し、乾燥させる。この時、溶液中の発光材料の濃度としては、0.1乃至10質量%が好ましい。また、発光膜はフィルム状に形成して表示装置の表示面或いはスクリーンに貼付しても良い。この時、フィルムは柔軟性があり湾曲できてもよいし、柔軟性がなく湾曲できなくてもよい。フィルム状に形成する方法としては、発光材料をバインダー樹脂中に溶融混合して均一に分散させた状態でフィルム状に形成する。また、バインダー樹脂をフィルム状に形成し、その上に発光材料を真空蒸着等により積層し、さらにその上にバインダー樹脂を積層して発光材料層をバインダー樹脂層で挟持する方法も好ましい。この時、発光材料層の厚さは0.1乃至100μmで、発光膜全体として1乃至1000μm程度が好ましい。
【0031】
フィルムには、表示装置に固定するための可視光の透過性が高い粘着層が具備されていてもよい。
【0032】
また、本発明の表示装置においては、表示装置からの光による発光膜の発光を低減するために、表示面と発光膜との間に、青色画素のピーク波長より短波長の光の全てまたは一部を吸収する層を設けてもよい。
【0033】
(実施形態1)
図1に示した構成の有機EL表示装置を下記の工程により作製する。
【0034】
透明ガラス基板2上に、酸化インジウム錫(ITO)をスパッタ法により120nmの膜厚で成膜した後、フォトレジストを用いたウエットエッチング方式によりストライプ状にパターニングし、陽極4とする。次に、光硬化性アクリル樹脂を用い陽極4上に形成される各画素の有機化合物層5,6,7の周囲を囲むように且つ隣接する画素がそれぞれ分断されるようにして隔壁3を成膜する。次に、該基板をアセトン、イソプロピルアルコールで順次超音波洗浄し、イソプロピルアルコールで煮沸洗浄後、乾燥させる。その後、紫外線(UV)−オゾン洗浄を行う。
【0035】
次に、R,G,Bの各色画素5,6,7を構成する有機化合物層を、メタルマスクを介して真空蒸着する。各色の画素5,6,7における有機化合物層の材料の具体例として、下記文献記載の有機化合物材料が挙げられるが、これらに限定されるものではない。一般的に、青色画素の発する光の発光スペクトルの最大ピーク波長は、430nm以上480nm以下である。
1.「有機ELディスプレイ」、時任静士・安達千波矢・村田英幸 共著、株式会社オーム社(平成16年)
2.「有機EL材料とディスプレイ」、城戸淳二 監修、株式会社シーエムシー(2001年)
【0036】
次に、各色有機化合物層の上に電子注入層8としてフッ化リチウムを0.5nm、陰極9としてアルミニウムを100nmの膜厚で、順次パターニングのためのメタルマスクを介して真空蒸着する。次に、窒素雰囲気中で乾燥剤10を入れたガラスキャップ11により封止する。
【0037】
次に、レーザーポインター用の発光膜1を形成するために、発光材料であるアクリドンとバインダー物質であるポリメチルメタクリレート(PMMA)を含むクロロホルム溶液を調整する。該溶液をスリットコーターを用いて、透明ガラス基板2の画素が形成されていない側の面に塗布し、乾燥させて発光膜1を成膜する。上述したように、アクリドンは、400nmより長波長での最大モル吸光係数が8990L/(mol・cm)であり、417nmより長波長領域には吸収が無い。
【0038】
以上の方法により作製したボトムエミッション型パッシブマトリクスRGBフルカラー有機EL表示装置は1ライン毎に順次走査し、発光させる事が可能で、画像を表示した状態では、発光膜1は発光しない。また、発光膜1に405nmの光を発する青色半導体レーザーを用いたレーザーポインターの出射光を照射すると、該出射光が照射された部分が青く光り、視認性の良いポインターマークが確認される。
【0039】
本実施形態では、ボトムエミッション型パッシブマトリクスRGBフルカラー有機EL表示装置を用いて説明したが、トップエミッション型アクティブマトリクスRGBフルカラー有機EL装置でも構わない。または透過型プロジェクターの一例であるRGBフルカラーリアプロジェクターでも構わない。
【0040】
(実施形態2)
透明ガラス基板2を、吸収限界波長が420nm且つ透過率50%の波長が450nmであるシャープカットフィルターに代える以外は、実施形態1と同様の方法で有機EL表示装置を作製する。
【0041】
得られたボトムエミッション型RGBフルカラー有機EL表示装置は実施形態1と同様に1ライン毎に順次走査し、発光させる事が可能である。また、発光膜1に405nmの光を発する青色半導体レーザーを用いたレーザーポインターの出射光を照射すると、該出射光が照射された部分が青色に光り、視認性の良いポインターマークが確認される。
【0042】
(実施形態3)
PMMAフィルムをT−ダイ法により作製し、その上にアクリドンと(ppy)2Ir(acac)を真空中で共蒸着し、さらに窒素雰囲気中でPMMAフィルムにより封止して発光フィルムを形成する。このフィルムを、ボトムエミッション型RGB有機EL表示装置の表示面のフレームに貼付した両面テープにより、表示面全域がこのフィルムで覆われるように固定する。
【0043】
有機EL表示装置に所定の画像を表示した状態で、発光膜が極僅かに発光することがあるが、表示画像には実質的な影響はない。有機EL表示装置の発光膜に405nmの光を発する青色半導体レーザーを用いたレーザーポインターの出射光を照射すると、該出射光が照射された部分が緑色に光り、視認性の良いポインターマークが確認される。
【符号の説明】
【0044】
1:発光膜、2:透明基板、3:隔壁、4:陽極、5,6,7:有機化合物層、8:電子注入層、9:陰極、10:乾燥剤、11:封止用ガラスキャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
青、緑、赤の各画素を有する表示装置であって、
表示面の外側に、400nm以上の長波長で且つ青色画素の発光スペクトルの最大ピーク波長よりも短波長の光を吸収して可視光を発光し、且つ、青色画素の発光スペクトルの最大ピーク波長以上の長波長の可視光域における最大モル吸光係数が4000L/(mol・cm)以下である発光材料を含む発光膜を具備したことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
上記発光材料が、2種の化合物からなり、第1の化合物が、400nm以上の長波長で且つ青色画素の発光スペクトルの最大ピーク波長より短波長の帯域における最大モル吸光係数が7000L/(mol・cm)以上で、第2の化合物が、第1の化合物が吸収した吸光エネルギーにより第1の化合物の吸収の最長ピーク波長よりも長波長の可視光を発光する請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
青、緑、赤の各画素を有する表示装置に具備される発光フィルムであって、
400nm以上の長波長で且つ青色画素の発光スペクトルの最大ピーク波長より短波長の光を吸収して可視光を発光し、且つ、青色画素の発光スペクトルの最大ピーク波長以上の長波長の可視光域における最大モル吸光係数が4000L/(mol・cm)以下である発光材料を含むことを特徴とする表示装置用発光フィルム。
【請求項4】
上記発光材料が、2種の化合物からなり、第1の化合物が、400nm以上の長波長で且つ青色画素の発光スペクトルの最大ピーク波長より短波長の帯域における最大モル吸光係数が7000L/(mol・cm)以上で、第2の化合物が、第1の化合物の吸光エネルギーにより第1の化合物の吸収の最長ピーク波長よりも長波長の可視光を発光する請求項3に記載の表示装置用発光フィルム。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の表示装置と、前記青色画素の発光スペクトルの最大ピーク波長より短波長の光を発するレーザーポインターと、を有することを特徴とする表示システム。

【図1】
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【公開番号】特開2011−81240(P2011−81240A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−234198(P2009−234198)
【出願日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】