表示装置、電子機器
【課題】 表示品質を向上させ、さらには品質寿命を向上させることが可能な表示装置の提供を目的とする。
【解決手段】 本発明の表示装置は、1枚の基板150上に複数の表示パネル22,24が配置されてなり、前記表示パネル22,24は、それぞれ別個のサブ基板2i,2jを備え、各サブ基板2i,2j上に発光素子を備えた構成を具備してなるとともに、第1波長範囲の発光が可能な第1発光素子からなる第1表示パネル22と、第2波長範囲の発光が可能な第2発光素子からなる第2表示パネル24とを少なくとも含むことを特徴とする。
【解決手段】 本発明の表示装置は、1枚の基板150上に複数の表示パネル22,24が配置されてなり、前記表示パネル22,24は、それぞれ別個のサブ基板2i,2jを備え、各サブ基板2i,2j上に発光素子を備えた構成を具備してなるとともに、第1波長範囲の発光が可能な第1発光素子からなる第1表示パネル22と、第2波長範囲の発光が可能な第2発光素子からなる第2表示パネル24とを少なくとも含むことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置、電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機EL装置に代表される自発光型表示装置は、バックライトを必要としないため薄型化が可能な表示装置として脚光を浴びている。このような有機EL装置は、例えば特許文献1に開示されているように、表示領域内に赤色(R),緑色(G),青色(B)の各色のサブ画素(表示の最小単位)をストライプ状に配列し、3つのサブ画素を1画素としてフルカラーの表示を可能としている。
【特許文献1】特開2002−252083号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に開示された表示装置は、表示領域内において各々共通の画素構成により一様にフルカラー表示を行うものである。このような構成は、テレビのように表示領域における輝度の時間積分値が画素によらず略一定の表示を行う場合には好適であるが、逆に表示領域内での輝度の時間積分値が画素毎に異なるような表示を行う場合には、以下のような問題を生じる場合がある。つまり、1)輝度の時間積分値が大きい色の画素について輝度劣化が他の色よりも進み易い、2)輝度の時間積分値が大きい色の画素について輝度劣化が相対的に早いことで、全体としてホワイトバランスが崩れ、色味が変わったり、焼付きが生じ易い、3)単色表示したい領域に、フルカラー用の3色のサブ画素が存在すると開口率が低くなり、単色表示部分の輝度劣化が早くなる、等の問題が生じる得る。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、上記問題を悉く解決し、もって表示品質を向上させ、さらには品質寿命を向上させることが可能な表示装置の提供を目的としている。また、本発明は、このような高品質の表示が可能な表示装置を効率良く製造可能な方法を提供することを目的としている。さらに、本発明は、このような高品質の表示が可能な表示装置を備える電子機器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の表示装置は、1枚の基板上に複数の表示パネルが配置されてなる表示装置であって、前記表示パネルは、それぞれ別個のサブ基板を備え、各サブ基板上に発光素子を備えた構成を具備してなるとともに、第1波長範囲の発光が可能な第1発光素子からなる第1表示パネルと、第2波長範囲の発光が可能な第2発光素子からなる第2表示パネルとを少なくとも含むことを特徴とする。なお、第1波長範囲と第2波長範囲とは互いに同一波長範囲でないものを意味しており、両範囲が完全同一でなければ良く、一方の範囲が他方の範囲に含まれることを除外するものではない。
【0006】
このような表示装置によると、1枚の基板上に配置された各表示パネル毎に、それぞれ発光波長範囲が異なり、つまり発光可能な色の範囲(種類)が異なることとなる。したがって、本発明の表示装置は、各表示パネルが設けられた領域毎に表示可能な色がそれぞれ異なることとなり、表示パネルの配置次第で表示領域の設計自由度を高めることができるようになる。
また、この場合、1枚の基板の所定領域に必要な色の発光が可能な発光素子からなる表示パネルを配設すれば(言い換えると不必要な色の発光素子を排除した表示パネルを配設すれば)、全体として開口率を高めることができる。つまり、従来の構成では、例えば単色表示を行う領域にも一様にフルカラー表示用の画素を配設しているため、不必要な色(表示に用いない色)に係る画素が備えられたことによる開口率低下は免れなかったが、本発明では配設する表示パネルから不必要な色に係る発光素子を排除することで、これを解決することができたのである。
また、そのような必要な色の発光素子を備えた表示パネルのみにより所定の表示領域を構成することにより、従来のようにフルカラー用の画素を表示領域全体に配置する場合に比して、1画素当りの輝度を低減させても、該従来と同程度の面輝度を得ることができ、したがって1画素当りの輝度劣化も低減され、消費電力を低減することも可能となり、ひいては輝度寿命を高めることも可能となる。
また、本発明の表示装置では解像度も向上されている。つまり、従来のようにフルカラー用の画素を表示領域全体に配置する場合に比して、所定領域内に必要な色の発光素子からなる表示パネルを配設することで、解像度の向上に寄与することができるのである。
さらに、本発明の表示装置では、別個のサブ基板からなる第1表示パネル及び第2表示パネルを別個に製造した後、これを1枚の基板上に適宜配置するといった製造プロセスにて製造可能なため、製造効率が良く、しかも各表示パネルを自由に取り外して交換作業等も行えるものとなる。
【0007】
前記第1表示パネルと前記第2表示パネルとは、それぞれ同一の駆動手段にて駆動されるものとすることができる。このように1枚の基板上に配置する各表示パネルを同一の駆動手段で駆動すれば、各表示パネルにそれぞれ連関した表示が可能となる。なお、前記表示パネルに対してコネクタを具備させ、該コネクタに対して着脱自在のフレキシブル配線により当該表示パネルと前記駆動手段とを電気的に接続することができる。
【0008】
なお、前記第1表示パネルを構成する第1発光素子と前記第2表示パネルを構成する第2発光素子の素子構成を異ならせるものとすることができる。具体的には、各素子を複数の機能層からなる積層体にて構成し、該積層構造を異ならしめることができる。
一般に発光色が異なると、発光を行うに要するエネルギーが異なるため、各色の発光素子にはそれぞれ好ましい構成があるが、従来のような表示領域全域にフルカラー用の画素を配設した場合は、各色のパターンに応じて画素構成を異ならせる必要があり、非常に手間の掛かるものであった。しかしながら、本発明では、表示領域を異なる表示パネルにて構成しているため、各表示パネル毎に発光素子の機能層の積層構造を異ならせればよく、各色に適した積層構造を簡便に実現できることとなる。さらに、このように機能層をパネル毎に異ならせることで、そのパネルの発光色に好適な積層構造を採用することができ、ひいては発光効率の向上に寄与することが可能となる他、輝度寿命を高めることも可能となり得る。
【0009】
なお、上記機能層としては、陰極と、陽極と、該陰極及び陽極の間に形成されてなる有機EL層とを具備するものを用いることができる。そして、前記第1表示パネルが、青色を発光可能な青色有機EL層を有して構成される一方、前記第2表示パネルが、赤色を発光可能な赤色有機EL層を有して構成され、且つ青色を発光可能な青色有機EL層を含まない構成とされてなり、さらに、前記第1表示パネルの陰極がフッ化リチウムを含む一方、前記第2表示パネルの陰極はフッ化リチウムを含まないものとして当該表示装置を構成することができる。
【0010】
発光機能層たる有機EL層は、発光色毎に発光効率が異なる。特に、赤色を発光する有機EL層と青色を発光する有機EL層とでは、陰極構成の相違によって発光効率が大きく異なることとなり、それぞれの有機EL層に好適な陰極構成を配するのが好ましい。具体的には、陰極にフッ化リチウムを含ませることで、青色の有機EL層の発光効率を向上させることが可能となる一方、赤色の有機EL層の発光効率は若干低下する。そこで、本発明のように表示領域を複数の表示パネルにて構成した場合には、各表示パネル毎に陰極構成を相違させることが容易で、具体的には、青色の有機EL層を含む表示パネルと、赤色の有機EL層を含み且つ青色の有機EL層を含まない表示パネルとについて、各画素の陰極構成を容易に相違させることが可能であり、ひいては容易に発光効率を向上させることが可能となる。なお、具体的な陰極構成としては、青色の有機EL層を含む表示パネルの陰極がフッ化リチウムとカルシウムとアルミニウムの複合構造を有する一方、青色の有機EL層を含まない表示パネルの陰極はカルシウムとアルミニウムの複合構造を有するものとすることができる。
【0011】
次に、本発明の電子機器は上記表示装置を備えることを特徴とし、このような電子機器によると、その表示部において高品質の表示を高寿命で提供できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の表示装置、並びに電子機器の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならせてある。
【0013】
(表示装置)
図1は、表示装置の一実施形態としての有機EL装置について、その平面構成を示す模式図であって、図2は図1のA−A’断面を示す模式図、図3は該有機EL装置の回路構成を示すブロック図、図4は該有機EL装置の配線構造を示す説明図である。
【0014】
図1及び図2に示すように、本実施形態の有機EL装置100は、1枚の基板150上に複数の表示パネル21,22,24が配置されてなり、各表示パネル21,22,24はそれぞれ固有に表示パネルを構成している。つまり、各表示パネル21,22,24は、それぞれサブ基板2h,2i,2j(図8〜図10参照)と封止基板3との間に表示素子3(図8参照)を備えた構成を有している。
【0015】
一方、有機EL装置100は表示領域2aと非表示領域2cとを有してなり、表示パネル(第1表示パネル)21は、有機EL装置100の表示領域2aのうち略中央半分以上の領域を占め、フルカラー表示可能なパネルとして構成されている。また、表示パネル(第2表示パネル)22は、有機EL装置100の表示領域2aのうち左下領域に配置され、赤色の表示が可能なパネルとして構成され、さらに表示パネル(第3表示パネル)24は、有機EL装置100の表示領域2aのうち右下領域に配置され、黄色の表示が可能なパネルとして構成されている。つまり、各表示パネル21,22,24は、それぞれ表示可能な発光波長範囲が異なり、各領域に最適な色表示を行うことが可能とされている。
【0016】
このように配置された各表示パネル21,22,24は、図3に示すような回路構成により表示制御が行われるものとされている。つまり、各表示パネル21,22,24はそれぞれ画素回路部21a,22a,24aを備えており、該画素回路部21a,22a,24aに配設された個々の画素を駆動するべく、各画素に走査信号を供給するための走査線駆動回路40a,40b,40cを備えている。
【0017】
一方、個々の画素を駆動するべく、データ信号を供給するためのデータ線駆動回路42が、各表示パネル21,22,24に共通に配設されている。該データ線駆動回路42は、具体的には各表示パネル21,22,24が配設された共通の基板150上に設けられており、該データ線駆動回路42から発信されるデータ信号は、フレキシブル配線(ハーネス)41a,41b,41cを介して各表示パネル21,22,24に供給されるものとなっている。なお、フレキシブル配線(ハーネス)41a,41b,41cは各表示パネル21,22,24に設けられたコネクタ57,58,59に着脱自在に接続されている。
【0018】
また、データ線駆動回路42及び走査線駆動回路40a,40b,40cはメイン制御回路43にて一括制御されている。なお、該メイン制御回路43は、当該有機EL装置100に対して画像信号、制御信号、電源等の駆動を司る全ての信号を供給する構成となっている。
【0019】
次に、個々の表示パネルの配線構成を説明する。なお、各表示パネル21,22,24の構成はそれぞれ同一とされているため、ここでは第1表示パネル21を例にとり説明する。図4に示すように、本実施形態の有機EL装置100は、複数の走査線101と、走査線101に対して交差する方向に延びる複数の信号線102と、信号線102に対して並列する方向に延びる複数の電源線103とがそれぞれ配線された構成を有し、走査線101及び信号線102の各交点付近には単位表示領域Pが設けられている。
【0020】
信号線102は、上述したデータ線駆動回路42にフレキシブル配線を介して接続され、該データ線駆動回路42はシフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン及びアナログスイッチを備えている。また、走査線101には、シフトレジスタ及びレベルシフタを備える走査側駆動回路40aが接続されている。
【0021】
更に、単位表示領域Pの各々には、走査線101を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用の薄膜トランジスタ122と、このスイッチング用の薄膜トランジスタ122を介して信号線102から供給される画素信号を保持する保持容量capと、該保持容量capによって保持された画素信号がゲート電極に供給される駆動用の薄膜トランジスタ123と、この駆動用薄膜トランジスタ123を介して電源線103に電気的に接続したときに当該電源線103から駆動電流が流れ込む画素電極(電極)111と、この画素電極111と陰極(対向電極)12との間に挟み込まれた有機EL層110とが設けられている。電極111と対向電極12と有機EL層110により、発光素子が構成されている。
【0022】
走査線101が駆動されてスイッチング用の薄膜トランジスタ122がオンになると、そのときの信号線102の電位が保持容量capに保持され、該保持容量capの状態に応じて駆動用の薄膜トランジスタ123のオン・オフ状態が決まる。そして、駆動用の薄膜トランジスタ123のチャネルを介して、電源線103から画素電極111に電流が流れ、更に有機EL層110を介して陰極12に電流が流れる。有機EL層110では、流れる電流量に応じて発光が生じる。
【0023】
次に、本実施形態の有機EL装置100が備える各表示パネル21,22,24の画素構成についてそれぞれ説明する。なお、図5、図6、図7は、各表示パネル21,22,24の画素構成を模式的に示す平面図である。
第1表示パネル21では、図5に示すように、画素領域P毎に異なる色の発光が可能なように、赤色発光が可能なRドットA1から構成された画素領域Pと、緑色発光が可能なGドットA2から構成された画素領域Pと、青色発光が可能なBドットA3から構成された画素領域Pとを有しており、これら各R,G,BドットA1〜A3により1つの画素Aが構成されている。そして、このような構成の画素Aはフルカラー表示が可能となっている。
【0024】
一方、第2表示パネル22では、図6に示すように、各画素Aにおいて赤色表示が可能なように、赤色発光可能なRドットA1が3つ配設されている。また、第2表示パネル24では、図7に示すように、各画素Aにおいて黄色表示が可能なように、赤色発光可能なRドットA1が2つ、緑色発光可能なGドットA2が1つ配設されている。
【0025】
続いて、本実施形態の有機EL装置100が備える各表示パネル21,22,24の断面構成についてそれぞれ説明する。
図8は、第1表示パネル21の1画素の断面模式図である。第1表示パネル21は、ガラス等からなる透明な基板(サブ基板)2と、マトリックス状に配置された発光素子を具備して基板2h上に形成された発光素子部11と、発光素子部11上に形成された陰極12とを具備している。ここで、発光素子部11と陰極12とにより表示素子(発光素子)10が構成される。
【0026】
第1表示パネル21には、図5にも示した通り、赤色(R)を発光可能なRドットA1と、緑色(G)を発光可能なGドットA2と、青色(B)を発光可能なBドットA3の異なる3色のドットからなる画素Aが複数配列されている。つまり、第1表示パネル21の表示領域には画素Aが所定の配列にて配置されてなり、該画素Aはフルカラーの波長範囲(概ね380nm〜780nm程度)の表示が可能とされている。
【0027】
第1表示パネル21は、基板2h上に、TFTなどの回路等が形成された回路素子部14、有機EL層110が形成された発光素子部11及び陰極12が順次積層されて構成されており、有機EL層110から基板2h側に発せられた光が、回路素子部14及び基板2hを透過して基板2hの下側(観測者側)に出射されるとともに、有機EL層110から基板2hの反対側に発せられた光が陰極12により反射されて、回路素子部14及び基板2hを透過して基板2hの下側(観測者側)に出射されるようになっている。
【0028】
回路素子部14には、基板2h上にシリコン酸化膜からなる下地保護膜2cが形成され、この下地保護膜2c上に多結晶シリコンからなる島状の半導体膜141が形成されている。半導体膜141には、ソース領域141a及びドレイン領域141bが高濃度リンイオン打ち込みにより形成されている。前記リンイオンが導入されなかった部分がチャネル領域141cとなっている。
【0029】
また、前記下地保護膜2c及び半導体膜141を覆う透明なゲート絶縁膜142が形成され、ゲート絶縁膜142上にはAl、Mo、Ta、Ti、W等からなるゲート電極143(走査線101)が形成され、ゲート電極143及びゲート絶縁膜142上には透明な第1層間絶縁膜144aと第2層間絶縁膜144bが形成されている。ゲート電極143は半導体膜141のチャネル領域141cに対応する位置に設けられている。また、第1、第2層間絶縁膜144a、144bを貫通して、半導体膜141のソース、ドレイン領域141a、141bにそれぞれ接続されるコンタクトホール145,146が形成されている。
【0030】
そして、第2層間絶縁膜144b上には、ITO等からなる透明な画素電極111が所定の形状にパターニングされて形成され、一方のコンタクトホール145がこの画素電極111に接続されている。また、もう一方のコンタクトホール146が電源線103に接続されている。このようにして、回路素子部14には、各画素電極111に接続された駆動用の薄膜トランジスタ123が形成されている。
【0031】
発光素子部11は、複数の画素電極111…上の各々に積層された有機EL層110と、各画素電極111及び有機EL層110の間に備えられて各有機EL層110を区画するバンク部112とを主体として構成されている。有機EL層110上には陰極12が配置されている。これら画素電極111、有機EL層110及び陰極12によって発光素子が構成されている。ここで、画素電極111は、例えばITOにより形成されてなり、平面視略矩形状にパターン形成されている。この各画素電極111…を仕切る形にてバンク部112が備えられている。
【0032】
バンク部112は、図8に示すように、基板2h側に位置する第1隔壁部としての無機物バンク層(第1バンク層)112aと、基板2hから離れて位置する第2隔壁部としての有機物バンク層(第2バンク層)112bとが積層された構成を備えている。無機物バンク層112aは、例えばTiO2やSiO2等により形成され、有機物バンク層112bは、例えばアクリル樹脂、ポリイミド樹脂等により形成される。
【0033】
無機物、有機物バンク層112a、112bは、画素電極111の周縁部上に乗上げるように形成されている。平面的には、画素電極111の周囲と無機物バンク層112aとが部分的に重なるように配置された構造となっている。また、有機物バンク層112bも同様であり、画素電極111の一部と平面的に重なるように配置されている。また無機物バンク層112aは、有機物バンク層112bの縁端よりも画素電極111の中央側に更に突出するように形成されている。このようにして、無機物バンク層112aの各第1積層部(突出部)112eが画素電極111の内側に形成されることにより、画素電極111の形成位置に対応する下部開口部112cが設けられている。
【0034】
また、有機物バンク層112bには、上部開口部112dが形成されている。この上部開口部112dは、画素電極111の形成位置及び下部開口部112cに対応するように設けられている。上部開口部112dは、図8に示すように、下部開口部112cより開口が広く、画素電極111より狭く形成されている。また、上部開口部112dの上部の位置と、画素電極111の端部とがほぼ同じ位置になるように形成される場合もある。この場合は、図8に示すように、有機物バンク層112bの上部開口部112dの断面が傾斜した形状となる。このようにして、バンク部112には、下部開口部112c及び上部開口部112dが連通された開口部112gが形成されている。
【0035】
また、バンク部112には、親液性を示す領域と、撥液性を示す領域が形成されている。親液性を示す領域は、無機物バンク層112aの第1積層部112e及び画素電極111の電極面111aであり、これらの領域は、酸素を処理ガスとするプラズマ処理によって親液性に表面処理されている。また、撥液性を示す領域は、上部開口部112dの壁面及び有機物バンク層112の上面112fであり、これらの領域は、4フッ化メタン、テトラフルオロメタン、もしくは四フッ化炭素を処理ガスとするプラズマ処理によって表面がフッ化処理(撥液性に処理)されている。
【0036】
一方、有機EL層110は、画素電極111上に積層された正孔注入/輸送層110aと、正孔注入/輸送層110a上に隣接して形成された発光層110bとから構成されている。
正孔注入/輸送層110aは、発光層110bに正孔を注入する機能を有するとともに、正孔注入/輸送層110a内部において正孔を輸送する機能を有する。このような正孔注入/輸送層110aを画素電極111と発光層110bの間に設けることにより、発光層110bの発光効率、寿命等の素子特性が向上する。また、発光層110bでは、正孔注入/輸送層110aから注入された正孔と、陰極12から注入される電子とが再結合し、発光が行われる。
【0037】
正孔注入/輸送層110aは、下部開口部112c内に位置して画素電極面111a上に形成される平坦部110a1と、上部開口部112d内に位置して無機物バンク層の第1積層部112e上に形成される周縁部110a2から構成されている。また、正孔注入/輸送層110aは、構造によっては、画素電極111上であって、且つ無機物バンク層110aの間(下部開口部110c)にのみ形成されている(前述に記載した平坦部にのみ形成される形態もある)。
【0038】
また、発光層110bは、正孔注入/輸送層110aの平坦部110a1及び周縁部110a2上に渡って形成されており、平坦部112a1上での厚さが50nm〜80nmの範囲とされている。発光層110bは、赤色(R)に発光する赤色発光層110b1、緑色(G)に発光する緑色発光層110b2、及び青色(B)に発光する青色発光層110b3の3種類を有し、各発光層110b1〜110b3は平面視ストライプ状に配置されている。
【0039】
なお、正孔注入/輸送層形成材料としては、例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン等のポリチオフェン誘導体とポリスチレンスルホン酸等の混合物を用いることができる。また、発光層110bの材料としては、例えば、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリチオフェン誘導体、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素、またはこれらの高分子材料にルブレン、ペリレン、9,10-ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等をドープして用いることができる。
【0040】
陰極12は、発光素子部11の全面に形成されており、画素電極111と対になって有機EL層110に電流を流す役割を果たす。この陰極12は、当該第1表示領域21では、フッ化リチウム層12a、カルシウム層12b、及びアルミニウム層12cが積層されて構成されている。このとき、発光層に近い側の陰極には仕事関数が低いものを設けることが好ましく、特にこの形態においては発光層110bに直接に接して発光層110bに電子を注入する役割を果たす。
【0041】
陰極12を形成するアルミニウム層12cは、発光層110bから発した光を基板2h側に反射させるもので、アルミニウムの他、銀、アルミニウムと銀の積層膜等からなることが好ましい。更にアルミニウム層12c上にSiO、SiO2、SiN等からなる酸化防止用の保護層を設けても良い。なお、第1表示領域21において陰極12を構成する各層の層厚は、フッ化リチウム層12aが約5nm、カルシウム層12bが約5nm、アルミニウム層12cが約200nmとされている。
【0042】
図8に示す発光素子部11上には、実際の有機EL装置では封止部が備えられる。この封止部は、例えば基板2hの周囲に環状に封止樹脂を塗布し、さらに封止缶により封止することにより形成することができる。前記封止樹脂は、熱硬化樹脂あるいは紫外線硬化樹脂等からなり、特に、熱硬化樹脂の1種であるエポキシ樹脂よりなることが好ましい。この封止部は、陰極12または発光素子部11内に形成された発光層の酸化を防止する目的で設けられる。また、前記封止缶の内側には水、酸素等を吸収するゲッター剤を設け、封止缶の内部に侵入した水又は酸素を吸収できるようにしてもよい。
【0043】
一方、図9は第2表示パネル22の断面構成図であって、該第2表示パネル22は、サブ基板2iを有し、赤色のドット(サブ画素)A1のみによって構成されている。なお、第2表示パネル22では、図8に示した第1表示パネル21とは発光層110bの構成と陰極12の構成とが異なり、その他の断面構成は同様のため説明を省略する。
【0044】
つまり、第2表示パネル22では、3つの赤色ドットA1が1つの画素を構成しており、各ドットA1には、赤色(R)に発光する赤色発光層110b1が配設されている。また、第1表示パネル21では、図8に示すように陰極12の発光層110b側に発光効率を高めるためのフッ化リチウム層12aを形成しているが、当該第2表示パネル22においては、フッ化リチウム層12aを形成していない。これは、フッ化リチウム層12aが、発光層110bのうち青色(B)に発光する青色発光層110b3の発光効率向上を目的として設けられる機能層だからである。なお、第2表示パネル22における陰極12を構成する各層の層厚は、カルシウム層12bが約5nm、アルミニウム層12cが約200nmとされている。
【0045】
また、図10は第3表示パネル24の断面構成図であって、該第3表示パネル24は、サブ基板2jを有し、赤色のドット(サブ画素)A1と緑色のドット(サブ画素)A2とによって構成されている。なお、第3表示パネル24では、図8に示した第1表示パネル21とは発光層110bの構成と陰極12の構成とが異なり、その他の断面構成は同様のため説明を省略する。
【0046】
つまり、第3表示パネル24では、2つの赤色ドットA1と1つの緑色ドットA2が1つの画素を構成しており、赤色ドットA1には、赤色(R)に発光する赤色発光層110b1が配設され、緑色ドットA2には、緑色(G)に発光する緑色発光層110b2が配設されている。また、第1表示パネル21では、図8に示すように陰極12の発光層110b側に発光効率を高めるためのフッ化リチウム層12aを形成しているが、当該第3表示パネル24においては、フッ化リチウム層12aを形成していない。これは、フッ化リチウム層12aが、発光層110bのうち青色(B)に発光する青色発光層110b3の発光効率向上を目的として設けられる機能層だからである。なお、第3表示パネル24における陰極12を構成する各層の層厚は、カルシウム層12bが約5nm、アルミニウム層12cが約200nmとされている。
【0047】
以上のような構成を有する本実施形態の有機EL装置によると、表示領域2aが複数の表示パネル21,22,24にて構成されるとともに、各表示パネル21,22,24毎に、それぞれ発光波長範囲が異なり、つまり発光可能な色の範囲(種類)が異なっている。したがって、各表示パネル21,22,24が設けられた領域毎に表示可能な色がそれぞれ異なることとなり、表示パネル21,22,24の配置次第で表示領域2aの設計自由度を高めることができるようになる。
【0048】
また、1枚の基板150の所定領域に必要な色の発光が可能な発光素子からなる表示パネルを配設しており、言い換えると不必要な色の発光素子を排除した表示パネルを配設しているため、全体として開口率を高めることができる。また、そのような必要な色の発光素子を備えた表示パネルのみにより所定の表示領域を構成することにより、従来のようにフルカラー用の画素を表示領域全体に配置する場合に比して、1画素当りの輝度を低減させても、該従来と同程度の面輝度を得ることができ、したがって1画素当りの輝度劣化も低減され、消費電力を低減することも可能となり、ひいては輝度寿命を高めることも可能となる。
【0049】
具体的には、図11に示すように寿命が向上する。図11は、本実施形態の有機EL装置の赤色表示領域22a(3参照)における輝度(実施例)と、当該赤色表示領域22aをフルカラー表示用の表示パネルに置換して構成した場合における輝度(比較例)とについて、その時間変化を表したグラフである。なお、縦軸は1画素当りの面輝度(cd/m2)、横軸は時間(hour)を表している。
図11に示す通り、本実施形態の有機EL装置によると、実施例及び比較例の有機EL装置に関し、1画素において初期値300cd/m2の面輝度が得られるような画素設定とした場合、輝度が初期値の80%となる時間は、比較例では8000時間であったのに対し、実施例では40000時間であった。つまり、本実施形態の構成の導入により、輝度の劣化時間が約5倍となったのである。
【0050】
また、本実施形態の表示装置では解像度も向上されている。つまり、従来のようにフルカラー用の画素を表示領域全体に配置する場合に比して、所定領域内に必要な色の発光素子からなる表示パネルを配設することで、解像度の向上に寄与することができるのである。さらに、本実施形態の表示装置では、別個のサブ基板2h,2i,2jからなる第1表示パネル21、第2表示パネル22、第3表示パネル24を別個に製造した後、これを1枚の基板上に適宜配置するといった製造プロセスにて製造可能なため、製造効率が良く、しかも各表示パネルを自由に取り外して交換作業等も行えるものとなる。
【0051】
(電子機器)
次に、本発明の表示装置を用いた電子機器について説明する。
まず、上記実施形態の有機EL装置と同様の構成の表示装置をインストルメントパネルの表示部に用いた実施形態について説明する。図12は、インストルメントパネル500の構成を模式的に示す説明図である。
インストルメントパネル500は、フルカラー表示が可能な第1表示パネル21によりタコメーター(速度表示部)が構成されており、また赤色表示が可能な第2表示パネル22により警告表示部が構成され、さらに黄色表示が可能な第3表示パネル24により注意表示部が構成されている。以上のような電子機器によると、表示のバリエーションが増える上、本発明に係る表示装置を具備したものであるため、高品質の表示を高寿命にて提供することができるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本実施形態の有機EL装置の平面構成を示す模式図。
【図2】図1の有機EL装置のA−A’断面を示す模式図。
【図3】図1の有機EL装置の回路構成を示すブロック図。
【図4】図1の有機EL装置の配線構成を示す説明図。
【図5】第1表示パネルの画素構成を示す平面模式図。
【図6】第2表示パネルの画素構成を示す平面模式図。
【図7】第3表示パネルの画素構成を示す平面模式図。
【図8】第1表示領域の断面構成を示す図。
【図9】第2表示領域の断面構成を示す図。
【図10】第3表示領域の断面構成を示す図。
【図11】実施例における輝度の経時変化と、比較例における輝度の経時変化とについて示したグラフ。
【図12】電子機器の一例を示す平面図。
【符号の説明】
【0053】
2h,2i,2j…サブ基板、2a…表示領域、21…第1表示パネル、22…第2表示パネル、24…第3表示パネル、100…有機EL装置(表示装置)、150…基板
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置、電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機EL装置に代表される自発光型表示装置は、バックライトを必要としないため薄型化が可能な表示装置として脚光を浴びている。このような有機EL装置は、例えば特許文献1に開示されているように、表示領域内に赤色(R),緑色(G),青色(B)の各色のサブ画素(表示の最小単位)をストライプ状に配列し、3つのサブ画素を1画素としてフルカラーの表示を可能としている。
【特許文献1】特開2002−252083号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に開示された表示装置は、表示領域内において各々共通の画素構成により一様にフルカラー表示を行うものである。このような構成は、テレビのように表示領域における輝度の時間積分値が画素によらず略一定の表示を行う場合には好適であるが、逆に表示領域内での輝度の時間積分値が画素毎に異なるような表示を行う場合には、以下のような問題を生じる場合がある。つまり、1)輝度の時間積分値が大きい色の画素について輝度劣化が他の色よりも進み易い、2)輝度の時間積分値が大きい色の画素について輝度劣化が相対的に早いことで、全体としてホワイトバランスが崩れ、色味が変わったり、焼付きが生じ易い、3)単色表示したい領域に、フルカラー用の3色のサブ画素が存在すると開口率が低くなり、単色表示部分の輝度劣化が早くなる、等の問題が生じる得る。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、上記問題を悉く解決し、もって表示品質を向上させ、さらには品質寿命を向上させることが可能な表示装置の提供を目的としている。また、本発明は、このような高品質の表示が可能な表示装置を効率良く製造可能な方法を提供することを目的としている。さらに、本発明は、このような高品質の表示が可能な表示装置を備える電子機器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の表示装置は、1枚の基板上に複数の表示パネルが配置されてなる表示装置であって、前記表示パネルは、それぞれ別個のサブ基板を備え、各サブ基板上に発光素子を備えた構成を具備してなるとともに、第1波長範囲の発光が可能な第1発光素子からなる第1表示パネルと、第2波長範囲の発光が可能な第2発光素子からなる第2表示パネルとを少なくとも含むことを特徴とする。なお、第1波長範囲と第2波長範囲とは互いに同一波長範囲でないものを意味しており、両範囲が完全同一でなければ良く、一方の範囲が他方の範囲に含まれることを除外するものではない。
【0006】
このような表示装置によると、1枚の基板上に配置された各表示パネル毎に、それぞれ発光波長範囲が異なり、つまり発光可能な色の範囲(種類)が異なることとなる。したがって、本発明の表示装置は、各表示パネルが設けられた領域毎に表示可能な色がそれぞれ異なることとなり、表示パネルの配置次第で表示領域の設計自由度を高めることができるようになる。
また、この場合、1枚の基板の所定領域に必要な色の発光が可能な発光素子からなる表示パネルを配設すれば(言い換えると不必要な色の発光素子を排除した表示パネルを配設すれば)、全体として開口率を高めることができる。つまり、従来の構成では、例えば単色表示を行う領域にも一様にフルカラー表示用の画素を配設しているため、不必要な色(表示に用いない色)に係る画素が備えられたことによる開口率低下は免れなかったが、本発明では配設する表示パネルから不必要な色に係る発光素子を排除することで、これを解決することができたのである。
また、そのような必要な色の発光素子を備えた表示パネルのみにより所定の表示領域を構成することにより、従来のようにフルカラー用の画素を表示領域全体に配置する場合に比して、1画素当りの輝度を低減させても、該従来と同程度の面輝度を得ることができ、したがって1画素当りの輝度劣化も低減され、消費電力を低減することも可能となり、ひいては輝度寿命を高めることも可能となる。
また、本発明の表示装置では解像度も向上されている。つまり、従来のようにフルカラー用の画素を表示領域全体に配置する場合に比して、所定領域内に必要な色の発光素子からなる表示パネルを配設することで、解像度の向上に寄与することができるのである。
さらに、本発明の表示装置では、別個のサブ基板からなる第1表示パネル及び第2表示パネルを別個に製造した後、これを1枚の基板上に適宜配置するといった製造プロセスにて製造可能なため、製造効率が良く、しかも各表示パネルを自由に取り外して交換作業等も行えるものとなる。
【0007】
前記第1表示パネルと前記第2表示パネルとは、それぞれ同一の駆動手段にて駆動されるものとすることができる。このように1枚の基板上に配置する各表示パネルを同一の駆動手段で駆動すれば、各表示パネルにそれぞれ連関した表示が可能となる。なお、前記表示パネルに対してコネクタを具備させ、該コネクタに対して着脱自在のフレキシブル配線により当該表示パネルと前記駆動手段とを電気的に接続することができる。
【0008】
なお、前記第1表示パネルを構成する第1発光素子と前記第2表示パネルを構成する第2発光素子の素子構成を異ならせるものとすることができる。具体的には、各素子を複数の機能層からなる積層体にて構成し、該積層構造を異ならしめることができる。
一般に発光色が異なると、発光を行うに要するエネルギーが異なるため、各色の発光素子にはそれぞれ好ましい構成があるが、従来のような表示領域全域にフルカラー用の画素を配設した場合は、各色のパターンに応じて画素構成を異ならせる必要があり、非常に手間の掛かるものであった。しかしながら、本発明では、表示領域を異なる表示パネルにて構成しているため、各表示パネル毎に発光素子の機能層の積層構造を異ならせればよく、各色に適した積層構造を簡便に実現できることとなる。さらに、このように機能層をパネル毎に異ならせることで、そのパネルの発光色に好適な積層構造を採用することができ、ひいては発光効率の向上に寄与することが可能となる他、輝度寿命を高めることも可能となり得る。
【0009】
なお、上記機能層としては、陰極と、陽極と、該陰極及び陽極の間に形成されてなる有機EL層とを具備するものを用いることができる。そして、前記第1表示パネルが、青色を発光可能な青色有機EL層を有して構成される一方、前記第2表示パネルが、赤色を発光可能な赤色有機EL層を有して構成され、且つ青色を発光可能な青色有機EL層を含まない構成とされてなり、さらに、前記第1表示パネルの陰極がフッ化リチウムを含む一方、前記第2表示パネルの陰極はフッ化リチウムを含まないものとして当該表示装置を構成することができる。
【0010】
発光機能層たる有機EL層は、発光色毎に発光効率が異なる。特に、赤色を発光する有機EL層と青色を発光する有機EL層とでは、陰極構成の相違によって発光効率が大きく異なることとなり、それぞれの有機EL層に好適な陰極構成を配するのが好ましい。具体的には、陰極にフッ化リチウムを含ませることで、青色の有機EL層の発光効率を向上させることが可能となる一方、赤色の有機EL層の発光効率は若干低下する。そこで、本発明のように表示領域を複数の表示パネルにて構成した場合には、各表示パネル毎に陰極構成を相違させることが容易で、具体的には、青色の有機EL層を含む表示パネルと、赤色の有機EL層を含み且つ青色の有機EL層を含まない表示パネルとについて、各画素の陰極構成を容易に相違させることが可能であり、ひいては容易に発光効率を向上させることが可能となる。なお、具体的な陰極構成としては、青色の有機EL層を含む表示パネルの陰極がフッ化リチウムとカルシウムとアルミニウムの複合構造を有する一方、青色の有機EL層を含まない表示パネルの陰極はカルシウムとアルミニウムの複合構造を有するものとすることができる。
【0011】
次に、本発明の電子機器は上記表示装置を備えることを特徴とし、このような電子機器によると、その表示部において高品質の表示を高寿命で提供できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の表示装置、並びに電子機器の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならせてある。
【0013】
(表示装置)
図1は、表示装置の一実施形態としての有機EL装置について、その平面構成を示す模式図であって、図2は図1のA−A’断面を示す模式図、図3は該有機EL装置の回路構成を示すブロック図、図4は該有機EL装置の配線構造を示す説明図である。
【0014】
図1及び図2に示すように、本実施形態の有機EL装置100は、1枚の基板150上に複数の表示パネル21,22,24が配置されてなり、各表示パネル21,22,24はそれぞれ固有に表示パネルを構成している。つまり、各表示パネル21,22,24は、それぞれサブ基板2h,2i,2j(図8〜図10参照)と封止基板3との間に表示素子3(図8参照)を備えた構成を有している。
【0015】
一方、有機EL装置100は表示領域2aと非表示領域2cとを有してなり、表示パネル(第1表示パネル)21は、有機EL装置100の表示領域2aのうち略中央半分以上の領域を占め、フルカラー表示可能なパネルとして構成されている。また、表示パネル(第2表示パネル)22は、有機EL装置100の表示領域2aのうち左下領域に配置され、赤色の表示が可能なパネルとして構成され、さらに表示パネル(第3表示パネル)24は、有機EL装置100の表示領域2aのうち右下領域に配置され、黄色の表示が可能なパネルとして構成されている。つまり、各表示パネル21,22,24は、それぞれ表示可能な発光波長範囲が異なり、各領域に最適な色表示を行うことが可能とされている。
【0016】
このように配置された各表示パネル21,22,24は、図3に示すような回路構成により表示制御が行われるものとされている。つまり、各表示パネル21,22,24はそれぞれ画素回路部21a,22a,24aを備えており、該画素回路部21a,22a,24aに配設された個々の画素を駆動するべく、各画素に走査信号を供給するための走査線駆動回路40a,40b,40cを備えている。
【0017】
一方、個々の画素を駆動するべく、データ信号を供給するためのデータ線駆動回路42が、各表示パネル21,22,24に共通に配設されている。該データ線駆動回路42は、具体的には各表示パネル21,22,24が配設された共通の基板150上に設けられており、該データ線駆動回路42から発信されるデータ信号は、フレキシブル配線(ハーネス)41a,41b,41cを介して各表示パネル21,22,24に供給されるものとなっている。なお、フレキシブル配線(ハーネス)41a,41b,41cは各表示パネル21,22,24に設けられたコネクタ57,58,59に着脱自在に接続されている。
【0018】
また、データ線駆動回路42及び走査線駆動回路40a,40b,40cはメイン制御回路43にて一括制御されている。なお、該メイン制御回路43は、当該有機EL装置100に対して画像信号、制御信号、電源等の駆動を司る全ての信号を供給する構成となっている。
【0019】
次に、個々の表示パネルの配線構成を説明する。なお、各表示パネル21,22,24の構成はそれぞれ同一とされているため、ここでは第1表示パネル21を例にとり説明する。図4に示すように、本実施形態の有機EL装置100は、複数の走査線101と、走査線101に対して交差する方向に延びる複数の信号線102と、信号線102に対して並列する方向に延びる複数の電源線103とがそれぞれ配線された構成を有し、走査線101及び信号線102の各交点付近には単位表示領域Pが設けられている。
【0020】
信号線102は、上述したデータ線駆動回路42にフレキシブル配線を介して接続され、該データ線駆動回路42はシフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン及びアナログスイッチを備えている。また、走査線101には、シフトレジスタ及びレベルシフタを備える走査側駆動回路40aが接続されている。
【0021】
更に、単位表示領域Pの各々には、走査線101を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用の薄膜トランジスタ122と、このスイッチング用の薄膜トランジスタ122を介して信号線102から供給される画素信号を保持する保持容量capと、該保持容量capによって保持された画素信号がゲート電極に供給される駆動用の薄膜トランジスタ123と、この駆動用薄膜トランジスタ123を介して電源線103に電気的に接続したときに当該電源線103から駆動電流が流れ込む画素電極(電極)111と、この画素電極111と陰極(対向電極)12との間に挟み込まれた有機EL層110とが設けられている。電極111と対向電極12と有機EL層110により、発光素子が構成されている。
【0022】
走査線101が駆動されてスイッチング用の薄膜トランジスタ122がオンになると、そのときの信号線102の電位が保持容量capに保持され、該保持容量capの状態に応じて駆動用の薄膜トランジスタ123のオン・オフ状態が決まる。そして、駆動用の薄膜トランジスタ123のチャネルを介して、電源線103から画素電極111に電流が流れ、更に有機EL層110を介して陰極12に電流が流れる。有機EL層110では、流れる電流量に応じて発光が生じる。
【0023】
次に、本実施形態の有機EL装置100が備える各表示パネル21,22,24の画素構成についてそれぞれ説明する。なお、図5、図6、図7は、各表示パネル21,22,24の画素構成を模式的に示す平面図である。
第1表示パネル21では、図5に示すように、画素領域P毎に異なる色の発光が可能なように、赤色発光が可能なRドットA1から構成された画素領域Pと、緑色発光が可能なGドットA2から構成された画素領域Pと、青色発光が可能なBドットA3から構成された画素領域Pとを有しており、これら各R,G,BドットA1〜A3により1つの画素Aが構成されている。そして、このような構成の画素Aはフルカラー表示が可能となっている。
【0024】
一方、第2表示パネル22では、図6に示すように、各画素Aにおいて赤色表示が可能なように、赤色発光可能なRドットA1が3つ配設されている。また、第2表示パネル24では、図7に示すように、各画素Aにおいて黄色表示が可能なように、赤色発光可能なRドットA1が2つ、緑色発光可能なGドットA2が1つ配設されている。
【0025】
続いて、本実施形態の有機EL装置100が備える各表示パネル21,22,24の断面構成についてそれぞれ説明する。
図8は、第1表示パネル21の1画素の断面模式図である。第1表示パネル21は、ガラス等からなる透明な基板(サブ基板)2と、マトリックス状に配置された発光素子を具備して基板2h上に形成された発光素子部11と、発光素子部11上に形成された陰極12とを具備している。ここで、発光素子部11と陰極12とにより表示素子(発光素子)10が構成される。
【0026】
第1表示パネル21には、図5にも示した通り、赤色(R)を発光可能なRドットA1と、緑色(G)を発光可能なGドットA2と、青色(B)を発光可能なBドットA3の異なる3色のドットからなる画素Aが複数配列されている。つまり、第1表示パネル21の表示領域には画素Aが所定の配列にて配置されてなり、該画素Aはフルカラーの波長範囲(概ね380nm〜780nm程度)の表示が可能とされている。
【0027】
第1表示パネル21は、基板2h上に、TFTなどの回路等が形成された回路素子部14、有機EL層110が形成された発光素子部11及び陰極12が順次積層されて構成されており、有機EL層110から基板2h側に発せられた光が、回路素子部14及び基板2hを透過して基板2hの下側(観測者側)に出射されるとともに、有機EL層110から基板2hの反対側に発せられた光が陰極12により反射されて、回路素子部14及び基板2hを透過して基板2hの下側(観測者側)に出射されるようになっている。
【0028】
回路素子部14には、基板2h上にシリコン酸化膜からなる下地保護膜2cが形成され、この下地保護膜2c上に多結晶シリコンからなる島状の半導体膜141が形成されている。半導体膜141には、ソース領域141a及びドレイン領域141bが高濃度リンイオン打ち込みにより形成されている。前記リンイオンが導入されなかった部分がチャネル領域141cとなっている。
【0029】
また、前記下地保護膜2c及び半導体膜141を覆う透明なゲート絶縁膜142が形成され、ゲート絶縁膜142上にはAl、Mo、Ta、Ti、W等からなるゲート電極143(走査線101)が形成され、ゲート電極143及びゲート絶縁膜142上には透明な第1層間絶縁膜144aと第2層間絶縁膜144bが形成されている。ゲート電極143は半導体膜141のチャネル領域141cに対応する位置に設けられている。また、第1、第2層間絶縁膜144a、144bを貫通して、半導体膜141のソース、ドレイン領域141a、141bにそれぞれ接続されるコンタクトホール145,146が形成されている。
【0030】
そして、第2層間絶縁膜144b上には、ITO等からなる透明な画素電極111が所定の形状にパターニングされて形成され、一方のコンタクトホール145がこの画素電極111に接続されている。また、もう一方のコンタクトホール146が電源線103に接続されている。このようにして、回路素子部14には、各画素電極111に接続された駆動用の薄膜トランジスタ123が形成されている。
【0031】
発光素子部11は、複数の画素電極111…上の各々に積層された有機EL層110と、各画素電極111及び有機EL層110の間に備えられて各有機EL層110を区画するバンク部112とを主体として構成されている。有機EL層110上には陰極12が配置されている。これら画素電極111、有機EL層110及び陰極12によって発光素子が構成されている。ここで、画素電極111は、例えばITOにより形成されてなり、平面視略矩形状にパターン形成されている。この各画素電極111…を仕切る形にてバンク部112が備えられている。
【0032】
バンク部112は、図8に示すように、基板2h側に位置する第1隔壁部としての無機物バンク層(第1バンク層)112aと、基板2hから離れて位置する第2隔壁部としての有機物バンク層(第2バンク層)112bとが積層された構成を備えている。無機物バンク層112aは、例えばTiO2やSiO2等により形成され、有機物バンク層112bは、例えばアクリル樹脂、ポリイミド樹脂等により形成される。
【0033】
無機物、有機物バンク層112a、112bは、画素電極111の周縁部上に乗上げるように形成されている。平面的には、画素電極111の周囲と無機物バンク層112aとが部分的に重なるように配置された構造となっている。また、有機物バンク層112bも同様であり、画素電極111の一部と平面的に重なるように配置されている。また無機物バンク層112aは、有機物バンク層112bの縁端よりも画素電極111の中央側に更に突出するように形成されている。このようにして、無機物バンク層112aの各第1積層部(突出部)112eが画素電極111の内側に形成されることにより、画素電極111の形成位置に対応する下部開口部112cが設けられている。
【0034】
また、有機物バンク層112bには、上部開口部112dが形成されている。この上部開口部112dは、画素電極111の形成位置及び下部開口部112cに対応するように設けられている。上部開口部112dは、図8に示すように、下部開口部112cより開口が広く、画素電極111より狭く形成されている。また、上部開口部112dの上部の位置と、画素電極111の端部とがほぼ同じ位置になるように形成される場合もある。この場合は、図8に示すように、有機物バンク層112bの上部開口部112dの断面が傾斜した形状となる。このようにして、バンク部112には、下部開口部112c及び上部開口部112dが連通された開口部112gが形成されている。
【0035】
また、バンク部112には、親液性を示す領域と、撥液性を示す領域が形成されている。親液性を示す領域は、無機物バンク層112aの第1積層部112e及び画素電極111の電極面111aであり、これらの領域は、酸素を処理ガスとするプラズマ処理によって親液性に表面処理されている。また、撥液性を示す領域は、上部開口部112dの壁面及び有機物バンク層112の上面112fであり、これらの領域は、4フッ化メタン、テトラフルオロメタン、もしくは四フッ化炭素を処理ガスとするプラズマ処理によって表面がフッ化処理(撥液性に処理)されている。
【0036】
一方、有機EL層110は、画素電極111上に積層された正孔注入/輸送層110aと、正孔注入/輸送層110a上に隣接して形成された発光層110bとから構成されている。
正孔注入/輸送層110aは、発光層110bに正孔を注入する機能を有するとともに、正孔注入/輸送層110a内部において正孔を輸送する機能を有する。このような正孔注入/輸送層110aを画素電極111と発光層110bの間に設けることにより、発光層110bの発光効率、寿命等の素子特性が向上する。また、発光層110bでは、正孔注入/輸送層110aから注入された正孔と、陰極12から注入される電子とが再結合し、発光が行われる。
【0037】
正孔注入/輸送層110aは、下部開口部112c内に位置して画素電極面111a上に形成される平坦部110a1と、上部開口部112d内に位置して無機物バンク層の第1積層部112e上に形成される周縁部110a2から構成されている。また、正孔注入/輸送層110aは、構造によっては、画素電極111上であって、且つ無機物バンク層110aの間(下部開口部110c)にのみ形成されている(前述に記載した平坦部にのみ形成される形態もある)。
【0038】
また、発光層110bは、正孔注入/輸送層110aの平坦部110a1及び周縁部110a2上に渡って形成されており、平坦部112a1上での厚さが50nm〜80nmの範囲とされている。発光層110bは、赤色(R)に発光する赤色発光層110b1、緑色(G)に発光する緑色発光層110b2、及び青色(B)に発光する青色発光層110b3の3種類を有し、各発光層110b1〜110b3は平面視ストライプ状に配置されている。
【0039】
なお、正孔注入/輸送層形成材料としては、例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン等のポリチオフェン誘導体とポリスチレンスルホン酸等の混合物を用いることができる。また、発光層110bの材料としては、例えば、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリチオフェン誘導体、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素、またはこれらの高分子材料にルブレン、ペリレン、9,10-ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等をドープして用いることができる。
【0040】
陰極12は、発光素子部11の全面に形成されており、画素電極111と対になって有機EL層110に電流を流す役割を果たす。この陰極12は、当該第1表示領域21では、フッ化リチウム層12a、カルシウム層12b、及びアルミニウム層12cが積層されて構成されている。このとき、発光層に近い側の陰極には仕事関数が低いものを設けることが好ましく、特にこの形態においては発光層110bに直接に接して発光層110bに電子を注入する役割を果たす。
【0041】
陰極12を形成するアルミニウム層12cは、発光層110bから発した光を基板2h側に反射させるもので、アルミニウムの他、銀、アルミニウムと銀の積層膜等からなることが好ましい。更にアルミニウム層12c上にSiO、SiO2、SiN等からなる酸化防止用の保護層を設けても良い。なお、第1表示領域21において陰極12を構成する各層の層厚は、フッ化リチウム層12aが約5nm、カルシウム層12bが約5nm、アルミニウム層12cが約200nmとされている。
【0042】
図8に示す発光素子部11上には、実際の有機EL装置では封止部が備えられる。この封止部は、例えば基板2hの周囲に環状に封止樹脂を塗布し、さらに封止缶により封止することにより形成することができる。前記封止樹脂は、熱硬化樹脂あるいは紫外線硬化樹脂等からなり、特に、熱硬化樹脂の1種であるエポキシ樹脂よりなることが好ましい。この封止部は、陰極12または発光素子部11内に形成された発光層の酸化を防止する目的で設けられる。また、前記封止缶の内側には水、酸素等を吸収するゲッター剤を設け、封止缶の内部に侵入した水又は酸素を吸収できるようにしてもよい。
【0043】
一方、図9は第2表示パネル22の断面構成図であって、該第2表示パネル22は、サブ基板2iを有し、赤色のドット(サブ画素)A1のみによって構成されている。なお、第2表示パネル22では、図8に示した第1表示パネル21とは発光層110bの構成と陰極12の構成とが異なり、その他の断面構成は同様のため説明を省略する。
【0044】
つまり、第2表示パネル22では、3つの赤色ドットA1が1つの画素を構成しており、各ドットA1には、赤色(R)に発光する赤色発光層110b1が配設されている。また、第1表示パネル21では、図8に示すように陰極12の発光層110b側に発光効率を高めるためのフッ化リチウム層12aを形成しているが、当該第2表示パネル22においては、フッ化リチウム層12aを形成していない。これは、フッ化リチウム層12aが、発光層110bのうち青色(B)に発光する青色発光層110b3の発光効率向上を目的として設けられる機能層だからである。なお、第2表示パネル22における陰極12を構成する各層の層厚は、カルシウム層12bが約5nm、アルミニウム層12cが約200nmとされている。
【0045】
また、図10は第3表示パネル24の断面構成図であって、該第3表示パネル24は、サブ基板2jを有し、赤色のドット(サブ画素)A1と緑色のドット(サブ画素)A2とによって構成されている。なお、第3表示パネル24では、図8に示した第1表示パネル21とは発光層110bの構成と陰極12の構成とが異なり、その他の断面構成は同様のため説明を省略する。
【0046】
つまり、第3表示パネル24では、2つの赤色ドットA1と1つの緑色ドットA2が1つの画素を構成しており、赤色ドットA1には、赤色(R)に発光する赤色発光層110b1が配設され、緑色ドットA2には、緑色(G)に発光する緑色発光層110b2が配設されている。また、第1表示パネル21では、図8に示すように陰極12の発光層110b側に発光効率を高めるためのフッ化リチウム層12aを形成しているが、当該第3表示パネル24においては、フッ化リチウム層12aを形成していない。これは、フッ化リチウム層12aが、発光層110bのうち青色(B)に発光する青色発光層110b3の発光効率向上を目的として設けられる機能層だからである。なお、第3表示パネル24における陰極12を構成する各層の層厚は、カルシウム層12bが約5nm、アルミニウム層12cが約200nmとされている。
【0047】
以上のような構成を有する本実施形態の有機EL装置によると、表示領域2aが複数の表示パネル21,22,24にて構成されるとともに、各表示パネル21,22,24毎に、それぞれ発光波長範囲が異なり、つまり発光可能な色の範囲(種類)が異なっている。したがって、各表示パネル21,22,24が設けられた領域毎に表示可能な色がそれぞれ異なることとなり、表示パネル21,22,24の配置次第で表示領域2aの設計自由度を高めることができるようになる。
【0048】
また、1枚の基板150の所定領域に必要な色の発光が可能な発光素子からなる表示パネルを配設しており、言い換えると不必要な色の発光素子を排除した表示パネルを配設しているため、全体として開口率を高めることができる。また、そのような必要な色の発光素子を備えた表示パネルのみにより所定の表示領域を構成することにより、従来のようにフルカラー用の画素を表示領域全体に配置する場合に比して、1画素当りの輝度を低減させても、該従来と同程度の面輝度を得ることができ、したがって1画素当りの輝度劣化も低減され、消費電力を低減することも可能となり、ひいては輝度寿命を高めることも可能となる。
【0049】
具体的には、図11に示すように寿命が向上する。図11は、本実施形態の有機EL装置の赤色表示領域22a(3参照)における輝度(実施例)と、当該赤色表示領域22aをフルカラー表示用の表示パネルに置換して構成した場合における輝度(比較例)とについて、その時間変化を表したグラフである。なお、縦軸は1画素当りの面輝度(cd/m2)、横軸は時間(hour)を表している。
図11に示す通り、本実施形態の有機EL装置によると、実施例及び比較例の有機EL装置に関し、1画素において初期値300cd/m2の面輝度が得られるような画素設定とした場合、輝度が初期値の80%となる時間は、比較例では8000時間であったのに対し、実施例では40000時間であった。つまり、本実施形態の構成の導入により、輝度の劣化時間が約5倍となったのである。
【0050】
また、本実施形態の表示装置では解像度も向上されている。つまり、従来のようにフルカラー用の画素を表示領域全体に配置する場合に比して、所定領域内に必要な色の発光素子からなる表示パネルを配設することで、解像度の向上に寄与することができるのである。さらに、本実施形態の表示装置では、別個のサブ基板2h,2i,2jからなる第1表示パネル21、第2表示パネル22、第3表示パネル24を別個に製造した後、これを1枚の基板上に適宜配置するといった製造プロセスにて製造可能なため、製造効率が良く、しかも各表示パネルを自由に取り外して交換作業等も行えるものとなる。
【0051】
(電子機器)
次に、本発明の表示装置を用いた電子機器について説明する。
まず、上記実施形態の有機EL装置と同様の構成の表示装置をインストルメントパネルの表示部に用いた実施形態について説明する。図12は、インストルメントパネル500の構成を模式的に示す説明図である。
インストルメントパネル500は、フルカラー表示が可能な第1表示パネル21によりタコメーター(速度表示部)が構成されており、また赤色表示が可能な第2表示パネル22により警告表示部が構成され、さらに黄色表示が可能な第3表示パネル24により注意表示部が構成されている。以上のような電子機器によると、表示のバリエーションが増える上、本発明に係る表示装置を具備したものであるため、高品質の表示を高寿命にて提供することができるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本実施形態の有機EL装置の平面構成を示す模式図。
【図2】図1の有機EL装置のA−A’断面を示す模式図。
【図3】図1の有機EL装置の回路構成を示すブロック図。
【図4】図1の有機EL装置の配線構成を示す説明図。
【図5】第1表示パネルの画素構成を示す平面模式図。
【図6】第2表示パネルの画素構成を示す平面模式図。
【図7】第3表示パネルの画素構成を示す平面模式図。
【図8】第1表示領域の断面構成を示す図。
【図9】第2表示領域の断面構成を示す図。
【図10】第3表示領域の断面構成を示す図。
【図11】実施例における輝度の経時変化と、比較例における輝度の経時変化とについて示したグラフ。
【図12】電子機器の一例を示す平面図。
【符号の説明】
【0053】
2h,2i,2j…サブ基板、2a…表示領域、21…第1表示パネル、22…第2表示パネル、24…第3表示パネル、100…有機EL装置(表示装置)、150…基板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1枚の基板上に複数の表示パネルが配置されてなる表示装置であって、
前記表示パネルは、それぞれ別個のサブ基板を備え、各サブ基板上に発光素子を備えた構成を具備してなるとともに、第1波長範囲の発光が可能な第1発光素子からなる第1表示パネルと、第2波長範囲の発光が可能な第2発光素子からなる第2表示パネルとを少なくとも含むことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記第1表示パネルと前記第2表示パネルとは、それぞれ同一の駆動手段にて駆動されることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記表示パネルはコネクタを有してなり、該コネクタに対して着脱自在のフレキシブル配線を介して、当該表示パネルと前記駆動手段とが電気的に接続されてなることを特徴とする請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の表示装置を備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項1】
1枚の基板上に複数の表示パネルが配置されてなる表示装置であって、
前記表示パネルは、それぞれ別個のサブ基板を備え、各サブ基板上に発光素子を備えた構成を具備してなるとともに、第1波長範囲の発光が可能な第1発光素子からなる第1表示パネルと、第2波長範囲の発光が可能な第2発光素子からなる第2表示パネルとを少なくとも含むことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記第1表示パネルと前記第2表示パネルとは、それぞれ同一の駆動手段にて駆動されることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記表示パネルはコネクタを有してなり、該コネクタに対して着脱自在のフレキシブル配線を介して、当該表示パネルと前記駆動手段とが電気的に接続されてなることを特徴とする請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の表示装置を備えたことを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−38985(P2006−38985A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−215327(P2004−215327)
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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