説明

表示装置およびその制御方法

【課題】 表示品位を向上させることができる表示装置およびその制御方法を提供する。
【解決手段】 複数の発光素子を含む照明部6からの照射光を利用して、入力された画像データに基づく画像を表示する表示部を備える表示装置である。照明部6は、発光素子を2以上の発光素子群としてそれぞれ独立に制御可能に構成されている。記憶部4には、前記発光素子群ごとに、過去の発光階調および発光時間の少なくとも一方を含む発光履歴が記憶さており、補正部3は、前画像データに含まれる輝度と、前記発光素子群ごと前記発光履歴とに基づいて前記発光素子の発光階調を算出する。発光素子制御部5は、算出された発光階調に基づいて照明部6を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイ等、自発光しない表示素子の光源として用いる照明装置の点灯制御に関し、特に、大型ディスプレイ用途に適する複数の光源から構成される照明装置およびそれを用いた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイは、表示画素自身が発光しない、いわゆる非発光型ディスプレイであるが、駆動電圧の低さ、消費電力の低さ、多階調表示の容易さから、大型ディスプレイにも用途が拡大している。
【0003】
非発光型ディスプレイには、太陽光や室内灯の光など外光の反射光を利用する反射型ディスプレイ、バックライトの光を利用する透過型ディスプレイ、外光とバックライトとを併用する半透過型ディスプレイなどがある。
【0004】
バックライトなどの照明装置は、複数の発光素子を含んでなり、連続均一発光であるが、これを画像データ信号の輝度階調に合わせて、調光し部分的に発光階調を下げることで、省エネルギと表示品位の向上を図る技術が考案されている。
【0005】
特許文献1記載の表示装置は、照明輝度に応じて変換された画像信号の階調を、周囲の照明領域の輝度情報に基づいて補正する階調補正部を備えており、画面内に大きな輝度傾斜があるような画像であっても高品位な表示を可能としている。
【0006】
【特許文献1】特許第3523170号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
照明装置に用いられる発光素子は、発光輝度と発光時間とに応じて発光効率が変化し、同じ入力を与え続けたとしても発光量が変化する経時変化あるいは経時劣化と呼ばれる特性を有している。均一発光であれば、経時変化が生じても画面全体の輝度が一様に変化するだけであるので、発光効率が極端に低くならない限りは問題にはならない。
【0008】
しかし、表示画面のサイズが大きいディスプレイの場合、表示画面を複数の領域に分割して各々独立に制御を行うため、各領域に対する発光素子間に稼動履歴の差があった場合は、経時変化により各領域の発光効率に差が生じて輝度ムラの原因となり表示品位を劣化させることになる。
【0009】
このような表示品位の劣化は、写真画像など色調が連続して変化する自然画像を表示する場合はあまり目立たないが、案内板画像や情報表示画像など色調変化が不連続で、単色で塗られた部分(ベタ部分)を多く含む非自然画像を表示する場合は顕著になる。
【0010】
本発明の目的は、表示品位を向上させることができる表示装置およびその制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、複数の発光素子を含み、これら発光素子を2以上の発光素子群としてそれぞれ独立に制御可能に構成される照明部と、前記照明部からの照射光を利用して、入力された画像データに基づく画像を表示する表示部とを備える表示装置の制御方法であって、
前記発光素子群ごとに、過去の発光階調および発光時間の少なくとも一方を含む発光履歴を記憶しておき、
前記発光素子の発光階調を算出する際に、前記画像データに含まれる輝度と、前記発光素子群ごと前記発光履歴とに基づいて算出することを特徴とする表示装置の制御方法である。
【0012】
また本発明は、複数の発光素子を含み、これら発光素子を2以上の発光素子群としてそれぞれ独立に制御可能に構成される照明部と、前記照明部からの照射光を利用して、入力された画像データに基づく画像を表示する表示部とを備える表示装置であって、
前記発光素子群ごとに、過去の発光階調および発光時間の少なくとも一方を含む発光履歴を記憶する記憶部と、
前記発光素子の発光階調を算出する際に、前記画像データに含まれる輝度と、前記発光素子群ごと前記発光履歴とに基づいて算出する算出部と、
算出された発光階調に基づいて前記照明部を制御する制御部とを有することを特徴とする表示装置である。
【0013】
また本発明は、前記算出部は、前記発光履歴に基づいて輝度の経時変化量を算出し、算出した経時変化量と、前記画像データに含まれる輝度とに基づいて前記発光素子の発光階調を算出することを特徴とする。
【0014】
また本発明は、前記算出部は、全ての発光素子群の前記経時変化量の平均値よりも所定の値以上小さい経時変化量を有する発光素子群に対しては発光階調が高くなるように発光階調を算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複数の発光素子を含み、これら発光素子を2以上の発光素子群としてそれぞれ独立に制御可能に構成される照明部と、前記照明部からの照射光を利用して、入力された画像データに基づく画像を表示する表示部とを備える表示装置の制御方法である。
【0016】
前記発光素子群ごとに、過去の発光階調および発光時間の少なくとも一方を含む発光履歴を記憶しておき、前記発光素子の発光階調を算出する際に、前記画像データに含まれる輝度と、前記発光素子群ごとの前記発光履歴とに基づいて算出する。
【0017】
これにより、発光履歴の違いによる輝度ムラの発生を抑えることができるので表示品位を向上させることができる。
【0018】
また本発明によれば、複数の発光素子を含み、これら発光素子を2以上の発光素子群としてそれぞれ独立に制御可能に構成される照明部と、前記照明部からの照射光を利用して、入力された画像データに基づく画像を表示する表示部とを備える表示装置である。
【0019】
記憶部には、前記発光素子群ごとに、過去の発光階調および発光時間の少なくとも一方を含む発光履歴を記憶しておき、算出部が、前記画像データに含まれる輝度と、前記発光素子群ごと前記発光履歴とに基づいて前記発光素子の発光階調を算出すると、制御部が、算出された発光階調に基づいて前記照明部を制御する。
【0020】
これにより、発光履歴の違いによる輝度ムラの発生を抑えることができるので表示品位を向上させることができる。
【0021】
また本発明によれば、前記算出部は、前記発光履歴に基づいて輝度の経時変化量を算出し、算出した経時変化量と、前記画像データに含まれる輝度とに基づいて前記発光素子の発光階調を算出する。これにより容易に表示品位を向上させることができる。
【0022】
また本発明によれば、前記算出部は、全ての発光素子群の前記経時変化量の平均値よりも所定の値以上小さい経時変化量を有する発光素子群に対しては発光階調が高くなるように発光階調を算出することを特徴とする。
【0023】
全体の平均値よりも経時変化が小さいということは、過去の発光時間が短いと解されるので、高い発光階調で発光させることにより前記発光素子群間の経時変化量の差を小さくすることができるので、表示品位をさらに高めることができる。これによりさらに容易に表示品位を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1は、本発明の実施の一形態である表示装置1の構成を示すブロック図である。
表示装置1は、パーソナルコンピュータなどの情報処理装置、ビデオデッキなどの録画装置、テレビジョン放送のアンテナケーブルなどと接続され、取り込んだ画像データに基づいて画像を表示する。
【0025】
表示装置1は、制御部2、補正部3、記憶部4、発光素子制御部5、照明部6、表示素子制御部7、表示部8およびデータ取込部9を含んで構成される。
【0026】
画像データは、データ取込部9によって取り込まれ、制御部2で表示方式などが変換されて、補正部3へと出力される。制御部2は、CPU(中央演算処理装置)などで実現され、表示装置1全体の制御を行う。
【0027】
補正部3では、後述のように、照明部6の発光履歴に基づいて、照明部6の発光階調および表示部8の表示階調の補正を行う。記憶部4は、画像データを一時的に保存したり、照明部6の発光履歴を保存したり、その他表示装置1を動作させるために必要な各種プログラムなどを保存する。
【0028】
発光素子制御部5は、補正部3から指示された発光階調にしたがって照明部6の発光素子を制御する。表示素子制御部7は、補正部3から指示された表示階調にしたがって表示部8を制御する。
【0029】
図2は、補正部3の構成を示すブロック図である。
補正部3は、画像領域分割部10、発光階調算出部11および表示階調補正部12を含む。
【0030】
画像領域分割部10は、1フレームごとに、入力された画像データを、画素群からなる小領域に分割する。小領域は、2以上の発光素子群としてそれぞれ独立に制御可能に構成される照明部独立して制御可能な発光素子群が光を照射することによって表示される画素群を1つの小領域とする。
【0031】
画像領域分割部10は、DSP(Digital Signal Processor)などの信号処理用ハードウェアで実現するほうが処理速度の面でより望ましいが、制御部2を構成するCPUがソフトウェアを利用して実現してもよい。
【0032】
発光階調算出部11は、入力された画像データに基づいて、小領域ごとに発光素子の発光階調を算出する。
【0033】
記憶部4には、現在のフレームについての算出結果と、発光履歴として、これまでの全フレームの算出結果の和が小領域ごとに記憶される。
【0034】
さらに発光階調算出部11は、小領域ごとに発行階調の経時変化量を発光履歴に基づいて計算し、予め定められた許容値との比較を行う。経時変化量が許容値を越えている場合は、当該小領域の発光階調を補正するように、各発光素子に対して与える電力値を発光素子制御部5に出力する。
【0035】
また、算出された発光階調は、表示階調補正部12にも与えられ、補正後の全ての小領域での輝度の和が、入力された画像データの輝度の和と等しくなるように、表示階調が補正される。表示階調補正部12は、表示階調を補正するように、各表示素子に対して与える電力値を表示素子制御部7に出力する。
【0036】
なお、小領域について、全て同じ形および大きさであってもよく、それぞれが異なる形および異なる大きさであってもよい。
【0037】
また、照明部6を構成する発光素子は、LED(Light Emitting Diode)、CCFL(
Cold Cathode Fluorescent Lighting)およびEL(Electro Luminescence)などを用いることができる。
【0038】
また、発光素子制御部5および表示素子制御部7は、照明部6および表示部8の機能部に組み込まれていてもよい。
【0039】
図3は、表示装置1の表示制御処理を示すフローチャートである。
以下の表示制御処理は1フレーム分のフローチャートであり、フレームが変わるたびに処理を行う必要がある。
【0040】
まずステップS1では、画像領域分割部10に入力された画像データを、複数の小領域に分割する。
【0041】
次にステップS2では、発光階調算出部11が、各小領域に対応する画像データおよび隣接する小領域に対応する画像データから、その小領域に対応する発光素子の発光階調を算出する。このとき、画像データの最大輝度に従い発光階調を決定することで調光による省エネルギー効果は最大になる。
【0042】
ステップS3では、各小領域での輝度の経時変化量を発光履歴に基づいて計算し、予め定められた許容値よりも大きいか否かを判断する。
α=(ΔI−ΔIAVE)−ITH
ΔI=F1(∫F・dt)
ΔI:輝度の経時変化量
ΔIAVE:輝度の平均経時変化量
TH:輝度変化差許容値
1、F:過去の発光階調および発光時間より素子発光効率の
経時変化特性を表す発光素子の特性関数
:過去の発光輝度
t:時間
【0043】
上記計算式において、αが正となった場合、輝度の経時変化量が許容値を超えているので、ステップS4に進み、当該小領域の発光階調を補正する。当該小領域に属する発光素子への供給電力を調整するよう発光素子制御部5に指示する。
【0044】
なお、輝度変化差許容値ITHは、人間の視覚により判別できる輝度差から導かれる値であり、時刻や履歴に応じて変化することのない一定値である。特性関数Fは、発光素子の半導体結晶の欠損が発光量に与える影響を表す関数であり、特性関数Fは、発光素子に与えたエネルギの内、光として照射されなかったエネルギが熱となって半導体結晶に与えるダメージの寄与を表す関数である。これらの許容値、特性関数は、記憶部4に予め記憶されている。
【0045】
多くの場合、経時変化は、発光素子の発光効率が下がり、発光量が低下する方向に変化するため、経時変化が顕著になった場合は、より多くの電力を供給するような指示を行うすなわち、画像データに基づく階調よりも高階調となるような発光階調を発光素子制御部5に出力することになる。
【0046】
ステップS5では、小領域ごとに輝度の経時変化量の平均値を求める。
ステップS6では、小領域ごとに経時変化量および平均値を集計し、その分布状態に基づいて経時変化にばらつきがあるか否かを判断する。
【0047】
たとえば、全領域の平均値を算出し、その平均値に対して一定値以上低い平均値となる小領域があれば、ステップS7において、当該小領域の階調をより高くする。こうすることで、当該小領域の経時変化を促進し、経時変化の均一化を図る。
【0048】
分割された小領域間で経時変化の差が大きすぎると、ステップS4で補正を行っても小領域間の輝度むらが目立つことになるので、全体の経時変化を均一化することでより補正しやすくなる。
【0049】
同様に、全領域の平均値に対して一定値以上高い平均値となる小領域があれば、当該小領域以外の領域の階調をより高くし、経時変化の均一化を図る。
【0050】
補正後の各小領域の発光階調および補正前の発光階調の発光履歴を記憶部4に記憶する。
【0051】
記憶部4にハードディスクドライブやフラッシュメモリのような不揮発性の記憶媒体を使用する場合、これらは概して書き込み速度が低速であり高速動画を処理する場合には1フレームごとに発光階調を書き込むことが困難であるため、複数フレームの発光階調を高速なメモリに一旦蓄積し、あらためて発光履歴を記憶することが望ましい。
【0052】
ステップS8では、各小領域の発光階調に基づいて表示階調の補正を行う。
本実施形態のような非自発光の表示装置において、画像データの画素の階調、すなわち表示部8から出力される光の階調は、照明部の発光階調と表示部の表示階調とに比例する。したがって、補正により発光階調を高くした場合は、表示階調を低くする必要があり、補正により発光階調を低くした場合は、表示階調を高くする必要がある。
【0053】
発光階調の低下量が大きい場合は、表示階調の補正を行う際に人間の視覚特性を考慮したγ補正を行うことが望ましい。
【0054】
ステップS9で、これまでに算出された発光階調および表示階調に従い、発光素子制御部5および表示素子制御部7が、照明部6および表示部8をそれぞれ駆動させる。
【0055】
このとき、発光素子の制御においては、発光素子の発光輝度を変えてもよいし、PFM(Pulse Frequency Modulation)やPWM(Pulse Width Modulation)に代表されるデューティー制御による感知光量を変化させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施の一形態である表示装置1の構成を示すブロック図である。
【図2】補正部3の構成を示すブロック図である。
【図3】表示装置1の表示制御処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0057】
1 表示装置
2 制御部
3 補正部
4 記憶部
5 発光素子制御部
6 照明部
7 表示素子制御部
8 表示部
9 データ取込部
10 画像領域分割部
11 発光階調算出部
12 表示階調補正部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光素子を含み、これら発光素子を2以上の発光素子群としてそれぞれ独立に制御可能に構成される照明部と、前記照明部からの照射光を利用して、入力された画像データに基づく画像を表示する表示部とを備える表示装置の制御方法であって、
前記発光素子群ごとに、過去の発光階調および発光時間の少なくとも一方を含む発光履歴を記憶しておき、
前記発光素子の発光階調を算出する際に、前記画像データに含まれる輝度と、前記発光素子群ごと前記発光履歴とに基づいて算出することを特徴とする表示装置の制御方法。
【請求項2】
複数の発光素子を含み、これら発光素子を2以上の発光素子群としてそれぞれ独立に制御可能に構成される照明部と、前記照明部からの照射光を利用して、入力された画像データに基づく画像を表示する表示部とを備える表示装置であって、
前記発光素子群ごとに、過去の発光階調および発光時間の少なくとも一方を含む発光履歴を記憶する記憶部と、
前記発光素子の発光階調を算出する際に、前記画像データに含まれる輝度と、前記発光素子群ごと前記発光履歴とに基づいて算出する算出部と、
算出された発光階調に基づいて前記照明部を制御する制御部とを有することを特徴とする表示装置。
【請求項3】
前記算出部は、前記発光履歴に基づいて輝度の経時変化量を算出し、算出した経時変化量と、前記画像データに含まれる輝度とに基づいて前記発光素子の発光階調を算出することを特徴とする請求項2記載の表示装置。
【請求項4】
前記算出部は、全ての発光素子群の前記経時変化量の平均値よりも所定の値以上小さい経時変化量を有する発光素子群に対しては発光階調が高くなるように発光階調を算出することを特徴とする請求項3記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−225729(P2007−225729A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−44456(P2006−44456)
【出願日】平成18年2月21日(2006.2.21)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】