説明

表示装置および表示装置の製造方法

【課題】電極間絶縁層を下部電極間および下部電極と補助電極との間で分断することで、電極間に形成される電極間絶縁膜と上部電極との間に生じる欠陥を最小限、例えば1画素にとどめることを可能とする。
【解決手段】無機絶縁膜からなる第2絶縁層23上に上部電極34と下部電極32の間に有機層33を備えた有機EL素子31が画素毎に配列され、隣接する前記下部電極32、32間および前記下部電極32と補助電極35との間に電極間絶縁層41を備えた表示装置1において、前記電極間絶縁層41は、前記下部電極32、32間、および前記下部電極32と前記補助電極35との間が分断され、前記電極間絶縁層41が分断された領域で前記無機絶縁膜からなる第2絶縁層23と前記上部電極34とが接続されているものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光画素の欠陥を拡大させずに最小限にとどめることが容易な表示装置および表示装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フラットパネルディスプレイと呼ばれる平面型の表示装置の一つに、発光素子に有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELという)素子を用いた有機EL表示装置がある。一般的な有機EL素子の構成は有機材料を陽極と陰極とで挟んだ構造を有している。その発光のメカニズムは、有機材料からなる有機層に陽極から正孔を注入し、陰極から電子を注入して、これら注入した正孔と電子とを再結合させて発光させるものである。
【0003】
有機EL表示装置ではパネル上に乗った異物が原因で保護膜のカバレッジが悪くなる場合がある。そのようにカバレッジが悪くなった部分から封止樹脂に含まれる水分やガス等の劣化物質が有機層に伝わり発光画素が劣化し、欠陥となる。劣化の原因物質である水分等は、上部電極と有機物である感光性絶縁材料との界面を酸化させることによって劣化させることが確認されている。上部電極は全面に形成されており、エリアマスク等でエリアを限定させて形成することは難しい。
【0004】
平坦化絶縁層を感光性有機材料層と無機材料絶縁層を積層する構造(例えば、特許文献1参照。)が開示されている。この構造では、図9および図10に示すように、下部電極132、132間に電極間絶縁層141と上部電極134との積層構造が存在するため、電極間絶縁層141を介して欠陥が隣接画素に拡大することになる。なお、図9は、(1)に平面レイアウト図、(2)に平面レイアウト図中のA−A線断面における概略構成を示す拡大断面図、図10は、(1)に平面レイアウト図、(2)に平面レイアウト図中のB−B線断面における概略構成を示す拡大断面図を示した。
【0005】
例えば、上記図9および図10に示した構成の表示装置では、図11の欠陥画素数と環境試験時間の関係図に示すように、環境試験時間が長くなるにしたがって、画素欠陥が増大することがわかる。これは、上述したように、下部電極間に跨って電極間絶縁層と上部電極との積層構造が存在するため、電極間絶縁層を介して欠陥が隣接画素に拡大するためである。なお、図11では、平坦化絶縁層の無機材料絶縁層を厚さが300nmの酸化シリコン膜で形成した場合と厚さが600nmの酸化シリコン膜で形成した場合と、従来のアノード電極構造として無機材料絶縁層を形成しないで感光性有機材料層上にアノード電極を形成した場合を示した。また、膜劣化の原因となった異物の大きさは50μmであった。
【0006】
また、電極間の電極間絶縁層に溝部を設けることによって劣化原因成分と考えられる水やガス等を除去し、発光層が下部層から受ける浸食を抑制する構造(例えば、特許文献2参照。)が開示されている。しかしながら、特許文献2に開示された構成は、画素列にそって溝が形成されているものであり、この構成では、溝が形成されている方向の電極間では電極間絶縁層で電極間がつながった状態になっているため、溝が形成されている方向に電極間絶縁層を介して欠陥が拡大することになる。
【0007】
【特許文献1】特開2001-356711号公報
【特許文献2】特開2003-332069号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
解決しようとする問題点は、電極間に形成される電極間絶縁膜と上部電極との間に生じる欠陥を最小限、例えば1画素にとどめることができない点である。上記欠陥は、表示装置のパネル内に含まれている水分やガスなどが電極間絶縁層のカバレッジの悪い部分より侵入することにより、画素にダメージを与えるものである。欠陥の原因物質である水分やガスの進行経路は、電極間絶縁層で使用されている感光性絶縁材料と上部電極の界面の酸化によって成長していることが特定されている。一方、上部電極をエリアマスクなどでエリアを限定させて形成することは非常に難しい。
【0009】
電極間に形成される電極間絶縁膜と上部電極との間に生じる欠陥を最小限、例えば1画素にとどめるようにすることを本発明の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の表示装置は、無機絶縁膜上に上部電極と下部電極の間に有機層を備えた有機EL素子が画素毎に配列され、隣接する前記下部電極間および前記下部電極と補助電極との間に電極間絶縁層を備えた表示装置において、前記電極間絶縁層は、前記下部電極間、および前記下部電極と前記補助電極との間が分断され、前記電極間絶縁層が分断された領域で前記無機絶縁膜と前記上部電極とが接続されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の表示装置では、電極間絶縁層は、下部電極間、および下部電極と補助電極との間が分断されていて、しかも電極間絶縁層が分断された領域で無機絶縁膜と上部電極とが接続されていることから、各下部電極間、下部電極と補助電極との間は、電極間絶縁層と上部電極との接触領域が存在しない。このため、従来問題となっていた上部電極と電極間絶縁層との間で発生していた欠陥は、一つの下部電極上もしくは補助電極上のみの発生で済み、隣接する下部電極上の電極間絶縁層と上部電極との間もしくは隣接する補助電極上の電極間絶縁層と上部電極との間に進行することはない。したがって、最小限の領域のみ欠陥が発生するだけとなるので、例えば欠陥領域は1画素にとどめられる。
【0012】
本発明の表示装置の製造方法は、無機絶縁膜上に上部電極と下部電極の間に有機層を備えた有機EL素子を画素毎に配列し、隣接する前記下部電極間および前記下部電極と補助電極との間に電極間絶縁層を備えた表示装置の製造方法において、前記下部電極および前記補助電極を被覆するように前記電極間絶縁層を形成する工程と、前記電極間絶縁層の前記下部電極間および前記下部電極と前記補助電極との間を分断する工程とを備えたことを特徴とする。
【0013】
本発明の表示装置の製造方法では、電極間絶縁層を、下部電極間、および下部電極と補助電極との間が分断するように形成することから、電極間絶縁層が分断された領域では無機絶縁膜と上部電極とが接続するように形成される。したがって、各下部電極間、下部電極と補助電極との間は、電極間絶縁層と上部電極との接触領域が存在しない。このため、従来問題となっていた上部電極と電極間絶縁層との間で発生していた欠陥は、一つの下部電極上もしくは補助電極上のみの発生で済み、隣接する下部電極上の電極間絶縁層と上部電極との間もしくは隣接する補助電極上の電極間絶縁層と上部電極との間に進行することはない。よって、最小限の領域のみ欠陥が発生するだけとなるように表示装置が製造されるので、例えば欠陥領域は1画素にとどめられる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の表示装置は、電極間絶縁層は、下部電極間、および下部電極と補助電極との間が分断されていて、しかも電極間絶縁層が分断された領域で無機絶縁膜と上部電極とが接続されているため、たとえ上部電極と電極間絶縁層との界面で問題としている欠陥が発生しても、隣接する下部電極上の電極間絶縁層と上部電極との間もしくは隣接する補助電極上の電極間絶縁層と上部電極との間に進行するのを防ぐことができる。すなわち、最小限の領域のみ欠陥が発生するだけとなるので、例えば欠陥領域は1画素にとどめることができるという利点がある。よって、歩留まりの向上を図ることができる。
【0015】
本発明の表示装置の製造方法は、電極間絶縁層を、下部電極間、および下部電極と補助電極との間が分断するように形成することから、電極間絶縁層が分断された領域では無機絶縁膜と上部電極とが接続するように形成されるため、たとえ上部電極と電極間絶縁層との界面で問題としている欠陥が発生しても、隣接する下部電極上の電極間絶縁層と上部電極との間もしくは隣接する補助電極上の電極間絶縁層と上部電極との間に進行するのを防ぐことができるので、最小限の領域のみ欠陥が発生するだけとなる。すなわち、欠陥領域は1画素にとどめることができるという利点がある。よって、歩留まりの向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の表示装置に係る一実施の形態の第1例を、図1に示した平面レイアウト図および平面レイアウト図中のA−A線断面における概略構成を示す拡大断面図、および図2に示した平面レイアウト図中のB−B線断面における概略構成を示す拡大断面図によって説明する。なお、概略構成を示す拡大断面図は見易くするため上記平面レイアウト図と縮尺を一致させてない。
【0017】
図1〜図2に示すように、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子という)を駆動するTFT(Thin Film Transistor)等の素子、配線等を搭載した基板(図示せず)上に第1絶縁層21が形成されている。この第1絶縁層21は、例えば厚さが2μm程度のポジ型感光性絶縁材料からなり、表面が平坦化された平坦化絶縁層で形成されている。上記ポジ型感光性絶縁材料としては、例えば、ポリベンゾオキサゾール、ポジ型感光性ポリイミドなどを用いることができる。したがって、この第1絶縁層21によって、素子や配線等による厚さ1.0μm程度の凹凸が平坦化されている。
【0018】
上記第1絶縁層21には、上記TFTに後に説明する下部電極を接続するためのコンタクトホール22が形成されている。
【0019】
この第1絶縁層21上には第2絶縁層23が形成されている。この第2絶縁層23は例えば無機絶縁層で形成されている。上記無機絶縁層には例えば酸化シリコン(SiOx)膜を用いることができるが、その他の無機絶縁材料を用いることもでき、上記酸化シリコン膜は例えば300nm程度の厚さに形成されている。この膜厚については、適宜選択できる。なお、コンタクトホール22の内に上記第2絶縁層23が形成されているが、上記第2絶縁層23にもコンタクトホール22と同様に、上記TFTに下部電極を接続するためのコンタクトホール24が形成されている。
【0020】
上記第2絶縁層23上にはコンタクトホール24を通じて上記TFTに接続するように、有機EL素子31の下部電極32が形成されている。この下部電極32は、画素毎に形成され、例えば、密着層と導電層とバリア層の積層構造をなしている。例えば、下地層との密着性を確保する密着層としてITO膜を20nmの厚さに形成し、下部電極32の本体層として銀膜を100nmの厚さに形成し、バリア層としてITO膜を10nmの厚さに形成している。上記説明した下部電極32は、銀をITOで挟んだ層構造になっているが、銀以外にも銀を主成分とする銀合金を用いることができ、また上記ITO以外にも透明導電性材料である酸化インジウムを主成分とする材料、例えばインジウム亜鉛オキサイド(例えばIZO)を用いてもよい。なお、上記密着層のITOに関しては密着可能な5.0nm〜100nmの厚さに形成され、バリア層のITOに関しては加工限界である3.0nm〜50nmの厚さに形成され、Agに関しては光が透過されず、また加工限界である50nm〜500nmの厚さの範囲であればよい。
【0021】
また、上記第2絶縁層23上には補助電極35が形成されている。この補助電極35も上記下部電極32と同様な構造とすることができる。
【0022】
上記下部電極32および補助電極35のそれぞれの側周を囲むように電極間絶縁層41が形成されている。この電極間絶縁層41には、例えばポジ型感光性絶縁材料を用いた。例えばポジ型感光性絶縁材料には感光性ポリイミド、ポリベンゾオキサゾールなどがある。上記電極間絶縁層41は、上記下部電極32、32間、および上記下部電極32と前記補助電極35との間で分断されている。さらに、上記下部電極32上の上記電極間絶縁層41には開口部42が形成されている。したがって、電極間絶縁層41は、画素毎に形成され、しかも下部電極32の側周および側周上に形成されているとともに、各補助電極35をそれぞれに被覆するように形成されている。
【0023】
上記開口部42内の上記下部電極32上には有機EL素子31の有機層33が形成されている。この有機層33は、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層の材料を順番に成膜することで形成されている。図面では、一例として、光の3原色である赤色の有機層33(33R)、緑色の有機層33(33G)、青色の有機層33(33B)を用いた有機EL素子を示したが、上記光の3原色以外の色を用いることも可能である。
【0024】
上記電極間絶縁層41および上記有機層33上を被覆するように上部電極34が形成されている。この上部電極34は、例えばマグネシウム銀合金で形成することができ、その膜厚は例えば10nmとした。したがって、上記電極間絶縁層41が分断された領域では上記第2絶縁層23に上記上部電極34が形成されているので、画素毎に無機絶縁層からなる第2絶縁層23と上部電極34とは接続されている。また、上記説明した下部電極32は陽極になり、上部電極34は陰極になる。
【0025】
図示はしていないが、上記上部電極34上には光透過性を有する保護膜が形成されている。この保護膜は光透過性を有する絶縁膜からなり、例えば窒化シリコン(SiNx)膜からなる。この窒化シリコン膜は例えば3μmの厚さに形成されている。
【0026】
本発明の表示装置11では、電極間絶縁層41は、下部電極32,32間、および下部電極32と補助電極35との間が分断されていて、しかも電極間絶縁層41が分断された領域で無機絶縁膜からなる第2絶縁層23と上部電極34とが接続されていることから、各下部電極32、32間、下部電極32と補助電極35との間は、電極間絶縁層41と上部電極34との接触領域が存在しない。このため、従来問題となっていた上部電極34と電極間絶縁層41との間で発生していた欠陥は、電極間絶縁層41と上部電極34との接続面で抑止されるので、一つの下部電極32上もしくは補助電極35上のみの発生で済み、隣接する下部電極35上の電極間絶縁層41と上部電極34との間もしくは隣接する補助電極35上の電極間絶縁層41と上部電極34との間に進行することはない。したがって、最小限の領域のみ欠陥が発生するだけとなるので、例えば欠陥領域は1画素にとどめることができるという利点がある。よって、歩留まりの向上を図ることができる。
【0027】
次に、本発明の表示装置に係る一実施の形態の第2例を、図3に示した平面レイアウト図および平面レイアウト図中のA−A線断面における概略構成を示す拡大断面図、および図4に示した平面レイアウト図中のB−B線断面における概略構成を示す拡大断面図によって説明する。なお、概略構成を示す拡大断面図は見易くするため上記平面レイアウト図と縮尺を一致させてない。
【0028】
図3および図4に示すように、表示装置12はいわゆるボトムエミッション型有機EL表示装置である。以下、その詳細を説明する。
【0029】
有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子という)を駆動するTFT(Thin Film Transistor)等の素子、配線等を搭載した基板11上に第1絶縁層21が形成されている。この第1絶縁層21は、表面が平坦化された光透過性を有するいわゆる透明な平坦化絶縁層で形成されている。
【0030】
上記第1絶縁層21には、上記TFTに後に説明する下部電極を接続するためのコンタクトホール22が形成されている。
【0031】
この第1絶縁層21上には第2絶縁層23が形成されている。この第2絶縁層23は光透過性を有するいわゆる透明な無機絶縁層で形成されている。上記無機絶縁層には例えば酸化シリコン(SiOx)膜を用いることができるが、その他の無機絶縁材料を用いることもできる。なお、コンタクトホール22の内に上記第2絶縁層23が形成されているが、上記第2絶縁層23にもコンタクトホール22と同様に、上記TFTに下部電極を接続するためのコンタクトホール24が形成されている。
【0032】
上記第2絶縁層23上にはコンタクトホール24を通じて上記TFTに接続するように、有機EL素子31の下部電極32が形成されている。この下部電極32は画素毎に透明電極材料で形成されている。また、上記第2絶縁層23上には補助電極35が形成されている。この補助電極35も上記下部電極32と同様な材料で同時に形成することができる。
【0033】
上記下部電極32および補助電極35のそれぞれの側周を囲むように電極間絶縁層41が形成されている。この電極間絶縁層41には、例えばポジ型感光性絶縁材料を用いた。例えばポジ型感光性絶縁材料には感光性ポリイミド、ポリベンゾオキサゾールなどがある。上記電極間絶縁層41は、上記下部電極32、32間、および上記下部電極32と前記補助電極35との間で分断されている。さらに、上記下部電極32上の上記電極間絶縁層41には開口部42が形成されている。したがって、電極間絶縁層41は、画素毎に形成され、しかも下部電極32の側周および側周上に形成されているとともに、各補助電極35をそれぞれに被覆するように形成されている。
【0034】
上記開口部42内の上記下部電極32上には有機EL素子31の有機層33が形成されている。この有機層33は、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層の材料を順番に成膜することで形成されている。図面では、一例として、光の3原色である赤色の有機層33(33R)、緑色の有機層33(33G)、青色の有機層33(33B)を用いた有機EL素子を示したが、上記光の3原色以外の色を用いることも可能である。
【0035】
上記電極間絶縁層41および上記有機層33上を被覆するように上部電極34が形成されている。したがって、上記電極間絶縁層41が分断された領域では上記第2絶縁層23に上記上部電極34が形成されているので、画素毎に無機絶縁層からなる第2絶縁層23と上部電極34とは接続されている。また、上記説明した下部電極32は陽極になり、上部電極34は陰極になる。
【0036】
図示はしていないが、上記上部電極34上には保護膜が形成されている。
【0037】
本発明の表示装置12では、電極間絶縁層41は、下部電極32,32間、および下部電極32と補助電極35との間が分断されていて、しかも電極間絶縁層41が分断された領域で無機絶縁膜からなる第2絶縁層23と上部電極34とが接続されていることから、各下部電極32,32間、下部電極32と補助電極35との間は、電極間絶縁層41と上部電極34との接触領域が存在しない。このため、従来問題となっていた上部電極34と電極間絶縁層41との間で発生していた欠陥は、電極間絶縁層41と上部電極34との接続面で抑止されるので、一つの下部電極32上もしくは補助電極35上のみの発生で済み、隣接する下部電極35上の電極間絶縁層41と上部電極34との間もしくは隣接する補助電極35上の電極間絶縁層41と上部電極34との間に進行することはない。したがって、最小限の領域のみ欠陥が発生するだけとなるので、例えば欠陥領域は1画素にとどめることができるという利点がある。よって、歩留まりの向上を図ることができる。
【0038】
次に、本発明の表示装置の製造方法に係る一実施の形態の一例を、図5〜図8に示した製造工程断面図によって説明する。本製造工程は、前記図1および図2によって説明したトップエミッション型の有機EL素子を有する表示装置11の製造工程である。
【0039】
図5(1)に示すように、有機EL素子を駆動するTFT(Thin Film Transistor)等の素子、配線等を搭載した基板(図示せず)上に第1絶縁層21を形成する。例えば、回転塗布法によって、上記基板11上にポジ型感光性絶縁材料を塗布し、露光装置にて露光を行い、例えばパドル式現像装置にて現像を行って、第1絶縁層21にTFTに通じるコンタクトホール22を形成する。その後、第1絶縁層21を硬化させるベーキングを例えばクリーンベーク炉にて行う。これにより、第1絶縁層21は、例えば厚さが2μm程度の厚さに形成され、しかも表面が平坦化されて形成される。したがって、この第1絶縁層21によって、素子や配線等による厚さ1.0μm程度の凹凸が平坦化されている。上記ポジ型感光性絶縁材料としては、例えば、ポリベンゾオキサゾール、ポジ型感光性ポリイミドなどを用いることができる。
【0040】
上記第1絶縁層21上に第2絶縁層23を形成する。この第2絶縁層23は例えばCVD法により無機絶縁材料で形成される。上記無機絶縁材料には例えば酸化シリコン(SiOx)を用いることができるが、その他の無機絶縁材料を用いることもでき、上記酸化シリコン膜の場合は例えば300nm程度の厚さに形成される。この膜厚については、適宜選択できる。
【0041】
その後、通常のリソグラフィ技術を用いてパターニング、エッチング行い、所定のコンタクトホール22を得る。また、第1絶縁層21を第2絶縁層23で完全に覆うため、第2絶縁層23に形成されるコンタクトホール24は第1絶縁層21に形成されるコンタクトホール22よりも小さく形成する。したがって、上記第1絶縁層21、第2絶縁層23に、上記TFT(図示せず)と下記に説明する有機EL素子とを電気的に接続するためのコンタクトホール24が形成される。
【0042】
次に図5(2)に示すように、上記第2絶縁層23上に、コンタクトホール24を通じて上記TFTに接続するように、有機EL素子の下部電極32を形成する。
【0043】
まず、上記第2絶縁層23上に、例えばDCスパッタリング法により密着層となるITO膜を例えば20nmの厚さに成膜する。続いて例えばDCスパッタリング法により上記密着層上に下部電極の本体層となる例えば銀層を100nmの厚さに成膜する。続いて例えばDCスパッタリング法により上記本体層上にバリア層となるITO膜を例えば10nmの厚さに成膜する。次に、通常のリソグラフィ技術を用いて所定の形状にマスク(図示せず)を形成した後、エッチング加工を行い、所定の形状の下部電極32、補助電極35を形成する。その後、上記マスクを除去する。
【0044】
このようにして形成される上記下部電極32は画素毎に形成される。上記説明した下部電極32は、銀をITOで挟んだ層構造になっているが、銀以外にも銀を主成分とする銀合金を用いることができ、また上記ITO以外にも透明導電性材料である酸化インジウムを主成分とする材料、例えばインジウム亜鉛オキサイド(例えばIZO)を用いてもよい。なお、上記密着層のITOに関しては密着可能な5.0nm〜100nmの厚さに形成され、バリア層のITOに関しては加工限界である3.0nm〜50nmの厚さに形成され、Agに関しては光が透過されず、また加工限界である50nm〜500nmの厚さの範囲であればよい。
【0045】
また、上記第2絶縁層23上には、上記下部電極32と同時に、下部電極32と同様な膜構造を有する補助電極35を形成する。すなわち、下部電極32と補助電極35とは一括に形成される。
【0046】
次に図6(3)に示すように、上記下部電極32および補助電極35を被覆するように電極間絶縁層41を形成する。この電極間絶縁層41には、例えばポジ型感光性絶縁材料を用いた。例えばポジ型感光性絶縁材料には感光性ポリイミド、ポリベンゾオキサゾールなどがある。上記ポジ型感光性絶縁材料としては、例えばポリベンゾオキサゾール、ポジ型感光性ポリイミド等がある。そして、例えば回転塗布法によって、上記下部電極32および補助電極35を被覆するように上記第2絶縁層23上にポジ型感光性絶縁材料を塗布し、露光装置にて露光を行い、例えばパドル式現像装置にて現像を行う。次に、例えばクリーンベーク炉を用いて、電極間絶縁層41を硬化させるための本焼成(ベーキング)を行う。このベーキングは、例えば窒素雰囲気もしくは希ガス雰囲気のような不活性な雰囲気で行うことが好ましい。このベーキングによって電極間絶縁層41は例えば2.0μmの膜厚に形成される。そして、上記下部電極32および補助電極35のそれぞれの側周を囲むように電極間絶縁層41が形成され、同時に上記下部電極32上の上記電極間絶縁層41に開口部42が形成される。
【0047】
この結果、上記電極間絶縁層41は、上記下部電極32、32間、および上記下部電極32と前記補助電極35との間で分断される。また、上述したように、上記下部電極32上の上記電極間絶縁層41に開口部42が形成される。したがって、電極間絶縁層41は、画素毎に孤立した状態に形成され、しかも下部電極32の側周および側周上に形成されるとともに、各補助電極35をそれぞれに被覆するように形成される。
【0048】
次に図7(4)に示すように、基板前処理を行った後、上記開口部42内の上記下部電極32上に有機EL素子の有機層33を形成する。上記有機層33は、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層の材料を順番に蒸着することで形成される。図面では、一例として、光の3原色である青色の有機層33(33B)を用いた有機EL素子を示したが、赤色の有機層(図示せず)、緑色の有機層(図示せず)も青色の有機層33Bと同様に蒸着法によって、所定の開口部42内に形成される。なお、上記光の3原色以外の色の有機層を用いることも可能である。また、上記基板前処理は、例えば酸素プラズマ処理による。また、各色の有機層の蒸着は真空雰囲気を保持した状態で順次行うことが好ましい。例えば真空雰囲気を保持した状態で複数の蒸着チャンバ間を搬送して各色の有機層蒸着を行う。
【0049】
次に、図8(5)に示すように、上記電極間絶縁層41および上記有機層33上を被覆するように上部電極34を形成する。この上部電極34は、例えばマグネシウム銀合金で形成することができ、その膜厚は例えば10nmとした。したがって、上記電極間絶縁層41が分断された領域では上記第2絶縁層23に上記上部電極34が形成されるので、画素毎に無機絶縁層からなる第2絶縁層23と上部電極34とは接続される。上記上部電極34の形成には、真空蒸着法が用いられ、上記有機層蒸着から連続して真空状態を保持した状態で上部電極34を形成することが好ましい。また、上記説明した下部電極32は陽極になり、上部電極34は陰極になる。
【0050】
その後、図示はしていないが、上記上部電極34上には光透過性を有する保護膜を形成する。この保護膜は例えば窒化シリコン(SiNx)膜で形成される。この窒化シリコン膜は例えば3μmの厚さに形成される。
【0051】
本発明の表示装置の製造方法では、電極間絶縁層41を、下部電極32、32間、および下部電極32と補助電極35との間が分断するように形成することから、電極間絶縁層41が分断された領域では無機絶縁膜からなる第2絶縁層22と上部電極34とが接続するように形成される。したがって、各下部電極32、32間、下部電極32と補助電極35との間は、電極間絶縁層41と上部電極34との接触領域が存在しない。このため、従来問題となっていた上部電極と電極間絶縁層との間で発生していた欠陥は、電極間絶縁層41と上部電極34との接続面で抑止されるので、一つの下部電極32上もしくは補助電極35上のみの発生で済み、隣接する下部電極32上の電極間絶縁層41と上部電極34との間もしくは隣接する補助電極35上の電極間絶縁層41と上部電極34との間に進行することはない。よって、最小限の領域のみ欠陥が発生するだけとなるように表示装置11が製造されるので、例えば欠陥領域は1画素にとどめることができるという利点がある。よって、歩留まりの向上を図ることができる。
【0052】
上記製造方法は、トップエミッション型の有機EL素子を用いた表示装置について説明したが、同様にボトムエミッション型の有機EL素子を用いた表示装置を製造することもできる。この場合には、有機EL層の下地に透明材料を用いればよい。
【0053】
また、上記製造方法では、上記下部電極32、32間、および上記下部電極32と前記補助電極35との間で電極間絶縁層41を分断する工程は、電極間絶縁膜41に開口部42を形成する工程と同一工程で行うことができるので、工程数の増加がない。このため、プロセス的付加がないという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の表示装置に係る一実施の形態の第1例を示した平面レイアウト図および平面レイアウト図中のA−A線断面における概略構成を示す拡大断面図である。
【図2】本発明の表示装置に係る一実施の形態の第1例を示した平面レイアウト図中のB−B線断面における概略構成を示す拡大断面図である。
【図3】本発明の表示装置に係る一実施の形態の第2例を示した平面レイアウト図および平面レイアウト図中のA−A線断面における概略構成を示す拡大断面図である。
【図4】本発明の表示装置に係る一実施の形態の第2例を示した平面レイアウト図中のB−B線断面における概略構成を示す拡大断面図である。
【図5】本発明の表示装置の製造方法に係る一実施の形態の一例を示した製造工程断面図である。
【図6】本発明の表示装置の製造方法に係る一実施の形態の一例を示した製造工程断面図である。
【図7】本発明の表示装置の製造方法に係る一実施の形態の一例を示した製造工程断面図である。
【図8】本発明の表示装置の製造方法に係る一実施の形態の一例を示した製造工程断面図である。
【図9】(1)図は従来技術の表示装置を示した平面レイアウト図、(2)図は平面レイアウト図中のA−A線断面における概略構成を示す拡大断面図である。
【図10】(1)図は従来技術の表示装置を示した平面レイアウト図、(2)図は平面レイアウト図中のB−B線断面における概略構成を示す拡大断面図である。
【図11】欠陥画素数と環境試験時間の関係図である。
【符号の説明】
【0055】
1…表示装置、23…第2絶縁層(無機絶縁膜)、31…有機EL素子、32…下部電極、33…有機層、34…上部電極、35…補助電極、41…電極間絶縁層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機絶縁膜上に上部電極と下部電極の間に有機層を備えた有機EL素子が画素毎に配列され、
隣接する前記下部電極間および前記下部電極と補助電極との間に電極間絶縁層を備えた表示装置において、
前記電極間絶縁層は、前記下部電極間、および前記下部電極と前記補助電極との間が分断され、
前記電極間絶縁層が分断された領域で前記無機絶縁膜と前記上部電極とが接続されている
ことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記電極間絶縁層は、前記下部電極上に開口部が形成され、前記下部電極の周囲を被覆するように形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
無機絶縁膜上に上部電極と下部電極の間に有機層を備えた有機EL素子を画素毎に配列し、
隣接する前記下部電極間および前記下部電極と補助電極との間に電極間絶縁層を備えた表示装置の製造方法において、
前記下部電極および前記補助電極を被覆するように前記電極間絶縁層を形成する工程と、
前記電極間絶縁層の前記下部電極間および前記下部電極と前記補助電極との間を分断する工程と
を備えたことを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項4】
前記電極間絶縁層を分断する工程で前記電極間絶縁層の分断領域に前記無機絶縁膜を露出させる
ことを特徴とする請求項3記載の表示装置の製造方法。
【請求項5】
前記電極間絶縁層を分断する工程は前記下部電極上の前記電極間絶縁層に開口部を形成する工程と同一工程である
ことを特徴とする請求項3記載の表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−294490(P2006−294490A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−115494(P2005−115494)
【出願日】平成17年4月13日(2005.4.13)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】